JP6860427B2 - 光拡散フィルム、撮影用ディフューザー、及びディスプレイ用拡散板 - Google Patents

光拡散フィルム、撮影用ディフューザー、及びディスプレイ用拡散板 Download PDF

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Description

本発明は、光拡散フィルム、並びにこの光拡散フィルムを用いた撮影用ディフューザー、及びディスプレイ用拡散板に関する。
静止画又は動画の撮影に用いられる補助機材として、撮影用ディフューザーが知られている。撮影用ディフューザーを光源と被写体との間に配置することによって、撮影用ディフューザーを透過した光源光が被写体に照射される。このとき、撮影用ディフューザーが光源からの光を拡散させることにより、拡散光が被写体に照射されるため、十分な露出を得ながらコントラストの低い像を得ることができる。撮影用ディフューザーとしては、例えば、布、不織布、紙、合成紙、樹脂フィルム等を用いた光拡散フィルム、又はすりガラス、合成樹脂板等を用いた乳白色や梨地状の光拡散板が従来から使用されている。以降、撮影用ディフューザーを、単に「ディフューザー」と称することがある。
ディフューザーの中でも、光拡散フィルムとして、耐水性に優れるとともに、軽量であること、サイズの大きな製品が得やすいこと、引っ張り、折り曲げ等の強度が高いことから、合成紙の半透明品が好適に利用されている。このようなディフューザーに用いられる光拡散フィルムとして、例えば特許文献1に、無機微細粉末を含有する延伸樹脂フィルムからなる、半透明の樹脂フィルムが開示されている。
特開平1−156062号公報
ディフューザーは光源と被写体との間に配置されて利用されるために、光源からの強い光を受けて熱を帯びることになる。このため、ディフューザーとして用いられる光拡散フィルムには、難燃性の向上が求められている。
また、光源からの光の透過と拡散を行うディフューザーの機能を鑑みて、光拡散フィルムには、光透過率や光拡散率といった光学特性が要求される。また、ディフューザーを透過した光が被写体に照射されることで、被写体の外見に影響を及ぼすことから、光拡散フィルムには透過光の色目の変化が少ないことが要求される。
これらの特性を改善するために、光拡散フィルムに添加剤を配合させることが考えられる。しかしながら、光拡散フィルムに用いられる添加剤のブリードアウト等によって、光拡散フィルムの表面にベタツキが生じることがあった。ベタツキが生じた場合には、ディフューザー収納時の巻き取りや使用時の巻出しの際の取り扱いが困難となり、また埃等の付着によって徐々に光透過率の低下が引き起こされることから、光拡散フィルムには極力ベタツキがないことが要求される。
これまでのところ、このような各種性能を兼ね備えた光拡散フィルムは知られていなかった。
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものである。その目的は、光学特性と難燃性とを兼ね備えるとともに、色相の変化やベタツキが抑えられた光拡散フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂と、特定の光拡散剤と光安定剤とを含む樹脂フィルムを用いることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
[1]ポリオレフィン系樹脂と、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物よりなるリン酸エステル系光拡散剤と、分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤とを含有し、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜25質量部の前記リン酸エステル系光拡散剤と、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1〜5質量部の前記NOR型ヒンダードアミン系光安定剤とを含有することを特徴とする光拡散フィルム。
]前記ポリオレフィン系樹脂が、互いに非相溶である少なくとも2種のポリオレフィン系樹脂のブレンド物を含有する、[1]に記載の光拡散フィルム。
]前記ブレンド物が、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含有する、[]に記載の光拡散フィルム。
]前記光拡散フィルムが、さらに無機充填剤を含有する、[1]〜[]の何れか一項に記載の光拡散フィルム。
]前記光拡散フィルムを150℃の雰囲気で7日間加熱した前後での、光拡散フィルムのJIS−Z8730に準拠して測定した色相Lab値から求めた色差ΔEが0.5〜20である、[1]〜[]の何れか一項に記載の光拡散フィルム。
][1]〜[]の何れか一項に記載の光拡散フィルムを用いた撮影用ディフューザー。
][1]〜[]の何れか一項に記載の光拡散フィルムを用いたディスプレイ用拡散板。
本発明によれば、光学特性と難燃性とを兼ね備えるとともに、色相の変化やベタツキが抑えられた光拡散フィルムを提供することができる。
本実施形態の単層構造の光拡散フィルムの一態様を示す概略断面図である。 本実施形態の基層と外層とを有する多層構造の光拡散フィルムの一態様を示す概略断面図である。 本実施形態の基層と内層と外層とを有する多層構造の光拡散フィルムの一態様を示す概略断面図である。
以下、本発明の各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
[光拡散フィルム]
光拡散フィルムとは、光透過性能と光拡散性能を併せ持つ樹脂フィルムであって、ポリオレフィン系樹脂を含むものであり、単層であっても多層(例えば2〜9層)であってもよく、内部に無機充填剤を含むものであってもよく、内部に無機充填剤を核として形成した空孔を有するものであってもよく、上述の特許文献1記載のプロピレン系樹脂多層複合フィルムの様態を有するものであってもよい。
本実施形態の光拡散フィルムは、従来の光拡散フィルムと同様の光透過性能と光拡散性能を有しつつ、光拡散フィルムの難燃性を向上させたものであり、さらに光拡散フィルムの色相の変化やベタツキの発生を抑えたものである。
本実施形態の光拡散フィルムは、ポリオレフィン系樹脂と、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるリン酸エステル系光拡散剤と、分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤とを含有する樹脂フィルムである。また、本実施形態の光拡散フィルムは、ポリオレフィン系樹脂と、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるリン酸エステル系光拡散剤と、分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤とを含有する樹脂組成物を、後述する成形方法により薄膜状に成形したものである。以降に光拡散フィルム(樹脂組成物)に用い得る各原料について詳述する。なお、以降において、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるリン酸エステル系光拡散剤を、特に断りの無い限り、「リン酸エステル系光拡散剤」と称するものとし、また分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤を、特に断りの無い限り、「NOR型HALS」と称するものとする。
<ポリオレフィン系樹脂>
光拡散フィルムにおけるポリオレフィン系樹脂は、光拡散フィルムの母材として用いるものであり、光透過フィルムにおける成膜性、耐水性、耐久性、軽量性、物理的強度、及び光透過性を担保するものである。また、後述するブレンド物においては光拡散性をも担保するものである。
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネンや、それらの誘導体等の環状オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系炭化水素;等のオレフィンコモノマーの1種で構成される単独重合体、及び前記オレフィンコモノマーの2種類以上で構成される共重合体が挙げられる。
またポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン樹脂、ポリ環状オレフィン樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上をブレンドして用いることができる。これらの中でも、成膜性、耐水性、軽量性、物理的強度、光透過性、及び生産コスト等の観点から、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体が挙げられる。また、主成分となるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィンとの共重合体である、プロピレン−α−オレフィン共重合体を使用することもできる。共重合体は、モノマー成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。これらの中でも、プロピレン単独重合体が好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の結晶性エチレン系樹脂等が挙げられる。また、主成分となるエチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィンとの共重合体である、エチレン−α−オレフィン共重合体を使用することもできる。またポリエチレン系樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等を使用することもできる。これらの中でも、低密度ポリエチレンが好ましく、エチレン・ブテン共重合体やエチレン・オクテン共重合体のようなα−オレフィンとの共重合体がより好ましい。
<ポリオレフィン系樹脂のブレンド物>
光拡散フィルムに使用するポリオレフィン系樹脂としては、上記例示したポリオレフィン系樹脂と、互いに非相溶である他の樹脂とのブレンド物を含有することが好ましい。このようなブレンド物を含むポリオレフィン系樹脂を用いることで、ブレンド物に含まれる樹脂のうちのブレンド比率の高い方(通常はポリオレフィン系樹脂)が海状の構造、ブレンド比率の低い方が分散した島状の構造を形成する海島構造(相分離構造)をとる。そして、このような海島構造をとることで、相界面で透過光が屈折し、光拡散フィルムの光拡散率を増加させることができる。
上記ブレンド物に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、互いに非相溶性の任意の樹脂の組み合わせを使用することができる。これは、上記例示したポリオレフィン系樹脂から2種以上を組み合わせて用いてもよいし、また上記例示したポリオレフィン系樹脂から少なくとも1種と、これに非相溶のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の非ポリオレフィン系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
これらの中でもブレンド物は、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含むことが好ましい。同ブレンド物に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、上記例示したポリプロピレン系樹脂から任意のものを使用することもできる。中でも、結晶性のプロピレン単独重合体が好ましい。また、同ブレンド物に用いられるポリエチレン系樹脂としては、例えば、上記例示したポリエチレン系樹脂から任意のものを使用することもできる。中でも、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体が好ましい。
光拡散フィルムにおいて、ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含むブレンド物を含有する場合、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、40〜99質量部のポリプロピレン系樹脂と、1〜60質量部のポリエチレン系樹脂とを含むことが好ましく、45〜98質量部のポリプロピレン系樹脂と、2〜55質量部のポリエチレン系樹脂とを含むことがより好ましく、48〜97質量部のポリプロピレン系樹脂と、3〜52質量部のポリエチレン系樹脂とを含むことがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との含有割合が上記範囲内であると、光拡散フィルムに適度な剛性と延伸性が付与されるとともに、光拡散フィルムの光透過率や光拡散性が所望の値となる傾向にある。
<リン酸エステル系光拡散剤>
光拡散フィルムにおけるリン酸エステル系光拡散剤は、室温(25℃)で固体状の粒子として光拡散フィルム中に微分散するものであり、ポリオレフィン系樹脂と同粒子の界面で光の反射を引き起こすことで、光拡散フィルムに光拡散性の効果を向上させるものである。さらに、このリン酸エステル系光拡散剤は、後述するNOR型HALSとの併用により、光拡散フィルムの難燃性を向上させるものである。
このようなリン酸エステル系光拡散剤としては、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を溶融混練する際に、ポリオレフィン系樹脂の溶融混練温度(例えば、180〜230℃)条件下でも完全に溶融せずに、ポリオレフィン系樹脂中に固体粒子状で微分散するものが好ましく、その融点が180℃以上であるものがより好ましく、その融点が235℃以上であるものがさらに好ましい。光拡散フィルム中に固体状の粒子のリン酸エステル系光拡散剤が分散することで、光拡散フィルムの不透明性が増すとともに、光拡散フィルムの光拡散性能を向上させやすい。
このようなリン酸エステル系光拡散剤としては、例えば、亜リン酸エステルを有するリン酸エステル系化合物であって、脂肪族アルコールと亜リン酸とのエステル構造を有する、脂肪族リン酸エステル系化合物を含むものが挙げられる。中でも、脂肪族多価アルコールと、2以上の亜リン酸とのエステル構造を有する、脂肪族多価アルコールリン酸エステル系化合物を含むものであり、特には、ペンタエリスリトールと、2つの亜リン酸とのエステル構造を有する、ペンタエリスリトールジリン酸エステル系化合物(ペンタエリスリトールジホスホネート化合物)を含むものである。ペンタエリスリトールジリン酸エステル系化合物は、下記式(I)で表わされる構造を有することが好ましい。
下記式(I)で表わされる構造を有するペンタエリスリトールジリン酸エステル系化合物は、他のリン酸エステル系化合物と比べて一般的に融点や熱分解温度が高く、ポリオレフィン系樹脂への着色も殆どないことから、撮影用ディフューザー等に用いる光拡散フィルムにおける光拡散剤として特に有用である。
Figure 0006860427
式(I)中、R11,R12は、下記式(II)で表わされる芳香族置換アルキル基である。R11,R12は、同一であっても異なっていてもよい。
Figure 0006860427
式(II)中、*は結合箇所を示す。ALは炭素数1〜5の分岐状又は直鎖状の脂肪族炭化水素基を示し、Ar1は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、又はアントリル基を示す。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。
上記式(I)で表わされる構造を有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物としては、例えば、特開2011−231338号公報、特開2012−092231号公報、特開2016−216382号公報等に記載の有機リン系化合物を用いることができる。このようなペンタエリスリトールジホスホネート化合物としては、例えば、3,9−ビス(フェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3、9−ビス(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。また、このようなペンタエリスリトールジホスホネート化合物としては、帝人社製の「ファイヤガード(c)FCX−210」という商品名で市販されているものを使用することができる。リン酸エステル系光拡散剤は、上記のものを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。リン酸エステル系化合物の2種以上を用いる場合は、上記のものと、他のリン酸エステル系化合物とを、光拡散フィルムの色相を著しく損なわず、また光拡散フィルムにベタツキ等が発生しない範囲で併用してもよい。
<リン酸エステル系光拡散剤の含有量>
光拡散フィルムにおけるリン酸エステル系光拡散剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、例えば0.06質量部以上であり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。リン酸エステル系光拡散剤の含有量が上記下限以上であると、光拡散フィルムに適度な光透過率及び光拡散率を付与するとともに、後述するNOR型ヒンダードアミン系光安定剤との併用により光拡散フィルムの難燃性を向上させやすい。また、光拡散フィルムにおけるリン酸エステル系光拡散剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、例えば34質量部以下であり、25質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。リン酸エステル系光拡散剤の含有量が上記上限以下であると、光拡散フィルムのベタツキや色相の変化を低く抑えやすく、また光拡散フィルムの光透過率が過度に減少することを防ぎやすい。
ペンタエリスリトールジホスホネート化合物以外のリン酸エステル系光拡散剤として用いられるリン酸エステル系化合物としては、例えば、芳香族縮合リン酸エステル化合物が挙げられる。芳香族縮合リン酸エステル化合物は、本発明者らの検討において、融点が低く光拡散効果が不十分であり、十分な効果を得るためには含有量を上記よりも多く必要とする傾向があり、また光拡散フィルムの色相が変化したり、光拡散フィルムにベタツキが生じたりしやすい傾向があることが判明した。このため、光拡散フィルムに用いられるリン酸エステル系光拡散剤は、実質的にペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるリン酸エステル系光拡散剤であることが好ましく、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物を単独で用いることがより好ましい。ここで、実質的にペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるとは、リン酸エステル系光拡散剤に含まれるペンタエリスリトールジホスホネート化合物以外のリン酸エステル系化合物の含有量が、リン酸エステル系光拡散剤の総量に対して、0〜10質量%であることを意味し、好ましくは0〜5質量%であり、より好ましくは0〜1質量%であり、さらに好ましくは0〜0.5質量%であり、特に好ましくは0〜0.1質量%であることを意味する。
<NOR型ヒンダードアミン系光安定剤>
NOR型HALSは、多量の光や熱に晒される光拡散フィルムにおいて、ポリオレフィン系樹脂の低分子量化によるフィルムの劣化や脆化を抑えるものであり、且つ、難燃剤として光拡散フィルム引火時の延焼を抑える働きを有するものである。
このようなNOR型HALSは、下記式(III)で示されるピペリジン構造を、分子中に1又は2以上有する化合物を指す。具体的に、このピペリジン構造は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格の窒素原子に、酸素原子を介して有機基が結合しているものである。
Figure 0006860427
式(III)中、R31は、有機基を示し、*は結合箇所を示す。
31の有機基としては、炭素数1〜20の直鎖状、若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数5〜20のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、炭素数2〜12の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数3〜11の直鎖状アルキル基がより好ましい。
また、本実施形態で用いられるNOR型HALSの重量平均分子量は、1000以下である。すなわち、本実施形態で用いられるNOR型HALSは、ポリマー系ではなく、有機低分子系であることが好ましい。同分子量が高過ぎると、光拡散フィルムが着色しやすい傾向にあり、またディフューザーとして使用して熱を受けた際の色相の変化(色差ΔE)が大きくなる傾向にあり、また難燃性付与の効果が十分でない傾向にある。また、NOR型HALSの重量平均分子量は、500以上が好ましい。同分子量が低過ぎると、NOR型HALSがブリードアウトして光拡散フィルムがベタツキ易くなる傾向にある。
本実施形態で用いられるNOR型HALSは、比較的低分子量のものであって、室温(25℃)で液体状であり、マトリクス樹脂であるポリオレフィン系樹脂中に相溶しやすいものである。NOR型HALSはこのようにポリオレフィン系樹脂中に分子レベルで微分散することで、光照射や燃焼により光拡散フィルムに生じるラジカルを捕捉しやすく、そのためポリオレフィン系樹脂の劣化や延焼を防止しやすいものと推定している。
光拡散フィルムに使用するNOR型HALSとしては、従来公知のものを用いることができる。NOR型HALSは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
NOR型HALSとしては、例えば、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジン−4−イル)等が挙げられる。これらの化合物としては、ADEKA社製「LA−81」、BASF社製「TINUVIN 123」という商品名で市販されているものを使用することができる。
<NOR型HALSの含有量>
光拡散フィルムにおけるNOR型HALSの含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、例えば0.6質量部以上であり、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。また、光拡散フィルムにおけるNOR型HALSの含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、例えば8質量部以下であり、5質量部以下であることが好ましく、4.5質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることがさらに好ましい。NOR型HALSの含有量が上記範囲内であると、光拡散フィルムの光安定性や難燃性が向上するとともに、NOR型HALSのブリードアウトを抑えやすい。
<リン酸エステル系光拡散剤とNOR型HALSの含有量比>
光拡散フィルムに含有される、リン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとの含有量の比は、特に限定されないが、相対的にリン酸エステル系光拡散剤を多めに配合することが好ましい。具体的には質量基準で、(リン酸エステル系光拡散剤の含有量)/(NOR型HALSの含有量)とした比が、5/95〜95/5の範囲内であってよく、30/70〜90/10の範囲内であることが好ましく、55/45〜80/20の範囲内であることがより好ましい。リン酸エステル系光拡散剤とNOR型HALSとの含有量の比が上記範囲内であると、光拡散性や色相などの光学特性を損なわずに難燃性が向上する傾向にある。
<無機充填剤>
光拡散フィルムは、上記のポリオレフィン系樹脂、リン酸エステル系光拡散剤、及びNOR型HALSに加えて、無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤は、光拡散フィルム中にポリオレフィン系樹脂と屈折率が異なる界面を増加させることで、少量の配合でも光拡散フィルムの光拡散率を増加させやすい。
無機微細粉末の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、ゼオライト、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素などの微細粉末、中空ガラスビーズ等が挙げられる。これらの中でも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムは、光拡散フィルムに適度な光透過性と光拡散性とを与えやすい。また重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムは、多くの種類の市販品があり、その平均粒子径や粒度分布が所望のものを得やすく、光拡散フィルムの光学特性を設計しやすいために好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機充填剤の平均粒子径は、0.3〜10μmが好ましく、0.4〜5μmがより好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。無機充填剤の平均粒子径が上記下限以上であると、無機充填剤によって可視光を拡散させて、光拡散フィルムの光拡散率を増加させるともに、光透過率を適度に調整しやすい傾向にある。また、無機充填剤の平均粒子径が上記上限以下であると、粒径の大きなものに比べて配合量が同一であればより多数の無機充填剤を光拡散フィルム中に含有せしめることができため、光拡散率が増加する傾向にある。また、粗大粒子の混入により延伸時にフィルムが破断することが抑制される傾向にある。
なお、本明細書において、無機充填剤の平均粒子径とは、空気透過法による比表面積の測定から算出したものである。また、光拡散フィルムの厚み方向の切断面を電子顕微鏡により観察し、観察領域より無作為に抽出した100個の無機充填剤の粒子径を測定し、これに基づいて算出した平均値であってもよい。この場合の無機充填剤の粒子径は、粒子の輪郭上の2点間の距離の最大値(最大径)から決定する。
光拡散フィルム全体で見た場合の無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。無機充填剤の含有量が上記下限以上であると、無機充填剤により光を拡散させて、光拡散フィルムの光拡散率を増加させやすい傾向にある。また、無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、45質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましい。無機充填剤の含有量が上記上限以下であると、光透過率が過度に減少することを防ぎやすい傾向にある。また、延伸時にフィルムが破断することを抑制しやすい。
上述のとおり光拡散フィルムへの無機充填剤の添加は、光拡散フィルムの光拡散性の増加に有利である反面、難燃性付与の観点では不利である。これは、光拡散フィルムが一旦引火すると、無機充填剤はその熱伝導率の高さから周囲のポリオレフィン系樹脂を溶融させ、さらにロウソクの芯のように燃焼を助長させる働きをするためと考えられる。そのため、光拡散フィルムへの無機充填剤の添加量は、求める光学特性と難燃性との兼ね合いから、上述の範囲内で決定することが好ましい。
<その他の添加剤>
光拡散フィルムには、必要に応じて分散剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、滑剤等の公知の添加剤を配合してもよい。また、上記のNOR型HALSに加えて、NR型ヒンダードアミン系光安定剤、又はNH型ヒンダードアミン系光安定剤を配合してもよい。
NR型ヒンダードアミン系光安定剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格の窒素原子に、炭素原子が直接結合した有機基を有するピペリジン構造を、分子中に1又は2以上有する化合物を指す。このとき、有機基としては、上記式(III)中のR31と同様の有機基が挙げられる。NH型ヒンダードアミン系光安定剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格の窒素原子に、水素原子が結合したピペリジン構造を、分子中に1又は2以上有する化合物を指す。これらの添加剤は、光拡散フィルムの総量に対して、0.01〜3質量%の範囲で配合することができる。
分散剤は、例えば、上述したポリオレフィン系樹脂を含む樹脂フィルム中に上記の無機充填剤を高分散させる目的で用いられる。分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸若しくは無水マレイン酸変性ポリプロピレン又はこれらの塩等を例示することができる。
分散剤の含有量は、無機充填剤の含有量に応じて特に限定されないが、光拡散フィルムの総量に対して、0.01〜3質量%の範囲で配合することが好ましい。分散剤の含有量が0.01質量%以上であると、ポリオレフィン系樹脂中に無機充填剤が均一に微分散され易く、所望の光透過率及び光拡散率を得やすい傾向にある。また、分散剤の含有量が3質量%以下であると、余剰な分散剤によるベタツキや光透過性の阻害を防ぎやすい。
[光拡散フィルムの構成]
光拡散フィルムは、単層構造のフィルムであってもよいし、多層構造のフィルムであってもよい。光拡散フィルムを多層構造とする場合は後述する基層、内層、又は外層を有する2〜9層の樹脂フィルム(積層樹脂フィルム)であってもよい。中でも光拡散フィルムは、3〜7層の積層樹脂フィルムが好ましい。光拡散フィルムが単層構造の場合、光拡散フィルムに適度な剛性(コシ)を付与する観点から、光拡散フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸された延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸された延伸フィルムであることがより好ましい。光拡散フィルムが多層構造の場合、これを構成する各層のフィルムは、無延伸、一軸延伸、二軸延伸の各フィルムを任意に組み合わせることができるが、一軸延伸又は二軸延伸の層を少なくとも1層有することが好ましく、二軸延伸の層を少なくとも1層有することがより好ましい。
光拡散フィルムが多層構造の場合、光拡散フィルムはリン酸エステル系光拡散剤とNOR型HALSとを含む層を少なくとも1層有することが好ましく、リン酸エステル系光拡散剤とNOR型HALSとを含む層を少なくとも最外層に有することがより好ましく、全ての層がリン酸エステル系光拡散剤とNOR型HALSとを含むことがさらに好ましい。
以下、本発明の光拡散フィルムの実施形態を、多層構造の場合を含め、図面を参照して説明する。
<光拡散フィルムの層構造>
図1〜図3に、光拡散フィルムの好適な実施態様を示す。
図1に示すように、光拡散フィルム100aは、基層11を備える単層構造を有している。なお、以降において、光拡散フィルムを区別しない場合には、「光拡散フィルム100」として符号を付して説明する場合がある。
図1に示すように、光拡散フィルム100が単層構造(100a)の場合、基層11は、ポリオレフィン系樹脂と、リン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとを含有する樹脂フィルムであり、好ましくはその2軸延伸の延伸フィルムである。基層11は、無機充填剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。光拡散フィルム100の光透過率を適度に調整するとともに、光拡散率を増加させる観点からは、基層11は無機充填剤を含有していることが好ましい。一方、無機充填剤に起因する光拡散フィルム100の燃焼しやすさを避けて、難燃性を向上させる観点からは、基層11は無機充填剤を実質的に含有しないことが好ましい。
図2に示すように、光拡散フィルム100が多層構造(100b)の場合、光拡散フィルム100bは、基層11と、基層11の一方の表面に設けられた外層12aと、基層11のもう一方の表面に設けられた外層12bとを備えている。本例において、光拡散フィルム100bは、外層12a、基層11、及び外層12bをこの順に備える積層構造(3層構造)を有している。なお、以降において、外層を区別しない場合には、「外層12」として符号を付して説明する場合がある。
外層12は、ポリオレフィン系樹脂と、リン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとを含有する樹脂フィルムであり、好ましくはその1軸延伸乃至2軸延伸の延伸フィルムである。同態様において基層11は、必ずしもリン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとを含有する必要は無いが、光拡散フィルム100b全体の光拡散性と難燃性を向上させる観点から、図1に示す単層構造の光拡散フィルム100aと同様に、ポリオレフィン系樹脂と、リン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとを含有する樹脂フィルムであることが好ましく、その2軸延伸の延伸フィルムであることがより好ましい。
図2に示す光拡散フィルム100bの態様において、外層12は、無機充填剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。外層12は、光拡散フィルム100bの光拡散率を増加させる観点からは、無機充填剤をさらに含有することが好ましい。一方、外層12は、無機充填剤に起因する光拡散フィルム100bの燃焼のしやすさを避けて、光拡散フィルム100bの難燃性を向上させる観点からは、無機充填剤を実質的に含有しないことが好ましい。外層12を基層11の表裏両面に設ける場合は、表裏の外層12のそれぞれの組成、構成、厚み等は同一でもよいし、異なっていてもよい。
基層11、外層12がともにリン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとを含有する場合、それぞれの含有量は基層11と外層12で同一であってよく、異なっていてもよいが、相対的に外層12における含有量が多いほうが引火しづらさの観点で好ましい。また基層11、外層12がともに無機充填剤を含有する場合、それぞれの含有量は基層11と外層12で同一であってもよく、異なっていてもよい。
図3に示すように、光拡散フィルム100が多層構造(100c)の場合、光拡散フィルム100cは、基層11と、基層11の一方の表面に設けられた内層13aと、内層13aの基層11とは反対側の表面に設けられた外層12aとを備え、基層11のもう一方の表面に設けられた内層13bと、内層13bの基層11とは反対側の表面に設けられた外層12bとを備えている。本例において、光拡散フィルム100cは、外層12a、内層13a、基層11、内層13b、及び外層12a、をこの順に備える積層構造(5層構造)を有している。なお、以降において、内層を区別しない場合には、「内層13」として符号を付して説明する場合がある。
内層13は、樹脂フィルムからなるものであるが、必ずしもリン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとを含有する必要は無い。しかし光拡散フィルム100c全体の光拡散性と難燃性を向上させる観点から、基層11や外層12と同様に、ポリオレフィン系樹脂と、リン酸エステル系光拡散剤と、NOR型HALSとを含有する樹脂フィルムであることが好ましく、その1軸延伸乃至2軸延伸の延伸フィルムであることがより好ましい。内層13は、無機充填剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。内層13は、光拡散フィルム100cの光透過率を適度に調整するとともに、光拡散率を増加させる観点からは、無機充填剤をさらに含有することが好ましい。内層13を基層11の表裏両面に設ける場合は、表裏の内層13のそれぞれの組成、構成、厚み等は同一でもよいし、異なっていてもよい。
ここで本明細書において、「基層の表面に設けられた」とは、本例のように基層11の表面に外層12a,12b、又は内層13a,13bが直接載置された態様のみならず、基層11の表面と外層12a,12b、又は内層13a,13bとの間に任意の層(例えばプライマー層、接着層、スキン層等)が介在した態様を包含する意味である。また、本例では、基層11の両面に外層12a,12b,又は内層13a,13bをそれぞれ設けた態様を示すが、シート状の基層11の一方の面のみに外層12及び内層13を設けてもよいことは言うまでもない。基層11の両面に外層12a,12b、及び/又は内層13a,13bを設けることで、光拡散フィルム100の取扱性が高められる傾向にある。
また、外層12及び内層13において、ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含むブレンド物を含有する場合、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、45〜95質量部のポリプロピレン系樹脂と、5〜55質量部のポリエチレン系樹脂とを含むことが好ましく、55〜92質量部のポリプロピレン系樹脂と、8〜45質量部のポリエチレン系樹脂とを含むことがより好ましく、65〜90質量部のポリプロピレン系樹脂と、10〜35質量部のポリエチレン系樹脂とを含むことがさらに好ましい。各層において、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との含有割合が上記範囲内であると、光拡散フィルムに適度な剛性と延伸性が付与されるとともに、光拡散フィルムの光透過率や光拡散性が所望の値となる傾向にある。
また、光拡散フィルムが多層構造である場合、光拡散フィルムに適度な光透過率と光拡散率とを付与する観点から、光拡散フィルムは無機充填剤を含有する層を少なくとも1層有することが好ましい。一方、難燃性を向上させる観点からは、無機充填剤を実質的に含有しない層を有していてもよい。なお、本明細書において、無機充填剤を実質的に含有しないとは、当該層に意図して無機充填剤を配合しないことを意味し、より具体的には当該層の無機充填剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0〜3質量部であり、好ましくは0〜1質量部であり、より好ましくは0〜0.5質量部であることを意味する。
[光拡散フィルムの製造方法]
<樹脂組成物の調製、並びに樹脂シートの成形及び延伸>
光拡散フィルムの製造では、まず、ポリオレフィン系樹脂、リン酸エステル系光拡散剤、及びNOR型HALSを含有する樹脂組成物を調製する。具体的には、ポリオレフィン系樹脂、リン酸エステル系光拡散剤、NOR型HALS、及び必要に応じて、無機充填剤や各種添加剤を配合し、これを溶融混練することにより樹脂組成物を調製することができる。このとき、樹脂組成物の各成分の配合割合を上述した好ましい数値範囲内とすることにより、樹脂シートの延伸成形によって所望の性能を具備するポリオレフィン光拡散フィルムが得られ易い傾向にある。なお、光拡散フィルムが多層構造の場合には、各層に応じた各層形成用の樹脂組成物を調製すればよい。次いで、この樹脂組成物をシート状に溶融押出して、ポリオレフィン系樹脂シートを成形することができる。
その後、得られたポリオレフィン系樹脂シートを、必要に応じて少なくとも一方向に延伸する。さらにまた、必要によりアニーリング処理(熱処理)し、続いて耳部をスリットすることにより、光拡散フィルムを得ることができる。
光拡散フィルムの製造には、従来公知の種々の方法が使用できる。例えば、光拡散フィルムが単層のフィルムである場合は、上記原料を含有する樹脂組成物を溶融混練し単一のダイスから押し出して、必要に応じて延伸すればよい。また、内層と外層を有する多層構造の樹脂フィルムである場合は、フィードブロックやマルチマニホールドを使用した多層ダイスを用いる共押出方式や、複数のダイスを使用する押出ラミネーション方式等により両者が積層した多層樹脂フィルムを製造することができる。さらに多層ダイスによる共押出方式と押出ラミネーション方式を組み合わせる方法により光拡散フィルムを製造することもできる。
樹脂フィルムの延伸は、公知の種々の方法によって行うことができる。具体的には、ロール群の周速差を利用した縦延伸方法、テンターオーブンを使用した横延伸方法、上記縦延伸と横延伸とを正順又は逆順に行う逐次二軸延伸方法、圧延方法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸方法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸方法等を挙げることができる。また、インフレーションフィルムの延伸方法であるチューブラー法による同時二軸延伸方法を挙げることができる。
延伸時の温度は、特に限定されず、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の延伸に好適な温度範囲内で実施することができる。具体的には、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の融点より、2〜15℃以上高い温度で行うことが好ましい。このように、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の融点より高い温度で延伸することで、無機充填剤等を核としたボイドが殆ど生じない延伸樹脂フィルムが得られる。この場合、光拡散フィルムは、適度な光透過率及び光拡散率を有するものとなる。または、光拡散フィルムに用いる主要な(質量比で最も多く用いる)ポリオレフィン系樹脂のガラス転移点温度以上であって、主要なポリオレフィン系樹脂の結晶部の融点より1〜70℃低い温度で行ってもよく、融点より1℃低い温度から2℃高い温度の範囲で行ってもよい。
樹脂フィルムの延伸倍率は、特に制限されず、得られる光拡散フィルムの特性等を考慮して、適宜決定すればよい。縦1軸延伸時の延伸倍率は3〜10倍の範囲であることが好ましく、4〜8倍の範囲であることがより好ましく、5〜7倍の範囲であることがさらに好ましい。また、横1軸延伸時の延伸倍率は4〜12倍の範囲であることが好ましく、5〜10倍の範囲であることがより好ましく、6〜9倍の範囲であることがさらに好ましい。また、二軸方向に延伸する場合には、面積延伸倍率(縦倍率と横倍率の積)で、12〜60倍の範囲であることが好ましく、20〜50倍の範囲であることがより好ましく、30〜40倍の範囲であることがさらに好ましい。
以下において、光拡散フィルムの好ましい製造方法について説明する。
光拡散フィルムが、単層のフィルムである場合は、まず、樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、単一のダイスに供給して、シート状に押し出し、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の融点より低い温度、例えば40〜85℃まで冷却することで、無延伸樹脂シートが得られる。次に、この無延伸樹脂シートを、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の融点よりも2〜15℃以上高い延伸温度で、縦方向に3〜10倍延伸する。これにより、縦方向に配向した1軸延伸樹脂フィルムが得られる。続いて、この1軸延伸樹脂フィルムを、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の融点よりも2℃〜15℃以上高い延伸温度で、横方向に4〜12倍延伸する。これにより、2軸延伸樹脂フィルムが得られる。
光拡散フィルムが、多層構造のフィルムである場合は、まず、単層の場合と同様にして、基層形成用の樹脂組成物を溶融混練し、シート状に押し出して、縦方向に延伸することで、1軸延伸樹脂フィルムが得られる。続いて、別の押出機を用いて内層形成用の樹脂組成物と外層形成用の樹脂組成物とを溶融混練し、一台のダイに供給し、次いでシート状に共押し出しして、基層の1軸延伸樹脂フィルムの両面に、内層形成用の樹脂組成物が接するように溶融積層(ラミネート)することで、5層積層フィルムを得る。続いて、この5層積層フィルムを、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の融点よりも2℃〜15℃以上高い延伸温度で、横方向に4〜12倍延伸する。これにより、基層が逐次2軸延伸されて、内層及び外層が1軸延伸された、5層構造の延伸樹脂フィルムが得られる。なお、光拡散フィルムが、基層に無機充填剤を含有し、内層及び外層に無機充填剤を実質的に含有しない多層構造のフィルムである場合にも、上述した各層に無機充填剤を含有する多層構造のフィルムと同様にして、光拡散フィルムを製造することができる。
<熱処理>
延伸後の樹脂フィルムには、熱処理を行うのが好ましい。熱処理の温度は、光拡散フィルムに含有されるポリオレフィン系樹脂の融点より、1〜15℃以上高い温度で行うことが好ましい。熱処理を行うことにより、ポリオレフィン系樹脂分子の非晶部分の結晶化が促進されて延伸方向への熱収縮率が低減し、撮影用ディフューザー等として使用した際の熱による光拡散フィルムの寸法変化が少なくなる。熱処理の方法はロール加熱又は熱オーブンで行うのが一般的であるが、これらを組み合わせてもよい。
<表面処理>
延伸後の樹脂フィルムには、表面処理を行ってもよい。表面処理を行うことにより、樹脂フィルムの二次加工適性を向上させることができる。表面処理は、延伸後のフィルムに対して、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等の酸化処理を行うことができる。また、延伸後のフィルムに対して酸化処理を行った後に、アンカー剤及び帯電防止剤の塗布を行うことができる。
[光拡散フィルムの特性]
<光透過率>
光拡散フィルムにおける光透過率とは、光拡散フィルムの透明性を示すものである。本明細書において、光透過率は、後述する実施例に記載した条件下で測定した値とする。
光拡散フィルムは略透明、乃至半透明なものであり、光透過率は、55%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより好ましい。一方、光拡散フィルムの光透過率は、99%以下であることが好ましく、97%以下であることがより好ましく、95%以下であることがより好ましい。光拡散フィルムを撮影用ディフューザー等として用いる場合に、光源からの光による露出量が少なくなり過ぎないようにする観点からは、光拡散フィルムの光透過率は55%以上であることが好ましい。一方、後述する光拡散フィルムの光拡散率を高めるために、光拡散フィルムの光透過率は99%以下であることが好ましい。光拡散フィルムの光透過率は、無機充填剤の含有量、及び粒子径、並びにリン酸エステル系光拡散剤、及びNOR型HALSの含有量、延伸温度、延伸倍率等を調整することによって制御することができる。
<光拡散率>
光拡散フィルムにおける光拡散率とは、光拡散フィルムの入射光に対する出射光の拡散機能を示すものである。本明細書において、光拡散率は、後述する実施例に記載した条件下で測定した値とする。
光拡散フィルムの光拡散率は、18%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。一方、光拡散フィルムの光拡散率は、40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。光拡散フィルムを撮影用ディフューザー等として用いる場合に、光拡散フィルムの光拡散性能を高める観点からは、光拡散フィルムの光拡散率は18%以上であることが好ましい。一方、光源からの光による露出量が少なくなり過ぎないように、光拡散フィルムの光拡散率は40%以下であることが好ましい。光拡散フィルムの光拡散率は、無機充填剤の含有量、及び粒子径、並びにリン酸エステル系光拡散剤、及びNOR型HALSの含有量、延伸温度、延伸倍率等を調整することによって制御することができる。
<色差ΔE>
光拡散フィルムにおける色差ΔEとは、光拡散フィルムが高熱に曝された際の色相の変化を示すものである。色差ΔEは光拡散フィルムの熱安定性を示し、この値が低い光拡散フィルムは、熱による着色が少ないことを意味する。本明細書において、色差ΔEは、後述する実施例に記載した条件下で測定した値とする。
光拡散フィルムを撮影用ディフューザー等として用いる場合、光源の熱により色相が変化しにくいようにする観点からは、光拡散フィルムの色差ΔEは20以下であることが好ましく、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。一方、NOR型HALS等の含有量を減少させることで、光拡散フィルムの色差ΔEを低く保つことができる傾向にあるが、この場合に引き起こされる難燃性の低下を避ける観点からは、光拡散フィルムの色差ΔEは0.5以上となることが通常である。
<厚み>
光拡散フィルムにおける厚みとは、JIS K7130:1999に準拠して測定した値をいう。光拡散フィルムが複数の層から構成される場合には、複数の層全体として測定した値である。光拡散フィルムが複数の層から構成される場合の各層の厚みは、電子顕微鏡を用いてその断面を観察し、外観より層間の界面を判断して厚み比率を求め、上で測定した厚みと各層の厚み比率の積から算出する。
光拡散フィルムの全体の厚みは、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。また、光拡散フィルム全体の厚みは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。光拡散フィルムの厚みが上記下限以上であると、光拡散フィルムは十分な機械的強度が得られ、光拡散フィルムの延伸成形や使用の際にフィルムの破断を防止しやすい傾向にある。また光拡散フィルムの厚みが上記上限以下であると、光拡散フィルムの光透過率の低減が抑えられ、また光拡散フィルムが重くなりすぎず、取り扱いが容易になる傾向にある。
光拡散フィルムが多層積層構造の場合、基層の厚みは、特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましく、30μm以上であることが特に好ましい。また、基層の厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、70μm以下であることが特に好ましい。
さらに、内層を設ける場合、内層の厚みは、特に限定されないが、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。また、内層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。
また、外層を設ける場合、外層の厚みは、特に限定されないが、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。また、外層の厚みは30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
[作用及び効果]
本実施形態の光拡散フィルムは、ポリオレフィン系樹脂と、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるリン酸エステル系光拡散剤と、分子量1000以下のNOR型HALSとを含有している。これらのリン酸エステル系光拡散剤とNOR型HALSとを難燃剤として併用することによって、これらが低配合量であっても、ポリオレフィン系樹脂に自己消火性を付与することができる。さらには、低配合量であるがゆえに、ポリオレフィン系樹脂にリン酸エステル系光拡散剤とNOR型HALSとを含有したフィルムであっても、適度な光透過率と光拡散率が保たれたものとなっている。またさらに、リン酸エステル系光拡散剤と分子量1000以下のNOR型HALSとを併用することで、難燃性と光学特性とを兼ね備えるとともに、光拡散フィルム自体の着色やベタツキも少なく、また熱による色相の変化が抑えられており、熱安定性が高い光拡散フィルムを提供することができる。
[用途]
光拡散フィルムの用途としては、例えば、静止画又は動画の撮影に用いられる、撮影用ディフューザーが挙げられる。中でも、難燃性を有するとともに熱安定性が高く、透過光への着色が生じにくいことから、光源からの熱を受けやすい、人工光源と被写体との間に配置される用途に好適に用いることができる。また、光拡散フィルムは、液晶ディスプレイのバックライトから発せられる光を拡散して、明るさのムラを低減して均一な面光源を提供するための、ディスプレイ用拡散板としても用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[評価手法]
下記の実施例、比較例より得られた光拡散フィルムについて、下記の評価手法及び評価基準に従って物性評価を行った。
<光透過率>
各実施例、比較例で得た光拡散フィルムを50mm×50mmサイズの正方形に切り出し、光透過率の測定用サンプルとした。分析には直径150mmの積分球を搭載した分光光度計(機器名:U−3310、日立製作所社製)を用いて、分光光度計の光源と積分球の間にサンプルを設置し、光源より600nmの光をサンプル面に対して垂直方向に入射し、サンプルの光入射面とは反対面側に透過した光を積分球で検知して光透過率(%)とした。
同測定において、光路を遮蔽した状態を0%、光路上にサンプルを設置していない状態を100%として、0/100合せを行った。
<光拡散率>
各実施例、比較例で得た光拡散フィルムを50mm×50mmサイズの正方形に切り出し、光拡散率の測定用サンプルとした。分析には分光変角光度計(機器名:GC5000L、日本電色工業社製)を用いて、光路上にサンプルを設置し、光源より600nmのレーザー光をサンプル面に対して垂直方向に入射し、サンプルの光入射面とは反対面側に射出した光を、光路から5°、20°、及び70°の角度に設置した受光器で透過率をそれぞれ測定し、下記式に従って光拡散率(%)を算出した。
光拡散率(%)
={(20°における透過率/cos20°)+(70°における透過率/cos70°)}/{(5°における透過率/cos5°)×2}×100
同測定において、透過光の強度は、受光角を0°に設定して光路を遮蔽した状態を0%、光路上にサンプルを設置していない状態を100%として、0/100合せを行った。
<色差ΔE>
各実施例、比較例で得られた光拡散フィルムを、雰囲気の温度を120℃に設定したオーブン中で7日間加熱した前後において、JIS−Z8730:2009に準拠して、カラーメーター(機器名:タッチパネル式カラーコンピューターSM−T、スガ試験機社製)を用いて光拡散フィルムの加熱前後での明度L値、及び色座標a値、b値をそれぞれ求めて、L表示系における色差ΔEabを算出して、これを色差ΔEとした。
<ベタツキ>
光拡散フィルムにおけるベタツキの主原因は、同フィルムの内部より表面にブリードアウトするリン酸エステル系光拡散剤と考えられた。
そのため先ず、各実施例、比較例で得られた光拡散フィルムを30mm径に切り出し、ベタツキ評価用のサンプルとした。走査型蛍光X線分析装置(機器名:ZSU Primus、理学電機工業社製)を用いて、各光拡散フィルムのサンプルのリン酸エステル系光拡散剤に由来するリンの量(Ps)を3点測定し、その平均値を求めた。
別に、各実施例、比較例で得られた光拡散フィルムをA4サイズに断裁し、これにOPPフィルム(商品名:FOS60、フタムラ化学社製)をA4サイズに断裁したものを1枚ずつ重ねた状態で、これを2枚の平坦なガラス板(A4サイズ)で挟み込み、オーブン中の水平な卓上に静置して、さらに10kgのA4サイズの重りを乗せた。
次いで、これをオーブン中で100℃の条件下で1日間保管して、光拡散フィルムからブリードアウトしたリン酸エステル系光拡散剤を、OPPフィルムへと転写させた。
次いで、OPPフィルムから光拡散フィルムを丁寧に剥がし、OPPフィルムに転写されたリンの量(Po)を、重ねた面を測定面として、上記同様に蛍光X線分析装置を用いて測定した。
それぞれの測定結果から、リン酸エステル系光拡散剤のブリードアウト量を下記式より算出し、OPPフィルムに転写されたリンの量(Po)及びブリードアウト量から、下記の基準で良否を判定した。
ブリードアウト量(%)=(Po/Ps)×100
○(良) :転写されたリンの量(Po)が5kcps未満、
又はブリードアウト量が5%未満
△(可) :転写されたリンの量(Po)が5kcps以上、
且つブリードアウト量が5%以上、10%未満
×(不可):転写されたリンの量(Po)が5kcps以上、
且つブリードアウト量が10%以上
<難燃性>
各実施例、比較例で得られた光拡散フィルムの難燃性を、FMVSS No.302規格に準拠して測定した。
具体的には、各実施例、比較例で得られた光拡散フィルムを、102mm×356mmサイズの矩形に切り取り、片側端(短辺)から38mm及び292mm箇所に短辺に平行にラインを引いた測定用サンプルを作製し、これを温度21℃、相対湿度50%の条件下で24時間静置してコンディショニングした。次いでFMVSS302専用チャンバー(寸法:381mm×203mm×356mm)を用いて、サンプルをU字型のフレームに挟み、バーナーからの炎の高さを38mmとし、バーナーの先端の中心が、サンプルの下面側、短辺幅方向中央、解放端より19mmの場所となるように設置し、15秒間接炎して、ラインを引いた38mmから292mmまでの間の燃焼速度を計測した。炎が燃焼時間計測終了ライン(292mm位置)に達しない場合は、接炎から消火までの時間及び燃焼距離を計測した。計測の結果から、光拡散フィルムの難燃性を下記の基準で評価した。
・合格:燃焼速度が102mm/分以下、又は燃焼時間計測ライン(38mm位置)からの燃焼距離が51mm以内、且つ60秒以内に消火
・不合格:燃焼速度が102mm/分を超え、燃焼時間計測ライン(38mm位置)からの燃焼距離が51mmを超えて延焼する
本発明の様態において、合格品は自己消火し、「燃焼距離が51mm以内、且つ60秒以内に消火」の条件を満たして合格する場合が多かった。
<厚み>
各実施例、比較例で得られた光拡散フィルムの総厚みは、定圧厚さ測定器(機器名:PG−01J、テクロック社製)を用い、JIS K7130:1999に従って求めた。また、光拡散フィルムが多層構造である場合の各層の厚みは、光拡散フィルムを液体窒素にて−60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃を直角に当て切断し断面測定用の試料を作成し、得られた試料は走査型電子顕微鏡を使用して断面観察を行い、組成外観から各層の境界線を判別して光拡散フィルムにおける各層の厚み比率を求め、上記で求めた光拡散フィルムの総厚みと各層の厚み比率とを乗算して求めた。
後述する各実施例、比較例において、下記表1に記載の原料を用いて、下記表2又は表4に記載の配合割合で混合し、溶融混練して樹脂組成物を得て、次いでこれをフィルム状に成形して光拡散フィルムを得た。
Figure 0006860427
[実施例,比較例]
<実施例1>
表1に記載のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6、日本ポリプロ社製)50質量部、エチレン−オクテン共重合体(商品名:エンゲージ8401、ダウ・ケミカル日本社製)50質量部、主骨格にペンタエリスリトールと二つのリン酸とのエステル構造を有する化合物(商品名:FCX−210、帝人社製)0.1質量部、及び分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:アデカスタブ LA−81、アデカ社製)1質量部を、スーパーミキサーで混合し、混合物を230℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、混練物をTダイよりシート状に押し出し、これを冷却装置にて60℃まで冷却して単層の無延伸樹脂シートを得た。
この無延伸樹脂シートを、143℃まで加熱した後、多数のロール群の周速差を利用したロール間延伸法にて樹脂シートの搬送方向(縦方向)に4.2倍の延伸倍率で1軸延伸し、その後60℃にて冷却して1軸延伸された樹脂フィルムを得た。
次いで、この1軸延伸された樹脂フィルムを、テンターオーブンを用いて160℃まで再加熱し、テンター延伸機を用いたクリップ延伸法にて樹脂シートの幅方向(横方向)に8.5倍の延伸倍率で延伸し、クリップで保持したままさらにオーブンで、160℃で2秒間アニーリング処理を行った。その後60℃まで冷却し、耳部をスリットして逐次2軸延伸された単層の、実施例1の光拡散フィルムを得た。同フィルムの搬送速度は、120m/minに制御した。
得られた実施例1の単層の光拡散フィルムの厚みは75μm、光透過率は90%、光拡散率は20%、色差ΔEは8であり、難燃性試験では燃焼距離が51mm以内、且つ60秒以内に消火の条件を満たし合格であった。
<実施例2〜4、比較例1〜6>
実施例1における混合物を、表1に記載の原料を用いて表2に記載の割合に変更した以外は、実施例1と同様の手順により実施例2〜4、比較例1〜6の光拡散フィルムを得た。
得られた単層の光拡散フィルムの光透過率、光拡散率、色差ΔE、ベタツキ(リン酸エステル系光拡散剤のブリードアウト量)、及び難燃性の試験結果を表3にまとめて示す。
Figure 0006860427
Figure 0006860427
<実施例5>
表1に記載の、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6、日本ポリプロ社製)96質量部、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD US070G、日本ポリエチレン社製)4質量部、重質炭酸カルシウム微細粉末(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)5質量部、主骨格にペンタエリスリトールと二つのリン酸とのエステル構造を有する化合物(商品名:FCX−210、帝人社製)1質量部、及び分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:アデカスタブ LA−81、アデカ社製)1質量部を、スーパーミキサーで混合し、混合物を230℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、混練物を押出機にてTダイよりシート状に押し出し、これを冷却装置にて60℃まで冷却して単層の無延伸樹脂シートを得た。
この無延伸樹脂シートを、143℃まで加熱した後、多数のロール群の周速差を利用したロール間延伸法にて樹脂シートの搬送方向(縦方向)に4.2倍の延伸倍率で1軸延伸し、その後60℃にて冷却して、基層となる1軸延伸された樹脂フィルムを得た。
次いで、表1に記載の、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6、日本ポリプロ社製)85質量部、エチレン・1−ブテン共重合体(商品名:ノバテックLL US070G、日本ポリエチレン社製)15質量部、重質炭酸カルシウム微細粉末(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)35質量部、主骨格にペンタエリスリトールと二つのリン酸とのエステル構造を有する化合物(商品名:FCX−210、帝人社製)1質量部、及び分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:アデカスタブ LA−81、アデカ社製)1質量部を、押出機を用いて溶融混練して外層用の樹脂組成物とした。
また、表1に記載の、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6、日本ポリプロ社製)85質量部、エチレン・1−ブテン共重合体(商品名:ノバテックLL US070G、日本ポリエチレン社製)15質量部、重質炭酸カルシウム微細粉末(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)13質量部、主骨格にペンタエリスリトールと二つのリン酸とのエステル構造を有する化合物(商品名:FCX−210、帝人社製)1質量部、及び分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤(商品名:アデカスタブ LA−81、アデカ社製)1質量部を、別の押出機を用いて溶融混練して内層用の樹脂組成物とした。
そして、これらの樹脂組成物を一台の共押出ダイに供給してダイ内で積層後、シート状に押し出し、これを前記1軸延伸された樹脂フィルムの表裏両面上に内層用の樹脂組成物が接するように押出ラミネートして、表面外層/表面内層/基層/裏面内層/裏面外層の積層構造を有する5層積層フィルムを得た。
この積層フィルムを、テンターオーブンを用いて再び160℃まで加熱した後、テンター延伸機を用いたクリップ延伸法にて樹脂シートの幅方向(横方向)に9倍の延伸倍率で延伸し、クリップで保持したままさらにオーブンで160℃まで加熱して2秒間アニーリング処理を行った。その後60℃まで冷却し、耳部をスリットして、基層が逐次2軸延伸され、内層及び外層が一軸延伸された5層構造の、実施例5の光拡散フィルムを得た。光拡散フィルムの搬送速度は、120m/minに制御した。
表4に示すように、得られた実施例5の5層の光拡散フィルムの厚みは75μm(2.5μm/15μm/40μm/15μm/2.5μm)であった。また、実施例5の光拡散フィルムの光透過率は65%、光拡散率は30%、色差ΔEは8であり、ベタツキは1%であり、難燃性試験では燃焼距離が51mm以内、且つ60秒以内に消火の条件を満たし合格であった。
Figure 0006860427
[評価]
表3に示すとおり、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるリン酸エステル系光拡散剤と分子量1000以下のNOR型HALSとを配合した実施例1〜4の光拡散フィルムは、光透過性や光拡散性等の光学特性が所望の範囲内であり、また高温条件下に晒されても色相の変化が少なく、さらには難燃性に優れることから、撮影用ディフューザー等として好適に用い得るものであった。
またその光学特性について、リン酸エステル系光拡散剤を含有しない比較例3の光拡散フィルムは、撮影用ディフューザーとして用いるには光拡散性能が十分ではなかった。また、分子量1000超のポリマー型NOR型HALSを用いた比較例4の光拡散フィルムは、高温条件下で着色しやすいために、撮影用ディフューザーとして用いるには色目の面で問題があった。
また分子量1000以下のNOR型HALSを含有しない比較例1、比較例2、及び比較例4の光拡散フィルム、及びペンタエリスリトールジホスホネート化合物からなるリン酸エステル系光拡散剤を含有しない比較例3及び比較例5の光拡散フィルムは、その難燃性において所望の性能を得ることができなかった。
またリン酸エステル系光拡散剤に、特定の構造の芳香族縮合リン酸エステル化合物を使用した比較例6の光拡散フィルムは、分子量1000以下のNOR型HALSとの併用において、その光学特性やその難燃性において所望の性能が得られたものの、リン酸エステル系光拡散剤が非常にブリードアウトしやすく、光拡散フィルムがベタツキやすく、撮影用ディフューザーとして用いるには取扱い性において問題があると判断された。
100a,100b,100c 光拡散フィルム
11 基層
12a,12b 外層
13a,13b 内層

Claims (7)

  1. ポリオレフィン系樹脂と、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物よりなるリン酸エステル系光拡散剤と、分子量1000以下のNOR型ヒンダードアミン系光安定剤とを含有し、
    前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜25質量部の前記リン酸エステル系光拡散剤と、
    前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1〜5質量部の前記NOR型ヒンダードアミン系光安定剤とを含有する、
    ことを特徴とする光拡散フィルム。
  2. 前記ポリオレフィン系樹脂が、互いに非相溶である少なくとも2種のポリオレフィン系樹脂のブレンド物を含有する、
    請求項に記載の光拡散フィルム。
  3. 前記ブレンド物が、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含有する、
    請求項に記載の光拡散フィルム。
  4. 前記光拡散フィルムが、さらに無機充填剤を含有する、
    請求項1〜の何れか一項に記載の光拡散フィルム。
  5. 前記光拡散フィルムを120℃の雰囲気で7日間加熱した前後での、光拡散フィルムのJIS−Z8730に準拠して測定した色相Lab値から求めた色差ΔEが0.5〜20である、
    請求項1〜の何れか一項に記載の光拡散フィルム。
  6. 請求項1〜の何れか一項に記載の光拡散フィルムを用いた撮影用ディフューザー。
  7. 請求項1〜の何れか一項に記載の光拡散フィルムを用いたディスプレイ用拡散板。
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