以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1及び図2は、本発明が適用される三次元座標測定装置1の外観を示した斜視図及び正面図(第1の実施形態)である。
これらの図に示す三次元座標測定装置1は、設置面(床面)に架台12を介して支持された定盤10を有する。定盤10は花崗岩(granite、御影石)や大理石(marble、石灰岩、結晶質石灰岩)などの石材により矩形状に一体形成され、測定対象物を載置する平坦な上面10Tを有する。上面10Tは、X軸及びY軸に平行に、即ち、Z軸に垂直に配置される。なお、定盤10は石材の定盤に限らない。
定盤10の上面10T側には、定盤10を跨いで門型のYキャリッジ14が設置される。Yキャリッジ14は、定盤10を正面側から見たときの定盤10の右側及び左側(片側)の各々にZ軸方向に沿って延在して立設される第1の支柱部材である右Yキャリッジ16及び第2の支柱部材である左Yキャリッジ18と、右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18の上端部に架け渡されてX軸方向に沿って延在する柱状のXガイド20とを有する。
右Yキャリッジ16の下端部は、定盤10に形成されるY軸方向に沿った後述のYガイド42に移動自在に支持される。また、右Yキャリッジ16の下端部には、Yガイド42に当接する駆動部が設けられており、右Yキャリッジ16はその駆動部の駆動力によってYガイド42に沿って移動する。左Yキャリッジ18の下端部は、定盤10の上面10Tに摺動自在に支持される。
これによって、Yキャリッジ14は、定盤10に対してY軸方向に移動可能に支持され、また、右Yキャリッジ16の下端部の駆動部により、右Yキャリッジ16を駆動側とし、左Yキャリッジ18を従動側としてY軸方向に移動する。
Xガイド20には、Zコラム22がXガイド20に沿って移動自在に支持される。Zコラム22は、Xガイド20に当接する駆動部を内蔵しており、その駆動部の駆動力によってXガイド20に沿ってX軸方向に移動する。
また、Zコラム22の内部には、Z軸に沿って延在する柱状のZキャリッジ24がZ軸方向に移動自在に支持されており(図2参照)、そのZキャリッジ24の下端部側がZコラム22の下端部側から突出する。Zコラム22は、Zキャリッジ24に当接する駆動部を内蔵しており、その駆動部の駆動力によってZキャリッジ24がZ軸方向に移動する。
Zキャリッジ24の下端部には、タッチプローブ等の測定プローブ26が取り付けられる。測定プローブ26は、例えば、先端球を有する棒状のスタイラス28を有し、測定プローブ26は、スタイラス28の先端(先端球)の測定対象物への接触の有無やスタイラス28の先端の測定対象物への接触により生じるスタイラス28の変位量を検出する。
以上のごとく構成された三次元座標測定装置1は、Yキャリッジ14のY軸方向への移動、Zコラム22のX軸方向への移動、及び、Zキャリッジ24のZ軸方向への移動によって測定プローブ26のスタイラス28をX、Y、Z軸方向に移動させ、定盤10の上面10Tに載置された測定対象物の表面に沿わせてスタイラス28の先端(先端球)を移動させる。そして、そのときのYキャリッジ14のY軸方向の位置(移動量)、Zコラム22のX軸方向の位置(移動量)、Zキャリッジ24のZ軸方向の位置(移動量)、及びスタイラス28の位置(変位量)を計測することにより、測定対象物の表面の各位置の三次元座標を測定する。なお、三次元座標の測定に関する処理については周知であるので詳細な説明は省略する。
次に、Yキャリッジ14をY軸方向に移動可能に支持すると共にY軸方向に移動させるY駆動機構について説明する。
まず、Y駆動機構におけるYキャリッジ14の支持手段(Yガイド機構、二つの支柱部材)について説明する。
図3及び図4は、定盤10の右側部を拡大して示した正面図及び右側面図である。
図3に示すように、定盤10は、Z軸に垂直な上面10T及び下面10Bと、X軸に垂直な右側面10R(本発明の第1の側面に相当)を有する。また、定盤10の右側面10Rの近くであって定盤10の上面10T側には、Y軸方向に沿った溝40が形成される。
なお、図1及び図2では、溝40の上部開口に蛇腹カバー等の伸縮自在の被覆部材が設置され、定盤10の前側及び後側の側面に金属カバー等の板状の被覆部材が取り付けられた状態を示しているが、図3及び図4ではそれらの被覆部材を取り外した状態が示されている。
溝40は、互いに対向するX軸に垂直な右側面40R(本発明の第2の側面に相当)及び左側面40L(本発明の第3の側面に相当)と、Z軸に垂直な底面40Bとを有する。
これにより、溝40の右側面40Rと、定盤10の右側面10Rと、それらの間の定盤10の上面10Tと、定盤10の下面10Bとで、Y軸方向に沿って延在するYガイド42が形成される。
なお、定盤10の右側面10Rと、溝40の右側面40R及び左側面40Lは、Y軸方向に沿って形成された面であれば必ずしもX軸に垂直な面でなくてもよく、定盤10の下面10Bと溝40の底面40Bは、必ずしもZ軸に垂直な面でなくてもよい。
また、以下において、溝40の右側面40RをYガイド42の左側面42L、定盤10の右側面10RをYガイド42の右側面42R、それらの間の定盤10の上面10TをYガイド42の上面42T、定盤10の下面10BをYガイド42の下面42Bというものとする。
一方、図5には、各部のカバーを取り外した状態のYキャリッジ14の斜視図が示されており、図4及び図5に示すように、右Yキャリッジ16の下端部には、Y軸方向に幅広の支持部50が設けられる。
また、支持部50は、図3のように正面側からみると二股状に形成される。
なお、図3及び図4では支持部50を覆う被覆部材を取り外した状態が示されている。
支持部50は、主に図3に示すように、Yガイド42の上面42Tに対向し、Z軸に直交する方向(水平方向)に沿って配置される基端部52と、基端部52からZ軸方向に延設されてYガイド42の右側面42Rに対向する側に配置される右側部54と、基端部52からZ軸方向に延設されてYガイド42の左側面42Lに対向する側に配置される左側部56とを有する。
また、右側部54の下端部にはYガイド42の下面42Bに対向する位置までX軸方向に延設された支持板58A、58Aが支持部50の先端部58として設けられる。
支持部50のこれらの基端部52、右側部54、左側部56、及び先端部58の各々には、次に示すように、空気を噴出することでYガイド42に対して摺動可能となる複数の円板状のエアパッドが設けられる。また、左Yキャリッジ18の下端部にも空気を噴出することで定盤10の上面10Tに対して摺動可能となる円板状のエアパッドが設けられる。
図6及び図7は、定盤10の上面10T及び右側面10Rを示した上面図及び右側面図であり、Yキャリッジ14に設けられたエアパッドの定盤10に対する配置が示されている。
これらの図において、Yガイド42の上面42Tに沿って配置された2つのエアパッド62F、62E(本発明の上下支持部材に相当)は、支持部50の基端部52においてY軸方向に沿った2箇所(Y軸に平行な直線上の2箇所)の位置に設けられており、Yガイド42の上面42Tに対向して下向きに配置される。
Yガイド42の右側面42Rに沿って配置された2つのエアパッド64F、64E(本発明の側面支持部材に相当)は、支持部50の右側部54においてY軸方向に沿った2箇所(Y軸に平行な直線上の2箇所)の位置に設けられており、Yガイド42の右側面42Rに対向して左向きに配置される。
Yガイド42の左側面42L(溝40の右側面40R)に沿って配置された2つのエアパッド66F、66E(本発明の側面支持部材に相当)は、支持部50の左側部56においてY軸方向に沿った2箇所(Y軸に平行な直線上の2箇所)の位置に設けられており、Yガイド42の左側面42Lに対向して右向きに配置される。なお、エアパッド64F、64E,66F、66Eは、本発明の第1の支持部材と第2の支持部材と第3の支持部材と第4の支持部材とに相当する。
Yガイド42の下面42Bに沿って配置された2つのエアパッド68F、68E(図3及び図7参照、本発明の上下支持部材に相当)は、支持部50の先端部58においてY軸方向に沿った2箇所(Y軸に平行な直線上の2箇所)の位置に設けられ、Yガイド42の下面に対向して上向きに配置される。なお、エアパッド62F,62E,68F,68Eは、本発明の第5の支持部材と第6の支持部材と第7の支持部材と第8の支持部材とに相当する。
定盤10の左側面の近くの上面に配置されたエアパッド70(本発明の上面支持部材に相当)は、左Yキャリッジ18の下端部に設けられ、定盤10の上面10Tに対向して下向きに配置される。
ここで、支持部50の基端部52、右側部54、左側部56、及び先端部58の各々において、前側(正面側)に設置されるエアパッド62F、64F、66F、68Fは、Y軸方向に関して略同一位置に配置され(即ち、同一のXZ平面に沿った位置に配置され)、後側(背面側)に配置されるエアパッド62E、64E、66E、68Eは、Y軸方向に関して略同一位置に配置される。
支持部50の右側部54に設置されるエアパッド64F、64Eと左側部56に設置されるエアパッド66F、66Eとは、互いに対向する位置(即ち、Z軸方向に関して略同一位置)に配置される。
支持部50の基端部52に設置されるエアパッド62F、62Eと先端部58に設置されるエアパッド68F、68Eとは、互いに対向する位置(即ち、X軸方向に関して略同一位置)に配置される。
左Yキャリッジ18の下端部に設置されるエアパッド70は、そのY軸方向に関する位置が、Yキャリッジ14と共にY軸方向に移動する全ての部材(Yキャリッジ14及びZコラム22)の重心のY軸方向の位置と略一致する位置に配置される。
また、エアパッド62F、62E、70が例えば直径110mmのものであるのに対して、エアパッド64F、64E、66F、66Eは、エアパッド62F、62E、70よりも直径が小さい例えば直径80mmのものが用いられる。更に、エアパッド68F、68Eは、エアパッド64F、64E、66F、66Eよりも直径が小さい例えば直径60mmのものが用いられる。
なお、参考として、定盤10は、X軸方向の幅(横幅)が約800mm〜約1000mm、Y軸方向の幅(奥行き)が約1200mm〜約2700mmのものが用いられ、Yキャリッジ14は、Z軸方向の幅(高さ)として約600mm〜約800mmを有し、支持部50は、Y軸方向の幅(奥行き)として約650mmを有する。
以上のごとく構成されたYキャリッジ14の支持手段によれば、Yキャリッジ14は、右Yキャリッジ16における支持部50のエアパッド62F、62E、64F、64E、66F、66E、68F、68Eを介してYガイド42(定盤10)に支持される。即ち、支持部50とYガイド42との係合によってYキャリッジ14がYガイド42に支持される。また、これと共に、Yキャリッジ14は、左Yキャリッジ18におけるエアパッド70を介して定盤10(上面10T)に支持される。
また、各エアパッド62F、62E、64F、64E、66F、66E、68F、68E、70から空気を噴出することで、右Yキャリッジ16における支持部50の各エアパッド62F、62E、64F、64E、66F、66E、68F、68EがYガイド42に対してY軸方向に摺動可能な状態となり、かつ、左Yキャリッジ18におけるエアパッド70が定盤10の上面10Tに対して摺動可能な状態となる。
したがって、Yキャリッジ14が定盤10に対してY軸方向に移動可能な状態となる。
続いて、Y駆動機構におけるYキャリッジ14の駆動手段について説明する。
図4のように支持部50の右側部54には、駆動部80が設けられる。図6及び図7にも示されているように駆動部80は、支持部50の右側部54に設けられる2つのエアパッド64F、64Eの間の略中間となる位置に配置される。なお、駆動部80を、支持部50の左側部56であって且つ2つのエアパッド66F、66Eの間の略中間となる位置に配置してもよい。
駆動部80は、モータ82と、回転自在のローラ84と、それらを動力伝達可能に連結する減速機構とが支持部材に組み付けられて一体的に構成されており、モータ82を駆動するとローラ84が回転する。
この駆動部80は、図6に示すようにローラ84の回転軸がZ軸と平行に、かつ、ローラ84の外周面が2つのエアパッド64F、64Eの間の略中間となる位置においてYガイド42の右側面42R(定盤10の右側面10R)に当接するようにして支持部50の右側部54に設置される。
したがって、駆動部80のモータ82を駆動してローラ84を回転させることで、Yガイド42に沿って支持部50が移動し、Yキャリッジ14がY軸方向に移動する。
なお、Yキャリッジ14の駆動手段として、駆動部80の他にYガイド42の左側面42Lに当接する駆動部を例えば駆動部80に対峙させて設けてもよいし、駆動部80の代わりにYガイド42の左側面42Lに当接する駆動部のみを設けてもよい。
続いて、Y駆動機構におけるYキャリッジ14の位置検出手段について説明する。
図8は、定盤10の溝40の部分を拡大して示した正面図である。同図に示すように溝40の左側面40Lには、例えば光学式のリニアエンコーダ110を構成する長板状のスケール112であって格子目盛が設けられたスケール112がY軸方向に沿って設置される(図6参照)。
一方、支持部50の左側部56には、リニアエンコーダ110を構成する光センサ114が支持部材を設置され、スケール112に対向した位置に配置される(図6参照)。そして、光センサ114に対向する位置に形成されたスケール112の格子目盛に応じた検出信号が光センサ114から出力される。
このリニアエンコーダ110によれば、Yキャリッジ14がY軸方向に移動すると、Yキャリッジ14と共に光センサ114がY軸方向に移動し、スケール112に対する光センサ114の対向位置が変化する。このとき、光センサ114から出力される検出信号に基づいてYキャリッジ14のY軸方向の位置が検出される。
次に、Zコラム22をX軸方向に移動可能に支持すると共にX軸方向に移動させるX駆動機構について説明する。
まず、X駆動機構におけるZコラム22の支持手段(Xガイド機構)について説明する。
図5には、上述のようにカバーを外した状態のYキャリッジ14が示されており、図9、図10、図11には、Xガイド20から取り外したZコラム22が示されている。これらの図に示されているようにZコラム22は、各種部品が組み付けられる支持部200であってXキャリッジに相当する支持部200を備え、支持部200には、四角柱状のXガイド20を挿通するX軸方向に沿った矩形状のXガイド挿通孔202が設けられる。
支持部200において、Xガイド挿通孔202を画定する前面202F、後面202E、上面202T、及び下面202B(Xガイド挿通孔202の前面202F等という)の各々には、空気を噴出することでXガイド20に対して摺動可能となる円板状のエアパッドが設けられる。
Xガイド挿通孔202の前面202Fには、図10に示すように上下と左右に対称となる4箇所の各々に1つずつの合計4つのエアパッド210、210、210、210が配置され、Xガイド20の前面20F(図5参照)に対向して後向きに配置される。
Xガイド挿通孔202の後面202Eには、図11に示すように上側の2箇所と下側の1箇所の各々に1つずつの合計3つのエアパッド212、212、212が配置され、Xガイド20の後面20E(図5参照)に対向して前向きに配置される。
Xガイド挿通孔202の上面202Tには、図9に示すように左右の2箇所の各々に1つずつの合計2つのエアパッド214、214が配置され、Xガイド20の上面20T(図5参照)に対向して下向きに配置される。
Xガイド挿通孔202の下面202Bには、図10に示すように1つのエアパッド216が配置され、Xガイド20の下面20B(図5参照)に対向して上向きに配置される。
以上のごとく構成されたZコラム22の支持手段によれば、支持部200のXガイド挿通孔202にXガイド20を挿通させると、支持部200は、エアパッド210、212、214、216を介してXガイド20に支持されて、Zコラム22が支持部200を介してXガイド20に支持される。
また、各エアパッド210、212、214、216から空気を噴出することで、支持部200の各エアパッド210、212、214、216がXガイド20に対してX軸方向に摺動可能な状態となる。
したがって、Zコラム22がX軸方向に移動可能な状態となる。
続いて、X駆動機構におけるZコラム22の駆動手段について説明する。
図9〜図11に示すようにXガイド挿通孔202の後面202Eには、上述のY駆動機構における駆動部80と同様の構成を有し、モータ222とローラ224(図11参照)を備えた駆動部220が設けられる。駆動部220は、ローラ224の回転軸がZ軸と平行となるようにXガイド挿通孔202の後面202Eに設置され、かつ、ローラ224の外周面がXガイド挿通孔202の後面202Eの上側に設置された2つのエアパッド212、212の間の略中間となる位置においてXガイド20の後面20E(図5参照)に当接するように設置される。
したがって、駆動部220のモータ222を駆動してローラ224を回転させることで、Xガイド20に沿って支持部200が移動し、Zコラム22がX軸方向に移動する。
なお、Xガイド20及び支持部200には、X駆動機構におけるZコラム22の位置検出手段として、Y駆動機構における上述のリニアエンコーダ110と同様の光学式のリニアエンコーダが設けられ、Xガイド20には、長板状のスケールがX軸方向に沿って設置され、支持部200には、光センサがスケールに対向した位置に配置される。
次に、Zキャリッジ24をZ軸方向に移動可能に支持すると共にZ軸方向に移動させるZ駆動機構について説明する。
まず、Z駆動機構におけるZキャリッジ24の支持手段(Zガイド機構)について説明する。
図12、図13には、図9〜図11に示したZコラム22の支持部200からZキャリッジ24を取り外した状態が示されており、これらの図に示されているように支持部200には、四角柱状のZキャリッジ24を挿通するZ軸方向に沿った矩形状のZキャリッジ挿通孔250がXガイド挿通孔202の前側に設けられる。
支持部200において、Zキャリッジ挿通孔250を画定する前面250F、後面250E、右側面250R、及び左側面250L(Zキャリッジ挿通孔250の前面250F等という)の各々(図13参照)には、空気を噴出することでZキャリッジ24に対して摺動可能となるエアパッドが設けられる。
Zキャリッジ挿通孔250の下側開口付近には、図12に示すようにZキャリッジ挿通孔250の前面250F、後面250E、右側面250R、及び左側面250Lの各々に1つずつの合計4つのエアパッド260、262、264、266が配置され、それらのエアパッド260、262、264、266の各々は、Zキャリッジ24の前面24F、後面24E、右側面24R、及び左側面24L(図11参照)の各々に対向して後向き、前向き、左向き、右向きに配置される。
Zキャリッジ挿通孔250の上側開口付近には、図13に示すようにZキャリッジ挿通孔250の前面250F、後面250E、及び右側面10Rの各々に1つずつの合計3つのエアパッド260、262、264が配置され、それらのエアパッド260、262、264の各々は、Zキャリッジ24の前面24F、後面24E、及び右側面24Rの各々に対向して後向き、前向き、左向きに配置される。
一方、Zキャリッジ挿通孔250の上側開口付近におけるZキャリッジ挿通孔250の左側面250Lには2つのエアパッド266、266が配置され、それらのエアパッド266、266は、Zキャリッジ24の左側面24Lに対向して右向きに配置される。
以上のごとく構成されたZキャリッジ24の支持手段によれば、支持部200のZキャリッジ挿通孔250にZキャリッジ24を挿通させると、支持部200は、エアパッド260、262、264、266を介してZキャリッジ24を支持する。
また、各エアパッド260、262、264、266から空気を噴出することで、支持部200の各エアパッド260、262、264、266がZキャリッジ24に対して摺動可能な状態となり、Zキャリッジ24がZ軸方向に移動可能な状態となる。
続いて、Z駆動機構におけるZキャリッジ24の駆動手段について説明する。
図12及び図13に示すようにZキャリッジ挿通孔250の前面250Fには、上述のY駆動機構における駆動部80と同様の構成を有し、モータ272とローラ274(図13参照)を備えた駆動部270が設けられる。駆動部270は、ローラ274の回転軸がX軸と平行となるようにZキャリッジ挿通孔250の前面250Fに設置され、かつ、ローラ274の外周面がZキャリッジ挿通孔250の前面250Fに設置された2つのエアパッド260、260の間の略中間となる位置においてZキャリッジ24の前面24Fに当接するように設置される。
したがって、駆動部270のモータ272を駆動してローラ274を回転させることで、Zキャリッジ24が支持部200に対してZ軸方向に移動する。
なお、Zキャリッジ24及び支持部200には、Z駆動機構におけるZキャリッジ24の位置検出手段として、Y駆動機構における上述のリニアエンコーダ110と同様の光学式のリニアエンコーダが設けられ、Zキャリッジ24には、長板状のスケールがZ軸方向に沿って設置され、支持部200には、光センサがスケールに対向した位置に配置される。
また、図9〜図13に示されているケーブル保護管278は、ケーブルを内部に挿通させて案内する湾曲可能な案内部材である。Zキャリッジ24の下端部に取り付けられる測定プローブ26のケーブルは、Zコラム22の内部において、Zキャリッジ24の内部及びケーブル保護管278の内部に挿通配置され、他の部材との干渉が防止される。
以上のごとく構成された三次元座標測定装置1において、主に、Yキャリッジ14のZ軸周り方向(ヨーイング方向)及びX軸周り方向(ピッチング方向)の振れを抑止する効果について説明する。
図14は、定盤10のYガイド42がYキャリッジ14を支持する支持点の位置関係を定盤10の上面10T側から示した模式図である。
同図において、定盤10に形成されたYガイド42の左側面42Lに存在する前後2つの支持点P1、P2は、Yキャリッジ14(支持部50)のエアパッド66F、66Eが当接する位置を示し、Yガイド42の右側面42Rに存在する前後2つの支持点P3、P4は、Yキャリッジ14(支持部50)のエアパッド64F、64Eが当接する位置を示し、Yガイド42の右側面42Rに存在する支持点P0は、Yキャリッジ14(支持部50)の駆動部80のローラ84が当接する位置を示す(図6参照)。
また、支持点P1、P2は固定の支持点を示し、支持点P3、P4は補助的な支持点を示す。即ち、固定の支持点P1、P2となるエアパッド66F、66Eは、Yキャリッジ14の支持部50において、それらが摺動するガイド面であるYガイド42の左側面42Lの法線方向に進退移動不能に支持される。一方、補助的な支持点P3、P4となるエアパッド64F、64Eは、Yキャリッジ14の支持部50において、それらが摺動するガイド面であるYガイド42の右側面42Rの法線方向に対して進退移動可能に支持されると共に、右側面42Rに当接する方向に付勢される。
これによれば、駆動部80のローラ84をYガイド42の右側面42Rに押し当てたとき、Yガイド42は、支持点P3、P4を補助的な支持点として、右側面42Rの1つの支持点P0と、左側面42Lの2つの支持点P1、P2で支持した状態で安定する。
したがって、Yキャリッジ14のZ軸周り方向(ヨーイング方向)の角度位置は、支持点P1、P2の位置により一意的に決まり、ヨーイング方向の振れが抑止される。そして、Xガイド20(X軸)のヨーイング方向の振れが抑止されることで、定盤10の上面10T上の測定領域(Yキャリッジ14と干渉しない領域)に配置された測定対象物に関して測定されるX座標値及びY座標値は、Yガイド42(左側面42L)の位置を基準にして高精度に得られる。
図15は、定盤10のYガイド42がYキャリッジ14を支持する支持点の位置関係を定盤10の右側面10R側から示した模式図である。
同図において、定盤10に形成されたYガイド42の上面42Tに存在する前後2つの支持点P5、P6は、Yキャリッジ14(支持部50)のエアパッド62F、62Eが当接する位置を示し、Yガイド42の下面42Bに存在する前後2つの支持点P7、P8は、Yキャリッジ14(支持部50)のエアパッド68F、68Eが当接する位置を示す(図7参照)。
これによれば、Yガイド42は、上面42Tの前後2つの支持点P5、P6だけでなく、下面42Bの前後2つの支持点P7、P8によりYキャリッジ14を支持する。
したがって、Yキャリッジ14のX軸周り方向(ピッチング方向)の振れが支持点P5、P6だけでなく、支持点P7、P8によっても抑止され、Yキャリッジ14を高速でY軸方向に移動させた際であっても、Yキャリッジ14のピッチング方向の振れが抑止される。
特に、Z軸方向に関して支持点P5、P6と支持点P7、P8との間に駆動部80が配置されるため(図7等参照)、駆動部80の駆動力によってYキャリッジ14にピッチング方向の回転力が生じ難くなっていることからも、Yキャリッジ14のピッチング方向の振れが抑止される。
なお、駆動部80のY軸方向の位置は、Yキャリッジ14と共にY軸方向に移動する全ての部材(Yキャリッジ14及びZコラム22)の重心のY軸方向の位置と略一致する位置であることが望ましい。
そして、Zキャリッジ24(Z軸)のピッチング方向の振れが抑止されることで、測定プローブ26により測定される測定領域の測定対象物のY座標値及びZ座標値は、Yガイド42(上面42T)の位置を基準にして高精度に得られる。
また、定盤10に溝40を形成することで定盤10の右側面10Rに沿った一部の領域をYガイド42としたことで、Yガイド42を別部材で構成した場合と比べて、Yガイド42の熱変形が生じ難くなり、Yガイド42の直進性が持続的に維持され易くなる。また、定盤10の左右両側面をYガイドとして利用した場合と比べても、Yガイド42の各面が近接していることから各面の相対的な変化量が小さくYガイド42の直進性が持続的に維持される。
したがって、Yキャリッジ14のY軸方向の位置変化に伴うYキャリッジ14のヨーイング方向及びピッチング方向の振れが小さく、Yキャリッジ14のY軸方向への移動を持続的に安定させることができ、持続的に測定精度を保つことができる。また、Yガイド42を別部材で構成する場合と比較してYガイド42(Yガイド機構)を簡易且つ安価な構成とすることができる。
そのため、定盤10の一部をYガイド42としたことで、Yガイド42を定盤10と別部材で構成した場合と比較して、測定中におけるYガイド42の形状変化が少なく、Yガイド42の湾曲等による測定誤差を演算上での補正により軽減することが容易となる。ただし、定盤10は必ずしも石材定盤でなくてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態に係る三次元座標測定装置1において、主に、Yキャリッジ14のY軸方向の位置(Y座標値)の測定精度、即ち、測定対象物のY座標値の測定精度を向上させるための構成について説明する。なお、第2の実施形態に関する説明では、第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
まず、溝40の上部開口を被覆する被覆部材について説明する。
図16は、定盤10の溝40の部分を拡大して示した斜視図である。
同図に示すように溝40の上部開口の右縁部と左縁部には、右レール130Rと左レール130Lが定盤10に固定されて配置される。
右レール130Rと左レール130Lとはいずれも溝40の正面側の端(前端)から背面側の端(後端)まで延在し、右レール130Rは、溝40の右側面40R(Yガイド42の左側面42L)に沿って、左レール130Lは、溝40の左側面40Lに沿って設けられる(図6参照)。
また、右レール130Rと左レール130Lとは、左右対称の形状を有しており、各々には、横向きの開口であって互いに向き合う方向に開口を有するガイド溝132R、132Lが設けられる。
そして、溝40の上部開口には、右レール130Rのガイド溝132Rと左レール130Lのガイド溝132Lに左右両側の端縁部が嵌入して支持された伸縮自在の蛇腹カバー134が設置される。
蛇腹カバー134は、右Yキャリッジ16における支持部50の左側部56を挟んで前側の蛇腹カバー134Fと後側の蛇腹カバー134E(図1参照)とに分離して設置されており、前側に設置される蛇腹カバー134Fは、前端が定盤10の前側面に不図示の固定部材(定盤10の前側面を被覆する被覆部材等)を介して固定され、後端が支持部50の左側部56の前面に固定される。後側に設置される蛇腹カバー134Eは、前端が支持部50の左側部56の後面に固定され、後端が定盤10の後側面に不図示の固定部材(定盤10の後側面を被覆する被覆部材等)を介して定盤10に固定される。
これによれば、溝40の上部開口が蛇腹カバー134により被覆される。そして、Yキャリッジ14(支持部50)のY軸方向への移動に伴って蛇腹カバー134がY軸方向に伸縮し、Yキャリッジ14が前側に移動したときには、前側の蛇腹カバー134Fが収縮し、後側の蛇腹カバー134Eが伸張する。Yキャリッジ14が後側に移動したときには、前側の蛇腹カバー134Fが伸張し、後側の蛇腹カバー134Eが収縮する。したがって、Yキャリッジ14のY軸方向の位置にかかわらず、常に溝40の上部開口が蛇腹カバー134により被覆される。
これによって、溝40の内部に設置されたスケール112に外気が直接あたることが防止され、また、溝40の内部の温度変化も抑止することができ、外気の温度変化によってスケール112が伸縮することが防止される。
また、溝40の内部にゴミや埃等が入り込むことが防止され、スケール112にゴミ等が付着して、格子目盛の読み取りエラーによる測定誤差が発生するという事態や、溝40の内部に配置されたエアパッド66F、66Eにゴミ等が付着してYキャリッジ14のY軸方向への移動が不安定になるという事態等が未然に防止される。
次に、以上のごとく構成された三次元座標測定装置1において、主に、Yキャリッジ14のY軸方向の位置(Y座標値)の測定精度、即ち、測定対象物のY座標値の測定精度の向上を図る効果について説明する。
図17は、定盤10のYガイド42がYキャリッジ14を支持する支持点と、リニアエンコーダ110におけるスケール112と、測定対象物が配置される測定領域との位置関係を定盤10の上面10T側から示した模式図である。
同図において、定盤10に形成されたYガイド42の左側面42Lに存在する前後2つの支持点P1、P2は、Yキャリッジ14(支持部50)のエアパッド66F、66Eが当接する位置を示し、Yガイド42の右側面42Rに存在する前後2つの支持点P3、P4は、Yキャリッジ14(支持部50)のエアパッド64F、64Eが当接する位置を示し、Yガイド42の右側面42Rに存在する支持点P0(駆動点)は、Yキャリッジ14(支持部50)の駆動部80のローラ84が当接する位置を示す(図6参照)。
また、支持点P1、P2は固定の支持点を示し、支持点P3、P4は補助的な支持点を示す。即ち、固定の支持点P1、P2となるエアパッド66F、66Eは、Yキャリッジ14の支持部50において、それらが摺動するガイド面であるYガイド42の左側面42Lの法線方向に進退移動不能に支持される。一方、補助的な支持点P3、P4となるエアパッド64F、64Eは、Yキャリッジ14の支持部50において、それらが摺動するガイド面であるYガイド42の右側面42Rの法線方向に対して進退移動可能に支持されると共に、右側面42Rに当接する方向に付勢される。
同図に示すように、溝40の左側面40Lに設置されるスケール112は、測定領域と、支持点P0〜P4が設けられるYガイド42との間に配置される。即ち、スケール112は、Yキャリッジ14(右Yキャリッジ16)のエアパッド64F、64E、66F、66E、及び駆動部80よりも測定領域側に配置される。
したがって、測定領域とスケール112との間にYキャリッジ14のZ軸方向に沿った支柱部材である右Yキャリッジ16が介在せず、測定領域からスケール112までの距離が短い。
そのため、Yキャリッジ14のヨーイング方向(Z軸周り方向)の振れなどによってYキャリッジ14のXガイド20の方向がX軸方向からずれた場合であっても、測定領域における測定プローブ26のスタイラス28が実際に配置されている位置のY座標値と、スケール112(リニアエンコーダ110)により実測されるYキャリッジ14のY座標値から得られるスタイラス28のY座標値との差が小さくなる。
したがって、Yキャリッジ14にヨーイング方向の振れ等が生じた場合であっても、Yキャリッジ14のY座標値の測定精度、即ち、測定対象物のY座標値の測定精度の向上が図られる。
なお、駆動部80のローラ84をYガイド42の右側面42Rに押し当てたとき、Yガイド42は、支持点P3、P4を補助的な支持点として、右側面42Rの1つの支持点P0と、左側面42Lの2つの支持点P1、P2で支持した状態で安定する。これによって、Yキャリッジ14のヨーイング方向の振れが生じ難い構成となっている。
また、スケール112は、定盤10に設置されるため、定盤10とは別体のYガイド等にスケール112を設置する場合と比較して、Yガイドの熱変形の影響や定盤とYガイドとの締結部の不安定さによる測定精度の低下が生じない。そのため、持続的に高い測定精度を保つことができる。
更に、定盤10の周縁部(右側面10R、左側面10L等)にスケール112を設けるのではなく、定盤10の内側に配置していることから外気の温度変化の影響が少なく、スケール112の伸縮による精度低下が抑止される。特に、上述のように溝40の上部開口に蛇腹カバー134を設置して、溝40の内部を外気から遮蔽しているため、スケール112に外気が直接あたることが防止され、また、溝40の内部の温度変化も抑止されている。したがって、外気の温度変化によるスケール112の伸縮が確実に抑止され、スケール112として、温度変化が生じても伸縮しない高価な材質のものを使用する必要がなく、安価なものを用いることができる。
また、上記実施の形態では、スケール112を溝40の左側面40Lに設置したが、左側面40L以外の溝40の内面(溝40の右側面40R、底面40Bなど)にY軸方向に沿って設置することで上述と同様の効果が得られる。
また、上記実施の形態では、溝40の上部開口を被覆する被覆部材として蛇腹カバー134を用いたが、蛇腹カバー以外の種類の被覆部材を用いてもよい。たとえば、伸縮性のある材質の被覆部材で、溝40に嵌入するYキャリッジ14の下端部分(支持部50の左側部56)の前側と後側の各々の溝40の上部開口を覆うこともできる。また、溝40の上部開口全体を一体形成された被覆部材で被覆すると共に、その被覆部材にYキャリッジ14の下端部分(支持部50の左側部56)が溝40の外部から内部に挿通するための切込み等の挿通路であってYキャリッジ14の下端部分が挿通するとき以外は閉塞する挿通路を溝40(Y軸方向)に沿って形成したものであってもよい。更に、溝40の上部開口を被覆する被覆部材を設けない形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、Yキャリッジ14のY座標値を測定するYキャリッジ14の位置検出手段や、Zコラム22の位置検出手段、Zキャリッジ24の位置検出手段として、光学式のリニアエンコーダ及びスケールを用いた形態を示したが、光学式に限らず、磁気式等の他の種類のリニアエンコーダ及びスケールを用いることができる。
次に、本発明の第3の実施形態に係る三次元座標測定装置1において、主に、熱による定盤の変形を抑止するための構成について説明する。なお、第3の実施形態に関する説明では、第1又は第2の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る三次元座標測定装置1では、第2の実施形態の構成に加えて、定盤10の前側面10F及び後側面10Eに被覆部材が設けられる。図18、図19及び図20に示されているように、定盤10の前側面10Fと後側面10Eの各々には、それらの面の略全体を被覆する被覆部材として板状の断熱部材150、152が固着される。
これにより、定盤10の前側面10F及び後側面10Eから定盤10の内部又は外気へと出入りする熱量が低減するため、定盤10の周囲の外気の温度(周囲温度)が変化しても、定盤10の内部の温度変化が生じ難くなり、定盤10の変形が抑止される。また、後述のように定盤10の内部に温度変化が生じたとしてもY軸方向に対する温度勾配の発生が抑止される。したがって、Yキャリッジ14の直進度の低下が抑止される。
本実施形態では、定盤10の前側面10F及び後側面10Eが断熱部材150、152で被覆されるため、定盤10の前側面10F及び後側面10Eが外気と熱的に遮断される。したがって、定盤10の前側面10F及び後側面10Eから定盤10の内部又は外気へと出入りする熱量が低減される。
ここで、定盤10として、溝40が形成されず、かつ、断熱部材150、152が設けられていない定盤を仮定して、周囲温度の変化に対するその定盤10の変形の様子について説明する。
図21は、定盤10の周囲温度が低下するときに定盤10が収縮する様子を示す。周囲温度が低下する場合には、定盤10はその内部に先立って周辺部から温度が低下する。そのため、周囲温度が低下した後から定盤10の内部が一様な温度に安定するまでの間、定盤10の中心部が周辺部よりも高い温度分布となる。この間、定盤10のY軸方向に沿う右側面10R及び左側面10Lと、X軸方向に沿う前側面10F及び後側面10Eは、その中間部が端部よりも外側に膨らんだ状態となる。
逆に、図22は、定盤10の周囲温度が上昇するときに定盤10が膨張する様子を示す。周囲温度が上昇する場合には、定盤10はその内部に先立って周辺部から温度が上昇する。そのため、周囲温度が上昇した後から定盤10の内部が一様な温度に安定するまでの間、定盤10の中心部が周辺部よりも低い温度分布となる。この間、定盤10のY軸方向に沿う右側面10R及び左側面10Lと、X軸方向に沿う前側面10F及び後側面10Eは、その中間部が端部よりも内側にへこんだ状態となる。
このような定盤10の変形により、Y軸方向に沿う右側面10R及び左側面10Lの真直度の低下を招く。そして、右側面10Rを基準にしてYキャリッジ14をY軸方向に移動させると、Yキャリッジ14にヨーイング方向(Z軸周り方向)の振れが生じ、Yキャリッジ14のXガイド20の方向がX軸方向からずれる。そのため、Yキャリッジ14のY座標値の測定精度の低下を招く。
これに対して本実施の形態の定盤10は、前側面10F及び後側面10Eが断熱部材150、152で被覆されるため、前側面10F及び後側面10Eから定盤10の内部又は外気へと出入りする熱量が低減する。そのため、周囲温度の低下、又は、上昇によって、定盤10の内部に温度変化が生じ難くなると共に、温度変化が生じたとしてもY軸方向に対する温度勾配の発生が抑止される。
したがって、周囲温度の変化にかかわらず定盤10のYガイド42の真直度、即ち、Yガイド42の左側面42L、右側面42R、上面42T、及び下面42Bの真直度の低下が抑止される。
また、本実施の形態の定盤10は、測定対象物が載置されて測定が行われる測定領域と、Yキャリッジ14をY軸方向にガイドするYガイド42の領域(ガイド領域)とが溝40によってX軸方向に不連続となっている。そのため、測定領域とガイド領域との間での熱伝導が抑止されており、ガイド領域(Yガイド42)の近傍で発生する熱、即ち、Y駆動機構により発生する熱であって、例えば、Y駆動機構の駆動部80のモータ等で発生した熱や、Yガイド42とエアパッド62F、62E、64F、64E、66F、66E68F、68Eの間の摩擦熱等がガイド領域を介して測定領域に流れ込むことが抑止される。
したがって、ガイド領域の近傍で発生した熱により定盤10の測定領域に温度変化が生じることが抑止され、定盤10の測定領域の変形が抑止される。そして、その熱により定盤10のガイド領域に温度変化が生じ、温度勾配が生じたとしてもガイド領域の体積が小さいことから、ガイド領域の変形量は小さく、Yガイド42の真直度への影響は殆ど生じないものとなっている。
以上のことから、熱による定盤10の変形が抑止され、Yガイド42の真直度の低下が抑止されるため、Yキャリッジ14のY軸方向への移動が精度良く行われる。したがって、熱の影響を受けない高精度な測定が可能となる。
なお、定盤10の右側面10Rに沿って、Yガイド42の領域の全体、又は、Yガイド42と溝40の全体を覆うカバーを設け、定盤10のガイド領域が周囲温度の変化の影響を受けないようにしてYガイド42の真直度を維持するようにしてもよい。また、そのカバー内の温度がY駆動機構等から発生する熱により上昇した場合等においてカバー内の空気を外部に排出してカバー内の温度を一定に保持する排気手段を設けてもよい。
また、上記実施の形態では、定盤10の前側面10Fと後側面10Eに断熱部材150、152を設けたが、定盤10の左側面10Lにも断熱部材を設けてもよい。
以上、上記実施の形態の三次元座標測定装置1は、左右を反転した構成であってもよく、溝40及びYガイド42は、定盤10の右側面10Rに沿った位置ではなく、定盤10の左側面に沿った位置に形成してもよい。
また、上記実施の形態では、Yガイド42等の各面に摺動可能に当接する支持部材としてエアパッド(エアベアリング)を用いた場合を示したが、エアパッド以外の種類の支持部材を用いてもよい。また、Yガイド42等の各面に摺動可能に当接する支持部材の配置や駆動部80の配置も適宜変更することが可能である。溝40の内部に配置される支持部材(エアパッド66F、66E)は、溝40の右側面40R以外の溝40の内面に摺動可能に配置してもよい。
以上の三次元座標測定装置1の作用効果について以下、補足的に説明する。
上記実施の形態の三次元座標測定装置1において、駆動部80のローラ84の軸が定盤10の上面10Tに対して垂直方向に配置される。したがって、ローラ84が定盤10の垂直面で接触するのでゴミをかむことがなく、また定盤10の側面を基準にして正確に測定することができる。
また、ローラ84は、定盤10の側面(右側面10R)に沿って駆動する。したがって、微小に定盤10が変形しても定盤10を基準にして測定することができる。もし、定盤10と違う別レールをローラ84が沿って移動すると、別レールの熱膨張など他の要因で定盤10の変形と同期しない。
また、エアパッド64F、64E、66F、66Eも定盤10の側面に沿って垂直方向に配置される。したがって、上記と同様に定盤10を基準にして位置が設定される。また、Yキャリッジ14の移動時に進行方向に対して左右に振れるヨーイング誤差を低減することができる。
また、垂直方向に配置した駆動部80のローラ84が同様に垂直方向に配置したエアパッド66F、66Eで挟むように配置される。したがって、急な駆動でも前後をエアパッドで挟むことで姿勢を崩すことなくヨーイング誤差及び振動を低減することができる。
また、Yキャリッジ14における支持点P1と支持点P2との距離(間隔)が、それらの支持点P1、P2と駆動点P0との距離(間隔)に対して十分に大きい。したがって、Yキャリッジ14の振動を低減することができ、また、移動方向に対して移動方向が左右に振れるヨーイング誤差を低減することができる。
また、定盤10の溝40側面に垂直な配置でエアパッド66F、66Eが配置される。したがって、定盤10に溝40を形成し、エアパッド66F、66Eによる支持点P1、P2を定盤10の溝40の側面とすることで、定盤10の熱膨張などの変形にも追従し、定盤10を基準にして測定することができる。
また、エアパッド64F、64Eによる支持点P3、P4に対向するエアパッド66F、66Eが定盤10の溝40の側面に支持点P1、P2として存在し、それらによってYガイド42に支持される。したがって、定盤10の側面を基準とすると共に、Yキャリッジ14が従動側(左Yキャリッジ18側)に対して駆動側(駆動部80が配置される右Yキャリッジ16側)だけで支持される。そのため、従動側の摺動抵抗は無視できる程度となり、ヨーイング誤差が大幅に低減される。
また、Yキャリッジ14の従動側はZ軸方向のエアパッド70のみが配置され、Y軸方向を抑制するエアパッドがない。したがって、従動側に余計な抵抗を作ることなく、Y軸方向の移動は駆動側に倣う形になる。その結果、振動を低減し、ヨーイングを低減することができる。
また、Xガイド20及び左Yキャリッジ18の従動側のZ軸方向のエアパッド70のY軸方向の位置は、左Yキャリッジ18の駆動側のエアパッド66F、66E(支持点P1、P2)又はエアパッド64F、64E(支持点P3、P4)の間に存在する。したがって、急な加減速においても支持点P1、P2(又は支持点P3、P4)の幅でXガイド20及び測定部のモーメントを受けるだけで、摺動抵抗はほとんどない。その結果、振動やヨーイング誤差は極めて小さくなる。
次に、本実施形態の三次元座標測定装置1と比較例1〜3の三次元座標測定装置とを比較して、本実施形態の三次元座標測定装置1の作用効果についてより詳しく説明する。なお、本発明は以下の作用効果の説明に限定されるものではない。
図23は、特開平5−312556号公報に開示されている比較例1の三次元座標測定装置300の外観を示した正面図(正面概略図)である。また、図24は、図23中のXXIV−XXIV線に沿う断面図(断面概略図)である。なお、比較例1の三次元座標測定装置300において、本実施形態の三次元座標測定装置1と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
図23及び図24に示すように、比較例1の三次元座標測定装置300において、駆動部301により直接駆動される側(以下、駆動側と略す)の右Yキャリッジ16を支持する支持部50は、エアパッド302R及びエアパッド302Tを介して定盤10に支持される。エアパッド302Rは定盤10の右側面に配置され、エアパッド302Tは定盤10の上面10Tの右端側に配置される。また、エアパッド302Tは、Y方向に沿った2箇所の位置に設けられている(図24参照)。
一方、比較例1の三次元座標測定装置300において、駆動側の右Yキャリッジ16に追従してY方向に移動する従動側(以下、従動側と略す)の左Yキャリッジ18は、エアパッド303Tとエアパッド303Lとを介して定盤10の上面10Tに摺動自在に支持される。エアパッド303Tは定盤10の上面10Tに配置される。また、左Yキャリッジ18の下端部には定盤10の左側面に対向する支持部18aを有しており、この支持部18によりエアパッド303Tが定盤10の左側面に配置される。
駆動部301は、例えば本実施形態の駆動部80と基本的に同じ構成であり、エアパッド302Rの近傍に設けられている。なお、図24中の二点鎖線で表した矩形枠は駆動部301の位置を示すものである。
比較例1の三次元座標測定装置300では、定盤10の図23中の両側面(両側の垂直面)にエアパット302Rとエアパッド303Lとを配置している。この場合、Yキャリッジ14をY方向に前後移動させる上で一見安定するとも思われるが、Yキャリッジ14のY方向の前後移動時にヨーイング誤差が大きくなる。
すなわち、定盤10の両側面にエアパット302Rとエアパッド303Lとを配置した場合、駆動側の右Yキャリッジ16と従動側の左Yキャリッジ18とにおいて、主たる駆動動作を制御する側と、その動作に追従する側との区分けがはっきりせず、双方とも同じような摺動抵抗を持つ。その結果、Yキャリッジ14をY方向に移動させた場合に、右Yキャリッジ16と左Yキャリッジ18とのY方向の位置関係が一定とならず、例えばZ軸周りに揺動することで、ヨーイング誤差が大きくなる。このため、本実施形態のように、駆動側の右Yキャリッジ16はYガイド42(図3参照)に沿って移動させ、且つ従動側の左Yキャリッジ18は摺動抵抗を極力小さくした方が、駆動側の右Yキャリッジ16に追従して左Yキャリッジ18が移動するため、前述のZ軸周りの揺動は発生しない。
また、比較例1の三次元座標測定装置300では、従動側のエアパッド303Lの近傍には駆動部301は配置されておらず、さらに、従動側のエアパッド303Lは、駆動側のエアパッド302Rに対してYキャリッジ14を挟んで反対側に位置しており、エアパッド302Rと共に定盤10の両側面を押さえ付けている。この場合、従動側のエアパッド303Lは定盤10の反対側であって駆動部301から離れた場所に位置するので、エアパッド303Lと定盤10の左側面との摺動により、駆動部301を支点とする大きな回転モーメントが発生する。
また、エアパット302R及びエアパッド303Lにより定盤10の両側面を挟むように両サイドから押した状態で、エアパット302R及びエアパッド303Lを定盤10の押圧方向に対して垂直方向(Y方向)に移動させる場合、この移動動作時の摺動抵抗のバランスが微小に崩れることに伴ってヨーイング誤差は顕著に悪化する。
このようなヨーイング誤差を低減する方法として、例えば特開平7−218247号公報には、Yキャリッジ14をY方向に大きな加速度で移動させた場合であってもYキャリッジ14の捻じれ及び曲がりを防止可能な特殊な構造の駆動部を設けることが開示されている。しかし、この特殊な構造の駆動部を採用した場合、三次元座標測定装置300が大型化し、且つ駆動部の構造が複雑化するという問題がある。従って、比較例1の三次元座標測定装置300では、Yキャリッジ14の移動時にヨーイング誤差が発生するという問題がある。
さらに比較例1の三次元座標測定装置300では、定盤10の上面10Tの右端側にエアパッド302TをY方向に沿って2個配置しているものの、既述の図7に示した本実施形態の三次元座標測定装置1とは異なり、定盤10の下面側にはエアパッドが配置されていない。すなわち、比較例1の三次元座標測定装置300には、定盤10又はこの定盤10に設けられたYガイド(図示せず)の下面に対向するエアパッドは設けられていないため、駆動側の右Yキャリッジ16の上下方向(Z軸方向)の位置を決定する部分は定盤10の上面だけとなる。このため、比較例1の三次元座標測定装置300では、ヨーイング誤差以外にピッチング誤差も問題となる。
ピッチング誤差を低減するには、右Yキャリッジ16をY方向に駆動する駆動部301と、右Yキャリッジ16を支持するエアパッドとの位置関係が重要になる。例えば比較例1の三次元座標測定装置300では、駆動部301を定盤10の上面10Tよりも下側に設けているので、定盤10の上面10Tを支点として右Yキャリッジ16は瞬間的にX軸周りに傾く(揺動する)ことになる。このため、比較例1の三次元座標測定装置300のように、単に定盤10上だけで駆動側の右Yキャリッジ16を支持している場合、その支持点は上下方向で一点だけになり、駆動部301による駆動時に定盤10上の支持点を支点として回転モーメントが働く。その結果、右Yキャリッジ16がX軸周りに揺動してピッチング誤差が顕著になる。
また、Yキャリッジ14(右Yキャリッジ16)を単に定盤10上だけで支持する場合、Yキャリッジ14を駆動する際のピッチング誤差は、ヨーイング誤差にも影響する。すなわち、ピッチング誤差が発生する場合は、Y方向の前後のエアパッド302Tの一方が定盤10の上面10Tから離れ、他方が上面10Tに近づく形態になる。その際、右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18は、非対称構造で駆動側の右Yキャリッジ16の摺動抵抗が従動側の左Yキャリッジ18よりも大きい方がよいが、そうした非対称性があるがゆえに、ピッチング誤差による変化によって摺動抵抗のバランスが左右でとれなくなる。このため、さらにYキャリッジ14は大きく捻られるように変形する。その結果、ヨーイング誤差の悪化につながるおそれがある。
さらに、比較例1の三次元座標測定装置300のように、定盤10の上面側にエアパッド302Tを配置するが、下面側にエアパッドを配置しない場合、Yキャリッジ14の荷重は、駆動側の右Yキャリッジ16と従動側の左Yキャリッジ18との双方に略均等に等分される。従動側にYキャリッジ14の半分の重量がかかれば、それだけ従動側の左Yキャリッジ18の摺動抵抗が大きくなる。その結果、ヨーイング誤差が大きくなる。
ピッチング誤差を低減するためには、本実施形態の三次元座標測定装置1のように、定盤10の上下面をエアパッド62E,62F,68E,68F(図7参照)で挟み込み、その上下面の間に駆動部80(図7参照)を設ける必要がある。その結果、Yキャリッジ14(右Yキャリッジ16)をY方向に移動した場合に、定盤10の上下面の双方が右Yキャリッジ16の支持点となり、さらにこれら2つの支持点に挟まれた位置に駆動部80が位置するため、Yキャリッジ14の加速時及び減速時でもピッチング誤差が発生し難くなる。なお、加速時及び減速時のピッチング誤差を抑えるためには、駆動部80は、Yキャリッジ14(右Yキャリッジ16)のY方向の重心位置、例えばエアパッド62Eとエアパッド62Fとの中心位置にあることが好ましい。
なお、比較例1の三次元座標測定装置300では、定盤10の下面にエアパッドが設けられておらず、右Yキャリッジ16の支持点が上下方向で1点だけとなるので、X軸周りのピッチング誤差だけでなく、右Yキャリッジ16のY軸周りの揺動、すなわち、ローリング誤差も発生するおそれがある。このようなローリング誤差が発生した場合にも、ピッチング誤差が発生した場合と同様に摺動抵抗のバランスが左右でとれなくなるので、ヨーイング誤差の悪化につながるおそれがある。
これに対して、本実施形態の三次元座標測定装置1の右Yキャリッジ16では、定盤10の上面側のみならず下面側からもエアパッド62E,62F,68E,68F(図7参照)で押さえて右Yキャリッジ16を上下で拘束して支持する。このため、駆動側の右Yキャリッジ16の摺動抵抗は大きくなるが、従動側の左Yキャリッジ18の摺動抵抗はその分比較的小さく抑えることができる。このとき、駆動側の右Yキャリッジ16において定盤10を上下方向で挟むことによって、Yキャリッジ14のY方向の前後の倒れ(揺動)は補正できると共に、Yキャリッジ14にかかる重量を駆動側部分でほとんど支持することが可能となる。
また、本実施形態の三次元座標測定装置1の従動側の左Yキャリッジ18は、駆動側の右Yキャリッジ16を中心としたローリング誤差をなくすために単純に定盤10の上面10Tを基準に支持する役割になる。このため、駆動側の右Yキャリッジ16は、Yキャリッジ14を支えるべく定盤10に対してローリングするが、従動側の左Yキャリッジ18は、そのローリング誤差を緩和する程度に定盤10の上面10Tのみで軽く支えておく程度でよい。その結果、従動側の左Yキャリッジ18では摺動抵抗が発生することなく、結果として駆動側の右Yキャリッジ16の摺動抵抗に律速される形になり、ヨーイング誤差を小さく抑えることができる。
図25は、特開昭64−035310号公報あるいは特開昭62−235502号公報に開示されている比較例2の三次元座標測定装置400の外観を示した正面図(正面概略図)である。なお、比較例2の三次元座標測定装置400において、本実施形態の三次元座標測定装置1と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
図25に示すように、比較例2の三次元座標測定装置400において、駆動側(駆動部の図示は省略)の右Yキャリッジ16を支持する支持部50は、エアパッド402Rとエアパッド402Tとエアパッド402Lとエアパッド402Bとを介してYガイド42(定盤10)に支持される。エアパッド402Rは定盤10のYガイド42の右側面に配置され、エアパッド402TはYガイド42の上面側に配置され、エアパッド402LはYガイド42の左側面に配置され、エアパッド402BはYガイド42の下面側に配置される。
また、比較例2の三次元座標測定装置400は、駆動側の右Yキャリッジ16に追従してY方向に移動する従動側の左Yキャリッジ18L及びその支持部50Lを有する。ここで、従動側の左Yキャリッジ18L及び支持部50Lと、駆動側の右Yキャリッジ16及び支持部50とは左右対称な形状を有している。
定盤10の上面10Tの左側端側には、溝40A及びYガイド42Aが形成されている。溝40A及びYガイド42Aと、溝40及びYガイド42とは左右対称な形状を有している。そして、前述の支持部50Lは、Y方向に沿ってYガイド42Aに移動自在に支持される。
従動側の支持部50Lは、エアパッド403Tとエアパッド403Bとを介してYガイド42A(定盤10)に支持される。エアパッド403TはYガイド42Aの上面側に配置され、エアパッド403BはYガイド42Aの下面側に配置される。なお、比較例2の三次元座標測定装置400は、Yガイド42Aのさらに左側面側にエアパッドを配置した構成もとり得る。
従動側の左Yキャリッジ18Lにおいて、駆動側の右Yキャリッジ16と同様に、Yガイド42Aの上下面にエアパッド403Tとエアパッド403Bとを配置した場合、駆動側の右Yキャリッジ16と従動側の左Yキャリッジ18Lとの双方において摺動抵抗が大きくなる。その結果、比較例2の三次元座標測定装置400においても前述の比較例1と同様に、Yキャリッジ14をY方向に移動させた場合に、右Yキャリッジ16と左Yキャリッジ18LとのY方向の位置関係が一定とならず、例えばZ軸周りに揺動することで、ヨーイング誤差が大きくなるおそれがある。
従って、ヨーイング誤差を抑えるためには、本実施形態の三次元座標測定装置1のように、主たる駆動動作を制御する側と、その動作に追従する側とを明確に区分けすることが好ましい。すなわち、駆動側の右Yキャリッジ16は、摺動抵抗を大きくして少しでもYガイド42に沿って移動するようにしながら、従動側の左Yキャリッジ18は、駆動側に追随してその移動に対して抵抗にならない程度に最低限で支える形が好ましい。
図26は、比較例3の三次元座標測定装置500の外観を示した正面図(正面概略図)である。なお、比較例3の三次元座標測定装置500において、本実施形態の三次元座標測定装置1と機能や構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
図26に示すように、駆動部501によりY方向に駆動される駆動側の右Yキャリッジ16を支持する支持部50は、エアパッド502Rとエアパッド502Tとエアパッド502Lとを介してYガイド42(定盤10)に支持される。エアパッド502Rは定盤10のYガイド42の右側面に配置され、エアパッド502TはYガイド42の上面側に配置され、エアパッド502LはYガイド42の左側面に配置される。なお、エアパッド502R,502T,502LはそれぞれY方向に沿った2箇所の位置に設けられている。
比較例3の三次元座標測定装置500において、駆動側の右Yキャリッジ16に追従してY方向に移動する従動側の左Yキャリッジ18は、エアパッド503Tを介して定盤10の上面10Tに摺動自在に支持される。
駆動部501は、Yガイド42(定盤10)の右側面に設けられたシャフト形リニアモータである。駆動部501は、支持部50に固定されたシャフト形リニアモータの可動子501Bと、Y方向に平行に配置された固定子(シャフト)501Cと、固定子501Cの両端をYガイド42の右側面に固定する固定部501Aとを備える。
また、比較例3の三次元座標測定装置500においては、スケール112が、Yガイド42の右側面と定盤10の左側面とにそれぞれ設けられている。
比較例3の三次元座標測定装置500では、前述の比較例1と同様に、定盤10の下面に対向するエアパッドが配置されていないので、右Yキャリッジ16がX軸周りに揺動してピッチング誤差が顕著に生じるおそれがある。また、前述の比較例1で説明したように、ピッチング誤差による変化によって、右Yキャリッジ16及び左Yキャリッジ18の摺動抵抗のバランスが左右でとれなくなると共に、Yキャリッジ14の荷重が右Yキャリッジ16と左Yキャリッジ18との双方に略均等に等分されてしまう。その結果、ヨーイング誤差が悪化するおそれがある。従って、ピッチング誤差及びヨーイング誤差を低減するためには、本実施形態の三次元座標測定装置1のように、定盤10の上下面をエアパッド62E,62F,68E,68Fで挟み込み、その上下面の間に駆動部80を設けることが好ましい。
また、比較例3の三次元座標測定装置500では、シャフト形リニアモータの駆動部501を構成する固定部501A及び固定子501CがYガイド42(定盤10)の右側面に設けられている。このように固定部501A及び固定子501CをYガイド42(定盤10)の右側面に設けた場合、定盤10に対する固定部501A及び固定子501Cの設置誤差が生じたり、各々の熱膨張係数の違いに起因するバイメタル効果によって固定部501A及び固定子501Cに歪みが生じたりするおそれがある。この場合、定盤10を基準とした測定精度を得るのは困難である。このため、本実施形態の三次元座標測定装置1のように、Yガイド42(定盤10)の右側面に当接するローラ84を有する駆動部80を設けることが好ましい。
さらに比較例3の三次元座標測定装置500では、スケール112がYガイド42の右側面と定盤10の左側面とにそれぞれ設けられており、定盤10の上面10Tにおいて測定対象物が配置される測定領域からスケール112までの距離が長くなる。その結果、スタイラス28の測定子が実際に配置されている位置のY座標値と、スケール112により実測されるYキャリッジ14のY座標値から得られる測定子のY座標値との差が大きくなる。また、Yキャリッジ14のヨーイング方向の振れ等によって、Yキャリッジ14のY座標値の測定精度の低下を招き易い。さらに、定盤10の周縁部にスケール112を設置した場合には、スケール112が外気に近いために周囲温度に影響され易く、スケール112自体の伸縮による誤差も生じ易い。
そのため、本実施形態の三次元座標測定装置1のように、溝40の左側面40L(図3参照)にスケール112を設けて、定盤10の上面10Tにおいて測定対象物が配置される測定領域からスケール112までの距離を短くすることが好ましい。すなわち、従動側の左Yキャリッジ18、測定領域、スケール112、駆動側の右Yキャリッジ16(駆動部80)の順に配置されていることが好ましい。このように、スケール112を駆動側(右Yキャリッジ16側)でかつ測定領域に近い場所に設けることで、ヨーイング誤差があっても誤差を極小化できる。なお、上面10Tに対して垂直な左側面40Lにスケールを設けた場合、仮に、定盤10の上部(上方)からゴミやホコリが落ちてきたとしても、スケール112上に乗ることはなく、ゴミやホコリによるスケール112の読み取りの誤作動は起こらない。
図27は、本実施形態の三次元座標測定装置1の外観を示した正面図(正面概略図)である。図28は、図27中のXXVIII−XXVIII線に沿う断面図(断面概略図)である。図29は、定盤10の上面10Tを示した上面図であり、Yキャリッジ14に設けられた各エアパッドと駆動部80との配置を示した図である。また、図28中の二点鎖線で示す矩形枠は、駆動部80の位置を示している。
図27から図29に示すように、本実施形態の三次元座標測定装置1は、上記比較例1から比較例3に対して、下記の相違点1から相違点4を有する。
相違点1として、本実施形態の三次元座標測定装置1では、駆動側の右Yキャリッジ16と、右Yキャリッジ16の動作に追従(追従移動)する従動側の左Yキャリッジ18との区分けを明確(左右非対称構造)にし、且つ従動側の左Yキャリッジ18の摺動抵抗を極力小さくしている。これにより、Yキャリッジ14をY方向に沿って移動させた際にZ軸周りの揺動が抑えられ、ヨーイング誤差を抑えることができる。
相違点2として、本実施形態の三次元座標測定装置1では、駆動部80の駆動による回転モーメントがYキャリッジ14にかかるため、駆動部80を挟み込むように駆動部80により駆動される部分の上下左右前後にエアパッドを配置している。これにより、ヨーイング誤差の悪化につながるピッチング誤差及びローリング誤差を低減することができる。
すなわち、本実施形態の三次元座標測定装置1では、ヨーイング誤差の低減するため、駆動側の右Yキャリッジ16が定盤10(Yガイド42)の上下左右を挟み込む形態とされる。さらに、駆動部80を中央としてこの駆動部80のY方向の前後に、エアパッド62E,64E,66E,68Eと、エアパッド62F,64F,66F,68Fとを配置している。また、従動側のエアパッド70は、定盤10の上面側だけに限定して配置すると共に、Y方向において駆動側の各エアパッドの前後の間隔の間に配置する。これにより、駆動側の方に摺動抵抗が集中し、従動側は単に支えるだけとなる。
また、図29に示すように、従動側のエアパッド70は、駆動部80を基準に定盤10の略反対側に位置し、且つ従動側のエアパッド70と駆動部80を結ぶラインLXと、駆動部80を挟んでその前後存在する2対のエアパッドを結ぶラインLYとが垂直になるようにすればよい。別の見方をすれば、駆動部80は駆動側の2対のエアパッドの中間地点に設けるとともに、従動側のエアパッド70も駆動側の2対のエアパッドの中間地点に設けた方が好ましい。
相違点3として、本実施形態の三次元座標測定装置1では、Yガイド42(定盤10)の右側面に当接するローラ84を有する駆動部80を設けている。これにより、比較例3とは異なり、駆動部80の設置誤差が生じたり、バイメタル効果による歪みが駆動部80に発生したりすることが防止されるため、定盤10を基準とした測定精度が得られる。
相違点4として、本実施形態の三次元座標測定装置1では、溝40の左側面40Lにスケール112を設け、定盤10の上面10Tにおいて測定対象物が配置される測定領域からスケール112までの距離を短くしている。これにより、測定精度を向上させることができる。
なお、上記実施形態では、定盤10の上面10Tに形成した溝40によりYガイド42を形成しているが、他の方法でYガイドを形成してもよい。
図30は、上記実施形態とは異なるYガイド42Zを備える他実施形態の三次元座標測定装置1Aの正面概略図である。図30に示すように、定盤10の上面10Tの図中右端部(右Yキャリッジ16に対向する端部)には、Z方向に凸状に設けられた凸部であって、且つY軸方向に延びた凸部が形成されている。そして、この凸部によって、右Yキャリッジ16をY軸方向に移動自在に支持するYガイド42Zが形成される。なお、三次元座標測定装置1Aは、Yガイド42Zを備える点を除けば、上記実施形態の三次元座標測定装置1と基本的に同じ構成である。
このように凸部によってYガイド42Zを形成することも可能である。ここで、Yガイド42Zが例えば定盤10とは別の素材で形成されていた場合には、定盤10及びYガイド42Zの双方の熱伝導率が異なるため、Yガイド42Zに変形が生じる場合がある。また、定盤10が僅かに反っている場合には、定盤基準の測定を行うことができないおそれがある。このため、上記実施形態で説明したように、溝40によりYガイド42を形成することが好ましい。