JP6856043B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
なお、「インターコネクタ」とは、狭義には単セルと単セルとの間を繋ぐ部材を意味するが、本発明において「インターコネクタ」という時は、「狭義のインターコネクタ」だけでなく、燃料電池スタックの端部に位置する単セルに対して反応ガスを供給し、かつ、電子の授受を行うための部材も含まれる。
固体酸化物形燃料電池と、
固体酸化物形燃料電池のカソードに供給される空気を加熱するための熱交換器と、
カソードと熱交換器との間に設置された、クロム、硫黄、及び/又は、ホウ素からなる被毒元素を除去するための吸着材を備えた被毒元素除去器と
を備えた燃料電池システムが開示されている。
同文献には、吸着材としてカソードと同じ材料(ペロブスカイト型酸化物)を用いると、カソードで反応してしまう被毒元素を先にトラップできる点が記載されている。
同文献には、このようなアノード集電体層用いると、燃料ガスに含まれるH2SがSOxに転化され、H2Sの吸収が最小限となる点が記載されている。
同文献には、Crを含まない材料からなるインターコネクタを用いると、Cr被毒による電池性能の低下が防止される点が記載されている。
(a)カソードと同じ材料(ペロブスカイト型酸化物)を用いて、酸化剤ガスに含まれる被毒元素を除去する方法、
(b)サマリウムドープトセリアを含む材料を用いて、燃料ガスに含まれるH2SをSOxに転化する方法、
(c)インターコネクタの材料として、Crを含まないペロブスカイト型酸化物を用いる方法
が開示されている。
しかしながら、有害物質の被毒を防止するために、コランダム構造を備えた酸化物、又はチタニア系酸化物を用いた例は、従来にはない。
(1)前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路と、
前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給経路と、
前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられた、被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材と
を備えている。
(2)前記被毒物質は、Cr及び/又はSである。
(4)前記捕捉剤は、コランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、チタニア系酸化物を含む。
[1. 燃料電池システム]
本発明に係る燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路と、
前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給経路と、
前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられた、被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材と
を備えている。
本発明は、あらゆるタイプの燃料電池に対して適用することができる。本発明が適用される燃料電池としては、例えば、固体酸化物形燃料電池、固体高分子形燃料電池、アルカリ形燃料電池、リン酸形燃料電池などがある。
これらの中でも、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、周辺部材にCrを含む材料(例えば、Fe−Cr系ステンレス鋼)を用いる場合があり、かつ、作動温度も高い。そのため、固体酸化物形燃料電池は、本発明が適用される燃料電池として好適である。
「燃料ガス供給経路」とは、燃料ガス源から燃料電池のアノードに燃料ガスを供給するための経路をいう。燃料供給経路を構成する部材としては、例えば、
(a)燃料源から燃料電池のアノードまでを繋ぐガス管、
(b)アノードに供給される燃料ガスを加温するための熱交換器、
(c)炭化水素系の燃料ガスを水蒸気改質するための改質器、
(d)燃料電池内部にある燃料ガスの流通経路(インターコネクタ)、
などがある。
「酸化剤ガス供給経路」とは、酸化剤ガス源から燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給するための経路をいう。酸化剤ガス供給経路を構成する部材としては、例えば、
(a)酸化剤ガス源から燃料電池のカソードまでを繋ぐガス管、
(b)カソードに供給される酸化剤ガスを加温するための熱交換器、
(c)燃料電池内部にある酸化剤ガスの流通経路(インターコネクタ)、
などがある。
「捕捉部材」とは、被毒物質を捕捉するための部材をいう。捕捉部材は、燃料ガス供給経路及び/又は酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられる。
本発明において、捕捉部材の構造、設置方法等は、電極が被毒される前に被毒物質を捕捉可能な限りにおいて、特に限定されない。捕捉部材としては、例えば、
(a)燃料ガス供給経路又は酸化剤ガス供給経路のガス管の途中に設けられた、捕捉剤からなるフィルタやハニカム、
(b)基材表面に捕捉剤がコーティングされたフィルタやハニカム、
(c)インターコネクタのガス流路の内表面に形成された、捕捉剤からなる薄膜(被毒防止層)、
などがある。
捕捉剤を用いて被毒物質を吸着するためには、捕捉剤を適切な吸着温度に加熱する必要がある。一方、固体酸化物形燃料電池は、作動温度が高い。そのため、固体酸化物形燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に被毒防止層を形成すると、被毒防止層を適切な温度に維持するための熱源が不要となる。
本発明において、「被毒物質」とは、Cr及び/又はSをいう。
燃料ガス流通経路及び酸化剤ガス流通経路のいずれかにCrを含む材料(例えば、Fe−Cr系ステンレス鋼)が用いられている場合において、ガス流通経路が高温に曝された時には、Crを含む材料からCrを含む蒸気が発生する。Crを含む蒸気は、例えば、固体酸化物形燃料電池のカソード及びアノード(特に、カソード)を被毒し、燃料電池性能を劣化させる原因となる。
本発明においては、燃料電池のガス流通経路に侵入したCr及び/又はSが電極を被毒する前に、捕捉部材を用いてCr及び/又はSを捕捉する。
本発明において、捕捉剤は、コランダム構造を備えた酸化物、又は、チタニア系酸化物を含む。この点が、従来とは異なる。捕捉剤は、これらのいずれか一方を含むものでも良く、あるいは、双方を含むものでも良い。
コランダム構造を備えた酸化物としては、例えば、アルミナ、α−Ga2O3(酸化ガリウム)、α−Ti2O3(酸化チタン)、α−In2O3(酸化インジウム)、α−Fe2O3(酸化鉄)、α−Cr2O3(酸化クロム)、α−V2O3(酸化バナジウム)、α−Rh2O3(酸化ロジウム)などがある。
コランダム構造を備えた酸化物は、特に、アルミナが好ましい。これは、入手が容易で熱的に安定であり、ルビーに見られるように、アルミナへのCrの固溶が容易に起こりうるためである。
すなわち、コランダム構造を備えた酸化物は、Fe2O3−Cr2O3、Ga2O3−Cr2O3、Al2O3−Cr2O3、V2O3−Cr2O3、Al2O3−Cr2O3のように固溶体を作りやすく、アルミナ同様にCrの捕集効果が期待できる。
「チタニア系酸化物」とは、酸化チタン(TiOx)を主成分とする酸化物をいう。
チタニア系酸化物としては、例えば、
(a)TiOx(1.5≦x≦2.0)、
(b)アルカリ金属元素(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)、アルカリ土類金属元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、及び希土類金属元素(Sc、Y、La〜Lu)からなる群から選ばれるいずれか1以上の元素が固溶しているTiOx(1.5≦x≦2.0)(以下、「チタニア系固溶体」ともいう)
などがある。
すなわち、Cr及びSの捕集効果にはチタニアの塩基性が寄与する。固溶体の場合も塩基性を保つので、捕捉効果剤として機能する。
[2.1. 燃料電池システムの具体例]
本発明は、種々の燃料電池システムに対して適用することができる。図1に、外部改質型の固体酸化物形燃料電池を備えた燃料電池システムの概略構成図を示す。図1において、燃料電池システム10は、気化器12と、改質器14と、熱交換器16と、燃料電池(固体酸化物形燃料電池)20とを備えている。
気化器12は、改質ガスを合成するための原料である炭化水素(例えば、メタン)及び水を気化させ、改質器12に供給するためのものである。気化器12の2つの入口は、それぞれ、炭化水素供給源(図示せず)及び水供給源(図示せず)に接続されている。また、気化器12の出口は、ガス管18aを介して改質器14の入口に接続されている。
改質器14は、炭化水素を水蒸気改質することにより、COとH2の混合ガス(合成ガス)を生成させるためのものである。水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、改質器14は、水蒸気改質を行うための改質部14aと、改質部14aに水蒸気改質反応に必要な熱を供給するための燃焼部14bとを備えている。
燃焼部14bは、アノードオフガスに含まれる未反応燃料(H2、CO)とカソードオフガスに含まれる残存酸素とを反応させ、その燃焼熱を改質部14aに供給するためのものである。燃焼部14bの2つの入口は、それぞれ、ガス管18c及び18dを介して、燃料電池20のアノードの出口及びカソードの出口に接続されている。さらに、燃焼部14bの出口は、ガス管18eを介して熱交換器16の排ガス側の入口に接続されている。
燃料電池20は、炭化水素、CO、H2などの燃料と酸素から電力を取り出す電池である。図1において、燃料電池20は、固体酸化物形燃料電池からなる。固体酸化物形燃料電池の詳細については、後述する。
熱交換器16は、燃料電池20のカソードに供給される空気を加熱するためのものである。固体酸化物形燃料電池は、作動温度が700℃前後であるため、室温の空気を直接、カソードに供給すると、燃料電池20の温度が低下する。そのため、固体酸化物形燃料電池においては、通常、熱交換器16を用いて空気を加熱する。
熱交換器16の大気側の入口は、ガス管18fを介して大気に接続されている。また、熱交換器16の大気側の出口は、ガス管18gを介して燃料電池20のカソードの入口に接続されている。
図1に示す燃料電池システム10において、燃料ガス供給経路は、気化器12、ガス管18a、改質部14a、ガス管18b、及び燃料電池20のアノード流路で構成される。
また、酸化剤ガス供給経路は、ガス管18f、熱交換器16、ガス管18g、及び燃料電池20のカソード流路で構成される。
本発明においては、この燃料ガス供給経路及び/又は酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に、捕捉部材が設けられている。
しかし、捕捉剤が被毒物質を捕捉するためには、捕捉剤の温度がある温度以上である必要がある。具体的には、捕捉剤の温度は、好ましくは、300℃以上、さらに好ましくは、600℃以上である。そのため、捕捉部材をガス管18a、18gの途中に設ける場合には、捕捉部材を適切な温度に維持するための熱源が必要となる。さらに、捕捉部材の設置地点から燃料電池20に至るまでの間に新たなCr放出源及び/又はS放出源があると、被毒防止効果が不十分となる。
本発明は、種々の燃料電池スタックを備えた燃料電池システムに対して適用することができる。図2に、平板型のインターコネクタを備えた固体酸化物形燃料電池スタックの概略構成図を示す。図2において、燃料電池スタック20は、単セル30a、30bと、インターコネクタ40a〜40cとを備えている。
なお、図2においては、2個の単セル30a、30bが記載されているが、これは単なる例示であり、単セルの個数は、目的に応じて任意に選択することができる。
単セル30a、30bは、電解質膜32と、電解質膜32の一方の面に接合されたカソード34と、他方の面に接合されたアノード36とを備えている。また、固体酸化物形燃料電池においては、通常、電解質膜32とカソード34との間に、両者の反応を防止するための中間層(図示せず)が設けられる。本発明において、電解質膜32、カソード34、アノード36、及び中間層の材料は、特に限定されない。
固体酸化物形燃料電池において、電解質膜32には、通常、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ランタンガレート(LaGaO3)などが用いられる。
アノード36には、通常、NiO−YSZ、NiO−ScSZなどの酸化ニッケルと固体電解質との複合材料が用いられる。
さらに、中間層には、通常、ガドリニウムドープトセリア(GDC)が用いられる。
インターコネクタ40a〜40cは、平板状を呈しており、単セル30a、30bの上端若しくは下端に設置され、又は、単セル30a、30bの間に挿入されている。
インターコネクタ40aは、燃料電池スタック20のアノード36側の端部に設置されている。インターコネクタ40aの単セル30a側の表面には、燃料ガス流路42が形成されている。
さらに、インターコネクタ40cは、単セル30aと単セル30bの間に挿入されている。インターコネクタ40cの単セル30a側の表面には、酸化剤ガス流路44が形成されている。また、インターコネクタ40cの単セル30b側の表面には、燃料ガス流路42が形成されている。
上述したように、捕捉剤は、インターコネクタ40a〜40cのガス流路(燃料ガス流路42、酸化剤ガス流路44)の内表面に形成された捕捉剤からなる薄膜(被毒防止層)が好ましい。
ここで、「ガス流路の内表面」とは、インターコネクタ40a〜40cの表面の内、反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)が直接、接触する面をいい、カソード34又はアノード36と直接、接触する面を含まない。
すなわち、インターコネクタ40a〜40cの表面の内、カソード34又はアノード36と直接、接触している面には、被毒防止層は形成されない。これは、単セル30a、30bとインターコネクタ40a〜40cとを電気的に接続するためである。
Cr及びSは、いずれも燃料電池用電極の被毒物質となりうる。一方、コランダム構造を備えた酸化物、及びチタニア系酸化物は、いずれも、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及びSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
チタニア粉末(ルチル型、高純度化学研究所製)に、エタノール、分散剤(マリアリム(登録商標)、日油(株)製)、及びバインダー(エスレック(登録商標)、セキスイ化学工業(株)製)を加え、遊星ボールミル(フリッチジャパン(株)製)により混合し、チタニアスラリーを調製した。
実施例1で用いたアルミナハニカムをそのまま試験に供した。
供試体(被毒対象)には、SOFCのカソードに用いられるLSCF(LaSrCoFeO3、ランタンストロンチウムコバルトフェライト)焼結体を用いた。LSCF焼結体には、大気中、1100℃で10時間焼成したものを用いた。
また、クロム源にはSUS304(クロム源)を用い、硫黄源には硫化物分散型鉛フリー銅合金(CAC411)を用いた。
さらに、比較例2(リファレンス)については、被毒源を用いることなく、アルミナハニカムと同じ高さのピラーを立て、その上にLSCF焼結体を載せた。これをアルミナルツボに収めて、実施例1と同一条件下で熱処理した。
[3.1. XRD]
被毒試験後、LSCF焼結体の被毒源側の表面のX線回折(XRD)測定を行った。図6に、被毒試験後のLSCF焼結体の被毒源側の表面のXRDパターンを示す。実施例1は、LSCF由来のピーク以外の不純物ピークが最も少なく、微小であった。
被毒試験後、LSCF焼結体の被毒源側の表面の蛍光X線(XRF)測定を行った。表1に、被毒試験後のLSCF焼結体の被毒源側の表面のXRF測定結果を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)実施例2(アルミナハニカム)は、比較例1に比べてS量は増加したが、Cr量は比較例1の約1/3まで低下した。
(2)実施例1(チタニアコートアルミナハニカム)は、S量及びCr量のいずれも増加せず、比較例2(リファレンス)と同レベルであった。
(3)アルミナは、バナジウムの捕集効果が大きく、鉛、銅、ビスマスの捕集効果は中程度であった。一方、チタニアは、ビスマスの捕集効果が大きく、亜鉛、鉛、銅の捕集効果は中程度であった。
[1. 試料の作製]
チタニア粉末(ルチル型、高純度化学研究所製)、及びアルミナ粉末(高純度化学研究所製)に、エタノール、分散剤(マリアリム(登録商標)、日油(株)製)、及びバインダー(エスレック(登録商標)、セキスイ化学工業(株)製)を加え、遊星ボールミル(フリッチジャパン(株)製)により混合し、アルミナ・チタニア混合スラリーを調製した。
図7に、アルミナ・チタニア混合スラリーをコートしたインターコネクタ材料の写真を示す。ディップコート法により、インターコネクタ材料の表面に均一なアルミナ・チタニア薄膜を形成することができた。また、アルミナハニカムのみならず、ディップコート法によれば、板材でも均一なアルミナ・チタニア薄膜を形成することができた。
20 燃料電池
34 カソード
36 アノード
Claims (5)
- 以下の構成を備えた燃料電池システム。
(1)前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路と、
前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給経路と、
前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられた、被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材と
を備えている。
(2)前記被毒物質は、Cr及び/又はSである。
(4)前記捕捉剤は、コランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、チタニア系酸化物を含む。 - 前記コランダム構造を備えた酸化物は、アルミナである請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記チタニア系酸化物は、
(a)TiOx(1.5≦x≦2.0)、又は、
(b)アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び希土類金属元素からなる群から選ばれるいずれか1以上の元素が固溶しているTiOx(1.5≦x≦2.0)
からなる請求項1又は2に記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、
前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜である請求項1から3までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。 - 前記インターコネクタは、Fe−Cr系合金からなる請求項4に記載の燃料電池システム。
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