JP6853789B2 - マルチキナーゼ阻害剤の有効性と安全性を予測する検査方法、検査キット、及びバイオマーカー - Google Patents

マルチキナーゼ阻害剤の有効性と安全性を予測する検査方法、検査キット、及びバイオマーカー Download PDF

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Description

本発明は腫瘍細胞を標的とするマルチキナーゼ阻害剤の有効性と安全性を予測する方法、及び検査キットに関する。マルチキナーゼ阻害剤の中でも、特にレゴラフェニブ(Regorafenib)の有効性、副作用のリスクを予測する方法、これに用いるバイオマーカー、及びキットに関する。
抗がん剤を用いる化学療法は、腫瘍の治療方法として、手術、放射線療法とともに広く行われている治療方法である。抗がん剤を用いて行う化学療法は、抗がん剤を経口、又は注射により投与することにより全身に広がる可能性のある癌細胞や、転移の可能性のある癌細胞を治療することを目的としている。
抗がん剤には、分裂時の細胞に作用するプラチナ剤、アルキル化剤、植物アルカロイド、癌細胞の持つ特異的な性質を分子レベルでとらえ、それを標的として癌細胞に効率良く作用する分子標的薬等様々な種類がある。しかしながら、いずれの抗がん剤も正常細胞に対して少なからず作用することから副作用が生じることが多い。副作用としてよく表れる症状には、白血球や血小板の減少、嘔吐・悪心、脱毛、全身倦怠感、口内炎が知られている。ほとんどの抗がん剤で副作用が生じることから、副作用が軽減された抗がん剤、副作用を軽減する医薬が開発されてきている。その結果、副作用は以前に比べて軽減されてきているものの、抗がん剤投与によって生じる副作用は化学療法において大きな問題となっている。
また、副作用の種類や重篤度は、使用する抗がん剤によって異なるだけではなく、個人差が大きいことが知られている。さらに、副作用だけではなく、投与した薬物と因果関係がはっきりしない有害事象が生じることも知られている。さらに抗がん剤の効果についても個人差があるため、同じ種類の腫瘍であっても、患者によってはあまり効果を得られず、副作用が強く生じる場合もある。したがって、抗がん剤投与によって顕著な効果が期待できるか、また、重篤な副作用や有害事象が生じるかを、抗がん剤を投与する前に判断することができれば、より効果が高く、副作用、有害事象の少ない抗がん剤を選択することができる。薬剤投与による有効性と安全性を予測することができれば、患者にとって大きなメリットとなる。
近年、抗がん剤治療により変化する血液中のマーカーと治療の有効性との関係について解析が行われるようになった(特許文献1、2、非特許文献1、2)。特許文献1には、難治性乳癌、非小細胞肺癌、卵巣癌などの治療に使用されるドセタキセルの副作用の危険性をSLCO1B3遺伝子及びABCC2遺伝子上に存在する一塩基多型の検出により予測する方法が記載されている。特許文献2には、広範な種類の治療に使用されているフルオロウラシル、シスプラチンによる副作用とサイトカイン遺伝子多型の相関を解析し、副作用の予測を行う方法が記載されている。
非特許文献1には、非小細胞肺癌患者に対する上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(Epidermal Growth Factor Receptor‐Tyrosine Kinase Inhibitor:EGFR‐TKI)投与の治療効果が血清HGF濃度と相関があることが開示されている。非特許文献2には、結腸直腸癌の患者に対してFOLFIRI療法(Folnic acid、luorouracil、Irinotecan)にベバシズマブを加えた治療法を行い、治療に対する有効性とバイオマーカーとの相関を解析したことが記載されている。特に、血清中のVEGF‐A濃度の変化が治療の有効性と相関することが開示されている。
しかし、特許文献1及び2に開示されている遺伝子多型による解析は、血清からDNAを抽出し、PCRを行う必要があることから、ELISAに代表される免疫測定により血清中のタンパク質を直接測定する方法に比べ過程が多く煩雑である。
また、上記先行技術文献に開示されているように、特定の抗がん剤や化学療法レジメンに関しては、抗がん剤投与による副作用のリスクが解析されている。しかしながら、多くの抗がん剤は治療前に有効性や副作用を検討するマーカーがないため、化学療法を行いながら、治療の有効性と副作用の強さを検討しているのが実情である。
レゴラフェニブは、複数のプロテインキナーゼ活性を阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。レゴラフェニブは、血管新生に関連するキナーゼ(VEGFR1‐3、TIE2)、腫瘍微小環境に関連する間質のキナーゼ(PDGFRβ、FGFR)、腫瘍形成に関連するキナーゼ(KIT、RET、RAF‐1、BRAF)など、複数のプロテインキナーゼ活性を阻害することが明らかにされている。
本邦では2013年3月25日に治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の効能・効果に対して承認された。実臨床では治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して既存の標準化学療法に対して病勢進行が認められた場合に最終ラインとして単剤療法で用いられることが一般的である。また、2013年8月20日、化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍(Gastrointestinal Stromal Tumor:GIST)に対しても承認されている。
レゴラフェニブは、結腸・直腸癌患者を対象とした国際共同第III相臨床試験において、500例中(日本人65例を含む)465例(93.0%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用の発現例数(発現率)は,手足症候群225例(45.0%)、下痢169例(33.8%)、食欲減退152例(30.4%)、疲労145例(29.0%)、発声障害142例(28.4%)、高血圧139例(27.8%)、発疹113例(22.6%)であった。
また、消化管間質腫瘍患者を対象とした国際共同第III相臨床試験において、132例中(日本人12例を含む)130例(98.5%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用の発現例数(発現率)は、手足症候群87例(65.9%)、高血圧64例(48.5%)、下痢53例(40.2%)、発声障害44例(33.3%)、疲労39例(29.5%)、発疹38例(28.8%)食欲減退28例(21.2%)であった。
また、重大な副作用として、手足症候群、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens‐Johnson症候群)、多形紅斑、劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、黄疸、出血(消化管出血、喀血、肺出血、腹腔内出血、膣出血、脳出血、鼻出血、血尿等)、間質性肺疾患、血栓塞栓症(心筋虚血、心筋梗塞等)、高血圧、高血圧クリーゼ、可塑性後白質脳症、消化管穿孔、消化管瘻、血小板減少が現れることがある。
さらに、これら特有の副作用は、日本人とそれ以外での比較を行ったところ、日本人の発症率が高いことも明らかであった。重大な副作用の一つである肝機能障害は日本人での死亡報告もあり、適性使用ガイドでは治療中の厳重な経過観察が推奨されている。レゴラフェニブの有効性と副作用に関する予測マーカーの研究は国際共同第III相臨床試験でも行われたが、実臨床で有用な結果は得られていない(非特許文献3)。
Kasahara K. et al., 2010, Clin. Cancer Res., Vol.16(18), p.4616‐4624. Hayashi, H. et al., 2014, Oncotarget, Vol.5, No.9, p.2588‐2595. TaberneroJ. et al., 2015, Lancet Oncol., Vol.16(8), p.937-948. Gawlowska-Merciniak, A. &Niedzielski, J.K., 2013, Arch. Med. Sci., Vol.5, p.888-894. Soria, G. et al., 2008, Cytokine,Vol.44, p.191-200. Sankhwar, M. et al., 2015, CancerBiomark., Vol.15(4), p.349-355. Gkiozos, I. et al., 2015, AnticancerRes., Vol.35(2), p.1129-1137. Deico, A. et al., 2014, Am. J.Pathol., Vol.184(4), p.1050-1061. Altman D.G.,& Bland, J.M., 1994, BMJ, Vol.309, p.102 Obuchowski N.A. et al., 2004, Clin. Chem., Vol.50, p.1118-1125. Akobeng A. K., 2007, Acta Paediatr., Vol.96(5), p.644-647. Kumar, H. et al. 1998, Clin. Cancer Res. Vol.4, p.1279‐1285.
特開2009‐240232号公報 特開2007‐006744号公報
本発明は、レゴラフェニブの効果予測マーカーと有害事象の発症に関するマーカーを抽出し、実臨床での治療に役立てることを課題とする。また、当該マーカーを用いた検査方法、検査キットを提供することを課題とする。
本発明は、レゴラフェニブの効果予測に関する以下の検査方法、検査キット、及びバイオマーカーに関する。
(1)レゴラフェニブ(Regorafenib)投与による効果を予測するための検査方法であって、患者より採取された試料中のCCL‐5濃度を測定することを特徴とする検査方法。
(2)(1)記載の検査方法であって、前記試料が血液、血漿、血清、尿、腹水、胸水であることを特徴とする検査方法。
(3)(1)又は(2)記載の検査方法であって、前記試料が治療開始前のものであることを特徴とする検査方法。
(4)(3)記載の検査方法であって、CCL‐5濃度が所定値より低い場合には、無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)の改善が期待できると判定する検査方法。
(5)(1)、(2)、又は(4)のいずれか1つに記載の検査方法であって、患者試料中の治療開始前と初回治療開始後早期のVEGF‐A濃度を測定し、治療開始後のVEGF‐A濃度が治療開始前と比較して減少傾向にある場合には、PFS及びOSの改善が期待できると判定する検査方法。
(6)(5)記載の検査方法であって、原病増悪時の患者試料中のVEGF‐A濃度を測定し、初回治療開始後早期のVEGF‐A濃度と比較して増加している場合には、PFS及びOSの改善が期待できると判定する検査方法。
(7)(1)〜(6)のいずれか1つに記載の検査方法であって、治療開始前の患者試料中のAng‐2、bFGF、CCL‐2のうち少なくとも1つを測定し、有害事象が生じるリスクを判定する検査方法。
(8)レゴラフェニブ投与による効果を予測するための検査キットであって、患者試料中のCCL‐5濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とする検査キット。
(9)(8)記載の検査キットであって、さらに、VEGF‐A濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とする検査キット。
(10)(8)又は(9)記載の検査キットであって、Ang‐2、bFGF、CCL‐2のうち少なくとも1つの濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とするキット。
(11)(8)〜(10)いずれか1つ記載のキットであって、前記試薬がイムノアッセイ用の試薬であることを特徴とするキット。
(12)レゴラフェニブ投与による効果を予測するためのバイオマーカーであって、CCL‐5及び/又はVEGF‐Aであることを特徴とするバイオマーカー。
(13)レゴラフェニブ投与による有害事象を予測するためのバイオマーカーであって、CCL-5、VEGF‐A、Ang‐2、bFGF、CCL‐2の少なくとも1つからなることを特徴とするバイオマーカー。
本発明によりレゴラフェニブの効果予測マーカーと有害事象の発症に関するマーカーが得られたことで、実臨床での治療に役立てることができる。具体的には、予め血清中のCCL‐5(Chemokine(C‐C motif)ligand‐5)を測定することによって、治療に対して反応性が高く、重篤な有害事象、副作用のリスクが低い患者を選択して治療を行うことが可能となる。さらに、治療前、治療後21日目の血清中のVEGF-A(血管内皮増殖因子‐A、vascular endothelial growth factor‐A)の濃度を比較することによって、治療開始早期により正確な効果予測を行うことができる。
培養細胞株におけるレゴラフェニブ感受性を示す図。 培養細胞株におけるレゴラフェニブによるVEGF‐A分泌量の変化を示す図。 治療開始前の血清中のCCL‐5濃度と生存解析の結果を示す図。図3(A)に腫瘍縮小とCCL‐5値のROC曲線を、図3(B)に、CCL‐5≦59.96(ng/mL)、CCL‐5>59.96(ng/mL)の無増悪生存期間を、図3(C)に全生存期間を示す。 治療開始前と開始後のVEGF‐A値の変化と無増悪生存期間を解析した図。図4(A)は、VEGF‐Aの治療開始後21日目の減少と無増悪生存期間との関係を、図4(B)はVEGF‐Aの治療開始後21日目の減少と原病増悪時での増加と無増悪生存期間との関係を示す。 治療開始前CCL‐5濃度と、治療開始後のVEGF‐A濃度を組み合わせて無増悪生存期間の解析を行った図。図5(A)は治療開始前CCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が減少する群と治療開始前CCL‐5濃度がカットオフ値より高値であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が増加する群との比較を示す。図5(B)はさらに、両者に分類されない群を併せて示す。 治療開始前CCL‐5濃度と、治療開始後のVEGF‐A濃度を組み合わせて全生存期間の解析を行った図。図6(A)は治療開始前CCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が減少する群と治療開始前CCL‐5濃がカットオフ値より高値であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が増加する群との比較を示す。図6(B)はさらに、両者に分類されない群を併せて示す。 治療開始前CCL‐5濃度と、治療開始後及び原病増悪期のVEGF‐A濃度を組み合わせて無増悪生存期間の解析を行った図。図7(A)は治療開始前CCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が減少、原病増悪期のVEGF‐A濃度が増加する群と治療開始前CCL‐5濃度がカットオフ値より高値であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が増加、原病増悪期のVEGF‐A濃度が減少する群との比較を示す。図7(B)はさらに、両者に分類されない群を併せて示す。 治療開始前CCL‐5濃度と、治療開始後及び原病増悪期のVEGF‐A濃度を組み合わせて全生存期間の解析を行った図。図8(A)は治療開始前CCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が減少、原病増悪期のVEGF‐A濃度が増加する群と治療開始前CCL‐5濃度がカットオフ値より高値であり、治療開始後のVEGF‐A濃度が増加、原病増悪期のVEGF‐A濃度が減少する群との比較を示す。図8(B)はさらに、両者に分類されない群を併せて示す。
本発明において、有害事象とは薬物との因果関係がはっきりしないものも含め、薬物を投与された患者に生じたあらゆる好ましくない、あるいは意図しない徴候、症状、又は病気を指し、投与する薬物との因果関係が知られている副作用に限るものではない。また、無増悪生存期間(Progression Free;Survival、PFS)、全生存期間(Overall Survival;OS)は、次のように定義する。無増悪生存期間は、投与開始日を起算日として、増悪(PD)と判断された日またはあらゆる原因(死亡原因は問わない)による死亡日のいずれか早い日までとする。増悪と判断されない生存例では、増悪がないことが確認された最終日をもって打ち切りとして取り扱う。すなわち、有害事象で中止となった時に増悪が確認されなければ打ち切りとして扱う。
全生存期間(OS)とは、投与開始日を起算日として、あらゆる原因による死亡日までを全生存期間とする。生存例では最終生存確認日をもって打ち切りとし、また追跡不能例では追跡不能となる前に生存が確認された最終日をもって打ち切りとして扱う。
本発明では試料とは、血液、血漿、血清、尿、腹水、胸水をいう。本発明のマーカーがこれら試料に含まれることがすでに知られているからである(非特許文献4〜8)。特に血液、血漿、血清が本発明のバイオマーカーを感度良く測定できることから試料として好ましい。治療開始前の試料とは、標準化学療法で不応または不耐となった患者に対し、レゴラフェニブによる治療を開始する前の試料を指す。また初回治療開始後早期の試料とは、実施例では21日目の試料を用いているが、1サイクル(1サイクルは3週間連日経口投与後、1週間の休薬期間を設ける。)目の試料であればいずれの時期の試料を用いてもよい。薬剤投与の効果を考慮すると、14日目〜28日目の試料が好ましい。
また、ここではELISAによって、患者試料の検討を行ったが、試料中のバイオマーカーのタンパク質量を測定することができれば、どのような測定方法であってもよい。測定感度が高く、検査が比較的簡便に行えることから、イムノアッセイによって測定することが好ましい。イムノアッセイには、ELISA以外にも、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)等があるが、いずれの方法を用いてもよい。
「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の判定をした場合に、高い診断感度(有害事象率)及び高い診断特異度の両方を満足できる値である。例えば、有害事象を発症した個体で高い陽性率を示し、かつ、有害事象を発症していない個体で高い陰性率を示す値をカットオフ値として設定することが出来る。具体的なカットオフ値については、用いる試料やアッセイ系によって異なることから、各アッセイ系に応じて適宜定めることが可能である。また、カットオフ値の算出方法は、この分野において周知の方法(例えば、非特許文献9〜11参照。)で定めればよい。
本発明のキットには、本発明で見出されたバイオマーカーであるCCL‐5、VEGF‐Aを検出するための抗体、及びこれを検出するための試薬等が含むことができる。検出試薬としては、二次抗体、基質剤、標識物質(例えば、蛍光色素、酵素)が含まれる。また、これらの要素は、必要に応じてあらかじめ混合しておくこともできる。さらに、マイクロタイタープレートなどの固相、反応容器や、洗浄液や抗体を希釈するための緩衝液、陽性対照、陰性対照、プロトコールを記載した指示書などを含むことができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
(1)培養細胞を用いた解析
最初に前臨床の実験および生物情報解析により、バイオマーカーとなる候補因子の絞り込みを行った。レゴラフェニブは、前述のようにマルチキナーゼ阻害剤であり、癌細胞自身のシグナル伝達や血管新生に関わる癌の周辺環境因子への作用が示唆されている。ただし、そのような因子の中で具体的にどの因子がレゴラフェニブ処理により直接に影響を受けるかは明確でなかった。そこで本発明者らは、血管新生に関与する因子や炎症性サイトカインから選択した候補に加え、マイクロアレイによる遺伝子発現解析やELISA法によって検出された癌細胞から分泌される因子の変動について解析を行った。
最初に培養細胞株がレゴラフェニブに対して異なる感受性を有するか解析を行った。ヒト大腸癌細胞株として、ATCCより入手可能なHCT‐15、HCT‐116、HT‐29を用いた。
上記各大腸癌細胞株を10%FBS−RPMI培地を用い、9000個/mLの細胞密度で播種し、24時間後にレゴラフェニブを0μM、1μM、3μMの濃度になるように添加し72時間培養した。細胞増殖をMTSアッセイ(プロメガ社製)により解析した。結果を図1に示す。
図1に示すように、いずれの細胞株もレゴラフェニブ添加によって、濃度依存的に細胞増殖が抑制される。特にHT‐29、HCT‐116細胞株は非常に強く細胞増殖が抑制され、レゴラフェニブに対する感受性が高い。一方、HCT‐15細胞株は、3μMでレゴラフェニブを添加した場合でも、他の細胞株に比べて細胞増殖が抑制される程度が少なく、レゴラフェニブに対して抵抗性を備えた細胞株であることが明らかとなった。
これらレゴラフェニブに異なる感受性を有する3種の大腸癌細胞株を用いて、ELISA法によりレゴラフェニブを添加することにより癌細胞から分泌される因子の変動の解析を行った。その結果、細胞のレゴラフェニブ感受性に相関して分泌量に顕著な変化のある因子としてVEGF‐Aを見出した(図2)。
大腸癌細胞株HCT‐15、HCT‐116、HT‐29に濃度を変えてレゴラフェニブを添加し、48時間後に培地に分泌されているVEGF‐A濃度の測定をELISA(R&Dシステムズ社のQuantikine ELISAキット)によって解析した。各培養細胞株でレゴラフェニブを添加せずに培養した場合の培地中のVEGF‐A濃度を100%としてVEGF‐A濃度を示している。
レゴラフェニブ抵抗性の大腸癌細胞(HCT‐15)ではレゴラフェニブ処理後にVEGF‐Aの分泌量が上昇する。一方、レゴラフェニブ感受性の大腸癌細胞(HT‐29、HCT‐116)ではレゴラフェニブ処理後に分泌量が強く低下することが明らかになった。
VEGF‐Aの大腸癌細胞における発現については、Oncomine database(https://www.oncomine.org/resource/login.html)より情報を得ることができる。これによると、VEGF‐Aは大腸癌細胞での発現亢進が認められる。また、Kumarら(非特許文献12)によると、大腸癌患者血清では健常人血清より顕著にVEGF‐Aの濃度が高いこと、またVEGF-Aレベルは進行癌でより高いことが示されている。これらのことから、レゴラフェニブの投与対象となる進行大腸癌患者における血清VEGF‐Aは大腸癌に依存したものであることが強く示唆される。
これらの文献上の知見と得られたデータを合わせ、VEGF‐Aを中心とするサイトカインの血清レベルの変化がレゴラフェニブ感受性の良いマーカーとなりうると予測をたて、実際の患者血清を用いた前向き研究を進めた。VEGF‐Aなどに加え、IL‐8など他の血管新生に関わるサイトカインの変化や、やはり癌の悪性化に関わる炎症に関与する液性因子についても合わせて検討を行った。VEGF‐Aに加え、CCL‐2、CCL‐5、IL‐8(interleukin−8)、PlGF(placental growth factor)、Ang‐1(angiopoietin−1)、Ang‐2(angiopoietin−2)、bFGF(basic fibroblast growth factor)、SDF‐1(stromal cell−derived factor 1)、PDGFβ(platelet−derived growth factor beta)を候補因子として、患者血清を用いて解析を行うことにした。
(2)患者血清を用いた解析
[対象]
本発明では標準化学療法で不応または不耐となった進行再発結腸・直腸癌患者を対象とし、以下の選択基準によりレゴラフェニブを投与し解析を行った。
選択基準
1.組織学的に大腸癌と診断された症例。
2.フルオロウラシル(5‐FU)、オキサリプラチン、イリノテカン、分子標的薬剤(ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ)を用いた標準化学療法で不応または不耐が確認された症例。
3.測定可能病変を有する症例(固形癌の治療効果判定のための新ガイドライン、New Response Evaluation Criteria in Solid Tumours;RECIST ver.1.1.に準拠)。
4.全身症状の指標であるPS(Performance Status;ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)基準)が0〜1の症例。
5.投与開始日から12週以上の生存が期待される症例。
6.試験参加について患者本人から文書による同意が得られた症例。
除外基準
1.活動性の重複癌を有する症例(同時性重複癌または無病期間が5年以内の異時性重複癌。ただし局所治療により治癒と判断されるCarcinoma in situ(上皮内癌)または粘膜内癌相当の病変は活動性の重複癌に含めない)。
2.試験施行に重大な支障をきたすと考えられる合併症(間質性肺炎、肺線維症、高度の肺気腫、腸管麻痺、腸閉塞、コントロール不良な糖尿病、肝硬変、コントロール不良な高血圧症、3ヵ月以内の心筋梗塞の既往、心疾患、コントロール不良な狭心症または不整脈等)を有する症例。
3.臨床上問題となる精神・神経症状等により試験への参加が困難と判断される症例。
4.医師が登録には不適当と判断した症例。
具体的には、2013年5月から2014年12月までに54名の登録患者を解析の対象とした。抗腫瘍効果は、病勢コントロール(Disease control、DC)が確認された患者は51.9%、腫瘍縮小(Tumor shrinkage、TS)が確認された患者は35.5%であった。無増悪生存期間は中央値97日、全生存期間は中央値264日であった。
[治療法]
レゴラフェニブを原病増悪、用量調節困難な有害事象発現まで継続する。通常、成人には1日1回レゴラフェニブ160mgを食後に3週間連日経口投与し、その後1週間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
[検査法]
1.血清学的測定項目と測定法
レゴラフェニブの初回治療開始前、初回治療開始後21日目、治療中止判定時に約20mLの血液を採取し、血清を分離して−80℃で保存する。候補としたサイトカインをELISAで測定した。
血清中におけるCCL‐5、VEGF‐Aなどのサイトカイン量については、R&Dシステムズ社のQuantikine ELISAキットを用いたサンドウィッチELISA法により添付のプロトコールに従い行った。
まず、各サイトカインに対する抗体がコートされた96ウェル・プレートにキット付属のバッファーを加えた後、血清サンプルおよび検量線作成用のサイトカイン標品(希釈系列)を添加し、室温で2時間反応させた。その後、洗浄用バッファーにて3度洗浄の後、各サイトカインに対するHRP標識抗体を添加し、さらに室温で1−2時間反応した。その後、洗浄用バッファーにて3度洗浄の後、発色液を添加し、室温で20−25分反応後、反応停止液を加え、OD450およびOD570(バックグラウンド)を、プレートリーダーを用いて計測した。各サンプルは3連で実験を行い、バックグラウンドを引いた値について検量線に基づき、サイトカイン濃度を算出した。
2.抗腫瘍評価、生存期間
8週間毎にCT等の画像検査により、RECIST ver.1.1で評価する。生存期間は無増悪生存期間、全生存期間をKaplan‐Meier法を用いて算出した。
3.有害事象の評価
CTCAE ver.4.0(Common Terminology Criteria for Adverse Events v4.0;有害事象共通用語規準v4.0、日本語訳JCOG版)に従い重症度を分類した。
[解析方法]
病勢コントロール(DC)と非病勢コントロール(Non‐DC)あるいは腫瘍縮小(TS)と非腫瘍縮小(Non‐TS)の各々2群に分けて解析を行い、抗腫瘍効果の予測因子の選定を行った。有害事象に関しては、CTCAE4.0によるグレードをもとに有害事象と相関する予測因子を選定した。さらに有害事象の発現と治療効果の相関についても解析を行った。
上述の候補因子に関して、レゴラフェニブの初回治療開始前、初回治療開始後21日目、治療中止判定時の3点でELISAを行い、各候補因子が有害事象の発症と相関を有するか解析を行った。
[結果]
転移性大腸癌のレゴラフェニブ単剤療法を受けた54例について解析を行った。対象となった患者背景を表1に示す。なお、対象とした54名の患者は、2013年以降にがん研有明病院で治療を行い、インフォームドコンセントを得ている。
Figure 0006853789
解析したサイトカインのうち有効性、有害事象との相関が認められたのはCCL‐5とVEGF‐Aであった。試料中のCCL‐5とVEGF‐Aレベルは、有効性、及び日本人に特に頻度が高いとされる有害事象発症、すなわち、手足症候群、高血圧、肝機能異常、高ビリルビン血症、血小板減少に関する有効な予測マーカーであることが明らかとなった。以下結果について詳述する。
[抗腫瘍効果とサイトカインの解析]
(1)治療開始前の血清CCL‐5濃度と、腫瘍縮小、生存期間との相関
治療開始前の血清CCL‐5値と腫瘍縮小(TS)に関するROC(receiver operating characteristic curve)解析により、CCL‐5≦59.96(ng/mL、カットオフ値)の場合に、有意に腫瘍縮小が獲得された。図3(A)は、腫瘍縮小と血清中のCCL‐5濃度についてROC曲線を作成したものである。この結果から治療開始前の血清中のCCL‐5濃度がCCL‐5≦59.96(ng/mL)であれば、レゴラフェニブ投与によって腫瘍縮小効果を期待することができる。カットオフ値は、標準曲線を用いて算出しているため、この値から大きくずれることは考えにくいが、測定法、患者の病態のグレードによって変化することが考えられる。その場合は、適宜カットオフ値を算出しなおすことが好ましい。Student’s T‐testによれば、CCL‐5 low(平均値50.5±23.8ng/mL)はCCL‐5 high(平均値65.8±23.2ng/mL)に対して、腫瘍縮小が期待できる(p=0.030)。また、生存解析でも、CCL‐5≦59.96(ng/mL、カットオフ値)で無増悪生存期間(PFS、図3(B))、全生存期間(OS、図3(C))とも統計学的に有意な改善傾向を認めた。したがって、治療開始前のCCL‐5を測定することにより、腫瘍縮小、無増悪生存期間、全生存期間を予測することが可能である。
(2)VEGF‐A濃度の変化と生存期間との相関
治療開始前と治療開始後のサイトカイン値の変化を解析した結果、治療前後のVEGF‐A濃度の変化と生存期間が相関することが明らかとなった。VEGF‐A濃度が、治療前より治療開始後21日目で減少した場合には、無増悪生存期間は平均146日であるのに対し、増加した場合には、無増悪生存期間は平均62日であった(図4(A))。
また、VEGF‐A濃度が21日目に減少し、原病増悪時に増加するパターンは無増悪生存期間が改善され、無増悪生存期間の平均値は146日であった。これに対し、VEGF‐A濃度が21日目に増加し、原病増悪時に減少するパターンは無増悪生存期間が55日であった(図4(B))。治療開始後21日目のVEGF‐A濃度と、原病増悪時の濃度とは統計学的に有意な相関が見られた。また、統計学的には有意ではないが、全生存期間でも同様の傾向を示すことが認められた。すなわち、治療開始後の血清VEGF‐A値の変化が治療効果を予測する因子であることが明らかとなった。
(3)CCL‐5濃度、VEGF‐Aの変化と生存期間の相関
上記の(1)及び(2)の結果から、治療開始前の血清中のCCL‐5値と治療開始後のVEGF‐A濃度の変化を組み合わせて解析した結果、さらに無増悪生存期間と全生存期間の改善が明確となった。
(3‐1)治療開始前CCL‐5濃度と治療開始後21日目のVEGF‐A濃度との組み合せ解析
治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が減少した患者群(Good群)と、その対極である治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値より高く、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が増加している患者群(Poor群)とを比較した。その結果、Good群では、有意に無増悪生存期間が改善していることが明らかとなった(図5(A))。
また、上記に分類されない患者群をMedium群として解析した。Kaplan‐Meier曲線から、Medium群の無増悪生存期間はGood群、Poor群の中間に位置する結果であった(図5(B))。Good群、Medium群、Poor群の無増悪生存期間の平均値は、それぞれ188日、69日、70日であった。
さらに、全生存期間について解析を行った。上記と同様に治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が減少した患者群(Good群)と、その対極である治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値より高く、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が増加している患者群(Poor群)とを比較した(図6(A))。また、どちらにも属さない患者群をMedium群として全生存期間を比較した(図6(B))。全生存期間についても無増悪生存期間と同様の傾向を示した。全生存期間の平均値はGood群が414日であるのに対し、Medium群では187日、Poor群では239日であった。
(3‐2)治療開始前CCL‐5濃度と治療開始後21日目のVEGF‐A濃度、原病増悪期のVEGF‐A濃度の組み合せ解析
治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が減少し、さらに原病増悪期のVEGF‐A濃度が増加している患者群(Good群)と、その対極である治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値より高く、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が増加し、さらに原病増悪期のVEGF‐A濃度が減少している患者群(Poor群)とを比較した(図7(A))。その結果、Good群では有意に無増悪生存期間が改善されていることが明らかであった。また、これら以外をMedium群として解析した。その結果、Kaplan‐Meier曲線から、Medium群の無増悪生存期間はその中間の結果であった(図7(B))。Good群、Medium群、Poor群の無増悪生存期間の平均値は、それぞれ232日、70日、53日であった。
さらに、全生存期間について解析を行った。上記と同様に治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値以下であり、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が減少し、さらに原病増悪期のVEGF‐A濃度が増加している患者群(Good群)と、その対極である治療開始前のCCL‐5濃度がカットオフ値より高く、治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が増加し、さらに原病増悪期のVEGF‐A濃度が減少している患者群(Poor群)とを比較した(図8(A))。また、どちらにも属さない群をMedium群として全生存期間を比較した(図8(B))。全生存期間についても無増悪生存期間と同様の傾向を示した。全生存期間の平均値はGood群が414日であるのに対し、Medium群では239日、Poor群では192日であった。
以上の結果から、血清CCL‐5とVEGF‐Aは単独または併用することでレゴラフェニブ単剤療法の治療前あるいは治療開始早期の効果予測マーカーとして用いることができる。
(4)有害事象とサイトカインの解析
有害事象の発症と治療開始前のサイトカイン血清値との間に相関があるか解析を行った。有害事象の評価項目は、レゴラフェニブで特に頻度が高い手足症候群、高血圧、肝機能異常、高ビリルビン血症、血小板減少を選択した。有害事象と相関の高いサイトカイン濃度を表2に示す。
Figure 0006853789
表中、AEは有害事象(Adverse Event)、T‐Bilは総ビリルビン量を示す。ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼの略称であり、ともに肝機能の指標となる検査値である。また、HTは高血圧(hypertension)、HFSは手足症候群(hand‐foot syndrome)を表す。また、Ang‐2、bFGF、CCL‐2は上記のとおりである。
治療開始前のサイトカイン血清値と有害事象との間に統計学的に有意な差を認めたのは、Ang‐2、bFGF、CCL‐2の値であった。Ang‐2が高値の場合に高ビリルビン血症(grade3≦)が多かった。また、bFGF高値でAST(grade3≦)、ALT(grade3≦)が高く、bFGFと肝機能の相関が見られた。また、bFGF低値で高血圧(grade3≦)が多く、またCCL‐2低値で手足症候群(grade2≦)が多かった。これらの有害事象の発症は治療中の休薬や減量に大きく関わるものである。治療開始前にこれらサイトカインの濃度を測定することにより、特定の有害事象の発症を予測し得ることにより、より注意深く患者の状態をモニターしながらレゴラフェニブを投薬することができる。すなわち、治療開始前のAng‐2、bFGF、CCL‐2濃度は、治療遂行に関与する有害事象発症の予測マーカーとなり得る。
また、レゴラフェニブの抗腫瘍効果を判定する際に有用とされた治療開始前CCL‐5≦59.96(ng/mL、カットオフ値)と有害事象についてカイ二乗検定により解析を行った。結果を表3に示す。なお、表中PLTは血小板減少、ORはオッズ比を示し、他の略号は表2と同様である。
Figure 0006853789
CCL‐5濃度がカットオフ値(CO)以下の場合、手足症候群(grade1≦)と血小板減少(grade1≦)の発症が有意に多かった。手足症候群(HFS)グレード1≦は、CCL-5がカットオフ値以下の場合9.1倍発症しやすく、血小板減少(PLT)グレード1≦は、約4.2倍発症しやすいという結果が得られた。しかし、重篤例の発症には相関しなかった。そのほか、高ビリルビン血症(grade2≦)もやや高頻度であった。
さらに、治療前後でのCCL‐5濃度の変化、治療開始前のCCL‐5濃度(CO値以下)と治療開始後のVEGF‐A濃度の変化の組み合わせ、あるいは治療開始後21日目のVEGF濃度の変化と有害事象との相関をカイ二乗検定により解析した。結果を表4に示す。
Figure 0006853789
治療前後でのCCL‐5濃度の変化と有害事象との相関では、治療後にCCL‐5濃度が低下した場合に、特にgrade2≦のAST値が相関し肝機能異常発症が多かった。治療開始前のCCL‐5濃度(CO値以下)と治療開始後のVEGF‐A濃度の変化の組み合わせは、高ビリルビン血症(grade2≦)と血小板減少(grade1≦、grade2≦)の発症に関与していることが明らかとなった。また、VEGF単独でも同様の結果を得ている。すなわち治療開始後21日目のVEGF‐A濃度が低下する場合には、高ビリルビン血症(grade1≦)、高ビリルビン血症(grade2≦)、血小板減少(grade2≦)が有意に高頻度であった。
以上の結果から、CCL‐5とVEGF‐Aはサルベージ療法におけるレゴラフェニブ単剤療法において日本人で発症率の高い有害事象発症の治療前あるいは治療開始早期の効果予測マーカーとして用いることができる。
また、これら有害事象とCCL‐5、VEGF‐Aとの相関は、無増悪生存期間、全生存期間との相関に矛盾するものではない。治療前のCCL‐5濃度、治療早期のVEGF‐A濃度をレゴラフェニブの有効性の指標として使用し、さらに上記CCL‐5、VEGF‐A濃度と相関を有する有害事象に関して注意深く観察しながら、患者の治療を行えばよい。また、併せて治療開始前のAng‐2、bFGF、CCL‐2濃度を測定することによって、有害事象を予測することができる。
本発明ではレゴラフェニブについて詳細に解析を行ったが、化合物の構造ないし活性が類似するマルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブ、スニチニブ等の他のマルチキナーゼ阻害剤への適用も期待できる。
本発明で示したように、抗がん剤投与、化学療法によく反応する患者を選択して治療を行うことにより、治療の有効な患者にのみ抗がん剤治療を行い、不要な治療や重篤な副作用が生じるリスクを避けることが可能となる。

Claims (12)

  1. レゴラフェニブ(Regorafenib)投与による効果を予測するための検査方法であって、
    患者より採取された血液、血漿、又は血清試料中のCCL‐5濃度を測定することを特徴とする検査方法。
  2. 請求項1記載の検査方法であって、
    前記試料が治療開始前のものであることを特徴とする検査方法。
  3. 請求項2記載の検査方法であって、
    CCL‐5濃度が所定値より低いことは、
    無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)の改善が期待できることを示す検査方法。
  4. 請求項1、又は3記載の検査方法であって、
    さらに、患者試料中の治療開始前と初回治療開始後早期のVEGF‐A濃度を測定し、
    治療開始後のVEGF‐A濃度が治療開始前と比較して減少傾向にあることは、PFS及びOSの改善が期待できることを示す検査方法。
  5. 請求項4記載の検査方法であって、
    原病増悪時には、さらに患者試料中のVEGF‐A濃度を測定し、
    初回治療開始後早期のVEGF‐A濃度と比較して増加していることは、
    PFS及びOSの改善が期待できることを示す検査方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の検査方法であって、
    有害事象が生じるリスク予測のために治療開始前の患者試料中のAng‐2、bFGF、CCL‐2のうち少なくとも1つを測定する検査方法。
  7. レゴラフェニブ投与による効果を予測するための検査キットであって、
    患者の血液、血漿、又は血清試料中のCCL‐5濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とする検査キット。
  8. 請求項7記載の検査キットであって、
    さらに、VEGF‐A濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とする検査キット。
  9. 請求項7又は8記載の検査キットであって、
    さらに、Ang‐2、bFGF、CCL‐2のうち少なくとも1つの濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とするキット。
  10. 請求項7〜9いずれか1項記載のキットであって、
    前記試薬がイムノアッセイ用の試薬であることを特徴とするキット。
  11. レゴラフェニブ投与による効果を予測するためのバイオマーカーであって、
    CCL‐5であることを特徴とするバイオマーカー。
  12. レゴラフェニブ投与による有害事象を予測するためのバイオマーカーであって、
    CCL‐5、VEGF‐A、Ang‐2、bFGF、CCL‐2の少なくとも1つからなることを特徴とするバイオマーカー。
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