JP2021500566A - モエシンをバイオマーカーとして使用するher2依存性がんの診断及び/又は予後 - Google Patents

モエシンをバイオマーカーとして使用するher2依存性がんの診断及び/又は予後 Download PDF

Info

Publication number
JP2021500566A
JP2021500566A JP2020523009A JP2020523009A JP2021500566A JP 2021500566 A JP2021500566 A JP 2021500566A JP 2020523009 A JP2020523009 A JP 2020523009A JP 2020523009 A JP2020523009 A JP 2020523009A JP 2021500566 A JP2021500566 A JP 2021500566A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
her2
cancer
subject
moesin
prognosis
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020523009A
Other languages
English (en)
Inventor
サンドリーヌ ブルドゥル,
サンドリーヌ ブルドゥル,
アナイス ドマンゴ,
アナイス ドマンゴ,
カミーユ フォーレ,
カミーユ フォーレ,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Centre National de la Recherche Scientifique CNRS
Universite Paris 5 Rene Descartes
Original Assignee
Centre National de la Recherche Scientifique CNRS
Universite Paris 5 Rene Descartes
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Centre National de la Recherche Scientifique CNRS, Universite Paris 5 Rene Descartes filed Critical Centre National de la Recherche Scientifique CNRS
Publication of JP2021500566A publication Critical patent/JP2021500566A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6876Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
    • C12Q1/6883Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
    • C12Q1/6886Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material for cancer
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/118Prognosis of disease development
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/158Expression markers
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2800/00Detection or diagnosis of diseases
    • G01N2800/52Predicting or monitoring the response to treatment, e.g. for selection of therapy based on assay results in personalised medicine; Prognosis

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

【課題】モエシンをバイオマーカーとして使用するHER2依存性がんの診断及び/又は予後の提供。【解決手段】本発明は、対象においてHER2依存性がんを診断及び/又は予後予測する方法であって、(a)上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する工程と、(b)上記工程(a)で測定したモエシン量を基準値と比較する工程と、(c)上記工程(a)で測定したモエシン量が上記基準値から逸脱しているか逸脱していないかを確認する工程と、(d)逸脱しているか逸脱していないかの確認結果を、上記対象におけるHER2依存性がんの特定の診断及び/又は予後に帰する工程とを有する方法に関する。【選択図】なし

Description

乳がんは世界中で女性に最も一般的ながんであり、2012年にはおよそ170万件が新たに診断された(がん全体で二番目に多い)。これは新たながん件数全体の約12%、女性におけるがん全体の25%に当たる。乳がん件数の約半数及び死亡者数の60%が経済的な発展途上国で発生すると推定されている。フランスでの罹患率はヨーロッパの中で最も激しく、一定の割合で増加している。
原発性ヒト乳がんの約20〜30%がHER2の脱制御された発現を原因としており、フランスの年間患者数約8000人、世界の年間患者数450000人に当たる。HER2は、ヒト上皮成長因子受容体(HER/EGFR/ERBB)ファミリーの1つとして周知である。ErbB2の過剰発現は診断不良と関連しており、HER2が脱制御された腫瘍はより早く成長して悪性度が高まるとともに、化学療法やホルモン療法への感受性が低くなることが分かっている。HER2の脱制御は疾患の再発とも関連している。そして、いわゆるHER2依存性がんは、公衆衛生において最大の関心事である非常に特殊ながんグループを構成している。事実、処置を受けた患者のうち25%しか実際の治療法に反応しない。実際の戦略が狙う標的がHER2の細胞外領域であるもの(ハーセプチン/トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びGenentech社(米国)が近年開発したトラスツズマブエムタンシン等の抗HER2抗体療法)や、受容体のキナーゼ活性であるもの(ラパチニブ/タイケルブ(GSK社、米国)等の小分子チロシンキナーゼ阻害薬)は、作用が限定的であることが判明している。
特に、これらの分子は、HER2の変異型及び切断型に対して強い作用を持たない。トラスツズマブについては、処置を受けた患者のうち66%〜88%は処置に全く反応せず(すなわち「一次抵抗性」を呈する)、この薬剤に反応する処置患者のうち1/3では、平均して1年未満で疾患の進行(すなわち「獲得抵抗性」が発生する)が広く見られる。主としてp95HER−2の発現に起因する治療抵抗性の発生によって有効性は限定的となるが、これは、この高活性HER2切断型がトラスツズマブの認識部位を持たないからである。
一般的に、HER2の(過剰)発現は、乳がんの予後不良マーカーとして確立されている。がん/患者がHER2に対して「陽性」(すなわちHER2+)又はHER2に対して「陰性」(すなわちHER2−)であるかどうかを評価するために、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)検査や免疫組織化学的検査(IHC検査)等の様々な手法が開発されている。
本発明者らは、モエシンとHER2遺伝子との間に強い機能的関連を確認し、HER2依存性がんであるという診断又はHER2依存性がんの予後不良は、HER2+対象においてモエシンレベルが低いことと特異的に関連していることを見出した。
上記発見により、対象においてHER2依存性がんを診断及び/又は予後予測する新規な方法の開発が可能となる。
従って、ここで本発明者らは、診断及び/又は予後のための方法を提案する。該方法では、対象から採取した試料中のモエシン量を基準値と比較したものが、HER2依存性がんの予測又はHER2依存性がんの予後を表し、上記対象がHER2依存性がんを有する及び/又は進行させる危険性があるか否かを示す。
本発明は、対象においてHER2依存性がんを診断及び/又は予後予測する方法であって、
(a)上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する工程と、
(b)上記工程(a)で測定したモエシン量を基準値と比較する工程と、
(c)上記工程(a)で測定したモエシン量が上記基準値から逸脱しているか逸脱していないかを確認する工程と、
(d)逸脱しているか逸脱していないかの確認結果を、上記対象におけるHER2依存性がんの特定の診断及び/又は予後に帰する工程と
を有する方法に関する。
本発明はまた、対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後の変化をモニターする方法であって、
(a)1つ又は複数の連続した時点で本発明の方法を上記対象に対して実施することで、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後を決定する工程と、
(b)上記工程(a)で決定された、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後を比較する工程と、
(c)上記工程(a)で決定された、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断に変化があるか否かを確認する工程と
を有する方法に関する。
本発明はまた、HER2依存性がんの診断及び/又は予後をその対象において決定するためのキットであって、
上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する手段と、
HER2依存性がんの公知の診断及び/又は予後を表す上記モエシン量の基準値又は該基準値を設定する手段と
を有するキットに関する。
本発明はまた、HER2依存性がんの診断及び/又は予後をその対象において決定するためのキットの使用であって、該キットは、
対象から採取した試料中のモエシン量を測定する手段と、
HER2依存性がんの公知の診断及び/又は予後を表す上記モエシン量の基準値又は該基準値を設定する手段と
を有する、使用に関する。
本発明はまた、HER2依存性がんの診断及び/又は予後をそのヒト対象において決定するための、qRT−PCRによりモエシンのmRNAレベルを測定するための配列番号4及び配列番号5の2つのプローブの使用に関する。
(定義)
本明細書中、「診断する」又は「診断」並びに「予後予測する」又は「予後」という語は、最も広い意味で使用されており、医療及び臨床実務において一般的に使用され且つ十分に理解されている。限定することはないが、更に説明すれば、「予後予測する」又は「予後」とは、対象においてHER2依存性がんが進行する蓋然性、危険性、又は可能性を決定することを意味する。限定することはないが、更に説明すれば、「診断する」又は「診断」とは、対象におけるHER2依存性がんの存在の蓋然性又は可能性を決定することを意味する。
本明細書中、「HER2」という語は、ヒト上皮成長因子受容体ファミリーを構成するタンパク質の1つである「ヒト上皮成長因子受容体2」を意味する。また、「HER2」は「ErbB2」と呼ばれることも多い。本発明において「ErbB2」及び「HER2」は互換的に使用される。
本明細書中、「HER2依存性がん」、「HER2陽性がん」、又は「HER2+がん」という語は、HER2活性化の悪化を伴うがんを意味する。特に、「HER2依存性がん」という語は、「HER2非依存性がん」、「HER2陰性がん」、又は「HER2−がん」とは対照的に、HER2遺伝子の脱制御を示すがん細胞が確認されたがん症例を意味する。より具体的には、上記脱制御は、HER2遺伝子の増幅に相当し得る。このような増幅は遺伝子レベル又はタンパク質レベルで検出できる。例えば、アメリカ臨床腫瘍学会/アメリカ病理学会(ASCO/CAP)が乳がん向けに発行したガイドラインでは、乳がんのErbB2状態を決定するためのいくつかのカットオフ値が設定されている。これらのガイドラインでは、原発部位について、また可能であれば転移部位について、以下であれば、がんが「HER2依存性」であると考えるべきと規定されている。
・免疫化学的検査(IHC)において、浸潤がん細胞の30%超で均一且つ強い膜染色が見られる。あるいは、
・(i)測定されるCEP17(17番染色体のセントロメア)に対するHER2のFISH増幅比が2以上(デュアルプローブ試験)、若しくは(ii)CEP17(17番染色体のセントロメア)に対するHER2のFISH増幅比が2未満(デュアルプローブ試験)、且つ核1つあたりの平均HER2コピー数が少なくとも6(シングルプローブ試験)、又は(iii)細胞あたりのHER2コピー数ではシングルプローブ平均が少なくとも6シグナル。
更に、原発部位について、また可能であれば転移部位について、以下である場合、がんが「HER2非依存性」であると考えられる。
・IHCにおいて、細胞の10%未満で染色が見られないか、又は弱く不完全な膜染色若しくは弱いが完全な膜染色が見られる。あるいは、
・FISHのHER2/CEP17比が2未満、且つ細胞あたりの平均HER2コピー数が4シグナル未満であることが認められるか(デュアルプローブ試験)、又は細胞あたりの平均HER2コピー数が4シグナル未満であることが認められる(シングルプローブを使用する場合)。
原発部位について、また可能であれば転移部位について、以下である場合、HER2状態が不確かであると考えられる(そして、新しい試験を実施すべきである)。
・IHCにおいて、(i)周辺膜の不完全な標識及び/又は弱い/中程度の標識が認められるが、浸潤がん細胞の10%超においてであるか、又は(ii)周辺膜の完全且つ強い標識が認められるが、浸潤がん細胞の10%以下である。あるいは、
・FISHのHER2/CEP17比が2未満、且つ細胞あたりの平均HER2コピー数が4シグナル以上6シグナル未満であることが認められるか(デュアルプローブ試験)、又は細胞あたりの平均HER2コピー数が4シグナル以上6シグナル未満であることが認められる(シングルプローブを使用する場合)。
HER2遺伝子の脱制御は、そのコピー数に関わらず、HER2遺伝子の活性化変異にも相当し得るので、それによりHER2のチロシンキナーゼ活性が増大する。例えば、上記活性化変異としては、V659E、G309A、D769H、D769Y、V777L、P780ins、V842I、R896C、K753E、又はL755Sが挙げられ、ポリメラーゼ連鎖反応法又は任意の配列決定法によって検出できる(Bose et al.,Cancer Discov.,2013,3(2),224−237;Zuo et al.,Clin Cancer Res 2016,22(19),4859−4869)。また、HER2遺伝子の増幅及び体細胞活性化変異はいずれも、同じがん症例で検出できる。
FishやIHC以外に、確定したHER2状態を有する陰性及び陽性コントロール細胞を使用する周知の分子生物学的試験方法、例えば、酵素結合免疫吸着測定法、ウエスタンブロット法、ポリメラーゼ連鎖反応法等を比較として採用して、がんのHER2状態を決定できる。
本発明に係るHER2依存性がんは、乳がん、子宮内膜がん、子宮がん、又は卵巣がん等の女性生殖器がん、膀胱がん、肛門がん、大腸がん、特に子宮体部漿液性腺がん(uterine papillary serous carcinoma)等の子宮漿液性がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胃食道がん、胃がん(stomach cancer)、膵臓がん、及び胃がん(gastric cancer)からなる群より選択されることが好ましい。好ましい実施形態において、上記HER2依存性がんは、HER2+乳がん、HER2+卵巣がん、HER2+膀胱がん、HER2+大腸がん、HER2+子宮体部漿液性腺がん、及びHER2+胃がん(gastric cancer)であってもよく、HER2+乳がんが好ましい。
本発明の目的上、「マーカー(又は「バイオマーカー」)」という語は、タンパク質又はリボ核酸(RNA)等、HER2依存性がんの診断及び/又は予後のために使用できる実体である。本発明によれば、上記バイオマーカーはモエシン、すなわちタンパク質自体、又は該モエシンをコードするmRNA等のRNAである。本発明の目的上、上記バイオマーカーはタンパク質であることが好ましい。
モエシン(膜組織化伸張スパイクタンパク質(membrane−organizing extension spike protein))は、ヒトにおいてMSN遺伝子によりコードされるタンパク質である。モエシンは、密接に関連する3種のタンパク質であるエズリン、ラディキシン、及びモエシンで構成されたERMタンパク質ファミリーの1種である。これらのタンパク質は、膜タンパク質と皮質細胞骨格との結合を制御し、シグナル伝達経路を誘発するので、細胞の形態形成、接着、又は遊走等、多くの重要な生理学的プロセスにおいて中心的な役割を果たす。モエシンの例としては、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒトモエシン(Uniprotアクセッション番号:P26038)が挙げられるが、これに限定されない。
本明細書中、「対象」又は「患者」という語は、HER2依存性がんの影響を受けた又は受けやすいヒト又はヒト以外の哺乳類(げっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌ、又は霊長類等)を意味する。上記対象は、ヒト、男性、又は女性であることが好ましい。上記対象はHER2+であることが好ましい。
本明細書中、「HER2+対象」という語は、HER2の発現及び/又は活性化に対して陽性であるがんを有する対象を意味する。HER2発現の検査には、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)検査、発色インサイツハイブリダイゼーション、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)、又は免疫組織化学(IHC)検査等、様々な手法が採用できる。
本明細書中、「試料」又は「生体試料」という語は、対象から得られた生物学的検体(腫瘍試料又は体液試料等)を含む。体液試料は、血液、血清血漿、唾液、尿、羊水、母乳、気管支洗浄液、脳脊髄液、腹水、精液、涙、及び胸水からなる群より選択でき、血液が好ましい。腫瘍試料は、腫瘍生検等の生検を含んでいてもよい。
「基準値」又は「基準プロファイル」という語は、(i)HER2依存性がんではないという診断、(ii)HER2依存性がんであるという診断、(iii)HER2依存性がんの予後良好、又は(iv)HER2依存性がんの予後不良を表す値又はプロファイルを意味する。例えば、モエシン量の基準値は以下のようにして得られる。
(a)
(a1)HER2依存性がんではない1つ以上の対象から採取した1つ以上の試料、又は
(a2)HER2依存性がんである1つ以上の対象から採取した1つ以上の試料
におけるモエシン量を測定する。
(b)
(b1)(a1)で測定したモエシン含量を、HER2依存性がんではないという診断及び/又は予後を表す基準値、又は
(b2)(a2)で測定したモエシン含量を、HER2依存性がんであるという診断及び/又は予後を表す基準値
として保存する。
また、基準値は基準範囲を包含する。
「量」、「含量」、及び「レベル」という語は同義語であり、当該分野において一般的に十分理解されている。本明細書中、これらの用語は、特に試料におけるバイオマーカーの絶対的定量、又は試料におけるバイオマーカーの相対的定量(すなわち、別の値に対して、例えば、本明細書中で教示される基準値に対して)を意味していてもよく、あるいはバイオマーカーのベースライン発現を示す数値範囲を意味していてもよい。これらの値又は範囲は、単一の患者から得られたものであっても、患者群から得られたものであってもよい。試料中のバイオマーカーの絶対含量は、重量又はモル量で表現するのが有利であり、濃度で表現するのがより一般的である。試料中のバイオマーカーの相対含量は、別の値に対する(すなわち、別の値と比較した)、例えば基準値に対する(すなわち、基準値と比較した)増加又は減少として表現するのが有利である。
第一の値の第二の値からの「逸脱」という語は、一般に、第二の値と比較して第一の値が増加又は減少しているなど、任意の方向性を包含していてもよい。
「処置する」又は「処置」という語は、この用語が適用される障害若しくは異常、又は該障害若しくは異常の1つ以上の症状を元に戻すこと、軽減すること、その進行を阻害すること、又は予防することを意味する。具体的には、障害の処置は、がん細胞を破壊すること、枯渇させること、又はその増殖を阻害することであってもよい。このような処置によってがん細胞を完全に枯渇させることが最も好ましい。
(診断及び/又は予後)
本発明は、本発明者らが明らかにした利点、すなわち、モエシン量の増加又は減少によって、HER2依存性がんを診断及び/又は予後予測できるという利点から得られたものである。得られる用途を以下に記載する。
本発明は、対象においてHER2依存性がんを診断及び/又は予後予測する方法であって、
(a)上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する工程と、
(b)上記工程(a)で測定したモエシン量を基準値と比較する工程と、
(c)上記工程(a)で測定したモエシン量が上記基準値から逸脱しているか逸脱していないかを確認する工程と、
(d)逸脱しているか逸脱していないかの確認結果を、上記対象におけるHER2依存性がんの特定の診断及び/又は予後に帰する工程と
を有する方法に関する。
本発明の方法は、まだHER2依存性がんであるとは診断されていない個体(例えば予防スクリーニング)、HER2依存性がんであると診断された個体、HER2依存性がんが疑われる個体(例えば、HER2依存性がんに特徴的な症状を1つ以上示す)、又はHER2依存性がんが進行する危険性がある個体に使用できる。また、本方法は、HER2依存性がんの進行又は重症度の各種段階を検出するのにも使用できる。
工程(a)
工程(a)では、対象から採取した試料中のモエシン量を測定する。
モエシン量は、従来技術において公知である任意の好適な手法で測定できる。いくつかの実施形態において、モエシン量は、モエシン及び/又はその断片と特異的に結合できる結合剤を用いて測定できる。上記結合剤は、抗体、アプタマー、タンパク質、ペプチド、又は小分子であってもよい。例えば、モエシン量は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、免疫放射定量測定法(IRMA)、若しくは放射免疫測定法(RIA)等の免疫測定法、質量分析法、又はクロマトグラフィー法を用いて、あるいは上記方法を組み合わせて測定する。他のいくつかの実施形態において、モエシン量は、RNA又はDNAマイクロアレイに対するデジタル分子バーコード法又はqRT−PCR等の任意の好適な手法を用いたモエシンmRNAの測定により決定できる。
工程(b)&(c)
工程(b)及び(c)では、工程(a)で測定したモエシン量を基準値と比較し、工程(a)で測定したモエシン量が基準値から逸脱しているか逸脱していないかを確認する。
モエシン量の逸脱は、基準値と比較したモエシン量の減少、又は基準値と比較したモエシン量の増加を包含していてもよい。
例えば、基準値と比較したモエシン量の逸脱は、基準値と比較して少なくとも約10%(約0.9倍以下)、少なくとも約20%(約0.8倍以下)、少なくとも約30%(約0.7倍以下)、少なくとも約40%(約0.6倍以下)、少なくとも約50%(約0.5倍以下)、少なくとも約60%(約0.4倍以下)、少なくとも約70%(約0.3倍以下)、少なくとも約80%(約0.2倍以下)、少なくとも約90%(約0.1倍以下)、又はそれ以上の減少を包含していてもよい。
例えば、基準値と比較したモエシン量の逸脱は、基準値と比較して少なくとも約10%(約1.1倍以上)、少なくとも約20%(約1.2倍以上)、少なくとも約30%(約1.3倍以上)、少なくとも約40%(約1.4倍以上)、少なくとも約50%(約1.5倍以上)、少なくとも約60%(約1.6倍以上)、少なくとも約70%(約1.7倍以上)、少なくとも約80%(約1.8倍以上)、少なくとも約90%(約1.9倍以上)、少なくとも約100%(約2倍以上)、少なくとも約150%(約2.5倍以上)、少なくとも約200%(約3倍以上)、少なくとも約500%(約6倍以上)、少なくとも約900%(約10倍以上)、又はそれ以上の増加を包含していてもよい。
好ましい実施形態において、対象から採取した試料中のモエシン量は、基準値と比較して少なくとも0.5倍減少しており、より好ましくは少なくとも0.7倍減少している。
別の好ましい実施形態において、対象から採取した試料中のモエシン量は、基準値と比較して少なくとも1.5倍増加しており、より好ましくは少なくとも2倍増加している。
別の好ましい実施形態において、対象から採取した試料中のモエシン量は基準値と等しい。
工程(d)
工程(d)では、工程(c)での逸脱しているか逸脱していないかの確認結果を、対象におけるHER2依存性がんの特定の診断及び/又は予後に帰する。
基準値と比較したモエシン量の逸脱が増加である場合、HER2依存性がんではないという診断、又はHER2依存性がんの予後良好を表している。従って、対象から採取した試料中のモエシン量が基準値と比較して多い場合、該対象はHER2依存性がんではないこと、又は該対象は生存期間が長いことを示している。
基準値と比較したモエシン量の逸脱が減少である場合、HER2依存性がんであるという診断、又はHER2依存性がんの予後不良を表している。従って、対象から採取した試料中のモエシン量が基準値と比較して少ない場合、該対象はHER2依存性がんであること、及び/又は該対象は生存期間が短いことを示している。
モエシン量と基準値との間に逸脱が見られない場合、そのように逸脱が存在しないということは、HER2依存性がんの診断及び/又は予後が基準値で表されるものと実質的に同じであるという結論を示しているか、あるいはそのような結論に帰すことができる。
また、本発明の方法は、HER2依存性がんに関する別の1種以上のバイオマーカーの評価と組み合わせてもよい。
上記1種以上のバイオマーカーは、ER/PR(エストロゲン受容体/プロゲステロン受容体)、HER2、p95HER2、KI67、TOP2A(トポイソメラーゼ2α)、BCL2(B細胞リンパ腫2)、GSTM1(グルタチオンS−トランスフェラーゼMu1)、BAG1、サイクリンB1、カテプシンL2、CD68、及びTP53からなる群より選択できる。
(診断及び/又は予後の変化をモニターする方法)
また、対象におけるHER2依存性がんを診断及び/又は予後予測する方法を用いて、予防又は治療処置等の介入治療に対するHER2依存性がんの反応を検出することができ、例えば、該予防又は治療処置等の介入治療中の各時点で上記方法を実施することによって検出できる。
従って、本発明は、対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後の変化をモニターする方法であって、
(a)1つ又は複数の連続した時点で請求項1〜10のいずれかの方法を上記対象に対して実施することで、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後を決定する工程と、
(b)上記工程(a)で決定された、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後を比較する工程と、
(c)上記工程(a)で決定された、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断に変化があるか否かを確認する工程と
を有する方法に関する。
いくつかの実施形態において、上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後の変化は、上記対象の医学的処置中にモニターされる。
上記医学的処置は、予防処置又は治療処置であってもよく、抗腫瘍処置であることが好ましい。上記抗腫瘍処置は、上記HER2依存性がんの処置として知られている任意の処置であってもよい。例えば、上記抗腫瘍処置は、抗HER2抗体療法(例えば、ハーセプチン/トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びトラスツズマブエムタンシン(Genentech社、米国))等、HER2の細胞外領域を標的とすることを狙ったものでもよいし、あるいは上記抗腫瘍処置は、小分子チロシンキナーゼ阻害薬(例えば、ネラチニブ、ツカチニブ(Tucatinib)、又はラパチニブ/タイケルブ(GSK社、米国))等、HER2のキナーゼ活性を標的とすることを狙ったものでもよい。また、上記抗腫瘍処置は、パクリタキセル等のタキサン系化学療法であってもよい。
(キット)
本発明はまた、HER2依存性がんの診断及び/又は予後をその対象において決定するためのキットであって、
・上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する手段と、
・HER2依存性がんの公知の診断及び/又は予後を表す上記モエシン量の基準値又は該基準値を設定する手段と
を有するキットに関する。
本発明はまた、HER2依存性がんの診断及び/又は予後をその対象において決定するためのキットの使用であって、上記キットは、
・上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する手段と、
・HER2依存性がんの公知の診断及び/又は予後を表す上記モエシン量の基準値又は該基準値を設定する手段と
を有する、使用に関する。
いくつかの実施形態において、手段は、モエシン及び/又はその断片と特異的に結合できる結合剤を含んでいてもよい。上記結合剤は、抗体、アプタマー、タンパク質、ペプチド、又は小分子であってもよい。
他のいくつかの実施形態において、手段は、モエシンmRNAの特異的且つ定量的な増幅のための特異的増幅プライマー及び/又はプローブを含んでいてもよく、例えば、上記プライマー及び/又はプローブは配列番号4及び配列番号5である。
本発明はまた、HER2依存性がんの診断及び/又は予後をそのヒト対象において決定するための、モエシンmRNAの特異的且つ定量的な増幅のための配列番号4及び配列番号5のプライマー及び/又はプローブの使用に関する。
(処置方法)
上述の通り、本発明は、予防又は治療処置等の介入治療に対するHER2依存性がんの反応を検出するのに有用であり、例えば、該予防又は治療処置等の介入治療中の各時点で上記方法を実施することによって検出できる。
同様に、本発明はまた、対象におけるHER2依存性がんを処置する方法であって、
(i)本発明に係る診断又は予後予測方法を実施する工程と、
(ii)上記方法により上記対象はHER2依存性がんであると示される場合、及び/又は上記対象は生存期間が短いと示される場合、上記対象において適切な処置を開始する工程と
を有する方法に関する。
具体的な一実施形態において、上記適切な処置は、予防処置又は治療処置から選択される1種以上の薬物療法であり、抗HER2抗体療法(例えば、ハーセプチン/トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びトラスツズマブエムタンシン(Genentech社、米国))等、HER2の細胞外領域を標的とすること、又は小分子チロシンキナーゼ阻害薬(例えば、ネラチニブ、ツカチニブ(Tucatinib)、又はラパチニブ/タイケルブ(GSK社、米国))等、HER2のキナーゼ活性を標的とすることを目的とした抗腫瘍処置であることが好ましい。
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
異なるHER2状態を有するいくつかの乳がん細胞株において、エズリン及びラディキシン(図1A、左パネル)並びにHER2及びモエシン(図1A、右パネル)の発現レベルをウエスタンブロット分析で定量化したものを表す。図1Aは、HER2の発現/活性化レベルとモエシンの発現レベルとに強い逆相関があることを示す。この結果は、各種のHER2状態を有する25個の乳がん細胞株に対して実施したqRT−PCR分析によって、mRNAレベルでも確認された(図1B)。MSNhiは、MSNの発現が高いことを意味する。MSNloは、MSNの発現が低いことを意味する。 HER2+乳がん(HER2+BC)患者30人又はHER2−乳がん(HER2−BC)患者130人のカプラン・マイヤー全生存期間分析をモエシン発現レベルに応じて表す。BCは「乳がん」を意味する。 TCGAコホートの浸潤性乳がん患者から採取した腫瘍試料529個から得られたHER2及びMSNのmRNA発現データ(Agilent社製マイクロアレイ)に逆相関があることを表す。 METABRICコホートから選択したHER2+乳がん(n=236、HER2+BC)又はHER2−乳がん(n=1668、HER2−BC)患者のカプラン・マイヤー全生存期間分析をモエシン発現レベルに応じて表す。
(実施例1:方法)
方法:
データセット及びmRNA発現分析
TCGAコホートの浸潤性乳がん患者から採取した試料529個におけるMSN及びHER2のmRNA発現プロファイルをcbioportalデータベース(http://www.cbioportal.org)から収集した。それらの発現量を色分けした表示を上パネルに、散布図を下パネルに示す。次いで、GraphPad prismソフトウェアを使用し、スピアマンのrho係数算出により相関分析した(図3)。
データセット及びmRNA発現分析
オンラインのカプラン・マイヤープロッター(http://kmplot.com/analysis/)を用いて、乳がん患者の全生存期間を評価した。患者(GEO(Affymetrix社製HGU133A及びHGU133+2マイクロアレイ)から得た患者1809人に由来する遺伝子発現データ及び生存情報)をモエシン発現レベルの下位四分位に従って2群に分けた。分析は、HER2陽性状態((ICH)のみ及び分子サブタイプHER2+ER、n=30)又はHER2−(ER+/−、n=130)の乳がん患者のいずれかに限定した。カプラン・マイヤー生存プロットによって2群の患者コホートを比較し、95%信頼区間のハザード比とログランクP値とを算出する。各データベースは半年ごとに更新する(図2)。
また、METABRICコホートの乳がん患者の全生存期間を、cbioportalデータベース(http://www.cbioportal.org/)で得られた該患者の臨床及びトランスクリプトームプロファイルに基づいて分析した。HER2+乳がん患者236人又はHER2−乳がん患者1668人をモエシン発現レベル中央値に従って2群に分けた。カプラン・マイヤー生存プロットによって2群の患者コホートを比較し、95%信頼区間のハザード比とログランク(Mantel−Cox)検定値とを算出した。
細胞株
異なるHER2状態を有する乳がん細胞株から得たライセート(UACC−812(ATCC(登録商標)CRL−1897(商標))、MDA−MB−361(ATCC(登録商標)HTB−27(商標))、ZR−75−30(ATCC(登録商標)CRL−1504(商標))、HCC202(ATCC(登録商標)CRL−2316(商標))、及びSK−BR−3[SKBR3](ATCC(登録商標)HTB−30(商標)))を分析した。それらは、Emmanuelle Charafe−Jauffret博士(エクス=マルセイユ大学、Institut Paoli−Calmettes)から入手した。
試薬
一次抗体としては、抗HER2(ab2428、Abcam社、1:1000)、抗クラスリン(BD Biosciences社、#610500、1:1000)を使用した。二次抗体としては、HRP(GE Healthcare社、1:5000)と結合させた抗ウサギIgG(#NA9340−1ML、GE Healthcare社)又は抗マウスIgG(#NA9310−1ML、GE Healthcare社)を使用した。抗MSNは、Paul Mangeat博士(モンペリエ大学)から贈呈されたものであり、1:1000希釈で使用した。
ウエスタンブロット
標準プロトコルに従い、Laemmliバッファを用いて95℃10分でライセートを変性させ、勾配バッファ(100mMトリス、100mMトリシン、0.1%SDS)中、10%SDS/ポリアクリルアミドゲル(ProSieve、Lonza社)でタンパク質を分離し、転写バッファ(20%EtOH、25mMトリス、192mMグリシン、pH8.5)を用いてニトロセルロース膜(Whatman(登録商標))上に転写した。3%BSA含有TBSTバッファ(140mM NaCl、3mM KCl、25mMトリス、0.1%Tween)を用いて室温30分で膜をブロッキングし、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。二次抗体として、西洋わさびペルオキシダーゼ結合抗ウサギ又は抗マウス抗体を使用した。SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce社)を用いて、FUSION−FX7−SPECTRA撮影システム(Vilber Lourmat社)で検出した。
RNA抽出、cDNA調製、及びリアルタイム定量RT−PCR分析
Tri Reagent(登録商標)(Sigma社、T9424)を用いて細胞から全RNAを抽出した。NanoDrop2000分光光度計(Thermo Scientific社、デラウェア州ウィルミントン)を用いて、全RNAの濃度及び完全性を測定した。RNaseOUT(商標)処理(Thermo Scientific社、デラウェア州ウィルミントン)後にSuperScript(商標)II RTを用いて全RNA200ngで逆転写反応を実施した。製造業者の指示書に従い、SYBR Green I Masterキット(Roche Life Science社)を用いて、LightCycler 480 Instrument IIでリアルタイム定量PCR(qRT−PCR)を10μlで実施した。
PCRプライマーは以下の通りである。
HER2
フォワードHER2 5’−GCCGCAGTGAGCACCAT−3(配列番号2)
リバースHER2 5’−CGCAGCTTCATGTCTGTGC−3’(配列番号3)
MSN
フォワードMSN 5’−GGAATGAGACAGGACCTAGGATATCTT−3’(配列番号4)
リバースMSN 5’−GGAATGAGACAGGACCTAGGATATCTT−3’(配列番号5)
GAPDH
フォワードGAPDH 5’−GATCCCTCCAAAATCAAGTGG−3’(配列番号6)
リバースGAPDH 5’−GCAAATGAGCCCCAGCCTTCTC−3’(配列番号7)
PCR条件は、95℃10秒;60℃10秒;72℃15秒であった。各ランの最後に融解曲線分析を実施して、単一の生成物が合成されたことを確認した。2−ΔΔCt法を用いて、GAPDHで標準化したHER2の相対発現量を算出した。各種のHER2状態を有する25種類の乳がん細胞株について、HER2及びMSNのmRNAレベルの分析を実施した。
(実施例2:HER2発現に対するモエシン発現の影響)
(材料及び方法)
異なるHER2状態を有するいくつかの乳がん細胞株(UACC812、MDAMB361、ZR−7530、HCC202、及びSKBR3)において、HER2及びモエシンの発現レベルをウエスタンブロットで分析し、定量した(図1A)。
HER2及びモエシンのmRNA発現レベルをAgilent社のマイクロアレイデータから入手し、TCGAコホートの浸潤性乳がん患者529人から収集した(http://www.cbioportal.org)。それらの発現量を色分けした表示を上パネルに、散布図を下パネルに示す。HER2発現レベルが低い患者(zスコア<2)を薄灰色で、HER2発現レベルが高い患者(zスコア≧2)を黒色で示す。そして、スピアマンのrho係数算出(r=−0.3012、P<0.0001)によって、HER2とMSNとのmRNA発現の相関を評価した(図3)。
オンラインの乳がん用カプラン・マイヤープロッター(http://kmplot.com/analysis/)を用いて、乳がん患者の全生存期間に対するモエシン発現レベルの影響を分析した。モエシン発現レベルの下位四分位に従って患者を2群に分けた。分析は、HER2陽性状態(分子サブタイプ(HER2+ER)に対する免疫組織化学的検査(IHC)によりHER2+、図2A)又はHER2−乳がん患者(図2B)のいずれかに限定した。
(結果)
様々な乳がん細胞株に対してインビトロで分析を行った結果、HER2の発現/活性化レベルとモエシンの発現レベルとに強い逆相関が見られた(図1)。
これはインビボでも確認されたものであり、浸潤性乳がん患者529人から採取した腫瘍試料を分析したところ、HER2発現が高い患者ではモエシン発現が低いことがはっきりと観察された(図3)。実際、スピアマン相関検定によって、HER2及びモエシンのmRNA発現レベルに強く且つ非常に顕著な逆相関があることが明らかとなった(r=−0.3012、P<0.0001)(図3)。
乳がんデータに対するカプラン・マイヤー生存期間分析の結果、HER2+乳がんであると診断された患者30人に見られるモエシン発現レベルの低さは、モエシン発現が高い患者と比較して全生存期間が顕著に短いこと及び予後が不良であることと関連することが明らかとなった(42ヶ月対>150ヶ月(P=0、0239);死亡率:75%に対して<30%)(図2A)。しかしながら、モエシン発現レベルがHER2−乳がん患者の生存プロファイルを変化させなかったことから、これはHER2+乳がんに特異的なものであった(図2B)。
これらの発見は、METABRICコホートから得られた分析データにより裏付けられる。HER2+乳がんであると診断された患者236人に見られるモエシン発現レベルの低さは、モエシン発現が高い患者と比較して全生存期間が顕著に短いこと及び予後が不良であることと関連することが分かる(85.3ヶ月対120.1ヶ月(P=0.0173);死亡率:68%に対して55%)(図4A)。重要な点として、モエシン発現レベルではHER2−乳がん患者をその予測全生存期間により区分けすることはできないことから、これはHER2+乳がんに特異的である(HER2−患者1168人、P=0.3676、図4B)。
(結論)
これらの結果から、インビトロ(乳がん細胞中)及びインビボ(乳がん患者から採取した腫瘍試料中)においてHER2及びMSNの抑制は逆相関することが確認された。更に、生存期間分析の結果、モエシンの発現レベルの低さは、HER2+乳がんであると診断された患者において特異的に全生存期間が短いことと関連することが確認された。従って、モエシンは、対象においてHER2+乳がんを診断及び/又は予後予測するための予測バイオマーカーである。更に、上記データから、MSNの喪失はHER2+BCに特異的であることが分かる。BC患者におけるMSNの喪失は、HER2+がんであることを示している。

Claims (15)

  1. 対象においてHER2依存性がんを診断及び/又は予後予測する方法であって、
    (a)上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する工程と、
    (b)上記工程(a)で測定したモエシン量を基準値と比較する工程と、
    (c)上記工程(a)で測定したモエシン量が上記基準値から逸脱しているか逸脱していないかを確認する工程と、
    (d)逸脱しているか逸脱していないかの確認結果を、上記対象におけるHER2依存性がんの特定の診断及び/又は予後に帰する工程と
    を有する方法。
  2. 上記対象から採取した試料中のモエシン量が上記基準値と比較して少ない場合、上記対象はHER2依存性がんであること、及び/又は上記対象は生存期間が短いことを示している、請求項1に記載の方法。
  3. 上記対象から採取した試料中のモエシン量が上記基準値と比較して多い場合、上記対象はHER2依存性がんではないこと、又は上記対象は生存期間が長いことを示している、請求項1に記載の方法。
  4. 上記試料は腫瘍試料又は体液試料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 上記体液試料は、血液、血清血漿、唾液、尿、羊水、母乳、気管支洗浄液、脳脊髄液、腹水、精液、涙、及び胸水からなる群より選択され、好ましくは血液である、請求項4に記載の方法。
  6. 上記対象から採取した試料中のモエシン量は、上記基準値と比較して少なくとも0.5倍減少しており、より好ましくは少なくとも0.7倍減少している、請求項2に記載の方法。
  7. 上記対象から採取した試料中のモエシン量は、上記基準値と比較して少なくとも1.5倍増加しており、より好ましくは少なくとも2倍増加している、請求項3に記載の方法。
  8. 上記対象から採取した試料中のモエシン量は上記基準値と等しい、請求項1、4、又は5に記載の方法。
  9. 上記基準値は、(i)HER2依存性がんではないという診断、又は(ii)HER2依存性がんであるという診断、(iii)HER2依存性がんの予後良好、又は(iv)HER2依存性がんの予後不良を表す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 上記HER2依存性がんは、乳がん、子宮内膜がん、子宮がん、又は卵巣がん等の女性生殖器がん、膀胱がん、肛門がん、大腸がん、特に子宮体部漿液性腺がん(uterine papillary serous carcinoma)等の子宮漿液性がん、肺がん、特に非小細胞肺がん、肝臓がん、腎臓がん、胃食道がん、胃がん(stomach cancer)、膵臓がん、及び胃がん(gastric cancer)からなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 上記HER2依存性がんはHER2+乳がんである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後の変化をモニターする方法であって、
    (a)1つ又は複数の連続した時点で請求項1〜11のいずれかの方法を上記対象に対して実施することで、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後を決定する工程と、
    (b)上記工程(a)で決定された、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後を比較する工程と、
    (c)上記工程(a)で決定された、上記連続した時点での上記対象におけるHER2依存性がんの診断に変化があるか否かを確認する工程と
    を有する方法。
  13. 上記対象におけるHER2依存性がんの診断及び/又は予後の変化は、上記対象の医学的処置中にモニターされる、請求項12に記載の方法。
  14. 上記医学的処置は予防処置又は治療処置であり、好ましくは抗腫瘍処置である、請求項12又は13のいずれか1項に記載の方法。
  15. HER2依存性がんの診断及び/又は予後をその対象において決定するためのキットの使用であって、該キットは、
    上記対象から採取した試料中のモエシン量を測定する手段と、
    HER2依存性がんの公知の診断及び/又は予後を表す上記モエシン量の基準値又は該基準値を設定する手段と
    を有する、使用。

JP2020523009A 2017-10-24 2018-10-24 モエシンをバイオマーカーとして使用するher2依存性がんの診断及び/又は予後 Pending JP2021500566A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP17306465 2017-10-24
EP17306465.0 2017-10-24
PCT/EP2018/079213 WO2019081608A1 (en) 2017-10-24 2018-10-24 DIAGNOSIS AND / OR PROGNOSIS OF HER2-DEPENDENT CANCER USING MOESIN AS A BIOMARKER

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021500566A true JP2021500566A (ja) 2021-01-07

Family

ID=60413117

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020523009A Pending JP2021500566A (ja) 2017-10-24 2018-10-24 モエシンをバイオマーカーとして使用するher2依存性がんの診断及び/又は予後

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20200308652A1 (ja)
EP (1) EP3701049B1 (ja)
JP (1) JP2021500566A (ja)
WO (1) WO2019081608A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102355205B1 (ko) 2020-04-22 2022-01-25 서울대학교병원 방광암 세포의 이동성 예측용 조성물 및 이를 포함하는 키트

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20170045519A1 (en) * 2014-04-22 2017-02-16 Shanghai Kexin Biotech Co., Ltd. Method and biomarker for detecting cancer

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2188385A2 (en) * 2007-09-07 2010-05-26 Université Libre de Bruxelles Methods and tools for prognosis of cancer in her2+ patients
EP2278026A1 (en) * 2009-07-23 2011-01-26 Université de la Méditerranée A method for predicting clinical outcome of patients with breast carcinoma
FR3018919B1 (fr) * 2014-03-18 2018-03-16 Universite Paris Descartes Procede de criblage d'inhibiteurs d'erbb2 et ses applications

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20170045519A1 (en) * 2014-04-22 2017-02-16 Shanghai Kexin Biotech Co., Ltd. Method and biomarker for detecting cancer
JP2017515107A (ja) * 2014-04-22 2017-06-08 シャンハイ クーシン バイオテック カンパニー,リミテッド がんを検出するための方法およびバイオマーカー

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
M BARTOVA ET AL: "Expression of ezrin and moesin in primary breast carcinoma and matched lymph metastases", CLINICAL AND EXPREIMINTAL METASTASIS, vol. 34, no. 5, JPN7022003493, 17 June 2017 (2017-06-17), pages 333 - 344, XP036299974, ISSN: 0005006360, DOI: 10.1007/s10585-017-9853-y *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019081608A1 (en) 2019-05-02
EP3701049B1 (en) 2021-12-08
EP3701049A1 (en) 2020-09-02
US20200308652A1 (en) 2020-10-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10539566B2 (en) Use of markers including filamin A in the diagnosis and treatment of prostate cancer
US20120225954A1 (en) Methods and compositions for the classification of non-small cell lung carcinoma
US20210310080A1 (en) Composition for diagnosing cancer using potassium channel proteins
CN114854863A (zh) 基于生物标志物构建的模型在预测癌症免疫疗效中的应用
JP2020143103A (ja) 癌処置のためのMetタンパク質の定量
US20240069029A1 (en) Pd-ecgf as biomarker of cancer
JP6361943B2 (ja) 補体因子bタンパク質に特異的に結合する抗体及び糖鎖抗原19−9タンパク質に特異的に結合する抗体を含む膵臓癌診断用キット
JP2021500566A (ja) モエシンをバイオマーカーとして使用するher2依存性がんの診断及び/又は予後
US11814685B2 (en) Diagnosis and/or prognosis of HER2-dependent cancer using one or more miRNA as a biomarker
JP2018531234A6 (ja) 癌処置のためのMetタンパク質の定量
EP2895863B1 (en) New biomarkers for the diagnosis and/or prognosis of clear cell renal cell carcinoma
EP3336547A1 (en) Novel human bladder cancer biomarkers and their diagnostic use
Olivieri et al. Urinary protease inhibitor Serpin B3 is higher in women and is further increased in female patients affected by aldosterone producing adenoma
US11994513B2 (en) Diagnostic and prognostic methods for estrogen-induced cancers
KR102326119B1 (ko) 암의 면역 치료 후 예후 예측용 바이오 마커
US20230228753A1 (en) Methods of detecting cancer
US20240044902A1 (en) Methods for the detection and treatment of ovarian cancer
JP2017201255A (ja) がんの検出法
CN107850599B (zh) Wbp2与her2作为共预后因子对患者分层以进行治疗
CA2929492C (en) Methods of detecting cancer
US20190064172A1 (en) Prognosis of serous ovarian cancer using biomarkers
KR20230126529A (ko) 췌장암 진단을 위한 세포외 소포체 유래 miRNA 유전자 바이오마커 및 이의 용도
KR20210080694A (ko) 암의 진단용 조성물
TW201740109A (zh) 檢測癌症之方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201116

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210916

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220719

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220726

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230307