JP6848554B2 - 鋳型、鋳型形成方法、及び鋳造方法 - Google Patents
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温度応答性ゾルゲル転移材料を積層して三次元形状の造形を試行した公知事例は存在する(特許文献1〜3参照)。
(1)ハイドロゲル材料で構成された鋳型であって、
前記ハイドロゲル材料は、
ゾルゲル転移温度より低い温度でゾル化し、且つ、ゾルゲル転移温度より高い温度でゲル化する、ゾルゲル転移温度を有する、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルと、
前記ハイドロゲルを補強する、架橋性の水溶性高分子Bが架橋されてなる架橋構造と、
を含む鋳型。
ゾル化除去できる点が鋳型として有用にも関わらず、強度の問題により、従来は温度応答性ゾルゲル転移材料を鋳型として用いられることが無かった。
本発明は、上記の問題を解決するものである。
(1)ハイドロゲル材料で構成された鋳型であって、
前記ハイドロゲル材料は、
ゾルゲル転移温度より低い温度でゾル化し、且つ、ゾルゲル転移温度より高い温度でゲル化する、ゾルゲル転移温度を有する、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルと、
前記ハイドロゲルを補強する、架橋性の水溶性高分子Bが架橋されてなる架橋構造と、
を含む鋳型。
(2)前記ハイドロゲルがゾルゲル転移温度以上で実質的に非水溶性である上記(1)に記載の鋳型。
本実施形態によれば、ハイドロゲルがゾルゲル転移温度以上で実質的に非水溶性であるため、ハイドロゲルを成形した後に水溶液状の架橋剤を添加しても形状を崩さずに鋳型を作製することができる。
(3)前記ハイドロゲルのゾルゲル転移温度が0℃〜40℃である上記(1)又は(2)に記載の鋳型。
本実施形態によれば、ハイドロゲルのゾルゲル転移温度が0℃〜40℃であるため、室温付近の温度領域で鋳型の形成と離型を行うことができる。
(4)前記温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルと、架橋性の水溶性高分子Bと、を含む鋳型状成形物に対し、架橋剤を含む水溶液を表面から添加することによって前記架橋性の水溶性高分子Bを架橋させる上記(1)〜(3)の何れかに記載の鋳型を形成する鋳型形成方法。
本実施形態によれば、ハイドロゲルを成形してから架橋性の高分子Bを架橋させて鋳型を作製するため、ディスペンサーを用いて任意形状にハイドロゲルを造形してから鋳型を形成できる。
(5)前記温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aと架橋性の水溶性高分子Bと、を含む水溶液に対し、架橋剤を添加して分散させた後に型で成形し、水溶液を昇温することにより、前記温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルを形成し、且つ前記架橋性の水溶性高分子Bを架橋させる上記(1)〜(3)の何れかに記載の鋳型を形成する鋳型形成方法。
本実施形態によれば、架橋剤を含んだハイドロゲルを用いるため、別の型に流し込んで昇温するだけで温度応答性ゾルゲル転移材料の鋳型を作製できる。
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋳型を用いてモデル材を鋳造し、鋳造後に前記ハイドロゲルのゾルゲル転移温度未満まで冷却することによって鋳型を崩してモデル材を取り出す鋳造方法。
本実施形態によれば、ゾルゲル転移温度未満まで冷却することで鋳型を崩せるため、力学的な負荷なく、鋳造したモデル材を取り出すことが出来る。
(7)上記(1)〜(3)の何れかに記載の鋳型を用いてモデル材を鋳造し、
鋳造後に前記ハイドロゲルのゾルゲル転移温度未満まで冷却すると共に、
解架橋剤を用いて前記架橋性の水溶性高分子Bが架橋されてなる架橋構造を解架橋することにより鋳型を崩してモデル材を取り出す鋳造方法。
本実施形態によれば、鋳型をゾル化してモデル材を取り出すことができるため、力学的な負荷なく、鋳造したモデル材を取り出すことが出来る。
(8)前記架橋性の水溶性高分子Bがアルギン酸ナトリウムであり、前記架橋構造がアルギン酸カルシウムの架橋構造であり、解架橋剤がキレート剤である上記(7)に記載の鋳造方法。
まず、温度応答性ゾルゲル転移材料となる、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aについて説明する。
本発明の温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aは、その水溶液が温度応答性ゾルゲル転移材料となる、本発明で用いるハイドロゲル形成性高分子は、その水溶液がゾルゲル転移温度より低い温度でゾル化し、且つ、ゾルゲル転移温度より高い温度でゲル化するゾルゲル転移温度を有する限り、特に限定されない。
ゾルゲル転移温度を有する高分子溶液としてポロキサマー水溶液を用いる場合、ポロキサマーの濃度を変化させることでゾルゲル転移温度を調整することができる。たとえば、ゾルゲル転移温度は、濃度20質量%の場合は約20℃であり、濃度15質量%では30℃から40℃付近である。
また、濃度25質量%のポロキサマー水溶液に塩化ナトリウムを添加した場合では、ゾルゲル転移温度が5℃から10℃付近に調節できる。
また、食品添加物に用いられるメチルセルロースとソルビトールの組み合わせも、ハイドロゲルのゾルゲル転移温度を40℃以下とするのに望ましく、かつ入手性がよいため望ましい。
温度応答性のハイドロゲル形成性高分子の水溶液に添加する、架橋性の水溶性高分子Bについて説明する。
架橋性の水溶性高分子Bは温度応答性のハイドロゲル形成性高分子の水溶液に添加し、鋳型全体を架橋構造にして補強するために用いる。
用いる架橋性の水溶性高分子は、架橋剤を添加することで架橋する性質を持つものであれば、特に限定されない。
架橋構造を鋳型全体に張り巡らせるため、鋳型を形成する水溶液における架橋性の水溶性高分子Bの含有量は少なくとも0.3質量%以上が望ましい。
本発明の鋳型は、前記架橋構造により、強度不足を解消することができる。具体的には、貯蔵弾性率を25000[Pa]以上とすることができる。また、実際に寒天を鋳造でき、転写することができる。
架橋性の水溶性高分子Bを架橋するための架橋剤について説明する。
架橋剤はカルシウムイオンや鉄(III)イオン、マグネシウムイオンなどの多価の金属イオンを持つ塩や、ホウ砂などが挙げられるが、架橋性の水溶性高分子Bと混合して架橋する組み合わせであれば、特に限定されない。さらに、架橋して得られた鋳型において、ハイドロゲルがゾルゲル転移温度以上の温度で実質的に非水溶性であることが望ましい。
前記ハイドロゲルがゾルゲル転移温度以上の温度で実質的に非水溶性であることにより、水溶液状のモデル材を用いて、硬化させて鋳造したモデル材を作製できる。例えば寒天の水溶液を鋳型に流し込んで寒天ゲルを作製することができる。
水溶液状のモデル材を用いて、硬化させて鋳造したモデル材を作製できることにより、ハイドロゲルがゾルゲル転移温度以上の温度で実質的に非水溶性であるということが確認できる。
ハイドロゲル材料は、ゾルゲル転移温度より低い温度でゾル化し、且つ、ゾルゲル転移温度より高い温度でゲル化する、ゾルゲル転移温度を有する、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルと、前記ハイドロゲルを補強する、架橋性の水溶性高分子Bが架橋されてなる架橋構造とを含む。
鋳型形状に成形する前のハイドロゲル材料の調製方法について説明する。
ハイドロゲル材料の調製方法は以下の工程を含む。
・温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aと、架橋性の水溶性高分子Bとを水に添加し、攪拌混合して水溶液を作製する工程
・前記水溶液を後述する造形方法によって鋳型形状に造形する工程
・後述する架橋方法によって架橋性の水溶性高分子Bを架橋し補強する工程
なお、ハイドロゲル材料の調製方法は上記の各工程に加えて架橋剤を添加する工程を含むが、架橋剤を添加する工程は鋳型形状に造形する前に行っても良いし、後に行っても良い。ただし架橋性の水溶性高分子Bは、その架橋構造を鋳型全体に張り巡らせて補強させるため、鋳型形状に造形する前の水溶液に混合・分散させることが望ましい。
ゲルの三次元造形物の造形方法について説明する。
未架橋の鋳型用ゲルを鋳型の形に成形する方法としては、ゾルゲル転移温度未満の未架橋の鋳型用水溶液を別の型に流し込み、ゾルゲル転移温度以上に加熱することでゲル化させ、鋳型状成形物を成形する方法や、加熱した未架橋の鋳型用ゲルを積層造形する方法などが挙げられる。ただし本発明においてハイドロゲルの成形方法は特に限定されない。
また、オンデマンド性の観点から、図1に示す空圧式ディスペンサーを用いた積層造形方法を用いてもよい。積層造形方法については以下に述べる。
積層造形方法について説明する。
まず、未架橋の鋳型用ゲル21を注入したシリンジ11を用意する。
(工程1)空圧式ディスペンサー14を用いて圧縮空気でシリンジ11上部を加圧し、シリンジ11下部のノズル12の先端から未架橋の鋳型用ゲル21を吐出する。
(工程2)駆動ステージ13を用いてシリンジ11と駆動ステージ13上の基材とを水平方向に相対移動させる。
(工程3)相対移動の軌跡の形状のゲルの層を基材上に形成する。
(工程4)駆動ステージ13を動かしながら、形成されたゲルの層の上に未架橋の鋳型用ゲル21をさらに吐出し、ゲルの層を重ねる。ゲルが形成されない部分を含む層を形成する。
架橋性の水溶性高分子を架橋する方法について説明する。
架橋性の水溶性高分子を架橋するために、架橋剤を添加する。架橋剤を添加する工程は、成形前の未架橋の鋳型用水溶液に添加してもよいし、未架橋の鋳型用ゲルを鋳型形状に成形した後に添加してもよい。
図2に示すように、未架橋の鋳型用ゲル21は、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲル22の間に、架橋性の水溶性高分子B 23が分散している。
以上の方法により、全体が架橋によって補強された、ゾルゲル転移温度を持つゲルによる鋳型を得る。
上記のようにして作製した架橋によって補強された鋳型を用いてモデル材を鋳造する方法について説明する。
鋳型を用いて鋳造するモデル材は、鋳型材料とは別種材料のハイドロゲル、生体材料、シリコン型取り剤、などが挙げられるが、これらに限定されない。鋳型ゲルのゾルゲル転移温度以上の温度領域において硬化する材料であれば、特に限定されない。
(工程1)鋳型31を鋳型材料のゾルゲル転移温度以上の温度に保持する(図4参照)。
(工程2)鋳型31の開口部に対して未硬化の流動状態のモデル材32を注入する(図5参照)。
(工程3)注入した流動状態のモデル材32を硬化させて鋳造したモデル材33を得る。
上記工程1から工程3を実施することによってモデル材を鋳造する。
鋳造したモデル材を鋳型から取り出す方法について説明する。
本発明の鋳型31は、鋳型31を鋳型ゲルのゾルゲル転移温度未満に保持することによって離型する。
本発明の鋳型31は、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子を含むハイドロゲルと、架橋性の水溶性高分子の架橋構造のそれぞれによって鋳型形状を保持している。鋳型をハイドロゲルのゾルゲル転移温度未満に保持することにより、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子を含むハイドロゲルがゾル化し、鋳型形状を保持する能力を失う。
その結果、鋳型は、外界との界面は保持しつつ、重力によって潰れた形状となり、摩擦無く鋳造したモデル材33から離型することができる(図6参照)。
架橋性の水溶性高分子Bがアルギン酸の金属塩の場合、鋳型を冷却して潰すと共に、キレート剤を添加して架橋性の水溶性高分子の架橋構造を解架橋することにより、鋳型全体をゾル化して除去してもよい。架橋性の水溶性高分子がアルギン酸ナトリウムであり、架橋剤が塩化カルシウムの場合、形成されたアルギン酸カルシウムの架橋構造はキレート剤によってカルシウムイオンを奪われて解架橋し、ゾル化する。そのため、鋳型を冷却すると共にキレート剤を添加すると鋳型全体がゾル化し、モデル材をさらに容易に取り出せる。
キレート剤として、EDTAもしくはクエン酸ナトリウムの水溶液が挙げられるが、架橋性の水溶性高分子の架橋構造から金属イオンを奪う特性を持つものであれば、特に限定しない。
架橋した鋳型の強度の評価方法について説明する。
ゲル材料の貯蔵弾性率で強度を評価した。
貯蔵弾性率の評価方法について以下説明する。
レオメーター(Anton Paar社、MCR301)に直径25mmの平行プレートセンサーを装着し、測定対象物とのギャップ1mm、周波数1Hz、ひずみ0.5%、の条件下で貯蔵弾性率を測定した。
周囲を氷で冷却したビーカーを用いて10℃以下に保持した純水に対し、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子としてポロキサマー407(BASFジャパン株式会社、Kolliphor(登録商標) P407)を用い、これに架橋性の水溶性高分子としてアルギン酸ナトリウム(キミカ株式会社、キミカアルギンIL−2)を添加し、攪拌し溶解させて[水溶液A]を作製した。ポロキサマー407の濃度が18質量%、アルギン酸ナトリウムの濃度が0.5質量%となった。
また、[水溶液A]を37℃に昇温してゲル化した後、塩化カルシウム20質量%水溶液を滴下し、2分放置した。その結果、アルギン酸カルシウムで全体が架橋された、白濁したゲルを得た。白濁したゲル周囲に残った塩化カルシウム水溶液をスポイトで吸引除去した。得られた架橋したゲルの貯蔵弾性率を37℃において前記評価方法で測定した結果、30000[Pa]であった。架橋処理を行う前と比較して強度が約3倍に増加した。
また、得られた架橋したゲルを15℃に冷却して測定した貯蔵弾性率は13000[Pa]であり、架橋処理を行う前とほぼ同様の強度となる結果が得られた。
また、得られた架橋したゲル3gを15℃に冷却した後、クエン酸三ナトリウム二水和物の3質量%水溶液10gを滴下し1時間放置した。その結果、ゲルが全てゾル化し、溶出している様子を確認した。
また、得られた架橋したゲルをカッターで裁断したところ、内部全体が白濁していることが確認できた。
周囲を氷で冷却したビーカーを用いて10℃以下に保持した純水に対し、ポロキサマー407を添加し、攪拌溶解させた[水溶液B]を作製した。
[水溶液B]のポロキサマー407の濃度が18質量%となった。
[水溶液B]を37℃に昇温して得られたゲルの貯蔵弾性率を前記評価方法で測定した結果、11000[Pa]であった。
[水溶液B]を37℃に昇温して得られたゲルに塩化カルシウム20質量%水溶液を滴下し、2分放置したあと、ゲル周囲の塩化カルシウム水溶液をスポイトで吸引除去した。
得られた透明なゲルの貯蔵弾性率を37℃において前記評価方法で測定した結果、11500[Pa]であった。塩化カルシウム滴下前とほぼ変わらない結果となった。
周囲を氷で冷却したビーカーを用いて10℃以下に保持した純水に対し、ポロキサマー407と、アルギン酸ナトリウムを添加し、攪拌溶解させた。さらに粉末状の塩化カルシウムを投入し、攪拌溶解した。以上の操作により、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの架橋反応によってアルギン酸カルシウムのゲルが生じ、アルギン酸カルシウムのゲルが攪拌によって細かく破断した状態で分散したポロキサマー407の[水溶液C]を得た。
[水溶液C]のポロキサマー407の濃度が18質量%となった。また、[水溶液C]の質量に対する、投入したアルギン酸ナトリウムの量が0.5質量%、塩化カルシウムの量が0.2質量%となった。
得られたゲルは、ポロキサマー407のハイドロゲルの内部において、破断した個々のアルギン酸カルシウムのゲルが個別に浮遊している状態である。そのため、実施例1で示したポロキサマー407のハイドロゲルを架橋構造で補強している構造とは異なった構造である。
また、比較のため粉末状の塩化カルシウムを含まない、ポロキサマー407の濃度を18質量%、アルギン酸ナトリウムの濃度を0.5質量%とした水溶液C’を作製した。
15℃室温下でゾル状態である[水溶液C’]を37℃に昇温して得られた透明なゲルの貯蔵弾性率を、前記評価方法で測定した結果、11000[Pa]であった。
前述の水溶液A、水溶液B、水溶液Cをそれぞれ、37℃に保持した恒温槽の内部でディスペンサーを用いて積層造形し、内壁の厚み3mm、外周が縦横21mm角、高さ15mm、内部空洞が縦横15mm角、深さ13mmの枡状の鋳型を得た。
積層造形には、エアパルス方式ディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社 ML−5000XII)、シリンジノズル(先端内径0.4mm)を用いた。また、ベルト駆動式XYZステージの上のPETフィルム上に造形した。XYZステージの移動の軌跡に沿ってシリンジから水溶液A、水溶液B、水溶液Cのゲルを吐出して積層造形した。
また、90℃の純水に対して寒天(和光純薬工業株式会社)を1.5質量%濃度で溶解し、55℃に冷却した水溶液Xを得た。
次に、恒温槽の設定温度を10℃に下げて2時間放置し、実施例1の鋳型、比較例1の鋳型、比較例2の鋳型を軟化させ、それぞれの鋳型から鋳造した寒天ゲルを取り出した。
この際、実施例1の鋳型は白濁して潰れたゲルと、ゲルから溶け出した透明な溶質と、に分離していることが確認できた。
比較例1の鋳型から寒天ゲルは、下部の外径が縦横21mm、上部の外形が縦横25mm、高さが11mmであった。
比較例2の鋳型から得られた寒天ゲルは、下部の外径が縦横21mm、上部の外形が縦横23mm、高さが12mmであった。
水溶液Aの架橋ゲルの鋳型から得られた寒天ゲルのみが、元の鋳型の内部空洞の形状を転写した四角柱の形状であった。他の鋳型から得られた寒天ゲルはテーパ形状に片側が膨らんでおり、鋳型の内部空洞の形状を転写できていない結果となった。
周囲を氷で冷却したビーカーを用いて10℃以下に保持した純水に対し、架橋性の水溶性高分子としてポリビニルアルコール(電気化学工業株式会社、デンカポバールA−50)を添加し、攪拌分散させた。得られた水溶液を90℃で30分加熱攪拌した後、10℃以下に氷冷却して加水した。その後、10℃以下に保持したままの水溶液に対してポロキサマー407と、架橋剤としてホウ砂(和光純薬工業株式会社)を添加し、攪拌溶解して[水溶液D]を得た。[水溶液D]のポロキサマー407の濃度は18質量%、ポリビニルアルコールの濃度は3質量%、ホウ砂の濃度は3質量%となった。
得られた[水溶液D]を37℃で6時間静置して得られたゲルの貯蔵弾性率を前記評価方法で測定した結果、27000[Pa]であった。
また、比較のためホウ砂を加えずにポロキサマー407の濃度18質量%、ポリビニルアルコールの濃度3質量%とした水溶液D’を作製した。水溶液D’を37℃で6時間静置して得られたゲルの貯蔵弾性率を前記評価方法で測定した結果、10500[Pa]であった。
水溶液Dを作製後、速やかに恒温槽内部のシリコンゴムチューブAとシリコンゴムチューブBの間に流し込み、6時間放置した。
その後、シリコンゴムチューブAとシリコンゴムチューブBを慎重に引き抜き、架橋した水溶液Dのゲルの鋳型(以下、実施例2の鋳型)を得た。
実施例2の鋳型は内径12mm、高さ15mmの円筒形状であった。
得られた寒天ゲルは、外径12mm、高さ14mmの円筒形状であり、鋳型内部の形状を転写した形状を得られた。
70℃の温浴下のビーカーの純水に、まずゾルゲル転移温度を下げる作用をするソルビトールを溶解、攪拌した。次にビーカーを10℃以下に氷冷して、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子としてメチルセルロース(信越化学工業株式会社、MCE−400)と、架橋性の水溶性高分子としてアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ、キミカアルギンIL−2)を溶解、攪拌した。蒸発分の純水を加えて濃度を調整し、メチルセルロース2質量%、アルギン酸ナトリウム0.5質量%、ソルビトール20質量%の水溶液Eを得た。
実施例1〜3の鋳型、比較例1,2の鋳型を再度作製した。それぞれの鋳型に対し、上からステンレス製の幅5mmのピンセットの平板部分を押し当て、ピンセットを鋳型に対して2mm沈ませた。その後、ピンセットを静かに取り除いた。ピンセットを取り除いた
後の鋳型の挙動の結果を表1にまとめた。元の形状に戻ったものを○、へこんだ形状のままのものを×とした。
実施例1〜3の鋳型は元の形状に戻り、比較例1,2の鋳型はピンセットを押し当てた部分がへこんだ形状のままであった。この結果からも、本発明の鋳型は架橋構造によって強度不足の問題を解消した鋳型であることが分かる。
12 ノズル
13 駆動ステージ
14 空圧式ディスペンサー
21 未架橋の鋳型用ゲル
22 ハイドロゲル
23 架橋性の水溶性高分子B
24 架橋した鋳型用ゲル
25 架橋性の水溶性高分子の架橋構造
31 鋳型
32 流動状態のモデル材
33 鋳造したモデル材
34 崩れた鋳型
35 ゾル
Claims (8)
- ハイドロゲル材料で構成された鋳型であって、
前記ハイドロゲル材料は、
ゾルゲル転移温度より低い温度でゾル化し、且つ、ゾルゲル転移温度より高い温度でゲル化する、ゾルゲル転移温度を有する、温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルと、
前記ハイドロゲルを補強する、架橋性の水溶性高分子Bが架橋されてなる架橋構造と、
を含む鋳型。 - 前記ハイドロゲルがゾルゲル転移温度以上で実質的に非水溶性である請求項1に記載の鋳型。
- 前記ハイドロゲルのゾルゲル転移温度が0℃〜40℃である請求項1又は2に記載の鋳型。
- 前記温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルと、架橋性の水溶性高分子Bと、を含む鋳型状成形物に対し、架橋剤を含む水溶液を表面から添加することによって前記架橋性の水溶性高分子Bを架橋させる請求項1〜3の何れかに記載の鋳型を形成する鋳型形成方法。
- 前記温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aと架橋性の水溶性高分子Bと、を含む水溶液に対し、架橋剤を添加して分散させた後に型で成形し、水溶液を昇温することにより、前記温度応答性のハイドロゲル形成性高分子Aを含むハイドロゲルを形成し、且つ前記架橋性の水溶性高分子Bを架橋させる請求項1〜3の何れかに記載の鋳型を形成する鋳型形成方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の鋳型を用いてモデル材を鋳造し、鋳造後に前記ハイドロゲルのゾルゲル転移温度未満まで冷却することによって鋳型を崩してモデル材を取り出す鋳造方法。
- 請求項1〜3の何れかに記載の鋳型を用いてモデル材を鋳造し、
鋳造後に前記ハイドロゲルのゾルゲル転移温度未満まで冷却すると共に、
解架橋剤を用いて前記架橋性の水溶性高分子Bが架橋されてなる架橋構造を解架橋することにより鋳型を崩してモデル材を取り出す鋳造方法。 - 前記架橋性の水溶性高分子Bがアルギン酸ナトリウムであり、前記架橋構造がアルギン酸カルシウムの架橋構造であり、解架橋剤がキレート剤である請求項7に記載の鋳造方法。
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