以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1はウォッシャノズルが設けられた車両後方の概要図を、図2は図1のA−A線に沿う断面図を、図3はウォッシャノズル単体を示す斜視図を、図4はウォッシャノズルの内部構造を説明する断面図を、図5は図4の破線円B部を拡大した拡大断面図を、図6は図4のC−C線に沿う断面図を、図7は図6の破線円D部を拡大した拡大断面図を、図8(a)〜(e)は図4のウォッシャノズルにおける噴射流路内の圧力をシミュレーションした圧力分布図を、図9(a)〜(e)は図4のウォッシャノズル(バリ無し)における噴射流路内の圧力をシミュレーションした圧力分布図を、図10(a)〜(e)は比較例1のウォッシャノズルにおける噴射流路内の圧力をシミュレーションした圧力分布図を、図11(a)〜(e)は比較例2のウォッシャノズルにおける噴射流路内の圧力をシミュレーションした圧力分布図をそれぞれ示している。
図1に示される車両10は、後方にリヤハッチ11を備えた2ボックスのコンパクト自動車であり、リヤハッチ11は、車両10のルーフ12の後方に設けられた一対のヒンジ(図示せず)を回動中心に開閉される。リヤハッチ11には、リヤガラス(洗浄面)13が設けられ、当該リヤガラス13上には、ワイパ部材14が揺動自在に設けられている。そして、ワイパ部材14は、ワイパブレード14aとワイパアーム14bとを備え、ワイパブレード14aはワイパアーム14bの先端側に回動自在に装着されている。
ワイパアーム14bの基端側には、ワイパモータ15の出力軸15aが固定されている。出力軸15aは、所定の角度範囲で正逆方向に回転駆動され、これによりワイパブレード14aは、リヤガラス13上で所定の角度範囲で揺動される。具体的には、ワイパブレード14aは、リヤガラス13上の払拭範囲13a内で揺動されて、これによりリヤガラス13の払拭範囲13aに付着された雨水等が綺麗に払拭される。
リヤハッチ11のルーフ12寄り(天井側)の部分には、運転者がブレーキ操作をしたときに点灯されるハイマウントストップランプ16が設けられている。具体的には、ハイマウントストップランプ16は車幅方向に延在され、かつリヤハッチ11に装着されたリヤスポイラー11aに搭載されている。なお、ハイマウントストップランプ16のレンズ16a(図中網掛部分)の内側には、複数の赤色の発光ダイオード(図示せず)が横一列に並んで設けられている。
図1および図2に示されるように、レンズ16aの長手方向に沿う略中央部分には、ウォッシャノズル20が設けられている。つまり、ハイマウントストップランプ16のレンズ16aは、本発明における固定対象物を構成している。ウォッシャノズル20は中空の細長い略棒状に形成され、レンズ16aの内側にその殆どの部分が収容されている。具体的には、ウォッシャノズル20の先端側の部分のみが、レンズ16aの外部に露出されている。
ウォッシャノズル20の基端側には、ホース17の一端側が接続され、ホース17の他端側はポンプ18を介してウォッシャタンク19に接続されている。なお、ポンプ18およびウォッシャタンク19は、図示しないエンジンルーム内に配置され、ホース17は車両10のフレーム等に沿って前後方向に延在されている。そして、ウォッシャノズル20は、ポンプ18の動作により、リヤガラス13に向けてウォッシャ液(洗浄液)Wを拡散するように広範囲に噴射させる。
具体的には、運転者等によりワイパスイッチ(図示せず)が操作されると、ポンプ18はウォッシャタンク19内のウォッシャ液Wを吸入および吐出する。ポンプ18から吐出されたウォッシャ液Wは、ウォッシャノズル20から勢い良く噴射され、ウォッシャノズル20から噴射されたウォッシャ液Wは、リヤガラス13の払拭範囲13aに拡散される。
図3および図4に示されるように、ウォッシャノズル20は、ウォッシャ液Wが流れてくるポンプ18側(図中下側)から、ホース接続管30およびノズル本体(本体部)40を備えている。ホース接続管30は、ウォッシャノズル20の長手方向基端側(流入側)を形成し、ノズル本体40は、ウォッシャノズル20の長手方向先端側(噴射側)を形成している。ホース接続管30およびノズル本体40は、いずれもプラスチック等の樹脂材料によりそれぞれ中空の略筒状に形成され、それぞれの端部が溶着等の接続手段により連結されている。
ここで、ホース接続管30の内側には、ウォッシャ液Wが流通する第1流通路31が形成されている。第1流通路31の一端側(図中上側)は、ノズル本体40の内側に形成された第2流通路41の他端側(図中下側)に接続されている。そして、第2流通路41の第1流通路31寄りの部分には、チェックバルブ(逆止弁)50が収容されている。
チェックバルブ50は、有底円筒状のバルブ本体51と、バルブ本体51が離着座される環状のバルブシート52と、バルブ本体51をバルブシート52に向けて押圧するバルブスプリング53とを備えている。バルブシート52は、ホース接続管30の一端側に一体に設けられ、バルブ本体51およびバルブスプリング53は、第2流通路41内に配置されている。そして、チェックバルブ50は、第1流通路31の他端側(図中下側)から流れてきたウォッシャ液Wの圧力により開弁される。その後、チェックバルブ50の部分を通過したウォッシャ液Wは、破線矢印に示されるように、第2流通路41内に導かれる。
このように、ウォッシャノズル20にチェックバルブ50を設けることで、ウォッシャ装置を使用していない時に、チェックバルブ50の上流側にウォッシャ液Wを保持できるようにしている。よって、ウォッシャ装置の使用時には、ウォッシャノズル20から瞬時にウォッシャ液Wを噴射させることができる。また、ウォッシャ装置を使用していない時に車両10が加速した場合等において、ウォッシャノズル20内に残留したウォッシャ液Wが、ウォッシャノズル20から漏れ出ることを抑制できる。
ホース接続管30の他端側には肩部32が設けられ、肩部32にはホース17(図1参照)の一端側が接続される。肩部32は、ホース接続管30の他端側に向かうにつれて徐々に先細りとされ、これによりホース17の接続を容易にしつつ、接続後のホース17の脱落(抜け)が確実に防止される。
また、ノズル本体40の外側で、かつホース接続管30寄りの部分には、一対の固定爪42が一体に設けられている。そして、一対の固定爪42を摘まんで弾性変形させつつ、レンズ16aの裏側から装着孔16b(図2参照)に差し込むことで、ノズル本体40、つまりウォッシャノズル20を、レンズ16aに固定することができる。
さらに、ノズル本体40の外側で、かつノズル本体40に設けられた一対の固定爪42よりも一端側(図中上側)には、環状溝43が設けられている。この環状溝43には、ゴム等の弾性体よりなるOリング44が装着されている。Oリング44は、ウォッシャノズル20とレンズ16aとの間に挟持され、これによりウォッシャノズル20のレンズ16aに対するがたつきが防止される。
図4ないし図7に示されるように、ノズル本体40の第2流通路41は、その下流側(噴射側)から、噴射流路45,第1流路46および第2流路47を備えている。噴射流路45の一端側は、車両10への装着状態のもとで、図2に示されるように、リヤガラス13に向けて開口されている。より具体的には、噴射流路45の開口された一端側は、車両10の床側に向けられている。これにより、車両10の上下方向に起立するようにして設けられたリヤガラス13の所定箇所かつ広範囲に、ウォッシャ液Wが噴射される。
噴射流路45の他端側、つまり、噴射流路45の延在方向に沿う開口側とは反対側には、第1流路46の一端側が接続されている。第1流路46は、噴射流路45の延在方向と交差する方向に延在されている。具体的には、第1流路46に対する噴射流路45の傾斜角度α°は略100°とされる。これにより、第2流路47の上流側(流入側)から流れてくるウォッシャ液Wを、直角(α°=90°)の場合に比して緩やかに屈曲させることができる。したがって、噴射流路45から噴射されるウォッシャ液Wの勢いの低下が抑えられる。
また、第1流路46の他端側には、第2流路47の一端側が接続されている。第1流路46および第2流路47は、それぞれウォッシャノズル20の長手方向に沿うように同じ方向に延在されている。つまり、第2流路47においても、噴射流路45の延在方向と交差する方向に延在されている。なお、噴射流路45の長さ寸法は、第1流路46の長さ寸法の略1/4の長さ寸法となっている。
これにより、ウォッシャノズル20の長手方向と交差する方向に沿う幅寸法(太さ)が大きくなるのを防止している。言い換えれば、図5に示されるように、第1流路46と第2流路47とを同じ方向(図中上下方向)に延在させることで、ウォッシャノズル20を細長い略棒状にして大径化されるのを防止している。
噴射流路45の延在方向に沿う第1流路46の断面形状は、その他端側(図中下側)において略円形形状とされ、一端側(図中上側)において略半円形形状とされる。より具体的には、第1流路46の断面形状は、図6および図7に示されるような形状とされる。すなわち、第1流路46は、第2流通路41の延在方向に傾斜されたテーパ面46aと、当該テーパ面46aと対向される円弧面46bとから形成されている。そして、第1流路46の一端側の円弧面46bの部分(円弧部分)が、噴射流路45の他端側に接続されている。
このように、第1流路46の噴射流路45が接続される接続側を円弧面46bとし、当該円弧面46bの反対側にテーパ面46aを設けることで、第1流路46の一端側の流路面積S1をより一層小さくしつつ、第1流路46を流れるウォッシャ液Wを、噴射流路45の他端側に集約させ易くしている。これにより、第1流路46の一端側の流路面積S1をより効果的に絞る(小さくする)ことができ、ウォッシャ液Wの流速をより効率良く高められるようにしている。
これに対し、第2流通路41の延在方向と交差する方向に沿う第2流路47の断面形状は、その略全域において略円形形状とされる。つまり、第2流路47は、第1流路46のようなテーパ面を備えていない。言い換えれば、第2流路47のみを側方から観察すると、当該第2流路47は略円錐台形状とされている。
そして、図5に示されるように、第1流路46の流路面積S1の方が、第2流路47の流路面積S2よりも小さくなっている(S1<S2)。また、第1流路46の流路面積S1および第2流路47の流路面積S2は、その他端側(図中下側)から一端側(図中上側)に向かうに連れて、それぞれ徐々に小さくなっている。
ここで、単位長さ当たりの第1流路46の流路面積S1の変化率A1の方が、単位長さ当たりの第2流路47の流路面積S2の変化率A2よりも大きくなっている(A1>A2)。つまり、ウォッシャ液Wは、第2流路47から第1流路46内に導かれることで、その流速が急に高められるようになっている。これにより、流路面積S1の変化率A1と流路面積S2の変化率A2とが等しい場合に比して、ウォッシャ液Wの流速を短い移動距離でより高めることができ、ひいてはウォッシャノズル20のさらなる短縮化(小型化)を可能としている。
このように、第1流路46の流路面積S1の方が、第2流路47の流路面積S2よりも小さくされ、さらには第1流路46の流路面積S1および第2流路47の流路面積S2が、その他端側から一端側に向かうに連れて徐々に小さくなるので、第2流通路41の流入側から噴射側に向かうウォッシャ液Wの流速が徐々に高められる。これにより、噴射流路45に流入するウォッシャ液Wの流れが安定化され、かつ噴射流路45を流れるウォッシャ液Wに勢いが付けられる。
ここで、第1流路46の流路面積S1および第2流路47の流路面積S2を、その他端側から一端側に向かうに連れて徐々に小さくなるよう、連続的に(リニアに)変化させているので、ウォッシャ液Wの流速が段階的では無く滑らかに高められる。そのため、第2流通路41内での流速の乱れが抑制されて、第2流通路41内における気泡の発生(エアレーション)等を確実に防止することができる。
さらに、第1流路46の一端側には、第1流路46の延在方向に凹んだ球状凹部46cが設けられている。球状凹部46cは所定の曲率の球面から形成され、このような球状凹部46cを設けることで、第1流路46の一端側に到達されたウォッシャ液Wを、その流速を殆ど低下させずに直ぐに噴射流路45に向けて折り返すことができる。この点においても、第1流路46を流れるウォッシャ液Wを、噴射流路45の他端側に集約させ易くなっている。
図5ないし図7に示されるように、噴射流路45は、球状凹部46c側に配置された天壁45aと、第2流路47側に配置された底壁45bと、天壁45aと底壁45bとの間に配置された一対の側壁45c,45dと、によって形成されている。ここで、天壁45aおよび底壁45bは、互いに平行(相対角度=0°)とされている。
また、噴射流路45の延在方向に沿う他端側、つまり噴射流路45の第1流路46側には、噴射流路45の延在方向に沿って流路面積が一定とされた流路面積一定部45eが設けられている。この流路面積一定部45eは、一対の側壁45c,45dを形成するとともに、互いに平行とされた平行側壁45c1,45d1と、天壁45aおよび底壁45bと、で形成されている。
さらに、噴射流路45の延在方向に沿う一端側、つまり噴射流路45の開口側には、流路面積一定部45eから噴射流路45の一端側に向けて流路面積が徐々に大きくされた流路面積可変部45fが設けられている。この流路面積可変部45fは、一対の側壁45c,45dを形成するとともに、それぞれ噴射流路45の延在方向に傾斜された傾斜側壁45c2,45d2と、天壁45aおよび底壁45bと、で形成されている。
ここで、図7に示されるように、一対の傾斜側壁45c2,45d2がなす角度β°は略40°とされる。なお、一対の傾斜側壁45c2,45d2がなす角度β°は、ウォッシャノズル20の仕様(必要とされる噴射範囲の広さ等)に応じて任意に変更することができる。
また、噴射流路45を形成する流路面積一定部45eの流路面積S3は、第1流路46の一端側の流路面積S1(図5参照)よりも小さくなっている(S3<S1)。これにより、第1流路46を流れるウォッシャ液Wは、流路面積一定部45eに流入する際にその流速が高められる。このように本実施の形態では、ウォッシャ液Wは、第2流路47の部分,第1流路46の部分,噴射流路45の入口部分の合計3箇所で、それぞれ絞られるようになっている。
ここで、ノズル本体40内の噴射流路45,第1流路46および第2流路47は、2つのスライド金型(図示せず)を用いて形成される。具体的には、噴射流路45は、その延在方向に移動可能な第1スライド金型(図示せず)により形成され、第1流路46および第2流路47は、第1スライド金型の移動方向と交差する方向に移動される第2スライド金型(図示せず)により形成される。すなわち、移動方向が異なる第1スライド金型と第2スライド金型とを互いに突き合わせることで、噴射流路45の他端側と第1流路46の一端側とが接続される。
したがって、このようなウォッシャノズル20の製造上、噴射流路45の他端側と第1流路46の一端側との間には、図8に示されるような「バリ(無駄な出っ張り)」が形成される。この「バリ」は、噴射流路45の内側に突出された微少な突起であり、第1スライド金型と第2スライド金型との突き合わせ部分に溶融樹脂が入り込むことで形成される。「バリ」は、ウォッシャノズル20の成形後に仕上げ作業で取り除くのが望ましいが、ウォッシャノズル20は非常に小型であるため、コストアップとなって現実的では無い。そこで、本実施の形態では、噴射流路45に流路面積一定部45eを設けて、これにより噴射流路45内のウォッシャ液Wの流れをさらに安定化させている。
次に、以上のように形成されたウォッシャノズル20内の噴射流路45,第1流路46,第2流路47を流れるウォッシャ液Wの流れ具合について、図8を用いて詳細に説明する。ここで、図8においては、噴射流路45の近傍のウォッシャ液Wの流れ具合を判り易くするために、第2流路47の記載を省略している。
また、図8に示されるシミュレーション図(圧力分布図)は、コンピュータにより有限要素法(FEM)を用いて解析した結果であり、濃色の網掛部分が高圧部分を示し、淡色の網掛部分が低圧部分を示している。すなわち、噴射流路45の内部において、濃色の網掛部分の占める割合が大きい程、噴射範囲を大きくするのに有利であり、かつ所謂「噴射散れ」の発生がより抑えられると言える。
図8(a)は、噴射流路45および第1流路46の内部を側方から見た図である。図8(b)は、噴射流路45の開口部分を正面から見た図である。図8(c)は、図8(a)の線分Eに沿う断面を上方から見た図である。図8(d)は、図8(a)の線分Fに沿う断面を上方から見た図である。図8(e)は、図8(a)の線分Gに沿う断面を上方から見た図である。
図8に示されるように、上述のウォッシャノズル20では、ウォッシャ液Wの流速が第2流路47および第1流路46の通過により高められて、第1流路46の一端側におけるウォッシャ液Wの圧力が高められていることが判る。すなわち、第1流路46の一端側の略全域が中程度の濃色の網掛けになっている。そして、第1流路46の一端側に到達されたウォッシャ液Wは、第1流路46を形成するテーパ面46aに沿って流れたこと、および第1流路46における球状凹部46cの上述した効果も相俟って、噴射流路45の他端側にスムーズに集約される。つまり、第2流路47および第1流路46の通過により高められたウォッシャ液Wの流速が、不要に低下されるような効率低下は殆ど生じ無い。
ここで、第1流路46から噴射流路45への流入部分には「バリ」が存在するため、ウォッシャ液Wの流れ方向に沿う「バリ」の下流側には、圧力が低下した部分(淡色の網掛部分)が形成される。しかし、「バリ」の部分を通過するウォッシャ液Wの流速は十分に高められているので、「バリ」の部分を通過したウォッシャ液Wは、図8(a),(b)に示されるように、直後に勢い良く天壁45aに沿って流れるようになる。
また、図8(c)に示されるように、ウォッシャ液Wの流れ方向に沿う「バリ」の下流側には、平行側壁45c1,45d1がある。そのため、圧力が低下した部分(淡色の網掛部分)を、平行側壁45c1,45d1がある部分のみに発生させることができる。したがって、「バリ」の下流側に流れたウォッシャ液Wは、平行側壁45c1,45d1がある部分を飛び越えて、その直後、傾斜側壁45c2,45d2の部分にダイレクトに到達される。このように、噴射流路45に勢い良く流れ込んだウォッシャ液Wは、天壁45aと傾斜側壁45c2,45d2の双方にスムーズに沿うように流れて、しかもその流速が十分に高められた状態となっている。言い換えれば、平行側壁45c1,45d1があることで、傾斜側壁45c2,45d2のウォッシャ液Wの流入側の端部が噴射流路45の幅方向中央寄りとなる。これにより、ウォッシャ液Wが「バリ」を乗り越えた後、ウォッシャ液Wが傾斜側壁45c2,45d2のそれぞれに付着し易くなり、コアンダ効果によりウォッシャ液Wを傾斜側壁45c2,45d2に沿って流すことができる。これにより、ウォッシャ液Wの噴射範囲を傾斜側壁45c2,45d2のなす角と同程度に拡大することができる。
ここで、図8(b),(e)に示されるように、噴射流路45の内部における底壁45b側の部分には、圧力が低下した部分、つまり流速がそれほど高く無い部分(淡色の網掛部分)が存在するが、天壁45aと底壁45bとが平行とされて、これにより天壁45aと底壁45bとの距離が噴射流路45の出口側(開口側)において短くされている。
したがって、圧力が低下して「噴射散れ」を起こし得る底壁45b側のウォッシャ液Wが、天壁45a側の十分に流速が高められたウォッシャ液Wにより引き出される(引っ張られる)。よって、底壁45b側のウォッシャ液Wの「噴射散れ」が抑制されて、噴射流路45から噴射されるウォッシャ液Wの殆どを、リヤガラス13上の所定の噴射位置に到達させることができる。
さらには、ウォッシャ液Wは、傾斜側壁45c2,45d2の双方に確実に沿って流れるため、所定の噴射範囲(角度範囲)に到達される。なお、ウォッシャノズル20の角度範囲は、上述したようにβ°=略40°(図7参照)とされる。
なお、製造コストは上昇するが、噴射流路45の他端側と第1流路46の一端側との間の「バリ」を、仕上げ加工を施して取り除いたウォッシャノズル20のシミュレーション図(圧力分布図)について、図9を用いて説明する。
図9(a),(b)に示されるように、「バリ」を備えていない分、流速が高められたウォッシャ液Wは、噴射流路45の内部によりスムーズに流れ込んでいることが判る。そして、図9(c),(d),(e)に示されるように、噴射流路45の内部における濃色の網掛部分の占める割合が、図8の「バリ付き」の場合に比して大きく、したがって、噴射範囲を大きくするのにより有利であり、かつ「噴射散れ」の発生をより抑制できることが判った。
このように、ウォッシャノズル20の性能を低下させる「バリ」は、できる限り取り除いた方が好ましいが、上述のように仕上げ加工を余計に施す必要があるため、製造コストの上昇が避けられない。したがって、図8に示される「バリ付き」の仕様でも機能的には十分ではあるが、より高性能が要求される場合において、仕上げ加工を施すようにすれば良い。
図10および図11のシミュレーション図(圧力分布図)は、比較例1および比較例2のウォッシャノズルの特性を示している。なお、上述した実施の形態と同じ機能を有する部分については、同じ記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図10に示される比較例1では、上述の実施の形態(図8および図9参照)に比して、噴射流路45の天壁45aと底壁45bとが平行では無く、天壁45aと底壁45bとの相対角度が6°とされている点が異なっている。また、一対の傾斜側壁45c2,45d2のなす角度が略60°とされている点が異なっている。さらに、一対の平行側壁45c1,45d1を省略した点が異なっている。また、第1流路46の断面形状が略円形とされ、かつ流路面積がその一端側から他端側に向けて略一定とされた点が異なっている。
比較例1の場合には、第1流路46によりウォッシャ液Wの流速を十分に高めることができず、かつ「バリ」を有しているため、噴射流路45の内部に流入されるウォッシャ液Wの勢いが小さい(濃色の網掛部分の占める割合が小さい)状態となる。これによりウォッシャ液Wは、噴射流路45の内部において傾斜側壁45c2,45d2の双方に沿うことができず、一対の傾斜側壁45c2,45d2のなす角度(略60°)よりも噴射範囲が狭くなる。すなわち、一対の傾斜側壁45c2,45d2のなす角度をいくら広くしても噴射範囲を拡大することはできず、結果「噴射散れ」を誘発してしまうことが判明した。
また、天壁45aと底壁45bとが平行では無く、天壁45aと底壁45bとの距離が噴射流路45の出口側(開口側)において、上述の実施の形態(図8および図9参照)に比して長くなっている。よって、圧力が低下して「噴射散れ」を起こし得る底壁45b側のウォッシャ液Wを、天壁45a側のウォッシャ液Wでは十分に引き出す(引っ張る)ことができず、底壁45b側のウォッシャ液Wの「噴射散れ」を抑えきれないことが判明した。
図11に示される比較例2では、上述の実施の形態(図8および図9参照)に比して、第1流路46の一端側の球状凹部46cを省略して、断面が略角形に形成された角形凹部DPを設けた点が異なっている。また、第1流路46の断面形状が略円形とされ、かつ流路面積がその一端側から他端側に向けて略一定とされた点が異なっている。
比較例2の場合には、比較例1と同様に、第1流路46によりウォッシャ液Wの流速を十分に高めることができず、かつ「バリ」を有している。そのため、噴射流路45の内部に流入されるウォッシャ液Wの勢いが小さく、かつウォッシャ液Wが、天壁45aおよび一対の傾斜側壁45c2,45d2に沿い難い状態となっている。これによりウォッシャ液Wの圧力が、噴射流路45の内部で不安定となり、噴射状態にばらつきが生じるようになり、ひいては「噴射散れ」が起き易くなることが判明した。これは、第1流路46の一端側の角形凹部DPにまで到達したウォッシャ液Wが、噴射流路45の他端側に上手く折り返して集約されずに、角形凹部DPの部分で滞留したりすること等に起因すると考えられる。
以上詳述したように、本実施の形態に係るウォッシャノズル20によれば、一端側がリヤガラス13に向けて開口された噴射流路45と、噴射流路45の延在方向と交差する方向に延在され、一端側が噴射流路45の他端側に接続された第1流路46と、噴射流路45の延在方向と交差する方向に延在され、一端側が第1流路46の他端側に接続された第2流路47と、を備え、第1流路46の流路面積S1の方が、第2流路47の流路面積S2よりも小さい。
これにより、噴射流路45の内部を流れるウォッシャ液Wの流速を高めることができる。したがって、所謂「噴射散れ」の発生を抑制してウォッシャ液Wを安定して噴射させることが可能となり、噴射流路45の一端側を大きく開口させることでウォッシャ液Wの噴射範囲を容易に拡大することができる。
また、第1流路46および第2流路47が同じ方向に延在されるので、ウォッシャノズル20を細長い略棒状に形成することができる。よって、ウォッシャノズル20の第1流路46および第2流路47の延在方向と交差する方向に沿う幅寸法を小さくでき、ウォッシャノズル20をより小型化することが可能となる。
さらに、本実施の形態に係るウォッシャノズル20によれば、第1流路46の流路面積S1が、第1流路46の他端側から一端側に向かうに連れて徐々に小さくされ、第2流路47の流路面積S2が、第2流路47の他端側から一端側に向かうに連れて徐々に小さくされ、かつ第1流路46の流路面積S1の変化率の方が、第2流路47の流路面積S2の変化率よりも大きい。
これにより、ウォッシャ液Wの流速が段階的では無く滑らかに高められて、第2流通路41内での流速の乱れが抑制され、第2流通路41内における気泡の発生(エアレーション)等が確実に防止される。また、ウォッシャ液Wの流速が、第2流路47から第1流路46内に導かれることで急に高められるので、短い移動距離でウォッシャ液Wの流速を効率良く高めることができる。よって、ウォッシャノズル20のさらなる短縮化(小型化)を実現できる。
さらに、本実施の形態に係るウォッシャノズル20によれば、噴射流路45の他端側に、噴射流路45の延在方向に沿って流路面積S3が一定とされた流路面積一定部45eが設けられ、噴射流路45の一端側に、流路面積一定部45eから噴射流路45の一端側に向けて流路面積が徐々に大きくされた流路面積可変部45fが設けられている。
これにより、噴射流路45の他端側と第1流路46の一端側との間に「バリ」があったとしても、噴射流路45の内部に流入されたウォッシャ液Wを、一対の傾斜側壁45c2,45d2に確実に沿わせることができる。よって、噴射範囲を容易に大きくすることができ、かつ所謂「噴射散れ」の発生をより確実に抑えることができる。
また、本実施の形態に係るウォッシャノズル20によれば、噴射流路45の延在方向に沿う第1流路46の一端側の断面形状が、テーパ面46aおよび円弧面46bを有する半円形状に形成され、当該半円形状の円弧面46bの部分に噴射流路45の他端側が接続されている。
これにより、第1流路46の一端側の流路面積S1をより一層小さくでき、かつ第1流路46を流れるウォッシャ液Wを、噴射流路45の他端側に集約させ易くできる。よって、第1流路46の一端側の流路面積S1をより効果的に絞って(小さくして)、ウォッシャ液Wの流速をより効率良く高めることができる。
さらに、本実施の形態に係るウォッシャノズル20によれば、第1流路46の一端側に、第1流路46の延在方向に凹んだ球状凹部46cを設けたので、第1流路46の一端側に到達されたウォッシャ液Wを、その流速を殆ど低下させずに直ぐに噴射流路45に向けて折り返すことができる。
また、本実施の形態に係るウォッシャノズル20によれば、レンズ16aに固定される中空のノズル本体40を備え、ノズル本体40の内側に、噴射流路45、第1流路46および第2流路47が形成され、ノズル本体40の外側に、レンズ16aに固定される固定爪42が設けられている。よって、所謂目玉を備えたウォッシャノズルに比して、ウォッシャノズル20を細長い略棒状にして、大径化するのを防止することができる。
さらに、本実施の形態に係るウォッシャノズル20によれば、図2に示されるように、噴射流路45の開口された一端側が車両10の床側に向けられている。これにより、車両10の天井側から床側に向かって吹き込む走行風の向きとウォッシャ液Wの噴射方向とが略同一となるため、ウォッシャ液Wの噴射方向が走行風によって意図しない方向へ変化するのを防ぐことができる。また、ウォッシャ液Wがリヤガラス13の所定の噴射位置に正確に噴射される(「噴射散れ」が抑えられる)ので、噴射範囲外にある車両10の塗装面等にウォッシャ液Wが付着して残るのを抑制できる。
次に、本発明の他の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態(図5参照)と同様の機能を有する部分については、同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図12は他の実施の形態のウォッシャノズルの図5に対応した拡大断面図を示している。
図12に示されるように、他の実施の形態のウォッシャノズル60においては、上述した実施の形態に比して、第1流路61の形状のみが異なっている。具体的には、上述した実施の形態では、第1流路46の流路面積S1を、その他端側(図5中下側)から一端側(図5中上側)に向かうに連れて徐々に小さくなるようにしたが、他の実施の形態における第1流路61は、その全域において一定の流路面積S4としている(S4<S2)。また、第1流路61の一端側の流路面積S4の方が、噴射流路45の他端側を形成する流路面積一定部45eの流路面積S3(図7参照)よりも小さく設定されている(S4<S3)。これにより、噴射流路45の他端側を形成する流路面積一定部45eの流路面積S3を小さく成形するのが困難な場合であっても、第2流路47から流れてきたウォッシャ液Wの流速を、第1流路61において十分に高めた上でリヤガラス13に噴出することができる。
以上のように形成された他の実施の形態のウォッシャノズル60においても、上述の実施の形態のウォッシャノズル20と、略同様の作用効果を奏することができる。ただし、ウォッシャノズル60では、第1流路61と第2流路47との間に段差部DSが形成されている。したがって、ウォッシャ液Wの流速は段階的に高められることになる。よって、ウォッシャノズル20とは逆に、積極的に気泡(エアレーション)等を発生させて、ウォッシャ液Wを霧状に噴霧させる必要がある場合等においては、ウォッシャノズル60は有効な形態となる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、車両10のリヤガラス13上にウォッシャ液Wを噴射するウォッシャノズル20,60を示したが、本発明はこれに限らず、車両のフロントガラスにウォッシャ液Wを噴射するウォッシャノズルにも適用できる。
また、上記実施の形態においては、車両10に設けられるウォッシャノズル20,60を示したが、本発明はこれに限らず、航空機や鉄道車両等のウィンドシールド(洗浄面)を洗浄するためのウォッシャノズルにも適用できる。
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。