JP6843021B2 - 紙送りロール - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる紙送りロールに関するものである。
紙送りロールは、例えばゴム架橋体などの弾性材料によって円筒状に形成され、その周面が用紙との接触面となる。紙送りロールの周面には、用紙から発生する紙粉が付着することがある。そして、用紙と繰り返し接触するうちに、紙送りロールの周面には紙粉が蓄積することがある。紙粉が蓄積すると、用紙に対する周面の接触面積が低下し、用紙に対する接触面の摩擦係数が低下する。その結果、用紙の搬送不良を生じることがある。
用紙の搬送不良を抑制するために、紙送りロールの周面に凹凸を形成したものが知られている(特許文献1,2など)。例えば特許文献1には、紙送りロールの軸方向と平行に複数本の凸条および凹溝を形成したものが記載されている。また、特許文献2には、紙送りロールの周面にエンボスを形成したものが記載されている。
特開2003−112833号公報 特開2000−296937号公報
従来の紙送りロールは、いずれも使用初期から長期にわたって、紙粉の蓄積を抑え、良好な摩擦係数を維持するという点で、未だ十分とはいえない。特に、近年使用されている用紙の中には低品質の用紙があり、低品質の用紙は紙粉が発生しやすく、比較的早期に用紙の搬送不良を生じやすい。
本発明が解決しようとする課題は、長期にわたって紙粉の蓄積による用紙の搬送不良を抑えた紙送りロールを提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る紙送りロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層の周面には、凸部により凹凸が設けられており、前記凸部は、前記弾性体層の周面に沿って軸方向と異なる方向に配列しており、軸方向と異なる方向の凸部の列とこれに平行な凸部の列の間が連続した凹部の溝になっており、前記溝の幅が、前記凸部の列内の凸部離間距離よりも大きいことを要旨とするものである。
前記凸部は、半球状の凸部であることが好ましい。前記凸部は、前記弾性体層の周面に沿って周方向とは異なる方向に配列していることが好ましい。この場合、前記凸部は、前記弾性体層の周面に沿ってらせん状に配列していることが好ましい。また、前記凸部は、前記弾性体層の周面に沿って周方向に対し±10°以内の角度の方向に配列していることが好ましい。また、前記凸部は、前記弾性体層の周面に沿って周方向に配列していてもよい。
前記凸部の列内の凸部離間距離は、0〜0.6mmの範囲内であることが好ましい。前記溝の幅は、0.01〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。前記凸部の高さは、0.05〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。前記凸部の曲率半径は、0.05〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。前記溝のピッチは、0.1〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る紙送りロールによれば、弾性体層の周面に沿って軸方向と異なる方向に配列する凸部の列とこれに平行な凸部の列により弾性体層の周面に沿って軸方向と異なる方向に連続した凹部の溝が形成されており、その溝の幅が軸方向と異なる方向に配列する凸部の列内の凸部離間距離よりも大きいことから、長期にわたって紙粉の蓄積による用紙の搬送不良が抑えられる。これは、溝の幅が軸方向と異なる方向に配列する凸部の列内の凸部離間距離よりも大きいことで、紙送り時に用紙との接触面となる凸部で発生した紙粉をその凸部から隣りの溝に逃がしやすくなり、また、その溝が軸方向と異なる方向に連続したものであることで、ロールの回転に伴い紙粉が溝に滞留することなく溝からロール外に排出しやすくなっているためである。
この際、凸部が半球状であると、用紙との接触面が曲面なので、比較的紙粉の発生が抑えられ、また、紙送り性能にも優れる。そして、凸部が弾性体層の周面に沿って周方向とは異なる方向に配列していると、周方向に配列しているものよりも、凸部で発生した紙粉をその凸部から隣りの溝に逃がしやすい。これにより、一層、紙粉の蓄積による用紙の搬送不良が抑えられる。そして、凸部が弾性体層の周面に沿って周方向に対し±10°以内の角度の方向に配列していると、特に、凸部で発生した紙粉をその凸部から隣りの溝に逃がしやすい。そして、凸部が弾性体層の周面に沿って周方向に配列しているものも、凸部で発生した紙粉をその凸部から隣りの溝に逃がしやすい。
そして、凸部の列内の凸部離間距離が0〜0.6mmの範囲内であると、凸部の列内の隙間に紙粉が滞留しにくく、隣の溝に紙粉が移動しやすくなり、紙粉を溝に排出しやすい。また、凸部の列の方向の凸部の数が多くなるので、用紙との接触面積が大きくなり、用紙への負荷が小さく抑えられて、紙粉の発生が抑えられやすい。
そして、溝の幅が0.01〜2.0mmの範囲内であると、溝に移動した紙粉が溝で詰まりにくく、溝からロール外に排出しやすい。また、軸方向の凸部の数が多くなるので、用紙との接触面積が大きくなり、用紙への負荷が小さく抑えられて、紙粉の発生が抑えられやすい。
そして、凸部の高さが0.05〜0.5mmの範囲内であると、溝の容積が大きくなり、溝に移動した紙粉が溝で詰まりにくく、溝からロール外に排出しやすい。また、凸部の大きさが適度に小さく抑えられるため、溝までの紙粉の移動距離が短く抑えられ、紙粉を溝に排出しやすい。
そして、凸部の曲率半径が0.05〜1.0mmの範囲内であると、用紙との接触面積が大きくなり、用紙への負荷が小さく抑えられて、紙粉の発生が抑えられやすい。また、凸部の大きさが適度に小さく抑えられるため、溝までの紙粉の移動距離が短く抑えられ、紙粉を溝に排出しやすい。
そして、溝のピッチが0.1〜2.0mmの範囲内であると、溝の幅が大きくなるので、溝に移動した紙粉が溝で詰まりにくく、溝からロール外に排出しやすい。また、凸部の大きさが適度に小さく抑えられるため、溝までの紙粉の移動距離が短く抑えられ、紙粉を溝に排出しやすい。
本発明の一実施形態に係る紙送りロールの外観模式図である。 図1に示す紙送りロールの周面の拡大模式図(a)と、そのA−A線断面図(b)である。 紙送りロールの凸部の拡大断面模式図であり、球の中心を通る面で切断された球の半分の形状のもの(a)と、球の中心を通らない面で切断された、球の半分よりも小さい形状のもの(b)を表した図である。 本発明の他の実施形態に係る紙送りロールの外観模式図である。
本発明に係る紙送りロール(以下、単に紙送りロールということがある。)について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る紙送りロールの外観模式図である。図2は、図1に示す紙送りロールの周面の拡大模式図(a)と、そのA−A線断面図(b)である。
本発明の一実施形態に係る紙送りロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、を備える。弾性体層14は、紙送りロール10の表面に現れる層(最外層)となっている。弾性体層14は、チューブ状(円筒状)である。
弾性体層14の周面には、半球状の凸部16が設けられている。凸部16と凸部16の間は凸部16よりも低い凹部となっており、凸部16により弾性体層14の周面には凹凸が設けられている。球状とは、略球状であり、曲面を有する球状に近い形状のものであればよい。球状とは、例えば、真球状、楕円球状が含まれる。半球状とは、球の中心を通る面で切断された球の半分の形状のものや、球の中心を通らない面で切断された、球の半分よりも大きい形状のもの、球の半分よりも小さい形状のものも含まれる。
凸部16は、弾性体層14の周面に沿って軸方向Xと異なる方向に配列している。具体的には、凸部16は、弾性体層14の周面に沿って周方向Yに対し所定の角度θの方向に沿って配列している。また、凸部16は、弾性体層14の周面に沿ってらせん状に配列している。なお、凸部16は、弾性体層14の周面に沿って軸方向Xにも配列しているが、凸部16は軸方向Xに配列していなくてもよい。
軸方向Xと異なる方向の凸部16の列において、列内の凸部16と凸部16の間は所定の間隔aで離れている。軸方向Xと異なる方向の凸部16の列とこれに平行な凸部16の列の間は、連続した凹部の溝18になっている。この溝18の幅bが、凸部離間距離aよりも大きくなっている。溝18の幅bは、軸方向Xと異なる方向の凸部16の列とこれに平行な凸部16の列の軸方向Xにおける離間距離である。
このような紙送りロール10によれば、弾性体層14の周面に沿って軸方向Xと異なる方向に配列する凸部16の列とこれに平行な凸部16の列により弾性体層14の周面に沿って軸方向Xと異なる方向に連続した凹部の溝18が形成されており、その溝18の幅が軸方向Xと異なる方向に配列する凸部16の列内の凸部離間距離aよりも大きいことから、長期にわたって紙粉の蓄積による用紙の搬送不良が抑えられる。これは、溝18の幅が軸方向Xと異なる方向に配列する凸部16の列内の凸部離間距離aよりも大きいことで、紙送り時に用紙との接触面となる凸部16で発生した紙粉をその凸部16から隣りの溝18に逃がしやすくなり、また、その溝18が軸方向Xと異なる方向に連続したものであることで、ロールの回転に伴い紙粉が溝18に滞留することなく溝18からロール外に排出しやすくなっているためである。そして、紙送りロール10において、連続した凹部の溝18は、周方向Yに対し所定の角度θの方向に形成されているので、凸部16で発生した紙粉をその凸部16から隣りの溝18により逃がしやすくなっている。また、凸部16が半球状であり、用紙との接触面が曲面なので、比較的紙粉の発生が抑えられ、また、紙送り性能にも優れる。
軸方向Xと異なる方向の凸部16の列において、角度θは、周方向Yに対し±10°以内であることが好ましい。すなわち、凸部16は、弾性体層14の周面に沿って周方向Yに対し±10°以内の角度の方向に配列していることが好ましい。上述するように、連続した凹部の溝18は、周方向Yに対し所定の角度θの方向に形成されているほうが、凸部16で発生した紙粉をその凸部16から隣りの溝18により逃がしやすい。その一方で、角度θが大きすぎると、溝18に移動した紙粉が溝18の隅に蓄積しやすくなる。したがって、溝18から紙粉をロール外に排出しやすいなどの観点から、角度θは、周方向Yに対し±10°以内の角度であることが好ましい。
凸部離間距離aは、0〜0.6mmの範囲内であることが好ましい。凸部離間距離aが0.6mm以下であると、凸部16の列内の隙間に紙粉が滞留しにくく、隣の溝18に紙粉が移動しやすくなり、紙粉を溝18に排出しやすい。また、凸部16の列の方向の凸部16の数が多くなるので、用紙との接触面積が大きくなり、用紙への負荷が小さく抑えられて、紙粉の発生が抑えられやすい。この観点から、凸部離間距離aは、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下である。
溝18の幅bは、0.01〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。溝18の幅bが0.01mm以上であると、溝18に移動した紙粉が溝18で詰まりにくく、溝18からロール外に排出しやすい。この観点から、溝18の幅bは、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上である。また、溝18の幅bが2.0mm以下であると、軸方向Xの凸部16の数が多くなるので、用紙との接触面積が大きくなり、用紙への負荷が小さく抑えられて、紙粉の発生が抑えられやすい。この観点から、溝18の幅bは、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。
凸部16の高さhは、0.05〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。凸部16の高さhが0.05mm以上であると、溝18の容積が大きくなり、溝18に移動した紙粉が溝18で詰まりにくく、溝18からロール外に排出しやすい。この観点から、凸部16の高さhは、より好ましくは0.1mm以上である。また、凸部16の高さhが0.5mm以下であると、凸部16の大きさr’が適度に小さく抑えられるため、溝18までの紙粉の移動距離が短く抑えられ、紙粉を溝18に排出しやすい。この観点から、凸部16の高さhは、より好ましくは0.3mm以下である。
凸部16の曲率半径rは、0.05〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。凸部16の曲率半径が0.05mm以上であると、用紙との接触面積が大きくなり、用紙への負荷が小さく抑えられて、紙粉の発生が抑えられやすい。この観点から、凸部16の曲率半径rは、より好ましくは0.10mm以上である。また、凸部16の曲率半径rが1.0mm以下であると、凸部16の大きさr’が適度に小さく抑えられるため、溝18までの紙粉の移動距離が短く抑えられ、紙粉を溝18に排出しやすい。この観点から、凸部16の曲率半径rは、より好ましくは0.8mm以下である。
凸部16の大きさr’は、凸部16の最大直径で表される。凸部16の大きさr’は、凸部16の高さhと凸部16の曲率半径rによって定まる。凸部16の大きさr’を所定の大きさに設定するには、凸部16の高さhと凸部16の曲率半径rを調整すればよい。凸部16の大きさr’は、0.10〜1.73mmの範囲内であることが好ましい。凸部16の大きさr’が0.10mm以上であると、用紙との接触面積が大きくなり、用紙への負荷が小さく抑えられて、紙粉の発生が抑えられやすい。この観点から、凸部16の大きさr’は、より好ましくは0.20mm以上である。また、凸部16の大きさr’が1.73mm以下であると、溝18までの紙粉の移動距離が短く抑えられ、紙粉を溝18に排出しやすい。この観点から、凸部16の大きさr’は、より好ましくは1.30mm以下である。
凸部16の高さhと曲率半径rの関係について、h=rであると、図3(a)に示すように、凸部16は球の中心を通る面で切断された球の半分の形状のものとなる。一方、h<rであると、図3(b)に示すように、凸部16はその球の半分よりも小さい形状のものとなる。図3(b)に示す形状のもののほうが、接線lの角度が緩やかであることから、凸部16から溝18に紙粉が移動しやすくなり、紙粉を溝18に排出しやすい。この観点から、凸部16の高さhと曲率半径rの関係では、h<rであることが好ましい。また、特に、h<(1/2)×rであることが好ましい。
溝18のピッチpは、凸部16の大きさr’(凸部16の曲率半径rと凸部16の高さh)と溝18の幅bによって決定される。溝18のピッチpは、これらによって適宜定めればよい。溝18のピッチpは、0.1〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。溝18のピッチpが0.1mm以上であると、溝18の幅が大きくなるので、溝18に移動した紙粉が溝18で詰まりにくく、溝18からロール外に排出しやすい。この観点から、溝18のピッチpは、より好ましくは0.3mm以上である。また、溝18のピッチpが2.0mm以下であると、凸部16の大きさr’が適度に小さく抑えられるため、溝18までの紙粉の移動距離が短く抑えられ、紙粉を溝18に排出しやすい。この観点から、溝18のピッチpは、より好ましくは1.8mm以下である。
凸部16の配列角度θ、凸部離間距離a、溝18の幅b、凸部16の高さh、凸部16の曲率半径r、凸部16の大きさr’、溝18のピッチpは、弾性体層14の表面写真や軸方向断面写真を解析することにより求めることができる。
本発明に係る紙送りロールは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態においては、半球状の凸部16は、弾性体層14の周面に沿って周方向Yに対し所定の角度θの方向にらせん状に配列しているが、らせん状ではなく、弾性体層14の周面に沿って周方向Yに対し所定の角度θの方向に周回した列が複数列並んでいるものであってもよい。
また、例えば上記実施形態においては、凸部16は半球状とされているが、曲面を有するものであれば、裾が広がる形状であってもよい。
また、本発明に係る紙送りロールは、例えば図4に示す紙送りロール20のように構成してもよい。図4に示す紙送りロール20は、図1に示す紙送りロール10と比較して、凸部16の配列に違いがある。これ以外については、図1に示す紙送りロール10と同様であり、その説明を省略する。
図4に示す紙送りロール20において、凸部16は、弾性体層14の周面に沿って軸方向Xと異なる方向に配列している。具体的には、凸部16は、弾性体層14の周面に沿って周方向Yに配列している。なお、凸部16は、弾性体層14の周面に沿って軸方向Xにも配列しているが、凸部16は軸方向Xに配列していなくてもよい。
周方向Yの凸部16の列において、列内の凸部16と凸部16の間は所定の間隔で離れている。周方向Yの凸部16の列とこれに平行な凸部16の列の間は、連続した凹部の溝18になっている。この溝18の幅が、凸部16離間距離よりも大きくなっている。溝18の幅は、周方向Yの凸部16の列とこれに平行な凸部16の列の軸方向Xにおける離間距離である。
このような紙送りロール20によれば、弾性体層14の周面に沿って周方向Yに配列する凸部16の列とこれに平行な凸部16の列により弾性体層14の周面に沿って周方向Yに連続した凹部の溝18が形成されており、その溝18の幅が周方向Yに配列する凸部16の列内の凸部離間距離よりも大きいことから、長期にわたって紙粉の蓄積による用紙の搬送不良が抑えられる。これは、溝18の幅が周方向Yに配列する凸部16の列内の凸部離間距離よりも大きいことで、紙送り時に用紙との接触面となる凸部16で発生した紙粉をその凸部16から隣りの溝18に逃がしやすくなり、また、その溝18が周方向Yに連続したものであることで、ロールの回転に伴い紙粉が溝18に滞留することなく溝18からロール外に排出しやすくなっているためである。
図4に示す紙送りロール20においても、図1に示す紙送りロール10の凸部離間距離a、溝18の幅b、凸部16の高さh、凸部16の曲率半径r、溝18のピッチpと同様に、凸部離間距離、溝18の幅、凸部16の高さ、凸部16の曲率半径、溝18のピッチなどを設定すればよい。
次に、本発明に係る紙送りロールの材料構成について説明する。
軸体12としては、金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体などが用いられる。そして、その材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したものなどが挙げられる。なお、必要に応じて、軸体12上に接着剤、プライマー等を塗布してもよく、また上記接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化してもよい。
弾性体層14は、ゴムの架橋物などの弾性材料によって形成される。ゴム状の弾性材料であればその材料は特に限定されるものではない。例えば、ウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴムなどの公知のゴム材料を用いることができる。
弾性体層14は、導電性あるいは半導電性を有するものであることが好ましい。具体的には、弾性体層14の体積抵抗率は、10〜1010Ω・cm、10〜10Ω・cm、10〜10Ω・cmの範囲であることが好ましい。弾性体層14が導電性あるいは半導電性を有するものであると、弾性体層14の表面残留電荷を低く抑えて紙粉の付着を抑えやすい。
弾性体層14は、低電気抵抗化の観点から、導電剤を含んでいてもよい。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。
弾性体層14は、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、0.1〜10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
弾性体層14は、ゴム組成物を用い、成形金型による成形などによって形成することができる。例えば、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋のゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成することができる。成形金型は、その内周面に凸部16に対応する形状の凹部が形成されたものを用いることができる。弾性体層14の凸部16は、例えば、成形金型による型転写によって形成することができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
内周面に所定の凹部を有する筒状成形金型を用い、芯材(φ6、SUS304製)の外周にウレタンゴム組成物の弾性体層(厚み3mm)を形成した。これにより、図4または図1に示すような表面形状を有する紙送りロールを得た。すなわち、弾性体層の周面には、半球状の凸部により凹凸が設けられている。実施例1、比較例1では、図4のように、半球状の凸部は、弾性体層の周面に沿って周回するように配列している。その他の実施例、比較例では、図1に示すように、半球状の凸部は、弾性体層の周面に沿ってらせん状に配列している。そして、凸部の列とこれに平行な凸部の列により弾性体層の周面に沿って連続した凹部の溝が形成されている。各紙送りロールにおいて、半球状の凸部に起因する、図2に示す寸法(凸部離間距離a、溝の幅b、凸部の高さh、凸部の曲率半径r、凸部の配列角度θ)は、表1、2のように設定されている。
作製した紙送りロールを用い、耐久性の評価をした。凸部離間距離a、溝の幅b、凸部の高さh、凸部の曲率半径r、凸部の配列角度θとともに表1〜2に示す。
(耐久性の評価)
紙送りロールをFRR方式の給紙システムを持った市販の複写機に組み込み、紙送り性の評価を行った。用紙には市販のPPC用紙を用い、10万枚通紙を行い、紙粉による紙詰まりの発生回数を測定した。紙詰まりが発生しなかったものを「◎」、紙詰まりの発生回数が1回以上3回以下のものを「○」、紙詰まりの発生回数が4回以上9回以下のものを「△」、紙詰まりの発生回数が10回以上のものを「×」とした。
Figure 0006843021
Figure 0006843021
比較例によれば、溝の幅bが凸部の列内の凸部離間距離aよりも小さいものとなっており、紙粉による紙詰まりの発生回数が10回以上と多く、耐久性を満足していない。これに対し、実施例によれば、溝の幅bが凸部の列内の凸部離間距離aよりも大きいものとなっており、紙粉による紙詰まりの発生回数が9回以下と少なく、耐久性を満足している。
そして、実施例において、角度θが±10°以下であると、紙詰まりの発生回数がより抑えられることがわかる。また、角度θが0°よりも5°のほうが紙詰まりの発生回数がより抑えられることがわかる。また、凸部離間距離aが0.6mm以下、溝の幅bが2.0mm以下、1.5mm以下、凸部の高さhが0.05〜0.5mmであると、紙詰まりの発生回数がより抑えられることがわかる。
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
10 紙送りロール
12 軸体
14 弾性体層
16 凸部
18 溝
a 凸部離間距離
b 溝の幅
h 凸部の高さ
r 凸部の曲率半径
θ 凸部の配列角度
r’ 凸部の大きさ
p 溝のピッチ
X 軸方向
Y 周方向

Claims (7)

  1. 軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、を備え、
    前記弾性体層の周面には、凸部により凹凸が設けられており、
    前記凸部は、半球状の凸部であり、
    前記凸部は、前記弾性体層の周面に沿って周方向とは異なる方向で周方向に対し±10°以内の角度の方向に配列しており、前記周方向とは異なる方向で周方向に対し±10°以内の角度の方向の凸部の列とこれに平行な凸部の列の間が連続した凹部の溝になっており、
    前記溝の幅が、前記凸部の列内の凸部離間距離よりも大きいことを特徴とする紙送りロール。
  2. 前記凸部は、前記弾性体層の周面に沿ってらせん状に配列していることを特徴とする請求項に記載の紙送りロール。
  3. 前記凸部の列内の凸部離間距離が、0〜0.6mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙送りロール。
  4. 前記溝の幅が、0.01〜2.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の紙送りロール。
  5. 前記凸部の高さが、0.05〜0.5mmの範囲内であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の紙送りロール。
  6. 前記凸部の曲率半径が、0.05〜1.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の紙送りロール。
  7. 前記溝のピッチが、0.1〜2.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の紙送りロール。
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