以下、本発明に係る制動装置、及び、これを用いた日射遮蔽装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
<制動装置>
図1〜図17を用いて、本発明の実施形態に係る制動装置1000について説明する。本実施形態に係る制動装置1000は、昇降コード等のコードCDの移動を制動する制動装置であり、コードCDの移動を回転運動に変換する運動変換部と、この回転運動に対し回転抵抗を付与する抵抗付与部とが略垂直方向に連結されて成る。ここで、本実施形態において、スライダー20、コイルスプリングSP、軸芯31とローラ部32からなる張力伝達ローラ30、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、内歯付キャリア260、遊星歯車280及びケース10Aの一部が運動変換部を構成し、ウェイト340、太陽歯車付ウェイトホルダ320、ベース70及びケース10Aの一部が抵抗付与部を構成する。
1<制動装置の全体構成>
図1及び図2は、本実施形態に係る制動装置1000の分解斜視図である。本実施形態において、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40がコードCDを挟着する一対の挟着部材を構成し、一対の狭着部材は保持部材としてのスライダー20に保持されている。以下、各部材について説明する。
1−1<整列部材200>
図3(a),(b)に示されるように、整列部材200は、複数のコードCDを挿通し、複数のコードCDを互いに同じ向きに整列させるものである。整列部材200は、例えば、プラスチック等の樹脂で形成することができる。ここで、図3(a)に示されるように、矢印の向きをそれぞれ前後、左右、上下とする。すなわち、後述する第1天壁溝16と第2天壁溝17の距離が狭くなる向きを前方とし、左右方向(幅方向)、上下方向を定める。
整列部材200は、上下方向に貫通する略直方体のフレーム200aの前方及び後方にコードCDを挿入する略矩形の挿入部201が2つずつ形成された構成となっており、本実施形態においては、3本のコードCDが挿入部201及び挿入部201の上部に通されることで、コードCDが上下方向に略等間隔に整列された状態で一対の挟着部材に挟着されることになる。
1−2<ケース10A>
次に、図1〜図5、図9〜図11及び図13を用いて第1部材としてのケース10Aについて説明する。ケース10Aは、ベース70とともに筐体を構成し、その内部にスライダー20、コイルスプリングSP、軸芯31とローラ部32からなる張力伝達ローラ30、リング状部材33,34、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ピニオンギア50、内歯付キャリア260、遊星歯車280、プレート300、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340を保持する。
また、ケース10Aは、例えば図1に示されるベース70とともに制動装置1000の筐体を構成する。さらに、図1に示される太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340とともに、抵抗付与部を構成する。
図5に示されるように、ケース10Aは、外形が概ね正方形の天壁部11と、前側壁部12fと、前側壁部12f及び天壁部11に連結される右側壁部12r及び左側壁部12lと、右側壁部12r及び左側壁部12lのそれぞれに連結される後側壁部12bと、天壁部11に対向し、前側壁部12f、後側壁部12b、前側壁部12f及び左側壁部12lから径方向側に向かって延在する鍔部13と、鍔部13に連結される円筒部13Cと、円筒部13Cに連結されるカバー部112とを主な構成として有する。
前側壁部12f及び後側壁部12bには、挿通溝113が形成されている。これら2つの挿通溝113は、互いに前後方向に対向している。これらの挿通溝113はコードCDが前後方向に挿通されるための溝である。ここで、挿通溝113に挿通するコードCDの数は特に限定されないが、本実施形態では3本のコードCDが縦方向に挿通された例について示している(図3参照)。
さらに、左右の側壁部12r,12l上方には、図3、図5及び図11に示されるように、ガイド部としての水平溝114が設けられる。水平溝114は、図3に示されるように、ケース10Aがスライダー20を内部に保持するにあたり、スライダー20に設けられる突起230を支持するものである。具体的には、水平溝114は、図5及び図11に示されるように、ケース10Aの天壁部11と側壁部12l,12rが接続する角部に形成され、前後方向に水平に延びる溝であり、側壁部12l,12rの上面が支持面114aとなっている。この水平溝114の支持面114aにより、スライダー20をその底部を浮かせた状態で支持することができる。なお、詳細は後述する。
天壁部11には、図4(a)及び図9等に示されるように、第1天壁溝16と第2天壁溝17とが形成されている。第1天壁溝16及び第2天壁溝17は、それぞれコードCDの長手方向すなわち前後方向に対して斜めに形成されており、コードCDの一方の長手方向である前方に向かうにつれて、第1天壁溝16と第2天壁溝17との距離が小さくされている。
具体的には、第1天壁溝16は円弧状に形成されており、図17に示すように、挟着案内斜面16a、解除案内斜面16b、挟着側規制面16c及び解除側規制面16dにより内周面が形成される)。なお、図17では、溝の形状を模式的に示している。第1天壁溝16の円弧は、図7に示される内歯付キャリア260の内周面と平面視において同心円上となるように形成される(図4参照)。一方、第2天壁溝17は緩やかなカーブを描いた形状に形成され、挟着案内斜面17a、解除案内斜面17b、挟着側規制面17c及び解除側規制面17dにより内周面が形成される(図17参照)。この第2天壁溝17は、前方側が略直線状の形状とされ、後方に向かうにつれて、第1天壁溝16から離れる向きに湾曲している(図4参照)。これは、第2天壁溝17を略直線状とした場合、第1天壁溝16は後方から前方に向かってコードCDに近づくような円弧であるので、例えば軸芯31及び軸芯41がそれぞれ第1天壁溝16及び第2天壁溝17に沿って移動するときに、コードCDに対する垂直方向の変位が、軸芯31と軸芯41とで異なってしまうことを防ぐためである。つまり、一方が円弧であるのに対し、他方が略直線状であると、前後方向においてコードCDへの垂直距離が異なるためである。
このように、軸芯31及び軸芯41のコードCDの鉛直方向に対する変位を近接させることにより、ローラ部32及びローラ部42が適切にコードCDを挟着することが可能となる。なお、第2天壁溝17はこれに限定されず、例えば、第1天壁溝16と略同一形状の溝を、コードCD側に向かって湾曲する配置としてもよい。これにより、コードCDに対する鉛直方向の変位を、軸芯31と軸芯41とで略同一にすることができ、コードCDの摩耗を低減することが可能となる。ここで、本実施形態では、コードCDに対する鉛直方向の変位を、軸芯31と軸芯41とでなるべく同じにすることに加え、他の部材の移動等による相互作用等を考慮し、図4(a)に示される形状を採用した。
第1天壁溝16の縁には、図4(a)、図5(a),(b)に示されるように、ケース10Aの平面視において、第1天壁溝16におけるケース10Aの外側の縁、すなわち挟着案内斜面16aに沿った位置の少なくとも一部に、第1天壁溝16から上方に突出する第1ガイド壁16Aが設けられる。本実施形態では、第1ガイド壁16Aは、第1天壁溝16に対して略90度となるように設けられる。第1ガイド壁16Aは、第1天壁溝16に沿って移動する軸芯31の面圧を下げることを目的としている。つまり、第1ガイド壁16Aを設け、軸芯31と接触する面積を増大させることにより、軸芯31の面圧を低減するものである。これは、コードCDに張力が与えられ、制動装置1000が作用している間は軸芯31の面圧が第1天壁溝16の内面に加わっており、かかる面圧により第1天壁溝16の内面が削れると、ローラ部32とローラ部42の間隔が変化して、コードCDの狭着が不安定になり、ローラ部32への回転伝達が不十分になるおそれがあるためである。また、第1天壁溝16の内面が摩耗することで、軸芯31の軸ぶれが生じやすくなるおそれもある。本実施形態では、第1ガイド壁16Aを設けることにより、軸芯31からの圧力によりケース10Aが削れることを防止することが可能となっている。なお、第1ガイド壁16Aの肉厚は任意であるが、ケース10Aの素材、軸芯31の移動速度等を考慮して適宜設計すればよい。
また、第2天壁溝17におけるケース10Aの外側の縁に沿った位置にも、その少なくとも一部に、第2天壁溝17から上方に突出する第2ガイド壁17Aが設けられる。第2ガイド壁17Aは、第2天壁溝17に対して略90度となるように設けられる。そして、この第2ガイド壁17Aにより、軸芯41の面圧を低減することができ、これにより、軸芯41からの圧力によりケース10Aが削れることを防止することが可能となる。なお、第2ガイド壁17Aの肉厚は任意であるが、ケース10Aの素材、軸芯41の移動速度等を考慮して適宜設計すればよい。
なお、ケース10Aを金属等の強固な材料で成形した場合には、第1ガイド壁16A及び第2ガイド壁17Aを設けなくてもよい。これは、ケース10Aが堅牢であるので、軸芯31及び軸芯41からの圧力によりケース10Aがほとんど削れることがないためである。
鍔部13は、図3及び図5に示すように、天壁部11に対向し、前側壁部12f、後側壁部12b、前側壁部12f及び左側壁部12lから径方向側に向かって延在する部位であり、本実施形態では略円形とされる。なお、鍔部13の内面にはリング状に凸となった段差117が設けられており、組み付け時の内歯付キャリア260との間の摩擦抵抗を低減している。
円筒部13Cは、図5に示すように鍔部13に連結され、図9(b)及び図10(a)に示すように、内面には遊星歯車280と歯合するリング状の内周ギア115が形成される。本実施形態では、円筒部13Cは、略円筒状の形状とされる。
カバー部112は、円筒部13Cに連結され、ベース70と嵌合する箇所である。本実施形態では、カバー部112の外縁は略正方形とされる。そして、カバー部112は、図1に示すように、左右の側面の両端にそれぞれ2つの第1係合溝111Aが設けられる。そして、前端部の両端に2つの第2係合溝111Bが設けられ、後端部の略中央に1つの第2係合溝111Bが設けられる。第1係合溝111Aは、図6に示されるベース70の第1係合板部701Aと係合するものである。また、第2係合溝111Bは、ベース70の第2係合板部701Bと係合するものである。これにより、ケース10Aとベース70が係合され、筐体を形成する。
また、図10及び図13に示されるように、ケース10Aの側壁部12l,12rの内側面には、幅方向両側に2つずつ、計4つの略鉛直方向に延びる鉛直溝118が形成される。本実施形態では、鉛直溝118は横断面が半円形をなすよう形成される。鉛直溝118は、制動装置1000を組み立てる際又は分解する際に、後述するスライダー20の突起230を水平溝114へと導入するためのものであり、特許請求の範囲の「導入手段」に該当する。本実施形態では、スライダー20の突起230が4つであるため、ケース10Aにも4つの鉛直溝118を設けている。そして、4つの鉛直溝118のうちの後方側の2つの鉛直溝118は、図9(b)に示すように、水平溝114の後端位置において水平溝114と接続される。なお、本実施形態においては、この鉛直溝118と水平溝114の接続部分、すなわち、鉛直溝118を通って水平溝114に導入されたときのスライダー20の突起230の位置が、特許請求の範囲におけるガイド部(水平溝114)の「特定位置」となる。
また、各鉛直溝118の上部には、図10及び図11に示すように、溝を上方に向かって浅くすることで形成される傾斜部119が形成される。この傾斜部119は、水平溝114によるスライダー20の保持が解除されることを規制するものであり、図9(a)及び図11に示すように、上方から見たときの水平溝114の支持面114aは、鉛直溝118が見えない略長方形形状となっている。この傾斜部119が特許請求の範囲の「規制手段」に該当する。これら鉛直溝118及び傾斜部119についても、詳細は後述する。
1−3<スライダー20>
次に、図6,図12及び図13を用いて第2部材としてのスライダー20について説明する。スライダー20は、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40を内部に保持し且つ張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40とともにケース10A内を移動(スライド)するものである。スライダー20は、天壁部21、後側壁部22、前側壁部24及び底壁部23とを有する。
天壁部21は概ね矩形の形状に一対の溝が形成された形状とされる。これら一対の溝はそれぞれ第1天壁溝26及び第2天壁溝27とされる。第1天壁溝26及び第2天壁溝27は、それぞれ左右方向に沿って延在する直線状の溝とされ、互いに直線上に並んでいる。
底壁部23は天壁部21と対向する。本実施形態では、底壁部23は、概ね天壁部21と同じ形状とされる。しかし、天壁部21と底壁部23を異なる形状としてもよい。底壁部23にも左右方向に直線上に並んで形成される一対の溝が形成されており、これら一対の溝はそれぞれ第1底壁溝28及び第2底壁溝29とされる。第1底壁溝28が第1天壁溝26と上下方向に対向しており、第2底壁溝29が第2天壁溝27と上下方向に対向している。
ここで、第1天壁溝26及び第1底壁溝28の幅の大きさは、軸芯31の直径が収まる程度の大きさである。また、第2天壁溝27及び第2底壁溝29の幅の大きさは、軸芯41が収まる程度の大きさである。
また、図12に示すように、天壁部21には、その四隅に天壁部21の左右へ突出するように4つの突起230が設けられる。そしてこれらの突起230が、ケース10Aの水平溝114と係合することで、スライダー20が、下方に位置する内歯付キャリア260と非接触状態で保持されるよう構成される。各突起230は、具体的には鉛直溝118の形状と対応した形状、すなわち平面視において半円形状となっており、4つの突起230がケース10A内側面の4つの鉛直溝118を通ってケース10Aの水平溝114に導入される構成となっている。
前側壁部24及び後側壁部22には、それぞれ貫通孔25が形成されている。貫通孔25は、前側壁部24及び後側壁部22の幅方向の略中央において前側壁部24及び後側壁部22を前後方向に貫通する。孔の形状は任意であるが、少なくともコードCD1本が挿通可能な程度である。好ましくは、複数本のコードCDが縦方向に整列した状態で挿通可能な形状である。なお、本実施形態では、上下方向に長い略長円形の形状とされる。
また、図12(b)に示されるように、後側壁部22には、貫通孔25の両脇に、後側壁部22の外側面から形成される凹部231が形成されている。凹部231の形状は任意であり、同図に示されるような貫通孔25から側面側にかけて切り欠かれた形状でもよく、略円形、略矩形の凹み等であってもよい。また、左側の凹部231内には付勢手段としてのコイルスプリングSPが配置されており、コイルスプリングSPの一端は凹部231から突出している。そして、制動装置1000の組立時において、ケース10Aの後方の内壁15dと当接し、スライダー20を前方に付勢する。なお、図12(b)ではコイルスプリングSPの凹部231から突出している部分を省略している。
ここで、図13に示すように、このような形状のスライダー20の左右方向の大きさはケース10Aの幅方向の内壁間の距離と概ね同じであり、スライダー20の前後方向の大きさは、ケース10Aの前後方向の内壁間の距離よりも小さくされる。従って、スライダー20がケース10Aの空間内に配置されると、スライダー20の天壁部21及び底壁部23の側面がケース10Aの幅方向において左右の内壁面12aに当接して、スライダー20はケース10Aに対して幅方向に動きが規制される。この状態において、ケース10Aの挿通溝113とスライダー20の貫通孔25とが互いに前後方向に並ぶ。つまり、貫通孔25は、コードCDをスライダー20内に挿通するための孔である。一方、スライダー20がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー20とケース10Aの内壁面との間には、前後方向に隙間が生じ、スライダー20はケース10Aに対して前後方向に動くことができる。また、スライダー20がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー20の後側壁部22の凹部231から突出するコイルスプリングSPがケース10Aの後方の内壁15dを押圧する。従って、スライダー20がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー20は、前方側に位置し、ケース10A内において前方に押圧された状態となる。
1−4<張力伝達ローラ30、アイドルローラ40及びピニオンギア50>
次に、図1、図6、図7及び図15を用いて、一対の狭着部材の一方である張力伝達ローラ30、一対の狭着部材の他方であるアイドルローラ40及びピニオンギア50について説明する。
張力伝達ローラ30は、特許請求の範囲における「可動滑車」であり、軸芯31と軸芯31の外周面を覆う円筒状のローラ部32とを有する。本実施形態において、ローラ部32の表面にはローレットが施されている。ローラ部32は、軸芯31の一端側に取り付けられ、軸芯31の他端には、ピニオンギア50が挿入されている。ローラ部32は、例えば弾性体であるゴムで形成される。
ピニオンギア50は、圧入により軸芯31に取り付けられており、ピニオンギア50は、軸芯31を中心として張力伝達ローラ30とともに回転する。また、ピニオンギア50と張力伝達ローラ30との間はスライダー20の底壁部23が介在できる程度に離間しており、上記のように張力伝達ローラ30のローラ部32がスライダー20に収容された状態で、ピニオンギア50はスライダー20の外に位置する。なお、特に図示しないが、ピニオンギア50とスライダー20の底壁部23との間にも、摩擦を低減するためのワッシャー等を介在させても良い。
一方、アイドルローラ40は、張力伝達ローラ30の軸芯31と平行な軸芯41と、軸芯41の外周面を覆うローラ部42とを有する。従って、張力伝達ローラ30の回転軸とアイドルローラ40の回転軸とは互いに平行とされる。アイドルローラ40のローラ部42の外径は、張力伝達ローラ30のローラ部32の外径よりも大きくされている。本実施形態において、アイドルローラ40のローラ部42の外周面は樹脂製とされ、金属の平坦な面よりも摩擦係数が高い状態とされる。また、軸芯41の両端部は、ローラ部42から露出している。
これら張力伝達ローラ30のローラ部32及びアイドルローラ40のローラ部42は、スライダー20の内部に保持される。また、ピニオンギア50は、スライダー20の外部に保持される。ここで、図8を用いてローラ部32、スライダー20及びピニオンギア50の位置関係について説明する。図8は、軸芯31の略中心を通り前後方向に垂直な断面(図3のB−B断面)の一部である。図8に示されるように、制動装置1000の組み立て時において、ローラ部32とピニオンギア50でスライダー20の底壁部23を挟み込むような構成となっている。
加えて、本実施形態では、ピニオンギア50とスライダー20の接触面積を低減すべく、ピニオンギア50に段差51が設けられる(図8参照)。これにより、軸芯31を介してローラ部32及びピニオンギア50が一体回転するときに、ピニオンギア50とスライダー20との間の摺動抵抗を低減することができる。これにより、回転動作を滑らかにすることが可能となる。
1−5<内歯付キャリア260及び遊星歯車280>
次に、図7及び図14を用いて内歯付キャリア260及び遊星歯車280について説明する。本実施形態では、内歯付キャリア260は、平面視において略ドーナツ形状である。内歯付キャリア260は、円柱部264から平面視において外側に突出するフランジ262を備える。
円柱部264の内側の内周面には、ピニオンギア50と歯合する内歯車261が形成される。そして、フランジ262には、鉛直方向において下向きに突出する支持軸263が形成される(図1も参照)。支持軸263の個数は特に限定されないが、特に等間隔であることが好ましい。なお、本実施形態では、一例として支持軸263が4つ設けられた構成としている。
そして、支持軸263にはそれぞれ、遊星歯車280が回転可能に支持されている。遊星歯車280は、後述する太陽歯車323と、ケース10Aの内部に設けられた内周ギア115と互いに歯合する。そして、内歯車261の中心部を中心として公転することが可能である。従って、ピニオンギア50の回転が内歯車261に伝達されることにより内歯付キャリア260が回転し、それにともない内歯付キャリア260のフランジ262に設けられた支持軸263に回転可能に支持された遊星歯車280が回転することで、ピニオンギア50に起因する回転を増速させることが可能となる。
1−6<太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340>
次に、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340について、図1、図14及び図15を用いて説明する。太陽歯車付ウェイトホルダ320は、リング状のリング部324の外方に向かって、凸部321及び凹部322が交互に並んで形成される(図1参照)。図14及び図15に示されるように、リング部324の外側の外周面には、遊星歯車280と歯合する太陽歯車323が、回転軸が凸部321の延在方向と略垂直方向を向くように設けられる。そして、それぞれの凹部322には、ウェイト340が配置される。つまり、太陽歯車付ウェイトホルダ320は、制動装置1000の組み立て時において、凸部321を境としてそれぞれの凹部322内にウェイト340を保持する部材であるとも言える。なお、ウェイト340の数は任意であるが、回転時におけるバランスの観点から等間隔であることが好ましい。なお、本実施形態では、一例として8つのウェイト340を用いている。従って、凸部321及び凹部322もそれぞれ8つずつ設けられている。
また、図15に示すように、各ウェイト340には、ベース70側に突起341が設けられる。かかる突起341により、ベース70と当接する際における抵抗を低減することが可能となる。突起341の数は任意であるが、本実施形態では、一例として4つの突起341を設けている。
ウェイト340は、ピニオンギア50に起因する回転時において、遠心力により内歯車261の中心から遠ざかる方向に移動し、ケース10Aの内周壁と当接することにより、回転に対して遠心ブレーキとして抵抗力を付与するものである。従って、ケース10Aの内周壁、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340により、抵抗付与部が形成されることになる。そして、本実施形態では、運動変換部と抵抗付与部が略垂直に位置するように設けられる。
なお、制動装置1000の組み立て時においては、内歯付キャリア260と太陽歯車付ウェイトホルダ320が、図1に示すプレート300を介して組み立てられる。具体的には、内歯付キャリア260の円柱部264を太陽歯車付ウェイトホルダ320のリング部324に挿入するように組み立てる。従って、円柱部264の直径は、リング部324の直径よりもわずかに小さく設計される。
ここで、プレート300は、遊星歯車280の傾きを防止するとともに、遊星歯車280とウェイト340の干渉を防ぐ機能を有する。
1−7<ベース70>
次に、図1、図2、図4(b)及び図6を用いて、ベース70について説明する。図1及び図2に示されるように、ベース70の略中央には、周囲より嵩高くなっており、下側が凹んでいる円柱部708が設けられる。そして、図4(b)に示されるように、円柱部708の上面に第1ベース溝706、第1ガイド壁706A、第2ベース溝707、第2ガイド壁707Aが設けられる。
第1ベース溝706及び第1ガイド壁706Aはそれぞれ、ケース10Aに設けられた第1天壁溝16及び第1ガイド壁16Aに相当するものである。そして、軸芯31の下端が第1ベース溝706を挿通し、その縁に形成された第1ガイド壁706Aと当接する。同様に、第2ベース溝707及び第2ガイド壁707Aはそれぞれ、ケース10Aに設けられた第2天壁溝17及び第2ガイド壁17Aに相当するものである。そして、軸芯41の下端が第2ベース溝707を挿通し、その縁に形成された第2ガイド壁707Aと当接する。
なお、円柱部708は必須ではないが、円柱部708を設ける等して下側をへこませることにより、軸芯31及び軸芯41の下端が、制動装置1000を載置する載置面と接触することを防ぎ、軸芯31及び軸芯41の下端を適切に挿通することが可能となる(図15参照)。
また、図3(a),(b)及び図6に示すように、ベース70は、左右の側面の両端にそれぞれ2つの第1係合板部701Aが設けられる。そして、前方の側面の両端に2つの第2係合板部701Bが設けられ、後方の側面の略中央に1つの第2係合板部701Bが設けられる。第1係合板部701Aは、ケース10Aに設けられた第1係合溝111Aと係合するものである。また、第2係合板部701Bは、ケース10Aに設けられた第2係合溝111Bと係合するものである。これにより、ケース10Aとベース70が係合され、筐体を形成する。
さらに、図2及び図4(b)に示されるように、ベース70の底面の外側には、遮蔽装置のヘッドボックス(図18のヘッドボックス101参照)内に制動装置1000を配置するときに利用する取付筒702が設けられる。例えば、ヘッドボックス内に設けられた軸等の部材に取付筒702をはめ込むことにより、制動装置1000をヘッドボックス内にて安定して配置させることが可能となる。
2<組立構成>
次に、これら各部材を組み立てた状態について、図1〜図4、図8及び図13を用いて説明する。図3は、これらの部材を組み合わせて構成された制動装置1000の組立図である。図3に示されるように、制動装置1000の外観は、ケース10A及びベース70が接続された筐体と、ケース10Aの上方から被せるようにして配置された整列部材200からなる。かかる組立は、図1及び図2に示されるように、各部材同士の中心軸を上下方向に重ねあわせた状態でなされる。具体的には、内歯付キャリア260と、ウェイト340を保持した太陽歯車付ウェイトホルダ320が、プレート300を介して組み立てられる。このとき、内歯付キャリア260に設けられた遊星歯車280と、太陽歯車付ウェイトホルダ320に設けられた太陽歯車323とが互いに歯合するようにする。
そして、スライダー20の第1天壁溝26及び第1底壁溝28に軸芯31を水平方向にスライドさせ、ローラ部32をスライダー20内に収容する。このとき、ピニオンギア50はスライダー20の外部に位置するようにされる(図8参照)。また、第2天壁溝27及び第2底壁溝29に軸芯41水平方向に移動させ、ローラ部42をスライダー20の内部に収容する。そして、内歯付キャリア260に設けられた内歯車261とピニオンギア50が互いに歯合するように、スライダー20と内歯付キャリア260が互いに近づくように相対移動させる。
その後、これらの部材の下側にベース70を配置し、ケース10Aを上方から被せる。このとき、ケース10A内部の下方にスライダー20が位置するように配置し、両者が接近するように上下方向に相対移動させる。以下、このときのケース10Aとスライダー20の組立構造について詳細に説明する。
ケース10Aとスライダー20とは、図13に示すように、スライダー20の4つの突起230とケース10Aの4つの鉛直溝118の位置を合わせ、この状態で互いを接近させて鉛直溝118内に突起230を通し、突起230を水平溝114内へと導入することで組み立てる。ここで、鉛直溝118には上方(図13では下方)に向かって溝が浅くなるよう構成された傾斜部119が形成されているため、突起230が傾斜部119により係止されることになるが、スライダー20をさらに押し込むことで、ケース10A及びスライダー20の弾性により突起230は傾斜部119を乗り越え、水平溝114内へと導入することができるようになっている。このように、本実施形態においては、スライダー20は重力に抗して水平溝114へと導入される。
そして、突起230が一度水平溝114に到達すると、水平溝114と鉛直溝118の接続部分は傾斜部119によって埋められていることから、突起230は鉛直溝118に戻らない構成となっている。さらに、スライダー20に設けられたコイルスプリングSPがケース10Aの後方の内壁15dと当接し、スライダー20を前方に付勢することにより、突起230は通常状態において鉛直溝118よりも前方に位置することとなる。つまり、水平溝114の位置は、コイルスプリングSPによる付勢力に抗した位置に形成されているといえ、コイルスプリングSPはスライダー20を特定位置から離れる方向に付勢しているといえる。これらのことから、ひとたびケース10Aにスライダー20を取り付けると、突起230が水平溝114から外れることを防止できる。なお、鉛直溝118は制動装置1000の組み立て時のみならず、分解時においても突起230を通す役割をする。この場合、コイルスプリングSPの付勢力に抗してスライダー20をケース10Aに対して相対的に後方に移動させ、突起230が鉛直溝118の位置まで到達したときに、ケース10Aの外側から突起230を内側に押し込み、傾斜部119を乗り越えさせてからスライダー20をケース10Aに対して相対的に下側に移動させればよい。
以上のような構成とすることで、スライダー20をケース10A内部において浮き状態で支持することが可能となる。すなわち、スライダー20が、下方に位置する内歯付キャリア260と非接触状態で保持される。そのため、スライダー20と他の部品、例えば内歯付キャリア260等との接触を防止することができ、不要な抵抗力を低減又はゼロにすることができる。したがって、各部材の消耗を低減することが可能となる。
そして、ケース10Aに設けられた第1係合溝111A及び第2係合溝111Bと、ベース70に設けられた第1係合板部701A及び第2係合板部701Bを互いに係合させ、ケース10Aとベース70を固定し、最後に、ケース10A及びベース70で構成される筐体の上方から、整列部材200を被せる。整列部材200は、例えば整列部材200に設けられた爪部とケース10Aに設けられた係合孔19(図5参照)とを係合させることで固定することができる。
このようにして組み立てられた制動装置1000が、図3に示されるものである。そして、制動装置1000の組立が完了した後、3本のコードCDを整列部材200の挿入部201と挿入部201の上部、ケース10Aの前後に設けられた挿通溝113及びスライダー20の前後に設けられた貫通孔25に通される。これにより、図3(a),(b)に示される状態となる。
図3(c)は、制動装置1000の左側面図、つまり、図3(a)の矢印X方向から見た側面図である。図3(c)に示されるように、制動装置1000は、側面視において、上側からケース10A、整列部材200、ベース70が視認されることとなる。また、水平溝114により突起230が支持されていることが伺える。
図4(a)に示されるように、制動装置1000は、その平面視において、中心から順にケース10A、整列部材200、ベース70の一部の順に視認できる。ここで、図3(a),(b)及び図4(a)に示されるように、軸芯31の上端が、スライダー20に設けられた第1天壁溝26からケース10Aに設けられた第1天壁溝16を挿通し、ケース10Aの外部に露出している。同様に、軸芯41の上端が、スライダー20に設けられた第2天壁溝27からケース10Aに設けられた第2天壁溝17を挿通し、ケース10Aの外部に露出している。このように軸芯31,41がケース10Aの外部に露出していることから、これら軸芯を容易に移動させることができる。従って、一対の狭着部材である張力伝達ローラ30とアイドルローラ40がコードCDに近接する方向に付勢されている場合であっても、コードCDを容易に挿入できるようになっている。
そして、第1天壁溝16の縁に設けられた第1ガイド壁16Aが軸芯31と当接し、第2天壁溝17の縁に設けられた第2ガイド壁17Aが軸芯41と当接している。
また、図4(b)に示されるように、ベース70は、その底面視において、第1ベース溝706に挿通された軸芯31の下端と、第2ベース溝707に挿通された軸芯41の下端を視認することができる。なお、取付筒702が設けられる面において、円柱部708の上を面で覆うことにより、軸芯31及び軸芯41の下端が外部から覆われる構成としてもよい。
3<動作>
次に、図16を用いて本実施形態に係る制動装置1000の動作について説明する。図16(a)はコードCDに何ら張力が与えられない状態(定常状態)、図16(b)はコードCDに張力が与えられ、ローラ部32及びローラ部42でコードCDが挟着された状態(挟着状態)、図16(c)は図16(a)から図16(b)へ状態変化する際における各部材の回転方向をまとめた図である。なお、図16(a),(b)はともに、図14と同様に、図3(c)のA−A線切断部断面図である。ここで、説明の都合上、かかる断面図には現れないローラ部42の外周を軸芯41の周囲に、ローラ部32の外周を軸芯31の周囲に重ねて表示した。なお、ローラ部32の外周は、ローレットが施されているため厳密には円形ではないが、説明の簡略化のため、円形に近似して図示している。
図16(a)に示されるように、定常状態において、上記のように、コイルスプリングSPは、ケース10Aの後側壁部12bの内壁(図13参照)と当接し、スライダー20を前方に押圧する。従って、スライダー20はケース10Aの前方に位置する。このため、スライダー20の第1天壁溝26及び第1底壁溝28により位置が規制されている軸芯31と、第2天壁溝27及び第2底壁溝29により位置が規制されている軸芯41と、がスライダー20とともに前方に移動する。さらに、スライダー20の上部に保持されるケース10Aに設けられた第1天壁溝16と第2天壁溝17は、前方に向かうにつれて互いに距離が小さくなっている。同様に、ベース70に設けられた第1ベース溝706及び第2ベース溝707は、前方に向かうにつれて距離が小さくなっている。従って、軸芯41に回転可能に支持されるローラ部42と、軸芯31に回転可能に支持されるローラ部32との距離も小さくなる。つまり、第1天壁溝16及び第1ベース溝706は、ローラ部32の軸芯31が移動可能に嵌合し、ローラ部32が溝に沿わない動きをすることを規制する規制溝として機能する。同様に、第2天壁溝17及び第2ベース溝707は、ローラ部42の軸芯41が移動可能に嵌合し、ローラ部42が溝に沿わない動きをすることを規制する規制溝として機能する。また、第1天壁溝16及び第1ベース溝706は、内歯付キャリア260の内周面の中心点と平面視において同心円上に形成されるため、軸芯31がそれぞれの溝内を移動しても、ピニオンギア50は内歯付キャリア260に設けられた内歯車261に歯合し続けることができる。
このように、ローラ部32とローラ部42との距離が小さくなると、ローラ部32はローラ部42に押圧され、ローラ部32とローラ部42でコードCDが狭持される。つまり、本実施形態では、コイルスプリングSPは、ローラ部32がローラ部42に押圧されるように、スライダー20を介してローラ部32を常時付勢する付勢部材としても機能する。なお、コードCDがローラ部32とローラ部42とで狭持された状態で、コードCDの径だけローラ部32とローラ部42とが離間する。このため、第1天壁溝16及び第2天壁溝17の構造、及び、第1ベース溝706及び第2ベース溝707の構造により、ケース10Aは僅かに後方に位置する。
そして、定常状態の制動装置1000において、コードCDに矢印D1の向き(前方)に張力を与えたとする。すると、コードCDとの間に生じる摩擦力により、ローラ部32が反時計回りに、ローラ部42が時計回りに回転する。つまり、ローラ部32を備えた張力伝達ローラ30及びローラ部42を備えたアイドルローラ40は、直線状に延びるコードCDに当接することで、コードCDの長手方向の移動により回転可能とされると言える。そして、ローラ部32の回転により、同じ軸芯31を共有して固定されているピニオンギア50もローラ部32と同じ向き(反時計周り)に回転(自転)する。この際、図16(b)に示されるように、軸芯31及び軸芯41は、平面視において前方に移動し、ケース10Aの第1天壁溝16の挟着案内斜面16a及び第2天壁溝17の挟着案内斜面17aにそれぞれ案内されることで左右方向において互いに近接して、ローラ部32とローラ部42によるコードCDの挟着力が強くなり、コードCDの移動に応じてローラ部32が確実に回転するようになる。
そして、ローラ部32及びこれと連結されているピニオンギア50が回転すると、図7に示すように、ピニオンギア50は内歯車261と歯合しているので、ピニオンギア50の歯から与えられる力により、内歯車261が反時計周りに回転(自転)する。これにより、内歯車261とともに内歯付キャリア260も反時計周りに回転(自転)するので、内歯付キャリア260に設けられた遊星歯車280も同様に反時計周りに回転(公転)する。ここで、遊星歯車280は太陽歯車323及びケース10Aにより固定された内周ギア115と互いに歯合しているので、公転方向とは逆向き(時計回り)に自転しつつ、反時計周りに公転することとなる。従って、遊星歯車280の内側で遊星歯車280と歯合する太陽歯車323は、遊星歯車280の自転と逆向き(反時計周り)に回転(自転)する。このとき、遊星歯車280により、太陽歯車323の回転は増速される。これにより、太陽歯車323とともに回転する太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持されるウェイト340も回転を開始する。なお、すでに述べた通り、遊星歯車280の外側で遊星歯車280と歯合する内周ギア115は、ケース10Aとベース70が固定されているため、遊星歯車280の回転時においても回転しない。
そして、図16(b)に示されるように、ローラ部32とローラ部42が限界まで近づく(挟着状態)と、ローラ部32の自転は続くもののローラ部32の内歯車261に沿った移動が停止する。このとき、ローラ部32の自転に起因した他の部材の回転は継続される。すると、遠心力によりウェイト340がケース10Aの内周壁に当接することにより、回転に対して抵抗力が生じる。つまり、コードCDの移動速度が上昇することで回転速度が上昇し、これにより遠心力が上昇する。そして、遠心力が上昇することによりウェイト340がケース10Aの内周壁により強く当接することになり、抵抗力が上昇する。これにより、コードCDの移動速度(日射遮蔽部材の落下速度)を抑えることができる。ここで、コードCDに加えられる張力が略一定の場合(例えば、図18において、制動装置1000の前方側のコードCDに昇降可能に吊持される日射遮蔽部材が自由落下する場合)には、コードCDに加えられる張力とウェイト340とケース10Aの内周壁による抵抗力が釣り合うところで、コードCDの移動速度が略一定となる。従って、制動装置1000は、コードCDの移動に対する回転ダンパとして機能し、日射遮蔽部材をゆっくりと降下させることが可能となる。
以上説明した、定常状態から挟着状態までの挟着状態の変化について、各部材の回転方向(ピニオンギア50については、さらに平面視における前後方向及び締め付け方向も含む)をまとめたものが図16(c)である。
一方、コードCDに矢印D1と逆向き(後方)に張力を与えた場合には、ローラ部32及びローラ部42が上記と逆向きに回転する。その結果、軸芯31及び軸芯41が第1天壁溝16の解除案内斜面16b及び第2天壁溝17の解除案内斜面17bにそれぞれ案内されることで互いに離間するように移動する。すると、コードCDに対するローラ部32の挟着力が弱まり、弱い力でコードCDを引っ張ることが可能となる。従って、図18に示されるように、ヘッドボックス内に制動装置1000を設ける場合には、図16において前方にコードCDに張力が加わる向きを日射遮蔽部材の下降する向きとし、後方にコードCDに張力が加わる向きを日射遮蔽部材の上昇する向きとすると好適である。
次に、図17を用いて、定常状態及び挟着状態の状態変化の際におけるスライダー20の移動について説明する。図17(a)が図16(a)に、図17(b)が図16(b)にそれぞれ対応する。
図17(a)の定常状態から図17(b)の挟着状態に変化するとき、軸芯41とローラ部42、及び、軸芯31とローラ部32は、コードCDとの摩擦力により図中の前方に移動する。このとき、軸芯41が第2天壁溝27及び第2底壁溝29と当接していることにより、軸芯41の前方への移動に伴って、第2天壁溝27及び第2底壁溝29に対して前方へ力が加わる。また、軸芯31が第1天壁溝26及び第1底壁溝28と当接していることにより、軸芯31の前方への移動に伴って、第1天壁溝26及び第1底壁溝28に対して前方へ力が加わる。従って、軸芯31,41が前方にΔ移動すると、スライダー20も前方にΔ移動する。
なお、本実施形態では、ウェイト340が太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持されることとしたが、ウェイト340の保持の方法はこれに限定されない。例えば、ウェイト340が内歯付キャリア260に保持されることとしてもよい。この場合、遊星歯車280、プレート300及び太陽歯車付ウェイトホルダ320は省略することができる。なお、遊星歯車280を省略することにより、太陽歯車323、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340の回転に対する増速効果は得られなくなる。
4<日射遮蔽装置>
次に、本実施形態に係る制動装置1000を日射遮蔽装置である横型ブラインドに適用する態様について説明する。図18は、制動装置1000をヘッドボックス101内に配置した日射遮蔽装置100を表す。
図18に示される日射遮蔽装置100は、ヘッドボックス101から複数本のラダーコード102を介して複数段のスラット103が吊下支持され、同ラダーコード102の下端にはボトムレール103aが吊下支持されている。以下、スラット103とボトムレール103aを合わせて、遮蔽部材103とも呼ぶことにする。
ヘッドボックス101内には、支持部材(図示せず)が複数個配設され、その支持部材にはチルトドラム104が回転可能に支持される。ラダーコード102の上端部は、チルトドラム104に取着され、そのチルトドラム104の中心部にはシャフト105(軸部材)が全てのチルトドラム104に嵌挿されている。従って、シャフト105が回転されると、全てのチルトドラム104が回転され、そのチルトドラム104の回転にともなって、ラダーコード102の縦糸の一方が引き上げられることにより、各スラット103及びボトムレール103aが同位相で角度調節される。
ヘッドボックス101の一端部には筒体からなる操作棒106が吊下支持されており、操作棒106の下端には操作部106aが設けられている。そして、操作部106aを把持して操作棒106を回転操作すると、ヘッドボックス101内に配設されるギア機構を介して角度調節軸が回転される。従って、操作棒106の回転操作により、各遮蔽部材103を角度調節可能となっている。
ヘッドボックス101からは複数本(本実施形態では3本)のコードCD(昇降コードCD)が吊下されており、各昇降コードCDの一端はボトムレール103aに取着される。各支持部材には転向滑車(図示せず)が図面の表裏方向の軸心で軸支され、ヘッドボックス101に導入された昇降コードCDがヘッドボックス101の左右方向に転向案内可能となっている。また、各支持部材は他の昇降コードCDを左右方向に通過可能な空間を有している。そして、昇降コードCDは、ヘッドボックス101内に取り付けられたロック部107及び制動装置1000を経てヘッドボックス101端部のコード出口101aから引き出され、筒状の操作棒106内に挿通され、その先端は操作部106aの下方に設けられたコードイコライザ108に接続される。従って、コードイコライザ108を下方へ引いて、ヘッドボックス101から昇降コードCDを引き出すと、ボトムレール103aが引き上げられることにより、各スラット103が順次引き上げられる。
なお、図2及び図4(b)に示されるように、制動装置1000の底面(ベース70の底面の外側)には、ヘッドボックス101内における配置を固定するための取付部(取付筒702)が設けられ、ヘッドボックス101の底面に設けられた取付け軸(図示せず)に取付筒702が取付けられている。これにより、制動装置1000をヘッドボックス101内にて安定して配置させることが可能となっている。
また、図18に示されるように、制動装置1000は、ヘッドボックス101内における載置面とシャフト105に挟まれるように配置される。つまり、スライダー20及び挟着部材30,40がヘッドボックス101内において水平方向(図18の左右方向)に移動するよう、また、遊星歯車280の回転軸がヘッドボックス101内において鉛直方向に向くように配置される。このときの制動装置1000の前後(図の左右方向)向きは、コードイコライザ108を引いて遮蔽部材103を引き上げる際に昇降コードCDの挟着を解除し、コードイコライザ108を手放して遮蔽部材103を自重により降下させる際に昇降コードCDを挟着する向きとされる。また、ロック部107は、制動装置1000の前方(図の左側)に配置される。
制動装置1000がこのような向きに取り付けられていることから、遮蔽部材103が下降しきった状態、すなわち日射遮蔽装置100の閉状態において、コードイコライザ108を下方に引っ張ると、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とが離間し、コードCDを小さな抵抗力で引くことができる。一方、遮蔽部材103が下降しきっていない状態において、ロック部107によりコードCDがロックされていない状態でコードCDを離す。すると、遮蔽部材103は自重により下降し、昇降コードCDは制動装置1000の前方に向かって引かれる。すると、図16等を用いて説明したように、コードCDには制動力が付与される。従って、遮蔽部材103の下降速度が抑えられる。このため、遮蔽部材103の下降速度が超過することによる破損等を抑制することができる。
5<作用・効果>
本実施形態に係る組立構造体、制動装置及び遮蔽装置により、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)ケース10Aの水平溝114にスライダー20の突起230を一度導入すると、規制手段である傾斜部119により、突起230が鉛直溝118に戻り、スライダー20がケース10Aから外れてしまうことを防止することができる。そのため、コードCDの急激な移動により、スライダー20がコイルスプリングSPの付勢力に抗して水平溝114と鉛直溝118の接続部分まで移動しても、突起230と水平溝114の係合が外れてスライダー20が動作不良になることを防止することができる。
(2)可動滑車である張力伝達ローラ30を上記構成のスライダー20に保持させることで、張力伝達ローラ30を安定して動作させることが可能となる。
(3)規制手段を溝が上方に向かって浅くすることで形成される傾斜部119としたことで、簡単な構成により、ケース10Aとスライダー20の組み立て時には簡単に組み立てることができ且つ一度組み立てると分離されることのない構造を実現することができる。
以上説明したように、本発明によれば、スライダー20(第1部材)とケース10A(第2部材)からなる組立構造体、これを有する制動装置、そしてこの制動装置を用いた日射遮蔽装置が提供され、生活必需品等の分野において利用することができる。
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
上記実施形態の日射遮蔽装置100は、複数のスラットを備える横型ブラインドであったが、日射遮蔽装置はこれに限定されず、例えば、プリーツカーテンや、カーテン布が巻き取られるロールカーテンとしても良い。
また、上記実施形態の制動装置1000は、張力伝達ローラ30の回転が抵抗付与部に伝達され、抵抗付与部から回転抵抗が付与される構成であったが、コードCDの移動に伴ってローラが移動することによりコードCDが屈曲し、屈曲抵抗によりコードCDに制動力を与える構成であっても良い。
また、上記実施形態では、スライダー20を付勢手段としてのコイルスプリングSPにより付勢する構成であったが、磁力によりスライダー20を付勢する構成とすることもでき、例えば、付勢手段として、ケース10Aとスライダー20の少なくとも一方に取り付けられる磁石を用いることも可能である。
また、上記実施形態では、規制手段である傾斜部119は、図9及び図11等に示すように、ケース10Aを上方から見た際に垂直溝118を完全に覆う構成となっていたが、突起230が水平溝114から垂直溝118に戻らない構成であれば垂直溝118が完全に覆われていなくても良く、多少の隙間があっても良い。
加えて、スライダー20の突起は図19(a)〜(d)に示すような変形例の構成とすることも可能である。具体的には、図19(a)の変形例1は、突起230を左右でずれた位置に設けたものである。変形例1では、突起230の位置に対応して、垂直溝118も左右でずれた位置に形成する。次に、図19(b)の変形例2は、突起230の数を左右で異ならせた構成である。この場合、左右のバランスをとるため、左右交互に突起230を設けるのが好ましい。また、この場合も、突起230に応じて垂直溝118の数及び位置が設定される。次に、図19(c)の変形例3は、突起230が片側にしか形成されていない例である。この場合、突起がない側は、上縁230a全体がスライダー20を支持する機能を有することになる。一方、図19(d)の変形例4は、突起230の構成自体は上記実施形態と同じであるが、4つの突起のうち、対角の位置にある2つの突起のみが水平溝114の支持面114aに支持される構成である。これら変形例1〜変形例4の構成であっても、一度組み立てると分離されることのない構造を実現することができる。
また、上記実施形態では、スライダー20の保持が解除されることを規制する規制手段を傾斜部119とし、部材の弾性を利用して突起230が傾斜部119を乗り越える構成としていたが、規制手段として板ばねを用いて、板ばねが動作することで突起230を水平溝114に導入する構成とすることも可能である。
さらに、上記実施形態では、制動装置1000の第2部材としてのスライダー20が、遮蔽装置100のヘッドボックス101内でコードCDを移動する方向と同じ略水平方向に移動する構成であり、第1部材としてのケース10Aのガイド部が水平方向に延びる水平溝114、スライダー20をガイド部に導入する導入手段が略垂直方向に延びる鉛直溝118となっていたが、ガイド部の向き(つまり、第2部材の移動方向)及び導入手段の向き(つまり、第2部材の導入方向)はこれらの向きに限定されない。例えば、上記実施形態の制動装置1000をヘッドボックス101の延在する方向の軸まわりに90度回転させて取り付ける場合(このとき、張力伝達ローラ30の軸芯31が水平方向になる)、ガイド部に相当する溝と導入手段に相当する溝はともに略水平方向に延びることになるが、このような構成も本願発明の範囲に含まれる。
また、上記実施形態ではガイド部(水平溝114)と導入手段(鉛直溝118)は約90の角度で接続されていたが、これに限定されるわけではなく、任意の角度で接続する構成であって良い。なお、導入手段を重力に抗して第2部材をガイド部へ導入する構成とする場合、第2部材は重力及び付勢手段による付勢力の2つの力により付勢されることになる。このような場合、付勢手段による付勢方向は、重力方向以外の方向とすることが好ましい。
なお、上記実施形態では、第1部材と第2部材を備えた組立構造体として、スライダー20(第1部材)とケース10A(第2部材)からなる組立構造体を挙げ、これを有した制動装置について説明した。しかしながら、本願に係る発明は上記の構成に限られるものではなく、ある部材と、この部材対して相対移動可能な第2部材とを備えた様々な組立構造体に適用することができる。