JP6841333B2 - カーボンナノホーン集合体の製造装置 - Google Patents
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Description
本発明は、繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むカーボンナノホーン集合体の製造装置に関する。
従来、炭素材料は、導電材、触媒担体、吸着剤、分離剤、インク、トナーなどとして利用されており、近年ではカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン集合体等のナノサイズの大きさを有するナノ炭素材の出現で、その構造体としての特徴が注目されている。
本発明者は、従来の球状のカーボンナノホーン集合体(CNHsという)とは異なり、カーボンナノホーンが放射状に集合し、且つ、繊維状に伸びた構造を有する繊維状のカーボンナノホーン集合体(カーボンナノブラシ:CNBという)を見出した(特許文献1)。CNBは、触媒を含んだ炭素ターゲットを回転させながら、レーザーアブレーションにより作製する(特許文献1)。
また、従来のCNHsを製造する装置が特許文献2に開示されている。特許文献2の装置は、シート状のグラファイトターゲットを保持するターゲット保持手段と、前記グラファイトターゲットの表面に光を照射する光源と、前記ターゲット保持手段に保持された前記グラファイトターゲットと前記光源のうち一方を他方に対して相対的に移動させ、前記グラファイトターゲットの表面における前記光の照射位置を移動させる移動手段と、前記光の照射により前記グラファイトターゲットから蒸発した炭素蒸気を回収し、ナノカーボンを得る回収手段と、前記グラファイトターゲットの表面に照射される前記光のパワー密度が略一定となるように前記移動手段または前記光源の動作を制御する制御部と、を備える。
CNBは、触媒を含んだ炭素ターゲットにレーザー照射することで得られ、CNBとCNHsが共に生成される。この際、生成物中のCNBの割合が非常に少なく、CNBを工業的に生産する方法は確立されていない。
本発明では、CNBを工業的に生産する装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の一形態によれば、
Fe、Ni、Coの単体又はこれらの2種又は3種の混合物から選択される金属触媒を含有するシート状の炭素ターゲットを保持するターゲット保持手段と、
前記炭素ターゲットの表面にレーザー光を照射する光源と、
前記ターゲット保持手段に保持された前記炭素ターゲットと前記光源のうち一方を他方に対して相対的に移動させ、前記炭素ターゲットの表面における前記レーザー光の照射位置を移動させる移動手段と、
非酸化性ガス雰囲気中で前記炭素ターゲットに前記レーザー光を照射して、繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むカーボンナノホーン集合体を含有する生成物を生成するための生成チャンバと、
前記レーザー光の照射により前記炭素ターゲットから蒸発した炭素蒸気を回収し、繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むナノカーボンを回収する回収手段と、
前記炭素ターゲットの表面に照射される前記レーザー光のパワー密度が略一定となり、且つ、前記レーザー光の照射位置を先にレーザー光が照射された領域と隣接する領域に、前記レーザー光の照射領域の周辺に形成される変質領域の幅以上の間隔を開けて照射移動させるように前記移動手段または前記光源の動作と制御する制御部とを備えることを特徴とする繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むカーボンナノホーン集合体の製造装置が提供される。
Fe、Ni、Coの単体又はこれらの2種又は3種の混合物から選択される金属触媒を含有するシート状の炭素ターゲットを保持するターゲット保持手段と、
前記炭素ターゲットの表面にレーザー光を照射する光源と、
前記ターゲット保持手段に保持された前記炭素ターゲットと前記光源のうち一方を他方に対して相対的に移動させ、前記炭素ターゲットの表面における前記レーザー光の照射位置を移動させる移動手段と、
非酸化性ガス雰囲気中で前記炭素ターゲットに前記レーザー光を照射して、繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むカーボンナノホーン集合体を含有する生成物を生成するための生成チャンバと、
前記レーザー光の照射により前記炭素ターゲットから蒸発した炭素蒸気を回収し、繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むナノカーボンを回収する回収手段と、
前記炭素ターゲットの表面に照射される前記レーザー光のパワー密度が略一定となり、且つ、前記レーザー光の照射位置を先にレーザー光が照射された領域と隣接する領域に、前記レーザー光の照射領域の周辺に形成される変質領域の幅以上の間隔を開けて照射移動させるように前記移動手段または前記光源の動作と制御する制御部とを備えることを特徴とする繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むカーボンナノホーン集合体の製造装置が提供される。
本発明の一形態によれば、繊維状のカーボンナノホーン集合体(CNB)の工業的な製造を可能とする装置が提供される。
以下では、本発明の実施の形態を説明する。
図4は、本発明の一実施形態例によって作製されたカーボンナノホーン集合体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、繊維状構造体と球状構造体が確認される。また、図5は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、繊維状構造体と球状構造体が繊維状のカーボンナノホーン集合体(CNB)と球状のカーボンナノホーン(CNHs)であることが確認される。CNBは、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタルダリア型、ペタル型(グラフェンシート構造)のカーボンナノホーン集合体が一次元的に繋がった構造を有する。すなわち、単層カーボンナノホーンが放射状に集合体化し、且つ、繊維状に伸びている構造を有する。従って、繊維状構造中に1種類または複数のこれらカーボンナノホーン集合体が含まれている。種型とは、繊維状構造の表面に角状の突起がほとんどみられない、あるいは全くみられない形状、つぼみ型は繊維状の構造の表面に角状の突起が多少みられる形状、ダリア型は繊維状構造の表面に角状の突起が多数みられる形状、ペタル型は繊維状構造の表面に花びら状の突起がみられる形状である(グラフェンシート構造)。ペタル−ダリア型はダリア型とペタル型の中間的な構造である。また、繊維状のカーボンナノホーン集合体の内部には、カーボンナノチューブ(CNT)が含まれていることがある。これは、本実施形態例に係る繊維状のカーボンナノホーン集合体が、以下のような生成メカニズムによるものと考えられる。
図4は、本発明の一実施形態例によって作製されたカーボンナノホーン集合体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、繊維状構造体と球状構造体が確認される。また、図5は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、繊維状構造体と球状構造体が繊維状のカーボンナノホーン集合体(CNB)と球状のカーボンナノホーン(CNHs)であることが確認される。CNBは、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタルダリア型、ペタル型(グラフェンシート構造)のカーボンナノホーン集合体が一次元的に繋がった構造を有する。すなわち、単層カーボンナノホーンが放射状に集合体化し、且つ、繊維状に伸びている構造を有する。従って、繊維状構造中に1種類または複数のこれらカーボンナノホーン集合体が含まれている。種型とは、繊維状構造の表面に角状の突起がほとんどみられない、あるいは全くみられない形状、つぼみ型は繊維状の構造の表面に角状の突起が多少みられる形状、ダリア型は繊維状構造の表面に角状の突起が多数みられる形状、ペタル型は繊維状構造の表面に花びら状の突起がみられる形状である(グラフェンシート構造)。ペタル−ダリア型はダリア型とペタル型の中間的な構造である。また、繊維状のカーボンナノホーン集合体の内部には、カーボンナノチューブ(CNT)が含まれていることがある。これは、本実施形態例に係る繊維状のカーボンナノホーン集合体が、以下のような生成メカニズムによるものと考えられる。
すなわち、(1)レーザー照射により触媒含有炭素ターゲットが急激に加熱され、それによって、ターゲットから炭素と触媒が一気に気化し、高密度の炭素蒸発により、プルームを形成する。(2)その際、炭素は互いの衝突によりある程度の大きさの揃った炭素液滴を形成する。(3)炭素液滴は拡散していく過程で、徐々に冷え炭素のグラファイト化が進みチューブ状のカーボンナノホーンが形成する。この時炭素液滴に溶け込んだ触媒から、カーボンナノチューブも成長する。そして、(4)カーボンナノチューブをテンプレートにしてカーボンナノホーンの放射状構造が一次元的に繋がっていき、繊維状のカーボンナノホーン集合体が形成される。
図5中の非透過の粒子は、使用した金属触媒含有炭素材料に由来する金属を示す。以下の説明では繊維状と球状のカーボンナノホーン集合体を合わせて、単にカーボンナノホーン集合体ということがある。
カーボンナノホーン集合体を構成しているそれぞれのカーボンナノホーン(単層カーボンナノホーンという)の直径はおおよそ1nm〜5nmであり、長さは30nm〜100nmである。CNBは、直径が30nm〜200nm程度で、長さが1μm〜100μm程度とすることができる。一方、CNHsは、直径が30nm〜200nm程度でほぼ均一なサイズである。
同時に得られるCNHsは、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタル−ダリア型、ペタル型が単独で、または、複合して形成される。種型は球状の表面に角状の突起がほとんどみられない、あるいは全くみられない形状、つぼみ型は球状の表面に角状の突起が多少みられる形状、ダリア型は球状の表面に角状の突起が多数みられる形状、ペタル型は球状の表面に花びら状の突起がみられる形状である(グラフェンシート構造)。ペタル−ダリア型はダリア型とペタル型の中間的な構造である。CNHsは、CNBと混在した状態で生成される。生成するCNHsの形態及び粒径は、ガスの種類や流量によって調整することができる。
なお、CNBとCNHsとは、遠心分離法や、溶媒に分散した後沈降速度の違いなどを利用して分離することが可能である。CNBの分散性を維持するにはCNHsと分離せずにそのまま使用することが好ましい。本実施形態例で得られるCNBは、単層カーボンナノホーンが繊維状に集合していれば良く、上記の構造のみに限定されない。なお、ここでいう「繊維状」とは、上記の分離操作を行ってもその形状をある程度維持できるものをいい、単にCNHsが複数連なって、一見繊維状に見えるものとは異なる。また、動的光散乱測定による粒度分布測定では、CNBはCNHsとは明確に異なる粒子サイズ領域にピークが確認できる。
CNBは、他の針状構造を有する炭素材料、例えば、炭素繊維やカーボンナノチューブと比較して高分散性を有している。また、これらCNBおよびCNHsは、お互いが放射状構造を持つため、界面での接点が多く強固に吸着し、且つ、他の部材とも強固な吸着をする。
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態に係るCNB製造装置の構成の一例を示す側面図である。なお、本明細書において、図1および他の製造装置の説明に用いる図は概略図であり、各構成部材の大きさは実際の寸法比に必ずしも対応していない。
図1は、第一の実施形態に係るCNB製造装置の構成の一例を示す側面図である。なお、本明細書において、図1および他の製造装置の説明に用いる図は概略図であり、各構成部材の大きさは実際の寸法比に必ずしも対応していない。
図1のCNB製造装置100は、生成チャンバ4および回収チャンバ8の二つのチャンバを備える。生成チャンバ4には、窒素ガスや希ガス(Arガス等)の非酸化性ガス雰囲気となるようにガス導入口6からガスが供給される。また、レーザー光源11から出射するレーザー光Lが、レーザー焦点位置調節機構(ZnSe平凸レンズ10およびZnSeウインドウ5)を透過して、生成チャンバ4内に設置されたターゲット1の表面に照射される。
ターゲット1は、レーザー光Lの照射のターゲットとなる金属触媒含有炭素ターゲットである。ターゲット1はターゲット保持手段2に保持されている。ターゲット保持手段2は、ターゲット移動手段3により移動方向TDに平行移動及び紙面前奥方向に移動される。これにより、移動手段3が移動すると、その上に設置されたターゲット1が移動し、レーザー光Lの照射位置とターゲット1の表面との相対的な位置が移動する構成となっている。
図2(a)および図2(b)は、ターゲット1におけるレーザー照射位置をさらに詳細に説明する図である。図2(a)は上面図、図2(b)は斜視図である。また、図2(c)は、レーザー照射部近傍を示す走査型電子顕微鏡像である。
ターゲット1における照射位置21は図2(a)、図2(b)に示すように、ターゲットの一端から他端に向かって平行に移動している。また、図2(a)では、矢印方向に一端から他端、他端から一端と交互に移動する形態を示しているが、これに限定されない。図2(b)ではレーザー照射領域22を示している。このように、レーザーアブレーションにより炭素ターゲットにレーザー光を照射して蒸発させる方式では、レーザー光が照射された周辺部分も熱的な影響を受けて、炭素質の結晶状態や触媒金属の分布などが変化する(変質領域という)。図2(c)には、レーザー照射後のターゲット1の変質領域23の一例を示している。図2(c)の走査型電子顕微鏡像の点線部までは、照射後にターゲットへの影響があると思われ、本発明ではこの領域を変質領域23とする。従来のカーボンナノホーンを含むナノカーボンのレーザーアブレーション法による製造では、均一なレーザー照射を維持する観点からレーザー照射時に均一なターゲット表面になるよう照射位置を移動させながら行う方法は知られている。材料費を抑えるという点では、触媒含有炭素ターゲットの全てを使い切ることが好ましいところであるが、上記のような変質領域23にレーザー照射しても、正常にCNBが生成しないことが分かった。したがって、レーザーエネルギーが無駄に消費されることになる。
ここで、工業的見地からターゲットを効率的に使用するには、一度レーザー光が通過した領域に近接してレーザー光を通過させていく方法が考えられるが、変質領域を避けてレーザーを通過させることが必要となる。そこで、本実施形態例では、レーザー焦点位置調節機構によるレーザーパワー及びレーザースポット径に連動して、ターゲット1の移動を制御する制御部13を備える。制御部13では、ターゲット上の変質領域を避けてレーザーが照射されるように移動手段における移動速度、平行移動距離を制御する。
ここで、「レーザー光のパワー密度が略一定となるようにレーザー照射位置を移動させ」るとは、レーザー光の照射位置(スポット)が漸次一定速度で移動することで、ほぼ一定のパワー密度となる。
ここで、「レーザー光のパワー密度が略一定となるようにレーザー照射位置を移動させ」るとは、レーザー光の照射位置(スポット)が漸次一定速度で移動することで、ほぼ一定のパワー密度となる。
このとき、レーザースポットの移動速度が遅すぎると、ターゲットから原料が蒸発できずにターゲット上に堆積物として析出する。この析出物は、主にグラファイトやカーボンナノチューブであり、一部CNHsが生成するがCNBは生成しなくなる。詳細については明らかではないが、わずかに蒸発した原料はCNHsの生成に消費され、CNBが生成しなくなると考えられる。また、移動速度が速くなりすぎても、主にCNHsになり、CNBが生成しなくなる。そのため、移動速度は、レーザーパワー、レーザーのスポット径、触媒含有炭素ターゲットの触媒量に応じて適宜最適となるように設定する。例えば、後述する実施例に示すように、1at%の鉄を含む炭素ターゲットを使用する場合、レーザーパワー3.2kW、スポット径1.5mm(パワー密度181kW/cm2)では、約5cm/min〜約35cm/minの範囲でCNBの生成が確認されている。本発明では、使用する炭素ターゲット、レーザーパワー、スポット径にもよるが、移動速度は3cm/min以上、50cm/min以下であることが好ましい。
図1に戻り、搬送管7は、CNB回収チャンバ8に連通している。また、搬送管7は、ターゲット1の表面にレーザー光Lが照射される際の、プルームPの発生方向に設けられている。図1では、ターゲット1の表面と約45°の角をなすレーザー光Lが照射されるため、プルームPはターゲット1の表面に対し垂直な方向に発生する。そして、搬送管7はターゲット1の表面に垂直方向にその長さ方向を配置した構成となっている。こうすれば、蒸発した炭素蒸気が冷却されて生成したカーボンナノホーン集合体を搬送管7からCNB回収チャンバ8に誘導し、確実にCNB回収チャンバ8に回収される。
ターゲット1として用いる触媒含有炭素物質の形状は、シート状とすることができる。ターゲット1の形状をシート状とし、ターゲット1の表面に照射するレーザー光Lの照射角および強度を一定とすることにより、表面におけるパワー密度のぶれが抑制され、レーザー光のパワー密度が略一定となるようにレーザー照射位置を移動させることができる。CNBを含むカーボンナノホーン集合体を安定的に製造することが可能となる。また、レーザー光Lの照射角を一定に保ちながら、ターゲット1をその長さ方向にスライドさせた場合にも、ターゲット1の長さ方向にレーザー光Lを一定のパワー密度で照射することができる。
このときの照射角は30°以上60°以下とすることが好ましい。なお、本実施形態において照射角とは、レーザー光Lの照射位置におけるターゲット1の表面に対する垂線とレーザー光Lとのなす角のことである。
この照射角を30°以上とすることにより、照射するレーザー光Lの反射、すなわち戻り光の発生を防止することができる。
また、照射角を60°以下とすることにより、アモルファスカーボンの生成を抑制し、生成物中のカーボンナノホーン集合体の割合、特にCNBの収率を向上させることができる。
また、照射角は、図1に示したように45°とすることが特に好ましい。45°で照射することにより、生成物中のカーボンナノホーン集合体の割合をより一層高め、収率を向上させることができる。
この照射角を30°以上とすることにより、照射するレーザー光Lの反射、すなわち戻り光の発生を防止することができる。
また、照射角を60°以下とすることにより、アモルファスカーボンの生成を抑制し、生成物中のカーボンナノホーン集合体の割合、特にCNBの収率を向上させることができる。
また、照射角は、図1に示したように45°とすることが特に好ましい。45°で照射することにより、生成物中のカーボンナノホーン集合体の割合をより一層高め、収率を向上させることができる。
以上のように、図1のCNB製造装置においては、ターゲット1の表面におけるレーザー光Lの照射位置を連続的に変化させることができるため、カーボンナノホーン集合体を連続的に製造することが可能である。また、ターゲット1表面に照射されるレーザー光Lのパワー密度を一定に保つことが容易であるため、カーボンナノホーン集合体を高収率で安定的に製造することができる。
また、回収チャンバ8は、その底壁部に、生成したカーボンナノホーン集合体を回収するため、バルブを介して回収容器11が取り付けられている。また、回収チャンバ8には、生成したCNBを含むカーボンナノホーン集合体が排気口9に行かないようにバグフィルターが取り付けられている(不図示)。
また、回収チャンバ8は、その底壁部に、生成したカーボンナノホーン集合体を回収するため、バルブを介して回収容器11が取り付けられている。また、回収チャンバ8には、生成したCNBを含むカーボンナノホーン集合体が排気口9に行かないようにバグフィルターが取り付けられている(不図示)。
さらに、回収チャンバ8は、周壁部の上部に設けられた排気口9を有している。この排気口9には、回収チャンバ8の内部を真空排気するための排気機構(例えば、ドライポンプ)が接続されている。
次に、図1の製造装置の動作について説明する。
生成チャンバ4において、非酸化性ガス雰囲気中で、ターゲット1にレーザー光Lを照射し炭素を蒸発させると、カーボンナノホーン集合体を含む生成物(プルームP)が生成される。このとき、生成チャンバ4内に非酸化性ガスを導入しつつ、回収チャンバ8の内部を排気すれば(生成チャンバ4内の圧力よりも回収チャンバ8の圧力を低くすれば)、搬送管7を通じたガスの流れを作ることができる。搬送管7の生成チャンバ側端部は、上述したようにターゲット1のレーザー照射部付近に設けられているので、生成チャンバ4において生成されたカーボンナノホーン集合体を含む生成物は、雰囲気ガスの流れによって回収チャンバ8へと搬送される。生成チャンバ4において、ガスをZnSeウインドウ5の近傍に配置した導入口6から導入することで、ZnSeウインドウ5への生成物の付着が防止できる。
生成チャンバ4において、非酸化性ガス雰囲気中で、ターゲット1にレーザー光Lを照射し炭素を蒸発させると、カーボンナノホーン集合体を含む生成物(プルームP)が生成される。このとき、生成チャンバ4内に非酸化性ガスを導入しつつ、回収チャンバ8の内部を排気すれば(生成チャンバ4内の圧力よりも回収チャンバ8の圧力を低くすれば)、搬送管7を通じたガスの流れを作ることができる。搬送管7の生成チャンバ側端部は、上述したようにターゲット1のレーザー照射部付近に設けられているので、生成チャンバ4において生成されたカーボンナノホーン集合体を含む生成物は、雰囲気ガスの流れによって回収チャンバ8へと搬送される。生成チャンバ4において、ガスをZnSeウインドウ5の近傍に配置した導入口6から導入することで、ZnSeウインドウ5への生成物の付着が防止できる。
試料回収容器12内には、カーボンナノホーン集合体に不活性な液体を封入しておき、回収されたカーボンナノホーン集合体を液体中に浸漬させて回収してもよい。不活性な液体としては適宜選択できるが生成物が疎水性であるため、有機溶媒が適当で、例えばエタノールやイソプロピルアルコールなどが挙げられる。
図2(c)に示した変質領域は、レーザーのエネルギー密度が大きいほど、レーザー照射位置の移動速度が遅いほど、また、ターゲットの熱伝導率が高いほど幅広くなる傾向がある。
レーザーアブレーションには、CO2レーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等、ターゲットを高温に加熱できるものであれば適宜使用可能で、高出力化が容易なCO2レーザーが最も適当である。CO2レーザーの出力は、適宜利用できるが、1.0kW〜10kWの出力が好ましく、2.0kW〜5.0kWの出力がより好ましい。この出力よりも小さいと、ほとんどターゲットが蒸発しないため、生成量の観点から好ましくない。これ以上だと、グラファイトやアモルファスカーボン等の不純物が多くなるので好ましくない。また、レーザーは、連続照射及びパルス照射で行うことが出来る。大量製造のためには、連続照射が好ましい。
レーザー光のスポット径は、照射面積が約0.02cm2〜約2cm2となる範囲、すなわち、0.5mm〜5mmの範囲から選択できる。ここで、照射面積はレーザー出力とレンズでの集光の度合いにより制御できる。なお、このスポット径は、代表的には平面をなすターゲット表面に垂直にレーザー光を照射した場合のスポット(円)における直径を意味している。ターゲットの表面が平面でない場合、あるいは図1のようにターゲット面を傾けた場合、スポットの形状は円ではなく、例えば、略楕円となるが、レーザー光のスポット中心を通る短径は、上記円の直径とほぼ同等である。
生成チャンバ内の圧力は、3332.2hPa(10000Torr)以下で使用することができるが、圧力が真空に近くなるほど、カーボンナノチューブが生成しやすくなり、カーボンナノホーン集合体が得られなくなる。好ましくは666.61hPa(500Torr)−1266.56hPa(950Torr)で、より好ましくは常圧(1013hPa(1atm≒760Torr))付近で使用することが大量合成や低コスト化のためにも適当である。
生成チャンバ内は任意の温度に設定でき、好ましくは、0〜100℃であり、より好ましくは室温で使用することが大量合成や低コスト化のためにも適当である。
生成チャンバ内には、窒素ガスや、希ガスなどを単独で又は混合して導入することで上記の雰囲気とする。これらのガスは生成チャンバから回収チャンバに流通し、生成する物質をこのガスの流れによって回収することが出来る。また導入したガスにより閉鎖雰囲気としてもよい。雰囲気ガス流量は、任意の量を使用できるが、好ましくは0.5L/min−100L/minの範囲が適当である。ターゲットが蒸発する過程ではガス流量を一定に制御する。ガス流量を一定にするには、供給ガス流量と排気ガス流量とを合わせることで行うことができる。常圧付近で行う場合は、供給ガスで生成チャンバ内のガスを押出して排気することで行うことができる。
生成チャンバ内は任意の温度に設定でき、好ましくは、0〜100℃であり、より好ましくは室温で使用することが大量合成や低コスト化のためにも適当である。
生成チャンバ内には、窒素ガスや、希ガスなどを単独で又は混合して導入することで上記の雰囲気とする。これらのガスは生成チャンバから回収チャンバに流通し、生成する物質をこのガスの流れによって回収することが出来る。また導入したガスにより閉鎖雰囲気としてもよい。雰囲気ガス流量は、任意の量を使用できるが、好ましくは0.5L/min−100L/minの範囲が適当である。ターゲットが蒸発する過程ではガス流量を一定に制御する。ガス流量を一定にするには、供給ガス流量と排気ガス流量とを合わせることで行うことができる。常圧付近で行う場合は、供給ガスで生成チャンバ内のガスを押出して排気することで行うことができる。
炭素ターゲットに含まれる触媒量により、CNBの生成量が変化する。触媒の量に関して適宜選択できるが、触媒量が0.3〜20原子%(at.%)が好ましく、0.5〜3at.%がより好ましい。触媒量が0.3at.%より少ないと、繊維状カーボンナノホーン集合体が非常に少なくなる。また、20at.%を超えると、触媒量が多くなるためコスト増になるため適当ではない。触媒は、Fe、Ni、Coを単体で、又は混合して使用することができる。中でもFe(鉄)を単独で用いることが好ましく、1at.%以上3at.%以下の鉄を含有する炭素ターゲットを用いることがCNBの生成量の点で特に好ましい。
前記したように、触媒の含有量や触媒を含有した炭素ターゲット物性(熱伝導度、密度、硬さ等)によってCNBの生成に影響を及ぼす。触媒含有炭素ターゲットは、熱伝導性が低く、密度が低く、やわらかいものが好適である。すなわち、本発明の第2の実施形態例では、触媒含有炭素ターゲットのかさ密度が1.6g/cm3以下、熱伝導率が15W/(m・K)以下のターゲットを用いることを特徴とする。かさ密度及び熱伝導率をこの範囲にすることで、CNBの生成割合を増加させることができる。かさ密度及び熱伝導率がこれらの値を超える場合は、CNHsや他の炭素構造体の生成割合が多くなり、CNBの生成がほとんどなくなることがある。このようなターゲットを使用することで、レーザーから与えられたエネルギーにより、ターゲットが瞬時に蒸発し、炭素と触媒が高密度な空間を形成、且つ、ターゲットから放出された炭素が大気圧環境下で徐々に冷却されてCNBが生成する。
かさ密度及び熱伝導率は、触媒金属の量及びターゲットを製造する際の成形圧力及び成形温度を調整することで所望の値とすることができる。
(第二の実施形態)
本実施形態は、CNB製造装置の別の構成に関する。本実施形態において、第一の実施形態に記載のCNB製造装置と同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態は、CNB製造装置の別の構成に関する。本実施形態において、第一の実施形態に記載のCNB製造装置と同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図3(a)は、本実施形態に係るCNB製造装置200の構成を示す側面図である。図3(a)のCNB製造装置は、炭素ターゲット1を回転させるとともに、平行な方向にレーザー光Lの照射位置を移動させることで、図3(b)及び(c)に示すように照射位置がターゲット上を渦巻き状に移動するよう制御部13で制御することを特徴としている。回転軸31は不図示の回転機構に接続され、回転機構ごと図3(a)の移動方向TDに移動させる移動手段を有する。
本実施形態においても、第一の実施形態で図2を用いて説明した構成と同様に、炭素ターゲット1の表面に照射されるレーザー光Lのパワー密度が略一定となり、且つ、前記レーザー光の照射位置を先にレーザー光が照射された領域と隣接する領域に、前記レーザー光の照射領域の周辺に形成される変質領域の幅以上の間隔を開けて照射移動させる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下に実施例を示し、さらに詳しく本発明について例示説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
(実験例1)
鉄を1at.%含有したシート状の炭素ターゲット(かさ密度約1.4g/cm3、熱伝導率約5W/(m・K))を生成チャンバ内のターゲットホルダに設置した。容器内を窒素雰囲気にした。この炭素ターゲットを約10cm/minの速度で移動させながら、ターゲットにCO2ガスレーザ光を5分間連続照射した。レーザーパワーは3.2kW、スポット径は1.5mm、照射角度はスポット中心で約45度となるように調整した。窒素ガス流量は、10L/min、700〜950Torrに制御した。反応容器内の温度は室温であった。その結果蒸発した炭素堆積量は、約1gであった。
鉄を1at.%含有したシート状の炭素ターゲット(かさ密度約1.4g/cm3、熱伝導率約5W/(m・K))を生成チャンバ内のターゲットホルダに設置した。容器内を窒素雰囲気にした。この炭素ターゲットを約10cm/minの速度で移動させながら、ターゲットにCO2ガスレーザ光を5分間連続照射した。レーザーパワーは3.2kW、スポット径は1.5mm、照射角度はスポット中心で約45度となるように調整した。窒素ガス流量は、10L/min、700〜950Torrに制御した。反応容器内の温度は室温であった。その結果蒸発した炭素堆積量は、約1gであった。
図4は、得られた試料のTEM写真である。繊維状構造体と球状構造体が観察された。図5は、TEM写真である。繊維状構造と球状構造体がそれぞれCNBとCNHsであることが分かった。CNBは、直径1−5nm、長さが40−50nm程度の単層カーボンナノホーンが繊維状に集合していることが分かった。CNB自体は、直径が30−100nm程度で、長さが数μm−数10μmであった。また、CNBの中に見られる黒い線状構造(矢印α)は、グラフェンシート(ペタル)を端から見た構造である。また、黒い粒子(矢印β)はFeである。
1 円柱状触媒含有炭素ターゲット
2 ターゲット保持手段
3 移動手段
4 生成チャンバ
5 照射窓
6 ガス導入口
7 搬送管
8 回収チャンバ
9 排気口
10 ZnSe平凸レンズ
11 レーザー光源
12 試料回収容器
13 制御部
21 照射位置
22 照射領域
23 変質領域
24 変質領域の幅
31 回転軸
100,200 CNB製造装置
2 ターゲット保持手段
3 移動手段
4 生成チャンバ
5 照射窓
6 ガス導入口
7 搬送管
8 回収チャンバ
9 排気口
10 ZnSe平凸レンズ
11 レーザー光源
12 試料回収容器
13 制御部
21 照射位置
22 照射領域
23 変質領域
24 変質領域の幅
31 回転軸
100,200 CNB製造装置
Claims (9)
- Fe、Ni、Coの単体又はこれらの2種又は3種の混合物から選択される金属触媒を含有するシート状の炭素ターゲットを保持するターゲット保持手段と、
前記炭素ターゲットの表面にレーザー光を照射する光源と、
前記ターゲット保持手段に保持された前記炭素ターゲットと前記光源のうち一方を他方に対して相対的に移動させ、前記炭素ターゲットの表面における前記レーザー光の照射位置を移動させる移動手段と、
非酸化性ガス雰囲気中で前記炭素ターゲットに前記レーザー光を照射して、繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むカーボンナノホーン集合体を含有する生成物を生成するための生成チャンバと、
前記レーザー光の照射により前記炭素ターゲットから蒸発した炭素蒸気を回収し、繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むナノカーボンを回収する回収手段と、
前記炭素ターゲットの表面に照射される前記レーザー光のパワー密度が略一定となり、且つ、前記レーザー光の照射位置を先にレーザー光が照射された領域と隣接する領域に、前記レーザー光の照射領域の周辺に形成される変質領域の幅以上の間隔を開けて照射移動させるように前記移動手段または前記光源の動作と制御する制御部とを備えることを特徴とする繊維状のカーボンナノホーン集合体を含むカーボンナノホーン集合体の製造装置。 - 前記移動手段は、前記炭素ターゲットの表面の前記照射位置における前記レーザー光の照射角度を略一定にしながら前記レーザー光の照射位置を移動させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
- 前記移動手段は、前記レーザー光の照射位置を前記ターゲットの一端から他端に向かって一列に移動させ、該照射によって形成された照射領域の周辺に形成される変質領域の幅以上の間隔を開けて次の列に移動させるように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造装置。
- 前記炭素ターゲットは単体シート状のターゲットであって、
前記移動手段は、該ターゲットを回転駆動するとともに、ターゲットの外周から内周に向かってあるいはその逆方向に照射位置を移動させることで、ターゲット上を渦巻き状に移動するように、前記制御部で制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造装置。 - 前記レーザー光の照射位置の移動速度を3cm/分〜50cm/分の範囲とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造装置。
- 前記レーザー光の出力が2.0kW〜10kWの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の製造装置。
- 前記回収手段は、前記カーボンナノホーン集合体に対して不活性な液体を含む回収容器を備え、該液体中に生成した前記カーボンナノホーン集合体を懸濁させて回収する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造装置。
- 前記触媒が、Feであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造装置。
- 前記生成チャンバ内において、ターゲットが蒸発する過程でガス流量を一定に制御する制御機構を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造装置。
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