JP6839619B2 - 水砕スラグの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製鉄用高炉で発生する溶融高炉スラグを原料とする、コンクリート用やモルタル用の細骨材などに適する水砕スラグの製造方法の改良に関する。より詳細には、従来の水砕スラグの製造方法では、水砕スラグをとり出す際に水とともに分離除去されていた微細な水砕スラグ(例えば、直径1mm以下)を、簡便な手段で、より効果的に製品中に含ませることができ、同時に、微細な水砕スラグに起因して生じていた生産効率の向上を達成できる水砕スラグの製造方法、及び該方法によって得られた水砕スラグに関する。
高炉水砕スラグは、溶融高炉スラグ(以下、単に溶融スラグとも呼ぶ)に冷却水(加圧水)を吹き付け、溶融スラグを急速冷却するとともに、水砕槽内で水とスラグを撹拌することで直径5mm以下の粒状の水砕スラグを形成させ、その後、粒状化した水砕と、水とを分離し、水砕スラグを製品として回収している。そして、一般的には、溶融スラグを急冷するために用い、形成した水砕と分離された水は、冷却塔で冷却されて、ポンプで加圧水(高圧水)として再び溶融スラグに吹き付けられ、循環水として使用されている。
しかしながら、溶融スラグから製造された水砕スラグには微細な水砕が含まれているため、このことに起因して種々の問題が生じている。本発明者らの検討によれば、従来の水砕スラグの製造方法において、溶融スラグに高圧水として吹きかけられ、水砕化に利用された後に分離された水には、微細な水砕が50〜700mg/Lの程度の濃度で含まれている。この微細な水砕は、水砕化後に、例えば、フィルタを用い、粒状化した製品となる水砕スラグと水とを分離する場合、フィルタの網目(例えば、1mm程度)を通過するため、水砕スラグ製品を得る際に分離した水には微細な水砕が含有されることになる。
通常、水砕化に利用された後に分離された水は、再度、加圧水として循環使用される。これに対し、上記したように、循環水中には微細水砕が含有されているため、水を循環使用している間に、循環水中に含まれる硬質の水砕が、配管、ポンプ、弁類などを磨耗させる。このため、水砕スラグの製造を安定して継続的に行うためには、配管、ポンプ、弁類などの設備補修を頻繁に行う必要がある。
また、水砕化に利用した後に分離した水を循環使用した場合、水中に含有されている微細な水砕が、分離した水を貯溜するための温水槽や、分離した水を冷却するための冷却塔や、該冷却塔で冷却した水を貯めるための冷水槽において堆積するという問題が生じている。このため、おおむね1ヶ月に一度程度、定期的な清掃が必要になっている。このような定期的な清掃を実施する際には、水砕設備を停止する必要が生じ、このことが、水砕スラグ製造における生産量を低下させる原因となっている。この点は、先に述べた、循環水中に微細な水砕が含有されていることに起因して、冷却塔、ポンプ、高圧水配管などの設備の摩耗が生じた場合も、同様に水砕設備を停止させて、これらの設備を補修することが必要になるので生産性が低下する。さらに、水砕化に利用した後に分離された水を放流する際には、水に含まれている微細な水砕を除去する必要が生じるが、微細な水砕であるため除去処理することは容易ではない。
上記した種々の問題に対し、出願人は、既に、溶融高炉スラグの水砕化に利用された後に、水砕スラグ製品と分離した水中に含有されることとなる微細な水砕を、簡便な方法で、少なくできる有用な技術を提案している(特許文献1参照)。この方法によれば、堆積した微細な水砕を除去する目的で行う、分離した水を貯溜するための温水槽や、冷却塔や冷水槽などに対する定期的な清掃回数を低減することが実現でき、また、循環水中に含まれる微細な水砕が低減されるので、冷却塔、ポンプ、高圧水配管などの設備の摩耗の発生を抑制することが可能になる。また、この方法によって製造される水砕スラグの品質は、従来の方法で得られたものと遜色がないものであることから、実用性の高い水砕スラグの製造方法である。
特開2015−231923号公報
上記した水砕スラグの製造方法では、水砕樋を経て水砕槽内に溶融高炉スラグを導入する経路で、溶融高炉スラグが前記水砕槽内に落下するまでのいずれかの地点で高分子凝結剤を添加することで、乱流状態で、水とスラグに高分子凝結剤が混合されて共存する状態を生じさせるという極めて簡便な手段で、微細な水砕スラグ(微粒水砕スラグとも呼ぶ)を効率的に粗大な水砕スラグ(粗粒水砕スラグとも呼ぶ)と共に製品として回収でき、循環水中に含まれる微細な水砕が低減されるという顕著な効果を得ている。また、その際に効果的な高分子凝結剤についても提案されている。上記した従来技術に対し、本発明者らは、溶融高炉スラグの量は膨大であり、先に提案した技術よりもより優れた効果が得られれば、その工業上のメリットは多大であるとの認識をもった。また、水砕スラグの製造設備は、種々の方式で行われており、いずれの設備においても、適用した場合により効果的な技術を提供する必要があるとの認識をもった。
例えば、図2に示した製造フローに該当する実際の水砕スラグの製造設備では、下記の課題がある。図2に示したように、この設備では、水砕樋を経て水砕槽内に溶融高炉スラグを導入する経路で、溶融高炉スラグに冷却水を吹き付けて急速冷却し、その後、固液分離して水砕スラグをとり出して製品とする工程で、水砕槽と固液分離する箇所との間に中継槽を設けることで水砕槽内の水砕スラグ濃度を高め、その後の固液分離を、内部に固液分離するためのフィルタが設けられた脱水槽で行っている。中継槽は、水砕槽内の上澄を引き抜いて溜める目的のものであり、中継槽を設けたことで、水砕槽内の水砕スラグ濃度を高めることができる。
そして、この設備では、上記のようにして水砕スラグ濃度を高めた後に、例えば、下記のような構成の脱水機で固液分離を行っている。下部がロート状になった筒の中央部に、側面が金属製の網状或いはスリット状である筒状のフィルタを配置させた構造のものが用いられており、脱水機の上部から、このフィルタ内に、上記のようにして濃度を高めた水砕スラグの処理物を落下させ、水砕スラグと使用した冷却水との固液分離が行われている。このような設備では、脱水槽のフィルタに水砕スラグが大量に固着することが生じており、固着物の除去作業に、多大な時間と労力が費やされており、先に提案した技術を適用することで改善されるものの十分であるとは言い難かった。
また、図3aに示した製造フロー構成の、実際の水砕スラグの製造設備では、図3bや図3cに示したように、水砕槽と固液分離装置とを、それぞれ2〜3機備えて併用する場合がある。これは、溶融スラグの量が増加した場合への備え、或いは、通常は1機の装置の使用で足る状況にでも必要になるメンテナンスや故障時の代替を想定した予備機である。この場合は、図3に示したように、固液分離するための装置の前に、使用する固液分離装置の切り替えを可能にする機能を持つ「分配槽」が設けられる。このような構成の異なる水砕スラグの製造設備においても、本発明の顕著な効果が得られることが望まれる。
したがって、本発明の目的は、種々の構成を有する水砕スラグの製造設備のいずれに適用した場合も、微粒水砕スラグを効率的に粗粒水砕スラグと共に製品として回収して、その収率を向上させ、これに伴って循環水中に含有される微細な水砕の量を従来技術で達成されている以上に低減できる、より優れた効果が得られる水砕スラグの製造方法を見出すことにある。特に、上記した目的をより高度に達成できる、より有効な高分子凝結剤、及び、該高分子凝結剤の効果的な添加位置を見出すことにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、水砕樋を経て水砕槽内に溶融高炉スラグを導入する経路で、溶融高炉スラグに加圧水(冷却水)を吹き付けて粉砕急冷し、その後に、固液分離して水砕スラグをとり出して製品とし、分離した水を冷却処理して前記加圧水(冷却水)として循環利用する水砕スラグの製造方法において、
前記溶融高炉スラグを水砕槽内に導入する経路の、溶融高炉スラグが前記水砕槽内に落下するまでの少なくともいずれかの地点で、または、前記水砕槽内の水砕スラグを含む処理物を、前記水砕槽から排出して前記固液分離される箇所に至るまでの経路の少なくともいずれかの地点で、または、前記分離した水が、冷却処理された後、前記溶融高炉スラグに吹き付けられて粉砕急冷するための前記加圧水として再利用されるまでの経路の少なくともいずれかの地点で、
下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上を含む原料モノマーの総量に対して、質量で0.5〜300ppmの架橋性単量体を共存させて重合してなる、架橋構造を有するカチオン性又は両性の架橋型水溶性高分子であって、且つ、該架橋型水溶性高分子が、その架橋度を、純水中に添加し、純水で200倍に希釈した状態の水溶液とした時の水溶液粘度を、4%食塩水中に添加し、4%食塩水で80倍に希釈した状態の水溶液とした時の塩水溶液粘度で除した、水溶液の粘性の測定により得た値で表した場合に、該値が5以上200以下のものである架橋型高分子凝結剤を添加することで、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で前記架橋型高分子凝結剤を混合させて、前記水砕スラグと水と架橋型高分子凝結剤とを共存させる構成としたことを特徴とする水砕スラグの製造方法を提供する。
Figure 0006839619
(上記式(1)及び(2)中の、R1は、H又はCH3、R2又はR3は、それぞれ独立にCH3又はC25を表し、R4は、H、CH3又はC25のいずれかを表す。X-は、アニオン性対イオンを表す。)
上記した構成からなる本発明の水砕スラグの製造方法の好ましい形態としては、下記のことが挙げられる。前記架橋型高分子凝結剤を、前記溶融高炉スラグに加圧水(冷却水)が吹き付けられる地点から、前記水砕槽入口又はスラグが前記水砕槽内に落下するまでの間のいずれかの地点で添加すること;前記水砕槽と、水砕スラグ製品をとり出すための前記固液分離する箇所との間に、水砕槽内からの上澄を溜めるための中継槽をさらに設け、前記上澄を除くことで前記水砕槽内の水砕スラグ濃度を高め、該水砕槽の底部から排出した水砕スラグを含む処理物に対して前記固液分離を行い、該固液分離を、内部に固液分離するためのフィルタが設けられた脱水槽を用いて行う構成とし、且つ、前記架橋型高分子凝結剤を、前記水砕槽の底部の排出口から、前記脱水槽内に前記水砕スラグを含む処理物が落下するまでの間のいずれかの地点で添加すること;前記溶融高炉スラグを粉砕急冷する際の加圧水(冷却水)に、前記架橋型高分子凝結剤が添加されていること;前記架橋性単量体が、原料モノマーの総量に対して、質量で0.5〜50ppmであること;前記冷却水の流量を測定し、前記架橋型高分子凝結剤を、高分子凝結剤量(g−高分子凝結剤/hr)/冷却水流量(t−冷却水/hr)≧0.1となる範囲内の量で添加すること;が挙げられる。
本発明によれば、多様な方式の水砕スラグの製造設備に適用でき、簡便な方法でありながら、微粒水砕スラグをより多く粗粒水砕スラグと共に製品として回収でき、その収率を向上させて溶融高炉スラグの水砕化をより効率的にできる。本発明によれば、上記に加えて、水砕化に利用した後に分離した水を、再度、冷却水(加圧水)として循環使用した際に、循環水中に微細な水砕が含まれることによって生じる種々の問題をより低減できる。具体的には、循環水中に含まれる微細な水砕に起因して生じる、堆積した水砕を除去する目的で行う、温水槽や冷却塔や冷水槽などに対する定期的な清掃回数を低減でき、水を循環使用している間に、循環水中に含まれる硬質の水砕が、配管、ポンプ、弁類などを磨耗させるといった問題をより低減できる。また、前記した、上澄を溜める中継槽と、内部にフィルタを設けた構造の脱水槽とを用いる構成の水砕スラグの製造設備においては、上記した効果に加えて、前記脱水槽のフィルタに固着する水砕スラグの量を格段に低減できる、より優れた水砕スラグの製造方法が提供される。また、本発明によれば、上記したように、より効率よく水砕スラグを製造でき、しかも、循環水中に含まれる微細な水砕に起因して生じる種々の問題を抑制できる効果的水砕スラグの製造方法でありながら、製造される水砕スラグの品質は、従来の方法で得られたものと遜色がない、コンクリート用やモルタル用の細骨材などに適したものになるので、その実用価値は極めて高い。
本発明の水砕スラグの製造方法の一例を説明するための製造のフロー図である。 本発明の水砕スラグの製造方法の別の一例を説明するための製造フロー図である。 本発明の水砕スラグの製造方法の別の一例を説明するための製造のフロー図である。 図3aに示した製造フローを適用した実際の水砕スラグの製造設備における製造フローを説明するための概略図である。 図3aに示した製造フローを適用した実際の水砕スラグの製造設備における製造フローを説明するための概略図である。
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。まず、溶融高炉スラグを水砕化する際に、特殊な条件とすることなく、単に、高温の溶融高炉スラグに加圧水(高圧水)を吹き付けて急速冷却して水砕化させた場合、水砕スラグ製品と分離した水中に微細な水砕が多く混在する状態となることは避けられない。すなわち、溶融高炉スラグを水砕化する際、高圧水を吹き付けることで粗粒(概ね1mm以上の粗大な)水砕だけを製造することは困難であり、生成時点や、もしくは水砕生成後の接触によって粗粒の一部が粉砕されるなどして、一定の比率で微粒(概ね1mm以下の微細な)水砕が生成し、混在することになる。
本発明の水砕スラグの製造方法の特徴は、上記した現状に対し、微粒水砕スラグを効率的に粗粒水砕スラグと共に製品として回収して、その収率を、先に提案している従来技術における収率より向上させることができる新たな架橋型高分子凝結剤を見出したことにある。さらに、多様な方式の水砕スラグの製造設備においても本発明の顕著な効果を達成できるものとするために必要となる、この高分子凝結剤の添加位置を見出したことにある。まず、本発明を特徴づける架橋型高分子凝結剤について説明し、次に、架橋型高分子凝結剤の好適な添加位置或いは添加方法について説明する。
<架橋型高分子凝結剤>
本発明の水砕スラグの製造方法を特徴づける架橋型高分子凝結剤について説明する。
本発明で使用する架橋型高分子凝結剤は、下記の構成のものであり、後述するように、この特有の構成の架橋型高分子凝結剤を用いることで、従来技術では達成できなかったレベルで水砕スラグの収率を高めることができるようになる。この結果、溶融高炉スラグに加圧水(冷却水)を吹き付けて粉砕急冷し、その後に固液分離して水砕スラグをとり出して製品とし、分離した水を加圧水(冷却水)として循環利用する循環水中への微細な水砕スラグの量が格段に少なくなる。このため、従来、循環水中に含まれる微細な水砕に起因して生じている、堆積した水砕を除去する目的で行う、温水槽や冷却塔や冷水槽などに対する定期的な清掃回数を低減でき、また、水を循環使用している間に、循環水中に含まれる硬質の水砕が、配管、ポンプ、弁類などを磨耗させるといった問題をより低減できる。さらに、前記した、上澄を溜める中継槽と、内部にフィルタを設けた構造の脱水槽とを用いる構成の水砕スラグの製造設備では、上記した効果に加え、前記脱水槽のフィルタに固着する水砕スラグの量を格段に低減することが可能になる。
本発明で使用し、本発明を特徴づける架橋構造を有する特定の架橋型高分子凝結剤は、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上を含む原料モノマーに対して、質量で0.5〜300ppmの架橋性単量体を共存させて重合してなる、架橋構造を有するカチオン性又は両性の架橋型水溶性高分子であり、且つ、該架橋型水溶性高分子の架橋度を、純水中に添加し、純水で200倍に希釈した状態の水溶液とした時の水溶液粘度を、4%食塩水中に添加し、4%食塩水で80倍に希釈した状態の水溶液とした時の塩水溶液粘度で除した、水溶液の粘性の測定により得た値で表した場合に、該値が5以上200以下のものである。
Figure 0006839619
(上記式(1)及び(2)中の、R1は、H又はCH3、R2又はR3は、それぞれ独立にCH3又はC25を表し、R4は、H、CH3又はC25のいずれかを表す。X-は、アニオン性対イオンを表す。)
本発明で用いる架橋型高分子凝結剤のより好ましいものとしては、前記架橋性単量体が、原料モノマーの総量に対して、質量で0.5〜50ppmであるものが挙げられる。0.5ppmよりも少ないと、配合量が少な過ぎて、確実に共重合している(架橋構造を有する)とみなすことができない。本発明を特徴づける架橋型高分子凝結剤は、特許第5692910号公報に記載の方法を利用することで容易に製造することができる。また、市販のものとしては、日鉄住金環境社製のNCS−8102、NCS−8103(いずれも商品名)等が挙げられ、いずれも使用することができる。
上記一般式(1)で示されるモノマーの代表的なものとしては、例えば、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩酸塩等が挙げられる。また、一般式(2)で示されるモノマーの代表例としては、例えば、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドが挙げられる。また、これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、本発明で使用する架橋性単量体は、高分子の分子構造を改質する目的で添加するため構造改質剤とも呼ばれているが、以下のようなものが使用される。例えば、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシラン等があるが、最も好ましいのはN,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。また、ギ酸ナトリウム、イソプロピルアルコール等の連鎖移動剤を併用して使用することも架橋性を調節する手法として効果的である。
架橋性高分子の架橋の度合いを表示する方法は、現在のところまだ一般的な表示はない。本発明では、特許第5692910号公報に記載されている方法に準じ、その水溶液の粘性の測定によって架橋度を表す方法を採用した。具体的には、本発明で規定したように、本発明では、水溶性高分子を純水中に添加し、純水で200倍に希釈した状態の水溶液とした時の水溶液粘度をAQVとし、水溶性高分子を4%食塩水中に添加し、4%食塩水で80倍に希釈した状態の水溶液とした時の塩水溶液粘度をSLVとした場合に、下記の式を満足する架橋度を示す水溶性高分子を凝結剤として使用する。
5≦AQV/SLV≦200(25℃において)
後述する実施例及び比較例で用いた具体的な高分子凝結剤を例にとって説明する。比較例では、前記した一般式(1)で表されるモノマーを、それぞれ20モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]ベンジルジメチルアンモニウム・クロリド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロリド共重合体(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性の水溶性高分子を用いた。その重量平均分子量は300万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量が2.0meq/gである。上記のようにして得た水溶性高分子について、上記した架橋度を水溶液の粘性の測定によって得る方法で求めた値は、4であった。以下、この架橋性単量体を用いることなく合成した水溶性高分子を直鎖型高分子凝結剤と呼んで、本発明で規定する架橋型高分子凝結剤と区別する。
後述する実施例で用いた、上記のような手法で求められる架橋度が高い値を示す架橋型高分子凝結剤は、上記に加えて架橋性単量体を用いることで得ることができる。具体的には、上記の原料モノマーに、架橋性単量体としてメチレンビスアクリルアミドを、原料モノマーの総量に対して質量で30ppmとなるように配合して重合することで、架橋型の水溶性高分子を得た。得られた架橋型の水溶性高分子は、水溶液の粘性の測定により得た値で表わした架橋度が48であった。架橋度の具体的な測定及び算出は、下記のようにして行った。得られた水溶性高分子を純水中に添加し、純水で200倍に希釈した状態の水溶液とした時の水溶液の粘度を測定し、この測定値を、別に、得られた水溶性高分子を4%食塩水中に添加し、4%食塩水で80倍に希釈した状態の水溶液とした時の塩水溶液の粘度を測定して得た測定値で除した値で、その架橋度を求めた。本発明では、上記で得た架橋度の値が5以上200以下であった架橋型水溶性高分子を架橋型高分子凝結剤と呼び、この特有の構成の高分子凝結剤を用いることを必須としている。
本発明者らの検討によれば、本発明で規定する上記した特定の架橋型高分子凝結剤は、添加量が過剰になると微細な水砕スラグを粗大な水砕スラグとともに凝結させる効果が劣る傾向がある。このため、本発明の製造方法は、高分子凝結剤の使用量を減らせる利点もある。ここで、本発明の水砕スラグの製造方法を、実際の溶融高炉スラグに適用した場合、水砕スラグの製造量は3000t/day程度であり、この場合に使用する冷却水の量は43000t/day〜58000t/dayである。この場合に使用する本発明を特徴づける架橋型高分子凝結剤の使用量としては、例えば、冷却水中に0.5mg/L以上となる量で添加すれば本発明の効果が得られる。より好ましくは、2mg/L以上とすれば、より顕著な効果が安定して得られ、分離された水は、濁りがなく透明度の高いものになる。上記したように、架橋型高分子凝結剤を多く含有させると、経済性に劣る点、先に述べたように、微細な水砕スラグを粗大な水砕スラグとともに凝結させる効果が劣る傾向があったことから、10mg/L以内の濃度で使用することが好ましい。本発明者らの検討によれば、架橋型高分子凝結剤の添加させることで、分離した水中の微細な水砕の濃度を50mg/L以下にすることが可能になる。このため、温水槽に貯溜されるものは、高温で、非常に清澄な温水となる。ここで、温水の温度は、90〜97℃程度である。
したがって、本発明者らは、さらなる展開として、上記したように、本発明の製造方法を実施する際に生じる高温水は、既に提案している技術によって達成していたよりもより清澄であることから、冷却塔に送る前に、熱交換器を装備することにより、特別な前処理装置を設置することなしに高温水からの熱回収がより容易になると考えている。具体的には、本発明で得られる清澄な高温水を小型のバイナリー発電に利用する等の展開が考えられ、これによって省エネ効果を獲得することもできる。これのように構成すれば、エネルギーの有効利用が実現されると同時に、冷却塔に導入する水の温度を低下できるため、冷却塔への負荷が低減して、この点でも、さらに省エネ効果が期待できる。
<架橋型高分子凝結剤の添加>
本発明のより顕著な効果を得るためには、水砕スラグの製造工程で、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で、上記で説明した架橋型高分子凝結剤を混合させ、溶融高炉スラグに加圧水(冷却水)を吹き付けて粉砕急冷することで得られた、水砕スラグと水に、架橋型高分子凝結剤を共存させることが必要になる。上記した共存状態は、本発明を特徴づける上記した架橋型高分子凝結剤を下記に挙げる位置で添加することで容易に達成できる。
具体的には、図1に示したように、先に提案している従来技術と同様に、水砕樋(吹製樋)を経て水砕槽に溶融高炉スラグを導入する経路で加圧水(高圧水)を吹き付けて溶融高炉スラグを水で急速冷却する際に、前記経路の、水砕スラグが前記水砕槽内に落下するまでの少なくともいずれかの地点で架橋型高分子凝結剤を添加して、水砕槽内で、スラグと水と架橋型高分子凝結剤とを共存させることで、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で架橋型高分子凝結剤を混合させることができる。具体的には、従来より行われている炉前方式の水砕化において、例えば、架橋型高分子凝結剤を、溶融高炉スラグに加圧水が吹き付けると同じ地点、或いは、その直後の地点から、水砕槽入口、或いは、水砕槽内にスラグが落下するまでの地点までの間における、いずれかの地点で添加すれば、水砕スラグと水に、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で架橋型高分子凝結剤を混合させることができる。
また、水砕槽内の水砕スラグを含む処理物を、水砕槽から排出して固液分離される箇所に至るまでの経路の少なくともいずれかの地点で架橋型高分子凝結剤を混合させることによっても、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で架橋型高分子凝結剤を混合させることができる。具体的には、図2に示した製造フローを実施した、水砕槽と固液分離する箇所との間に中継槽を設けることで水砕槽内の水砕スラグ濃度を高め、その後の固液分離を、内部に固液分離するためのフィルタが設けられた脱水槽で行う水砕スラグの製造設備では、例えば、脱水槽に、勢いよく水砕スラグと水とが落とし込まれる際に架橋型高分子凝結剤が併存する状態となるように、架橋型高分子凝結剤の添加位置を決定すればよい。
本発明者らの検討によれば、上記した構成の水砕スラグの製造設備で用いられている脱水槽には、例えば、下部がロート状になった筒の中央部に、その側面が金属製の網状或いはスリット状からなる筒状のフィルタを配置させた構造のものが用いられている。そして、脱水機の上部から、このフィルタ内に、上記のようにして濃度を高めた水砕スラグの処理物を落とし込み、水砕スラグと使用した冷却水との固液分離を行い、フィルタを介して脱水処理された水を抜いて巡回使用することが行われている。この設備における大きな問題は、脱水槽のフィルタに水砕スラグが大量に固着することが生じ、この固着物の除去作業に、多大な時間と労力が費やされている点がある。これに対し、この固着物の量を低減できれば、除去作業の頻度を減らすことができるので、極めて有効である。本発明者らの検討によれば、このような脱水機を使用する水砕スラグの製造設備において、脱水槽に、勢いよく水砕スラグと水とが落とし込まれる際に、本発明を特徴づける架橋型高分子凝結剤を添加することで、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で、スラグと水と架橋型高分子凝結剤とを共存させることができ、その結果、脱水槽のフィルタに固着する水砕スラグを格段に低減できることがわかった。
また、水砕スラグの製造設備には、大量の溶融高炉スラグを連続して処理する必要があることから、例えば、図3aに示す製造フロー構成の設備がある。具体的には、溶融スラグの量が増加した場合への備え、或いは、メンテナンスや故障時の代替を想定した予備機として、水砕槽及び固液分離装置を複数有する設備がある(図3b、図3c参照)。この設備では、これら複数の装置を同時に運転する場合があることから、水砕槽と固液分離装置との間に「分配槽」が設けられている。この分配槽があることで、使用する固液分離装置の切り替えが可能になる。これらの設備では、水砕スラグと水とを含む処理物を、水砕槽から分配槽に落とし込み、分配槽から、使用する固液分離装置に処理物が分配される。本発明者らの検討によれば、このような構成の設備の場合には、分配槽に落とし込まれる水砕スラグと水とを含む処理物に、本発明を特徴づける架橋型高分子凝結剤を添加することが有効であり、このようにすれば、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で、スラグと水と架橋型高分子凝結剤とを共存させることができる。勿論、この場合にも、図1で説明したように、溶融高炉スラグが水砕槽内に落下するまでの少なくともいずれかの地点で架橋型高分子凝結剤を添加して、水砕槽内で、スラグと水と架橋型高分子凝結剤とを共存させることが有効である。
水砕スラグの製造設備では、吹き付けて溶融高炉スラグを粉砕急冷するために用い、その後、形成した製品となる水砕スラグと分離された水は、冷却塔で冷却処理されて、ポンプで加圧水として再び溶融スラグへ吹き付けられ、再利用される。本発明者らの検討によれば、この溶融スラグへ吹き付ける加圧水(冷却水)に、架橋型高分子凝結剤を添加することも有効であり、このようにすれば、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で、スラグと水と架橋型高分子凝結剤とを共存させることができ、本発明の顕著な効果を得ることができる。具体的には、固液分離された後、冷却塔で冷却された後のポンプ吐出部分から、溶融スラグへ吹き付けられる位置までの循環水の配管の少なくともいずれかの地点で、架橋型高分子凝結剤を添加することも有効である。水砕スラグの製造設備では、90〜97℃の高温水が循環している部分が多く、設備の構成によっては、例えば、架橋型高分子凝結剤を添加する位置が高所になる場合や、添加装置の設置作業スペースが狭い場合などがあり、先に例示した添加位置に架橋型高分子凝結剤の添加装置を設置することが難しい場合がある。これに対して、冷却塔で冷却された後の循環水の場合には、高温水の場合に生じる問題が少ないため、ポンプ吐出部分から溶融スラグへ吹き付けられる位置までの配管は、地上部を経由し、且つ、比較的作業スペースに余裕がある場合も多く、架橋型高分子凝結剤の添加装置の設置が容易であるという実用上の利点がある。
本発明の水砕スラグの製造方法では、上記のような種々の位置で、本発明を特徴づける架橋型高分子凝結剤を添加することで、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態で、水とスラグに前記架橋型高分子凝結剤が混合されて共存する状態を生じさせている。本発明者らの検討によれば、このように構成することで、製品となる水砕スラグと分離される水中に含有される微細な水砕の量を、先に提案した従来技術におけるよりも格段に低減でき、前記した従来の種々の課題を、より効果的に一挙に解決できるようになる。
上記に挙げたいずれかの地点で架橋型高分子凝結剤を添加すれば、架橋型高分子凝結剤と水とスラグが、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態で、勢いよく混合されて共存する状態が生じ、その結果、本発明の顕著な効果を得ることができる。これに対し、本発明者らの検討によれば、例えば、水砕槽内や冷却槽内などにおいて、架橋型高分子凝結剤と水とスラグとが共存する状態になるようにしたとしても、静かな撹拌が行われている状態に架橋型高分子凝結剤を静かに添加した場合には、本発明の顕著な効果を十分に得ることはできない。先に述べたように、本発明でより重要なことは、架橋型高分子凝結剤を、勢いよく流れる、具体的には、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態で、水と水砕スラグに混合させて共存させることにあり、このような混合状態とすることで、形成された微細な水砕は、粒状の水砕スラグに付着されて、その後に、網目状フィルタや、先に述べた特有の構成の脱水機等の固液分離手段を介してとり出される水砕スラグ製品を構成するものとなるので、水砕スラグの高い収率が達成できると同時に、循環して使用する冷却水中に含有される微細な水砕の量を格段に低減できる。
本発明者らの検討によれば、先に述べたように、溶融高炉スラグに高圧水を吹き付けて急速冷却して水砕化した場合に、微細な水砕の形成を避けることはできないが、本発明のように構成すれば、簡便な方法でありながら、形成された微細な水砕の大部分は、粗粒水砕に付着して混合粗粒水砕の一部となる。この混合粗粒水砕は、例えば、分離手段として目開きが1mmの網目状フィルタを用い、該フィルタで分離した際に、ほとんど全量がフィルタで補足され、水砕スラグ製品として分離される。この結果、製品として使用するために、温水槽および冷水槽を浚渫して回収しなければならなかった微細な水砕の有効活用が、より効果的に達成され、微細な水砕が分離した水の中に残留する量を、既に提案している方法によるよりもより低減することができるので、残留する微細な水砕によって生じている様々な課題を一挙に、しかも、より効果的に解決できるようになる。また、本発明者らの検討によれば、添加する架橋型高分子凝結剤はより少量で十分であり、上記のようにして得られる混合粗粒水砕は、従来の水砕スラグと同様に、何ら遜色なく使用することができるものになる。
本発明の効果は、下記に述べるように、従来の方法で水砕化した場合に比べて、目視によって明確に認められる極めて顕著なものである。具体的には、本発明の製造方法で水砕スラグを製造した場合、分離した水の中に残留する微粒水砕の量は格段に低減され、分離した水を目視すると、既に提案している方法によるよりも、より透き通った状態になることが確認された。このことは、製造される水砕スラグの収率がより高まることを意味しており、より経済的な水砕スラグの製造が可能になる。
このように、本発明の水砕スラグの製造方法によれば、後述するように、水砕スラグをとり出した際の分離された水中における微細の水砕スラグの含有量を格段に低減できるため、この水を循環使用した場合に、微細の水砕スラグによって生じていた、配管やポンプなどの磨耗を大幅に低下させることができるので、これらの整備作業の低減が可能になり、ランニングコストを低減させることができる。
また、本発明の水砕スラグの製造方法によれば、水砕スラグをとり出した際の分離された水中における微細の水砕スラグの含有量を格段に低減できるため、温水槽、冷却塔、冷水槽などにおける水砕スラグの堆積を大幅に低下させることができる。この結果、清掃作業の低減が可能になり、ランニングコストを低減させることができる。
また、本発明の水砕スラグの製造方法によれば、濃度を高めた水砕スラグを含有する処理物を脱水機で、水砕スラグと使用した冷却水との固液分離を行う構成の設備で問題となっていた、脱水槽のフィルタに水砕スラグが大量に固着することを効果的に抑制できるので、固着物の除去にかかる費用と労力が大幅に低減される。上記したいずれの場合も、整備作業の回数をより低減できるようになるため、水砕スラグの製造効率をより向上させることができる。
本発明の水砕スラグの製造方法は、図で例示したように、高炉から排出された溶融スラグをそのまま水砕化する炉前方式の水砕スラグの製造設備に適用した場合に、より多くの効果が得られる。なお、これに限定されず、高炉から排出された溶融スラグを一旦スラグ鍋に受け入れた後、水砕化する炉外方式に、本発明の製造方法を適用することも可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。
[検討例]−高分子凝結剤についての検討
架橋度の異なる高分子凝結剤を使用し、本発明が目的とする、水砕スラグの凝結がより良好に行われるか否かの性能の違いを下記のような試験で確認した。まず、試験用に、実際の水砕スラグの製造方法で加圧水(冷却水)に使用され、その後に循環使用されている実際の無薬注時の循環水に、水砕スラグを添加して、水砕スラグを含有してなる懸濁物質濃度のSS値が140mg/Lである模擬調整水を作製した。
比較のための高分子凝結剤として、一般式(1)で表されるモノマーを必須成分として、それぞれ20モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]ベンジルジメチルアンモニウム・クロリド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロリド共重合体(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性の水溶性高分子を用いた。その重量平均分子量は300万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量が2.0meq/gである。得られた水溶性高分子について、後述する、架橋度を水溶液の粘性の測定によって得る方法で求めた値は4であり、本発明で規定する架橋型高分子凝結剤とは異なる直鎖型の高分子凝結剤である。
上記の原料モノマーに、架橋性単量体としてメチレンビスアクリルアミドを、原料モノマーの総量に対して質量で30ppmとなるように配合して重合して、架橋型の水溶性高分子を得、これを実施例用とした。得られた架橋型の水溶性高分子は、下記の水溶液の粘性の測定により得た値で表わした架橋度が48であった。架橋度の具体的な測定及び算出は下記の通りである。得られた水溶性高分子を純水中に添加し、純水で200倍に希釈した状態の水溶液とした時の水溶液の粘度を測定した。この測定値を、別に、得られた水溶性高分子を4%食塩水中に添加し、4%食塩水で80倍に希釈した状態の水溶液とした時の塩水溶液の粘度を測定して得た測定値で除した値を求め、この値を架橋度とした。
ジャーテスト試験装置で、先に準備した模擬調整水を、流速が0.5m/秒以上の急な流れの状態となるように撹拌しながら、上記した架橋度が異なる各高分子凝結剤を、濃度が2mg/Lとなるようにそれぞれ添加し、所定時間撹拌を続け、静置後に採取した処理水中のSS濃度を測定した。結果を表1に示した。具体的には、撹拌時間を、7秒、10秒、20秒、40秒、60秒にそれぞれ設定し、SS濃度を測定し、処理性を比較した。なお、撹拌終了後の静置時間は、OFR(水面積負荷)50m/hrを想定して、水面高さから静置時間を算出した。
Figure 0006839619
表1に示したように、上記の試験の結果、本願発明で規定する架橋型高分子凝結剤を用いた場合は、撹拌時間が短い時点から良好なSS処理性を示し、直鎖型の高分子凝結剤と比較して、より高い水砕スラグの凝結効果が得られ、処理後の処理水のSS値がより大きく低減されることが確認された。
[実施例1及び比較例1]
図1に示した製造フロー構成の実際の水砕スラグの製造設備の、溶融高炉スラグを水砕槽内に導入する経路の、溶融高炉スラグが水砕槽内に落下する直前の地点に、高分子凝結剤を添加して試験を行った。実施例1では、検討例で使用したと同様の架橋度48の本発明で規定する架橋型高分子凝結剤を用い、比較例1では、検討例で使用したと同様の架橋度4の直鎖状の高分子凝結剤を用いた。高分子凝結剤の添加は、連続して行い、添加量が1.5mg/Lとなるようにした。そして、この状態で水砕スラグの製造の運転を続け、高分子凝結剤の添加開始から12時間経った時点で、冷水槽の入口と出口のそれぞれの位置で処理水のサンプリングを行い、SS値を測定した。また、その時点で、冷却槽の透視度を測定した。得られた結果を表2に示した。
表2に示したように、高分子凝結剤を使用しない「無薬注」の状態で水砕スラグの製造設備の運転を行った場合は、冷水槽の入口と出口でサンプリングした水のSS値は、冷水槽の入口でのSSが230mg/Lであったのに対し、冷水槽の出口でのSSは190mg/Lであった。このことは、冷水槽に貯溜されている間に、槽内にSSが40mg/L堆積したことを示している。これに対し、実施例1では5mg/Lと大幅に低減した。これに加えて、実施例1では、冷水槽の入口でのSSが12mg/L、冷水槽の出口でのSSが7mg/Lであり、上記した「無薬注」の状態で水砕スラグの製造設備の運転を行った場合と比べて、極めて大きな冷却水(循環水)におけるSS値の低減効果があった。さらに、直鎖状の高分子凝結剤を用いた比較例1の場合は、冷水槽の入口でのSSが70mg/L、冷水槽の出口でのSSが15mg/Lであり、この比較例1と比べた場合にも、本発明の実施例によって従来技術では達成できていなかった冷却水(循環水)におけるSS値の低減効果が得られることが確認された。
Figure 0006839619
上記したように、架橋型高分子凝結剤を用いた実施例1では、極めて高いSS除去性を示し、高分子凝結剤を使用しなかった「無薬注」と比べた場合は勿論のこと、比較例1の直鎖型高分子凝結剤を用いた場合と比較して、冷却水中の微粒水砕スラグが格段に減少できており、循環使用される冷却水中に含有された微細な水砕の存在に起因して生じる問題が抑制できることがわかった。冷却水中の微粒水砕スラグが格段に減少することは、より高い収率で水砕スラグが製造できることを示している。
[実施例2及び比較例2]
図3aに示した製造フロー構成の実際の水砕スラグの製造設備の、溶融高炉スラグを水砕槽内に導入する経路の、溶融高炉スラグが分配槽内に落下する直前の地点に、高分子凝結剤を添加して試験を行った。実施例2では、検討例で使用したと同様の架橋度48の本発明で規定する架橋型高分子凝結剤を用い、比較例2では、検討例で使用したと同様の架橋度4の直鎖状の高分子凝結剤を用いた。
この水砕スラグの製造設備では、水砕槽で固形物を沈め、その固形物をポンプで分配槽に送り、分配槽から固液分離装置へ送られる構成となっている。このような設備では、水砕槽の後段に別に濃縮槽を設け、この濃縮槽で固形物を沈めて、その固形物をポンプで分配槽に送り、分配槽から固液分離装置へ送られる構成とする場合もある。
分配槽内に落下する直前の地点で行った高分子凝結剤の添加は、連続して行い、添加量が1.5mg/Lとなるようにした。そして、この状態で水砕スラグの製造の運転を続け、高分子凝結剤の添加開始から、1日目、2日目、3日目の各時点で、フィルター(不図示)の入口と、冷却槽の出口の位置で処理水のサンプリングをそれぞれ行い、SS値を測定した。また、その時点で、冷却槽の透視度を測定した。得られた結果を表3に示した。表3中に示したSS堆積速度は、冷却槽にSUS製の円筒型容器を吊るし、試験から3日後に引き上げ、円筒型容器内に堆積した固形物量から堆積速度を算出した値である。また、冷却槽の透明度は、3日目の値を示した。
Figure 0006839619
表3に示したように、図3aに示した製造フロー構成の水砕スラグの製造設備に本発明方法を適用した実施例3では、極めて高いSS除去性を示し、高分子凝結剤を使用しなかった「無薬注」と比べた場合は勿論のこと、比較例2の直鎖型高分子凝結剤を用いた場合と比較して、冷却水中の微粒水砕スラグが格段に減少できたことが確認された。なお、表3に示した冷水槽の堆積速度は、実際に測定した値を示しており、実施例3の場合の堆積速度は極めて小さくなっており、比較例2の場合よりもさらに顕著な効果が得られ、より良好な水砕スラグの製造が可能になることがわかった。
本発明によれば、種々の構成の水砕スラグの製造設備に適用できる極めて簡便な方法でありながら、溶融高炉スラグの水砕化に利用した後に、水砕スラグ製品と分離した水中に含有される微細な水砕を、従来技術におけるよりも、より少なくすることが達成される。これにより、温水槽や冷却塔や冷水槽などの定期的な清掃回数が格段に低減され、また、溶融高炉スラグの水砕化の後に、循環使用されている水砕スラグ製品と分離した水中に含まれる微細な水砕を格段に低減できるため、冷却塔、ポンプ、高圧水配管などの設備の摩耗の発生が抑制でき、これらの整備作業を減らすことができるので、従来方法に比べて、より効率的で経済的な水砕スラグの製造方法の実現が可能になる。さらに、本発明によれば、このような効率的で経済的な水砕スラグの製造方法でありながら、収率よく製造される水砕スラグの品質は、従来の方法で得られたものと遜色がないので、その実用価値は極めて高い。さらに、本発明の技術の今後の活用例としては、本発明で水砕化に用いた水は、従来技術によっては得られなかった程度の、より清澄で高温な水とできることから、冷却塔に送る前に、熱交換器を装備することによって容易に熱回収が可能になるので、エネルギーの有効利用する技術としても期待できる。また、上記した実施形態とした場合、同時に、冷却塔に導入する水の温度を低下できるため、冷却塔への負荷が低減するので、この点からも省エネ効果が期待でき、その経済的価値は極めて大きく、その実施化が期待される。

Claims (6)

  1. 水砕樋を経て水砕槽内に溶融高炉スラグを導入する経路で、溶融高炉スラグに加圧水(冷却水)を吹き付けて粉砕急冷し、その後に、固液分離して水砕スラグをとり出して製品とし、分離した水を冷却処理して前記加圧水(冷却水)として循環利用する水砕スラグの製造方法において、
    前記溶融高炉スラグを水砕槽内に導入する経路の、溶融高炉スラグが前記水砕槽内に落下するまでの少なくともいずれかの地点で、または、前記水砕槽内の水砕スラグを含む処理物を、前記水砕槽から排出して前記固液分離される箇所に至るまでの経路の少なくともいずれかの地点で、または、前記分離した水が、冷却処理された後、前記溶融高炉スラグに吹き付けられて粉砕急冷するための前記加圧水として再利用されるまでの経路の少なくともいずれかの地点で、
    下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上を含む原料モノマーの総量に対して、質量で0.5〜300ppmの架橋性単量体を共存させて重合してなる、架橋構造を有するカチオン性又は両性の架橋型水溶性高分子であって、且つ、該架橋型水溶性高分子が、その架橋度を、純水中に添加し、純水で200倍に希釈した状態の水溶液とした時の水溶液粘度を、4%食塩水中に添加し、4%食塩水で80倍に希釈した状態の水溶液とした時の塩水溶液粘度で除した、水溶液の粘性の測定により得た値で表した場合に、該値が5以上200以下のものである架橋型高分子凝結剤を添加することで、流速が0.5m/秒以上の乱流状態で前記架橋型高分子凝結剤を混合させて、前記水砕スラグと水と架橋型高分子凝結剤とを共存させる構成としたことを特徴とする水砕スラグの製造方法。
    Figure 0006839619
    (上記式(1)及び(2)中の、R1は、H又はCH3、R2又はR3は、それぞれ独立にCH3又はC25を表し、R4は、H、CH3又はC25のいずれかを表す。X-は、アニオン性対イオンを表す。)
  2. 前記架橋型高分子凝結剤を、前記溶融高炉スラグに加圧水(冷却水)が吹き付けられる地点から、前記水砕槽入口又はスラグが前記水砕槽内に落下するまでの間のいずれかの地点で添加する請求項1に記載の水砕スラグの製造方法。
  3. 前記水砕槽と、水砕スラグ製品をとり出すための前記固液分離する箇所との間に、水砕槽内からの上澄を溜めるための中継槽をさらに設け、前記上澄を除くことで前記水砕槽内の水砕スラグ濃度を高め、該水砕槽の底部から排出した水砕スラグを含む処理物に対して前記固液分離を行い、該固液分離を、内部に固液分離するためのフィルタが設けられた脱水槽を用いて行う構成とし、且つ、前記架橋型高分子凝結剤を、前記水砕槽の底部の排出口から、前記脱水槽内に前記水砕スラグを含む処理物が落下するまでの間のいずれかの地点で添加する請求項1に記載の水砕スラグの製造方法。
  4. 前記溶融高炉スラグを粉砕急冷する際の加圧水(冷却水)に、前記架橋型高分子凝結剤が添加されている請求項1に記載の水砕スラグの製造方法。
  5. 前記架橋性単量体が、原料モノマーの総量に対して、質量で0.5〜50ppmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の水砕スラグの製造方法。
  6. 前記冷却水の流量を測定し、前記架橋型高分子凝結剤を、高分子凝結剤量(g−高分子凝結剤/hr)/冷却水流量(t−冷却水/hr)≧0.1となる範囲内の量で添加する請求項1〜5のいずれか1項に記載の水砕スラグの製造方法。
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