JP6839610B2 - マッサージ用化粧料 - Google Patents

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本発明は、マッサージ用化粧料に関する。
ヒトの脳機能や脳血流は、様々な外部刺激によって変化することが知られている。例えば、心地良い音楽を聴いてリラックスした場合は、脳前頭葉に流入する血液量が減少することが確認されている(非特許文献1)。或いは、非特許文献2には、バラ生花の嗅覚刺激が副交感神経の亢進、交感神経活動の抑制、前頭前野部の酸素化ヘモグロビン濃度の低下を引き起こし、その結果生理的・主観的リラックス状態をもたらすことが記載されている。また顔面に化粧料を塗布してマッサージする際に、マッサージに使用する手を交差させて行うと、脳の血流量が増加して脳が活性化する手技方法が特許文献1に記載されている。
また、特許文献2には、顔の筋肉とリンパのマッサージ手技によって脳血流が変動することが記載されている。
また、特に香が脳機能に作用することが知られている。
香を感じる嗅覚機能は、脳の活性化や抑制・沈静と関わっている。このため嗅覚機能を介した療法が、近年ではアロマセラピー又はアロマテラピーとして広く普及している。これは、精油の芳香や植物に由来する芳香を用いて、病気や外傷の治療、病気の予防、心身の健康やリラクセーション、ストレスの解消を行うものである。
しかし、これらの精油の芳香のどのような成分が、どのような脳機能に関わっているのか、その詳細は解明されていない。
特許文献3には、フェンネルオイル、グレープフルーツオイル、ペッパーオイル、ヒソップオイル、セージオイル、エストラゴンオイル、ユーカリオイル、ローズマリーオイル、シンナモンオイル、クローブオイル、イランイランオイル、ジンジャーオイル、ゼラニウムオイル及びオリバナムが交換神経を活性化することが記載されている。
特許文献4には、コウヤマキ精油と、月桃精油、和ハッカ精油、シソ精油の混合物からなる香料の香がヒトの脳細胞を活性化させて、集中力を増加させ、その結果作業効率が向上し、ストレスが抑制されることが記載されている。
特許文献5には、香料を添加した飲食物を飲食または嗅いだときの脳血流の変化に基づいて香料の適性を評価する香料の評価方法が記載されており、特許文献6には、脳血流量の変化を測定する脳血流量測定工程と、脳血流量が増加した脳の部位に基づいて、覚醒感を客観的に評価して、香りの与える覚醒感を判定する方法が記載されている。
一方、香料には精神を鎮静化する作用を有する物質が存在することも知られている。特許文献7には、香料の成分である酪酸テルピニル、γ−ノナラクトン、アセチルイソオイゲノール、アニス酸メチル、テルピネオール、ネロール、クリサンテノン、リラール、リリアール、β−フェニルエチルアルコール、γ−メチルイオノン、イソ・イー・スーパー、Z−3−ヘキセニルサリシレート、p−メチルフェニルアセトアルデヒド、リモネン、オシメン、ヘリオナール、リナリルアセテート、ゲラニルアセート、ゲラニオール、ヘディオン、リナロール、シトロネロール、および、γ−ヘキサラクトンに精神鎮静効果が認められることが記載されている。
特開2005−334016号公報 特開2015−047449号公報 特開2002−265977号公報 特開2014−005403号公報 特開2008−304445号公報 特開2015−156891号公報 特開2003−119490号公報
下茂 円、他5名、「NIRS計測による脳血流パターンを指標とした音楽のリラクゼーション効果の評価」千葉大学教育学部研究紀要、2008年、第56巻、P.343〜348 宋チョロン、他4名、「バラ生花の嗅覚刺激が自律神経活動ならびに前頭前野活動に及ぼす影響」日本生理人類学会誌、2013年、18巻特別号、P1−1、P.138〜139
本発明者らは、脳機能を研究する過程で、皮膚マッサージと特定の香料成分を組み合わせた施術が、脳血流を低下させ、好ましいリラックス効果をもたらすことを見いだし、研究を進めた結果本発明をなした。
すなわち、本発明は、皮膚マッサージと組み合わせることによって、脳血流を低下させるマッサージ用化粧料を提供することを課題とする。
(1)ゲラニオールを有効成分として含有する脳血流低下用マッサージ用化粧料。
(2)ゲラニオールを0.01質量%以上含有する(1)に記載の化粧料。
(3)化粧料が就寝前に使用するためのものである(1)又は(2)に記載の化粧料。
(4)ゲラニオールを有効成分として含有する睡眠の質改善用マッサージ用化粧料。
(5)睡眠の質改善が、入眠潜時及び睡眠効率の改善によるものである(4)に記載の化粧料。
本発明により、脳血流低下作用を有するマッサージ用化粧料が提供される。本発明の化粧料を用いて就寝前に顔面皮膚のマッサージを行うことにより、皮膚の美肌効果に加えて、脳血流が低下し、容易な入眠効果が期待できる。またストレスが軽減され、好ましい睡眠を確保することができる。
顔面マッサージの手法を示す図である。 試験例1の操作手順を示した模式図である。 試験例1の脳血流の測定結果から求めた介入による脳血流変化を示すグラフである。 試験例2で測定した入眠潜時の結果を示すグラフである。 試験例3で測定した睡眠効率の結果を示すグラフである。
本発明は、ゲラニオールを有効成分として含有する脳血流低下用マッサージ化粧料に関する。
ゲラニオール (geraniol)はゼラニウムから発見された直鎖モノテルペノイドの一種で下記の化学式1の構造を有する。
ゲラニオールのIUPAC名称は、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オールである。ゲラニオールは主にローズオイル、パルマローザ油、シトロネラ油の精油の香気成分として公知である。ゲラニオールは、上記のゼラニウムや、レモンなどの精油にも含まれている。無色または薄い黄色の液体で、水には溶けないが多くの有機溶媒には溶ける。バラに似た芳香を持ち、広く香水に使われている。また、モモ、ラズベリー、グレープフルーツ、リンゴ、プラム、ライム、オレンジ、レモン、スイカ、パイナップル、ブルーベリーのような芳香としても用いられる。しかしこれまで、ゲラニオールが脳血流を低下させ、睡眠を誘導することは知られていなかった。
本発明に用いるゲラニオールは、化学的に合成されたものでも、バラやゼラニウムなどの精油から精製されたものでもよい。また、未精製の精油も使用可能であるが、ゲラニオールを50質量%以上含有するものが好ましい。市販品を用いることも可能である。
本発明のマッサージ用化粧料はゲラニオールを0.01質量%以上含有する。好ましくは0.01〜5質量%含有する。さらに好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは、0.1〜1質量%である。ゲラニオールは、一般に好ましいバラの香として認識されるが、高濃度の場合は忌避されることもあるため5質量%を超えて配合しないことが望ましい。
ゲラニオールは、水不溶であるがエタノール等のアルコールには容易に溶解するのでアルコール溶液とした後、マッサージ用化粧料に配合する。
本発明のマッサージ用化粧料は、上記のとおりゲラニオールを配合することが可能な組成であれば、配合成分には特に大きな制限はない。また形態も、液状、クリーム状、ゼリー状など様々な形態であっても問題はない。また水中油型或いは油中水型のいずれの乳化組成物であっても良い。
以下に実施例、試験例を示し、本発明をさらに説明する。
実施例 ジェル状マッサージ用化粧料 (質量%)
グリセリン 5
エタノール 3
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー 0.3
PEG−80水添ヒマシ油 0.3
水酸化カリウム 0.11
ゲラニオール 0.1
水 残余
水、グリセリン、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、PEG−80水添ヒマシ油、を加熱溶解させる。冷却後、水酸化カリウムで中和し、あらかじめゲラニオールとエタノールを分散していたものをさらに投入し、混合してジェル状マッサージ化粧料を得た。得られたマッサージ用化粧料は、好ましいゲラニオールの香(バラの香)を有していた。
前記の組成のマッサージ用化粧料を本発明品として用いて試験を行った。なおゲラニオールを含まない以外は同様の組成でマッサージ用化粧料を調製し、これを比較例品とした。
試験例1:マッサージ用化粧料による脳血流への影響評価試験
(1)試験デザイン
試験協力者に対して下記の介入試験を行い、介入前後の比較を行った。
1)何もしない
2)ゲラニオールの香りのみを嗅ぐ(以下、香りのみ)
3)比較例品(無賦香)のマッサージ用化粧料でセルフマッサージを3分間行う(以下、マッサージのみ)。
4)本発明品(ゲラニオール含有マッサージ用化粧料)でセルフマッサージを3分間行う。(以下、香り+マッサージ、香りマッサージ)
なおゲラニオール(試薬名:ゲラニオール、和光純薬工業社製)とエタノールを2:1で混合したのち、ビン詰めしたコットンにこの混合物を2mL含ませ、香りのみの条件時に使用する。このコットンを鼻先から3cm程度のところにもっていき、3分間吸引した。
またマッサージは、図1に示す方法に従った。特に、呼気(吐くこと)を意識ながら行うマッサージであり、ゲラニオールの香りを十分に取り込むことができる。
(2)被験者
同意を得られた健常女性4名(平均年齢34.2歳)
(3)試験スケジュール
被験者一人あたり2日に分け測定し、測定は午後1時から午後5時の間のなるべく同時間となるようにした。一日の条件として1)と2)を同日に行い、3)と4)を同日に行った。
(4)脳血流の測定
使用機器:日立製作所製 近赤外光トポグラフィー OT−R40を用いて酸素化ヘモグロビンの変化量を測定し、脳血流変化量とした。また測定手順は図2のとおりである。
(5)測定結果の解析方法
初期安静、介入、介入後安静の3つのイベントごとにわけ、52個の電極の酸素化ヘモグロビン量の平均値を各イベントの値とした。
(6)結果
初期安静時から血流量がどれくらい変化したか、その変化量を下記表1及び図3に示した。
表1及び図3から明らかなように、本発明品とマッサージを併用することで、脳血流は明らかに低下することがわかった。すなわち、脳血流の低下は、介入時よりも介入後安静において酸素化ヘモグロビン量が減少していることから、介入後しばらくの間脳血流が低下することが確認できた。したがってゲラニオールを0.1質量%以上含有するマッサージ用化粧料は、脳血流を低下させることが明らかである。
試験例2:マッサージ化粧料による睡眠への影響評価試験
試験例1から本発明品(ゲラニオール含有マッサージ用化粧料)は、脳血流を低下させる効果を確認できたため睡眠に及ぼす影響を評価した。
(1)試験デザイン
同一試験協力者に対して下記の2通りの介入試験を行い、クロスオーバー試験を行った。
1)夜寝る前に、比較例品のみを塗布し、睡眠計をつけて就寝する。(以下、対照期間)
2)夜寝る前に、本発明品でマッサージを行い、睡眠計をつけて就寝する。(以下、介入期間)
試験協力者に対して介入試験を行い、介入前後の比較を行った。
(2)被験者
軽度な睡眠困難を自覚した女性16名(平均年齢39.6歳)
(3)試験スケジュール
被験者をA群、B群の2群にわけ、対照期間4週間と介入期間の4週間の2つの期間にわけ、クロスオーバー試験を行った。
(4)睡眠状態の評価
使用機器:スリープウェル社製 スリープスコープを用いて、入眠潜時及び睡眠効率を測定して評価した。
睡眠は、大脳の活動がほとんど停止しているノンレム睡眠と全身は脱力状態にあるが脳の一部は活発に活動し夢を見ているレム睡眠の2種に大別される。この2種の眠りが一定の間隔で繰り返され、眠りが形成されるが、入眠潜時は、就寝からノンレム睡眠出現までの時間をいう。特に睡眠初期の十分に深いノンレム睡眠の確保が効率的な睡眠をもたらす。入眠潜時が短いほど好ましい入眠があったものと評価できる。
睡眠効率は、睡眠中における実質的な睡眠を意味し、睡眠中の中途覚醒を除いた睡眠時間(総睡眠時間)を、入眠から起床までの時間(総就床時間)で除した値である。従って、中途覚醒が多いと睡眠効率は低下する。この睡眠効率が高いほど好ましいと評価できる。
(5)測定結果の解析方法
介入期間、対照期間のうち任意の6日間を解析対象日とし、上記の入眠潜時及び睡眠効率の平均を求めて評価した。介入期間、対照期間の測定結果は対応のあるt検定を行った(*:P<0.05、**:P<0.01)。
(6) 結果
図3に入眠潜時の測定結果、図4に睡眠効率の測定結果を示す。本発明品(ゲラニオール含有マッサージ用化粧料)によるマッサージにより、有意に入眠潜時の短縮と睡眠効率増加が確認された。すなわち、ゲラニオールの香りを嗅ぎながらマッサージをすると脳血流が低下し、その結果、睡眠へも良い影響を与えたのではないかと考えられた。

Claims (2)

  1. 息を吐きながら顔面をプッシュするマッサージ用化粧料であって、ゲラニオールを0.1〜1質量%含有する脳血流低下のためのマッサージ用化粧料。
  2. 就寝前に使用するためのものである請求項1に記載のマッサージ用化粧料。
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