JP6832711B2 - 超伝導電磁石装置及び超伝導電磁石装置における磁場補正方法 - Google Patents
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Description
超伝導電磁石装置であって、
荷電粒子ビームを輸送するためのビームダクトを中心に上下に対向して配置される1対のヨークと、
前記1対のヨークの内側に固定され、荷電粒子ビーム軸を含む面を中心に対向して配置された複数対の磁極と、
前記複数対の磁極の各々に巻線され、超伝導線材で形成され、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された、複数対の第1コイルと、
前記複数対の第1コイルの各々に対して、前記1対のヨークの外側に、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正するための複数対の第2コイルと、
を備えた超伝導電磁石装置が提供される。
超伝導電磁石装置における磁場補正方法であって、
前記超伝導電磁石装置は、
荷電粒子ビームを輸送するためのビームダクトを中心に上下に対向して配置される1対のヨークと、
前記1対のヨークの内側に固定され、荷電粒子ビーム軸を含む面を中心に対向して配置された複数対の磁極と、
前記複数対の磁極の各々に巻線され、超伝導線材で形成され、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された、複数対の第1コイルと、
を備え、
前記複数対の第1コイルにより荷電粒子ビームの軌道を偏向させ、
前記複数対の第1コイルの各々に対して、前記1対のヨークの外側に、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された複数対の第2コイルのひとつ又は複数を制御することにより、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正する、
超伝導電磁石装置における磁場補正方法が提供される。
A.関連技術
例えば、放射光源ウィグラーとしてしばしば用いられる5極型電磁石として図2で示すような偏向電磁石が考えられる。
図2は、荷電粒子ビーム軌道20を含む、本実施例の関連技術の偏向電磁石の断面図である。偏向電磁石は、電磁石の対称面を中心に対向配置される磁極1A、1B、1C、1D、1Eと、磁場を生成するための磁極1A、1B、1C、1D、1Eにそれぞれ巻線された超伝導コイル対2A,2B、2C、2D、2E及び磁極1A、1B、1C、1D、1Eを取り付けるための磁性材で作られた鉄ヨーク30、メイン電源40を備える。メイン電源40により、超伝導コイル2A、2B、2C、2D、2Eに電流を流すことによって、磁極1A、1B、1C、1D、1Eの間に磁場(磁力線6)を生成する。この磁場は鉄ヨーク30、磁極1A、1B、1C、1D、1Eおよび磁極間隙を介して閉じた磁気回路を形成する。実際に製作される偏向電磁石においては、前述の磁極間磁場は超伝導コイルの製作誤差、設置誤差などにより、設計時磁場との差異(誤差磁場)が生じる場合が想定される。
上述のような誤差を低減するため、図3に示すように、磁場補正用シムコイル3A、3B、3C、3D、3Eを超伝導コイル2A、2B、2C、2D、2Eに近接して設置する方法が知られている。磁場補正用シムコイル3A、3B、3C、3D、3Eには別途電源である電流調整部45が接続され、電流調整部45により、電流値を調整して上述の誤差磁場を補正する。
しかしながら、上述のように、近年の蓄積リングでの荷電粒子ビームの低エミッタンス化により、荷電粒子ビーム変位が小さく抑制される傾向にある。これに伴い、磁極ピッチおよび磁極間ギャップが狭くなってきており、磁極1A、1B、1C、1D、1E、超電導コイル2A,2B、2C、2D、2E及び磁場補正用シムコイル3A、3B、3C、3D、3Eに加え、鉄ヨーク30も含めて真空容器7内の極低温環境下に置かれることとなる。この場合、荷電粒子ビーム20が通る領域であるビームダクト8と、超伝導コイル2A,2B、2C、2D、2E、鉄ヨーク30および磁極1A、1B、1C、1D、1Eとの間には熱的な遮蔽が必要であり、更に電磁力に対する支持構造も不可欠であり、上述した磁場補正用シムコイル3A、3B、3C、3D、3Eを設置するスペースを確保しにくいという課題が生じてきた。
本発明の好適な第1の実施例である放射光源用電磁石を説明する。
図4に、本実施例の放射光源用電磁石に関する、ビーム軸方向(ビーム軌道方向)からみた外観図を示す。荷電粒子ビームが通過するビームダクト8が超伝導コイル2Aの間隙部を貫通するように設置される。超伝導コイル2Aの外側には鉄ヨーク30が配置されており、鉄ヨーク30を挟んで超伝導コイル2Aの反対側に磁場補正用シムコイル4Aが配置されている。図4では超伝導コイル2Aおよび磁場補正用シムコイル4Aのみが見えているが、実際には複数のコイルがビーム軸方向に配置されている。
メイン電源40により、超伝導コイル2A、2B、2C、2D、2Eに電流を流すことで磁場が生成される。超伝導コイル2A、2B、2C、2D、2Eはこの順序でコイル電流の向きが交互に逆転しており、磁力線6を描くと、荷電粒子ビーム軸上での磁場の向きは隣り合う磁極で反転した関係となる。
ここで、磁極1Cおよび超伝導コイル2Cで生成される磁場に、設計値との差異が生じたと仮定する。この差異を補正するため、電流調整部50により、磁場補正用シムコイル4Cに電流を流すと、生成される磁場の磁力線は磁力線6´のようになる。超伝導コイル2Cで生成される磁場の磁力線は、磁場補正前の図2の磁力線6に対して、磁力線6´に押されるように磁路が変形する。これにより、結果的に磁力線6の磁気抵抗が変化して、超伝導コイル2Cおよび磁極1Cで生成されるビーム軸上磁場を変化させることができる。
本磁場補正で具体的に生成される磁場について、第1の実施例を解析モデル化して磁場を算出した。図6は超伝導コイル2A、2B、2C、2D、2Eおよび磁場補正用シムコイル4Cに通電した際に生成される磁場分布から、超伝導コイル2A、2B、2C、2D、2Eのみに通電した磁場分布を差し引いた荷電粒子ビーム軸上の磁場分布を示している。つまり磁場補正用シムコイル4Cに通電したことによる、ビーム軸上磁場への影響を示している。横軸は図5でのビーム軸20の位置(磁石対称面内の荷電粒子ビーム軸と垂直方向の位置(m))に相当し、縦軸は、磁場補正用シムコイル通電により生成される磁場(T)に相当する。磁場補正用シムコイル4Cの中心位置は横軸の原点である。磁場補正用コイル4Cが生成する磁力線6´により、磁力線6が通過する磁路の幅が制限され、結果的に磁気抵抗が上昇することで磁場強度が低下していることがわかる。本実施例での磁場補正を実施するためには、例えば、磁場補正する磁極での磁場が設計値よりも高くなるように超伝導コイル2A、2B、2C、2D、2Eに流す電流値を決定し、磁場補正用コイル4A、4B、4C、4D、4Eに通電することで設計値に近づける補正が可能となる。
図7は、本発明の第2の実施例である偏向電磁石をビーム軌道軸方向からから見た概観図である。
以下に本発明の好適な第2の実施例である放射光源用電磁石を、図7を用いて説明する。
実施例1の磁場補正用シムコイルは、図4に示したように、レーストラック形状の超伝導コイルの直線長がほぼ同等となるようなコイル形状としたが、本実施例では、直線長に複数個の磁場補正用シムコイルに区分して設置されている。図7では、例えば磁場補正用シムコイル4Aがシムコイル41A、42Aの二つに区分され、設置されている。
この体系において、電流調整部50により磁場補正用シムコイル41A、42Aにそれぞれ逆向きの電流を流すことで、図8に示すように磁力線6´が生成される。横軸は図5でのビーム軸20の位置(磁石対称面内の荷電粒子ビーム軸と垂直方向の位置)に相当し、縦軸は、磁場補正用シムコイル通電により生成される磁場(T)に相当する。この磁力線の向きと超伝導コイル2Aが生成する磁力線の向きとが一致する場合と反対向きの場合とで、ビーム軸上に生成される磁場強度に差異を生じさせることができる。この補正は、例えば以下の場合に利用できる。例えば超伝導コイル2Aの中心軸が磁極1Aの中心軸に対して傾いて設置された場合、ビーム軸上でレーストラックの直線部方向に磁場勾配分布が生じる。当該方向の磁場勾配は、ビーム軸上磁場のスキュー成分に影響を与えるため、磁場を補正する必要がある。磁場調整用シムコイルを複数個に分割することで、超伝導コイル設置誤差による磁場補正を可能とする。なお、磁場勾配分布の方向及び分布形状等は適宜定めることもできる。
図9は、本発明の第3の実施例である偏向電磁石を偏向軌道に垂直な方向から見た概念断面図である。なお、電流調整部50は、各磁場補正用コイル(4B’、4D’等)にそれぞれ接続され、メイン電源40は、各超伝導コイルにそれぞれ接続される。
以下に、本発明の好適な第3の実施例である放射光源用電磁石を、図9を用いて説明する。
本実施例の磁場補正用シムコイルは、円筒状の筒に納められており、円筒軸を固定して回転可能な構造となっている。駆動部60は、各筒を回転制御する。超伝導電磁石のような強磁場下では、磁性材は電磁力に吸引されて物理的に動かすことは、その強い電磁力に対向して駆動する機構を考える上で現実的ではない。大がかりな駆動部を設けることは、超伝導電磁石への不用意な入熱を増やす要因となりうる。しかしながら、磁場補正用シムコイルが磁化していなければ超伝導電磁石による強磁場下においても物理的に動かすことは可能である。磁場補正用シムコイルは励消磁が可能であるため、例えば磁場補正時にのみ励磁し、磁場補正用コイル位置を調整する際には消磁することができる。図9は磁場補正用シムコイル4B´、4D´を励磁して磁場調整する概念図を示している。シムコイル電流のみによる磁場補正だけでなく、シムコイル位置を調整可能とすることで更に高精度に磁場微調整を可能とする。
なお、円筒状の筒に限らず四角柱等の適宜の構成をすることができ、また回転可能の他、角度調整又は移動可能としてもよい。
以上、本発明について複数の実施形態を挙げて説明したが、本発明の実施形態は上記に挙げた例の形態に限られるものではなく、発明の要旨を越えない範囲において任意に変更を加えてよい。例えば磁極数は5個に限られるものではなく、5個以上であってもよい。またビームダクト8の断面形状も矩形に限られるものではなく、利用状況に応じたものを採用してよい。
また、蓄積リング以外の円形加速器や直線加速器等の適宜の装置の光源としても適用可能である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれている。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
2A、2B、2C、2D、2E 超伝導コイル
20 ビーム軌道
2A、2B、2C、2D、2E 超伝導コイル
3A、3B、3C、3D、3E 磁場補正用シムコイル
30 鉄ヨーク
4A、4B、4C、4D、4E 磁場補正用シムコイル
4B´、4D´ 回転機構を備えた磁場補正用シムコイル
41A、42A 分割された磁場補正用シムコイル
6、6´ 磁力線
7 真空容器
8 ビームダクト
Claims (13)
- 超伝導電磁石装置であって、
荷電粒子ビームを輸送するためのビームダクトを中心に上下に対向して配置される1対のヨークと、
前記1対のヨークの内側に固定され、荷電粒子ビーム軸を含む面を中心に対向して配置された複数対の磁極と、
前記複数対の磁極の各々に巻線され、超伝導線材で形成され、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された、複数対の第1コイルと、
前記複数対の第1コイルの各々に対して、前記1対のヨークの外側に、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正するための複数対の第2コイルと、
を備えた超伝導電磁石装置。
- 請求項1に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第1コイルにより荷電粒子ビームの軌道を偏向させるためのメイン電源と、
前記複数対の第2コイルのひとつ又は複数を制御することにより、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正させるための電流調整部と、
を、さらに備えた超伝導電磁石装置。
- 請求項2に記載の超伝導電磁石装置において、
前記電流調整部は、前記複数対の第2コイルのいずれかひとつ又は複数が生成する磁力線により、前記複数対の第1コイルのいずれかひとつ又は複数による磁力線の磁場強度を低下させることにより、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正することを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 請求項1に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第2コイルが前記複数対の第1コイルよりも多く分割されていることを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 請求項1に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第2コイルの各々は、荷電粒子ビーム軸と垂直方向に複数対の磁場補正用シムコイルを有することを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 請求項5に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第1コイルにより荷電粒子ビームの軌道を偏向させるためのメイン電源と、
前記複数対の磁場補正用シムコイルのひとつ又は複数を制御することにより、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正させるための電流調整部と、
を、さらに備えた超伝導電磁石装置。
- 請求項6に記載の超伝導電磁石装置において、
前記電流調整部は、前記複数対の磁場補正用シムコイルに逆向きの電流を流すことで、荷電粒子ビーム軸と垂直方向の磁場勾配分布を補正する、
ことを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 請求項1に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第2コイルは、回転駆動可能又は角度調整可能又は移動可能な機構を備えたことを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 請求項8に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第2コイルは、円筒状回転体に収納され、円筒軸の周りに回転可能な機構を備えたことを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 請求項8に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第2コイルを、回転駆動又は角度調整又は移動するための駆動部を、さらに備えたことを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 請求項10に記載の超伝導電磁石装置において、
前記複数対の第1コイルにより荷電粒子ビームの軌道を偏向させるためのメイン電源と、
前記複数対の第2コイルのひとつ又は複数を制御することにより、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正させるための電流調整部と、
を、さらに備えた超伝導電磁石装置。
- 請求項11に記載の超伝導電磁石装置において、
前記電流調整部は、前記複数対の第2コイルを、回転駆動又は角度調整又は移動する際には消磁し、磁場補正の際には励磁することを特徴とする超伝導電磁石装置。
- 超伝導電磁石装置における磁場補正方法であって、
前記超伝導電磁石装置は、
荷電粒子ビームを輸送するためのビームダクトを中心に上下に対向して配置される1対のヨークと、
前記1対のヨークの内側に固定され、荷電粒子ビーム軸を含む面を中心に対向して配置された複数対の磁極と、
前記複数対の磁極の各々に巻線され、超伝導線材で形成され、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された、複数対の第1コイルと、
を備え、
前記複数対の第1コイルにより荷電粒子ビームの軌道を偏向させ、
前記複数対の第1コイルの各々に対して、前記1対のヨークの外側に、荷電粒子ビーム軸を含む前記面を中心に対向して配置された複数対の第2コイルのひとつ又は複数を制御することにより、荷電粒子ビーム軌道上の磁場を補正する、
超伝導電磁石装置における磁場補正方法。
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JP2017002720A JP6832711B2 (ja) | 2017-01-11 | 2017-01-11 | 超伝導電磁石装置及び超伝導電磁石装置における磁場補正方法 |
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JP2017002720A JP6832711B2 (ja) | 2017-01-11 | 2017-01-11 | 超伝導電磁石装置及び超伝導電磁石装置における磁場補正方法 |
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JP2018113161A JP2018113161A (ja) | 2018-07-19 |
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JP2017002720A Active JP6832711B2 (ja) | 2017-01-11 | 2017-01-11 | 超伝導電磁石装置及び超伝導電磁石装置における磁場補正方法 |
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JP7356934B2 (ja) * | 2020-03-02 | 2023-10-05 | 株式会社日立製作所 | 超電導磁石装置および偏向電磁石装置 |
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