以下、本発明を適用したガスセンサアレイ及びガス漏れ検知装置の実施形態について説明する。以下の第1実施形態〜第3実施形態では、検知対象としてのガスが水素を含む混合ガスである場合の例について説明する。なお、検知対象となるガスは、水素を含む混合ガス以外のガスであってもよい。また、各実施形態において、共通する要素、部材等について、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化することがある。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るガス漏れ検知装置1は、プローブ2及びガスセンサアレイ3を備えている。プローブ2には、コントローラ11がシャフト部12を介して接続されている。コントローラ11は、略直方体を成しており、ユーザが把持可能な大きさとされている。ユーザは、コントローラ11を把持してガス漏れ検知を行うことができる。
コントローラ11には、図2に示すように、制御回路13、吸引ポンプ14、流量計15、及び電源部16が設けられている。制御回路13は、例えば、CPUなどの演算装置やROM、RAMなどの記憶装置を備え、制御回路基板に搭載されている。制御回路13は、多芯ケーブル46などを介してガスセンサアレイ3、吸引ポンプ14、流量計15、及び電源部16に接続されている。また、コントローラ11の外側と流量計15、吸引ポンプ14とプローブ2の内側とは、それぞれ配管47を介してエアを流通可能とした状態で接続されている。
制御回路13は、吸引ポンプ14を作動させたり、ガスセンサアレイ3から送信される情報に基づいて、ガス漏れの検知を行ったりする。吸引ポンプ14は、制御回路13の作動信号に基づいて、プローブ2内のエアを吸引する。流量計15は、配管47内に流れるエアの流量を計測する。電源部16は、制御回路13、ガスセンサアレイ3、吸引ポンプ14、及び流量計15に電力を供給する。
また、図1に示すように、コントローラ11には、入出力インターフェイス17が設けられている。入出力インターフェイス17は、例えばタッチパネル付き液晶で構成されている。入出力インターフェイス17が操作されると、操作に応じた操作情報が制御回路13に送信される。制御回路13では、送信された操作情報に基づいて、吸引ポンプ14を作動させたり、後述するヒータ37(図4参照)を加熱させたりする。また、制御回路13は、ガス漏れを検知した場合のガス漏れ情報を入出力インターフェイス17に送信する。入出力インターフェイス17は、送信されたガス漏れ情報に応じた警報などを表示する。
図3に示すように、プローブ2は、プローブ筐体21を備えている。プローブ筐体21には、取付部21Aが設けられており、取付部21Aには、図2に示すシャフト部12が取り付けられている。プローブ筐体21の内側は、配管47を介して吸引ポンプ14と連通しており、配管47は、シャフト部12の内側に配されている。取付部21Aには、シール材41が設けられている。このシール材41によって、プローブ筐体21の内側をシャフト部12の内側に対して密閉している。
プローブ筐体21の内側にはガスセンサアレイ3が設けられている。ガスセンサアレイ3は、ベース部としてのベース基板5と、ベース基板5に搭載された複数(本実施形態では5個)のガスセンサモジュール4と、を備えている。複数のガスセンサモジュール4は、直線方向に配列されてガスセンサアレイ3を構成している。なお、図3には図示しないが、ベース基板5及びベース基板5を支持する支持部材の少なくとも一方には通気口が設けられている。
図4に示すように、ベース基板5におけるガスセンサモジュール4を搭載する位置には、接続部23が設けられている。接続部23は、電極23A及び導電材23Bを備えて構成されている。さらに、ベース基板5の表面であって接続部23の下側には表面配線24が設けられ、ベース基板5の裏面には裏面配線25が設けられている。接続部23及び表面配線24は、直接電気的に接続されている。表面配線24及び裏面配線25は、図示しない基板貫通配線を介して電気的に接続されている。また、図示しないが、裏面配線25は、多芯ケーブル46の配線が電気的に接続されている。
ガスセンサモジュール4は、パッケージ31、ガスセンサ32、吸入管33、圧電アクチュエータ34、及び作動軸35を備えている。パッケージ31は、パッケージ本体31Aとパッケージ蓋31Bとを備えている。パッケージ本体31Aは、上方が開口しており、パッケージ本体31Aには、ガスセンサ32が搭載されている。ガスセンサ32は、パッケージ31に収容されており、ダイボンド材26によってパッケージ本体31Aの底面に固定されている。ガスセンサ32は、ベース基板5上に複数配列されている。すなわち、ベース基板5は、配列された複数のガスセンサ32を支持している。
ガスセンサ32は、接触燃焼式ガスセンサであり、基板36、ヒータ37、熱電素子38、及び触媒40を備えている。ヒータ37及び熱電素子38は基板36に搭載されており、図示しない基板貫通配線やワイヤ等を介して多芯ケーブル46に電気的に接続されている。N型半導体とP型半導体が直列接続された熱電素子38の温接点は、触媒40の近傍に配設され、冷接点は基板36上に配設される。
ヒータ37は、制御回路13から供給される駆動電流によって昇温し、触媒40を加熱する。触媒40近傍に水素と酸素が存在すると、触媒40の表面で水素と酸素が反応して水が生成され、反応熱が発生する。この反応熱により触媒40の温度が上昇する。温接点が触媒40の近傍に、冷接点が基板36上の配設されている熱電素子38は、触媒40の温度と基板36の温度との温度差を電圧に変換し、出力電圧として制御回路13に送信する。制御回路13はガス漏れ検知を行う検知部であり、制御回路13では、送信された出力電圧に基づいて、触媒40の温度を計測し、計測した触媒40の温度からガスの濃度(ガス量)を検出し、ガス漏れの有無を判定する。
パッケージ蓋31Bは、パッケージ本体31Aの上方の開口部を閉塞している。パッケージ蓋31Bの側部には、排気口31Cが形成されており、パッケージ31内のエアを外部(プローブ筐体21の内側)に排出する。パッケージ蓋31Bの上部には、吸入管接続部31Dが形成されており、吸入管接続部31Dに吸入管33が接続されている。
吸入管33の先端には、フィルタ取付部33Aが設けられている。吸入管33は、フィルタ取付部33Aとガスセンサ32との間に配置されている。吸入管33は、可撓性及び伸縮性を有するフレキシブル管であり、長さ方向に伸縮可能である。吸入管33のフィルタ取付部33Aはガス導入部であり、吸入管33におけるフィルタ取付部33Aの長さ方向の位置が変位可能である。また、吸入管33のフィルタ取付部33Aの向きが変化可能とされている。吸入管33及び吸入管33のフィルタ取付部33Aは、複数のガスセンサ32のそれぞれに対応している。
圧電アクチュエータ34には、作動軸35の一端が取り付けられている。圧電アクチュエータ34は、圧電セラミックスを備えており、圧電セラミックスの微小な機械的振動や伸縮等によって、作動軸35を作動させるアクチュエータである。圧電アクチュエータ34はプローブ筐体21に取り付けられており、作動軸35の他端はフィルタ取付部33Aに固定されている。圧電アクチュエータ34によって作動軸35を作動させることにより、フィルタ取付部33Aとプローブ筐体21との間の距離が調整可能とされている。また、プローブ筐体21のワークW1に対する相対位置が固定されているときには、圧電アクチュエータ34は、作動軸35を作動させることにより、フィルタ取付部33AをワークW1に対して変位させる。本実施形態では、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離が、ガス導入部の物理状態に相当する。
吸入管33は、パッケージ31の内部と連通しており、吸入管33から吸入されたエアは、パッケージ31内に導入される。吸入管33のフィルタ取付部33Aには、ガス透過性フィルタ42が設けられている。ガス透過性フィルタ42は、検知対象のガス、例えば水素を透過可能とされているとともに、埃や塵などを捕捉して除去可能である。また、ガス透過性フィルタ42は、スポンジ状の多孔質材であり、緩衝性を備える緩衝部材である。フィルタ取付部33Aは、ガス漏れ検知を行う際に、検知対象物に対して直接またはガス透過性フィルタ42を介して当接する。
また、プローブ筐体21の内面とパッケージ蓋31Bの間には、シール材43が介在されている。プローブ筐体21は、取付部21Aに設けられたシール材41及びプローブ筐体21の内面とパッケージ蓋31Bの間に介在されるシール材43によって、内部の気密性が保たれ、外気と遮断されている。
図1に示すように、プローブ2におけるガスセンサモジュール4の周囲には、物理状態検出センサに相当する距離センサ6が設けられている。プローブ2には、ガスセンサモジュール4と同数の距離センサ6が設けられ、ガスセンサモジュール4と距離センサ6とは、対になって設けられている。距離センサ6は、発光素子61及び受光素子62を備えている。発光素子61は、ワークW1に対して光を投射する。受光素子62は、発光素子61から出射し、ワークW1において反射した光を受光する。距離センサ6では、受光素子62で受光素子61の各画素の光量等によって、対応するガスセンサモジュール4における距離センサ6のワークW1からの距離を検出する。また、距離センサ6とフィルタ取付部33Aとの距離は、圧電アクチュエータ34の作動量によって定まるので、距離センサ6は、実質的に、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離を検出する。
各距離センサ6及び各ガスセンサモジュール4の圧電アクチュエータ34は、多芯ケーブル46を介して制御回路13に接続されている。制御回路13は、ガス漏れ検知を行う際、対応するガスセンサモジュール4とワークW1との距離情報を検出結果として取得する。制御回路13では、取得した距離情報に基づいて、圧電アクチュエータ34によって作動軸35を作動させてフィルタ取付部33AをワークW1に対して移動させ、フィルタ取付部33Aの位置をワークW1に対して変位させる。フィルタ取付部33Aは、対応するガスセンサ32とワークW1との距離(相対関係)に応じて、ガスセンサ32によってガスの流出の検出を行う際のワークW1との距離(物理状態)が可変とされている。ガスセンサ32によるガスの検知精度は、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離に影響を受けるので、本実施形態では、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離が、「ガスセンサと検知対象物との相対関係」に相当する。
次に、本実施形態に係るガス漏れ検知装置1によるガス漏れの検知手順について説明する。本実施形態に係るガス漏れ検知装置1において、例えば図2に示すワークW1から漏れる水素を検出する手順について説明する。ガス漏れの検知対象となるワークW1には、ボンベB1からトレーサーガスGが供給される。トレーサーガスGの成分は、水素3.9%、空気96.1%である。また、ワークW1の形状は、略卵型であり、表面が全体的に凸となる曲面形状をなしている。
ボンベB1から供給されたトレーサーガスGは、ワークW1の中に充填される。ここで、ワークW1が損傷等して微小な穴が開いていたりすると、その穴からトレーサーガスGが流出する。ガス漏れ検知装置1は、トレーサーガスGのワークW1からの流出を検知するとともに、ワークW1におけるトレーサーガスGのガス漏れ位置を判断可能とする。
ガス漏れ検知装置1によってワークW1のガス漏れ検知を行う際には、フィルタ取付部33AがワークW1に対して対向するようにワークW1の周囲に複数のガスセンサモジュール4を配置する。このとき、ガスセンサモジュール4をワークW1から離間させた状態で、ガスセンサモジュール4におけるフィルタ取付部33AのワークW1からの距離を一定にする。なお、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離を一定にする手順については後述する。続いて、図1に示す入出力インターフェイス17を操作して、吸引ポンプ14及びヒータ37を作動させる。吸引ポンプ14を作動させると、吸引ポンプ14の吸引力によって配管47の内部が減圧になり、パッケージ31内のエアを吸引する。パッケージ31は、シール材41,43によって密閉されており、パッケージ蓋31Bには排気口31Cが形成されているので、吸引ポンプ14の吸引力は、吸入管33内に作用する。吸入管33のフィルタ取付部33Aの周囲におけるエアは、吸入管33内に作用した吸引力によって吸入管33内に流入する。ここにワークW1から漏れ出したトレーサーガスGが含まれる場合、このトレーサーガスGが吸入管33に導入される。
それから、吸入管33のフィルタ取付部33Aの近傍のエアがガス透過性フィルタ42を介して吸入管33に吸引される。このとき、ワークW1からガス漏れが生じており、ガス漏れが生じている箇所の近傍にガスセンサアレイ3の吸入管33が配置されていると、図5に示すように、ワークW1から漏れ出したトレーサーガスGが吸入管33内に吸引される。
図4に示すように、吸入管33内に吸引されたトレーサーガスGはパッケージ31内に流入する。パッケージ31内にはガスセンサ32における触媒40が設けられ、触媒40はヒータ37の加熱によって活性化させられているので、パッケージ31内におけるエア中に含まれる酸素(O2)と、トレーサーガスGに含まれる酸素(O2)及び水素(H2)が触媒40の表面で反応して水(H2O)が生成され、反応熱が発生する。なお、結露による触媒40の表面での反応低下を防止するため、100℃より高い温度で触媒40をヒータ37で熱するのが好ましい。
水素と酸素の反応によって反応熱が発生すると、熱電素子38によって熱電変換が行われ、熱電素子38の出力電圧が増加する。トレーサーガスGの漏れ量が多いと触媒40表面での水素と酸素との反応が活発になり、触媒40の温度上昇が増大することから、熱電素子38の出力電圧が大きくなる。このため、制御回路13では、熱電素子38の出力電圧によってトレーサーガスG(水素)の濃度を検出し、ガス漏れを検知する。また、熱電素子38の出力電圧が大きくならずに定常状態であるときには、ガス漏れが生じていないことがわかる。そして、例えば熱電素子38の出力電圧が所定の規定値を超えた場合に、ワークW1にガス漏れの不具合があったと判断することができる。なお、ここでの規定値は、出力電圧に代えて、出力電圧から算出される触媒40の温度であってもよい。
上記のようにガス漏れの検知を行う際には、各ガスセンサモジュール4におけるフィルタ取付部33AのワークW1からの距離が一定となるように調整する。そのため、ガスセンサモジュール4の周囲に設けられた距離センサ6によって、ワークW1に対する各ガスセンサモジュール4におけるフィルタ取付部33AのワークW1からの距離を検出する。ここで、複数のガスセンサ32の間において、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離が異なっている場合、圧電アクチュエータ34によって作動軸35を作動させてフィルタ取付部33Aを移動させ、フィルタ取付部33Aの位置をワークW1に対して変位させて調整する。
フィルタ取付部33AのワークW1からの距離を一定にする手順は、次のとおりである。例えば、図5に示すように、複数のガスセンサモジュール4A〜4Eのうち、端部に位置する第1ガスセンサモジュール4A及び第5ガスセンサモジュール4EのワークW1からの距離が、その内側に位置する第2ガスセンサモジュール4B及び第4ガスセンサモジュール4DのワークW1からの距離よりも長かったとする。さらに、第2ガスセンサモジュール4B及び第4ガスセンサモジュール4DのワークW1からの距離が、その内側に位置する第3ガスセンサモジュール4CのワークW1からの距離よりも長かったとする。
この場合、例えば、第2ガスセンサモジュール4B〜第4ガスセンサモジュール4Dにおける圧電アクチュエータ34によって作動軸35を作動させて、第2ガスセンサモジュール4B〜第4ガスセンサモジュール4Dのフィルタ取付部33AをワークW1から遠ざけることで、第1ガスセンサモジュール4A〜第5ガスセンサモジュール4Eのそれぞれのフィルタ取付部33AとワークW1からの距離を一定にする。
ワークW1の1か所においてガス漏れの検知を行ったら、ワークW1の異なる位置にガス漏れ検知装置1を移動させて、同様のガス漏れの検知を行う。そして、複数回のガス漏れ検知装置1の移動を繰り返して、同様のガス漏れ検知を行うことにより、ワークW1の全体におけるガス漏れを検知する。以上により、ガス漏れ検知装置1によるワークW1のガス漏れ検知が終了する。
本実施形態に係るガス漏れ検知装置1は、複数のガスセンサモジュール4を備えている。このため、同時にワークW1の複数個所におけるガス漏れを検知することができるので、短時間でガス漏れを検知することができる。ところが、ワークW1の複数個所におけるガス漏れを同時に検知するにあたり、検知のための条件が複数のガスセンサモジュール4の間で異なると、正確なガス漏れの検知を行うことができないことがある。例えば、複数のガスセンサモジュール4において、ワークW1と吸入管33のフィルタ取付部33Aとの間の距離が異なっていると、吸入管33に導入されるトレーサーガスGの量が変化してしまうことがある。例えば、ワークW1と吸入管33のフィルタ取付部33Aとの間の距離が長い場合、ワークW1と吸入管33のフィルタ取付部33Aとの間の距離が短い場合より吸入管33に対するトレーサーガスGの導入量が少なく、空気の導入量が多くなることがある。
この点、本実施形態に係るガス漏れ検知装置1では、距離センサ6によってワークW1とガスセンサ32との距離を検出し、検出した距離に基づいて、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離が、複数のガスセンサモジュール4A〜4Eの間で一定になるように各ガスセンサモジュール4A〜4Eの圧電アクチュエータ34によって作動軸35を作動させる。吸入管33は、伸縮性を有しているので、圧電アクチュエータ34によってフィルタ取付部33Aを移動させることができる。このため、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離を、複数のガスセンサモジュール4A〜4Eの間で一定にすることができる。
したがって、ガス漏れの検知のための条件を複数のガスセンサモジュール4の間で一定にすることができるので、漏れたガスの濃度を精度よく検出することができる。また、複数のガスセンサモジュール4の間で出力電圧を比較することによりガス漏れ位置を精度よく特定できる。よって、本実施形態に係るガス漏れ検知装置では、ガス漏れ位置と漏れたガスの濃度の検出及びガス漏れの検知を短時間で精度よく行うことができる。
また、吸入管33のフィルタ取付部33Aの位置を変位させると、吸入管33の長さが変わるため、ガスセンサアレイ3における複数のガスセンサ32とワークW1との個々の間では、距離が若干不均一となるが、複数の吸入管33及びパッケージ31の内側は通気状態にあり、内部の圧力は均一となっている。このため、ガスセンサ32の近傍におけるエア(及びガス)の流速は、ほぼ一定となっているので、酸素と水素とが反応する量は、水素の量にほぼ比例することになる。したがって、エアに含まれるトレーサーガスG(水素)の濃度を精度よく検出できるので、ワークW1のガス漏れを精度よく検知することができる。
また、本実施形態に係るガス漏れ検知装置1では、吸引ポンプ14によって吸入管33のフィルタ取付部33Aの周囲におけるエアを吸引している。このため、吸入管33のフィルタ取付部33Aの周囲におけるエアを吸入管33内、さらにはガス漏れ検知装置1内に効率的に導入することができるので、ガス漏れの検知時間を短くすることができる。
また、吸入管33のフィルタ取付部33Aには、ガス透過性フィルタ42が取り付けられている。このため、吸入管33内ガスを導入しながら、埃などの混入を抑制することができるので、精度よくガス漏れを検知できるとともに、ガス漏れ検知装置1に不具合が生じることを抑制できる。
また、フィルタ取付部33Aに設けられたガス透過性フィルタ42は、緩衝性を備えた緩衝部材である。このため、例えば、複数のガスセンサモジュール4A〜4Eの間でワークW1とフィルタ取付部33Aとの間の距離を一定にするために、ガス透過性フィルタ42を介して吸入管33のフィルタ取付部33AをワークW1に当接させたとしても、ワークW1やガス漏れ検知装置1の損傷を抑制することができる。さらに、ガス透過性フィルタ42が緩衝性を有するので、ワークW1の表面に沿って吸入管33を移動させたときにワークW1の形状に対する追従性を向上させることができる。したがって、吸入管33のフィルタ取付部33AをワークW1に当接させた状態でガスセンサアレイ3を容易に移動させることができる。なお、フィルタ取付部33AをワークW1に当接させたとしても一定量の大気が吸入管33内へ導入できるようにガス透過性フィルタ42の構造を設計すれば、水素5%、窒素95%などの酸素が含まれない混合ガスをトレーサーガスGとして選択することが可能となる。
なお、上記の第1実施形態では、ガス漏れ検知を行う際、フィルタ取付部33AのワークW1からの距離を一定にするにあたり、ガスセンサモジュール4をワークW1から離間させている。このため、フィルタ取付部33Aやフィルタ取付部33Aに取り付けられたガス透過性フィルタ42はワークW1から離間しているが、フィルタ取付部33Aやフィルタ取付部33Aに取り付けられたガス透過性フィルタ42がワークW1に当接した状態となるようにしてもよい。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。図6に示すように、本実施形態に係るガス漏れ検知装置20は、プローブ7及びガスセンサアレイ8を備えている。プローブ7には、把手64が接続されており、把手64には、多芯ケーブル46を介してコントローラ65が電気的に接続されている。ユーザは、把手64を把持してガス漏れ検知を行うことができる。
コントローラ65には、図7に示すように、第1制御回路66が設けられている。第1制御回路66は、例えば、CPUなどの演算装置やROM、RAMなどの記憶装置を備え、第1制御回路基板に搭載されている。第1制御回路66には、電源部16が接続され、電源部16にはコンセント67が設けられている。電源部16には、コンセント67から得られる電気を充電可能である。また、電源部16は、第1制御回路66に電力を供給する。また、図6に示すように、コントローラ65には入出力インターフェイス17が設けられている。
把手64には、制御回路基板に搭載された第2制御回路68が設けられている。把手64は、棒状であり、ユーザが把持可能な太さとされている。第2制御回路68には、多芯ケーブル46を介してコントローラ65における第1制御回路66及びガスセンサアレイ8が接続されている。
図8に示すように、プローブ7は、プローブ筐体71を備えている。プローブ筐体71は、把手64と一体的に形成されている。把手64は中空形状をなしており、プローブ筐体71の内側と把手64の内側は、エアが流通可能となるように連通している(図7参照)。
プローブ筐体71の内側にはガスセンサアレイ8が設けられている。ガスセンサアレイ8は、図8及び図9に示すように、基台80と、電磁アクチュエータ81と、物理状態検出センサに相当する圧力センサ82と、フレキシブル基板83と、基台80上に配された複数の弾性体84と、弾性体84の上にそれぞれ設けられた複数のガスセンサモジュール90と、を備えている。複数のガスセンサモジュール90は、面状に配列されてガスセンサアレイ8を構成している。また、電磁アクチュエータ81、圧力センサ82、及び弾性体84は、いずれもガスセンサモジュール90に対応して設けられており、ガス漏れ検知装置20は、ガスセンサモジュール90、電磁アクチュエータ81、圧力センサ82、及び弾性体84を複数、本実施形態では19個備えており、これらはそれぞれ対応して設けられている。
電磁アクチュエータ81は、例えばボイスコイルモータからなり、固定子となるヨーク85と、可動子86とを備えている。ヨーク85には、マグネット87が設けられ、可動子86にはコイル88が設けられている。ヨーク85は、平面視して円形状の凹部85Aと、凹部85Aの中央に配置された凸部85Bと、が形成されており、凹部85Aにおける内周面に沿ってマグネット87が取り付けられている。可動子86は、板状の台座86Aと、台座86Aから下方に延びる脚部86Bとを備えている。脚部86Bは、ヨーク85における凸部85Bを囲むようにして配置されている。コイル88は、可動子86における脚部86Bの外側に設けられている。コイル88は、ヨーク85の凹部85Aにおいて、可動子86の脚部86Bと、マグネット87との間に配置されている。
電磁アクチュエータ81のコイル88には、第2制御回路68から電流が供給される。第2制御回路68から供給された電流がコイル88に通電されることにより、コイル88とマグネット87の間で電磁力が発生する。この電磁力により、電磁アクチュエータ81における可動子86が作動する方向に力が働く。コイル88に供給する電流の向きを反転することにより、可動子86の作動方向も反転する。
圧力センサ82は、電磁アクチュエータ81とフレキシブル基板83との間に配置されている。圧力センサ82は、例えば、PVDF樹脂(ポリフッ化ビリニデン樹脂)などの高分子強誘電材料を上下の電極で挟み込んだフィルム状をなしている。圧力センサ82は、パッケージ91とワークW2が圧力伝達状態にあるときの電磁アクチュエータ81とフレキシブル基板83の間の圧力を検出する。圧力伝達状態とは、物体同士が直接当接し、あるいは他の物体を介して接続されて、押圧力等の圧力が伝達可能である状態をいう。本実施形態では、パッケージ91とワークW2とは、後述するガス透過性フィルタ72を介して当接されて圧力伝達状態とされている。
電磁アクチュエータ81及び圧力センサ82には、第2制御回路68が接続されている。圧力センサ82は、検出した圧力を第2制御回路68に出力している。第2制御回路68は、圧力センサ82から出力された圧力に基づいて、電磁アクチュエータ81のコイル88に供給する電流の電流値を求めて、求めた電流値の電流をコイル88に供給する。
フレキシブル基板83は、少なくとも一部が可撓性を有する可撓性基板であり、複数の弾性体84と複数のガスセンサモジュール90との間に位置している。具体的には、複数の弾性体84、電磁アクチュエータ81、及び圧力センサ82の上にフレキシブル基板83が搭載され、フレキシブル基板83の上に複数のガスセンサモジュール90が搭載されている。フレキシブル基板83は、少なくとも隣り合う圧力センサ82の間(ガスセンサモジュール90の間)に位置する部分が可撓性を有していればよい。複数の弾性体84は、いずれも例えばゴム製である。
図9に示すように、フレキシブル基板83におけるガスセンサモジュール90を搭載する位置には、接続部23が設けられている。接続部23は、上記第1実施形態と同様の構成を有している。さらに、フレキシブル基板83の表面であって接続部23の下側には表面配線24が設けられている。図8に示すように、複数の表面配線24は、多芯ケーブル46に電気的に接続されている。
ガスセンサモジュール90は、パッケージ91及びガスセンサ94を備えている。パッケージ91は、箱状に形成されており、パッケージ本体92とパッケージ蓋93とを備えている。パッケージ本体92は、上方が開口しており、パッケージ本体92には、ガスセンサ94が搭載されている。ガスセンサ94は、ダイボンド材26によってパッケージ本体92の底面に固定されている。パッケージ本体92及びパッケージ蓋93は、ユーザがガス漏れ検知装置20をワークW2に押し付ける力や電磁アクチュエータ81がパッケージ91をワークW2に押し付ける力では変形しない程度の剛性(非変形性)を有している。電磁アクチュエータ81は、可動子86を作動させることにより、パッケージ91を変位させる。
ガスセンサ94は、フレキシブル基板83上に配列されて設けられている。ガスセンサ94は、熱伝導式ガスセンサであり、基板95、熱電素子96及びヒータ98を備えている。熱電素子96及びヒータ98は基板95に搭載されており、図示しない基板貫通配線やワイヤ等を介して多芯ケーブル46に電気的に接続されている。
ヒータ98は、第2制御回路68から供給される駆動電流によって昇温する。ヒータ98の熱は、パッケージ91内に導入されたエアによって奪われる。ヒータ98と基板95との温度差を熱電素子96により電圧に変換し、出力電圧として第1制御回路66に出力する。例えば、水素(H2)の熱伝導率は大気に比べて大きいため、大気中の水素(H2)濃度が大きい程、ヒータ98からの吸熱量が大きくなり、ヒータ98の温度は低下する。その結果、温度が高い場合の熱電素子96の出力をプラスとした場合には、熱電素子96の出力電圧が低下する。第1制御回路66はガス漏れ検知を行う検知部であり、第1制御回路66では、送信された出力電圧に基づいてガス漏れの有無を判定する。
パッケージ蓋93は、パッケージ本体92の上方の開口部に取り付けられている。パッケージ蓋93は、焼結金属、メッシュ金属、多孔性セラミック等によって構成され、通気性を有している。このため、パッケージ91の内部は、大気圧とされている。また、パッケージ蓋93は、パッケージ91の周囲のガスをパッケージ91内に導入する際のガス導入部となる。パッケージ蓋93は、複数のガスセンサ94をそれぞれ収容する複数のパッケージ91にそれぞれ設けられている。
プローブ7は、被覆部材に相当するガス透過性フィルタ72を備えており、ガス透過性フィルタ72は、複数のガスセンサモジュール90(特にパッケージ蓋93)を被覆している。ガス透過性フィルタ72は、可撓性を有している。パッケージ91のパッケージ蓋93は、ガス漏れ検知を行う際に、検知対象物に対して直接またはガス透過性フィルタ72を介して当接する。
次に、本実施形態に係るガス漏れ検知装置20によるガス漏れの検知手順について説明する。本実施形態では、図7に示すワークW2から漏れ出したトレーサーガスGのガス漏れ検出について説明する。ワークW2は、表面が全体的に凹となる曲面形状を成すいわば鼓型を成している。ワークW2には、ボンベB2から、水素5%、窒素95%の組成のトレーサーガスGが供給される。
ガス漏れ検知装置20によってワークW2のガス漏れ検知を行う際には、図7に示すように、ガスセンサモジュール90を被覆するガス透過性フィルタ72をワークW2の側面に当接させて、複数のガスセンサモジュール90のパッケージ91とワークW2が圧力伝達状態となるようにする。複数のガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離を一定にする。複数のガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離を一定にする手順については後述する。ワークW2の表面に沿って配置されガス透過性フィルタ72を介したパッケージ91には、パッケージ91の周囲のエアが導入される。このとき、ワークW2からガス漏れが生じており、ガス漏れが生じている箇所の近傍にパッケージ91が配置されていると、図10に示すように、ワークW2から漏れ出したトレーサーガスGがパッケージ91内に導入される。パッケージ91内にトレーサーガスGが導入されると、ガスセンサ94(図9参照)によってトレーサーガスGが検出されてガス漏れが検知される。
上記のようにガス漏れの検知を行う際には、各ガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離を一定にするように調整する。そのため、各ガスセンサモジュール90に設けられた圧力センサ82によって、各ガスセンサモジュール90におけるパッケージ91とワークW2の間の圧力を検出する。複数のガスセンサモジュール90のパッケージ91とワークW2が圧力伝達状態であるときに、各ガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離が異なっていると、各ガスセンサモジュール90に対応する圧力センサ82で検出される圧力が異なる。各ガスセンサモジュール90に対応する圧力センサ82で検出される圧力が異なる場合、すなわち、各ガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離が異なる場合には、電磁アクチュエータ81によってガスセンサモジュール90のワークW2に対する位置を移動させ、ガスセンサ94の位置をワークW2に対して変位させて調整する。こうして、各ガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離を一定にする。
各ガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離を一定にする手順は、次のとおりである。例えば、図10に示す5つガスセンサモジュール90のうち、1つのガスセンサモジュール90に対応する圧力センサ82で検出された圧力が、他の4つのガスセンサモジュール90に対応する圧力センサ82で検出された圧力より小さかったとする。
この場合、検出された圧力が小さかった圧力センサ82に対応するガスセンサモジュール90に設けられたガスセンサ94は、他のガスセンサモジュール90に設けられたガスセンサ94よりもワークW2との距離が長くなっている。そこで、検出された圧力が小さかった圧力センサ82に対応するガスセンサモジュール90に設けられた電磁アクチュエータ81を作動させてガスセンサモジュール90をワークW2に近づける。こうして、各ガスセンサモジュール90のガスセンサ94とワークW2の距離を一定にする。
ワークW2の1か所においてガス漏れの検知を行ったら、ワークW2の異なる位置にガス漏れ検知装置20を移動させて、同様のガス漏れの検知を行う。そして、複数回のガス漏れ検知装置20の移動を繰り返して、ワークW2の全体におけるガス漏れを検知し、ガス漏れ検知装置20によるワークW2のガス漏れ検知が終了する。
本実施形態に係るガス漏れ検知装置20は、複数のガスセンサモジュール90を備えているため、同時にワークW2の複数個所におけるガス漏れを検知することができるので、短時間でガス漏れを検知することができる。また、複数のガスセンサモジュール90は、電磁アクチュエータ81及び圧力センサ82を備えており、第2制御回路68は、圧力センサ82の検出結果に基づいて電磁アクチュエータ81を作動させて、複数のガスセンサモジュール90を移動させている。こうして、ワークW2に対する各ガスセンサ94の距離(相対関係)が一定となるようにできる。
したがって、パッケージ91に対するガスの導入条件を複数のガスセンサモジュール90の間で一定にすることができる。よって、ガス漏れの検知のための条件を一定にすることができるので、ガス漏れの位置と漏れたガスの濃度の検出及びガス漏れの検知を短時間で精度よく行うことができる。また、複数のガスセンサモジュール90の間でガスセンサ94からの出力電圧を比較することにより、ガス漏れの位置と漏れたガスの濃度の検出及びガス漏れの検知を短時間で精度よく行うことができる。
また、複数のガスセンサモジュール90が設けられているフレキシブル基板83は可撓性を有する。このため、複数の弾性体84が個々に異なる態様で変形した場合でも、フレキシブル基板83は、弾性体84の変形に合わせて変形するので、ガスセンサモジュール90が傷ついたりフレキシブル基板83から外れたりしないようにすることができる。
また、複数のガスセンサモジュール90は、面状に配列されている。このため、ワークW2の外周に広い面がある場合でも、多くの箇所におけるガス漏れを同時に検知することができる。したがって、ガス漏れ検知装置20によってガス漏れを検知するための検知時間の短縮に貢献することができる。
また、ガスセンサモジュール90においては、パッケージ91が移動可能とされているが、パッケージ91が移動したとしても、フレキシブル基板83(特に、隣り合う弾性体84の間の部位)が変形することによって複数のガスセンサモジュール90と多芯ケーブル46との電気接続は維持することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。図11に示すように、第3実施形態に係るガス漏れ検知装置100は、第1の実施形態と同様の図示しないコントローラを備えている。コントローラには、空圧アクチュエータであるエアシリンダ101が接続されている。エアシリンダ101は、シリンダ102と、シリンダ102に対して進退可能なロッド103を備えている。ロッド103の内側には、多芯ケーブル46が設けられ、多芯ケーブル46の一端には第1実施形態と同様の制御回路が接続されている。シリンダ102におけるロッド103の挿入位置には、シール材104が設けられている。
ロッド103の先端には、保持装置110が設けられている。保持装置110は、6個の第1支持材111〜第6支持材116を備えている。第1支持材111〜第6支持材116は、それぞれ棒状のベース材である第1アーム材111A〜第6アーム材116Aを備えており、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aには、第1台座部111B〜第6台座部116Bがそれぞれ設けられている。第1アーム材111A〜第6アーム材116Aは、板状であってもよい。第1アーム材111Aと第2アーム材112Aは、端部同士が連結されている。同様に、第2アーム材112Aと第3アーム材113A、第3アーム材113Aと第4アーム材114A、第4アーム材114Aと第5アーム材115A、第5アーム材115Aと第6アーム材116Aは、端部同士が連結されている。第1アーム材111A〜第6アーム材116Aは、略円形の一端が切り欠かれた形状に沿って配置されており、第1アーム材111A〜第6アーム材116AによってワークW3を保持するように第1アーム材111A〜第6アーム材116Aを配置可能とされている。
第1アーム材111Aの一端と第2アーム材112Aの連結部分には、第1電磁アクチュエータ121が設けられている。同様に、第2アーム材112Aの一端と第3アーム材113Aの他端、第3アーム材113Aの一端と第4アーム材114Aの他端、第4アーム材114Aの一端と第5アーム材115Aの他端、第5アーム材115Aの一端と第6アーム材116Aの他端の連結部分には、第2電磁アクチュエータ122〜第5電磁アクチュエータ125がそれぞれ設けられている。第1アーム材111Aの他端と第6アーム材116Aの一端は接続されていない。
第1電磁アクチュエータ121は、連結された第1アーム材111Aと第2アーム材112Aがなす角度を変動させる回転式アクチュエータである。第1電磁アクチュエータ121は制御回路の制御に基づいて作動し、図12に示すように、第1アーム材111Aと第2アーム材112Aがなす角度θ(θ1,θ2)を変動させて調整することができる。同様に、第2電磁アクチュエータ122〜第5電磁アクチュエータ125は、制御回路の制御に基づいて、隣接する第2アーム材112A〜第6アーム材116Aがなす角度を変動させて調整することができる。
第1電磁アクチュエータ121の両隣における第1アーム材111Aと第2アーム材112Aの端部には、それぞれ物理状態検出センサに相当する歪センサ131A,131Bが設けられている。同様に、第2電磁アクチュエータ122〜第5電磁アクチュエータ125の両隣における第2アーム材112A〜第6アーム材116Aの間には、それぞれ歪センサ132A〜135A,132B〜135Bが設けられている。
歪センサ131A〜135A,131B〜135Bは、多芯ケーブル46を介して図示しない制御回路に接続されている。歪センサ131A〜135A,131B〜135Bは、第1アーム材111A〜第6アーム材116AとワークW1とが圧力伝達状態であるときの第1アーム材111A〜第6アーム材116Aの物理状態に相当する第1アーム材111A〜第6アーム材116Aの歪みをそれぞれ検出している。歪センサ131A〜135A,131B〜135Bは、検出した歪みに基づく歪み情報を制御回路に出力している。ロッド103の先端部には、第3電磁アクチュエータ123が接続されている。
保持装置110には、ガスセンサアレイ140が設けられている。ガスセンサアレイ140は、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146と、フレキシブル基板147と、を備えている。フレキシブル基板147は、上記第2実施形態と同様、少なくとも一部が可撓性を有する可撓性基板であり、第1台座部111B〜第6台座部116Bと、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146の間に配置されている。具体的には、第1台座部111B〜第6台座部116Bにフレキシブル基板147が搭載され、フレキシブル基板147を介した第1台座部111B〜第6台座部116Bの上に第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146がそれぞれ搭載されている。こうして、第1支持材111〜第6支持材116に第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146のパッケージ91がそれぞれ搭載されている。フレキシブル基板147は、少なくとも第1台座部111B〜第6台座部116Bのうちの隣り合う台座部の間に位置する部分が可撓性を有していればよい。
フレキシブル基板147における第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146を搭載する位置には、接続部23が設けられている。接続部23は、上記第1実施形態と同様の構成を有している。さらに、フレキシブル基板147の表面であって接続部23の下側には表面配線24(図9参照)が設けられている。複数の表面配線24は、多芯ケーブル46に電気的に接続されている。
第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146は、いずれも第2実施形態におけるガスセンサモジュール90と同様、図9に示すパッケージ91及び熱伝導式ガスセンサであるガスセンサ94を備えている。ガスセンサ94は、ガスセンサ94と基板95、熱電素子96及びヒータ98を備えている。パッケージ91は、パッケージ本体92とパッケージ蓋93とを備えている。パッケージ本体92は、上方が開口しており、パッケージ本体92には、ガスセンサ94が搭載されている。ガスセンサ94は、パッケージ本体92の底面に固定されている。パッケージ本体92及びパッケージ蓋93は、ユーザがガス漏れ検知装置100を検知対象物に押し付ける力では変形しない程度の剛性(非変形性)を有している。
また、第1支持材111における第1アーム材111Aの他端及び第6支持材116における第6アーム材116Aの一端には、ガス透過性フィルタ150の端部が取り付けられている。被覆部材に相当するガス透過性フィルタ150は、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146を被覆するようにして設けられている。また、ガス透過性フィルタ150は、ワークW3に当接可能である。以下において、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aにおいて、図11に示すように、第1アーム材111Aの他端と第6アーム材116Aが離間した状態を開状態といい、図13に示すように、第1アーム材111Aの他端と第6アーム材116Aが近接した状態を閉状態という。
次に、本実施形態に係るガス漏れ検知装置100によるガス漏れの検知手順について説明する。本実施形態では、図11に示すワークW3から漏れ出したトレーサーガスGのガス漏れ検出について説明する。ワークW3は、断面円形を成す円柱形を成している。ワークW3には、ボンベB2から、水素5%、窒素95%の組成のトレーサーガスGが供給される。
ガス漏れ検知装置100によってワークW3のガス漏れ検知を行う際には、図11に示すように、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aを開状態とする。第1アーム材111A〜第6アーム材116Aを開状態としたままで、ロッド103をシリンダ102から進出させて、ワークW3を保持装置110の内側に配置させる。続いて、第1電磁アクチュエータ121〜第5電磁アクチュエータ125を作動させ、図13に示すように、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aを閉状態とし、ガス透過性フィルタ150を介して第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146のパッケージ蓋93を当接させる。
第1アーム材111A〜第6アーム材116Aが閉状態であるとき、歪センサ131A〜135A,131B〜135Bは、第1支持材111〜第6支持材116とワークW3が圧力伝達状態にあるときの第1アーム材111A〜第6アーム材116Aの歪みを検出する。ガス漏れの検知対象となるワークW3は、断面円形状をなしているので、ワークW3に対して第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146が均一に当接していれば、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aに生じる歪みの大きさには、ほとんど差が生じない。また、ワークW3に対して第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146が不均一に当接している場合には、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aに生じる歪みの大きさに差が生じることがある。例えば、ワークW3に対する第1ガスセンサモジュール141の当接力が第2ガスセンサモジュール142の当接力よりも強い場合には、第1アーム材111A及び第2アーム材112Aに生じる歪みに差が生じて、第1電磁アクチュエータ121の両隣に位置する歪センサ131A,131Bが検出する歪みの差が大きくなる。この場合、第1ガスセンサモジュール141がワークW3から離れる方向に第1電磁アクチュエータ121を作動させることにより、第1アーム材111Aの歪みが小さくなり、第1アーム材111A及び第2アーム材112Aの歪みの差をなくすことができる。
こうして、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146がワークW3に対して均一な当接力で当接すると、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146におけるガスセンサ94は、ワークW3に対する距離や向きといった相対関係が均一な状態でワークW3の表面に沿って配置される。こうして、ワークW3が断面円形状を成していても、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146がワークW3の表面に沿って均等に配置される。
ワークW3の表面に沿って配置されガス透過性フィルタ150を介したパッケージ91には、パッケージ91の周囲のエアが導入される。このとき、ワークW3からガス漏れが生じており、ガス漏れが生じている箇所の近傍にパッケージ91が配置されていると、ワークW2から漏れ出したトレーサーガスGがパッケージ91内に導入される。
パッケージ91内にトレーサーガスGが導入されると、ガスセンサ94によってトレーサーガスGが検出されてガス漏れが検知される。ワークW3の1か所においてガス漏れの検知を行ったら、ワークW3の異なる位置にガス漏れ検知装置100を移動させて、同様のガス漏れの検知を行う。そして、複数回のガス漏れ検知装置100の移動を繰り返して、ワークW3の全体におけるガス漏れを検知し、ガス漏れ検知装置100によるワークW3のガス漏れ検知が終了する。
本実施形態に係るガス漏れ検知装置100は、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146という複数のガスセンサモジュールを備えているため、同時にワークW3の複数個所におけるガス漏れを検知することができるので、短時間でガス漏れを検知することができる。また、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146を支持する第1支持材111〜第6支持材116は、第1電磁アクチュエータ121〜第5電磁アクチュエータ125で接続され、第1支持材111〜第6支持材116には、歪センサ131A〜135A,131B〜135Bが設けられている。制御回路は、歪センサ131A〜135A,131B〜135Bの検出結果に基づいて第1電磁アクチュエータ121〜第5電磁アクチュエータ125を作動させて、ワークW3に対する第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146の当接力が均等になるように調整を行う。このため、トレーサーガスGを導入するパッケージ91の位置を変位させたり向きを変化させたりして、ワークW3に対する各ガスセンサ94の距離や向きといった相対関係が均一となるようにすることができる。
したがって、パッケージ91に対するガスの導入条件を第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146の間で一定にすることができる。よって、ガス漏れの検知のための条件を一定にすることができるので、ガス漏れの位置と漏れたガスの濃度の検出及びガス漏れの検知を短時間で精度よく行うことができる。また、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146の間でガスセンサ94からの出力電圧を比較することにより、ガス漏れの位置と漏れたガスの濃度の検出及びガス漏れの検知を短時間で精度よく行うことができる。
また、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146が設けられているフレキシブル基板147は可撓性を有する。このため、隣接する支持材、例えば第1支持材111及び第2支持材112のアーム材、例えば第1アーム材111A及び第2アーム材112A同士がなす角度が変化しても、フレキシブル基板83は、第1アーム材111A及び第2アーム材112Aの変形に合わせて変形するので、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146が傷ついたりフレキシブル基板147から外れたりしないようにすることができる。
また、第3実施形態では、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aの歪みを検出してこれらが均一になるように第1電磁アクチュエータ121〜第5電磁アクチュエータ125を作動させているが、第1電磁アクチュエータ121〜第5電磁アクチュエータ125が設けられた位置に第1電磁アクチュエータ121〜第5電磁アクチュエータ125とともにトルクセンサを設け、第1アーム材111A〜第6アーム材116Aの間のトルクが均一になるように第1電磁アクチュエータ121〜第5電磁アクチュエータ125を作動させるようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記の各実施形態では、ガスセンサモジュール4,90、第1ガスセンサモジュール141〜第6ガスセンサモジュール146にガス透過性フィルタ42,72,150が設けられているが、これらのガス透過性フィルタ42,72,150が設けられていなくてもよい。また、第1実施形態におけるガス透過性フィルタ42は、緩衝部材であるが、緩衝性を備えていないガス透過性フィルタであってもよい。また、第2実施形態及び第3実施形態におけるガス透過性フィルタ72,150が、緩衝部材であるガス透過性フィルタであってもよい。また、これらのガス透過性フィルタ42,72,150に代えて、第1実施形態における吸入管33または第2実施形態におけるパッケージ91に対するガス(エア)を透過する状態を維持した上で、緩衝部材を別途設けるようにしてもよい。
また、ガス透過性フィルタ42,72,150とともに、あるいはガス透過性フィルタ42,72,150に代えて、ワークW1〜W3に対してスムーズな移動を可能とするためのガイド部材を設けてもよい。また、上記のガス漏れ検知装置1,20,100では、ガス透過性フィルタ42,72,150をワークW1〜W3に当接させてガス漏れ検知を行っているが、ガス透過性フィルタ42,72,150またはガス漏れ検知装置1,20,100の他の部位をワークW1〜W3に当接させることなく、吸入管33のフィルタ取付部33Aまたはパッケージ蓋93をワークW1〜W3に近接させてガス漏れ検知を行ってもよい。
また、ガスセンサとして、第1実施形態では接触燃焼式のガスセンサ32、第2実施形態及び第3実施形態では熱伝導式のガスセンサ94を用いているが、第1実施形態において熱伝導式のガスセンサを用いてもよいし、第2実施形態や第3実施形態で接触燃焼式のガスセンサを用いてもよい。また、第1実施形態〜第3実施形態のいずれにおいても、半導体式や電気化学式などの他の態様のガスセンサを用いてもよい。また、第2実施形態及び第3実施形態では、ガス透過性フィルタ72,150を介してパッケージ蓋93がワークW2,W3に当接するようにしているが、ガス透過性フィルタ72,150が設けられることなく、パッケージ蓋93がワークW2,W3に直接当接するようにしてもよい。また、ガス透過性フィルタ72,150に代えて、異物除去効果を殆ど持たない大きな開口を有するスペーサを設けてもよい。
また、上記実施形態では、温度計測を行うために、熱電素子38,96を用いているが、抵抗体や赤外線検出素子などの他の温度計測素子によって温度計測を行ってもよい。また、第1実施形態では、吸引ポンプ14によって吸入管33内のエアを吸引しているが、吸引ポンプを設けなくてもよい。また、第2実施形態及び第3実施形態では、吸引ポンプを設けていないが、吸引ポンプによってパッケージ91内のエアを吸引するようにしてもよい。また、接続部23の電極23A及び導電材23Bに代えて、脱着容易なコネクタを用いてもよい。また、第1実施形態において、各ガスセンサモジュール4に対して3個または3個以上の距離センサと、3個または3個以上の圧電アクチュエータ34を配設して、フィルタ取付部33AとワークW1との距離に加えて向き(傾き)も、各ガスセンサモジュール4の間で均一となるように調整してもよい。また、第2実施形態において、各ガスセンサモジュール90に対して、3個または3個以上の圧力センサ82と、3個または3個以上の電磁アクチュエータ81を配設して、フィルタ取付部33AとワークW2との距離に加えて向き(傾き)も各ガスセンサモジュール90の間で均一となるようにしてもよい。この場合には、弾性体84を省略してもよい。また、ガス漏れ検知を行う際、ユーザがコントローラ11や把手64を把持する態様に代えて、第1実施形態におけるコントローラ11や第2実施形態における把手64等をロボットが把持してもよい。