JP6831437B1 - ナトリウム分散体およびナトリウム分散体の保管方法 - Google Patents

ナトリウム分散体およびナトリウム分散体の保管方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体を、撹拌や振とうなどの機械的動力を要することなく、長期間その品質を保持し保管できる技術を提供する。【解決手段】本発明に係るナトリウム分散体は、分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、JIS K 2269の方法に従って測定した流動点が−35℃以上−10℃以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、分散溶媒中にナトリウムが分散したナトリウム分散体、およびその保管方法に関する。
ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体は、固体のナトリウムとは異なる物性を有し、医農薬や電子材料などの機能性材料の有機合成などの各種技術分野への応用が期待される。
ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体は、分散溶媒として、ノルマルパラフィン系溶媒などの鉱物油、あるいは、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶媒を用いることが一般的である(たとえば、特開2009−102678号公報(特許文献1)を参照のこと)。特許文献1には、ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体およびその製造方法に関して、分散溶媒として芳香族成分を3重量%以上20重量%以下で含有する鉱物油を用いることでナトリウム粒子の再凝集を抑制し微細な状態でナトリウム粒子が分散させうることが記載されている。しかしながら、アルカリ金属を分散溶媒に分散させた分散体を長期間保管すると、分散質であるアルカリ金属微粒子が沈降し、分散体として期待される品質を十分に保持できないおそれがある。このような分散体を長期間保管する場合には、工業規模では専用の設備により撹拌や振とうなどの機械的動力を利用して分散質の沈降および凝集を抑制することが一般的である。
特開2009−102678号公報
ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体を試薬として流通させる場合には、その品質を長期間一定に保持しておく必要があり、特に分散質であるアルカリ金属微粒子の沈降および凝集を抑制することが重要となる。上述したように分散質の沈降および凝集を抑制するためには、ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体に常時に撹拌および振とうなどの機械的動力を付与することが提案されるが、撹拌および振とうなどのための専用の設備が必要となり、容易ではない。そこで、アルカリ金属を分散溶媒に分散させた分散体を簡便な設備で長期間保管する方法として、たとえば、窒素で置換した容器にアルカリ金属を分散溶媒に分散させた分散体と撹拌子を入れ、マグネティックスターラーを用いて撹拌する方法が挙げられる。しかしながら、室温下で10分間/日の撹拌によってもアルカリ金属微粒子の沈降および凝集を効果的に抑制することはできず、3か月経過時点でアルカリ金属の造粒が確認されるようになる。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体を、撹拌や振とうなどの機械的動力を要することなく、長期間その品質を保持し保管できる技術を提供することを目的とする。
本発明に係るナトリウム分散体は、分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、JIS K 2269の方法に従って測定した流動点が−30℃以上−10℃以下であることを特徴とする。
本発明に係る他のナトリウム分散体は、分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散体の流動点Td(℃)、JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散溶媒の流動点Ts(℃)、前記分散溶媒の種類により決定される定数a(ただし、0.05≦a≦0.5)、および、前記ナトリウムの含有量d(質量%)が、下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする。
Td=Ts−a・d 式(1)
−35≦Td≦−10 式(2)
また、本発明に係るナトリウム分散体の保管方法は、分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、JIS K 2269の方法に従って測定した流動点が−30℃以上−10℃以下であるナトリウム分散体を容器に入れ、前記容器をリーファーコンテナまたは冷凍倉庫に入れて保管することを特徴とする。
また、本発明に係るナトリウム分散体の他の保管方法は、分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散体の流動点Td(℃)、JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散溶媒の流動点Ts(℃)、前記分散溶媒の種類により決定される定数a(ただし、0.05≦a≦0.5)、および、前記ナトリウムの含有量d(質量%)が、下記式(1)および式(2)を満たすナトリウム分散体を容器に入れ、前記容器を、設定温度Tc(℃)のリーファーコンテナまたは冷凍倉庫に入れて保管することを特徴とする。
Td=Ts−a・d 式(1)
Tc≦Td 式(3)
これらの構成によれば、ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体の流動点が高いため、分散体を低温保管することで凝固し、ナトリウムの分散状態を長期間維持できる。その結果、分散体を、撹拌や振とうなどの機械的動力を要することなく、長期間その品質を保持し保管できる。
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
本発明に係るナトリウム分散体は、一態様として、20℃においてJIS K 2283の方法に従って測定した動粘度が10〜50mm/sであることが好ましい。
この構成によれば、分散体の動粘度がこの範囲であれば、ナトリウムの沈降をより効果的に防止しうる。
本発明に係るナトリウム分散体は、一態様として、ガラス式比重計を用いて測定した密度が0.85〜1.0g/cmであることが好ましい。
この構成によれば、分散体の密度がナトリウムの密度と近いため、ナトリウムの沈降をより効果的に防止しうる。
本発明に係るナトリウム分散体は、一態様として、前記分散体を遠心分離した上澄み液に係るASTM D3238−17aに従った環分析において、全炭素量に対するナフテン炭素量の重量割合が20〜50%であり、全炭素量に対するパラフィン炭素量の重量割合が40%以上であることが好ましい。
この構成によれば、分散体の組成がこの範囲であれば、ナトリウムの沈降をより効果的に防止しうる。
本発明に係る保管方法は、一態様として、前記容器がシリンジであることが好ましい。
この構成によれば、融解させた分散体をすぐに使用できるので、使用性に優れる。
本発明のさらなる特徴と利点は、以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
本発明に係る分散体の実施形態について説明する。本実施形態に係る分散体は、分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であり、より詳細には、ナトリウムを溶解しない分散溶媒中に、ナトリウム微粒子またはナトリウム液滴が分散した分散体である。ここで、ナトリウムとは、金属ナトリウム単体であってもよいし、金属ナトリウムを含む混合物であってもよい。
〔分散体の諸物性〕
本実施形態に係る分散体は、流動点が−35℃以上−10℃以下である。ここで、流動点は、JIS K 2269の方法に従って測定した値である。本実施形態に係る分散体を流動点以下の温度で保管すると、分散体を凝固させた状態で保管できる。これによって、分散体の保管中にナトリウムが沈降することを防ぎうる。本実施形態に係る分散体の流動点は、好ましくは−30〜−10℃であり、より好ましくは−25〜−10℃である。
本実施形態に係る分散体を長期保管または長距離輸送する場合、たとえば、分散体を入れた容器をリーファーコンテナに入れることが考えられる。リーファーコンテナの運転温度の下限は典型的には−40℃程度であるので、分散体の流動点が−35℃以上であると、一般的なリーファーコンテナを用いて、分散体を凝固させた状態で保管できる。
一方、本実施形態に係る分散体を有機合成などの化学反応に用いる場合、多くの場合、SS400に代表される炭素鋼製の反応槽が用いられる。炭素鋼は、−10℃以下の低温において耐衝撃性が低下する性質を有するため、一般的な反応槽はその使用下限温度が−15℃程度に設定されており、当該反応槽中において実施される反応の温度は、当該使用下限温度より高く設定されている。そのため、分散体の流動点が−10℃以下であると、一般的な反応温度において、分散体は融解した状態であり、これを反応槽に液体として供給できる。
本実施形態に係る分散体は、20℃における動粘度が10〜50mm/sであることが好ましい。ここで、動粘度は、JIS K 2283の方法に従って測定した値である。動粘度が上記の範囲にあると、ナトリウムの沈降をより効果的に防止しうる。本実施形態に係る分散体の動粘度は、好ましくは10〜50mm/sであり、より好ましくは10〜30mm/sである。
本実施形態に係る分散体は、密度が0.85〜1.0g/cmであることが好ましい。ここで、密度は、ガラス式比重計を用いて測定した値である。密度が上記の範囲にあると、ナトリウムの密度(0.97g/cm)と近いため、ナトリウムが分散した状態が保たれやすい。本実施形態に係る分散体の密度は、好ましくは0.85〜1.0g/cmであり、より好ましくは0.85〜0.97g/cmである。
本実施形態に係る分散体は、遠心分離した上澄み液に係る環分析において、全炭素量に対するナフテン(環状構造を持つ飽和炭化水素)炭素量の重量割合が20〜50%であり、全炭素量に対するパラフィン(直鎖構造を持つ飽和炭化水素)炭素量の重量割合が40%以上であることが好ましい。ここで、分散体の遠心分離は、3000rpm、30分間の条件で行い、環分析はASTM D3238−17aに従って実施する。
本実施形態に係る分散体のナフテン炭素量の重量割合は、好ましくは20〜50%であり、より好ましくは20〜40%であり、さらに好ましくは25〜40%であり、特に好ましくは29〜40%である。ナフテン炭素量の重量割合が上記の範囲であると、分散体の温度が流動点より高い場合における分散体の流動性が高くなるため、分散体を反応槽に導入する場合などに取り扱いやすい。
本実施形態に係る分散体のパラフィン炭素量の重量割合は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45〜75%であり、さらに好ましくは50〜70%である。分散体がパラフィンを含む場合、分散体の凝固は主としてパラフィンの結晶化により引き起こされる。そのため、分散体がパラフィンを多く含む場合、分散体が凝固しやすくなり、すなわち分散体の流動点が上昇する。パラフィン炭素量の重量割合が上記の範囲であると、分散体の流動点を−35℃以上−10℃以下に調整しやすい。
本実施形態に係る分散体のアロマ(芳香族炭化水素)炭素量の重量割合は、好ましくは0〜10%であり、より好ましくは0〜7%である。アロマ炭素量の重量割合が10%を超えると、芳香族炭化水素が金属ナトリウムと反応して好ましくない副反応が生じる場合がある。また、芳香族炭化水素は比較的高価であるので、その含有量が多いと、分散体の製造コストが上昇しうる。
〔分散体の構成成分〕
以下では、上記の諸物性を与える分散体の構成成分の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明に係る分散体は、流動点が−35℃以上−10℃以下である限りにおいて、その構成成分について限定されない。
本実施形態に係る分散体中に分散するナトリウム微粒子またはナトリウム液滴の平均粒子径は、好ましくは100μm未満であり、より好ましくは50μm未満であり、さらに好ましくは30μm未満であり、特に好ましくは10μm未満である。なお、ここでいう平均粒子径とは、本実施形態に係る分散体を顕微鏡により観察した画像を画像解析し、当該画像解析において得られた投影面積と同等の投影面積を有する球の直径の平均値である。
本実施形態に係る分散体におけるナトリウム含有量は特に制限されないが、好ましくは15〜30質量%であり、より好ましくは20〜25質量%以下である。ナトリウム含有量を高くすると、単位質量のナトリウム分散体の添加によって供給されるナトリウム量は多くなるが、ナトリウム含有量の増加に伴って流動点が低下するため、本発明に係る分散体の流動点の範囲を逸脱する場合がある。また、ナトリウム含有量が30質量%以下であると、特に日本においては、ナトリウム含有量が30質量%を超える場合に比べて、分散体の保管が容易になる利点がある。ナトリウム含有量が30質量%を超える分散体は、消防法上の危険物第三類に分類される場合があり、その場合は、危険物第四類などの他の危険物と別個の保管場所を設ける必要があるためである。
本実施形態に係る分散体における分散溶媒としては、ナトリウム微粒子またはナトリウム液滴が分散でき、ナトリウムが分散した状態における流動点が−35℃以上−10℃以下である限りにおいて、当技術分野において公知の溶媒を用いることができる。かかる溶媒の例としては、鉱物油(ノルマルパラフィン系溶媒など)、芳香族系溶媒(トルエン、キシレンなど)、複素環化合物溶媒(テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェンなど)、およびこれらの溶媒の混合物、が挙げられる。
分散体中のナトリウム含有量が上昇すると、分散体中における分散溶媒の濃度が低下するため、分散体の流動点が低下する。具体的には、ナトリウム含有量が1質量%上昇すると、流動点は0.05〜0.5℃低下する。なお、ナトリウム含有量1質量%あたりの流動点の変化率は、分散溶媒の種類により決定される固有の値であり、変化率を決定したい分散溶媒についてナトリウム含有量が異なる複数の分散体を調製して当該複数の分散体のそれぞれの流動点を測定し、ナトリウム含有量と流動点との関係をプロットすることにより決定できる。
上記の関係を用いて、分散溶媒の種類に応じて、適切なナトリウム含有量を決定できる。分散体の流動点Td(℃)は、分散溶媒の流動点Ts(℃)、分散溶媒の種類により決定される定数a、およびナトリウム含有量d(質量%)を用いて下記の式(1)で表される。
Td=Ts−a・d 式(1)
また、本実施形態に係る分散体の流動点Td(℃)は、−35℃以上−15℃未満であるから、下記の式(2)が成立する。
−35≦Td≦−10 式(2)
ここで、分散溶媒の種類を決定すると、分散体の流動点Td(℃)および定数aが決定されるので、これらの値を式(1)および式(2)に代入することで、ナトリウム含有量dの適切な範囲が求められる。
また、具体的な保管温度が既知の場合は、当該保管温度を用いてナトリウム含有量dの適切な範囲をより具体的に決定しうる。たとえば、想定される保管温度(リーファーコンテナの設定温度など)がTc(℃)である場合、分散体を凝固させた状態で保管するためには、下記の式(3)を満たす必要がある。
Tc≦Td 式(3)
ここで、分散体の流動点Td(℃)および定数aを式(1)および式(3)に代入することで、ナトリウム含有量dの適切な範囲が求められる。
〔分散体の保管方法および使用方法〕
次に、本実施形態に係る分散体の保管方法および使用方法について説明する。
本実施形態に係る分散体は、室温において液体であるので、容器に入れて保管する必要がある。ここで容器は、ナトリウムおよび分散溶媒のいずれとも反応せず、かつ、後述する保管温度において使用可能である容器を選択できる。容器の材料としては、ガラス、プラスチック、ステンレスなどの材料を用いうる。容器の形状としては、瓶、試験管、アンプル、シリンジ、ドラム缶などを選択できる。
本実施形態に係る保管方法では、分散体を入れた容器を低温で保管する。ここで、保管温度は、分散体の流動点に鑑みて決定される。保管温度が分散体の流動点より低い温度であると、保管中に分散体が凝固しナトリウムの沈降が防止されるため好ましい。保管温度は、より好ましくは分散体の流動点より3℃以上低い温度であり、さらに好ましくは5℃以上低い温度である。そのような保管方法としては、たとえばリーファーコンテナを用いる方法が例示される。リーファーコンテナの内部は低温(たとえば約−25℃)に維持されているため、分散体を入れた容器をリーファーコンテナに入れて保管すると、保管中にナトリウムが沈降することが好適に防止されうる。
なお、上記のリーファーコンテナを陸路、海路、または空路により運搬しうる。従来のナトリウム分散体は、輸送中にナトリウム粒子が凝集するおそれがあり、長距離の輸送に適さない場合があった。しかし、本実施形態に係る分散体では、輸送中に分散体が凝固し、ナトリウムの凝集が防止されうるため、長距離の輸送を行っても品質を維持しうる。
本実施形態に係る分散体を使用するときは、分散体を使用する反応系に当該分散体を導入する。たとえば本実施形態に係る分散体を有機合成に用いる場合は、当該有機合成を行う容器(フラスコなど)に分散体を導入する。このとき、低温で保管され凝固していた分散体を、室温に静置または任意の手段により加熱して融解させてから用いてもよいし、凝固した状態のまま用いてもよい。また、分散体を溶媒で希釈してから用いてもよい。分散体の具体的な導入方法(量、時期、速度など)は、分散体の使用目的(化学反応の種類など)に応じて適宜選択される。なお、容器としてシリンジを用いた場合、融解した分散体をすぐに反応系に導入できるので、使用性に優れる。
低温(流動点以下)で分散体を使用するときは、テトラヒドロフラン(THF)やヘキサンなどの反応溶媒を添加するとよい。これにより、分散体が液状となって、取り扱いが容易となる。重量割合でTHF:分散体=1以上:1の割合でTHFが含まれれば、−35℃の低温下で液状の分散体とすることができる。
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
以下では、本発明に係る分散体の実施例を示す。ただし、本発明に係る分散体は、以下の実施例に限定されない。
〔試薬〕
実施例および比較例の各例の分散体の原料として、以下の試薬を用いた。
ナトリウム:関東化学製 純度>99.0%
分散油1:流動点−20.0℃、動粘度(0℃,20℃,40℃,100℃)85.40mm/s,29.13mm/s,13.28mm/s,3.15mm/s、粘度指数97、密度(15℃)0.8545g/cm、引火点196℃、酸価0.01KOH/g、環分析(ナフテン炭素量27.8%CN、パラフィン炭素量66.4%CP、アロマ炭素量5.8%CA)
分散油2:流動点−15.0℃、動粘度(0℃,20℃,40℃,100℃)44.23mm/s,17.03mm/s,8.43mm/s,2.32mm/s、粘度指数81、密度(15℃)0.8665g/cm、引火点160℃、酸価0.01KOH/g、環分析(ナフテン炭素量37.2%CN、パラフィン炭素量55.1%CP、アロマ炭素量7.7%CA)
分散油3:流動点−27.5℃、動粘度(0℃,20℃,40℃,100℃)45.54mm/s,17.18mm/s,8.41mm/s,2.27mm/s、粘度指69、密度(15℃)0.8700g/cm、引火点170℃、酸価0.01KOH/g、環分析(ナフテン炭素量40.3%CN、パラフィン炭素量52.3%CP、アロマ炭素量7.4%CA)
分散油4:流動点−27.1℃、動粘度(40℃,100℃)8.690mm/s,2.276mm/s、粘度指数57、密度(15℃)0.8682g/cm、引火点154℃、環分析(ナフテン炭素量45.4%CN、パラフィン炭素量45.6%CP、アロマ炭素量9.0%CA)
分散油5:流動点−27.5℃、動粘度(40℃,100℃)8.868mm/s,2.326mm/s、粘度指数63、密度(15℃)0.8689g/cm、引火点162℃、環分析(ナフテン炭素量40.2%CN、パラフィン炭素量53.9%CP、アロマ炭素量5.9%CA)
〔測定方法〕
実施例および比較例の各例の分散体における諸物性を、以下の方法に従って測定した。
《流動点》
JIS K 2269の方法に従って測定した。
《動粘度》
B型粘度計を用いて測定した。なお、測定温度は20℃とした。
《密度》
ガラス式比重計を用いて測定した。なお、測定温度は15℃とした。
《環分析》
ASTM D3238−17aに従って環分析を行い、全炭素量に対するナフテン炭素量の重量割合および全炭素量に対するパラフィン炭素量の重量割合を求めた。なお、測定試料がナトリウムを含む分散体であるため、前処理として3000rpm、30分間の条件で遠心分離を行い、遠心分離後の上澄み液について環分析を行った。
《平均粒子径》
SDをスライドガラスに載せて顕微鏡観察を行い、観察画像を得た。得られた観察画像について画像解析を行い、各ナトリウム粒子の投影面積に基づいて各粒子の球相当径を算出した。
〔実施例1〕
ナトリウム(250g)と分散油1(750g)とを110℃まで加熱し、ミキサーによって分散させて実施例1の分散体(ナトリウム含有量25.0質量%)を得た。実施例1の分散体の物性は以下の通りだった。
ナトリウム分散体の流動点 −22.0℃
動粘度(0℃) 70mm/s
動粘度(20℃) 30mm/s
密度(15℃) 0.851g/cm
ナフテン炭素量 29.1%CN
パラフィン炭素量 66.3%CP
アロマ炭素量 4.6%CA
〔実施例2〕
分散油1に替えて分散油2を用いたほかは実施例1と同様の方法にて、実施例2の分散体(ナトリウム含有量25.0質量%)を得た。実施例2の分散体の物性は以下の通りだった。
ナトリウム分散体の流動点 −20.0℃
動粘度(0℃) 130mm/s
動粘度(20℃) 40mm/s
密度(20℃) 0.863g/cm
ナフテン炭素量 39.7%CN
パラフィン炭素量 54.4%CP
アロマ炭素量 6.0%CA
〔実施例3〕
分散油1に替えて分散油3を用いたほかは実施例1と同様の方法にて、実施例3の分散体を得た。実施例3の分散体(ナトリウム含有量25.0質量%)の物性は以下の通りだった。
ナトリウム分散体の流動点 −30.0℃
動粘度(0℃) 70mm/s
動粘度(25℃) 29mm/s
密度(20℃) 0.866g/cm
ナフテン炭素量 41.5%CN
パラフィン炭素量 52.3%CP
アロマ炭素量 6.1%CA
〔実施例4〕
実施例2においてナトリウム含有量を12.5質量%としたほかは実施例2と同様の方法にて、実施例4の分散体(ナトリウム含有量12.5質量%)を得た。実施例4の分散体の物性は以下の通りだった。
ナトリウム分散体の流動点 −17.1℃
ナフテン炭素量 39.7%CN
パラフィン炭素量 54.4%CP
アロマ炭素量 6.0%CA
〔実施例5〕
分散油1に替えて分散油4を用いたほかは実施例4と同様の方法にて、実施例5の分散体(ナトリウム含有量25.0質量%)を得た。実施例5の分散体の物性は以下の通りだった。
ナトリウム分散体の流動点 −29.6℃以下
ナフテン炭素量 45.5%CN
パラフィン炭素量 45.5%CP
アロマ炭素量 9.0%CA
〔比較例〕
分散油1に替えて分散油5を用いたほかは実施例1と同様の方法にて、比較例の分散体(ナトリウム含有量25.0質量%)を得た。比較例の分散体の物性は以下の通りだった。
分散油5の流動点 −27.5℃
ナトリウム分散体の流動点 −35℃以下
密度(20℃) 0.866g/cm
ナフテン炭素量 41.4%CN
パラフィン炭素量 52.5%CP
アロマ炭素量 6.0%CA
〔定数aの決定例〕
分散油2について、ナトリウムを分散させていない状態における流動点が−15.0℃であり、12.5質量%のナトリウムが分散している試料(実施例4)の流動点が−17.1℃であり、25.0質量%のナトリウムが分散している試料(実施例2)の流動点が−20.0℃であった。これらの三つの試料に係る流動点の測定結果に基づいて、ナトリウム含有量d(質量%)と流動点Td(℃)とをプロットすると、dとTdとの関係について以下の近似式(4)が得られた。
Td=−15.0−0.19d 式(4)
式(4)より、分散油2についてa=−0.19と決定された。
〔短期保管試験〕
実施例1〜5および比較例の各分散体を、ガラスバイアルに封入して−25℃および−35℃で1時間保管した。このとき、保管中の各分散体の外観を観察した(観察1)。その後、各分散体を室温に戻し、再び各分散体の外観を観察した(観察2)。
《観察1》
−25℃での保管を開始した1時間後に各分散体の外観を観察すると、実施例1および2、4の各分散体は凝固していた。一方、実施例3および5と比較例の各分散体は液状だった。−35℃での保管を開始した後1時間後に各分散体の外観を観察すると、実施例1〜5の各分散体は凝固していた。一方、比較例の分散体は、液状だった。
《観察2》
各分散体を室温に戻した後は、すべての分散体が液状だった。このとき、実施例1〜5および比較例の各分散体の外観はいずれも均一であった。
〔長期保管試験〕
実施例1〜3および比較例の各分散体を、ガラスバイアルに封入して−20℃で3か月間保管した。その後、各分散体を室温に戻し、各分散体の外観を観察した。
各分散体を室温に戻した後は、すべての分散体が液状だった。実施例1〜3の各分散体の外観は、いずれも均一であった。一方、比較例の分散体では、ナトリウムの微粒子が沈降していた。比較例の分散体は、ガラスバイアルを手で振とうすると、均一な外観になった。
《まとめ》
以上のように、実施例1〜5の各分散体は、−35℃で保管すると凝固し、これを室温に戻すと均一な分散体に戻った。一方、比較例の分散体は、−35℃で保管しても凝固しなかった。実施例1〜5の各分散体では、保管温度において凝固したため、ナトリウム粒子が分散油中を移動せず経時による沈降が生じなかったと考えられる。
また、実施例1〜3の各分散体は、低温で長期間(3か月間)保管した後でも、室温に戻すだけの簡単な操作により、均一な分散体に戻った。一方、比較例の分散体は、長期間の低温保管の後に室温に戻すと沈降が見られ、再び均一な分散体として使用するためには振とう操作を要した。このように、実施例1〜3の分散体は、低温保管後に、振とうなどの機械的操作を要することなく、室温に戻すだけの簡単な操作により使用可能な状態にできることから、長期間品質を保持できるだけでなく、取り扱いも容易である。
本発明は、たとえば医農薬や電子材料などの機能性材料の有機合成などの各種技術分野に利用することができる。

Claims (8)

  1. 分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、JIS K 2269の方法に従って測定した流動点が−30℃以上−10℃以下であるナトリウム分散体。
  2. 分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、
    JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散体の流動点Td(℃)、
    JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散溶媒の流動点Ts(℃)、
    前記分散溶媒の種類により決定される定数a(ただし、0.05≦a≦0.5)、および、
    前記ナトリウムの含有量d(質量%)が、下記式(1)および式(2)を満たすナトリウム分散体。
    Td=Ts−a・d 式(1)
    −35≦Td≦−10 式(2)
  3. 20℃においてJIS K 2283の方法に従って測定した動粘度が10〜50mm/sである請求項1または2に記載のナトリウム分散体。
  4. ガラス式比重計を用いて測定した密度が0.85〜1.0g/cmである請求項1〜3のいずれか一項に記載のナトリウム分散体。
  5. 前記分散体を遠心分離した上澄み液に係るASTM D3238−17aに従った環分析において、
    全炭素量に対するナフテン炭素量の重量割合が20〜50%であり、
    全炭素量に対するパラフィン炭素量の重量割合が40%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のナトリウム分散体。
  6. 分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、JIS K 2269の方法に従って測定した流動点が−30℃以上−10℃以下であるナトリウム分散体を容器に入れ、前記容器をリーファーコンテナまたは冷凍倉庫に入れて保管するナトリウム分散体の保管方法。
  7. 分散溶媒中にナトリウムが分散した分散体であって、
    JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散体の流動点Td(℃)、
    JIS K 2269の方法に従って測定した前記分散溶媒の流動点Ts(℃)、
    前記分散溶媒の種類により決定される定数a(ただし、0.05≦a≦0.5)、および、
    前記ナトリウムの含有量d(質量%)が、下記式(1)および式(3)を満たすナトリウム分散体を容器に入れ、前記容器を、設定温度Tc(℃)のリーファーコンテナまたは冷凍倉庫に入れて保管するナトリウム分散体の保管方法。
    Td=Ts−a・d 式(1)
    Tc≦Td 式(3)
  8. 前記容器がシリンジである請求項6または7に記載のナトリウム分散体の保管方法。
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