JP6829830B2 - Fe−Ni基合金及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、(γ’+γ’’)相を強化相とする析出硬化型Fe−Ni基合金及びその製造方法であって、特に、室温以下の低温での耐衝撃性に優れた析出硬化型Fe−Ni基合金及びその製造方法に関する。
Ni母相合金中に金属間化合物を微細に分散析出させた析出硬化型のFe−Ni基やNi基の耐熱合金が自動車のエンジンバルブや熱間加工用金型等の高温強度の要求される耐熱部品に用いられている。ここでは、NiとAlやTiなどとの金属間化合物であるγ’相をNi母相に整合するように微細に分散析出させることで高温強度の向上を得ている。また、Nbを含む耐熱合金にあっては、NiとNbとの金属間化合物であるγ’’相を分散析出させ得るが、これはNi母相に対して非整合析出するためこれによって生ずる界面ひずみによって更なる高温強度の向上が期待できる。
例えば、特許文献1には、(γ’+γ’’)相を強化相とする析出硬化型Ni基耐熱合金が開示されている。かかるNi基耐熱合金は、質量%で、14〜25%のCr、0.1〜20%のFe、0.5〜6%のNb、0.2〜4%のTi、0.2〜2%のAlとするとともに、Cを0.03%以下、Ti+Nbを2.5〜8%として、残部Niの合金成分組成を有するとしている。Ti+Nbを2.5〜8%とすることでCを0.03%以下まで抑制しても高温強度を損ねず、一方で、金属間化合物の分散析出のための時効処理によって粒界に沿って析出する1次炭化物を抑制できるので、工具摩耗量を抑え被削性を改善できると述べている。
ところで、Fe−Ni基合金及びNi基合金は、一般的に、耐食性に優れることから、腐食環境下での用途にも利用される。そして、上記したような(γ’+γ’’)相を強化相とするNbを合金成分組成に含む析出硬化型Ni基耐熱合金等についても高温耐食性を要求される部材に使用され得る。
例えば、特許文献2では、発電所や船舶などの主機関として稼働しているディーゼルエンジンにおいて、エンジン作動中の腐食性高温燃焼ガスに曝されるバルブに用いられ得る析出硬化型Fe−Ni基耐熱合金を開示している。かかる合金は、特許文献1に開示の合金同様、Niとの間で金属間化合物を形成し高温強度の向上を与えるAl、Ti、Nbを含んでいる。一方、Cr、Nb、Ta、Tiなどと微細な炭化物を形成して高温強度の向上を与え得るCについても合金成分の必須元素としている。
特開2009−167499号公報 特開平9−53138号公報
析出硬化型Fe−Ni基合金の腐食環境下での用途のうち、石油掘削装置等の工具への適用も期待されている。かかる用途では、少なくとも室温以下の低温環境における強度特性、特に、耐衝撃性を要求される。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、少なくとも室温以下の低温環境における強度特性、特に、高い衝撃値を得られるFe−Ni基合金及びその製造方法を提供することにある。
所定の成分組成を有する(γ’+γ’’)相を強化相とする析出硬化型Fe−Ni基耐熱合金では、準安定相であるγ’’相は高温において安定相であるδ相に相変態し、これはNi母相に対して非整合であるため、高温環境下での結晶粒径の成長を阻害するように働き得る。一方で、このδ相が残存すると少なくとも室温以下の低温靱性を低下させてしまうことがわかった。そこで、結晶粒径の成長を犠牲にδ相の残存を減じることを考慮し、低温靱性に対する結晶粒径の影響とδ相の残存の影響とを鋭意研究の結果、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明による室温以下の耐低温衝撃性に優れた析出硬化型Fe−Ni基合金の製造方法は、質量%で、50〜60%のNi、14〜25%のCr、0.1〜15%のMo及び0.05〜7.5%のWのうちの1種又は2種、0.5〜6%のNb、0.2〜4%のTi、2.5〜8%のTi+Nb、0.2〜2%のAlを必須元素として含み、残部をFe及び不可避的不純物とした成分組成を有し、室温以下の耐低温衝撃性に優れた(γ’+γ’’)析出硬化型Fe−Ni基合金の製造方法であって、前記不可避的不純物としてのCの含有量を質量%で0.020%以下に抑えた前記成分組成の鋳造塊を1020℃以上1100℃未満の温度範囲で熱間鍛造し空冷する工程と、1000℃以上1150℃未満の温度に加熱保持し水冷する固溶化処理工程と、を含むことを特徴とする。
かかる発明によれば、炭素Cの含有量を質量%で0.020%以下に抑えて高温でのδ相の形成を抑制した鋳造塊に対して、更に、結晶粒径の成長を促進するために従来、あまり好ましいとはされていなかった高い温度範囲で熱間鍛造及び固溶化処理を行うことで、結晶粒径の粗大化を犠牲にしつつも、少なくとも室温以下の低温環境における衝撃値の向上を室温での絞りなどを低下させない中で得られるのである。
上記した発明において、前記必須元素として、質量%で、0.1〜15%のCoを更に含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、室温での絞りなどの機械特性を低下させることなく、少なくとも室温以下の低温環境における衝撃値の向上を得られるのである。
上記した発明において、HRC32〜40の硬さとなるように、前記固溶化処理工程後の合金塊を700℃以上800℃未満の温度に加熱保持し空冷する時効処理工程と、を含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、室温での絞りなどの機械特性を低下させることなく、少なくとも室温以下の低温環境における衝撃値の向上を得るのである。
また、本発明による室温以下の耐低温衝撃性に優れた析出硬化型Fe−Ni合金は、質量%で、50〜60%のNi、14〜25%のCr、0.1〜15%のMo及び0.05〜7.5%のWのうちの1種又は2種、0.5〜6%のNb、0.2〜4%のTi、2.5〜8%のTi+Nb、0.2〜2%のAlを必須元素として含み、残部をFe及び不可避的不純物とした成分組成を有し、室温以下の耐低温衝撃性に優れた(γ’+γ’’)析出硬化型Fe−Ni基合金であって、結晶粒度を3.0以下としつつ室温での引張強度が1200MPa以上、−60℃での2mmVノッチ試験片におけるシャルピー吸収エネルギーが60J以上であることを特徴とする。
かかる発明によれば、δ相の形成を抑制し結晶粒径の粗大化を犠牲にしつつも、室温での絞りなどの機械特性を低下させることなく、少なくとも室温以下の低温環境における衝撃値の向上を得られるのである。
上記した発明において、前記必須元素として、質量%で、0.1〜15%のCoを更に含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、室温での絞りなどの機械特性を低下させることなく、少なくとも室温以下の低温環境における衝撃値の向上を得られるのである。
本発明によるFe−Ni基合金の製造方法の工程を示すフロー図である。 本発明の実施例及び従来の製造方法によるFe−Ni基合金の拡大組織の概要図である。 本発明の実施例及び比較例に適用したFe−Ni基合金の合金成分組成を示す表である。 本発明の実施例及び比較例の製造条件の一覧表である。 本発明の実施例及び比較例による引張強度等の機械特性の一覧表である。 実施例(No.1)の研磨断面の顕微鏡観察写真である。 比較例(No.5)の研磨断面の顕微鏡観察写真である。
本発明による1つの実施例としての析出硬化型のFe−Ni基合金及びその製造方法について、図1乃至図3を用いて説明する。
ここで対象とするFe−Ni基合金は、後述するように、母相であるγ(ガンマ)相中に、γ’(ガンマプライム)相及びγ’’(ガンマダブルプライム)相と称される金属間化合物を分散させた析出硬化型合金であって、Al、Ti、Nbの析出物形成元素を含む合金組成を有する合金である。
図1に示すように、本実施例による製造方法は、少なくとも、鋳造塊を形成するための溶製工程S100と、この鋳造塊の健全化等のための熱間鍛造工程S200と、固溶化処理のための熱処理工程(固溶化処理S201)と、金属間化合物の時効析出物を分散させるための熱処理工程(時効処理S300)を含む。
詳細には、溶製工程S100では、得ようとするFe−Ni基合金に含まれる成分比(例えば、図3の成分組成の表の合金1乃至3参照)となるよう調整された原料を準備する(原料準備工程:S101)。続いて、原料を真空溶解炉内で溶融させて、この溶湯を所定の鋳型に鋳造し、鋳造塊を得る(溶融・鋳造工程:S102)。なお、溶融・鋳造工程では、特に、Cの含有量を質量%で0.020%以下に抑えることが必要であって、例えば、原料準備工程S101での炭素量の制御がなされることが好ましく、二次溶解法などを適宜利用することが好ましい。
続いて、鋳造塊を所定の温度雰囲気下で加熱し、プレスにより熱間鍛造して鋳造塊の引け巣を圧壊させるなどのバルク健全化を図るとともに、荒加工前の素材としての所望形状に成形した鍛造塊を得る(熱間鍛造工程:S200)。ここで、熱間鍛造は、1020℃以上1100℃未満の温度範囲で行われ、少なくとも、鍛造仕上げ温度を1020℃以上とすべきである。
その後、鍛造塊を一旦放冷してから、1000℃以上1150℃未満の温度範囲のうちの所定の固溶化温度に加熱・保持した後に水冷もしくはそれ以上の冷却速度で冷却する固溶化処理を行って合金塊を得る(固溶化処理:S201)。なお、水冷後、後述する時効処理工程の前に、合金塊を所定の製品形状に近い形状に機械加工等する工程を追加してもよい。
続いて、HRC32〜40の硬さの合金塊となるよう、固溶化処理後の合金塊を700℃以上800℃未満の温度に加熱保持し空冷する時効処理を行う(時効処理工程:S300)。かかる時効処理では、母相であるγ相中にγ’相やγ’’相の金属間化合物からなる粒子を分散析出させて所定の硬さに調整するが、かかる目標硬さとなるように、加熱温度及び時間を制御する。
なお、上記したように時効処理S300までを実施して製品とされるが、例えば、固溶化処理S201の終了した段階で素材製品として出荷することもできる。この場合、かかる素材は出荷後に別の場所で所望の形状に機械加工されるなどしてから時効処理S300を実施されて製品とされるのである。
次に、上記した析出硬化型Fe−Ni基合金の金属組織と、機械強度特性、特に、高い衝撃値を得られることとの関係について説明する。
例えば、図2(a)に示すように、従来の製造方法によって製造された時効処理後のFe−Ni基合金においては、視野であるV内の結晶粒30の内部あるいは粒界31に、TiやNb等との炭化物40及びCr等との炭化物41に加えて、粒状のδ相42及び針状のδ相43が多数析出している。
一方、図2(b)に示すように、本実施例では、Cの含有量を少なくしつつ上記のような熱間鍛造S200及び固溶化処理S201を比較的高い温度範囲で実施することにより、時効処理S300後において、視野であるV内の結晶粒30がそれぞれ従来のものに比べて大きくなるものの、炭化物40、41や粒状のδ相42の析出が抑制される。特に針状のδ相43をほとんど析出させない。
このように、本実施例では、時効処理S300後において、衝撃破壊の起点となるような炭化物やδ相、特に、針状のδ相の析出を抑制できて、室温で必要とされる機械的特性を得るための結晶粒径を確保しつつ、低温時における高い衝撃値を得られるのである。
[機械試験及び組織観察]
図1、図3乃至図7を用いて、上記した製造方法で製造されたFe−Ni基合金についての室温引張強度及び低温衝撃値についての機械試験を行い、その一部について組織観察を行ったのでこれらの結果を説明する。
まず、図1に示した溶製工程S100において、図3に示す成分組成の鋳造塊をそれぞれ得た。この鋳造塊に図4に示す条件で熱間鍛造S200、固溶化処理S201及び時効処理S300を実施して合金塊を得た後、時効処理後の合金塊から所定の試験片を切り出した。丸棒試験片(ASTM A370に準拠)では室温での静的引張試験、2mmVノッチ試験片では低温(−60℃)でのシャルピー衝撃試験を実施した。その結果を図5に示す。なお、シャルピー衝撃試験の結果は3回行った試験の平均の吸収エネルギーを示した。また、平均結晶粒度も測定し、これは図4に示した。
<実施例1>
実施例1では、質量%での炭素Cの含有量が0.002%である合金1を用いた場合(No.1)及び0.014%である合金2を用いた場合(No.2)において、熱間鍛造の最終温度である仕上げ鍛造温度を1050℃、固溶化処理温度を1040℃、時効処理温度を780℃とした条件で熱履歴を与えて合金塊を作製した。ここでは、それぞれ引張強度が1241及び1248MPa、0.2%耐力が931及び945MPa、伸び値が30及び28%、絞り値が41及び42%となった。また、平均結晶粒度が2.5及び3.0であった。更に、−60℃でのシャルピー吸収エネルギーが平均88及び68Jとなった。
<実施例2>
実施例2では、質量%での炭素Cの含有量が0.002%である合金1を用いた場合において、仕上げ鍛造温度を1050℃、固溶化処理温度を1030℃、時効処理温度を780℃とした条件で熱履歴を与えて(No.3)、合金塊を作製した。ここでは、引張強度が1234MPa、0.2%耐力が951MPa、伸び値が27%、絞り値が41%となった。また、平均結晶粒度が3.0であった。更に、−60℃でのシャルピー吸収エネルギーが平均83Jとなった。
<実施例3>
実施例3では、質量%での炭素Cの含有量が0.004%である合金3を用いた場合において、仕上げ鍛造温度を1060℃、固溶化処理温度を1040℃、時効処理温度を780℃とした条件で熱履歴を与えて(No.4)、合金塊を作製した。ここでは、引張強度が1289MPa、0.2%耐力が952MPa、伸び値が25%、絞り値が37%となった。また、平均結晶粒度が3.0であった。更に、−60℃でのシャルピー吸収エネルギーが平均62Jとなった。
<比較例1>
比較例1では、質量%での炭素Cの含有量が0.025%である合金4を用いた場合(No.5)及び0.024%である合金5を用いた場合(No.6)において、実施例1と同様に、仕上げ鍛造温度を1050℃、固溶化処理温度を1040℃、時効処理温度を780℃とした条件で熱履歴を与えて、合金塊を作製した。ここでは、それぞれ引張強度が1200及び1207MPa、0.2%耐力が910及び883MPa、伸び値が31及び30%、絞り値が48及び47%となった。また、平均結晶粒度がどちらも3.5であった。更に、−60℃でのシャルピー吸収エネルギーがどちらも平均41Jとなった。
<比較例2>
比較例2では、実施例1と同様に、質量%での炭素Cの含有量が0.002%である合金1を用いた場合において、仕上げ鍛造温度を1050℃、固溶化処理温度を980℃、時効処理温度を780℃とした場合(No.7)及び、仕上げ鍛造温度を1000℃、固溶化処理温度を1030℃、時効処理温度を780℃とした場合(No.8)の合金塊を作製した。ここでは、それぞれ引張強度が1227及び1213MPa、0.2%耐力が917及び869MPa、伸び値が29及び31%、絞り値が45及び46%となった。また、平均結晶粒度が5.5及び6.5であった。更に、−60℃でのシャルピー吸収エネルギーが平均42及び43Jとなった。
図6及び図7に示すように、上記した実施例及び比較例の組織について、その研磨断面を顕微鏡で観察したのでその代表的な組織について説明する。例えば、上記した実施例であるNo.1(図6)において、比較的大きな結晶粒径に成長しているのに対し、比較例であるNo.5(図7)では比較的小さな結晶粒径であり、多数の粗大な炭化物等の析出物が観察される。
なお、比較例において、炭素Cの含有量が質量%で0.02%を超える場合(比較例1)や、仕上げ鍛造温度が低い、あるいは固溶化処理温度が低い場合(比較例2)では、低温でのシャルピー吸収エネルギーが41〜43J程度と低くなった。これは、炭素Cの含有量の上限、及び、適切な範囲でない鍛造温度及び固溶化処理温度によって、図2(a)や図7に示したような粗大な炭化物や粒状あるいは針状の粗大なδ相が多数析出したためであり、これらが衝撃破壊の起点となって靭性を低下させたものと考えられる。他方、これらの比較例では、低温でγ’’相から相変態するδ相を鍛造時に多数析出させ又は固溶化処理においても消失させていないから、δ相のピンニングによって結晶粒の成長を抑制しており、結果として、比較的小さい結晶粒を得られているものと考えられる。
以上の実施例及び比較例からわかるように、実施例は比較例に比べて結晶粒を大きくしつつも、比較例と同等程度の室温での引張強度等の機械特性を得られる一方で、比較例よりも低温でより高いシャルピー吸収エネルギーを得ている。つまり、上記した実施例によるFe−Ni基合金の製造方法によれば、結晶粒を大きくしつつも従来の製造方法によるFe−Ni基合金と同等の高い引張強度及び十分な絞り値を確保しつつ、室温以下の低温(ここでは、−60℃で評価)での高いシャルピー吸収エネルギーを有するFe−Ni基合金を製造することができる。これは、例えば、石油掘削装置等の低温下で作動する装置の耐衝撃性を重視される工具等への適用が可能となる。
ところで、上記した実施例を含むFe−Ni基合金とほぼ同等の低温での耐衝撃性を与え得る合金の組成範囲は以下のように定められる。
Niは、合金のマトリクスであるγ相を安定させるとともに、Al、Ti、Nbと結合してγ’相、γ’’相を形成させる重要な元素である。一方、過剰に含有させると合金全体のコスト増を招く。これらを考慮して、Niは、質量%で、50〜60%の範囲内である。
Crは、耐酸化性、耐食性、高温強度を高める上で必要な元素である。一方、過剰に含有させると、合金中のNiの含有量を相対的に低下させてしまい、却って高温強度を低下させてしまう。これらを考慮して、Crは、質量%で、14〜25%の範囲内である。
Nb及びTiは、Niとの金属間化合物であるγ’相を生成して析出し、高温域での変形を抑制することで高温強度を高める元素である。これらを考慮して、質量%で、Nbは0.5〜6%の範囲内、Tiは0.2〜4%の範囲内、Ti+Nbは2.5〜8%の範囲内である。
Alもまた、Niとの金属間化合物を生成して析出し、高温域での変形を抑制することで高温強度を高める元素である。これらを考慮して、Alは、質量%で、0.2〜2%の範囲内である。
Cは、Ti及びNb、とりわけTiと結合して1次炭化物を生成して析出させて、被削性を悪化させる。そのため、Cは可能な限り少量であることが好ましいが、その含有量を著しく低くすると原料のコスト増を招く。これらを考慮して、Cは、質量%で、0.020%以下の範囲内であり、好ましくは0.010%以下の範囲内である。
Mo及びWは、マトリクスに固溶して合金を強化する働きを有する。これらを考慮して、質量%で、Moは0.1〜15%の範囲内で、Wは0.05〜7.5%の範囲内である。
Coは、Moと同様にマトリクスに固溶して合金を強化する働きを有する。併せて、NiとAl、Ti、Nbとの金属間化合物の析出量を高め、その結果、合金の高温強度を高める。これらを考慮して、Coは、質量%で、0.1〜15%の範囲内で含有させてもよい。
以上、本発明の代表的な実施例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
30 結晶粒
31 粒界
42 粒状δ相
43 針状δ相

Claims (4)

  1. 質量%で、50〜60%のNi、14〜25%のCr、0.1〜15%のMo及び0.05〜7.5%のWのうちの1種又は2種、0.5〜6%のNb、0.2〜4%のTi、2.5〜8%のTi+Nb、0.2〜2%のAlを必須元素として含み、残部をFe及び不可避的不純物とした成分組成を有する(γ’+γ’’)析出硬化型Fe−Ni基合金の製造方法であって、
    前記不可避的不純物としてのCの含有量を質量%で0.020%以下に抑えた前記成分組成の鋳造塊を1020℃以上1100℃ 未満の温度範囲で熱間鍛造し空冷する工程と、
    1000℃以上1150℃未満の温度に加熱保持し水冷する固溶化処理工程と、
    HRC32〜40の硬さとなるように、前記固溶化処理工程後の合金塊を700℃以上800℃未満の温度に加熱保持し空冷する時効処理工程と、を含むことを特徴とする析出硬化型Fe−Ni基合金の製造方法。
  2. 前記必須元素として、質量%で、0.1〜15%のCoを更に含むことを特徴とする請求項1記載の析出硬化型Fe−Ni基合金の製造方法
  3. 質量%で、Cの含有量を0.020%以下に抑えるとともに、50〜60%のNi、14〜25%のCr、0.1〜15%のMo及び0.05〜7.5%のWのうちの1種又は2種、0.5〜6%のNb、0.2〜4%のTi、2.5〜8%のTi+Nb、0.2〜2%のAlを必須元素として含み、残部をFe及び不可避的不純物とした成分組成を有し、室温以下の耐低温衝撃性に優れた(γ’+γ’’)析出硬化型Fe−Ni基合金であって、
    結晶粒度を3.0以下としつつ室温での引張強度が1200MPa以上、−60℃での2mmVノッチ試験片におけるシャルピー吸収エネルギーが60J以上であることを特徴とする析出硬化型Fe−Ni基合金。
  4. 前記必須元素として、質量%で、0.1〜15%のCoを更に含むことを特徴とする請求項記載の析出硬化型Fe−Ni基合金。
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