JP6829800B2 - 受信機の適地判定方法、及び受信機の適地判定システム - Google Patents
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Description
(1)樹木の枝葉など上空を遮る障害物がある場所でもGNSSによる観測を可能にすることから、林間地にある斜面に対してもその変位を観測することかできる。
(2)従来の地中変位観測に比べ、観測全体にかかるコストを低減することができるうえ、長期間にわたって観測することができる。
(3)林間地に限らず、看板等が障害物となるような市街地においても容易に利用することができるなど、様々な環境下で利用することができる極めて汎用的な技術である。
本願発明の実施形態の例を説明するにあたって、はじめにここで用いる用語の定義を示しておく。
既述したとおり、地表変位観測の一つとして挙げられる定点観測は、斜面上に設置した多数の観測点の座標を求め、その経時的な変位によって斜面の動きを監視する手法である。そして観測点の座標を求めるには、トータルステーションを用いた測位のほか、GNSSによる測位が行われる。図1は、GNSS測位による定点観測を行うシステムを示すブロック図であり、当該システムが受信手段11とデータ記憶手段12を含む受信機10と、解析手段91と、解析結果記憶手段92、表示手段93を含む監視手段90によって構成されることを示している。この図を参照しながらのGNSS測位による定点観測について説明する。受信機10が観測点に設置されると、受信手段11が測位衛星Sからの電波を受信し、観測データとしてデータ記憶手段12に記憶する。そして解析手段91が、データ記憶手段12からオフライン(あるいはオンライン)で受け取った観測データを解析することで、観測点の座標を求める。ここで求められた座標は解析結果記憶手段92に記憶され、過去の解析結果も含めて表示手段93に表示することで経時的な変位を監視する。
本願発明では、候補設置地点の上空の開放の程度を確認するため画像を取得する。この場合、図2に示すように受信機10を中心とする球面のうち水平面よりも上半分(つまり、半球面)の範囲を取得することが望ましい。そのため、ここで用いる画像取得手段20としては画角の広い(広角に撮像できる)ものを用いるのがよく、例えば魚眼レンズのカメラや全方位カメラを使用するとよい。ここでは便宜上、候補設置地点から画像取得手段20で画像を取得しようとする範囲(例えば、図2の破線で示す半球面)のことを「上空範囲」と、この上空範囲を魚眼レンズカメラ等で取得した画像のことを「上空画像」ということとする。なお、上空範囲は形状(例えば半球面)のみで設定されることから、場所(候補設置地点など)に依存することなく同様に設定されるが、一方の上空画像は当然ながら場所(候補設置地点など)ごとにそれぞれ異なる画像となる。
上空範囲に枝葉等の障害物がある場合、上空画像にはその障害物も含まれる。この障害物がある範囲は測位衛星Sからの電波の受信が難しく、障害物がない(つまり、上空が開けた)範囲は測位衛星Sからの電波を比較的受信しやすいと考えられる。そこで、上空画像を障害物の有無で分けることとし、障害物がある範囲のことを「受信困難領域」と、障害物がない範囲のことを「受信可能領域」ということとする。
候補設置地点の上空範囲には、様々な測位衛星Sがそれぞれ一定の軌道に沿って通過していき、受信機10はその上空範囲にある測位衛星Sからの電波を受信する。すなわち、上空範囲に測位衛星Sが滞在する延べ時間が長いほど、その地点は電波を受信しやすいわけである。そこで本願発明は、「出現する測位衛星Sの度合い」に着目することとし、これを表す指標として「衛星出現率」を求めることとした。なお、同緯度であれば上空範囲に出現する測位衛星Sの軌道は略同じとなることが知られており、したがって候補設置地点を選定すると必然的に測位衛星Sの軌道も特定される。
既述したとおり候補設置地点の上空範囲には、様々な測位衛星Sが一定の軌道で通過していくため、上空範囲の中でも測位衛星Sが現れる頻度は相違する。ここでは、この頻度を表したものを「衛星密度分布」とした。この衛星密度分布は、例えば次のように表すことができる。
通常、観測点の座標を求めるにあたっては、測位衛星Sからの受信した電波(観測データ)をある程度まとめて(例えば1時間分)解析を行う。このとき、得られた観測データによっては解析できないこともあり、あるいは解析できたとしても信頼性が低い解(フロート解)しか得られないこともある。解析できない、あるいはフロート解しか得られない解析を解析失敗とし、それ以外を解析成功とすれば、一定期間(例えば2〜3週間)内で行われる解析回数のうち、解析成功した回数が占める割合を「解析率」として求めることができる。
次に、本願発明の受信機の適地判定方法について図6を参照しながら説明する。図6は、本願発明の受信機の適地判定方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する工程を示し、左列にはその工程に必要な入力情報を、右列にはその工程から生まれる出力情報を示している。なお、本願発明の受信機の適地判定方法は、上空範囲を遮る障害物がある場所に受信機を設置するケースであれば、市街地に設置するケースを含めあらゆる状況で実施することができるが、ここでは便宜上、林間地における斜面(例えば地すべりや崩壊のおそれがある斜面)の定点観測を行うために受信機を設置するケースで説明する。
はじめに、対象斜面を含む地形図等を参考にしながら、複数の候補設置地点を選定する(Step101)。候補設置地点を選定できると、当該地における衛星軌道を用いて衛星密度分布を作成するとともに(Step102)、これに着色を施した衛星密度分布図を紙図面やディスプレイ等に出力しておくとよい。
候補設置地点を選定すると、現地(対象斜面)の候補設置地点まで移動する。実際に候補設置地点を確認したとき、その上空範囲の大部分が障害物で遮られている(つまり、受信困難領域となっている)と、その候補設置地点が確定設置地点となる可能性は低いと予想できる。したがってこの場合は、候補設置地点の位置を変更する(調整する)とよい(Step103)。衛星密度分布図を作成している場合は、これを利用して候補設置地点を調整することができる。具体的には、候補設置地点の上空範囲を目視で確認しながら衛星密度分布図と照らし合わせ、衛星密度分布図のうち総衛星数が多い領域の大部分が受信困難領域となっていると判断されると、その位置を調整するわけである。
必要に応じて候補設置地点の位置を調整した後、図2に示すように、魚眼レンズカメラや全方位カメラといった画像取得手段20で上空画像を取得する(Step104)。ここで取得した上空画像は、コンピュータで読み取り可能なデータ形式で記憶される。候補設置地点の調整(Step103)と上空画像の取得(Step104)は現地で行われ、選定した全ての候補設置地点に対して繰り返し実施される。
選定した候補設置地点の上空画像が取得できると、コンピュータを用いて受信可能領域を設定する(Step105)。受信可能領域の設定にあたっては、オペレータ操作により上空画像から受信可能領域を切り出して設定することもできるし、コンピュータを利用した画像認識により自動抽出して設定することもできることは既述したとおりである。
選定した候補設置地点の受信可能領域が設定できると、その候補設置地点の上空範囲と受信可能領域、そして測位衛星Sの軌道に基づいて、当該候補設置地点における衛星出現率を算出する(Step106)。衛星出現率の算出は、コンピュータを利用した処理とすることもできる。この場合、入力情報である上空範囲と、受信可能領域、測位衛星Sの軌道は、コンピュータで読み取り可能なデータ形式とされ、さらにそれぞれ位置と縮尺が合わせられる。
選定した候補設置地点の衛星出現率を算出すると、その候補設置地点が受信機10の設置位置として適切か否か判定する(Step107)。具体的には、あらかじめ衛星出現率の閾値を設定しておき、算出された衛星出現率がこの閾値を超えるときは受信機10の設置位置として適切(適地である)と判定し、算出された衛星出現率が閾値を下回るときは受信機10の設置位置としては適切でないと判定する。そして、適地であると判定された候補設置地点は、「確定設置地点」として記録される。なおここで行う候補設置地点の適否判定も、他の工程と同様コンピュータを利用した処理とすることができる。
続いて、本願発明の受信機の適地判定システムについて図8を参照しながら説明する。なお、本願発明の受信機の適地判定システムは、本願発明の受信機の適地判定方法を行う際に利用することができるものであり、したがって「2.受信機の適地判定方法」で説明した内容と重複する説明はここでは避け、受信機の適地判定システムに特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.受信機の適地判定方法」で説明したものと同様である。もちろんあらかじめ定義した用語は、ここでの説明でも、「2.受信機の適地判定方法」でも適用される。
画像取得手段20は、上空画像を取得するものであり、ここまで説明したとおり画角の広いものを用いるのがよく、例えば魚眼レンズのカメラや全方位カメラを使用するとよい。画像取得手段20で取得された上空画像は、コンピュータで読み取り可能なデータ形式で上空画像記憶手段21に記憶される。
受信可能領域設定手段30は、上空画像から受信可能領域を設定する手段であり、ここまで説明したとおりオペレータ操作により上空画像から受信可能領域を切り出して設定する仕組みとすることもできるし、画像認識により自動抽出して設定する仕組みとすることもできる。
衛星出現率算出手段50は、受信可能領域設定手段30で設定された受信可能領域を読み出すとともに、上空範囲を入力情報とし、さらに衛星軌道記憶手段41から測位衛星Sの軌道情報を読み出し、上空範囲と、読み出した受信可能領域と測位衛星Sの軌道に基づいて衛星出現率を算出する手段である。また、衛星密度分布作成手段40は、候補設置地点を入力情報とし、これに応じて衛星軌道記憶手段41から読み出した測位衛星Sの軌道情報に基づいて、衛星密度分布や衛星密度分布図を作成する手段である。
推定式算出手段60は、図5に示すグラフ上にプロットされた代表点の座標(衛星出現率,解析率)配置から解析率推定式を求める手段であり、ここで求められたら解析率推定式は推定式記憶手段61に記憶される。また解析率推定手段70は、衛星出現率算出手段50で算出された衛星出現率を読み出すとともに、推定式記憶手段61から解析率推定式を読み出し、読み出した衛星出現率と解析率推定式に基づいて解析率を算出する手段である。
適地判定手段80は、解析率推定手段70で算出された解析率を読み出すとともに、解析率閾値記憶手段81から解析率の閾値を読み出し、読み出した解析率と閾値に基づいて候補設置地点の適地判定を行う手段である。具体的には、読み出した解析率が閾値を超えるときは受信機10の設置位置として適切(適地である)と判定し、解析率が閾値を下回るときは受信機10の設置位置としては適切でないと判定する。あるいは、衛星出現率算出手段50で算出された衛星出現率と、あらかじめ定めた衛星出現率の閾値を照らし合わせ、衛星出現率がこの閾値を超えるときは受信機10の設置位置として適切と判定し、衛星出現率が閾値を下回るときは受信機10の設置位置としては適切でないと判定してもよい。適地判定手段80が適地であると判定した候補設置地点は、「確定設置地点」として確定設置地点記憶手段82に記憶される。
11 (受信機の)受信手段
12 (受信機の)データ記憶手段
20 画像取得手段
30 受信可能領域設定手段
40 衛星密度分布作成手段
41 衛星軌道記憶手段
50 衛星出現率算出手
60 推定式算出手段
61 推定式記憶手段
70 解析率推定手段
80 適地判定手段
81 解析率閾値記憶手段
82 確定設置地点記憶手段
S 衛星
Claims (5)
- GNSSによる測位を行うに当たって、衛星からの電波を受信する受信機の設置位置としての適否を判定する方法であって、
受信機の候補設置地点で、上空に向けて上空画像を取得する画像取得工程と、
前記上空画像のうち、障害物に遮られない範囲を受信可能領域として設定する受信可能領域設定工程と、
一定期間に前記上空画像内に出現する衛星の度合いと、該一定期間に前記受信可能領域内に出現する衛星の度合いと、に基づいて衛星出現率を算出する衛星出現率算出工程と、
前記衛星出現率に基づいて、前記候補設置地点における受信機設置の適否を判定する適地判定工程と、
を備えたことを特徴とする受信機の適地判定方法。 - 前記候補設置地点における上空範囲を分割して複数の分割領域を設定し、該分割領域それぞれで前記一定期間に出現する衛星の度合いを示す衛星密度分布を作成する衛星密度分布作成工程を、さらに備え、
前記画像取得工程では、前記衛星密度分布と上空の状況を確認したうえで、前記上空画像を取得する、
ことを特徴とする請求項1記載の受信機の適地判定方法。 - 代表地点における前記衛星出現率と、該代表地点で所定期間内に測位解析できた割合である解析率と、の関係を示す解析率推定式を求める推定式算出工程を、さらに備え、
前記適地判定工程では、前記衛星出現率算出工程で得られた前記衛星出現率と前記解析率推定式に基づいて、前記候補設置地点における受信設置の適否を判定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の受信機の適地判定方法。 - 前記推定式算出工程では、電波強度の下限閾値を設定するとともに、該下限閾値を下回る電波強度を持つ観測データを除いたうえで、測位解析を行う、
ことを特徴とする請求項3記載の受信機の適地判定方法。 - GNSSによる測位を行うに当たって、衛星からの電波を受信する受信機の設置位置としての適否を判定するシステムであって、
受信機の候補設置地点で、上空に向けて上空画像を取得する画像取得手段と、
前記上空画像のうち、障害物に遮られない範囲を受信可能領域として設定する受信可能領域設定手段と、
一定期間に前記上空画像内に出現する衛星の度合いと、該一定期間に前記受信可能領域内に出現する衛星の度合いと、に基づいて衛星出現率を算出する衛星出現率算出手段と、
前記衛星出現率に基づいて、前記候補設置地点における受信機設置の適否を判定する適地判定手段と、
を備えたことを特徴とする受信機の適地判定システム。
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