JP6829435B2 - 哺乳動物核移植胚の発生率向上法 - Google Patents

哺乳動物核移植胚の発生率向上法 Download PDF

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Description

本発明は、哺乳動物の核移植胚を、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC;Histone deacetylase)阻害剤と、脱イオン化血清アルブミン(deionized-serum albumin;以下、「d−SA」ということがある)とを含む培養液中で培養する工程(a)と、当該工程(a)で培養した哺乳動物の核移植胚を、ビタミンCとd−SAとを含む培養液中に移し、培養する工程(b)とを備えた、哺乳動物核移植胚の作出効率の改善方法や、哺乳動物核移植胚の作出方法(以下、これらを総称して「本件改善/作出方法」ということがある)に関する。
哺乳類における体細胞クローン技術は、20年近く前に開発された。体細胞クローン技術とは、体細胞核を受精前の卵子に移植し(核移植と呼ばれる)、作製した再構築核移植胚の発生を活性化刺激等により誘導し、最終的に再構築核移植胚を仮母に移植することによりドナー細胞と同じゲノムを有するクローン動物を作出するものである。世界で初めての体細胞クローン動物の作出が、ヒツジで報告されて以来(非特許文献1)、ウシ(非特許文献2)、マウス(非特許文献3)、ブタ(非特許文献4〜6、特許文献1〜3)等の哺乳動物において報告されている。
核移植発明当時の技術は、例えば、マウスにおいて100個の核移植胚を仮母に移植した場合、1匹のクローン動物が作出される程度の効率(1%)であった。これは、体細胞核が卵子内で初期化される際に、様々な不具合が生じ、不完全な初期化しか誘導されないことに起因すると考えられている。卵子内での体細胞核の初期化不具合を改善し、クローン動物の作出効率を上昇する試みは世界中で行われている。例えば、HDAC阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)を、核移植直後から培養液中に添加すると、クローン個体の作出効率が5%程度まで上昇することが報告されている(非特許文献7、8)。また、ビタミンCの培養液中への添加によっても、マウスクローン個体の作出効率が、最大4%程度まで上昇することも報告されている(非特許文献9)。しかしながら、かかる文献には、HDAC阻害剤及びビタミンCを、同時に核移植胚の培養液中に添加しても、顕著な相加又は相乗効果は確認されないことも報告されている。一方、遺伝子改変技術(非特許文献10)や、テトラプロイドレスキュー法(非特許文献11)は、クローン個体の作出効率が10%を超える比較的効率の高い方法ではあるものの、ES細胞が樹立されていないマウス以外の動物種に適用することは困難であると考えられている。また、特定のmRNAやsiRNAを核移植卵子に注入すると、クローン個体の作出効率を10%以上に上昇させたことが報告されている(非特許文献12、13)。しかし、卵子への核酸の注入が認可されていないヒト核移植卵子を用いた場合を考慮すると、培養液の組成を改良することによって核移植胚の発生効率を改善できる方法の開発が望まれている。
特開2011−229456号公報 特開2002−125516号公報 特開2002−45085号公報
Wilmut et al., Nature. 1997, 385: 810-813 Kato et al., Science. 1998, 282: 2095-2098 Wakayama et al., Nature. 1998, 394: 369-374 Onishi et al., Science. 2000, 289: 1188-1190 Polejaeva et al., Nature. 2000, 407: 86-90 Betthauser et al., Nature Biotechnol. 2000, 18: 1055-1059 Kishigami et al., BBRC. 2006, 340: 183-189 Rybouchkin et al., Biol. Repod. 2006, 74: 1083-1089 Mallol et al., Plos One. 2015, 10:e0120033 Inoue et al., Science. 2010, 330: 496-499 Lin et al., Cell Stem Cell. 2011, 8:371-375 Matoba et al., Cell. 2014, 159: 884-895 Matoba et al., PNAS. 2011, 108: 20621-20626
本発明の課題は、哺乳動物核移植胚を、比較的簡便に、かつ効率よく作出する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けている。その過程において、哺乳動物の核移植胚を、HDAC阻害剤及びd−SAを含む培養液中で培養し、その後、哺乳動物の核移植胚を、ビタミンC及びd−SAを含む培養液中に移し、培養すると、哺乳動物核移植胚の作出効率が大幅に改善(上昇)することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする哺乳動物核移植胚の作出効率の改善方法。
(a)哺乳動物の核移植胚を、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中で培養する工程;
(b)前記工程(a)で培養した哺乳動物の核移植胚を、ビタミンCと、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中に移し、培養する工程;
〔2〕前記工程(b)で培養した哺乳動物の核移植胚を、脱イオン化血清アルブミンを含み、かつヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、ビタミンCとを含まない培養液中に移し、胚ゲノムが活性化するまで培養する工程(c)をさらに備えたことを特徴とする上記〔1〕に記載の改善方法。
〔3〕哺乳動物がマウスの場合、胚ゲノムの活性化時期が2細胞期胚であり、哺乳動物がブタの場合、胚ゲノムの活性化時期が4細胞期胚であることを特徴とする上記〔2〕に記載の改善方法。
〔4〕ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、トリコスタチンA(TSA)であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の改善方法。
〔5〕脱イオン化血清アルブミンが、脱イオン化ウシ血清アルブミンであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の改善方法。
〔6〕以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする哺乳動物核移植胚の作出方法。
(a)哺乳動物の核移植胚を、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中で培養する工程;
(b)前記工程(a)で培養した哺乳動物の核移植胚を、ビタミンCと、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中に移し、培養する工程;
〔7〕前記工程(b)で培養した哺乳動物の核移植胚を、脱イオン化血清アルブミンを含み、かつヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、ビタミンCとを含まない培養液中に移し、胚ゲノムが活性化するまで培養する工程(c)をさらに備えたことを特徴とする上記〔6〕に記載の作出方法。
〔8〕哺乳動物がマウスの場合、胚ゲノムの活性化時期が2細胞期胚であり、哺乳動物がブタの場合、胚ゲノムの活性化時期が4細胞期胚であることを特徴とする上記〔7〕に記載の作出方法。
〔9〕ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、トリコスタチンA(TSA)であることを特徴とする上記〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の作出方法。
〔10〕脱イオン化血清アルブミンが、脱イオン化ウシ血清アルブミンであることを特徴とする上記〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の作出方法。
本発明の実施の他の形態として、HDAC阻害剤と、ビタミンCと、脱イオン化血清アルブミンとの組合せを含む、哺乳動物核移植胚の作出効率の改善剤であって、HDAC阻害剤と、脱イオン化血清アルブミンとを組み合わせて使用し、その後、ビタミンCと、脱イオン化血清アルブミンとを組み合わせて使用することを特徴とする前記改善剤(以下、「本件改善剤」ということがある)を挙げることができる。
本件改善/作出方法を用いると、哺乳動物核移植胚を比較的簡便かつ効率よく作出することができる。本件改善/作出方法は、哺乳動物の核移植胚を、HDAC阻害剤及びd−SAによる処理と、ビタミンC及びd−SAによる処理を順次行う点に特徴がある。本実施例では、マウスのみならず、ブタにおいても、核移植胚の作出効率が改善することが具体的に示されている。一方、HDAC阻害剤は、ヒト(文献「Fan et al., 2011 Stem Cells Dev. 20: 1951-1959」)、マウス(文献「Kishigami et al., BBRC. 2006, 340: 183-189」、「Rybouchkin et al., Biol. Repod. 2006, 74: 1083-1089」)、ブタ(文献「Li et al., Theriogenology. 2008, 70: 800-808」)、ウシ(文献「Iager et al., Cloning Stem Cells. 2008, 10: 371-379」)、ウサギ(文献「Shi et al., Dev. Dyn. 2008, 237: 640-648」)、ヒツジ(文献「Wen et al., Theriogenology. 2014, 81: 332-339」)等の哺乳動物においても、核移植胚の作出効率を上昇させる効果を有することが報告されている。したがって、かかる従来技術を考慮すると、本発明の効果は、マウスやブタ以外の他の哺乳動物においても、得られることが十分予想される。このため、本発明は、クローン技術を利用した分野、例えば、品質の高い家畜(例えば、霜降り形質を示すウシ)を生産する畜産業、基礎研究及び医療研究、ペット産業、並びにヒト核移植胚を用いた再生医療の分野に資するものである。
図1Aは、4種類の群(「無処理群」、「HDAC阻害剤処理群」、「ビタミンC処理群」、及び「HDAC阻害剤及びビタミンC処理群」)におけるクローンマウスの産仔率を解析した結果を示す図である。図1Bは、「HDAC阻害剤及びビタミンC処理群」において、1回の妊娠で産まれたマウスクローンの胎仔の写真である。 図2Aは、2種類の群(「d−BSA処理群」、及び「BSA処理群」)におけるマウス核移植胚の胚盤胞期胚までの発生率を解析した結果を示す図である。図2Bは、かかる2種類の群における胚盤胞期胚の位相差顕微鏡画像である。
本件改善/作出方法としては、哺乳動物核移植胚の作出効率改善の有効成分2種(HDAC阻害剤及び脱イオン化血清アルブミン)を含む培養液(以下、「本件培養液a」ということがある)中で、哺乳動物の核移植胚を培養する工程(a);及び哺乳動物核移植胚の作出効率改善の有効成分2種(ビタミンC及び脱イオン化血清アルブミン)を含む培養液(以下、「本件培養液b」ということがある)中に、前記工程(a)で培養した哺乳動物の核移植胚を移し、培養する工程(b);を備えた方法であれば特に制限されず、ここで哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ヒト、サル、ヤギ、ウサギ、ネコ、ヒツジ等を挙げることができ、ブタやマウスが好ましい。
本明細書において、「脱イオン化血清アルブミン」とは、脱イオン状態の血清アルブミン、すなわち、亜鉛イオン(Zn2+)、銅イオン(Cu2+)等の重金属イオンをほとんど又は全く含まない状態の血清アルブミンを意味し、脱イオン化血清アルブミンには、重金属イオンを除去するために、脱イオン化処理が施された、哺乳動物(例えば、ウシ、ヒト、ブタ)の血液由来の血清アルブミンの他、重金属イオンをほとんど又は全く含まない哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ブタ)由来の組換え体血清アルブミン(血清アルブミンの組換えタンパク質)も含まれる。脱イオン化血清アルブミンは、公知の方法、例えば、脱イオン化未処理の血清アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン[Sigma-Aldrich社製]、ヒト血清アルブミン[ASTEC社製])を、文献「Barker JE, Nienhuis AW. Methods Cell Sci. 1975, 1: 111-112.」や、文献「Isaji et al., J. Reprod. Dev. 2015, 61: 503-510.」に記載の方法に従って、イオン交換樹脂を用いて脱イオン化処理することにより調製することができる。また、イネ(Oryza sativa)の胚乳中で産生された組換え体ヒト血清アルブミン(IBUKI、BioVerde社製)や、ピキア酵母より産生された組換え体ヒト血清アルブミン(メドウェイ注25%、田辺三菱製薬社製)等の市販品を用いることもできる。脱イオン化血清アルブミンとしては、脱イオン化ウシ血清アルブミンが好ましい。
上記HDAC阻害剤としては、ヒストン脱アセチル化酵素の機能又は作用を阻害し、核移植胚の細胞核中のヒストンのアセチル化レベルを上昇できるものであれば特に制限されず、例えば、トリコスタチンA(TSA)、スクリプタイド(Scriptaid)、SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)、オキサムフラチン(Oxamflatin)、Entinostat(MS−275)、ピロキシアミド(pyroxamide)等を挙げることができ、TSAが好ましい。
上記工程(b)の培養は、哺乳動物の核移植胚の胚ゲノムが活性化するまで行ってもよいが、胚ゲノムが活性化する前に、工程(b)で培養した哺乳動物の核移植胚を、脱イオン化血清アルブミンを含み、かつHDAC阻害剤と、ビタミンCとを含まない培養液(以下、「本件培養液c」ということがある)中に移し、胚ゲノムが活性化するまで培養すること(工程(c)の操作を行うこと)が好ましい。胚ゲノムの活性化後の培養については、特に制限されず、例えば、工程(b)の培養を、胚ゲノムが活性化するまで行った場合、胚ゲノムの活性化後の哺乳動物核移植胚を、本件培養液c中に移し、培養することもできるし、工程(c)の培養を、胚ゲノムが活性化するまで行った場合、胚ゲノムの活性化後の哺乳動物核移植胚を、本件培養液c中に継続して培養することもできる。また、各工程において、本件培養液a〜c中の哺乳動物の核移植胚を、新しい本件培養液a〜c中に移すことにより、培養液の交換を行ってもよい。
本明細書において、「胚ゲノムが活性化する」とは、卵子中に存在する母性因子依存性の発生から、胚自身のゲノム依存性の発生へ切り替わることを意味する。胚ゲノムが活性化する時期は、哺乳動物の種類によって異なり、例えば、マウスやハムスターの場合、2細胞期胚(通常、胚発生開始後16〜24時間の範囲内)であり、ブタやヒトの場合、4細胞期胚(通常、胚発生開始後約48時間)であり、ウシやヒツジの場合、8細胞期胚(通常、胚発生開始後約72時間)である。
上記工程(a)の培養期間としては、哺乳動物の生物種や培養条件等により異なるため、一概に特定することはできないが、例えば、胚ゲノムが活性化する時期が2細胞期胚である哺乳動物(例えば、マウスやハムスター)の場合、少なくとも、核移植胚の胚発生開始後から8時間を含む期間が好ましく、また、胚ゲノムが活性化する時期が4細胞期胚である哺乳動物(例えば、ブタやヒト)の場合、少なくとも、核移植胚の胚発生開始後から18〜20時間を含む期間が好ましい。
上記工程(b)の培養期間としては、哺乳動物の生物種や培養条件等により異なるため、一概に特定することはできないが、例えば、胚ゲノムが活性化する時期が2細胞期胚である哺乳動物(例えば、マウスやハムスター)の場合、少なくとも、核移植胚の胚発生開始後8時間から15時間を含む期間が好ましく、また、胚ゲノムが活性化する時期が4細胞期胚である哺乳動物(例えば、ブタやヒト)の場合、少なくとも、核移植胚の胚発生開始後18〜20時間から48時間を含む期間が好ましい。
上記工程(a)〜(c)の培養液としては、哺乳動物の核移植胚の培養に適した培養液であればよく、血清(例えば、0.1〜30[v/v]%のFBS、CS等)を含む培養液であっても、無血清培養液であってもよいが、血清中に含まれるイオン化血清アルブミンによる影響を最小限にする観点から、無血清培養液が好ましい。かかる「無血清培養液」とは、無調整又は未精製の血清を含まない培養液を意味し、血清代替物を含む培養液は、無血清培養液に含まれる。かかる血清代替物としては、具体的には、市販のB27サプリメント(−インスリン)(Life Technologies社製)、N2サプリメント(Life Technologies社製)、B27サプリメント(Life Technologies社製)、Knockout Serum Replacement(Invitrogen社製)等を挙げることができる。上記工程(a)〜(c)における培養液の具体例としては、例えば、ウシ核移植胚を培養する場合、TCM−199培養液(文献「Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 1950; 73: 1-8」参照)やmSOF培養液(特開2012−210199号公報参照)を挙げることができ、ブタ核移植胚を培養する場合、NCSU−23培養液(文献「Theriogenology 1992; 37: 95-109」参照)や、PZM培養液(文献「Biol. Reprod. 2002; 66: 112-119」参照)を挙げることができ、ヒツジ核移植胚を培養する場合、Eagle’s MEM培養液(文献「J. Anim. Sci. 1976; 42: 912-917」参照)を挙げることができ、ウサギ核移植胚を培養する場合、Ham’s F10培養液(文献「Exp. Cell Res. 1963; 29: 515-526」参照)、Eagle’s MEM培養液(文献「J. Anim. Sci. 1976; 42: 912-917」参照)、及びRPMI1640培養液(文献「J. Am. Med. Assoc. 1967; 199: 519-524」参照)を挙げることができ、ラット核移植胚を培養する場合、m−KRB培養液(文献「J. Reprod. Fert. 1974; 36: 9-22」参照)や、HECM−1培養液(文献「Hum. Reprod. 1991; 6: 1445-1448」参照)を挙げることができ、ハムスター核移植胚を培養する場合、Eagle’s MEM培養液(文献「J. Anim. Sci. 1976; 42: 912-917」参照)を挙げることができ、マウス核移植胚を培養する場合、YH培養液(文献「Jpn. J. Anim. Reprod. 1971; 16: 147-157)や、CZB培養液(文献「J. Reprod. Fertil. 1989; 86: 679-688」参照)や、KSOM培養液(文献「Isaji et al., J. Reprod. Dev. 2015, 61: 503-510.」参照)を挙げることができ、ヒト核移植胚を培養する場合、modified HTF培養液(文献「J. Assist. Reprod. Genet. 1995; 12: 97-105」参照)を挙げることができる。
上記工程(a)〜(c)の培養液における任意成分としては、還元剤(例えば、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール[dithiothreitol;DTT]等)、鉄源(例えば、トランスフェリン等)、ミネラル(例えば、亜セレン酸ナトリウム)、アミノ酸(例えば、グルタミン、アラニン、アスパラギン、セリン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、チロシン等の非必須アミノ酸)、ビタミン類(例えば、塩化コリン、パントテン酸、葉酸、ニコチンアミド、塩酸ピリドキサル、リボフラビン、塩酸チアミン、アスコルビン酸、ビオチン、イノシトール等)、糖類(例えば、グルコース等)、有機アミン類(例えば、プトレシン等)、ステロイド(例えば、プロゲステロン、β-エストラジオール等)、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン等)、インターロイキン類(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6等)、接着因子(例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、フィブロネクチン等)、有機酸(例えば、ピルビン酸、コハク酸、乳酸等)若しくはその塩、緩衝剤(例えば、HEPES等)などを挙げることができる。本明細書において「任意成分」とは、含んでもよいし含まなくてもよい成分のことを意味する。
上記工程(a)の培養液としては、ビタミンCをほとんど(例えば、1.0μg/mL以下、好ましくは0.1μg/mL以下、より好ましくは0.01μg/mL以下)、又は全く含まないものが好ましい。また、上記工程(b)の培養液としては、HDAC阻害剤をほとんど(例えば、1.0pM以下、好ましくは0.1pM以下、より好ましくは0.01pM以下)、又は全く含まないものが好ましい。また、上記工程(a)及び工程(b)の培養液としては、イオン化BSA(脱イオン化未処理の、哺乳動物の血液由来の血清アルブミン)をほとんど(例えば、0.1%以下、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.001%以下)、又は全く含まないものが好ましい。
上記工程(a)の培養液中のHDAC阻害剤の濃度としては、HDAC阻害剤の種類や哺乳動物の種類等により異なるため、一概に特定することはできないが、例えば、HDAC阻害剤がTSAやオキサムフラチンの場合、通常1.0(nM)以上、好ましくは5.0(nM)以上、より好ましくは10(nM)以上、さらに好ましくは20(nM)以上であり、核移植胚への悪影響を回避する観点から、通常1000(nM)以下、好ましくは600(nM)以下、より好ましくは400(nM)以下、さらに好ましくは200(nM)以下である。また、HDAC阻害剤がスクリプタイドの場合、通常10(nM)以上、好ましくは50(nM)以上、より好ましくは100(nM)以上、さらに好ましくは200(nM)以上であり、核移植胚への悪影響を回避する観点から、通常10(μM)以下、好ましくは6.0(μM)以下、より好ましくは3.0(μM)以下、さらに好ましくは2.0(μM)以下である。また、HDAC阻害剤がSAHAの場合、通常10(nM)以上、好ましくは50(nM)以上、より好ましくは100(nM)以上、さらに好ましくは500(nM)以上であり、核移植胚への悪影響を回避する観点から、通常100(μM)以下、好ましくは50(μM)以下、より好ましくは20(μM)以下、さらに好ましくは10(μM)以下である。
上記工程(b)の培養液中のビタミンCの濃度としては、哺乳動物の種類等により異なるため、一概に特定することはできないが、通常1.0(μg/mL)以上、好ましくは3.0(μg/mL)以上、より好ましくは6(μg/mL)以上、さらに好ましくは10(μg/mL)以上である。また、費用対効果や核移植胚への悪影響を回避する観点から、通常1000(μg/mL)以下、好ましくは600(μg/mL)以下、より好ましくは300(μg/mL)以下、さらに好ましくは100(μg/mL)以下である。したがって、上記工程(b)における培養液中のビタミンCの濃度としては、通常1.0〜1000(μg/mL)、好ましくは3.0〜600(μg/mL)、より好ましくは6〜300(μg/mL)、さらに好ましくは10〜100(μg/mL)である。
哺乳動物の核移植胚の培養温度は、通常約30〜40℃の範囲内であり、好ましくは37℃である。培養時のCO濃度は、通常約1〜10%の範囲内であり、好ましくは約5%である。また、培養時の湿度は、通常約70〜100%の範囲内であり、好ましくは約95〜100%の範囲内である。また、培養時のO濃度は、正常酸素濃度(18〜22%O)であっても、低酸素濃度(0〜10%O)であってもよい。
本件改善/作出方法において、哺乳動物の核移植胚の培養は、定法に従って行うことができる。例えば、滴(ドロップ)状の「本件培養液a」を、顕微鏡観察用容器上に載置又は接触させ、かかる滴状の「本件培養液a」を油で被覆した後、哺乳動物の核移植胚を、ガラスキャピラリー等のキャピラリーを用いて油で被覆した滴状の「本件培養液a」中に注入し、培養する。
次いで、滴状の「本件培養液b」を、顕微鏡観察用容器上に載置又は接触させ、かかる滴状の「本件培養液b」を油で被覆した後、「本件培養液a」中で培養した哺乳動物の核移植胚を、ガラスキャピラリー等のキャピラリー内に吸引し、必要に応じて「本件培養液b」で1又は2回以上洗浄した後、上記油で被覆した「本件培養液b」中に注入し、培養する。
次に、工程(c)の操作を行う場合、滴状の「本件培養液c」を、顕微鏡観察用容器上に載置又は接触させ、かかる滴状の「本件培養液c」を油で被覆した後、「本件培養液b」中で培養した哺乳動物の核移植胚を、ガラスキャピラリー等のキャピラリー内に吸引し、必要に応じて「本件培養液c」で1又は2回以上洗浄した後、上記油で被覆した「本件培養液c」中に注入し、培養する。
上記顕微鏡観察用容器としては、例えば、培養用シャーレやウェルプレートを挙げることができ、また、上記油としては、例えば、ミネラルオイルやシリコーンオイルを挙げることができる。
上記工程(a)において用いる哺乳動物の核移植胚としては、哺乳動物の除核卵子(レシピエント卵子)又は除核受精胚(レシピエント胚)に、哺乳動物のドナー細胞の核を注入(マイクロインジェクション)することにより作製された発生可能な胚であれば特に制限されない。核移植胚は、定法により作製することができる。例えば、ピエゾマイクロマニピュレーター(プライムテック社製)を用いてドナー細胞をレシピエント卵子又はレシピエント胚に注入する方法や、ドナー細胞を、不活性化センダイウイルス(HVJ Envelope;HVJ−E)とともにレシピエント卵子又はレシピエント胚の細胞質に注入し、ドナー細胞と、レシピエント卵子又はレシピエント胚とを細胞融合させる方法を挙げることができる。また、HVJ−Eに代えて、電気パルス刺激によりドナー細胞と、レシピエント卵子又はレシピエント胚との細胞融合を誘導してもよい。かかる電気パルス刺激は、核移植卵子の胚発生の活性化刺激になり得るが、必要に応じてさらに電気パルスを印加し、活性化刺激を与えてもよい。電気パルスとしては、電荷の大きい1回の電気パルス、例えば1.5kV/cm、100μsec、1回を印加する方が、それより小さい電荷の電気パルスを2回印加するよりも、胚ゲノムの活性化の点で好ましい。電気パルスの印加は、細胞融合液中で行うことが好ましく、かかる細胞融合液として、マンニトール液を用い、電気パルス刺激後の培養液には、NCSU23培養液(文献「J.Reprod.Fertil.Suppl.,48,61,1993」参照)又はPZM培養液(文献「Biol. Reprod. 2002; 66: 112-119」参照)を用いることが、高い胚盤胞形成率の点で好ましい。また、活性化刺激の前に、核移植卵子を、早期染色体凝集(PCC;Premature Chromosome Condensation)が起きるまで培養してもよい。核移植卵子の作製時に用いるドナー細胞核の懸濁液や注入操作ドロップ(培養)液や、核移植卵子の活性化刺激前及び活性化刺激中に用いる培養液は、脱イオン化血清アルブミンを含むものが好ましい。
上記ドナー細胞は、レシピエント卵子やレシピエント胚と異なる生物種由来のものであってもよいが、通常同一の生物種由来のものである。
上記レシピエント卵子は、第一極体の放出が確認された卵母細胞から、常法により除核を行うことにより得ることができる。例えば、細胞質分裂抑制剤(例えば、サイトカラシンB)を含む培養液中で、卵母細胞の第一極体に接する部分の細胞質を吸引除去することにより、第一極体の直下付近に存在する卵母細胞の染色体を取り除く(除核する)方法を挙げることができる。
本件改善/作出方法により作出された哺乳動物(ヒトを除く)核移植胚を、仮親哺乳動物に胚移植することにより、哺乳動物(ヒトを除く)クローン個体を作製することができる。また、本件改善/作出方法により作出されたヒト核移植胚は、神経や血液等の組織に分化誘導するための材料(ES細胞)として有用である。本件改善/作出方法において、哺乳動物がヒトである場合、核移植胚を女性の子宮に着床させる工程等のいわゆる医師による医療行為は含まれない。
本件改善剤は、液体タイプと非液体タイプとに大別される。液体タイプ改善剤においては、ふつうHDAC阻害剤及び脱イオン化血清アルブミンを有効成分として含む培養液(本件培養液a)と、ビタミンC及び脱イオン化血清アルブミンを有効成分として含む培養液(本件培養液b)との組合せセットとして構成される。また、非液体タイプ改善剤においては、ふつう培養液に添加される粉体等のHDAC阻害剤含有物と、ビタミンC含有物と、脱イオン化血清アルブミン含有物との組合せセットか、或いは、培養液に添加される粉体等のHDAC阻害剤及び脱イオン化血清アルブミン含有物と、培養液に添加される粉体等のビタミンC及び脱イオン化血清アルブミン含有物して構成され、これら非液体タイプ改善剤を培養液に添加すると、本件培養液aや本件培養液bを調製することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。以下の実施例において、核移植胚の培養は、インキュベーター(37℃、5%CO)内で行った。
1.マウス核移植胚の作出法
1−1 ビタミンC濃度の検討
ビタミンC濃度と、マウス核移植胚の発生率との関連を調べた。具体的には、以下の手順に従って実験を行った。まず、核移植のドナーとして用いる体細胞を、6%の脱イオン化ウシ血清アルブミン(d−BSA)を含むHepes−CZB培養液中に静置し、不活性化センダイウイルス(HVJ Envelope;HVJ−E)を用い、文献「Isaji et al., J. Reprod. Dev. 2015, 61: 503-510.」に記載の方法に従って、マウス除核卵子に移植し、マウス核移植卵子を作製した。ドナー細胞の移植(注入)後のマウス核移植卵子を、0.3% d−BSAを含むKSOM培養液中で1時間培養し、PCC(Premature Chromosome Condensation)が起きていることを確認した。その後、マウス核移植卵子を、各種濃度(1μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、又は50μg/mL)のビタミンC(Sigma-Aldrich社製)を含み、かつ0.3% d−BSA、5mM 塩化ストロンチウム、2mM EGTA、及び5μg/mL サイトカラシンBを含むKSOM培養液中に移し、活性化(胚発生誘導)処理を開始した。活性化処理は、文献「Isaji et al., J. Reprod. Dev. 2015, 61: 503-510.」に記載の方法に従って行った。6時間の培養後、上記各種濃度のビタミンC及び0.3% d−BSAを含むKSOM培養液中に移し、さらに18時間培養した(ビタミンC処理群)。すなわち、活性化処理後のマウス核移植胚を、計24時間ビタミンC及びd−BSAを含むKSOM培養液中で培養した。なお、比較例として、ビタミンC不含の培養液にて活性化処理したマウス核移植胚を、ビタミンC不含のd−BSA含有KSOM培養液中で、計24時間培養した(無処理群)。その後、マウス核移植胚の2細胞期胚までの発生率及び胚盤胞期胚までの発生率を解析した。
その結果、2細胞期胚までの発生率は、培養液中のビタミンCの濃度(終濃度)いずれを用いた場合でほとんど変わらず高かったものの、胚盤胞期胚までの発生率は、ビタミンCの終濃度が1(μg/mL)の場合、ビタミンCの終濃度が10(μg/mL)、25(μg/mL)、及び50(μg/mL)の場合と比べ、2/3以下に低下(P<0.05)していた(表1参照)。
この結果は、マウス核移植胚の発生率を上昇(改善)させるビタミンCの終濃度は、少なくとも10(μg/mL)以上であれば十分であることを示している。そこで、以下の実験は、ビタミンCの終濃度を10(μg/mL)に固定して行った。
1−2 ビタミンCによる処理期間の検討
ビタミンCによる処理期間と、マウス核移植胚の発生率との関連を調べた。具体的には、上記「1−1」の項目に記載の「ビタミンC処理群」におけるビタミンC処理期間、すなわち、マウス核移植卵子の活性化処理後0〜24時間を、0〜15時間、0〜8時間、又は8〜15時間に代えたときの2細胞期胚までの発生率及び胚盤胞期胚までの発生率を解析した。
その結果、2細胞期胚までの発生率は、ビタミンCの処理期間がいずれの場合でもほとんど変わらず高かったものの、胚盤胞期胚までの発生率は、ビタミンCの処理期間が、マウス核移植胚の活性化処理後0〜8時間の場合、0〜15時間や、8〜15時間の場合と比べ、74%以下まで低下(P<0.05)していた(表2参照)。
この結果は、マウス核移植胚の発生率を上昇(改善)させるビタミンCの処理期間は、少なくとも、マウス核移植卵子の活性化処理(マウス核移植胚の発生開始)後8〜15時間を含む期間であれば十分であることを示している。そこで、以下の実験は、ビタミンCの処理期間を、マウス核移植卵子の活性化処理(マウス核移植胚の発生開始)後8〜15時間に固定して行った。
1−3 抗酸化作用がマウス核移植胚の発生に及ぼす影響
ビタミンCは抗酸化作用を有することが知られている。そこで、上記「1−2」の項目に記載の「8〜15時間のビタミンC処理群」において、ビタミンCに代えて、ビタミンC以外の抗酸化剤、すなわち、ビタミンEやN−アセチル−L−システイン(NAC)を用いた場合の2細胞期胚までの発生率及び胚盤胞期胚までの発生率を解析した。その結果、胚盤胞期胚までの発生率は、ビタミンE及びNACのいずれを用いた場合でも、ビタミンCを用いたときに認められた改善効果は、認められなかった(表3参照)。
この結果は、マウス核移植胚の発生率を上昇(改善)させるためには、ビタミンC以外の抗酸化剤は、代用できないことを示している。
1−4 HDAC阻害剤、ビタミンC、及び脱イオン化血清アルブミンの組合せによるクローンマウスの作出方法
HDAC阻害剤、ビタミンC、及び脱イオン化血清アルブミンの組合せと、クローンマウスの作出効率との関連を調べた。具体的には、上記「1−1」の項目に記載の方法に従ってPCCが起きていることを確認したマウス核移植卵子を、50nM TSA(Sigma-Aldrich社製)、0.3% d−BSA、5mM 塩化ストロンチウム、2mM EGTA、及び5μg/mL サイトカラシンBを含むKSOM培養液中で活性化処理し、6時間の培養後、50nM TSA、及び0.3% d−BSAを含むKSOM培養液中に移し、さらに2時間培養した。すなわち、活性化処理後のマウス核移植胚を、計8時間(活性化処理後から8時間の間)TSA及びd−BSAを含むKSOM培養液中で培養した。比較例としてTSAを添加せずに8時間培養した区を設けた。次いで、培養したマウス核移植胚を、10μg/mLのビタミンC、及び0.3%のd−BSAを含むKSOM培養液中に移し、或いは、比較例としてビタミンC不含のd−BSA含有KSOM培養液中に移し、さらに7時間(活性化処理後8時間から15時間の間)培養した。その後、培養したマウス核移植胚を、TSA及びビタミンC不含のd−BSA含有KSOM培養液中に移し、マウス胚ゲノムが活性化する2細胞期胚(活性化処理後16〜24時間)まで培養した。得られたマウス2細胞期胚を、文献「Isaji et al., J. Reprod. Dev. 2015, 61: 503-510.」に記載の方法に従って、仮母へ胚移植し、体細胞クローンマウス胚の産仔への発生率(クローンマウスの産仔率)を解析した(図1A参照)。なお、上記d−BSAは、ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich社製)を、文献「Isaji et al., J. Reprod. Dev. 2015, 61: 503-510.」に記載の方法に従って、イオン交換樹脂を用いて脱イオン化処理することにより調製した。また、d−BSAは、マウス除核卵子の培養液中にも加えた。
マウス核移植胚を、TSA及びd−BSAを含む培養液中で培養し、その後、ビタミンC及びd−BSAを含む培養液中で培養すると、クローンマウスの産仔率は、15.2%(16/105=産仔数/移植胚数、以下同様)と高かった(図1Aの「HDAC阻害剤及びビタミンC処理群」、及び図1B参照)。かかる値は、マウス核移植胚を、TSA及びビタミンCが共に不含のd−BSAを含む培養液中で培養した場合(図1Aの「無処理群」参照)のクローンマウスの産仔率(0%[0/178])や、TSA及びd−BSAを含む培養液中で培養し、その後、ビタミンC不含のd−BSAを含む培養液中で培養した場合(図1Aの「HDAC阻害剤処理群」参照)のクローンマウスの産仔率(4%[5/124])や、TSA不含のd−BSAを含む培養液中で培養し、その後、ビタミンC及びd−BSAを含む培養液中で培養した場合(図1Aの「ビタミンC処理群」参照)のクローンマウスの産仔率(0%[0/125])と比べ、大幅に上昇していた(P<0.05)。
この結果は、マウス核移植胚を、HDAC阻害剤及び脱イオン化血清アルブミンを含む培養液中で培養し、その後、ビタミンC及び脱イオン化血清アルブミンを含む培養液中で培養すると、マウス核移植胚の発生効率(作出効率)が改善(上昇)し、その結果、クローンマウスの作出効率が改善(上昇)することを示している。
また、ビタミンC処理群において、活性化(胚発生誘導)処理後のマウス核移植胚を、2細胞期胚までの24時間、継続的にビタミンC及びd−BSAを含む培養液中で培養した場合のクローンマウスの産仔率は、2.4%(2/84)と有意な上昇は認められなかった。この結果は、ビタミンCで処理する期間は、少なくともTSA処理後7時間(活性化処理後8〜15時間)で十分であることを示唆している。
さらには、上記「HDAC阻害剤及びビタミンC処理群」のように、TSA及びビタミンCで順次処理した場合のマウス核移植胚の遺伝子発現パターンと、TSA及びビタミンCの2つを同時に処理した場合のマウス核移植胚の遺伝子発現パターンとを網羅的に解析するために、定法に従ってRNAシークエンシング解析及び階層的クラスタリング解析を行ったところ、両者は異なることが示され、TSA及びビタミンCで順次処理した場合のみ再現性の高い遺伝子発現パターンが観察された。この結果は、HDAC阻害剤処理と、ビタミンC処理を順次行うことにより得られるマウス核移植胚の作出効率改善効果と同レベルの効果は、HDAC阻害剤及びビタミンCの同時処理では得られないことを示唆している。
1−5 血清アルブミンの脱イオン化処理がマウス核移植胚の発生に及ぼす影響
脱イオン化状態の血清アルブミンがマウス核移植胚の発生に及ぼす影響を解析した。具体的には、上記「1−4」の項目に記載の「HDAC阻害剤及びビタミンC処理群」において、脱イオン化ウシ血清アルブミン(d−BSA)に代えて、脱イオン化未処理のウシ血清アルブミン(BSA)を用いた場合の2細胞期胚までの発生率及び胚盤胞期胚までの発生率を解析した。その結果、2細胞期胚までの発生率は、BSAを用いた場合(表4の「BSA処理群」参照)、及びd−BSAを用いた場合(表4の「d−BSA処理群」参照)の両者でほとんど変わらず高かったものの、胚盤胞期胚までの発生率は、脱イオン化未処理のウシ血清アルブミンを用いた場合は、脱イオン化ウシ血清アルブミンを用いた場合と比べ半分以下に低下(P=0.05)していた(表4及び図2参照)。
この結果は、マウス核移植胚の発生率を上昇(改善)させるためには、脱イオン化血清アルブミン(脱イオン化未処理の血清アルブミンではなく)を用いることが必要であることを示している。
1−6 まとめ
活性化処理後のマウス核移植胚を、10時間TSAで処理すると、胚盤胞期胚までの発生率が上昇することが知られている(文献「Biochem Biophys Res Commun. 2006 Feb 3;340(1):183-9.」参照)。かかる従来技術と、本実施例で得られた上記結果を総合すると、マウス核移植胚の発生開始後から8時間を含む期間、HDAC阻害剤及び脱イオン化血清アルブミンを含む培養液中で培養し、その後、培養したマウス核移植胚を、胚発生開始後少なくとも8時間から15時間を含む期間、少なくとも10(μg/mL)以上のビタミンC及び脱イオン化血清アルブミンを含む培養液中に移し、培養すると、核移植胚の胚盤胞期胚までの発生率が改善(上昇)し、その結果、クローンマウスの作出効率が改善(上昇)することを示している。
2.ブタ核移植胚の作出法
2−1 HDAC阻害剤、ビタミンC、及び脱イオン化血清アルブミンとの組合せによるブタ核移植胚の作出方法
オスブタ耳由来の線維芽細胞(体細胞ドナー)の核を用い、特開2002−125516号公報に記載の方法に従って、ブタ核移植卵子の作製と、ブタ核移植卵子の活性化(胚発生誘導)処理を、1.5kV/cm、100μsec.×1回の条件下で行った後、以下の条件1〜5に従ってブタ核移植胚の培養を行い、胚盤胞期胚までの発生率を解析した。
その結果、TSA処理により胚盤胞期胚までの発生率が改善することが確認された(表5の条件1と条件2との比較)。また、TSA及びビタミンCの組合せによる効果は、ブタ核移植胚を、TSA及びビタミンCを同時に処理した場合(条件3及び5)は認められず(表5の条件2と、条件3及び5との比較)、TSA処理後に、ビタミンCを順次処理した場合(条件4)に認められた(表5の条件2と、条件4との比較)。
この結果は、ブタ核移植胚を、HDAC阻害剤及び脱イオン化血清アルブミンを含む培養液中で培養し、その後、培養したブタ核移植胚を、ビタミンC及び脱イオン化血清アルブミンを含む培養液中に移し、培養すると、核移植胚の胚盤胞期胚までの発生率が改善(上昇)することを示しており、マウス核移植胚を用いた実験結果を支持している。
条件1:
〔1〕活性化処理後、ブタ核移植胚を、5μg/mLのサイトカラシンB(CB)(Sigma社製、Cat.No.C−6762)を含む、0.3%の脱イオン化未処理のBSA(Sigma社製)含有PZM培養液(文献「Biol. Reprod. 2002; 66: 112-119」参照)(以下、「CB/PZM培養液」という)中で2時間培養
〔2〕工程〔1〕で培養したブタ核移植胚を、0.3%のd−BSA含有PZM培養液(以下、「mPZM培養液」という)中に移し、ブタ胚ゲノムが活性化する4細胞期胚(活性化処理後48時間)まで培養
条件2:
〔1〕活性化処理後、ブタ核移植胚を、50nMのTSA(Sigma-Aldrich社製)を含むCB/PZM培養液(以下、「TSA/CB/PZM培養液」という)中で2時間培養
〔2〕工程〔1〕で培養したブタ核移植胚を、50nMのTSAを含むmPZM培養液(以下、「TSA/mPZM培養液」という)中に移し、16〜18時間培養
〔3〕工程〔2〕で培養したブタ核移植胚を、mPZM培養液中に移し、ブタ胚ゲノムが活性化する4細胞期胚(活性化処理後48時間)まで培養
条件3:
〔1〕活性化処理後、ブタ核移植胚を、TSA/CB/PZM培養液中で2時間培養
〔2〕工程〔1〕で培養したブタ核移植胚を、10μg/mLのビタミンC(Sigma-Aldrich社製)を含むTSA/mPZM培養液(以下、「TSA/VC/mPZM培養液」という)中に移しで16〜18時間培養
〔3〕工程〔2〕で培養したブタ核移植胚を、mPZM培養液中に移し、ブタ胚ゲノムが活性化する4細胞期胚(活性化処理後48時間)まで培養
条件4:
〔1〕活性化処理後、ブタ核移植胚を、TSA/CB/PZM培養液中で2時間培養
〔2〕工程〔1〕で培養したブタ核移植胚を、TSA/mPZM培養液中に移し、16〜18時間培養
〔3〕工程〔2〕で培養したブタ核移植胚を、10μg/mLのビタミンCを含むmPZM培養液(以下、「VC/mPZM培養液」という)中に移し、24時間培養
〔4〕工程〔3〕で培養したブタ核移植胚を、mPZM培養液中に移し、ブタ胚ゲノムが活性化する4細胞期胚(活性化処理後48時間)まで培養
条件5:
〔1〕活性化処理後、ブタ核移植胚を、TSA/CB/PZM培養液中で2時間培養
〔2〕工程〔1〕で培養したブタ核移植胚を、TSA/VC/mPZM培養液中に移し、16〜18時間培養
〔3〕工程〔2〕で培養したブタ核移植胚を、VC/mPZM培養液中に移し、24時間培養
〔4〕工程〔3〕で培養したブタ核移植胚を、mPZM培養液中に移し、ブタ胚ゲノムが活性化する4細胞期胚(活性化処理後48時間)まで培養
2−2 ブタ核移植卵子の作製時及び活性化直後の培養に用いる液の検討
ブタ核移植卵子の作製時及び活性化直後の培養に用いる液中に、d−BSAを添加した場合、ブタ核移植胚の発生に及ぼす影響を解析した。具体的には、上記「2−1」の項目に記載の条件4において、ブタ核移植卵子の作製の際、体細胞核注入操作に用いる体細胞懸濁液及び注入操作ドロップ培養液(以下、「核移植卵子作製時の培養液」ともいう)と、ブタ核移植卵子の活性化処理後の2時間培養に用いる培養液(以下、「核移植卵子活性化直後の培養液」ともいう)として、PZM培養液(脱イオン化未処理のBSA含有培養液)又はmPZM培養液(脱イオン化BSA含有培養液)を用いた場合の、ブタ核移植胚の胚盤胞期胚までの発生率を解析した。
その結果、ブタ核移植胚の胚盤胞期胚までの発生率は、「核移植卵子作製時の培養液」、及び「核移植卵子活性化直後の培養液」の両方の培養液として、mPZM培養液を用いた場合(表6の「条件4−1」)、「核移植卵子作製時の培養液」、又は「核移植卵子活性化直後の培養液」のいずれか一方の培養液としてmPZM培養液を用いた場合(表6の「条件4−2」及び「条件4−3」)や、「核移植操作時の培養液」、及び「活性化直後の培養液」の両方の培養液として、PZM培養液を用いた場合(表6の「条件4−4」)と比べ、上昇(改善)することが示された。
この結果は、核移植卵子作製時に用いる体細胞懸濁液や注入操作ドロップ培養液、及び核移植卵子活性化直後(少なくとも2時間)の培養液中に、脱イオン化血清アルブミン(脱イオン化未処理の血清アルブミンではなく)を添加すると、ブタ核移植胚の発生率はより上昇(改善)することを示している。
本発明は、クローン技術を利用した分野、例えば、品質の高い家畜(例えば、霜降り形質を示すウシ)を生産する畜産業、基礎研究及び医療研究、ペット産業、並びにヒト核移植胚を用いた再生医療の分野に資するものである。

Claims (10)

  1. 以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする非ヒト哺乳動物核移植胚の作出効率の改善方法。
    (a)非ヒト哺乳動物の核移植胚を、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中で培養する工程;
    (b)前記工程(a)で培養した非ヒト哺乳動物の核移植胚を、ビタミンCと、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中に移し、培養する工程;
  2. 前記工程(b)で培養した非ヒト哺乳動物の核移植胚を、脱イオン化血清アルブミンを含み、かつヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、ビタミンCとを含まない培養液中に移し、胚ゲノムが活性化するまで培養する工程(c)をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の改善方法。
  3. 非ヒト哺乳動物がマウスの場合、胚ゲノムの活性化時期が2細胞期胚であり、非ヒト哺乳動物がブタの場合、胚ゲノムの活性化時期が4細胞期胚であることを特徴とする請求項2に記載の改善方法。
  4. ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、トリコスタチンA(TSA)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の改善方法。
  5. 脱イオン化血清アルブミンが、脱イオン化ウシ血清アルブミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の改善方法。
  6. 以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする非ヒト哺乳動物核移植胚の作出方法。
    (a)非ヒト哺乳動物の核移植胚を、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中で培養する工程;
    (b)前記工程(a)で培養した非ヒト哺乳動物の核移植胚を、ビタミンCと、脱イオン化血清アルブミンとを含む培養液中に移し、培養する工程;
  7. 前記工程(b)で培養した非ヒト哺乳動物の核移植胚を、脱イオン化血清アルブミンを含み、かつヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と、ビタミンCとを含まない培養液中に移し、胚ゲノムが活性化するまで培養する工程(c)をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の作出方法。
  8. 非ヒト哺乳動物がマウスの場合、胚ゲノムの活性化時期が2細胞期胚であり、非ヒト哺乳動物がブタの場合、胚ゲノムの活性化時期が4細胞期胚であることを特徴とする請求項7に記載の作出方法。
  9. ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、トリコスタチンA(TSA)であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の作出方法。
  10. 脱イオン化血清アルブミンが、脱イオン化ウシ血清アルブミンであることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の作出方法。
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