JP6827572B2 - 感光性樹脂組成物、有機el素子隔壁、及び有機el素子 - Google Patents

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本発明は、有機EL素子隔壁用の感光性樹脂組成物、並びにそれを用いた有機EL素子隔壁、及び有機EL素子に関する。より詳しくは、本発明は、黒色の着色剤を含有する有機EL素子隔壁用の感光性樹脂組成物、並びにそれを用いた有機EL素子隔壁、及び有機EL素子に関する。
有機ELディスプレイ(OLED)等の表示装置においては、表示特性向上のために、表示領域内の着色パターンの間隔部又は表示領域周辺部分の縁等に隔壁材が用いられている。有機EL表示装置の製造では、有機物質の画素が互いに接触しないようにするため、まず隔壁が形成され、その隔壁の間に有機物質の画素が形成される。この隔壁は一般に、感光性樹脂組成物を用いるフォトリソグラフィによって形成され、絶縁性を有する。詳しくは、塗布装置を用いて感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、揮発成分を加熱等の手段で除去したのち、マスクを介して露光し、次いでネガ型の場合は未露光部分を、ポジ型の場合は露光部分をアルカリ水溶液等の現像液で除去することによって現像し、得られたパターンを加熱処理して、隔壁(絶縁膜)を形成する。次いでインクジェット法等によって、赤、緑、青の3色の光を発する有機物質を隔壁の間に成膜して、有機EL表示装置の画素を形成する。
該分野では近年、表示装置の小型化、及び表示するコンテンツが多様化したことにより、画素の高性能化及び高精細化が要求されている。表示装置におけるコントラストを高め、視認性を向上させる目的で、着色剤を用いて隔壁材に遮光性を持たせる試みがなされている。しかし、隔壁材に遮光性を持たせた場合、感光性樹脂組成物が低感度となる傾向があり、その結果、露光時間が長くなり生産性が低下するおそれがある。そのため、着色剤を含む隔壁材の形成に使用される感光性樹脂組成物はより高感度であることが要求される。
特許文献1(特開2001−281440号公報)は、露光後の加熱処理により高い遮光性を示す感放射線性樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド化合物とを含むポジ型感放射線性樹脂組成物にチタンブラックを添加した組成物を記載している。
特許文献2(特開2002−116536号公報)は、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]1,2−キノンジアジド化合物、及び[C]着色剤を含有する感放射線性樹脂組成物において、カーボンブラックを用いて隔壁材を黒色化する方法を記載している。
特許文献3(特開2010−237310号公報)は、露光後の加熱処理により遮光性を示す感放射線性樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド化合物とを含むポジ型感放射線性樹脂組成物に感熱色素を添加した組成物を記載している。
特開2001−281440号公報 特開2002−116536号公報 特開2010−237310号公報
着色された隔壁材の形成に使用される感光性樹脂組成物では、硬化した膜の遮光性を十分高めるために、着色剤を相当量使用する必要がある。このように多量の着色剤を用いた場合、感光性樹脂組成物の被膜に照射された放射線が着色剤により吸収されるために、被膜中の放射線の有効強度が低下し、感光性樹脂組成物が十分に露光されず、結果としてパターン形成性が低下する。
有機EL素子における隔壁の形成において、生産性等の観点から、隔壁を形成する材料は高感度であることが重要である。しかし、着色剤を含有する黒色の感光性樹脂組成物を使用する場合、通常使用している露光条件では露光不良が生じるため、例えば露光時間を長くする必要があり、このことが生産性を低下させる要因となっていた。
有機EL素子の隔壁材用途において、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)及びi線(波長365nm)を含む超高圧水銀ランプを用いて、ghi線を露光に使用することが一般的である。しかし、製造者の設備及び装置に制約があることから、i線のみを利用した露光の要求がある。露光にi線のみを使用すると合計の照射エネルギーが小さくなるため、感放射線化合物、例えば光酸発生剤の反応率が低下し、現像工程におけるバインダー樹脂の不溶解残渣、パターン形成性の低下などが生じるおそれがある。したがって、着色剤を含有する感光性樹脂組成物の感度をさらに高めて、露光に使用する放射線の自由度を高めることが望まれている。
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的は、有機EL素子の隔壁形成に使用される、着色剤を含有する高感度の感光性樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、着色剤を含有する感光性樹脂組成物に特定の有機低分子化合物を添加することにより、感光性樹脂組成物の感度を高めることができること、具体的には、現像時のバインダー樹脂の溶解を促進して、低照射エネルギー露光、例えばi線のみを用いた露光を利用した場合であってもアルカリ現像性及びパターン形成性に優れた感光性樹脂組成物を提供できることを見出した。
すなわち、本発明は次の態様を含む。
[1]
(A)バインダー樹脂、
(B)モル体積が130cm/mol以下であり、芳香族カルボン酸及び複数のフェノール性水酸基を有する化合物からなる群より選択される、少なくとも1種の有機低分子化合物、
(C)感放射線化合物、及び
(D)黒色染料及び黒色顔料からなる群より選択される着色剤
を含む、有機EL素子隔壁用感光性樹脂組成物。
[2]
前記有機低分子化合物(B)が、2.5〜4.5のpKaを有する芳香族カルボン酸である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
前記有機低分子化合物(B)が、7.5〜10のpKaを有する複数のフェノール性水酸基を有する化合物である、[1]又は[2]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[4]
前記有機低分子化合物(B)の芳香環を構成する炭素原子にカルボキシ基及びフェノール性水酸基以外の基が結合していない、[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]
前記複数のフェノール性水酸基を有する化合物が、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2,4−ベンゼントリオール、ピロガロール及びフロログルシノールからなる群より選択される芳香族ポリオールである、[1]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]
前記芳香族カルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、及びトリメシン酸からなる群より選択される多価カルボン酸;又は2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、及び没食子酸からなる群より選択される芳香族ヒドロキシカルボン酸である、[1]〜[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7]
前記バインダー樹脂(A)、前記有機低分子化合物(B)、前記感放射線化合物(C)及び前記着色剤(D)の合計100質量部を基準として、0.1質量部〜20質量部の前記有機低分子化合物(B)を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8]
前記感放射線化合物(C)が、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、及びヨードニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の光酸発生剤である、[1]〜[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9]
前記バインダー樹脂(A)がアルカリ可溶性官能基を有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[10]
前記バインダー樹脂(A)、前記有機低分子化合物(B)、前記感放射線化合物(C)及び前記着色剤(D)の合計100質量部を基準として、1質量部〜70質量部の前記着色剤(D)を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[11]
前記バインダー樹脂(A)、前記有機低分子化合物(B)、前記感放射線化合物(C)及び前記着色剤(D)の合計100質量部を基準として、5質量部〜50質量部の前記感放射線化合物(C)としての光酸発生剤を含む、[1]〜[10]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[12]
前記感光性樹脂組成物の硬化被膜の光学濃度(OD値)が膜厚1μmあたり0.5以上である、[1]〜[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[13]
前記バインダー樹脂(A)が、
(a)式(1)
Figure 0006827572
(式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、式(2)
Figure 0006827572
(式(2)において、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であり、式(2)の*は、芳香環を構成する炭素原子との結合部を表す。)で表されるアルケニル基、炭素原子数1〜2のアルコキシ基又は水酸基であり、かつR、R及びRの少なくとも1つは式(2)で表されるアルケニル基であり、Qは式−CR−で表されるアルキレン基、炭素原子数5〜10のシクロアルキレン基、芳香環を有する2価の有機基、脂環式縮合環を有する2価の有機基又はこれらを組み合わせた2価基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基である。)
の構造単位を有するポリアルケニルフェノール樹脂、
(b)式(3)
Figure 0006827572
(式(3)において、R11は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、aは1〜4の整数、bは1〜4の整数であり、a+bは2〜5の範囲内であり、R12は水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群より選択される少なくとも1種である。)
で表される構造単位を有するヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体、
(c)エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂、及び
(d)アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体
からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、[1]〜[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[14]
[1]〜[13]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子隔壁。
[15]
[1]〜[13]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子。
本発明によれば、有機EL素子の隔壁形成に使用される、着色剤を含有する高感度の感光性樹脂組成物を提供することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本開示において「アルカリ可溶性」とは、感光性樹脂組成物又はその被膜若しくは硬化被膜が、アルカリ水溶液、例えば2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に溶解可能であることを意味する。「アルカリ可溶性官能基」とは、そのようなアルカリ可溶性を感光性樹脂組成物又はその被膜若しくは硬化被膜に付与する基を意味する。
本開示において「ラジカル重合性官能基」とは、1又は複数のエチレン性不飽和基を指し、「ラジカル重合性化合物」とは、1又は複数のエチレン性不飽和基を有する化合物を指す。
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
一実施態様の感光性樹脂組成物は、(A)バインダー樹脂、(B)モル体積が130cm/mol以下であり、芳香族カルボン酸及び複数のフェノール性水酸基を有する化合物からなる群より選択される、少なくとも1種の有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)黒色染料及び黒色顔料からなる群より選択される着色剤を含む。
(A)バインダー樹脂
バインダー樹脂(A)は特に限定されないが、アルカリ可溶性官能基を有し、アルカリ可溶性であることが好ましい。アルカリ可溶性官能基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、メルカプト基等が挙げられる。2種以上のアルカリ可溶性官能基を有するバインダー樹脂を使用してもよい。
バインダー樹脂(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体、シリコーン樹脂、環状オレフィンポリマー、カルド樹脂、及びこれらの樹脂の誘導体、並びにこれらの樹脂にアルカリ可溶性官能基を結合させたものが挙げられる。バインダー樹脂(A)として、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体の単独重合体又は共重合体を使用することもできる。これらの樹脂は単独で、又は2種類以上の樹脂を組み合わせて用いることができる。バインダー樹脂(A)はラジカル重合性官能基を有してもよい。一実施態様では、バインダー樹脂(A)はラジカル重合性官能基として(メタ)アクリル基、アリル基又はメタリル基を有する。
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は以下の(a)〜(k)の樹脂成分から選択される少なくとも1種を含む。
(a)ポリアルケニルフェノール樹脂
(b)ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体
(c)エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂
(d)アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体
(e)ポリイミド樹脂
(f)ポリアミック酸樹脂
(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂
(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体
(i)シリコーン樹脂
(j)環状オレフィンポリマー
(k)カルド樹脂
(a)ポリアルケニルフェノール樹脂
ポリアルケニルフェノール樹脂は、公知のフェノール樹脂の水酸基をアルケニルエーテル化し、さらにアルケニルエーテル基をクライゼン転位することにより得ることができる。中でも、式(1)
Figure 0006827572
の構造単位を有することが好ましい。このような樹脂を含有することにより、得られる感光性樹脂組成物の現像特性を向上させるとともに、アウトガスを低減することができる。
式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、式(2)
Figure 0006827572
(式(2)において、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であり、式(2)の*は、芳香環を構成する炭素原子との結合部を表す。)で表されるアルケニル基、炭素原子数1〜2のアルコキシ基又は水酸基であり、かつR、R及びRの少なくとも1つは式(2)で表されるアルケニル基であり、Qは式−CR−で表されるアルキレン基、炭素原子数5〜10のシクロアルキレン基、芳香環を有する2価の有機基、脂環式縮合環を有する2価の有機基又はこれらを組み合わせた2価基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基である。式(1)の構造単位が1分子中に2つ以上存在するときは、それぞれの式(1)の構造単位は同一でも異なってもよい。
式(1)のR、R及びRは、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、式(2)で表されるアルケニル基、炭素原子数1〜2のアルコキシ基又は水酸基であり、かつR、R及びRの少なくとも1つは式(2)で表されるアルケニル基である。式(1)のR、R及びRにおいて、炭素原子数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができる。炭素原子数1〜2のアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
式(2)で表されるアルケニル基において、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基である。炭素原子数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができる。炭素原子数5〜10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等を挙げることができる。炭素原子数6〜12のアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であることが好ましい。好ましい式(2)で表されるアルケニル基としては、反応性の点からアリル基、メタリル基を挙げることができ、より好ましくはアリル基である。
、R及びRのうち、いずれか1つがアリル基又はメタリル基であり、他の2つが水素原子であることが最も好ましい。
式(1)のQは式−CR−で表されるアルキレン基、炭素原子数5〜10のシクロアルキレン基、芳香環を有する2価の有機基、脂環式縮合環を有する2価の有機基又はこれらを組み合わせた2価基である。R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基である。炭素原子数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができる。炭素原子数2〜6のアルケニル基の具体例としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等を挙げることができる。炭素原子数5〜10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等を挙げることができる。炭素原子数6〜12のアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることできる。R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基であることが好ましく、共に水素原子であることが最も好ましい。
炭素原子数5〜10のシクロアルキレン基の具体例としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等を挙げることができる。芳香環を有する2価の有機基の具体例として、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、アントラセニレン基、キシリレン基、4,4−メチレンジフェニル基、式(6)
Figure 0006827572
で表される基等を挙げることができる。脂環式縮合環を有する2価の有機基の具体例として、ジシクロペンタジエニレン基等を挙げることができる。
バインダー樹脂(A)としてポリアルケニルフェノール樹脂を用いる場合、アルカリ現像性、アウトガス等の点から特に好ましいポリアルケニルフェノール樹脂として、式(1)のQが−CH−であるもの、すなわち式(4)
Figure 0006827572
で表される構造単位を有するものが挙げられる。式(4)において、R、R及びRは式(1)と同様である。好ましいR、R及びRは、式(1)における好ましいR、R及びRと同様である。
式(1)又は式(4)で表される構造単位は、ポリアルケニルフェノール樹脂中50〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは70〜100モル%であって、さらに好ましくは80〜100モル%である。式(1)又は式(4)で表される構造単位がポリアルケニルフェノール樹脂中50モル%以上であることが、耐熱性が向上するため好ましい。ポリアルケニルフェノール樹脂中のフェノール性水酸基は塩基性化合物の存在下イオン化し、水に溶解できるようになるため、アルカリ現像性の観点から、フェノール性水酸基が一定量以上あることが必要である。そのため、式(4)の構造単位を含むポリアルケニルフェノール樹脂は、式(4)で表される構造単位及び式(7)
Figure 0006827572
で表される構造単位を有するポリアルケニルフェノール樹脂であることが特に好ましい。式(7)において、R1a、R2a及びR3aは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基である。好ましいR1a、R2a及びR3aは、式(1)における好ましいR、R及びRと同様である。
式(4)で表される構造単位及び式(7)で表される構造単位を有するポリアルケニルフェノール樹脂において、式(4)で表される構造単位の数をxとし、式(7)で表される構造単位の数をyとすると、0.5≦x/(x+y)<1であり、0<y/(x+y)≦0.5であり、x+yは2〜50が好ましく、より好ましくは3〜40であり、さらに好ましくは5〜25である。
バインダー樹脂(A)としてポリアルケニルフェノール樹脂を使用する場合、ポリアルケニルフェノール樹脂の好ましい数平均分子量は500〜5000であり、より好ましくは800〜3000であり、さらに好ましくは900〜2000である。数平均分子量が500以上であればアルカリ現像速度が適切で露光部と未露光部との溶解速度差が十分なためパターンの解像度が良好であり、5000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(b)ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体
バインダー樹脂(A)として、式(3)
Figure 0006827572
の構造単位を有するヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体を使用することもできる。このような樹脂を含有することにより、得られる感光性樹脂組成物の現像特性を向上させるとともに、アウトガスの低減にも寄与することができる。
式(3)において、R11は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、aは1〜4の整数、bは1〜4の整数であり、a+bは2〜5の範囲内であり、R12は水素原子、メチル基、エチル基及びプロピル基からなる群より選択される少なくとも1種である。
バインダー樹脂(A)として、ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体を用いる場合、アルカリ現像性、アウトガスの点から式(3)で表される構造単位及び式(5)
Figure 0006827572
で表される構造単位を有する共重合体であることが好ましい。
式(5)においてR13は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、cは1〜5の整数である。
式(3)で表される構造単位を有するヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体、及び式(3)で表される構造単位と式(5)で表される構造単位とを有するヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体は、例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等のフェノール性水酸基を有する芳香族ビニル化合物のうち、単独又は2種類以上を公知の方法で重合して得られた重合体又は共重合体の一部に、公知の方法でホルムアルデヒドを反応させる、あるいはさらにアルコールと反応させることにより得ることができる。
フェノール性水酸基を有する芳香族ビニル化合物としては、p−ヒドロキシスチレン又はm−ヒドロキシスチレンが好ましく用いられる。
バインダー樹脂(A)としてヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体を用いる場合、ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体の好ましい数平均分子量は1000〜20000であり、より好ましくは3000〜10000であり、さらに好ましくは4000〜9000である。数平均分子量が1000以上であれば、アルカリ溶解性が適切なため感光性材料の樹脂として適しており、20000以下であれば、塗布性及び現像性が良好である。
(c)エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂
バインダー樹脂(A)として、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を使用することもできる。このようなアルカリ水溶液可溶性樹脂は、例えば、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と表記することがある。)のエポキシ基と、ヒドロキシ安息香酸化合物のカルボキシ基を反応させることで得ることができる。アルカリ水溶液可溶性樹脂がエポキシ基を有することで、加熱時にフェノール性水酸基との反応により架橋を形成し、被膜の耐薬品性、耐熱性などを向上させることができる。フェノール性水酸基は現像時のアルカリ水溶液に対する可溶性に寄与する。
エポキシ化合物が有するエポキシ基の1つと、ヒドロキシ安息香酸化合物のカルボキシ基とが反応し、フェノール性水酸基を有する化合物となる反応の例を次の反応式1に示す。
Figure 0006827572
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有していればよく、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は熱硬化型であるため、当業者の常識として、エポキシ基の有無、官能基の種類、重合度などの違いからその構造を一義的に記載することができない。ノボラック型エポキシ樹脂の構造の一例を式(9)に示す。式(9)において、例えば、R14は、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜2のアルコキシ基又は水酸基であり、mは1〜50の整数である。
Figure 0006827572
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばEPLICLON(登録商標)N−770(DIC株式会社製)、jER(登録商標)−152(三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばEPICLON(登録商標)N−695(DIC株式会社製)、EOCN(登録商標)−102S(日本化薬株式会社製)等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばjER(登録商標)828、jER(登録商標)1001(三菱ケミカル株式会社製)、YD−128(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER(登録商標)806(三菱ケミカル株式会社製)、YDF−170(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばjER(登録商標)YX−4000、jER(登録商標)YL−6121H(三菱ケミカル株式会社製)等があげられる。ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えばNC−7000(商品名、日本化薬株式会社製)、EXA−4750(商品名、DIC株式会社製)等があげられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えばEHPE(登録商標)−3150(ダイセル化学工業株式会社製)等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えばTEPIC(登録商標)、TEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S(日産化学工業株式会社製)等が挙げられる。
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に由来するエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物は、パターン形成性に優れており、アルカリ溶解性の調節が容易であり、アウトガスが少ない。
ヒドロキシ安息香酸化合物は、安息香酸の2〜6位の少なくとも1つが水酸基で置換された化合物であり、例えばサリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸、3−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−ニトロ安息香酸等が挙げられ、アルカリ現像性を高める点でジヒドロキシ安息香酸化合物が好ましい。これらヒドロキシ安息香酸化合物は、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一実施態様では、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物とヒドロキシ安息香酸化合物との反応物であって、式(8)
Figure 0006827572
の構造を有する。式(8)において、dは1〜5の整数であり、*は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基を除く残基との結合部を表す。
エポキシ化合物とヒドロキシ安息香酸化合物からエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を得る方法では、エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、ヒドロキシ安息香酸化合物を0.2〜1.0当量使用することができ、好ましくは0.3〜0.9当量、さらに好ましくは0.4〜0.8当量使用する。ヒドロキシ安息香酸化合物が0.2当量以上であれば十分なアルカリ溶解性を得ることができ、1.0当量以下であれば副反応による分子量増加を抑制することができる。
エポキシ化合物とヒドロキシ安息香酸化合物の反応を促進させるために触媒を使用してもよい。触媒の使用量は、エポキシ化合物及びヒドロキシ安息香酸化合物からなる反応原料混合物の質量を基準として0.1〜10質量%とすることができる。反応温度は60〜150℃、反応時間は3〜30時間とすることができる。この反応で使用する触媒としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂の数平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、800〜6000であることがより好ましく、1000〜5000であることがさらに好ましい。数平均分子量が500以上であれば、アルカリ溶解性が適切なため感光性材料の樹脂として良好であり、8000以下であれば、塗工性及び現像性が良好である。
(d)アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体
バインダー樹脂(A)として、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体を使用することができる。アルカリ可溶性官能基としては、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、酸無水物基等を挙げることができる。重合性単量体が有する重合性官能基としては、ラジカル重合性官能基を挙げることができ、例えば、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=CHCO−、CH=C(CH)CO−、−OC−CH=CH−CO−などが挙げられる。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体は、例えば、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。ラジカル重合により共重合体を合成した後に、アルカリ可溶性官能基を付加した誘導体を用いてもよい。アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体としては、例えば、4−ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルマレイミド、3−マレイミドプロピオン酸、4−マレイミド酪酸、6−マレイミドヘキサン酸等が挙げられる。その他の重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等の(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、マレイン酸無水物、マレイン酸モノエステル、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミドが挙げられる。耐熱性等の観点から、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体は、脂環式構造、芳香族構造、多環式構造、無機環式構造、複素環式構造等の1種又は複数種の環式構造を有することが好ましい。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体として、式(10)
Figure 0006827572
で表される構造単位を形成するものが好ましい。式(10)において、R15は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、eは1〜5の整数である。そのようなアルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体として、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートが特に好ましい。
その他の重合性単量体は、式(11)
Figure 0006827572
で表される構造単位を形成するものが好ましい。式(11)において、R16及びR17は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1〜3のアルキル基、又はハロゲン原子であり、R18は、水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基及び炭素原子数1〜6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。そのようなその他の重合性単量体として、フェニルマレイミド及びシクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
一実施態様では、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)が、式(10)
Figure 0006827572
(式(10)において、R15は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、eは1〜5の整数である。)
で表される構造単位、及び式(11)
Figure 0006827572
(式(11)において、R16及びR17は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1〜3のアルキル基、又はハロゲン原子であり、R18は、水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシル基、炭素原子数1〜6のアルキル基及び炭素原子数1〜6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。)
で表される構造単位を有する。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体として4−ヒドロキシフェニルメタクリレートを用い、その他の重合性単量体としてフェニルマレイミド又はシクロヘキシルマレイミドを用いることが特に好ましい。これらの重合性単量体をラジカル重合させた樹脂を用いることにより、形状維持性、現像性を向上させるとともにアウトガスもの低減することができる。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ可溶性共重合体をラジカル重合によって製造する際の重合開始剤としては、次のものに限定されないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ重合開始剤、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の10時間半減期温度が100〜170℃の過酸化物重合開始剤、あるいは過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、1,1’−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシピバレートなどの過酸化物重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合性単量体の混合物100質量部に対して、一般に0.01質量部以上、0.05質量部以上又は0.5質量部以上、40質量部以下、20質量部以下又は15質量部以下であることが好ましい。
RAFT(Reversible Addition Fragmentation Transfer、可逆的付加開裂型連鎖移動)剤を重合開始剤と併用してもよい。RAFT剤としては、次のものに限定されないが、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボナート、キサンタートなどのチオカルボニルチオ化合物を使用することができる。RAFT剤は、重合性単量体の総量100質量部に対して、0.005〜20質量部の範囲で使用することができ、0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ可溶性共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3000〜80000とすることができ、4000〜70000であることが好ましく、5000〜60000であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は1000〜30000とすることができ、1500〜25000であることが好ましく、2000〜20000であることがより好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.5とすることができ、1.1〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.8であることがより好ましい。重量平均分子量、数平均分子量及び多分散度を上記範囲とすることで、アルカリ溶解性及び現像性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
本開示においては、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)がヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体(b)にも該当する場合は、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)として扱うものとする。アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)がエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)にも該当する場合は、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)として扱うものとする。すなわち、ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体(b)及びエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)は、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)に該当するものを除くものとする。
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン共重合体樹脂、又はこれらの誘導体等のフェノール樹脂を含む。バインダー樹脂(A)としてフェノール樹脂を使用する場合の好ましい数平均分子量は、樹脂構造によって異なるが、一般的に100〜50000であり、より好ましくは500〜30000であり、さらに好ましくは800〜10000である。数平均分子量が100以上であればアルカリ現像速度が適切で露光部と未露光部との溶解速度差が十分なためパターンの解像度が良好であり、50000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(e)ポリイミド樹脂、(f)ポリアミック酸樹脂、(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂、(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は、(e)ポリイミド樹脂、(f)ポリアミック酸樹脂、(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂、及び(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体から選択される少なくとも一種である。ポリアミック酸樹脂は、脱水閉環することによりポリイミド構造を有する樹脂となる。ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は、脱水閉環することによりポリベンゾオキサゾール樹脂となる。
(e)ポリイミド樹脂は式(12)で表される構造単位を有する。(f)ポリアミック酸樹脂及び(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は式(13)で表される構造単位を有する。(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂は式(14)で表される構造単位を有する。ポリイミド樹脂は式(12)で表される構造単位と式(13)で表される構造単位の両方を有してもよく、ポリベンゾオキサゾール樹脂は式(14)で表される構造単位と式(13)で表される構造単位の両方を有してもよい。
Figure 0006827572
式(12)において、R19は4〜10価の有機基であり、R20は2〜8価の有機基であり、R21及びR22は、それぞれ独立して水酸基、カルボキシ基、スルホ基又はメルカプト基であり、f及びgはそれぞれ独立して0〜6の整数である。
Figure 0006827572
式(13)において、R23は2〜8価の有機基であり、R24は2〜8価の有機基であり、R25及びR26は、それぞれ独立して水酸基、スルホ基、メルカプト基、又は−COOR27であり、R27は水素原子又は炭素原子数1〜20の1価の炭化水素基であり、h及びiはそれぞれ独立して0〜6の整数であり、但しh+i>0である。ポリアミック酸樹脂の場合、hは1以上の整数であり、R25の少なくとも1つは−COOR27である。ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体の場合、iは1以上の整数であり、R26の少なくとも1つはフェノール性水酸基である。
Figure 0006827572
式(14)において、R28は2〜8価の有機基であり、R29は2〜8価の有機基であり、R30及びR31は、それぞれ独立して水酸基、カルボキシ基、スルホ基又はメルカプト基であり、j及びkはそれぞれ独立して0〜6の整数である。
式(12)のR19−(R21は酸二無水物の残基を表す。R19は4〜10価の有機基であり、芳香族環又は環状脂肪族基を含む炭素原子数5〜40の有機基であることが好ましい。
酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物;ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物など、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
式(13)のR23−(R25、及び式(14)のR28−(R30は、それぞれ酸の残基を表す。R23及びR28はそれぞれ独立して2〜8価の有機基であり、芳香族環又は環状脂肪族基を含む炭素原子数5〜40の有機基であることが好ましい。
酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸;ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸など、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。上記トリカルボン酸及びテトラカルボン酸では、1つ又は2つのカルボキシ基が、式(13)におけるR25、又は式(14)におけるR30に相当する。これらの酸は、エステル又は酸無水物の形態であってもよい。
式(12)のR20−(R22、式(13)のR24−(R26、及び式(14)のR29−(R31は、それぞれジアミンの残基を表す。R20、R24及びR29はそれぞれ独立して2〜8価の有機基であり、芳香族環又は環状脂肪族基を含む炭素原子数5〜40の有機基であることが好ましい。
式(12)のR20、及びポリアミック酸樹脂に係る式(13)のR24に対応するジアミンとしては、例えば、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどの芳香族ジアミン、又はこれらの芳香族ジアミンの芳香環の水素原子の少なくとも1つをアルキル基又はハロゲン原子で置換した化合物;シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂肪族ジアミン、及びこれら2種以上の組み合わせが挙げられる。
ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体に係る式(13)のR24、及び式(14)のR29に対応するジアミンとしては、例えば、上記芳香族ジアミンの芳香環上のアミノ基に対してオルト位にフェノール性水酸基を有するビスアミノフェノール化合物、及びこれら2種以上の組み合わせが挙げられる。
ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、及びポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は、それらの末端が酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などにより封止されることで、主鎖末端に酸性基を有してもよい。
ポリアミック酸樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとからジエステルを生成した後、縮合剤の存在下でジエステルとジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとからジエステルを生成し、残ったジカルボン酸を酸クロリド化した後、得られた中間体とジアミンを反応させる方法などにより合成することができる。
ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は、例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸などの多価カルボン酸を縮合反応させることで合成することができる。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの脱水縮合剤と多価カルボン酸を反応させて得られた中間体と、ビスアミノフェノール化合物とを反応させる方法、ピリジンなどの3級アミンを添加したビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリド溶液を滴下する方法などが挙げられる。
ポリイミド樹脂は、例えば、上述の方法で得られたポリアミック酸樹脂を加熱、又は酸若しくは塩基などの化学処理で脱水閉環することにより合成することができる。
ポリベンゾオキサゾール樹脂は、例えば、上述の方法で得られたポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体を加熱、又は酸若しくは塩基などの化学処理で脱水閉環することにより合成することができる。
ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、及びポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、800〜6000であることがより好ましく、1000〜5000であることがさらに好ましい。数平均分子量が500以上であれば、アルカリ溶解性が適切なため感光性材料の樹脂として良好であり、8000以下であれば、塗工性及び現像性が良好である。
(i)シリコーン樹脂
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は(i)シリコーン樹脂を含む。シリコーン樹脂は、式(15)で表されるオルガノシラン及び式(16)で表されるオルガノシランから選択される少なくとも1種の化合物を加水分解縮合することによって合成することができる。式(15)及び式(16)で表されるオルガノシランを用いることにより、感度及び解像度に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
式(15)で表されるオルガノシランを以下に示す。
Figure 0006827572
式(15)において、R32は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数6〜16のアリール基であり、R33は水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアシル基又は炭素原子数6〜16のアリール基であり、pは0〜3の整数である。pが2以上の場合、複数のR32はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。pが2以下の場合、複数のR33はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
式(15)で表されるオルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]プロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸、1−ナフチルトリメトキシシラン、1−ナフチルトリエトキシシラン、1−ナフチルトリ−n−プロポキシシラン、2−ナフチルトリメトキシシラン、1−アントラセニルトリメトキシシラン、9−アントラセニルトリメトキシシラン、9−フェナントレニルトリメトキシシラン、9−フルオレニルトリメトキシシラン、2−フルオレニルトリメトキシシラン、1−ピレニルトリメトキシシラン、2−インデニルトリメトキシシラン、5−アセナフテニルトリメトキシシランなどの3官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジメトキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジエトキシシランなどの2官能性シラン;トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランなどの単官能性シラン、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
式(16)で表されるオルガノシランを以下に示す。
Figure 0006827572
式(16)において、R34〜R37はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアシル基又は炭素原子数6〜16のアリール基であり、nは2〜8の範囲である。nが2以上の場合、複数のR35及びR36はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
式(16)で表されるオルガノシランの具体例としては、扶桑化学工業株式会社製メチルシリケート51(R34〜R37はメチル基、nは平均4)、多摩化学工業株式会社製Mシリケート51(R34〜R37はメチル基、nは平均3〜5)、シリケート40(R34〜R37はエチル基、nは平均4〜6)、シリケート45(R34〜R37はエチル基、nは平均6〜8)、コルコート株式会社製メチルシリケート51(R34〜R37はメチル基、nは平均4)、メチルシリケート53A(R34〜R37はメチル基、nは平均7)、エチルシリケート40(R34〜R37はエチル基、nは平均5)などが挙げられる。これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
シリコーン樹脂は、式(15)及び式(16)で表されるオルガノシランを加水分解及び部分縮合させることにより合成することができる。部分縮合により、シリコーン樹脂には残存シラノール基が存在する。加水分解及び部分縮合は、例えば、オルガノシラン混合物に必要に応じて溶剤、水、触媒などを添加し、50℃〜150℃で0.5〜100時間程度加熱撹拌する方法などが挙げられる。必要に応じて、加水分解副生物(メタノールなどのアルコール)又は縮合副生物(水)を蒸留により留去してもよい。
触媒として、酸触媒又は塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸又はその無水物、イオン交換樹脂などが挙げられる。塩基触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂などが挙げられる。触媒は、加水分解及び部分縮合後に、必要に応じて水洗浄、イオン交換樹脂による処理、又はそれらの組み合わせにより除去してもよい。触媒を除去することにより感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を高めることができる。
シリコーン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上であれば被膜形成性を向上させることができ、100000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(j)環状オレフィンポリマー
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は、(j)環状オレフィンポリマーを含む。環状オレフィンポリマーは、環状構造(脂環又は芳香環)と炭素−炭素二重結合とを有する環状オレフィン単量体の単独重合体又は共重合体である。環状オレフィンポリマーは、環状オレフィン単量体以外の単量体に由来する構造単位を有してもよい。
環状オレフィンポリマーを構成する単量体としては、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体、プロトン性以外の極性基を有する環状オレフィン単量体、極性基を有さない環状オレフィン単量体、及び環状オレフィン以外の単量体などが挙げられる。環状オレフィン以外の単量体はプロトン性極性基又はこれ以外の極性基を有してもよく、極性基を有していなくてもよい。
プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体としては、例えば、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エキソ−9−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのカルボキシ基含有環状オレフィン;5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどの水酸基含有環状オレフィンなど、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
プロトン性以外の極性基を有する環状オレフィン単量体としては、例えば、5−アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−アセトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.112,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのエステル基を有する環状オレフィン;N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)などのN−置換イミド基を有する環状オレフィン;8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどのシアノ基を有する環状オレフィン;8−クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのハロゲン原子を有する環状オレフィンなど、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
極性基を有さない環状オレフィン単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[8.4.0.111,14.03,7]ペンタデカ−3,5,7,12,11−ペンタエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエンなど、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
環状オレフィン以外の単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエンなどの鎖状オレフィン、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
環状オレフィンポリマーは、上記単量体を開環重合又は付加重合により重合させることにより合成することができる。重合触媒としては、例えば、モリブデン、ルテニウム、オスミウムなどの金属錯体、又はこれらの2種以上の組み合わせが好ましく用いられる。環状オレフィンポリマーに水素添加処理を行ってもよい。水素添加触媒としては、オレフィン化合物の水素添加に一般に使用されているものを用いることができ、例えば、チーグラータイプの均一系触媒、貴金属錯体触媒、及び担持型貴金属触媒などが挙げられる。
環状オレフィンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上であれば被膜形成性を向上させることができ、100000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(k)カルド樹脂
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は、(k)カルド樹脂を含む。カルド樹脂は、カルド構造、すなわち、環状構造を構成する四級炭素原子に別の2つの環状構造が結合した骨格構造を有する。環状構造を構成する四級炭素原子に別の2つの環状構造が結合した骨格構造としては、例えば、フルオレン骨格、ビスフェノールフルオレン骨格、ビスアミノフェニルフルオレン骨格、エポキシ基を有するフルオレン骨格、アクリル基を有するフルオレン骨格などが挙げられる。カルド構造の例として、フルオレン環にベンゼン環が結合したものが挙げられる。
カルド樹脂は、カルド構造を有する単量体の官能基同士の反応により、単量体を重合させて合成することができる。カルド構造を有する単量体の重合方法としては、例えば、開環重合法、付加重合法などが挙げられる。カルド構造を有する単量体としては、例えば、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのカルド構造含有ビスフェノール化合物;9,9−ビス(シアノメチル)フルオレンなどの9,9−ビス(シアノアルキル)フルオレン化合物;9,9−ビス(3−アミノプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(アミノアルキル)フルオレン化合物など、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。カルド樹脂は、カルド構造を有する単量体と、その他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
カルド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上であれば被膜形成性を向上させることができ、100000以下であればアルカリ現像性が良好である。
バインダー樹脂(A)は、1種類の樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上の樹脂を併用してもよい。
感光性樹脂組成物中のバインダー樹脂(A)の含有量は、(A)バインダー樹脂、(B)有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)着色剤の合計100質量部を基準として、5〜60質量部とすることができ、好ましくは10〜55質量部であり、より好ましくは10〜50質量部である。バインダー樹脂(A)の含有量が、上記合計100質量部を基準として5質量部以上であれば、残膜率、耐熱性、感度等が適切である。バインダー樹脂(A)の含有量が、上記合計100質量部を基準として60質量部以下であれば、焼成後の被膜の光学濃度(OD値)を膜厚1μmあたり0.5以上とすることができ、焼成後も遮光性を維持することができる。
バインダー樹脂(A)は、樹脂成分(a)〜(k)から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、樹脂成分(a)〜(k)のうちの複数を含む場合は任意の組み合わせが可能である。バインダー樹脂(A)は、より好ましくは樹脂成分(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1種を含み、さらに好ましくは樹脂成分(a)、(c)、及び(d)から選択される少なくとも2種を含み、さらにより好ましくは樹脂成分(c)及び(d)を含む。別の好適な実施態様では、バインダー樹脂(A)は(a)、(b)、及び(c)から選択される少なくとも1種を含む。
バインダー樹脂(A)100質量部に対する(a)〜(d)から選択される少なくとも1種の樹脂成分の量は0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは50質量部以上であり、さらに好ましくは88質量部以上である。バインダー樹脂(A)100質量部に対する(a)〜(d)から選択される少なくとも1種の樹脂成分の量が0.5質量部以上であれば、樹脂組成物の耐熱性が良好である。
樹脂成分(a)〜(d)の4種類を併用してもよい。4種類を併用する場合、バインダー樹脂(A)中のポリアルケニルフェノール樹脂(a)の割合は5〜50質量%、ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体(b)の割合は5〜30質量%、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)の割合は10〜80質量%、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)の割合は10〜80質量%であることが好ましい。
(B)有機低分子化合物
有機低分子化合物(B)は20℃、1atmにおいて130cm/mol以下のモル体積を有し、芳香族カルボン酸及び複数のフェノール性水酸基を有する化合物からなる群より選択される。本開示において「低分子化合物」とは分子量1000以下の化合物をいう。有機低分子化合物(B)は、1種類のみで用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示において、複数のフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸は芳香族カルボン酸として扱うものとする。すなわち、複数のフェノール性水酸基を有する化合物はカルボキシ基を有さない。
有機低分子化合物(B)は、カルボキシ基又は複数のフェノール性水酸基を有しておりアルカリ可溶性である。それに加えて、有機低分子化合物(B)は、そのモル体積が130cm/mol以下と小さいことから、感光性樹脂組成物を用いて形成した被膜からアルカリ性の現像液中へ速やかに溶出する。被膜から有機低分子化合物(B)が溶出することによりバインダー樹脂(A)のポリマー鎖同士の絡み合いが崩されて、現像時にアルカリ可溶性である部分のバインダー樹脂(A)の溶解が促進される。このようにして、有機低分子化合物(B)は、低照射エネルギー露光においても優れたアルカリ現像性及びパターン形成性を感光性樹脂組成物に付与することができる。また、有機低分子化合物(B)は、そのモル体積が130cm/molと小さいことからバインダー樹脂(A)及びその他の成分との相溶性又は分散性に優れており、有機低分子化合物(B)を、感光性樹脂組成物及びそれを用いて形成された被膜中に均一に溶解又は分散することができる。このことは、被膜表面の平滑性及び均一性を高めること、及び有機低分子化合物(B)に起因するアウトガスを低減することについても有利に作用する。
有機低分子化合物(B)は芳香族化合物であるため、露光時及び加熱処理時に変性又は分解しにくい。そのため、高品質の被膜を形成することができ、有機低分子化合物(B)の分解物に起因するアウトガスを低減することもできる。有機低分子化合物(B)のカルボキシ基又は複数のフェノール性水酸基は、被膜の基板に対する密着性向上に寄与する場合もある。
有機低分子化合物(B)のモル体積は、20℃、1atmにおいて、130cm/mol以下であり、75〜120cm/molであることが好ましく、80〜110cm/molであることがより好ましく、85〜100cm/molであることがさらに好ましい。
一実施態様では、有機低分子化合物(B)は25℃において2.5〜4.5のpKa(酸解離定数)を有する芳香族カルボン酸である。芳香族カルボン酸のpKaは2.7〜4.2であることが好ましく、2.8〜4.0であることがより好ましい。上記範囲のpKaを有する芳香族カルボン酸は、バインダー樹脂(A)の溶解を効果的に促進して、低照射エネルギー露光においても優れたアルカリ現像性及びパターン形成性を感光性樹脂組成物に付与することができる。pKaが2.5以上の芳香族カルボン酸は、光酸発生剤、例えばジアゾナフトキノン化合物による、未露光部のバインダー樹脂(A)の溶解抑制効果が失われない程度の溶解性を有しており、ポジ型の感光性樹脂組成物においても、現像時に未露光部の被膜を過度に溶解させることなく、未露光部の被膜の膜厚を十分なレベルに維持して優れたパターン形成性を達成することができる。
一実施態様では、有機低分子化合物(B)は25℃において7.5〜10のpKaを有する複数のフェノール性水酸基を有する化合物である。複数のフェノール性水酸基を有する化合物のpKaは7.8〜9.8であることが好ましく、8.0〜9.6であることがより好ましい。上記範囲のpKaを有する複数のフェノール性水酸基を有する化合物は、バインダー樹脂(A)の溶解を効果的に促進して、低照射エネルギー露光においても優れたアルカリ現像性及びパターン形成性を感光性樹脂組成物に付与することができる。フェノール性水酸基を有する化合物のpKaは、光酸発生剤、例えばジアゾナフトキノン化合物による、未露光部のバインダー樹脂(A)の溶解抑制効果が失われない程度に十分高いため、ポジ型の感光性樹脂組成物においても優れたパターン形成性を達成することができる。
有機低分子化合物(B)は、その芳香環を構成する炭素原子にカルボキシ基及びフェノール性水酸基以外の基が結合していない化合物であることが好ましい。このような化合物は、カルボキシ基及びフェノール性水酸基の個数/モル体積の比が大きいことから、有機低分子化合物(B)の現像液に対する溶解性をより高めて、バインダー樹脂(A)の溶解をより効果的に促進することができる。
芳香族カルボン酸として、例えば、フタル酸(モル体積114.4cm/mol、pKa2.95)、イソフタル酸(モル体積114.4cm/mol、pKa3.53)、テレフタル酸(モル体積114.4cm/mol、pKa3.49)、ヘミメリット酸(モル体積127cm/mol、pKa2.8)、トリメリット酸(モル体積127.0cm/mol、pKa2.84)、及びトリメシン酸(モル体積127.0cm/mol、pKa2.98)からなる群より選択される多価カルボン酸;2,3−ジヒドロキシ安息香酸(モル体積98.8cm/mol、pKa2.96)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(モル体積98.8cm/mol、pKa3.32)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(モル体積98.8cm/mol、pKa3.01)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(モル体積98.8cm/mol、pKa3.96)、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸(モル体積97.2cm/mol、pKa3.3)、及び没食子酸(モル体積97.2cm/mol、pKa4.33)からなる群より選択される芳香族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸は、現像液に対する溶解性が調整しやすい点で2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、又はトリメリット酸であることが好ましく、現像後のパターンの密着性が良好である点で2,4−ジヒドロキシ安息香酸、又は2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸であることがより好ましい。
複数のフェノール性水酸基を有する化合物として、例えば、カテコール(モル体積86.2cm/mol、pKa9.50)、レゾルシノール(モル体積86.2cm/mol、pKa9.45)、ヒドロキノン(モル体積86.2cm/mol、pKa9.58)、1,2,4−ベンゼントリオール(モル体積84.7cm/mol、pKa9.58)、ピロガロール(モル体積84.7cm/mol、pKa9.28)及びフロログルシノール(モル体積84.7cm/mol、pKa9.06)からなる群より選択される芳香族ポリオールなどが挙げられる。複数のフェノール性水酸基を有する化合物は、現像液に対する溶解性が調整しやすい点で、1,2,4−ベンゼントリオール、又はフロログルシノールであることが好ましく、現像後のパターン密着性が良好な点でフロログルシノールであることがより好ましい。
有機低分子化合物(B)のモル体積及びpKaはCAS(Chemical Abstract Service)の提供するSciFinder(登録商標)等のデータベースを用いて調べることができる。
感光性樹脂組成物中の有機低分子化合物(B)の含有量は、(A)バインダー樹脂、(B)有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)着色剤の合計100質量部を基準として、0.1〜20質量部とすることができ、好ましくは1〜15質量部であり、より好ましくは3〜12質量部である。有機低分子化合物(B)の含有量が、上記合計100質量部を基準として0.1質量部以上であれば、バインダー樹脂(A)の溶解を効果的に促進することができ、20質量部以下であればバインダー樹脂(A)の過度の溶解を抑制して、被膜のパターン形成性、表面品質等を高めることができる。
(C)感放射線化合物
感放射線化合物として、光酸発生剤、光塩基発生剤又は光重合開始剤を用いることができる。光酸発生剤は放射線が照射されると酸を発生する化合物を含む。光酸発生剤は、放射線が照射された部分のアルカリ水溶液に対する溶解性を増大させることから、その部分が溶解するポジ型感光性樹脂組成物に使用することができる。光塩基発生剤は放射線が照射されると塩基を発生する化合物を含む。光塩基発生剤は、放射線が照射された部分のアルカリ水溶液に対する溶解性を低下させることから、その部分が不溶化するネガ型感光性樹脂組成物に使用することができる。光重合開始剤は放射線が照射されるとラジカルを発生する化合物を含む。光重合開始剤は、感光性樹脂組成物がラジカル重合性官能基を有するバインダー樹脂又はラジカル重合性化合物を含む場合に、放射線が照射された部分のバインダー樹脂のラジカル重合官能基又はラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行して、その部分にアルカリ水溶液に対して不溶性の硬化物が形成される、ネガ型感光性樹脂組成物に使用することができる。
高感度及び高解像度のパターンを得ることができる点で、感放射線化合物(C)が光酸発生剤であることが好ましい。光酸発生剤として、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、及びヨードニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。一実施態様では、光酸発生剤はi線(365nm)に対する感度の高い化合物又は塩である。
光酸発生剤としてキノンジアジド化合物を用いることが好ましい。キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合又はスルホンアミド結合したもの等が挙げられる。露光部と未露光部のコントラストの観点から、ポリヒドロキシ化合物又はポリアミノ化合物の官能基全体の20モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。
前記ポリヒドロキシ化合物としては、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PCHP、DML−PC、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業株式会社製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A、46DMOC、46DMOEP、TM−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業株式会社製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記ポリアミノ化合物としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記ポリヒドロキシポリアミノ化合物としては、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
キノンジアジド化合物の具体例としては、ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルが挙げられる。
キノンジアジド化合物は紫外光等が照射されると下記反応式2に示す反応を経てカルボキシ基を生成する。カルボキシ基が生成することにより、露光された部分(被膜)がアルカリ水溶液に対して溶解可能となり、その部分にアルカリ現像性が生じる。
Figure 0006827572
感放射性化合物(C)が光酸発生剤である場合、感光性樹脂組成物中の感放射線化合物(C)の含有量は、(A)バインダー樹脂、(B)有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)着色剤の合計100質量部を基準として、5〜50質量部とすることができ、好ましくは10〜45質量部であり、より好ましくは15〜40質量部である。感放射線化合物(C)の含有量が、上記合計100質量部を基準として、5質量部以上であるとアルカリ現像性が良好であり、50質量部以下であると300℃以上での加熱による被膜の減少を抑制することができる。
感放射線化合物(C)として光塩基発生剤を用いてもよい。光塩基発生剤として、アミド化合物及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。一実施態様では、光塩基発生剤はi線(365nm)に対する感度の高い化合物又は塩である。
アミド化合物としては、例えば、2−ニトロフェニルメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−カルボキシレート、9−アントリルメチル−N,N−ジメチルカルバメート、1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート、(E)−1−[3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]ピペリジンなどが挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、1,2−ジイソプロピル−3−(ビスジメチルアミノ)メチレン)グアニジウム2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート、(Z)−{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−N−シクロヘキシルアミノ)メタナミニウムテトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウムn−ブチルトリフェニルボレートなどが挙げられる。
感放射性化合物(C)が光塩基発生剤である場合、感光性樹脂組成物中の感放射線化合物(C)の含有量は、(A)バインダー樹脂、(B)有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)着色剤の合計100質量部を基準として、0.1〜25質量部とすることができ、好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは1〜15質量部である。感放射線化合物(C)の含有量が、上記合計100質量部を基準として、0.1質量部以上であるとアルカリ現像性が良好であり、20質量部以下であると300℃以上での加熱による被膜の減少を抑制することができる。
感放射線化合物(C)として光重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤として、ベンジルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、オキシムエステル化合物、アクリジン化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、芳香族ケトエステル化合物及び安息香酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができる。一実施態様では、光重合開始剤はi線(365nm)に対する感度の高い化合物である。露光時の感度が高いことから、光重合開始剤は、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、オキシムエステル化合物、アクリジン化合物又はベンゾフェノン化合物であることが好ましく、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、又はオキシムエステル化合物であることがより好ましい。
ベンジルケタール化合物としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。α−ヒドロキシケトン化合物としては、例えば、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン又は2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンが挙げられる。α−アミノケトン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノンが挙げられる。アシルホスフィンオキシド化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド又はビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドが挙げられる。オキシムエステル化合物としては、例えば、1−フェニルプロパン−1,2−ジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニルブタン−1,2−ジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパン−1,2,3−トリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1−[4−[4−(カルボキシフェニル)チオ]フェニル]プロパン−1,2−ジオン−2−(O−アセチル)オキシム、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチル)オキシム、1−[9−エチル−6−[2−メチル−4−[1−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルオキシ]ベンゾイル]−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン−1−(O−アセチル)オキシムが挙げられる。アクリジン化合物としては、例えば、1,7−ビス(アクリジン−9−イル)−n−ヘプタンが挙げられる。ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジベンジルケトン又はフルオレノンが挙げられる。アセトフェノン化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンザルアセトフェノン又は4−アジドベンザルアセトフェノンが挙げられる。芳香族ケトエステル化合物としては、例えば、2−フェニル−2−オキシ酢酸メチルが挙げられる。安息香酸エステル化合物としては、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−エチル)ヘキシル、4−ジエチルアミノ安息香酸エチル又は2−ベンゾイル安息香酸メチルが挙げられる。
感放射性化合物(C)が光重合開始剤である場合、感光性樹脂組成物中の感放射線化合物(C)の含有量は、(A)バインダー樹脂、(B)有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)着色剤の合計100質量部を基準として、0.1〜25質量部とすることができ、好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは1〜15質量部である。感放射線化合物(C)の含有量が、上記合計100質量部を基準として、0.1質量部以上であるとアルカリ現像性が良好であり、20質量部以下であると300℃以上での加熱による被膜の減少を抑制することができる。
感放射性化合物(C)が光重合開始剤である場合、感光性樹脂組成物はラジカル重合性化合物をさらに含んでもよい。ラジカル重合性化合物としての複数のエチレン性不飽和基を有する樹脂及び化合物は、被膜を架橋してその硬度を高めることができる。
露光時の反応性、被膜の硬度及び耐熱性などの点から、ラジカル重合性化合物として、複数の(メタ)アクリル基を有する化合物を用いることが好ましい。そのような化合物として、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3−ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン若しくは9,9−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)フルオレン又はそれらの酸変性体、エチレンオキシド変性体若しくはプロピレンオキシド変性体が挙げられる。
感光性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物の含有量は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して、15質量部〜65質量部とすることができ、20質量部〜60質量部であることが好ましく、25質量部〜50質量部であることがより好ましい。ラジカル重合性化合物の含有量が上記範囲であると、アルカリ現像性が良好であり、硬化した被膜の耐熱性を向上させることができる。
(D)着色剤
着色剤(D)は黒色染料及び黒色顔料からなる群より選択される。着色剤(D)を含む感光性樹脂組成物を用いて有機EL素子に黒色の隔壁を形成することにより、有機ELディスプレイ等の表示装置の視認性を向上させることができる。
一実施態様では着色剤(D)は黒色染料を含む。黒色染料として、ソルベントブラック27〜47のカラーインデックス(C.I.)で規定される染料を用いることができる。黒色染料は、好ましくは、ソルベントブラック27、29又は34のC.I.で規定されるものである。ソルベントブラック27〜47のC.I.で規定される染料のうち少なくとも1種類を黒色染料として用いた場合、焼成後の感光性樹脂組成物の被膜の遮光性を維持することができる。黒色染料を含む感光性樹脂組成物は、黒色顔料を含む感光性樹脂組成物と比較して、現像時に着色剤の残渣が少なく、高精細のパターンを被膜に形成することができる。
着色剤(D)が黒色染料である場合の感光性樹脂組成物中の着色剤(D)の含有量は、(A)バインダー樹脂、(B)有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)着色剤の合計100質量部を基準として、1〜70質量部が好ましく、より好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは10〜50質量部である。着色剤(D)の含有量が、上記合計100質量部を基準として1質量部以上であれば、焼成後の被膜の遮光性を維持することができる。着色剤(D)の含有量が、上記合計100質量部を基準として70質量部以下であれば、残膜率、耐熱性、感度等が適切である。
着色剤(D)として黒色顔料を用いてもよい。黒色顔料として、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、チタンブラック、ペリレン系顔料、ラクタム系顔料等が挙げられる。これらの黒色顔料に表面処理を施したものを使用することもできる。市販のペリレン系顔料の例としては、BASF社製のK0084、K0086、ピグメントブラック21、30、31、32、33、及び34等が挙げられる。市販のラクタム系顔料の例としては、BASF社製のIrgaphor(登録商標)ブラック S0100CFが挙げられる。高い遮光性を有することから、黒色顔料は、好ましくはカーボンブラック、チタンブラック、ペリレン系顔料、及びラクタム系顔料からなる群より選択される少なくとも1種である。感放射線化合物(C)が光重合開始剤であるネガ型の感光性樹脂組成物においては、着色剤(D)は、重合を阻害しにくい黒色顔料であることが有利である。
着色剤(D)が黒色顔料である場合の感光性樹脂組成物中の着色剤(D)の含有量は、(A)バインダー樹脂、(B)有機低分子化合物、(C)感放射線化合物、及び(D)着色剤の合計100質量部を基準として、1〜70質量部が好ましく、より好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは10〜50質量部である。着色剤(D)の含有量が、上記合計100質量部を基準として1質量部以上であれば、十分な遮光性を得ることができる。着色剤(D)の含有量が、上記合計100質量部を基準として70質量部以下であれば、残膜率、感度等が適切である。
(E)任意成分
感光性樹脂組成物は任意成分として、熱硬化剤、界面活性剤、(D)以外の着色剤等を含むことができる。任意成分(E)は(A)〜(D)のいずれにも当てはまらないものと定義する。
熱硬化剤として、熱ラジカル発生剤を使用することができる。好ましい熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物を挙げることができ、具体的にはジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の10時間半減期温度が100〜170℃の有機過酸化物等を挙げることができる。
熱硬化剤の含有量は、バインダー樹脂(A)、有機低分子化合物(B)、感放射線化合物(C)、着色剤(D)、及びその他の固形分(熱硬化剤を除く。)の合計100質量部を基準として、5質量部以下が好ましく、より好ましくは4質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下である。
感光性樹脂組成物は、例えば塗工性を向上させるため、被膜の平滑性を向上させるため、又は被膜の現像性を向上させるために、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;メガファック(登録商標)F−251、同F−281、同F−430、同F−444、同R−40、同F−553、同F−554、同F−555、同F−556、同F−557、同F−558、同F−559(以上、商品名、DIC株式会社製)、サーフロン(登録商標)S−242、同S−243、同S−386、同S−420、同S−611(以上、商品名、ACGセイミケミカル株式会社製)等のフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサンポリマーKP323、KP326、KP341(以上、商品名、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上用いることもできる。
界面活性剤の含有量は、バインダー樹脂(A)、有機低分子化合物(B)、感放射線化合物(C)、着色剤(D)、及びその他の固形分(界面活性剤を除く。)の合計100質量部を基準として、2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下の量である。
感光性樹脂組成物は、黒色染料及び黒色顔料以外の第2着色剤を含有することができる。第2着色剤として、染料、有機顔料、無機顔料等が挙げられ、目的に合わせて用いることができる。第2着色剤は、本発明の効果を損なわない含有量で使用することができる。
染料としては、例えば、アゾ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、メロシアニン系染料、スチルベン系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、フルオラン系染料、スピロピラン系染料、フタロシアニン系染料、インジゴ系染料、フルギド系染料、ニッケル錯体系染料、及びアズレン系染料等が挙げられる。
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー20、24、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:4、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等を挙げることができる。
(F)溶媒
感光性樹脂組成物は、溶媒に溶解されて溶液状態(但し、黒色顔料を含むときは、顔料は分散状態である。)で用いることができる。例えば、バインダー樹脂(A)を溶媒(F)に溶解して得られた溶液に、有機低分子化合物(B)、感放射線化合物(C)、着色剤(D)、必要に応じて熱硬化剤、界面活性剤等の任意成分(E)を所定の割合で混合することにより、溶液状態の感光性樹脂組成物を調製することができる。感光性樹脂組成物は、溶媒の量を変化させることにより使用する塗布方法に適した粘度に調整することができる。
溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール化合物、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート化合物、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
感光性樹脂組成物は、バインダー樹脂(A)、有機低分子化合物(B)、感放射線化合物(C)、着色剤(D)、及び必要に応じて任意成分(E)を溶媒(F)に溶解又は分散して混合することにより調製することができる。使用目的により、感光性樹脂組成物の固形分濃度を適宜決定することができる。例えば、感光性樹脂組成物の固形分濃度を1〜60質量%としてもよく、3〜50質量%、又は5〜40質量%としてもよい。
顔料を使用する場合の分散混合方法については公知の方法を使用することができる。例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、ロッキングミルなどのボール型、ニーダー、パドルミキサー、プラネタリミキサー、ヘンシェルミキサーなどのブレード型、3本ロールミキサーなどのロール型、その他としてライカイ機、コロイドミル、超音波、ホモジナイザー、自転・公転ミキサーなどを使用してもよい。分散効率と微分散化からビーズミルを使用することが好ましい。
調製された感光性樹脂組成物は、通常、使用前にろ過される。ろ過の手段としては、例えば孔径0.05〜1.0μmのミリポアフィルター等が挙げられる。
このように調製された感光性樹脂組成物は、長期間の貯蔵安定性にも優れている。
感光性樹脂組成物を放射線リソグラフィーに使用する場合、まず、感光性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散してコーティング組成物を調製する。次に、コーティング組成物を基板表面に塗布し、加熱等の手段により溶媒を除去して、被膜を形成することができる。基板表面へのコーティング組成物の塗布方法は特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、スリット法、スピンコート法等を使用することができる。
コーティング組成物を基板表面に塗布した後、通常、加熱(プリベーク)により溶媒を除去して被膜を形成する。加熱条件は各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常70〜130℃で、例えばホットプレート上なら1〜20分間、オーブン中では3〜60分間加熱処理をすることによって被膜を得ることができる。
次にプリベークされた被膜に所定のパターンを有するフォトマスクを介して放射線(例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、ガンマ線、シンクロトロン放射線等)等を照射する(露光工程)。キノンジアジド化合物を感放射線化合物として使用する場合、好ましい放射線は、250〜450nmの波長を有する紫外線〜可視光線である。一実施態様では、放射線はi線である。
露光工程の後、被膜を現像液に接触させることにより現像し、不要な部分を除去して被膜にパターンを形成する(現像工程)。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノナン等の環状アミン等のアルカリ化合物の水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。現像時間は通常30〜180秒間である。現像方法は液盛り法、シャワー法、ディッピング法等のいずれでもよい。現像後、流水洗浄を30〜90秒間行い、不要な部分を除去し、圧縮空気又は圧縮窒素で風乾させることによって、被膜にパターンを形成することができる。
その後、パターンが形成された被膜を、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、例えば100〜350℃で、20〜200分間加熱処理をすることによって硬化被膜を得ることができる(ポストベーク、加熱処理工程)。加熱処理において、温度を一定に維持してもよく、温度を連続的に上昇させてもよく、段階的に上昇させてもよい。
感光性樹脂組成物の硬化被膜の光学濃度(OD値)は、膜厚1μmあたり0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。硬化被膜のOD値が膜厚1μmあたり0.5以上であれば、十分な遮光性を得ることができる。
一実施態様は、感光性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散してコーティング組成物を調製すること、コーティング組成物を基材に塗布して被膜を形成すること、被膜に含まれる溶媒を除去して被膜を乾燥すること、乾燥した被膜に放射線をフォトマスク越しに照射して被膜を露光すること、露光された被膜を現像液に接触させることにより現像して、被膜にパターンを形成すること、及びパターンが形成された被膜を100℃〜350℃の温度で加熱処理して、有機EL素子隔壁を形成することを含む有機EL素子隔壁の製造方法である。
一実施態様は、感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子隔壁である。
一実施態様は、感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
バインダー樹脂(A)の重量平均分子量及び数平均分子量に関しては、以下の測定条件で、ポリスチレンの標準物質を使用して作成した検量線を用いて算出した。
装置名:Shodex(登録商標)GPC−101
カラム:Shodex(登録商標)LF−804
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検出器:Shodex(登録商標)RI−71
温度:40℃
(1)バインダー樹脂(A)の合成
[製造例1]エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c1)の製造
300mLの3つ口型フラスコに溶媒としてγ−ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)300g、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物としてEPICLON(登録商標)N−695(DIC株式会社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210)を150g仕込み、窒素ガス雰囲気下、60℃で溶解させた。そこへヒドロキシ安息香酸化合物として3,5−ジヒドロキシ安息香酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)を70.4g(エポキシ1当量に対して0.65当量)、反応触媒としてトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)を0.661g(2.52mmol)追加し、110℃で24時間反応させた。反応溶液を室温に戻し、γ−ブチロラクトンで固形分20質量%に希釈し、溶液をろ過して804.2g回収した(樹脂液c1)。得られた反応物の数平均分子量は3000、重量平均分子量は8100であった。
[製造例2]エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c2)の製造
300mLの3つ口型フラスコに溶媒としてγ−ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)75.2g、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物としてEPICLON(登録商標)N−770(DIC株式会社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)を37.6g仕込み、窒素ガス雰囲気下、60℃で溶解させた。そこへヒドロキシ安息香酸化合物として3,5−ジヒドロキシ安息香酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)を20.1g(エポキシ1当量に対して0.65当量)、反応触媒としてトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)を0.173g(0.660mmol)追加し、110℃で21時間反応させた。反応溶液を室温に戻し、γ−ブチロラクトンで固形分20質量%に希釈し、溶液をろ過して197.7g回収した(樹脂液c2)。得られた反応物の数平均分子量は2400、重量平均分子量は8300であった。
[製造例3]アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)の製造
4−ヒドロキシフェニルメタクリレート(昭和電工株式会社製「PQMA」)28.0g、及びN−シクロヘキシルマレイミド(株式会社日本触媒製)7.89gを、1−メトキシ−2−プロピルアセテート(株式会社ダイセル製)77.1gに、重合開始剤としてV−601(富士フィルム和光純薬株式会社製)3.66gを、1−メトキシ−2−プロピルアセテート(株式会社ダイセル製)14.6gにそれぞれ完全に溶解させた。得られた2つの溶液を、300mLの3つ口型フラスコ中、窒素ガス雰囲気下で85℃に加熱した1−メトキシ−2−プロピルアセテート(株式会社ダイセル製)61.2gに同時に2時間かけて滴下し、その後85℃で3時間反応させた。室温まで冷却した反応溶液を815gのトルエン中に滴下し、共重合体を沈殿させた。沈殿した共重合体をろ過により回収し、90℃で4時間真空乾燥し白色の粉体を32.4g回収した。これをγ−ブチロラクトンに溶解し、固形分20質量%の樹脂液を得た(樹脂液d1)。得られた反応物の数平均分子量は6100、重量平均分子量は11800であった。
(2)原料
(A)バインダー樹脂
バインダー樹脂(A)として、製造例1〜3により合成した樹脂液c1、c2、d1を使用した。
(B)有機低分子化合物
有機低分子化合物(B)として表1に示す化合物を使用した。モル体積(cm/mol)及びpKaはScifinder(登録商標)から引用した。
Figure 0006827572
Figure 0006827572
(C)感放射線化合物
感放射線化合物として光酸発生剤であるキノンジアジド化合物TS150−A(α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼンの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(東洋合成工業株式会社製)を使用した。TS−150Aの構造を以下に示す。TS−150Aのスルホン酸エステル化率は約50%である。
Figure 0006827572
(D)着色剤
着色剤として、黒色染料であるVALIFAST(登録商標)BLACK 3804(ソルベントブラック34のC.I.で規定される黒色染料(オリエント化学工業株式会社製))を使用した。
(E)任意成分
界面活性剤としてメガファック(登録商標)F−559(フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製))を使用した。
(F)溶媒
溶媒としてγ―ブチロラクトンを使用した。
(3)感光性樹脂組成物の調製及び評価
[実施例1〜10、比較例1〜6]
樹脂液d1 22.5質量部(固形分4.5質量部)、及び樹脂液c1 21質量部(固形分4.2質量部)を混合して溶解し、得られた溶液に、表1に記載の各有機低分子化合物(B) 5質量部、TS−150A 22質量部、VALIFAST(登録商標)BLACK 3804 29.5質量部、及びメガファック(登録商標)F−559 0.14質量部、及び希釈溶媒を加え、さらに混合を行った。溶解を目視で確認した後、孔径0.22μmのミリポアフィルターで濾過し、固形分濃度12質量%の感光性樹脂組成物を調製した。
各実施例及び各比較例で調製した感光性樹脂組成物について、パターン形成性及び残渣、表面状態、及びITO密着性の評価を行った。結果を表2に示す。評価方法は下記のとおりである。
[パターン形成性及び残渣]
インジウムスズ酸化物(ITO)膜を有するガラス基板(大きさ70mm×70mm×0.7mm)のITO膜上に実施例1〜10、比較例1〜6の感光性樹脂組成物をそれぞれ乾燥膜厚が約1〜2μmになるようにバーコートし、120℃で80秒溶媒を乾燥した。さらに超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(商品名マルチライトML−251A/B、ウシオ電機株式会社製)で水銀露光用バンドパスフィルター(商品名HB0365、朝日分光株式会社製)と石英製のフォトマスクを介してi線のみ100mJ/cmで露光した。フォトマスクのライン&スペース(L/S)パターンは10μmであった。露光量は紫外線積算光量計(商品名UIT−150 受光部 UVD−S365、ウシオ電機株式会社製)を用いて測定した。露光した被膜は、スピン現像装置(AD−1200、滝沢産業株式会社製)を用い2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で60秒間アルカリ現像を行った。その後、窒素ガス雰囲気下250℃で60分硬化させることによりパターンサンプルを得た。光学顕微鏡(VHX−6000、株式会社キーエンス製)を用いた観察で、パターンのエッジ部分も含めてアルカリ現像後の残渣がない場合を「良好」、残渣があった場合を「不良」として判定した。
パターン形成性及び残渣の両方とも良好であったものを、パターン形成性及び残渣について「良好」、それ以外を「不良」と判定した。
[表面状態]
上記と同様にパターンを形成後、ゆず肌状になっていないか、色がまだらになっていないかを、光学顕微鏡(VHX−6000、株式会社キーエンス製)を用いて評価した。ゆず肌状部及び色の不均一が観察されないものを「良好」、ゆず肌状部及び色の不均一のいずれか一つでも観察されたものを「不良」と判定した。
[ITO密着性]
上記と同様にパターンを形成後、パターンがフォトマスクどおりに形成されているかを、光学顕微鏡(VHX−6000、株式会社キーエンス製)を用いて評価した。フォトマスクのとおりにパターンが残存しているものを「良好」、パターンが一部剥がれているものを「不良」として判定した。
Figure 0006827572
[実施例11〜15]
表3に示す組成で実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製した。各実施例で調製した感光性樹脂組成物について、膜厚、加熱後OD値、未露光部溶解性、及び残膜率の評価を行った。結果を表3に示す。評価方法は下記のとおりである。
[膜厚]
パターン形成性及び残渣確認後のパターンサンプルの10μm L/S部分を、表面粗さ計(サーフコム130A、東京精密株式会社製)を用いて測定した。
[加熱後OD値]
ガラス基板(大きさ100mm×100mm×1mm)に実施例11〜15の感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が約1.5μmになるようにスピンコートし、ホットプレート上120℃で80秒加熱し溶媒を乾燥した。その後、窒素ガス雰囲気下250℃で60分硬化させることにより被膜を得た。硬化後の被膜のOD値を透過濃度計(BMT−1、サカタインクスエンジニアリング株式会社製)で測定し、ガラスのみのOD値で補正を行って、被膜の厚さ1μm当たりのOD値に換算した。被膜の厚みは光学式膜厚測定装置(F20−NIR、フィルメトリクス株式会社製)を用いて測定した。
[未露光部溶解性]
ITO膜付きガラス基板(大きさ70mm×70mm×0.7mm)に実施例11〜15の感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が1.5〜2.0μmになるようにバーコートし、ホットプレート上120℃で80秒加熱し溶媒を乾燥した。乾燥膜厚を光学式膜厚測定装置(F20−NIR、フィルメトリクス株式会社製)を用いて測定後、スピン現像装置(AD−1200、滝沢産業株式会社製)を用い2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で60秒間アルカリ現像を行なった。アルカリ現像後の膜厚を再び光学式膜厚測定装置(F20−NIR、フィルメトリクス株式会社製)を用いて測定し、現像前後で溶解した膜厚を未露光部溶解性として算出した。
[残膜率]
未露光部溶解性測定後の被膜を窒素ガス雰囲気下250℃で60分硬化し、硬化後の被膜の膜厚を光学式膜厚測定装置(F20−NIR、フィルメトリクス株式会社製)を用いて測定した。各測定値より以下の式に沿って残膜率を算出した。
残膜率(%)=未露光部溶解(現像)及び硬化工程を経た後の膜厚/未露光部溶解前膜厚
Figure 0006827572
本発明の感光性樹脂組成物は、有機EL素子の隔壁を形成する放射線リソグラフィーに好適に利用することができる。本発明の感光性樹脂組成物から形成された隔壁を備えた有機EL素子は、良好なコントラストを示す表示装置の電子部品として好適に使用される。

Claims (11)

  1. (A)バインダー樹脂、
    (B)モル体積が130cm/mol以下であり、芳香族カルボン酸及び複数のフェノール性水酸基を有する化合物からなる群より選択される、少なくとも1種の有機低分子化合物、
    (C)感放射線化合物、及び
    (D)黒色染料及び黒色顔料からなる群より選択される着色剤
    を含む、有機EL素子隔壁用感光性樹脂組成物であって、前記バインダー樹脂(A)が、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)を含み、前記感光性樹脂組成物の硬化被膜の光学濃度(OD値)が膜厚1μmあたり0.5以上であり、前記有機低分子化合物(B)が、2.5〜4.5のpKaを有する芳香族カルボン酸である有機EL素子隔壁用感光性樹脂組成物。
  2. 前記有機低分子化合物(B)の芳香環を構成する炭素原子にカルボキシ基及びフェノール性水酸基以外の基が結合していない、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 前記芳香族カルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、及びトリメシン酸からなる群より選択される多価カルボン酸;又は2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、及び没食子酸からなる群より選択される芳香族ヒドロキシカルボン酸である、請求項1又は2のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
  4. 前記バインダー樹脂(A)、前記有機低分子化合物(B)、前記感放射線化合物(C)及び前記着色剤(D)の合計100質量部を基準として、0.1質量部〜20質量部の前記有機低分子化合物(B)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  5. 前記感放射線化合物(C)が、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、及びヨードニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種の光酸発生剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  6. 前記バインダー樹脂(A)がアルカリ可溶性官能基を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  7. 前記バインダー樹脂(A)、前記有機低分子化合物(B)、前記感放射線化合物(C)及び前記着色剤(D)の合計100質量部を基準として、1質量部〜70質量部の前記着色剤(D)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  8. 前記バインダー樹脂(A)、前記有機低分子化合物(B)、前記感放射線化合物(C)及び前記着色剤(D)の合計100質量部を基準として、5質量部〜50質量部の前記感放射線化合物(C)としての光酸発生剤を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  9. 前記バインダー樹脂(A)が、
    (a)式(1)
    Figure 0006827572
    (式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、式(2)
    Figure 0006827572
    (式(2)において、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であり、式(2)の*は、芳香環を構成する炭素原子との結合部を表す。)で表されるアルケニル基、炭素原子数1〜2のアルコキシ基又は水酸基であり、かつR、R及びRの少なくとも1つは式(2)で表されるアルケニル基であり、Qは式−CR−で表されるアルキレン基、炭素原子数5〜10のシクロアルキレン基、芳香環を有する2価の有機基、脂環式縮合環を有する2価の有機基又はこれらを組み合わせた2価基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基である。)
    の構造単位を有するポリアルケニルフェノール樹脂、及び
    (d)アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体
    からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子隔壁。
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子。
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