JP2023098315A - ポジ型感光性樹脂組成物、及び有機el素子隔壁 - Google Patents

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Abstract

【課題】高感度且つ得られる被膜表面の荒れが少なく、プロセスウィンドウ及び保存安定性が良好な、金属錯体染料を含む感光性樹脂組成物を提供する。【解決手段】バインダー樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、金属錯体染料(C)と、を含むポジ型感光性樹脂組成物であって、前記金属錯体染料(C)が、金属錯イオンと、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンとを含む、ポジ型感光性樹脂組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、並びにそれを用いた有機EL素子隔壁、有機EL素子絶縁膜、及び有機EL素子に関する。より詳しくは、本発明は、金属錯体染料を含有するポジ型感光性樹脂組成物、並びにそれを用いた有機EL素子隔壁、有機EL素子絶縁膜、及び有機EL素子に関する。
有機ELディスプレイ(OLED)等の表示装置においては、表示特性向上のために、表示領域内の着色パターンの間隔部又は表示領域周辺部分の縁等に隔壁材が用いられている。有機EL表示装置の製造では、有機物質の画素が互いに接触しないようにするため、まず隔壁が形成され、その隔壁の間に有機物質の画素が形成される。
この隔壁は一般に、感光性樹脂組成物を用いるフォトリソグラフィによって形成され、絶縁性を有する。詳しくは、塗布装置を用いて感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、揮発成分を加熱等の手段で除去したのち、マスクを介して露光し、次いでネガ型の場合は未露光部分を、ポジ型の場合は露光部分をアルカリ水溶液等の現像液で除去することによって現像し、得られたパターンを加熱処理して、隔壁(絶縁膜)を形成する。次いでインクジェット法等によって、赤、緑、青の3色の光を発する有機物質を隔壁の間に成膜して、有機EL表示装置の画素を形成する。
該分野では近年、表示装置の小型化、及び表示するコンテンツが多様化したことにより、画素の高性能化及び高精細化が要求されている。表示装置におけるコントラストを高め、視認性を向上させる目的で、着色剤を用いて隔壁材に遮光性を持たせる試みがなされている。しかし、隔壁材に遮光性を持たせた場合、感光性樹脂組成物が低感度となる傾向があり、その結果、露光時間が長くなり生産性が低下するおそれがある。そのため、着色剤を含む隔壁材の形成に使用される感光性樹脂組成物はより高感度であることが要求される。
特許文献1(特開2001-281440号公報)は、露光後の加熱処理により高い遮光性を示す感放射線性樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド化合物とを含むポジ型感放射線性樹脂組成物にチタンブラックを添加した組成物を記載している。
特許文献2(特開2002-116536号公報)は、[A]アルカリ可溶性樹脂、[B]1,2-キノンジアジド化合物、及び[C]着色剤を含有する感放射線性樹脂組成物において、カーボンブラックを用いて隔壁材を黒色化する方法を記載している。
特許文献3(特開2010-237310号公報)は、露光後の加熱処理により遮光性を示す感放射線性樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド化合物とを含むポジ型感放射線性樹脂組成物に感熱色素を添加した組成物を記載している。
特許文献4(国際公開第2017/069172号)は、(A)バインダー樹脂、(B)キノンジアジド化合物、及び(C)ソルベントブラック27~47のカラーインデックスで規定される黒色染料から選ばれた少なくとも1種の黒色染料を含有するポジ型感光性樹脂組成物を記載している。
特開2001-281440号公報 特開2002-116536号公報 特開2010-237310号公報 国際公開第2017/069172号
着色された隔壁材の形成に使用される感光性樹脂組成物では、硬化した膜の遮光性を十分高めるために、着色剤を相当量使用する必要がある。このように多量の着色剤を用いた場合、感光性樹脂組成物の被膜に照射された放射線が着色剤により吸収されるために、被膜中の放射線の有効強度が低下し、感光性樹脂組成物が十分に露光されず、結果としてパターン形成性が低下する。
特に、黒色剤を含む感光性樹脂組成物を用いて厚い被膜、例えば厚さ2~3μmの被膜を形成しようとすると、黒色剤に加えて感放射線化合物による放射線の吸収により、露光部の被膜底部に到達する放射線量が顕著に低下する。そのため、ポジ型においては、露光部の被膜底部のアルカリ溶解性が不足して現像時に樹脂残渣が発生する、あるいは所望の厚さの被膜を得るために多量の感光性樹脂組成物を消費する、すなわち残膜率が低下する場合がある。一方、ネガ型においては、露光部の被膜底部の不溶化が十分でなく、現像時に被膜剥離が生じる場合がある。そのため、黒色剤を含む感光性樹脂組成物において、硬化被膜に高い光学濃度(OD値)を付与しつつ、硬化被膜の厚さを増加させることのできる感光性樹脂組成物が切望されている。
現像工程においては、微視的に不均一な樹脂の溶解が発生すると、その部分の樹脂の表面積、すなわち現像液との接触面積が増加し、樹脂の溶解速度が局所的に増加する。その結果、現像工程で被膜が不均一に溶解して、現像後の被膜表面の荒れ、パターン形状の悪化などを生じさせる場合がある。このことは、一般に長時間の現像時間又は高濃度の現像液の使用を必要とする、厚膜の現像工程において顕著である。
本発明者らは、市販の金属錯体染料を着色剤として用いた感光性樹脂組成物は、感度が低下して、現像時に樹脂残渣が発生したり、現像後の被膜表面に荒れが発生したり、プリベーク温度変更時に溶解性の変化量(以下プロセスウィンドウと呼ぶ)が大きくなったりする場合があることを見出した。さらに、市販の金属錯体染料を着色剤として用いた感光性樹脂組成物は、保存安定性が不良であり、室温保存の後に、被膜のパターンホール径が増加する場合があった。
本発明の目的は、高感度且つ得られる被膜表面の荒れが少なく、プロセスウィンドウ及び保存安定性が良好な、金属錯体染料を含む感光性樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、金属錯体染料を含むポジ型感光性樹脂組成物において、金属錯体染料を構成するカウンターカチオンを、含窒素複素環構造を有するカチオンへと変更とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物の感度を高めつつ、得られる被膜表面の荒れを防ぎ、プロセスウィンドウ及び保存安定性を改善できることを見出した。
すなわち、本発明は次の態様を含む。
[1]
バインダー樹脂(A)と、
光酸発生剤(B)と、
金属錯体染料(C)と、
を含むポジ型感光性樹脂組成物であって、前記金属錯体染料(C)が、金属錯イオンと、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンとを含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
[2]
前記バインダー樹脂(A)が、アルカリ可溶性官能基を有する、[1]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[3]
前記カウンターカチオンが、N-アルキルモルホリニウムカチオン、及びN-アルキルピペリジニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[4]
前記金金属錯イオンを形成する金属元素が、クロム、銅、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[5]
前記金属元素がクロムである、[4]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[6]
前記金属錯体染料(C)が黒色染料である、[1]~[5]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[7]
前記金属錯イオンが、ソルベントブラック22~47のカラーインデックスで規定される化合物に含まれる金属錯イオンである、[6]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[8]
前記バインダー樹脂(A)が、複数のフェノール性水酸基を有する、[1]~[7]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[9]
前記バインダー樹脂(A)が、フェノール性水酸基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体を含む、[8]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[10]
前記バインダー樹脂(A)が、式(10)
Figure 2023098315000001
(式(10)において、R15は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、eは1~5の整数である。)
で表される構造単位を有する、[8]又は[9]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[11]
前記バインダー樹脂(A)が、式(11)
Figure 2023098315000002
(式(11)において、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1~3のフルオロアルキル基、又はハロゲン原子であり、R18は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。)
で表される構造単位を有する、[10]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[12]
前記バインダー樹脂(A)が、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂をさらに含む、[8]~[11]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[13]
前記ポジ型感光性樹脂組成物の固形分100質量%を基準として、前記金属錯体染料(C)を5質量%~50質量%含む、[1]~[12]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[14]
前記ポジ型感光性樹脂組成物の固形分100質量%を基準として、前記光酸発生剤(B)を1質量%~50質量%含む、[1]~[13]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[15]
前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化被膜の光学濃度(OD値)が、膜厚1μmあたり0.5以上である、[1]~[14]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子隔壁。
[17]
[1]~[15]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子絶縁膜。
[18]
[1]~[15]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子。
本発明によれば、高感度で、得られる被膜表面の荒れが小さく、プロセスウィンドウ及び保存安定性が改善された、金属錯体染料を含む感光性樹脂組成物を提供することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本開示において「アルカリ可溶性」及び「アルカリ水溶液可溶性」とは、ポジ型感光性樹脂組成物若しくはその成分、又はポジ型感光性樹脂組成物の被膜若しくは硬化被膜が、2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に溶解可能であることを意味する。「アルカリ可溶性官能基」とは、そのようなアルカリ可溶性を、ポジ型感光性樹脂組成物若しくはその成分、又はポジ型感光性樹脂組成物の被膜若しくは硬化被膜に付与する基を意味する。アルカリ可溶性官能基としては、例えば、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、酸無水物基、及びメルカプト基が挙げられる。
本開示において「酸分解性基」とは、酸の存在下、必要に応じて加熱を行うことにより、分解(脱保護)し、アルカリ可溶性官能基を生成させる基を意味する。
本開示において「ラジカル重合性官能基」とは、エチレン性不飽和基を意味し、「ラジカル重合性化合物」とは、1又は複数のエチレン性不飽和基を有する化合物を意味する。
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
本開示において、樹脂、重合体、又は共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、gel permeation chromatography)によって測定される、標準ポリスチレン換算値を意味する。
本開示において「樹脂成分」とは、バインダー樹脂(A)を意味する。
本開示において「固形分」とは、ポジ型感光性樹脂組成物に関し、バインダー樹脂(A)、光酸発生剤(B)、金属錯体染料(C)、溶解促進剤(D)、及び任意成分(E)を含み、溶媒(F)を除く成分の合計質量を意味する。
[ポジ型感光性樹脂組成物]
一実施態様のポジ型感光性樹脂組成物は、バインダー樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、金属錯体染料(C)とを含む。
〈バインダー樹脂(A)〉
バインダー樹脂(A)は特に限定されるものではなく、アルカリ可溶性官能基を有していても有していなくてもよい。中では、任意成分としてアルカリ可溶な低分子溶解促進剤などが必要なくなることから、バインダー樹脂(A)は、アルカリ可溶性官能基を有し、バインダー樹脂(A)自身がアルカリ可溶性であることが好ましい。アルカリ可溶性官能基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、酸無水物基、及びメルカプト基が挙げられる。バインダー樹脂(A)は、2種以上のアルカリ可溶性官能基を有していてもよい。
バインダー樹脂(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体、シリコーン樹脂、環状オレフィンポリマー、カルド樹脂、及びこれらの樹脂の誘導体、並びにこれらの樹脂にアルカリ可溶性官能基を結合させたものが挙げられる。バインダー樹脂(A)として、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体の単独重合体又は共重合体を使用することもできる。これらの樹脂は単独で、又は2種類以上の樹脂を組み合わせて用いることができる。バインダー樹脂(A)はラジカル重合性官能基を有してもよい。一実施態様では、バインダー樹脂(A)はラジカル重合性官能基として(メタ)アクリル基、アリル基又はメタリル基を有する。
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は以下の(a)~(l)の樹脂成分から選択される少なくとも1種を含む。
(a)ポリアルケニルフェノール樹脂
(b)ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体
(c)エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂
(d)アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体
(e)ポリイミド樹脂
(f)ポリアミック酸樹脂
(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂
(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体
(i)シリコーン樹脂
(j)環状オレフィンポリマー
(k)カルド樹脂
(l)フェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂
(a)ポリアルケニルフェノール樹脂
ポリアルケニルフェノール樹脂は、公知のフェノール樹脂の水酸基をアルケニルエーテル化し、さらにアルケニルエーテル基をクライゼン転位することにより得ることができる。中でも、ポリアルケニルフェノール樹脂は、式(1)
Figure 2023098315000003
の構造単位を有することが好ましい。このような樹脂を含有することにより、得られる感光性樹脂組成物の現像特性を向上させるとともに、アウトガスを低減することができる。
式(1)において、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、式(2)
Figure 2023098315000004
(式(2)において、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基であり、式(2)の*は、芳香環を構成する炭素原子との結合部を表す。)で表されるアルケニル基、炭素原子数1~2のアルコキシ基、又は水酸基であり、かつR、R、及びRの少なくとも1つは、式(2)で表されるアルケニル基であり、Qは、式-CR-で表されるアルキレン基、炭素原子数5~10のシクロアルキレン基、芳香環を有する2価の有機基、脂環式縮合環を有する2価の有機基、又はこれらを組み合わせた2価基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基である。式(1)の構造単位が1分子中に2つ以上存在するときは、それぞれの式(1)の構造単位は同一でも異なってもよい。
式(1)のR、R、及びRは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、式(2)で表されるアルケニル基、炭素原子数1~2のアルコキシ基、又は水酸基であり、かつR、R、及びRの少なくとも1つは、式(2)で表されるアルケニル基である。式(1)のR、R、及びRにおいて、炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、及びn-ペンチル基を挙げることができる。炭素原子数1~2のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
式(2)で表されるアルケニル基において、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基である。炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、及びn-ペンチル基を挙げることができる。炭素原子数5~10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基を挙げることができる。炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましい。好ましい式(2)で表されるアルケニル基としては、反応性の点からアリル基、メタリル基を挙げることができ、より好ましくはアリル基である。
、R、及びRのうち、いずれか1つがアリル基又はメタリル基であり、他の2つが水素原子であることが最も好ましい。
式(1)のQは、式-CR-で表されるアルキレン基、炭素原子数5~10のシクロアルキレン基、芳香環を有する2価の有機基、脂環式縮合環を有する2価の有機基、又はこれらを組み合わせた2価基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数5~10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~12のアリール基である。炭素原子数1~5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、及びn-ペンチル基を挙げることができる。炭素原子数2~6のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基を挙げることができる。炭素原子数5~10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基を挙げることができる。炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、及びナフチル基を挙げることできる。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、共に水素原子であることが最も好ましい。
炭素原子数5~10のシクロアルキレン基の具体例としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、及びシクロヘプチレン基を挙げることができる。芳香環を有する2価の有機基の具体例として、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、アントラセニレン基、キシリレン基、4,4-メチレンジフェニル基、又は式(6)
Figure 2023098315000005
で表される基を挙げることができる。脂環式縮合環を有する2価の有機基の具体例としては、ジシクロペンタジエニレン基を挙げることができる。
バインダー樹脂(A)としてポリアルケニルフェノール樹脂を用いる場合、アルカリ現像性、アウトガスの低減等の点から特に好ましいポリアルケニルフェノール樹脂として、式(1)のQが-CH-であるもの、すなわち式(4)
Figure 2023098315000006
で表される構造単位を有するものが挙げられる。式(4)において、R、R、及びRは式(1)と同様である。好ましいR、R、及びRは、式(1)における好ましいR、R、及びRと同様である。
式(1)又は式(4)で表される構造単位は、ポリアルケニルフェノール樹脂中50~100モル%であることが好ましく、より好ましくは70~100モル%であって、さらに好ましくは80~100モル%である。式(1)又は式(4)で表される構造単位がポリアルケニルフェノール樹脂中50モル%以上であることが、耐熱性が向上するため好ましい。ポリアルケニルフェノール樹脂中のフェノール性水酸基は、塩基性化合物の存在下でイオン化し、水に溶解できるようになるため、アルカリ現像性の観点から、フェノール性水酸基が一定量以上あることが好ましい。そのため、式(4)の構造単位を含むポリアルケニルフェノール樹脂は、式(4)で表される構造単位及び式(7)
Figure 2023098315000007
で表される構造単位を有するポリアルケニルフェノール樹脂であることが特に好ましい。式(7)において、R1a、R2a、及びR3aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基である。式(7)におけるR1a、R2a、及びR3aの炭素原子数1~5のアルキル基の具体例は、式(1)におけるR、R、及びRの炭素原子数1~5のアルキル基と同様である。
式(4)で表される構造単位及び式(7)で表される構造単位を有するポリアルケニルフェノール樹脂において、式(4)で表される構造単位の数をxとし、式(7)で表される構造単位の数をyとすると、0.5≦x/(x+y)<1であり、0<y/(x+y)≦0.5であり、x+yは2~50が好ましく、より好ましくは3~40であり、さらに好ましくは5~25である。
バインダー樹脂(A)としてポリアルケニルフェノール樹脂を使用する場合、ポリアルケニルフェノール樹脂の好ましい数平均分子量(Mn)は、500~5000であり、より好ましくは800~3000であり、さらに好ましくは900~2000である。数平均分子量が500以上であれば、アルカリ現像速度が適切で露光部と未露光部との溶解速度差が十分なためパターンの解像度が良好であり、5000以下であれば、アルカリ現像性が良好である。
(b)ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体
バインダー樹脂(A)として、式(3)
Figure 2023098315000008
の構造単位を有するヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体を使用することもできる。このような樹脂を含有することにより、得られる感光性樹脂組成物の現像特性を向上させるとともに、アウトガスの低減にも寄与することができる。
式(3)において、R11は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、aは1~4の整数、bは1~4の整数であり、a+bは2~5の範囲内であり、R12は、水素原子、メチル基、エチル基、及びプロピル基からなる群より選択される少なくとも1種である。
バインダー樹脂(A)として、ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体を用いる場合、アルカリ現像性、アウトガス低減の点から、式(3)で表される構造単位及び式(5)
Figure 2023098315000009
で表される構造単位を有する共重合体であることが好ましい。
式(5)においてR13は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、cは1~5の整数である。
式(3)で表される構造単位を有するヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体、及び式(3)で表される構造単位と式(5)で表される構造単位とを有するヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体は、例えば、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノール等のフェノール性水酸基を有する芳香族ビニル化合物のうち、単独又は2種類以上を公知の方法で重合して得られた重合体又は共重合体の一部に、公知の方法でホルムアルデヒドを反応させる、あるいはさらにアルコールと反応させることにより得ることができる。
フェノール性水酸基を有する芳香族ビニル化合物としては、p-ヒドロキシスチレン又はm-ヒドロキシスチレンが好ましく用いられる。
バインダー樹脂(A)としてヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体を用いる場合、ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体の好ましい数平均分子量(Mn)は、1000~20000であり、より好ましくは3000~10000であり、さらに好ましくは4000~9000である。数平均分子量が1000以上であれば、アルカリ溶解性が適切なため感光性材料の樹脂として適しており、20000以下であれば、塗布性及び現像性が良好である。
(c)エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂
バインダー樹脂(A)として、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を使用することもできる。このようなアルカリ水溶液可溶性樹脂は、例えば、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と表記することがある。)のエポキシ基と、ヒドロキシ安息香酸化合物のカルボキシ基を反応させることで得ることができる。アルカリ水溶液可溶性樹脂がエポキシ基を有することで、加熱時にフェノール性水酸基との反応により架橋を形成し、被膜の耐薬品性、耐熱性などを向上させることができる。フェノール性水酸基は現像時のアルカリ水溶液に対する可溶性に寄与する。
エポキシ化合物が有するエポキシ基の1つと、ヒドロキシ安息香酸化合物のカルボキシ基とが反応し、フェノール性水酸基を有する化合物となる反応の例を、次の反応式1に示す。
Figure 2023098315000010
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び複素環式エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有していればよく、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は熱硬化型であるため、当業者の常識として、エポキシ基の有無、官能基の種類、重合度などの違いからその構造を一義的に記載することができない。
ノボラック型エポキシ樹脂の構造の一例を式(9)に示す。式(9)において、例えば、R14は、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~2のアルコキシ基、又は水酸基であり、mは1~50の整数である。
Figure 2023098315000011
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、EPICLON(登録商標)N-770(DIC株式会社)、jER(登録商標)-152(三菱ケミカル株式会社)が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、EPICLON(登録商標)N-695(DIC株式会社)、EOCN(登録商標)-102S(日本化薬株式会社)が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、jER(登録商標)828、jER(登録商標)1001(三菱ケミカル株式会社)、YD-128(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER(登録商標)806(三菱ケミカル株式会社)、YDF-170(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、jER(登録商標)YX-4000、jER(登録商標)YL-6121H(三菱ケミカル株式会社)が挙げられる。ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えば、NC-7000(商品名、日本化薬株式会社)、EXA-4750(商品名、DIC株式会社)が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、EHPE(登録商標)-3150(ダイセル化学工業株式会社)が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えば、TEPIC(登録商標)、TEPIC-L、TEPIC-H、TEPIC-S(日産化学工業株式会社)が挙げられる。
1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物は、ノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂に由来するエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物は、パターン形成性に優れており、アルカリ溶解性の調節が容易であり、アウトガスが少ない。
ヒドロキシ安息香酸化合物は、安息香酸の2~6位の少なくとも1つが水酸基で置換された化合物であり、例えば、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-5-ニトロ安息香酸、3-ヒドロキシ-4-ニトロ安息香酸、及び4-ヒドロキシ-3-ニトロ安息香酸が挙げられ、アルカリ現像性を高める点でジヒドロキシ安息香酸化合物が好ましい。ヒドロキシ安息香酸化合物は、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一実施態様では、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物とヒドロキシ安息香酸化合物との反応物であって、式(8)
Figure 2023098315000012
の構造を有する。式(8)において、dは1~5の整数であり、*は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基を除く残基との結合部を表す。
エポキシ化合物とヒドロキシ安息香酸化合物からエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を得る方法では、エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、ヒドロキシ安息香酸化合物を0.2~1.0当量使用することができ、好ましくは0.3~0.9当量、さらに好ましくは0.4~0.8当量使用する。ヒドロキシ安息香酸化合物が0.2当量以上であれば、十分なアルカリ溶解性を得ることができ、1.0当量以下であれば、副反応による分子量増加を抑制することができる。
エポキシ化合物とヒドロキシ安息香酸化合物の反応を促進させるために触媒を使用してもよい。触媒の使用量は、エポキシ化合物及びヒドロキシ安息香酸化合物からなる反応原料混合物の質量を基準として0.1~10質量%とすることができる。反応温度は60~150℃、反応時間は3~30時間とすることができる。
この反応で使用する触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、オクタン酸クロム、及びオクタン酸ジルコニウムが挙げられる。
バインダー樹脂(A)としてエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を用いる場合、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、500~8000であることが好ましく、800~6000であることがより好ましく、1000~5000であることがさらに好ましい。数平均分子量が500以上であれば、アルカリ溶解性が適切なため感光性材料の樹脂として良好であり、8000以下であれば、塗工性及び現像性が良好である。
(d)アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体
バインダー樹脂(A)として、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体を使用することができる。アルカリ可溶性官能基としては、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、酸無水物基、及びメルカプト基を挙げることができる。重合性単量体が有する重合性官能基としては、ラジカル重合性官能基を挙げることができ、例えば、CH=CH-、CH=C(CH)-、CH=CHCO-、CH=C(CH)CO-、及び-OC-CH=CH-CO-が挙げられる。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体は、例えば、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。ラジカル重合により共重合体を合成した後に、アルカリ可溶性官能基を前記共重合体に付加してもよい。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体としては、例えば、4-ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジルアクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルアクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルマレイミド、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸が挙げられる。
その他の重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等の(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、マレイン酸無水物、マレイン酸モノエステル、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミドが挙げられる。
耐熱性等の観点から、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体は、脂環式構造、芳香族構造、多環式構造、無機環式構造、及び複素環式構造からなる群より選ばれるの1種又は複数種の環式構造を有することが好ましい。感度の観点から、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体は、アクリル酸誘導体又はフェノール性水酸基を有する重合性単量体であることが好ましく、フェノール性水酸基を有する重合性単量体であることがさらに好ましい。
フェノール性水酸基を有する重合性単量体として、重合後に式(10)
Figure 2023098315000013
で表される構造単位を形成するものが好ましい。式(10)において、R15は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、eは1~5の整数である。
式(10)において、R15は水素原子又はメチル基が好ましい。eは1~3の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。そのようなフェノール性水酸基を有する重合性単量体として、4-ヒドロキシフェニルメタクリレートが特に好ましい。
その他の重合性単量体として、重合後に式(11)
Figure 2023098315000014
で表される構造単位を形成するものが好ましい。式(11)において、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1~3のフルオロアルキル基、又はハロゲン原子であり、R18は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。そのようなその他の重合性単量体として、フェニルマレイミド及びシクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。
一実施態様では、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体は、上記式(10)で表される構造単位を有する。
一実施態様では、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体は、上記式(10)で表される構造単位、及び上記式(11)で表される構造単位を有する。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体として、フェノール性水酸基を有する重合性単量体である4-ヒドロキシフェニルメタクリレートを用い、その他の重合性単量体としてフェニルマレイミド又はシクロヘキシルマレイミドを用いることが特に好ましい。これらの重合性単量体をラジカル重合させた樹脂を用いることにより、形状維持性、現像性を向上させるとともにアウトガスを低減することができる。
アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ可溶性共重合体をラジカル重合によって製造する際の重合開始剤としては、次のものに限定されないが、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)等のアゾ重合開始剤、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の10時間半減期温度が100~170℃の過酸化物重合開始剤、あるいは過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、1,1’-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシピバレート等の過酸化物重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤の使用量は、重合性単量体の合計100質量部に対して、0.01質量部以上、0.05質量部以上、又は0.5質量部以上であることが好ましく、40質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下であることが好ましい。
RAFT(Reversible Addition Fragmentation Transfer、可逆的付加開裂型連鎖移動)剤を重合開始剤と併用してもよい。RAFT剤としては、次のものに限定されないが、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボナート、キサンタート等のチオカルボニルチオ化を使用することができる。
RAFT剤は、重合性単量体の合計100質量部に対して、0.005~20質量部の範囲で使用することができ、0.01~10質量部の範囲で使用することが好ましい。
バインダー樹脂(A)としてアルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ可溶性共重合体を用いる場合、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ可溶性共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3000~80000とすることができ、4000~70000であることが好ましく、5000~60000であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は1000~30000とすることができ、1500~25000であることが好ましく、2000~20000であることがより好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.0~3.5とすることができ、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.8であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び多分散度(Mw/Mn)を上記範囲とすることで、アルカリ溶解性及び現像性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
本開示においては、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)がヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体(b)にも該当する場合は、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)として扱うものとする。アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)がエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)にも該当する場合は、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)として扱うものとする。すなわち、ヒドロキシポリスチレン樹脂誘導体(b)及びエポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)は、アルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体(d)に該当するものを除くものとする。
一実施態様では、バインダー樹脂(A)となるアルカリ可溶性官能基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体のアルカリ水溶液可溶性共重合体は、アルカリ可溶性官能基としてフェノール性水酸基を有する重合性単量体が用いられた、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン共重合体樹脂、又はこれらの誘導体等のフェノール樹脂を含む。バインダー樹脂(A)としてフェノール樹脂を使用する場合の好ましい数平均分子量(Mn)は、樹脂構造によって異なるが、一般的に100~50000であり、より好ましくは500~30000であり、さらに好ましくは800~10000である。数平均分子量が100以上であればアルカリ現像速度が適切で露光部と未露光部との溶解速度差が十分なためパターンの解像度が良好であり、50000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(e)ポリイミド樹脂、(f)ポリアミック酸樹脂、(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂、(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は、(e)ポリイミド樹脂、(f)ポリアミック酸樹脂、(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂、及び(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体からなる群より選択される少なくとも一種である。ポリアミック酸樹脂は、脱水閉環することによりポリイミド構造を有する樹脂となる。ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は、脱水閉環することによりポリベンゾオキサゾール樹脂となる。
(e)ポリイミド樹脂は式(12)で表される構造単位を有する。(f)ポリアミック酸樹脂及び(h)ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は式(13)で表される構造単位を有する。(g)ポリベンゾオキサゾール樹脂は式(14)で表される構造単位を有する。ポリイミド樹脂は式(12)で表される構造単位と式(13)で表される構造単位の両方を有してもよく、ポリベンゾオキサゾール樹脂は式(14)で表される構造単位と式(13)で表される構造単位の両方を有してもよい。
Figure 2023098315000015
式(12)において、R19は、4~10価の有機基であり、R20は、2~8価の有機基であり、R21及びR22は、それぞれ独立して、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、又はメルカプト基であり、f及びgは、それぞれ独立して、0~6の整数である。
Figure 2023098315000016
式(13)において、R23は、2~8価の有機基であり、R24は、2~8価の有機基であり、R25及びR26は、それぞれ独立して水酸基、スルホ基、メルカプト基、又は-COOR27であり、R27は、水素原子又は炭素原子数1~20の1価の炭化水素基であり、h及びiは、それぞれ独立して、0~6の整数であり、但しh+i>0である。ポリアミック酸樹脂の場合、hは1以上の整数であり、R25の少なくとも1つは-COOR27である。ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体の場合、iは1以上の整数であり、R26の少なくとも1つはフェノール性水酸基である。
Figure 2023098315000017
式(14)において、R28は、2~8価の有機基であり、R29は、2~8価の有機基であり、R30及びR31は、それぞれ独立して、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、又はメルカプト基であり、j及びkは、それぞれ独立して、0~6の整数である。
式(12)のR19-(R21は、酸二無水物の残基を表す。R19は、4~10価の有機基であり、芳香族環又は環状脂肪族基を含む炭素原子数5~40の有機基であることが好ましい。
酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
式(13)のR23-(R25、及び式(14)のR28-(R30は、それぞれ酸の残基を表す。R23及びR28は、それぞれ独立して、2~8価の有機基であり、芳香族環又は環状脂肪族基を含む炭素原子数5~40の有機基であることが好ましい。
酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸等の芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸;ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族テトラカルボン酸、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。上記トリカルボン酸及びテトラカルボン酸では、1つ又は2つのカルボキシ基が、式(13)におけるR25、又は式(14)におけるR30に相当する。これらの酸は、エステル又は酸無水物の形態であってもよい。
式(12)のR20-(R22、式(13)のR24-(R26、及び式(14)のR29-(R31は、それぞれジアミンの残基を表す。R20、R24、及びR29は、それぞれ独立して、2~8価の有機基であり、芳香族環又は環状脂肪族基を含む炭素原子数5~40の有機基であることが好ましい。
式(12)のR20、及びポリアミック酸樹脂に係る式(13)のR24に対応するジアミンとしては、例えば、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン、又はこれらの芳香族ジアミンの芳香環の水素原子の少なくとも1つをアルキル基又はハロゲン原子で置換した化合物;シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン等の脂肪族ジアミン、及びこれら2種以上の組み合わせが挙げられる。
ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体に係る式(13)のR24、及び式(14)のR29に対応するジアミンとしては、例えば、上記芳香族ジアミンの芳香環上のアミノ基に対してオルト位にフェノール性水酸基を有するビスアミノフェノール化合物、及びこれら2種以上の組み合わせが挙げられる。
ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、及びポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は、それらの末端が、酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸等により封止されることで、主鎖末端に酸性基を有してもよい。
ポリアミック酸樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとからジエステルを生成した後、縮合剤の存在下でジエステルとジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとからジエステルを生成し、残ったジカルボン酸を酸クロリド化した後、得られた中間体とジアミンを反応させる方法により合成することができる。
ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体は、例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸、トリカルボン酸又はテトラカルボン酸等の多価カルボン酸を縮合反応させることで合成することができる。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の脱水縮合剤と多価カルボン酸を反応させて得られた中間体と、ビスアミノフェノール化合物とを反応させる方法、ピリジン等の3級アミンを添加したビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリド溶液を滴下する方法が挙げられる。
ポリイミド樹脂は、例えば、上述の方法で得られたポリアミック酸樹脂を、加熱、又は酸若しくは塩基等の化学処理で脱水閉環することにより合成することができる。
ポリベンゾオキサゾール樹脂は、例えば、上述の方法で得られたポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体を、加熱、又は酸若しくは塩基等の化学処理で脱水閉環することにより合成することができる。
バインダー樹脂(A)として、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、又はポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体を用いる場合、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、及びポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体の数平均分子量(Mn)は、500~8000であることが好ましく、800~6000であることがより好ましく、1000~5000であることがさらに好ましい。数平均分子量が500以上であれば、アルカリ溶解性が適切なため感光性材料の樹脂として良好であり、8000以下であれば、塗工性及び現像性が良好である。
(i)シリコーン樹脂
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は(i)シリコーン樹脂を含む。シリコーン樹脂は、式(15)で表されるオルガノシラン及び式(16)で表されるオルガノシランから選択される少なくとも1種の化合物を加水分解縮合することによって合成することができる。式(15)及び式(16)で表されるオルガノシランを用いることにより、感度及び解像度に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
式(15)で表されるオルガノシランを以下に示す。
Figure 2023098315000018
式(15)において、R32は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、又は炭素原子数6~16のアリール基であり、R33は、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアシル基、又は炭素原子数6~16のアリール基であり、pは0~3の整数である。pが2以上の場合、複数のR32は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。pが2以下の場合、複数のR33は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
式(15)で表されるオルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシラン等の4官能性シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、1-ナフチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリエトキシシラン、1-ナフチルトリ-n-プロポキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、1-アントラセニルトリメトキシシラン、9-アントラセニルトリメトキシシラン、9-フェナントレニルトリメトキシシラン、9-フルオレニルトリメトキシシラン、2-フルオレニルトリメトキシシラン、1-ピレニルトリメトキシシラン、2-インデニルトリメトキシシラン、5-アセナフテニルトリメトキシシラン等の3官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn-ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、ジ(1-ナフチル)ジメトキシシラン、ジ(1-ナフチル)ジエトキシシラン等の2官能性シラン;トリメチルメトキシシラン、トリn-ブチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン等の単官能性シラン、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
式(16)で表されるオルガノシランを以下に示す。
Figure 2023098315000019
式(16)において、R34~R37は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアシル基、又は炭素原子数6~16のアリール基であり、nは2~8の範囲である。nが2以上の場合、複数のR35及びR36は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
式(16)で表されるオルガノシランの具体例としては、扶桑化学工業株式会社:メチルシリケート51(R34~R37はメチル基、nは平均4)、多摩化学工業株式会社:Mシリケート51(R34~R37はメチル基、nは平均3~5)、シリケート40(R34~R37はエチル基、nは平均4~6)、シリケート45(R34~R37はエチル基、nは平均6~8)、コルコート株式会社:メチルシリケート51(R34~R37はメチル基、nは平均4)、メチルシリケート53A(R34~R37はメチル基、nは平均7)、エチルシリケート40(R34~R37はエチル基、nは平均5)が挙げられる。これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
シリコーン樹脂は、式(15)及び式(16)で表されるオルガノシランを加水分解及び部分縮合させることにより合成することができる。部分縮合により、シリコーン樹脂には残存シラノール基が存在する。加水分解及び部分縮合は、例えば、オルガノシラン混合物に必要に応じて溶剤、水、触媒等を添加し、50℃~150℃で0.5~100時間程度加熱撹拌する方法が挙げられる。必要に応じて、加水分解副生物(メタノール等のアルコール)又は縮合副生物(水)を蒸留により留去してもよい。
触媒として、酸触媒又は塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸又はその無水物、並びにイオン交換樹脂が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂が挙げられる。触媒は、加水分解及び部分縮合後に、必要に応じて水洗浄、イオン交換樹脂による処理、又はそれらの組み合わせにより除去してもよい。触媒を除去することにより感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を高めることができる。
バインダー樹脂(A)としてシリコーン樹脂を用いる場合、シリコーン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000~100000であることが好ましく、1000~50000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上であれば被膜形成性を向上させることができ、100000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(j)環状オレフィンポリマー
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は(j)環状オレフィンポリマーを含む。環状オレフィンポリマーは、環状構造(脂環又は芳香環)と炭素-炭素二重結合とを有する環状オレフィン単量体の単独重合体又は共重合体である。環状オレフィンポリマーは、環状オレフィン単量体以外の単量体に由来する構造単位を有してもよい。
環状オレフィンポリマーを構成する単量体としては、例えば、プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体、プロトン性以外の極性基を有する環状オレフィン単量体、極性基を有さない環状オレフィン単量体、及び環状オレフィン以外の単量体が挙げられる。環状オレフィン以外の単量体はプロトン性極性基又はこれ以外の極性基を有してもよく、極性基を有していなくてもよい。
プロトン性極性基を有する環状オレフィン単量体としては、例えば、5-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシメチル-5-ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エキソ-6-エンド-ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、8-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エキソ-9-エンド-ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等のカルボキシ基含有環状オレフィン;5-(4-ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-(4-ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、8-(4-ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-(4-ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等の水酸基含有環状オレフィン、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
プロトン性以外の極性基を有する環状オレフィン単量体としては、例えば、5-アセトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチル-5-メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、8-アセトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.112,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-n-ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-n-プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-n-ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-(2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等のエステル基を有する環状オレフィン;N-フェニル-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)等のN-置換イミド基を有する環状オレフィン;8-シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、5-シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン等のシアノ基を有する環状オレフィン;8-クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等のハロゲン原子を有する環状オレフィン、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
極性基を有さない環状オレフィン単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン、テトラシクロ[8.4.0.111,14.03,7]ペンタデカ-3,5,7,12,11-ペンタエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ-3-エン、8-メチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-ビニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ-3,10-ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン、8-フェニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ-4,11-ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ-5,12-ジエン、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
環状オレフィン以外の単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数2~20のα-オレフィン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン等の鎖状オレフィン、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
環状オレフィンポリマーは、上記単量体を開環重合又は付加重合により重合させることにより合成することができる。重合触媒としては、例えば、モリブデン、ルテニウム、オスミウム等の金属錯体、又はこれらの2種以上の組み合わせが好ましく用いられる。環状オレフィンポリマーに水素添加処理を行ってもよい。水素添加触媒としては、オレフィン化合物の水素添加に一般に使用されているものを用いることができ、例えば、チーグラータイプの均一系触媒、貴金属錯体触媒、及び担持型貴金属触媒が挙げられる。
バインダー樹脂(A)として環状オレフィンポリマーを用いる場合、環状オレフィンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1000~100000であることが好ましく、1000~50000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上であれば被膜形成性を向上させることができ、100000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(k)カルド樹脂
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は(k)カルド樹脂を含む。カルド樹脂は、カルド構造、すなわち、環状構造を構成する四級炭素原子に別の2つの環状構造が結合した骨格構造を有する。環状構造を構成する四級炭素原子に別の2つの環状構造が結合した骨格構造としては、例えば、フルオレン骨格、ビスフェノールフルオレン骨格、ビスアミノフェニルフルオレン骨格、エポキシ基を有するフルオレン骨格、アクリル基を有するフルオレン骨格が挙げられる。カルド構造の例として、フルオレン環にベンゼン環が結合したものが挙げられる。
カルド樹脂は、カルド構造を有する単量体の官能基同士の反応により、単量体を重合させて合成することができる。カルド構造を有する単量体の重合方法としては、例えば、開環重合法、付加重合法が挙げられる。
カルド構造を有する単量体としては、例えば、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール化合物;9,9-ビス(シアノメチル)フルオレン等の9,9-ビス(シアノアルキル)フルオレン化合物;9,9-ビス(3-アミノプロピル)フルオレン等の9,9-ビス(アミノアルキル)フルオレン化合物、及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。カルド樹脂は、カルド構造を有する単量体と、その他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
バインダー樹脂(A)としてカルド樹脂を用いる場合、カルド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000~100000であることが好ましく、1000~50000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上であれば被膜形成性を向上させることができ、100000以下であればアルカリ現像性が良好である。
(l)フェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂
一実施態様では、バインダー樹脂(A)は(l)フェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂を含む。フェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び複素環式エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ノボラック型エポキシ樹脂の構造としては、例えば、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)において説明した、上記式(9)で示される構造が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び複素環式エポキシ樹脂の具体例としては、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(c)において説明したエポキシ樹脂を用いることができる。
フェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物は、パターン形成性に優れている。
バインダー樹脂(A)としてフェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂を用いる場合、後述する任意成分である溶解促進剤(D)と併用する、及び/又は、バインダー樹脂(A)としてアルカリ可溶性官能基を有する樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
バインダー樹脂(A)としてフェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂を用いる場合、フェノール性水酸基を有さないエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、300~8000であることが好ましく、400~7000であることがより好ましい。重量平均分子量が300以上であればアルカリ現像時に未露光部が必要以上に溶解することがなく、8000以下であればパターン形成性に優れている。
バインダー樹脂(A)は、1種類の樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上の樹脂を併用してもよい。
ポジ型感光性樹脂組成物中のバインダー樹脂(A)の含有量は、固形分100質量%を基準として、5~80質量%とすることができ、好ましくは10~75質量%であり、より好ましくは20~70質量%である。バインダー樹脂(A)の含有量が、固形分100質量%を基準として5質量部以上であれば、残膜率、耐熱性、感度等が適切である。バインダー樹脂(A)の含有量が、固形分100質量%を基準として80質量%以下であれば、硬化後の被膜の光学濃度(OD値)を膜厚1μmあたり0.5以上とすることができ、硬化後も遮光性を維持することができる。
バインダー樹脂(A)は、樹脂成分(a)~(l)から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、樹脂成分(a)~(l)のうちの複数を含む場合は任意の組み合わせが可能である。バインダー樹脂(A)は、より好ましくは樹脂成分(a)~(d)から選ばれる少なくとも1種を含み、さらに好ましくは樹脂成分(c)及び(d)を含む。
バインダー樹脂(A)100質量%に対する(a)~(d)から選択される少なくとも1種の樹脂成分の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。バインダー樹脂(A)100質量%に対する(a)~(d)から選択される少なくとも1種の樹脂成分の含有量が0.5質量%以上であれば、樹脂組成物の耐熱性が良好である。
バインダー樹脂(A)が樹脂成分(c)を含む場合、バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(c)の含有量は、20~70質量%であることが好ましく、25~60質量%であることがより好ましい。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(c)の含有量が20質量%以上であると、樹脂加熱硬化時の架橋点が多く耐熱性が向上する。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(c)の含有量が70質量%以下であると、ホール形状が良好になる。
バインダー樹脂(A)が樹脂成分(d)を含む場合、バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(d)の含有量は、15~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(d)の含有量が15質量%以上であると、ホール形状が良好になる。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(d)の含有量が70質量%以下であると、露光部に残渣が出にくい。
バインダー樹脂(A)が樹脂成分(c)と(d)を含む場合、バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(c)と(d)の合計含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(c)と(d)の合計含有量が60質量%以上であると、露光部の残渣や未露光部の表面荒れが出にくい。
バインダー樹脂(A)が樹脂成分(c)と(d)を含む場合、さらに樹脂成分(l)を含むことが好ましい。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(l)の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(l)の含有量が1質量%以上であると、アルカリ現像時に未露光部が必要以上に溶解しない。バインダー樹脂(A)100質量%に対する樹脂成分(l)の含有量が30質量%以下であると、パターン形成性が良好である。
バインダー樹脂(A)は、アルカリ可溶性官能基の一部が酸分解性基で保護された樹脂を含んでもよい。
アルカリ可溶性官能基の一部が酸分解性基で保護された樹脂は、露光前のアルカリ溶解性が抑制される。露光時に発生した酸の存在下、必要に応じて露光後ベーク(PEB、post exposure bake)を行うことで、酸分解性基の分解(脱保護)が促進され、アルカリ可溶性官能基が再生する。これにより現像時に露光部で、バインダー樹脂(A)のアルカリ溶解が促進される。バインダー樹脂(A)は、1種、又は2種類以上を組み合わせて含んでいてもよいため、例えば、重合体の構造単位、酸分解性基、アルカリ可溶性官能基の保護率、又はこれらの組み合わせが異なる2種類以上の樹脂が含まれていてもよい。
〈光酸発生剤(B)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は光酸発生剤(B)を含む。光酸発生剤(B)は、可視光、紫外光、γ線、電子線などの放射線が照射されると酸を生成する化合物である。放射線が照射された部分に光酸発生剤(B)から生じた酸が存在することで、その部分の樹脂が酸と一緒にアルカリ水溶液に溶解し易くなる。光酸発生剤(B)は、バインダー樹脂(A)がアルカリ可溶性官能基を有し、その一部が酸分解性基で保護された樹脂を含む場合には、酸分解性基の分解を促進してアルカリ可溶性官能基を再生させ、バインダー樹脂(A)のアルカリ溶解性を増大させる。したがって、ポジ型感光性樹脂組成物が光酸発生剤(B)を含むことで、低露光量でも高感度で高解像度のパターンを形成することができる。光酸発生剤(B)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、光酸発生剤(B)を1質量%~50質量%、好ましくは5質量%~40質量%、より好ましくは8質量%~30質量%含む。光酸発生剤(B)の含有量が、固形分100質量%を基準として1質量%以上であると、高感度を実現することができる。光酸発生剤(B)の含有量が、固形分100質量%を基準として50質量%以下であるとアルカリ現像性が良好で残渣の発生が抑制できる。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は光酸発生剤(B)としてキノンジアジド化合物を含む。キノンジアジド化合物は、可視光、紫外光、γ線、電子線などの放射線が照射されると、下記反応式2に示す反応を経てアルカリ可溶性のカルボン酸化合物を生成する。キノンジアジド化合物は、感光前にはノボラック樹脂などのバインダー樹脂(A)の官能基と相互作用(例えば水素結合形成)して、そのバインダー樹脂(A)をアルカリ水溶液に対して不溶化させる。その一方で、放射線が照射された部分にアルカリ可溶性のカルボン酸化合物が存在することで、その部分にある樹脂がカルボン酸化合物と一緒にアルカリ水溶液に溶解し易くなる。さらに、カルボン酸化合物は、化学増幅レジストに一般に使用される光酸発生剤から生じる酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸などよりも分子構造が相対的に大きく、被膜中で拡散しにくい。これらが相乗的に作用する結果、未露光部と露光部のアルカリ可溶性の差を大きくすることができ、それにより低露光量でも高感度で高解像度のパターンを形成することができる。キノンジアジド化合物は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2023098315000020
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合又はスルホンアミド結合したもの等が挙げられる。露光部と未露光部のコントラストの観点から、ポリヒドロキシ化合物又はポリアミノ化合物の官能基全体の20モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。
ポリヒドロキシ化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業株式会社)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(以上、商品名、旭有機材工業株式会社)、2,6-ジメトキシメチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(商品名、本州化学工業株式会社)等が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリアミノ化合物としては、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリヒドロキシポリアミノ化合物としては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジヒドロキシベンジジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
キノンジアジド化合物は、ポリヒドロキシ化合物の1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステルであることが好ましい。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、キノンジアジド化合物を1質量%~50質量%、好ましくは5質量%~40質量%、より好ましくは8質量%~35質量%含む。キノンジアジド化合物の含有量が、固形分100質量%を基準として1質量%以上であると、高感度を実現することができる。キノンジアジド化合物の含有量が、固形分100質量%を基準として50質量%以下であるとアルカリ現像性が良好である。
キノンジアジド化合物以外の光酸発生剤(B)として、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩、第四級アンモニウム塩、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。これらの中でも、高感度であり絶縁性が高いことから、オキシムスルホネート化合物を用いることが好ましい。
オキシムスルホネート化合物として、例えば、式(17)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023098315000021
式(17)において、Rは、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアリール基、又はハロゲン原子であり、R10及びR11は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換の複素環基、シアノ基、アシルオキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又はフルオロアルキル基である。R10とR11とが結合して環構造を形成してもよい。環構造の環員数は3~10であることが好ましい。
の置換又は非置換のアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~10の直鎖アルキル基又は炭素原子数3~10の分岐アルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、又はn-プロピル基であることが好ましい。
の置換又は非置換のアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~5の直鎖アルコキシ基又は炭素原子数3~5の分岐アルコキシ基が挙げられ、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
のアルキル基及びアルコキシ基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子1~10のアルコキシ基、及び炭素原子数3~10のシクロアルキル基が挙げられる。
の置換のアルキル基は、フルオロアルキル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、又はヘプタフルオロプロピル基であることがより好ましく、トリフルオロメチル基であることがさらに好ましい。
の置換又は非置換のアリール基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、フェニル基、4-メチルフェニル基、又はナフチル基であることが好ましい。
のアリール基の置換基としては、例えば、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、及びハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)が挙げられる。
のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
10及びR11の置換又は非置換のアリール基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、フェニル基又はナフチル基であることが好ましい。R10及びR11の置換又は非置換の複素環基としては、例えば、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、2-ベンゾイミダゾリル基、2-ベンゾオキサゾリル基、2-ベンゾチアゾリル基、2-インドリル基、3-クマリニル基、4-クマリニル基、3-イソクマリニル基、及び4-イソクマリニル基が挙げられる。
10及びR11のアリール基及び複素環基の置換基としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数2~4のアシルオキシ基、及びハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)が挙げられる。
10及びR11のアシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、及びベンゾイル基が挙げられる。R10及びR11のアルコキシカルボニル基としては、例えば、エトキシカルボニル基が挙げられる。
10及びR11のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、及びヘプタフルオロプロピル基が挙げられる。
10がシアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又はフルオロアルキル基であることが好ましく、シアノ基、又はトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
11が置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換の複素環基であることが好ましく、4-メトキシフェニル基、又は置換若しくは非置換の2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、3-クマリニル基、4-クマリニル基、3-イソクマリニル基、若しくは4-イソクマリニル基であることが好ましい。
10とR11とが結合して形成された環構造を有するオキシムスルホネート化合物として、例えば、式(17a)で表されるオキシムスルホネート化合物が挙げられる。
Figure 2023098315000022
式(17a)において、Rは、式(17)について説明したとおりであり、R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、mは0~5の整数を表す。
12のアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~10の直鎖アルキル基又は炭素原子数3~10の分岐アルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、又はn-プロピル基であることが好ましい。
12のアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~5の直鎖アルコキシ基又は炭素原子数3~5の分岐アルコキシ基が挙げられ、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
12のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、塩素原子又はフッ素原子であることが好ましい。mは0又は1であることが好ましい。
オキシムスルホネート化合物として、例えば、(Z,E)-2-(4-メトキシフェニル)([((4-メチルフェニル)スルホニル)オキシ]イミノ)アセトニトリル、2-[2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、及び2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリルが挙げられる。
〈金属錯体染料(C)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は金属錯体染料(C)を含む。典型的な金属錯体染料(C)では、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基のような配位能を有する官能基を有するモノアゾ染料が、クロム、銅、コバルト、鉄、ニッケル等の金属イオンに対して配位結合した金属錯イオン(アニオン)と、カウンターカチオンとから構成されている。金属錯体染料(C)は、一般に、2つのクラス、すなわち1:1型金属錯体染料(金属1原子にモノアゾ染料1分子が配位結合)及び1:2型金属錯体染料(金属1原子にモノアゾ染料2分子が配位結合)に分類される。モノアゾ染料は、一般には、o,o’-ジヒドロキシアゾ、o-ヒドロキシ-o’-アミノアゾ、又はo-ヒドロキシ-o’-カルボキシアゾのいずれかの構造をもつ。金属錯体染料(C)は、顔料と比較して現像時の残渣が少なく、高精細のパターンを被膜に形成することができる。また、金属錯体染料(C)は、有機溶媒に溶解しやすく、高濃度で配合しても溶液中で析出しにくい。さらに、露光後の加熱処理時に退色しにくいため、硬化被膜の光学濃度(OD値)を効率的に高めることができる。金属錯体染料(C)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
金属錯体染料(C)に含まれる金属錯イオンを形成する金属元素は、クロム、銅、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、クロムであることがより好ましい。
金属錯体染料(C)は、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンを含む。含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンは、含窒素複素環の窒素原子にプロトン等が配位して、カウンターカチオンを構成する。含窒素複素環には、窒素原子以外に、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子が、構成原子として含まれていてもよい。
含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンとしては、例えば、窒素原子を含む4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、又は2つ以上の環構造を有する含窒素複素環式化合物のプロトン付加体が挙げられ、具体的には、アゼチジン、アゼト、ジアゼチジン、ジアゼト、ピロリジン、ピロール、イミダゾリジン、ピラゾリジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾリジン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾリジン、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、フラザン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ジオキサゾール、ジチアゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ジアジン、モルホリン、オキサジン、チオモルホリン、チアジン、トリアジン、アゼパン、アゼピン、ジアゼパン、ジアゼピン、アゾカン、アゾシン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、及びこれらの誘導体のプロトン付加体が挙げられる。これら含窒素複素環式化合物の誘導体としては、複素環構造を形成する炭素原子に結合するいずれかの水素原子を他の原子又は原子団で置換した化合物や、窒素原子に結合する水素原子を他の原子又は原子団で置換した化合物等が挙げられる。
含窒素複素環は適度な親水性を有する方が、これを含む金属錯体染料を用いた感光性樹脂組成物の感度が高いため、5員環又は6員環の含窒素複素環であることが好ましい。含窒素複素環は結晶性が低い構造である方が、これを含む金属錯体染料の溶媒への溶解性が高いため、脂環式の含窒素複素環であることが好ましい。
含窒素複素環の窒素原子は、アミン類と反応しやすい化合物と接触した場合にも反応しにくい構造であることから、3級アミン構造を有している含窒素複素環であることが好ましい。
含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンを形成する含窒素複素環式化合物は、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン及びこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、N-置換モルホリン、N-置換ピペリジン、及びN-置換ピロリジンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。N-置換モルホリン、N-置換ピペリジン、及びN-置換ピロリジンにおける窒素原子上の置換基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。窒素原子上の置換基は、炭素原子数1~6の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1~4の炭化水素基であることがより好ましい。
上記の中でも、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンを形成する含窒素複素環式化合物は、N-アルキルモルホリン、及びN-アルキルピペリジンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。すなわち、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンが、N-アルキルモルホリニウムカチオン、及びN-アルキルピペリジニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。含窒素複素環式化合物がこれらのいずれかであると、疎水性が低くパターン形成性に影響が出にくいためである。
N-アルキルモルホリン及びN-アルキルピペリジンにおいて、窒素原子に結合するアルキル基は、水酸基又はアルコキシ基などの官能基を有していてもよい。N-アルキルモルホリンとしては、例えば、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-イソブチルモルホリン、N-n-ブチルモルホリン、及び2-モルホリノエタノールが挙げられる。N-アルキルピペリジンとしては、例えば、N-メチルピペリジン、及びN-エチルピペリジンが挙げられる。
金属錯体染料(C)は、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンを含む。いかなる理論に拘束される訳ではないが、複素環構造を有していない含窒素化合物がプロトン化したカチオンをカウンターカチオンとして含む金属錯体染料の場合、複素環構造を有していない含窒素化合物が他の配合物中のアルカリ可溶性官能基を即時あるいは経時で強固にキャッピングしてしまうため、感度が出にくくなったり保存安定性が悪化したりする。しかし、複素環構造を有するカチオンをカウンターカチオンとして含む金属錯体染料の場合は、適度な塩基性と水素結合能を有することから、感度、プロセスウィンドウ、及び保存安定性が良好なポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
金属錯体染料(C)は、一般的な製造方法で製造されたものを使用できる。一般的には、金属錯体染料は以下の工程1~4を経て製造される。
工程1:アミノフェノール誘導体のジアゾ化によるジアゾ化合物の製造
工程2:工程1で得られたジアゾ化合物とヒドロキシナフタレン誘導体とのカップリング反応によるモノアゾ化合物の製造
工程3:工程2で得られたモノアゾ化合物と金属塩の混合による金属錯体の形成
工程4:工程3で得られた金属錯体に対し、アミン又はアミン塩を添加することによるイオン交換
本発明のポジ型感光性樹脂組成物に含まれる金属錯体染料(C)は、上記工程4にて、含窒素複素環式化合物又はその塩を使用することで製造することができる。
金属錯体染料(C)は、市販の金属錯体染料を原料として、陽イオン交換により製造してもよい。具体的には、原料となる金属錯体染料と、含窒素複素環式化合物とを、溶媒中で混合し撹拌する方法により製造することができる。
上記の陽イオン交換反応は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応温度は、0~150℃であることが好ましく、20~130℃であることがより好ましい。反応時間は、1~50時間であることが好ましく、5~40時間であることがより好ましい。
金属錯体染料(C)の原料となる金属錯体染料としては、例えば、ソルベントブラック22~47のカラーインデックス(C.I.)で規定される黒色染料、ソルベントブルー44、137のC.I.で規定される青色染料、ソルベントイエロー13、19、21、25、25:1、62、79、81、82、83、83:1、88、89、90、151、161のC.I.で規定される黄色染料、ソルベントオレンジ5、11、20、40:1、41、45、54、56、58、62、70、81、99のC.I.で規定されるオレンジ色染料、ソルベントレッド8、35、83:1、84:1、90、90:1、91、92、118、119、122、124、125、127、130、132、160、208、212、214、225、233、234、243のC.I.で規定される赤色染料、ソルベントバイオレット2、21、21:1、46、49、58、6のC.I.で規定される紫色染料、ソルベントブラウン28、42、43、44、53、62、63のC.I.で規定される茶色染料、アシッドイエロー59、121、アシッドオレンジ74、162、アシッドレッド211のC.I.で規定される染料が挙げられる。
原料となる金属錯体染料は、好ましくは、ソルベントブラック22~47のC.I.で規定される黒色染料より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、ソルベントブラック27、29、又は34のC.I.で規定される黒色染料より選択される少なくとも1種である。すなわち、金属錯体染料(C)に含まれる金属錯イオンが、ソルベントブラック22~47のC.I.で規定される化合物に含まれる金属錯イオンであることが好ましく、ソルベントブラック27、29、又は34のC.I.で規定される化合物に含まれる金属錯イオンであることがより好ましい。上記の金属錯体染料を原料として製造した金属錯体染料(C)を用いたポジ型感光性樹脂組成物の場合、硬化後の被膜の遮光性を維持することができる。
陽イオン交換において、原料となる金属錯体染料と反応させる含窒素複素環式化合物の使用量は、原料となる金属錯体染料100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。
陽イオン交換を行うための溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル化合物、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールモノアルキルエーテルアセテート化合物、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド化合物、等が挙げられる。
溶媒は、陽イオン交換前のカウンターアミンが排出されやすい観点から、γ-ブチロラクトンであることが好ましい。溶媒の使用量は、原料となる金属錯体染料100質量部に対して、50~400質量部であることが好ましく、100~300質量部であることがより好ましい。
陽イオン交換の後、得られた溶液を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の貧溶媒に滴下して撹拌し、沈殿物を析出させる。この沈殿物を濾取することにより、金属錯体染料(C)を得ることができる。濾取した沈殿物は、沈殿物を析出させるために用いた溶媒で洗浄し、真空乾燥することが好ましい。
一実施態様では、ポジ型感光性樹脂組成物は、固形分100質量%を基準として、金属錯体染料(C)を5質量%~50質量%、好ましくは10質量%~45質量%、より好ましくは15質量%~40質量%含む。金属錯体染料(C)の含有量が、上記合計100質量部を基準として5質量%以上であると、硬化後の被膜の遮光性を維持することができる。金属錯体染料(C)の含有量が、固形分100質量%を基準として50質量%以下であると、アルカリ現像性を損なうことなく被膜を着色することができる。
〈溶解促進剤(D)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は、現像時にアルカリ可溶性部分の現像液への溶解性を向上させるための溶解促進剤(D)をさらに含んでもよい。
溶解促進剤(D)として、カルボキシ基を有する化合物及びフェノール性水酸基を有する化合物からなる群より選択される有機低分子化合物が挙げられる。溶解促進剤(D)は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本開示において「低分子化合物」とは分子量1000以下の化合物をいう。上記有機低分子化合物は、カルボキシ基又は複数のフェノール性水酸基を有しており、アルカリ可溶性である。
そのような有機低分子化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘミメリット酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、没食子酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸;カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2,4-ベンゼントリオール、ピロガロール、フロログルシノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオールが挙げられる。
ポジ型感光性樹脂組成物中の溶解促進剤(D)の含有量は、樹脂成分(バインダー樹脂(A))の合計100質量部を基準として、0.1質量部~50質量部とすることができ、好ましくは1質量部~35質量部であり、より好ましくは2質量部~20質量部である。溶解促進剤(D)の含有量が、上記合計100質量部を基準として0.1質量部以上であれば、樹脂成分の溶解を効果的に促進することができ、50質量部以下であれば樹脂成分の過度の溶解を抑制して、被膜のパターン形成性、表面品質等を高めることができる。
〈任意成分(E)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は、任意成分(E)として、熱硬化剤、界面活性剤、金属錯体染料(C)以外の着色剤等を含むことができる。本開示において、任意成分(E)は(A)~(D)のいずれにも当てはまらないものと定義する。
熱硬化剤として、熱ラジカル発生剤を使用することができる。好ましい熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物を挙げることができ、具体的には、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の10時間半減期温度が100~170℃の有機過酸化物を挙げることができる。
熱硬化剤の含有量は、熱硬化剤を除く固形分の合計100質量部を基準として、5質量部以下が好ましく、より好ましくは4質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下である。
ポジ型感光性樹脂組成物は、例えば、塗工性を向上させるため、被膜の平滑性を向上させるため、又は被膜の現像性を向上させるために、界面活性剤を含有することができる
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;メガファック(登録商標)F-251、同F-281、同F-430、同F-444、同R-40、同F-553、同F-554、同F-555、同F-556、同F-557、同F-558、同F-559、同F-562、同F-563(以上、商品名、DIC株式会社)、サーフロン(登録商標)S-242、同S-243、同S-386、同S-420、同S-611(以上、商品名、AGCセイミケミカル株式会社)等のフッ素系界面活性剤;及びオルガノシロキサンポリマーKP323、KP326、KP341(以上、商品名、信越化学工業株式会社)が挙げられる。界面活性剤は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の含有量は、界面活性剤を除く固形分の合計100質量部を基準として、2質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
[コーティング組成物]
〈溶媒(F)〉
ポジ型感光性樹脂組成物は、溶媒(F)に溶解させて溶液状態のコーティング組成物として用いることができる。例えば、バインダー樹脂(A)を溶媒(F)に溶解して得られた溶液に、光酸発生剤(B)、及び金属錯体染料(C)、並びに必要に応じて溶解促進剤(D)、熱硬化剤、界面活性剤等の任意成分(E)を所定の割合で混合することにより、ポジ型感光性樹脂組成物を含むコーティング組成物を調製することができる。コーティング組成物は、溶媒(F)の量を変化させることにより使用する塗布方法に適した粘度に調整することができる。
溶媒(F)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート化合物、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル、及びN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド化合物が挙げられる。溶媒は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
コーティング組成物の固形分濃度は、使用目的により適宜決定することができる。例えば、コーティング組成物の固形分濃度は1~60質量%としてもよく、3~50質量%、又は5~40質量%としてもよい。
調製されたコーティング組成物は、通常、使用前にろ過される。ろ過の手段としては、例えば、孔径0.05~1.0μmのミリポアフィルターが挙げられる。
このように調製されたコーティング組成物は、長期間の貯蔵安定性にも優れている。
[ポジ型感光性樹脂組成物の使用方法]
ポジ型感光性樹脂組成物を放射線リソグラフィーに使用する場合、まず、ポジ型感光性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散してコーティング組成物を調製する。次に、コーティング組成物を基板表面に塗布し、加熱等の手段により溶媒を除去して、被膜を形成することができる。基板表面へのコーティング組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、スリット法、又はスピンコート法を使用することができる。
コーティング組成物を基板表面に塗布した後、通常、加熱により溶媒を除去して被膜を形成する(プリベーク)。加熱条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常70~130℃で、例えば、ホットプレート上なら30秒~20分間、オーブン中では1~60分間加熱処理をすることによって被膜を得ることができる。
次に、プリベークされた被膜に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して放射線(例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、ガンマ線、又はシンクロトロン放射線)を照射する(露光工程)。好ましい放射線は、250~450nmの波長を有する紫外線乃至可視光線である。一実施態様では、放射線はi線である。別の実施態様では、放射線はghi線である。
露光工程の後、光酸発生剤(B)から生じた酸により酸分解性基の分解を促進させるための加熱処理(PEB)を行うことができる。ポジ型感光性樹脂組成物のバインダー樹脂(A)が保護されたアルカリ可溶性官能基を有する場合には、PEBにより、露光部における保護されたアルカリ可溶性官能基の脱保護を促進し、バインダー樹脂(A)のアルカリ可溶性をより高めることができる。加熱条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常70~140℃で、例えば、ホットプレート上なら30秒~20分間、オーブン中では1~60分間加熱処理をすることによってPEBを行うことができる。一実施態様では、露光工程の後のPEBを省略することができる。
露光工程又はPEB工程の後、被膜を現像液に接触させることにより現像し、不要な部分を除去して被膜にパターンを形成する(現像工程)。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ化合物;エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一級アミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン等の第二級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノナン等の環状アミン等のアルカリ化合物の水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
現像時間は通常30~180秒間である。現像方法は、液盛り法、シャワー法、又はディッピング法のいずれでもよい。現像後、流水洗浄を30~90秒間行い、不要な部分を除去し、圧縮空気又は圧縮窒素で風乾させることによって、被膜にパターンを形成することができる。
その後、パターンが形成された被膜を、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、例えば、100~350℃で、20~200分間の加熱処理をすることによって、硬化被膜を得ることができる(ポストベーク、加熱処理工程)。加熱処理において、温度を一定に維持してもよく、温度を連続的に上昇させてもよく、段階的に上昇させてもよい。加熱処理は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
ポジ型感光性樹脂組成物の硬化被膜の光学濃度(OD値)は、膜厚1μmあたり0.4以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましい。硬化被膜のOD値が膜厚1μmあたり0.4以上であれば、十分な遮光性を得ることができる。
一実施態様の有機EL素子隔壁又は絶縁膜の製造方法は、ポジ型感光性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散してコーティング組成物を調製すること、コーティング組成物を基材に塗布して被膜を形成すること、被膜に含まれる溶媒を除去して被膜を乾燥すること、乾燥した被膜に放射線をフォトマスク越しに照射して被膜を露光すること、露光後の被膜を現像液に接触させることにより現像して、被膜にパターンを形成すること、及びパターンが形成された被膜を100℃~350℃の温度で加熱処理して、有機EL素子隔壁又は絶縁膜を形成することを含む。露光後かつ現像前に上記のPEBを行うこともできる。
一実施態様は、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子隔壁である。
一実施態様は、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子絶縁膜である。
一実施態様は、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(1)原料
実施例及び比較例で使用した原料を以下のとおり製造又は入手した。
バインダー樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)に関しては、以下の測定条件で、ポリスチレンの標準物質を使用して作成した検量線を用いて算出した。
装置:Shodex(登録商標)GPC-101
カラム:Shodex(登録商標)LF-804
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検出器:Shodex(登録商標)RI-71
温度:40℃
[製造例1]アルカリ可溶性官能基(フェノール性水酸基)を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体(PCX-02e)の製造
4-ヒドロキシフェニルメタクリレート(昭和電工株式会社「PQMA」)25.5g、及びN-シクロヘキシルマレイミド(株式会社日本触媒)4.50gを、溶媒である1-メトキシ-2-プロピルアセテート(株式会社ダイセル)77.1gに完全に溶解させ、重合開始剤としてV-601(富士フイルム和光純薬株式会社)3.66gを、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(株式会社ダイセル)14.6gに完全に溶解させた。得られた2つの溶液を、300mLの3つ口型フラスコ中、窒素ガス雰囲気下で85℃に加熱した1-メトキシ-2-プロピルアセテート(株式会社ダイセル)61.2gに、同時に2時間かけて滴下し、その後85℃で3時間反応させた。室温まで冷却した反応溶液を815gのトルエン中に滴下し、共重合体を沈殿させた。沈殿した共重合体をろ過により回収し、90℃で4時間真空乾燥し、白色の粉体(PCX-02e)を32.4g回収した。得られたPCX-02eの数平均分子量は3100、重量平均分子量は6600であった。
[製造例2]エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂(N695OH70)の製造
300mLの3つ口型フラスコに、溶媒として1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト(MMPGAC、株式会社ダイセル)2000g、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物としてEPICLON(登録商標)N-695(DIC株式会社、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量214)500gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、60℃で溶解させた。そこへヒドロキシ安息香酸化合物として3,5-ジヒドロキシ安息香酸(富士フイルム和光純薬株式会社)を235.12g(エポキシ1当量に対して0.65当量)、及び反応触媒としてトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社)2.20g(0.660mmol)を追加し、110℃で25時間反応させた。反応溶液を室温に戻し、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-トで固形分20質量%に希釈し、溶液をろ過して、2676gのエポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂(N695OH70)の溶液を得た。得られた樹脂(N695OH70)の数平均分子量は2419、重量平均分子量は5051、エポキシ当量は1118であった。
[製造例3]染料C-1:含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンがN-エチルモルホリンのプロトン化した化合物である染料の製造
300mLセパラブルフラスコに、VALIFAST BLACK 3804(オリエント化学工業株式会社、カラーインデックス:ソルベントブラック34)30g、N-エチルモルホリン(東京化成工業株式会社)4.0g、及びγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社)45gを加え、窒素雰囲気下80℃で28時間撹拌し、染料中のアンモニウムカチオンをN-エチルモルホリンのプロトン付加体に変更した溶液を調製した。この溶液を、イソプロパノール(関東化学株式会社)に滴下・撹拌し、得られた沈殿物を濾取した。濾物をイソプロパノール(関東化学株式会社)で洗浄し、80℃6時間真空乾燥し、染料C-1を得た。
[製造例4]染料C-2:含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンがN-メチルピペリジンのプロトン化した化合物である染料の製造
300mLセパラブルフラスコに、VALIFAST BLACK 3820(オリエント化学工業株式会社、カラーインデックス:ソルベントブラック27)40g、N-メチルピペリジン(東京化成工業株式会社)8.0g、及びγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社)60gを加え、窒素雰囲気下80℃で16時間撹拌し、染料中のアンモニウムカチオンをN-メチルピペリジンのプロトン付加体に変更した溶液を調製した。この溶液を、イソプロパノール(関東化学株式会社)に滴下・撹拌し、得られた沈殿物を濾取した。濾物をイソプロパノール(関東化学株式会社)で洗浄し、80℃6時間真空乾燥し、染料C-2を得た。
[製造例5]染料C-3:含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンがN-イソブチルモルホリンのプロトン化した化合物である染料の製造
300mLセパラブルフラスコに、VALIFAST BLACK 3804(オリエント化学工業株式会社、カラーインデックス:ソルベントブラック34)15g、N-イソブチルモルホリン(東京化成工業株式会社)3.0g、及びγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社)22.5gを加え、窒素雰囲気下80℃で20時間撹拌し、染料中のアンモニウムカチオンをN-イソブチルモルホリンのプロトン付加体に変更した溶液を調製した。この溶液を、イソプロパノール(関東化学株式会社)に滴下・撹拌し、得られた沈殿物を濾取した。濾物をイソプロパノール(関東化学株式会社)で洗浄し、80℃6時間真空乾燥し、染料C-3を得た。
[製造例6]染料C-4:含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンがN-エチルピペリジンのプロトン化した化合物である染料の製造
300mLセパラブルフラスコに、VALIFAST BLACK 3804(オリエント化学工業株式会社、カラーインデックス:ソルベントブラック34)15g、N-エチルピペリジン(東京化成工業株式会社)3.0g、及びγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社)22.5gを加え、窒素雰囲気下80℃で17時間撹拌し、染料中のアンモニウムカチオンをN-エチルピペリジンのプロトン付加体に変更した溶液を調製した。この溶液を、イソプロパノール(関東化学株式会社)に滴下・撹拌し、得られた沈殿物を濾取した。濾物をイソプロパノール(関東化学株式会社)で洗浄し、80℃6時間真空乾燥し、染料C-4を得た。
〈バインダー樹脂(A)〉
バインダー樹脂(A)として、PCX-02e、N695OH70、EPICLON(登録商標)N-695を使用した。
〈光酸発生剤(B)〉
光酸発生剤(B)として、キノンジアジド化合物であるTPPA(4)-150DF(4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(TrisP-PA)と、3-ジアゾ-3,4-ジヒドロ-4-オキソナフタレン-1-スルホン酸(1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸)とのエステル、東洋合成工業株式会社)を使用した。TPPA(4)-150DFの構造を以下に示す。TPPA(4)-150DFは、1分子あたり3個のRのうち、平均で1.5個のRがキノンジアジド構造を有する。
Figure 2023098315000023
〈金属錯体染料(C)〉
金属錯体染料(C)として、以下のC-1~C-6を使用した。
C-1:製造例3で製造した染料
C-2:製造例4で製造した染料
C-3:製造例5で製造した染料
C-4:製造例6で製造した染料
C-5:VALIFAST BLACK 3804(オリエント化学工業株式会社、カラーインデックス:ソルベントブラック34)
C-6:VALIFAST BLACK 3820(オリエント化学工業株式会社、カラーインデックス:ソルベントブラック27)
〈溶解促進剤(D)〉
溶解促進剤(D)としてフロログルシノールを使用した。
〈その他の原料〉
任意成分(E)として、界面活性剤(レベリング剤)であるメガファック(登録商標)F-559(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社)を使用した。
溶媒(F)として、γ-ブチロラクトン(GBL)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸イソブチル(i-BuOAc)の混合溶媒(GBL:PGMEA:i-BuOAc=35:45:20(質量比))、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、GBL、PGMEA、i-BuOAcの混合溶媒(DMI:GBL:PGMEA:i-BuOAc=1.5:33.5:45:20(質量比))を使用した。
(2)評価方法
実施例及び比較例で使用した評価方法は、以下のとおりである。
[露光部残渣、ホール形成性、表面荒れ]
ガラス基板(大きさ72mm×72mm×0.7mm)に、ポジ型感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が4.3μmになるようにバーコートし、常温真空乾燥60秒間の後、蓋つきホットプレート上125℃で120秒間加熱してプリベークを行った。超高圧水銀ランプを組み込んだ露光装置(商品名:マルチライトML-251A/B、ウシオ電機株式会社製)で石英製のフォトマスク(φ10μmパターンを有するもの)を介して300mJ/cmで露光した。露光量は紫外線積算光量計(商品名:UIT-150 受光部 UVD-S365、ウシオ電機株式会社製)を用いて測定した。スピン現像装置(AD-1200、滝沢産業株式会社製)を用い2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で80秒間アルカリ現像を行ない、目視で判定し露光部の残渣がないものを露光部残渣の評価が〇、有るものを露光部残渣の評価が×とした。また、塗膜に形成されているホールをマイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス株式会社製)で観察しホール径を測定した。ホール径(μm)が9.0μm以上であるものをホール形成性の評価が良好、ホール径(μm)が9.0μm未満であるものをホール形成性の評価が不良と判定した。露光部残渣がなく、且つホール形成性が良好なものは高感度であると判断できる。さらに、未露光部を目視で観察し、光沢があるものを表面荒れの評価が良好、光沢がなくざらつき又は凹凸があるものを表面荒れの評価が不良と判定した。
[保存安定性]
ポジ型感光性樹脂組成物を室温25℃で7日間保管した後、前記ホール形成性を再度評価し、ホール径の変化率が10%未満であるものを保存安定性が良好、ホール径の変化率が10%以上であるものを保存安定性が不良と判定した。
[プロセスウィンドウ]
ITO膜付きガラス基板(大きさ72mm×72mm×0.7mm)に、ポジ型感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が4.3μmになるようにバーコートし、常温真空乾燥60秒間の後、蓋つきホットプレート上125℃で120秒間加熱してプリベークを行った。また、プリベーク条件を120℃、130℃と変更し、同様に乾燥塗膜を作成した。それぞれのプリベーク温度における乾燥膜厚を、光学式膜厚測定装置(F20-NIR、フィルメトリクス株式会社)を用いて測定した。
続いて、スピン現像装置(AD-1200、滝沢産業株式会社)を用いて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で80秒間アルカリ現像を行なった。アルカリ現像後のそれぞれの膜厚を、再び光学式膜厚測定装置(F20-NIR、フィルメトリクス株式会社)を用いて測定し、現像前後の膜厚の差(現像により溶解した膜厚)を未露光部溶解性としてそれぞれ算出した。
プリベーク温度125℃の未露光部溶解性の値を基準とし、プリベーク温度120℃及び130℃の未露光部溶解性の値が両者ともに±0.3μm以内に収まっているものをプロセスウィンドウの評価が良好、120℃及び130℃の未露光部溶解性の値の少なくとも一方が±0.3μmより大きい変化量であるものをプロセスウィンドウの評価が不良とした。
[硬化被膜のOD値]
ガラス基板(大きさ100mm×100mm×1mm)に、ポジ型感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が約2.0μmになるようにスピンコートし、ホットプレート上125℃で120秒加熱して溶媒を乾燥した。その後、窒素ガス雰囲気下250℃で60分硬化させることにより、被膜を得た。硬化後の被膜のOD値を透過濃度計(BMT-1、サカタインクスエンジニアリング株式会社)で測定し、ガラスのみのOD値で補正を行って、被膜の厚さ1μm当たりのOD値に換算した。被膜の厚みは、光学式膜厚測定装置(F20-NIR、フィルメトリクス株式会社)を用いて測定した。
(3)ポジ型感光性樹脂組成物の調製及び評価
[実施例1~5、及び比較例1~3]
表1に記載の組成でバインダー樹脂(A)を溶解し、得られた溶液に、表1に記載の光酸発生剤(B)、金属錯体染料(C)、溶解促進剤(D)、任意成分(E)(界面活性剤)、及び混合溶媒(F)を加えて、さらに混合した。成分が溶解したことを目視で確認した後、孔径0.22μmのミリポアフィルターで濾過し、固形分濃度12質量%のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。表1における組成の質量部は固形分換算値である。実施例1~5及び比較例1~3のポジ型感光性樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
Figure 2023098315000024
表1の結果より、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンを含む金属錯体染料を用いた実施例1~5の感光性樹脂組成物は、高感度であり、被膜表面の荒れが少なく、プロセスウィンドウ及び保存安定性も良好であることが示された。例えば、金属錯イオンが同じ(カラーインデックスがソルベントブラック27)である実施例2と比較例2を比較すると、カウンターカチオンを形成するアミンがN-メチルピペリジンである染料C-2を用いた実施例2ではすべての評価結果が良好であったのに対し、カウンターカチオンを形成するアミンが第1級アミンである染料C-6を用いた比較例2では、露光部残渣、ホール形成性、表面荒れ、及び保存安定性の評価結果が不良であった。
本開示によるポジ型感光性樹脂組成物は、有機EL素子の隔壁又は絶縁膜を形成する放射線リソグラフィーに好適に利用することができる。本開示によるポジ型感光性樹脂組成物から形成された隔壁又は絶縁膜を備えた有機EL素子は、良好なコントラストを示す表示装置の電子部品として好適に使用される。

Claims (18)

  1. バインダー樹脂(A)と、
    光酸発生剤(B)と、
    金属錯体染料(C)と、
    を含むポジ型感光性樹脂組成物であって、前記金属錯体染料(C)が、金属錯イオンと、含窒素複素環構造を有するカウンターカチオンとを含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
  2. 前記バインダー樹脂(A)が、アルカリ可溶性官能基を有する、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  3. 前記カウンターカチオンが、N-アルキルモルホリニウムカチオン、及びN-アルキルピペリジニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  4. 前記金属錯イオンを形成する金属元素が、クロム、銅、コバルト、ニッケル、及び鉄からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  5. 前記金属元素がクロムである、請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  6. 前記金属錯体染料(C)が黒色染料である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  7. 前記金属錯イオンが、ソルベントブラック22~47のカラーインデックスで規定される化合物に含まれる金属錯イオンである、請求項6に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  8. 前記バインダー樹脂(A)が、複数のフェノール性水酸基を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  9. 前記バインダー樹脂(A)が、フェノール性水酸基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体を含む、請求項8に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  10. 前記バインダー樹脂(A)が、式(10)
    Figure 2023098315000025
    (式(10)において、R15は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であり、eは1~5の整数である。)
    で表される構造単位を有する、請求項8又は9に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  11. 前記バインダー樹脂(A)が、式(11)
    Figure 2023098315000026
    (式(11)において、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素原子数1~3のフルオロアルキル基、又はハロゲン原子であり、R18は、水素原子、炭素原子数1~6の直鎖アルキル基、炭素原子数3~12の環状アルキル基、フェニル基、又はヒドロキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である。)
    で表される構造単位を有する、請求項10に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  12. 前記バインダー樹脂(A)が、エポキシ基及びフェノール性水酸基を有する樹脂をさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  13. 前記ポジ型感光性樹脂組成物の固形分100質量%を基準として、前記金属錯体染料(C)を5質量%~50質量%含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  14. 前記ポジ型感光性樹脂組成物の固形分100質量%を基準として、前記光酸発生剤(B)を1質量%~50質量%含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  15. 前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化被膜の光学濃度(OD値)が、膜厚1μmあたり0.5以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
  16. 請求項1~15のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子隔壁。
  17. 請求項1~15いずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子絶縁膜。
  18. 請求項1~15のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物を含む有機EL素子。
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