自転車においては、後輪のハブに内装変速機を備えたものがある。この種の内装変速機は、例えば特許文献1、2などに開示されている。この内装変速機は、後輪に回転自在に配設された後ハブ内に、互いにギア比が異なる複数の駆動力伝達経路を有する遊星ギア機構などの変速機構が設けられ、駆動力伝達経路を切り換えることで複数段(例えば、低速段、中速段、高速段の三段など)に変速可能である。
変速操作を行うために、後輪の車軸から軸心方向に沿って出退するプッシュロッドなどの変速段切換体(操作部材とも称せされる)が設けられている。また、この変速段切換体を駆動するために、切換レバーを備えてベルクランクとも称せられる変速段伝達機構が、変速段切換体が出退する車軸の一端部近傍に配設されている。前記切換レバーは変速用ワイヤの一端部に連結されている。変速用ワイヤの他端部は、ハンドルに取り付けられて搭乗者により操作される変速用操作部に連結されている。変速動作を容易に行えるよう、変速段切換体を初期位置側に付勢する戻しばねが設けられている。また、前記変速用ワイヤは外装ワイヤ(アウタワイヤ)内を移動可能に配設されている。
例えば、低速段から中速段に切り換えるべく、前記変速用操作部を操作する際には、前記戻しばねによる付勢力に抗する力と変速用ワイヤの外装ワイヤに対する摩擦力とを合わせた力よりも大きい力を、指から前記変速用操作部に加えなければならない。したがって、比較的大きな力の負担を搭乗者に強いることとなる。
このような搭乗者に対する負担を軽減する方法として、特許文献3には、電動のモータが内蔵されたモータ駆動ユニットを備えた構造が開示されている。モータ駆動ユニットにはワイヤの一端部が連結され、このワイヤの他端部には、変速段切換体を移動させる切換レバーが連結されている。
例えば、ハンドルなどに、前記モータ駆動ユニットのモータを駆動させる変速用スイッチを取付け、この変速用スイッチと前記モータ駆動ユニットとを電気的に接続する接続コードを設ける。これにより、搭乗者は、変速用スイッチを操作するだけで、内装変速機構の変速動作を行うことができる。したがって、搭乗者は小さな力で変速用スイッチを軽く操作すればよく、搭乗者の負担が軽減される。
また、特許文献4には、モータにより内装変速機を駆動させる変速装置などの構造が開示されている。この変速装置では、内装変速機が内蔵されている内蔵変速ハブ(後ハブ)の一側部に、チェーンが架け渡される後輪のスプロケットが組み付けられているとともに、このスプロケットの外側(反対側)に、発電機が配設されている。発電機には、モータや減速機構、ダイナモ、バッテリ、モータ制御部、電力制御回路、などが配設されているとともに、中心部寄り箇所に、回転受部材やハブ装着部が設けられている。また、内蔵変速ハブは、ノッチを有する回転部や非回転部が設けられている特殊な構造とされ、発電機の回転受部材に形成されたタブが内蔵変速ハブの回転部に係合され、発電機のハブ装着部が内蔵変速ハブの非回転部に固定されている。
また、ハンドルに、アップシフトスイッチなどが設けられている入力デバイスが取り付けられており、前記アップシフトスイッチを搭乗者が操作するだけで、内装変速機構の変速動作を行うことができる。したがって、搭乗者は小さな力で前記アップシフトスイッチを軽く操作すればよく、搭乗者の負担が軽減される。
しかしながら、上記特許文献3の構造においては、モータ駆動ユニットと、変速段切換体を移動させる切換レバーとの間にはワイヤが配設されており、ワイヤを介して、切換レバーや変速段切換体を移動させる構成である。したがって、長期間の使用によりワイヤが劣化した場合に、ワイヤの交換作業や調整作業が必要となる。また、ワイヤを配設するためのスペースも必要となり、小型化し難いという課題も生じる。
また、上記特許文献4の構造においては、内蔵変速ハブが発電機やスプロケットに係合したり固定されたりする特殊な構造であるため、製造コストが極めて高価となる。また、前記発電機は大型でかつ大重量となり易いため、取付スペースが多大となる。
本発明は上記課題を解決するもので、ワイヤの交換作業や調整作業が不要となるとともに、製造コストの上昇を最小限に抑えることができ、しかも、取付スペースも少なくて済む変速段切換装置および自転車を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の共通構成は、後輪のハブに、車軸の中心部または外周から車軸の軸心方向に沿って出退して変速段を切り換える変速段切換体を有する内装変速機が設けられた自転車に取付けられる変速段切換装置であって、変速段切換用の駆動力を発生する変速段切換用モータと、変速段切換用モータの回転を減速する減速機構と、を備え、前記減速機構に、減速された力が伝達されて出力され、前記変速段切換体に連動させる駆動用出力体が設けられ、前記変速段切換用モータから前記駆動用出力体に伝達された回転駆動力が、前記変速段切換体に、車軸内に退入する方向だけでなく車軸から突出する方向にも伝達され、前記駆動用出力体と前記変速段切換体とが連結ヒンジ部を介して連結されるよう構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、変速段切換用モータが基板に設けられ、基板に、変速段切換用モータに着脱自在の変速段切換用モータ接続用端子が直付けされていることを特徴とする。
また、本発明は、前記変速段切換用モータと前記減速機構とが外殻部内に収容され、前記駆動用出力体に前記変速段切換体の付勢力に抗する負荷が作用するように変速段切換用モータが駆動される際に、前記減速機構に設けられた歯車の歯部に、変速段切換用モータから伝達された駆動力のスラスト反力が外殻部に作用するよう構成したことを特徴とする。
この構成によれば、変速段切換用モータが駆動されると、減速機構により変速段切換用モータの回転力が減速されて駆動用出力体に伝達され、この駆動用出力体により変速段切換体が移動される。これにより、内装変速機の変速段を変速することが可能となる。この場合に、変速段切換用モータからの駆動力がワイヤを介することなく駆動用出力体および変速段切換体に伝達されているので、ワイヤの交換作業や調整作業が不要となる。また、ワイヤを配設するためのスペースも不要であるため、当該変速段切換装置を小型化し易い。さらに、前記変速段切換用モータから前記駆動用出力体に伝達された回転駆動力が、前記変速段切換体に、車軸内に退入する方向だけでなく車軸から突出する方向にも伝達されるよう構成することにより、前記変速段切換体に対して車軸から突出する方向にも回転駆動力が加えられて、変速動作を、より確実に行うことができる。
なお、前記変速段切換体の車軸から突出する箇所に歯部を形成し、前記駆動用出力体に出力用歯部を形成し、前記駆動用出力体の出力用歯部と前記変速段切換体の歯部とを噛み合わせる構成としたりすると好適である。
また、前記駆動用出力体に磁石が取り付けられ、磁石に対向可能な箇所に、磁石の磁力によって前記駆動用出力体の位置を検知する位置検知センサが設けられ、前記位置検知センサがリニアホール素子であり、変速段位置だけでなく変速段の中間位置も1つのリニアホール素子で検知可能であると好適である。
また、本発明の変速段切換装置を自転車に備えることが好適であり、これにより、例えば、ハンドルなどに、変速段切換用モータを駆動させる変速用のスイッチなどを設けることで、前記スイッチを搭乗者が操作するだけで、内装変速機構の変速動作を行うことができる。また、前記変速段切換装置はワイヤが不要であるため、コンパクトに構成できる。したがって、前記変速段切換装置を、後輪の車軸における前記変速段切換体の出退箇所の近傍に容易に配設することが可能となる。
また、前記変速段切換用モータを、前記変速段切換用モータおよび減速機構を収容する外殻部の金属部分に接触した状態、または、自転車のフレームに直接にもしくは間接的に接触した状態で配設すると好適であり、この場合には、変速段切換用モータから発生する熱を外殻部の金属部分や自転車のフレームに逃がすことができて、自転車としての信頼性を向上させることができる。
また、当該自転車が、補助駆動力を発生するモータとこのモータに給電するバッテリとを備えた電動自転車であり、前記バッテリから前記変速段切換用モータにも給電される構成とすれば好適である。
さらに、自転車の走行負荷状態を検知する走行負荷状態検知手段が設けられ、前記走行負荷状態に応じて、前記変速段切換用モータを駆動させるように制御する制御部を備えると好適であり、この構成によれば、自転車の走行負荷状態に応じて前記変速段切換用モータが駆動されて自動的に内装変速機が変速される。
本発明によれば、変速段切換用の駆動力を発生する変速段切換用モータと、変速段切換用モータの回転を減速する減速機構と、を備え、前記減速機構に、減速された力が伝達されて出力され、前記変速段切換体に連結されて移動させる駆動用出力体が設けられていることにより、ワイヤを用いることなく、内装変速機の変速段を変速することが可能となる。この結果、ワイヤの交換作業や調整作業が不要となるとともに、ワイヤを配設するためのスペースも不要であるために当該変速段切換装置を小型化し易い。また、前記変速段切換用モータから前記駆動用出力体に伝達された回転駆動力が、前記変速段切換体に、車軸内に退入する方向だけでなく車軸から突出する方向にも伝達されるよう構成することにより、後輪のハブに設けた内装変速機に、変速段切換体を車軸から突出するように付勢する移動部材付勢部材(戻しばね)を省いたり、前記移動部材付勢部材(戻しばね)の付勢力が経年変化により劣化した場合でも、確実に変速を行ったりすることができる利点がある。また、前記内装変速機としては遊星歯車機構が用いられることが多いが、この遊星歯車機構に設けられている遊星歯車に大きなトルクが作用した場合でも、変速段を低速段側に良好に切り換えることができる利点もある。
また、変速段切換用モータを基板に設け、基板に、変速段切換用モータに着脱自在の変速段切換用モータ接続用端子が直付けすることで、変速段切換用モータを基板に取り付ける際に、変速段切換用モータ接続用端子に装着するだけで済み、変速段切換用モータの端子をはんだ付けしなくても済む。
また、前記変速段切換体が車軸から突出する方向に付勢され、前記変速段切換用モータと前記減速機構とが外殻部内に収容され、前記駆動用出力体に前記変速段切換体の付勢力に抗する負荷が作用するように変速段切換用モータが駆動される際に、前記減速機構に設けられた円筒ウォームとこの円筒ウォームに噛み合うウォームホイールなどの歯車の歯部に、変速段切換用モータから伝達された駆動力のスラスト反力が外殻部に作用するよう構成することで、駆動力を伝達するウォームホイールと円筒ウォームとなどの歯車の歯部同士を良好な伝達効率で接触させることが可能となる。
また、前記変速段切換用モータを、前記変速段切換用モータおよび減速機構を収容する外殻部の金属部分に接触した状態、または、自転車のフレームに直接にもしくは間接的に接触した状態で配設することにより、変速段切換用モータから発生する熱を自転車のフレームに逃がすことができて、自転車としての信頼性を向上させることができる。
また、自転車の走行負荷状態を検知する走行負荷状態検知手段を設け、前記走行負荷状態に応じて、前記変速段切換用モータを駆動させるように制御する制御部を備えることにより、この構成によれば、自転車の走行負荷状態に応じて前記変速段切換用モータが駆動されて自動的に内装変速機を変速させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、左右方向とは自転車の一例である電動自転車(電動アシスト自転車とも称せられる)に乗って進行方向に向いた状態で左右になる方向を示すが、以下の構成の左右方向の配置に本発明が限定されるものではない。
図1、図2における1は本発明の実施の形態に係る変速段切換装置を備えた自転車の一例としての電動自転車である。図1、図2に示すように、この電動自転車1は、ヘッドパイプ2a、前フォーク2b、メインパイプ2c、立パイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2fなどからなる金属製のフレーム2と、前フォーク2bの下端に回転自在に取り付けられた前輪3と、チェーンステー2eの後端に回転自在に取り付けられた後輪4と、前輪3の向きを変更するハンドル5と、搭乗者が着座するサドル6と、踏力からなる人力駆動力がかけられるクランク7(クランク軸7aとクランクアーム7bとからなる)およびペダル8と、アシスト力(補助駆動力)を発生させる補助駆動力の駆動源としての電動のモータ9およびこのモータ9を含めた各種の電気的制御を行う制御部などが設けられた駆動ユニット10と、モータ9に駆動用の電力を供給する二次電池などからなるバッテリ12と、ペダル8およびクランク7からの踏力に基づく人力駆動力や駆動ユニット10からの補助駆動力を後輪4に伝達する無端状駆動力伝達体としてのチェーン11などを備えている。なお、バッテリ12は蓄電器の一例であり、二次電池が好適であるが、蓄電器の他の例としてはキャパシタなどであってもよい。また、図1、図2などにおける13はキャリア(荷台)、13aはキャリア支持部材、14はスタンド、14aはスタンド支持板である。
図2、図4などに示すように、電動自転車1の後輪4にはチェーン11に噛み合う後スプロケット15と、後ハブ16とが配設され、この後ハブ16の内部には、内装変速機(図示せず)が配設されている。この内装変速機は、互いにギア比が異なる複数の駆動力伝達経路を有する遊星ギア機構や多段ギア変速機構などの周知の変速機構(例えば、特許文献1、2などに開示されている内装変速機の変速機構)から構成されており、駆動力伝達経路を切り換えることで複数段(例えば、低速段、中速段、高速段の三段など)に変速可能である。
また、図3に示すように、ハンドル5の一方側(この実施の形態ではハンドル5の右側)には、変速段を手動で切り換えることが可能な高速側切換スイッチ21Aおよび低速側切換スイッチ21Bが設けられた手元変速段切換装置20が取り付けられている。高速側切換スイッチ21Aは、1回押すたびに現在よりも高速な段数に切り換えられる。つまり、例えば、現在低速段である場合には、1回押すと中速段に切り換えられ、もう1回押すと高速段に切り換えられ、現在中速段である場合には、1回押すと高速速段に切り換えられる。より具体的には、高速側切換スイッチ21Aは、1回押されるたびに高速側の段数への切換指示信号が制御部へ送出される。また、低速側切換スイッチ21Bは、1回押すたびに現在よりも低速な段数に切り換えられる。つまり例えば、現在、高速段である場合には、1回押すと中速段に切り換えられ、もう1回押すと低速段に切り換えられ、現在、中速段である場合には、1回押すと低速段に切り換えられる。より具体的には、低速側切換スイッチ21Bは、1回押されるたびに低速側の段数への切換指示信号が制御部へ送出される。なお、図3に示すように、高速側切換スイッチ21Aや低速側切換スイッチ21Bは、ハンドル5のグリップ(把持部)5aから手を離さなくても指で押して操作できるように配置されている。
また、図3に簡略的に示すように、ハンドル5の他方側(この実施の形態ではハンドル5の左側)には、補助駆動力の追加動作(いわゆるアシスト動作)を電気的にON・OFFするためのスイッチボタン(図示せず)などを備えた補助動作用手元操作部18が取り付けられているが、これに限るものではない。
図4は、後輪4の後ハブ16の一部および本発明の実施の形態に係る変速段切換装置の部分切欠平面図であり、低速段に切り換えられている状態を示している。また、図5は同電動自転車の変速段切換装置の内部を示す左側面図、図6は同変速段切換装置の下面図である。
図4などにおける25は後輪4の車軸であり、この車軸25の中心部には、内装変速機の変速段を切り換える変速段切換体(いわゆるプッシュロッド)26が、車軸25の軸心X方向に沿って出退自在に配設されている。また、この変速段切換体26を駆動するための駆動用出力体40を備えてベルクランクとも称せられる変速段切換装置30が、変速段切換体26が出退する車軸25の一端部(この実施の形態では右端部)近傍に配設されている。
変速段切換装置30には金属板製の取付台31が備えられており、取付台31が、後輪4の車軸25とナット27などの固定部材により連結されているチェーンステー2e(フレーム2の一例)の後端部に取り付けられている。なお、チェーンステー2eの後端部には、斜め上方からシートステー2fも溶接などにより一体的に固着されている。取付台31には、車軸25が挿通される孔部(図6参照、一部が開放された長溝形状の孔でもよい)31aと、上部側と下部側の箇所とで折り曲げて形成された回り止め部31b(図4参照)と、が形成されている。そして、孔部31aに車軸25が挿通されてナット27でチェーンステー2eの後端部との間に挟まれた状態で固定されている。また、取付台31の回り止め部31bがチェーンステー2e(フレーム2の一例)の後端部に上方または下方から当接可能な状態で嵌め込まれており、取付台31が車軸25を中心とした周方向に回転しないように規制されている。なお、この実施の形態では、後輪4の車軸25が通されているチェーンステー2eの後端部とナット27との間に、スタンド支持板14aやキャリア支持部材13aの下端部なども挟まれて固定されている。
また、図示しないが、内装変速機には、変速段切換体26を車軸25から突出する方向に付勢する切換体付勢部材(いわゆる戻しばね)が設けられており、この切換体付勢部材の付勢力により変速段切換体26は車軸25から突出する方向に付勢されている。
図4〜図6などに示すように、変速段切換装置30は、上述した取付台31と、基板32と、基板32上に載せられた変速段切換用モータ33と、この変速段切換用モータ33が接続された基板32に接続されたコネクタ部34と、変速段切換用モータ33の回転軸に取り付けられた小径のモータ減速歯車35と、このモータ減速歯車35に噛み合う大径の第1減速歯車36と、この第1減速歯車36と一体的に回転する円筒ウォーム37(歯車の1種)と、この円筒ウォーム37に噛み合う大径のウォームホイール38(歯車の1種)と、ウォームホイール38と一体的に回転する小径の第2減速歯車39と、第2減速歯車39にその円弧状歯部40aで噛み合うとともに変速段切換体26の先端部に当接するアーム部40bが設けられた駆動用出力体40と、駆動用出力体40のアーム部40bと変速段切換体26とを連結する連結ヒンジ部(連結ヒンジピン)43と、これらを覆うカバー部材41などを有する。なお、この実施の形態では、モータ減速歯車35、第1減速歯車36、円筒ウォーム37、ウォームホイール38と、第2減速歯車39、駆動用出力体40により、変速段切換用モータ33の回転を減速する減速機構が構成されている。また、取付台31とカバー部材41とにより、変速段切換装置30の外殻部が構成されている。
駆動用出力体40は支持軸40cを中心として、回転自在とされ、アーム部40bの先端部には、長孔40dが形成され、この長孔40dを上下に貫通して連結ヒンジ部(連結ヒンジピン)43が配設されている。連結ヒンジ部(連結ヒンジピン)43は、変速段切換体26の先端部に取付けられており、連結ヒンジ部(連結ヒンジピン)43を介して、駆動用出力体40のアーム部40bと変速段切換体26とが連結されている。そして、変速段切換用モータ33が駆動されることで、この変速段切換用モータ33の回転駆動力が、減速歯車35、36、39や円筒ウォーム37、ウォームホイール38を介して減速されながら駆動用出力体40に伝達され、駆動用出力体40のアーム部40bが駆動される。すなわち、連結ヒンジ部(連結ヒンジピン)43を介して、駆動用出力体40のアーム部40bと変速段切換体26とが連結されているので、変速段切換用モータ33から駆動用出力体40に伝達された回転駆動力が、変速段切換体26に、車軸25内に退入する方向だけでなく車軸25から突出する方向にも伝達されるよう構成されている。これにより、変速段切換体26の車軸25からの突出量(出退量)が調整され、内装変速機の変速段を切換可能とされている。なお、変速段切換体26の車軸25からの突出量(出退量)が少なくなるほど、高速側の変速段に切り換わる(この実施の形態では3段階に切り換わる)ようになっており、図4は低速段に切り換えられている状態を示し、図7は中速段に切り換えられている状態を示し、図8は高速段に切り換えられている状態を示す。
この実施の形態では、取付台31に、変速段切換用モータ33や減速歯車35、36、39、円筒ウォーム37、ウォームホイール38、駆動用出力体40などが組み付けられた基板32が取り付けられ、これらがカバー部材41で覆われた状態で、ねじなどによりカバー部材41が取付台31に着脱可能な状態で取り付けられている。また、基板32には、変速段切換用モータ33に着脱自在の一対のモータ接続用端子(モータ接続用端子とも称す)42が立設姿勢で直付けされており、これらのモータ接続用端子42が変速段切換用モータ33の本体部に形成された孔部を通して内部に突入される状態で変速段切換用モータ33を装着することで、変速段切換用モータ33に通電されるよう構成されている。
また、詳しくは図示しないが、取付台31やカバー部材41には、駆動用出力体40の軸部を回転自在に支持する支持筒や、円筒ウォーム37および減速歯車36の軸部を上下から回転自在に保持する軸受部、ウォームホイール38を回転自在に支持する支持軸を受ける軸受部などが設けられている。
また、図4などに示すように、ウォームホイール38の外周には、円筒ウォーム37に噛み合う歯部が形成されており、この歯部は、円筒ウォーム37に噛み合うように、側面視して少し傾斜するように形成されているが、当該変速段切換装置30に負荷が作用する際(この実施の形態では、変速段切換体26が車軸25内に後退して低速段側から高速段側に移動する際)に、円筒ウォーム37からのスラスト反力が片方の外殻部である取付台31に作用するよう構成されている。
すなわち、この実施の形態では、低速段切換位置(図4参照)から高速段切換位置(図8参照)に移動するように、変速段切換用モータ33を所定方向に回転させる際には、変速段切換体26を車軸25から突出する方向に付勢する付勢力に抗して移動させなければならないため、変速段切換用モータ33を含めた変速段切換装置30の負荷が大きくなる。また、いわゆる平歯車同士の力伝達効率は高い一方で、円筒ウォーム37とウォームホイール38とは減速率(トルク増加率)は大きいが、その力伝達効率は50%強と比較的低めであるため、円筒ウォーム37とウォームホイール38との噛み合い位置がずれると、力伝達効率がさらに大幅に低下する。したがって、円筒ウォーム37とウォームホイール38との噛み合い位置を良好にすることが望ましい。しかし、ウォームホイール38の組み付け位置は、外殻部をなす取付台31とカバー部材41とによる製造誤差により係止位置が必ずしも正確とならない。このような状況でも良好に対処するため、本実施の形態では、ウォームホイール38における円筒ウォーム37との接触箇所では僅かに傾斜する方向となるように配設されている。これにより、変速段切換用モータ33を、負荷が大きくなる高速段側となるように回転する際に、円筒ウォーム37からのスラスト反力が取付台31に作用するよう構成されている。その結果、大きな負荷が作用する際には、円筒ウォーム37とウォームホイール38との噛み合い位置が、最適な状態となり、変速段切換用モータ33として小型のものを用いた場合でも、駆動用出力体40を良好に駆動することができる。
また、図6などに示すように、駆動用出力体40には扇形状の磁石45が貼り付けられているとともに、駆動用出力体40が所定の変速段位置(低速段)となった際に、磁石45に近接する位置に駆動用出力体40の位置を検出するためのリニアホール素子(リニアホールIC)からなる位置検出センサ46が基板32上に取り付けられている。磁石45は、駆動用出力体40の支持軸40cを中心として扇形状となり、円弧の周方向一端側がN極、周方向他方側がS極であるものが用いられている。位置検出センサ46は、図9に示すように、駆動用出力体40の位置(この実施の形態では、低速段および高速段およびこれらの中間の中速段位置)をリニア状態、すなわち、直線または曲線状に位置を多段階(無数段階)で検出することが可能とされている。
変速段切換装置30の変速段切換用モータ33や位置検出センサ46は、コネクタ部34に接続された配線34a(図6など参照)を介して、駆動ユニット10内の制御部に接続され、ハンドル5に取り付けられた手元変速段切換装置20の搭乗者による操作に応じて変速段切換用モータ33が駆動されて駆動用出力体40が移動される。また、位置検出センサ46からの位置情報に関する信号が制御部または基板32に設けられた切換用モータ制御部に出力されて、前記位置情報に関する信号に対応して変速段切換用モータ33が駆動される。また、駆動ユニット10はバッテリ12から給電されており、駆動ユニット10を介して、バッテリ12から変速段切換装置30の変速段切換用モータ33にも給電されている。
上記構成において、手元変速段切換装置20の高速側切換スイッチ21Aや低速側切換スイッチ21Bが搭乗者により押されるなどして操作されると、これに対応して、変速段切換用モータ33が駆動され、減速機構により変速段切換用モータ33の回転力が減速されて駆動用出力体40に伝達され、この駆動用出力体40により変速段切換体26が移動される。これにより、内装変速機の変速段を変速することが可能となる。また、搭乗者は変速時に手元変速段切換装置20の高速側切換スイッチ21Aや低速側切換スイッチ21Bを押すだけでよいため、負担が軽減され、便利である。
この場合に、変速段切換用モータ33からの駆動力がワイヤを介することなく駆動用出力体40および変速段切換体26に伝達されるので、ワイヤの交換作業や調整作業が不要となる。また、ワイヤを配設するためのスペースも不要であるため、当該変速段切換装置30を小型化し易い。
また、上記構成によれば、連結ヒンジ部(連結ヒンジピン)43を介して、駆動用出力体40のアーム部40bと変速段切換体26とが連結され、変速段切換用モータ33から駆動用出力体40に伝達された回転駆動力が、変速段切換体26に、車軸25内に退入する方向だけでなく車軸25から突出する方向にも伝達されるよう構成されている。これにより、後輪4のハブ16に設けた内装変速機に、変速段切換体26を車軸25から突出するように付勢する切換体付勢部材(戻しばね)の付勢力が経年変化により劣化した場合でも、確実に変速を行うことができ、信頼性が向上する。また、内装変速機において、変速段切換体26を車軸25から突出するように付勢する切換体付勢部材(戻しばね)を省くことも可能となる。さらに、内装変速機としては遊星歯車機構が用いられることが多いが、この遊星歯車機構に設けられている遊星歯車に大きなトルクが作用した場合でも、変速段を低速段側に良好に切り換えることができる利点もあり、これによっても、信頼性を向上させることができる。
また、上記構成によれば、駆動力出力体40に、磁石45が取り付けられ、磁石45に対向可能な箇所に、磁石450の磁力によって駆動力出力体40の位置を検知する位置検知センサ46が設けられている。これにより、駆動力出力体40の位置を良好に検知することができる。また、上記実施の形態では、位置検知センサ46がリニアホール素子であり、変速段位置だけでなく変速段の中間位置も1つのリニアホール素子で検知可能であるため、極めて少ない部品数でありながら駆動力出力体40の中間位置も含めた詳細な位置を良好に検知できる利点がある。しかし、必ずしも位置検知センサ46がリニアホール素子ではなくてもよく、異なる位置にオン状態とオフ状態とに切り換え自在な複数のホール素子を用いたり、駆動力出力体40にポテンショメータを取り付けて検知したりしてもよい。
また、上記構成によれば、変速段切換用モータ33を有する変速段切換装置30に基板32を設け、基板32に、変速段切換用モータ33に着脱自在の変速段切換用モータ接続用端子42を直付けしている。これにより、変速段切換用モータ33を基板32に取り付ける際に、変速段切換用モータ接続用端子42に装着するだけで済み、変速段切換用モータ33に別途はんだ固定用の端子を設けてはんだ付けしなくても済む。この結果、製造時の生産性が向上するとともに、基板32として省スペース化を図ることができ、ひいては、変速段切換装置30の小型化を促進できる。
なお、変速段切換装置30の外殻部をなすカバー部材41としては樹脂で成形することにより安価に製造することができる。しかしこれに限るものではなく、例えば変速段切換用モータ33として、発熱量が大きくて放熱することが好ましい部品が用いられた場合には、外殻部の一部をなすカバー部材41として金属製のものを用いるとともにカバー部材41を変速段切換用モータ33の本体部に接触させて配設してもよい(図4参照)。この場合には、変速段切換用モータ33で発生した熱が金属製のカバー部材41を介して外部に発散されるとともに、金属板製の取付台31やフレーム2のチェーンステー2eにも伝えられて外部に発散され、変速段切換用モータ33が過熱状態となることが防止されて、信頼性を向上させることができる。また、変速段切換用モータ33の本体部の少なくとも一部を、チェーンステー2eなどのフレーム2に直接接触するように配置したり、取付台31を介してチェーンステー2eなどのフレーム2に接触するように構成したりしてもよい。これらの構成によっても、変速段切換用モータ33として発熱量が大きくて放熱することが好ましい部品が用いられた場合に、変速段切換用モータ33で発生した熱をフレーム2のチェーンステー2eに伝達して外部に発散させることができて信頼性を向上させることができる。
上記実施の形態では、変速段を切り換える際には、搭乗者が手元変速段切換装置20の高速側切換スイッチ21Aや低速側切換スイッチ21Bを手動で押すなどして操作することで変速するよう構成した。しかし、このような構成に限るものではなく、図10に簡略的に示すように、電動自転車1に、当該電動自転車1の走行負荷状態を検知する走行負荷状態検知手段43を設け、制御部50により、前記走行負荷状態に応じて、前記変速段切換用モータ33を駆動させるように制御するよう構成してもよい。例えば、人力駆動力(ペダル8が踏み込まれてクランク軸7aに作用する踏力)を検知するトルクセンサ51を駆動ユニット10などに設けるとともに、車速を検知する車速センサ52を前輪3などに設け、トルクセンサ51により検出した人力駆動力(踏力)と車速とから走行負荷状態を検知する走行負荷状態検知手段53を制御部50に設ける。例えば、複数の走行速度と、人力駆動力の負荷状態との値に対応して走行負荷状態を判断する判断用テーブルを設け、この走行負荷状態が大きい場合には低速段側に切換え、走行負荷状態が小さい場合には、高速段側に切換えるように変速させる。
この構成によれば、電動自転車1の走行負荷状態に応じて変速段切換装置30の変速段切換用モータ33が駆動されて自動的に内装変速機を変速させることができる。したがって、変速段を切り換えるために搭乗者が操作する手間を省くことができて便利である。なお、上記実施の形態では、速度と人力駆動力(踏力)とから当該電動自転車1の走行負荷状態を検知するよう構成した場合を述べたが、これに限るものではなく、例えば、人力駆動力(踏力)のみから走行負荷状態を検知するよう構成してもよい。また、電動自転車1の走行箇所の傾斜角度を検知する傾斜センサ(上り坂と下り坂とも判断できる傾斜センサ)を設けて、走行箇所の傾斜角度も含めて電動自転車1の走行負荷状態を走行負荷状態検知手段53が検知できるよう構成してもよい。
また、上記実施の形態では、連結ヒンジ部(連結ヒンジピン)43を介して、駆動用出力体40のアーム部40bと変速段切換体26とを連結することにより、変速段切換用モータ33から駆動用出力体40に伝達された回転駆動力が、変速段切換体26に、車軸25内に退入する方向だけでなく車軸25から突出する方向にも伝達されるよう構成されている場合を述べたが、この構成に限るものではない。すなわち、図11〜図14に示すように、変速段切換体26における車軸25から突出する箇所に歯部26aを形成するとともに、変速段切換装置30の駆動用出力体40に出力用歯部40fを形成し、駆動用出力体40の出力用歯部40fと変速段切換体26の歯部26aとを噛み合わす構成としてもよい。
この構成によっても、互いに噛み合う駆動用出力体40の出力用歯部40fと変速段切換体26の歯部26aとを介して、駆動用出力体40のアーム部40bと変速段切換体26とが連動し、変速段切換用モータ33から駆動用出力体40に伝達された回転駆動力が、変速段切換体26に、車軸25内に退入する方向だけでなく車軸25から突出する方向にも伝達される。この結果、後輪4のハブ16に設けた内装変速機に、変速段切換体26を車軸25から突出するように付勢する付勢ばねの付勢力が経年変化により劣化した場合でも、確実に変速を行うことができ、信頼性が向上する。また、内装変速機において、変速段切換体26を車軸25から突出するように付勢する付勢ばねを省くことも可能となる。さらに、内装変速機としては遊星歯車機構が用いられることが多いが、この遊星歯車機構に設けられている遊星歯車に大きなトルクが作用した場合でも、変速段を低速段側に良好に切り換えることができる利点もあり、これによっても、信頼性を向上させることができる。
なお、図11〜図14に示す変速段切換装置30において、図4などに示す変速段切換装置30と同様な構成要素には同符号を付す。この図11〜図14に示す変速段切換装置30では、変速段切換体26に噛み合う駆動用出力体40が歯車であり、この駆動用出力体40と、減速歯車39との間に、さらに減速歯車47、48が介装され、減速歯車47に磁石45が取り付けられ、磁石45に対向可能な箇所に、磁石45の磁力によって、減速歯車47、48を介して、駆動力出力体40の位置を間接的に検知する位置検知センサ(図示せず)が設けられている。この構成によっても、上記実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。
また、上記実施の形態では、後ハブ16に設けられる内装変速機の変速段切換体26が車軸25の中心部から車軸25の軸心X方向に沿って出退して変速段を切り換える構成の場合を述べた。しかし、この構成に限るものではなく、内装変速機の変速段切換体が車軸25の外周から車軸25の軸心X方向に沿って出退して変速段を切り換える構成の場合にも同様に適用可能である。
また、上記構成では、自転車が電動自転車1である場合を述べ、この場合には、電動自転車1に設けられたバッテリ12により、変速段切換装置30の変速段切換用モータ33が給電されるので、変速段切換用モータ33を駆動するための専用のバッテリを設けなくても済む利点がある。
しかしながら、この構成に限るものではなく、変速段切換装置30にバッテリを着脱可能に設けたり、変速段切換装置30に手元変速段切換装置20を、配線部を介して接続し、この手元変速段切換装置20にバッテリを着脱可能に設けたりして、前記バッテリにより、変速段切換装置30の変速段切換用モータ33を駆動可能に構成してもよい。この構成によれば、一般の自転車においても、電動で変速段を切り換えることができる。