本開示の実施例を具体的に説明する前に、本実施例の概要を説明する。実施例は、点在する小規模な太陽光発電システム、蓄電システム、燃料電池システム等の機器と、電力の需要抑制を統合して制御するVPP(Virtual Power Plant)に関する。VPPは、太陽光発電システム、蓄電システム、燃料電池システム等の機器をネットワークを介して制御することによって、これらを1つの発電所のようにまとめて機能させる。ここで、太陽光発電システム、蓄電システム、燃料電池システム等の機器は各需要家に設置される。需要家は、電力会社等からの電力の供給を受けている施設であり、例えば、住宅、事務所、店舗、工場、公園などである。このような需要家における機器は電力管理システムによって制御される。電力管理システムは、需要家における電力の消費量が大きい時間帯において蓄電システムを放電させたり、電力系統の電気料金が安価である夜間において蓄電システムを充電させたりする。
複数の電力管理システムは、群管理システムに接続される。また、群管理システムは、複数の群管理システムを統合するアグリゲータである上位システムに接続される。上位システムと群管理システムに、需要家に設置された蓄電システム等の機器を加えたものがVPPに相当する。上位システムは、市場で、あるいは事業者と相対契約で電力を取引する。また、上位システムは、電力取引市場や電力会社の送配電部門、小売電気事業者等に集約した調整力を提供する。そのため、上位システムは、市場あるいは各事業者に提供する調整力を決定し、調整力を各群管理システムに配分する。各群管理システムは、さらに調整力を各需要家に配分する。これより、群管理システムは、上位システムからの要求に応じて売電あるいは買電するように、複数の電力管理システムのそれぞれに対して制御を指示する。例えば、群管理システムは、発電所において発電される電力が逼迫する場合、蓄電システムを放電させたり、需要家における電力消費を抑制させたりするように制御することを電力管理システムに要求する。
群管理システムに複数の電力管理システムが接続され、各電力管理システムに1つ以上の蓄電システムが接続されることによって、これらは階層的に配置されている。そのため、複数の蓄電システム(以下、「蓄電システム群」ともいう)による電力の変動を群管理システムが制御するといえる。電力系統における電力需要の変動に応じて、複数の蓄電システム群を一斉に充放電させると、電力の変動が大きくなり電力系統が不安定となる。
これに対応するために、電力需要が変動した場合、前述の第1蓄電システム群が迅速に応答し、それに続いて第1蓄電システム群に代わるように第2蓄電システム群が応答する。つまり、第1蓄電システム群によって変動に対して迅速に応答するための充放電が提供され、第2蓄電システム群によって安定的な充放電が提供される。ここで、第1蓄電システム群による応答での充放電は「1次調整力」と呼ばれ、第2蓄電システム群による応答での充放電は「2次調整力」と呼ばれることがある。2次調整力に続く3次調整力が含まれてもよいが、ここでは3次調整力を省略する。また、第1蓄電システム群は第1群管理システムに接続され、第2蓄電システム群は第2群管理システムに接続されるとする。
このような状況において、第1蓄電システム群から第2蓄電システム群への引き継ぎが適切になされない場合、電力系統の周波数が安定するまでの期間が長くなる。そのため、本実施例では、第1群管理システムは、第2蓄電システム群が充放電を開始する予定の第1時刻、第1時刻以降に第2蓄電システム群が充放電する電力の第1変化割合を取得する。また、第1群管理システムは、第1時刻、第1変化割合をもとに、第1蓄電システム群が充放電する電力の減少を開始させる予定の第2時刻、第2時刻以降に第1蓄電システム群に充放電させる電力の第2変化割合を決定する。さらに、第1群管理システムは、第1蓄電システム群に対して、第2時刻から充放電する電力の減少を開始させるとともに、第2変化割合で充放電を実行させる。
図1は、VPPシステム100の構成を示す。VPPシステム100は、上位システムサーバ10、群管理システムサーバ12と総称される第1群管理システムサーバ12a、第2群管理システムサーバ12b、電力管理システムサーバ14と総称される第1電力管理システムサーバ14a、第2電力管理システムサーバ14b、第N電力管理システムサーバ14n、第N+1電力管理システムサーバ14n+1、第N+2電力管理システムサーバ14n+2、第N+M電力管理システムサーバ14n+mを含む。ここで、第1電力管理システムサーバ14aは第1需要家16aに設置され、第N+M電力管理システムサーバ14n+mは第N+M需要家16n+mに設置され、第1需要家16aから第N+M需要家16n+mは需要家16と総称される。群管理システムサーバ12の数は「2」に限定されず、電力管理システムサーバ14と需要家16の数は「N+M」に限定されない。
需要家16は、例えば、一戸建ての住宅、マンションなどの集合住宅、コンビニエンスストアまたはスーパーマーケットなどの店舗、ビルなどの商用施設、工場であり、前述のごとく、電力会社等からの電力の供給を受けている施設である。需要家16には、空調機器(エアコン)、テレビジョン受信装置(テレビ)、照明装置、蓄電システム、ヒートポンプ給湯機等の機器が設置される。これらの機器は、電力事業者等の電力系統に接続されることによって、商用電力の供給を受けて、電力を消費する。機器として、電力使用の削減量が比較的大きいと想定されるものが有用であるが、削減量があまり大きくないと想定されてもよい。機器に、太陽電池システム、燃料電池システム等の再生可能エネルギー発電装置が含まれてもよい。
電力管理システムサーバ14は、電力管理システムの処理を実行するためのコンピュータであり、例えば、需要家16内に設置される。電力管理システムサーバ14は、例えば、HEMS(Home Energy Management System)コントローラとしての機能を有する。そのため、電力管理システムサーバ14は、HAN(Home Area Network)により需要家16内の各種機器と通信可能であり、これらの機器を制御する。電力管理システムサーバ14は、蓄電システムの動作、例えば、放電、充電を制御する。また、電力管理システムサーバ14は、需要家16に設置された機器と電力系統との間の連系を制御してもよい。電力管理システムサーバ14は、停電時に機器と電力系統との間を解列し、復電時に機器と電力系統との間を連系する。
群管理システムサーバ12は、群管理システムの処理を実行するためのコンピュータである。群管理システムサーバ12は、複数の電力管理システムサーバ14を接続することによって、複数の電力管理システムサーバ14を管理する。その結果、群管理システムサーバ12は、複数の電力管理システムサーバ14のそれぞれに接続される複数の機器を統括的に管理する。ここでは、第1電力管理システムサーバ14aから第N電力管理システムサーバ14nのそれぞれに接続された蓄電システムのまとまりが前述の第1蓄電システム群に相当し、第1蓄電システム群は第1群管理システムサーバ12aによって管理される。また、第N+1電力管理システムサーバ14n+1から第N+M電力管理システムサーバ14n+mのそれぞれに接続された蓄電システムのまとまりが前述の第2蓄電システム群に相当し、第2蓄電システム群は第2群管理システムサーバ12bによって管理される。
複数の群管理システムサーバ12は、上位システムサーバ10に接続される。上位システムサーバ10は、アグリゲータである上位システムの処理を実行するためのコンピュータである。前述のごとく、上位システムと群管理システムを含むVPPは、市場で、あるいは事業者と相対契約で電力を取引しており、上位システムサーバ10は、契約に応じた要求を群管理システムサーバ12に出力する。1つの群管理システムサーバ12が複数の上位システムサーバ10に接続されてもよい。
このような構成によって、上位システムが管理する需要家群全体の電力需要が逼迫する場合、群管理システムサーバ12は、蓄電システムから放電した電力を需要家16内で消費させたり、需要家16内での電力消費を抑制させたりするように電力管理システムサーバ14を制御する。また、上位システムが管理する需要家群全体の発電が増加し、供給が需要を上まわる場合、群管理システムサーバ12は、蓄電システムへの充電を増やしたり、需要家16内での需要を増大させたりするように電力管理システムサーバ14を制御する。その際、電力需要の変動が発生すると、第1群管理システムサーバ12aは第1蓄電システム群の充放電を開始する。また、第1蓄電システム群における充放電が開始されてから一定期間が経過すると、第1群管理システムサーバ12aは第1蓄電システム群の充放電を減少させるとともに、第2群管理システムサーバ12bは第2蓄電システム群の充放電を開始する。
図2は、需要家16の構成を示す。需要家16には、電力系統30、スマートメータ32、分電盤34、負荷36、蓄電システム40、電力管理システムサーバ14、例えば第1電力管理システムサーバ14aが設置される。また、蓄電システム40は、SB(Storage Battery)210、SB用DC/DC212、双方向DC/ACインバータ214、制御装置216を含む。さらに、第1電力管理システムサーバ14aには、ネットワーク18を介して群管理システムサーバ12、例えば第1群管理システムサーバ12aが接続される。需要家16には、太陽電池システム、ヒートポンプ給湯機等が設置されてもよいが、ここではこれらを省略する。図2の需要家16は、第1電力管理システムサーバ14aを含むので、これは図1の第1需要家16aに相当するが、他の需要家16も同様に構成される。
電力系統30における電力需要は時間の経過とともに変動する。スマートメータ32は、電力系統30に接続され、デジタル式の電力量計である。スマートメータ32は、電力系統30から入ってくる潮流の電力量と、電力系統30へ出て行く逆潮流の電力量とを計測可能である。スマートメータ32は、通信機能を有し、電力管理システムサーバ14と通信可能である。
配電線42は、スマートメータ32と分電盤34とを結ぶ。分電盤34は、配電線42に接続されるとともに、負荷36を接続する。分電盤34は、負荷36に電力を供給する。負荷36は、配電線42を介して供給される電力を消費する機器である。負荷36は、冷蔵庫、エアコン、照明等の機器を含む。ここでは、分電盤34に1つの負荷36が接続されているが、分電盤34に複数の負荷36が接続されてもよい。
SB210は、電力を充放電可能な蓄電池であり、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等を含む。SB210はSB用DC/DC212に接続される。SB用DC/DC212は、DC−DCコンバータであり、SB210側の直流電力と、双方向DC/ACインバータ214側の直流電力との間の変換を実行する。
双方向DC/ACインバータ214は、SB用DC/DC212と分電盤34との間に接続される。双方向DC/ACインバータ214は、分電盤34からの交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をSB用DC/DC212に出力する。また、双方向DC/ACインバータ214は、SB用DC/DC212からの直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を分電盤34に出力する。つまり、双方向DC/ACインバータ214によってSB210は充放電される。このような双方向DC/ACインバータ214の制御は制御装置216によってなされる。ここで、SB210、SB用DC/DC212、双方向DC/ACインバータ214、制御装置216は1つの筐体に格納されてもよく、その場合であっても、これを蓄電システム40と呼ぶ。
第1電力管理システムサーバ14aは、HAN等のネットワークを介して、スマートメータ32、蓄電システム40に接続され、それぞれと通信可能である。以下では、第1電力管理システムサーバ14aとスマートメータ32との間の通信は説明を省略する。また、第1電力管理システムサーバ14aは、ネットワーク18を介して第1群管理システムサーバ12aにも接続される。
図3(a)−(b)は、電力系統30における電力需要の変動に対する動作を示す。図3(a)は、1次調整力702から2次調整力704への引き継ぎが適切になされている場合における電力需要700、1次調整力702、2次調整力704の時間変化を示す。横軸は時間を示し、縦軸は電力を示す。ここでは、時刻「t0」において電力需要700が増加する場合を想定する。電力需要700の増加に応答して、1次調整力702による電力も増加する。これは、第1蓄電システム群から放電される電力が増加することに相当する。時刻「t0」よりも後の時刻「t1」において、電力需要700は一定になる。一方、1次調整力702による電力は継続して増加する。
時刻「t1」よりも後の時刻「t2」において、1次調整力702による電力は一定になる。ここで、1次調整力702による電力は電力需要700よりも小さい。時刻「t2」よりも後の時刻「t3」から、2次調整力704による電力が増加する。これは、第2蓄電システム群から放電される電力が増加することに相当する。時刻「t3」よりも後の時刻「t4」から、1次調整力702による電力は減少する。その結果、1次調整力702による電力は減少しながら、2次調整力704による電力は増加する。時刻「t5」において、1次調整力702による電力は0になり、2次調整力704による電力は電力需要700と同一になる。
図3(b)は、図3(a)の場合における周波数(理想時)710の変化を示す。ここでは、基準周波数である商用電源周波数を「50Hz」とする。時刻「t0」から時刻「t1」において、電力需要700および1次調整力702による電力は増加するが、前者の方が増加の変化割合が大きいので、電力系統30における電力不足が時間の経過とともに大きくなる。電力系統30における電力が不足すると、電力系統30における周波数が低下するので、時刻「t0」から時刻「t1」において、「50Hz」からの周波数(理想時)710の低下が時間の経過とともに大きくなる。
時刻「t1」において電力需要700は一定になり、時刻「t2」において1次調整力702による電力も一定になるので、時刻「t1」から時刻「t3」において、周波数(理想時)710は、増加してから、「50Hz」よりも低いながらも一定になる。つまり、1次調整力702による電力によって、周波数低下が抑制される。時刻「t3」から2次調整力704による電力が増加し、時刻「t4」から1次調整力702による電力が減少するので、時刻「t3」から時刻「t5」において、周波数(理想時)710は、増加して、「50Hz」に回復する。
図4(a)−(b)は、電力系統30における電力需要の変動に対する別の動作を示す。図4(a)は、1次調整力702から2次調整力704への引き継ぎが適切になされていない場合における電力需要700、1次調整力702、2次調整力704の時間変化を示す。時刻「t0」から時刻「t3」までの変化は図3(a)と同一である。図3(a)の時刻「t4」よりも後の時刻「t4’」から、1次調整力702による電力は減少する。つまり、図4(a)では、図3(a)と比較して、1次調整力702による電力を減少させるタイミングが遅くなっている。時刻「t4’」以降、1次調整力702による電力は減少しながら、2次調整力704による電力は増加する。
図4(b)は、図4(a)の場合における周波数(制御前)712の変化を示す。比較のために、図3(b)の周波数(理想時)710も合わせて示される。時刻「t0」から時刻「t4」において、周波数(理想時)710と周波数(制御前)712の変化は同一である。一方、時刻「t4」から時刻「t4’」において、周波数(制御前)712は、「50Hz」を超えて上昇する。また、時刻「t4’」から時刻「t4’’」において、周波数(制御前)712は、「50Hz」を下回るように減少する。さらに、時刻「t4’」から周波数(制御前)712は再び上昇する。つまり、1次調整力702から2次調整力704への引き継ぎが適切になされなければ、周波数(制御前)712は「50Hz」を挟んで上下する。これにより、周波数(制御前)712は商用電源周波数に収束しにくくなる。
図5は、第1群管理システムサーバ12a、第2群管理システムサーバ12b、第1電力管理システムサーバ14a、第2電力管理システムサーバ14bの構成を示す。前述のごとく、第1群管理システムサーバ12aは、複数の需要家16のそれぞれに設置された蓄電システム40であって、かつ電力系統30に接続された蓄電システム40を含む第1蓄電システム群を制御する。一方、第2群管理システムサーバ12bは、複数の需要家16のそれぞれに設置された蓄電システム40であって、かつ電力系統30に接続された蓄電システム40を含む第2蓄電システム群を制御する。第1蓄電システム群と第2蓄電システム群は別に構成され、第1蓄電システム群は、第2蓄電システム群よりも先に電力系統30の電力の変動に応答する。
ここでは、一例として、図5のごとく、第1群管理システムサーバ12aに第1電力管理システムサーバ14aと第2電力管理システムサーバ14bが接続されている場合を示す。第1群管理システムサーバ12aは、第1通信部430、第2通信部434、取得部440、決定部442を含み、第2通信部434は、受信部420、送信部422を含む。第1通信部430と第2通信部434は一体的に構成されてもよい。第1電力管理システムサーバ14aは、サービス連携部300、制御部302を含み、サービス連携部300は、受信部510、送信部512を含む。第2電力管理システムサーバ14bは第1電力管理システムサーバ14aと同一の構成を有する。以下では、説明を明瞭にするために、第1電力管理システムサーバ14aのサービス連携部300、制御部302を単に「サービス連携部300」、「制御部302」ということもある。
図1の上位システムサーバ10は、電力系統30における交流電力の周波数を監視する。交流電力の周波数は、電力需要が増加して電力が不足すると商用電源周波数より低くなり、電力需要が減少して電力が過剰になると商用電源周波数より高くなる。そのため、上位システムサーバ10は、電力系統30における交流電力の周波数が商用電源周波数よりも低くなると、VPPシステム100に含まれた複数の蓄電システム40を含む蓄電システム群に放電させることを決定する。一方、上位システムサーバ10は、電力系統30における交流電力の周波数が商用電源周波数よりも高くなると、蓄電システム群に充電させることを決定する。このような上位システムサーバ10の決定にしたがって、第1群管理システムサーバ12aは第1蓄電システム群を制御する。これに続いて、第2群管理システムサーバ12bは第2蓄電システム群を制御する。
第1群管理システムサーバ12aに続いて制御を開始する第2群管理システムサーバ12bは、第2蓄電システム群が充放電を開始する予定の第1時刻を決定するとともに、第1時刻から第2蓄電システム群が充放電する電力の第1変化割合を決定する。これらの決定には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。第2群管理システムサーバ12bは、決定したこれらの情報を第2調整力パラメータとして第1群管理システムサーバ12aに送信する。
図6(a)−(d)は、VPPシステム100において使用されるメッセージのフォーマットを示す。図6(a)のごとく、メッセージでは、メッセージ種別のフィールドに続いてデータのフィールドが配置される。メッセージ種別のフィールドは、メッセージの種別を示し、データのフィールドは、通知したいデータを示す。図6(b)は、第2調整力パラメータのメッセージのフォーマットを示す。メッセージ種別のフィールドには第2調整力パラメータが示され、データのフィールドには、放電あるいは充電の指示、第1時刻、第1変化割合が示される。図6(b)−(d)については後述し、図5に戻る。
第1群管理システムサーバ12aの第1通信部430は、第2群管理システムサーバ12bから、第2調整力パラメータのメッセージを受信する。第1通信部430は、第2調整力パラメータのメッセージを取得部440に出力する。取得部440は、第2調整力パラメータのメッセージから、放電あるいは充電の指示、第1時刻、第1変化割合を取得する。取得部440は、放電あるいは充電の指示、第1時刻、第1変化割合を決定部442に出力する。
決定部442は、取得部440において取得した第1時刻と、第1変化割合とをもとに、第2蓄電システム群が充放電する電力の減少を開始させる予定の第2時刻と、第2時刻から第2蓄電システム群に充放電させる電力が減少する際の第2変化割合とを決定する。以下では、決定部442での決定処理として、(1)第2変化割合を固定して第2時刻を決定する処理、(2)第2時刻を固定して第2変化割合を決定する処理、(3)第2時刻と第2変化割合を決定する処理の順に説明する。
(1)第2変化割合を固定して第2時刻を決定する処理
ここでは、当該処理を説明するために図7(a)−(d)を使用する。図7(a)−(d)は、決定部442における処理を示す。図7(a)は、(1)の場合における電力需要700、1次調整力702、2次調整力704の変化を示す。決定部442は、2次調整力704に対する第1時刻752、第1変化割合754を受けつける。決定部442は、第1時刻752、第1変化割合754から、2次調整力704による電力が最大となる第3時刻756を算出する。また、決定部442は、1次調整力702に対する第2変化割合762を取得する。第2変化割合762は予め設定されており、かつ決定部442に記憶されている。
さらに、決定部442は、第3時刻756、出力0で示される点と、第2変化割合762で特定される直線が2次調整力704と交わる点の時刻を算出する。算出した時刻が第2時刻760である。つまり、決定部442は、第2変化割合762を固定しながら、第1時刻752と、第1変化割合754とをもとに、第2時刻760を決定する。図7(b)は、図7(a)の場合における周波数(制御後)714の変化を示す。比較のために、これまで説明した周波数(理想時)710、周波数(制御前)712も合わせて示される。周波数(制御後)714は、周波数(制御前)712と比較して、「50Hz」を挟んで上下することなく、商用電源周波数に収束する。
(2)第2時刻を固定して第2変化割合を決定する処理
図7(c)は、(2)の場合における電力需要700、1次調整力702、2次調整力704の変化を示す。決定部442は、2次調整力704に対する第1時刻752、第1変化割合754を受けつける。決定部442は、第1時刻752、第1変化割合754から、2次調整力704による電力が最大となる第3時刻756を算出する。また、決定部442は、1次調整力702に対する第2時刻760を取得する。第2時刻760は、例えば、第1時刻752から所定時間後になるように定められる。
決定部442は、次の最大化問題を解くことによって、第2時刻760から第3時刻756までの第2変化割合762を算出する。目的関数は、次のように示される。
これは、各時刻の変化割合の合計値が最大となるようにv
1,・・・,v
nを算出することを示す。また、制約条件は次のように示される。
これは、周波数を上昇させる場合、時刻tの周波数f
tが時刻t−1の周波数f
t−1を下回らないようなv
tとすることを示す。また、オーバシュートしないようf
tは商用電源周波数f
b以下とされることを示す。
nは第3時刻756−第2時刻760を示し、tは各時刻を示し、ptは、第1時刻752、第1変化割合754から求まる時刻t時点での2次調整力704の出力値を示す。また、vtは第2変化割合762を示し、fbは商用電源周波数を示し、fは周波数を示し、Fは周波数を算出する関数を示す。つまり、決定部442は、第2時刻760を固定しながら、第1時刻752と、第1変化割合754とをもとに、第2変化割合762を決定する。図7(d)は、図7(c)の場合における周波数(制御後)714の変化を示す。比較のために、これまで説明した周波数(理想時)710、周波数(制御前)712も合わせて示される。周波数(制御後)714は、周波数(制御前)712と比較して、「50Hz」を挟んで上下することなく、商用電源周波数に収束する。
(3)第2時刻と第2変化割合を決定する処理
決定部442は、第1時刻752をもとに、第2時刻760に対する複数の第2時刻760の候補を導出する。例えば、第1時刻752よりも後の所定期間に含まれるように、複数の第2時刻760の候補が導出される。また、決定部442は、複数の第2時刻760の候補のそれぞれに対して第2変化割合762の候補を導出する。第2変化割合762の候補の導出には、前述の最大化問題を解くことが実行されればよいので、ここでは説明を省略する。さらに、決定部442は、各第2時刻760の候補において目的関数が一番大きくなる第2変化割合762の候補を選択することによって、複数の第2変化割合762の候補のうちの1つを選択する。選択した1つの第2変化割合762の候補は第2変化割合762として決定されるとともに、選択した1つの第2変化割合762の候補に対応した第2時刻760の候補が第2時刻760として決定される。
決定部442は、第2時刻760、第2変化割合762を送信部422に出力する。送信部422は、放電あるいは充電の指示、第2時刻760、第2変化割合762が含まれた第1調整力パラメータのメッセージを第1電力管理システムサーバ14aと第2電力管理システムサーバ14bに送信する。図6(c)は、第1調整力パラメータのメッセージのフォーマットを示し、メッセージ種別のフィールドには第1調整力パラメータが示され、データのフィールドには放電あるいは充電の指示、第2時刻760、第2変化割合762が示される。第2変化割合762は、第1蓄電システム群に含まれた蓄電システム40の台数によって、もとの第2変化割合762を除算した値であってもよい。図6(d)については後述し、図5に戻る。
第1電力管理システムサーバ14aの受信部510は、第1群管理システムサーバ12aから、第1調整力パラメータのメッセージを受信する。受信部510は、第1調整力パラメータのメッセージを制御部302に出力する。制御部302は、第1調整力パラメータのメッセージから、第2時刻760、第2変化割合762を抽出する。制御部302は、第2時刻760から蓄電システム40に充放電する電力の減少を開始させる。また、制御部302は、抽出した第2変化割合762によって、第2時刻760から蓄電システム40に充放電する電力を減少させる。例えば、制御部302は、蓄電システム40の制御装置216に対して、第2時刻760からの充放電の減少開始、第2変化割合762による充放電に応じて双方向DC/ACインバータ214からの充放電を変化させるように指示する。
制御装置216は、制御部302からの指示に応じて、双方向DC/ACインバータ214からの充放電を変化させる。その結果、SB210は、第2時刻760から充放電する電力の減少を開始するとともに、第2時刻760から第2変化割合762によって充放電する電力を減少させる。ここで、制御部302と制御装置216は、放電あるいは充電の指示に応じて放電あるいは充電を決定する。
制御装置216は、指示に応じた処理を実行した場合、処理の完了を第1電力管理システムサーバ14aの制御部302に報告する。制御部302が処理の完了の報告を受信した場合、送信部512は、完了の報告が含まれた応答のメッセージを第1群管理システムサーバ12aに出力する。図6(d)は、応答のメッセージのフォーマットを示し、メッセージ種別のフィールドには応答が示され、データのフィールドには完了が示される。指示に応じた処理が未完了の蓄電システム40が存在する場合、データのフィールドには未完了であることが示されてもよい。図5に戻る。
第2電力管理システムサーバ14bも、第1電力管理システムサーバ14aと同様の処理を実行するので、ここでは説明を省略する。第1群管理システムサーバ12aの受信部420は、第1電力管理システムサーバ14aから応答のメッセージを受信するとともに、第2電力管理システムサーバ14bから応答のメッセージを受信する。
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
以上の構成によるVPPシステム100の動作を説明する。図8は、第1群管理システムサーバ12aによる制御手順を示すフローチャートである。取得部440は、2次調整力のパラメータを取得する(S10)。決定部442は、パラメータから2次調整力704の出力が最大となる第3時刻756を算出する(S12)。決定部442は、第2変化割合762を取得する(S14)。決定部442は、第3時刻756、第2変化割合762から第2時刻760を算出する(S16)。決定部442は、1次調整力のパラメータを出力する(S18)。
図9は、第1群管理システムサーバ12aによる別の制御手順を示すフローチャートである。取得部440は、2次調整力のパラメータを取得する(S50)。決定部442は、パラメータから2次調整力704の出力が最大となる第3時刻756を算出する(S52)。決定部442は、第2時刻760を取得する(S54)。決定部442は、第2時刻760から第3時刻756までの第2変化割合762を算出する(S56)。決定部442は、1次調整力のパラメータを出力する(S58)。
図10は、第1群管理システムサーバ12aによるさらに別の制御手順を示すフローチャートである。取得部440は、2次調整力のパラメータを取得する(S100)。決定部442は、第2時刻760の候補を抽出する(S102)。決定部442は、第2時刻760の候補に対する第2変化割合762の候補を算出する(S104)。第2時刻760の候補のすべてに対して処理がなされていなければ(S106のN)、ステップ104に戻る。第2時刻760の候補のすべてに対して処理がなされていれば(S106のY)、決定部442は、第2時刻760、第2変化割合762を決定する(S108)。決定部442は、1次調整力のパラメータを出力する(S110)。
本実施例によれば、第2蓄電システム群による第1時刻752、第1変化割合754を取得して、第1蓄電システム群における第2時刻760、第2変化割合762とを決定するので、電力需要の変動への応答の引き継ぎを適切に実行できる。また、電力需要の変動への応答の引き継ぎが適切に実行されるので、引き継ぎによって電力系統30の周波数が安定するまでの期間を短くできる。また、第2群管理システムサーバ12bから、第1時刻752と第1変化割合754とを取得するので、処理を簡易にできる。また、第1蓄電システム群は第2蓄電システム群よりも先に電力系統30の電力の変動に応答するので、第1蓄電システム群を1次調整力702として使用し、第2蓄電システム群を2次調整力704として使用できる。
また、第2変化割合762を固定しながら、第1時刻752と、第1変化割合754とをもとに、第2時刻760を決定するので、第2時刻760を簡易に決定できる。また、第2時刻760を固定しながら、第1時刻752と、第1変化割合754とをもとに、第2変化割合762を決定するので、第2変化割合762を簡易に決定できる。また、複数の第2時刻760の候補のそれぞれに対して第2変化割合762の候補を導出してから、複数の第2変化割合762の候補のうちの1つを選択するので、第2時刻760と第2変化割合762とを高精度に決定できる。
また、第1群管理システムサーバ12aから受信した第2時刻760と第2変化割合762をもとに蓄電システム40の充放電を制御するので、電力系統30の変動への応答の引き継ぎを適切に実行できる。また、SB210において、第2時刻760から充放電する電力の減少を開始するとともに、第2時刻760から第2変化割合762によって充放電する電力を減少させるので、電力系統30の変動への応答の引き継ぎを適切に実行できる。
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の第1群管理システムサーバ12aは、複数の需要家16のそれぞれに設置された蓄電システム40であって、かつ電力系統30に接続された蓄電システム40を含む蓄電システム群を制御する第1群管理システムサーバ12aであって、蓄電システム群とは別の電力源が充放電を開始する予定の第1時刻752と、第1時刻752から電力源が充放電する電力の第1変化割合754とを取得する取得部440と、取得部440において取得した第1時刻752と、第1変化割合754とをもとに、蓄電システム群が充放電する電力の減少を開始させる予定の第2時刻760と、第2時刻760から蓄電システム群に充放電させる電力が減少する際の第2変化割合762とを決定する決定部442と、を備える。
電力源は、蓄電システム群とは異なった別の蓄電システム群であり、取得部440は、別の蓄電システム群を制御する別の第2群管理システムサーバ12b、あるいは複数の群管理システムサーバ12を管理する上位システムサーバ10から、第1時刻752と第1変化割合754とを取得する。
蓄電システム群は、電力源よりも先に電力系統30の電力の変動に応答する。
決定部442は、第2変化割合762を固定しながら、第1時刻752と、第1変化割合754とをもとに、第2時刻760を決定する。
決定部442は、第2時刻760を固定しながら、第1時刻752と、第1変化割合754とをもとに、第2変化割合762を決定する。
決定部442は、複数の第2時刻760の候補のそれぞれに対して第2変化割合762の候補を導出してから、複数の第2変化割合762の候補のうちの1つを選択することによって、選択した1つの第2変化割合762の候補を第2変化割合762として決定するとともに、選択した1つの第2変化割合762の候補に対応した第2時刻760の候補を第2時刻760として決定する。
第1群管理システムサーバ12aに接続され、需要家16に設置された蓄電システム40を制御する電力制御装置であって、第1群管理システムサーバ12aから第2時刻760と第2変化割合762とを受信する受信部510と、受信部510において受信した第2時刻760から蓄電システム40に充放電する電力の減少を開始させるとともに、受信部510において受信した第2変化割合762によって、第2時刻760から蓄電システム40に充放電する電力を減少させる制御部302と、を備えてもよい。
電力管理システムサーバ14に制御される蓄電システム40であって、第2時刻760から充放電する電力の減少を開始するとともに、第2時刻760から第2変化割合762によって充放電する電力を減少させるSB210を備えてもよい。
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本実施例において、第2群管理システムサーバ12bによる第2蓄電システム群の制御によって2次調整力704が提供される。しかしながらこれに限らず例えば、2次調整力704は別の電力源によって提供されてもよい。別の電力源の一例は火力発電である。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
本実施例において、第1群管理システムサーバ12aの取得部440は、第2調整力パラメータに含まれる情報を第2群管理システムサーバ12bから取得している。しかしながらこれに限らず例えば、第1群管理システムサーバ12aの取得部440は、第2調整力パラメータに含まれる情報を上位システムサーバ10から取得してもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
本実施例において、電力管理システムサーバ14が需要家16に配置されているとしている。しかしながら、電力管理システムサーバ14の配置はこれに限定されない。電力管理システムサーバ14は需要家16の外に配置されてもよく、制御部302だけが需要家16に配置され、サービス連携部300は需要家16外に配置されてもよい。サービス連携部300、制御部302は、電力制御装置と呼んでもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。