JP6826047B2 - 生体分子測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ナノポアを用いた生体分子測定装置に関する。
次世代DNAシーケンサとして、伸長反応及び蛍光ラベルを行わずにDNAの塩基配列を電気的に直接計測する手法が注目を浴びている。これを実現するため、試薬を用いずDNA断片を直接計測して塩基配列を決定するナノポアDNAシーケング方式の研究開発が活発に進められている。この方式は、DNA鎖がナノポアを通過する際にDNA鎖に含まれる個々の塩基種の違いを封鎖電流量で直接計測することで、塩基種を順次同定するという原理に基づく。鋳型DNAの酵素による増幅を行わない上に、蛍光体等の標識物を用いないため、本方式は、高スループット、低ランニングコスト、長塩基長解読につながると期待されている。
ナノポア方式の課題の1つとして、ナノポアを通過するDNAの搬送制御が挙げられる。DNA鎖に含まれる個々の塩基種の違いを封鎖電流量で計測するには、計測時の電流ノイズ及びDNA分子の揺らぎの時定数から、DNAのナノポア通過速度を1塩基辺り100μs以上にする必要があると考えられている。ナノポアを用いてDNAをシーケンシングする際、ナノポアの上下に位置する電極を用いて電位勾配を形成し、負電荷を持つDNAをナノポアへ通過させる。しかし、DNAのナノポア通過速度は通常1塩基当たり1μs以下と速く、各塩基由来の封鎖電流を十分に計測することが困難である。
搬送制御法の一つとして、固定プローブの先端に読取り対象のDNA末端を固定し、固定プローブの微小変位を外部駆動機構(モーターならびにピエゾ素子)で制御することで、ナノポアを通過するDNAの運動を制御するものがある。
US 2006/0057585 A1
ナノポアデバイスを用いた生体分子測定装置で計測される信号は、生体分子を構成するモノマ分子種に応じて異なる準位を示す矩形階段信号となる。また、当該生体分子測定装置の信号応答速度は、ナノポアデバイス周辺に満たされている電解質溶液の溶液抵抗(R)と、ナノポアデバイスの容量(Cs)と、ナノポアデバイスと固定プローブの接近に伴って生じる狭小領域のサイズで規定される通過抵抗(R)とによって定義される。
当該生体分子測定装置では、生体分子を解析する際にナノポアデバイスと固定プローブを接近させる。この接近に伴い、ナノポアデバイスと固定プローブとの間の距離は小さくなり、通過抵抗の上昇を招く。これは、信号時定数の低下を意味するため、取得される信号波形のなまり、及び、SN低下を招くことになる。
そこで、本発明は、溶液の通過抵抗を低減し、時定数の低下を抑制する技術を提供する。
上記課題の解決のため、本発明は、生体分子測定装置における固定部材(固定プローブ)及びナノポアデバイスの少なくとも一方に対して溝構造を形成し、通過抵抗の上昇を抑制する手法を提案する。
例えば、上記課題を解決するために、請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例をあげるならば、電解質溶液が満たされる第1の液槽と、電解質溶液が満たされる第2の液槽と、ナノポアを有する薄膜を支持し、前記ナノポアを介して前記第1の液槽と前記第2の液槽を連通するように前記第1の液槽と前記第2の液槽の間に設けられたナノポアデバイスと、前記第1の液槽に配置され、前記薄膜より大きなサイズを有し、生体分子が固定される固定部材と、前記固定部材を前記薄膜に対して近づく方向あるいは遠ざかる方向に駆動する駆動機構と、前記第1の液槽に設けられた第1の電極と、前記第2の液槽に設けられた第2の電極と、前記固定部材と前記薄膜との接触を防止するストップ機構と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加する電源と、前記第1の電極と前記第2の電極の間に流れるイオン電流を計測する測定部とを備え、前記ナノポアデバイス及び前記固定部材の少なくとも一方は、前記ナノポアデバイス及び前記固定部材が対向する領域に溝構造を備えており、前記測定部は、前記固定部材に固定された前記生体分子が前記ナノポアを通過するとき計測されるイオン電流により当該生体分子の配列情報を取得する、生体分子測定装置が提供される。
また、他の例によれば、電解質溶液が満たされる第1の液槽と、電解質溶液が満たされる第2の液槽と、ナノポアを有する薄膜を支持し、前記ナノポアを介して前記第1の液槽と前記第2の液槽を連通するように前記第1の液槽と前記第2の液槽の間に設けられたナノポアデバイスと、前記第1の液槽に設けられた第1の電極と、前記第2の液槽に設けられた第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加する電源と、前記第1の電極と前記第2の電極の間に流れるイオン電流を計測する測定部とを備え、前記第1の液槽は、前記ナノポアの近傍の領域に微小流路を備え、前記ナノポアデバイスは、溝構造を備え、前記測定部は、生体分子が前記ナノポアを通過するとき計測されるイオン電流により当該生体分子の配列情報を取得する、生体分子測定装置が提供される。
また、他の例によれば、生体分子測定装置において生体分子を固定するための固定部材であって、当該固定部材の表面に溝構造が形成されている固定部材が提供される。
また、他の例によれば、生体分子測定装置用のナノポアデバイスであって、ナノポアを有する薄膜と、前記薄膜より外側に設けられ、前記ナノポアの周辺に空間を形成する空間形成部材とを備え、前記空間形成部材が溝構造を備える、ナノポアデバイスが提供される。
本発明によれば、溶液の通過抵抗を低減し、時定数の低下を抑制することができる。本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
生体分子測定装置の構成例を説明する断面模式図である。 ナノポアデバイス及び周辺機構の等価回路の説明図である。 固定部材及びナノポアデバイスの間の距離と、溶液抵抗及び通過抵抗との関係を示すグラフである。 固定部材をナノポアデバイスへ接近させ、その後、固定部材をナノポアデバイスから離したときの信号模式図を示す。 溝を形成する範囲を説明する図である。 溝を形成する範囲を説明する図である。 駆動機構が固定部材をナノポアデバイスの僅か上方の位置で停止させる構成の例である。 図7の構成の場合の固定部材の平面図である。 駆動機構が固定部材をナノポアデバイスに接触させる構成の例である。 図9の構成の場合の固定部材の平面図である。 溝構造の一例である。 溝構造の一例である。 溝構造の一例である。 溝構造を形成していない従来の構成での通過抵抗Rを説明する図である。 溝構造を形成していない従来の構成での通過抵抗Rを説明する図である。 溝構造を備える構成での通過抵抗を説明する図である。 溝構造を備える構成での通過抵抗を説明する図である。 溝幅と溝ピッチの関係を変化させた際の溝深さと溶液抵抗の関係を示すグラフである。 ナノポア周辺に生成される電場とナノポアへの生体分子の導入例を示す模式図である。 ナノポア周辺に生成される電場とナノポアへの生体分子の導入例を示す模式図である。 溝とナノポアデバイスとの間の位置合わせ機構が無い場合の溝の構成を説明する図である。 溝とナノポアデバイスとの間の位置合わせ機構が無い場合の溝の構成を説明する図である。 溝とナノポアデバイスとの間の位置合わせ機構がある場合の溝の構成を説明する図である。 溝とナノポアデバイスとの間の位置合わせ機構がある場合の溝の構成を説明する図である。 溝構造を有する固定部材の一例である。 溝構造を有する固定部材の一例である。 溝構造を有する固定部材の一例である。 固定部材に溝構造を形成する方法の一例である。 固定部材に溝構造を形成する方法の一例である。 固定部材に溝構造を形成する方法の一例である。 固定部材に溝構造を形成する方法の一例である。 固定部材に溝構造を形成する方法の一例である。 ナノポアデバイスに溝構造を形成する方法の一例である。 ナノポアデバイスに溝構造を形成する方法の一例である。 ナノポアデバイスに溝構造を形成する方法の一例である。 ナノポアデバイスに溝構造を形成する方法の一例である。 ナノポアデバイスに溝構造を形成する方法の一例である。 溝構造の凹部及び凸部をそれぞれ異なる材料で作成する方法の一例である。 溝構造の凹部及び凸部をそれぞれ異なる材料で作成する方法の一例である。 溝構造の凹部及び凸部をそれぞれ異なる材料で作成する方法の一例である。 固定部材上に複数種の生体分子を固定する方法の一例である。 固定部材上に複数種の生体分子を固定する方法の一例である。 固定部材上に複数種の生体分子を固定する方法の一例である。 固定部材上に複数種の生体分子を固定する方法の一例である。 ナノポアデバイスと固定部材との間の位置関係を調節する機構の第1の例である。 ナノポアデバイスと固定部材との間の位置関係を調節する機構の第2の例である。 固定部材を用いない生体分子測定装置の構成例を説明する断面模式図である。 固定部材を用いない生体分子測定装置の上面図である。 固定部材への生体分子の結合手順及び固定部材の生体分子測定装置への設置手順の第1の例を説明する模式図である。 固定部材への生体分子の結合手順及び固定部材の生体分子測定装置への設置手順の第1の例を説明する模式図である。 固定部材への生体分子の結合手順及び固定部材の生体分子測定装置への設置手順の第1の例を説明する模式図である。 固定部材への生体分子の結合手順の第2の例を示す模式図である。 固定部材への生体分子の結合手順の第2の例を示す模式図である。 固定部材の駆動手順を示す模式図である。 固定部材の駆動手順を示す模式図である。 固定部材の駆動手順を示す模式図である。 固定部材の駆動手順を示す模式図である。 リンカーを介した結合の例を示す模式図である。 イオン電流信号の検出例を示す模式図である。 固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第1の例を示す模式図である。 固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第2の例を示す模式図である。 固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第2の例を示す模式図である。 固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第3の例を示す模式図である。 固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第3の例を示す模式図である。 ナノポアデバイス上への電極配置例を示す上面模式図である。 ナノポアデバイス上への電極配置例における対向電極の例である。 ナノポアデバイス上への電極配置例を示す上面模式図である。 生体分子固定部材−ナノポアデバイス間距離hと電流量の関係を示すグラフである。 生体分子事前引き伸ばし機構を有する生体分子測定装置の例を示す断面模式図である。 生体分子事前引き伸ばし機構を有する生体分子測定装置の例を示す断面模式図である。 生体分子事前引き伸ばし機構を有する生体分子測定装置を説明する図であり、ナノポア近傍の拡大図である。 生体分子事前引き伸ばし機構を有する生体分子測定装置を説明する図であり、ナノポア近傍の拡大図である。 生体分子事前引き伸ばし機構を有する生体分子測定装置の例を示す断面模式図である。 生体分子事前引き伸ばし機構を有する生体分子測定装置を説明する図であり、ナノポア近傍の拡大図である。 生体分子の先端から読み取られた信号の例を示す模式図である。 生体分子測定装置の一部の断面模式図及び駆動機構の上面模式図である。 複数の生体分子の解析を説明するための、ナノポア近傍の拡大図である。 複数の生体分子の解析を説明するための、ナノポア近傍の拡大図である。 DNAの塩基配列を読み取る方法の例を示す説明図である。 並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第1例を示す断面模式図である。 並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第1例を示す断面模式図である。 並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第2例を示す断面模式図である。 並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第2例を示す断面模式図である。 並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第3例を示す断面模式図である。 並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第3例を示す断面模式図である。 磁気ビーズを用いた測定手順を説明する断面模式図である。 磁気ビーズを用いた測定手順を説明する断面模式図である。 磁気ビーズを用いた測定手順を説明する断面模式図である。 生体分子固定部材の駆動に伴う封鎖電流解消の様子を示す図である。 生体分子固定部材の移動速度とDNA駆動時間の関係を示す図である。 二種ポリマ混合分子((dA50dC50)m)のイオン電流トレース例を示す図である。 ポーラス材料部を有する生体分子固定部材を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている場合がある。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。各実施例で述べるナノポアとは、薄膜に設けられた表裏を貫通するナノサイズの孔である。薄膜は主に無機材料によって形成される。薄膜材料の例としてはSiN、SiO、Graphene、Graphite、Siなどがあるが、他に有機物質、高分子材料などを含むこともできる。ナノポアを有するナノポア薄膜は、ナノポアデバイス上の一部に形成されており、上下に支持膜を持たず縁部がナノポアデバイスに支持されて宙に浮いた構造を有する。本明細書で云う生体分子には、核酸、タンパク質、アミノ酸、長鎖高分子等が含まれる。
<実施例1>
本発明の搬送制御機構を有する生体分子測定装置、及びその装置を用いた生体分子の配列読取の例について説明する。図1は、生体分子測定装置の構成例を説明する断面模式図である。
本実施例の生体分子測定装置100は、ナノポアデバイス(ナノポア基板とも言う)101により隔てられた上下2つの液槽131、132を有する。各液槽131、132には電解質溶液102が満たされている。電解質溶液としては、KCl、NaCl、LiCl、CsCl、MgCl2などが用いられる。また、これらの溶液に対して、生体分子の自己相補鎖形成抑制のために4M以上のUreaや、DMSO、DMF、NaOHを混在させることも可能である。また、生体分子の安定化のため、緩衝剤を混在させることも可能である。緩衝剤としては、Tris、EDTA、PBSなどが用いられる。
ナノポアデバイス101には薄膜113が形成されており、薄膜113中のいずれかの位置にナノポア112が形成されている。上下2つの液槽131、132は、ナノポアデバイス101に支持された薄膜113のナノポア112を介して連通している。2つの液槽131、132には各々Ag/AgCl電極103a、103bが電解質溶液102に接触するようにして配置されており、電極103a、103b間には電源104及び電流計109が接続されている。電流計109は、ADC(図示省略)及びPC110に接続されており、PC110は、取得された電流値を記録できる。一方で、上部の液槽131には、駆動機構105が設置され、駆動機構制御ユニット106に接続されている。駆動機構105には接続部材111により生体分子固定部材(以下、単に固定部材という)107が連結している。固定部材107は、平面視において薄膜113より大きなサイズを有し、固定部材107の平坦な下面には生体分子108が固定される。
ナノポア112が形成された薄膜113に固定部材107が接触すると、薄膜113が破壊される恐れがある。そのため、駆動機構105によって駆動された固定部材107がナノポアデバイス101に向かって降下するときに、固定部材107と薄膜113との接触を防止するためにストップ機構が設けられている。本実施例のストップ機構は、ナノポアデバイス101の薄膜113より外側の周囲を土手のように囲み、固定部材107と薄膜113の間に空間を形成する空間形成部材114である。空間形成部材114の中心に形成された円形空間の中にナノポア112を有する薄膜113が配置され、薄膜113の平面視における寸法は、固定部材107の寸法より小さい。従って、ナノポアデバイス101に向けて移動してきた固定部材107は、薄膜113に接触する前に空間形成部材114に突き当って停止し、薄膜113に接触して破壊することがない。
薄膜113の寸法は、薄膜強度及び電圧印加による穴形成の際に二個以上の穴が形成されにくい面積である必要があるため、一辺(薄膜113が矩形であれば辺の長さ、薄膜が円形であれば直径)の長さが100〜500nm程度であればよい。DNA一塩基分解能を達成するために、一塩基相当の実効膜厚を有するナノポア112を形成可能な膜厚として、1nm程度が適当である。また、空間形成部材114の膜厚は、薄膜113の強度を保つことや、固定部材107の表面の生体分子の固定高さ揺らぎを考慮すると、200〜500nm程度が適当である。本実施例では、薄膜113の寸法は直径500nm、空間形成部材114の膜厚は250nmである。
封鎖電流計測方式では、DNAがナノポア112を通過する際の抵抗変化からDNAを構成する塩基種を識別する。その際に取得される信号変化は、矩形であることが想定されている。
図2は、ナノポアデバイス及びその周辺環境の等価回路を示す。図2において、201は、ポア抵抗Rであり、202は、溶液抵抗及び通過抵抗の合成抵抗(R+R)であり、203は、ナノポアデバイス容量Cである。
図の系における、信号の時定数は、
τ=(R+R)C
となる。
ここで、
=L/σWh
で表現される。
固定部材107がナノポアデバイス101へ近接する際に、hの値が小さくなるため、溶液抵抗の上昇が起きる。図3は、簡単のためL=W規定した場合のhと抵抗(R+R)との関係を示す。固定部材107とナノポアデバイス101との間の距離が、300nmになったとき、総溶液抵抗は、2桁から3桁に上昇することが分かる。そのため、図4に示すように、固定部材107とナノポアデバイス101とが最接近したときに、信号のなまりが生じる。
DNAのナノポア通過速度と検出器の応答速度の関係から、信号の時定数は10us以下であることが求められる。つまり、基板容量Csが600uFであるとき、Rgは100kΩであることが必要である。
以下では、上記の抵抗上昇を抑制する構成について説明する。抵抗上昇を抑制するために、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲において、ナノポアデバイス101及び固定部材107の少なくとも一方が、溝構造を備える。
ここで、溝構造は、電解質溶液102に接している必要があり、電解質溶液中の、ナノポアデバイス101及び固定部材107が対向している領域に形成されている。溝は、凹凸構造で形成されてもよいし、固定部材107を貫通する孔構造で形成されてもよい。
図5及び図6は、溝を形成する範囲をより具体的に説明する図である。複数の溝115は、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲(図5及び図6の点線の範囲)で形成されればよい。図5は、複数の溝115が固定部材107のみに形成された例である。固定部材107のみに溝115を形成する場合、ナノポアデバイス101に形成するよりも、製造方法が簡単となり、コストを低減できる。図6は、複数の溝115がナノポアデバイス101のみに形成された例である。
ナノポアデバイス101と、固定部材107とが完全に接触した際に、ナノポア112の周辺空間(例えば、図1の空間121)と、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向していない領域における空間(例えば、図1の固定部材107側面側の空間122)は、電気的に接触している必要がある。上記要件が満たされている限りにおいて、溝構造は、連続して形成される必要はない。以下の例を挙げて説明する。
図7は、固定部材107がナノポアデバイス101に向かって降下するときに、固定部材107をナノポアデバイス101の僅か上方の位置で停止する構成の例である。図8は、図7の構成の場合の固定部材107の平面図である。図7に示すように、駆動機構105が、固定部材107をナノポアデバイス101の僅か上方の位置で停止するように制御する(固定部材107とナノポアデバイス101との間の相対距離が0とならない)。このような構成では、溝115が、固定部材107の縁部に到達するように延びている必要はない(図8)。すなわち、溝115は、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲の全域で連続して形成されている必要はない。この場合、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲内で、溝115が部分的に形成されていない領域があってもよい。
図9は、固定部材107がナノポアデバイス101に向かって降下するときに、固定部材107がナノポアデバイス101に接触する構成の例である。図10は、図9の構成の場合の固定部材107の平面図である。図9に示すように、駆動機構105が、固定部材107をナノポアデバイス101に向かって降下させたとき、固定部材107がナノポアデバイス101に完全に接触する(固定部材107とナノポアデバイス101との間の相対距離が0となる)。このような構成では、上記要件を満たすために、溝115は、固定部材107の縁部(すなわち、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲の末端)に到達するように延びている必要がある(図10)。すなわち、溝115は、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲の全域で連続して形成されている。
図11、図12、及び図13は、溝構造の例を示す。溝構造は、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲で連続的に形成されていればよい。図11の例では、複数の溝115が、ナノポアデバイス101の空間形成部材114のみに形成されている。
なお、溝構造は、ナノポアデバイス101と固定部材107の両方に形成されてもよい。図12の例では、固定部材107の外周部分が複数の溝115を備え、かつ、ナノポアデバイス101の空間形成部材114におけるナノポア112の周辺部分が複数の溝115を備えている。このように、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲で、複数の溝115が、上側の固定部材107と、下側のナノポアデバイス101との間で連続して形成されてもよい。
図13の例では、固定部材107が、ナノポア112の周辺の領域において複数の溝115を備えており、かつ、ナノポアデバイス101が、上記領域の外側において複数の溝115を備えている。
溝115の寸法について説明する。図14及び図15は、溝構造を形成していない従来の構成での通過抵抗Rを説明する図である。これに対して、図16及び図17は、本実施例の溝構造を備える構成での通過抵抗Rを説明する図である。
溝構造の各寸法を、図16及び図17によって定義すると、Rは、以下で表される。
= (L−nL)/(Wh+wn)
図18は、溝幅と溝ピッチの関係を変化させた際の溝深さと溶液抵抗の関係を示すグラフである。ここで、αは、wとwの比であり、w=α×wである。グラフに示すように、3つのα値(α=1.5、 2、 3)についてh0=0のときの溶液抵抗を測定した。また、グラフにおいて、「h0_100nm」の表記は、h0=100nmであることを示す。ここでは、3つのα値についてh0=100nmのときの溶液抵抗を測定した。また、「系列4」は、溶液抵抗の目標値である。
例えば、w=1.5×wの構成において、溝115の掘り込み深さが5μm程度の場合、目標値を達成することができる。一例として、溝115の掘り込み深さは、5μm以上であることが好ましい。
固定部材107をナノポアデバイス101に最も近づけた際に、溝115を形成したことによって生じる、ナノポアデバイス101と固定部材107との間の間隙の総体積が溶液抵抗の低下に十分寄与できればよい。したがって、上記のように溶液抵抗の低下に十分に寄与するならば、溝115のピッチ(上記のw2に対応する)及び幅(上記のwに対応する)は、溝115を形成した部位の全体において、一様である必要はない。
次に、生体分子108(例えば、DNA)の固定方法について説明する。図21は、固定部材が溝を備える場合のナノポア近傍の拡大図である。溝115が形成された部位には、凸部115aと凹部115bが形成される。ここで、凸部115aにはDNAが固定されるため、凸部115aの幅は、DNA固定ピッチ以上のサイズを有している必要がある。DNA固定ピッチは、その性質上100nm間隔であることが考えられる。したがって、例えば、溝115が形成された部位の凸部の幅は、100nm以上であることが望ましい。
ここでは、溝115とナノポアデバイス101との間の位置合わせ機構が無い場合を想定する。図21に示すように、ナノポア112と溝115の凸部115aの位置関係によらず、固定部材107上のDNAがナノポア112近傍に形成される電位勾配801によって引き寄せられる必要がある。したがって、溝115のピッチ(上記のwに対応する)は、300nm以下であることが必要である。図21及び図22は、溝115のピッチが300nm以下である例である。図21では、溝115の凸部115aがナノポア112の直上に配置されているため、DNAが電位勾配801によって引き寄せられる。また、図22のように、溝115の凸部115aがナノポア112の直上に配置されていない場合でも、溝115のピッチが300nm以下であることから、DNAが電位勾配801によって引き寄せられることが可能である。
次に、溝115とナノポアデバイス101との間の位置合わせ機構が有る場合を想定する。この場合、溝115のピッチ(上記のwに対応する)が300nm以上の場合でも、DNAのナノポア112への導入を達成することができる。図23及び図24は、溝115のピッチが300nmより大きい例である。図24に示すように、溝115の凸部115aがナノポア112の直上に配置されていない場合、DNAを電位勾配801によって引き寄せることができない。位置合わせ機構がある場合、図23に示すように、固定部材107を薄膜113の面に平行な方向に移動することにより、溝115の凸部115aをナノポア112の直上に配置することができる。なお、溝115とナノポアデバイス101との間の位置合わせ機構については、後述の実施例で説明する。
空間形成部材114は、任意の形状で構成することが可能であるが、図1に示すような構成ではなく、ナノポアデバイス101上に形成される凸部である場合に以下の制限がある(例えば、図80の空間形成部材の場合など)。空間形成部材の幅を超える寸法で、溝115の幅(上記のwに対応する)を形成した場合、固定部材107をナノポアデバイス101に完全に接触させた際に、高抵抗領域が出来てしまう。したがって、固定部材107とナノポアデバイス101との完全接触を避けるか、又は、溝115の幅を空間形成部材の幅以下に制限する必要がある。
図25〜図27は、溝構造を有する固定部材の一例である。溝構造の断面は、図1に示す矩形のみならず、三角形、半月形、又は台形であってもよい。
次に、固定部材107に溝構造を形成する方法を図28〜図32を用いて説明する。まず、固定部材となるシリコン基板107を用意する(図28)。次に、シリコン基板107上にレジスト1101を塗布する(図29)。次に、レジスト1101を目的の寸法でパターニングする(図30)。次に、シリコン基板107をドライエッチングにより削り、溝115を形成する(図31)。シリコン基板107上のレジスト1101を除去する(図32)。なお、レジストなどを使用せずに、ダイシングブレードによって、シリコン基板107を加工し、溝115を形成してもよい。この例では、溝構造の凹部及び凸部が同一材料で形成される。
次に、ナノポアデバイスに溝構造を形成する方法を図33〜図37を用いて説明する。溝115の形成処理は、ナノポアデバイス101の作製工程の中に入れ込むのが良い。ナノポアデバイス101の基板となるシリコン基板3301を用意する(図33)。シリコン基板3301上に窒化膜、酸化膜、及び窒化膜を成膜し、シリコン基板3301の裏面に窒化膜を成膜し、成膜後のシリコン基板3301の最上面にレジスト1101を塗布する(図34)。
次に、レジスト1101を目的の寸法でパターニングする(図35)まず、薄膜開口用のパターニング、及び、シリコンエッチング用のパターニングを行う。ここでのパターンによって薄膜113及びナノポア112の位置が特定されるため、上記のパターンを目印にして、レジスト1101に対して、溝構造用のパターニングを行う。別の例として、溝構造を作成するために、ダイシングブレードによる削りを入れてもよい。作成されたパターンに従って表面及び裏面に対してエッチングを行う(図36)。最終的にレジスト1101を削除し、ナノポアデバイス101上に溝115を形成することができる(図37)。
次に、溝構造の凹部及び凸部をそれぞれ異なる材料で作成する方法を図38〜図40を用いて説明する。溝構造の凹部及び凸部をそれぞれ異なる材料で作成することにより、固定部材107上で生体分子108を固定する領域と固定しない領域とに分けることが可能となる。
本例は、基本的には、図28〜図32で説明した方法と同じであるが、溝用の加工を行う前に2つの膜を成膜する点で異なる。まず、固定部材となるシリコン基板107を用意する(図38)。次に、シリコン基板107上に、生体分子108が結合しにくい第1の膜1302を成膜し、その後、生体分子108が結合し易い第2の膜1301を成膜する(図39)。次に、第2の膜1301をエッチングする(図40)。なお、エッチングの際には、第1の膜1302でエッチストップが起こるようにガス種を選択する。
上記の例において、第1の膜として、polySi膜を用いてもよい。また、第2の膜として、金、ニッケル、チタンなどを用いてもよい。その場合、APTESはSi膜に成膜され、金属部には結合しない構成をとることが可能となる。
上記で説明した固定部材107の全面に対して、生体分子108(例えば、DNA)は結合しうるが、上記の通り、溝構造の材料は選択可能である。溝構造の材料を選択し、例えば、溝115の凸部(すなわち、上記の第2の膜1301)にのみDNAが固定できることは、信号の信頼度を上昇させるのみならず、DNAをより長く読む点においても有効である。
図38〜図40で説明した通り、対象とする生体分子108が固定不可能な材料を第1の層としてシリコン基板上に成膜し、生体分子108が固定可能な材料を第2の層として第1の層上に成膜する。その後、第2の層に対して溝115を形成する。このとき、第2の層と第1の層とでエッチレートが異なるガスを用いてエッチングを行う。別の例として、第1の層と第2の層との間に第3の膜を成膜しておき、第3の膜をエッチングストップの役割として用いてもよい。最後にエッチャントで除去することで、同様の構造を作製することも可能である。
Si層のパターニングには、ドライエッチングではなく、Si層上に更に窒化シリコン層を形成し、その後、窒化シリコン層をパターニングしてSi層のエッチングマスクとしてもよい。また、KOHによるウエットエッチングを行ってもよい。この場合、溝の断面は、台形状又は三角形となる。
固定部材107上の生体分子108は、固定部材107上に予め固定された異なる生体分子(例えば、APTESや、チオール、任意の配列を有したPNAなど)を介して結合してよい。ここで、固定部材107上の複数種の生体分子を用意する際には、溝構造を、固定位置アドレスを決める手段として用いることが可能である。
図41〜図44は、固定部材上に複数種の生体分子を固定する方法の一例である。まず、セレクションマーカを固定部材107に固定する。このとき、マーカ原液1403を、マスク1402を用いて、インクジェット方式によって、溝115を備える固定部材107に塗布する(図41)。これにより、セレクションマーカ1401を固定部材107に固定する。マーカ原液1403に関して、固定対象の生体分子に合わせて、アドレス(固定部材107の領域)毎に異なる種類の原液を選択する。
次に、複数種の生体分子を含む生体分子混合液1404を固定部材107に流す(図42)。このとき、静電相互作用によりセレクションマーカ1401に生体分子が結合する。セレクションマーカ1401と生体分子(DNA)は、任意の配列が一致した場合のみにおいて強固に結合するため、各セレクションマーカ1401に対応づけられたDNAを結合させることができる(図43)。図44は、上記のプロセスを実行した後の固定部材の平面図である。図44に示すように、固定部材107のアドレスごとに、複数の異なる生体分子1404a、1404b、1404cを結合することができる。
ナノポアデバイスの作成法及びナノポアの形成法は既知であり、例えばItaru Yanagi et al.、 Sci. Rep. 4、 5000 (2014) に記載されている。本実施例では、ナノポアを形成する薄膜を以下の手順で作製した。まず、725μm厚の8インチSiウエハの表面に、Si34/SiO2/Si34を12nm/250nm/100nm、裏面にSi34を112nm成膜した。次に、表面最上部のSi34を500nm四方、及び裏面のSi34を1038μm四方、それぞれ反応性イオンエッチングした。さらに裏面のエッチングにより露出したSi基板をTMAH(Tetramethylammonium hydroxide)にてエッチングした。Siエッチングの間は、表面側SiOエッチングを防ぐために、ウエハ表面を保護膜で覆った。保護膜を取り除いた後、500nm四方で露出しているSiO層をBHF溶液(HF/NH4F=1/60、8min)にて取り除いた。これにより、膜厚12nmの薄膜Si34が露出したナノポアデバイスが得られる。この段階では、薄膜にナノポアは設けられていない。
ナノポアデバイスに露出した薄膜へのナノポア形成は、パルス電圧により以下の手順で行った。上記のようにして作成したナノポアデバイスを生体分子測定装置にセットする前に、Ar/O2 plasmaによって10W、20sccm、20Pa、45secの条件でSi34薄膜を親水化した。次に、ナノポアデバイスを介して上下2槽に分離する構成の生体分子測定装置にナノポアデバイスをセットした後、1M KCl、1mM Tris−10mM EDTA、pH7.5溶液を満たし、各槽にAg/AgCl電極を導入した。
ナノポアを形成するための電圧印加及びナノポアが形成された後にナノポアを介して流れるイオン電流計測は、このAg/AgCl電極間で行われる。下槽をcis槽、上槽をtrans槽と呼び、cis槽電極側の電圧Vcisを0Vに設定し、trans槽電極側の電圧Vtransを選択した。選択された電圧は、パルス発生器で印加した。各パルス印加後の電流値は電流アンプで読み取った。ナノポア形成のための電圧印加及びイオン電流読取のプロセスは、プログラムによって制御した。パルス電圧印加条件は、パルス電圧印加前に薄膜に形成されているポア径に応じて取得される電流値条件(閾値電流)を選択することで、順次ポア径を大きくし、目的のポア径を得た。ポア径はイオン電流値から見積もった。条件選択の基準は表1の通りである。ここでn番目のパルス電圧印加時間は
n=10-3+(1/6)(n-1)−10-3+(1/6)(n-2) for n>2
で決定される。
Figure 0006826047
ナノポアの形成は、パルス電圧印加による以外に、TEMによる電子線照射によっても可能である(A. J. Storm et al.、 Nat. Mat. 2 (2003))。
図1に戻り、Ag/AgCl電極103a、103bを介して電源104から上下2槽の液槽131、132に電圧が印加されると、ナノポア112の近傍に電場が生じ、液中で負に帯電した生体分子108が、ナノポア112内を通過する。一方で、生体分子108の末端は固定部材107に固定されているため、電場により生体分子108を介して固定部材107及び駆動機構105が下槽の方向に引っ張られる。
ここで、例えばDNAの塩基配列を精度よく読み取るためには、駆動機構5の出力揺らぎ、及び外乱由来の振動が起きた際に、生体分子108の変位が1塩基分の長さ、すなわち0.34nm以上変化しない構成である必要がある。
次に、この要件を満たすための条件について検討する。ヤング率Eとすると、Eは次のように表される。
Figure 0006826047
ここで、Fは系に印加される力、Sは材料の面積、Lは材料の長さ、ΔLは印加された力を受けた際の変位量である。ナノポアを介して、上下に1mV印加した際に、DNAにかかる力は0.24pNであることが分かっている(Ulrich F. Keyser et al.、 Nat. Phys. 2、 473-477 (2006))。解析中の印加電圧の揺らぎが0.1mV程度起こりうることから、その際0.34nm以上変位しないことが必要である。従って、固定部材107と駆動機構105及びその接続部材111のヤング率は、0.07(L/S)[μN/mm]以上を有する必要がある。
また、計測システムが熱的に安定であることも重要である。熱源がない場合でも、空間は0.1度の揺らぎを持つことが知られている。したがって、系に用いた材料全体から算出される、ナノポアデバイス101と固定部材107との間の距離の温度変化が0.1℃あたり0.34nm以下である必要がある。
そのため、接続部材111として、ステンレス製又はインバーなどを用いて作製されたネジ等が用いられてもよい。別の例として、固定部材107が、駆動機構105に真空吸着あるいは圧着して固定されてもよい。駆動機構105は、ピエゾ素子に代表される圧電材料で形成されており、0.1nm/s以上の駆動が可能である。圧電材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、及び酸化亜鉛(ZnO)などが用いられる。
生体分子108の末端と固定部材107の表面は、互いに共有結合、イオン結合、静電相互作用、磁気力などで結合することができる。例えば、共有結合でDNAを固定する際には、APTES、グルタルアルデヒドを介してDNA末端修飾されたDNAを固定することができる。固定部材107が上記結合を利用するために、APTESの足場となるSi、SiOが利用される。他の共有結合法としては、金チオール結合が利用できる。DNAの5’末端をチオール修飾し、固定部材107の表面は金蒸着する。固定部材107に蒸着する金属種として、他にも、チオールが結合可能なAg、Pt、Tiを利用できる。
イオン結合を利用する方法は、固定部材107を表面修飾により溶液中で正に帯電する処理を施すことにより、正に帯電した固定部材107の表面に負に帯電した生体分子を固定する方法である。カチオン性のポリマとしては、ポリアニリンやポリリシンが用いられる。静電相互作用を利用する場合には、APTES修飾した固定部材107の表面に直接アミノ末端修飾されたDNAを固定することができる。また、固定部材107の基板表面として、ニトロセルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ナイロン膜、ポリスチレン基板が広く利用される。特にニトロセルロース膜は、マイクロアレイ技術に利用されている。磁気力を利用する際には、例えば磁気ビーズ表面に上記のような結合を利用して、DNAを予め固定化しておく。さらに、固定部材107として磁石材料を用いることで、DNAを固定化した磁気ビーズと固定部材107を相互作用させ、磁力によるDNA固定化磁気ビーズの吸引を実現する。磁性材料としては、鉄、ケイ素鋼、アモルファス磁性合金、ナノクリスタル磁性合金などが用いられる。
生体分子としてタンパク質やアミノ酸を測定する場合においても同様に、特異結合部位への修飾を施し、同様の手法にて固定部材107に結合させることが出来る。これによってタンパク質中の結合部位の特定、及びアミノ酸の配列情報を得ることが出来る。
固定部材107上の生体分子108の固定密度は、ナノポア112周辺に形成される電場の広がり量で決める。図19は、ナノポア周辺に生成される電場とナノポアへの生体分子の導入例を示す模式図である。図19に示すように、ナノポア112の周辺に広がる電位勾配801は、ナノポア112からの距離L、ナノポア径d、薄膜の厚みt、印加した電圧ΔVの間に、以下の関係がある。
Figure 0006826047
例えば、膜厚2.5nmの薄膜に形成された直径1.4nmのナノポアを挟んで100mVの電圧を印加した場合、ナノポア112から100nmの領域で、0.1[V/μm]の電場が伝播している。
ここで、生体分子の電気的移動度μ及び拡散係数Dから、生体分子がこの電場に閉じ込められてナノポアに導入される範囲を求めることができる。その範囲をLdiffとすると、次式で表される。
Figure 0006826047
固定部材107が薄膜113に最も近づいた際の距離をlとする。また、生体分子の溶液中での実効長さをbとすると、以上から、生体分子固定ピッチaは次のようになる。
Figure 0006826047
上記を実現するため、例えば固定部材107上にDNAを修飾する際、目的のDNA以外に、末端修飾された短鎖長ポリマ206を混在させたDNA溶液を用いる。図20は、ナノポア周辺に生成される電場とナノポアへの生体分子の導入例を示す模式図である。図20に示すように、生体分子(DNA)108が末端修飾された短鎖長ポリマ206と混在して固定され、目的のDNA固定密度が実効的に低いDNA固定部材を作製できる。例えば、20mer poly(dA)を75%含むDNA溶液を用いて固定部材を用意すると、2.5〜3nmのポア径を有するナノポアを用いて、一つのポアに複数本のDNAが入る現象を排除できることを確認している。つまり約100nmピッチで固定できていると考えられる。混合する短鎖ポリマの長さは、2nm程度とは限らない。
上記実施例によれば、生体分子の固定領域(固定部材107の平面サイズ)がナノポア112を有する薄膜113の平面サイズ以上である生体分子測定装置100において、固定部材107及びナノポアデバイス101の少なくとも一方に溝構造が形成される。これにより、通過抵抗の上昇を抑制することができる。ナノポアデバイス101と固定部材107とが完全接触した際でも溶液通路抵抗が抑制されるために、溝115は、ナノポアデバイス101と固定部材107とが対向している範囲にわたって連続して形成されてもよい。
生体分子測定装置100の一例は、電解質溶液102が満たされる第1の液槽131と、電解質溶液102が満たされる第2の液槽132と、ナノポア112を有する薄膜113を支持し、ナノポア112を介して第1の液槽131と第2の液槽132を連通するように第1の液槽131と第2の液槽132の間に設けられたナノポアデバイス101とを備える。第1の液槽131には、生体分子108が固定される固定部材107が配置されている。固定部材107の生体分子固定領域(ナノポアデバイス101に対向する平面のサイズ)は、薄膜113の平面サイズより大きい。生体分子測定装置100は、固定部材107を薄膜113に対して近づく方向又は遠ざかる方向に駆動する駆動機構105と、駆動機構105を制御する駆動機構制御ユニット106とを備える。
第1の液槽131には第1の電極103aが配置され、第2の液槽132には第2の電極103bが配置されている。固定部材107と薄膜113との接触を防止するためにストップ機構として、ナノポアデバイス101には、薄膜113より外側の周囲を土手のように囲み、固定部材107と薄膜113の間に空間を形成する空間形成部材114が設けられている。第1の電極103aと第2の電極103bとの間には、電圧を印加する電源104が設けられている。また、第1の電極103aと第2の電極103bとの間には、第1の電極103aと第2の電極103bとの間に流れるイオン電流を計測する測定部(電流計109及びPC110)が設けられている。測定部は、その一端が固定部材107に固定された生体分子108がナノポア112を通過するとき計測されるイオン電流から、当該生体分子108の配列情報を取得する。このとき、上記の溝115の構造によって、通過抵抗の上昇を抑制し、時定数の低下を抑制することができる。その結果、取得される信号波形のなまりが無くなり、SNが向上する。
上記構成により、生体分子の構造を反映した信号変化に対し、高速応答することを可能とし、高精度な読取りを実現する。また、上記実施例では、ナノポア112の薄膜113内の位置確認をせずに生体分子108のナノポア112への導入を実現でき、安定した封鎖信号の取得を実現できる。
<実施例2>
次に、溝構造を利用した位置合わせ機構について説明する。図45は、ナノポアデバイスと固定部材との間の位置関係を調節する機構の第1の例である。図45において、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ符号を付して、それらの説明を省略する。
上記のように、溝115のピッチが広い場合、固定部材107上に複数種の生体分子108が固定されている場合、固定部材107及びナノポアデバイス101の両方に溝115が形成されている場合については、ナノポアデバイス101と固定部材107との間の位置関係の調節が必要となる。
生体分子測定装置1500は、図1に示す構成要素に加え、レーザ照射ユニット1501と、ミラー1503と、レーザ1502の照射によって取得されたデータをフィードバックする機構(相対位置モニタ)1504と、固定部材107の回転機構1506と、固定部材107のxy方向の調整機構1507と、回転機構1506及び調整機構1507を制御する制御ユニット1505とを備える。
制御ユニット1505は、相対位置モニタ1504からのデータを用いて回転機構1506及び調整機構1507を制御し、固定部材107の回転及びxy方向の移動を制御することができる。一例として、制御ユニット1505は、レーザ照射により画像化された溝構造を、ナノポアデバイス101上に形成されたパターンと合わせるように、固定部材107の回転及びxy方向を調整してよい。
溝115を備える固定部材107又はナノポアデバイス101は、位置合わせ機構としての機能も果たし得る。位置合わせ機構を実現する構成の一例として、レーザ照射により溝構造を画像化する測定部(制御ユニット1505)を設けてもよい。この測定部による結果に応じて、回転機構1506及び調整機構1507によって、固定部材107の回転及びxy方向を調整してよい。これにより、溝構造とナノポアデバイスとの間の相対位置を調整することができる。
図46は、ナノポアデバイスと固定部材との間の位置関係を調節する機構の第2の例である。位置合わせ機構として、ナノポアデバイスの周辺の溶液抵抗そのものを用いてもよい。生体分子測定装置1510は、図1に示す構成要素に加え、固定部材107の回転機構1511を備える。この例では、駆動機構制御ユニット106が、測定された溶液抵抗を入力として受け取る。駆動機構制御ユニット106が、溶液抵抗をモニタしつつ、回転機構1511を制御して固定部材107を回転させる。
ナノポアデバイス101と固定部材107との間の位置がずれている場合、溶液抵抗が高い状態になる。駆動機構制御ユニット106が、溶液抵抗をモニタしつつ、固定部材107の軸を回転させることにより、固定部材107の溝115の位置を所望の位置に移動させる。これにより、溶液抵抗が低下する。図46の構成は、レーザ源等が必要ないため、装置構成を簡略化することができる。
<実施例3>
溶液抵抗の上昇は、固定部材107を用いた搬送制御システムの課題には限らない。ナノポア112周辺の構造がマイクロオーダーの領域に狭められているナノ流路の構成においても、起こりうる課題である。以下では、固定部材を用いない生体分子測定装置の構成例を説明する。
図47は、固定部材を用いない生体分子測定装置の構成例を説明する断面模式図である。図48は、図47の生体分子測定装置の上面図である。
生体分子測定装置1600は、電解質溶液102が満たされる第1の液槽1621と、電解質溶液102が満たされる第2の液槽1622とを備える。第1の液槽1621は、ナノサイズ又はマイクロサイズの流路(微小流路)1601を備える。本例では、流路1601は、マイクロ流路である。
生体分子測定装置1600は、上記の実施例と同様に、ナノポアデバイス101を備える。ナノポアデバイス101は、ナノポア112を有する薄膜113と、溝115を有する空間形成部材114とを備える。ナノポアデバイス101は、ナノポア112を介して第1の液槽1621と第2の液槽1622を連通するように第1の液槽1621と第2の液槽1622の間に配置されている。
第1の液槽1621には第1の電極103aが配置され、第2の液槽1622には第2の電極103bが配置されている。第1及び第2の電極103a、103b間には電源104及び電流計109が接続されている。電流計109は、ADC(図示せず)及びPC110に接続され、PC110は、取得された電流値を記録できる。したがって、電流計109を用いて、生体分子がナノポア112を通過するとき計測されるイオン電流から当該生体分子の配列情報を取得することができる。
本例では、第1の液槽1621が、インレット1602と、アウトレット1603とを有する。図48に示すように、インレット1602とアウトレット1603との間であって、ナノポア112の近傍の領域がマイクロ流路1601となっている。
このような構成において、マイクロ流路1601が狭いほど、ナノポア112への生体分子導入効率、流路の閉塞、生体分子の導入順序などを制御することが可能となる。一方で、イオン電流を用いて解析を行う際、マイクロ流路1601の長さ及び断面積に応じて、回路の時定数低下を招く。
第1の液槽1621と第2の液槽1622の間に設けられたナノポアデバイス101において、第1の液槽1621に接触している空間形成部材114が、溝115を備える。本例において、溝115は、第1の液槽1621におけるナノポア112の近傍の領域であって、流路が狭くなっている領域(すなわち、流路1601)の範囲内で、空間形成部材114上に形成されている(図47)。溝構造を形成することにより、信号時定数の低下を防ぐことが可能となる。
上記のように、固定基板を用いない、狭小流路内に存在するナノポア112を用いた生体分子測定装置1600においても溶液抵抗の上昇が生じ得る。したがって、固定基板を用いない生体分子測定装置1600においてもナノポアデバイス101上に溝構造(又は凹部)を形成することが有効である。
<実施例4>
図49〜図51は、固定部材への生体分子の結合手順及び固定部材の生体分子測定装置への設置手順の第1の例を説明する模式図である。説明を簡単にするために、電極及び溝115の図示を省略している。測定前の準備工程は3つの工程を含む。図49に示す第1の工程では、固定部材107上に生体分子108を固定する。図50に示す第2の工程では、固定部材107と駆動機構105を接続し、生体分子測定装置の上槽に挿入する。図51に示す第3の工程では、ナノポアデバイス101の上下の空間に電解質溶液102を導入する。
図52〜図53は、固定部材への生体分子の結合手順の第2の例を示す模式図である。説明を簡単にするために、電極及び溝115の図示を省略している。測定前の準備工程は2つの工程を含む。図52に示す第1の工程では、固定部材107を駆動機構105に接続し、生体分子測定装置の上槽に挿入する。図53に示す第2の工程では、固定部材107に結合しうる状態の生体分子108が溶解している生体分子混合電解質溶液403を生体分子測定装置の上槽と下槽に流し込む。
ここで、生体分子を固定部材の表面に結合するための結合材料は、非特異的な吸着を極力少なくし、固定部材の表面上で目的の結合が行われる密度を高めるために、予め固定部材107の表面に修飾しておくことが必要である。結合材料とは、例えば、APTESグルタルアルデヒドを介した共有結合を利用して生体分子を固定する場合、APTES及びグルタルアルデヒドのことを指す。イオン結合を利用して生体分子を固定する場合、基板表面の有機材料のことを指す。
生体分子が長鎖DNAである場合、特に複数のグアニンが続けて並んでいるような配列においては、DNAの強固なフォールディングが問題になる。DNAがフォールディングを起こしていると、ナノポア近傍で詰まり、ナノポアを通過しないなどの現象が起きうる。そのため、高温、特に60℃から98℃で10分から120分、DNAを固定した固定部材を水中で加熱し、4℃まで急冷する処理を施すのが良い。その後、4℃又は室温のKCl溶液中で測定する。
図54〜図57は、固定部材の駆動手順を示す模式図である。説明を簡単にするために、電極及び溝115の図示を省略している。固定部材107の駆動法は、三つの工程を含む。図54は、上記の第1の例又は第2の例に示した手順により、測定すべき生体分子108が下面に固定された固定部材107が生体分子測定装置の上部の液槽に挿入され、上下の液槽に電解質溶液が導入されて測定準備ができた状態を示している。
図55に示す固定部材駆動の第1の工程では、駆動機構制御ユニット106が、駆動機構105を駆動制御し、固定部材107をz軸下方に駆動し、固定部材107に固定された生体分子108を、薄膜113のナノポア112の近傍に生成した電位勾配801内に入れる。このとき、生体分子108が負に帯電していれば、もしくは負に帯電する修飾をした場合、電場からの力を受け、生体分子108は固定されていない自由末端からナノポア112を通り下部の液槽に移動しようとする。生体分子108は、ナノポア112を通過して電位勾配801内に位置する部分と固定部材107上に固定されている末端の間で引き伸ばされた状態となる。ナノポア112内に生体分子が導入されたことはイオン電流からモニタできる。
図56に示す第2の工程では、駆動機構105が更に、固定部材107をz軸方向下方に駆動し、ナノポアデバイス101上に形成された空間形成部材114に接触させ、ここで駆動機構105による固定部材107の移動を止める。薄膜113の上方に空間形成部材114が存在することにより、固定部材107と薄膜113の接触が避けられ、薄膜113が破壊されるのを防ぐことができる。第2の工程を完了した時点で、薄膜113のナノポア112内に生体分子108が入っていない場合には、一定時間、駆動機構105の駆動を停止することで導入確率を上げることができる。
図57に示す第3の工程では、駆動機構制御ユニット106が、駆動機構105をナノポアデバイス101から離れる方向に駆動する。このとき、生体分子108は電場で引き伸ばされながら、固定部材107に引っ張られてナノポア112内を上方向に移動することになり、この間に生体分子の配列が、イオン電流の変化量から読み取られる。電流計109で読み取られた信号値は必要に応じて増幅され、PC110に記録される。
第2の工程で固定部材107が空間形成部材114に接触した時点が、第3の工程で行う生体分子特性解析の解析開始点となる。従って、生体分子の全長のうち、固定点から空間形成部材114の高さ分の領域は、ナノポア112内を通過せず解析できないことになる。ここで、図58に示すように、固定部材107に生体分子108を固定する際に、空間形成部材114の高さ分のリンカー2001を介して固定部材107と結合させることで、生体分子108中の全ての配列を読み取ることが可能となる。
図59は、イオン電流信号の検出例を示す模式図である。ナノポアデバイスに対する固定部材の位置関係の模式図を上段に、イオン電流信号変化のグラフを中段に、駆動機構変位のグラフを下段に示した。下段の駆動機構変位zは、ナノポアデバイス101と固定部材107の間の距離に対応する。また、図59では、イオン電流信号中の特徴点に対応する固定部材107とナノポアデバイス101の位置関係が矢印を用いて示される。
図59を参照すると、固定部材107がナノポアデバイス101に近接する前は、ナノポア径に応じたイオン電流信号Iが得られている。生体分子108がナノポア112に入った際に、生体分子の平均直径に応じたイオン電流量の減少が起きる。このとき生体分子がナノポア112を通過する速度は、固定部材107の駆動速度ではなく、生体分子の自由電気泳動のスピードである。これは、生体分子が電場外から電場内に入る際、生体分子はフォールディングし撓んでいるため、端部が固定部材107に固定されていることによる影響を受けないからである。この際、測定分解能を得られず、取得されるイオン電流値は、生体分子平均直径に依存した平均的な電流値Iを示すことになる。
固定部材107がナノポアデバイス101の空間形成部材114と接触した後に、駆動機構105によって生体分子を引き上げる際の生体分子の運搬速度は、固定部材107の移動速度に等しくなるため、特性分解能に必要な速度で運搬できる。例えばDNA鎖に含まれる個々の塩基種の違いを封鎖電流量で計測するには、計測時の電流ノイズ及びDNA分子の揺らぎの時定数から、DNAのナノポア通過速度を1塩基あたり100μs以上にする必要があると考えられる。従って駆動機構105を制御して固定部材107を1塩基あたり100μs以上より遅い速度で上方に移動させることにより、生体分子の塩基配列を反映した信号が得られる。一方で、解析スループットは高く維持されている必要がる為、一塩基あたり10ms以上かからないことが望まれる。すなわち、駆動機構は生体分子固定部材を34nm/sec〜34μm/secの間の速度で駆動するのが好ましい。
図60は、固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第1の例を示す模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。図60は、駆動機構105を含む固定部材107の側面模式図、及びスリット603を有する下面図も示す。この例では、ナノポアデバイス101の上にではなく、固定部材107の下面から下方に突出するように空間形成部材2201が設けられる。空間形成部材2201は、薄膜113より外側の位置でナノポアデバイス101と接触するように、固定部材107の下面外周、あるいは下面四隅又は対向する二辺に形成されている。すなわち、空間形成部材2201は、固定部材107の下面の薄膜113に対向する領域より外側の少なくとも一部に設けられている。固定部材107がナノポアデバイス101の方向に移動するとき、空間形成部材601により固定部材107と薄膜113の間に空間が形成され、薄膜113が固定部材107との接触により破壊されるのを防止する。
図61〜図62は、固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第2の例を示す模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。図61は、固定部材107がナノポアデバイス101に接触する前の状態を示し、図62は、固定部材107がナノポアデバイス101に接触した後の状態を示している。ストップ機構は、固定部材107と薄膜113の間に両者の接触を避けるための空間を作ることができればよい。本例のストップ機構は、ナノポアデバイス101の上面と、固定部材107の下面の薄膜に対応する領域の外側の少なくとも一部にそれぞれ電極2302aと電極2302bを配置し、電極2302a、2302b間の静電容量変化から固定部材107とナノポアデバイス101との間の相対距離を検出し、両者が接触したことをモニタする。電極2302a、2302b間に印加する電圧は、想定電流量及び計測電流に応じて選択する。また、電極の腐食及び酸化を防ぐため、パルス電圧印加により計測することも可能である。駆動機構制御ユニット106(図示せず)は、駆動機構105によって固定部材107をナノポアデバイス101の方向に駆動させ、ナノポアデバイス101と固定部材107が近接した際に電極2302a、2302bから取得される信号変化を元に両者間の距離を検出し、駆動機構105の駆動を停止する。駆動機構制御ユニット106は、静電容量変化の信号を取得する代わりに、短絡から接触をモニタすることも可能である。ストップ機構を構成する電極2302a、2302b間に電圧を印加している間は、計測用の第1及び第2の電極103a、103bには電圧を印加しない。
図63〜図64は、固定部材と薄膜との接触を防止するストップ機構の第3の例を示す模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。図63に示した例では、電極2401、2402をナノポアデバイス101上にのみ配置して電極間を配線し、固定部材107がナノポアデバイス101に近接した際の電流量変化から固定部材107とナノポアデバイス101間の相対距離を検出する。電極2401、2402は、ナノポアデバイス101の上面の薄膜113の外側の領域の外周、四隅又は対向する二辺に配置する。図64に示した例では、固定部材107の下面に電極2403、2404を配置して電極間を配線し、同様のメカニズムで固定部材107とナノポアデバイス101間の相対距離を検出する。電極2403、2404は、固定部材107の下面のうち薄膜113に対応する領域の外側の四隅又は対向する二辺に配置すればよい。溝115は、電極2401、2402が配置されている側(固定部材107又はナノポアデバイス101)に形成されてもよいし、電極2401、2402が配置されていない側(固定部材107又はナノポアデバイス101)に形成されてもよい。
電極を四隅に4個配置した場合、固定部材107の平衡出しに利用することも可能である。その場合、駆動機構105に傾き調整機能を持たせ、駆動機構制御ユニット106は、4箇所から取得される電流値がほぼ一致するように、駆動機構105の傾きを調整してもよい。例えば、4隅に独立のゴニオメータが設けられ、それを4箇所から取得した電流値に基づいて手動又は自動で調整してもよい。
図65〜図67は、図63に示したナノポアデバイス101上への電極配置例を示す上面模式図である。図65は、ナノポアデバイス101上の薄膜113、センサ配線2406、及び電極取り出し配線2407の配置図である。図66及び図67は、センサ配線拡大図である。図66は、対向電極一種の例を示し、図67は、薄膜113の周辺部の4箇所にリング状に対向電極2408を配置した例を示す。ここで、図66に示す電極長さLが10μm、電極間隔sが0.4μm〜2μmとして設計された電極間に、1Vの電圧を印加した上で、ナノポアデバイス101に固定部材107を近接させた際の電極間電流変化をモニタした。
図68は、固定部材−ナノポアデバイス間距離hが10μmの時に流れる電流量で規格化して示した距離hと電流量の関係を示すグラフである。図68に示すように、固定部材107とナノポアデバイス101との間の距離が7μm以上離れると、電流量の距離h依存性は殆どないが、それ以下では距離と電流減少量に相関があることが分かった。従って、このような距離hと電流量の相関関係を取得することによって、固定部材107の高さ調整が可能となる。
固定部材107の駆動法の他の例として、固定部材107上の生体分子108を事前に引き伸ばしつつ、ナノポア近傍にアプローチする方法もある。図69〜図72、図73〜図74は、生体分子の事前引き伸ばし機構を有する生体分子測定装置による固定部材の駆動法の例を示す断面模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。
図69に示すように、本例の生体分子測定装置は、固定部材107と、ナノポアデバイス101にそれぞれ電極1202a、1202bを備える。最初に、回路変換コントローラ2706により、電極1202a、1202bに接続された回路1207に電源を接続し、固定部材107とナノポアデバイス101の間に電位勾配1203を作る。すると、電位勾配1203によって、負に帯電した生体分子108は、固定部材107とナノポアデバイス101の間で引き伸ばされる。
次に、図70に示すように、駆動機構105を駆動して固定部材107がナノポアデバイス101の空間形成部材114に接触するまで下方に駆動する。このとき、図71の拡大図に示すように、第1及び第2の電極103a、103bに接続された回路1208に電源を接続した際にナノポア周辺に生成するはずの想定電場1209の範囲内に生体分子108を入れる。
次に、図73に示すように、固定部材107がナノポアデバイス101の空間形成部材114に接触した際に、電極1202a、1202bに接続された回路1207から、ナノポア周辺に電場を形成する回路1208へと電源の接続を切り替える。図74に示すように、ナノポア周辺に電位勾配801を形成することにより、生体分子108の先端はナノポアに挿入される。
図70に示した工程を経た後、生体分子108の先端がナノポア112内に入らない場合と、確率は小さいながら図72の拡大図に示すように、生体分子108の先端がナノポア112内に入る場合が存在する。生体分子108の先端がナノポア112内に入らず電場領域内に入った場合のみ、生体分子108の先端から塩基の読取が可能となる。
図75は、生体分子の先端から読み取られた信号の例を示す模式図である。イオン電流信号変化のグラフを中段に、駆動機構変位のグラフを下段に示した。下段の駆動機構変位zは、ナノポアデバイス101と固定部材107との間の距離に対応する。また、イオン電流信号中の特徴点に関して、上段に示した固定部材107とナノポアデバイス101との対応を矢印で示した。
固定部材107がナノポアデバイス101に近接する前は、ナノポア径に応じたイオン電流信号I0が得られている。電源を第1及び第2の電極103a、103bに接続してナノポアの周囲に電位勾配801を形成したとき、生体分子108の先端が電位勾配801内に入っているため(図74参照)、駆動機構105をz軸下方に駆動させると、生体分子108は自由末端から順次ナノポア112内に導入される。このとき、生体分子108には撓みが存在しないため、駆動機構制御ユニット106にて設定した速度で生体分子108が駆動され、生体分子108の各配列に応じた特性解析が可能となる。従って、生体分子108がナノポア112に導入されてから固定部材107とナノポアデバイス101が接触するまでの時間に読み取られた信号と、駆動機構105をz軸上方向に駆動し始めてから生体分子末端がナノポア112から抜け出るまでの時間に読み取られた信号は、図75のように、接触した時間を中心に対称な信号となる。
固定部材107に固定された複数の生体分子108のうち、最初に測定した生体分子108とは異なる生体分子108の読み取りは、xy方向に駆動機構105を駆動させることによって実現できる。図76は、生体分子測定装置の一部の断面模式図及び駆動機構105の上面模式図である。上面模式図に示すように、駆動機構105をxy方向、すなわち薄膜113の面に平行な方向へ駆動することにより、ナノポア112に別の生体分子108を通過させることができ、固定部材107上の複数の生体分子の解析が実現される。
複数の生体分子の解析を実現するための条件を、図77及び図78に示すナノポア近傍の拡大図を用いて説明する。図77は、第1の生体分子1405の特性解析を行った際のナノポア112を有する薄膜113と、固定部材107の位置関係を示す断面模式図である。ここで第2の生体分子1406を解析する場合、駆動機構105により固定部材107を電位勾配801の直径と同じ距離だけ薄膜113の面に平行に移動させる。図78は、移動後のナノポア112を有する薄膜113と固定部材107の位置関係を示す断面模式図である。この移動により、電位勾配801の範囲内には、第1の生体分子1405は必ず入らない状態を作り出すことができる。その後、駆動機構105により固定部材107を薄膜113に向けて駆動することによって、第2の生体分子1406をナノポア112に導入して解析することが可能になる。
<実施例5>
生体分子測定装置を用いて生体分子を測定する手順の実施例を以下に述べる。以下の全ての工程において、ナノポアを介して流れるイオン電流Iは増幅器を通して計測されている。また、上下2槽の液槽に各々挿入された一対のAg/AgCl電極間には一定の電圧が印加されており、ナノポアのサイズに応じたイオン電流量I0が取得されている。
図79は、生体分子としてのDNAの塩基配列を読み取る方法の例を示す説明図である。図79の上段には、DNA塩基配列解析中の固定部材107及びナノポアデバイス101の代表的な2つの位置関係を示す。図79の中段にはイオン電流変化を、下段には固定部材107の変位を示す。下段の変位zは、固定部材107とナノポアデバイス101の間の距離に対応する。また、駆動機構105による固定部材107の駆動方向を変えた時点、及びその際の固定部材107とナノポアデバイス101の位置関係を図中に示す。中段の黒矢印は上段左側に図示した第1の位置関係を取ることを示し、白矢印は上段右側に図示した第2の位置関係を取ることを示している。
駆動機構105によりz軸下方に固定部材107を駆動すると、生体分子108の自由な末端がナノポア112の中に入り、生体分子108は固定部材107に固定された末端とナノポア112の間で引き伸ばされる。このとき、イオン電流は、生体分子108の平均直径サイズに応じて減少し、Ibとなる。生体分子108が外から電位勾配801内に入る際、生体分子108はフォールディングしているため、固定部材107の移動速度ではなく、生体分子108の自由電気泳動のスピードでナノポア112内を通過することになる。その際のイオン電流値は、各塩基由来の電流値ではなく、生体分子108の平均直径に依存した平均的な電流値Ibを示すことになる。
その後、固定部材107は駆動機構105により更にz軸下方に駆動されるが、空間形成部材114によってz軸下方への移動が妨げられて移動が停止する。このときの固定部材107、生体分子108、及びナノポアデバイス101の位置関係を第1の位置関係として図79の上段左に示す。
その後に生体分子108を引き上げる際の生体分子108の運搬速度は、固定部材107の駆動速度に等しくなるため、一塩基分解に必要な速度(<3.4nm/ms)で生体分子108を運搬できる。従って、生体分子108の塩基配列を反映した信号が得られることになる。こうして駆動機構105により固定部材107をz軸上方に駆動する過程では、ナノポア112中を移動する生体分子108の配列情報を読み取ることができる。生体分子108のうち固定されていない自由末端がナノポア112から抜け、かつナノポア周辺の電位勾配801内に入っている間は、生体分子108は、固定部材107とナノポア周辺の電位勾配801の双方から逆方向の力を受け、引き伸ばされている。このときの固定部材107、生体分子108、及びナノポアデバイス101の関係を第2の位置関係として図79上段右に示す。また、生体分子108はナノポア112から抜けるため、イオン電流量はI0に戻る。この電流値の変化を検知し、駆動機構105による固定部材107の駆動を止める。
再び駆動機構105により固定部材107をz軸下方に駆動して生体分子108を自由端からナノポア112に通し、その間に生体分子108の塩基配列を読む。このとき、生体分子108の末端が固定部材107に固定された状態で、生体分子108の他方の自由末端が電位勾配801内に入っているため、生体分子108は全体として引き伸ばされている。従って、生体分子108は、その自由末端からナノポア112中を駆動機構105による駆動速度で通過するため、高精度な信号の読み取りが可能となる。また、z軸上方に駆動していた間に読み取られた配列を逆方向から読み取ることになり、それを反映して対称に変化するイオン電流が計測される。再び固定部材107が空間形成部材114に接触した際に、固定部材107の駆動が止まる。
以降は、上昇及び下降の繰り返しにより、必要な配列読取精度が出るまで反復して信号を読み続ける。固定部材107とナノポアデバイス101が接触した位置からイオン電流値がI0になる位置までの変位1530は、生体分子108の長さを反映している。
<実施例6>
次に、生体分子測定装置を並列化した実施例について説明する。上記で説明した生体分子測定装置は、並列化したナノポアデバイスとの親和性が良い。並列化により同種の生体分子を同時に測定可能となるため、スループットの向上を測ることが可能となる。ここでは、並列化に対する3種類の例を示す。
図80及び図81は、並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第1例を示す断面模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。図80に示すように、この例では、複数のナノポアデバイス1604が横方向に隣接して配置され、複数のナノポアデバイス1604の上部に、共通の1つの駆動機構105と固定部材107が配置されている。固定部材107は、複数のナノポアデバイス1604の全体を覆うだけの面積を有する。並列化された複数のナノポアデバイス1604はそれぞれ独立した液槽を備え、各ナノポアデバイス1604の液槽にはアレイ電極1608の一つが配置され、アレイ電極1608はそれぞれ増幅器に接続されている。並列化された複数のナノポアデバイス1604の上部には1つの液槽が共通に設けられ、その液槽にはアレイ電極1608に対して共通の電極1609が配置されている。並列化されたナノポアデバイス1604の側方には、複数のナノポアデバイス1604に共通の空間形成部材1610が設けられている。個々のナノポアデバイス1604が備える液槽は、そのナノポアデバイス1604に設けられたそれぞれのナノポア112を介して上部の液槽に連通している。
固定部材107の下面には複数の生体分子108が結合している。図81に示すように、駆動機構105をz軸下方に降下させると、固定部材107上の生体分子108が、各ナノポアデバイス1604に設けられたナノポア112中を通過する。本形態により複数のナノポア112を用いて複数の生体分子の計測が同時並行にて可能となるため、計測スループットが上がる。
図82及び図83は、並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第2例を示す断面模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。図82に示すように、この例では、複数の並べられたナノポアデバイス1604の上部に、一つの駆動機構105が配置されている。ナノポアデバイス1604にはアレイ電極1608が接続している。複数のナノポアデバイス1604の上部には1つの液槽が共通に設けられ、各アレイ電極1608に対して共通電極1609が配置されている。並列化されたナノポアデバイス1604の側方には、複数のナノポアデバイス1604に共通の空間形成部材1610が設けられている。駆動機構105には、複数の固定部材が接続されており、各々別種の生体分子が固定されている。これにより、同時に異なる生体分子の特性解析が実現可能となる。
図示した例では、駆動機構105には、第1の固定部材107と第2の固定部材1605の2つの生体分子固定部材が接続されている。第1の固定部材107には第1の生体分子108が結合され、第2の固定部材1605には第2の生体分子1606が結合されている。本形態により、一種類のサンプルにつき複数のナノポア112を用いることが可能のみならず、複数種類のサンプル(生体分子)を同時に計測することが可能となり、計測スループットが上がる。
図84及び図85は、並列化したナノポアデバイスを有する生体分子測定装置の第3例を示す断面模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。この例では、複数の並べられたナノポアデバイス1604の上部に、複数の駆動機構が配置されている。各々の駆動機構にはそれぞれ固定部材が接続されており、それぞれの固定部材には別種の生体分子が固定されている。空間形成部材も固定部材ごとに設けることが可能である。
図示した例では、複数のナノポアデバイス1604の上方に、第1の駆動機構105及び第2の駆動機構1607が配置されている。第1の駆動機構105には第1の固定部材107が接続されており、第2の駆動機構1607には第2の固定部材1605が接続されている。また、第1の固定部材107に第1の生体分子108が結合され、第2の固定部材1605に第2の生体分子1606が結合されている。第1の固定部材107に対して第1の空間形成部材1611が設けられ、第2の固定部材1605に対して第2の空間形成部材1612が設けられている。第1の空間形成部材1611と第2の空間形成部材1612とは膜厚が異なる。これにより長さの異なる生体分子であっても、独立の高さ調整が可能となる。第1及び第2の空間形成部材1611、1612にはスリット等が形成されている。第1及び第2の固定部材107、1605が下降し、第1及び第2の空間形成部材1611、1612に接触した際に、ナノポア112の上部を満たしている溶液がサンプル毎に独立にならないような構成となっている。これにより、複数のナノポア112の上部に配置する電極は、共通電極1609のみでよい。
いずれの例においても、ナノポアの個数aと固定部材上の生体分子の数bの大小関係はa<bとなっており、生体分子を密に固定部材上に結合することによって、固定部材をナノポアデバイスに向かって垂直に降下させた際に、必ずナノポア内に生体分子が導入される。
<実施例7>
生体分子を固定部材に固定するための他の手段として磁気ビーズを用いた実施例を示す。ここでは、生体分子測定装置として図86〜図88に示した装置を用いる例によって説明する。ただし、固定部材は磁石材料によって構成する。
図86〜図88は、磁気ビーズを用いて生体分子を固定部材に固定し、測定する手順を説明する断面模式図である。説明を簡単にするために、溝115の図示を省略している。生体分子は予め磁気ビーズに固定化したものを用意する。
第1の工程では、図86に示すように、並列化したナノポアデバイス1604に配置されたAg/AgCl電極1608と共通電極1609との間に電圧を印加して、各ナノポアの周囲の電解質溶液中に電場を生成し、磁気ビーズ3403に固定された生体分子3404を電気泳動により泳動させ、並列化されたナノポアデバイス1604のナノポアに生体分子を導入する。ここで、各ナノポア由来のイオン電流をモニタし、イオン電流の変化率から、ナノポアに生体分子が入り込んでいる有効なナノポアデバイスを確認できる。
第2の工程では、図87に示すように、第1の工程におけるナノポアを介した電圧印加を継続しつつ、駆動機構105によって固定部材107を矢印で示すようにナノポアデバイス1604に向けて駆動し、磁力によって磁気ビーズ3403を固定部材107に引き付けて固定させる。
第3の工程では、図88の矢印に示すように、駆動機構105によって固定部材107を、ナノポアデバイス1604から離れる方向に、制御された速度で駆動し、ナノポアの中を移動する生体分子に起因して変化するイオン電流を電流計109で検出し、PC110に記録する。圧電素子からなる駆動機構105は、任意の速度で固定部材107を駆動することができ、特にDNAの配列を読む場合には、磁気ビーズに固定化されたDNAを3.4nm/ms以下の速度でナノポア内を移動させることにより高精度な読み取りが可能となる。
本実施例によると、ナノポアと生体分子の初期の位置合わせが不要である。また、ナノポア近傍に生成した電場内に拡散させてナノポア内に生体分子を導入することが可能であるため、並列化したナノポア内のうち生体分子が通過しないナノポアが存在する確率を低減することができる。
<実施例8>
図89は、駆動機構による固定部材の駆動に伴う封鎖電流解消の様子を示す図である。図1に示した生体分子測定装置を用い、APTES/グルタルアルデヒド修飾した表面に鎖長5kのss−poly(dA)を固定した固定部材107をナノポアデバイス101のナノポア112近傍まで近づけた。その結果、図89(a)に示すように、封鎖信号が確認され、固定部材107をナノポアデバイス101から離すと、封鎖信号が解消した。図89(b)に、図89(a)と同一時間での固定部材107の軌跡を示す。カウンタ変位が増えるにつれ、ナノポアデバイス101と固定部材107は近接する。イオン電流の減少を確認してから約1秒後に、駆動機構105による固定部材107の駆動を停止した。約10秒後に、ナノポアデバイス101と固定部材107との間の距離を離し始め、再び、イオン電流が増大した時点で(30秒経過後に)再び駆動機構105による駆動を停止させた。DNAを固定した固定部材107をナノポア112に近づけるとイオン電流が減少し、ナノポア112から遠ざけることで元の電流値に戻った。これは、駆動機構105による固定部材107の駆動により、DNAのナノポア112への導入、引き抜きが生じたことを示している。
固定部材107をナノポアデバイス101から離すために駆動機構105を駆動し始めた時間から、封鎖信号が解消された時間まで(DNA駆動時間)を、図89(b)に示すようにtoutと定義する。一方、駆動機構105の設定速度に応じたカウンタ速度との関係から固定部材107の移動速度を求めた。各固定部材107の移動速度に対して取得されたDNA駆動時間(tout)の関係を図90に示す。図90中のプロットは実験値である。ここで、各計測における、DNA駆動距離すなわちDNAのナノポア112内に導入される最大長は、DNAによりナノポア112が封鎖されてから固定部材107の駆動が止まった位置で決まる。駆動機構105による固定部材107の駆動は、ナノポア112にDNAに入った事を示す封鎖信号を目視で確認し、手動で止めているため、実際にDNAがナノポア112に入ってから固定部材107の駆動が止まるまで、最短約一秒程度かかっていると考えられる。従って、最短でも60−100nm程度のDNAが必ずナノポア112に入ることになる。
図90において、実線は固定したDNAの長さから求められる最大DNA駆動時間の計算値である。また、破線は60nmのDNAが入った際にかかる最小DNA駆動時間の計算値である。実験的に計測されたDNA駆動時間は、実線から破線までの範囲内に入っていることから、取得された封鎖信号は固定部材上のDNA由来のものであることを示し、実測値は妥当であると考えられる。また、実測されたDNA駆動時間は、固定部材107の移動速度が遅くなるほど、DNA駆動時間が長くなる方向に分布している。これは、固定部材107上のDNAが駆動機構105の駆動速度に依存してナノポア112内を搬送されていることを示していると考えられる。
図91は、dA50dC50のポリマが繰り返し伸張した分子((dA50dC50)m)を同様に固定部材に結合し計測した結果を示す図である。固定部材をナノポアデバイスに近接させると、図89で取得したような封鎖信号を確認した。封鎖後の電流を解析すると、二準位の信号を得た。このように、生体分子を固定部材に結合させ、分子通過速度を下げることによって、分子種に応じた封鎖信号強度が異なる様子を計測することが可能となった。
<実施例9>
溶液抵抗の低減を実現するその他の手法として、溝構造を形成する他に、固定部材の材料として、ポーラスシリカを用いてもよい。生体分子の固定部材が、ポーラスシリカで形成されるか、又は、固定部材における少なくとも一部がポーラスシリカで構成されてもよい。例えば、固定部材におけるナノポアデバイス(生体分子計測デバイス)に接近する表面がポーラスシリカで構成されてもよい。この構成において、ポーラスシリカの少なくとも最表面(ナノポアデバイスに対向する面)に計測対象である生体分子が固定される。
ポーラスシリカは、表面及び内部に細孔を有する。例えば、固定部材表面にポーラスシリカを設けることにより、固定部材がナノポアデバイスに接近した際、細孔内を溶液が通過することが可能となる。これにより、固定部材がナノポアデバイスに接近時に発生する通過抵抗の上昇を抑制することが可能となる。
図92は、一部がポーラスシリカとなった生体分子固定部材を形成するための手段を示す。固定部材のシリコン基板107の表面に、シリカ前駆体と界面活性剤を混合した塗布液3501を塗布する。このとき、塗布液内にはミセル集合体が形成される。その後、焼成を行うことで、塗布液中のミセル集合体3502が取り除かれ、多孔質シリカ膜3503が形成される。3504は、ミセル集合体3502が取り除かれ後に形成された細孔を示す。
ここで、ミセル寸法及び密度によって通過抵抗の抑制の度合が決まる。界面活性剤はカチオン性界面活性剤であり、炭素数16以上の疎水基、あるいはベンジル基、フェニル基のような疎水基を有することがより好ましい。疎水基の鎖長に応じて、ミセル寸法が決まり、焼結後に生成する平均細孔径が、3nm以上5nm未満の範囲で変化する。例えば、炭素鎖C18の界面活性剤を用いると、平均細孔径は3.5nmを形成することが可能となる。細孔の密度は、すなわちミセルの密度と相関するため界面活性剤の量比で調整することが出来る。細孔容積は0.1〜2.0cm/gの範囲で変化し、最小でシリカ体積の20%以上で制御可能である。接近による抵抗値の上昇を防ぐため、100倍程度の構造の密度低下が必要になる。そのため、体積比率で99%以上の密度低下を実現する必要があり、本構造の制御可能範囲内である。
抵抗値の上昇を防ぐためには、この細孔の内にも、水溶液が浸透する必要がある。この事項については、ポーラスシリカ表面を親水化することにより解消することが可能である。プラズマ処理による親水化の他、アミノ基修飾されたシロキサン結合を有する有機ケイ素化合物によって親水状態を保持することが可能である。シロキサン結合を有する有機ケイ素化合物はポーラス構造の骨格の補強のためにも有用である。
上記ポーラスシリカは、固体シリコン材料であるため、プラズマ照射によるシリコン末端に水酸基を立て、APTESを用いて末端にアミノ基修飾することが可能であり、グルタルアルデヒドを始めとしたカルボキシル末端を有する架橋剤及びアミノ基末端処理した生体分子の固定が可能である。
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
上記の測定部及び制御ユニットの各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。また、上記の測定部及び制御ユニットの各構成、機能等は、それらの一部や全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。
100 生体分子特性解析装置
101 ナノポアデバイス
102 電解質溶液
103a、103b Ag/AgCl電極
104 電源
105 駆動機構
106 駆動機構制御ユニット
107 生体分子固定部材
108 生体分子
109 電流計
110 PC
111 接続部材
112 ナノポア
113 薄膜
114 空間形成部材
115 溝
115a 溝の凸部
115b 溝の凹部
1501 レーザ照射ユニット
1503 ミラー
1504 相対位置モニタ
1505 制御ユニット
1506、1511 回転機構
1507 調整機構
3501 シリカ前駆体と界面活性剤を混合した塗布液
3502 ミセル集合体
3503 多孔質シリカ膜
3504 細孔

Claims (14)

  1. 電解質溶液が満たされる第1の液槽と、
    電解質溶液が満たされる第2の液槽と、
    ナノポアを有する薄膜を支持し、前記ナノポアを介して前記第1の液槽と前記第2の液槽を連通するように前記第1の液槽と前記第2の液槽の間に設けられたナノポアデバイスと、
    前記第1の液槽に配置され、前記薄膜より大きなサイズを有し、生体分子が固定される固定部材と、
    前記固定部材を前記薄膜に対して近づく方向あるいは遠ざかる方向に駆動する駆動機構と、
    前記第1の液槽に設けられた第1の電極と、
    前記第2の液槽に設けられた第2の電極と、
    前記固定部材と前記薄膜との接触を防止するストップ機構と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加する電源と、
    前記第1の電極と前記第2の電極の間に流れるイオン電流を計測する測定部とを備え、
    前記ナノポアデバイス及び前記固定部材の少なくとも一方は、前記ナノポアデバイス及び前記固定部材が対向する領域に溝構造を備えており、
    前記溝構造は、格子状の凹部又は凹部及び貫通孔と、凸部と、を有し、
    前記測定部は、前記固定部材に固定された前記生体分子が前記ナノポアを通過するとき計測されるイオン電流により当該生体分子の配列情報を取得することを特徴とする生体分子測定装置。
  2. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記溝構造が、前記ナノポアデバイスと前記固定部材とが対向している範囲で連続的に形成されていることを特徴とする生体分子測定装置。
  3. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記ストップ機構は、前記ナノポアデバイス上に配置され、前記固定部材と前記薄膜との間に空間を形成する空間形成部材であり、
    前記溝構造が、前記空間形成部材に形成されていることを特徴とする生体分子測定装置。
  4. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記溝構造の断面は、矩形、三角形、半月形、又は台形であることを特徴とする生体分子測定装置。
  5. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記生体分子は、前記溝構造の前記凸部に固定されていることを特徴とする生体分子測定装置。
  6. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記溝構造の前記凸部及び前記凹部は、同一材料で形成されていることを特徴とする生体分子測定装置。
  7. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記溝構造の前記凸部及び前記凹部は、異なる材料で形成されていることを特徴とする生体分子測定装置。
  8. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記固定部材には、複数の異なるマーカを介して複数種の生体分子が固定されていることを特徴とする生体分子測定装置。
  9. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記溝構造の掘り込み深さは、5μm以上であることを特徴とする生体分子測定装置。
  10. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記溝構造の前記凸部の幅は、前記固定部材に固定される前記生体分子のピッチ以上であることを特徴とする生体分子測定装置。
  11. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記駆動機構が、前記固定部材を前記ナノポアデバイスに接触させる機能を備えており、前記溝構造は、前記ナノポアデバイスと前記固定部材とが対向している範囲の全域で連続して形成されていることを特徴とする生体分子測定装置。
  12. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記固定部材の移動又は回転を調節する調節機構と、
    前記溝構造にレーザを照射するレーザ照射機構と、
    前記調節機構を制御する制御ユニットとを備え、
    前記制御ユニットは、前記レーザの照射によって得られた画像を用いて前記調節機構を制御することを特徴とする生体分子測定装置。
  13. 請求項1に記載の生体分子測定装置において、
    前記固定部材の移動又は回転を調節する調節機構と、
    前記調節機構を制御する制御ユニットとを備え、
    前記制御ユニットは、前記ナノポアデバイスの周辺の溶液抵抗をモニタすることにより、前記調節機構を制御することを特徴とする生体分子測定装置。
  14. 電解質溶液が満たされる第1の液槽と、
    電解質溶液が満たされる第2の液槽と、
    ナノポアを有する薄膜を支持し、前記ナノポアを介して前記第1の液槽と前記第2の液槽を連通するように前記第1の液槽と前記第2の液槽の間に設けられたナノポアデバイスと、
    前記第1の液槽に設けられた第1の電極と、
    前記第2の液槽に設けられた第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加する電源と、
    前記第1の電極と前記第2の電極の間に流れるイオン電流を計測する測定部とを備え、
    前記第1の液槽は、前記ナノポアの近傍の領域に、平面視におけるサイズが前記薄膜の平面視におけるサイズより大きい、ナノサイズ又はマイクロサイズの流路を備え、
    前記ナノポアデバイスは、前記第1の液槽において前記薄膜より外側の周囲を土手のように囲んで空間を形成するための空間形成部材を有し、前記空間形成部材は、前記ナノサイズ又はマイクロサイズの流路の範囲内で、かつ前記土手の上端に相当する領域に溝構造を備え、
    前記溝構造は、格子状の凹部又は凹部及び貫通孔と、凸部と、を有し、
    前記測定部は、生体分子が前記ナノポアを通過するとき計測されるイオン電流により当該生体分子の配列情報を取得することを特徴とする生体分子測定装置。
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