JP2006153733A - リポソームの固定化方法、リポソームマイクロアレイチップおよびその製造方法 - Google Patents

リポソームの固定化方法、リポソームマイクロアレイチップおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
溶液中で観察されるリポソームの形態を変更することなく、個々のリポソームを基板上に所定の配列パターンで固定化する方法を提供する。
【解決手段】
基板上に絶縁性レジスト膜を形成し、このレジスト膜に電子ビーム照射により表面イオン化した配列パターンを形成し、この表面イオン化した配列パターンに両性イオン性リポソームを静電相互作用により結合させ、かつ、個々のリポソーム同士は静電反発により、孤立状態に保たれ、膜融合、破壊、凝集体形成が防止されている。
【選択図】 図3

Description

本発明は、溶液中で観察されるリポソームの形態を変更することなく、個々のリポソームを基板上に固定化する方法を提供する。さらに、この方法は、任意の配列でリポソームを基板上に固定化する方法に向けられる。
また、本発明は、リポソームのマイクロアレイを有するバイオチップおよびその製造方法ならびにそのバイオチップを用いたバイオセンサーに関する。
近年、新薬開発プロセス、医療診断等などの分野において、バイオチップが注目され、研究開発が盛んに進められている。
バイオチップとは、固体表面上(固相化担体としては、シリコン基板、ガラス基板、高分子、金基板など)に、プローブ物質として、DNAのごとき核酸、酵素や抗体のごときタンパク質、ペプチド等のバイオ分子、あるいは細胞等を固定化し、固定化されたバイオ分子からなるプローブ物質に特定のターゲット物質が結合したときに生じる特異的な反応を検出するものである。特に、微量のサンプルを用いて大量にハイスループットな検出および解析ができるところから、大量かつ同時並行的な処理を要求されるポストゲノム時代のバイオ分子の機能解析技術にはバイオチップ関連技術が必須となっている。
バイオチップの代表例として、基板上にDNAを高密度に固定化し、ハイブリダイゼーションにより相補的な配列の存在を検出するDNAチップ(DNAマイクロアレイ)や、タンパク質を固定化し相互作用するタンパク質を検出するタンパク質チップ(プロテインチップ)などがある。
また、微細加工技術を利用してシリコン、ガラス等の基板表面上に流路、回路を成形し、微小空間上で反応、分離、検出等を行う装置、器具(ラボ・オン・チップ、μTAS(micro-total analysis system)、バイオMEMS(micro-electro-mechanical systems)等)が実用化され、それらをバイオチップと称することもある。
従来、微小なチップ上にDNAを配列させ、固定化するマイクロアレイ技術では、まず、ピン(特許文献1)、インクジェット(特許文献2および3)、フォトリソグラフィー法で多種類のプローブ一本鎖DNAをガラス基板上に高密度で固定化し(DNAアレイの作製);蛍光標識化ターゲット一本鎖DNAをDNAアレイ上でハイブリダイゼーションさせ;次いで、DNAアレイを洗浄・乾燥させている。その後、基板上に結合した蛍光標識化ターゲットDNAを蛍光顕微鏡や蛍光スキャナーで画像化し解析することによってプローブとターゲットとの相互作用を確認する。
リポソームは、リン脂質の二重膜からなる約50nmから数μmサイズのベシクル構造体であり、様々な物質を内包することができる内水相を有する微小カプセルである(図1)。また、二重膜自体を様々な物質で修飾することもできる。
したがって、内包物質または修飾物質を選択することによって、様々な機能を持つリポソームを作製することが可能であり、バイオテクノロジーのみならず医学、薬学、生理学など多くの分野におけるアプリケーションの開発に重要な意味をもつ。
リポソームの動力学や構造については、光散乱測定、分光測定、蛍光顕微鏡などの手法を用いて溶液の形態で研究が行われてきた。しかしながら、バイオインフォマティクスおよびバイオセンサーのアプリケーションにおいて、生体機能模倣型のリポソームを様々な基板上に固定することが行われているため、基板上に固定化された状態のリポソームを対象とする研究が必要となった。
従来のリポソーム固定化方法は基板上に自己集合膜を作製し、共有結合力による化学結合、アビジン−ビオチン間の特異的結合、膜にチオール基を修飾することにより直接金と結合する金属結合および単純な物理的吸着を利用した方法などが報告されている。
しかし、これらの方法でリポソームを基板上に固定化するためには、多段階の過程や化学物質を用いることによりリポソーム膜の融合、破壊やリポソーム同士の凝集が生じ、均一かつ規則的にリポソームが配列された表面状態を得ることが難しかった(非特許文献1〜3)。また、バイオインフォマティクスで要求される一分子レベルでの生体膜情報を獲得するのはきわめて困難である。
リポソームチップの場合、基本的にはDNAチップのプローブをDNAからリポソームに換えたものと考えてよいが、リポソーム構造は流動的であるため、固相担体上にリポソームを固定化するとき、膜融合や構造破壊が発生しないようにする必要がある、また、個々のリポソーム同士の相互作用により、凝集が起こる可能性もある。したがって、従来のDNAチップのDNAをリポソームに置換するだけでは、リポソームチップを作製することはできない。
特開2003−279576号公報 特開2001−186880号公報 特開2001−343386号公報 W. H. Binder, et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 5802. J. T. Groves, et al., Science 1997, 275, 651. J. T. Groves, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94, 13390. B. Heurtault et al., Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 2003, 30, 225.
本発明の目的は、溶液中で観察されるリポソームの形態を変更することなく、すなわち、リポソームの膜融合、破壊、凝集などの発生を除外しつつ、個々のリポソームを基板上に固定化する方法を提供することにある。さらに、この方法は、任意の特定配列を有するマイクロアレイ状にリポソームを基板上に固定化する方法に向けられる。
また、医療現場での臨床検査としてポイント・オブ・ケア検査(Point-Of-Care Testing; POCT)の重要性が高まっており、POCT装置の1つとして、リポソームを用いた携帯型バイオセンサーのような小型化された自動分析システムが有力になると考えられる。
したがって、本発明の別の目的は、アドレス化されたリポソームのマイクロアレイを有するバイオチップおよびその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明は、そのようなリポソームマイクロアレイを有するバイオチップを用いて、簡便性、携帯性、開発コストの面で優れたバイオセンサーを提供することを目的とする。
本発明の方法において、両性イオン性リポソームを表面イオン化した絶縁性レジスト膜に静電相互作用を介して固定化する。すなわち、リポソームを結合するための化学物質などを介することなく、簡便にリポソームを固定化する。
リポソームの外層および内層は親水性であるため、固相担体表面も親水性であると、リポソームが固相担体表面に接触するとリポソームのベシクル構造が破壊され脂質二重膜の形態で結合してしまう。例えば、溶液中で100nmのラージ単一層ベシクル(large unilameller vesicles: LUV)が通常のマイカ基板上では約2nmの高さであることが確認されている(非特許文献4)。この高さでは、内水相が維持されているとは考え難い。しかしながら、本発明では、リポソームを疎水性のレジスト膜上に固定化するため、ベシクル構造が破壊されることなく、リポソームはレジスト膜表面に結合する。
また、本発明において、両性イオン性リポソーム全体の極性と固定化しようとするレジスト膜表面の極性とを同一にする。これによって、リポソームが急激にレジスト膜に引き寄せられて、その構造が破壊されることがない。
しかしながら、リポソームがレジスト膜に接近すれば、リポソームを構成する両性イオン性リン脂質のうちレジスト膜表面の電荷と反対電荷の部位が結合部位に引き寄せられて、リポソームはレジスト膜表面上に固定化される。さらに、結合部位以外はレジスト膜表面の電荷と同一電荷のリン脂質が過多となるため、個々のリポソーム同士は静電反発により凝集体の形成が妨げられ、レジスト膜表面に孤立して固定化される。
本発明は、第1の局面において、基板上にリポソームを固定化する方法であって、
(1)絶縁性基板上に形成された導電性薄膜上、または導電性基板上に形成された絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化する工程;および
(2)表面イオン化された領域に、両性イオン性リポソームの溶液を接触させることによって、個々のリポソームを表面イオン化された領域に静電相互作用を介して固定化する工程を含み、
ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含むことを特徴とする方法を提供する。
すなわち、本発明によれば、溶液中で観察されるリポソームの形態を保ったままリポソームを固定化することが可能なので、例えば、AFMのごとき基板上に固定して対象物を観察する手法を用いることができる。すなわち、リポソームを溶液中のみならず基板上でも観察することができるので、より詳細にリポソームの構造や機能に関する知見を得ることができる。
特に、本発明によるリポソームの固定化方法は、絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化する工程の前、最中または後、絶縁性レジスト膜の任意領域を除去して、導電性薄膜の表面または導電性基板の表面に達する1または複数の孔を形成することによって、絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域に表面イオン化された所定の配列パターンを形成することを特徴とするので、所定の配列パターンを有するリポソームのマイクロアレイを作製することができる。かくして、本発明を応用してリポソームマイクロアレイチップを提供することができる。
また、本発明の方法は、イオン性リン脂質が陰イオン性リン脂質であって、かつ、絶縁性レジスト膜の表面上の任意の領域を表面イオン化する工程において、電子ビーム照射によって、前記任意領域を陰イオン化する。
本発明は、第2の局面において、複数のリポソームが配列して固定化されているマイクロアレイチップであって、少なくとも、
絶縁性基板;
前記絶縁性基板上に形成された1または複数の電極配線;
前記1または複数の電極配線の各々の一領域上に形成された絶縁性レジスト膜;および
両性イオン性リポソームを含み、
ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含み、
ここに、前記絶縁性レジスト膜の表面には、電極配線の表面に達する1または複数の孔を有する表面イオン化された所定の配列パターンが形成され、
ここに、複数のリポソームの各々が所定の配列パターン上にのみ静電相互作用を介して固定化されているマイクロアレイチップを提供する。
また、本発明のマイクロアレイチップは、イオン性リン脂質が陰イオン性リン脂質であって、かつ、絶縁性レジスト膜の表面上の所定の配列パターンが陰イオン化されていることを特徴とする。
本発明は、第3の局面において、複数のリポソームが配列して固定化されているマイクロアレイチップの製造方法であって、
(1)絶縁性基板上に1または複数の電極配線を形成する工程;
(2)前記1または複数の電極配線の各々の一領域上に絶縁性レジスト膜を形成する工程;
(3)(i)絶縁性レジスト膜の任意領域を除去して、電極配線の表面に達する1または複数の孔を形成し、次いで、前記1または複数の孔が形成された領域を含む絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化するか;
(ii)絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化し、次いで、表面イオン化した領域を含む任意領域を除去して、電極配線の表面に達する1または複数の孔を形成するか;または
(iii)絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化しつつ、任意領域を除去して、電極配線の表面に達する1または複数の孔を形成するか;のいずれかの工程によって、表面イオン化された所定の配列パターンを形成する工程;および
(4)表面イオン化された所定の配列パターンに、両性イオン性リポソームの溶液を接触させることによって、個々のリポソームを表面イオン化された所定の配列パターン上に静電相互作用を介して固定化する工程を含み、
ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含むことを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法も提供する。
また、本発明のマイクロアレイチップの製造方法は、イオン性リン脂質が陰イオン性リン脂質であって、かつ、絶縁性レジスト膜の表面上の任意の領域を表面イオン化する工程において、電子ビーム照射によって、前記任意領域を陰イオン化することを特徴とする。
これにより、本発明のリポソームのマイクロアレイチップを製造することができる。
さらに、本発明は、第4の局面において、少なくとも、作用電極、対極および参照電極を含むバイオセンサーであって、
ここに、作用電極は、少なくとも、
絶縁性基板;
前記絶縁性基板上に形成された1または複数の電極配線;
前記1または複数の電極配線の各々の一領域上に形成された絶縁性レジスト膜;および
両性イオン性リポソームを含み、
ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含み、
ここに、前記絶縁性レジスト膜の表面には、電極配線の表面に達する1または複数の孔を有する表面イオン化された所定の配列パターンが形成され、
ここに、複数のリポソームの各々が所定の配列パターン上にのみ静電相互作用を介して固定化されているマイクロアレイチップであって、ここに、各リポソームの表面は、1または複数のプローブタンパク質で修飾され;
処理前に、マイクロアレイチップの第1の電気的信号を測定し;
マイクロアレイチップを試験溶液中で処理した後、マイクロアレイチップの第2の電気的信号を測定し;次いで、
第1の電気的信号と第2の電気的信号との強度差から、試験溶液中に存在する、1または複数のプローブタンパク質と特異的結合する非標識ターゲット分子を検出することを特徴とするバイオセンサーを提供する。
ここで、「処理」とは、プローブタンパク質と非標識ターゲット分子とを特異的結合させるために必要なプロセスをいう。したがって、処理前、リポソームマイクロアレイチップにおいては、1または複数のプローブタンパク質には非標識ターゲット分子が結合していない。また、試験溶液中に非標識ターゲット分子が存在していれば、この処理によって、1または複数のプローブタンパク質に非標識ターゲット分子が特異的結合する。本発明のマイクロアレイチップに上記の処理を行う前後で、電気的信号を測定し、電気的信号に変化があれば、試験溶液中に、非標識ターゲット分子が存在していたことを確認することができる。
本発明において、特に、電気的信号が酸化還元電流値である。
すなわち、本発明によれば、非標識ターゲット分子のプローブタンパク質への特異的結合の有無をリポソームアレイ上の酸化還元状態の変化から検出する。したがって、ターゲット分子に蛍光物質等を標識することなく、酸化還元電流値を測定するだけで特異的結合を検出できるので、迅速かつ簡便な測定が可能となる。
プローブタンパク質にターゲット分子が結合していない系で測定した電気的信号とプローブタンパク質にターゲット分子が結合した系で測定した電気的信号との間に統計学的に有意な変化があった場合、当該有意な変化をターゲット分子とプローブタンパク質との特異的結合に関連付けることができる。
本発明のバイオセンサーは、非標識ターゲット分子が抗原であって、1または複数のプローブタンパク質がターゲット分子に対する抗体であることを特徴とする。例えば、非標識ターゲット分子がヒト血清アルブミン(HSA)であって、1または複数のプローブタンパク質が抗HSA抗体である。
本発明のバイオセンサーを用いて電気的信号を測定するとき、好ましい態様において、その表面にAu粒子が付着している非標識ターゲット分子を用いる。
これにより、ターゲット分子が絶縁体であるタンパク質であっても、その表面が導電性になるため、特異的結合に起因する電気的信号の変化を検出することが容易になる。
本発明は、溶液中で観察されるリポソームの形態を変更することなく、任意の特定配列を持つマイクロアレイ状にリポソームを基板上に固定化することを可能とする。すなわち、この方法によれば、リポソームの構造を固相担体上で観察することが可能となり、より詳細にリポソームの構造や機能を調査することができる。
さらに、本発明によるリポソームの固定化方法を用いれば、ナノレベルでリポソームを配列固定化することができるので、膜界面で生じる生体膜の巧みな分子情報の動的な変化を一分子レベルで観察することでき、さらに、バイオセンサー、バイオナノデバイス分野への応用にも有効である。例えば、リポソーム上へ抗体などを修飾することにより疾患、障害などを迅速かつ高感度で早期診断する免疫センサーを作製することができる。また、アルツハイマー病、透析症、狂牛病など、いわゆるコンホメーショナル病(Conformational Diseases)と呼ばれる疾患の因子である生体内の特定タンパク質の構造異常変換(ミスフォールディング)などをセンシングするタンパク質異常検出センサーへ応用することも可能である。
本発明において、表面イオン化された絶縁性レジスト膜の表面に、両性イオン性リポソームを固定化する。
本発明において、「表面イオン化」とは、例えば、電子ビーム照射やイオンビーム照射によって、固相担体表面が負に帯電した状態(陰イオン化された状態)または正に帯電した状態(陽イオン化された状態)にすることを意味する。
例えば、固相担体表面に電子ビームを照射して電子をドープするか、または、陰イオンビーム照射によって陰イオンをドープすることによって、表面を陰イオン化する。また、正イオンビーム照射によって陽イオンをドープすることによって、表面を陽イオン化する。
本発明で用いるレジストは絶縁性であるため、ビームの照射領域に電子またはイオンが蓄積される。
本発明において用いるリポソームは両性イオン性であるが、リポソーム全体としての電荷(正味の表面電荷)は、固相担体表面の極性と同一になるように調整する。
例えば、陰イオン化された固相担体表面にリポソームを固定化する場合、リポソームの正味の表面電荷を負にする。これによって、リポソームが急激に陰イオン化された基板表面に吸着して構造が破壊されることや、リポソーム同士が結合して凝集体を形成することがない。すなわち、リポソーム同士は静電反発により凝集せず、個々のリポソームが基板表面に接近したときに、局所的な静電引力によって、その構造を保ったまま、固定化されることになる。
具体的には、本発明のリポソームは、両性イオン性リン脂質1モルに対して、陰イオン性または陽イオン性のリン脂質を0.3〜1モル含有する。
イオン性のリン脂質が0.3モル以上あれば、リポソーム同士の静電反発が充分であり、リポソーム構造を破壊することなく、孤立した状態で、担体上に固定化することができる。また、1モル以下であれば、リポソームと表面イオン化した担体表面との静電引力により、固定化が可能である。
また、本発明のリポソームは、両性イオン性リン脂質とイオン性リン脂質とコレステロールの全モル数中、コレステロールを2〜33モル%含有する。
コレステロールの比率がこの範囲にあれば、リン脂質がリポソーム内で移動することができる。すなわち、コレステロールのモル比率が、2%以上であればリン脂質が脂質二重膜内で局在化することなく分散し、また、33%以下であれば脂質二重膜が柔軟であり、膜内でのリン脂質の流動性が充分である。
さらに、本発明のリポソームは、ステアリン酸のごとき脂肪族カルボン酸等を添加して、リポソーム全体の極性を微調整することができる。
例えば、基板表面上のある領域が陰イオン化されていた場合、陰イオン化領域との静電相互作用により、リポソーム中の両性イオン性リン脂質は、陰イオン化領域により引き寄せられて結合部位に局在化し、その他の部位は陰イオン性リン脂質が多く存在することになる。これにより、リポソームと基板とは、両性イオン性リン脂質の正電荷部位と陰イオン化領域との間の静電引力により結合し、基板上に固定化された個々のリポソーム同士は、静電反発により膜融合、破壊、凝集体形成が妨げられる。
以下の実施例は、本発明の理解のために具体的に例示するものであり、本発明を制限するものではない。
実施例1:リポソームマイクロアレイチップの作製
本発明によるリポソームマイクロアレイチップ1の上面図を図2に示す。また、図3にリポソームアレイ領域の拡大斜視図(a)および断面図(b)を示す。
図2に示すごとく、この実施例では、ガラス基板10上に8本の電極配線11を形成し、一度に8点測定が可能なリポソームマイクロアレイチップ1を形成した。
電極配線11の一方の端部には、500μm×500μmのリポソームアレイ領域が形成され、他方の端部にはリポソームアレイ領域で検出した電気的信号を取り出すためのパッドが形成されている。
この図において、一方の端部に角形のリポソームアレイ領域が形成され、他方の端部には電気的信号を取り出すための角型パッドが形成された電極配線が示されているが、これは電極配線の一例であって、この形状に限定されるものではない。当業者であれば、バイオセンサーに搭載されるバイオチップとして使用できるいずれの形状にも変形することができ、電極配線の本数も、使用の形態に適合させて、適宜増減することができる。
電極配線11のリポソームアレイ領域上には絶縁性レジスト膜12が形成されている。このレジスト膜の一領域に複数の孔(図2bの黒色部分)が設けられ、表面イオン化された所定の配列パターンが形成されている。これらの孔は下層の電極配線の表面にまで達している。この所定の配列パターンの領域は、電子ビーム照射により陰イオン化されている。
リポソームには、両性イオン性リン脂質が含まれているので、この正電荷部位が陰イオン化された配列パターンに静電相互作用により引き寄せられて、リポソームは配列パターン上に固定化される。絶縁性レジスト膜上の電子ビーム照射領域以外には陰イオン化領域がないため、リポソームは配列パターン上にのみ存在する。
かくして、リポソームは所定の配列を有するマイクロアレイを構成する。
本発明のリポソームマイクロアレイチップの製造方法をより詳細に説明する。
A.リポソーム溶液の調製
まず、水中に1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−1−グリセロール(DMPG)およびコレステロールを10:10:1のモル比で溶解し、リン脂質溶液を調製した。
このリン脂質溶液を凍結乾燥し、リン酸バッファー(PBS、pH7.4)を添加して、溶媒を交換した。次いで、凍結−解凍サイクルを5回行って得られた溶液を、押し出し器具(LipoFast; Avestin Inc.)を用いて、繰り返し100nm−有孔ポリカーボネートフィルムを通して押し出すことによって、平均粒径が約100nmのリポソーム(LUV)の溶液を得た。リン脂質の最終濃度は約10mMであった。また、リポソームの平均粒径は動的光散乱法により測定した。
B.マイクロアレイチップの作製
マイクロアレイチップの作製行程を図4a〜4fに示した。
この実施例では、2.5cm×2.5cm角のガラス基板10(図4a)上に、まず、真空蒸着またはRFスパッタリングのごとき従来技術を用いて、10nm厚のTi薄膜11aを形成し、その上に100nm厚のAu薄膜11bを形成することによって、Au/Ti積層薄膜からなる電極配線11を形成した(図4b)。
ここでは、ガラス基板を用いたが、アルミナ基板、シリコン基板、またはシリコーン樹脂のごとき樹脂製基板等の絶縁性基板を用いることもできる。また、バイオチップ作製用の基板に用いるのでなければ、金属製の基板のごとき導電性基板を用いることもできる。この場合は、電極配線などの導電性薄膜を形成する必要はない。
Au薄膜を直接ガラス基板に形成することもできるが、Au薄膜の接着強度が弱いので、Au薄膜の剥離を防止し、バイオチップの信頼性を向上させるためにTi薄膜を用いた。Ti以外にCrを用いることもできる。
次に、スピンコーターを用いて電極配線11が形成された基板上に絶縁性レジスト(ZEP520:日本ゼオン株式会社)を塗布し、90℃にて2分間ベーキングして、レジスト膜12を形成した(図4c)。ZEP520は、クロロメタクリレートとメチルスチレンとのコポリマーであり、高解像度電子ビームリソグラフィーに通常用いられる絶縁性レジストである。
次いで、走査型電子顕微鏡(ELC-2; Elionic Co. Ltd.)を用いて75kVにて電子ビーム13aを照射し、レジスト膜12を現像することによって、レジスト膜表面上の約100μm×100μmの領域に所定の配列パターンが形成されるように複数の孔を形成し、これを200℃にて5分間ベーキングすることによって、レジスト膜12を固着させた(図4d)。この実施例では、150nm×150nmサイズの孔を250nm間隔で形成した。
引き続き、所定の配列パターン領域を約150C/cm強度の電子ビーム13bで走査して、配列パターン領域の表面に電子をドープして陰イオン化した(図4e)。電極配線は導電性であり、レジスト12は絶縁性であるため電子ビーム照射された領域の表面にのみ電子がドープされる。電子ビームの強度は、絶縁性レジスト表面を損傷することなく電子ドーピングが達成される強度であればよく、用いるレジストの材質等によって、適宜調整することができる。
ここでは、便宜上、所定の配列パターンを形成する工程(図4d)後に、表面イオン化する工程(図4e)を行う場合について説明したが、2つの工程の順番を変更することもできる。より現実的には、電子ビーム強度を自動制御することによって、配列パターン形成と表面イオン化を同時に行うことが好ましい。
C.マイクロアレイチップ上へのリポソームの固定化
前記のごとく作製したリポソーム溶液は平均粒子径が約100nmのリポソーム14を含有する。このリポソーム溶液100μLを電子ビーム照射領域に滴下し(図4f)、湿度100%の環境で室温にて1時間静置した。この基板をPBSで注意深く洗浄して、リポソームマイクロアレイチップ1を完成させた。
実施例2:リポソームマイクロアレイチップ表面のAFM像観察
実施例1においてリポソームを固定化した直後に、リポソームマイクロアレイチップの表面を原子間力顕微鏡(AFM;Dimension 3100, Digital Instruments, USA)を用いて観察した。AFM像観察は、大気中タッピングモードにて行い、走査スピードは1Hzであった。全ての観察には、共振周波数が150kHz、バネ定数が4.5N/mの通常のタッピングモードAu被覆AFMカンチレバーを使用した。また、親水性のリポソーム表面を観察するため、オクタデシルメルカプタンを用いてカンチレバー先端を疎水性処理した。
配列パターン領域のAFM像を図5に示す。この領域において、150nm×150nmサイズの孔(黒色部分)が250nm間隔で形成されている。広視野(15μm×15μm)での観察により、レジスト表面(灰色部分)上にリポソーム(白色部分)が均一に固定化されていることが分かる(図5a)。また、狭視野(5μm×5μm)での観察により、凝集したリポソームはほとんど観察されず、孤立したリポソームが配列パターン上にのみ固定化されているのが確認された(図5b)。孤立したリポソームのサイズは約130nm×130nmであって、高さは約80nmであった(図5c)。これは溶液中で動的光散乱法により測定した粒径(約100nm)と同等であった。
なお、孔の深さを考慮しなければ、レジスト表面の表面粗さは約2nmであるので、AFM観察によりリポソームのサイズを測定するのに影響はない。
以上の結果から、本発明の方法によって、溶液中で観察されるリポソームの形態を変更することなく、特定配列のマイクロアレイ状に個々のリポソームが基板に固定化されたことが示された。
比較例1:電子ビーム照射レジスト表面へのリポソーム結合のメカニズム
次に、本発明の方法によるリポソーム固定化のメカニズムを明らかにした。
この比較例では、50nm×50nmサイズの孔を500nm間隔で形成する以外は実施例1に準じて、リポソームマイクロアレイチップを作製した。
AFMにより、電子ビーム非照射領域(図6aの右側部分)と電子ビーム照射領域(図6aの左側部分)との境界領域(25μm×25μm)を観察した。また、図6aの拡大像を図6b(1μm×1μm)に示した。
図6aから分かるように、電子ビーム照射領域には、リポソームが高密度で均一に存在するが、電子ビーム非照射領域には、リポソームはほとんど存在しなかった。
電子ビーム非照射領域に存在するリポソームのサイズは、約60nm×60nmであって、高さが約30nm以下であった。一方、電子ビーム照射領域において、サイズが約150nm×150nmであって、高さが約80nmのリポソームが多数配列されているのが観察された(図6bおよびc)。
この比較例においても、実施例2と同様に、固定化されたリポソームの粒径は、溶液中で動的光散乱法により測定した粒径(約100nm)と同等であることが確認された。
電子ビーム照射により電子がドープされた表面イオン化領域にリポソームが接近すると、リポソーム構造の流動性により、両性イオン性リン脂質(POPC)の正電荷部位が負に帯電した表面イオン化領域に引き寄せられて、脂質二重膜内でPOPCが移動して陽イオンが局在化する。その結果、陽イオン局在化部位と表面イオン化領域とが静電引力によって結合する。
一方、陰イオン性リン脂質(DMPG)は、負に帯電した表面イオン化領域との静電反発により、結合部位以外の部位に移動する。その結果、基板上に固定化されたリポソーム同士は、DMPGの静電反発により凝集形成が妨げられる。
かくして、本発明の方法において、静電引力および静電反発の2つの静電相互作用によって、リポソームは基板表面に孤立した形態で固定化される。
比較例2:電子ビーム照射レジスト表面へのストレプトアビジンの結合状態の観察
本発明の両性イオン性リポソームが静電引力により電子ビーム照射領域に結合していることを、分子量約66kDaのタンパク質であるストレプトアビジンを用いて立証する。
まず、ストレプトアビジン溶液のpHを変化させて、ストレプトアビジンの表面電荷の極性を制御した。具体的には、ストレプトアビジンの等電点はおよそpH5.9であるので、pHを4.2に調整してストレプトアビジンの正味表面電荷を正にし、pHを7.2に調整してストレプトアビジンの正味表面電荷を負にした。
2種類のストレプトアビジン溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、マイクロアレイチップを作製し、これら2種類のマイクロチップの電子ビーム照射領域上のストレプトアビジンの結合状態を、実施例2と同様にしてAFMで観察した。
AFM観察によれば、正の正味表面電荷を有するストレプトアビジンは、電子ビーム照射領域上に約70nm厚で(約10分子のストレプトアビジンに相当する)結合することが確認されたが(図7aおよびb)、負の正味表面電荷を有するストレプトアビジンは、電子ビーム照射領域上への結合が確認されなかった(図8aおよびb)。
さらに、水溶液中で負に帯電するマイカ表面上で、正の正味表面電荷を有するストレプトアビジンの結合状態を観察したところ、単一分子のストレプトアビジンが結合していることが確認された(図9)。このことから、電子ビーム照射レジスト膜表面はマイカ表面よりも約10倍の電荷密度を有していると推定される。
これらの結果から、リポソームは、強い静電引力を介して電子ビーム照射レジスト表面に堅固に結合していることが間接的に立証された。
比較例3:マイカ表面および電子ビーム非照射レジスト表面へのリポソームの結合状態の観察
実施例2と同様にして、マイカ表面上と電子ビーム非照射レジスト表面上で、実施例1で調製したリポソームの状態をAFMで観察した。
表面が親水性であるマイカ上では、リポソーム構造が破壊されて、約10nm厚の脂質二重膜を形成していることが確認された(図10aおよびb)。
一方、電子ビーム非照射レジスト表面上では、非常に広い視野(50μm×50μm)で観察しても、リポソームは低密度で無秩序にしか存在していないことが確認された(図11a)。また、このレジスト膜表面上では、溶液中での粒径(約100nm)と同様のサイズのリポソームも存在するが、2〜3倍の大きさの凝集体も確認された(図11b)。
すなわち、電子ビーム非照射領域では、所定の配列でリポソームを固定化することは困難であり、リポソーム同士の凝集を防止することもできなかった。
比較例1〜3で得られた結果から、リポソームを孤立状態で基板上に配列させて堅固に固定化するためには、本発明の方法のごとく、リポソームを両性イオン性とし、基板上に形成した疎水性のレジスト膜の表面をイオン化することが必要であることが確認された。
実施例3:プローブ抗体修飾リポソームのマイクロアレイチップの作製
両性イオン性リポソーム14を表面イオン化レジスト膜の表面に固定化するまでは、実施例1と同様にして、リポソームのマイクロアレイチップを作製した(図4a〜4f)。
次に、1mMの(11−フェロセニル)ウンデシルポリオキシエチレン(Fe−PEG)15および0.1mMのビオチン化した1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(Bio−PE)16のリン酸バッファー混合溶液(pH7.4)をリポソームマイクロアレイが形成されたチップに滴下し、1時間放置してリポソームの脂質二重膜上にFe−PEG15およびBio−PE16をアンカーした。このとき、Fe−PEG15およびBio−PE16の混合溶液中のモル濃度比を適宜調整することによって、Bio−PE16が分散して適度な密度で脂質二重膜上にアンカーされるようにする。
脂質二重膜は絶縁性であるので、脂質二重膜上での現象を電気的信号として検出することが不可能である。そこで、脂質二重膜表面を導電性にする目的で、Fe−PEG15を用いる。
さらに、このビオチン修飾リポソームが形成されたチップに0.2mg/mLのストレプトアビジン17の水溶液を滴下し、湿度100%の環境で1時間静置して、Bio−PE16のビオチンとの特異的結合により、ストレプトアビジン17を結合させた。PBSで洗浄することによって、リポソームの脂質二重膜に固定化されていない未結合のストレプトアビジンを除去した。
ストレプトアビジンは、ビオチンと生物学的に最も強固で安定に結合(K=10−15M)するタンパク質であり、4分子のビオチンと結合する。
ストレプトアビジン−ビオチン間の特異的結合を利用して、ストレプトアビジンを修飾した分子と、ビオチンを修飾したもう一つの分子とを結合させる手法が一般的に用いられている。したがって、様々なタンパク質にビオチンを修飾する技術がすでに確立され、そのためのキットも市販されている。また、ビオチン修飾したDNAも商業的に入手可能である。
Bio−PE16は脂質二重膜上に分散してアンカーされ、1つのストレプトアビジン分子には、1つのビオチンしか結合していないと考えられる。
最後に、予めビオチン化したプローブ抗体18の溶液にストレプトアビジン修飾リポソームのマイクロアレイチップを浸漬することによって、ストレプトアビジン−ビオチンの特異的結合を介してプローブ抗体18をリポソーム表面に固定化した(図12)。
このプローブ抗体18は、ターゲットタンパク質19に対する抗体である。
プローブ抗体18を修飾したリポソームのマイクロアレイのAFM像(1μm×1μm)を図13に示す。このAFM像は、基板上にプローブ修飾リポソームが個別に固定化されていることを示している。
したがって、約100nmの粒径を有するリポソーム上に約5nmの粒径を有するストレプトアビジンやプローブ抗体を固定化させても、リポソームは破壊されないことが確認された。
実施例4:プローブ抗体修飾リポソームチップのHSA結合能力評価
実施例3で作製されたリポソームチップ1を作製したときと同様の条件で、水晶振動子マイクロバランス(QCM;株式会社イニシアムAFFINIX Q)測定用の27MHz水晶振動子の表面にプローブ抗体18を修飾したリポソームを固定化して、ターゲットタンパク質19(HSA)の結合能力を評価した。
具体的には、まず、ストレプトアビジン17まで結合させた段階の試料を用いて、1mg/mLのプローブ抗体18(ビオチン化ヤギ抗HSA抗体)の溶液5μLをインジェクションすると(インジェクション時刻を矢印で示す)、時間とともに発振周波数が下降し、ストレプトアビジン17にプローブ抗体18が結合したことが確認された(図14a)。さらに、プローブ抗体18が結合した試料を用いて、100μg/mLのHSA溶液5μLをインジェクションすると、発振周波数が下降し、HSAが結合したことが確認された(図14b)。
比較のため、ストレプトアビジン17が結合していない段階の試料を用いて、1mg/mLのプローブ抗体18(ビオチン化ヤギ抗HSA抗体)の溶液5μLをインジェクションすると(インジェクション時刻を矢印で示す、時間とともに発振周波数が下降し、脂質二重膜上にプローブ抗体18が結合したことが確認された(図15a)。しかしながら、この試料に、100μg/mLのHSA溶液をインジェクションしても、インジェクションショックによる発振周波数の上昇は見られたが、発振周波数が下降することはなかった。したがって、ストレプトアビジンが存在しなければ、HSAは結合しないことが確認された(図15b)。
上記の結果から、ストレプトアビジンを介して、脂質二重膜上にプローブ抗体を配列することによって、ターゲット分子である抗原と効率的に結合することが分った。
実施例5:リポソームチップの検出性能評価
実施例3で作製されたリポソームチップを用いて、バイオセンサーを構築し、ターゲットタンパク質19の検出実験を行った。
具体的には、5mMのK[Fe(CN)]および100mM KClの混合水溶液中、リポソームチップを作用電極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照電極として電気化学セルを構成して、サイクリックボルタンメトリーによって、リポソームチップ1の酸化還元電位を測定した。また、測定は25℃にて行い、電位の掃引速度は50V/秒とした。
まず、本発明のバイオセンサーの機能を確認するために、リポソームチップの製造工程の各段階および、プローブ抗体18にターゲットタンパク質19を結合させたとき、電流電位曲線を得た。
具体的には、Bio−PE16にストレプトアビジン17を結合させた状態(図中、Aで示す);ストレプトアビジン17にビオチン化プローブ抗体18を結合させた状態(図中、Bで示す);および、ビオチン化プローブ抗体18にターゲットタンパク質19(HSA)を結合させた状態(図中、Cで示す)の3つの状態において、電流電位曲線を得た(図16)。
図16に示す電流電位曲線において、ピーク電流値が酸化還元電流値を示している。
このように、プローブ抗体18にターゲットタンパク質19が結合したとき(状態Bから状態Cへの変化)に、酸化還元電流値の絶対値が減少した。
プローブ抗体を修飾したリポソームのマイクロアレイチップを有するバイオセンサーを用いて酸化還元電位を測定することによって、試料中のターゲットタンパク質の存在を確認することが可能である。
リポソームの模式図。 本発明のリポソームマイクロアレイチップの上面図。 本発明のリポソームマイクロアレイ領域の拡大斜視図(a)および断面図(b)。 本発明のリポソームマイクロアレイチップの製造工程を説明する概略図。 本発明のリポソームアレイチップのAFM像。 絶縁性レジスト膜上の電子ビーム照射領域および非照射領域のAFM像。 比較例におけるマイクロアレイ表面上のストレプトアビジンのAFM像(pH4.2)。 比較例におけるマイクロアレイ表面上のストレプトアビジンのAFM像(pH7.4)。 比較例におけるマイカ表面上のストレプトアビジンのAFM像。 比較例におけるマイカ表面上のリポソームのAFM像。 比較例における電子ビーム非照射領域域上のリポソームのAFM像。 プローブタンパク質(抗体)修飾リポソームマイクロアレイチップの模式図。 本発明のプローブタンパク質(抗体)修飾リポソームアレイチップのAFM像。 本発明のプローブタンパク質(抗体)修飾リポソームマイクロアレイチップと同様の構成で測定した水晶振動子マイクロバランスを示すグラフ。 本発明のプローブタンパク質(抗体)修飾リポソームマイクロアレイチップと異なる構成で測定した水晶振動子マイクロバランスを示すグラフ。 本発明のプローブタンパク質(抗体)修飾リポソームマイクロアレイチップおよびHSAを用いて測定した酸化還元電流電位曲線。
符号の説明
1・・・リポソームマイクロアレイチップ、
10・・・基板、
11・・・電極配線、
11a・・・第1の金属薄膜層(Ti層)、
11b・・・第2の金属薄膜層(Au層)、
12・・・絶縁性レジスト膜、
12a・・・表面イオン化領域、
13・・・電子ビーム、
14・・・リポソーム、
15・・・Fe−PEG、
16・・・Bio−PE、
17・・・ストレプトアビジン、
18・・・ビオチン化プローブ抗体、
19・・・ターゲットタンパク質。

Claims (11)

  1. 基板上にリポソームを固定化する方法であって、
    (1)絶縁性基板上に形成された導電性薄膜上、または導電性基板上に形成された絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化する工程;および
    (2)表面イオン化された領域に、両性イオン性リポソームの溶液を接触させることによって、個々のリポソームを表面イオン化された領域に静電相互作用を介して固定化する工程を含み、
    ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含むことを特徴とする方法。
  2. 絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化する工程の前、最中または後、絶縁性レジスト膜の任意領域を除去して、導電性薄膜の表面または導電性基板の表面に達する1または複数の孔を形成することによって、絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域に表面イオン化された所定の配列パターンを形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. イオン性リン脂質が陰イオン性リン脂質であって、かつ、絶縁性レジスト膜の表面上の任意の領域を表面イオン化する工程において、電子ビーム照射によって、前記任意領域を陰イオン化することを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 複数のリポソームが配列して固定化されているマイクロアレイチップであって、少なくとも、
    絶縁性基板;
    前記絶縁性基板上に形成された1または複数の電極配線;
    前記1または複数の電極配線の各々の一領域上に形成された絶縁性レジスト膜;および
    両性イオン性リポソームを含み、
    ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含み、
    ここに、前記絶縁性レジスト膜の表面には、電極配線の表面に達する1または複数の孔を有する表面イオン化された所定の配列パターンが形成され、
    ここに、複数のリポソームの各々が所定の配列パターン上にのみ静電相互作用を介して固定化されているマイクロアレイチップ。
  5. イオン性リン脂質が陰イオン性リン脂質であって、かつ、絶縁性レジスト膜の表面上の所定の配列パターンが陰イオン化されていることを特徴とする請求項4記載のマイクロアレイチップ。
  6. 複数のリポソームが配列して固定化されているマイクロアレイチップの製造方法であって、
    (1)絶縁性基板上に1または複数の電極配線を形成する工程;
    (2)前記1または複数の電極配線の各々の一領域上に絶縁性レジスト膜を形成する工程;
    (3)(i)絶縁性レジスト膜の任意領域を除去して、電極配線の表面に達する1または複数の孔を形成し、次いで、前記1または複数の孔が形成された領域を含む絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化するか;
    (ii)絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化し、次いで、表面イオン化した領域を含む任意領域を除去して、電極配線の表面に達する1または複数の孔を形成するか;または
    (iii)絶縁性レジスト膜の表面上の任意領域を表面イオン化しつつ、任意領域を除去して、電極配線の表面に達する1または複数の孔を形成するか;のいずれかの工程によって、表面イオン化された所定の配列パターンを形成する工程;および
    (4)表面イオン化された所定の配列パターンに、両性イオン性リポソームの溶液を接触させることによって、個々のリポソームを表面イオン化された所定の配列パターン上に静電相互作用を介して固定化する工程を含み、
    ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含むことを特徴とするマイクロアレイチップの製造方法。
  7. イオン性リン脂質が陰イオン性リン脂質であって、かつ、絶縁性レジスト膜の表面上の任意の領域を表面イオン化する工程において、電子ビーム照射によって、前記任意領域を陰イオン化することを特徴とする請求項6記載のマイクロチップの製造方法。
  8. 少なくとも、作用電極、対極および参照電極を含むバイオセンサーであって、
    ここに、作用電極は、少なくとも、
    絶縁性基板;
    前記絶縁性基板上に形成された1または複数の電極配線;
    前記1または複数の電極配線の各々の一領域上に形成された絶縁性レジスト膜;および
    両性イオン性リポソームを含み、
    ここに、前記両性イオン性リポソームは、その構成成分として、少なくとも、コレステロール、両性イオン性リン脂質、および陰イオン性リン脂質または陽イオン性リン脂質のいずれかのイオン性リン脂質を含み、
    ここに、前記絶縁性レジスト膜の表面には、電極配線の表面に達する1または複数の孔を有する表面イオン化された所定の配列パターンが形成され、
    ここに、複数のリポソームの各々が所定の配列パターン上にのみ静電相互作用を介して固定化されているマイクロアレイチップであって、ここに、各リポソームの表面は、1または複数のプローブタンパク質で修飾され;
    処理前に、マイクロアレイチップの第1の電気的信号を測定し;
    マイクロアレイチップを試験溶液中で処理した後、マイクロアレイチップの第2の電気的信号を測定し;次いで、
    第1の電気的信号と第2の電気的信号との強度差から、試験溶液中に存在する、1または複数のプローブタンパク質と特異的結合する非標識ターゲット分子を検出することを特徴とするバイオセンサー。
  9. 電気的信号が、酸化還元電流値である請求項8記載のバイオセンサー。
  10. 非標識ターゲット分子が抗原であって、1または複数のプローブタンパク質が前記ターゲット分子に対する抗体である請求項8記載のバイオセンサー。
  11. 非標識ターゲット分子がヒト血清アルブミン(HSA)であって、1または複数のプローブタンパク質が抗HSA抗体である請求項10記載のバイオセンサー。
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