JP6825562B2 - ポリアミド樹脂および成形品 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを40モル%以上含むジアミン成分とイソフタル酸および/またはテレフタル酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分からなる耐熱性ポリアミド樹脂が開示されている。特許文献1の実施例では、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、イソフタル酸と、テレフタル酸の重縮合物であるポリアミド樹脂が記載されている。
また、特許文献2には、ジアミン成分中にシス−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン60〜100モル%とトランス−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン40〜0モル%の混合物(モル%の合計は100モル%である)を70モル%以上含むジアミンと、ジカルボン酸成分中に炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂(A)70〜100質量%と、ポリアミド樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂(B)30〜0質量%(質量%の合計は100質量%である)からなる混合樹脂(C)100質量部に対し、無機充填物を10〜150質量部配合してなるポリアミド樹脂組成物が記載されている。ここで、特許文献2の実施例では、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとアジピン酸の重縮合物であるポリアミド樹脂が記載されている。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、高い透明性および優れた耐熱老化性を有するポリアミド樹脂を提供することを目的とする。
<1>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の、10〜90モル%がイソフタル酸に由来し、90〜10モル%が炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、かつ、テレフタル酸に由来する構成単位を実質的に含まないポリアミド樹脂。
<2>前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜70モル%がイソフタル酸に由来し、70〜30モル%が炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<1>に記載のポリアミド樹脂。
<3>炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸である、<1>または<2>に記載のポリアミド樹脂。
<4>前記ポリアミド樹脂のせん断速度122sec-1、280℃、保持時間6分における溶融粘度が、200〜1200Pa・sである、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<5>前記ポリアミド樹脂の数平均分子量が8000〜25000である、<1>〜<4>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<6>前記ポリアミド樹脂のガラス転移温度が100〜190℃である、<1>〜<5>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<7>前記ジアミン由来の構成単位を構成する1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、シス体とトランス体のモル比率(シス/トランス)が、100/0〜50/50である、<1>〜<6>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<8>非晶性である、<1>〜<7>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<9><1>〜<8>のいずれかに記載のポリアミド樹脂を含む組成物を成形してなる成形品。
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外のジアミンとしては、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が例示される。これらの他のジアミンは、1種類のみでも2種類以上であってもよい。
ポリアミド樹脂の原料ジアミンである1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、シス体とトランス体があるが、本発明において、異性体モル比(シス/トランス)は、好ましくは100/0〜50/50であり、より好ましくは90/10〜60/40であり、さらに好ましくは80/20〜70/30である。
ここでテレフタル酸に由来する構成単位を実質的に含まないとは、例えば、ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、テレフタル酸が10モル%以下であることをいい、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。下限値としては、0モル%であってもよい。
前記ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合の下限値は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましく、50モル%以上が一層好ましく、51モル%以上とすることもできる。前記イソフタル酸の割合の上限値は、80モル%以下が好ましく、75モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましく、68モル%以下が一層好ましく、65モル%以下がより一層好ましい。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂の透明性がより向上する傾向にあり好ましい。
炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数8〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましく、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸がさらに好ましく、セバシン酸が特に好ましい。炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。このような範囲とすることにより、ポリアミド樹脂の耐熱老化性がより向上する傾向にあり好ましい。
溶融粘度の測定方法は、後述する実施例で記載する方法に従う。実施例で採用する機器が、廃版等により入手困難な場合は、他の同等の性能を有する機器を用いることができる。以下、他の測定方法についても、同様である。
本発明のポリアミド樹脂は、ISO178に従った曲げ弾性率が2.0GPa以上であることが好ましく、2.2GPa以上であることがより好ましく、2.5GPa以上であることが特に好ましい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、5.0GPa以下とすることができる。
本発明のポリアミド樹脂は、ISO178に従った曲げ強度が80MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、120MPa以上であることが特に好ましい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、300MPa以下とすることができる。
他の成分としては、本発明のポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、充填剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
他のポリアミド樹脂としては、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6/66(ポリアミド6成分およびポリアミド66成分からなる共重合体)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12が例示される。これらの他のポリアミド樹脂は、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂を例示できる。これらのポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
<1,3−BAC10I−1の合成>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したセバシン酸(伊藤精油製)7000g(34.61mol)、イソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル製)5750g(34.61mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学製)3.3g(0.019mol)、酢酸ナトリウム(関東化学製)1.4g(0.018mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めた1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC、異性体モル比:シス/トランス=75/25)(三菱ガス化学製)9847g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を295℃まで昇温した。1,3−BACの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂を、「1,3−BAC10I−1」という。得られたポリアミド樹脂について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
ポリアミド樹脂の溶融粘度は、キャピログラフを用い、ダイとして直径1mm×10mm長さのものを用い、見かけのせん断速度122sec-1、測定温度280℃、保持時間6分、サンプル水分1000質量ppm以下の条件で測定した。本実施例では、キャピログラフとして、(株)東洋精機製のキャピログラフD−1を用いた。
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素気流中、室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱したのち、ただちに室温以下まで冷却し、再び室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際のガラス転移温度を測定した。本実施例では、示差走査熱量計として、(株)島津製作所製DSC−60を用いた。
また、JIS K7121に準じて、昇温過程におけるポリアミド樹脂の結晶融解エンタルピーΔHm(X)を測定した。
ポリアミド樹脂0.3gを、フェノール/エタノール= 4/1容量溶液に20〜30℃ で撹拌溶解させ、完全に溶解した後、撹拌しつつ、メタノール5mlで容器内壁を洗い流し、0.01m ol/L塩酸水溶液で中和滴定して末端アミノ基濃度〔NH2〕を求めた。また、ポリアミド樹脂0.3gを、ベンジルアルコールに窒素気流下160〜180℃で撹拌溶解させ、完全に溶解した後、窒素気流下80℃以下まで冷却し、撹拌しつつメタノール10mlで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して末端カルボキシル基濃度〔COOH〕を求めた。測定した末端アミノ基濃度〔NH2〕および末端カルボキシル基濃度〔COOH〕から、次式によって数平均分子量を求めた。
数平均分子量=2/(〔NH2〕+〔COOH〕)
〔NH2〕: 末端アミノ基濃度(当量/g)
〔COOH〕: 末端カルボキシル基濃度(当量/g)
得られたポリアミド樹脂ペレットを乾燥させ、乾燥したペレットを単軸押出機にて設定温度をTg+150℃として押出し、厚さ2mm厚のプレートを作製した。曇価測定装置を使用して透過法によりヘイズ値を測定した。本実施例では、曇価測定装置として、日本電色工業(株)製、型式:COH−300Aを用いた。
得られたポリアミド樹脂ペレットを、120℃(露点−40℃)で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(住友重機械工業(株)SE130DU−HP)にて、金型温度100℃、シリンダー温度を280℃の条件で、4mm×10mm×80mmの試験片を作製した。この試験片を熱風乾燥機(ヤマト科学(株)製、DF611)にて、内部温度120℃の条件で、試験片を加熱した。30日経過後に取出し、ISO178に準じて、オートグラフ(東洋精機(株)製、ベントグラフ)にて、23℃/50%RH環境下で曲げ強度(MPa)を測定し、初期値からの保持率(%)を求めた。
得られたポリアミド樹脂ペレットを、120℃(露点−40℃)で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(住友重機械工業(株)SE130DU−HP)にて、金型温度100℃、シリンダー温度を280℃の条件で、4mm×10mm×80mmの試験片を作製した。
ISO178に準じて、オートグラフ(東洋精機(株)製、ベントグラフ)にて、23℃/50%RH環境下で曲げ弾性率(GPa)および曲げ強度(MPa)を測定した。
<1,3−BAC10I−2の合成>
実施例1において、セバシン酸とイソフタル酸のモル比率を、36:64とし、他は同様に行って、ポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂を、「1,3−BAC10I−2」という。
<各種性能評価>
実施例1において、ポリアミド樹脂を1,3−BAC10I−2に変更し、他は同様に行った。
<1,3−BAC6Iの合成>
実施例1において、セバシン酸の代わりに等モル数のアジピン酸を使用し、他は同様に行って、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂を、「1,3−BAC6I」という。
<各種性能評価>
実施例1において、ポリアミド樹脂を1,3−BAC6Iに変更し、他は同様に行った。
<1,3−BAC10Tの合成>
実施例1において、イソフタル酸の代わりに等モル数のテレフタル酸を使用し、他は同様に行って、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂を、「1,3−BAC10T」という。
<各種性能評価>
実施例1において、ポリアミド樹脂を1,3−BAC10Tに変更し、他は同様に行った。
また、実施例1および2の樹脂について、結晶融解エンタルピーΔHmは、0J/gであった。すなわち、これらの樹脂が非晶性樹脂であることが確認された。
さらに、特開2010−285553号公報の実施例1に記載のポリアミド樹脂を再現し、上記と同様に評価したところ、ヘイズが高く透明性が低いことが分かった。
また、特開2001−115017号公報の製造例1に記載のポリアミド樹脂を再現し、上記と同様に評価したところ、耐熱老化性に劣ることが分かった。
Claims (7)
- ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、
前記ジアミン由来の構成単位の95モル%以上が、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の、51〜70モル%がイソフタル酸に由来し、49〜30モル%が炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、かつ、テレフタル酸に由来する構成単位を実質的に含まず、
非晶性である、ポリアミド樹脂。 - 炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸である、請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ポリアミド樹脂のせん断速度122sec-1、280℃、保持時間6分における溶融粘度が、200〜1200Pa・sである、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ポリアミド樹脂の数平均分子量が8000〜25000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ポリアミド樹脂のガラス転移温度が100〜190℃である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ジアミン由来の構成単位を構成する1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、シス体とトランス体のモル比率(シス/トランス)が、100/0〜50/50である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂を含む組成物を成形してなる成形品。
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