以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係るステープラについて、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの側面図であり、図2(A)乃至図2(C)は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの動作を示す側面図である。
本発明の第1の実施形態に係るステープラ100は、用紙Pをステープルで綴じる処理を行う用紙処理装置であり、ユーザの操作によって用紙Pを綴じる操作に要する荷重を低減する可変倍力機構が設けられている。
本実施形態のステープラ100は、図1に示すように、ユーザが一方の端部側を操作することで、ドライバアーム104を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム102と、ステープルを打ち出すドライバ103に力を作用させるドライバアーム104と、ステープルを折り曲げるクリンチャ105が設けられるクリンチャアーム106とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム104のクリンチャアーム106との対向面側にステープルが装填されるマガジン108が取り付けられている。
ハンドルアーム102とドライバアーム104、ハンドルアーム102とクリンチャアーム106、及びマガジン108が取り付けられたドライバアーム104とクリンチャアーム106は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム102とドライバアーム104は、第2軸部102cを連結部として連結され、ハンドルアーム102とクリンチャアーム106は、第1軸部102aを連結部として連結され、ドライバアーム104とクリンチャアーム106は、ドライバアーム104に取り付けたマガジン108の基端側に設けられたマガジン支軸108aを連結部として連結されている。
本実施形態では、ハンドルアーム102は、クリンチャアーム106の基端側に凸状に設けられたアーム取付部107に取り付けられた第1軸部102aに挿入されるカム溝となる軸穴部102bを備え、第1軸部102a及び軸穴部102bを介して、クリンチャアーム106に取り付けられる。また、ハンドルアーム102は、マガジン支軸108aによりクリンチャアーム106のアーム取付部107に支持されたドライバアーム104と第2軸部102cにより連結される。
ハンドルアーム102は、先端側に力が加えられることで、第1軸部102aをガイドするカム溝となる軸穴部102bの形状と、第2軸部102cが移動し得る軌跡によって、ハンドルアーム102を微小に動かしたときの動きを回転動作と見なすことができる。ハンドルアーム102の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1がハンドルアーム102の基端側に形成される。そして、ハンドルアーム102は、支点軸Of1を支点とした回転動作で変位することで、第2軸部102cを介してドライバアーム104を押圧する。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ハンドルアーム102とクリンチャアーム106を連結する第1軸部102aがハンドルアーム102に形成されたカム溝102bを介して移動可能に構成されることによって、ハンドルアーム102の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1を移動させる構成となっている。なお、本実施形態では、カム溝102bは、ハンドルアーム102に形成されているが、クリンチャアーム106側に形成してもよい。
また、本実施形態では、ドライバアーム104に取り付けられたマガジン108に対して、ドライバアーム104を垂直方向に動作させる直動機構110が設けられる。具体的には、直動機構110は、図1に示すように、マガジン108の側壁に鉛直方向に形成された1対のガイド溝111と、ドライバアーム104に設けられた1対のガイドピン112から構成され、かかるガイド溝111にガイドピン112が嵌合して、ドライバアーム104をマガジン108に対して垂直方向に移動可能に構成されている。なお、本実施形態では、直動機構110を構成するガイド溝111とガイドピン112は、それぞれ1対ずつ設けられているが、その設置数は、1対に限定されない。また、本明細書中で言及する「垂直方向」とは、完全な垂直方向のみに限定されない。例えば、完全な垂直方向に対して±10°程度の略垂直のものも「垂直方向」に含まれる。
このように、本実施形態では、ハンドルアーム102は、軸穴部102bと第1軸部102aとの接触角度、接触位置、又はその両方をハンドルアーム102の回転動作に伴い変化させることで、第1軸部102aにより軸穴部102bがガイドされる方向、位置、又はその両方を変化させ、ハンドルアーム102の回転動作の支点軸Of1を移動させる。
軸穴部102bは、ハンドルアーム102の回転動作によって変化する第1軸部102aが接触する部位に応じて、第1軸部102aとの接触角度を異ならせる区間が設定される。本実施形態では、軸穴部102bは、第1の区間102b(1)、第2の区間102b(2)及び第3の区間102b(3)の3つの区間が組み合わせられた所定の長穴形状で構成される。なお、かかる長穴形状は、必要な荷重減少率によって任意に設計される。
このため、軸穴部102bは、図1に示すような待機状態でのハンドルアーム102の向きでは、第1軸部102aとの接触角度が水平方向に対して直立する方向に大きく傾けられた第1の区間102b(1)が下端側に設けられる。また、軸穴部102bは、第1軸部102aとの接触角度が第1の区間102b(1)に対して小さく傾けられ、ハンドルアーム102が回転することによって、第1軸部102aとの接触角度、接触位置、又はその両方が変化可能になるように、第2の区間102b(2)が第1の区間102b(1)から連続して設けられる。さらに、軸穴部102bは、略円弧状の第3の区間102b(3)が第2の区間102b(2)から連続して設けられる。
また、ハンドルアーム102とドライバアーム104は、ハンドルアーム102の他方の端部側とドライバアーム104の他方の端部側が第2軸部102cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム102とドライバアーム104との連結部である第2軸部102cは、ドライバアーム104の基端側をクリンチャアーム106に支持されるマガジン支軸108aの前方に設けられる。
このため、ハンドルアーム102では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム104との連結部である第2軸部102cがドライバアーム104に対しての力の作用点E2となり、支点軸Of1が回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム104では、ハンドルアーム102との連結部である第2軸部102cがハンドルアーム102により力が加えられる力点E3となり、ドライバ103がステープルに対しての力の作用点E4となり、マガジン108が用紙Pに接するまでは、マガジン支軸108aが回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ100は、ハンドルアーム102とドライバアーム104における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム102に掛かる荷重Fを低減した倍力機構、又は荷重Fが増加した減力機構を実現している。
ハンドルアーム102に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、以下の(1)式により求められる。
ここで、ハンドルアーム102に力が掛かる力点E1からハンドルアーム102の回転支点となる支点軸Of1までの長さをL1とし、ドライバアーム104に力を掛ける作用点E2となる第2軸部102cから支点軸Of1までの長さをL2とする。
(1)式から、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部102cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム102に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
そこで、ハンドルアーム102の操作により、仮想回転支点となる支点軸Of1が用紙Pを綴じる動作におけるハンドルアーム102の位置に応じて、ガイド溝となる軸穴部102bの形状によりマガジン支軸108aの近傍から第2軸部102c方向に移動させられる。
本実施形態では、ハンドルアーム102とクリンチャアーム106を連結する第1軸部102aがハンドルアーム102に形成されたカム溝となる軸穴部102bを介して移動可能に構成されることによって、ハンドルアーム102とドライバアーム104を連結する第2軸部102cとの距離を変化させながら、ハンドルアーム102の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点Of1を移動させている。
このため、図1に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム102を回動操作すると、図2(A)に示すように、マガジン108が用紙Pに着座して、第1軸部102aが軸穴部102bの第1の区間102b(1)から第2の区間102b(2)の方向に移動する。
その後、ハンドルアーム102をさらに押圧すると、図2(B)に示すように、マガジン108を取り付けたドライバアーム104がガイド溝111とガイドピン112により構成される直動機構110によって垂直方向に移動させられる。これによって、ドライバ103がステープルに対して直動して、ドライバ103でステープルをせん断する。その際に、第1軸部102aは、軸穴部102bの第2の区間102b(2)内を移動しながら、第2軸部102cに近づくように移動し、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部102cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム102に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム102をさらに押圧すると、図2(C)に示すように、ドライバアーム104が下がって、ガイドピン112がガイド溝111の下端側に到達して、ドライバ103でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第1軸部102aは、軸穴部102bの第3の区間102b(3)内を移動して、軸穴部102bの上端に到達して、第2軸部102cにさらに近づいていき、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部102cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム102に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム102に掛かる荷重Fの減少率を増加させながら、当該荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、第1軸部102aがカム溝となる軸穴部102bに沿って移動可能に構成されるので、力を受ける倍力軸となる第2軸部102cとの距離が変化することによって、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部102cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させられる。
このため、ハンドルアーム102の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、クリンチャアーム106とハンドルアーム102の接合箇所をカム溝102bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、マガジンに対してドライバアームが回動している従来の倍力機構が設けられたステープラでは、マガジン内に装填されたステープルがマガジンに対して垂直に打ち出されるものの、ドライバアームは、自身の回動軌跡の接線方向に力を加えているので、ステープルとドライバアームの各々の力の方向がずれて、力の伝達にロスが生じていた。また、ドライバとドライバアームが別体の場合では、回動するドライバアームと直動するドライバの接点で摺動が発生するため、部品の摩耗が生じていた。さらに、ドライバとドライバアームが一体の場合では、ドライバアームが回動しており、ステープルが直動するため、ドライバが次の実打となる2本目ステープルに僅かに当接したり、ステープルをマガジン後方へ押し下げており、操作荷重の上昇に繋がっていた。
これに対して、本実施形態では、ドライバアーム104がガイド溝111とガイドピン112により構成される直動機構110によって、マガジン108に対して垂直方向に移動させられるので、2本目の針にドライバが僅かに当たることでの干渉による荷重や、2本目を後方へ押しやる荷重、ドライバ103とマガジン108の前壁側との摩擦荷重を削減することができる。すなわち、ハンドルアーム102の操作による可変倍力を行う際に、ドライバアーム104をマガジン108に対して垂直に動かすことにより、ドライバ103に力をよりダイレクトに伝達されるので、ドライバアーム104とステープルの力の伝達のロスを無くすことによって、ユーザの荷重負担を低減できる。
また、本実施形態では、ドライバアーム104が直動機構110によって、垂直方向に動作するので、ドライバアーム104に対してドライバ103が滑り移動しないようになる。このため、移動に伴う力のロスや部品摩耗が発生させずに、力の伝達効率が向上させた上で、ドライバ103の部分に関しては、耐久性の高い構造とすることができる。
なお、本発明の第1の実施形態では、ドライバアーム104がガイド溝111とガイドピン112により構成される直動機構110によって、マガジン108に対して垂直方向に移動させられるが、ドライバアーム104がマガジン108に対して垂直方向に移動させられる構成となっていれば、直動機構を他の態様としてもよい。
以下、本発明の第1の実施形態に係るステープラの変形例について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの一変形例の側面図であり、図4(A)乃至図4(C)は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの一変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態の一変形例に係るステープラ120は、図3に示すように、ドライバアーム124を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム122と、ステープルを打ち出すドライバ123に力を作用させるドライバアーム124と、ステープルを折り曲げるクリンチャ125が設けられるクリンチャアーム126とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム124のクリンチャアーム126との対向面側にステープルが装填されるマガジン128が取り付けられている。
ハンドルアーム122とドライバアーム124、ハンドルアーム122とクリンチャアーム126、及びマガジン128を介してドライバアーム124とクリンチャアーム126は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム122とドライバアーム124は、第2軸部122cを連結部として連結され、ハンドルアーム122とクリンチャアーム126は、第1軸部122aを連結部として連結され、ドライバアーム124とクリンチャアーム126は、ドライバアーム124に取り付けたマガジン128の基端側に取り付けられたマガジン支軸128aを連結部として連結されている。
本実施形態では、ハンドルアーム122は、クリンチャアーム126の基端側に凸状に設けられたアーム取付部127に取り付けられた第1軸部122aに挿入されるカム溝となる軸穴部122bを備え、第1軸部122a及び軸穴部122bを介して、クリンチャアーム126に取り付けられる。また、ハンドルアーム122は、マガジン支軸128aを介してクリンチャアーム126のアーム取付部127に支持されたドライバアーム124と第2軸部122cにより連結される。
また、本実施形態の一変形例に係るステープラ120では、ドライバアーム124に取り付けられたマガジン128に対してドライバアーム124を垂直方向に動作させる直動機構がドライバアーム124とマガジン128を連結するリンク機構130により構成されている。
具体的には、リンク機構130は、図3に示すように、一端がドライバアーム124に軸支された第1リンク131と、一端がマガジン128に軸支された第2リンク132と、第1リンク131と第2リンク132の交点に設けられる支持軸133と、第1リンク131の他端に設けられる第1ガイドピン134と、マガジン128の側壁に水平方向に形成され、当該第1ガイドピン134と嵌合する第1ガイド溝135と、第2リンク132の他端に設けられる第2ガイドピン136と、ドライバアーム124の側壁に水平方向に形成され、当該第2ガイドピン136と嵌合する第2ガイド溝137と、を備える。このような構成のリンク機構130により、ドライバアーム124をマガジン128に対して垂直方向に移動可能にしている。
このように、本実施形態では、ハンドルアーム122は、軸穴部122bと第1軸部122aとの接触角度、接触位置、又はその両方をハンドルアーム122の回転動作に伴い変化させることで、第1軸部122aにより軸穴部122bがガイドされる方向、位置、又はその両方を変化させ、ハンドルアーム122の回転動作の支点軸Of1を移動させる。
軸穴部122bは、ハンドルアーム122の回転動作によって変化する第1軸部122aが接触する部位に応じて、第1軸部122aとの接触角度を異ならせる区間が設定される。本実施形態では、軸穴部122bは、第1の区間122b(1)、第2の区間122b(2)及び第3の区間122b(3)の3つの区間が組み合わせられた所定の長穴形状で構成される(図4(A)乃至(C)参照)。
このため、軸穴部122bは、図3に示すような待機状態でのハンドルアーム122の向きでは、第1軸部122aとの接触角度が水平方向に対して直立する方向に大きく傾けられた第1の区間122b(1)が下端側に設けられる。また、軸穴部122bは、第1軸部122aとの接触角度が第1の区間122b(1)に対して小さく傾けられ、ハンドルアーム122が回転することによって、第1軸部122aとの接触角度、接触位置、又はその両方は変化可能なように、第2の区間122b(2)が第1の区間122b(1)から連続して設けられる。さらに、軸穴部122bは、略円弧状の第3の区間122b(3)が第2の区間122b(2)から連続して設けられる。
また、ハンドルアーム122とドライバアーム124は、ハンドルアーム122の他方の端部側とドライバアーム124の他方の端部側が第2軸部122cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム122とドライバアーム124との連結部である第2軸部122cは、ドライバアーム124の基端側をクリンチャアーム126に支持されるマガジン支軸128aの前方に設けられ、第2軸部122cが移動し得る軌跡は、マガジン支軸128aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム122では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム124との連結部である第2軸部122cがドライバアーム124に対しての力の作用点E2となり、支点軸Of1が回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム124では、ハンドルアーム122との連結部である第2軸部122cがハンドルアーム122により力が加えられる力点E3となり、ドライバ123がステープルに対しての力の作用点E4となり、マガジン支軸128aが回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ120は、ハンドルアーム122とドライバアーム124における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。また、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fの減少率Dは、前述した(1)式に示される。
(1)式から、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部122cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
そこで、ハンドルアーム122では、仮想回転支点となる支点軸Of1が用紙Pを綴じる動作におけるハンドルアーム122の位置に応じて、ガイド溝となる軸穴部122bの形状によりマガジン支軸128aの近傍から第2軸部122c方向に移動させる。
このように、本実施形態の一変形例に係るステープラ120では、ハンドルアーム122とクリンチャアーム126を連結する第1軸部122aがハンドルアーム122に形成されたカム溝となる軸穴部122bを介して移動可能に構成されることによって、ハンドルアーム122とドライバアーム124を連結する第2軸部122cとの距離を変化させて、ハンドルアーム122の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1を移動させている。
このため、図3に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム122を回動操作すると、図4(A)に示すように、マガジン128が用紙Pに着座して、第1軸部122aが軸穴部122bの第1の区間122b(1)から第2の区間122b(2)に移動する。
その後、ハンドルアーム122をさらに押圧すると、図4(B)に示すように、マガジン128を取り付けたドライバアーム124がリンク機構130によって垂直方向に移動させられる。これによって、ドライバ123がステープルに対して直動して、ドライバ123でステープルをせん断する。その際に、第1軸部122aは、軸穴部122bの第2の区間122b(2)内を移動しながら、第2軸部122cに近づくように移動して、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部122cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム122をさらに押圧すると、図4(C)に示すように、ドライバアーム124が下がって、第1ガイド溝135の先端側から移動した第1ガイドピン134が第1ガイド溝135の基端側に到達して、かつ、第2ガイド溝137の先端側から移動した第2ガイドピン136が第2ガイド溝137の基端側に到達して、ドライバ123でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第1軸部122aは、軸穴部122bの第3の区間122b(3)内を移動して、軸穴部122bの上端に到達して、第2軸部122cにさらに近づけて、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部122cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fの減少率を増加させながら、当該荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、第1軸部122aがカム溝となる軸穴部122bに沿って移動可能に構成されるので、力を受ける倍力軸となる第2軸部122cとの距離が変化しながら、ハンドルアーム122の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1を移動させることによって、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部122cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させられる。
このため、ハンドルアーム122の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、クリンチャアーム126とハンドルアーム122の接合箇所をカム溝122bとすることで、力の必要な動作に対して、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、本実施形態では、ドライバアーム124がリンク機構130によって、マガジン128に対して垂直方向に移動させられるので、2本目の針にドライバが僅かに当たることでの干渉による荷重や、2本目を後方へ押しやる荷重、ドライバ123とマガジン128の前壁側との摩擦荷重を削減することができる。すなわち、ハンドルアーム122の操作による可変倍力を行う際に、ドライバアーム124をマガジン128に対して垂直に動かすことにより、ドライバ123に力をよりダイレクトに伝達されるので、ドライバアーム124とステープルの力の伝達のロスを無くすことによって、ユーザの荷重負担を低減できる。
さらに、本実施形態では、ドライバアーム124がリンク機構130によって、垂直方向に動作することによって、ドライバアーム124に対してドライバ123が滑り移動しないため、移動に伴う力のロスや部品摩耗が発生させずに、力の伝達効率が向上させた上で、ドライバ123の部分に関しては、耐久性の高い構造とすることができる。
なお、本発明の第1の実施形態の変形例に係るリンク機構130は、図3の構成例に限定されず、他の態様としてもよい。以下、本発明の第1の実施形態に係るステープラの他の変形例について、図面を使用しながら説明する。図5(A)は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの他の変形例の側面図であり、図5(B)は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの他の変形例の他の態様の側面図であり、図6(A)乃至(C)は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの他の変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態の他の変形例に係るステープラ140は、図5(A)に示すように、ドライバアーム144を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム142と、ステープルを打ち出すドライバ143に力を作用させるドライバアーム144と、ステープルを折り曲げるクリンチャ145が設けられるクリンチャアーム146とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム144のクリンチャアーム146との対向面側にステープルが装填されるマガジン148が取り付けられている。
ハンドルアーム142とドライバアーム144、及びハンドルアーム142とクリンチャアーム146は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム142とドライバアーム144は、第2軸部142cを連結部として連結され、ハンドルアーム142とクリンチャアーム146は、第1軸部142aを連結部として連結されている。
本実施形態では、ハンドルアーム142は、クリンチャアーム146の基端側に凸状に設けられたアーム取付部147に取り付けられた第1軸部142aに挿入されるカム溝となる軸穴部142bを備え、第1軸部142a及び軸穴部142bを介して、クリンチャアーム146に取り付けられる。また、ハンドルアーム142は、リンク機構150によりクリンチャアーム146のアーム取付部147に支持されたドライバアーム144と第2軸部142cにより連結される。
また、本実施形態の他の変形例に係るステープラ140では、ドライバアーム144に取り付けられたマガジン148に対して、ドライバアーム144を垂直方向に動作させる直動機構がドライバアーム144とマガジン148とクリンチャアーム146を連結するリンク機構150により構成されている。
具体的には、リンク機構150は、図5(A)に示すように、一端がドライバアーム144に軸支された第1リンク151と、一端がクリンチャアーム146に軸支された第2リンク152と、第1リンク151と第2リンク152の交点に設けられる支持軸153と、第1リンク151の他端に設けられる第1ガイドピン154と、クリンチャアーム146の側壁に水平方向に形成され、当該第1ガイドピン154と嵌合する第1ガイド溝155と、第2リンク152の他端に設けられる第2ガイドピン156と、ドライバアーム144の側壁に水平方向に形成され、当該第2ガイドピン156と嵌合する第2ガイド溝157と、マガジン148の側壁に垂直方向に1対の第3ガイド溝158と、クリンチャアーム146のアーム取付部147に設けられた一対のガイドピン148aとを備える。このような構成のリンク機構150により、ドライバアーム144をマガジン148及びクリンチャアーム146のクリンチャ145に対して垂直方向に移動可能になっている。なお、図5(B)に示すように、本実施形態の他の変形例に係るステープラ140´は、マガジン148の側壁に設けられた1対の第3ガイド溝158にガイドされる一対のガイドピン148a´がドライバアーム144´に設けられる構成としてもよい。
このように、本実施形態では、ハンドルアーム142は、軸穴部142bと第1軸部142aとの接触角度、接触位置、又はその両方をハンドルアーム142の回転動作に伴い変化させることで、第1軸部142aにより軸穴部142bがガイドされる方向、位置、又はその両方を変化させ、ハンドルアーム142の回転動作の支点軸Of1を移動させる。
軸穴部142bは、ハンドルアーム142の回転動作によって変化する第1軸部142aが接触する部位に応じて、第1軸部142aとの接触角度を異ならせる区間が設定される。本実施形態では、軸穴部142bは、第1の区間142b(1)、第2の区間142b(2)及び第3の区間142b(3)の3つの区間が組み合わせられた所定の長穴形状で構成される(図6(A)乃至(C)参照)。
このため、軸穴部142bは、図5(A)に示すような待機状態でのハンドルアーム142の向きでは、第1軸部142aとの接触角度が水平方向に対して直立する方向に大きく傾けられた第1の区間142b(1)が下端側に設けられる。また、軸穴部142bは、第1軸部142aとの接触角度が第1の区間142b(1)に対して小さく傾けられ、ハンドルアーム142が回転することによって、第1軸部142aとの接触角度、接触位置、又はその両方が変化可能になるように、第2の区間142b(2)が第1の区間142b(1)から連続して設けられる。さらに、軸穴部142bは、略円弧状の第3の区間142b(3)が第2の区間142b(2)から連続して設けられる。
また、ハンドルアーム142とドライバアーム144は、ハンドルアーム142の他方の端部側とドライバアーム144の他方の端部側が第2軸部142cにより回転方向への変位が可能に連結される。このため、ハンドルアーム142の先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム144との連結部である第2軸部142cがドライバアーム144に対しての力の作用点E2となり、支点軸Of1が回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム144では、ハンドルアーム142との連結部である第2軸部142cがハンドルアーム142により力が加えられる力点E3となり、ドライバ143がステープルに対しての力の作用点E4となる。
本実施形態のステープラ140は、ハンドルアーム142とドライバアーム144における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム142に掛かる荷重Fの減少率Dが前述した(1)式に示され、ハンドルアーム142に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。
(1)式から、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部142cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム142に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
そこで、ハンドルアーム142では、仮想回転支点となる支点軸Of1が用紙Pを綴じる動作におけるハンドルアーム142の位置に応じて、ガイド溝となる軸穴部142bの形状により、ステープラ140の基端側のガイドピン148aの近傍から第2軸部142c方向に移動させる。
このように、本実施形態の他の変形例に係るステープラ140では、ハンドルアーム142とクリンチャアーム146を連結する第1軸部142aがハンドルアーム142に形成されたカム溝となる軸穴部142bを介して移動可能に構成されることによって、力を受ける倍力軸となる第2軸部142cとの距離を変化させて、ハンドルアーム142の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1を移動させている。
このため、図5(A)に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム142を回動操作すると、図6(A)に示すように、マガジン148が用紙Pに着座して、第1軸部142aが軸穴部142bの第1の区間142b(1)から第2の区間142b(2)に移動する。
その後、ハンドルアーム142をさらに押圧すると、図6(B)に示すように、マガジン148を取り付けたドライバアーム144がリンク機構150によって垂直方向に移動させられる。これによって、ドライバ143がステープルに対して直動して、ドライバ143でステープルをせん断する。その際に、第1軸部142aは、軸穴部142bの第2の区間142b(2)内を移動しながら、第2軸部142cに近づくように移動して、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部142cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム142に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム142をさらに押圧すると、図6(C)に示すように、ドライバアーム144が下がって、第1ガイド溝155の先端側から移動した第1ガイドピン154が第1ガイド溝155の基端側に到達して、かつ、第2ガイド溝157の先端側から移動した第2ガイドピン156が第2ガイド溝157の基端側に到達して、ドライバ143でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第1軸部142aは、軸穴部142bの第3の区間142b(3)内を移動して、軸穴部142bの上端に到達して、第2軸部142cにさらに近づけて、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部142cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム142に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム142に掛かる荷重Fの減少率を増加させることによって、当該荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、第1軸部142aがカム溝となる軸穴部142bに沿って移動可能に構成されるので、第2軸部142cとの距離が変化することによって、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部142cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させられる。
このため、ハンドルアーム142の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、クリンチャアーム146とハンドルアーム142の接合箇所をカム溝142bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、本実施形態では、ドライバアーム144がリンク機構150によって、マガジン148に対して垂直方向に移動させられるので、2本目の針にドライバが僅かに当たることでの干渉による荷重や、2本目を後方へ押しやる荷重、ドライバ143とマガジン148の前壁側との摩擦荷重を削減することができる。すなわち、ハンドルアーム142の操作による可変倍力を行う際に、ドライバアーム144をマガジン148に対して垂直に動かすことにより、ドライバ143に力をよりダイレクトに伝達されるので、ドライバアーム144とステープルの力の伝達のロスを無くすことによって、ユーザの荷重負担を低減できる。
さらに、本実施形態では、ドライバアーム144がリンク機構150によって、垂直方向に動作することによって、ドライバアーム144に対してドライバ143が滑り移動しないため、移動に伴う力のロスや部品摩耗が発生させずに、力の伝達効率が向上させた上で、ドライバ143の部分に関しては、耐久性の高い構造とすることができる。
また、本実施形態では、リンク機構150によりドライバアーム144とマガジン148とクリンチャアーム146が連結されているので、マガジン148もクリンチャアーム146のクリンチャ145に配置された用紙Pに対して垂直に動作することによって、用紙Pに対して垂直にステープルが打ち込まれるようになる。このため、用紙Pの厚みによってステープルの打ち出し角度が変化しないため、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム142を回動操作する際における操作荷重を低減でき、ステープルを用紙Pに対して、用紙Pの枚数によらず垂直に打ち込むことができるようになる。
なお、本発明の第1の実施形態の他の変形例では、ドライバアーム144が第3ガイド溝158とガイドピン148aにより構成される直動機構150によって、マガジン148に対して垂直方向に移動させられるが、本実施形態に係るステープラは、ハンドルアームに直接ドライバを取り付けることによって、ドライバがマガジンに対して垂直方向に移動させられる構成とした態様にも適用可能である。また、本実施形態に係るステープラとして、上述のリンク機構を用いて、ドライバアームとマガジンをリンク機構で接続したもの、マガジンとクリンチャアームをリンク機構で接続したもの、ドライバアームとクリンチャアームをリンク機構で接続したものから、少なくとも2つのリンク機構連結してステープラを構成することができる。
以下、本発明の第1の実施形態に係るステープラの更に他の変形例について、図面を使用しながら説明する。図7は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの更に他の変形例の側面図であり、図8(A)乃至図8(C)は、本発明の第1の実施形態に係るステープラの更に他の変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態の更に他の変形例に係るステープラ160は、図7に示すように、ステープルを打ち出す貫通手段となるドライバ163が回動操作手段となるハンドルアーム162の中腹部側に有する設置点162cに直接連結した構成となっている。すなわち、本実施形態のステープラ160は、ドライバアームを押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム162がステープルを打ち出すドライバ163に力を作用させるドライバアームと一体化される構成となっている。すなわち、ドライバ163は、ハンドルアーム162に回動可能に取り付けられる。
また、本実施形態では、ステープラ160は、ステープルを折り曲げるクリンチャ165が設けられるクリンチャアーム166と、ハンドルアーム162のクリンチャアーム166との対向面側に設けられ、ステープルが装填されるマガジン168とを備える。
ハンドルアーム162とクリンチャアーム166、及びマガジン168とクリンチャアーム166は、それぞれの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム162とクリンチャアーム166は、第1軸部162aを連結部として連結され、マガジン168とクリンチャアーム166は、マガジン支軸168aを連結部として連結されている。
本実施形態では、ハンドルアーム162は、クリンチャアーム166の基端側に凸状に設けられたアーム取付部167に取り付けられた第1軸部162aに挿入されるカム溝となる軸穴部162bを備え、第1軸部162a及び軸穴部162bを介して、クリンチャアーム166に取り付けられる。
ハンドルアーム162は、先端側に力が加えられることで、第1軸部162aをガイドするカム溝となる軸穴部162bの形状と、力を受ける作用点となるドライバ163の設置点162cが移動し得る軌跡によって、ハンドルアーム162を微小に動かしたときの動きを回転動作と見なすことができる。ハンドルアーム162の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1がハンドルアーム162の基端側に形成される。そして、ハンドルアーム162は、支点軸Of1を支点とした回転動作で変位することで、設置点162cを介してドライバ163を押圧する。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ハンドルアーム162とクリンチャアーム166を連結する第1軸部162aがハンドルアーム162に形成されたカム溝162bを介して移動可能に構成されることによって、ハンドルアーム162の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1を移動させる構成となっている。なお、本実施形態では、カム溝162bは、ハンドルアーム162に形成されているが、クリンチャアーム166側に形成してもよい。
このように、本実施形態では、ハンドルアーム162は、軸穴部162bと第1軸部162aとの接触角度、接触位置、及びその両方をハンドルアーム162の回転動作に伴い変化させることで、第1軸部162aにより軸穴部162bがガイドされる方向、位置、又はその両方を変化させ、ハンドルアーム162の回転動作の支点軸Of1を移動させる。
軸穴部162bは、ハンドルアーム162の回転動作によって変化する第1軸部162aが接触する部位に応じて、第1軸部162aとの接触角度を異ならせる区間が設定される。本実施形態では、軸穴部162bは、図7に示すように、第1の区間162b(1)、第2の区間162b(2)及び第3の区間162b(3)の3つの区間が組み合わせられた所定の長穴形状で構成される。
軸穴部162bは、図7に示すような待機状態でのハンドルアーム162の向きでは、第1軸部162aとの接触角度が水平方向に対して直立する方向に大きく傾けられた第1の区間162b(1)が上端側に設けられる。また、軸穴部162bは、第1軸部162aとの接触角度が第1の区間162b(1)に対して小さく傾けられ、ハンドルアーム162が回転することによって、第1軸部162aとの接触角度、接触位置、及びその両方が変化可能になるように、第2の区間162b(2)が第1の区間166b(1)から連続して設けられる。さらに、軸穴部162bは、略円弧状の第3の区間162b(3)が第2の区間162b(2)から連続して設けられる。
また、ハンドルアーム162のドライバ163の設置点162cは、マガジン168に対して垂直方向に動き、ドライバ163に力を伝達する。このため、ハンドルアーム162では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバ163の設置点162cが力の作用点E2となり、支点軸Of1が回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ160は、ハンドルアーム162とドライバ163の設置点162cにおける力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fの減少率Dが前述した(1)式に示され、ハンドルアーム122に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。
(1)式から、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部162cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム162に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
本実施形態では、ドライバアームを設けずに、ハンドルアーム162に直接ドライバ163を取り付けているので、(1)式に示すように、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部162cから支点軸Of1までの長さL2の比の変化により、ハンドルアーム162に掛かる荷重Fの減少率を可変にしている。
そこで、ハンドルアーム162では、仮想回転支点となる支点軸Of1が用紙Pを綴じる動作におけるハンドルアーム162の位置に応じて、ガイド溝となる軸穴部162bの形状によりマガジン支軸168aの近傍から設置点162c方向に移動させる。
このように、本実施形態の更に他の変形例に係るステープラ160では、ハンドルアーム162とクリンチャアーム166を連結する第1軸部162aがハンドルアーム162に形成されたカム溝となる軸穴部162bを介して移動可能に構成されることによって、当該第1軸部162aと力を受ける作用点となるドライバ163の設置点162cとの距離を変化させて、ハンドルアーム162の基端側に形成されるハンドルアーム162の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of1を移動させる。
このため、図7に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム162を回動操作すると、図8(A)に示すように、マガジン168が用紙Pに着座して、第1軸部162aが軸穴部162bの第1の区間162b(1)から第2の区間162b(2)に向けて移動する。
その後、ハンドルアーム162をさらに押圧すると、図8(B)に示すように、ハンドルアーム162の中腹部側の設置点162cに取り付けたドライバ163がステープルに対して直動して、ドライバ163でステープルをせん断する。その際に、第1軸部162aは、軸穴部162bの第2の区間162b(2)内を移動しながら、ドライバ163の設置点162cに近づくように移動して、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部162cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム162に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム162をさらに押圧すると、図8(C)に示すように、ドライバ163が下がって、ドライバ163でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第1軸部162aは、軸穴部162bの第3の区間162b(3)内を移動して、軸穴部162bの下端に到達して、ドライバ163の設置点162cにさらに近づけて、仮想回転支点Of1から力点E1までの長さL1と、仮想回転支点Of1から第2軸部162cまでの長さL2が減少して、ハンドルアーム162に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム162に掛かる荷重Fの減少率を増加させながら、当該荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、第1軸部162aがカム溝となる軸穴部162bに沿って移動可能に構成されるので、力を受けるドライバ163の設置点162cとの距離が変化することによって、力点E1から支点軸Of1までの長さL1に対する作用点E2となる設置点162cから支点軸Of1までの長さL2の比を減少させられる。
このため、ハンドルアーム162の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、クリンチャアーム166とハンドルアーム162の接合箇所をカム溝162bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム162に直接ドライバ163を取り付けることによって、ドライバ163がマガジン168に対して垂直方向に移動させられるので、2本目の針にドライバ163が僅かに当たることでの干渉による荷重や、2本目を後方へ押しやる荷重、ドライバ163とマガジン168の前壁側との摩擦荷重を削減することができる。すなわち、ハンドルアーム162の操作による可変倍力を行う際に、ドライバ163をマガジン168に対して垂直に動かすことにより、ドライバ163に力をよりダイレクトに伝達されるので、ドライバアーム164とステープルの力の伝達のロスを無くすことによって、ユーザの荷重負担を低減できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るステープラについて、図面を使用しながら説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係るステープラの側面図であり、図10(A)乃至図10(C)は、本発明の第2の実施形態に係るステープラの動作を示す側面図である。
本発明の第2の実施形態に係るステープラ200は、用紙Pをステープルで綴じる処理を行う用紙処理装置であり、ユーザの操作によって用紙Pを綴じる操作に要する荷重を低減する可変倍力機構が設けられている。
本実施形態のステープラ200は、図9に示すように、ドライバアーム204を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム202と、ステープルを打ち出すドライバ203に力を作用させるドライバアーム204と、ステープルを折り曲げるクリンチャ205が設けられるクリンチャアーム206とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム204のクリンチャアーム206との対向面側にステープルが装填されるマガジン208が取り付けられている。
ハンドルアーム202とドライバアーム204、ハンドルアーム202とクリンチャアーム206、及びドライバアーム204とクリンチャアーム206は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム202とドライバアーム204は、第2軸部202cを連結部として連結され、ハンドルアーム202とクリンチャアーム206は、第1軸部202aを連結部として連結され、ドライバアーム204とクリンチャアーム206は、第3軸部204aを連結部として連結されている。なお、第3軸部204aは、マガジン208を回動可能に軸支する。
本実施形態では、ドライバアーム204は、クリンチャアーム206の基端側に凸状に設けられたアーム取付部207に取り付けられた第3軸部204aに挿入されるカム溝となる軸穴部204bを備え、第3軸部204a及び軸穴部204bを介して、クリンチャアーム206に取り付けられる。また、ドライバアーム204は、第1軸部202aによりクリンチャアーム206のアーム取付部207に支持されたハンドルアーム202と第2軸部202cにより連結される。
ハンドルアーム202は、先端側に力が加えられることによって、第1軸部202aを支点とした回転動作で変位するので、第2軸部202cを介してドライバアーム204を押圧する。そして、第3軸部204aをガイドするカム溝となる軸穴部204bの形状と、第2軸部202cが移動し得る軌跡によって、ドライバアーム204を微小に動かしたときの動きを回転動作と見なすことができる。ドライバアーム204の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of2がドライバアーム204の基端側に形成される。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ドライバアーム204とクリンチャアーム206を連結する第3軸部204aを介してカム溝204bが移動可能に構成されることによって、ドライバアーム204の変位を回転動作とみなす時の仮想回転支点となる支点軸Of2とハンドルアーム202からの力を受ける倍力軸となる第2軸部202cとの距離が変化する構成となっている。
本実施形態では、ドライバアーム204は、軸穴部204bと第3軸部204aとの接触角度、接触位置、又はその両方をドライバアーム204の回転動作に伴い変化させることで、第3軸部204aにより軸穴部204bがガイドされる方向、位置、又はその両方を変化させることによって、ドライバアーム204の回転動作の支点軸Of2を移動させる。
軸穴部204bは、ハンドルアーム202を介してドライバアーム204の回転動作によって変化する第3軸部204aが接触する部位に応じて、第3軸部204aとの接触角度、接触位置、又はその両方を異ならせる区間が設定されるように構成されている。本実施形態では、軸穴部204bは、図9に示すように、屈曲形状であり、ステープラ200が待機状態のときには、上端204b1から屈曲部204b2までが略鉛直方向に展開され、屈曲部204bから下端204b3までが鉛直方向に対して斜め下側の方向に展開される構成となっている。
ハンドルアーム202とドライバアーム204は、ハンドルアーム202の他方の端部側とドライバアーム204の他方の端部側が第2軸部202cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム202とドライバアーム204との連結部である第2軸部202cは、ハンドルアーム202の長手方向に対して第1軸部202aの前方に設けられ、第2軸部202cが移動し得る軌跡は、第1軸部202aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム202では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム204との連結部である第2軸部202cがドライバアーム204に対しての力の作用点E2となり、第1軸部202aが回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム204では、ハンドルアーム202との連結部である第2軸部202cがハンドルアーム202により力が加えられる力点E3となり、ドライバ203がステープルに対しての力の作用点E4となり、支点軸Of2が回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ200は、ハンドルアーム202とドライバアーム204における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム202に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。ハンドルアーム202に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、以下の(2)式により求められる。
前述の(2)式において、ハンドルアーム202に力が掛かる力点E1からハンドルアーム202の回転支点となる第1軸部202aまでの長さをL1とし、ドライバアーム204に力を掛ける作用点E2となる第2軸部202cから第1軸部202aまでの長さをL2とする。また、ドライバアーム204に力が掛かる力点E3となる第2軸部202cからドライバアーム204の回転支点となる支点軸Of2までの長さをL3とし、作用点E4となるドライバ205から支点軸Of2までの長さをL4とする。
(2)式から、力点E3となる第2軸部202cからドライバアーム204の回転支点となる支点軸Of2までの長さL3に対する作用点E4となるドライバ203から支点軸Of2までの長さL4の比を減少させると、ハンドルアーム202に掛かる荷重Fの減少率が増加する。そこで、ドライバアーム204では、仮想回転支点となる支点軸Of2は、用紙Pを綴じる動作におけるハンドルアーム202の位置に応じて、第3軸部204aが屈曲形状の軸穴部204bに沿って移動することにより、第3軸部204aの近傍から第2軸部202cと反対方向に移動させる。
本実施形態では、ドライバアーム204とクリンチャアーム206を連結する第3軸部204aがドライバアーム204に形成されたカム溝となる軸穴部204bを介して、ドライバアーム204を移動可能に構成されることによって、支点軸Of2が倍力軸となるハンドルアーム202とドライバアーム204を連結する第2軸部202cに対して距離を変化させている。また、支点軸Of2とドライバ203との距離を変化させている。
このため、図9に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム202を回動操作すると、図10(A)に示すように、マガジン208が用紙Pに着座して、第3軸部204aにガイドされて軸穴部204bの上端204b1から屈曲点204b2に向けて移動する。
その後、ハンドルアーム202をさらに押圧すると、図10(B)に示すように、マガジン208を取り付けたドライバアーム204が回動しながら、ドライバ203がステープルに対して押動して、ドライバ203でステープルをせん断する。その際に、第3軸部204aにガイドされて、軸穴部224bが屈曲点204b2から下端204b3に向けて移動しながら、第2軸部202cと支点軸Of2との距離である長さL3と、作用点E4と支点軸Of2との距離である長さL4を増加させて、ハンドルアーム202に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム202をさらに押圧すると、図10(C)に示すように、ドライバアーム204が下がって、ドライバ203でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第3軸部204aは、軸穴部204b内を移動して、軸穴部204bの下端204b3に到達して、第2軸部202cと支点軸Of2との距離である長さL3と、作用点E4と支点軸Of2との距離である長さL4をさらに増加させて、ハンドルアーム202に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム202に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ドライバアーム204とクリンチャアーム206の連結部である第3軸部204aのドライバアーム204の軸穴部204bがカム溝構造でドライバアーム204の支点軸Of2を動かすことによって、力点E3となる第2軸部202cからドライバアーム204の支点軸Of2までの長さL3と、当該長さL3に対する作用点E4となるドライバ203から支点軸Of2までの長さL4の比を減少させられる。
このため、ハンドルアーム202の操作の過程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、クリンチャアーム206とドライバアーム204の接合箇所をカム溝204bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、倍力率が常に一定な従来の倍力構造では、倍力率を上げると、待機状態での本体高さが上がり、ユーザが持ち難くなる問題点と、待機状態での本体高さを下げると、倍力率が下がって、操作荷重が重くなり、ユーザが綴り難くなる問題点の二律背反を抱えていた。さらに、従来のステープラでは、ユーザが力を加えるハンドルアームと土台となるクリンチャアームがカム溝で連結しており、ハンドルの動きが単純な回転運度でないため、ユーザが操作する時に違和感を与えることがあった。すなわち、ハンドルアームの操作で可変倍力を行うと、ハンドルの回転支点の移動により、ハンドルアームの回転軌跡がずれるため、ユーザによって操作に違和感を与えるものとなっていた。
これに対して、本実施形態では、ハンドルアーム202の回転支点をクリンチャアーム206に固定して、ハンドルアーム202を単純な回転運動として、ドライバアーム204とクリンチャアーム206の連結部となる第3軸部204aを所望の形状のカム溝で移動可能とする構造とすることでドライバアーム204の支点軸Of2を可変にし、倍力率を設計者の任意に可変させられるようにしている。このため、綴り動作中の荷重が高い所で倍力率を上げ、荷重が低い所で倍力率を下げるように設計することによって、綴じる荷重を軽くでき、待機状態での本体高さを小さくできる。また、ハンドルアーム202の長手方向の並進運動がなくなり、回転運動のみとなることで一定倍力構造のハンドルアームと同じ動きとなり、ユーザが一定倍力の機械と同様の使い心地を得られるようになる。
なお、本発明の第2の実施形態では、ハンドルアーム202に掛かる荷重Fの減少率の変化を所望の態様とするために、ドライバアーム204に設ける軸穴部204bの形状及び設置部位を変えてもよい。以下、本発明の第2の実施形態に係るステープラの変形例について、図面を使用しながら説明する。図11は、本発明の第2の実施形態に係るステープラの一変形例の側面図であり、図12(A)乃至図12(C)は、本発明の第2の実施形態に係るステープラの一変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態のステープラ220は、図11に示すように、ドライバアーム224を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム222と、ステープルを打ち出すドライバ223に力を作用させるドライバアーム224と、ステープルを折り曲げるクリンチャ225が設けられるクリンチャアーム226とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム224のクリンチャアーム226との対向面側にステープルが装填されるマガジン228が取り付けられている。
ハンドルアーム222とドライバアーム224、ハンドルアーム222とクリンチャアーム226、及びドライバアーム224とクリンチャアーム226は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム222とドライバアーム224は、第2軸部222cを連結部として連結され、ハンドルアーム222とクリンチャアーム226は、第1軸部222aを連結部として連結され、ドライバアーム224とクリンチャアーム226は、第3軸部224aを連結部として連結されている。なお、第3軸部224aは、マガジン228を回動可能に軸支する。
本実施形態では、ドライバアーム224は、クリンチャアーム226の基端側に凸状に設けられたアーム取付部227に形成されたカム溝となる軸穴部224bに挿入される第3軸部224aを備え、第3軸部224a及び軸穴部224bを介して、クリンチャアーム226に取り付けられる。また、ドライバアーム224は、第1軸部222aによりクリンチャアーム226のアーム取付部227に支持されたハンドルアーム222と第2軸部222cにより連結される。
ハンドルアーム222は、先端側に力が加えられることによって、第1軸部222aを支点とした回転動作で変位するので、第2軸部222cを介してドライバアーム224を押圧する。そして、第3軸部224aをガイドするカム溝となる軸穴部224bの形状と、第2軸部222cが移動し得る軌跡によって、ドライバアーム224を微小に動かしたときの動きを回転動作と見なすことができる。ドライバアーム224の変位を回転動作と見なすときの仮想回転支点となる支点軸Of2がドライバアーム224の基端側に形成される。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ドライバアーム224とクリンチャアーム226を連結する第3軸部224aがカム溝224bを介して移動可能に構成されることによって、ドライバアーム224の変位を回転動作とみなす時の仮想回転支点となる支点軸Of2とハンドルアーム222からの力を受ける倍力軸となる第2軸部222cとの距離が変化する構成となっている。
このように、本実施形態では、ドライバアーム224は、軸穴部224bと第3軸部224aとの接触角度、接触位置、又はその両方をドライバアーム224の回転動作に伴い変化させることで、第3軸部224aにより軸穴部224bがガイドされる方向、位置、又はその両方を変化させることによって、ドライバアーム224の回転動作の支点軸Of2を移動させる。
軸穴部224bは、ハンドルアーム222を介してドライバアーム224の回転動作によって変化する第3軸部224aが接触する部位に応じて、第3軸部224aとの接触角度、接触位置、又はその両方を異ならせる区間が設定されるように構成されている。本実施形態では、軸穴部224bは、図11に示すように、屈曲形状であり、ステープラ220が待機状態では、下端224b1から屈曲部224b2までが略鉛直方向に展開され、屈曲部224bから上端224b3までが鉛直方向に対して斜め上側の方向に展開される構成となっている。
ハンドルアーム222とドライバアーム224は、ハンドルアーム222の他方の端部側とドライバアーム224の他方の端部側が第2軸部222cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム222とドライバアーム224との連結部である第2軸部222cは、ハンドルアーム222の長手方向に対して第1軸部222aの前方に設けられ、第2軸部222cが移動し得る軌跡は、第1軸部222aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム222では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム224との連結部である第2軸部222cがドライバアーム224に対しての力の作用点E2となり、第1軸部222aが回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム224では、ハンドルアーム222との連結部である第2軸部222cがハンドルアーム222により力が加えられる力点E3となり、ドライバ223がステープルに対しての力の作用点E4となり、支点軸Of2が回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ220は、ハンドルアーム222とドライバアーム224における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム222に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。ハンドルアーム222に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、前述した(2)式により求められる。
(2)式から、力点E3となる第2軸部222cからドライバアーム224の回転支点となる支点軸Of2までの長さL3に対する作用点E4となるドライバ223から支点軸Of2までの長さL4の比を減少させると、ハンドルアーム222に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
そこで、ドライバアーム224では、仮想回転支点となる支点軸Of2は、用紙Pを綴じる動作におけるハンドルアーム222の位置に応じて、第3軸部224aが屈曲形状の軸穴部224bに沿って移動することにより、第3軸部224aの近傍から第2軸部222cとは反対方向に移動させる。
本実施形態では、ドライバアーム224とクリンチャアーム226を連結する第3軸部224aがクリンチャアーム226に形成されたカム溝となる軸穴部224bを介してドライバアーム224を移動可能に構成されることによって、支点軸Of2と倍力軸となるハンドルアーム222とドライバアーム224を連結する第2軸部222cとの距離を変化させている。また、支点軸Of2とドライバ223との距離を変化させている。
このため、図11に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム222を回動操作すると、図12(A)に示すように、マガジン228が用紙Pに着座して、第3軸部224aが軸穴部224bの下端224b1から屈曲点224b2に向けて移動する。
その後、ハンドルアーム222をさらに押圧すると、図12(B)に示すように、マガジン228を取り付けたドライバアーム224が回動しながら、ドライバ223がステープルに対して押動して、ドライバ223でステープルをせん断する。その際に、第3軸部224aが軸穴部224bに沿って屈曲点224b2から上端224b3に向けて移動しながら、第2軸部222cと支点軸Of2との距離である長さL3と、作用点E4と支点軸Of2との距離である長さL4を増加させて、ハンドルアーム222に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム222をさらに押圧すると、図12(C)に示すように、ドライバアーム224が下がって、ドライバ223でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第3軸部224aは、軸穴部224b内を移動して、軸穴部224bの上端224b3に到達して、第2軸部222cと支点軸Of2との距離である長さL3と、作用点E4と支点軸Of2との距離である長さL4をさらに増加させて、ハンドルアーム222に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム222に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ドライバアーム224とクリンチャアーム226の連結部となるドライバアーム224に設けられる第3軸部224aがドライバアーム224の軸穴部224bによるカム溝構造で移動可能にして、支点軸Of2を動かすことによって、力点E3となる第2軸部222cからドライバアーム224の回転支点となる支点軸Of2までの長さL3に対する作用点E4となるドライバ223から支点軸Of2までの長さL4の比を減少させられる。
このため、ハンドルアーム222の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、クリンチャアーム226とドライバアーム224の接合箇所をカム溝224bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム222の回転支点をクリンチャアーム226に固定して、ハンドルアーム222を単純な回転運動として、ドライバアーム224とクリンチャアーム226の連結部となる第3軸部224aを所望の形状のカム溝で移動可能とする構造とすることで、倍力率を設計者の任意に可変させられるようにしている。このため、綴り動作中の荷重が高い所で倍力率を上げて、荷重が低い所で倍力率を下げられるので、綴じる荷重を軽くした上で、待機状態での本体高さを小さくできる。さらに、ハンドルアーム222の長手方向の並進運動がなくなり、回転運動のみとなるので、一定倍力構造のハンドルアームと同じ動きとなり、ユーザが一定倍力の機械と同様の使い心地を得られるようになる。
なお、本発明の第2の実施形態の一変形例では、ハンドルアーム222に掛かる荷重Fの減少率の変化を所望の態様とするために、ドライバアーム224とクリンチャアーム226との連結部であるカム溝に沿って第3軸部224aを移動可能に構成して、ドライバアーム224の仮想回転支点となる支点軸Of2を移動可能にしているが、ハンドルアームのガイドとクリンチャアームのガイドにより、ドライバアーム224の支点を移動可能としてもよい。以下、本発明の第2の実施形態に係るステープラの他の変形例について、図面を使用しながら説明する。図13は、本発明の第2の実施形態に係るステープラの他の変形例の側面図であり、図14(A)乃至図14(C)は、本発明の第2の実施形態に係るステープラの他の変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態のステープラ240は、図13に示すように、ドライバアーム244を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム242と、ステープルを打ち出すドライバ243に力を作用させるドライバアーム244と、ステープルを折り曲げるクリンチャ245が設けられるクリンチャアーム246とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム244のクリンチャアーム246との対向面側にステープルが装填されるマガジン248が取り付けられている。
ハンドルアーム242とドライバアーム244、ハンドルアーム242とクリンチャアーム246、及びドライバアーム244とクリンチャアーム246は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム242とドライバアーム244は、第2軸部242cを連結部として連結され、ハンドルアーム242とクリンチャアーム246は、第1軸部242aを連結部として連結され、ドライバアーム244とクリンチャアーム246は、第3軸部244aを連結部として連結されている。
本実施形態では、ドライバアーム244は、クリンチャアーム246の基端側に凸状に設けられたアーム取付部247に水平方向に形成されたカム溝246aに、第3軸部244aが嵌合されて、第3軸部244a及び軸穴部246aを介して、クリンチャアーム246に取り付けられる。第3軸部244aは、ハンドルアーム242に形成され、一端が軸穴部246aと重複し、他端が斜め下方向に展開されるカム溝242bにも貫通して設けられ、当該カム溝242bにも沿って移動可能となっている。すなわち、第3軸部244aは、クリンチャアーム246に水平方向に形成されたカム溝246aに沿って移動する際に、ハンドルアーム242に斜め方向に形成されたカム溝242bにも沿って移動するように構成されている。
また、ドライバアーム244は、第1軸部242aによりクリンチャアーム246のアーム取付部247に支持されたハンドルアーム242と倍力軸となる第2軸部242cにより連結される。本実施形態では、第2軸部242cは、ドライバアーム244の基端側に斜め方向に形成されたカム溝244bを介して移動可能に構成されている。
このように、本実施形態では、第3軸部244aがクリンチャアーム246に形成されたカム溝246aとハンドルアーム242に形成されたカム溝242bを介して移動可能に構成され、かつ、第2軸部がドライバアーム244に形成されたカム溝244bを介して移動可能に構成されることによって、ハンドルアーム242の回動操作を介して、ドライバアーム244を回動させた際に、第3軸部244aと第2軸部242cとの距離が変化するようにしている。また、第3軸部244aとドライバ243との距離が変化するようにしている。なお、第2軸部242cに嵌合するカム溝244bは、ハンドルアーム242側に設けてもよく、第3軸部244aに嵌合するカム溝246aは、ドライバアーム244側に設けてもよい。
ハンドルアーム242は、先端側に力が加えられることによって、第1軸部242aを支点とした回転動作で変位するので、第2軸部242cを介してドライバアーム244を押圧する。そして、第3軸部244aをガイドするカム溝となる軸穴部242b、246aの形状と、第2軸部242cがカム溝244bに沿って移動し得る軌跡によって、第3軸部244aが移動する。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ドライバアーム244とクリンチャアーム246を連結する第3軸部244aがカム溝242b、246aを介して移動可能に構成されることによって、ハンドルアーム242とドライバアーム244を連結する第2軸部242cと第3軸部244aとの距離が変化する構成となっている。また、第3軸部244aとドライバ243との距離が変化する構成となっている。
このように、本実施形態では、ドライバアーム244は、ハンドルアーム242の回転動作に伴い、第3軸部244aがカム溝となる軸穴部242a、246aでガイドされることによって、ドライバアーム244の回転動作の支点軸である第3軸部244aを移動させる。
また、ハンドルアーム242とドライバアーム244は、ハンドルアーム242の他方の端部側とドライバアーム244の他方の端部側が第2軸部242cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム242とドライバアーム244との連結部である第2軸部242cは、ドライバアーム244の基端側をクリンチャアーム246に支持される第3軸部244aの上方に設けられ、第2軸部242cが移動し得る軌跡は、第1軸部242aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム242では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム244との連結部である第2軸部242cがドライバアーム244に対しての力の作用点E2となり、第1軸部242aが回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム244では、ハンドルアーム242との連結部である第2軸部242cがハンドルアーム242により力が加えられる力点E3となり、ドライバ243がステープルに対しての力の作用点E4となり、第3軸部244aが回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ240は、ハンドルアーム242とドライバアーム244における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム242に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。ハンドルアーム242に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、前述した(2)式により求められる。
(2)式から、力点E3となる第2軸部242cからドライバアーム244の回転支点となる第3軸部244aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ243から第3軸部244aまでの長さL4の比を減少させると、ハンドルアーム242に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
そこで、ドライバアーム244では、第3軸部244aは、用紙Pを綴じる動作におけるハンドルアーム242の位置に応じて、カム溝となる軸穴部242b、246aの形状により第2軸部242cと反対方向に移動する。
本実施形態では、ドライバアーム244とクリンチャアーム246を連結する第3軸部244aがカム溝242b、246aを介して移動可能に構成されることによって、第3軸部244aと倍力軸となるハンドルアーム242とドライバアーム244を連結する第2軸部242cとの距離を変化させている。
このため、図13に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム242を回動操作すると、図14(A)に示すように、マガジン248が用紙Pに着座して、第3軸部244aがカム溝242b、246aの一端から他端に向けて移動する。
その後、ハンドルアーム242をさらに押圧すると、図14(B)に示すように、マガジン248を取り付けたドライバアーム244が回動しながら、ドライバ243がステープルに対して直動して、ドライバ243でステープルをせん断する。その際に、第3軸部244aは、カム溝242b、246a内を移動しながら、第2軸部242cとの距離である長さL3と、作用点E4との距離である長さL4を増加させて、ハンドルアーム242に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム242をさらに押圧すると、図14(C)に示すように、ドライバアーム244が下がって、ドライバ243でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第3軸部244aは、カム溝242b、246a内を移動して、カム溝242bの下端に到達して、第2軸部242cとの距離である長さL3と、作用点E4との距離である長さL4をさらに増加させて、ハンドルアーム242に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム242に掛かる荷重Fの減少率を増加させながら、当該荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ドライバアーム244とクリンチャアーム246の連結部となる第3軸部244aがカム溝242b、246aによるカム溝構造で移動可能にして動かすことによって、力点E3となる第2軸部242cからドライバアーム244の回転支点となる第3軸部244aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ243から第3軸部244aまでの長さL4の比を減少させられる。
このため、ハンドルアーム242の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、ハンドルアーム242とクリンチャアーム246とドライバアーム244の接合箇所をカム溝242b、246aとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム242の回転支点をクリンチャアーム246に固定して、ハンドルアーム242を単純な回転運動として、ドライバアーム244とクリンチャアーム246の連結部となる第3軸部244aを所望の形状のカム溝で移動可能とする構造とすることで、倍力率を設計者の任意に可変させられるようにしている。このため、綴り動作中の荷重が高い所で倍力率を上げ、荷重が低い所で倍力率を下げるので、綴じる荷重を軽くでき、待機状態での本体高さを小さくできる。また、ハンドルアーム242の長手方向の並進運動がなくなり、回転運動のみとなることで一定倍力構造のハンドルアームと同じ動きとなり、ユーザが一定倍力の機械と同様の使い心地を得られるようになる。
さらに、本実施形態では、ドライバアーム244は、クリンチャアーム246のアーム取付部247に水平方向に形成されたカム溝246aと第3軸部244aを介して取り付けられながら、当該第3軸部244aがハンドルアーム242に形成され、当該カム溝246aと異なる方向に展開されるカム溝242bにも沿って移動可能に設けられているので、ハンドルアーム242の回動操作に連動して、ドライバアーム244の押圧力を効率的に増大させられる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るステープラについて、図面を使用しながら説明する。図15は、本発明の第3の実施形態に係るステープラの側面図であり、図16(A)乃至図16(C)は、本発明の第2の実施形態に係るステープラの動作を示す側面図である。
本発明の第3の実施形態に係るステープラ300は、用紙Pをステープルで綴じる処理を行う用紙処理装置であり、ユーザの操作によって用紙Pを綴じる操作に要する荷重を低減する可変倍力機構が設けられている。
本実施形態のステープラ300は、図15示すように、ドライバアーム304を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム302と、ステープルを打ち出すドライバ303に力を作用させるドライバアーム304と、ステープルを折り曲げるクリンチャ305が設けられるクリンチャアーム306とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム304のクリンチャアーム306との対向面側にステープルが装填されるマガジン308が取り付けられている。
ハンドルアーム302とドライバアーム304、ハンドルアーム302とクリンチャアーム306、及びドライバアーム304とクリンチャアーム306は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム302とドライバアーム304は、第2軸部302cを連結部として連結され、ハンドルアーム302とクリンチャアーム306は、第1軸部302aを連結部として連結され、ドライバアーム304とクリンチャアーム306は、第3軸部304aを連結部として連結されている。なお、第3軸部304aは、マガジン308を回動可能に軸支する。
本実施形態では、ドライバアーム304は、クリンチャアーム306の基端側に凸状に設けられたアーム取付部307と第3軸部304aを介して取り付けられる。また、ドライバアーム304は、第1軸部302aによりクリンチャアーム306のアーム取付部307に支持されたハンドルアーム302と倍力軸となる第2軸部302cにより連結される。さらに、ドライバアーム304は、第2軸部302cに挿入されるカム溝となる軸穴部304bを備え、第2軸部302c及び軸穴部304bを介して、ハンドルアーム302に取り付けられる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム302とドライバアーム304を連結する倍力軸となる第2軸部302cは、ハンドルアーム302に形成された屈曲形状の第1カム溝となる軸穴部302bと、ドライバアーム304に形成された略直線形状の第2カム溝となる軸穴部304bを貫通して、これらの軸穴部302b、304bに沿って移動可能に設けられている。また、第2軸部302cは、図15に示すように、クリンチャアーム306のアーム取付部307に軸支されたガイド手段となるリンク310と連結され、その動作範囲が制御されている。
ハンドルアーム302は、先端側に力が加えられることによって、ハンドルアーム302は、第1軸部302aを支点とした回転動作で変位するので、力を受ける倍力軸となる第2軸部302cを介してドライバアーム304を押圧する。
軸穴部302bは、ハンドルアーム302の回転動作によって変化する第2軸部302cが接触する部位に応じて、第2軸部302cとの接触角度、接触位置、又はその両方を異ならせる区間が設定されるように構成されている。本実施形態では、軸穴部302bは、図15に示すように、屈曲形状であり、ステープラ300が待機状態では、一端302b1から屈曲部302b2までが略水平方向に展開され、屈曲部302bから他端302b3までが水平方向に対して斜め上側の方向に展開される構成となっている。
ハンドルアーム302とドライバアーム304は、ハンドルアーム302の他方の端部側とドライバアーム304の他方の端部側が第2軸部302cにより回転方向、又は並進方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム302とドライバアーム304との連結部である第2軸部302cは、第3軸部304aの前方に設けられ、第2軸部302cが移動し得る軌跡は、リンク310のリンク支点310aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム302では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム304との連結部である第2軸部302cがドライバアーム304に対しての力の作用点E2となり、第1軸部302aが回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム304では、ハンドルアーム302との連結部である第2軸部302cがハンドルアーム302により力が加えられる力点E3となり、ドライバ303がステープルに対しての力の作用点E4となり、第3軸部304aが回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ300は、ハンドルアーム302とドライバアーム304における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、前述した(2)式により求められる。
(2)式から、力点E1から第1軸部302aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部302cから第1軸部302aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率が増加する。また、力点E3となる第2軸部302cからドライバアーム304の回転支点となる第3軸部304aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ303から第3軸部304aまでの長さL4の比を増加させると、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率が減少する。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ハンドルアーム302とドライバアーム304を連結する第2軸部302cがカム溝となる軸穴部302b、304bに沿って移動可能に構成されることによって、第2軸部302cと第1軸部302aの距離、及び第2軸部302cと第3軸部304aとの距離が変化する構成となっている。
このため、図15に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム302を回動操作すると、図16(A)に示すように、マガジン308が用紙Pに着座して、第2軸部302cがドライバアーム304に形成された軸穴部304bに沿って移動すると同時に、ハンドルアーム302に形成された軸穴部302bの一端302b1から屈曲点302b2に向けて移動する。
その後、ハンドルアーム302をさらに押圧すると、図16(B)に示すように、マガジン308を取り付けたドライバアーム304が回動しながら、ドライバ303がステープルに対して押動して、ドライバ303でステープルをせん断する。その際に、第2軸部302cは、軸穴部302bの屈曲点302b2から他端302b3に向けて移動しながら、第1軸部302aとの距離、及び第3軸部304aとの距離をそれぞれ減少させて、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム302をさらに押圧すると、図16(C)に示すように、ドライバアーム304が下がって、ドライバ303でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第2軸部302cは、軸穴部302bの他端302b3に到達して、第1軸部302aとの距離、及び第3軸部304aとの距離をさらにそれぞれ減少させて、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ハンドルアーム302とドライバアーム304の連結部である倍力軸となる第2軸部302cがカム溝構造で動くことによって、力点E1から第1軸部302aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部302cから第1軸部302aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
また、力点E3となる第2軸部302cからドライバアーム304の回転支点となる第3軸部304aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ303から第3軸部304aまでの長さL4の比を増加させられる。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
このため、ハンドルアーム302の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、ハンドルアーム302とドライバアーム304の接合箇所をカム溝302bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、倍力率が常に一定な従来の倍力構造では、倍力率を上げると、待機状態での本体高さが上がり、ユーザが持ち難くなる問題点と、待機状態での本体高さを下げると、倍力率が下がって、操作荷重が重くなり、ユーザが綴り難くなる問題点の二律背反を抱えていた。さらに、従来のステープラでは、ユーザが力を加えるハンドルアームと土台となるクリンチャアームがカム溝で連結しており、ハンドルの動きが単純な回転運度でないため、ユーザが操作する時に違和感を与えることがあった。すなわち、ハンドルアームの操作で可変倍力を行うと、ハンドルの回転支点の移動により、ハンドルアームの回転軌跡がずれるため、ユーザによって操作に違和感を与えるものとなっていた。
これに対して、本実施形態では、ハンドルアーム302の回転支点をクリンチャアーム306に固定して、ハンドルアーム302を単純な回転運動として、倍力軸となるハンドルアーム302とドライバアーム304の連結部となる第2軸部302cを所望の形状のカム溝で移動可能とする構造とすることで、倍力率を設計者の任意に可変させられるようにしている。このため、綴り動作中の荷重が高い所で倍力率を上げ、荷重が低い所で倍力率を下げるように設計することによって、綴じる荷重を軽くでき、待機状態での本体高さを小さくできる。また、ハンドルアーム302の長手方向の並進運動がなくなり、回転運動のみとなることで一定倍力構造のハンドルアームと同じ動きとなり、ユーザが一定倍力の機械と同様の使い心地を得られるようになる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム302の回動操作をした際に、倍力軸となる第2軸部302cが軸穴部302b、304bに沿って移動することによって、第1軸部302aとの距離、及び第3軸部304aとの距離を円滑に変えられるので、ハンドルアーム302の操作に要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させるステープラの操作性が向上させられる。特に、リンク310を介して第2軸部302cの移動動作が制御されることによって、第2軸部302cと第1軸部302a及び第3軸部304aとのそれぞれの距離を円滑に変えられるので、ステープラの操作性が向上する。
さらに、本実施形態では、ハンドルアーム302は、ドライバアーム304に略水平方向に形成されたカム溝304bに第2軸部302cを介して取り付けられながら、当該第2軸部302cがハンドルアーム302に形成され、当該カム溝304bと異なる方向に展開されるカム溝302bにも沿って移動可能に設けられており、当該第2軸部302cの移動がリンク310で制御されることで、信頼性の高い可変倍力機構を達成できる。
なお、本発明の第3の実施形態では、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率の変化を所望の態様とするために、倍力軸となる第2軸部302cの動作を制御する手段を変えてもよい。以下、本発明の第3の実施形態に係るステープラの変形例について、図面を使用しながら説明する。図17は、本発明の第3の実施形態に係るステープラの一変形例の側面図であり、図18(A)乃至図18(C)は、本発明の第3の実施形態に係るステープラの一変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態の一変形例に係るステープラ320は、図17示すように、ドライバアーム324を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム322と、ステープルを打ち出すドライバ323に力を作用させるドライバアーム324と、ステープルを折り曲げるクリンチャ325が設けられるクリンチャアーム326とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム324のクリンチャアーム326との対向面側にステープルが装填されるマガジン328が取り付けられている。
ハンドルアーム322とドライバアーム324、ハンドルアーム322とクリンチャアーム326、及びドライバアーム324とクリンチャアーム326は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム322とドライバアーム324は、第2軸部322cを連結部として連結され、ハンドルアーム322とクリンチャアーム326は、第1軸部322aを連結部として連結され、ドライバアーム324とクリンチャアーム326は、第3軸部324aを連結部として連結されている。なお、第3軸部324aは、マガジン328を回動可能に軸支する。
本実施形態では、ドライバアーム324は、クリンチャアーム326の基端側に凸状に設けられたアーム取付部327と第3軸部324aを介して取り付けられる。また、ドライバアーム324は、第1軸部322aによりクリンチャアーム326のアーム取付部327に支持されたハンドルアーム322と倍力軸となる第2軸部322cにより連結される。さらに、ドライバアーム324は、第2軸部322cに挿入されるカム溝となる軸穴部324bを備え、第2軸部322c及び軸穴部324bを介して、ハンドルアーム322に取り付けられる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム322とドライバアーム324を連結する倍力軸となる第2軸部322cは、ハンドルアーム322に形成された屈曲形状の第1カム溝となる軸穴部322bと、ドライバアーム324に形成された略直線形状の第2カム溝となる軸穴部324bを貫通して、これらの軸穴部322b、324bに沿って移動可能に設けられている。また、第2軸部322cは、図17に示すように、クリンチャアーム326のアーム取付部327に形成されたガイド手段となる略円弧形状のガイド溝330にも貫通して、その動作範囲が制御されている。
ハンドルアーム322は、先端側に力が加えられることによって、第1軸部322aを支点とした回転動作で変位するので、力を受ける倍力軸となる第2軸部322cを介してドライバアーム324を押圧する。そして、倍力軸となる第2軸部322cをガイドする軸穴部322b、324b、ガイド溝330の形状と、第2軸部322cが移動し得る軌跡によって、ハンドルアーム322を微小に動かしたときの動きを回転動作と見なすことができる。
軸穴部322bは、ハンドルアーム322の回転動作によって変化する第2軸部322cが接触する部位に応じて、第2軸部322cとの接触角度、接触位置、又はその両方を異ならせる区間が設定されるように構成されている。本実施形態では、軸穴部322bは、図17に示すように、屈曲形状であり、ステープラ320が待機状態では、一端322b1から屈曲部322b2までが略水平方向に展開され、屈曲部322bから他端322b3までが水平方向に対して斜め上側の方向に展開される構成となっている。
ハンドルアーム322とドライバアーム324は、ハンドルアーム322の他方の端部側とドライバアーム324の他方の端部側が第2軸部322cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム322とドライバアーム324との連結部である第2軸部322cは、第3軸部324aの前方に設けられる。このため、ハンドルアーム322では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム324との連結部である第2軸部322cがドライバアーム324に対しての力の作用点E2となり、第1軸部322aが回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム324では、ハンドルアーム322との連結部である第2軸部322cがハンドルアーム322により力が加えられる力点E3となり、ドライバ323がステープルに対しての力の作用点E4となり、第3軸部324aが回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ320は、ハンドルアーム322とドライバアーム324における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム322に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。ハンドルアーム322に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、前述した(2)式により求められる。
(2)式から、力点E1から第1軸部322aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部322cから第1軸部322aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム322に掛かる荷重Fの減少率が増加する。また、力点E3となる第2軸部322cからドライバアーム324の回転支点となる第3軸部324aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ323から第3軸部324aまでの長さL4の比を増加させると、ハンドルアーム322に掛かる荷重Fの減少率が減少する。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ハンドルアーム322とドライバアーム324を連結する第2軸部322cがカム溝となる軸穴部322b、324bに沿って移動可能に構成されることによって、第2軸部322cと第1軸部322aの距離、及び第2軸部322cと第3軸部324aとの距離が変化する構成となっている。
このため、図17に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム322を回動操作すると、図18(A)に示すように、マガジン328が用紙Pに着座して、第2軸部322cがドライバアーム324に形成された軸穴部324bに沿って移動すると同時に、ハンドルアーム322に形成された軸穴部322bの一端322b1から屈曲点322b2に向けて移動する。
その後、ハンドルアーム322をさらに押圧すると、図18(B)に示すように、マガジン328を取り付けたドライバアーム324が回動しながら、ドライバ323がステープルに対して押動して、ドライバ323でステープルをせん断する。その際に、第2軸部322cは、軸穴部322bの屈曲点322b2から他端322b3に向けて移動しながら、第1軸部322aとの距離、及び第3軸部324aとの距離をそれぞれ減少させて、ハンドルアーム322に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム322をさらに押圧すると、図18(C)に示すように、ドライバアーム324が下がって、ドライバ323でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第2軸部322cは、軸穴部322bの他端322b3に到達して、第1軸部322aとの距離、及び第3軸部324aとの距離をさらにそれぞれ減少させて、ハンドルアーム322に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム322に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ハンドルアーム322とドライバアーム324の連結部である倍力軸となる第2軸部322cがカム溝構造で動くことによって、力点E1から第1軸部322aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部322cから第1軸部322aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム322に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
また、力点E3となる第2軸部322cからドライバアーム324の回転支点となる第3軸部324aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ323から第3軸部324aまでの長さL4の比を増加させられる。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
このため、ハンドルアーム322の操作の工程で要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、ハンドルアーム322とドライバアーム324の接合箇所をカム溝322bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、倍力率が常に一定な従来の倍力構造では、倍力率を上げると、待機状態での本体高さが上がり、ユーザが持ち難くなる問題点と、待機状態での本体高さを下げると、倍力率が下がって、操作荷重が重くなり、ユーザが綴り難くなる問題点の二律背反を抱えていた。さらに、従来のステープラでは、ユーザが力を加えるハンドルアームと土台となるクリンチャアームがカム溝で連結しており、ハンドルの動きが単純な回転運度でないため、ユーザが操作する時に違和感を与えることがあった。すなわち、ハンドルアームの操作で可変倍力を行うと、ハンドルの回転支点の移動により、ハンドルアームの回転軌跡がずれるため、ユーザによって操作に違和感を与えるものとなっていた。
これに対して、本実施形態では、ハンドルアーム322の回転支点をクリンチャアーム326に固定して、ハンドルアーム322を単純な回転運動として、倍力軸となるハンドルアーム322とドライバアーム324の連結部となる第2軸部322cを所望の形状のカム溝で移動可能とする構造とすることで、倍力率を設計者の任意に可変させられるようにしている。このため、綴り動作中の荷重が高い所で倍力率を上げ、荷重が低い所で倍力率を下げるように設計することによって、綴じる荷重を軽くでき、待機状態での本体高さを小さくできる。また、ハンドルアーム322の長手方向の並進運動がなくなり、回転運動のみとなることで一定倍力構造のハンドルアームと同じ動きとなり、ユーザが一定倍力の機械と同様の使い心地を得られるようになる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム322の回動操作をした際に、倍力軸となる第2軸部322cが軸穴部322b、324b、ガイド溝330に沿って移動することによって、第1軸部322aとの距離、及び第3軸部324aとの距離を円滑に変えられるので、ハンドルアーム322の操作に要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させるステープラの操作性が向上させられる。特に、クリンチャアーム326に形成したガイド溝330を介して第2軸部322cの移動動作が制御されることによって、リンク等の部品を増加させずに、第2軸部322cと第1軸部322a及び第3軸部324aとのそれぞれの距離を円滑に変えられるので、コストを抑えてステープラの操作性が向上する。
さらに、本実施形態では、ハンドルアーム322は、ドライバアーム324に略水平方向に形成されたカム溝324bに第2軸部322cを介して取り付けられながら、当該第2軸部322cがハンドルアーム322に形成され、当該カム溝324bと異なる方向に展開されるカム溝322bにも沿って移動可能に設けられており、第2軸部322cの移動がクリンチャアーム326の取付部327に設けられたカム溝330で制御されることで、信頼性の高い可変倍力機構を達成できる。
なお、本発明の第3の実施形態では、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率の変化を所望の態様とするために、倍力軸となる第2軸部302cの動作を制御する手段を他の手段に変えてもよい。以下、本発明の第3の実施形態に係るステープラの他の変形例について、図面を使用しながら説明する。図19は、本発明の第3の実施形態に係るステープラの他の変形例の側面図であり、図20(A)乃至図20(C)は、本発明の第3の実施形態に係るステープラの他の変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態の他の変形例に係るステープラ340は、図19示すように、ドライバアーム344を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム342と、ステープルを打ち出すドライバ343に力を作用させるドライバアーム344と、ステープルを折り曲げるクリンチャ345が設けられるクリンチャアーム346とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム344のクリンチャアーム346との対向面側にステープルが装填されるマガジン348が取り付けられている。
ハンドルアーム342とドライバアーム344、ハンドルアーム342とクリンチャアーム346、及びドライバアーム344とクリンチャアーム346は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム342とドライバアーム344は、第2軸部342cを連結部として連結され、ハンドルアーム342とクリンチャアーム346は、第1軸部342aを連結部として連結され、ドライバアーム344とクリンチャアーム346は、第3軸部344aを連結部として連結されている。なお、第3軸部344aは、マガジン348を回動可能に軸支する。
本実施形態では、ドライバアーム344は、クリンチャアーム346の基端側に凸状に設けられたアーム取付部347と第3軸部344aを介して取り付けられる。また、ドライバアーム344は、第1軸部342aによりクリンチャアーム346のアーム取付部347に支持されたハンドルアーム342と倍力軸となる第2軸部342cにより連結される。さらに、ドライバアーム344は、第2軸部342cに挿入されるカム溝となる軸穴部344bを備え、第2軸部342c及び軸穴部344bを介して、ハンドルアーム342に取り付けられる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム342とドライバアーム344を連結する倍力軸となる第2軸部342cは、ハンドルアーム342に形成された屈曲形状の第1カム溝となる軸穴部342bと、ドライバアーム344に形成された略直線形状の第2カム溝となる軸穴部344bを貫通して、これらの軸穴部342b、344bに沿って移動可能に設けられている。また、第2軸部342cは、図19に示すように、マガジン348の側面側に軸支されたガイド手段となるリンク350と連結され、その動作範囲が制御されている。
ハンドルアーム342は、先端側に力が加えられることによって、第1軸部342aを支点とした回転動作で変位するので、力を受ける倍力軸となる第2軸部342cを介してドライバアーム344を押圧する。そして、倍力軸となる第2軸部342cをガイドする軸穴部342b、344bの形状と、第2軸部342cが移動し得る軌跡によって、ハンドルアーム342を微小に動かしたときの動きを回転動作と見なすことができる。
軸穴部342bは、ハンドルアーム342の回転動作によって変化する第2軸部342cが接触する部位に応じて、第2軸部342cとの接触角度、接触位置、又はその両方を異ならせる区間が設定されるように構成されている。本実施形態では、軸穴部342bは、図19に示すように、屈曲形状であり、ステープラ340が待機状態では、一端342b1から屈曲部342b2までが略水平方向に展開され、屈曲部342bから他端342b3までが水平方向に対して斜め上側の方向に展開される構成となっている。
ハンドルアーム342とドライバアーム344は、ハンドルアーム342の他方の端部側とドライバアーム344の他方の端部側が第2軸部342cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム342とドライバアーム344との連結部である第2軸部342cは、第3軸部344aの前方に設けられ、第2軸部342cが移動し得る軌跡は、リンク350のリンク支点350aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム342では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム344との連結部である第2軸部342cがドライバアーム344に対しての力の作用点E2となり、第1軸部342aが回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム344では、ハンドルアーム342との連結部である第2軸部342cがハンドルアーム342により力が加えられる力点E3となり、ドライバ343がステープルに対しての力の作用点E4となり、第3軸部344aが回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ340は、ハンドルアーム342とドライバアーム344における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム342に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。ハンドルアーム342に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、前述した(2)式により求められる。
(2)式から、力点E1から第1軸部342aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部342cから第1軸部342aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム342に掛かる荷重Fの減少率が増加する。また、力点E3となる第2軸部342cからドライバアーム344の回転支点となる第3軸部344aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ343から第3軸部344aまでの長さL4の比を増加させると、ハンドルアーム342に掛かる荷重Fの減少率が減少する。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ハンドルアーム342とドライバアーム344を連結する第2軸部342cがカム溝となる軸穴部342b、344bに沿って移動可能に構成されることによって、第2軸部342cと第1軸部342aの距離、及び第2軸部342cと第3軸部344aとの距離が変化する構成となっている。
このため、図19に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム342を回動操作すると、図20(A)に示すように、マガジン348が用紙Pに着座して、第2軸部342cがハンドルアーム342に形成された軸穴部342bの一端342b1から屈曲点342b2に向けて移動する。また、同時に第2軸部342cがドライバアーム344に形成された軸孔部344bに沿って移動しても良い。
その後、ハンドルアーム342をさらに押圧すると、図20(B)に示すように、マガジン348を取り付けたドライバアーム344が回動しながら、ドライバ343がステープルに対して押動して、ドライバ343でステープルをせん断する。その際に、第2軸部342cは、リンク350にガイドされながら、軸穴部342bの屈曲点342b2から他端342b3に向けて移動して、第1軸部342aとの距離、及び第3軸部344aとの距離をそれぞれ減少させて、ハンドルアーム342に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム342をさらに押圧すると、図20(C)に示すように、ドライバアーム344が下がって、ドライバ343でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第2軸部342cは、軸穴部342bの他端342b3に到達して、第1軸部342aとの距離、及び第3軸部344aとの距離をさらにそれぞれ減少させて、ハンドルアーム342に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム342に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ハンドルアーム342とドライバアーム344の連結部である倍力軸となる第2軸部342cがカム溝構造で動くことによって、力点E1から第1軸部342aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部342cから第1軸部342aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム342に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
また、力点E3となる第2軸部342cからドライバアーム344の回転支点となる第3軸部344aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ343から第3軸部344aまでの長さL4の比を増加させられる。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
このため、ハンドルアーム342の操作に要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、ハンドルアーム342とドライバアーム344の接合箇所をカム溝342b、344bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、倍力率が常に一定な従来の倍力構造では、倍力率を上げると、待機状態での本体高さが上がり、ユーザが持ち難くなる問題点と、待機状態での本体高さを下げると、倍力率が下がって、操作荷重が重くなり、ユーザが綴り難くなる問題点の二律背反を抱えていた。さらに、従来のステープラでは、ユーザが力を加えるハンドルアームと土台となるクリンチャアームがカム溝で連結しており、ハンドルの動きが単純な回転運度でないため、ユーザが操作する時に違和感を与えることがあった。すなわち、ハンドルアームの操作で可変倍力を行うと、ハンドルの回転支点の移動により、ハンドルアームの回転軌跡がずれるため、ユーザによって操作に違和感を与えるものとなっていた。
これに対して、本実施形態では、ハンドルアーム342の回転支点をクリンチャアーム346に固定して、ハンドルアーム342を単純な回転運動として、倍力軸となるハンドルアーム342とドライバアーム344の連結部となる第2軸部342cを所望の形状のカム溝で移動可能とする構造とすることで、倍力率を設計者の任意に可変させられるようにしている。このため、綴り動作中の荷重が高い所で倍力率を上げ、荷重が低い所で倍力率を下げるように設計することによって、綴じる荷重を軽くでき、待機状態での本体高さを小さくできる。また、ハンドルアーム342の長手方向の並進運動がなくなり、回転運動のみとなることで一定倍力構造のハンドルアームと同じ動きとなり、ユーザが一定倍力の機械と同様の使い心地を得られるようになる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム342の回動操作をした際に、倍力軸となる第2軸部342cが軸穴部342b、344bに沿って移動することによって、第1軸部342aとの距離、及び第3軸部344aとの距離を円滑に変えられるので、ハンドルアーム342の操作に要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させるステープラの操作性が向上させられる。
特に、マガジン348に軸支されたリンク350を介して第2軸部342cの移動動作が制御されることによって、第2軸部342cと第1軸部342a及び第3軸部344aとのそれぞれの距離を円滑に変えられるので、ステープラの操作性が向上し、用紙Pにマガジン348が着座してからリンク350が動き出すことによって、用紙Pの枚数によらず、用紙Pをマガジン348で挟み込んだ後の荷重が必要な操作工程でハンドルアーム342に掛かる荷重減少率を変化させることができる。
さらに、本実施形態では、ハンドルアーム342は、ドライバアーム344に略水平方向に形成されたカム溝344bに第2軸部342cを介して取り付けられながら、当該第2軸部342cがハンドルアーム342に形成され、当該カム溝344bと異なる方向に展開されるカム溝342bにも沿って移動可能に設けられており、当該第2軸部342cの移動がリンク350で制御されることで、信頼性の高い可変倍力機構を達成できる。
なお、本発明の第3の実施形態では、ハンドルアーム302に掛かる荷重Fの減少率の変化を所望の態様とするために、更に他の態様に変えてもよい。以下、本発明の第3の実施形態に係るステープラの更に他の変形例について、図面を使用しながら説明する。図21は、本発明の第3の実施形態に係るステープラの更に他の変形例の側面図であり、図22(A)乃至図22(C)は、本発明の第3の実施形態に係るステープラの更に他の変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態の更に他の変形例に係るステープラ360は、図21示すように、ドライバアーム364を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム362と、ステープルを打ち出すドライバ363に力を作用させるドライバアーム364と、ステープルを折り曲げるクリンチャ365が設けられるクリンチャアーム366とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム364のクリンチャアーム366との対向面側にステープルが装填されるマガジン368が取り付けられている。
ハンドルアーム362とドライバアーム364、ハンドルアーム362とクリンチャアーム366、及びドライバアーム364とクリンチャアーム366は、それぞれ各アームの基端側を軸支する軸部を連結部として連結されている。具体的には、ハンドルアーム362とドライバアーム364は、第2軸部362cを連結部として連結され、ハンドルアーム362とクリンチャアーム366は、第1軸部362aを連結部として連結され、ドライバアーム364とクリンチャアーム366は、第3軸部364aを連結部として連結されている。なお、第3軸部364aは、マガジン368を回動可能に軸支する。
本実施形態では、ドライバアーム364は、クリンチャアーム366の基端側に凸状に設けられたアーム取付部367と第3軸部364aを介して取り付けられる。また、ドライバアーム364は、第1軸部362aによりクリンチャアーム366のアーム取付部367に支持されたハンドルアーム362と倍力軸となる第2軸部362cにより連結される。さらに、ドライバアーム364は、第2軸部362cに挿入されるカム溝となる軸穴部364bを備え、第2軸部362c及び軸穴部364bを介して、ハンドルアーム362に取り付けられる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム362とドライバアーム364を連結する倍力軸となる第2軸部362cは、ハンドルアーム362に形成された丸穴362bと、ドライバアーム324に形成された屈曲形状のカム溝となる軸穴部364bを貫通して、当該軸穴部364bに沿って移動可能に設けられている。
ハンドルアーム362は、先端側に力が加えられることによって、第1軸部362aを支点とした回転動作で変位するので、力を受ける倍力軸となる第2軸部362cを介してドライバアーム364を押圧する。そして、倍力軸となる第2軸部362cをガイドする軸穴部364bの形状と、第2軸部362cが移動し得る軌跡によって、ハンドルアーム362を微小に動かしたときの動きを回転動作と見なすことができる。
軸穴部364bは、ハンドルアーム362の回転動作によって変化する第2軸部362cが接触する部位に応じて、第2軸部362cとの接触角度、接触位置、又はその両方を異ならせる区間が設定されるように構成されている。本実施形態では、軸穴部364bは、図21に示すように、屈曲形状であり、ステープラ360が待機状態では、一端364b1から屈曲部364b2までが略水平方向に展開され、屈曲部364bから他端364b3までが水平方向に対して斜め下側の方向に展開される構成となっている。
ハンドルアーム362とドライバアーム364は、ハンドルアーム362の他方の端部側とドライバアーム364の他方の端部側が第2軸部362cにより回転方向への変位が可能に連結される。ハンドルアーム362とドライバアーム364との連結部である第2軸部362cは、第3軸部364aの前方に設けられ、第2軸部362cが移動し得る軌跡は、第1軸部362aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム362では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム364との連結部である第2軸部362cがドライバアーム364に対しての力の作用点E2となり、第1軸部362aが回転動作の支点となる。
また、ドライバアーム364では、ハンドルアーム362との連結部である第2軸部362cがハンドルアーム362により力が加えられる力点E3となり、ドライバ363がステープルに対しての力の作用点E4となり、第3軸部364aが回転動作の支点となる。
本実施形態のステープラ360は、ハンドルアーム362とドライバアーム364における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。ハンドルアーム362に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、前述した(2)式により求められる。
(2)式から、力点E1から第1軸部362aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部362cから第1軸部362aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fの減少率が増加する。また、力点E3となる第2軸部362cからドライバアーム364の回転支点となる第3軸部364aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ363から第3軸部364aまでの長さL4の比を増加させると、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fの減少率が減少する。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
すなわち、本実施形態では、軸部のうち、ハンドルアーム362とドライバアーム364を連結する第2軸部362cがカム溝となる軸穴部364bに沿って移動可能に構成されることによって、第2軸部362cと第1軸部362aの距離、及び第2軸部362cと第3軸部364aとの距離が変化する構成となっている。
このため、図21に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム362を回動操作すると、図22(A)に示すように、マガジン368が用紙Pに着座して、第2軸部362cがドライバアーム364に形成された軸穴部364bの一端364b1から屈曲点364b2に向けて移動する。
その後、ハンドルアーム362をさらに押圧すると、図22(B)に示すように、マガジン368を取り付けたドライバアーム364が回動しながら、ドライバ363がステープルに対して押動して、ドライバ363でステープルをせん断する。その際に、第2軸部362cは、軸穴部364bの屈曲点364b2から他端364b3に向けて移動しながら、第1軸部362aとの距離、及び第3軸部364aとの距離をそれぞれ減少させて、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム362をさらに押圧すると、図22(C)に示すように、ドライバアーム364が下がって、ドライバ363でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、第2軸部362cは、軸穴部364bの他端364b3に到達して、第1軸部362aとの距離、及び第3軸部364aとの距離をさらにそれぞれ減少させて、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ハンドルアーム362とドライバアーム364の連結部である倍力軸となる第2軸部362cがカム溝構造で動くことによって、力点E1から第1軸部362aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部362cから第1軸部362aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
また、力点E3となる第2軸部362cからドライバアーム364の回転支点となる第3軸部364aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ363から第3軸部364aまでの長さL4の比を増加させられる。本実施形態では、長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
このため、ハンドルアーム362の操作に要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させられるので、ステープラの操作性が向上する。特に、ハンドルアーム362とドライバアーム364の接合箇所をカム溝364bとすることで、力の必要な動作に対し、任意で倍力率に変更できるようになり、また、待機状態での機械全高を小さくできる。
また、倍力率が常に一定な従来の倍力構造では、倍力率を上げると、待機状態での本体高さが上がり、ユーザが持ち難くなる問題点と、待機状態での本体高さを下げると、倍力率が下がって、操作荷重が重くなり、ユーザが綴り難くなる問題点の二律背反を抱えていた。さらに、従来のステープラでは、ユーザが力を加えるハンドルアームと土台となるクリンチャアームがカム溝で連結しており、ハンドルの動きが単純な回転運度でないため、ユーザが操作する時に違和感を与えることがあった。すなわち、ハンドルアームの操作で可変倍力を行うと、ハンドルの回転支点の移動により、ハンドルアームの回転軌跡がずれるため、ユーザによって操作に違和感を与えるものとなっていた。
これに対して、本実施形態では、ハンドルアーム362の回転支点をクリンチャアーム366に固定して、ハンドルアーム362を単純な回転運動として、倍力軸となるハンドルアーム362とドライバアーム364の連結部となる第2軸部362cを所望の形状のカム溝で移動可能とする構造とすることで、倍力率を設計者の任意に可変させられるようにしている。このため、綴り動作中の荷重が高い所で倍力率を上げ、荷重が低い所で倍力率を下げるように設計することによって、綴じる荷重を軽くでき、待機状態での本体高さを小さくできる。また、ハンドルアーム362の長手方向の並進運動がなくなり、回転運動のみとなることで一定倍力構造のハンドルアームと同じ動きとなり、ユーザが一定倍力の機械と同様の使い心地を得られるようになる。
また、本実施形態では、ハンドルアーム362の回動操作をした際に、倍力軸となる第2軸部362cが軸穴部364bに沿って移動することによって、第1軸部362aとの距離、及び第3軸部364aとの距離を円滑に変えられるので、ハンドルアーム362の操作に要する荷重に応じて、荷重の減少率を変化させるステープラの操作性が向上させられる。特に、ドライバアーム264に屈曲形状のガイド溝264bを設けて、ハンドルアーム362の丸穴362bと共に倍力軸となる第2軸部362cを貫通させるシンプルな構成で、第2軸部362cと第1軸部362a及び第3軸部364aとのそれぞれの距離を円滑に変えられる構成とできるので、ステープラの操作性の向上を容易に図れようになる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係るステープラについて、図面を使用しながら説明する。図23は、本発明の第4の実施形態に係るステープラの側面図であり、図24(A)乃至図24(C)は、本発明の第4の実施形態に係るステープラの動作を示す側面図である。
本発明の第4の実施形態に係るステープラ400は、用紙Pをステープルで綴じる処理を行う用紙処理装置であり、ユーザの操作によって用紙Pを綴じる操作に要する荷重を低減する可変倍力機構が設けられている。
本実施形態のステープラ400は、図23に示すように、ドライバアーム404を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム402と、ステープルを打ち出すドライバ403に力を作用させるドライバアーム404と、ステープルを折り曲げるクリンチャ405が設けられるクリンチャアーム406とを備える。また、本実施形態では、ドライバアーム404のクリンチャアーム406との対向面側にステープルが装填されるマガジン408が取り付けられている。
ハンドルアーム402及びドライバアーム404は、図23に示すように、それぞれの基端側を1つの回動用軸部409によってクリンチャアーム406のアーム取付部407に軸支されている。そして、本実施形態では、ハンドルアーム402、ドライバアーム404、及びクリンチャアーム406は、リンク機構410を連結部として、それぞれのアーム402、404、406を連結することを特徴とする。
リンク機構410は、図23に示すように、ハンドルアーム402、ドライバアーム404、及びクリンチャアーム406のそれぞれにハンドルアーム用軸部411a、ドライバアーム用軸部412a、クリンチャアーム用軸部413aを介して軸支されたハンドルアーム用リンク411、ドライバアーム用リンク412、クリンチャアーム用リンク413を1つの共通軸部414を介して1点で連結されることによって構成される。
すなわち、本実施形態では、リンク機構410は、回動用通軸部409、ハンドルアーム用軸部411a、共通軸部414、及びクリンチャアーム用軸部413aから構成される一方の4節リンクと、回動用通軸部409、ハンドルアーム用軸部411a、共通軸部414、及びドライバアーム用軸部412aから構成される他方の4節リンクの計2つの4節リンクから構成されている。一方の4節リンクは、倍力機構を構成し、他方の4節リンク機構により、一方の4節リンクの動作方向を制御している。
このように、本実施形態では、ハンドルアーム402、ドライバアーム404、及びクリンチャアーム406のそれぞれをリンク機構410で連結することによって、ハンドルアーム402を介したドライバアーム404の回動による動作に伴って、当該リンク機構410が変形するので、当該リンク機構410の変形を介して、共通軸部414が移動するようになる。
このとき、一方の4節リンクによりハンドルアーム402の角度変化量よりも、ドライバアーム404の角度変化量が小さくなるが、ハンドルアーム402で入力された仕事量(力×角度変化量(距離))と、ドライバアーム404で出力される仕事量(力×角度変化量(距離))は変化しないため、ドライバアーム404では、発生する力が大きくなる。
すなわち、リンク機構410の変形に伴って共通軸部414が移動するようになると、ハンドルアーム402の回動動作に対して、ドライバアーム404の回動動作を変化させるので、倍力作用が発現されて、ハンドルアーム402に掛かる荷重の減少率を変化させられるようになる。
このため、図23に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム402を回動操作すると、図24(A)に示すように、マガジン408が用紙Pに着座して、クリンチャアーム用リンク413が略鉛直方向からドライバアーム用リンク412の方に向けて傾く動作に連動して、ドライバアーム用リンク412が鉛直方向に立てられるように移動する。
その後、ハンドルアーム402をさらに押圧すると、図24(B)に示すように、マガジン408を取り付けたドライバアーム404が回動しながら、ドライバ403がステープルに対して押動して、ドライバ403でステープルをせん断する。その際に、クリンチャアーム用リンク413がさらにドライバアーム用リンク412の方に向けて傾く動作に連動して、ドライバアーム用リンク412も同じ方向に傾くように移動しながら、ハンドルアーム362に掛かる荷重Fの減少率を増加させる。
そして、ハンドルアーム402をさらに押圧すると、図24(C)に示すように、ドライバアーム404が下がって、ドライバ403でせん断したステープルで用紙Pが綴じられる。その際に、クリンチャアーム用リンク413がさらにドライバアーム用リンク412の方に向けて傾く動作に連動して、ドライバアーム用リンク412も同じ方向にさらに傾くように移動しながら、ハンドルアーム402に掛かる荷重Fの減少率をさらに増加させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム402に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、ハンドルアーム402の回動動作に対して、ドライバアーム404の回動動作を変化させるので、倍力作用が発現されて、ハンドルアーム402に掛かる荷重の減少率を変化させられる。
また、カム溝を使用した従来の倍力機構では、カム溝に軸部が滑りながら移動するため、カム溝の耐久性が悪くなり、長期間の使用により、カム溝が潰れて、設計者が設定した任意の倍力率から外れてしまうことが問題となっていた。
これに対して、本実施形態では、ステープラ400を構成する際に、カム溝を使用せずに、4節リンクを使用することによって、ステープラ400を構成する全ての関連部品が軸着固定としている。このため、軸部の移動に伴うカム溝の滑り移動を発生させずに、耐久性を向上させると共に、設計者が設定した任意の可変倍力をより精度よく実現できるようになる。また、軸部の滑り移動がないため、耐久性が向上することに加えて、軸受部の表面状態による摩擦力のロスが発生しないので、力の伝達効率が改善されるようになるので、より簡素な構成で円滑な可変倍力の操作が可能になる。
なお、本発明の第4の実施形態では、2つの4節リンクを用いて、リンク機構410によるステープラ400を構成しているが、1つの4節リンクのみを用いてステープラを構成することにしてもよい。以下、本発明の第4の実施形態に係るステープラの一変形例について、図面を使用しながら説明する。図25は、本発明の第4の実施形態に係るステープラの一変形例の側面図であり、図26(A)乃至図26(C)は、本発明の第4の実施形態に係るステープラの一変形例の動作を示す側面図である。
本実施形態の一変形例に係るステープラ420は、図25に示すように、ドライバアーム424を押圧する操作をする際に回動させるハンドルアーム422と、ステープルを打ち出すドライバ423に力を作用させるドライバアーム424と、ステープルを折り曲げるクリンチャ425が設けられるクリンチャアーム426とを備える。
ハンドルアーム422とドライバアーム424は、連結部となる第2軸部422cで軸支され、ハンドルアーム422とクリンチャアーム426は、連結部となる第1軸部422aで軸支され、ドライバアーム424とリンク430は、連結部となる第3軸部424aで軸支されている。そして、本実施形態では、第3軸部424aは、リンク用軸部430aを介してクリンチャアーム426に軸支されたリンク430と連結されており、ドライバアーム424の回動による動作に伴って、第3軸部424aを移動させることによって、ハンドルアーム422に掛かる荷重の減少率を変化させることを特徴とする。すなわち、本実施形態では、第1軸部422a、第2軸部422c、リンク用軸部430a、及び第3軸部424aから構成される1つの4節リンクから構成されている。
ハンドルアーム422とドライバアーム424との連結部である第2軸部422cは、ドライバアーム424の基端側をクリンチャアーム426にリンク430を介して支持される第3軸部424aの上方に設けられ、第2軸部422cが移動し得る軌跡は、第1軸部422aを中心とした円弧となる。このため、ハンドルアーム422では、先端側がユーザにより力が加えられる力点E1となり、ドライバアーム424との連結部である第2軸部422cがドライバアーム424に対しての力の作用点E2となり、第1軸部422aが回転動作の支点となる。
このように、本実施形態では、クリンチャアーム426とドライバアーム424の支点となる第3軸部424aをリンク430で連結することによって構成される4節リンクを設けることによって、ハンドルアーム422を介したドライバアーム424の回動による動作に伴って、当該4節リンクが変形するので、かかる変形を介して、第1軸部422a、第2軸部422c及び第3軸部424aが移動するようになる。
すなわち、4節リンクの変形に伴って、第2軸部422c、及び第3軸部424aが移動するようになると、第3軸部424aがクリンチャアーム426の基端側に回転しながら移動するため、第3軸部424aとドライバ423との距離が変化し、ハンドルアーム422に掛かる荷重の減少率を変化させられるようになる。本実施形態のステープラ420は、ハンドルアーム422とドライバアーム424における力点及び作用点と支点間との距離の比率によって、ハンドルアーム424に掛かる荷重Fを低減した倍力機構を実現している。
ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率D(%)は、前述した(2)式により求められる。(2)式から、第2軸部422cが第1軸部422aを中心に回動することで、第1軸部422aと第2軸部422cとの距離L2が減少する。そのため、力点E1から第1軸部422aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部422cから第1軸部422aまでの長さL2の比が減少し、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
また、力点E3となる第2軸部422cからドライバアーム424の回転支点となる第3軸部424aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ423から第3軸部424aまでの長さL4の比を増加させると、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率が減少する。
このため、図25に示すような待機状態から、用紙Pをステープルで綴じるために、ハンドルアーム402を回動操作すると、図26(A)に示すように、リンク430がクリンチャアーム426の基端側に向けて傾きながら、ハンドルアーム422がドライバアーム424を押圧して、ドライバ423が用紙Pに近づくように移動する。
その後、ハンドルアーム422をさらに押圧すると、図26(B)に示すように、リンク430がクリンチャアーム426の基端側に向けてさらに傾きながら、ハンドルアーム422がドライバアーム424をより一層押圧して、ドライバ423が用紙Pに着座する。その際に、リンク430がさらにクリンチャアーム426の基端側に向けて傾く動作に連動して、ドライバアーム424がさらに用紙Pに向けて移動し、第2軸部422cが第1軸部422aを中心に回動することで、第1軸部422aと第2軸部422cとの距離L2が減少する。
このため、力点E1から第1軸部422aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部422cから第1軸部422aまでの長さL2の比が減少し、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率が増加する。また、第3軸部424aがクリンチャアーム426の基端側に向けて傾きながら移動するため、第2軸部422cと第3軸部424aとの距離である長さL3と、第3軸部424aとドライバ423との距離である長さL4の比が増加し、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率を減少させる。
そして、ハンドルアーム422をさらに押圧すると、図26(C)に示すように、ドライバアーム424が下がって、ドライバ423で用紙Pに孔が開けられる。その際に、リンク430がさらにクリンチャアーム426の基端側に向けて傾く動作に連動して、ドライバアーム424がさらに用紙Pに向けて移動し、第2軸部422cが第1軸部422aを中心に回動することで、第1軸部422aと第2軸部422cとの距離L2が減少する。
このため、力点E1から第1軸部422aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部422cから第1軸部422aまでの長さL2の比が減少し、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率が増加する。また、第3軸部424aがクリンチャアーム426の基端側に向けて傾きながら移動するため、第2軸部422cと第3軸部424aとの距離である長さL3と、第3軸部424aとドライバ423との距離である長さL4の比がさらに増加し、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率をさらに減少させる。
このように、本実施形態では、用紙Pを綴じる動作の所望の工程で動作に合わせた荷重Fとなるように、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fを段階的に減少させ、ステープルが用紙Pを貫通する段階で荷重Fが軽くなるようにしている。すなわち、リンク430を介して連結されるドライバアーム424とクリンチャアーム426の連結部となる第3軸部424aを、リンク430のリンク用軸部430を支点として回転移動可能にして動かすことによって、力点E1から第1軸部422aまでの長さL1に対する作用点E2となる第2軸部422cから第1軸部422aまでの長さL2の比を減少させると、ハンドルアーム422に掛かる荷重Fの減少率が増加する。
また、力点E3となる第2軸部422cからドライバアーム424の回転支点となる第3軸部424aまでの長さL3に対する作用点E4となるドライバ423から第3軸部424aまでの長さL4の比を減少させられる。長さL1、L2の比の減少による荷重Fの減少率の増加の度合いが、長さL3、L4の比の増加による荷重減少率の減少の度合いを上回るため、結果として荷重Fの減少率が増加する。
また、カム溝を使用した従来の倍力機構では、カム溝に軸部が滑りながら移動するため、カム溝の耐久性が悪くなり、長期間の使用により、カム溝が潰れて、設計者が設定した任意の倍力率から外れてしまうことが問題となっていた。
これに対して、本実施形態では、ステープラ420を構成する際に、カム溝を使用せずに、4節リンクを使用することによって、ステープラ420を構成する全ての関連部品が軸着固定としている。このため、軸部の移動に伴うカム溝の滑り移動を発生させずに、耐久性を向上させると共に、設計者が設定した任意の可変倍力をより精度よく実現できるようになる。また、軸部の滑り移動がないため、耐久性が向上することに加えて、軸受部の表面状態による摩擦力のロスが発生しないので、力の伝達効率が改善されるようになるので、より簡素な構成で円滑な可変倍力の操作が可能になる。
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ステープラの構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。