JP6823791B2 - 人工染色体ベクター及び形質転換哺乳類細胞 - Google Patents

人工染色体ベクター及び形質転換哺乳類細胞 Download PDF

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Description

本発明は、人工染色体ベクター及び形質転換哺乳類細胞に関し、詳しくは、細胞内での発光量が増幅されたルシフェラーゼの遺伝子を含む形質転換哺乳類細胞及び哺乳類細胞を形質転換するための人工染色体ベクターに関する。本発明の形質転換哺乳類細胞を用いることで、細胞における感度の高い転写活性測定が可能になる。
生命科学の分野では、細胞内カルシウム量の変動、細胞内タンパクのリン酸化、エネルギーであるATPの分布或いは遺伝子の転写活性の測定など、細胞内に起きるさまざまな現象を解析することが大変重要であり、解析する手段として各種分子プローブが作成され、イメージングが行われている。とりわけ細胞内イメージングツールとしてルシフェラーゼが用いられている。
甲虫由来のルシフェラーゼは、多複素環式有機酸D-(-)-2-(6'-ヒドロキシ-2'-ベンゾチアゾリル)-Δ2-チアゾリン-4-カルボン酸(以後、ルシフェリンと表記する)を基質とし、Mgイオン存在下でATPとルシフェリンが反応してルシフェニルアデニレートを形成し、酸素と結合し、励起状態のオキシルシフェリンが生じる。このオキシルシフェリンが基底状態に戻るときに光を発する。
ルシフェラーゼを用いたイメージングとして、例えば、細胞内カルシウム量を発光タンパク質イクオリンで、ATP量をルシフェラーゼで測定し、細胞内におけるエネルギー物質ATPの変動の可視化に成功している(非特許文献1)。また、ルシフェラーゼスプリットアッセイによりタンパク間分子間力の可視化に成功した例もある(非特許文献2)。ルシフェラーゼによるイメージングは蛍光タンパクのように1分子レベルの解析や細胞内のごく小さいエリアのイメージングには不向きであるが、細胞内のオルガネラレベルで起きている現象の解析、特に長時間に渡る測定においては蛍光タンパクでは計測できない細胞情報を得ることが可能である。よってルシフェラーゼイメージングは医薬の評価、スクリーニングに有効な方法である。
しかしながら、ルシフェラーゼを用いたイメージングの例は少ない。これは蛍光タンパクに比べてルシフェラーゼの哺乳類細胞内での安定性及び転写効率が低いために発光強度が十分でなかったためである。
Sala-Newby GB et al.: Imaging bioluminescent indicators shows Ca2+ and ATP permeability thresholds in live cells attacked by complement. Immunology. 1998 Apr;93(4):601-9. Ozawa T et al.: Split luciferase as an optical probe for detecting protein-protein interactions in mammalian cells based on protein splicing. Anal Chem. 2001 Jun 1;73(11):2516-21.
本発明は、細胞内に導入したルシフェラーゼ遺伝子に基づく発光強度が強くアッセイ精度が向上し、かつ、細胞間での発光強度のばらつきの少ないベクターを導入した形質転換哺乳類細胞を提供することを目的とする。さらに、転写活性の弱いプロモーターの解析に適した形質転換細胞を用いた感度の高い転写活性測定方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の人工染色体ベクター及び形質転換哺乳類細胞を提供するものである。
項1. 少なくとも1つのDNA配列挿入部位を含む哺乳類由来の人工染色体ベクターであって、前記DNA配列挿入部位に標的遺伝子のプロモーターと前記プロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んでなる、人工染色体ベクター。
項2. 標的遺伝子が時計遺伝子または炎症関連遺伝子である、項1に記載の人工染色体ベクター。
項3. 標的遺伝子が2種以上の時計遺伝子であり、各時計遺伝子のプロモーターの制御下に発光波長を区別可能な異なるルシフェラーゼを連結してなる項2に記載の人工染色体ベクター。
項4. 前記プロモーター及びその制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子がインスレーター配列によって挟まれてなる、項1〜3のいずれかに記載の人工染色体ベクター。
項5. 人工染色体がマウス人工染色体である、項1〜4のいずれかに記載の人工染色体ベクター。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の人工染色体ベクターを用いて形質転換された形質転換哺乳類細胞または非ヒト哺乳類個体。
項7. 前記哺乳類細胞がヒト細胞である、項6に記載の形質転換哺乳類細胞または非ヒト哺乳類個体。
項8. 人工染色体ベクターと細胞が同一の哺乳類由来である、項6又は7に記載の形質転換哺乳類細胞または非ヒト哺乳類個体。
本発明によれば、ルシフェラーゼの細胞内での発光強度を大幅に向上させ、それによりアッセイの精度を向上させることができ、転写活性の弱いプロモーターの解析も可能になる。
また、本発明の形質転換哺乳類細胞は、ルシフェラーゼの発光強度の細胞間のばらつきが少ないため、発光強度が一定である細胞を選別する必要がない。
Per2プロモーターの制御下の不安定化緑色発光ルシフェラーゼ遺伝子(ELuc-PEST)をランダムに若しくはマウス人工染色体に挿入して細胞で発現させたときの発光強度及び周期の比較を示す。 Per2プロモーターの制御下の不安定化緑色発光ルシフェラーゼ遺伝子(ELuc-PEST)をランダムに若しくはマウス人工染色体に挿入して細胞で発現させたときの継代培養の影響を示す。 Per2プロモーターの制御下のルシフェラーゼ遺伝子(SLG-PESTまたはELuc-PEST)をヒト人工染色体に挿入して細胞で発現させたときの継代培養の影響を示す。 NF-κB応答配列、TKプロモーター、不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST)をマウス人工染色体に組込んだA9細胞内に含む7クローンの発光強度、転写活性および継代安定性を検証した結果を示す。 PESTおよびカルパイン部分配列で不安定化させた緑色発光ルシフェラーゼ(ELuc)をヒト人工染色体に組込んだA9細胞のTNFαに対するNF-κB依存的転写活性化を示す。 mPer2とmBmal1の2種のプロモーターの下流に各々ルシフェラーゼ(SLG-PEST、SLR-PEST)をマウス人工染色体に含むA9細胞で、mPer2とmBmal1の内因性の遺伝子発現(mRNAの発現)パターンと同様に、逆位相を維持した緑色および赤色発光ルシフェラーゼ由来の発光リズムが測定できることを示す。 緑色及び赤色の2色発光細胞の発光強度比(SLG/SLR)、TNFαに対するNF-κB依存的な転写活性化、継代安定性を検証した結果を示す。 緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの3種類の発光レポーター遺伝子を各々Per2プロモーター、Bmal1プロモーター及びCAGプロモーターの制御下にマウス人工染色体ベクターに組み込んだA9細胞において、3種類のプロモーター活性の変動をリアルタイムに計測できることを示す。 マウス人工染色体ベクターに導入した緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度は形質転換細胞でほぼ均一であることを示す。 マウス人工染色体ベクターに導入した緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度は形質転換細胞でほぼ均一であることを示す。 実施例9および実施例10で樹立した3色発光細胞を用い、TNFαによるNF-κB依存的転写活性化とIκBα量の時間変化を計測した結果を示す。 マウス人工染色体ベクターを保持するES細胞に、HPRTプロモーターと緑色発光ルシフェラーゼを挿入し、樹立したキメラマウスのin vivoおよびex vivo発光イメージングを示す。
本明細書において、人工染色体及び細胞、個体の由来となる哺乳類としては、ヒト、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどを含むが、これらに限定されない。但し、哺乳類個体はヒトを含まない。
第1の実施形態において、本発明は、人工染色体ベクターに関する。この人工染色体ベクターは、少なくとも1つのDNA配列挿入部位を含む。
人工染色体ベクターは、哺乳類由来の人工染色体ベクターであり、好ましくはマウスの人工染色体ベクターまたはヒトの人工染色体ベクターである。人工染色体は、哺乳類染色体由来の天然型セントロメア、セントロメア近傍の染色体長腕の部位から長腕遠位を削除した染色体由来の長腕断片、及びテロメア配列を含むこと、ならびに、哺乳類の細胞及び個体組織において安定に保持されることを特徴とする。
本明細書中で使用する「哺乳類染色体由来の天然型セントロメア」という用語は、いずれか1つの哺乳類染色体のセントロメア全体(完全なセントロメア)を指す。
好ましい1つの実施形態において、本発明は、哺乳類染色体由来の天然型セントロメア、セントロメア近傍の染色体長腕の部位から長腕遠位を削除した染色体由来の長腕断片、及びテロメア配列を含むこと、ならびに、哺乳類の細胞及び個体組織において安定に保持されることを特徴とする、人工染色体ベクターを提供する。
本明細書中で使用する「哺乳類染色体由来の天然型セントロメア」という用語は、いずれか1つの哺乳類染色体のセントロメア全体(完全なセントロメア)を指す。したがって、このようなセントロメアには、哺乳類由来染色体のセントロメア配列の一部を用いて偶発的又は人工的に得られたセントロメア機能を有する構造体、及び、他の動物種の染色体のセントロメアは含まれない。
本明細書中で使用する「セントロメア近傍の染色体長腕の部位から長腕遠位を削除した染色体由来の長腕断片」は、本発明のベクターが哺乳類の細胞又は個体組織において安定に保持されるように、かつ哺乳類動物の個体発生と子孫伝達の妨げにならないように、可能な限り内在遺伝子の影響を排除することが望ましく、そのために、染色体の長腕中の内在遺伝子を除去するようにセントロメアに近い長腕部位で削除して得られる長腕断片を指す。これは全内在遺伝子(数)の少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、最も好ましくは99.9〜100%が除去されるようにセントロメアに近い長腕部位で削除して得られる長腕断片を指す。
本明細書中の「DNA」は、特に断らない限り、遺伝子若しくは遺伝子座、cDNA、化学修飾DNAを含むすべての種類のDNA核酸に対し使用するものとする。
本発明の人工染色体ベクターが「安定に保持される」とは、細胞分裂の際に該染色体ベクターの脱落を起こし難く、すなわち、分裂後であっても細胞内で安定に保持されること、それゆえに、該染色体ベクターが娘細胞や子孫マウスに効率よく子孫伝達されることを意味する。人工染色体ベクターは、該ベクターの由来する哺乳類と同じ由来の細胞に導入するのが安定に保持されるために好ましい。
哺乳類がマウスの場合、マウス染色体は、マウス染色体1〜19、X及びYのいずれでもよいが、好ましくは1番〜19番染色体のいずれかである。マウス以外の哺乳類では対応する染色体が使用可能である。
本発明のベクターは、外来DNA又は遺伝子配列を挿入するための部位を含むため、この部位に、標的遺伝子のプロモーター並びに該プロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子を組み込むことによって、該ベクターが任意の細胞、特に人工染色体ベクターと同じ若しくは類似する哺乳類由来の細胞に導入されたときに該標的遺伝子プロモーター活性を高感度に測定、評価することができる。
本明細書中の染色体の「長腕」とは哺乳類染色体のセントロメア側から遺伝子領域を含む染色体領域を指す。
本明細書中の「遠位」とは、セントロメアから遠い領域(すなわち、テロメア側)を意味する。反対に、セントロメアに近い領域(すなわち、セントロメア側)は「近位」と称する。長腕遠位は、長腕の特定部位よりもテロメア側に位置する領域を意味し、長腕近位は、長腕の特定部位よりもセントロメア側に位置する領域を意味する。この特定部位は、哺乳類由来の1つの染色体の長腕に存在する全内在遺伝子(数)の少なくとも99.5%、好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、最も好ましくは99.9〜100%が削除される位置である。
本明細書中の「DNA配列挿入部位」とは、人工染色体における、目的DNA(遺伝子を含む)配列を挿入できる部位、例えば、部位特異的組換え酵素の認識部位等を意味する。このような認識部位には、非限定的に、例えばloxP(Creリコンビナーゼ認識部位)、FRT(Flpリコンビナーゼ認識部位)、φC31attB及びφC31attP(φC31リコンビナーゼ認識部位)、R4attB及びR4attP(R4リコンビナーゼ認識部位)、TP901−1attB及びTP901−1attP(TP901−1リコンビナーゼ認識部位)、或いはBxb1attB及びBxb1attP(Bxb1リコンビナーゼ認識部位)などが含まれる。
本明細書中の「部位特異的組換え酵素」とは、これら酵素の認識部位で特異的に目的のDNA配列と組換えを起こすための酵素である。その例は、Creインテグレース(Creリコンビナーゼとも称する。)、φC31インテグレース、R4インテグレース、TP901−1インテグレース、Bxb1インテグレースなどである。
本明細書中の「テロメア配列」は、同種又は異種の天然テロメア配列、或いは、人工テロメア配列である。ここで、同種とは、人工染色体ベクターの染色体断片が由来する哺乳類と同種の動物を意味し、一方、異種とは、人工染色体の由来以外の哺乳動物(ヒトを含む)を意味する。また、人工テロメア配列は、(TTAGGG)n配列(nは、繰り返しを意味する。)などの人工的に作製されたテロメア機能を有する配列を指す。人工染色体へのテロメア配列の導入は、例えば国際公開WO 00/10383に記載されるようなテロメアトランケーション(テロメア配列の置換)によって行うことができる。テロメアトランケーションは、本発明の人工染色体ベクターの作製において染色体の短縮のために使用することができる。
哺乳類由来の人工染色体は公知であり、例えばマウス由来の人工染色体はWO2011-83870の記載を参考にして作製することができる。マウス以外の哺乳類由来の人工染色体も公知であり、公知の方法に従って調製できる。
本明細書中の「ルシフェラーゼ」としては、特に限定されないが、例えばホタルルシフェラーゼ、鉄道虫由来の緑〜赤(その変異体を含む、最大発光波長:535〜635nm、例えば540〜630nm)のルシフェラーゼ、ヒカリコメツキムシのオレンジ〜緑(その変異体を含む、最大発光波長:530〜600nm)のルシフェラーゼ、イリオモテホタルのオレンジ〜緑(その変異体を含む、最大発光波長:550〜590nm)のルシフェラーゼなどが挙げられる。
ルシフェラーゼを制御するプロモーターに係る標的遺伝子は、転写活性の評価の対象となる遺伝子であり、例えば時計遺伝子(Clock, Bmal1, Per1, Per2, Per3, Cry1, Cry2, DBP, RevErbα, RevErbβ, Dec1, Dec2, RORα, PPARα, PPARβ, PPARγなど)、癌遺伝子(がん遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、細胞分裂マーカー遺伝子など)、病気関連遺伝子(病態対応遺伝子、生死感受アポトーシス遺伝子、ホルモン遺伝子など)、細胞周期制御遺伝子(p53, CDK4, cyclin B, cyclin D, Wee1, Chk1, Chk2, Cdc25など)、炎症関連遺伝子(iNOS, COX2, Bach2, IL-6, IL-8, p53, p38, TNFα, IL-1β, VEGF, JNK, TRAF1, CXCR4など)、生体防御遺伝子(Keap1, Nrf2, HO-1, GST, SOD, NQO1など)、発生・分化関連遺伝子(Oct3/4, Sox2, Nanog, BMPなど)、老化関連遺伝子(Sirt1~7, Klotho、p16など)などが挙げられる。複数のルシフェラーゼを含む場合、1つのプロモータはコントロールのプロモーターが好ましい。このようなコントロールのプロモータとしては、定常発現遺伝子(アクチン遺伝子、GAPDH(グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子、サル由来SV40ウイルス遺伝子など)、毒性評価プロモータ(アポトーシス関連等)、偽プロモーター配列(ランダムな配列又は無意味な配列)などが例示される。
プロモータは、人工染色体が導入される細胞と同じ又は類似する哺乳類由来のプロモータが好ましく、人工染色体が導入される細胞と同じ哺乳類由来のプロモータが特に好ましい。プロモータ及びその制御下のルシフェラーゼ遺伝子の上流側及び/又は下流側には、エンハンサ、インスレータなどの転写制御配列を配置することができる。
プロモータ、その制御下のルシフェラーゼ遺伝子等のDNAの人工染色体のDNA配列挿入部位への導入は、相同組換により好適に行うことができる。1つのプロモータ+ルシフェラーゼ遺伝子のセットは1つのDNA配列挿入部位に挿入するのが原則である。染色体にランダムに遺伝子が組み込まれる従来法では、ルシフェラーゼ遺伝子のコピー数が数個から十数個であってもルシフェラーゼ遺伝子の十分な発光強度が得られなかったが、人工染色体にルシフェラーゼ遺伝子を組み込むことで、発光強度は飛躍的に向上するため、個々の細胞の発光イメージングが可能になる。
本発明で使用するルシフェラーゼ遺伝子は、天然のルシフェラーゼ遺伝子自体を使用してもよいが、人工染色体が導入される細胞における翻訳を効率化するために遺伝子配列を改変するのが好ましい。具体的には、a) 余分な転写因子が結合しないように、cDNAの配列を変えること、b)cDNAの配列を、昆虫のコドンユーセージ(コドンの使用頻度の偏り)を所望の細胞用(例えば哺乳類用)に変え、さらにc)使用上、制限酵素部位が多いことで応用が限定されることからそのcDNAを変えることなどが挙げられ、これらを適宜組み合わせて翻訳効率を向上させることで、ルシフェラーゼの発現量をさらに増大し、発光強度を高めることができる。
本発明の人工染色体で哺乳類細胞を形質転換した場合、該形質転換細胞は十分に高い発光量を得ることができる。本発明では異種タンパクないしタグを結合させるルシフェラーゼによる発光量が非常に高いため、異種タンパクないしタグを結合させた状態で個々の細胞のイメージングを行うことができる。
本発明のルシフェラーゼと融合される異種タンパクとしては、任意の異種タンパクが挙げられ、タグとしてはPEST 配列又はユビキチン又はカルパイン又はこれらの生物学的に活性な断片又はこれらの変異体若しくは誘導体をコードするヌクレオチド配列によりコードされる蛋白質不安定化シグナル、さらに核局在化シグナル、膜局在化シグナル、細胞質局在化シグナル、ミトコンドリア局在化シグナル、ER局在化シグナルなどの細胞内局在化シグナルが挙げられる。
ルシフェラーゼの不安定化は、ルシフェラーゼ蛋白質を不安定化するPEST配列等を使用してもよく、ポリAシグナルを欠如させたり、c-fos、c-jun 、c-myc 、GM-CSF、 IL-3 、TNF-α、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、ウロキナーゼ、bcl-2、Cox-2、PAI-2等の種々の遺伝子由来の配列をルシフェラーゼ遺伝子に連結してルシフェラーゼのmRNAを不安定化してもよい。
タグとして使用されるPEST配列は、オルニチンデカルボキシラーゼの3‘末端又はその変異体が好ましく、オルニチンデカルボキシラーゼの3‘末端又はその変異体は哺乳類由来のものが好ましく、一般的によく使用されるのはマウス由来のものである。なお、PESTは、プロリン(P)、グルタミン酸(E)、セリン(S)及びスレオニン(T)の豊富なアミノ酸配列を指し、PEST 配列を含むタンパク質は半減期が短いことが知られている。
人工染色体ベクターの哺乳類細胞への導入は、公知の方法に従い行うことができる。
本発明で、人工染色体ベクターが導入される細胞としては、浮遊細胞や正常細胞、初代細胞が挙げられる。人工染色体ベクターが導入される細胞は、哺乳類細胞が好ましい。特に、ヒト初代細胞は、ドラッグディスカバリーのプロセスにおいてさまざまな治療分野におけるin vitroシステムとして用いられ、生物学的に生物個体に非常に近い細胞アッセイモデルとして、かつオートメーションやハイスループット解析になじみ易いスクリーニングツールとして重要視されている。ヒト初代細胞の例としては、ヒト皮膚微小内管内皮細胞(HMVEC)、ヒト表皮角化細胞(HEK)、ヒト表皮メラニン細胞(HEM)、ヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)、ヒト骨格筋細胞(HSkMC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)、ヒト胎盤上皮細胞(HPIEpC)、ヒト臍帯静脈平滑筋細胞(HUVSMC)、ヒト臍帯動脈平滑筋細胞(HUASMC)、ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)、ヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)、ヒト大動脈内皮細胞(HAOEC),ヒト心繊維芽細胞(HCF)、ヒト内胸動脈内皮細胞(HITAEC)、ヒト鎖骨化動脈内皮細胞(HScAEC)、ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC)、ヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)、ヒト大動脈平滑筋細胞(HAOSMC)、ヒト内胸動脈平滑筋細胞(HITASMC)、ヒト鎖骨化動脈平滑筋細胞(HScASMC)、ヒト軟骨細胞(HC)、ヒト骨芽細胞(HOb)、ヒト滑膜細胞(HFLS、HFLS−OA、HFLS−RA)、ヒト気管支上皮細胞(HBEpC)、ヒト胚繊維芽細胞(HLF)、ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC)、ヒト前駆脂肪細胞(HPA)、ヒト乳腺上皮細胞(HMEpC)などが挙げられるが、これに限られるものではない。
本発明の形質転換哺乳類細胞は、さらに1条件あたりのサンプルが少ないプレートフォーマットの解析への生細胞転写活性測定試験に好ましく適用される。ドラッグディスカバリー、化合物の毒性評価のために、多種の化合物を広範な濃度で細胞に暴露し、細胞への作用を評価する必要がある。そのため、少量検体をプレートフォーマットで測定できることが必要である。少量検体ではサンプルから発せられる総発光量が少なくなる一方、同時に多検体を測定するため、1検体あたりの読取り時間が短縮化される。しかしながら、本発明のプレートフォーマットの測定においては、従来の方法に比べシグナル強度が高いため、高感度・高精度な解析を行うことが可能である。さらに、本発明の方法は生細胞にルシフェリンを添加(投与)するだけであるため、蛍光検出における励起光照射のような細胞へのダメージの大きなステップがないため、適宜培養時間を延長し、細胞への作用を長時間にわたってトレースすることが可能である。
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1
時計遺伝子mPer2のプロモーターの制御下で発光レポーターが発光する安定細胞株を、従来法である宿主細胞のゲノムにランダムに挿入するランダムインテグレーション法とマウス人工染色体ベクター(マルチインテグレース マウス人工染色体ベクター;MI-MACベクター、Takiguchi et al., ACS Synth Biol., in press)に挿入する方法で樹立した。ランダムインテグレーション法による安定細胞株の樹立では、mPer2のプロモーターと短寿命化緑色発光ルシフェラーゼ(ELuc-PEST、東洋紡)を連結したレポーターベクターを、ネオマイシン耐性遺伝子発現ベクターと共にマウス繊維芽細胞A9にリポフェクションによりを用いコトランスフェクションし、ネオマイシンにより選択した。MI-MACベクターへの挿入による安定細胞株の樹立では、上記レポーターベクターをMI-MACベクターを保持するA9細胞にトランスフェクションし、ネオマイシンにより選択した。各々の方法により得たシングルコロニーを単離し、各6クローンを樹立した。発光測定は以下の手順により実施した。各細胞を35mm培養ディッシュに播種し、1晩培養しコンフルエントに到達した段階で100 nMデキサメタゾンで2時間処理し、発光基質であるD-luciferin(100 μM)を含むDMEM培地に交換した。発光はディッシュ型リアルタイム発光測定装置(Kronos、ATTO)を用い、1分間露光、10分間隔で7日間リアルタイム測定した。その結果、ランダムインテグレーション法により樹立した細胞では、いずれのクローンでも発光リズムは観察されるものの、各クローンの発光強度および発光リズムのバラツキが非常に大きいことが明らかとなった(図1A)。一方、MI-MACベクターにレポーターベクターを挿入して樹立した細胞では、ランダムインテグレーション法により樹立した細胞と比較し、発光強度と発光リズムのバラツキは有意に小さいことが明らかとなった(図1B)。各々の細胞の発光リズムの周期を解析した結果、ランダムインテグレーション法により樹立した細胞では25〜27時間とバラツキが非常に大きいのに対し、MI-MACにレポーターを挿入した安定細胞株では、バラツキは有意に小さいことが明らかとなった(図1C)。また、MI-MACベクターにレポーターを挿入して樹立した細胞の発光強度は、ランダムインテグレーション法により樹立した細胞よりも約25倍発光強度が高いことが明らかとなった(図1D)。
実施例2
実施例1で樹立した、ランダムインテグレーション法およびMI-MACにレポーターを挿入して樹立した安定細胞株の継代安定性について検討した。発光測定は実施例1の通り行った。ランダムインテグレーション法により樹立した細胞では、供試した2種のクローンともに、継代培養を重ねる毎に発光強度が著しく減少することが明らかとなった(図2A)。一方、MI-MACにレポーターベクターを挿入した細胞では、継代回数が40回(4ヶ月以上)を超えても有意な発光強度の減少は認められず、長期間発光リズムが安定に維持されることが明らかとなかった(図2B)。
実施例3
時計遺伝子mPer2のプロモーターの制御下で不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PESTまたはELuc-PEST、東洋紡)が発光する安定細胞株を、ヒト人工染色体ベクター(マルチインテグレース ヒト人工染色体ベクター;MI-HACベクター、Yamaguchi et al., PLoS One, 6, e17267, 2011)に挿入する方法で樹立し、継代安定性を検証した。MI-HACを保持するA9細胞への遺伝子導入、細胞選抜、発光測定方法は実施例1と同様に行った。その結果、MI-HACにレポーターベクターを挿入した細胞では、継代回数が50回(6ヶ月以上)を超えても有意な発光強度の減少は認められず、長期間発光リズムが安定に維持されることが明らかとなかった(図3A、B)。
実施例4
Nuclear factor-κB (NF-κB)応答配列の下流にHSV-TKプロモーター、さらその下流に不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST、東洋紡)を配したレポーターベクターをA9細胞内のMI-MACベクター(Takiguchi et al., ACS Synth Biol., in press)に挿入し、ネオマイシンでの選択により7クローンを樹立した。各クローンの発光強度(基底活性)を測定するため、細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩培養後、発光試薬(TripLuc Assay Reagent、東洋紡)を添加し、発光をマルチウェルプレート対応ルミノメーター(Phelios、ATTO)で5秒間測定した。その結果、樹立した7クローンの発光強度に大きなバラツキは認められず、MI-MACへのレポーターベクターの挿入により、均一なクローンが樹立できることが明らかとなった(図4A)。続いて、各クローンのTumor necrosis factor α(TNFα)に対するNF-κB依存的な転写活性化を測定するため、細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩培養後、10 ng/ml TNFαまたは滅菌水(対象コントロール)を含むDMEM培地に交換し6時間培養した。発光測定は、前述の通りに行った。その結果、樹立した各クローンでのTNFαによる転写活性化はほぼ同様であることが明らかとなった(図4B)。次に、この細胞のTNFαに対する転写活性化の継代安定性について検討した。細胞を長期間継代培養し、10 ng/ml TNFαを前述と同様に処理し発光測定した結果、マウス人工染色体ベクターにレポーターを挿入した場合、50回以上(6ヶ月以上)継代培養を繰り返しても転写活性化能は安定に維持されることが明らかとなった(図4C)。
実施例5
NF-κB応答配列の下流にHSV-TKプロモーター、さらにその下流に不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST、東洋紡)を配したレポーターベクターをA9細胞内のMI-HACベクター(Yamaguchi et al., PLoS One, 6, e17267, 2011)に挿入し、ネオマイシンでの選択により発光樹立をした。不安定化配列はマウスオルニチンデカルボキシラーゼのPEST配列およびヒトカルパイン3の部分配列(特許第5278942号)を用いた。細胞を35mm培養ディッシュに播種し、一晩培養後、10 ng/ml TNFαまたは滅菌水(対象コントロール)を含むDMEM培地に交換し15分間培養した。発光測定は実施例1と同様に行った。その結果、いずれのルシフェラーゼを用いてもTNFαによる転写活性化は測定されるが、カルパイン3の部分配列を融合させた場合に、最も高い感度で転写活性化を測定できることが明らかとなった(図5)。
実施例6
2種の発光レポーターをMI-MACベクターに挿入した安定細胞株を樹立するため、最初に、時計遺伝子mPer2のプロモーターの下流に不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST、東洋紡)を配したレポーターベクターを、A9細胞内のMI-MACベクター(Takiguchi et al., ACS Synth Biol., in press)に挿入し、ネオマイシンを用いた選択により安定細胞株を樹立した。続いて、時計遺伝子mBmal1のプロモーターの下流に不安定化赤色発光ルシフェラーゼ(SLR-PEST、東洋紡)を配したレポーターベクターを上述のmPer2-SLG-PESTが挿入されたMI-MACベクターに挿入し、ブラストシジンによる選択で2色発光細胞を樹立した。細胞を35 mm培養ディッシュに播種し、1晩培養してコンフルエントに到達した段階で100 nMデキサメタゾンで2時間処理し、発光基質であるD-luciferin(100 μM)を含むDMEM培地に交換した。発光は、ディッシュ型リアルタイム発光測定装置(Kronos、ATTO社製)を用い、全光(F0)およびR62ロングパスフィルターを通した発光(F2)を各1分間露光、20分間隔で7日間リアルタイム測定した。緑色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度は、計測したF0、F2値から次式(1)により算出した。
(κSLG、κSLRはR62ロングパスフィルターに対する緑色および赤色発光ルシフェラーゼの透過係数、SLG、SLRは緑色および赤色発光レポーターの発光強度を示す。)
その結果、mPer2とmBmal1の内因性の遺伝子発現(mRNAの発現)パターンと同様に、逆位相を維持した緑色および赤色発光ルシフェラーゼ由来の発光リズムが同時に測定できることが明らかとなった(図6)。
実施例7
NF-κB応答配列の下流にHSV-TKプロモーター、さらその下流に不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST、東洋紡)を配したレポーターベクターをA9細胞内のMI-MACベクター(Takiguchi et al., ACS Synth Biol., in press)に挿入し、ゼオシンを用いた選択により安定細胞株を樹立した。続いてこの安定細胞株のMI-MACベクターに、HSV-TKプロモーターと赤色発光ルシフェラーゼ(SLR、東洋紡)を連結したレポーターベクターを挿入、ブラストシジンにより選択し、シングルコロニー由来の15クローンを単離した。各クローンの発光強度を測定するため、細胞を96ウェルプレートに播種し一晩培養後、TripLuc Assay Reagent(東洋紡)を添加し、ルミノメーター(Phelios、ATTO)を用い、全光(F0)およびR62ロングパスフィルターを通した発光(F2)を各5秒間測定した。緑色及び赤色発光ルシフェラーゼの各発光強度は、実施例6と同様の方法で算出した。その結果、クローン6を除き、樹立したクローンの緑色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度(基底活性)はほぼ均一であり(図7A)、また内部標準用の赤色発光ルシフェラーゼの発光強度で、緑色発光ルシフェラーゼの発光強度を除した発光強度比(SLG/SLR)もほぼ均一であることが明らかとなった(図7B)。次にこの2色発光細胞のTNFαに対するNF-κB依存的な転写活性化を検証した。細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩培養後、10 ng/ml TNFαまたは滅菌水(対象コントロール)を含む培地に交換し、6時間培養後、TripLuc Assay Reagent(東洋紡)を添加し緑色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度を上述と同様の方法で測定した。各TNFαの濃度における転写活性化は以下の計算により求めた。
(TNFα処理群のSLG値/ TNFα処理群のSLR値)/(コントロール群のSLG値/ コントロール群のSLR値)
その結果、樹立した2色発光細胞を用いることで、TNFαの濃度に依存したNF-κBの転写活性化が正確に測定できることが明らかとなった(図7C)。
続いて、TNFαによるNF-κB依存的な転写活性化の継代安定性について検討した。2色発光細胞を1 ng/mlまたは10 ng/mlのTNFαで処理し、前述と同様の方法で緑色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度を測定し、NF-κB依存的な転写活性化を算出した。その結果、50回以上(6ヶ月以上)の継代培養を繰り返しても、転写活性化能は安定に維持されていることが明らかとなった(図7D)。
実施例8
3種類の発光レポーター遺伝子をMI-MACベクター(Takiguchi et al., ACS Synth Biol., in press)に挿入した安定細胞株を樹立するため、実施例4で樹立した2色発光細胞(時計遺伝子mPer2プロモーターと不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST、東洋紡)および時計遺伝子mBmal1プロモーターと不安定化赤色発光ルシフェラーゼ(SLR-PEST、東洋紡)がA9細胞内のMI-MACベクターに挿入された細胞)のMI-MACに、CAGプロモーターと橙色発光ルシフェラーゼ(SLO、東洋紡)を連結したレポーターベクターを挿入し、ゼオシンを用いた選択により安定細胞株を樹立した。続いて細胞を35 mm培養ディッシュに播種し、1晩培養してコンフルエントに到達した段階で100 nMデキサメタゾンで2時間処理し、発光基質であるD-luciferin(100 μM)を含むDMEM培地に交換した。発光は、ディッシュ型リアルタイム発光測定装置(Kronos、ATTO)を用い、全光(F0)、O56ロングパスフィルター(F1)およびR62ロングパスフィルターを通した発光(F2)を各1分間計測、20分間隔で約7日間リアルタイムに測定した。各ルシフェラーゼの発光強度は、計測したF0、F1、F2値から次式により算出した。
(κG、κO、κRはO56およびR62ロングパスフィルターに対する緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの透過係数、G、O、Rは緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度を示す。)
その結果、実施例6で示した緑色発光ルシフェラーゼ由来のPer2プロモーター、および赤色発光ルシフェラーゼ由来のBmal1プロモーターの概日性の転写の変動に加え、CAGプロモーターに制御された橙色発光ルシフェラーゼの発光も同時測定できることが判明し、MI-MACベクターに3種類の発光レポーター遺伝子を挿入することにより、3種類のプロモーター活性の変動をリアルタイムに計測できることが明らかとなった(図8)。
実施例9
IκBαは細胞質内でNF-κB複合体に結合し、非ストレス下でのNF-κB複合体を安定化させているが、TNFα等の刺激によりIκBαは速やかにリン酸化され、プロテアソーム系を介して分解される。IκBαと解離したNF-κB複合体はその後、核内に移行し、標的遺伝子を転写活性化させることが知られている。本実験では、橙色発光ルシフェラーゼSLOとIκBα cDNAを融合させることにより、細胞内のIκBαタンパク質量の変化を橙色発光ルシフェラーゼSLOの発光量で、またNF-κB依存的転写活性化を緑色発光ルシフェラーゼSLGの発光量で評価することを試みた。
実施例7で樹立した2色発光細胞(NF-κB応答配列、HSV-TKプロモーター、不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST、東洋紡)を連結したレポーターベクター、およびHSV-TKプロモーターと赤色発光ルシフェラーゼ(SLR、東洋紡)を連結したレポーターベクターがA9細胞内のMI-MACベクター(Takiguchi et al., ACS Synth Biol., in press)に挿入された細胞)のMI-MACに、CAGプロモーターの下流に橙色発光ルシフェラーゼ(SLO、東洋紡)とIκBαのcDNA(タカラバイオ)の融合遺伝子(SLO:: IκBα)を配したレポーターベクターを挿入、ネオマイシンによりシングルコロニー由来の7クローンを単離した。各クローンの発光強度を測定するため、細胞を96ウェルプレートに播種し一晩培養後、TripLuc Assay Reagent(東洋紡)を添加し、ルミノメーター(Phelios、ATTO)を用い、実施例7と同様に発光を測定した。各ルシフェラーゼの発光強度は式2から算出した。その結果、各クローンにおける緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度はほぼ均一であることが明らかとなった(図9A)。また、内部標準用の赤色発光ルシフェラーゼの発光強度で、緑色発光ルシフェラーゼ(SLG/SLR)および橙色発光ルシフェラーゼの発光強度を除した発光強度比(SLO/SLR)もほぼ均一であり、MI-MACベクターに3種類のレポーター遺伝子を挿入することで、均一な発光強度を有する細胞が樹立できることが明らかとなった(図9B)。
続いて、各クローンのTNFαに対する反応応答性について検証した。細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩培養後、10 ng/ml TNFαまたは滅菌水(対象コントロール)を含むDMEM培地に交換し、2時間培養後、TripLuc Assay Reagent(東洋紡)を添加し、ルミノメーター(Phelios、ATTO)を用い発光を測定した。緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度は式2より算出した。各クローンの緑色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度から、TNFαによるNF-κB依存的な転写活性化を以下の計算により算出した。
(TNFα処理群のSLG値/ TNFα処理群のSLR値)/(コントロール群のSLG値/ コントロール群のSLR値)
その結果、樹立した各クローンにおける、TNFαによるNF-κB依存的な転写活性化は、ほぼ均一であることが明らかとなった(図9C)。
次に、各クローンの橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度から、TNFαによるIκBα量の変化を以下の計算により算出した。
(TNFα処理群のSLO値/ TNFα処理群のSLR値)/(コントロール群のSLO値/ コントロール群のSLR値)
その結果、TNFα処理群では橙色発光ルシフェラーゼの発光強度は有意に低下し、TNFαによるIκBαタンパク質の減少をモニターできることが明らかとなった。またこの発光強度の低下は、いずれのクローンでもほぼ均一であることも明らかとなった(図9D)。以上の結果より、MI-MACベクターに3種類のルシフェラーゼ遺伝子を挿入することで、3色に発光する均一な安定細胞株が樹立できることが明らかとなった。
実施例10
IκBαのリン酸化部位に変異を導入したドミナントネガティブ体では、TNFα等の刺激によってもIκBαは分解せず、その結果、NF-κB複合体は細胞質内で安定にIκBαとの複合体を形成し続けるため、NF-κBの標的遺伝子の転写活性化が生じないことが知られている。本実験では、橙色発光ルシフェラーゼSLOとIκBαのドミナントネガティブ体cDNAを融合させることにより、細胞内のIκBαタンパク質量を橙色発光ルシフェラーゼSLOの発光量で、またNF-κBに依存した転写活性化を緑色発光ルシフェラーゼSLGの発光量で評価することを試みた。
実施例7で樹立した2色発光細胞(NF-κB応答配列、HSV-TKプロモーター、不安定化緑色発光ルシフェラーゼ(SLG-PEST、東洋紡)を連結したレポーターベクター、およびHSV-TKプロモーターと赤色発光ルシフェラーゼ(SLR、東洋紡)を連結したレポーターベクターがA9細胞内のMI-MACベクター(Takiguchi et al., ACS Synth Biol., in press)に挿入された細胞)のMI-MACに、CAGプロモーターの下流に橙色発光ルシフェラーゼ(SLO、東洋紡)とIκBαドミナントネガティブ体(S32A、S36A変異体、タカラバイオ)の融合遺伝子(SLO:: IκBα DN)を配したレポーターベクターを挿入、ネオマイシンを用いた選択によりシングルコロニー由来の6クローンを単離した。樹立した各クローンの発光強度を実施例9と同様に測定したところ、クローン2を除き、ほぼ均一であることが明らかとなった(図10A)。また、内部標準用の赤色発光ルシフェラーゼの発光強度で、緑色発光ルシフェラーゼ(SLG/SLR)および橙色発光ルシフェラーゼの発光強度を除した発光強度比(SLO/SLR)もクローン2を除き、ほぼ均一であることが明らかとなった(図10B)。
続いて、各クローンのTNFαに対する反応応答性について検証した。細胞調製、TNFα処理、発光計測、発光強度の算出は実施例9と同様に実施した。各クローンの緑色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度から、TNFαによるNF-κB依存的な転写活性化を以下の計算により算出した。
(TNFα処理群のSLG値/ TNFα処理群のSLR値)/(コントロール群のSLG値/ コントロール群のSLR値)
その結果、IκBαのドミナントネガティブ体を発現させた安定細胞株では、TNFαによる有意なNF-κB依存的転写活性化は認められず、その傾向は樹立したいずれのクローンにおいても同様であった(図10C)。
次に、各クローンの橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度から、TNFαによるIκBα量の変化を以下の計算により算出した。
(TNFα処理群のSLO値/ TNFα処理群のSLR値)/(コントロール群のSLO値/ コントロール群のSLR値)
その結果、IκBαのドミナントネガティブ体と融合させた橙色発光ルシフェラーゼSLOの発光強度は、TNFα処理しても低下しないことが明らかとなった。またこの傾向は、樹立したいずれのクローンにおいても同様であることも明らかとなった(図10D)。
実施例11
実施例9および実施例10で樹立した3色発光細胞を用い、TNFαによるNF-κB依存的転写活性化とIκBα量の時間変化を検証した。細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩培養後、10 ng/ml TNFαまたは滅菌水(対象コントロール)を含むDMEM培地に交換し、0、1、2、6、10時間後に、TripLuc Assay Reagent(東洋紡)を添加し、ルミノメーター(Phelios、ATTO)を用い発光を測定した。緑色、橙色および赤色発光ルシフェラーゼの発光強度は式2より算出した。TNFαによるNF-κB依存的な転写活性化およびIκBα量の変化は実施例9に記載した計算により算出した。その結果、実施例9で樹立した発光細胞では、TNFα添加後、橙色発光ルシフェラーゼでモニターしたIκBα(SLO::IκBα)の急激な減少が観察され、一方、緑色発光ルシフェラーゼでモニターしたNF-κB(NF-κB-SLG)の急激な転写活性化が認められた(図11A)。
IκBαドミナントネガティブ体とSLOの融合タンパク質を発現させた実施例10で樹立した細胞では、TNFαを添加しても、橙色発光ルシフェラーゼでモニターしたIκBαドミナントネガティブ体(SLO::IκBα DN)の減少は認められず、一方、緑色発光ルシフェラーゼでモニターしたNF-κB(NF-κB-SLG)の有意な転写活性化も生じないことが確認された(図11B)。以上の結果より、3種類の発光レポーター遺伝子をMI-MACベクターに挿入した安定細胞株を樹立し、各々の発光強度を測定することで、細胞内シグナルトランスダクションの上流と下流のシグナルの変化量を同時且つ経時的に評価することが可能となった。

Claims (6)

  1. 少なくとも1つのDNA配列挿入部位を含む哺乳類由来の人工染色体ベクターであって、前記DNA配列挿入部位に標的遺伝子のプロモーターと前記プロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を組み込み、前記プロモーター及びその制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子がインスレーター配列によって挟まれてなる、人工染色体ベクター。
  2. 前記DNA配列挿入部位に2種以上の標的遺伝子のプロモーターと前記各プロモーターの制御下に発光波長を区別可能な2種以上のルシフェラーゼ遺伝子を組み込んでなる、請求項1に記載の人工染色体ベクター。
  3. 人工染色体がマウス人工染色体又はヒト人工染色体である、請求項1又は2に記載の人工染色体ベクター。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の人工染色体ベクターを用いて形質転換された形質転換哺乳類細胞または非ヒト哺乳類個体。
  5. 前記哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項4に記載の形質転換哺乳類細胞または非ヒト哺乳類個体。
  6. 人工染色体ベクターと細胞が同一の哺乳類由来である、請求項4又は5に記載の形質転換哺乳類細胞または非ヒト哺乳類個体。
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