本発明は、電気的に活性な細胞に影響を及ぼす疾患を光学的に診断するための方法を提供する。方法を使用して、例えば、ニューロンまたは心筋細胞に影響を及ぼす疾患を診断することができる。一部の実施形態では、本発明の方法を使用して、遺伝子バリアントまたは変異と関連することが公知の状態を診断する。
図1は、本発明の実施形態に従い状態を診断するための方法101を概略的に示す。これは、状態を有することが疑われる人間から、細胞を得るステップ107を伴いうる。ゲノム編集法(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas系、ジンクフィンガードメインの使用)を使用して、目的のバリアントを除き、同系の対照細胞を作出することができる。細胞および対照を、ニューロン、星状細胞、または心筋細胞などの電気興奮性細胞へと転換する。細胞は、特異的な神経亜型(例えば、運動ニューロン)へと転換することができる。細胞に、神経活動についての光レポーターを発現させる113。例えば、細胞は、光遺伝学的レポーターを含むベクターで形質転換することができ、細胞にはまた、形質転換により、光遺伝学的アクチュエーター(別名、活性化因子)も発現させることができる。任意選択で、対照細胞は、例えば、別の試料を採取することにより得ることもでき、ゲノム編集により得ることもでき、他の適切な技法により得ることもできる。本明細書で記載される顕微鏡法および分析法を使用して、細胞を観察し、具体的には、刺激119に対する細胞の応答(例えば、光学的アクチュエーション、シナプスを介するアクチュエーション、化学的アクチュエーション、または電気的アクチュエーション)を観察することができる。スパイク列により明らかにされる神経応答など、細胞の特徴的シグネチャーを、観察する123ことができる。観察されたシグネチャーを、対照シグネチャーと比較するが、観察されたシグネチャーと対照シグネチャーとの差異(または合致)は、状態についての陽性の診断に対応する。
本明細書で論じられる例示的な一実施形態では、本発明の方法を、SOD1遺伝子における単一遺伝子性変異(SOD1A4V)に由来する、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の光学的鑑別のために使用する。
1.細胞を得る
細胞を、状態を有することが疑われる人間から得る。遺伝性障害、精神もしくは精神医学状態、神経変性疾患もしくは神経発達障害、または心臓状態など、任意の適切な状態を診断することができる。加えて、本明細書で記載される、本発明の方法および分析パイプラインは、電気生理学的表現型が発現している任意の状態へも適用することができる。本発明の方法により規定されるパイプラインによる分析に適する例示的な遺伝性障害は、コケイン症候群、ダウン症候群、ドラベ症候群、家族性自律神経障害、脆弱X症候群、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、遺伝性痙性対麻痺、マシャド−ジョゼフ病(3型脊髄小脳失調症ともまた呼ばれる)、フェラン−マクダーミド症候群(PMDS)、ポリグルタミン(ポリQ)コードCAGリピート、巨大軸索性ニューロパチー、シャルコー−マリー−トゥース病、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症を含む様々な運動失調症、およびティモシー症候群を含む。例示的な神経変性疾患は、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、多発性硬化症、パーキンソン病、球脊髄性筋萎縮症、および筋萎縮性側索硬化症を含む。例示的な精神および精神医学状態は、統合失調症を含む。例示的な神経発達障害は、レット症候群を含む。本明細書では、ニューロン障害との関連で論じられるが、本明細書で記載される方法は、心臓障害の診断へも拡張することができ、細胞を、心筋細胞へも転換しうることが察知される。例示的な心臓状態は、QT延長(long)症候群、肥大性心筋症、および拡張性心筋症を含む。さらに、様々な状態についての電気生理学的表現型も発現しており、文献において報告されている。
本発明の方法は、自閉症と連関する遺伝子における変異を有するゲノムを有する細胞など、自閉症と関連する遺伝子型または表現型を有する、少なくとも1つのニューロンを得るステップを含み得る。遺伝子における多数の変異であって、SHANK3(ProSAP2)、CDH9、CDH10、MAPK3、SERT(SLC6A4)、CACNA1G、GABRB3、GABRA4、EN2、3q25〜27遺伝子座、SLC25A12、HOXA1、HOXA2、PRKCB1、MECP2、UBE3A、NLGN3、MET、CNTNAP2、FOXP2、GSTP1、PRL、PRLR、およびOXTRを含む変異が、自閉症の発症と連関している。SHANK3などの遺伝子が、マウスモデルにおいてN末端およびPDZドメインのノックアウトを介して研究され、その結果、社会的相互作用の障害を含む表現型をもたらした(それらの各々が参照により組み込まれる、Wangら、2011年、「Synaptic dysfunction and abnormal behaviors in mice lacking major isoforms of Shank3」、Hum. Mol. Genet.、20巻(15号):3093〜108頁;Bozdagiら、2010年、「Haploinsufficiency of the autism-associated Shank3 gene leads to deficits in synaptic function, social interaction, and social communication」、Mol Autism、1巻(1号):15頁;Pecaら、2011年、「Shank3 mutant mice display autistic-like behaviours and striatal dysfunction」、Nature、472巻(7344号):437〜42頁)。
乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)としてもまた公知のドラベ症候群は、乳児期に始まり、SCN1A遺伝子における変異、またはSCN9A、SCN2B、PCDH19、もしくはGABRG2など、ある特定の他の遺伝子における変異と関連することが多い、難治性てんかんの形態である。ドラベ症候群は、その内容が参照により組み込まれる、Higurashiら、2013年、「A human Dravet syndrome model from patient induced pluripotent stem cells」、Mol Brain、6巻:19頁において論じられている。てんかんの他の形態は、ドラベ症候群、乳児重症ミオクロニーてんかん辺縁群(SMEB)、および小児難治性てんかん(IEC)を含むと考えられる、全般てんかん熱性痙攣プラス(GEFS+)を含む。てんかんと関連するさらなる神経発達障害であって、本発明の細胞および方法により研究しうる神経発達障害は、アンゲルマン症候群、ローランドてんかん、常染色体優性夜間前頭葉てんかん、小児良性後頭葉てんかん、パネヨートポーラス症候群、小児欠神てんかん、女性におけるてんかん-知的障害、熱性痙攣および側頭葉てんかん(febrile lobe epilepsy)、若年性ミオクロニーてんかん、レノックス−ガストー症候群、大田原症候群、光感受性てんかん、ピリドキシン依存性てんかん、ウンフェルリヒト−ルントボルグ病、赤色ぼろ線維ミオクローヌスてんかん症候群、ラフォラ病、ラスムッセン脳炎、環状第20染色体症候群、側頭葉てんかん、結節性硬化症、およびウェスト症候群を含む。てんかんと関連するさらなる遺伝子であって、本発明の細胞および方法により研究しうる遺伝子は、WWOX、PRRT2、KCNC1、STX1B、CARS2、STXB1、KCNQ2、CDKL5、ARX、SPTAN、BRAT1、KCNQ3、SCN2A(NAV1.2)、GABA受容体、NIPA2、CDKL5、PCDH19、およびNAV1.1を含む。
結節性硬化症とは、TSC1遺伝子またはTSC2遺伝子への変異を介して、腫瘍抑制因子タンパク質に影響を及ぼす遺伝性疾患である。結節性硬化症は、脳、腎臓、肺、心臓、皮膚、眼における腫瘍成長を結果としてもたらし得、これらの臓器の機能に負の影響を及ぼしうる。結節性硬化症の神経症状は、自閉症、知的障害、発達上の問題および行動学的問題、ならびに発作を含む。結節性硬化症を患う人々は、軽度の皮膚異常から、重度の精神障害および臓器不全、ならびに腫瘍成長に起因する死までの範囲にわたる、それらの症状の重症度に基づき、広範にわたる予後に直面する。結節性硬化症は、各々がその全体において組み込まれる、Meikleら、2007年、「A mouse model of tuberous sclerosis: neuronal loss of Tscl causes dysplastic and ectopic neurons, reduced myelination, seizure activity, and limited survival」、J Neurosci.、27巻(21号):5546〜58頁;Meikleら、2008年、「Response of a neuronal model of tuberous sclerosis to mammalian target of rapamycin (mTOR) inhibitors: effects on mTORCl and Akt signaling lead to improved survival and function」、J Neurosci.、28巻(21号):5422〜32頁;Normandら、2013年、「Temporal and mosaic Tscl deletion in the developing thalamus disrupts thalamocortical circuitry, neural function, and behavior」、Neuron、5;78巻(5号):895〜909頁;Kimら、2010年、「Zebrafish model of tuberous sclerosis complex reveals cell-autonomous and non-cell-autonomous functions of mutant tuberin」、Dis Model Mech.、4巻(2号):255〜67頁;およびWlodarskiら、2008年、「Tuberin-heterozygous cell line TSC2angl as a model for tuberous sclerosis-associated skin lesions」、Int J Mol Med.、21巻(2号):245〜50頁において論じられている。
パーキンソン病とは、中脳黒質におけるドーパミン産生細胞の死を伴う、中枢神経系の神経変性障害である。パーキンソン病は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Cooperら、2012年、「Pharmacological rescue of mitochondrial deficits in iPSC-derived neural cells from patients with familial Parkinson’s disease」、Sci Transl Med、4巻(141号):141ra90;Chungら、2013年、「Identification and rescue of α-synuclein toxicity in Parkinson patient-derived neurons」、Science、342巻(6161号):983〜7頁;Seiblerら、2011年、「Mitochondrial Parkin recruitment is impaired in neurons derived from mutant PINK1 induced pluripotent stem cells」、J Neurosci、31巻(16号):5970〜6頁;Sanchez-Danesら、2012年、「Disease-specific phenotypes in dopamine neurons from human iPS-based models of genetic and sporadic Parkinson’s disease」、EMBO Mol Med、4巻(5号):380〜395頁;Sandersら、2013年、「LRRK2 mutations cause mitochondrial DNA damage in iPSC-derived neural cells from Parkinson’s disease patients: reversal by gene correction」、Neurobiol Dis、62巻:381〜6頁;およびReinhardtら、2013年、「Genetic correction of a LRRK2 mutation in human iPSCs links parkinsonian neurodegeneration to ERK-dependent changes in gene expression」、Cell Stem Cell、12巻(3号):354〜367頁;LRRK2 mutant iPSC-derived DA neurons demonstrate increased susceptibility to oxidative stressにおいて論じられている。
コケイン症候群とは、ERCC6遺伝子およびERCC8遺伝子における変異により引き起こされ、成長不全、神経系の発達障害、光過敏性、および早期老化を特徴とする遺伝性障害である。コケイン症候群は、その内容が参照により組み込まれる、Andradeら、2012年、「Evidence for premature aging due to oxidative stress in iPSCs from Cockayne syndrome」、Hum Mol Genet、21巻:3825〜3834頁において論じられている。
ダウン症候群とは、第21染色体の第3のコピーの全部または一部の存在により引き起こされ、成長遅滞、特徴的な顔貌、および知的障害と関連する遺伝性障害である。ダウン症候群は、その内容が参照により組み込まれる、Shiら、2012年、「A human stem cell model of early Alzheimer’s disease pathology in Down syndrome」、Sci Transl Med、4巻(124号):124〜129頁において論じられている。
乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)としてもまた公知のドラベ症候群は、乳児期に始まり、SCN1A遺伝子における変異、またはSCN9A、SCN2B、PCDH19、もしくはGABRG2など、ある特定の他の遺伝子における変異と関連することが多い、難治性てんかんの形態である。ドラベ症候群は、その内容が参照により組み込まれる、Higurashiら、2013年、「A human Dravet syndrome model from patient induced pluripotent stem cells」、Mol Brain、6巻:19頁において論じられている。
家族性自律神経障害とは、IKBKAP遺伝子における変異であって、自律神経系および感覚神経系における感覚ニューロン、交感神経ニューロン、および一部の副交感神経ニューロンの発生および生存に影響を及ぼす変異により引き起こされ、無痛症、涙液産生不能、成長不良、および血圧不安定を含む様々な症状を結果としてもたらす、自律神経系の遺伝性障害である。家族性自律神経障害は、その内容が参照により組み込まれる、Leeら、2009年、「Modelling pathogenesis and treatment of familial dysautonomia using patient-specific iPSCs」、Nature、461巻:402〜406頁において論じられている。
脆弱X症候群とは、FMR1遺伝子における変異により引き起こされ、学習障害および認知機能障害を含む、広範にわたる発達問題を引き起こす遺伝性状態である。脆弱X症候群は、その内容が参照により組み込まれる、Liuら、2012年、「Signaling defects in iPSC-derived fragile X premutation neurons」、Hum Mol Genet、21巻:3795〜3805頁において論じられている。
フリードライヒ運動失調症とは、第9染色体上の遺伝子座の変異から生じる、常染色体劣性運動失調である。フリードライヒ運動失調症による運動失調は、脊髄における神経組織、特に、腕部および脚部の筋肉運動を方向付けるのに不可欠な(小脳との接続を介する)感覚ニューロンの変性から生じる。脊髄は、細くなり、ニューロン細胞は、それらの髄鞘のうちの一部を失う。フリードライヒ運動失調症は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Kuら、2010年、「Friedreich’s ataxia induced pluripotent stem cells model intergenerational GAA.TTC triplet repeat instability」、Cell Stem Cell、7巻(5号):631〜7頁;Duら、2012年、「Role of mismatch repair enzymes in GAA.TTC triplet-repeat expansion in Friedreich ataxia induced pluripotent stem cells」、J Biol Chem、287巻(35号):29861〜29872頁;およびHickら、2013年、「Neurons and cardiomyocytes derived from induced pluripotent stem cells as a model for mitochondrial defects in Friedreich’s ataxia」、Dis Model Mech、6巻(3号):608〜21頁において論じられている。
ゴーシェ病とは、第1染色体に位置する遺伝子における劣性変異により引き起こされ、脂質が体内に蓄積される遺伝性疾患である。ゴーシェ病は、その内容が参照により組み込まれる、Mazzulliら、2011年、「Gaucher disease glucocerebrosidase and α-synuclein form a bidirectional pathogenic loop in synucleinopathies」、Cell、146巻(1号):37〜52頁において論じられている。
遺伝性痙性対麻痺(HSP)(家族性痙性対麻痺、フランス植民地病、またはシュトリュンペル−ロラン病ともまた呼ばれる)とは、軸索の変性および機能不全を特徴とし、下肢における硬直および収縮(痙縮)を結果としてもたらす遺伝性疾患群を指す。遺伝性痙性対麻痺は、その内容が参照により組み込まれる、Dentonら、2014年、「Loss of spastin function results in disease-specific axonal defects in human pluripotent stem cell-based models of hereditary spastic paraplegia」、Stem Cells、32巻(2号):414〜23頁において論じられている。
マシャド−ジョゼフ病としてもまた公知の、3型脊髄小脳失調症(SCA3)とは、後脳の緩徐な変性を特徴とする、常染色体優性の遺伝性運動失調である、神経変性疾患である。マシャド−ジョゼフ病(3型脊髄小脳失調症ともまた呼ばれる)は、その内容が参照により組み込まれる、Kochら、2011年、「Excitation-induced ataxin-3 aggregation in neurons from patients with Machado-Joseph disease」、Nature、480巻(7378号):543〜546頁において論じられている。
フェラン−マグダーミド症候群(PMDS)は、神経タンパク質であるShank3における変異またはこの欠失から生じ、発達遅滞、発話の障害、および自閉症を特徴とする、進行性の神経発達障害である。フェラン−マクダーミド症候群(PMDS)は、その内容が参照により組み込まれる、Shcheglovitovら、2013年、「SHANK3 and IGF1 restore synaptic deficits in neurons from 22ql3 deletion syndrome patients」、Nature、503巻(7475号):267〜71頁において論じられている。
トリヌクレオチドリピート障害は、ポリグルタミン(ポリQ)コードCAGリピートを特徴とする。トリヌクレオチドリピート障害とは、トリヌクレオチドリピートの拡大により引き起こされる一連の遺伝性障害であって、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症(spinobulbar muscular atrophy)、1型脊髄小脳失調症、2型脊髄小脳失調症、3型脊髄小脳失調症、またはマシャド−ジョゼフ病、6型脊髄小脳失調症、7型脊髄小脳失調症、および17型脊髄小脳失調症の他、他の様々な運動失調症を含む一連の遺伝性障害を指す。トリヌクレオチドリピート障害は、その内容が参照により組み込まれる、HD iPSC Consortium、2012年、「Induced pluripotent stem cells from patients with Huntington’s disease show CAG-repeat-expansion-associated phenotypes」、Cell Stem Cell、11巻(2号):264〜278頁において論じられている。
巨大軸索性ニューロパチーとは、ニューロンの形状およびサイズを規定するように、構造的フレームワークを形成する、ニューロフィラメントの組織崩壊を引き起こす神経障害である。巨大軸索性ニューロパチーは、タンパク質であるギガキソニンをコードするGAN遺伝子における変異から生じる。Mahammadら、2013年、「Giant axonal neuropathy-associated gigaxonin mutations impair intermediate filament protein degredation」、J Clin Invest、123巻(5号):1964〜75頁を参照されたい。
遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN)および腓骨筋萎縮症(PMA)としてもまた公知のシャルコー−マリー−トゥース病とは、筋肉および感覚の進行性喪失を特徴とする、末梢神経系の複数の遺伝性障害を指す。例えば、HarelおよびLupski、2014年、「Charcot Marie Tooth disease and pathways to molecular based therapies」、Clin Genet、DOI: 10.1111/cge.12393を参照されたい。
脊髄性筋萎縮症(SMA)とは、それらのニューロンの存在度の低下が、脊髄におけるニューロン細胞の死と、系規模の萎縮とを結果としてもたらす、運動ニューロンタンパク質の生存(SMN)をコードするSMN1遺伝子における変異により引き起こされる遺伝性疾患である。脊髄性筋萎縮症は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Ebertら、2009年、「Induced pluripotent stem cells from a spinal muscular atrophy patient」、Nature、457巻(7227号):277〜80頁;Sareenら、2012年、「Inhibition of apoptosis blocks human motor neuron cell death in a stem cell model of spinal muscular atrophy」、PLoS One、7巻(6号):e39113頁;およびCortiら、2012年、「Genetic correction of human induced pluripotent stem cells from patients with spinal muscular atrophy」、Sci Transl Med、4巻(165号):165〜162頁において論じられている。
ティモシー症候群とは、CACNA1Cと呼ばれるCa(v)1.2カルシウムチャネル遺伝子における変異から生じ、心臓QTの延長、心臓不整脈、構造的心臓欠損、合指症、および自閉症スペクトラム障害を含む、心臓「再分極」時間の異常な延長(prolonged)(長いQT間隔)、ならびに他の神経学的欠損および発達上の欠損を含む、広範にわたる問題を特徴とする遺伝性障害である。ティモシー症候群は、その内容が参照により組み込まれる、Kreyら、2013年、「Timothy syndrome is associated with activity-dependent dendritic retraction in rodent and human neurons」、Nat Neurosci、16巻(2号):201〜9頁において論じられている。
統合失調症および自閉症などの精神および精神医学障害は、幹細胞モデルを介する研究に適する細胞欠損および分子欠損を伴う場合があり、本明細書の方法を使用して単離しうる、ある特定の遺伝子構成要素により引き起こされるか、またはこれらと関連しうる。統合失調症は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Brennandら、2011年、「Modelling schizophrenia using human induced pluripotent stem cells」、Nature、473巻(7346号):221〜225頁;およびChiangら、2011年、「Integration-free induced pluripotent stem cells derived from schizophrenia patients with a DISC1 mutation」、Molecular Psych、16巻:358〜360頁において論じられている。
アルツハイマー病は、不確定の原因(ある特定の遺伝子における変異が障害と連関しているが)による神経変性疾患であり、認知症の最も一般的な形態のうちの1つである。アルツハイマー病は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Israelら、2012年、「Probing sporadic and familial Alzheimer’s disease using induced pluripotent stem cells」、Nature、482巻(7384号):216〜20頁;Muratoreら、2014年、「The familial Alzheimer’s disease APPV717I mutation alters APP processing and tau expression in iPSC-derived neurons」、Human Molecular Genetics、近刊;Kondoら、2013年、「Modeling Alzheimer’s disease with iPSCs reveals stress phenotypes associated with intracellular Abeta and differential drug responsiveness」、Cell Stem Cell、12巻(4号):487〜496頁;およびShiら、2012年、「A human stem cell model of early Alzheimer’s disease pathology in Down syndrome」、Sci Transl Med、4巻(124号):124〜129頁において論じられている。
前頭側頭葉変性症(FTLD)は、臨床的、病理学的、および遺伝学的に異質性の障害群であって、前頭側頭型認知症(行動型前頭側頭型認知症(behavioral variant frontotemporal dementia)(bvFTLD);意味認知症(SD);および進行性非流暢性失語症(PNFA)を含むように細分化される)を含み、脳の前頭葉および側頭葉の萎縮と関連する障害群の名称である。前頭側頭葉変性症は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Almeidaら、2013年、「Modeling key pathological features of frontotemporal dementia with C9ORF72 repeat expansion in iPSC-derived human neurons」、Acta Neuropathol、126巻(3号):385〜399頁;Almeidaら、2012年、「Induced pluripotent stem cell models of progranulin-deficient frontotemporal dementia uncover specific reversible neuronal defects」、Cell Rep、2巻(4号):789〜798頁;およびFongら、2013年、「Genetic correction of tauopathy phenotypes in neurons derived from human induced pluripotent stem cells」、Stem Cell Reports、1巻(3号):1〜9頁において論じられている。
ハンチントン病とは、脳における神経細胞の進行性の変性を引き起こす遺伝性疾患であり、個体の、第4染色体の短腕部に位置する、ハンチンチン(HTT)と呼ばれる遺伝子の、2つのコピーのいずれかにおける常染色体優性の変異により引き起こされる。ハンチントン病は、それらの各々の内容が参照により組み込まれるHD iPSC Consortium、2012年、「Induced pluripotent stem cells from patients with Huntington’s disease show CAG-repeat-expansion-associated phenotypes」、Cell Stem Cell、11巻(2号):264〜278頁;Anら、2012年、「Genetic correction of Huntington’s disease phenotypes in induced pluripotent stem cells」、Cell Stem Cell、11巻(2号):253〜263頁;およびCamnasioら、2012年、「The first reported generation of several induced pluripotent stem cell lines from homozygous and heterozygous Huntington’s disease patients demonstrates mutation related enhanced lysosomal activity」、Neurobiol Dis、46巻(1号):41〜51頁において論じられている。
多発性硬化症とは、脳および脊髄の神経細胞の被覆が損傷を受ける神経変性疾患である。多発性硬化症は、その内容が参照により組み込まれる、Songら、2012年、「Neural differentiation of patient specific iPS cells as a novel approach to study the pathophysiology of multiple sclerosis」、Stem Cell Res、8巻(2号):259〜73頁において論じられている。
パーキンソン病とは、中脳黒質におけるドーパミン生成細胞の死を伴う、中枢神経系の神経変性障害である。パーキンソン病は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Cooperら、2012年、「Pharmacological rescue of mitochondrial deficits in iPSC-derived neural cells from patients with familial Parkinson’s disease」、Sci Transl Med、4巻(141号):141ra90;Chungら、2013年、「Identification and rescue of α-synuclein toxicity in Parkinson patient-derived neurons」、Science、342巻(6161号):983〜7頁;Seiblerら、2011年、「Mitochondrial Parkin recruitment is impaired in neurons derived from mutant PINK1 induced pluripotent stem cells」、J Neurosci、31巻(16号):5970〜6頁;Sanchez-Danesら、2012年、「Disease-specific phenotypes in dopamine neurons from human iPS-based models of genetic and sporadic Parkinson’s disease」、EMBO Mol Med、4巻(5号):380〜395頁;Sandersら、2013年、「LRRK2 mutations cause mitochondrial DNA damage in iPSC-derived neural cells from Parkinson’s disease patients: reversal by gene correction」、Neurobiol Dis、62巻:381〜6頁;およびReinhardtら、2013年、「Genetic correction of a LRRK2 mutation in human iPSCs links parkinsonian neurodegeneration to ERK-dependent changes in gene expression」、Cell Stem Cell、12巻(3号):354〜367頁;「LRRK2 mutant iPSC-derived DA neurons demonstrate increased susceptibility to oxidative stress」において論じられている。
球脊髄性筋萎縮症(spinobulbar muscular atrophy)、球脊髄性萎縮症(bulbo−spinal atrophy)、X連鎖球脊髄性ニューロパチー(XBSN)、1型X連鎖脊髄性筋萎縮症(SMAX1)、およびケネディー病(KD)としてもまた公知の球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy)(SBMA)とは、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子の変異と関連し、脳幹および脊髄における運動ニューロンの変性に起因する筋痙攣および進行性脱力を結果としてもたらす、神経変性疾患である。球脊髄性筋萎縮症は、その内容が参照により組み込まれる、Niheiら、2013年、「Enhanced aggregation of androgen receptor in induced pluripotent stem cell-derived neurons from spinal and bulbar muscular atrophy」、J Biol Chem、288巻(12号):8043〜52頁において論じられている。
レット症候群とは、一般に、メチルCpG結合性タンパク質2(またはMECP2)遺伝子における変異により引き起こされ、早期の正常な成長および発達に続く発達の遅延、意図にかなう手掌部の使用の喪失、特有の手掌部の運動、脳および頭部の成長の遅延、歩行に関する問題、発作、および知的障害を特徴とする、神経発達障害である。レット症候群は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Marchettoら、2010年、「A model for neural development and treatment of Rett syndrome using human induced pluripotent stem cells」、Cell、143巻(4号):527〜39頁;およびAnanievら、2011年、「Isogenic pairs of wild type and mutant induced pluripotent stem cell (iPSC) lines from Rett syndrome patients as in vitro disease model」、PLoS One、6巻(9号):e25255頁において論じられている。
例示的な一例では、状態は、筋萎縮性側索硬化症である。「ルーゲーリック病」と称することが多い、筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、運動ニューロンの進行性の変性および死、ならびに、結果として生じる、筋肉制御の喪失または麻痺と関連する神経変性疾患である。筋萎縮性側索硬化症は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Kiskinisら、2014年、「Pathways disrupted in human ALS motor neurons identified through genetic correction of mutant SOD1」、Cell Stem Cell(epub);Waingerら、2014年、「Intrinsic membrane hyperexcitability of amyotrophic lateral sclerosis patient-derived motor neurons」、Cell Reports、7巻(1号):1〜11頁;Donnellyら、2013年、「RNA toxicity from the ALS/FTD C9orf72 expansion is mitigated by antisense intervention」、Neuron、80巻(2号):415〜28頁;Alami、2014年、「Microtubule-dependent transport of TDP-43 mRNA granules in neurons is impaired by ALS-causing mutations」、Neuron、81巻(3号):536〜543頁;Donnellyら、2013年、「RNA toxicity from the ALS/FTD C9ORF72 expansion is mitigated by antisense intervention」、Neuron、80巻(2号):415〜428頁;Bilicanら、2012年、「Mutant induced pluripotent stem cell lines recapitulate aspects of TDP-43 proteinopathies and reveal cell-specific vulnerability」、PNAS、109巻(15号):5803〜5808頁;Egawaら、2012年、「Drug screening for ALS using patient-specific induced pluripotent stem cells」、Sci Transl Med、4巻(145号):145〜104頁;およびYangら、2013年、「A small molecule screen in stem-cell-derived motor neurons identifies a kinase inhibitor as a candidate therapeutic for ALS」、Cell Stem Cell、12巻(6号):713〜726頁において論じられている。
例示的な一例では、線維芽細胞は、SOD1における変異などの変異を有することが既知であるかまたは疑われる患者から採取することができる。任意の適切な細胞を得ることができ、試料を得る任意の適切な方法を使用することができる。一部の実施形態では、皮膚生検を、実施して、皮膚線維芽細胞を得る。患者の皮膚を清浄化し、局所麻酔薬の注射を施すことができる。皮膚に完全に麻酔をかけたら、3mmの滅菌パンチを使用する。臨床家は、パンチが表皮を穿刺するまで、圧力をかけ、「穴あけ」動作を使用することができる。パンチにより、3mmの円筒状の皮膚を得る。臨床家は、芯のある皮膚の真皮をつまみ上げる鉗子と、芯を切り離す外科用メスとを使用することができる。生検試料は、PBSによる任意選択の洗浄を施し、PBSを蒸発させた後で、滅菌BME線維芽細胞培地へと移すことができる。患者における生検部位は、手当てする(例えば、絆創膏で)。細胞を得るのに適する方法およびデバイスは、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、米国特許第8,603,809号;米国特許第8,403,160号;米国特許第5,591,444号;米国特許公開第2012/0264623号;および米国特許公開第2012/0214236号において論じられている。いずれもが参照により組み込まれる、Freshney編、1986年、「Animal Cell Culture: A Practical Approach」、IRL Press、Oxford England;およびFreshney編、1987年、「Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Techniques」、Alan R. Liss & Co.、New Yorkにおいて論じられている組織培養法など、生検検体を得、繁殖させるのに適する、任意の組織培養法を使用することができる。
2.細胞をニューロン、心筋細胞、または特異的な神経亜型へと転換する
得られた細胞は、ニューロンなどの任意の電気興奮性細胞、特異的なニューロン亜型、星状細胞もしくは他のグリア、心筋細胞または免疫細胞へと転換することができる。加えて、細胞は、複数の細胞型の共培養物(例えば、ニューロン+グリア、ニューロン+心筋細胞、ニューロン+免疫細胞)へと転換し、成長させることもできる。
図2は、細胞を、特異的な神経亜型へと転換するための、例示的な経路を例証する。細胞は、特異的な神経亜型(例えば、運動ニューロン)へと転換することができる。細胞を転換するのに適する方法および経路は、体細胞から人工多能性幹細胞(iPSC)への転換、およびiPSCの特異的細胞型への転換である経路209、または細胞の特異的細胞型への直接的な転換である経路211を含む。
2a.細胞のiPSへの転換およびiPSの特異的細胞型への転換
経路209に従い、規定された転写因子の使用など、公知の方法を使用して、体細胞を、人工多能性幹細胞(iPSC)へと再プログラム化することができる。iPSCは、3つの胚葉全ての派生細胞へと分化する、それらの発生可能性を保存しながら、培養物中で無際限に増殖する、それらの能力を特徴とする。ある特定の実施形態では、線維芽細胞を、TakahashiおよびYamanaka、2006年、「Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors」、Cell、126巻:663〜676頁;ならびにTakahashiら、2007年、「Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors」、Cell、131巻:861〜872頁において論じられている方法などの方法により、iPSCへと転換する。
成体線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導は、Oct3/4、Sox2、c−Myc、およびKlf4という4つの因子を、ES細胞培養条件下で導入するステップを含む方法により行うことができる。ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を得る。ヒトOct3/4、Sox2、Klf4、およびc−Mycを含有するレトロウイルスを、HDFへと導入する。形質導入の6日後、トリプシン処理により細胞を収穫し、マイトマイシンCで処理されたSNLフィーダー細胞へと播種する。例えば、McMahonおよびBradley、1990年、Cell、62巻:1073〜1085頁を参照されたい。約1日後、培地(10%のFBSを含有するDMEM)を、4ng/mLの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を補充した、霊長動物ES細胞培養培地で置きかえる。Takahashiら、2007年、Cell、131巻:861頁を参照されたい。その後、hES細胞様コロニーを拾い、酵素による消化を伴わずに、機械的に小さな塊へと分解する。各細胞は、大きな核と少量の細胞質を特徴とする、ヒトES細胞の形状と類似する形状を呈示するものとする。HDFを形質導入した後の細胞は、ヒトiPS細胞である。DNAフィンガープリンティング、シークェンシング、または他のアッセイを実施して、iPS細胞系が、ドナーと遺伝子的にマッチすることを検証することができる。
次いで、これらのiPS細胞を、特異的なニューロン亜型へと分化させることができる。iPS細胞などの多能性細胞は定義上、異なる胚葉に特徴的な細胞型へと分化することが可能である。胚性幹細胞およびヒトiPS細胞の両方の特性は、懸濁培養液中に播種されると、胚様体(EB)を形成する、それらの能力である。iPS細胞から形成されたEBは、2つの低分子:ソニックヘッジホッグ(SHH)シグナル伝達経路のアゴニストおよびレチノイン酸(RA)で処理する。さらなる詳細については、Dimosら、2008年、「Induced pluripotent stem cells generated from patients with ALS can be differentiated into motor neurons」、Science、321巻(5893号):1218〜21頁;Amorosoら、2013年、「Accelerated high-yield generation of limb-innervating motor neurons from human stem cells」、J Neurosci、33巻(2号):574〜86頁;およびBoultingら、2011年、「A functionally characterized test set of human induced pluripotent stem cells」、Nat Biotech、29巻(3号):279〜286頁において記載されている方法を参照されたい。
本発明の態様は、幹細胞を、単一の転写因子の強制的発現により、機能的ニューロンへと転換することができ、次いで、また、神経活動についての光遺伝学的レポーターまたはアクチュエーターを発現させることもできる、細胞の疾患モデルを提供する。トランスフェクションにより多能性幹細胞へと導入される、ニューロゲニン2(NgN2)またはNeurD1などの転写因子を発現させ、細胞を、ニューロンへと分化させる。加えて、または別個に、細胞内カルシウムについての光レポーター、ならびに膜電位の光アクチュエーターまたは膜電位についての光レポーターを含む光遺伝学的構築物を発現させる。
一部の実施形態では、転換は、幹細胞に、単一の転写因子を発現させることを含む。ニューロゲニン2(Ngn2)またはNeuroD1など、単一の転写因子を過剰発現させるだけで、ES細胞およびiPS細胞は、ニューロン細胞へと迅速に転換される。Zhangら、2013年、「Rapid single-step induction of functional neurons from human pluripotent stem cells」、Neuron、78巻(5号):785〜798頁を参照されたい。転写因子は、レンチウイルスの感染(下記でより詳細に論じられる)により導入することができる。Zhang、2013年において報告されている通り、選択のために、ピューロマイシン耐性遺伝子を、Ngn2と共に共発現させることができる。ES細胞またはiPS細胞は、−2日目に播種し、−1日目にレンチウイルスを感染させ、0日目にNgn2の発現を誘導する。1日目に、24時間にわたるピューロマイシン選択期間を開始し、2日目に、マウスグリア(主に、星状細胞)を添加して、シナプス形成を増強する。Zhang、2013年において報告されている通り、1週間未満のうちに、Ngn2の強制的発現により、ES細胞およびiPS細胞を、ニューロン様細胞へと転換し、2週間未満のうちに、見かけ上の成熟ニューロン形状をもたらす。
分化させたEBを、ラミニンでコーティングされた表面に接着させると、ニューロン様の伸長が観察され、結果は、特異的なニューロン亜型への分化である。さらなる関与性の議論は、Davis-Dusenberyら、2014年、「How to make spinal motor neurons」、Development、141巻(3号):491〜501頁;SandoeおよびEggan、2013年、「Opportunities and challenges of pluripotent stem cell neurodegenerative disease models」、Nat Neuroscience、16巻(7号):780〜9頁;およびHanら、2011年、「Constructing and deconstructing stem cell models of neurological disease」、Neuron、70巻(4号):626〜44頁において見出すことができる。
2b.細胞の特異的細胞型への直接的な転換
経路211によりヒト体細胞を得、体細胞の運動ニューロンへの直接的な系列転換を実施することができる。転換は、非類縁体細胞からの、特異的細胞型への転換を誘導する、系列特異的転写因子の使用を含みうる。例えば、Davis-Dusenberyら、2014年、「How to make spinal motor neurons」、Development、141巻:491頁;Graf、2011年、「Historical origins of transdifferentiation and reprogramming」、Cell Stem Cell、9巻:504〜516頁を参照されたい。一連の神経系列特異的転写因子またはBAM因子は、線維芽細胞の人工ニューロン(iN)細胞への転換をもたらすことが示されている(Vierbuchen、2010年、Nature、463巻:1035頁)。マイクロRNAおよびNeuroD1を含むさらなる前ニューロン因子を、ヒト線維芽細胞のニューロンへの転換の間に、BAM因子と協調させることもでき、BAM因子を置きかえることもできる。例えば、Ambasudhanら、2011年、「Direct reprogramming of adult human fibroblasts to functional neurons under defined conditions」、Cell Stem Cell、9巻:113〜118頁;Pangら、2011年、「Induction of human neuronal cells by defined transcription factors」、Nature、476巻:220〜223頁を参照されたい。また、Yooら、2011年、「MicroRNA mediated conversion of human fibroblasts to neurons」、Nature、476巻:228〜231頁も参照されたい。
2c.分化細胞の維持
運動ニューロンなどの分化細胞は、解離させ、ポリ−d−リシンおよびラミニンでコーティングされたガラス製カバースリップへと播種することができる。運動ニューロンには、N2、B27、GDNF、BDNF、およびCTNFを補充したneurobasal培地などの適切な培地を供給することができる。細胞は、GDNF、BDNF、およびCNTFを全て10ng/mlでさらに補充した、N2培地(ラミニン[1μg/mL;Invitrogen]、FGF−2[10ng/ml;R&D Systems、Minneapolis、MN]、およびN2補充物質[1%;Invitrogen]を補充したDMEM/F12[1:1])などの適切な培地中で維持することができる。適切な培地については、各々が参照により組み込まれる、Sonら、2011年、「Conversion of mouse and human fibroblasts into functional spinal motor neurons」、Cell Stem Cell、9巻:205〜218頁;Vierbuchenら、2010年、「Direct conversion of fibroblasts to functional neurons by defined factors」、Nature、463巻:1035〜1041頁;Kuoら、2003年、「Differentiation of monkey embryonic stem cells into neural lineages」、Biology of Reproduction、68巻:1727〜1735頁;およびWernigら、2002年、「Tau EGFP embryonic stem cells: an efficient tool for neuronal lineage selection and transplantation」、J Neuroscience Res、69巻:918〜24頁において記載されている。
3.対照細胞系または対照シグネチャー
本発明の方法は、細胞に、光レポーターを発現させるステップと、光レポーターにより発せられるシグネチャーを観察するステップと、観察されたシグネチャーを、対照シグネチャーと比較するステップとを含む。対照シグネチャーは、これもまた、特異的な神経亜型であり、遺伝子的に、かつ、表現型的に、被験細胞と類似する、対照細胞を得ることにより得ることができる。ある特定の実施形態(例えば、患者が、ある特定の遺伝子座において、公知の変異または対立遺伝子を有する実施形態)では、遺伝子編集を実施して、公知の変異を除き被験細胞系と同系である、対照細胞系を生成する。例えば、患者が、SOD1A4V変異を有することが既知である場合、遺伝子編集法により、SOD1V4A変異を細胞系へと導入して、野生型の遺伝子型および表現型を有する対照細胞系を作出することができる。遺伝子編集法またはゲノム編集法は、ジンクフィンガードメイン法、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、または規則的な間隔でクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)ヌクレアーゼを介して進めることができる。
ゲノム編集法(例えば、ジンクフィンガードメインの使用)を使用して、目的のバリアントを除き、同系の対照細胞を作出することができる。ある特定の実施形態では、ゲノム編集法を、iPS細胞へと適用する。例えば、ジンクフィンガードメインを使用して、第2の補正系(corrected line)(SOD1V4A)を生成し、この結果として、2つの、他の点では同系の系(line)をもたらすことができる。この後、上記で記載した方法に従い、胚様体を使用して、疾患iPS細胞および補正iPS細胞を、運動ニューロンへと分化させることができる。
ゲノム編集は、当技術分野で公知の任意の適切な方法により実施することができる。例えば、TALEN技術を使用して、目的の標的遺伝子をコードする染色体配列を編集することができる。TALENとは、TALエフェクターDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインへと融合させることにより生成される人工的制限酵素である。一部の実施形態では、ゲノム編集は、CRISPR技術を使用して実施する。TALEN法およびCRISPR法は、標的部位との一対一の関係をもたらす、すなわち、TALEドメインにおける1単位のタンデムリピートは、標的部位における1つのヌクレオチドを認識し、CRISPR/Cas系のcrRNAまたはgRNAは、DNA標的における相補性配列とハイブリダイズする。方法は、TALENまたはCas9タンパク質の、1つのgRNAとの対を使用して、標的における二本鎖切断をもたらすステップを含みうる。次いで、非相同末端結合または相同組換え(HR)を介して、切断を修復する。
TALENでは、本質的に任意の配列へとターゲティングされうるDNA結合ドメインへと融合させた、非特異的なDNA切断性ヌクレアーゼを使用する。TALEN技術では、標的部位を同定し、発現ベクターを作製する。Liuら、2012年、「Efficient and specific modifications of the Drosophila genome by means of an easy TALEN strategy」、J. Genet. Genomics、39巻:209〜215頁を参照されたい。直鎖化された発現ベクター(例えば、NotIにより)を、mRNAを合成するための鋳型として使用する。Life Technologies(Carlsbad、CA)社製のmMESSAGE mMACHINE SP6転写キットなど、市販のキットを使用することができる。JoungおよびSander、2013年、「TALENs: a wideliy applicable technology for targeted genome editing」、Nat Rev Mol Cell Bio、14巻:49〜55頁を参照されたい。
CRISPR法では、ガイドとしての低分子RNA(gRNA)と複合体を形成して、DNAを、任意のゲノム位置において、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の上流で、配列特異的に切断する、CRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas9)を援用する。CRISPRでは、crRNAおよびtracrRNAとして公知の、個別のガイドRNAを使用することができる。これらの2つの個別のRNAは、短鎖ガイドRNAをデザインすることにより、部位特異的哺乳動物ゲノムを切ることを可能とするように、単一のRNAへと組み合わされている。Cas9およびガイドRNA(gRNA)は、公知の方法により合成することができる。Cas9/ガイドRNA(gRNA)は、非特異的なDNA切断タンパク質であるCas9と、RNAオリゴとを使用して、標的へとハイブリダイズし、Cas9/gRNA複合体を動員する。Changら、2013年、「Genome editing with RNA-guided Cas9 nuclease in zebrafish embryos」、Cell Res、23巻:465〜472頁;Hwangら、2013年、「Efficient genome editing in zebrafish using a CRISPR-Cas system」、Nat. Biotechnol、31巻:227〜229頁;Xiaoら、2013年、「Chromosomal deletions and inversions mediated by TALENS and CRISPR/Cas in zebrafish」、Nucl Acids Res、1〜11頁を参照されたい。
ある特定の実施形態では、ゲノム編集は、例えば、Weinsteinに対する米国特許公開第2011/0023144号において記載されている通り、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介型工程を使用して実施する。
図3は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介型編集のための方法301についての概観を示す。略述すると、方法は、iPS細胞へと、ターゲティング型ジンクフィンガーヌクレアーゼ305と、任意選択で、少なくとも1つのアクセサリーポリヌクレオチドとをコードする、少なくとも1つのRNA分子を導入するステップを含む。細胞は、標的配列311を含む。細胞をインキュベートして、ジンクフィンガーヌクレアーゼ305の発現を可能とし、二本鎖切断317を、ジンクフィンガーヌクレアーゼ305によりターゲティングされる染色体配列311へと導入する。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドまたは交換ポリヌクレオチド321を導入する。交換ポリヌクレオチド321と共に標的DNA311は、エラープローン非相同末端結合型DNA修復工程または相同性指向型DNA修復工程により修復することができる。これを使用して、変化させた部位を除き元のゲノム311と同系の対照ゲノム315を有する対照系を作製することができる。ゲノム編集を使用して、対照系を確立する(例えば、患者が、ある特定の変異を有することが既知である場合、ジンクフィンガー工程により、ゲノムDNAを、野生型へと戻すことができる)こともでき、変異(例えば、ナンセンス、ミスセンス、またはフレームシフト)を導入することもでき、転写または発現に影響を及ぼすこともできる。
ジンクフィンガーヌクレアーゼは、DNA結合ドメイン(すなわち、ジンクフィンガー)および切断ドメイン(すなわち、ヌクレアーゼ)を含み、この遺伝子は、mRNA(例えば、5’キャップmRNA、ポリアデニル化mRNA、またはこれらの両方)として導入しうることが典型的である。ジンクフィンガー結合ドメインは、選り抜きの任意の核酸配列を認識し、これに結合するように操作することができる。例えば、BeerliおよびBarbas、2002年、「Engineering polydactyl zinc-finger transcription factors」、Nat. Biotechnol、20巻:135〜141頁;Paboら、2001年、「Design and selection of novel Cys2His2 zinc finger proteins」、Ann. Rev. Biochem、70巻:313〜340頁;Isalanら、2001年、「A rapid generally applicable method to engineer zinc fingers illustrated by targeting the HIV-1 promoter」、Nat. Biotechnol、19巻:656〜660頁;ならびにSantiagoら、2008年、「Targeted gene knockout in mammalian cells by using engineered zinc-finger nucleases」、PNAS、105巻:5809〜5814頁を参照されたい。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、自然発生のジンクフィンガータンパク質と比較して新規の結合特異性を有しうる。操作法は、合理的デザインおよび多様な種類の選択を含むがこれらに限定されない。ジンクフィンガー結合ドメインは、ジンクフィンガー認識領域(すなわち、ジンクフィンガー)を介して、標的DNA配列を認識するようにデザインすることができる。例えば、参照により組み込まれる、米国特許第6,607,882号;同第6,534,261号、および同第6,453,242号を参照されたい。ジンクフィンガー認識領域を選択する例示的な方法は、ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含むことが可能であり、それらの各々が参照により組み込まれる、米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,410,248号;米国特許第6,140,466号;米国特許第6,200,759号;および米国特許第6,242,568号において開示されている。
当業者には、融合タンパク質(およびこれをコードするポリヌクレオチド)をデザインおよび構築するための、ジンクフィンガー結合ドメインおよび方法が公知であり、各々が参照により組み込まれる、米国特許公開第2005/0064474号および米国特許公開第2006/0188987号において詳細に記載されている。ジンクフィンガー認識領域、マルチフィンガー型ジンクフィンガータンパク質、またはこれらの組合せは、例えば、5つまたはそれ超のアミノ酸の長さのリンカーを含む、適切なリンカー配列を使用して、併せて連結することができる。参照により組み込まれる、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照されたい。
ジンクフィンガーヌクレアーゼでは、核局在化配列(NLS)を使用することができる。NLSとは、ジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質を、核へとターゲティングして、染色体における標的配列に二本鎖切断を導入することを容易とするアミノ酸配列である。当技術分野では、核局在化シグナルが公知である。例えば、Makkerh、1996年、「Comparative mutagenesis of nuclear localization signals reveals the importance of neutral and acidic amino acids」、Current Biology、6巻:1025〜1027頁を参照されたい。
ジンクフィンガーヌクレアーゼはまた、切断ドメインも含む。ジンクフィンガーヌクレアーゼの切断ドメイン部分は、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼなど、任意の適切なエンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼから得ることができる。例えば、BelfortおよびRoberts、1997年、「Homing endonucleases: keeping the house in order」、Nucleic Acids Res、25巻(17号):3379〜3388頁を参照されたい。切断ドメインは、切断活性のために二量体化を必要とする酵素から得ることができる。各ヌクレアーゼは、活性の酵素二量体のうちの単量体を含むので、切断には、2つのジンクフィンガーヌクレアーゼが必要とされる場合がある。代替的に、単一のジンクフィンガーヌクレアーゼは、活性の酵素二量体を作出するように、両方の単量体を含む場合もある。存在する制限エンドヌクレアーゼは、結合部位または結合部位の近傍における、DNAの配列特異的な結合および切断が可能でありうる。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、DNAを、認識部位から除去される部位において切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、二量体として活性のIIS型酵素であるFokIは、DNAの二本鎖切断を、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチドであり、かつ、他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドの位置において触媒する。ジンクフィンガーヌクレアーゼにおいて使用されるFokI酵素は、切断単量体と考えることができる。したがって、FokI切断ドメインを使用する、ターゲティング型二本鎖切断では、各々がFokI切断単量体を含む、2つのジンクフィンガーヌクレアーゼを使用して、活性の酵素二量体を再構成することができる。各々が参照により組み込まれる、Wahら、1998年、「Structure of FokI has implications for DNA cleavage」、PNAS、95巻:10564〜10569頁;米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号、および同第5,487,994号を参照されたい。ある特定の実施形態では、切断ドメインは、例えば、各々が参照により組み込まれる、米国特許公開第2005/0064474号、同第2006/0188987号、および同第2008/0131962号において記載されている通り、ホモ二量体化を最小化するかまたは防止する、1または複数の操作された切断単量体を含みうる。
ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介型工程によるゲノム編集は、配列を含む少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドを、細胞へと導入することを含みうる。ドナーポリヌクレオチドは、染色体における組入れ部位のいずれの側とも配列類似性を共有する上流配列と下流配列とに挟まれた、導入される配列を含むことが好ましい。ドナーポリヌクレオチドにおける上流配列および下流配列は、目的の染色体配列とドナーポリヌクレオチドとの間の組換えを推進するように選択する。ドナーポリヌクレオチドは、DNAであることが典型的である。ドナーポリヌクレオチドは、DNAプラスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、ウイルスベクター、DNAの直鎖状片、PCR断片、ネイキッド核酸であることが可能であり、リポソームなどの送達媒体を援用しうる。ドナーポリヌクレオチドの配列は、エクソン、イントロン、調節配列、またはこれらの組合せを含みうる。
二本鎖切断は、所望の配列を染色体へと組み入れるように、ドナーポリヌクレオチドによる相同組換えを介して修復する。
一部の実施形態では、ゲノム編集のための方法は、細胞へと、切断部位において染色体配列と実質的に同一であり、少なくとも1つの特異的なヌクレオチド変化をさらに含む配列を有する交換ポリヌクレオチド(典型的にはDNA)を導入するステップを含む。細胞を、神経変性疾患を有することが疑われる被験体から得たら、TALEN、CRISPR、またはジンクフィンガーなどの方法を使用して、対照細胞系を作製することができる。例えば、細胞系がSOD1A4Vである場合、方法を使用して、SOD1V4Aを除き同系の細胞系を作製することができる。任意のこのような技術を使用しうるが、以下では、ジンクフィンガーヌクレアーゼを介するゲノム編集を例証する。
一般に、ジンクフィンガーヌクレアーゼの場合、交換ポリヌクレオチドの配列は染色体配列との十分な配列同一性を共有し、それにより、2つの配列を相同組換えにより交換することができる。交換ポリヌクレオチド内の配列は、対応する染色体配列に照らした、少なくとも1つの特異的なヌクレオチド変化を含む。例えば、コドンが、異なるアミノ酸をコードするように、特異的なコドン内の1つのヌクレオチドを、別のヌクレオチドへと変化させることができる。一実施形態では、コードされるタンパク質が、1つのアミノ酸変化を含むように、交換ポリヌクレオチド内の配列は、1つの特異的なヌクレオチド変化を含みうる。
染色体配列を改変するためのジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介型工程では、交換ポリヌクレオチド内の配列を、染色体配列の部分で交換しうるように、ジンクフィンガーヌクレアーゼにより染色体配列へと導入された二本鎖切断を、交換ポリヌクレオチドによる相同組換えを介して修復する。二本鎖切断の存在は、相同組換えおよび切断の修復を容易とする。交換ポリヌクレオチドを物理的に組み入れることもでき、代替的に、交換ポリヌクレオチドを、切断の修復のための鋳型として使用する結果として、交換ポリヌクレオチドにおける配列情報の、その染色体配列の部分における配列情報での交換をもたらすこともできる。こうして、内因性染色体配列の部分を、交換ポリヌクレオチドの配列へと転換することができる。
ジンクフィンガーヌクレアーゼによるゲノム編集を媒介するために、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする、少なくとも1つの核酸分子と、任意選択で、少なくとも1つの交換ポリヌクレオチドまたは少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドとを、目的の細胞へと送達する。核酸を細胞へと導入する適切な方法は、マイクロインジェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム媒介型トランスフェクション、カチオントランスフェクション、リポソームトランスフェクション、熱ショックトランスフェクション、リポフェクション、およびリポソームを介する送達、イムノリポソーム、ウィロソーム、または人工ビリオンを含む。
ジンクフィンガーヌクレアーゼによるゲノム編集を誘導する方法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼの発現を可能とするように、導入された核酸を含む細胞を培養するステップをさらに含む。導入された核酸を含む細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼの発現を可能とする標準的な手順を使用して培養することができる。細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼの発現を可能とするのに必要なO2/CO2比を伴う適切な培地中、適切な温度で培養することが典型的である。培地の適切で非限定的な例は、M2培地、M16培地、KSOM培地、BMOC培地、およびHTF培地を含む。標準的な細胞培養法については、例えば、Santiagoら、2008年、「Targeted gene knockout in mammalian cells by using engineered zinc finger nucleases」、PNAS、105巻:5809〜5814頁;Moehleら、2007年、「Targeted gene addition into a specified location in the human genome using designed zinc finger nucleases」、PNAS、104巻:3055〜3060頁;Urnovら、2005年、「Highly efficient endogenous human gene correction using designed zinc-finger nucleases」、Nature、435巻(7042号):646〜51頁;およびLombardoら、2007年、「Gene editing in human stem cells using zinc finger nucleases and integrase-defective lentiviral vector delivery」、Nat Biotechnol、25巻(11号):1298〜306頁において記載されている。当業者は、当技術分野では、細胞を培養するための方法が公知であり、条件に応じて変化する可能性があり、変化することを察知している。ジンクフィンガーヌクレアーゼが発現すると、標的配列は編集されている。細胞が、発現させるジンクフィンガーヌクレアーゼの他、ドナー(または交換)ポリヌクレオチドも含む場合、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、染色体内の標的配列を認識し、これに結合し、これを切断する。ジンクフィンガーヌクレアーゼにより導入される二本鎖切断では、ドナーポリヌクレオチド内の配列を、染色体配列へと組み入れる(または染色体配列の部分を、交換ポリヌクレオチド内の配列へと転換する)ように、ドナー(または交換)ポリヌクレオチドによる相同組換えを介して修復する。結果として、配列を、染色体配列へと組み入れることができる(または染色体配列の部分を改変することができる)。
染色体配列を改変するためにゲノム編集を使用して、同系(目的の変異を除き)の対照系を生成することができる。ある特定の実施形態では、対照細胞は、健常個体から、すなわち、被験体から採取される細胞に対するゲノム編集を使用せずに得る。対照系を、本明細書で記載される分析法において使用して、被験データとの比較のための対照シグネチャーを生成することができる。一部の実施形態では、対照シグネチャーは、あらかじめ生成および保存した後でファイル上に保存し、保存された対照シグネチャーを使用する(例えば、コンピュータシステム内の非揮発性メモリに保存されるグラフまたは一連の測定値などのディジタルファイル)。例えば、対照シグネチャーは、公知の表現型または遺伝子型を有する被験体の大集団についてアッセイし、集計結果を、その後の下流での比較のための対照シグネチャーとして保存することにより生成しうる。
4.細胞に光遺伝学的系を発現させる
4a.細胞に光遺伝学的レポーターを発現させる
患者の被験細胞系および任意選択の対照系に、神経活動または電気活動についての光レポーターを発現させることができる。神経活動の例は、ニューロンにおける活動電位または神経伝達物質を放出する小胞の融合を含む。例示的な電気活動は、ニューロン内、心筋細胞内、星状細胞内、または他の電気的に活性な細胞における活動電位を含む。さらなる神経活動または電気活動の例は、膜を隔てたイオンのポンピングもしくは放出またはイオン勾配の変化を含む。細胞に、神経活動についての光レポーターを発現させるステップは、小胞融合についての蛍光レポーターにより行うことができる。神経活動または電気活動についての光レポーターを発現させるステップは、光遺伝学的レポーターによる形質転換を含みうる。例えば、細胞は、光遺伝学的レポーターを含むベクターで形質転換することができ、また、細胞には、形質転換により、光遺伝学的アクチュエーターも発現させることができる。ある特定の実施形態では、分化させたニューロンを培養し(例えば、約4日間にわたり)、次いで、神経活動についての遺伝子コード型光レポーターと、任意選択で、光電位アクチュエーターとを保持するレンチウイルスを感染させる。
任意の適切な、神経活動についての光レポーターを使用することができる。例示的なレポーターは、膜貫通電位差についての蛍光レポーター、シナプス小胞融合についての、フルオリンベースのレポーター、および遺伝子コード型カルシウムインジケーターを含む。好ましい実施形態では、遺伝子コード型電位インジケーターを使用する。本発明の方法による使用のために使用または改変されうる遺伝子コード型電位インジケーターは、FlaSh(Siegel、1997年、「A genetically encoded optical probe of membrane voltage」、Neuron、19巻:735〜741頁);SPARC(Ataka、2002年、「A genetically targetable fluorescent probe of channel gating with rapid kinetics」、Biophys J、82巻:509〜516頁);およびVSFP1(Sakaiら、2001年、「Design and characterization of a DNA encoded, voltage-sensitive fluorescent protein」、Euro J Neuroscience、13巻:2314〜2318頁)を含む。電位依存性ホスファターゼのパドルドメインに基づく遺伝子コード型電位インジケーターは、CiVSP(Murataら、2005年、「Phosphoinositide phosphatase activity coupled to an intrinsic voltage sensor」、Nature、435巻:1239〜1243頁)である。別のインジケーターは、膜リーフレットを介するジピクリルアミン(DPA)の電位依存性移動を、膜ターゲティング型GFPによる「ダークFRET」(蛍光共鳴エネルギー移動)へと変換する、ハイブリッドhVOSインジケーター(Chandaら、2005年、「A hybrid approach to measuring electrical activity in genetically specified neurons」、Nat Neuroscience、8巻:1619〜1626頁)である。
本発明による使用に適しうる光レポーターは、公知の微生物型ロドプシンのタンパク質ファミリーに由来する光レポーターを含みうる。微生物型ロドプシンに基づくレポーターは、高感度および高速度をもたらしうる。適切なインジケーターは、Halorubum sodomenseに由来する微生物型ロドプシンタンパク質である、アーキロドプシン3(Arch)の内因性蛍光を使用するインジケーターを含む。Archは、大きなシグナル対ノイズ(SNR)および小さな光毒性で活動電位を分離する。Archの変異体形態であるD95Nは、一部のインジケーターと関連する過分極電流を呈示しないことが示されている。QuasAr1およびQuasAr2と称する、Archの他の変異体形態は、輝度、電位に対する感度、応答速度、およびニューロン細胞膜へのトラフィッキングの改善を呈示することが示されている。Archおよび上述のバリアントは、真核細胞膜をターゲティングし、培養された哺乳動物ニューロンにおける単一の活動電位および閾値未満の脱分極をイメージングしうる。Kraljら、2012年、「Optical recording of action potentials in mammalian neurons using a microbial rhodopsin」、Nat Methods、9巻:90〜95頁を参照されたい。したがって、Arch、およびArch(D95N)など、Archバリアントは、本発明の実施形態に従う、良好な、神経活動についての光レポーターをもたらしうる。
一部の実施形態では、QuasAr1またはQuasAr2など、改善されたArchバリアントを使用する。QuasAr1は、変異:P60S、T80S、D95H、D106H、およびF161Vを有するArchを含む。QuasAr2は、変異:P60S、T80S、D95Q、D106H、およびF161Vを有するArchを含む。Archの位置Asp95およびAsp106(バクテリオロドプシンの位置Asp85およびAsp96により構造的にアラインされ、光反応サイクルの間のプロトン転移において、鍵となる役割を果たすことが報告されている)は、プロトン伝達系におけるシッフ塩基を挟むため、改変の標的であり、電位感度および速度を決定するのに重要である可能性がある。他の変異は、タンパク質の輝度を改善する。当技術分野で公知の方法に従い、Arch遺伝子から始めて、小胞体(ER)輸送モチーフおよびトラフィッキング配列(TS)を付加することは、有益でありうる。
図4は、相同なタンパク質であるArch−2(PDB:2EI4;Enamiら、2006年、「Crystal structures of archaerhodopsin-1 and -2: Common structural motif in Archaeal light-driven proton pumps」、J Mol Bio.、358巻:675〜685頁において記載されている)に基づく、Quasar1の構造モデルを提示する。変異であるT80SおよびF161Vは、タンパク質の周縁部に位置するが、P60Sは、レチナール発色団のシッフ塩基に近接する。それらの位置を踏まえると、T80S置換およびF161V置換は、タンパク質の光物理的特性に対して直接的な影響を有する可能性が低く、フォールディング効率の改善において役割を果たす可能性が高い。これに対し、P60S置換がシッフ塩基に近接することは、この変異が、光物理的特性に対してより直接的な影響を有することを示唆する。QuasArインジケーターは、電位感度、応答反応速度、膜トラフィッキングの、Archと比べた改善と、輝度の照射強度に対する依存性の、Archと比べた低下とを呈示しうる。可溶化させたQuasAr1およびQuasAr2の蛍光量子収率は、非ポンピング型電位インジケーターであるArch(D95N)と比べて、それぞれ、19倍および10倍の増強でありうる。QuasAr1の輝度は、野生型Archの15倍であることが可能であり、QuasAr2の輝度は、3.3倍でありうる。いずれの変異体も、野生型タンパク質において見られる光学的非直線性を示さない。Arch、QuasAr1、およびQuasAr2の蛍光は、−100mV〜+50mVの間の膜電位で、ほぼ直線的に増大する。Kraljら、2012年、「Optical recording of action potentials in mammalian neurons using a microbial rhodopsin」、Nat Methods、9巻:90〜95頁において記載されている通り、蛍光の記録は、落射蛍光顕微鏡上で得ることができる。
QuasAr1およびQuasAr2は各々、特異的なArchバリアントを指す。論じられている通り、アーキロドプシン3(Arch)は、迅速かつ高感度な電位インジケーターとして機能する。Archの改善形は、Hochbaumら、2014年において記載されている、QuasAr(「Archを上回る品質」)を含む。QuasAr1は、野生型Archと、変異であるP60S、T80S、D95H、D106H、およびF161Vで異なる。QuasAr2は、QuasAr1と、変異であるH95Qで異なる。QuasAr1およびQuasAr2は、活動電位(AP)を報告する。
図21は、遺伝子コード型電位インジケーターであるQuasAr2および電位感受性色素であるFluoVoltにより測定されるAP波形についての比較を示す。細胞を、QuasAr2構築物で、低密度でトランスフェクトし、次いで、FluoVolt色素で処理する。QuasAr2は、波長を635nmとする赤色レーザー光で励起し、720nmを中心として蛍光を検出する。FluoVoltは、488nmのレーザー光で励起し、525nmを中心として蛍光を検出する。上パネルは、QuasAr2を発現させる細胞からのAP波形(赤色の線)と、FluoVoltで標識された細胞からのAP波形(緑色の線)との同時的な記録を示す。これらの出力波形の類似性は、QuasAr2の蛍光が、基礎をなすAP波形を正確に表すことを確立する。下方の出力波形は、QuasAr2発現の存在下(FluoVolt+、QuasAr2+、緑色)と、QuasAr2発現の非存在下(FluoVolt+、QuasAr2−、シアン)におけるFluoVoltのAP波形とを比較する。これらの2つの出力波形の類似性は、QuasAr2の発現が、AP波形を攪乱しないことを確立する。
図22は、図21における出力波形からの平均波形のプロットを示す。
図23は、QuasAr2による光毒性および光退色の測定を提示する。細胞は、連続的な赤色のレーザー照射(約50W/cm2)下で、500秒間にわたりイメージングする。蛍光記録の拡大図を、下パネルに示す。
図24は、図23における出力波形の始端部(青)および終端部(緑色)の、平均AP波形の形状についてのグラフを示す。
Archおよび上述のバリアントは、真核細胞膜をターゲティングし、培養された哺乳動物ニューロンにおける単一の活動電位および閾値未満の脱分極をイメージングしうる。いずれもが参照により組み込まれる、Kraljら、2012年、「Optical recording of action potentials in mammalian neurons using a microbial rhodopsin」、Nat Methods、9巻:90〜95頁;およびHochbaumら、「All-optical electrophysiology in mammalian neurons using engineered microbial rhodopsins」、Nature Methods、11巻、825〜833頁(2014年)を参照されたい。したがって、ArchおよびArchのバリアントは、本発明の実施形態に従う、良好な、電気活動についての光レポーターをもたらしうる。
本発明は、ヒト幹細胞由来のニューロンを含む哺乳動物細胞において機能するアーキロドプシンに基づく光レポーターを提供する。これらのタンパク質は、ミリ秒未満の時間解像度およびミクロン未満の空間解像度を有する電気力学的特徴を指し示し、膜電位についての光学的測定を使用する、細胞および組織における電気力学についての、非接触型でハイスループットかつハイコンテントの研究において使用することができる。これらのレポーターは、特に、ヒト細胞を含む哺乳動物などの真核生物において、広く有用である。
本発明は、アーキロドプシン3(Arch3)およびその相同体に基づくレポーターを含む。Arch3は、H.sodomenseに由来するアーキロドプシンであり、高性能の黄色/緑色光による神経サイレンシングのための遺伝子コード型試薬として公知である。遺伝子配列は、GenBank:GU045593.1(合成構築物によるArch3遺伝子の完全コード配列;2009年9月28日寄託)である。これらのタンパク質は、真核細胞における細胞膜に局在化し、電位依存性蛍光を示す。
蛍光の記録は、参照により組み込まれる、Hochbaumら、「All-optical electrophysiology in mammalian neurons using engineered microbial rhodopsins」、Nature Methods、11巻、825〜833頁(2014年)において記載されている、落射蛍光顕微鏡上で得ることができる。
本発明の光レポーターは、高感度を示す。哺乳動物細胞では、アーキロドプシンベースのレポーターは、−150mV〜+150mVの間で、蛍光の約3倍の増大を示す。応答は、この範囲の大半にわたり直線状である。膜電位は、1秒間隔で、<1mVの精度で測定することができる。本発明のレポーターは、高速を示す。QuasAr1は、そのステップ応答のうちの90%を、0.05ミリ秒で示す。心臓APの立ち上がり(upstroke)は、約1ミリ秒間にわたり続くので、Arch由来のインジケーターの速度は、電気活動をイメージングするためのベンチマークを満たす。本発明のレポーターは、高い光安定性を示し、光退色の前に生じる蛍光光子の数がGFPと同等である。レポーターはまた、遠赤色スペクトルも示しうる。場合によって、遺伝子コード型電位インジケーター(GEVI)とも称する、Arch由来の電位を示すタンパク質レポーターは、590〜640nmの間の波長のレーザーで励起することができ、発光は、710nmをピークとする近赤外における発光である。発光は、他の任意の既存の蛍光タンパク質よりさらに赤色よりである。これらの波長は、細胞の自己蛍光の低さと一致する。この特徴は、これらのタンパク質を、活動電位をスペクトルとして光学的に測定するときに特に有用とし、シグナル対ノイズ比の高いイメージングの他、他の蛍光プローブと組み合わせたマルチスペクトルイメージングも容易とする。
他の光遺伝学的レポーターも、本発明の方法およびシステムと共に使用することができる。適切な光遺伝学的レポーターは、Archer1およびArcher2と呼ばれる2つのArchバリアントであって、参照により組み込まれる、Flytzanisら、2014年、「Archaerohodopsin variants with enhanced voltage-sensitive fluorescence in mammalian and Caenorhabditis elegans neurons」、Nat Comm、5巻:4894頁において報告されているバリアントを含む。Archer1およびArcher2は、Arch WTと比較して、655nmの光に応答する放射輝度の増強を呈示し、3〜5倍の蛍光および55〜99分の1の光電流を有す。Archer1(D95EおよびT99C)およびArcher2(D95E、T99C、およびA225M)は、電位センシングに使用することができる。これらの変異体は、最近報告されたArchバリアントの9分の1の光強度(655nmのときに、880mWmm−2)でイメージングした場合、高いベースライン蛍光(Arch WTの3〜5倍)、長時間の照射時間にわたり安定的な、大きな感度ダイナミックレンジ(Archer1およびArcher2のそれぞれについて、100mV当たり85%のDF/Fおよび60%のDF/F)、および迅速な反応速度を呈示する。Archer1の特徴は、in vitroにおいて、単一のニューロン全体の膜電位の迅速な変化、およびニューロンの集団全体の膜電位の迅速な変化をモニタリングする、その使用を可能とする。Archer1は、蛍光を励起するために使用される波長(655nm)では、最小限のポンピングを示すが、低波長(560nm)では、強力なプロトンポンプ電流を維持する。Archer1は、赤色光による電位センシングおよび緑色光による阻害能の両方を有する二機能性ツールをもたらす。Archer1は、感覚刺激に応答する小さな電位の変化を検出することが可能である。
適切な光遺伝学的レポーターは、局在化を増強するためのトラフィッキングシグナルを有する、Arch由来の電位センサーの他、参照により組み込まれる、Gongら、「Enhanced Archaerhodopsin fluorescent protein voltage indicators」、PLoSOne、8巻(6号):e66959頁において報告されている、Arch−EENおよびArch−EEQと呼ばれるArch変異体も含む。このようなレポーターは、二重の変異である、D95N−D106E(Arch−EEN)およびD95Q−D106E(Arch−EEQ)を有するArchバリアントを含みうる。
適切な光遺伝学的レポーターは、ロドプシンファミリーの電位センシングドメインの迅速な反応速度および電位依存性を、遺伝子操作型タンパク質のフルオロフォアの輝度と組み合わせるのに蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用するセンサーを含む。このようなFRET−オプシンセンサーは、良好なスパイク検出忠実度、迅速な反応速度、および高輝度をもたらす。FRET−オプシンセンサーについては、参照により組み込まれるGongら、「Imaging neural spiking in brain tissue using FRET-opsin protein voltage sensors」、Nat Comm、5巻:3674頁において記載されている。適切なFRET−オプシンは、FRETドナーとして作用する高輝度のフルオロフォアの、電位センシングドメインおよびFRETアクセプターの両方として機能する(server)Macロドプシン分子との融合体を含みうる。他のセンサーは、環状再配列GFPを、ニワトリ電位感受性ホスファターゼへと挿入することにより形成される電位センサーである、Accelerated Sensor of Action Potentials(ASAP1)を含む(参照により組み込まれる、St-Pierre、2014年、「High-fidelity optical reporting of neuronal electrical activity with an ultrafast fluorescent voltage sensor」、Nat Neurosci、17巻(6号):884頁)。他の適切なレポーターは、Bongwooriと呼ばれ、参照により組み込まれる、Piaoら、2015年、「Combinatorial mutagenesis of the voltage-sensing domain enables the optical resolution of action potentials firing at 60 Hz by a genetically encoded fluorescent sensor of membrane potential」、J Neurosci、35巻(1号):372〜385頁において記載されている、ArcLight由来のプローブを含みうる。
4b.細胞に光遺伝学的アクチュエーターを発現させる
好ましい実施形態では、細胞を、光電位アクチュエーターで形質転換する。これは、例えば、光遺伝学的レポーターを含むベクターによる形質転換と同時に行うことができる。QuasArレポーターの遠赤色励起スペクトルは、それらを、青色光活性化チャネルロドプシンと対にして、全光学的電気生理学を達成しうることを示唆する。細胞のうちの小区分だけを励起する場合、空間的に正確な光励起のために、チャネルロドプシンは、APを誘導するのに十分な電流密度を保有するものとする。好ましくは、レポーターをイメージングするために使用される光は、アクチュエーターを活性化させないものとし、アクチュエーターを活性化させるために使用される光は、レポーターの蛍光シグナルと交絡しないものとする。したがって、好ましい実施形態では、光アクチュエーターと光レポーターとは、クロストークを回避し、同時的な使用を可能とするように、スペクトル的に直交する。スペクトル直交システムは、CarlsonおよびCampbell、2013年、「Circular permutated red fluorescent proteins and calcium ion indicators based on mCherry」、Protein Eng Des Sel、26巻(12号):763〜772頁において論じられている。
好ましくは、遺伝子コード型光遺伝学的アクチュエーターを使用する。1つのアクチュエーターは、Nagel, G.ら、2005年、「Light activation of channelrhodopsin-2 in excitable cells of Caenorhabditis elegans triggers rapid behavioral responses」、Curr. Biol.、15巻、2279〜2284頁において記載されている光遺伝学的アクチュエーターである、チャネルロドプシン2 H134Rである。
植物ゲノムのスクリーンにより、英国エセックスの小さな池から最初に単離された淡水緑色藻類に由来する光遺伝学的アクチュエーターである、Scherffelia dubia ChR(sdChR)が同定された。いずれもが参照により組み込まれる、Klapoetkeら、2014年、「Independent optical excitation of distinct neural populations」、Nat Meth Advance Online Publication、1〜14頁を参照し、また、MelkonianおよびPreisig、1986年、「A light and electron microscopic study of Scherffelia dubia, a new member of the scaly green flagellates (Prasinophyceae)」、Nord. J. Bot.、6巻:235〜256頁も参照されたい。SdChRは、良好な感度および青色の作用スペクトルをもたらしうる。
CheRiffと呼ばれるsdChRの改善形は、光アクチュエーターとして使用することができる。Scherffelia dubiaチャネルロドプシン(sdChR)(その青色励起ピーク(474nm)およびChR2と比べて大きなその光電流についての、チャネルロドプシンのスクリーニングから選択された)の遺伝子は、マウスコドンの最適化により合成し、Kir2.1に由来するトラフィッキング配列を付加して、トラフィッキングを改善し、変異E154Aを導入する。CheRiffは、赤色照射によるクロストークの有意な低下(10.5±2.8pAへの)を呈示することから、細胞における、本明細書で記載される光遺伝学的レポーターと共にその使用が可能となる。CheRiffは、培養されたラット海馬ニューロンにおける良好な発現および膜トラフィッキングを示す。飽和照射(488nm、500mW/cm)下における極大光電流は、2.0±0.1nA(n=10の細胞)であり、ChR2 H134RまたはChIEFのピーク光電流(Linら、2009年、「Characterization of engineered channelrhodopsin variants with improved properties and kinetics」、Biophys J、96巻:1803〜1814頁)の約2倍である。CheRiffを発現させるニューロンでは、標準的なチャネルロドプシンの照射条件(488nm、500mW/cm)下におけるChR2 H134RおよびChIEFと比較して、わずかに22±10mW/cmの全細胞照射により、1nAの光電流が誘導される。23℃では、CheRiffは、4.5±0.3ミリ秒で、ピーク光電流に達する(n=10の細胞)。照射パルスの5ミリ秒後に、チャネル閉鎖の時定数は、CheRiffとChIEFとの間で同等(16±0.8ミリ秒、n=9の細胞、および15±2ミリ秒、n=6の細胞、それぞれ、p=0.94)であり、ChR2 H134R(25±4ミリ秒、n=6の細胞、p<0.05)より速かった。連続的な照射下で、CheRiffは、400ミリ秒の時定数で部分的に脱感作され、1.3±0.08nAの定常状態電流に達する(n=10の細胞)。CheRiffを発現させるニューロンの照射は、高い信頼性および高い繰り返し率で、一連のAPを誘導する。
培養ニューロンにおけるQuasArとCheRiffとの光学的クロストークについて調べたところ、一連のAPを高頻度で誘導するのに十分な照射(488nm、140mW/cm)によるQuasArの蛍光の攪乱は<1%であった。高強度の赤色光(640nm、900W/cm)による照射は、CheRiffを介する、14.3±3.1pAの内向き光電流を誘導し、これは、ニューロンを、3.1±0.2mVで脱分極させた(n=5の細胞)。ChIEFとChR2 H134Rとは、赤色光による同様の光電流および脱分極をもたらした。大半の適用では、このレベルの光学的クロストークは、許容される。
一部の実施形態では、アクチュエーターの活性化が、CheRiffよりさらに青色よりの、400〜440nmの間の波長の紫色光で極大となる該アクチュエーターを有することが好ましい。紫活性化チャネルロドプシンは、黄励起Ca2+インジケーター(例えば、jRCaMP1a、jRGECO1a、およびR−CaMP2)および赤励起電位インジケーター(例えば、光学的刺激条件下において、Ca2+と電位とを同時的にモニタリングするためのQuasAr2)と同時に組み合わせることができる。
好ましい紫励起チャネルロドプシンアクチュエーターは、Tetraselmis striataに由来するTsChR(Klapoetkeら、2014年、「Independent optical excitation of distinct neural populations」、Nat. Meth.、11巻、338〜346頁(2014年)を参照されたい)である。このチャネルロドプシンアクチュエーターは、ピークを435nmとする、青方偏移作用スペクトルを有する。別の好ましい紫色チャネルロドプシンアクチュエーターは、Platymonas subcordiformisに由来するPsChR(Govorunova, Elenaら、2013年、「Characterization of a highly efficient blue-shifted channelrhodopsin from the marine alga Platymonas subcordiformis」、J Biol Chem、288巻(41号):29911〜29922頁を参照されたい)である。PsChrは、ピークを437nmとする、青方偏移作用スペクトルを有する。PsChRおよびTsChRは、赤方偏移Ca2+インジケーターと対にすると有利であり、これらの赤方偏移Ca2+インジケーターと同じ細胞内または同じ視野内で、光学的クロストークを伴わずに使用することができる。
4c.光遺伝学的系を発現させるためのベクター
光遺伝学的レポーターおよびアクチュエーターは、本明細書で記載される構築物において、発現ベクターの使用を介して送達される光パッチ構築物(optopatch construct)として送達することができる。光パッチとは、従来パッチクランプと関連する機能を果たすシステムであるが、例えば、光レポーターまたはアクチュエーターによりもたらされる、光学的入力、光学的リードアウト、またはこれらの両方を介するシステムを指すように理解することができる。光パッチ構築物は、CheRiff−eGFPとQuasAr1−mOrange2またはQuasAr2−mOrange2とを共発現させるためのバイシストロニックのベクターを含みうる。QuasAr構築物とCheRiff構築物とは、別個に送達することもでき、バイシストロニックの発現ベクターを使用して、アクチュエーター発現レベルの、レポーター発現レベルに対する均一な比を得ることもできる。
遺伝子コード型レポーター、アクチュエーター、またはこれらの両方は、当技術分野で公知の方法を使用して、任意の適切な発現ベクターにより送達することができる。発現ベクターとは、必要な調節領域を含有する特化ベクターであって、宿主細胞内で目的の遺伝子を発現させるために必要とされる特化ベクターである。一部の実施形態では、目的の遺伝子を、ベクター内の別の配列に作動可能に連結する。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、複製欠損型であることが好ましく、これは、例えば、複製をコードする全てのウイルス核酸を除去することにより達成することができる。複製欠損型ウイルスベクターは、その感染特性をなおも保ち、複製型ベクターと同様の方式で細胞に侵入するが、細胞へと受け入れられると、複製欠損型ウイルスベクターは、繁殖または増殖しない。「作動可能に連結された」という用語は、コード配列の発現がなされるように、コード配列を発現させるために必要な調節配列を、DNA分子内の、コード配列に照らして適切な位置に置くことを意味する。この同じ定義は、場合によって、発現ベクター内のコード配列および転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、および終結エレメント)の配置へも適用される。
当技術分野では、多くのウイルスベクターまたはウイルス関連ベクターが公知である。このようなベクターは、核酸構築物の細胞への担体として使用することができる。構築物を、細胞への感染もしくは形質導入のための、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)、またはレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターを含む他のウイルスなど、非複製型の欠損性ウイルスゲノムへと組み入れ、パッケージングすることができる。ベクターは、細胞のゲノムへと組み込まれる場合もあり、組み込まれない場合もある。構築物は、所望の場合、トランスフェクションのためのウイルス配列を含みうる。代替的に、構築物は、エプスタインバーウイルス(EPVまたはEBV)ベクターなど、エピソームとしての複製が可能なベクターへと組み込むこともできる。発現制御配列が、このポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御および調節する場合は、本明細書で記載される挿入ベクター素材を、発現制御配列へと作動的に連結することができる。一部の例では、挿入された素材の転写は、組換え遺伝子の発現を制御するプロモーター配列(または他の転写調節配列)の制御下にある。一部の実施形態では、誘導性プロモーターを含有する組換え細胞を使用し、適切な環境条件または作動的病原体への曝露を介して、作用物質(agent)または刺激を、細胞または生物へと、外部から適用することにより、調節的作用物質または調節的刺激へと曝露する。誘導性プロモーターは、調節的作用物質または調節的刺激の存在下だけで転写を誘発する。誘導性プロモーターの例は、ベータ−インターフェロン遺伝子、熱ショック遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、またはステロイドホルモン応答性遺伝子から得られる任意の遺伝子に由来する、テトラサイクリン応答エレメントおよびプロモーターを含む。本発明の方法を実施するときに使用しうる誘導性プロモーターは、ホルモンおよびプロゲステロン、エクジソン、およびグルココルチコイドなどのホルモン類似体により調節される誘導性プロモーターの他、テトラサイクリン、熱ショック、重金属イオン、インターフェロン、およびラクトースオペロン活性化化合物により調節されるプロモーターも含む。GingrichおよびRoder、1998年、「Inducible gene expression in the nervous system of transgenic mice」、Annu Rev Neurosci、21巻:377〜405頁を参照されたい。遺伝子発現の分野では、組織特異的な発現が十分に特徴付けられており、当技術分野では、組織特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターが周知である。これらのプロモーターは、標的細胞へと導入した後で、外来遺伝子の発現を調節するのに使用する。ある特定の実施形態では、細胞型特異的プロモーターまたは組織特異的プロモーターを使用する。細胞型特異的プロモーターは、主に1つの細胞型内では、選択された核酸の発現を調節するが、他の細胞内での発現もまたもたらす、漏出性細胞型特異的プロモーターを含みうる。具体的に、ニューロン細胞内で外因性遺伝子を発現させるためには、ニューロン特異的エノラーゼプロモーターを使用することができる。Forss-Petterら、1990年、「Transgenic mice expressing beta-galactosidase in mature neurons under neuron specific enolase promoter control」、Neuron、5巻:187〜197頁を参照されたい。ドーパミン作動性ニューロン内で外因性遺伝子を発現させるためには、チロシンヒドロキシラーゼプロモーターを使用することができる。
一部の実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、真核生物プロモーターを含みうる。プロモーターは、真核細胞内でプロモーターとして機能しうる合成プロモーターを含む、任意の誘導性プロモーターでありうる。例えば、真核生物プロモーターは、当技術分野で周知の、CamKIIαプロモーター、ヒトシナプシンプロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、E1a誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターなどでありうるがこれらに限定されない。加えて、本明細書で使用されるレンチウイルスベクターはさらに、プロモーターと、選択可能な形質のコード配列とを含みうる、選択マーカーも含みうる。当技術分野では、選択マーカーをコードするヌクレオチド配列が周知であり、抗生剤または代謝拮抗剤に対する耐性を付与する遺伝子産物をコードするか、または栄養要求性要件を与えるヌクレオチド配列を含む。このような配列の例は、とりわけ、チミジンキナーゼ活性、またはメトトレキサート、アンピシリン、カナマイシンに対する耐性をコードする配列を含むがこれらに限定されない。レンチウイルスベクターの使用は、Wardillら、2013年、「A neuron-based screening platform for optimizing genetically-encoded calcium indicators」、PLoS One、8巻(10号):e77728頁;Dottoriら、「Neural development in human embryonic stem cells-applications of lentiviral vectors」、J Cell Biochem、112巻(8号):1955〜62頁;およびDiesterら、2011年、「An optogenetic toolbox designed for primates」、Nat Neurosci、14巻(3号):387〜97頁において論じられている。培養されたラット海馬ニューロンにおけるCaMKIIαプロモーター下で発現させる場合、光パッチ構築物は、CheRiffおよびQuasAr2の両方について、高度な発現および良好な膜トラフィッキングを呈示する。
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することが可能であり、そのゲノムを宿主細胞のゲノム内に組み込むことが可能である。1つの適切なウイルスベクターでは、CNSにおける遺伝子送達に広く使用されている、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を使用する。
ある特定の実施形態では、本発明の方法では、Cre依存性発現系を使用する。Cre依存性発現は、Lox配列と呼ばれる短い標的配列対を組み換える酵素であるCreリコンビナーゼを使用する、部位特異的リコンビナーゼ技術である、Cre−Lox組換えを含む。この系は、追加の支援タンパク質または支援配列を挿入せずに実装することができる。Cre酵素と、LoxP配列と呼ばれる元のLox部位とは、バクテリオファージP1に由来する。バクテリオファージP1は、Cre−lox組換えを使用して、そのゲノムDNAを環状化し、複製する。この組換え戦略は、CreリコンビナーゼおよびLoxP部位だけを必要とするゲノム操作のために、Cre−Lox技術において援用される(SauerおよびHenderson、1988年、「Site-specific DNA recombination in mammalian cells by the Cre recombinase of bacteriophage P1」、PNAS、85巻:5166〜70頁;およびSternbergおよびHamilton、1981年、「Bacteriophage P1 site-specific recombination. I. Recombination between LoxP sites」、J Mol Biol、150巻:467〜86頁)。方法では、チャネルロドプシン−2(ChR2)などのツールを、信頼できる光刺激を可能とするのに十分な発現レベルを有する特異的なニューロンへとターゲティングするために、Creリコンビナーゼ依存性ウイルスベクターを使用することができる。こうして、mCherryなどの蛍光タンパク質をタグ付けされたChR2(例えば、ChR2mCherry)などの光遺伝学的ツール、または本明細書で論じられるツールのうちの他のいずれかを、これらの細胞の特徴付けにおける使用のための1または複数の細胞へと送達する。
送達ベクターは、CreおよびLoxを含みうる。ベクターは、任意選択で、Cre媒介型組換えの非存在下におけるトランス遺伝子の発現を防止するように、Lox−stop−Lox(LSL)カセットもさらに含みうる。Creリコンビナーゼの存在下では、LoxP部位同士が組み換えをおこし、除去可能な転写終結Stopエレメントを欠失させる。stopエレメントの除去は、発現のタイミングおよび位置の制御を可能とする、AdenoCreの使用を介して達成することができる。LSLカセットの使用は、Jacksonら、2001年、「Analysis of lung tumor initiation and progression using conditional expression of oncogenic K-ras」、Genes & Dev、15巻:3243〜3248頁において論じられている。
ある特定の実施形態では、本発明の構築物は、「flip切出し」スイッチまたはFLEXスイッチ(FLip EXicision)を使用して、安定的なトランス遺伝子の反転を達成する。FLEXスイッチは、Schnutgenら、2003年、「A directional strategy for monitoring Cre-mediated recombination at the cellular level in the mouse」、Nat Biotechnol、21巻:562〜565頁において論じられている。FLEXスイッチでは、2対の異型でアンチパラレルのLoxP型組換え部位を使用し、まず、これらに、コード配列の反転を施した後、2つの部位の切出しにより、反対向きに配向され、さらなる組換えが不可能な、直交する各組換え部位のうちの1つをもたらす。FLEXスイッチは、高効率および不可逆性をもたらす。したがって、一部の実施形態では、方法では、rAAV−FLEX−rev−ChR2mCherryを含むウイルスベクターを使用する。加えて、または代替的に、ベクターは、FLEXおよび他の任意の本明細書で論じられる光遺伝学的ツール(例えば、rAAV−FLEX−QuasAr、rAAV−FLEX−CheRiff)も含みうる。rAAV−FLEX−rev−ChR2mCherryを、例示的な例として使用すると、ChR2mCherryコード配列のCre媒介型反転の結果として、Creが、配列を反転させ、ChR2mCherryの転写をオンにするまでは、誤った配向(すなわち、rev−ChR2mCherry)にあるコード配列がもたらされる。FLEXスイッチベクターは、Atasoyら、2009年、「A FLEX switch targets channelrhodopsin-2 to multiple cell types for imaging and long-range circuit mapping」、J Neurosci、28巻(28号):7025〜7030頁において論じられている。
光レポーター、光アクチュエーター、またはこれらの両方を有する(任意選択で、FLEXスイッチおよび/またはLox−Stop−Loxカセットを有する)Cre−Lox系などのウイルスベクターであって、ニューロンの標識化および刺激のためのウイルスベクターを使用すると、100μW未満の焦点化レーザー光または光ファイバーからの光への短時間の曝露(1ミリ秒間)だけで、効率的な光刺激が可能となる。このようなさらなる議論は、Yizharら、2011年、「Optogenetics in neural systems」、Neuron、71巻(1号):9〜34頁;Cardinら、2010年、「Targeted optogenetic stimulation and recording of neurons in vivo using cell-type-specific expression of Channelrhodopsin-2」、Nat Protoc、5巻(2号):247〜54頁;Rothermelら、2013年、「Transgene expression in target-defined neuron populations mediated by retrograde infection with adeno-associated viral vectors」、J Neurosci、33巻(38号):195〜206頁;およびSaundersら、2012年、「Novel recombinant adeno-associated viruses for Cre activated and inactivated transgene expression in neurons」、Front Neural Circuits、6巻:47頁において見出すことができる。
ある特定の実施形態では、アクチュエーター、レポーター、または他の遺伝子素材は、化学修飾されたmRNAを使用して送達することができる。ある特定のヌクレオチド改変が、mRNAと、toll様受容体、レチノイド誘導性遺伝子、またはこれらの両方との間の相互作用に干渉することを見出し、利用することができる。所望の産物をコードするmRNAへの曝露は、細胞における所望レベルの産物の発現をもたらしうる。例えば、Kormannら、2011年、「Expression of therapeutic proteins after delivery of chemically modified mRNA in mice」、Nat Biotech、29巻(2号):154〜7頁;Zangiら、2013年、「Modified mRNA directs the fate of heart protenitor cells and induces vascular regeneration after myocardial infarction」、Nat Biotech、31巻:898〜907頁を参照されたい。
任意選択のアクチュエーターを有する遺伝子コード型光レポーターによる形質転換の後で、細胞を培養するかまたは成熟させることは有益でありうる。一部の実施形態では、ニューロンは、感染後8〜10日間にわたり成熟させる。本明細書で記載される顕微鏡法および分析法を使用して、細胞およびその活動電位を観察することができる。さらなる議論については、参照によりその全体において全ての目的で組み込まれる、米国特許公開第2013/0224756号を参照されたい。
4d.電位およびCa2+の同時的な測定のための光遺伝学的構築物および播種スキーム
図25は、刺激ならびに電位および細胞内Ca2+の検出のために使用される、光遺伝学的タンパク質の概略的構造を提供する。概略図は、CheRiffおよびQuasAr2と相同的なタンパク質を示す。細胞の刺激は、488nmのLEDによるCheRiffの照射を介して達成する。CheRiff構築物は、CheRiffの発現を検出するためのeGFPタグへとカップリングさせる。GCaMP6f(Chenら、2013年)へと融合させたQuasAr2(Hochbaumら、2014年)からなる、CaViarと呼ばれる融合タンパク質(Houら、2014年)を、電位およびCa2+の同時的なイメージングに使用する。QuasAr2は、赤色レーザー光を介して励起する。GCaMP6fは、青色レーザー光を介して励起する。細胞には、CheRiffベクターまたはCaViarベクターにより、個別に形質導入する。
図26は、細胞の播種構成を例証する。同時的な光学的刺激および電位イメージングのためには、CheRiff細胞(塗りつぶしたシアンの丸印)を、CaViar細胞(塗りつぶした赤色の丸印)と混ぜ合わせる。黄色の点線は、顕微鏡の視野を指し示す。Ca2+および膜電位の両方の同時的な光学的刺激およびイメージングのためには、CheRiff発現細胞を、CaViar発現細胞から空間的に分けて、CheRiff発現細胞を周期的に刺激するのに使用される青色パルス光と、CaViar発現細胞をイメージングするのに使用される青色連続光との光学的クロストークを回避するように、細胞を播種する。CheRiff発現細胞は、イメージング領域の外側に置いた。
培養細胞におけるArchベースのレポーターとCheRiffとの光学的クロストークについて調べたところ、APを誘導するのに十分な照射(488nm、140mW/cm2)による、QuasArレポーターの蛍光の攪乱は、<1%であった。強度の大きな赤色光(640nm、900W/cm2)による照射は、CheRiffを介する、14.3±3.1pAの内向き光電流を誘導し、これは、細胞を、3.1±0.2mVで脱分極させた(n=5の細胞)。ChIEFとChR2 H134Rとは、赤色光による同様の光電流および脱分極をもたらした。大半の適用では、このレベルの光学的クロストークは、許容される。
4e.マルチモードセンシング/マルチプレックス化
膜電位は、細胞におけるシグナル伝達の複数の機構のうちの1つに過ぎない。膜電位の変化は、Ca2+、H+(すなわち、pH)、Na+、ATP、cAMP、NADHなど、他の種の濃度の変化と相関させることができる。本発明者らは、Archの、フルオリン(蛍光pHインジケーター)およびGCaMP6f(蛍光Ca2+インジケーター)との融合体を構築した。Archベースの電位インジケーターと、遺伝子コード型Ca2+インジケーターとの融合体は、CaViarと呼ばれる(Houら、2014年、「Simultaneous mapping of membrane voltage and calcium in zebrafish heart in vivo reveals chamber-specific developmental transitions in ionic currents」、Frontiers in physiology、5巻を参照されたい)。また、本明細書において教示される概念を使用するマルチモードイメージングの他の形態を可能とする、他のタンパク質ベースの蛍光インジケーターとの融合体も使用することができる。微生物型ロドプシンをコードする核酸を、さらなる分析物感受性蛍光インジケーターへと作動可能に連結するかもしくは融合させる場合;または微生物型ロドプシンと、さらなる分析物感受性蛍光インジケーターとを、同じ細胞内で共発現させる場合は、ナトリウム、カリウム、クロライド、およびカルシウムなどのイオン濃度も、同時に測定することができる。
しばしば、細胞の光刺激、カルシウムイメージング、および電位イメージングを同時的に達成することが所望される。3つのモダリティーの全てを同じ細胞内で達成するために、本発明は、紫励起チャネルロドプシンアクチュエーター(psChRまたはTsChR);赤方偏移遺伝子コード型カルシウムインジケーター;および遠赤色Arch由来電位インジケーターを提供する。赤方偏移遺伝子コード型カルシウムインジケーターは、R−GECO1(いずれもが参照により組み込まれる、Zhao, Yongxinら、「An expanded palette of genetically encoded Ca2+ indicators」、Science、333巻、6051号(2011年):1888〜1891頁;およびWu, Jiahuiら、「Improved orange and red Ca2+ indicators and photophysical considerations for optogenetic applications」、ACS chemical neuroscience、4巻、6号(2013年):963〜972頁を参照されたい)、R−CaMP2(参照により組み込まれる、Inoue, Masatoshiら、「Rational design of a high-affinity, fast, red calcium indicator R-CaMP2」、Nature methods、12巻、1号(2015年):64〜70頁を参照されたい)、jRCaMP1a(Addgene製のプラスミド:61562)、およびjRGECO1a(Addgene製のプラスミド:61563)を含む。これらのカルシウムインジケーターは、540〜560nmの間の波長により励起され、570〜620nmの間の波長で発光し、これにより、紫励起チャネルロドプシンアクチュエーターおよびArchベースの電位インジケーターからのスペクトル分離を可能とする。
電位を指し示すタンパク質についてのイメージングを、例えば、pH、カルシウム、またはATPについての、他の構造的および機能的なイメージングと組み合わせることができる。電位を指し示すタンパク質についてのイメージングはまた、例えば、チャネルロドプシン、ハロロドプシン、およびアーキロドプシンを使用する、膜電位の光遺伝学的制御とも組み合わせることができる。光学的測定と光学的制御とを組み合わせたら、全光学的電気生理学を実施して、任意の膜の電気力学的応答をプローブすることができる。
本発明は、細胞を特徴付けるハイスループット法を提供する。ロボット装置および特注ソフトウェアを、ハイスループット薬物スクリーニング法において典型的に見られる大規模ライブラリーまたは多数の状態をスクリーニングするために使用することができる。
4f.光学的リードアウト
本発明の実施形態は、刺激細胞とレポーター細胞との空間的分離を提供する。チャネルロドプシンベースの光依存性イオンチャネルの発現は、光学的刺激を達成する手段をもたらす。しかし、これらのチャネルを活性化させるのに使用される青色光は、大半の低分子および生理学的活性についての遺伝子コード型蛍光レポーターをイメージングするのに使用される光とスペクトル的に重複しうる(例えば、gCaMP Ca2+インジケーター、パーシバルATPインジケーター、フルオリンpHインジケーター、VF2.1.C1電位感受性色素)。これらのレポーターをイメージングするのに使用される光はまた、全ての公知のチャネルロドプシンアクチュエーターのオフターゲット活性化ももたらし得る。理想的には、任意の色の蛍光レポーターから記録する自由を維持しながら、刺激と生理学的測定との光学的クロストークを伴わずに細胞培養物を光学的に刺激したいところである。本発明の方法は、アクチュエーター細胞とレポーター細胞との空間的分離を介して、任意の色の蛍光レポーターもまた使用しながら、刺激と生理学的測定との光学的クロストークを伴わずに、細胞培養物を光学的に刺激することを可能とする。
本明細書で提示される1つの解決法は、hiPSC由来の細胞の1つのセットでは、チャネルロドプシンアクチュエーターを発現させ、細胞の別のセットでは、レポーター(例えば、CaViar二機能性Ca2+および電位レポーター)を発現させることを含む。青色閃光を、アクチュエーター細胞へと送達しながら、青色連続光を使用して、レポーター細胞をモニタリングする。アクチュエーター細胞は、シナプスを介して、レポーター細胞を刺激する。鍵となる課題は、刺激および測定光ビームを同定し、適切な対応する細胞へとターゲティングすることである。本発明の方法は、個別の刺激および測定光ビームを、適切な細胞へとターゲティングする問題への解決法についての、少なくとも2つの実施形態:空間的分離に基づく第1の手法と、画像処理およびパターン化した照射に基づく第2の手法とをもたらす。
4g.空間的分離
空間的分離を使用する第1の実施形態では、アクチュエーター発現細胞とレポーター発現細胞との空間的分離を使用して光を、アクチュエーター細胞へとターゲティングする。
細胞には、アクチュエーターとレポーターとを独立に感染させ、顕著に異なるが電気的に近接する領域内に再播種する。アクチュエーターを発現させる細胞を有するディッシュの領域だけに光学的刺激を送達し、アクチュエーターを発現させる細胞から離れたディッシュの領域で、任意の波長の光を使用するセンサーの測定値を記録する。1つの場合には、アクチュエーターは、CheRiffであり、センサーは、ヒトiPSC由来のニューロンにおけるCaViarである。
図27は、外径を10mm、直径を約8mmとする、環状領域内に播種された、CheRiffを発現させる細胞を示す。内径は、カバースリップへと接着させたポリジメチルシロキサン(PDMS)のディスクにより定め、外径は、チャンバーの辺縁部により定める。次いで、PDMSディスクを除去し、CaViarを発現させる細胞を、全体に播種する。刺激は、青色LEDの照射が、動作細胞の小領域へと限定される該青色LEDにより制御する。電位イメージングおよびカルシウムイメージングは、それぞれ、CheRiff発現細胞がない領域内で、赤色レーザーおよび青色レーザーにより達成する。
4h.のパターン化した照射
パターン化した照射を使用する第2の実施形態では、混合したアクチュエーター発現細胞およびレポーター発現細胞を個別にターゲティングするように、画像処理およびパターン化した照射を使用して、光を、アクチュエーター細胞へとターゲティングする。
画像処理および照射のパターン化のためには、アクチュエーターまたはレポーターのいずれかを発現する細胞を、ランダムに混ぜ合わせる。一実施形態では、細胞をまず個別に播種し、アクチュエーターまたはレポーターのいずれかを発現させる。次いで、細胞を、それらのそれぞれのディッシュから取り上げ、混合し、イメージングディッシュへと共播種する。別の実施形態では、細胞を、イメージングチャンバー内に直接播種し、Creオンアクチュエーターをコードするレンチウイルスと、Creオフレポーターをコードするレンチウイルスとを二重感染させる。次いで、細胞の低密度のサブセットにおいて、アクチュエーターをオンに切り替え、レポーターをオフに切り替えるように、細胞に、Creタンパク質をコードするレンチウイルスを低密度で感染させる。
アクチュエーターを発現させる細胞は、認識可能なマーカー、例えば、蛍光タンパク質を介して、またはレポーターの存在を指し示す過渡蛍光の非存在により同定する。光学的刺激は、これらのアクチュエーターを発現させる細胞だけに閃光を投射する、ディジタル式マイクロミラーデバイス(DMD)を使用して、励起光を空間的にパターン化させることにより達成する。
図5は、照射をパターン化するための光イメージング装置501を概略的に示す。488nmの青色レーザービームの強度を、音響光学モジュレーター(図示しない)によりモジュレートし、次いで、ビームをディジタル式マイクロミラーデバイス(DMD)505で反射させる。DMDは、その顕微鏡への行路上の青色レーザービーム(CheRiffを励起するために使用される)に、空間的パターンを付与した。マイクロミラーを、試料509へとリイメージングし、使用者により規定される、照射の時空パターンを、試料にもたらす。640nmの赤色光による全視野への同時的な照射は、レポーターの蛍光を励起する。
アクチュエーターを発現させる細胞についての認識可能なマーカーとして働く蛍光タンパク質をイメージングして、これらのアクチュエーター細胞のパターンを決定する。この画像についてのディジタル座標を使用して、DMD 505が、488nmの青色光を、アクチュエーター細胞だけに方向付けるように、DMD 505を制御する。DMD 505によりもたらされるパターン化した照射の精度により、レポーターを発現する細胞は、488nmの光へと曝露されない。レポーターを発現する細胞は、これらのレポーターを発現する細胞だけを照射するように、DMDを介してターゲティングされる640nmの光により、連続的な照射下でイメージングするが、任意選択で、GCaMPカルシウムインジケーターなどのさらなるレポーターを照射するように、488nmの波長の連続的な照射下でもイメージングする。
照射のパターン化法により、青色閃光を、アクチュエーター細胞へと送達する一方で、赤色および/または青色の連続光を使用して、レポーター細胞をモニタリングする。アクチュエーター細胞は、レポーター細胞を刺激する(例えば、シナプス全体にわたり)。好ましくは、アクチュエーター細胞は、チャネルロドプシンアクチュエーターを発現させるhiPSC由来のニューロンの第1のセットを含み、レポーター細胞は、レポーター(例えば、QuasAr2レポーターまたはCaViar二機能性Ca2+および電位レポーター)を発現させるhiPSC由来のニューロンの第2のセットを含む。
前出の(i)空間的分離法および(ii)照射のパターン化法は、光学的に刺激されたニューロンにおける、膜電位の変化、[Ca2+]の変化、またはこれらの両方の光学的検出をもたらす。本明細書において記載される方法および技法は、疾患遺伝子型を有する細胞などの細胞に対する化合物の効果の光学的検出をもたらす。このような検出は、このような細胞の表現型に対する化合物または他の刺激の効果を評価することを可能とする。
4i.電位イメージングのための平板の調製
MatTekディッシュ(MatTek corp.製;直径10mmのガラス製、型番1.5)を、0.1%のゼラチン中10μg/mLのフィブロネクチン(Sigma−Aldrich)で、4℃で一晩にわたりコーティングする。まず、トリプシン処理したCaViar発現細胞とCheRiff発現細胞とを、CaViar:CheRiffの比を5:1として混合し、次いで、ペレット化させる。組み合わされた細胞を、2.1mLの維持培地中に再懸濁させ、100μLの播種培地中、1cm2当たりの細胞2.5×104個の密度で播種して、全ガラス表面を覆う。細胞は、5%のCO2中37℃で一晩にわたり保ち、ガラスへと接着させる。維持培地(1.0mL)を、各ディッシュへと添加し、750μLの培地をディッシュから除去し、750μLの新鮮な維持培地で置きかえることにより、細胞に48時間ごとに供給する。
4j.同時的な電位イメージングおよびカルシウムイメージングのための平板の調製
同時的な電位イメージングおよびカルシウムイメージングのために、CheRiff発現細胞を、CaViar発現細胞から分けるように、MatTekディッシュ(直径10mmのガラス製)を調製する。これは、いずれも青色光による、2つの機能の間の光学的クロストークを伴わない、同時的なカルシウムイメージングおよびCheRiff刺激を可能とする。ある特定の実施形態では、直径8mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)ディスクの一方の面を、0.1%のゼラチン中10μg/mLのフィブロネクチン溶液で、室温で10分間にわたり処理する。次いで、コーティングされたディスクを乾燥させ、次いで、一方の面に軽くオフセット刷りされた、MatTekディッシュのガラス表面へと押しつける。次いで、露出されたガラスの残りの領域を、0.1%のゼラチン中10μg/mLのフィブロネクチンでコーティングする。CheRiffを発現させる細胞を、製造元のプロトコールに従いトリプシン処理し、ディッシュ1枚当たり50μLずつの維持培地中で再懸濁させる。次いで、播種のために、50μLのCheRiff細胞を、ガラス表面の露出部分へと添加し、5%のCO2中37℃で40分間にわたり静置して、細胞を接着させる。次いで、PDMSディスクを除去し、ガラス表面を、150μLの維持培地で洗浄し、残りの容量を吸引した。次いで、トリプシン処理されたCaViar細胞を、ディッシュ1枚当たり100μLの維持培地に再懸濁させ、100μL中、1cm2当たりの細胞2.0×104個の密度で播種して、全ガラス表面を覆う。細胞を、5%のCO2中37℃で一晩にわたり保ち、ガラスへと接着させる。1.00mLの維持培地を、各ディッシュへと添加し、750μLの培地をディッシュから除去し、750μLの新鮮な維持培地を添加することにより、細胞に48時間ごとに供給する。
5.イメージング活動アッセイ
5a.画像の捕捉
本発明の方法は、観察される細胞を刺激するステップを含みうる。刺激は、直接的な場合もあり、間接的(例えば、光アクチュエーターによる光学的刺激または観察される細胞(複数可)とのシナプス連絡における上流の細胞の刺激)な場合もある。刺激は、光学的刺激の場合もあり、電気刺激の場合もあり、化学的刺激の場合もあり、他の任意の適切な方法による刺激の場合もある。刺激は、例えば、規則的な周期的パルス、単一パルス、不規則的パターン、または任意の適切なパターンを含む、任意のパターンの刺激を伴いうる。方法は、光学的刺激パターンを、空間または時間において変化させて、細胞機能の特定の側面を強調するステップを含みうる。例えば、パルスパターンは、頻度を増大させる場合がある。ある特定の実施形態では、イメージングは、光のパルスを使用して、光アクチュエーターを発現させるニューロンを刺激することを含む。
光パッチ構築物を発現させるニューロンを、CheRiffを刺激する青色光のパルス(10ミリ秒間、25mW/cm)による全視野への照射および、赤色光による同時的な定常的照射(800W/cm)に曝露させて、QuasAr2の蛍光を励起することができる。QuasAr2の蛍光は、1kHzのフレームレートでイメージングすることができる。鍵となるパラメータは、単一のスパイクを誘発しかつ記録しうる時間的精度、蛍光出力波形におけるシグナル対ノイズ比(SNR)、およびレポーターシグナルの長期にわたる安定性を含む。本明細書で提示される方法は、これらのパラメータを最適化することが見出され得る。さらなる議論は、Foustら、2010年、「Action potentials initiate in the axon initial segment and propagate through axon collaterals reliably in cerebellar Purkinje neurons」、J. Neurosci、30巻:6891〜6902頁;およびPopovicら、2011年、「The spatio-temporal characteristics of action potential initiation in layer 5 pyramidal neurons: a voltage imaging study」、J. Physiol.、589巻:4167〜4187頁において見出すことができる。
一部の実施形態では、測定は、空間解像度を3μmとし、時間解像度を2ミリ秒とする、1.2×3.3mmの視野をイメージングする、低倍率の顕微鏡を使用して行う。他の実施形態では、測定は、空間解像度を0.8μmとし、時間解像度を1ミリ秒とする、100μmの視野をイメージングする、高倍率の顕微鏡を使用して行う。適切な機器は、Kraljら、2012年、「Optical recording of action potentials in mammalian neurons using a microbial rhodopsin」、Nat Methods、9巻:90〜95頁に対する補遺において記載されている倒立蛍光顕微鏡と同様の倒立蛍光顕微鏡である。略述すると、640nmで140mWの赤色レーザー(Coherent製のObis 637−140 LX)からの照射を拡大し、開口数を1.45とする、60倍の油浸対物レンズ(Olympus 1−U2B616)の後焦点面に焦点を絞る。
図5は、ある特定の実施形態に従う、光イメージング装置501の構成要素についての機能的概略図を示す。488nmの青色レーザービームの強度を、音響光学モジュレーター(図示しない)によりモジュレートし、次いで、ビームをディジタル式マイクロミラーデバイス(DMD)505で反射させる。DMDは、その顕微鏡への行路上の青色レーザービーム(CheRiffを励起するために使用される)に、空間的パターンを付与する。マイクロミラーを、試料509へとリイメージングし、使用者により規定される、照射の任意の時空パターンを、試料にもたらす。640nmの赤色光による全視野への同時的な照射は、QuasArレポーターの蛍光を励起する。
倒立蛍光顕微鏡では、488nmで50mWの青色レーザー(Omicron PhoxX)からの照射を、青色強度に対する迅速な制御のための、音響光学モジュレーター(AOM;Gooch and Housego 48058−2.5−.55−5W)を介して送る。次いで、608×684ピクセル(Texas Instruments LightCrafter)を有するDMD 505により、ビームを拡大し、モジュレートする。DMDは、TCP/IPプロトコールによる特注のソフトウェア(Matlab)を介して制御する。DMDチップを、対物レンズを介して試料へとリイメージングし、ダイクロイックミラーを介して青色ビームおよび赤色ビームを混合する。DMDの各ピクセルは、試料面における0.65μmに対応する。532nmのレーザーを、mOrange2をイメージングするための赤色ビームおよび青色ビームと組み合わせる。ソフトウェアは、DMD座標を、カメラ座標へとマッピングすることから、試料における任意の点の正確な光学的ターゲティングを可能とするように書かれている。
使用者により規定されるニューロン領域の正確な光学的刺激を達成するために、DMD 505上のピクセルを、カメラ上のピクセルへとマッピングする。DMDは、既知の寸法の一連のドットを、試料へと投影する。カメラは、蛍光画像を取得する。特注のソフトウェアは、画像内のドットの中心を位置特定し、DMD座標をカメラピクセル座標へとマッピングするアフィン変換を作出する。
デュアルバンドダイクロイックフィルター(Chroma zt532/635rpc)により、レポーター(例えば、Arch)を、励起光から分離する。531/40nmのバンドパスフィルター(Semrock FF01−531/40−25)は、eGFPイメージングに使用することができ、710/100nmのバンドパスフィルター(Chroma、HHQ710/100)は、Archイメージングに使用することができ、クァッドバンド発光フィルター(Chroma ZET405/488/532/642m)は、mOrange2イメージングおよび測定前の較正に使用することができる。可変型ズームカメラレンズ(Sigma 18−200mm f/3.5−6.3 II DC)を使用して、試料を、128×128ピクセルを有するEMCCDカメラ(Andor iXon+DU−860)へとイメージングする。画像はまず、最大解像度(128×128ピクセル)で得ることができる。次いで、データを、1秒間当たり1,000フレームのフレームレートを達成するように、2×2ピクセルのビニングで得る。低頻度の刺激(5秒ごとに1回)による実行のためには、赤色照射を、刺激の1秒前〜刺激の50ミリ秒後に限りオンとして、光退色を最小化する。累積赤色光曝露は、ニューロン1つ当たり<5分間に制限することができる。
低倍率の広視野イメージングは、2倍でNAを0.5とする対物レンズ(Olympus MVX−2)に基づく、特注の顕微鏡検査システムにより実施する。照射は、2つずつの3つの群に組み合わせた、640nm、500mWのレーザー(Dragon Lasers 635M500)6つにより施す。特注の溶融シリカプリズムを使用して、対物レンズを通さずに、照射を、試料へとカップリングさせる。対物レンズにより蛍光を収集し、発光フィルターを通し、研究用CMOSカメラ(Hamamatsu Orca Flash 4.0)へとイメージングする。チャネルロドプシンを刺激するための青色照射は、AOMにより強度をモジュレートされ、DMD(Digital Light Innovations DLi4130−ALP HS)により空間的にモジュレートされた、473nm、1Wのレーザー(Dragon Lasers)により施す。DMDは、2倍の対物レンズを介して、試料へとリイメージングされる。実行の間、ニューロンは、488nmの広視野照射およびeGFP蛍光を使用してイメージングすることができる。使用者は、ニューロン画像上の目的の領域を選択し、各領域における照射のための時間経過を指定することができる。ソフトウェアは、使用者により選択されたピクセルを、DMD座標へとマッピングし、照射の命令を、DMDへと送達する。
倒立蛍光マイクロイメージングシステムは、単一の視野内の多数の(例えば、50の)発現細胞または細胞クラスターから光学的に記録する。システムを使用して、光パッチ構築物を発現させるニューロンにおいて光学的に誘起された発火パターンおよびAP波形を特徴付けることができる。各視野を、全視野にわたる青色光のパルス(例えば、6秒ごとに、0.5秒ずつ、9回にわたり繰り返し、強度を0mW/cmから10mW/cmまで増大させる)へと曝露して、活動を誘起する。QuasArなどに由来するレポーター蛍光も、640nm、100W/cmの全視野励起により、同時にモニタリングすることができる。
図6は、光学的刺激の増大下における活動電位を記録するのに使用される、赤色光および青色光のパルス列を例証する。一部の実施形態では、ニューロンを、高解像度の顕微鏡上で、電位イメージングのための640nmのレーザー(600W/cm)によりイメージングする。ある特定の実施形態では、ニューロンを、高解像度の顕微鏡上で、電位イメージングのための640nmのレーザー(600W/cm)によりイメージングし、488nmのレーザー(20〜200mW/cm)で励起する。顕著に異なる発火パターンを観察することができる(例えば、急速適応性スパイク列および緩徐適応性スパイク列)。システム測定により、手動式のパッチクランプ測定では看過されうる、稀な電気生理学的表現型を検出することができる。具体的に、刺激に対する細胞の応答(例えば、光学的アクチュエーション)を観察することができる。本発明の方法による使用また使用のための改変に適する機器は、参照により組み込まれる、Cohenに対する、米国特許公開第2013/0170026号において論じられている。
記載される方法を使用すると、細胞集団を測定することができる。例えば、疾患運動ニューロンおよび補正運動ニューロン(例えば、ジンクフィンガードメインによる)の両方を測定することができる。スパイク列により明らかにされる神経応答など、細胞の特徴的シグネチャーを観察することができる。
5b.動画からの蛍光の抽出
蛍光値は、生の動画から、任意の適切な方法により抽出する。1つの方法では、Kraljら、2012年、「Optical recording of action potentials in mammalian neurons using a microbial rhodopsin」、Nat Methods、9巻:90〜95頁において記載されている、最大尤度ピクセル重み付けアルゴリズムを使用する。略述すると、各ピクセルにおける蛍光を、全視野平均蛍光と相関させる。平均値に対してより強い相関を示したピクセルを、優先的に重み付けする。このアルゴリズムは、最も多くの情報を保有するピクセルを自動的に見出し、バックグラウンドピクセルの強調を抑制する。
複数の細胞を含有する動画では、各細胞からの蛍光を、Mukamel, Eran A.、Axel Nimmerjahn、およびMark J. Schnitzer、「Automated analysis of cellular signals from large-scale calcium imaging data」、Neuron、63巻、6号(2009年):747〜760頁;またはMaruyama, Ryuichiら、「Detecting cells using non-negative matrix factorization on calcium imaging data」、Neural Networks、55巻(2014年):11〜19頁など、当技術分野で公知の方法を介して抽出する。これらの方法では、活動電位発火イベントの空間的および時間的な相関特性を使用して、それらの強度が共変化するピクセルのクラスターを同定し、このようなクラスターを個別の細胞と関連させる。
代替的に、使用者は、細胞体と、隣接する神経突起とを含む領域を規定し、この領域内のピクセル値の重み付けされていない平均値から、蛍光を計算する。QuasAr変異体のトラフィッキングは、Archと比較して改善されているので、これらの2つの手法は、同様の結果をもたらす。低倍率の画像では、直接平均法および最大尤度ピクセル重み付け法が、最適のシグナル対ノイズ比をもたらすことが見出されうる。
6.シグナルの処理
6a.シグナルを細胞と関連させる、独立成分分析によるシグナルの処理
画像または動画は、任意の所与の視野内、フレーム内、または画像内に複数の細胞を含有しうる。複数のニューロンを含有する画像では、Mukamelら、2009年、「Automated analysis of cellular signals from large-scale calcium imaging data」、Neuron、63巻:747〜760頁による手法から改変された独立成分分析(ICA)ベースの手法を使用して、分離を半自動的に実施する。ICA分析により、個別の細胞の画像シグナルを、画像から単離することができる。
図7〜図10は、視野内の個別の細胞の単離を例証する。個別の細胞は、視野内で、独立成分分析を使用して単離する。
図7は、5つのニューロンの画像が互いと重複する該5つのニューロンを含有する画像を示す。各ピクセルにおける蛍光シグナルは、そのピクセルの基礎をなすニューロンの各々からのシグナルの混合物である。
図8に示される通り、独立成分分析の統計学的技法により、それらの強度がクラスター内で相関し、クラスターの間の統計学的独立性が極大となるピクセルのクラスターが見出される。これらのクラスターは、図7の統合画像を構成する、個別の細胞の画像に対応する。
図8に示される一連の画像についての疑似逆行列から、各細胞についての蛍光強度時間の出力波形を抽出する空間フィルターを計算する。フィルターは、画像区分のうちの1つにおけるピクセルの重みを除き、全てのピクセルの重みをゼロとすることにより作出する。これらのピクセルには、それらが元のICA空間フィルター内で有した重みと同じ重みを割り当てる。
図9では、分離型空間フィルターを、動画データへと適用することにより、ICAの時間経過を、各細胞からの顕著に異なる寄与へと分割した。分離は、ICAにより併せて見出される細胞について予測される通り、細胞の活動が、強く相関することを明らかにしうる。この例では、画像区分からのスパイク列は、類似するが、細胞が互いとシグナル伝達するにつれての、時間経過にわたる進展を示す。
図10は、元の画像に由来する個別の細胞をマッピングするのに使用される、個別のフィルター(および色コード)を示す。
6b.サブナイキスト活動電位タイミング (SNAPT)を介するシグナルの処理
個別の細胞について、補間された活動電位が、画像内の各ピクセルにおける閾値を越えるタイミングにより表されるスパイク列として、活動電位を同定することができる。スパイク列の同定は、まず、ノイズを除去し、シグナルを正規化し、SNRを改善するようにデータを処理するステップ、他の前処理ステップ、またはこれらの組合せにより支援することができる。活動電位シグナルはまず、光退色を除去し、中央値フィルタリングされた出力波形を差し引き、ノイズ閾値を上回るデータを分離することにより処理することができる。次いで、Foustら、2010年、「Action potentials initiate in the axon initial segment and propagate through axon collaterals reliably in cerebellar Purkinje neurons」、J. Neurosci、30巻、6891〜6902頁;およびPopovicら、2011年、「The spatio-temporal characteristics of action potential initiation in layer 5 pyramidal neurons: a voltage imaging study」、J. Physiol.、589巻、4167〜4187頁による補間法に基づくアルゴリズムなど、サブナイキスト活動電位タイミングに基づくアルゴリズムを使用して、スパイク列を同定することができる。
サブナイキスト活動電位タイミング(SNAPT)アルゴリズムは、細胞内におけるAPの立上りのタイミングの差異を強調する。例えば、アルゴリズムは、QuasAr1などの電位レポーターを含有する光パッチ1を発現させるニューロンに適用することができる。細胞体または小樹状領域のいずれかを刺激する。後続のAPのタイミングおよび位置をモニタリングする。
図11は、活動電位を誘導するのに使用される、パターン化した光励起を示す。個別の活動電位の動画を得(例えば、1秒間当たり1,000フレームで)、経時的に記録し、平均する。
スパイク動画の経時的記録における第1のステップは、スパイク時間を決定することである。スパイク時間の決定は、繰り返し実施する。単純な閾値−極大手順を、F(t)へと適用して、近似的なスパイク時間である{T0}を決定する。各スパイクをひとまとめにする短い時間窓内の波形を全体として平均して、予備的スパイクカーネルK0(t)を求める。K0(t)の、元の強度出力波形であるF(t)との交差相関を計算する。F(t)における極大のタイミングが、単一フレームによるノイズに由来する誤差の影響を受けるのに対し、時間{T}に位置する交差相関におけるピークは、スパイクタイミングの頑健な尺度である。平均値APの伝播を示す動画は、スパイク時間{T}をひとまとめにする短い時間窓内の平均動画により構築することができる。この平均には、100〜300のAPが含まれることが典型的である。AP動画のシグナル対ノイズ比は大きい。こうして、単一のAPについて経時的に記録された動画(例えば、数百に及ぶ動画)を平均することにより、活動電位の基準動画を作出する。次いで、このベースラインで分けることにより、動画の各フレームを補正する。
空間的および時間的な線形フィルターにより、AP動画内のノイズをさらに低下させることができる。空間フィルターは、標準偏差を1ピクセルとすることが典型的な、ガウスカーネルによるコンボリューションを含みうる。時間フィルターは、単一ピクセルの時間出力波形セットについての主成分分析(PCA)に基づきうる。各ピクセルにおける時間出力波形は、PCAの固有ベクトルに基づき表される(expressed)。最初の5つの固有ベクトルは、AP波形内のピクセル間のばらつきのうちの>99%を説明するのに十分であり、したがって、PCAによる固有分解は、5項までで打ち切られることが典型的である。残りの固有ベクトルは、非相関のショットノイズを表した(represented)。
図12は、ノイズに対処するように実施される、主成分分析(PCA)平滑化演算から得られる固有ベクトルを示す。光退色または他のこのような非特異的なバックグラウンド蛍光は、これらの手段により対処することができる。
図13は、累積分散と固有ベクトルの数との関係を示す。図14は、空間的およびPCA平滑化演算の前後における活動電位波形の比較を示す。
この平滑化された基準AP動画内の各ピクセルにおいて個別にサンプリングされた蛍光測定値の間を、滑らかに変化するスプライン関数で補間することができる。各ピクセルにおいて、補間されたAPが、使用者により選択される閾値を越えるタイミングは、曝露時間未満の精度で推定することができる。使用者は、追跡するための脱分極閾値(過渡蛍光の極大に対する割合として表される)と、dV/dtの記号(立上りエッジまたは立下りエッジを指し示す)とを設定する。フィルターをかけたデータに、二次スプライン補間を当てはめ、閾値を越える時点を、各ピクセルについて計算する。
図15は、活動電位タイミングマップを示す。局所的APタイミングを中心とするガウス時間経過における各ピクセルを強調することにより、タイミングマップを、高時間解像度のSNAPT動画へと転換することができる。以下の通りに、SNAPTによる当てはめを、APの伝播を示す動画へと転換する。各ピクセルは、そのピクセルにおいて、使用者により選択されるAP特徴のタイミングと一致するように時間設定された短時間の閃光を除き、暗く保つ。閃光のあとに、振幅が局所的AP振幅と等しく、持続時間が細胞平均時間解像度と等しいガウス時間経過であるσを経過させた。SNAPT動画におけるフレーム時間は、σの約2分の1となるように選択する。タイミングマップのSNAPT動画への転換は、視覚化のために行い、伝播情報は、タイミングマップ内にある。
図16は、細胞体における電位について、同時的なパッチクランプ記録との比較を介して、SNAPTアルゴリズムにより抽出されたタイミングの精度を示す。図17は、CheRiff分布を指し示すeGFP蛍光についての画像を示す。
図18は、図16によるタイミング情報を、図17による空間解像度の高い画像へとマッピングすることにより形成されたSNAPT動画に由来するフレームを提供する。図17では、白矢印は、推定軸索起始部(AIS)における、活動電位の惹起帯域をマークする。図16〜18は、本発明の方法が、神経活動についての光レポーターを発現する細胞についての、高解像度による空間的および時間的なシグネチャーをもたらしうることを裏付ける。
光パッチデータを得た後で、細胞を固定し、AISについてのマーカーであるアンキリンGについて染色することができる。SNAPT動画の、免疫染色画像との相関により、APは、AISの遠位端で惹起したことが確立される。SNAPT法は、推定AP波形に依拠せず、細胞内または細胞間で形状を変化させるAPに適合的である。
SNAPT動画は、測定される細胞中の単一の神経突起における、細胞体からのAPの惹起を示す。記載される方法は、AISにおけるAPの惹起と、細胞体への到達との間の、320±220マイクロ秒間にわたる潜伏時間を明らかにするのに有用であり、この場合、APタイミングは、立上りエッジの脱分極が極大の50%となるときに測定する。したがって、光パッチは、APの伝播についての有意な細胞内の詳細を機能的に分割しうる。シグナルの処理についての議論は、Mattisら、2011年、「Principles for applying optogenetic tools derived from direct comparative analysis of microbial opsins」、Nat. Meth.、9巻:159〜172頁;およびMukamelら、2009年、「Automated analysis of cellular signals from large-scale calcium imaging data」、Neuron、63巻(6号):747〜760頁において見出すことができる。
本発明の方法を使用して、観察される1または複数の細胞に由来するシグネチャーであって、細胞の生理学的パラメータを特徴付ける傾向があるシグネチャーを得る。測定されるシグネチャーは、例えば、ベースラインにおける活動、異なる刺激強度下における活動、一過性発火パターンと対比した緊張性発火パターン、AP波形の変化、他のシグネチャー、またはこれらの組合せなど、任意の適切な電気生理学的パラメータを含みうる。測定は、異なるモダリティー、刺激プロトコール、または分析プロトコールを含みうる。測定のための例示的なモダリティーは、電位、カルシウム、ATP、またはこれらの組合せを含む。例示的な刺激プロトコールを援用して、興奮性を測定し、シナプス伝達を測定し、モジュレーター性化学物質に対する応答について調べ、他の事柄について調べ、これらの組合せについて調べることができる。本発明の方法では、多様な分析プロトコールを援用して、異なる刺激型下におけるスパイク頻度、活動電位波形、スパイクのパターン、静止電位、スパイクピークの振幅、その他、またはこれらの組合せを測定することができる。
ある特定の実施形態では、患者に由来する細胞についての、シグネチャーであるスパイクの平均確率を得るのに、イメージング法を適用するが、また、野生型対照(上記で記載した通り、対照と野生型とが、単一の部位を除き同系とようにゲノム編集することにより作製しうる)など、細胞の対照系に由来するシグネチャーを得るのにも、イメージング法を使用することができる。観察されたシグネチャーは、対照シグネチャーと比較することができ、観察されたシグネチャーと予測されるシグネチャーとの間の差異は、状態についての陽性の診断に対応する。
図19は、スパイクの平均確率を、野生型(WT)細胞および変異体(SOD1)細胞について示す。細胞の興奮性は、各青色光刺激の間のスパイクが発生する確率により測定したが、無刺激(自発発火)の間のスパイクが発生する確率によっても測定した。
7.診断
図19は、変異の影響を受けた細胞における活動電位の測定による出力と、変異を除き同系の対照細胞における活動電位の測定による出力とを例証する。例証される例では、SOD1A4Vを有することが既知の患者について研究し、下方の出力波形は、その患者の遺伝子型を有する細胞から得る。「WT」と表示される上方の出力波形は、その患者に由来する細胞であって、SOD1V4Aとなるように編集され、したがって、患者の、公知の変異を有する遺伝子座においては、野生型であるが、他の遺伝子座においては、患者において存在する遺伝子コンテキストを提示する細胞を指す。臨床家は、患者の細胞により顕示されるシグネチャースパイク列に基づき、神経変性疾患を診断することができる。この場合、患者の細胞において観察されるシグネチャーと対照シグネチャーとの間の差異は、神経変性疾患についての陽性の診断と相関させることができる。
患者のシグネチャーを診断と相関させる、任意の適切な方法を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、シグネチャーの目視検査を使用することができる。ある特定の実施形態では、コンピュータシステムを使用して、被験細胞について観察されるシグネチャーが、診断のための所定の基準を満たすことを自動的に評価することができる。任意の適切な基準を使用することができる。例えば、コンピュータシステムにより、スパイク列下で、これらの被験細胞および対照細胞の両方について、少なくとも数千ミリ秒という一連の時間にわたり、積分を実行し、結果の間の差異を比較することができる。観察されるシグナルと、予測されるシグナルとの任意の適切な差異を使用することができる。例えば、差異は、対照と比べた細胞の刺激に応答する電位スパイクの確率の変化を含みうる。ある特定の実施形態(例えば、図19)では、観察されたシグナルと予測されるシグナルとの間の差異は、対照と比べた細胞の刺激に応答する電位スパイクの確率の減少、および対照と比べた細胞の、刺激がない時間において電位スパイクの確率の増大を含む。一実施形態では、本発明のシステムおよび方法では、対照と比べた細胞の刺激に応答する電位スパイクの確率の減少を検出する。
一例を挙げると、少なくとも5%の差異を、状態の危険性の増大または状態の診断を示すものとして報告することができる。別の例では、コンピュータシステムにより、ある特定の時点(例えば、5500ミリ秒)におけるスパイクの確率を分析し、統計学的有意差を探索する(look for)こともできる。別の例では、コンピュータシステムを、WTのスパイク列(対照シグネチャー)における極大点をまず同定し、次いで、対照シグネチャーにおけるその点における確率を、同じ点における患者の被験シグネチャーにおける確率と比較し、報告可能な差異(例えば、少なくとも5%異なる)を探索するようにプログラムすることもできる。当業者は、被験シグネチャーの、対照シグネチャーとの比較では、任意の適切な基準を使用しうることを認識する。ある特定の実施形態では、コンピュータシステムを、機械学習により訓練する(例えば、既知の健常者および既知の患者についての多数の例を入力し、コンピュータシステムにより、これらの間の平均の差異、または疾患シグネチャーの平均シグネチャーパターンを測定する)。コンピュータシステムにより、疾患表現型についてのシグネチャーパターンを保存する場合、コンピュータシステムにより、被験シグネチャーと対照シグネチャーとの間の合致(例えば、いくつかの点における差異またはある距離にわたり積分するときの差異が<5%または1%未満であること)が見出されれば、診断が裏付けられる。患者からのゲノム編集された細胞系に由来する対照シグネチャーを得ることについて論じてきたが、当業者は、対照シグネチャーは、本発明のコンピュータシステム内に保存された鋳型の場合もあり、記録された対照シグネチャーの場合もあることを認識する。
ある特定の実施形態では、細胞に由来するシグネチャーの観察を、観察されたシグネチャー表現型が、最終的な診断への到達に寄与する診断戦略において使用する。例えば、ALSなど、ある特定の神経系の疾患では、異なるニューロン型は、異なる形で影響を受ける。一部の実施形態では、診断法は、同じ患者に由来する異なるニューロン型を比較して、亜型特異的疾患を診断するステップを含む。
8.さらなる方法
本発明の方法は、観察される1または複数の細胞へと適用される、ツール化合物/被験化合物または他の介入ツールの使用を含みうる。被験化合物の適用は、これらの化合物の細胞電気生理学に対する効果を明らかにしうる。ツール化合物を使用して、例えば、ある特定のイオンチャネルを遮断することにより、診断においてより大きな特異性を達成することもでき、疾患機構を決定するためのより大きな特異性を達成することもできる。化合物の影響を定量することにより、細胞におけるそのチャネルのレベルを定量することができる。
ツール化合物または被験化合物により、細胞に、神経活動または電気活動についての光レポーターを発現させることができ、また、薬物などの化合物へと曝露することもできる。化合物について調べる前に、調べるときに、または調べた後で、細胞のシグネチャーを観察することができる。異なる細胞および細胞型の任意の組合せを、異なる被験化合物の対照を含む化合物の1つまたは任意の組合せへと曝露することができる。マルチウェルプレート、スライド上のマルチローカススポッティング、または他のマルチコンパートメント検査室ツールを使用して、化合物と細胞型との任意の組合せについての交差試験を行うことができる。
ある特定の実施形態では、ツール化合物を、細胞へと添加し、細胞に対するそれらの効果を観察して、可能な疾患または疾患の原因もしくは機構を識別する。例えば、互いとシナプス連絡された、2つまたはそれ超の細胞について観察すると、上流の細胞の外因性刺激は、下流の細胞における活動電位として顕在化するはずである。神経伝達物質の再取込みを阻害することが公知の化合物は、ある特定の神経亜型だけに対して働くことが明らかにされ得、したがって、特異的な疾患パターンを指し示しうる。
一部の実施形態では、本発明の方法を使用して、シナプス伝達を検出、測定、または評価する。シグネチャーは、直接的な刺激が適用された細胞以外の細胞について観察することができる。実際、本明細書で論じられるシグナル処理アルゴリズムを使用して、複数の細胞間のシナプス伝達を検出し、これにより、神経連絡のパターンを明らかにすることができる。上流ニューロンの刺激のときの下流ニューロンの発火の検出に成功するアッセイを確立することにより、上流ニューロンの刺激のときに、対象細胞が発火しないことが観察される場合、シナプス伝達の不全を特徴とする疾患または状態を明らかにすることができる。
患者へと適用する前に、被験化合物を候補治療として評価して、処置の適性を決定することができる。例えば、発火パターンを野生型へと戻すてんかん薬を見出すように、てんかん薬について調べることができる。一部の実施形態では、本発明は、化合物を調べることにより、患者に可能な治療を同定するためのシステムおよび方法であって、個別化医療として援用されうるシステムおよび方法を提供する。本明細書で記載されるアッセイの性質のために、候補治療用化合物の効果を、個別の患者ベースで評価することが可能となり、これにより、真の個別化医療のツールがもたらされる。例えば、本明細書で記載されるアッセイは、ある特定の疾患を患う患者が、本明細書で記載されるアッセイ下で、疾患型の生理学的表現型を呈示する、ニューロンまたは神経亜型を有することを明らかにしうる。1つまたは多数の異なる化合物を、これらのニューロンまたは神経亜型へと適用することができる。これらの異なる化合物(または化合物の組合せ)のうちの1つへと曝露される細胞は、疾患型から正常への生理学的表現型の変化を呈示しうる。したがって、疾患型から正常への表現型の変化に影響を及ぼす化合物または化合物の組合せを、その患者のための候補処置化合物として同定する。
本発明の実施形態は、ニューロンなどの電気的に活性な細胞に影響を及ぼす疾患である自閉症について光学的に評価するための、改変ニューロンおよび方法を提供する。一部の実施形態では、本発明のニューロンおよび方法を使用して、遺伝子バリアントまたは変異と関連することが公知の状態を評価する。
本発明の実施形態は、ニューロンなどの電気的に活性な細胞に影響を及ぼす疾患であるてんかんについて光学的に評価するための、改変ニューロンおよび方法を提供する。一部の実施形態では、本発明のニューロンおよび方法を使用して、遺伝子バリアントまたは変異と関連することが公知の状態を評価する。
本発明の実施形態は、アルツハイマー病に関する。アルツハイマー病は、不確定の原因(ある特定の遺伝子における変異が障害と連関しているが)による神経変性疾患であり、認知症の最も一般的な形態のうちの1つである。アルツハイマー病は、それらの各々の内容が参照により組み込まれる、Israelら、2012年、「Probing sporadic and familial Alzheimer’s disease using induced pluripotent stem cells」、Nature、482巻(7384号):216〜20頁;Muratoreら、2014年、「The familial Alzheimer’s disease APPV717I mutation alters APP processing and tau expression in iPSC-derived neurons」、Human Molecular Genetics、近刊;Kondoら、2013年、「Modeling Alzheimer’s disease with iPSCs reveals stress phenotypes associated with intracellular Abeta and differential drug responsiveness」、Cell Stem Cell、12巻(4号):487〜496頁;およびShiら、2012年、「A human stem cell model of early Alzheimer’s disease pathology in Down syndrome」、Sci Transl Med、4巻(124号):124〜129頁において論じられている。本発明のシステムおよび方法を使用して、補正剤分子などの化合物を、アルツハイマー病に罹患した細胞に対するそれらの効果について評価することができる。
幹細胞技術の使用は、アルツハイマー病についての臨床的に関与性の細胞モデルをもたらし、微生物性光遺伝学的構築物の使用は、細胞の生理学的特徴および表現型の迅速なスクリーニングまたは検出を可能とする。本発明の方法は、アルツハイマー病薬を開発し、ヒト脳細胞内で調べるために、アルツハイマー病の病態を、in vitro条件およびin vivo条件において複製しうる、遺伝子改変ニューロンをもたらしうる。
疾患表現型を再現するために、ニューロンを、Aβ1〜42へと曝露することができる。加えて、Aβ上のエピトープに対する抗体などの見込みのある化合物も、本発明の方法により研究することができる。例えば、本発明のシステムおよび方法を使用して、BIIB037抗体を、ニューロンへと曝露することができる。光遺伝学的構築物は、Aβペプチドの毒性および見込みのある化合物の神経保護効果の両方についての光学的研究をもたらす。したがって、本発明の方法は、アルツハイマー病の病態を研究するモデル系をもたらす。図1は、本発明の実施形態に従い状態を評価するための方法101を概略的に示す。これは、細胞を得るステップ107(例えば、PSCを購入し、ニューロンへと転換すること;状態を有することが疑われる人間に由来する生検など)を伴いうる。ゲノム編集法(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas系、ジンクフィンガードメインの使用)を使用して、目的のバリアントを除き、同系の対照細胞を作出することができる。細胞および対照を、ニューロンなどの電気興奮性細胞へと転換する。細胞は、特異的な神経亜型(例えば、運動ニューロン)へと転換することができる。細胞に、神経活動についての光レポーターを発現させる113。例えば、細胞は、光遺伝学的レポーターを含むベクターで形質転換することができ、細胞にはまた、形質転換により、光遺伝学的アクチュエーター(別名、活性化因子)も発現させることができる。任意選択で、対照細胞は、例えば、別の試料を採取することにより得ることもでき、ゲノム編集により得ることもでき、他の適切な技法により得ることもできる。本明細書で記載される顕微鏡法および分析法を使用して、細胞を観察し、具体的には、刺激119に対する細胞の応答(例えば、光学的アクチュエーション、シナプスを介するアクチュエーション、化学的アクチュエーション、または電気的アクチュエーション)を観察することができる。スパイク列により明らかにされる神経応答など、細胞の特徴的シグネチャーを、観察する123ことができる。観察されたシグネチャーを、対照シグネチャーと比較するが、観察されたシグネチャーと対照シグネチャーとの差異(または合致)は、状態についての陽性の診断に対応する。
本明細書で論じられる例示的な一実施形態では、本発明のニューロンは、アルツハイマー病と関連するゲノムを含み、アルツハイマー病の発症、進行、および/または処置を光学的に評価するために使用される。
ある特定の実施形態では、本発明は、ニューロンなどの電気的に活性な細胞に影響を及ぼす結節性硬化症などの疾患について光学的に評価するための、改変ニューロンおよび方法を提供する。一部の実施形態では、本発明のニューロンおよび方法を使用して、遺伝子バリアントまたは変異と関連することが公知の状態を評価する。本発明のニューロンは、ヒト由来の場合もあり、別の動物に由来する場合もあり、ニューロンの活動電位の光アクチュエーターおよびニューロンの活動についての光レポーターを有する、in vivoにおける疾患モデルをもたらすために、in vitroで培養することもでき、マウスなどの生存動物内で改変することもできる。本明細書で論じられる例示的な一実施形態では、本発明のニューロンは、結節性硬化症と関連するゲノムを含み、結節性硬化症の発症、進行、および/または処置を光学的に評価するために使用される。
ある特定の態様では、本発明は、イオンチャネルモジュレーターのハイスループットスクリーニングに十分な能力を有する、頑健な、生物学的に関与性のアッセイのための光遺伝学法に関する。イオンチャネルは、治療標的であり、広範にわたる薬物によりモジュレートすることができる。イオンチャネルに媒介されるイオン輸送は、心臓および神経系における、多くの基本の生理学的過程において重要である他、肺、GI管、および腎臓における体液の分泌のためにも重要であり、ホルモンの分泌、免疫応答、骨のリモデリング、および腫瘍細胞の増殖など、他の過程においても重要である。イオンチャネルの生理学的重要性は、全ての主要な治療領域に及ぶ、広範にわたる病態におけるそれらの関与により強調される。現在、例えば、「チャネロパチー」として公知の、55を超える異なる遺伝性イオンチャネル病が、心血管系、ニューロン系、神経筋系、筋骨格系、代謝系、および呼吸器系にわたり同定されている。イオンチャネルは典型的に、小孔を形成する個別のアクセサリーサブユニットを有する、多量体の膜貫通タンパク質である(Ashcroft、2006年、Nature、440巻:440〜7頁)。イオンチャネルは、電位依存性チャネルが、膜電位の電位差の変化により調節されるのに対し、リガンドおよび感覚駆動性チャネルは、リガンドの変化、および、それぞれ、機械的刺激または熱的刺激に応答する通門機序に従い分類されることが多い。
大規模化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングは一般に、その天然の相関物に酷似する形態にある安定的な細胞系内で多量に発現する標的タンパク質のクローニングを含みうる。イオンチャネルでは、これは、サブユニットの適切な組合せの効率的な発現、局在化、および配向性に関与する。
本発明の方法は、パッチクランプ電気生理学法に対する光学的代替法をもたらす。本発明の方法および光遺伝学的構築物は、イオンチャネルのハイスループットスクリーニング(HTS)のために使用することができる。
9.疾患モデル
本発明は、細胞における電気活動を誘発し、報告する、光遺伝学的タンパク質を発現させる細胞についての、ハイスループットの細胞アッセイにおいて、光を使用して、化合物をスクリーニングし、検出し、特徴付けるための方法を提供する。したがって、本発明は、例えば、化学ライブラリーについての一次スクリーニングのための高性能法を提供する。これらのハイスループットアッセイは、パッチクランプ法を必要とせずに、細胞についての頑健な電気生理学的測定をもたらす。記載される光遺伝学的構築物および多能性幹細胞(PSC)由来の細胞は、化合物の効果をモニタリングするために必要とされる精度、時間解像度、および電位制御をもたらすように作動するので、本発明のアッセイは、一次スクリーニングおよび創薬に適している。アッセイのために、標的タンパク質を、クローニングし、本発明の安定的な細胞系において発現させることができる。したがって、本発明は、化合物のハイスループットスクリーニングに十分な能力を有する、頑健な、生物学的に関与性のアッセイを提供する。
本発明の態様は、神経学的状態に対する化合物の効果を決定するための方法を提供する。方法は、化合物を、複数のニューロンを含む試料へと提示するステップであって、複数のニューロンのうちの少なくとも1つが、膜電位についての光レポーターを発現させるステップと、前記化合物の提示の後で、試料中の光依存性イオンチャネルの光学的刺激に応答して光レポーターにより発せられる光シグナルを、(顕微鏡検査システムを介して)受け取るステップとを含む。前記光シグナルに基づき、化合物を、神経学的状態を処置するための候補として同定する。光依存性イオンチャネルは、複数のニューロンのうちの少なくとも1つとシナプス連絡した第2のニューロンによって発現される藻類チャネルロドプシンを含みうる。光依存性イオンチャネルは、複数のニューロンのうちの少なくとも1つによって発現される藻類チャネルロドプシンを含みうる。膜電位についての光レポーターは、微生物型ロドプシン(例えば、微生物型ロドプシンの野生型形態と比べて1〜10の間のアミノ酸置換を有する)を含みうる。一部の実施形態では、複数のニューロンのうちの少なくとも1つはまた、細胞内カルシウムレベルについての遺伝子コード型インジケーターも発現させる。受け取られた光シグナルは、細胞内カルシウムレベルについての遺伝子コード型インジケーターからのシグナルを含みうる。神経学的状態は、自閉症、てんかん、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、および結節性硬化症のうちの1つでありうる。
i.自閉症
ある特定の実施形態では、本発明のニューロンおよび方法を使用して、自閉症などの神経発達障害についてin vitroにおいて調査するための疾患モデルを作出することができる。ニューロンは、神経発達障害を患う個体から採取されたiPSCから得ることもでき、ゲノム編集を介して、神経発達障害と関連する遺伝子型を組み込むことにより得ることもできる。ある特定の場合には、神経発達障害と関連することが疑われる被験変異を、ゲノム編集を介して、ニューロンへと組み込むことができ、結果として得られる改変ニューロンを、疾患の徴候について観察して、被験変異を、疾患との連関について評価することができる。
一部の実施形態では、自閉症などの疾患についての細胞ニューロンモデルは、無病ニューロンと比較したSHANK3タンパク質の発現の低減、無病ニューロンと比較したシナプス機能の低下、無病ニューロンと比較した樹状突起棘の数の低減および長さの増大、ならびに無病ニューロンと比較したシナプス後肥厚の厚さおよび長さの低減を有するニューロンなど、自閉症と関連するニューロンの表現型の呈示に基づき、選択することができる。参照により組み込まれる、Zoghbiら、2012年、「Synaptic Dysfunction in Neurodevelopmental Disorders Associated with Autism and Intellectual Disabilities」、Cold Spring Harb Perspect Biol.、4巻(3号)、J Neurol Sci.、217巻(1号):47〜54頁を参照されたい。自閉症などの疾患についてのニューロンモデルは、以下の遺伝子:SHANK3(ProSAP2)、CDH9、CDH10、MAPK3、SERT(SLC6A4)、CACNA1G、GABRB3、GABRA4、EN2、3q25〜27遺伝子座、SLC25A12、HOXA1、HOXA2、PRKCB1、MECP2、UBE3A、NLGN3、MET、CNTNAP2、FOXP2、GSTP1、PRL、PRLR、およびOXTRのうちの1または複数に対する変異などの遺伝子型特徴に基づき、選択することができる。
ある特定の態様では、例えば、モデル化される疾患が、非単一遺伝子性、病因複合性、および/または後発性である場合、本発明のニューロンは、老化をシミュレートするために、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間またはそれ超の期間などの長期間にわたり培養することができる。その内容が参照により組み込まれる、Sanchez-Danesら、2012年、「Disease-specific phenotypes in dopamine neurons from human iPS-based models of genetic and sporadic Parkinson’s disease」、EMBO Mol Med、4巻:380〜395頁を参照されたい。本発明の細胞は、膜電位についての光レポーター、細胞内カルシウムレベルについてのレポーター、光依存性イオンチャネル、またはこれらの組合せで形質転換することができる。細胞は、自閉症など、対象状態のニューロンへの影響を検討するために、疾患の進行のときの活動電位および細胞内カルシウムレベルの変化を誘導および観察することにより、経時的にモニタリングすることができる。疾患モデルの対象細胞はまた、それらの有効性を評価するために、多様な治療を適用する前および適用した後にもモニタリングすることができる。
ii.てんかん
ある特定の実施形態では、本発明のニューロンおよび方法を使用して、てんかんなどの神経障害についてin vitroにおいて調査するための疾患モデルを作出することができる。ニューロンは、神経障害を患う個体から採取されたiPSCから得ることもでき、ゲノム編集を介して、神経障害と関連する遺伝子型を組み込むことにより得ることもできる。本発明の疾患モデルは、てんかん発作前、てんかん発作時、およびてんかん発作後における活動電位の発生および伝播ならびにイオンチャネルの機能について研究するときに、特に有用でありうる。ある特定の場合には、神経障害と関連することが疑われる被験変異を、ゲノム編集を介して、ニューロンへと組み込むことができ、結果として得られる改変ニューロンを、疾患の徴候について観察して、被験変異を、疾患との連関について評価することができる。
一部の実施形態では、てんかんまたはドラベ症候群などの疾患についての細胞ニューロンモデルは、無病ニューロンと比較した電位依存性ナトリウムチャネル機能の減殺または過剰興奮性を有するニューロンなど、疾患と関連するニューロンの表現型の呈示に基づき、選択することができる。参照により組み込まれる、Kearney、2014年、「The More, the Better: Modeling Dravet Syndrome With Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Neurons」Epilepsy Curr、14巻(1号):33〜34頁を参照されたい。てんかんまたはドラベ症候群などの疾患についてのニューロンモデルは、以下の遺伝子:SCN1A、WWOX、PRRT2、KCNC1、STX1B、CARS2、STXB1、KCNQ2、CDKL5、ARX、SPTAN、BRAT1、KCNQ3、SCN2A、GABA受容体、NIPA2、CDKL5、PCDH19、およびNAV1.1のうちの1または複数に対する変異などの遺伝子型特徴に基づき、選択することができる。
ある特定の態様では、例えば、モデル化される疾患が、非単一遺伝子性、病因複合性、および/または後発性である場合、本発明のニューロンは、老化をシミュレートするために、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間またはそれ超の期間などの長期間にわたり培養することができる。その内容が参照により組み込まれる、Sanchez-Danesら、2012年、「Disease-specific phenotypes in dopamine neurons from human iPS-based models of genetic and sporadic Parkinson’s disease」、EMBO Mol Med、4巻:380〜395頁を参照されたい。本発明の細胞は、膜電位についての光レポーター、細胞内カルシウムレベルについてのレポーター、光依存性イオンチャネル、またはこれらの組合せで形質転換することができる。細胞は、てんかんなど、対象状態のニューロンへの影響を検討するために、疾患の進行のときの活動電位および細胞内カルシウムレベルの変化を誘導および観察することにより、ある期間にわたり、モニタリングすることができる。疾患モデルの対象細胞はまた、それらの有効性を評価するために、多様な治療を適用する前および適用した後にもモニタリングすることができる。
iii.ALS
ある特定の実施形態では、本発明のニューロンおよび方法を使用して、ALSなどの神経疾患についてin vitroにおいて調査するための疾患モデルを作出することができる。ニューロンは、神経疾患を患う個体から採取されたiPSCから得ることもでき、ゲノム編集を介して、神経疾患と関連する遺伝子型を組み込むことにより得ることもできる。ある特定の場合には、神経疾患と関連することが疑われる被験変異を、ゲノム編集を介して、ニューロンへと組み込むことができ、結果として得られる改変ニューロンを、疾患の徴候について観察して、被験変異を、疾患との連関について評価することができる。一部の実施形態では、ALS疾患などの疾患についての細胞ニューロンモデルは、細胞体におけるシスタチンCを含有する封入体であるブニナ小体;「レビー小体様封入体」(LBI)、「スケイン様封入体」(SLI)、および/または神経突起の大幅な短縮もしくは非存在、細胞体の空胞化、核の断片化、および切断型カスパーゼ3を含む、変性の明らかな徴候を有する運動ニューロンなど、ALSと関連するニューロンの表現型の呈示に基づき、選択することができる。それらの各々が参照により組み込まれる、Heら、2004年、「Expression of peripherin in ubiquinated inclusions of amyotrophic lateral sclerosis」、J Neurol Sci.、217巻(1号):47〜54頁;Kawashimaら、1998年、「Skein-like inclusions in the neostriatum from a case of amyotrophic lateral sclerosis with dementia」、Acta Neuropathol、96巻(5号):541〜5頁;Okamotoら、1993年、「Bunina bodies in amyotrophic lateral sclerosis immunostained with rabbit anti-cystatin C serum」、Neurosci Lett.、162巻(1〜2号):125〜8頁を参照されたい。ALSなどの疾患についてのニューロンモデルは、以下の遺伝子:C9orf72、SOD1、TARDBP、FUS、UBQL2、ALS2、およびSETXのうちの1または複数に対する変異などの遺伝子型特徴に基づき、選択することができる。
ある特定の態様では、例えば、モデル化される疾患が、非単一遺伝子性、病因複合性、および/または後発性である場合、本発明のニューロンは、老化をシミュレートするために、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間またはそれ超の期間などの長期間にわたり培養することができる。Sanchez-Danesらを参照されたい。本発明の細胞は、膜電位についての光レポーター、細胞内カルシウムレベルについてのレポーター、光依存性イオンチャネル、またはこれらの組合せで形質転換することができる。細胞は、ALSなど、対象状態のニューロンへの影響を検討するために、疾患の進行のときの活動電位および細胞内カルシウムレベルの変化を誘導および観察することにより、ある期間にわたり、モニタリングすることができる。疾患モデルの対象細胞はまた、それらの有効性を評価するために、多様な治療を適用する前および適用した後にもモニタリングすることができる。
iv.結節性硬化症
ある特定の実施形態では、本発明のニューロンおよび方法を使用して、結節性硬化症などの遺伝子障害についてin vitroにおいて調査するための疾患モデルを作出することができる。ニューロンは、神経障害を患う個体から採取されたiPSCから得ることもでき、ゲノム編集を介して、神経障害と関連する遺伝子型を組み込むことにより得ることもできる。本発明の疾患モデルは、てんかん発作前、てんかん発作時、およびてんかん発作後における活動電位の発生および伝播ならびにイオンチャネルの機能について研究するときに、特に有用でありうる。ある特定の場合には、神経障害と関連することが疑われる被験変異を、ゲノム編集を介して、ニューロンへと組み込むことができ、結果として得られる改変ニューロンを、疾患の徴候について観察して、被験変異を、疾患との連関について評価することができる。
一部の実施形態では、結節性硬化症などの疾患についての細胞ニューロンモデルは、無病ニューロンと比較したサイズの肥大、ホスホ−S6発現の増大、顕著なリソソーム、無病ニューロンと比較したより多いマイクロフィラメントおよび微小管、無病ニューロンと比較したより少ないリポフスチン顆粒、およびTSC2遺伝子産物、ツベリン、ビメンチン、またはグリア線維性酸性タンパク質に対する免疫反応性など、結節性硬化症と関連するニューロンの表現型の呈示に基づき、選択することができる。それらの各々が参照により組み込まれる、Meikleら、2007年;Araiら、1999年、「A comparison of cell phenotypes in hemimegalencephaly and tuberous sclerosis」、Acta Neuropathol、98巻(4号):407〜13頁を参照されたい。結節性硬化症などの疾患についてのニューロンモデルは、以下の遺伝子:TSC1またはTSC2のうちの1または複数に対する変異などの遺伝子型特徴に基づき、選択することができる。
ある特定の態様では、例えば、モデル化される疾患が、非単一遺伝子性、病因複合性、および/または後発性である場合、本発明のニューロンは、老化をシミュレートするために、1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間またはそれ超の期間などの長期間にわたり培養することができる。その内容が参照により組み込まれる、Sanchez-Danesら、2012年、「Disease-specific phenotypes in dopamine neurons from human iPS-based models of genetic and sporadic Parkinson’s disease」、EMBO Mol Med、4巻:380〜395頁を参照されたい。本発明の細胞は、膜電位についての光レポーター、細胞内カルシウムレベルについてのレポーター、光依存性イオンチャネル、またはこれらの組合せで形質転換することができる。細胞は、結節性硬化症など、対象状態のニューロンへの影響を検討するために、疾患の進行のときの活動電位および細胞内カルシウムレベルの変化を誘導および観察することにより、ある期間にわたり、モニタリングすることができる。疾患モデルの対象細胞はまた、それらの有効性を評価するために、多様な治療を適用する前および適用した後にもモニタリングすることができる。
v.NGN2ニューロン
本発明の態様は、幹細胞を、単一の転写因子の強制的発現により、機能的ニューロンへと転換することができ、次いで、また、神経活動についての光遺伝学的レポーターまたはアクチュエーターを発現させることもできる、細胞の疾患モデルを提供する。トランスフェクションにより多能性幹細胞へと導入される、ニューロゲニン2(NgN2)またはNeurD1などの転写因子を発現させ、細胞を、ニューロンへと分化させる。加えて、または別個に、細胞内カルシウムについての光レポーター、ならびに膜電位の光アクチュエーターまたは膜電位についての光レポーターを含む光遺伝学的構築物を発現させる。
10.本発明のシステム
図20は、本発明の方法を実施するのに有用なシステム1101を提示する。検査室からの結果(例えば、形質転換された患者細胞、転換された患者細胞)を、イメージング機器501へとロードする。イメージング機器501は、PCコンピュータの場合もあり、他のデバイスの場合もある、分析システム1119であって、メモリ127へとカップリングさせたプロセッサー125を含む分析システム1119へと作動可能にカップリングさせる。使用者は、メモリ127へとカップリングさせたプロセッサー125もまた含む、PC 1135を介して、システム1101にアクセスすることができる。本明細書で記載される分析法は、システム1101の一部として提供されうる分析システム1119内、PC 1135内、またはサーバー1139に存在し得るなどの、任意の1または複数のプロセッサー125により実施することができる。サーバー1139は、メモリ127へとカップリングさせたプロセッサー125を含み、また、任意選択の保存システム1143も含みうる。システム1101の計算デバイスのうちのいずれかを、ネットワーク1131を介して、互いと通信可能にカップリングさせることができる。分析システム1119、PC 1135、およびサーバー1139のうちのいずれか、各々、または全ては一般に、コンピュータである。コンピュータは一般に、メモリ127へとカップリングさせたプロセッサー125と、少なくとも1つの入力/出力デバイスとを含む。
プロセッサー125は一般に、IntelまたはAMDにより販売されているシリコンチップマイクロプロセッサーのうちの1つなどのシリコンチップマイクロプロセッサーである。
メモリ127とは、データ、または(プロセッサー125により実行されると)システム1101の構成要素に、本明細書で記載される方法を実施させる、命令を保存することが可能な、任意の有形の非揮発性メモリまたはコンピュータ読取り型メディアを指す場合がある。
典型的な入力/出力デバイスは、モニター、キーボード、マウス、ポインティングデバイス、ネットワークカード、Wi−Fiカード、セル方式のモデム、モデム、ディスクドライブ、USBポート、他のデバイスのうちの1または複数、およびこれらの組合せを含みうる。
一般に、ネットワーク1131は、スイッチ、ルーター、ハブ、セルタワー、サテライト、ランドライン、およびインターネットを構成するような他のハードウェアなどのハードウェアを含む。
参照による組込み
本開示を通して、特許、特許出願、特許公開、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなど、他の文献への言及および引用を行っている。このような文献はいずれも、あらゆる目的で、それらの全体において、参照により本明細書に組み込まれる。
同等物
当業者には、本明細書で示され、記載される、変更および実施形態に加えて、本発明の多様な変更およびそれらの多くのさらなる実施形態も、本明細書で引用される研究文献および特許文献への言及を含む、本文献の全内容から明らかである。本明細書における対象物は、本発明の実施へと適合させうる、重要な情報、例示、および指針を、その多様な実施形態およびその同等物において含有する。
(実施例1)
SOD1遺伝子における単一遺伝子性変異(SOD1A4V)に由来する、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の運動ニューロンモデルの光学的分化
本発明の方法を援用して、変異の、患者の細胞に対する効果を、その患者の遺伝子コンテキストにおいて評価した。ALSとは、運動皮質内の錐体ニューロンおよび脳幹および脊髄に起始する下位運動ニューロンに影響を及ぼす、致死性の神経変性疾患である。Musaro、2010年、「State of the art and the dark side of amyotrophic lateral sclerosis」、WJBC、1巻(5号):62〜68頁を参照されたい。典型的な症状は、筋肉の脱力および萎縮、発話障害および嚥下障害、麻痺、および呼吸器不全による死をもたらす、運動ニューロンの変性を含む。ALSは、散発性形態または家族性形態へと分類される。家族性形態の多くは、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)タンパク質における変異により引き起こされると考えられている。使用されうる別の遺伝子は、浸透性が不完全な変異が、場合によって、症状と関連する、C9orf72である。本実施例における議論は、SOD1に関し、当業者は、技法が、C9orf72など、他の遺伝子における変異にも当てはまることを認識する。SOD1は、ミトコンドリアの毒性副産物であるスーパーオキシドを、水または過酸化水素へと転換する。証拠は、SOD1の変異が、機能獲得変異であることを示唆する。RotunnoおよびBosco、2013年、「An emerging role for misfolded wild-type SOD1 in sporadic ALS pathogenesis」、Front Cell Neurosci、7巻:a253頁;およびSacconら、2013年、「Is SOD1 loss of function involved in amyotrophic lateral sclerosis?」、Brain、136巻:2342〜2358頁を参照されたい。SOD1変異以外の他の遺伝子欠損も、ALSを引き起こしうることが公知である。PasinelliおよびBrown、2006年、「Molecular biology of amyotrophic lateral sclerosis: insights from genetics」、Nat Rev Neurosci、7巻:710〜723頁;ならびにBlokhuisら、2013年、「Protein aggregation in amyotrophic lateral sclerosis」、Acta Neuropathol、125巻:777〜794頁を参照されたい。したがって、単一の変異の存在を同定するだけでは、患者を診断および処置するのに不十分であると判明し得、このような変異の表現型帰結を、患者の実際の遺伝子的帰結と共に研究することが貴重であることが判明し得る。今日の研究は、公知の遺伝子、生理学的経路、およびタンパク質をターゲティングすることにより、疾患の進行を遅らせることを目的とする処置戦略を支持する。さらなる議論については、Gordon、2013年、「Amyotrophic later sclerosis: an update for 2013 clinical features, pathophysiology, management, and therapeutic trials」、Aging and Disease、4巻(5号):295〜310頁を参照されたい。以下のプロトコールにより、SOD1A4Vを有することが公知のALS診断を有する人間に由来する細胞系における運動ニューロンに対するSOD1A4Vの効果を記録した。
(1)線維芽細胞は、ALSを有すると診断され、SOD1における変異を確認された患者から採取した。
(2)線維芽細胞を、人工多能性幹(iPS)細胞へと転換した。
(3)ジンクフィンガードメインを使用して、第2の遺伝子補正細胞系(Sod1V4A)を生成する結果として、2つの、他の点では同系の細胞系をもたらした。
(4)胚様体を使用して、疾患iPS細胞および補正iPS細胞を、運動ニューロンへと分化させた。
(5)分化させた運動ニューロンを解離させ、ポリ−d−リシンおよびラミニンでコーティングされたガラス製カバースリップへと播種した。
(6)運動ニューロンに、N2、B27、GDNF、BDNF、およびCTNFを補充したneurobasal培地を供給した。
(7)培養の4日後、ニューロンに、遺伝子コード型蛍光電位レポーター(QuasAr2)および光電位アクチュエーター(CheRiff)を保持するレンチウイルスを感染させた。
(8)ニューロンを、感染後8〜10日間にわたり、さらに成熟させた。
(9)ニューロンを、高解像度の顕微鏡上で、電位イメージングのための640nmのレーザー(600W/cm)によりイメージングし、488nmのレーザー(20〜200mW/cm)で励起した。
(10)赤色光および青色光のパルス列を使用して、電位についての光学的刺激の増大下における活動電位を記録した(図6)。
(11)疾患運動ニューロンおよび補正運動ニューロンに由来する細胞集団を測定した。
(12)独立成分分析を使用して、視野内の個別の細胞を単離した(図7〜10)。
(13)光退色を除去し、中央値フィルタリングされた出力波形を差し引き、ノイズ閾値を上回るデータを単離することにより、活動電位を同定した。
(14)細胞の興奮性は、各青色光刺激の間にスパイクが発生する確率と、無刺激(自発発火)の間にスパイクが発生する確率とにより測定した(図19)。