次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。まず、図1を参照してインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。尚、図1に示す走査方向をプリンタ1の左右方向と定義する。また、図1の搬送方向の上流側をプリンタ1の後方、下流側をプリンタ1の前方と定義する。さらに、走査方向及び搬送方向と直交する方向(図1の紙面に直交する方向)を、プリンタの上下方向と定義する。尚、図1の手前側が上方、図1の向こう側が下方である。以下では、前後左右上下の各方向語を適宜使用して説明する。
(プリンタの概略構成)
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン2と、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4と、搬送機構5と、制御装置6等を備えている。
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙100が載せられる。キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。キャリッジ3には無端ベルト14が連結され、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が駆動されることで、キャリッジ3は走査方向に移動する。
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3に取り付けられており、キャリッジ3とともに走査方向に移動する。インクジェットヘッド4は、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクカートリッジ17が装着されるカートリッジホルダ7と、図示しないチューブによって接続されている。インクジェットヘッド4は、走査方向に並ぶ2つのヘッドユニット16(16a,16b)を備えている。各ヘッドユニット16の下面(図1の紙面向こう側の面)には、プラテン2に載置された記録用紙100に向けてそれぞれインクを吐出する、複数のノズル24(図2〜図4参照)が形成されている。2つのヘッドユニット16aのうちの、一方のヘッドユニット16aは、ブラックとイエローの2色のインクを吐出するものであり、他方のヘッドユニット16bは、シアンとマゼンタの2色のインクを吐出するものである。
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有する。搬送機構5は、2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2に載置された記録用紙100を搬送方向に搬送する。
制御装置6は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。制御装置6は、ROMに格納されたプログラムに従い、ASICにより、記録用紙100への印刷等の各種処理を実行する。例えば、印刷処理においては、制御装置6は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド4のヘッドユニット16やキャリッジ駆動モータ15等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。具体的には、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド4を走査方向に移動させながらインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ18,19によって記録用紙100を搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。
(インクジェットヘッドのヘッドユニットの詳細)
次に、インクジェットヘッド4のヘッドユニット16の詳細構成について説明する。尚、2つのヘッドユニット16a,16bは同一の構造を有するため、以下では、ブラックとイエローのインクを吐出するヘッドユニット16aで代表して説明する。図2は、インクジェットヘッド4のヘッドユニット16の上面図である。図3は、図2のX部拡大図である。図4は、図3のIV-IV線断面図である。図2〜図4に示すように、ヘッドユニット
16は、ノズルプレート20、第1流路基板21、第2流路基板22、圧電アクチュエータ23等を備えている。尚、図2では、図面の簡素化のため、図4において第1流路基板21の上方に位置する保護部材28は、二点鎖線で外形のみ示されている。さらに、図2において圧電アクチュエータ23の構成が理解されやすくなるように、図3、図4に示される、第1流路基板21を全面的に覆っている保護膜38は、図2では図示が省略されている。
(ノズルプレート)
ノズルプレート20は、例えば、シリコン等で形成されたプレートである。ノズルプレート20には、複数のノズル24が形成されている。図2に示すように、複数のノズル24は、搬送方向(本発明の第1方向)に配列されて、走査方向(本発明の第2方向)に並ぶ4列のノズル列を構成している。右側の2列のノズル列は、ブラックインクを吐出するノズル列である。右側2列のノズル列の間で搬送方向におけるノズル24の位置が、各ノズル列の配列ピッチPの半分(P/2)だけずれている。左側の2列のノズル列は、イエローインクを吐出するノズル列である。左側2列のノズル列も、右側2列のノズル列と同様に、2列のノズル列の間で搬送方向におけるノズル24の位置がP/2ずれている。
(流路基板)
第1流路基板21、第2流路基板22は、それぞれシリコン単結晶の基板である。第1流路基板21には、複数のノズル24とそれぞれ連通する複数の圧力室26が形成されている。各圧力室26は、走査方向に長い矩形の平面形状を有する。複数の圧力室26は、複数のノズル24に応じて搬送方向に配列されて、走査方向に並ぶ4列の圧力室列27(27a〜27d)を構成している。右側2列の圧力室列27a,27bがブラックインクの圧力室列27であり、左側2列の圧力室列27c,27dがイエローインクの圧力室列27である。また、第1流路基板21は、その上面に形成されて複数の圧力室26を覆う振動膜30を有する。振動膜30は、シリコン基板の表面が酸化、あるいは、窒化されることにより形成された膜である。
第2流路基板22は、第1流路基板21の下面に接合されている。また、この第2流路基板22の下面に、上述したノズルプレート20が接合されている。第2流路基板22の、右側2列の圧力室列27a,27bと上下に重なる部分、及び、左側2列の圧力室26c,27dと上下に重なる部分に、2つのマニホールド25がそれぞれ形成されている。各マニホールド25は、圧力室26の配列方向である搬送方向に沿って延びている。各マニホールド25と、これに対応する2列の圧力室列27に属する圧力室26とは、連通孔48によって連通している。また、2つのマニホールド25は、図示しないチューブ等によって、カートリッジホルダ7に装着された2つのインクカートリッジ17(図1参照)とそれぞれ接続されている。
インクカートリッジ17から供給されたインクは、マニホールド25に供給され、さらに、このマニホールド25から、対応する複数の圧力室26にそれぞれ供給される。また、第2流路基板22には、第1流路基板21に形成された圧力室26と、ノズルプレート20に形成されたノズル24とを連通させる連通孔49も形成されている。次述の圧電アクチュエータ23によって、圧力室26内のインクに吐出エネルギーが付与されると、圧力室26に連通するノズル24から、インクの液滴が吐出される。
(圧電アクチュエータ)
圧電アクチュエータ23は、複数の圧力室26内のインクに、それぞれノズル24から吐出させるための吐出エネルギーを付与するものである。圧電アクチュエータ23は、第1流路基板21の振動膜30の上面に配置された複数の圧電素子39を有する。複数の圧電素子39は、複数の圧力室26にそれぞれ対応して搬送方向に配列され、走査方向に並ぶ4つの圧電素子列40(40a〜40d)を構成している。各圧電素子39は、圧電部37と、下部電極31と、上部電極33とを有する。尚、第1流路基板21の上面には、圧電アクチュエータ23の複数の圧電素子39を覆う保護部材28が接合されている。
圧電素子39の構成について詳細に説明する。振動膜30の上面には、複数の圧力室26を跨ぐように共通電極42が連続的に形成されている。共通電極42の、圧力室26と対向する部分が、各圧電素子39の下部電極31である。そして、複数の圧電素子39の下部電極31が、共通電極42の、複数の圧力室26の間に配置された部分(電極導通部41)によって、互いに導通した構成となっている。共通電極42(複数の下部電極31、及び、電極導通部41)の材質は特に限定されるものではないが、例えば、白金(Pt)で形成される。また、共通電極42の厚みは、例えば、0.1μmである。
振動膜30の上面には、共通電極42を覆うように圧電膜32が形成されている。圧電膜32は、振動膜30の上面において、4つの圧力室列27にわたって形成された、平面視で矩形状の膜である。尚、圧電膜32のうちの、各圧力室26に対向する部分が、1つの圧電素子39の圧電部37を構成している。つまり、圧電膜32は、複数の圧電素子39の圧電部37が互いに繋がって形成された膜であるとも言える。圧電膜32は、例えば、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなる。あるいは、圧電膜32は、鉛が含有されていない非鉛系の圧電材料で形成されていてもよい。尚、圧電膜32の厚みは、例えば、1μmである。
圧電膜32の上面には、複数の圧力室26にそれぞれ対応した複数の上部電極33が形成されている。上部電極33は、各圧力室26に対して個別に設けられた個別電極である。上部電極33の形状は特に限定されないが、例えば、図3には、圧力室26よりも小さい矩形の平面形状を有するものが示されている。また、上部電極33の材質も特に限定はされないが、例えば、イリジウム(Ir)で形成される。また、上部電極33の厚みは、例えば、0.1μmである。
尚、圧電膜32の下部電極31と上部電極33とに挟まれた部分である、各圧電素子39の圧電部37は、厚み方向において下向き、即ち、上部電極33から下部電極31に向かう方向に分極されている。
振動膜30及び圧電膜32の上面には、複数の圧電素子39を覆うように、絶縁性材料からなる保護膜38が形成されている。保護膜38が設けられている主な目的は、圧電素子39の防湿である。保護膜38の材質は特に限定されないが、例えば、窒化シリコン、二酸化シリコン、アルミナなどで形成される。また、尚、保護膜38は、各圧電素子39の一部のみを覆うように配置されてもよい。例えば、保護膜38に、上部電極33を露出させる開口が形成され、上部電極33が保護膜38で覆われていない構成であってもよい。
保護膜38の上面には、複数の圧電素子39にそれぞれ対応する複数の駆動配線35が形成されている。各駆動配線35の一端部は、上部電極33に乗り上げるように配置されている。保護膜38の、駆動配線35の一端部と重なる部分にはスルーホール38aが形成されている。このスルーホール38a内に配置された導電性材料からなり、保護膜38を貫通するように設けられた導通部46によって、駆動配線35と上部電極33とが導通している。各圧電素子39の上部電極33に接続された駆動配線35は、保護膜38の上面において右方に延びている。
本実施形態では、図2、図3に示すように、複数の圧電素子39の上部電極33にそれぞれ接続された複数の駆動配線35の全てが、対応する上部電極33から右方へ延びている。そのため、左側3つの圧電素子列40の上部電極33から引き出された駆動配線35は、それよりも右側に位置する他の圧電素子列40に属する2つの圧電素子39の間を通過して右方へ延びている。例えば、図2に示すように、最も右側に位置する圧電素子列40aの、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間には、左側3つの圧電素子列40b〜40dにそれぞれ対応する3本の駆動配線35b〜35dが配置されている。尚、駆動配線35の材質は特に限定されないが、電気抵抗率の低い金(Au)、あるいは、アルミニウム系材料(例えば、Al−Cu合金)を好適に用いることができる。金の電気抵抗率は2.2×10-8Ωm、アルミニウムの電気抵抗率は2.7×10-8Ωm、銅の電気抵抗率は1.7×10-8Ωmである。尚、これに対して、共通電極42を構成する材料である、白金の電気抵抗率は、1.0×10-7Ωmである。但し、アルミニウムは、金と比べて、マイグレーションを起こしやすい材料であるため、駆動配線35がアルミニウムで形成される場合は、マイグレーション防止のために、複数の駆動配線35が絶縁膜で覆われることが好ましい。また、駆動配線35の厚みは、例えば、1μmである。
図2に示すように、第1流路基板21の振動膜30の右端部上面には、配線部材であるCOF50が接合される接点部43が設けられている。この接点部43には、搬送方向に並ぶ、複数の駆動接点部44と2つのグランド接点部45とが配置されている。各圧電素子39の上部電極33に接続された駆動配線35は、接点部43に配置された駆動接点部44に接続されている。また、複数の下部電極31を含む共通電極42は、配線36によって2つのグランド接点部45と接続されている。
図2〜図4に示すように、上記の接点部43にはCOF50が接合され、接点部43に配置された複数の駆動接点部44とCOF50に形成された複数の信号配線(図示省略)とが、それぞれ電気的に接続されている。また、接点部43に配置された2つのグランド接点部45は、COF50に形成されたグランド配線(図示省略)と接続されている。尚、図示は省略するが、COF50は、プリンタ1の制御装置6(図1参照)にも接続されている。
図2に示すように、COF50にはドライバIC51が実装されている。ドライバIC51は、制御装置6から送られてきた制御信号に基づいて、各圧電素子39を駆動するための駆動信号を生成して出力する。ドライバIC51から出力された駆動信号は、COF50の信号配線を介して駆動接点部44に入力され、さらに、駆動配線35を介して各上部電極33に供給される。上部電極33に駆動信号が供給されると、この上部電極33の電位は所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。また、グランド接点部45がCOF50のグランド配線と接続されることにより、グランド接点部45と接続されている下部電極31の電位は、常にグランド電位に維持される。
ドライバIC51から駆動信号が供給されたときの、各圧電素子39の動作について説明する。駆動信号が供給されていない状態では、上部電極33の電位はグランド電位となっており、下部電極31と同電位である。この状態から、ある上部電極33に駆動信号が供給されて、上部電極33に駆動電位が印加されると、その上部電極33と下部電極31との電位差により、圧電部37に、その厚み方向に平行な電界が作用する。ここで、圧電部37の分極方向と電界の方向とが一致するために、圧電部37はその分極方向である厚み方向に伸びて面方向に収縮する。この圧電部37の収縮変形に伴って、振動膜30が圧力室26側に凸となるように撓む。これにより、圧力室26の容積が減少して圧力室26内に圧力波が発生することで、圧力室26に連通するノズル24からインクの液滴が吐出される。
ところで、本実施形態では、複数の圧電素子39が、走査方向に並ぶ4つの圧電素子列40a〜40dを構成している。また、複数の圧電素子39の下部電極31を含む共通電極42は、第1流路基板21の右端部に位置する、接点部43のグランド接点部45と接続されている。この構成においては、4つの圧電素子列40a〜40dの間で、圧電素子39の下部電極31と、接点部43のグランド接点部45との距離が異なっている。接点部43から離れた位置にある圧電素子列40dでは、各圧電素子39の下部電極31とグランド接点部45との距離が最も遠くなるために、その間の電気抵抗が最も大きくなる。これにより、圧電素子39の駆動時に、第2電極31からグランド接点部45へ向けて電流が流れるときの電圧降下が大きくなる。特に、多数のノズル24から同時にインクを吐出させる際には、多くの圧電素子39を同時に駆動することになる。そのため、相対的に、共通電極42での電圧降下が大きくなり、各圧電素子39に印加される電圧が小さくなる。
この点について、共通電極42の厚みを大きくして共通電極42の電気抵抗を小さくすることによって、上記の電圧降下を低く抑えることは可能である。しかし、共通電極42(特に、下部電極31)の厚みを大きくすると、その厚みによって圧電部37の変形が阻害されてしまう。また、共通電極42の材料としては、圧電膜32の配向に影響を及ぼしにくい白金(Pt)が適しているが、白金は高価な材料であるため、コストの観点からも共通電極42の厚みを大きくすることは難しい。
上記の理由から、4つの圧電素子列40a〜40dの間で、グランド接点部45からの距離に応じて、下部電極31とグランド接点部45との間での電圧降下の程度に差が生じると、電圧降下の大きい圧電素子列40では、圧電素子39に実質的に印加される電圧が低下してしまう。つまり、4つの圧電素子列40a〜40dの間で、圧電素子39への印加電圧にばらつきが生じる。この印加電圧のばらつきは、4つのノズル列の間でのノズル24の吐出特性のばらつきとなって現れ、印字品質の悪化に繋がる。そこで、本実施形態では、接点部43から離れた圧電素子列40を構成する圧電素子39の下部電極31と、接点部43のグランド接点部45との間の、電圧降下を低く抑えることを目的として、以下の構成が採用されている。
図2〜図4に示すように、4つの圧電素子列40a〜40dのうち、左側(接点部43と反対側)に配置された3つの圧電素子列40b〜40dのそれぞれにおいて、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の上部電極33の間に、共通電極42と導通する導通配線52が設けられている。
導通配線52は、駆動配線35と同じ導電材料(金やアルミニウム系材料等)により、上述した駆動配線35と同様、複数の圧電素子39を覆う保護膜38の上面に配置されている。即ち、導通配線52は、圧電膜32と保護膜38を挟んで、共通電極42と重なって配置されている。また、3つの圧電素子列40b〜40dのそれぞれにおいて、導通配線52は、隣接する2つの圧電素子39の間において走査方向に延びている。
尚、導通配線52の走査方向における長さは、隣接する2つの圧電素子39の上部電極33の、走査方向における長さよりも長くなっている。より詳細には、導通配線52の走査方向における長さは、圧力室26の走査方向における長さとほぼ等しい。また、導通配線52の厚みは駆動配線35と同じであって、共通電極42の厚みよりは大きくなっている。例えば、共通電極42の厚みが、0.1μmである場合に、導通配線52の厚みは、駆動配線35と同じく、1.0μmである。
尚、圧電素子39の周囲に、駆動配線35や導通配線52等の導電体が配置されることにより、各膜の成膜や、圧電膜32のパターニング等に起因して圧電素子に生じる残留応力が変化する。そこで、複数の圧電素子39の間での残留応力のばらつきを小さくするという観点から、導通配線52の厚みは、駆動配線35の厚みと同じになっている。また、同様の理由から、導通配線52は、駆動配線35と同じ導電材料で形成されている。
図3、図4に示すように、圧電膜32の、各導通配線52の両端部と重なる部分には、2つのスルーホール32aがそれぞれ形成されている。また、保護膜38の、各導通配線52の両端部と重なる部分にも2つのスルーホール38bがそれぞれ形成されている。圧電膜32のスルーホール32a、及び、保護膜38のスルーホール38b内に、導通配線52を構成する導電材料が充填されることにより、圧電膜32及び保護膜38を貫通する導通部53が配置されている。そして、各導通配線52の両端部は、それぞれ、2つの導通部53を介して共通電極42の電極導通部41と接続されている。尚、導通配線52と共通電極42とを導通させる2つの導通部53の位置は、導通配線52の両端部には限られない。但し、導通部53が導通配線52の中央部に近い位置にあると、共通電極42を流れる電流の一部を流す経路として機能する導通配線52の長さが実質的に短くなってしまうため、2つの導通部53は、導通配線52の両端部に設けられていることが好ましい。
右から2番目に位置する圧電素子列40bにおいては、隣接する2つの圧電素子39の間に、導通配線52bと、圧電素子列40c,40dからそれぞれ引き出された2本の駆動配線35c,35dが配置されている。また、右から3番目に位置する圧電素子列40cにおいては、隣接する2つの圧電素子39の間に、導通配線52cと、圧電素子列40dから引き出された1本の駆動配線35dが配置されている。尚、圧電素子列40b,40cにおいて、導通配線52は、駆動配線35に対して後方に配置されている。さらに、最も左側に位置する圧電素子列40dにおいては、隣接する2つの圧電素子39の間には導通配線52dのみが配置されている。
このように、走査方向において、接点部43から離れた位置にある圧電素子列40(40b〜40d)において、隣接する圧電素子39の間に、共通電極42と導通する導通配線52が設けられている。そのため、圧電素子列40b〜40dを構成する圧電素子39の下部電極31と、接点部43のグランド接点部45との間で、電流が流れる経路が増える。これにより、下部電極31とグランド接点部45との間の電気抵抗が実質的に低くなる。従って、接点部43から離れた位置にある圧電素子列40b〜40dを構成する圧電素子39において、下部電極31から接点部43のグランド接点部45へ向けて電流が流れる際の、下部電極31とグランド接点部45との間での電圧降下を小さく抑えることができる。上記の電圧降下が小さく抑えられることにより、複数の圧電素子39間で、圧電素子39に印加される電圧のばらつきが抑えられるため、複数のノズル24間での吐出特性差が小さくなる。
尚、接点部43に近い第1圧電素子列40aにおいては、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間に、他の3つの圧電素子列40b〜40dにそれぞれ対応する3本の駆動配線35b〜35dが通過している。これと比べて、他の3つの圧電素子列40b〜40dにおいては、隣接する2つの圧電素子39の間を通過する駆動配線35の数が少ない。つまり、接点部43から離れた圧電素子列40b〜40cにおいては、圧電素子列40aと比べて、隣接する2つの圧電素子39の間に存在する空いた領域の面積が大きいため、隣接する2つの圧電素子39の間に導通配線52を設置することが容易である。
また、導通配線52が設けられている3つの圧電素子列40b〜40dの間でも、接点部43からの距離が大きいほど、圧電素子39の下部電極31と接点部43のグランド接点部45との間での電気抵抗が大きく、電圧降下も大きくなる。そこで、接点部43からの距離が離れている圧電素子列40に設けられる導通配線52の電気抵抗が、接点部43に近い圧電素子列40に設けられる導通配線52の電気抵抗よりも小さくなっていることが好ましい。即ち、隣接する2つの圧電素子39の間に配置される、導通配線52は、駆動配線35に対して、(1)配線幅が大きい、(2)配線の本数が多い、あるいは、(3)電気抵抗率の低い材料で形成されている、の何れかであることが好ましい。
一例として、本実施形態では、圧電素子列40と接点部43との距離が離れているほど、圧電素子列40に設けられる導通配線52の搬送方向における幅が大きくなっている。即ち、圧電素子列40dの導通配線52dの幅が最も大きく、次に、圧電素子列40cの導通配線52cの幅が大きく、圧電素子列40bの導通配線52bの幅が最も小さくなっている。
導通配線52の幅の具体例を以下に挙げる。搬送方向に隣接する2つの上部電極33の間の距離D(図3参照)が15〜20μm、駆動配線35の走査方向における幅が2〜3μmであるときに、最も幅の小さい導通配線52bの幅は、駆動配線35と同じく2〜3μmとするのが好ましい。また、導通配線52cの幅は、導通配線52bの倍の、4〜6μmとするのが好ましい。さらに、導通配線52dの幅は、導通配線52bの3倍の、6〜9μmとするのが好ましい。
尚、複数の圧電素子列40の間での、導通配線52の幅の関係は、以下のような式で一般化することができる。
接点部43からn列目に位置する導通配線52の幅をWnとしたときに、
Wn=k×(n−1)(但し、kは定数)
となる。
また、導通配線52そのものの電気抵抗も、極力小さいことが好ましい。そこで、導通配線52は、共通電極42よりも電気抵抗の小さい導電材料で形成されている。具体的には、共通電極42が白金で形成されている場合に、駆動配線35と同様に、白金よりも電気抵抗率が低い、金やアルミニウムで形成されるとよい。導通配線52と駆動配線35とで同じ導電材料を使用すれば、同じ成膜プロセスで、駆動配線35と導通配線52とを形成することができる。さらに、図4に示すように、導通配線52の厚みは、共通電極42の厚みよりも大きくなっている。
また、導通配線52の走査方向における長さは、上部電極33の走査方向における長さよりも長くなっている。導通配線52の長さを長くすることによって、導通配線52のそのものの電気抵抗が低くなるわけではないが、下部電極31と接点部43のグランド接点部45との間で、共通電極42とは別経路で電流が流れる区間が長くなるため、下部電極31とグランド接点部45との間の全体的な電気抵抗が下がるという効果がある。
これらの構成を採用することにより、圧電素子列40b〜40dを構成する圧電素子39の下部電極31から、接点部43のグランド接点部45までの間における電気抵抗を低くして、電圧降下を小さく抑えることができる。
次に、上述したインクジェットヘッド4のヘッドユニット16の、特に、圧電アクチュエータ23の製造工程について説明する。本実施形態では、第1流路基板21の振動膜30の上に、様々な膜を順に、成膜、パターニングしていくことにより、複数の圧電素子39を含む圧電アクチュエータ23を製造する。
図5は、(a)振動膜成膜、(b)共通電極(下部電極)形成、(c)圧電膜成膜、(d)圧電膜エッチング、の各工程を示す。
まず、図5(a)に示すように、第1流路基板21の表面に、熱酸化等によって二酸化シリコン等の振動膜30を成膜する。次に、図5(b)に示すように、振動膜30の上に、スパッタリング等による成膜と、エッチングによるパターニングによって、共通電極42(下部電極31)を形成する。
次に、共通電極42の上に圧電膜32を形成する。まず、図5(c)に示すように、振動膜30の上面に、ゾルゲル法、スパッタリング法などで、圧電膜32を共通電極42を覆うように成膜する。次に、図5(d)に示すように、圧電膜32をドライエッチングでパターニングする。このとき、圧電膜32の、3つの圧電素子列40b〜40dに対応する部分に、後述する導通配線52を共通電極42と導通させるためのスルーホール32aを形成する。
図6は、(a)上部電極形成、(b)保護膜形成、(c)配線形成の、各工程を示す。図6(a)に示すように、圧電膜32の上面に、複数の圧力室26にそれぞれ対応する複数の上部電極33を形成する。具体的には、スパッタリング等によって導電膜を成膜し、その後、この導電膜をエッチングでパターニングすることによって上部電極33を形成する。
次に、図6(b)に示すように、振動膜30の上面に、複数の圧電素子39となる圧電膜32を覆うように、保護膜38を形成する。まず、振動膜30の上面に、スパッタリング等の成膜法により、圧電膜32を覆うように保護膜38を成膜する。次に、この保護膜38の、上部電極33の右端部と重なる部分、及び、圧電膜32のスルーホール32aと対応する部分を、それぞれエッチングで除去し、保護膜38にスルーホール38a,38bを形成する。
次に、図6(c)に示すように、保護膜38の上面に、金やアルミニウムなどの材料からなる駆動配線35と導通配線52とを同じ成膜プロセスで形成する(配線形成工程)。配線形成のプロセスは特に限定されないが、使用する材料によって好適な方法が多少異なる。例えば、金で形成する場合は、先に、圧電膜32を部分的に覆うようにフォトレジストによるマスクを形成し、このマスクに覆われていない領域にメッキ法で金の膜を成膜することにより、駆動配線35と導通配線52とを形成するのがよい。また、アルミニウム系の材料で形成する場合には、先に、保護膜38の上面全域に、スパッタリング等によってアルミニウム系材料の膜を成膜する。次に、上記の膜の一部を、ウェットエッチングで部分的に除去することにより、駆動配線35と導通配線52とを同時に形成する。
このように、共通電極42に接続される導通配線52を、複数の圧電素子39にそれぞれ対応する複数の駆動配線35と、同じ成膜プロセスで形成することから、導通配線52を形成するための特別なプロセスが増えることがない。また、保護膜38によって、共通電極42と駆動配線35を電気的に分断することができるため、共通電極42の取り回しが容易になり、共通電極42における電圧降下をより抑制することができる。
以上のようにして、振動膜30の上に圧電アクチュエータ23を形成したら、圧電アクチュエータ23の複数の圧電素子39を覆うように、第1流路基板21に保護部材28(図4参照)を接合する。また、第1流路基板21に複数の圧力室26をエッチングで形成する。さらに、第1流路基板21に、第2流路基板22、及び、ノズル24を接合し、ヘッドユニット16の製造を完了する。
以上説明した実施形態において、インクジェットヘッド4が、本発明の「液体吐出装置」に相当する。第1流路基板21が、本発明の「基板」に相当する。圧電素子列40aが、本発明の「第1圧電素子列」に相当し、圧電素子列40bが、本発明の「第2圧電素子列」に相当し、圧電素子列40c,40dが、本発明の「第3圧電素子列」に相当する。下部電極31が、本発明の「第1電極」に相当し、上部電極33が、本発明の「第2電極」に相当する。保護膜38が、本発明の「絶縁膜」に相当する。導通部46が、本発明の「第1導通部」に相当し、導通部53が、本発明の「第2導通部」に相当する。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]図7に示すように、左側3つの圧電素子列40b〜40dに対してそれぞれ設けられた、導通配線62b〜62dが、3つの圧電素子列40b〜40dの間に配置された接続部60a,60bによって導通してもよい。より詳細には、圧電素子列40cに設けられた導通配線62cと、圧電素子列40dに設けられた導通配線62dとが、圧電素子列40cと圧電素子列40dとの間において、走査方向と交差する方向に延びる接続部60aによって導通している。また、圧電素子列40bに設けられた導通配線62bと、圧電素子列40cに設けられた導通配線62cとが、圧電素子列40bと圧電素子列40cとの間において、走査方向と交差する方向に延びる接続部60bによって導通している。つまり、導通配線62b〜62dと、接続部60a,60bによって、3つの圧電素子列40b〜40dにわたって延びる1本の導通配線が構成されている。
この構成によれば、接点部43から離れた圧電素子列40c,40dを構成する圧電素子39の下部電極31と、接点部43のグランド接点部45までの間において、共通電極42とは別経路で電流が流れる区間が長くなる。従って、圧電素子列40c,40dを構成する圧電素子39から接点部43までの間での電気抵抗が小さくなり、電圧降下がより一層小さく抑えられる。
2]前記実施形態では、接点部43から遠い圧電素子列40に対応する導通配線52の電気抵抗を小さくする観点から、圧電素子列40と接点部43との距離が離れるほど、圧電素子列40に設けられる導通配線52の走査方向における幅が大きくなっている。これに対して、圧電素子列40と接点部43との距離が離れるほど、隣接する2つの圧電素子39の間に設けられる導通配線の本数が多くなっていてもよい。
図8に示すように、3つの圧電素子列40b〜40dについて、圧電素子列40と接点部43との距離が離れているほど、圧電素子列40を構成する2つの圧電素子39の間に設けられる導通配線63の本数が大きくなっている。具体的には、圧電素子列40dに設けられる導通配線63dの本数が最も多く、圧電素子列40dの2つの圧電素子39の間には導通配線63dが3本配置されている。次に、圧電素子列40cに設けられる導通配線63cの本数が多く、圧電素子列40cの2つの圧電素子39の間に導通配線63cは2本配置されている。圧電素子列40bに設けられる導通配線63bの本数が最も少なく、圧電素子列40bの2つの圧電素子39の間に導通配線63bは1本しか配置されていない。
このように、接点部43からの距離が離れている圧電素子列40に対して設けられる導通配線63の本数が多くなっているため、前記実施形態と同様に、接点部43から離れた圧電素子列40を構成する圧電素子39の下部電極31と、接点部43のグランド接点部45までの電気抵抗が小さくなり、その間での電圧降下が小さく抑えられる。
また、図8では、4つの圧電素子列40a〜40dの間で、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間に配置されている、駆動配線35と導通配線63の合計本数が互いに等しくなっている。具体的には、圧電素子列40aにおいては、隣接する2つの圧電素子39の間に3本の駆動配線35が配置されている。圧電素子列40bにおいては、2本の駆動配線35と1本の導通配線63が配置されている。圧電素子列40cにおいては、1本の駆動配線35と2本の導通配線63が配置されている。さらに、圧電素子列40dにおいては、3本の導通配線63が配置されている。つまり、4つの圧電素子列40にそれぞれ属する圧電素子39の間で、各圧電素子39の周囲に配置されている導電体の量、及び、配置されている場所等の条件が近づく。これにより、各種薄膜を成膜する際に発生する残留応力や、圧電膜32のパターニング等に起因して圧電素子39に発生する応力条件を近づけることができるため、残留応力のばらつきを極力小さくすることができる。
尚、残留応力のばらつきをさらに抑えるという観点からは、隣接する2つの圧電素子39の間に配置される駆動配線35と導通配線63の幅が、全て等しいことが好ましい。例えば、搬送方向隣接する2つの圧電素子39の上部電極の間の距離が15〜20μmである場合には、駆動配線35の幅と導通配線63の幅を、それぞれ、2〜3μmとするのがよい。また、駆動配線35の厚みと導通配線63の厚みも等しいことが好ましい。
4]接点部43のグランド接点部45から、圧電素子39の下部電極31までの電気抵抗を低くするためには、導通配線は、極力、電気抵抗率の低い導電材料で形成されることが好ましい。そこで、導通配線が、駆動配線35よりも電気抵抗率の低い導電材料で形成されてもよい。例えば、前記実施形態の図2、図3において、駆動配線35が、比較的安価なアルミニウム系の材料で形成されている場合に、導通配線52は、アルミニウム系材料よりも高価だが、電気抵抗率の低い金で形成されてもよい。
5]前記実施形態では、接点部43の複数の駆動接点部44とグランド接点部45は、搬送方向に並んで配置されている。そのため、3つの圧電素子列40b〜40dの各々を構成する複数の圧電素子39の間でも、グランド接点部45からの距離が異なっている。そこで、3つの圧電素子列40b〜40dの各々に対して設けられる複数の導通配線は、グランド接点部45からの距離が遠いものほど幅が太くなっていてもよい。図9では、矢印Aで示される図中上側が、搬送方向においてグランド接点部45に近づく方向であり、矢印Bで示される図中下側が、グランド接点部45から離れる方向である。そして、各圧電素子列40に設けられる導通配線64は、図中下側、即ち、グランド接点部45から遠い側に配置されているものほど幅が大きくなっている。つまり、搬送方向において、グランド接点部45から離れるほど、導通配線64の幅が大きくなっている。この構成により、1つの圧電素子列40の中の、特に、グランド接点部45から遠い位置にある圧電素子39についても、下部電極31からグランド接点部45までの間での電圧降下を小さく抑えることができる。尚、上記形態における駆動接点部44が、本発明の「第1接点部」に相当し、グランド接点部45が、本発明の「第2接点部」に相当する。
6]前記実施形態や上述した変更形態(図8等)のように、3つの圧電素子列40b〜40dの間で、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間に配置される導通配線の幅や本数を異ならせることは必ずしも必要ではない。即ち、3つの圧電素子列40b〜40dの間で導通配線の幅、及び、本数を等しくしてもよい。
7]前記実施形態では、図2、図3に示すように、振動膜30の上に、複数の圧力室26を覆うように圧電膜32が配置されており、複数の圧電素子39の圧電部37が互いに繋がっている。そして、圧電膜32のうちの、隣接する圧電素子39の圧電部37の間の部分に、駆動配線35及び導通配線52が配置されている。これに対して、複数の圧電素子39の圧電部が、搬送方向において分離されている場合にも本発明を適用することは可能である。
図10、図11に示すように、共通電極42を覆うように圧電膜72が配置されている。この圧電膜72の、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間の領域には、エッチングによって開口部72aが形成されている。各開口部72aにおいては、共通電極42が、圧電膜72から露出した状態となるが、上部電極33の形成後に成膜される保護膜38によって、開口部72aから露出した共通電極42が覆われる。
その上で、各圧電素子列40の、隣接する2つの圧電素子39の間においては、開口部72aを覆う保護膜38の上に、駆動配線35と導通配線82とが配置されている。前記実施形態の図4では、駆動配線35及び導通配線52と、共通電極42との間には、圧電膜32と保護膜38とが配置されているが、図11では、開口部72aが形成された領域において、駆動配線35及び導通配線82と、共通電極42との間には、保護膜38のみが配置された構成となっている。尚、導通配線82は、保護膜38を貫通するように配置された2つの導通部83によって、共通電極42と導通している。
また、圧電膜32が圧力室26毎にパターニングされ、複数の圧力室26の間で、圧電部37が完全に分離されていてもよい。この場合、圧電部37と上部電極33の大きさはほぼ同じか、上部電極33が圧電部37よりもやや小さくされる。
8]前記実施形態では、複数の圧電素子39を覆うように保護膜38が設けられていたが、この保護膜38は省略することも可能である。
9]前記実施形態では、複数の下部電極31が電極導通部41によって互いに導通して、複数の圧電素子39についての共通電極42を構成する一方、各上部電極33が個別電極となっているが、下部電極が個別電極、上部電極が共通電極であってもよい。
10]前記実施形態の圧電アクチュエータ23では、複数の圧電素子39が4つの圧電素子列40を構成しているが、圧電素子列の数は4つには限られない。即ち、本発明は、2つ以上の圧電素子列40を有する圧電アクチュエータに対して適用可能である。
11]前記実施形態の圧電アクチュエータ23では、4つの圧電素子列40のうちの、接点部43と反対側の3つの圧電素子列40b〜40dに対して、導通配線52が設けられているが、接点部43に最も近い圧電素子列40aに対しても、導通配線52が設けられてもよい。
上記とは逆に、3つの圧電素子列40b〜40dの全てについて導通配線52が設けられる必要は必ずしもなく、3つの圧電素子列40b〜40dのうちの何れか1つにのみ導通配線52が設けられてもよい。
13]前記実施形態では、第1流路基板21に設けられた接点部43に、配線部材であるCOF50が接合されているが、接点部43に、ICチップ等の配線部材以外の部品と電気的に接続されてもよい。
以上説明した実施形態及びその変更形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットヘッドの圧電アクチュエータに適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本発明を適用することは可能である。また、本発明の圧電アクチュエータは、液体に圧力を与える目的で使用されるものにも限られない。例えば、固形の物体を動かすアクチュエータや気体を加圧するアクチュエータなどに、本発明を適用することも可能である。
次に、出願当初の特許請求の範囲に記載の請求項1〜17に係る発明以外の開示発明について説明する。
この発明は、基板上において第1方向に配列される第1圧電素子列と、前記第1圧電素子列と前記第1方向と直交する第2方向に並ぶ第2圧電素子列とを構成する、複数の圧電素子と、
前記基板上の、前記第1圧電素子列に対して、前記第2方向において前記第2圧電素子列とは反対側の位置に配置され、配線部材が接合される接点部と、
前記複数の圧電素子から前記接点部に向けて、前記第2方向にそれぞれ延びる複数の駆動配線と、を備え、
各圧電素子は、圧電部と、前記圧電部の厚み方向における一方側に配置された第1電極と、前記圧電部の厚み方向における他方側に配置された第2電極とを有し、
各駆動配線は、対応する前記圧電素子の前記第1電極に接続され、
前記複数の圧電素子の前記第2電極は、これら複数の第2電極の間に配置された電極導通部によって互いに導通し、前記複数の第2電極と前記電極導通部により前記複数の圧電素子についての共通電極が構成され、
各圧電素子列を構成する複数の圧電素子の前記圧電部を互いに繋ぐ圧電連結部をさらに有し、
前記第2圧電素子列の前記圧電素子に対応する前記駆動配線は、前記第1圧電素子列の、前記第1方向において隣接する2つの前記圧電素子の間を通って前記接点部へ延びており、
前記第2圧電素子列の、前記第1方向において隣接する2つの前記圧電素子の間に配置され、前記駆動配線とは分離されたダミー配線が配置されていることを特徴とする、圧電アクチュエータの発明である。
上記開示発明の実施形態例について図12を参照して説明する。圧電アクチュエータ103は、4つの圧力室列27a〜27dにそれぞれ対応した4つの圧電素子列40a〜40dを構成する、複数の圧電素子39を有する。前記実施形態と同様に、4つの圧力室列27に跨って圧電膜32が形成されている。つまり、4つの圧電素子列40を構成する複数の圧電素子39の圧電部37が、圧電膜32のうちの隣接する圧力室26の間に配置されている圧電連結部111によって互いに繋がった構成となっている。
4つの圧電素子列40を構成する複数の圧電素子39からは、対応する駆動配線35が、接点部43に向けて右側に引き出されている。そのため、右側3つの圧電素子列40a〜40cにおいては、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間を、他の圧電素子列40からの駆動配線35が通過している。一方、最も左側に位置する圧電素子列40dにおいては、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間には、他の圧電素子列40の駆動配線35が配置されていない。
隣接する2つの圧電素子39の間の、圧電膜32の上に、駆動配線35等の導電膜が存在するか否かによって、各圧電素子39における残留応力が変化する。これにより、4つの圧電素子列40の間で、圧電素子39の残留応力にばらつきが生じる。そこで、図12では、最も左側の圧電素子列40dにおいて、搬送方向に隣接する2つの圧電素子39の間に、ダミー配線110dが配置されている。このダミー配線110dは、上部電極33や駆動配線35と導通するものではなく、また、前記実施形態の導通配線52(図2,図3参照)と異なり、共通電極42とも導通するものではない、孤立して配置された電極である。圧電素子列40dの隣接する2つの圧電素子39の間にダミー配線110が配置されることで、他の圧電素子列40の圧電素子39との間の、残留応力のばらつきが小さく抑えられる。
また、右側3つの圧電素子列40a〜40cの間では、隣接する2つの圧電素子39の間を通過する駆動配線35の数が異なる。そこで、図12では、通過する駆動配線35の数が少ない、圧電素子列40b,40cについても、圧電素子列40dと同様に、ダミー配線110b,110cが設けられている。但し、圧電素子列40cのダミー配線110cの幅は、圧電素子列40dのダミー配線110dの幅よりも小さい。また、圧電素子列40bのダミー配線110bの幅は、圧電素子列40cのダミー配線110cの幅よりもさらに小さくなっている。