JP6821836B2 - 収音装置 - Google Patents
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Description
本発明は、複数のマイクロホンを立体的に配置して目的方向音(以下、ターゲット音ともいう)を収音する技術に関する。
回転放物面を有する反射部の焦点位置付近の複数の異なる位置に複数のマイクロホンを配置し、収音した信号に基づき、目的方向音のみを強調するようビームフォーミング処理を行う技術が知られている(特許文献1参照)。また、目的音源位置もしくは目的音源方向から各マイクロホンまでの伝達関数(アレイマニホールドベクトル)と、マイクロホンで受音された雑音信号の空間相関行列(雑音の空間相関行列)とから、ビームフォーミングフィルタの設計を行い、目的音源を強調し、雑音を抑圧する方法が知られている(非特許文献1参照)。さらに、特許文献1には、反射部の焦点位置付近に複数のマイクロホンを設置した装置に対し、目的音源からマイクロホンまでの伝達関数をあらかじめ測定しておき、これを用いてビームフォーミングのフィルタを設計することで、目的音源を反射部がないときよりも効率よく目的音源を強調できることが示されている。また、焦点位置付近に複数のマイクロホンを設置することで、反射部の正面方向(反射部の回転放物面の回転軸方向であって、開口している方向(焦点側の方向))だけでなく、正面方向からずれた方向に対しても指向性を形成することが可能となり、任意方向の音を強調することが可能である。
浅田太, 「音のアレイ信号処理−音源の定位・追跡と分離−」, コロナ社, 2011年.
特許文献1に示されたように反射部の焦点位置付近に複数のマイクロホンを設置した装置を用いてビームフォーミング収音することで、目的音の強調を行うシステムがある。
しかしながら、反射部が小さい場合、低音域で指向性集音ができないという課題がある。特に反射部の直径よりも音波の波長が長い場合に、その影響が顕著である。反射部の指向特性例は参考文献1で示されている。
(参考文献1)「集音マイクロホン」、[online]、[平成29年2月20日検索]、インターネット<URL: http://www.kobayasi-riken.or.jp/news/No118/118_3.htm>
しかしながら、反射部が小さい場合、低音域で指向性集音ができないという課題がある。特に反射部の直径よりも音波の波長が長い場合に、その影響が顕著である。反射部の指向特性例は参考文献1で示されている。
(参考文献1)「集音マイクロホン」、[online]、[平成29年2月20日検索]、インターネット<URL: http://www.kobayasi-riken.or.jp/news/No118/118_3.htm>
本発明は、反射部が小さい場合でも、低音域で指向性集音を実現することができる収音装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の第一の態様によれば、収音装置は、収音装置を構成する回転放物面が小さい場合でも、回転放物面の直径よりも波長が長い信号を精度よく強調するためのものである。収音装置は、回転放物面を有する反射部と、Pを2以上の整数の何れかとし、P個のマイクロホンとを含み、M,Nをそれぞれ1以上の整数の何れかとし、P≧M+Nとし、M個のマイクロホンが回転放物面の焦点位置近辺に配置され、N個のマイクロホンが回転放物面の焦点側の表面の中心位置近辺に配置され、回転放物面の端部が形成する円の直径が、回転放物面の焦点位置と回転放物面の表面の中心位置との距離の略2倍である。
本発明によれば、従来よりも小さい反射部を用いて低音域で従来と同程度の指向性集音を実現することができる、または、従来と同程度の大きさの反射部を用いて従来よりも低音域で指向性集音を実現することができるという効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、同じ機能を持つ構成部や同じ処理を行うステップには同一の符号を記し、重複説明を省略する。以下の説明において、ベクトルや行列の各要素単位で行われる処理は、特に断りが無い限り、そのベクトルやその行列の全ての要素に対して適用されるものとする。
<第一実施形態のポイント>
本実施形態では、マイクロホンを立体的に配置することで、マイクロホン間の音の到達時間差が発生する。この時間差(位相差)を利用して指向性の向上を図る。このような構成とすることで、奥にあるマイクロホン20−nと手前にあるマイクロホン20−mの距離に半波長分が入る周波数までは集音可能となる。
本実施形態では、マイクロホンを立体的に配置することで、マイクロホン間の音の到達時間差が発生する。この時間差(位相差)を利用して指向性の向上を図る。このような構成とすることで、奥にあるマイクロホン20−nと手前にあるマイクロホン20−mの距離に半波長分が入る周波数までは集音可能となる。
特許文献1に示されたようパラボラ型リフレクターの焦点位置近辺に平面的にマイクロホンを複数配置し、目的方向音を強調する手法はある。しかしながら、本実施形態で提案するような、焦点位置近辺だけでなく、焦点から離れたパラボラの底の部分にも配置して目的方向音を集音する方法は提案されていない。
本実施形態では、回転放物面を有する反射部(以下、パラボラ型リフレクターともいう)10の焦点位置付近に加え、パラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置にマイクロホン20−nを配置する。図1、図2、3は、それぞれマイクロホンの配置例を示す正面図、側面図、斜視図である。このような構成により、パラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺に配置したマイクロホン20−mでは検知できない低域の位相差を精度良く推定できるとともに、目的方向音の低音域の指向性集音を実現する。
本実施形態では、パラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺にM個のマイクロホン20−mを配置する。さらに、パラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺にN個のマイクロホン20−nを配置する。以下、マイクロホン20−mを焦点マイク20−m、マイクロホン20−nを底面マイク20−nともいう。m=1m,2m,…,Mm、n=1n,2n,…,Nnである。下付き添え字m,nはそれぞれ焦点マイク、底面マイクであることを示すインデックスである。このような構成により、低音域も含めた指向性集音を可能にする。
従来のパラボラ型リフレクターは、その直径よりも波長が長い周波数において、顕著にリフレクターの効果が低くなる。リフレクターの効果とは、リフレクターの焦点位置近辺にマイクロホンを設置した場合に、リフレクターの正面方向に近い角度に鋭い指向性が形成されることである。
リフレクターの直径よりも波長が短い周波数では、音の到来方向によって音がある一点に集中し、その点だけ音圧が高くなる。つまり、リフレクターの効果が高い。図4にその様子を示す。リフレクターの正面方向から到来した音は、リフレクターにより反射され、リフレクターの焦点(A点)に集まり、リフレクターの焦点の音圧が高くなる。また、リフレクターの正面から少しずれた方向から到来した音は、リフレクターにより反射され、リフレクターの焦点から少しずれたB点に集まり、B点の音圧が高くなる。このように音の到来方向によって、音圧の高くなる点が異なるので、焦点位置近辺に設置された複数のマイクロホンで観測される音には、音の到来方向によって大きな振幅差が発生する。この振幅差の情報を主に利用してビームフォーミング処理を行うことで、任意方向の音を強調した集音を実現することができる。
しかし、リフレクターの直径よりも波長が長い周波数においては顕著にリフレクターの効果が低くなる。そのため、リフレクターの焦点位置近辺に設置された複数のマイクロホンでは、音の到来方向による振幅差が(リフレクターの直径よりも波長が短い周波数の場合と比べて)小さくなる。さらに、マイクロホンは焦点位置近辺に集中して設置されているため音の到来方向による位相差も小さい。このため、ビームフォーミング処理を行っても鋭い指向特性を形成することができない。
本実施形態では、リフレクターの直径よりも波長が長い周波数に対し、リフレクターの反射を用いなくても鋭い指向特性が形成できるようにマイクロホンの配置に工夫をする。また、コストの観点からはマイクロホンはなるべく少ないほうが良いので、追加するマイクロホン(底面マイクロホン)は、なるべく少ないことが望ましい。
まず、目的音源を効率よく強調するためのマイクロホン配置について説明する。図5に示すように2つのマイクロホンの位置を通る直線上に目的音源がある場合に目的音源を効率よく強調することができる。2つのマイクロホンを使ったビームフォーミングで形成される指向特性は、マイクロホンを通る線を軸として対称な形となるので、軸方向が強調したい方向であれば、1方向だけ強調される方向ができる。これに対し、軸方向以外が強調したい方向であれば、強調したい方向以外(軸との角度が同じ方向(軸に対して線対称となる方向))にも同じ感度を有する方向が存在する。このように、マイクロホンを通る直
線上に目的音源があるようなマイクロホン配置とすると効率よく目的音を強調することができる。また、マイクロホン間隔は、非特許文献1に記載のある通り、空間折り返しひずみが発生しない、対象周波数の半波長よりも狭い間隔であることが望ましく、位相差を観測しやすいように、なるべく間隔が広いほうが良い。すなわち、対象周波数の半波長程度の間隔が望ましい。
線上に目的音源があるようなマイクロホン配置とすると効率よく目的音を強調することができる。また、マイクロホン間隔は、非特許文献1に記載のある通り、空間折り返しひずみが発生しない、対象周波数の半波長よりも狭い間隔であることが望ましく、位相差を観測しやすいように、なるべく間隔が広いほうが良い。すなわち、対象周波数の半波長程度の間隔が望ましい。
本実施形態では、図6に示すようにパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺にマイクロホン20−mを1個以上(図6の例では3個)設置し、パラボラ型リフレクターの焦点側の表面の中心位置にマイクロホン20−nを1個設置することで、パラボラ型リフレクター10の直径よりも波長の長い周波数に対しては、パラボラ型リフレクター10の表面の中心に設置したマイクロホン20−nと、焦点位置近辺のマイクロホン20−mとの間の音の到来時間差(位相差)を主に活用して、ビームフォーミング処理を行い、目的音を効率よく強調する。例えば、パラボラ型リフレクター10の正面方向(図6の実線)が目的音方向の場合には、D点に設置されたマイクロホン20−nとA点に設置されたマイクロホン20−1mの2本を主に用いてビームフォーミングをする。正面からずれた方向(図6の破線)が目的音方向の場合には、D点に設置されたマイクロホン20−nとC点に設置されたマイクロホン20−3mの2本を主に用いてビームフォーミングをする。このように、パラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺に加え、パラボラ型リフレクター10の表面の中心位置にマイクロホン20−nを1個設置することで、パラボラ型リフレクター10の直径よりも波長の長い周波数に対して、位相差を主に使ったビームフォーミングにより効率よく目的音方向に指向性を形成することができる。
また、マイクロホン間隔は、対象周波数の半波長が望ましいことから、パラボラ型リフレクター10の焦点(A点)から、パラボラ表面の中心までの距離は、パラボラ型リフレクター10の直径の0.25〜1倍程度であり、特に半分程度となることが望ましい。このようにパラボラ型リフレクター10の形状を設計するとよい。
実際に指向性形成を行った例を示す。図7は、直径30cmのパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺にのみマイクロホン20−mを設置し0度方向を強調するようにビームフォーミングしたときの、各方向に対する感度特性である。図8は、直径30cmのパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺とパラボラ型リフレクター10表面の中心位置にマイクロホン20−m、20−nを設置し0度方向を強調するようにビームフォーミングしたときの、各方向に対する感度特性である。直径30cmよりも波長の長い1kHzでの結果を見ると、焦点位置近辺にのみマイクロホン20−mを設置した場合の0度方向
と80度方向の感度差が10dBであるのに対し、パラボラ型リフレクター10表面の中心位置にもマイクロホン20−nを設置した場合では、感度差が15dBと大きくなっているのが分かる。このようにパラボラ型リフレクター10表面の中心位置にもマイクロホン20−nを設置することで、パラボラ型リフレクター10の直径よりも波長の長い周波数に対して、より鋭い指向性を形成することが可能となる。
と80度方向の感度差が10dBであるのに対し、パラボラ型リフレクター10表面の中心位置にもマイクロホン20−nを設置した場合では、感度差が15dBと大きくなっているのが分かる。このようにパラボラ型リフレクター10表面の中心位置にもマイクロホン20−nを設置することで、パラボラ型リフレクター10の直径よりも波長の長い周波数に対して、より鋭い指向性を形成することが可能となる。
<第一実施形態に係る収音装置100>
第一実施形態に係る収音装置100の機能ブロック図および処理フローを図9と図10に示す。
収音装置100は、P個のマイクロホン20−p及びパラボラ型リフレクター10とを含み、さらに、CPUと、RAMと、以下の処理を実行するためのプログラムを記録したROMを備えたコンピュータとを含む。このコンピュータは、機能的には次に示すように構成されている。収音装置100は、AD変換部120、周波数領域変換部130、フィルタリング部160、時間領域変換部170、フィルタ計算部150、伝達特性記憶部140を含む。
第一実施形態に係る収音装置100の機能ブロック図および処理フローを図9と図10に示す。
収音装置100は、P個のマイクロホン20−p及びパラボラ型リフレクター10とを含み、さらに、CPUと、RAMと、以下の処理を実行するためのプログラムを記録したROMを備えたコンピュータとを含む。このコンピュータは、機能的には次に示すように構成されている。収音装置100は、AD変換部120、周波数領域変換部130、フィルタリング部160、時間領域変換部170、フィルタ計算部150、伝達特性記憶部140を含む。
<パラボラ型リフレクター10>
パラボラ型リフレクター10は、回転放物面を有する。回転放物面は音波を反射可能な形状、材質、大きさであり、焦点を形成する。この実施形態では、パラボラ型リフレクター10は、回転放物面を有する剛体である。回転放物面の縁が成す円形の直径は、扱う波長幅の中で最大の波長幅の0.25〜1倍程度以上であり、特に、半波長(0.5倍)程度以上であることが望ましい。例えば、音波の波長で扱う波長幅が0.01〜1mの場合、回転放物面の縁が成す円形の直径が0.5m程度以上であることが望ましい。パラボラ型リフレクター10の材質は、音波を反射しやすいもの(言い換えると、反射係数の高い材質)が望ましく、硬い素材が良い。そこで、本実施形態では、硬くて面積のあるパラボラ形状の剛体をパラボラ型リフレクター10として用いた。
パラボラ型リフレクター10は、回転放物面を有する。回転放物面は音波を反射可能な形状、材質、大きさであり、焦点を形成する。この実施形態では、パラボラ型リフレクター10は、回転放物面を有する剛体である。回転放物面の縁が成す円形の直径は、扱う波長幅の中で最大の波長幅の0.25〜1倍程度以上であり、特に、半波長(0.5倍)程度以上であることが望ましい。例えば、音波の波長で扱う波長幅が0.01〜1mの場合、回転放物面の縁が成す円形の直径が0.5m程度以上であることが望ましい。パラボラ型リフレクター10の材質は、音波を反射しやすいもの(言い換えると、反射係数の高い材質)が望ましく、硬い素材が良い。そこで、本実施形態では、硬くて面積のあるパラボラ形状の剛体をパラボラ型リフレクター10として用いた。
<マイクロホン20−p>
P個のマイクロホン20−pを用いて収音し(s1)、アナログ信号(収音信号)をAD変換部120に出力する。なお、P個のマイクロホン20−pのうち、M個のマイクロホン20−mはパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺に配置され、N個のマイクロホン20−nはパラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺に配置される。ただし、Pは2以上の整数の何れかであり、M,Nはそれぞれ1以上の整数の何れかであり、P=M+Nであり、p=1,2,…,Pであり、m=1m,2m,…,Mm、n=1n,2n,…,Nnである。マイクロホン20−mとマイクロホン20−m’とは、パラボラ型リフレクター10が形成する焦点位置近辺の、異なる位置に配置される。ここでは、m’は1,2,…,Mの何れかであり、m≠m’である。また、例えば、マイクロホン20−nとマイクロホン20−n’とは、パラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺の、異なる位置に配置される。ここでは、n’は1,2,…,Nの何れかであり、n≠n’である。
P個のマイクロホン20−pを用いて収音し(s1)、アナログ信号(収音信号)をAD変換部120に出力する。なお、P個のマイクロホン20−pのうち、M個のマイクロホン20−mはパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺に配置され、N個のマイクロホン20−nはパラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺に配置される。ただし、Pは2以上の整数の何れかであり、M,Nはそれぞれ1以上の整数の何れかであり、P=M+Nであり、p=1,2,…,Pであり、m=1m,2m,…,Mm、n=1n,2n,…,Nnである。マイクロホン20−mとマイクロホン20−m’とは、パラボラ型リフレクター10が形成する焦点位置近辺の、異なる位置に配置される。ここでは、m’は1,2,…,Mの何れかであり、m≠m’である。また、例えば、マイクロホン20−nとマイクロホン20−n’とは、パラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺の、異なる位置に配置される。ここでは、n’は1,2,…,Nの何れかであり、n≠n’である。
<パラボラ型リフレクター10に対するマイクロホン20−pの位置>
雑音の空間相関行列Rの行列式det(R)が最大化されるようにP個のマイクロホン20−pを配置すればよい。ただし、雑音の空間相関行列R(ω)は次式のように、雑音の伝達特性b→ k(ω)のみを用いて計算される(非特許文献1参照)。
雑音の空間相関行列Rの行列式det(R)が最大化されるようにP個のマイクロホン20−pを配置すればよい。ただし、雑音の空間相関行列R(ω)は次式のように、雑音の伝達特性b→ k(ω)のみを用いて計算される(非特許文献1参照)。
SN比を高めるためにP個のマイクロホン20−pを配置する。このとき、M個のマイクロホン20−mを焦点位置近辺に配置する。また、チャネル間相関が低くなるように、M個のマイクロホン20−mを異なる位置に配置する。例えば、特許文献1に記載されているように、M個のマイクロホン20−mで電気信号に変換される音波の間の相関が低くなるように、M個のマイクロホン20−mを配置すればよい。さらに、N個のマイクロホン20−nをパラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺に配置する。
(配置例1)
マイクロホンの配置の条件については図11に示す。パラボラ型リフレクター10の中心軸の方向を座標軸yとして記載する。パラボラ型リフレクター10の中心軸とパラボラ型リフレクター10の回転放物面との交点を通り、パラボラ型リフレクター10の中心軸と直交する平面をy=H1とする。またパラボラ型リフレクター10の焦点位置を通過し、かつパラボラ型リフレクター10の中心軸と直交する平面をy=H2とする。ただし、図11において、焦点から見てパラボラ型リフレクター10の方向をy軸における正方向とすると、H1>H2である。
マイクロホンの配置の条件については図11に示す。パラボラ型リフレクター10の中心軸の方向を座標軸yとして記載する。パラボラ型リフレクター10の中心軸とパラボラ型リフレクター10の回転放物面との交点を通り、パラボラ型リフレクター10の中心軸と直交する平面をy=H1とする。またパラボラ型リフレクター10の焦点位置を通過し、かつパラボラ型リフレクター10の中心軸と直交する平面をy=H2とする。ただし、図11において、焦点から見てパラボラ型リフレクター10の方向をy軸における正方向とすると、H1>H2である。
本配置例では、以下を満たすようにマイクロホン20−pを配置する。
マイクロホン20−mを、y=H2平面上かつ焦点位置から半径r2の領域(図11の斜線の領域、正面から見ると円形の領域)内に任意に配置する。ただし半径r2はパラボラ型リフレクター10の半径r1以下とする。例えば、図11の斜線の領域が上述の「焦点位置近辺」に相当する。なお、「焦点位置近辺」との表現は焦点位置自体を含み、マイクロホン20−mを焦点位置に配置してもよい。
y=H2平面からy=H1平面に向かって距離Dだけ離れた平面をy=H2+D(ただしH1>H2+D)としたときに、マイクロホン20−nをパラボラ型リフレクター10の内側かつy=H1平面とy=H2+D平面で挟まれた領域内(図11の梨地の領域)にN個のマイクロホン20−nを任意に配置する。例えば、図11の梨地の領域がパラボラ型リフレクター10の「焦点側の表面の中心位置近辺」に相当する。ただし、パラボラ型リフレクター10の縁を通過し、かつパラボラ型リフレクター10の中心軸と直交する平面(パラボラの縁を通過する平面が複数定義できる場合はもっともy=H1平面に近い平面)をy=H3平面としたときに、平面y=H2+Dが平面y=H1と平面y=H3との間に位置するように(H3≦H2+D<H1となるように)距離Dを設定する。このように距離Dを設定することで、N個のマイクロホン20−nは、平面y=H2+Dとパラボラ型リフレクター10の焦点側の表面との間に配置される。また、距離Dはパラボラ型リフレクター10の直径の0.25〜1倍であり、特に0.5倍程度が良い。
図12は、パラボラ型リフレクター10に対するマイクロホン20−pの配置例を示す。
この実施形態では、マイクロホン20−mは、パラボラ型リフレクター10に到来する波を遮りにくい形状の支持部191で支持されている。
図12では、支持部191は、パラボラ型リフレクター10が形成する焦点位置近辺に位置する平面y=H2を含む構造物であって、その面にはM個のマイクロホン20−mを保持するための空孔が複数形成される。例えば、M'(M'>M)個の空孔が形成されており、各マイクロホン20−mをM'個の空孔の何れかに埋め込む。この実施形態では、支持部191は、網状部材191Aと支持部材191Bとを含む。支持部材191Bは、パラボラ形状のパラボラ型リフレクター10の底を頭頂点とする正四角錐の、頭頂点から伸びる各辺を形成する棒状の構造物である。正四角錐の底面と同一平面状に網状の網状部材191Aを備える。支持部材191Bは、パラボラ型リフレクター10と網状部材191Aとを結合し、パラボラ型リフレクター10に対して網状部材191Aを固定する。網状部材191Aは、パラボラ型リフレクター10が形成する焦点位置近辺に位置する面を含む構造物である。さらに、網状部材191Aにはマイクロホン20−mを保持するための空孔が複数形成されている。言い換えると、網状の網状部材191Aの網の目の何れかにM個のマイクロホン20−mを埋め込むことができる。
マイクロホン20−nは、パラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置(底)近辺、この例では、支持部材191Bの固定部材上に配置される。
(配置例2)
他のマイクロホンの配置の条件については図13に示す。本配置例では、以下を満たすようにマイクロホン20−pを配置する。
マイクロホン20−mを焦点位置から半径r2以内の領域(図13の斜線部分、球状)内の任意の位置に配置する。例えば、図13の斜線の領域が焦点位置近辺に相当する。
他のマイクロホンの配置の条件については図13に示す。本配置例では、以下を満たすようにマイクロホン20−pを配置する。
マイクロホン20−mを焦点位置から半径r2以内の領域(図13の斜線部分、球状)内の任意の位置に配置する。例えば、図13の斜線の領域が焦点位置近辺に相当する。
マイクロホン20−nをパラボラ型リフレクター10の内側かつy=H1とy=H3の平面に挟まれた領域(パラボラ型リフレクター10の形成する三次元空間)で、かつ焦点の位置から距離D以上離れた領域(図13の梨地部分)内に任意に配置する。ただし、r2はパラボラ型リフレクター10の半径r1の1/4程度のサイズとする。距離Dはパラボラの直径の半分程度とする。
図14では、支持部191は、パラボラ型リフレクター10とマイクロホン20−mとを結合する棒状の構造物である。
支持部191の形状は、上述のものに限られず、パラボラ型リフレクター10に到来する波を遮りにくい形状であって、マイクロホン20−mを支持できる形状であればどのようなものであってもよい。マイクロホン20−mは、支持部191に支持され、焦点位置近辺に配置される。
<AD変換部120>
AD変換部120が、P個のマイクロホン20−pで収音されたP個のアナログ信号をディジタル信号x→(t)=[x1(t),…,xP(t)]Tへ変換し、(s2)、周波数領域変換部130に出力する。tは離散時間のインデックスを表す。
AD変換部120が、P個のマイクロホン20−pで収音されたP個のアナログ信号をディジタル信号x→(t)=[x1(t),…,xP(t)]Tへ変換し、(s2)、周波数領域変換部130に出力する。tは離散時間のインデックスを表す。
<周波数領域変換部130>
周波数領域変換部130は、まず、AD変換部120が出力したディジタル信号x→(t)=[x1(t),…,xP(t)]Tを入力とし、チャネルごとにQサンプルをバッファに貯めてフレーム単位のディジタル信号x→(τ)=[x→ 1(τ),…,x→ P(τ)]Tを生成する。τはフレーム番号のインデックスである。x→ p(τ)=[xp((τ-1)Q+1),…,xp(τQ)](1≦p≦P)である。Qはサンプリング周波数にもよるが、48kHzサンプリングの場合には2048点あたりが妥当である。次に、周波数領域変換部130は、各フレームのディジタル信号x→(τ)を周波数領域の信号X→(ω,τ)=[X1(ω,τ),…,XP(ω,τ)]Tに変換し(s3)、出力する。ωは離散周波数のインデックスである。時間領域信号を周波数領域信号に変換する方法の一つに高速離散フーリエ変換があるが、これに限定されず、周波数領域信号に変換する他の方法を用いてもよい。周波数領域信号X→(ω,τ)は、各周波数ω、フレームτごとに出力される。
周波数領域変換部130は、まず、AD変換部120が出力したディジタル信号x→(t)=[x1(t),…,xP(t)]Tを入力とし、チャネルごとにQサンプルをバッファに貯めてフレーム単位のディジタル信号x→(τ)=[x→ 1(τ),…,x→ P(τ)]Tを生成する。τはフレーム番号のインデックスである。x→ p(τ)=[xp((τ-1)Q+1),…,xp(τQ)](1≦p≦P)である。Qはサンプリング周波数にもよるが、48kHzサンプリングの場合には2048点あたりが妥当である。次に、周波数領域変換部130は、各フレームのディジタル信号x→(τ)を周波数領域の信号X→(ω,τ)=[X1(ω,τ),…,XP(ω,τ)]Tに変換し(s3)、出力する。ωは離散周波数のインデックスである。時間領域信号を周波数領域信号に変換する方法の一つに高速離散フーリエ変換があるが、これに限定されず、周波数領域信号に変換する他の方法を用いてもよい。周波数領域信号X→(ω,τ)は、各周波数ω、フレームτごとに出力される。
<伝達特性記憶部140>
伝達特性記憶部140は、予め収音装置100を使って測定された伝達特性A→(ω)=[a→(ω),b→ 1(ω),…,b→ K(ω)]を記憶しておく。a→(ω)=[a1(ω),…,aP(ω)]Tを、ターゲット音とP本のマイクロホンとの間の周波数ωでの伝達特性、換言すれば、a→(ω)=[a1(ω),…,aP(ω)]Tは、マイクロホンアレイに含まれる各マイクロホンへのターゲット音の周波数ωでの伝達特性とする。k=1,2,…,Kであり、Kは雑音の個数であり、bk →(ω)=[bk1(ω),…,bkP(ω)]Tを、雑音kとP本のマイクロホンとの間の周波数ωでの伝達特性、換言すれば、bk →(ω)=[bk1(ω),…,bkP(ω)]Tは、マイクロホンアレイに含まれる各マイクロホンへの雑音kの周波数ωでの伝達特性とする。なお、伝達特性A→(ω)は、事前測定によらず、理論式やシミュレーションにより事前に用意してもよい。
伝達特性記憶部140は、予め収音装置100を使って測定された伝達特性A→(ω)=[a→(ω),b→ 1(ω),…,b→ K(ω)]を記憶しておく。a→(ω)=[a1(ω),…,aP(ω)]Tを、ターゲット音とP本のマイクロホンとの間の周波数ωでの伝達特性、換言すれば、a→(ω)=[a1(ω),…,aP(ω)]Tは、マイクロホンアレイに含まれる各マイクロホンへのターゲット音の周波数ωでの伝達特性とする。k=1,2,…,Kであり、Kは雑音の個数であり、bk →(ω)=[bk1(ω),…,bkP(ω)]Tを、雑音kとP本のマイクロホンとの間の周波数ωでの伝達特性、換言すれば、bk →(ω)=[bk1(ω),…,bkP(ω)]Tは、マイクロホンアレイに含まれる各マイクロホンへの雑音kの周波数ωでの伝達特性とする。なお、伝達特性A→(ω)は、事前測定によらず、理論式やシミュレーションにより事前に用意してもよい。
<フィルタ計算部150>
フィルタ計算部150は、伝達特性記憶部140から伝達特性A→(ω)を取り出し、フィルタW→(ω)を計算し、フィルタリング部160に出力する。例えば、特定の位置または方向からの音響信号を抑圧する信号処理に用いるフィルタW→(ω)を計算する。
フィルタ計算部150は、伝達特性記憶部140から伝達特性A→(ω)を取り出し、フィルタW→(ω)を計算し、フィルタリング部160に出力する。例えば、特定の位置または方向からの音響信号を抑圧する信号処理に用いるフィルタW→(ω)を計算する。
例えば、従来技術と同様の方法により、フィルタW→(ω)を設計することができる。例えば、参考文献2に記載されている<1>SN比最大化規準によるフィルタ設計法、<2>パワーインバージョン(Power Inversion)に基づくフィルタ設計法、<3>一つ以上の死角(雑音のゲインが抑圧される方向)を拘束条件に持つ最小分散無歪応答法によるフィルタ設計法、<4>遅延合成(Delay-and-Sum Beam Forming)法によるフィルタ設計法、<5>最尤法によるフィルタ設計法、<6>AMNOR(Adaptive Microphone-array for noise reduction)法等によって、フィルタW→(ω)を設計することができる。
[参考文献2]国際公開第WO2012/086834号パンフレット
[参考文献2]国際公開第WO2012/086834号パンフレット
ただし、fS(ω),fk(ω)はそれぞれターゲット音、雑音k(k=1,2,…,K)に関する周波数ωでの通過特性を表す。例えば、伝達特性a→(ω)が方向θに依存する伝達特性a→(ω,θ)として事前に用意できる場合には、伝達特性a→(ω,θ)を用いて、フィルタW→(ω,θ)を計算し、フィルタリング部160において、特定の方向θsの信号処理が行える。また、伝達特性a→(ω)が方向θ、距離Dに依存する伝達特性a→(ω,θ,D)として事前に用意できる場合には、伝達特性a→(ω,θ,D)を用いて、フィルタW→(ω,θ,D)を計算し、フィルタリング部160において、特定の位置(特定の方向θsと距離DHにより特定される位置)の信号処理が行える。
このような構成とすることで、パラボラ型リフレクター10の直径よりも波長が短い周波数に対しては、主にM個のマイクロホン20−mを用いてビームフォーミングを行い、パラボラ型リフレクター10の直径の直径以上の波長となる周波数に対しては、M個のマイクロホン20−mと、それ以外のマイクロホン20−nとを用いてビームフォーミングを行うように、ビームフォーミングのフィルタが設計され、以下のフィルタリング部160では、上述のビームフォーミングが実行される。
<フィルタリング部160>
フィルタリング部160は、予めフィルタ計算部150からフィルタW→(ω)を受け取っておき、周波数領域信号X→(ω,τ)を受け取り、フレームτごとに、各周波数ω∈Ωについて、周波数領域信号X→(ω,τ)=[X1(ω,τ),…,XP(ω,τ)]Tに、次式のようにフィルタW→(ω)を適用して(s4)、出力信号Y(ω,τ)を出力する。
フィルタリング部160は、予めフィルタ計算部150からフィルタW→(ω)を受け取っておき、周波数領域信号X→(ω,τ)を受け取り、フレームτごとに、各周波数ω∈Ωについて、周波数領域信号X→(ω,τ)=[X1(ω,τ),…,XP(ω,τ)]Tに、次式のようにフィルタW→(ω)を適用して(s4)、出力信号Y(ω,τ)を出力する。
例えば、フィルタリング部160はマイクロホン20−pによる収音信号とマイクロホン20−p’による収音信号とに基づき、空間上の少なくとも複数の位置または方向から発せられた音響信号の収音特性を異ならせるものであればよい。「収音特性を異ならせる」とは、例えば、特定の位置で発せられた音響信号を局所収音して他の位置で発せられた音響信号を極力収音しないようにしたり、逆に特定の位置で発せられた音響信号を抑圧(消音)して他の位置で発せられた音響信号のみを収音したりすることを意味する。
<時間領域変換部170>
時間領域変換部170は、第τフレームの各周波数ω∈Ωの出力信号Y(ω,τ)を時間領域に変換して(s5)、第τフレームのフレーム単位時間領域信号y(τ)を得て、さらに、得られたフレーム単位時間領域信号y(τ)をフレーム番号のインデックスの順番に連結して時間領域信号y(t)を出力する。周波数領域信号を時間領域信号に変換する方法は、s3の処理で用いた変換方法に対応する逆変換であり、例えば高速離散逆フーリエ変換である。
時間領域変換部170は、第τフレームの各周波数ω∈Ωの出力信号Y(ω,τ)を時間領域に変換して(s5)、第τフレームのフレーム単位時間領域信号y(τ)を得て、さらに、得られたフレーム単位時間領域信号y(τ)をフレーム番号のインデックスの順番に連結して時間領域信号y(t)を出力する。周波数領域信号を時間領域信号に変換する方法は、s3の処理で用いた変換方法に対応する逆変換であり、例えば高速離散逆フーリエ変換である。
<効果>
このような構成により、特許文献1におけるチャネル間相関を低減する考えを継承し、さらに、インパルス応答長を短くし、受音時のSN比を高めることができる。そのため、様々な方向から到来する波(さらには、波により示される情報)を安定的に、同時に、高空間分解能で解析することが可能になる。例えば、従来よりも不要音方向の成分を抑え、低域を含めた目的方向音をより強調する集音が可能になる。特に、パラボラ型リフレクターの直径よりも音波の波長が長い周波数域での指向性を従来よりも鋭くすることができる。なお、本実施形態では、予めフィルタW→(ω)を計算しているが、収音装置100の計算処理能力などに応じて、音源位置、マイクロホンの配置が定まってからフィルタ計算部150が周波数ごとのフィルタW→(ω)を計算する構成としてもよい。
このような構成により、特許文献1におけるチャネル間相関を低減する考えを継承し、さらに、インパルス応答長を短くし、受音時のSN比を高めることができる。そのため、様々な方向から到来する波(さらには、波により示される情報)を安定的に、同時に、高空間分解能で解析することが可能になる。例えば、従来よりも不要音方向の成分を抑え、低域を含めた目的方向音をより強調する集音が可能になる。特に、パラボラ型リフレクターの直径よりも音波の波長が長い周波数域での指向性を従来よりも鋭くすることができる。なお、本実施形態では、予めフィルタW→(ω)を計算しているが、収音装置100の計算処理能力などに応じて、音源位置、マイクロホンの配置が定まってからフィルタ計算部150が周波数ごとのフィルタW→(ω)を計算する構成としてもよい。
<変形例>
本実施形態では、マイクロホンの指向性について言及していないが、様々な指向性を持つマイクロホンを混ぜて使用することで、伝達特性間の相関を小さくし、無相関化を図ってもよい。例えば、マイクロホンの指向性に限定はないが、無指向性、単一指向性、双指向性、ハイパーカーディオイドといった様々な指向性を持つマイクロホンを混ぜて使用する。仮に、同じ位置に指向性の異なる電気音響変換器を配置した場合、同じ制御点との間の伝達特性は異なるものとなる。例えば、同じ位置に無指向性のマイクロホンと単一指向性のマイクロホンとを配置した場合、制御点と無指向性のマイクロホンとの間の伝達特性と、制御点と単一指向性のマイクロホンとの間の伝達特性とは、異なるものとなる。よって、この条件により、指向性の違いによる伝達特性の変化を利用して、さらに、伝達特性間の相関を小さくし、無相関化を図る。言い換えると、複数のマイクロホンのうちの少なくとも1つのマイクロホンの指向特性と、他の1つのマイクロホンの指向特性とが異なるものとすることで、無相関化を図る。
本実施形態では、マイクロホンの指向性について言及していないが、様々な指向性を持つマイクロホンを混ぜて使用することで、伝達特性間の相関を小さくし、無相関化を図ってもよい。例えば、マイクロホンの指向性に限定はないが、無指向性、単一指向性、双指向性、ハイパーカーディオイドといった様々な指向性を持つマイクロホンを混ぜて使用する。仮に、同じ位置に指向性の異なる電気音響変換器を配置した場合、同じ制御点との間の伝達特性は異なるものとなる。例えば、同じ位置に無指向性のマイクロホンと単一指向性のマイクロホンとを配置した場合、制御点と無指向性のマイクロホンとの間の伝達特性と、制御点と単一指向性のマイクロホンとの間の伝達特性とは、異なるものとなる。よって、この条件により、指向性の違いによる伝達特性の変化を利用して、さらに、伝達特性間の相関を小さくし、無相関化を図る。言い換えると、複数のマイクロホンのうちの少なくとも1つのマイクロホンの指向特性と、他の1つのマイクロホンの指向特性とが異なるものとすることで、無相関化を図る。
本実施形態では、収音装置100の含むP個のマイクロホン20−pのうち、M個のマイクロホン20−mはパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺に配置され、N個のマイクロホン20−nはパラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺に配置されている。つまり、P=M+Nである。しかし、マイクホロンを焦点位置近辺や焦点側の表面の中心位置近辺以外の部分に配置してもよい。つまり、P>M+Nとしてもよい。
本実施形態では、フィルタリング部160において、各周波数ω∈Ωについて、周波数領域信号X→(ω,τ)=[X1(ω,τ),…,XP(ω,τ)]Tに、フィルタW→(ω)を適用して、出力信号Y(ω,τ)を出力しているが、パラボラ型リフレクター10の直径よりも波長が短い周波数に対しては、M個のマイクロホン20−mのみを用いてビームフォーミングを行う構成としてもよい。例えば、パラボラ型リフレクター10の直径に対応する周波数のインデックスをThとし、ω<Thでは第一実施形態の方法で周波数領域信号X→(ω,τ)=[X1(ω,τ),…,XP(ω,τ)]Tを求めるが、ω≧Thでは、M個のマイクロホン20−mで収音されたM個のアナログ信号に対応する周波数領域信号X→ m(ω,τ)=[X1_m(ω,τ),…,XM_m(ω,τ)]Tのみに、フィルタW→ m(ω)を適用して、出力信号Ym(ω,τ)=[Y1_m(ω,τ),…,YM_m(ω,τ)]Tを出力する。フィルタ計算部150はω≧ThではフィルタW→ m(ω)のみを計算する。伝達特性記憶部140は、ω≧ThではフィルタW→ m(ω)を計算するために必要な伝達特性のみを記憶しておけばよい。例えば、ω≧Thではターゲット音とM本のマイクロホンとの間の周波数ωでの伝達特性a→(ω)=[a1_m(ω),…,aM_m(ω)]Tと、雑音kとM個のマイクロホンとの間の周波数ωでの伝達特性bk →(ω)=[bk_m(ω),…,bkM_m(ω)]Tとを記憶しておく。このような構成により、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
本実施形態では、周波数領域でフィルタリング処理を行っているが、時間領域でフィルタリング処理を行ってもよい。例えば、時間領域のP個のディジタル信号x1(t),…,xP(t)に、チャネルp毎に時間領域で時間領域フィルタ係数を畳み込み、全てのチャネルの畳み込み結果を加算する構成としてもよい。この場合、周波数領域変換部130、時間領域変換170を設けなくともよい。また、伝達特性記憶部140は予め収音装置100を使って測定された時間領域の伝達特性を記憶しておき、フィルタ計算部150は時間領域のフィルタを計算する。
<第二実施形態>
第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
本実施形態に係る収音装置も、P個のマイクロホン20−p及びパラボラ型リフレクター10とを含む。ただし、なお、P個のマイクロホン20−pのうち、M個のマイクロホン20−mはパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺に配置され、L個のマイクロホン20−lはパラボラ型リフレクター10の中心軸の正面方向の離れた位置に配置される。ただし、Pは2以上の整数の何れかであり、M,Lはそれぞれ1以上の整数の何れかであり、P=M+Lであり、p=1,2,…,Pであり、m=1m,2m,…,Mm、l=1l,2l,…,Ll、下付き添え字l(エル)は正面方向の離れた位置に配置されたマイクロホンであることを示すインデックスである。このような構成により、第一実施形態と同様に低音域も含めた指向性集音を可能にする。配置の外観の例を図15に示す。焦点位置よりも前面側にマイクロホン20−lを置くことによっても、第一実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
ただし、本実施形態の場合、焦点位置と焦点位置よりも前面に置いたマイクロホンの間の距離に制約はないので、任意の距離に置けるというメリットがある。例えば、効果を得たい周波数の波長の0.25〜1倍の距離となるようにL個のマイクロホン20−lを配置する。特に、0.5倍の距離となるようにL個のマイクロホン20−lを配置するとよい。すなわち、リフレクターの効果の低くなる周波数と波長の一致するパラボラ型リフレクター10の直径の半分程度離れた位置にマイクロホン20−lを設置するとよい。
<変形例>
本実施形態では、L個のマイクロホン20−lはパラボラ型リフレクター10の中心軸の正面方向の離れた位置に配置されているが、必ずしも「中心軸上」に配置される必要はない。L個のマイクロホン20−lは、パラボラ型リフレクター10の焦点位置よりも前面側に配置され、パラボラ型リフレクター10の焦点位置との距離がパラボラ型リフレクター10の直径の0.25〜1倍になるパラボラ型リフレクター10の「中心軸上の点の近辺」に配置されればよい。特に、焦点位置との距離が直径の0.5倍になる「中心軸上の点の近辺」に配置するとよい。なお、低域の位相差を精度良く推定することができる程度に、M個のマイクロホン20−mとL個のマイクロホン20−lとが離れていればよく、上述の「中心軸上の点の近辺」における「近辺」とは、このような効果を得ることができる範囲を意味する。中心軸上の点をOとすると、例えば、「中心軸上の点の近辺」は、対象とする音の周波数帯域の中心周波数の半波長以下の半径の、点Oを中心とする球内の領域である。その場合、「中心軸上の点の近辺」は、最大で周波数帯域の中心周波数の半波長の半径をもつ、点Oを中心とする球内の領域であり、最小で点O(半径がゼロのとき)である。なお、「中心軸上の点の近辺」との表現は中心軸上の点自体を含み、マイクロホン20−lを中心軸上の点に配置してもよい。
本実施形態では、L個のマイクロホン20−lはパラボラ型リフレクター10の中心軸の正面方向の離れた位置に配置されているが、必ずしも「中心軸上」に配置される必要はない。L個のマイクロホン20−lは、パラボラ型リフレクター10の焦点位置よりも前面側に配置され、パラボラ型リフレクター10の焦点位置との距離がパラボラ型リフレクター10の直径の0.25〜1倍になるパラボラ型リフレクター10の「中心軸上の点の近辺」に配置されればよい。特に、焦点位置との距離が直径の0.5倍になる「中心軸上の点の近辺」に配置するとよい。なお、低域の位相差を精度良く推定することができる程度に、M個のマイクロホン20−mとL個のマイクロホン20−lとが離れていればよく、上述の「中心軸上の点の近辺」における「近辺」とは、このような効果を得ることができる範囲を意味する。中心軸上の点をOとすると、例えば、「中心軸上の点の近辺」は、対象とする音の周波数帯域の中心周波数の半波長以下の半径の、点Oを中心とする球内の領域である。その場合、「中心軸上の点の近辺」は、最大で周波数帯域の中心周波数の半波長の半径をもつ、点Oを中心とする球内の領域であり、最小で点O(半径がゼロのとき)である。なお、「中心軸上の点の近辺」との表現は中心軸上の点自体を含み、マイクロホン20−lを中心軸上の点に配置してもよい。
<第三実施形態>
第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
本実施形態に係る収音装置も、P個のマイクロホン20−p及びパラボラ型リフレクター10とを含む。ただし、なお、P個のマイクロホン20−pのうち、P個のマイクロホン20−pのうち、M個のマイクロホン20−mはパラボラ型リフレクター10の焦点位置近辺に配置され、N個のマイクロホン20−nはパラボラ型リフレクター10の焦点側の表面の中心位置近辺に配置され、L個のマイクロホン20−lはパラボラ型リフレクター10の中心軸の正面方向の離れた位置に配置される。ただし、Pは3以上の整数の何れかであり、M,N,Lはそれぞれ1以上の整数の何れかであり、P=M+N+Lである。各マイクロホンの配置に関しては第一実施形態、第二実施形態、それらの変形例で説明した通りである。
このような構成により、低音域も含めた指向性集音を可能にする。配置の外観の例を図16に示す。パラボラ型リフレクター10の底の部分と焦点位置よりも前面側の両方にマイクロホンを置くことによって、第一実施形態及び第二実施形態よりも高い効果を得ることが可能である。第一実施形態及び第二実施形態と同様に、焦点位置とパラボラの底の部分のマイクロホン間の距離、および焦点位置と焦点よりも前面に設置したマイクロホン間の距離はパラボラ型リフレクター10の直径の0.25〜1倍程度であり、特に、半分程度が望ましい。
<その他の変形例>
本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
<プログラム及び記録媒体>
また、上記の実施形態及び変形例で説明した各装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現してもよい。その場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
また、上記の実施形態及び変形例で説明した各装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現してもよい。その場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させてもよい。
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶部に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶部に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実施形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
また、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、各装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
Claims (2)
- 収音装置を構成する回転放物面が小さい場合でも、前記回転放物面の直径よりも波長が長い信号を精度よく強調するための収音装置であって、
回転放物面を有する反射部と、
Pを2以上の整数の何れかとし、P個のマイクロホンとを含み、
M,Nをそれぞれ1以上の整数の何れかとし、P≧M+Nとし、M個のマイクロホンが前記回転放物面の焦点位置近辺に配置され、N個のマイクロホンが前記回転放物面の焦点側の表面の中心位置近辺に配置され、
前記回転放物面の端部が形成する円の直径が、前記回転放物面の焦点位置と前記回転放物面の表面の中心位置との距離の略2倍である、
収音装置。 - 請求項1の収音装置であって、
前記Mを2以上の整数の何れかとし、
あるマイクロホンによる収音信号と他のマイクロホンによる収音信号とに基づき、空間上の少なくとも複数の位置または方向から発せられた音響信号の収音特性を異ならせるフィルタリング部を含む、
収音装置。
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