JP2013135373A - ズームマイク装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ズームマイク装置は複数個のマイクロホンと、音を反射可能な素材により作成された反射器とにより構成される。反射器は第一の反射部と第二の反射部とを有する。第一の反射部は開口部を有し、開口部以外は複数個のマイクロホンが配置された三次元空間を囲む構造であり、かつ、開口部から入射した音が複数回反射してマイクロホンに達し得る構造である。第二の反射部は、第一の反射部の開口部に接する第一の開口部と、ズームマイク装置外の空間に接する第二の開口部とを有し、収音対象としない空間で発せられた音が第一の反射部内部に到達するのを防ぐ構造である。
【選択図】図9
Description
本実施形態では反射器をマイクロホンの近傍に設置することで、拡散状態に近い観測信号を生成し、これに基づき拡散センシングを実装し、狭指向音声強調技術を実現している。なお、拡散センシングとは”拡散状態にある信号を観測することで、多チャネルのセンサーを効果的に利用した空間制御を可能にすること”である。以下、本実施形態の原理について説明する。
異なる位置にあるN個の音源から到来する音をM本のマイクロホンが捉えるものとする。但し、Mは1より大きい整数であり、NはMより大きい整数である。つまり、1<M<Nである。mをマイクロホンのインデックスとし、m=1,…,Mであり、mに関して「マイクロホンのインデックス」を単に「マイクロホン」ともいう。nを音源のインデックスとし、n=1,…,Nであり、nに関して「音源のインデックス」を単に「音源」ともいう。マイクロホンmの位置をp→ m=[pmx,pmy,pmz]、音源nの位置をq→ n=[qnx,qny,qnz]とする。音源nとM個のマイクロホンm間の周波数ωにおける音響伝達特性をa→(ω,q→ n)=[a1(ω,p→ 1,q→ n),…,aM(ω,p→ M,q→ n)]Tと定義し、N個の音源nとM個のマイクロホンm間の周波数ωにおける音響伝達特性行列をA→(ω)=[a→(ω,q→ 1),…,a→(ω,q→ N)]と定義する。但し、ωは離散周波数のインデックス(周波数fと角周波数ωとの間にはω=2πfの関係があるから、離散周波数のインデックスωをこの角周波数ωと同一視してもかまわない。ωに関して「離散周波数のインデックス」を単に「周波数」ともいう)、Tは転置を表す。tを時刻(もしくはある時刻に対応するフレーム番号)のインデックスとし、tに関して「時刻のインデックス」を単に「時刻」ともいう。時刻t、周波数ωにおけるMチャネルの観測信号X→(ω,t)=[X1(ω,t),…,XM(ω,t)]は、音響伝達特性行列A→(ω)=[a→(ω,q→ 1),…,a→(ω,q→ N)]とN個の音源信号S→(ω,t)=[S1(ω,t),…,SN(ω,t)]Tを用いると以下の式で表される。
(参考文献1)Simon Haykin著、鈴木博他訳、「適応フィルタ理論」、初版、株式会社科学技術出版、2001.pp.66-73,248-255
マイクロホンアレーを用いたビームフォーミングでは、マイクロホン間に生じる情報の差(時間差、振幅差など)を利用して指向制御してきた。よって、マイクロホン間の情報に差をつけること、換言すると、チャネル間の相互相関を小さくすることは重要なことである。p→ mとp→ m+Δp→ mの位置にある二本のマイクロホンのチャネル間の相互相関は以下の式で計算される。
(参考文献2)唐沢好男、「ディジタル移動通信の電波伝搬基礎」、コロナ社、2003年、p.65-67
空間相関行列R→(ω)の構造について説明する。まず空間相関行列R→(ω)の構造を調査するために、固有値分解すると以下の式で表すことができる。
拡散信号を観測したときの式(4)の出力信号のパワーを計算する。式(6)のフィルタと式(12)の固有値、固有ベクトルを用いて、出力信号のパワーを書き直すと、以下の式になる(非特許文献1参照)。
第一実施形態に係るズームマイク装置1の機能構成及び処理フローをそれぞれ図7及び図8に示す。なお、観測信号を拡散信号とするためのハードウェア構成については後述する。ズームマイク装置1はAD変換部210、フレーム生成部220、周波数領域変換部230、フィルタ適用部240、時間領域変換部250、フィルタ設計部260、記憶部290を含む。
予め、フィルタ設計部260が音声強調の対象となりえる測定位置ごとに、周波数ごとのフィルタW→(ω,q→ i)を計算しておく。音声強調の対象となりえる測定位置の総数をI(Iは1以上の予め定められた整数であり、I≦Pを満たす)とすると、W→(ω,q→ 1),…,W→(ω,q→ i),…,W→(ω,q→ I)(1≦i≦I,ω∈Ω;iは整数、Ωは周波数ωの集合)を事前に計算しておくのである。このためには、伝達特性a→(ω,q→ i)=[a1(ω,q→ i),…,aM(ω,q→ i)]T(1≦i≦I,ω∈Ω)を利用に先立ち求める必要があるが、前述の通り計算機上でシミュレーションして算出してもよいし、実環境下におけて実測することで事前に用意してもよい。シミュレーション法としては種々あるが、以下にその一例を示す。この例では伝達特性a→(ω,q→ i)を、次式のように、1つの直接音のステアリングベクトルh→ i (0)(ω)とD個の反射音のステアリングベクトルh→ i (d)(ω)(但し1≦d≦D)との和で表現する。
M個のマイクロホン200−1,…,200−Mを用いて収音する。Mは2以上の整数である。
AD変換部210が、M個のマイクロホン200−1,…,200−Mで収音されたアナログ信号(収音信号)をディジタル信号x→(k)=[x1(k),…,xM(k)]Tへ変換する。kは離散時間のインデックスを表す。
フレーム生成部220は、AD変換部210が出力したディジタル信号x→(k)=[x1(k),…,xM(k)]Tを入力とし、チャネルごとにPサンプルをバッファに貯めてフレーム単位のディジタル信号x→(t)=[x→ 1(t),…,x→ M(t)]Tを出力する。tはフレーム番号のインデックスである。x→ m(t)=[xm((t−1)P+1),…,xm(tP)](1≦m≦M)である。Pはサンプリング周波数にもよるが、16kHzサンプリングの場合には512点あたりが妥当である。
周波数領域変換部230は、各フレームのディジタル信号x→(t)を周波数領域の信号X→(ω,t)=[X1(ω,t),…,XM(ω,t)]Tに変換して出力する。ωは離散周波数のインデックスである。時間領域信号を周波数領域信号に変換する方法の一つに高速離散フーリエ変換があるが、これに限定されず、周波数領域信号に変換する他の方法を用いてもよい。周波数領域信号X→(ω,t)は、各周波数ω、フレームtごとに出力される。
フィルタ適用部240は、フレームtごとに、各周波数ω∈Ωについて、周波数領域信号X→(ω,t)=[X1(ω,t),…,XM(ω,t)]Tに、強調したい目的位置q→ Sに対応するフィルタW→(ω,q→ S)を適用して、出力信号Y(ω,t,q→ S)を出力する(以下の式(21)参照)。目的位置q→ SのインデックスSは、S∈{1,…,I}であり、フィルタW→(ω,q→ S)は記憶部290に記憶されているので、例えば、ステップS6の処理の都度、フィルタ適用部240は、強調したい目的位置q→ Sに対応するフィルタW→(ω,q→ S)を記憶部290から取得すればよい。目的位置q→ SのインデックスSが集合{1,…,I}に属さない場合、つまり、目的位置q→ Sに対応するフィルタW→(ω,q→ S)がステップS1の処理で計算されていない場合、臨時に目的位置q→ Sに対応するフィルタW→(ω,q→ S)をフィルタ設計部260に計算させてもよいし、あるいは目的位置q→ Sに近い位置q→ S’に対応するフィルタW→(ω,q→ S’)を用いてよい。
時間領域変換部250は、第tフレームの各周波数ω∈Ωの出力信号Y(ω,t,q→ S)を時間領域に変換して第tフレームのフレーム単位時間領域信号y(t)を得て、さらに、得られたフレーム単位時間領域信号y(t)をフレーム番号のインデックスの順番に連結して目的位置q→ Sの音声が強調された時間領域信号y(k)を出力する。周波数領域信号を時間領域信号に変換する方法は、ステップS5の処理で用いた変換方法に対応する逆変換であり、例えば高速離散逆フーリエ変換である。
本実施形態のポイントは各マイクロホンの観測信号が拡散信号となる点である。なお、音源から放射された音がマイクロホンで観測されるまでの間に反射回数が多くなるほど観測信号は拡散的な信号となる。そこでハードウェア構成によって、より拡散的な信号が得られるように音響伝達特性行列A→(ω)を変化させ、Λ→(ω)をよりI→に近づける。以下、各マイクロホンの観測信号を拡散信号とするためのハードウェア構成について説明する。
このような構成により、各マイクロホン11mは全て第一反射部121に対して内向きに配置されるため、その観測信号は拡散信号となる。よって、拡散センシングを効率的に行うハードウェアになりうる。また第二反射部122により処理対象の信号のレベルを従来技術と同等以上の大きさとし、さらに雑音を排除して目的音を高SN比で収音できる。
反射器12の形状は本実施形態に限定されるものではなく、筒状であり、その一端が閉口され、他端が開口されており、中央付近に括れ部分を有していればどのような形状であってもよい。例えば、第一反射部121の形状は、図14(A)〜(H)にそれぞれ示すように十二面体、二十面体、直方体、切頂八面体、多角柱、菱形十二面体、球体及び多角錘とその折返しからなる形状(なお、図14(H)においては本実施形態と同様の八角錐であるが他の多角錘であってももちろんよい)等であってもよく、その何れかの面に開口部121Aを設ければよい。一方、第二反射部122の形状は、図15(A)〜(D)にそれぞれ示すように多角錘型コニカルホーン、円錐型コニカルホーン、多角錘型ハイパブリックホーン、円錐型ハイパブリックホーンであってあってもよく、開口部121Aに対応する第一開口部122Aを有し、第一開口部122Aの断面の長さの最長値Bよりも大きい断面の長さの最長値Cの第二開口部122Bを有していればよい。よって、例えば、図16に示すように第二反射部122の形状はR(≧1)個の括れ部分を備える形状(蛇腹形状)であってもよい。但し何れの括れ部分の断面の長さBr(1≦r≦R)も、第一反射部121における開口部121A以外の断面の長さの最長値A及び第二開口部122Bの断面の長さの最長値Cよりも短い。つまり、Br<AかつBr<Cである。
(参考文献3)菊間信良著、「アダプティブアンテナ技術」、第1版、株式会社オーム社、2003年、pp.35-90
上述したズームマイク装置1の各処理(S1〜S7)は、コンピュータに実行させることもできる。この場合はコンピュータに、目的とする装置(各種実施例で図に示した機能構成をもつ装置)として機能させるためのプログラム、またはその処理手順(各実施例で示したもの)の各過程をコンピュータに実行させるためのプログラムを、CD−ROM、磁気ディスク、半導体記憶装置などの記録媒体から、あるいは通信回線を介してそのコンピュータ内にダウンロードし、そのプログラムを実行させればよい。
狭指向音声強調技術は、画像に譬えて表現すれば、不鮮明な惚けた画像から鮮明な画像を生成することに対応し、音場の情報をより詳細に得ることに役立つ。以下、本発明が有用なサービス例について述べる。
Claims (1)
- 複数個のマイクロホンと、音を反射可能な素材により作成された反射器とにより構成されるズームマイク装置であって、
前記反射器は、
開口部を有し、開口部以外は前記複数個のマイクロホンが配置された三次元空間を囲む構造であり、かつ、前記開口部から入射した音が複数回反射して前記マイクロホンに達し得る構造である第一の反射部と、
前記第一の反射部の前記開口部に接する第一の開口部と、当該ズームマイク装置外の空間に接する第二の開口部とを有し、収音対象としない空間で発せられた音が前記第一の反射部内部に到達するのを防ぐ構造である第二の反射部とを有する、
ズームマイク装置。
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