JP6821757B2 - 光学シート成形装置、光学シート成形方法 - Google Patents
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「光学シート成形装置の概要について」
本実施形態に係る光学シート成形装置は、導光板を成形可能に構成されている。導光板は、例えば、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末のバックライトユニットの構成として用いられている。導光板は、高屈折率を有する透明の樹脂で成形することができる。透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、シクロオレフィン系樹脂(COP)などの樹脂を適用することができる。
また、光学シート12pは、厚さが薄く、かつ、フレキシビリティに優れ、ロール状に巻き取ることが可能なものを指す。
成形ロールユニット10は、主ロール15と、押圧ロール16と、送出ロール17と、を備えている。なお、これら3つのロール15,16,17は、それぞれ、温度調節が可能なロールとして構成されている。3つのロール15,16,17は、それぞれ、予め設定された一定の温度に保たれている。設定温度は、溶融樹脂12m,12sを溶融させない温度で、かつ、固化しつつ柔軟性を維持可能な温度を指す。例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)であれば、約140℃の温度に設定される。
厚肉部成形機構11は、主ロール15及び押圧ロール16の一方、或いは、双方に構成することができる。この場合、主ロール15に厚肉部成形機構11を構成することが好ましい。このため、図面には一例として、主ロール15に構成された厚肉部成形機構11が示されている。厚肉部成形機構11は、主ロール15の周方向に円環状の厚肉部成形溝19を有している。厚肉部成形溝19は、主ロール15の転写面15sに設けられている。
押出ユニット9は、押出機20と、Tダイ21と、を備えている。押出機20とTダイ21とは、接続管22を通して互いに連結されている。押出機20は、シリンダ(図示しない)と、ホッパ24と、を備えている。なお、押出機20、接続管22、そして、Tダイ21は、予め設定された温度に加熱され、その設定温度に保たれている。設定温度は、上記した3つのロール15,16,17の設定温度よりも高い温度になっている。例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)であれば、約260℃の温度に設定される。
Tダイ21は、吐出用スリット18(以下、スリットと言う)を備えている。スリット18は、シート状の溶融樹脂12mを吐出可能に構成されている。スリット18は、互いに平行に対向する2つのスリット面(第1スリット面18a、第2スリット面18b)を有している。ここで、スリット18は、上記した押出方向13に沿った第1及び第2スリット面18a,18bの全長(後述する流路長L(図3参照))に亘る範囲に規定されている。更に、スリット18には、その先端に、吐出口18c(出口開口とも言う)が設けられている。
半製品として、入光部2及び面発光部3を有する導光板1(図7参照)を成形する場合において、スリット18の拡大隙間Hは、以下の計算プロセスによって算出することができる。この場合、入光部2は、厚肉部14bとして成形される。面発光部3は、薄肉部14aとして成形される。入光部2(厚肉部14b)の厚さをT、面発光部3(薄肉部14a)の厚さをtとする。スリット18の基準隙間hは、面発光部3(薄肉部14a)の厚さtに基づいて予め設定される。
単位幅当りの流量Q´=Q/Wとすると、
ΔP=12Q´ηL/s3 …(式2)
Q´=t×V …(式3)
ΔP=12tVηL/s3 …(式4)
拡大隙間部30の圧力損失ΔPは、
ΔP=12TVηL/H3 …(式5)
基準隙間部29の圧力損失ΔPは、
ΔP=12tVηL/h3 …(式6)
ΔPは、上記した双方の隙間部29,30で同じとする。
ΔP/12VηL=t/h3 =T/H3 …(式7)
式7を式8に変換する。これにより、スリット18の拡大隙間Hが算出される。
Q:溶融樹脂の押出量(流量)
η:溶融樹脂の粘度
L:流路長(スリット18の全長)、
W:スリット18の幅
s:平行平板の隙間
V:主ロール15の周速度
t:密度“1”とした場合の面発光部3(薄肉部14a)の厚さ
T:密度“1”とした場合の入光部2(厚肉部14b)の厚さ
ここで、式8に数値を当てはめる。入光部2(厚肉部14b)の厚さTを0.35mm、面発光部3(薄肉部14a)の厚さtを0.2mmとする。スリット18の基準隙間hは、面発光部3(薄肉部14a)の厚さt(=0.2mm)の4倍とする。即ち、スリット18の基準隙間hを0.8mmに設定する。そうすると、式4の計算結果は、以下の値(約1mm)となる。
=0.964mm
≒1mm
「拡大隙間Hの許容範囲」
拡大隙間Hは、上記した計算式(1)〜(8)によって算出した値に一義的に設定されるものではない。拡大隙間Hは、許容範囲が設定されている。許容範囲としては、算出した拡大隙間Hについて、その上限と下限を設定してもよいし、或いは、算出した拡大隙間Hと、スリットの基準隙間hとの差分F1について、その上限と下限を設定してもよい。
例えば、後述する拡大隙間部用ヒータによって拡大隙間部30及びその近傍領域を加熱する場合、差分F1による許容範囲としては、0.2×(H−h)≦F1≦1.0×(H−h)なる関係を満足するように拡大隙間Hを設定すればよい。この場合、加熱温度は、Tダイ21を保温する温度よりも数度から数十度高めに設定する。
「拡大隙間部用ヒータ」
図3〜図4に示すように、Tダイ21は、拡大隙間部用ヒータを備えている。かかるヒータは、拡大隙間部30及びその近傍領域を加熱可能に構成されている。ヒータは、Tダイ21を保温する温度よりも数度から数十度高めに加熱可能に構成されている。かかる構成において、ヒータによって拡大隙間部30及びその近傍領域を加熱する。これにより、その箇所付近を流通する溶融樹脂が加熱される。加熱された溶融樹脂の粘度が下がる。この結果、その箇所付近の溶融樹脂を流れ易くすることができる。なお、ヒータとしては、例えば、差し込み式と位置調整式の2種類のヒータを適用することができる。
上記したリップ隙間調整機構27において、複数のリップ調整ボルト28を等間隔に配置させる。これら複数のリップ調整ボルト28のうち、少なくとも1つのリップ調整ボルト28(押圧部28b)を、拡大隙間部30(窪み部31)の中心に位置付ける。この場合、中心とは、スリット18の幅方向に沿って拡大隙間部30(窪み部31)を2等分した部分を指す。図4には、押圧部28bから第1リップ26aに作用した押圧力が矢印38で示されている。黒塗り矢印38は、拡大隙間部30(窪み部31)の中心に位置付けられたリップ調整ボルト28(押圧部28b)から第1リップ26aに作用した押圧力を示している。
押出機20から溶融樹脂を押し出す。このときの押出圧力によって、溶融樹脂がTダイ21に供給される(図1参照)。Tダイ21に供給された溶融樹脂は、スリット18(基準隙間部29、拡大隙間部30)を通過する。このとき、スリット18からシート状の溶融樹脂12mが吐出される(図2参照)。当該シート状の溶融樹脂12mにおいて、拡大隙間部30に対応する位置の肉厚が他の部分の肉厚よりも厚くなっている(図5参照)。なお、拡大隙間部30は、主ロール15の厚肉部成形溝19の位置に対応している。
本実施形態によれば、半製品としての薄物導光板1の形状輪郭に対応して、拡大隙間部30と、厚肉部成形機構19とを配置構成させる。拡大隙間部30は、スリット18の基準隙間hを一部拡大させて構成可能である。厚肉部成形機構19は、主ロール15の転写面15sのうち、拡大隙間部30に対応する位置を周方向に連続的に窪ませて構成されている。スリット18から吐出した溶融樹脂12mは、拡大隙間部30に対応する位置の肉厚が他の部分の肉厚よりも厚くなっている。そして、かかる溶融樹脂12mが厚肉部成形機構19を経由することで、半製品の厚肉部14b(導光板1の入光部2)の形状輪郭が精度よく成形される。これにより、半製品(薄物導光板1)に用いられる光学シートを、予め設定された形状輪郭に沿って精度よく押出成形することができる。
スリット18(例えば、第1リップ26aの第1スリット面18a)に窪み部(溝)31を有するTダイ21と、窪み部(溝)の無いTダイ21を用意する。換言すると、従来品に係る「リップに溝なし」Tダイ21と、本発明に係る「リップに溝あり」Tダイ21を用意する。そして、双方のTダイ21に共通の試験用装置(即ち、光学シート成形装置8)を用意する。
押出機 :同方向回転2軸混練押出機 スクリュ呼径28mm
Tダイ :幅330mm リップ隙間0.8mm
3つのロール :直径180mm 面長400mm
主ロール :中央に深さ0.15mmの溝
溶融樹脂の押出量(流量) :20kg/h ポリカーボネート原料
最終製品(導光板)の厚さ :厚肉部(入光部)の厚さ0.35mm
薄肉部(面発光部)の厚さ0.2mm
図9には、試験結果が示されている。即ち、「リップに溝なし」Tダイ21を用いた場合に得られる半製品の断面写真と、「リップに溝あり」Tダイ21を用いた場合に得られる半製品の断面写真と、が示されている。双方の断面写真の間には、最適な製品輪郭が示されている。かかる試験結果によれば、製品輪郭の製品化領域において、「リップに溝なし」の半製品では「ひけ」が発生しているのに対して、「リップに溝あり」の半製品には「ひけ」が発生していないことが分かる。この結果、本発明に係る「リップに溝あり」Tダイ21を用いることで、上記した効果を得られることが実証された。
上記した実施形態において、成形ロールユニット10の押圧ロール16は、その外周が弾性変形しない仕様を想定しているが、これに代えて、弾性変形可能な外周を有する押圧ロール16を適用してもよい。図8に示すように、本変形例の押圧ロール16は、外筒42と、内筒43と、温度調節媒体44と、を備えている。外筒42は、内筒43の外側に配置されている。温度調節媒体44は、外筒42と内筒43との間に隙間なく充填されている。外筒42と内筒43は、押圧ロール16の回転軸16rに対して同心円状に設けられている。
10…成形ロールユニット、11…厚肉部成形機構、18…吐出用スリット、
29…基準隙間部、30…拡大隙間部。
Claims (6)
- 入光部と面発光部とを備えた導光板を成形可能に構成され、
前記導光板において、
前記入光部及び前記面発光部の双方の上面は、互いに平行に配置された平坦面として構成され、
双方の前記上面の相互間には、傾斜面が構成され、
前記導光板の下面が、双方の前記上面と平行に対向する連続した平坦面として構成されることにより、前記入光部が厚肉部として成形され、前記面発光部が薄肉部として成形される光学シート成形装置であって、
マニホールドと、前記マニホールドから延出した隙間通路と、前記隙間通路に接続されてシート状の溶融樹脂を吐出可能な吐出用スリット、及び、複数のリップ調整ボルトを有するリップ隙間調整機構が設けられたTダイを有する押出ユニットと、
吐出された前記溶融樹脂を固化させつつ搬送する主ロール及び押圧ロールを有し、前記主ロール及び前記押圧ロールが、それぞれ円筒形状の転写面を有する成形ロールユニットと、を備え、
前記主ロール及び前記押圧ロールの一方は、前記転写面において周方向に沿って連続的に窪ませて設けられ、前記厚肉部を局所的に成形する厚肉部成形溝を1つ有し、
前記厚肉部成形溝は、
前記入光部の厚さと前記面発光部の厚さとの差分として規定される溝深さを有する溝底面と、
前記溝底面から連続する傾斜溝面と、を備え、
前記Tダイは、前記吐出用スリットを構成する互いに平行に対向した第1スリット面及び第2スリット面の一方に、前記厚肉部成形溝に対応して設定される窪み部を1つ備え、
前記窪み部は、窪み底面と、前記窪み底面から連続する傾斜窪み面と、を有し、
前記主ロールの幅方向に対して、2個の前記導光板、又は、1個の前記導光板が成形可能である光学シート成形装置。 - 前記Tダイは、
前記第1スリット面及び前記第2スリット面の一方に前記窪み部を設けることにより前記吐出用スリットに構成される拡大隙間部と、
前記拡大隙間部及びその近傍領域を加熱するヒータと、を備えている請求項1に記載の光学シート成形装置。 - 前記Tダイは、前記ヒータを前記拡大隙間部に対向して位置付ける位置調整機構を備えている請求項2に記載の光学シート成形装置。
- 前記押圧ロールは、弾性変形可能に構成された金属製の外筒を備え、
前記溶融樹脂を前記主ロールの前記転写面に向けて押圧する際に、前記外筒は、前記転写面に沿って弾性変形する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学シート成形装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記光学シート成形装置を用いたシート成形方法であって、
溶融樹脂をシート状に広げた状態で吐出することと、
吐出した前記溶融樹脂を押出方向に沿って押し出すことと、
押出中の前記溶融樹脂に対して、他の部分よりも厚肉化させた1つの厚肉部を前記押出方向に沿って連続的に成形することと、を含み、
前記シート状に広げられた状態で吐出された前記溶融樹脂は、前記厚肉部に対応する位置の肉厚が他の部分の肉厚よりも厚くなっている光学シート成形方法。 - 前記厚肉部を、当該厚肉部に沿って切断することと、
前記厚肉部の反対側に対向して成形される余剰部分を切断することと、を更に含む請求項5に記載の光学シート成形方法。
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