JP2014162186A - 押し出しtダイ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数のTダイを用い前工程のTダイから吐出された樹脂フィルムの膜厚分布や溶融樹脂フィルムの温度を計測し、その結果に基づいて、後工程のTダイの設定条件を調整して、最終製品の膜厚分布を均一にする押し出しTダイ装置を提供する。
【解決手段】、2つのTダイ20a、20bと、膜厚計測手段9aと、温度計測手段9bと、制御手段10と、を備え、膜厚計測手段9aによって、前記第一の樹脂フィルム14の幅方向にわたって複数箇所の膜厚値を計測し、温度計測手段9bによって、第一の溶融樹脂フィルムR2の幅方向にわたって複数箇所の温度値を計測し、膜厚値または温度値のいずれかまたは両方の結果に基づいてTダイ20bのリップ長または加熱ヒータの温度を調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂フィルムを製造することを目的とした押し出しTダイ装置において、Tダイ吐出後の溶融樹脂膜厚を制御可能とする装置である。
従来、スロットダイを用いて樹脂フィルムを生成する際に、成形された樹脂フィルムに膜厚分布不良が生じ、品質不良や外観不良などの問題が起きている。膜厚分布不良の解消の方法としては、ダイ形状の改造、ディッケル形状の改造、ディッケル配置の適正化などいくつもの方法があり、併用されている。
そのような方法の中で、Tダイ吐出後の膜厚分布若しくは温度分布を計測し、測定値を基にTダイの条件を調整する方法がある。その一例として、特許文献1では、生産された成形品の厚さを計測してフィードバックし、前記生産ラインによる成形品の厚さを制御するためのシステムが提供されている。特許文献1記載のTダイは、自動厚さ調整ダイであり、スリット状の開口におけるスリットの長手方向に関する各部分におけるリップクリアランスを、制御装置からの指令によって、自動的に調整することが出来るようになっている。フィルムの成形運転が開始されると、成形運転中は、前記生産ラインの途中に配設されフィルムの厚さを計測する膜厚計測器が現在のフィルムの厚さを計測する。なお、前記膜厚計測器は、フィルムの幅方向に関し、各所の厚さを計測することが出来るものである。これにより、フィルムの幅方向に関する厚さの変化も計測することが出来る。そして、制御装置は、前記膜厚計の出力信号を受信し、計測されたフィルムの幅方向に関する厚さの変化量が目標値の誤差範囲内に収まっているか否か、すなわち、フィルムの厚さが幅方向に関して均一であり、フィルムの厚さ精度が目標精度に到達しているか否かを判断する。そして、目標精度に到達している場合、フィルムの厚さの計測が繰り返し行われる。
また、フィルムの厚さ精度が目標精度に到達していない場合、制御装置は、計測されたフィルムの厚さに基づき、フィルムの厚さを均一にするためのTダイにおけるノズルのリップクリアランスの値を演算する。この場合、スリット状の開口におけるスリットの長手方向に関する各所におけるリップクリアランスの値を、それぞれ、演算する。そして、制御装置は、演算された値となるようにTダイにおけるノズルのリップクリアランスを制御する。そして、目標精度に到達している場合、フィルムの厚さの計測が繰り返し行われる。
特許文献2では、リップクリアランスと成形品の厚さとの関係を学習し、そのデータに基づきリップクリアランスを制御するようにして、ダイリップから押し出された樹脂の温度や吐出量が定常状態になるまでの期間であっても、所望の断面形状を有する成形品を容易に成形することができるようにしている。
成型品になる前の樹脂フィルムの膜厚データを計測し、そのデータに基づきダイリップクリアランスを制御している例としては、特許文献3がある。冷却ロールから巻取り装置までの間に膜厚計測装置を一つ以上設けて、平均膜厚を制御装置にフィードバックすることで、ダイリップクリアランスを制御している。
しかしながら、いずれの方法であっても、膜厚計測を行い、制御装置にフィードバックし、Tダイの調整を終わるまでは樹脂フィルムの膜厚は不安定なまま流れ、調整が終わる時間までに生成された樹脂フィルムは不良として取り除かなくてはならないため、それに使われた材料が無駄になる。
近年、多品種少量での生産が多くなるにつれ、樹脂フィルムの初期膜厚分布を調整する際に取り除かなくてはならない量をいかに少なくして材料の無駄を少なくすることが重要になっている。そのため、膜厚分布を調整している間に生成されている樹脂フィルムも取り除かなくても使えるように出来る方法が望まれている。
さらに特許文献3の技術では、フィードバックに使用するのが平均膜厚であるため、ダイ幅方向フィルム膜厚分布の制御は出来ない。
特開平6−238737号公報 特開2005−40984号公報 特開2008−207348号公報
本発明は前記の事情を鑑みたものであり、複数のTダイを用いて、樹脂フィルムを生産する工程において、前工程のTダイから吐出された樹脂フィルムの膜厚分布や前工程のTダイから吐出された直後の溶融樹脂フィルムの温度を計測し、その結果に基づいて、後工程のTダイの設定条件を調整することによって、最終製品の膜厚分布が短時間で許容範囲内に収められる押し出しTダイ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、
溶融樹脂をフィルム状に押し出した後に冷却ローラーで冷却して樹脂フィルムを製造する押し出しTダイ装置であって、
2つのTダイと、膜厚計測手段と、制御手段とを備え、
2つのTダイは、第一のTダイと第二のTダイからなり、それぞれが上部に備えられた供給口から供給された溶融樹脂を、スリット形状を有するリップからフィルム状(以下、フィルム状に押し出された溶融樹脂を溶融樹脂フィルムと称す)に押し出すもので、第一のTダイで第一の溶融樹脂フィルムを押し出し、その後冷却して第一の樹脂フィルムとし、第一の樹脂フィルムに第二のTダイで押し出した第二の溶融樹脂フィルムを貼り合わせ、その後冷却して第二の樹脂フィルムとするもので、
膜厚計測手段は、第一のTダイと第二のTダイとの間に設けられ、前記第一のTダイのリップから押し出された後、冷却された第一の樹脂フィルムの幅方向にわたって複数箇所の膜厚を計測するもので、
制御手段は、前記計測された第一の樹脂フィルム膜厚値を用いて第二のTダイの全幅にわたってリップの開口度を制御する膜厚制御手段を備えており、
この制御手段により、第二の樹脂フィルムの膜厚を幅方向に均一にすることを特徴とする押し出しTダイ装置である。
本発明の請求項2に係る発明は、
第一の樹脂フィルムの幅方向の膜厚値分布が予め前記膜厚制御手段に入力されており、前記膜厚計測手段によって計測された膜厚値と前記膜厚値分布の差が、予め設定された閾値を超えた場合に膜厚制御が行われることを特徴とする請求項1に記載の押し出しTダイ装置である。
本発明の請求項3に係る発明は、
溶融樹脂をフィルム状に押し出した後に冷却ローラーで冷却して樹脂フィルムを製造す
る押し出しTダイ装置であって、
2つのTダイと、温度計測手段と、制御手段とを備え、
2つのTダイは、第一のTダイと第二のTダイからなり、それぞれが上部に備えられた供給口から供給された溶融樹脂を、スリット形状を有するリップからフィルム状(以下、フィルム状に押し出された溶融樹脂を溶融樹脂フィルムと称す)に押し出すもので、第一のTダイで第一の溶融樹脂フィルムを押し出し、その後冷却して第一の樹脂フィルムとし、第一の樹脂フィルムに第二のTダイで押し出した第二の溶融樹脂フィルムを貼り合わせ、その後冷却して第二の樹脂フィルムとするもので、
温度計測手段は、第一のTダイから押し出された第一の溶融樹脂フィルムの幅方向にわたって複数箇所の温度値を計測するもので、
制御手段は、前記計測された第一の溶融樹脂フィルム温度値を用いて第二のTダイの全幅にわたってその側面に複数個設けられた加熱ヒーターの温度を制御する温度制御手段を備えており、
この制御手段により、第二の樹脂フィルムの膜厚を幅方向に均一にすることを特徴とする押し出しTダイ装置である。
本発明の請求項4に係る発明は、
第一の樹脂フィルムの幅方向の温度値分布が予め前記温度制御手段に入力されており、前記温度計測手段によって計測された温度値と前記温度値分布の差が、予め設定された閾値を超えた場合に温度制御が行われることを特徴とする請求項3に記載の押し出しTダイ装置である。
前記2つのTダイは、マニホールド及びリップランドの幅方向の寸法を調整可能なインナーディッケル機構を両端部に備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の押し出しTダイ装置である。
本発明によれば前工程のTダイ(第一のTダイ)から吐出された溶融樹脂フィルムの温度分布や、溶融樹脂フィルムが冷却された後の第一の樹脂フィルムの膜厚を測定して、前工程のTダイで作製された樹脂フィルムの膜厚分布不均一さを後工程のTダイ(第二のTダイ)で補正するように作用するため、第一の樹脂フィルムの膜厚が不均一であっても最終製品の膜厚分布を短時間で許容範囲内に収めることが出来る。この結果、第一の樹脂フィルムの膜厚が不均一であっても第二の樹脂フィルムを均一な膜厚とすることが出来るため、従来不良品としていた樹脂フィルムを良品とすることが出来る。また計測と制御を適宜行うことによって、膜厚が不均一な不良発生を抑制することが出来る。
また、従来不良品となっていた材料の使用樹脂量を削減出来、環境負荷を小さくすることが可能となる。
本発明による押し出しTダイ装置の概略構成図。 本発明に係る第一のTダイと第二のTダイの構造を概略的に示す図。(a)はダイの幅方向の断面を示す図。(b)は図2(a)のA−A断面を示す図。 本発明に係る第二のTダイの幅方向に複数箇所備えられたリップ長調節機能を示す図。 本発明に係る第二のTダイの幅方向に複数箇所備えられた加熱ヒータを示す図。 (a)は本発明に係る膜厚計測手段9aで計測された樹脂フィルム14の幅方向の膜厚結果を示す図。(b)は膜厚計測手段9aで計測された樹脂フィルム14の幅方向の膜厚結果に基づいて、リップ長調節機能のリップ開度を調整した場合の第二の樹脂フィルム15の膜厚の結果を示す図。
以下、本発明の実施の形態による押し出しTダイ装置について、図に基づいて説明する。
図1は本発明による押し出しTダイ装置の概略構成図である。本発明の押し出しTダイ装置は、2つのTダイ20a、20bと、膜厚計測手段9aと、温度計測手段9bと、制御手段10と、を備えている。
2つのTダイは、第一のTダイ20aと第二のTダイ20bであり、それぞれが上部に備えられた供給口から供給された溶融樹脂を、スリット形状を有するリップ20a−1と20b−1からフィルム状(以下、フィルム状に押し出された溶融樹脂を溶融樹脂フィルムと称す)に押し出す。
第一のTダイ20aで第一の溶融樹脂フィルムR2を押し出し、その後矢印8aの方向から搬送されるフィルム基材8と冷却ローラー7aで貼り合わせ冷却して第一の樹脂フィルム14とする。溶融樹脂フィルムR2は第一のTダイ20aの下方(下流側)に設けられた冷却ローラー7aによって圧延される。冷却ローラー7aは樹脂フィルムR2が排出されるスピードよりも速いスピードで回転されている。リップ20a−1から吐出された時点では、溶融樹脂フィルムR2は固化していない。溶融樹脂フィルムR2は、冷却ローラー7a上の基材8に片面が転写されると同時に冷却され、固化し、第一の樹脂フィルム14となる。その第一の樹脂フィルム14に第二のTダイ20bのリップ20b−1で押し出された第二の溶融樹脂フィルムR3が冷却ローラー7bで貼り合わされて第二の樹脂フィルム15とされる。
膜厚計測手段9aは、第一のTダイ20aと第二のTダイ20bとの間に設けられ、前記第一の樹脂フィルム14の幅方向にわたって複数箇所の膜厚値を計測するものである。
温度計測手段9bは、第一のTダイ20aのリップ20a−1から押し出された第一の溶融樹脂フィルムR2の幅方向にわたって複数箇所の温度値を計測するものである。
制御手段10は、前記計測された第一の樹脂フィルム14の膜厚値9a−1を用いて第二のTダイ20bの全幅にわたって複数箇所の図示しないリップ長(リップの開度)を制御する膜厚制御手段10aと、前記温度計測手段9bによって計測された第一の溶融樹脂フィルムR2の温度値9b−1を用いて第二のTダイ20bの全幅にわたってその側面に複数個設けられた図示しない加熱ヒーターの温度を制御する温度制御手段から成る。尚、符号16はガイドローラである。
前記膜厚制御手段10a及び温度制御手段10bの両方またはいずれかの制御手段を用いる。制御された結果、第二の樹脂フィルム15の幅方向の膜厚を均一にすることが出来る。
図2は本発明に係る第一のTダイ20aと第二のTダイ20bの構造を概略的に示す図である。第一のTダイ20aと第二のTダイ20bは同じ構造を有している。第一のTダイ20aの場合を例としてTダイ20として説明する。図2(a)はダイの幅方向の断面を示し、図2(b)は図2(a)のA−A断面を示す図である。Tダイ20は、上部に溶融樹脂R1の供給口2aを備えており、供給口2aは溶融樹脂R1を供給する図示しないアダプターと接続されている。Tダイ20は、成形される樹脂フィルムに合わせて、幅方
向に細長い形態を持つ。マニホールド3はTダイ20の幅方向にわたって筒状に形成されており、幅方向の中間部の上部にTダイ20の供給口2aが接続されている。リップランド4は、マニホールド3の下側にTダイ2の幅方向にわたって形成されている。リップ5は、リップランド4の下端部に位置している。
図2(a)、(b)に示すように、リップランド4は、マニホールド3の下側にTダイ20の幅方向にわたって形成されている。リップ5はTダイ20の下端部に形成されていて、リップランド4の下端部に位置している。
インナーディッケル機構6は、マニホールド3及びリップランド4の幅方向の両端部に設けられた一対の第一、第二のインナーディッケル11、12と絞り部材13とから構成される。第一、第二のインナーディッケル11、12、絞り部材13は、この順に上から下へ配列されている。
第一、第二のインナーディッケル11、12及び絞り部材13は、マニホールド3及びリップランド4内において幅方向の移動が可能で、その表面11a、12a、13aでマニホールド3とリップランド4の幅方向の寸法を規定している。Tダイ2に供給された溶融樹脂R1は、この表面11a、12a、13aにガイドされて下方へ通過する。
第一のインナーディッケル11は、マニホールド3とリップランド4の上部側に位置し、マニホールド3とリップランド4の上部側の幅方向の寸法を規定している。第一のインナーディッケル11の表面11aは、上側から下側に向かってマニホールド3及びリップランド4の幅方向の寸法を広げるように傾斜又は湾曲している。また、第二インナーディッケル12は、リップランド4の下流側に位置し、リップランド4の下流側の幅方向の寸法を規定している。第二のインナーディッケル12の表面12aは、上側から下側に向かってリップランド4幅方向の寸法を広げるように傾斜又は湾曲している。また、絞り部材13は、リップランド4の下端部に位置し、リップランド4の下端部の幅方向の寸法を規定することで、リップ5の幅方向の寸法を規定している。
図では第一、第二のインナーディッケル11、12とあるが、一つのインナーディッケルであっても本構成上では問題ない。また、第一、第二のインナーディッケル11、12が溶融樹脂R1との接触面11a、12aが水平方向の断面において円弧状に凹に湾曲する形状であっても、本構成上は問題ない。
次に、図1を用いて膜厚計測手段9aと温度計測手段9bについて説明する。上流側にある第一のTダイ20aと下流側にある第二のTダイ20bとの間に、膜厚計測手段9aと温度計測手段9bを設置する。
膜厚計測手段9aと温度計測手段9bとしては放射線センサーを用いることが出来る。溶融樹脂フィルム幅方向全域を一度に測定可能なラインスキャナータイプがある。また、放射線センサーはβ線式、X線式、赤外線式のどれを用いても良いが、樹脂の場合はCH基に感度が高い赤外線センサーが効果的である。その放射線センサーからの出力を換算して膜厚値、温度値とすることが出来る。
温度計測であっても膜厚計測であっても、赤外線センサーを使用する場合は、樹脂種の吸収波長帯に合わせた波長を持つセンサーを変えると高感度に測定が可能である(温度計測であれば、ポリエチレンフィルムは3.43um、ポリエステルフィルムでは8umの赤外線センサーを用いる)。多層の樹脂フィルムを計測する場合は、波長の異なる複数の赤外線センサーを同時に使用すると良い。
次に、制御手段10について図1を用いて説明する。制御手段10は、上記のように計測された第一の樹脂フィルム14の膜厚値9a−1を用いて第二のTダイ20bの全幅にわたって複数箇所の図示しないリップ長(リップの開度)を制御する膜厚制御手段10aと、前記温度計測手段9bによって計測された第一の溶融樹脂フィルムR2の温度値9b−1を用いて第二のTダイ20bの全幅にわたってその側面に複数個設けられた図示しない加熱ヒーターの温度を制御する温度制御手段から成る。
先ず、膜厚制御手段10aについて説明する。膜厚計測手段9aによって、第一の樹脂フィルム14の幅方向の複数箇所の膜厚分布を計測する。計測箇所の間隔は適宜選択すれば良い。計測する周期は適宜選択すれば良い。計測された膜厚値(膜厚分布の値)9a−1は膜厚制御手段10aに送られる。膜厚制御手段10aは予め入力されていた目標膜厚分布と計測膜厚分布との差が閾値内にあるかどうかを判断する。この場合の閾値は予め設定しておく。閾値を越えていた場合には膜厚制御手段10aから後工程Tダイ20bに対して、図3に示す幅方向に複数箇所備えられたリップ長調節機能(111−1〜111−n)にリップの開度を調整する指示を出す。この場合、閾値を越えていた場所に対応するリップの開度を調整する。
リップ長調節機能(111−1〜111−n)は第二のTダイ20bの全幅にわたって複数箇所に設けられており、リップ長を大きくしてリップの開度を大きくする(開口を広げる)と溶融樹脂フィルムR3の膜厚が厚くなり、逆に開口を狭めると溶融樹脂フィルムR3の膜厚が薄くなる。リップ開度の調整量は、目標膜厚と計測値の差と、調整量が予め関連付けられたテーブルが用意され、テーブルに基づいて調整される。計測値が閾値内に収まるまで繰り返し、計測と制御が行われる。尚、図3において符号112は溶融樹脂供給部を示す。
次に温度制御手段10bについて説明する。温度計測手段9bによって、第一の溶融樹脂フィルムR2の幅方向に複数箇所の温度分布を計測する。計測する周期は適宜選択すれば良い。計測された温度値(温度分布の値)9b−1は温度制御手段10bに送られる。温度制御手段10bは予め入力されていた目標温度分布と計測温度分布との差が閾値内にあるかどうかを判断する。この場合の閾値は予め設定しておく。閾値を越えていた場合には温度制御手段10bから後工程Tダイ20bに対して、図4に示す幅方向に複数箇所備えられた加熱ヒーター(112−1a〜112−na)と加熱ヒーター(112−1b〜112−nb)にヒーター温度を調整する指示を出す。
加熱ヒーター(112−1a〜112−na)と加熱ヒーター(112−1b〜112−nb)は第二のTダイ20bの全幅にわたって複数箇所に設けられている。例えば、加熱ヒーター112−1aと112−1bの組は第二のTダイ20bの両側面の対向する位置に設置されているもので、その加熱源としては特に限定するものではない。計測した温度分布に対する目標温度分布の差の大きさによって、加熱ヒーター(112−1a〜112−na)と加熱ヒーター(112−1b〜112−nb)のそれぞれのヒーター温度を調整する大きさは膜厚制御手段と同じようにテーブルを作成しておき、そのテーブル値に基づいて制御される。温度計測値と目標温度分布の差が閾値内に収まるまで繰り返し、計測と制御が行われる。
加熱ヒーターはマニホールドの一部でも、ダイリップも含め装置全体を覆うように構成されていても良い。ヒーター設定温度の最大値は成型条件ごとに取り決めておき、温度制御によってヒーター設定温度が最大値に達したら、制御器は警告ブザーを鳴らし、昇温を停止する。
実施例として、図1に示す膜厚計測手段9aによって、第一の樹脂フィルム14の幅方向の複数箇所の膜厚分布を計測し、後工程Tダイ20bに対して図3に示す複数箇所備えられたリップ長調節機能(111−1〜111−n)のリップの開度を調整した場合を例示する。
尚、第一のTダイ20a及び第二のTダイ20bはともに、マニホールド及びリップランドの幅方向の寸法を調整可能なインナーディッケル機構を両端部に備えている。
押し出しTダイ装置を使用し、樹脂フィルムを成型した。樹脂はLDPEを使用した。Tダイの押し出し幅は860mm、成型品の幅の長さはネックイン(両端部の収縮と切り落とし)により780mmとなった。
図5(a)は膜厚計測手段9aで計測された第一の樹脂フィルム14の幅方向の膜厚結果を示す。図5(a)では第一の樹脂フィルム14の左端部から500mmまでの結果を示している。
一方、図5(b)は膜厚計測手段9aで計測された第一の樹脂フィルム14の幅方向の膜厚結果に基づいて、Tダイ20bに対して、複数箇所備えられたリップ長調節機能のリップ開度を調整した場合の第二の樹脂フィルム15の膜厚の結果を示している。
図5(a)、図5(b)を比較すると左端から10mmまではネックインで切り落とす部分であるが、それを除いた部分は図5(a)では膜厚が不均一である。一方、図5(b)ではTダイ20bのリップ開度を調整した結果、均一な膜厚となっている。尚、ネックインの寸法を小さくして良品部分を幅広く得られるようにTダイ20aとTダイ20bに供えられたマニホールド及びリップランドの幅方向の寸法を調整可能なインナーディッケル機構を併せて調整した結果である。
同様に、図示しないが温度膜厚計測手段9bによって、第一の溶融樹脂フィルムR2の幅方向の複数箇所の温度分布を計測し、後工程Tダイ20bに対して図4に示す複数箇所備えられた加熱ヒーター(112−1a〜112−na)と加熱ヒーター(112−1b〜112−nb)の温度を調整することによって、均一な膜厚の第二の樹脂フィルム15を得ることが出来る。
更に、上記では膜厚制御手段及び温度制御手段のいずれかの制御手段によって第二の樹脂フィルム15の幅方向の膜厚を均一にすることを示したが、その両方の制御手段を用いても良い。いずれかの制御手段または両方の制御手段かは溶融樹脂フィルムの種類によって制御しやすい方法を適宜選択すればよい。
また、本発明では2つTダイを例示したが、これに限定されず本発明は2つ以上のTダイで構成されるTダイ装置においても、前工程のTダイ後に膜厚あるいは温度またはその両方の計測を行い、その計測結果に基づいて後工程のTダイを制御することに適用することが出来る。
このように本発明の押し出しTダイ装置によれば、第一のTダイによって得られた第一の樹脂フィルムの膜厚の不均一さを、第二のTダイのリップ長または加熱ヒータ温度、あるいはその両方を調整することによって、均一な第二の樹脂フィルムを得ることが出来る。その結果、不良品の発生を抑えることが可能で材料の無駄を抑制することができる。
1・・・押し出しTダイ装置
2a・・・供給口
3・・・マニホールド
4・・・リップランド
5・・・リップ
6・・・インナーディッケル機構
7a、7b・・・冷却ローラー
8・・・フィルム基材
8a・・・フィルム基材の搬送方向
9a・・・膜厚計測手段
9a−1・・・膜厚値
9b・・・温度計測手段
9b−1・・・温度値
10・・・制御手段
10a・・・膜厚制御手段
10b・・・温度制御手段
11・・・第一のインナーディッケル
12・・・第二のインナーディッケル
13・・・絞り部材
14・・・第一の樹脂フィルム
15・・・第二の樹脂フィルム
16・・・ガイドローラ
20・・・Tダイ
20a・・・第一のTダイ
20b・・・第二のTダイ
20a−1、20b−1・・・リップ
R1・・・溶融樹脂
R2・・・第一の溶融樹脂フィルム
R3・・・第二の溶融樹脂フィルム
111−1〜111−n・・・リップ長調節機能
112・・・溶融樹脂供給部
112−1a〜112−na・・・加熱ヒーター
112−1b〜112−nb・・・加熱ヒーター

Claims (5)

  1. 溶融樹脂をフィルム状に押し出した後に冷却ローラーで冷却して樹脂フィルムを製造する押し出しTダイ装置であって、
    2つのTダイと、膜厚計測手段と、制御手段とを備え、
    2つのTダイは、第一のTダイと第二のTダイからなり、それぞれが上部に備えられた供給口から供給された溶融樹脂を、スリット形状を有するリップからフィルム状(以下、フィルム状に押し出された溶融樹脂を溶融樹脂フィルムと称す)に押し出すもので、第一のTダイで第一の溶融樹脂フィルムを押し出し、その後冷却して第一の樹脂フィルムとし、第一の樹脂フィルムに第二のTダイで押し出した第二の溶融樹脂フィルムを貼り合わせ、その後冷却して第二の樹脂フィルムとするもので、
    膜厚計測手段は、第一のTダイと第二のTダイとの間に設けられ、前記第一のTダイのリップから押し出された後、冷却された第一の樹脂フィルムの幅方向にわたって複数箇所の膜厚を計測するもので、
    制御手段は、前記計測された第一の樹脂フィルム膜厚値を用いて第二のTダイの全幅にわたってリップの開口度を制御する膜厚制御手段を備えており、
    この制御手段により、第二の樹脂フィルムの膜厚を幅方向に均一にすることを特徴とする押し出しTダイ装置。
  2. 第一の樹脂フィルムの幅方向の膜厚値分布が予め前記膜厚制御手段に入力されており、前記膜厚計測手段によって計測された膜厚値と前記膜厚値分布の差が、予め設定された閾値を超えた場合に膜厚制御が行われることを特徴とする請求項1に記載の押し出しTダイ装置。
  3. 溶融樹脂をフィルム状に押し出した後に冷却ローラーで冷却して樹脂フィルムを製造する押し出しTダイ装置であって、
    2つのTダイと、温度計測手段と、制御手段とを備え、
    2つのTダイは、第一のTダイと第二のTダイからなり、それぞれが上部に備えられた供給口から供給された溶融樹脂を、スリット形状を有するリップからフィルム状(以下、フィルム状に押し出された溶融樹脂を溶融樹脂フィルムと称す)に押し出すもので、第一のTダイで第一の溶融樹脂フィルムを押し出し、その後冷却して第一の樹脂フィルムとし、第一の樹脂フィルムに第二のTダイで押し出した第二の溶融樹脂フィルムを貼り合わせ、その後冷却して第二の樹脂フィルムとするもので、
    温度計測手段は、第一のTダイから押し出された第一の溶融樹脂フィルムの幅方向にわたって複数箇所の温度値を計測するもので、
    制御手段は、前記計測された第一の溶融樹脂フィルム温度値を用いて第二のTダイの全幅にわたってその側面に複数個設けられた加熱ヒーターの温度を制御する温度制御手段を備えており、
    この制御手段により、第二の樹脂フィルムの膜厚を幅方向に均一にすることを特徴とする押し出しTダイ装置。
  4. 第一の樹脂フィルムの幅方向の温度値分布が予め前記温度制御手段に入力されており、前記温度計測手段によって計測された温度値と前記温度値分布の差が、予め設定された閾値を超えた場合に温度制御が行われることを特徴とする請求項3に記載の押し出しTダイ装置。
  5. 前記2つのTダイは、マニホールド及びリップランドの幅方向の寸法を調整可能なインナーディッケル機構を両端部に備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の押し出しTダイ装置。
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