JP6819627B2 - 圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置に関する。
圧延デスケーリング装置は、熱間圧延ラインにおいて、鋼板に高圧水を噴射し、スケールを除去する装置である。デスケーリングは圧延プロセス内で複数回行われるため、圧延デスケーリング装置は、圧延ライン上に複数設置される。圧延デスケーリング装置用給水ポンプは、一般に共通配管を通して、複数の圧延デスケーリング装置に高圧水を供給する装置であり、一般に複数台のポンプで構成される。
圧延デスケーリング装置は、高圧水を噴射する時のみ給水を必要とする。そのため、圧延デスケーリング装置用給水ポンプの駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化のため、1台もしくは複数台の給水ポンプに可変速ドライブ装置を適用し、可変速運転を可能としている。
共通配管の構造上、トップ速度で稼働する給水ポンプの台数により圧延デスケーリング装置に供給される水量および水圧が変動する。トップ速度未満で稼動する給水ポンプは、逆流を防ぐための逆止弁を閉じて給水ポンプを保護するため、圧延デスケーリング装置に供給される水量および水圧には寄与しない。そのため可変速制御する圧延デスケーリング装置用給水ポンプの運転速度は、トップ速度かアイドリング時の下限速度が選択される。高圧水を噴射する圧延デスケーリング装置の台数により、トップ速度運転が必要な給水ポンプの台数が決まるため、必要な台数の給水ポンプをトップ速度で運転し、残りの給水ポンプは下限速度で運転する。
圧延デスケーリング装置用給水ポンプを下限速度からトップ速度まで高めるには、一般に数秒から十数秒を要する。また配管の長さにより、給水ポンプのトップ速度到達から、圧延デスケーリング装置への水量および水圧の必要量を満たすまでに数秒を要する。そのため給水ポンプを可変速制御する場合は、圧延デスケーリング装置が高圧水を噴射する十数秒前に、給水ポンプの加速を開始する必要がある。
特開2013−158832号公報
圧延デスケーリング装置の噴射終了後、給水ポンプを減速する際に、逆流を防ぐための逆止弁が閉じられる。設備寿命を考慮し、この逆止弁の開閉動作の回数は抑制されることが望ましい。特に給水ポンプの減速中もしくは減速完了直後の再加速は、電力消費の省エネルギー効果が低いことから、一定時間内に再加速が必要な際は、減速をせずにトップ速度運転を維持することが望まれる。
特許文献1には、圧延ラインにおける被圧延材の現在位置から、一定時間内の被圧延材の将来位置を予測し、その被圧延材の位置予測に従った圧延デスケーリング装置の噴射時刻を予測し、その噴射予測時刻に合せて、前以て給水ポンプの加減速を行なう圧延デスケーリング装置用給水ポンプの制御装置が提案されている。
特許文献1によれば、圧延デスケーリング装置用給水ポンプの制御装置は、自動制御装置によって行われる圧延ライン全体の圧延プロセスを正確に把握した上で、被圧延材の将来位置を予測する必要があり、機能の製造および確認試験には、圧延プロセスに関わる知見を必要とし、多くの時間とコストが掛ってしまう。また、操業オペレータによる手動介入などにより、圧延プロセスが予測通りに進行しない場合、被圧延材の位置の予測および圧延デスケーリング装置の噴射時刻が予測とずれるため、圧延デスケーリング装置が噴射する際に必要な水量・水圧を供給できないことがあるという課題がある。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、圧延ラインにおける被圧延材の将来位置の複雑な予測を用いずとも、給水ポンプを駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化と、省エネルギー化に寄与しない給水ポンプの不必要な減速と再加速を抑制することによる設備保護とを達成する圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置を提供することを目的とする。
1つの実施形態は、上記の目的を達成するため、複数のデスケーリング部に共通配管を介して高圧水を供給する複数の給水ポンプを備える圧延ラインのための圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置であって、
前記複数のデスケーリング部のそれぞれは、
被圧延材へ前記高圧水を噴射する圧延デスケーリング装置と、
前記圧延デスケーリング装置の噴射よりも前のタイミングで、前記被圧延材の接近を知らせる材近傍イベントを出力する第1検出手段と、
前記第1検出手段による検出よりもさらに前のタイミングで、前記被圧延材の接近を知らせる材接近イベントを出力する第2検出手段と、を備え、
前記複数の給水ポンプのそれぞれは、トップ速度以上のポンプ速度で開く逆止弁を備え、
前記圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置は、
前記材近傍イベントを出力中のすべてのデスケーリング部が時間A後の噴射に必要とする水量および水圧を供給するために、前記トップ速度で運転しておく必要がある前記給水ポンプの台数(以下、必要トップ速度ポンプ台数と記す。)を計算し、
前記材接近イベントを出力中のすべてのデスケーリング部が前記時間Aよりも長い時間B後の噴射に必要とする水量および水圧を供給するために、前記トップ速度で運転しておくべき前記給水ポンプの台数(以下、減速不要ポンプ台数と記す。)を計算し、
前記必要トップ速度ポンプ台数が前記減速不要ポンプ台数以上である場合に、前記必要トップ速度ポンプ台数をトップ速度ポンプ台数に決定し、
前記必要トップ速度ポンプ台数が前記減速不要ポンプ台数を下回ったタイミングで、前記減速不要ポンプ台数を前記トップ速度ポンプ台数に決定し、
前記トップ速度ポンプ台数に応じて前記複数の給水ポンプを制御するように構成されていること、を特徴とする。
これによれば、圧延デスケーリング装置用給水ポンプの加減速制御において、圧延プロセスにおけるセンサ信号などのイベントに基づいて、必要トップ速度ポンプ台数および減速不要ポンプ台数を計算できる。必要トップ速度ポンプ台数が減速不要ポンプ台数以上である場合に、必要トップ速度ポンプ台数をトップ速度ポンプ台数に決定し、このトップ速度ポンプ台数に応じて給水ポンプを制御する。これにより、給水ポンプの加速時間を考慮して、圧延デスケーリング装置の噴射開始より前以て必要な台数の給水ポンプのみを加速することができ、給水ポンプを駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化が図れる。また、必要トップ速度ポンプ台数が減速不要ポンプ台数を下回ったタイミングで、減速不要ポンプ台数をトップ速度ポンプ台数に決定し、このトップ速度ポンプ台数に応じて給水ポンプを制御する。給水ポンプの減速中もしくは減速完了直後の再加速は、電力消費の省エネルギー効果が低いことから、一定時間内に再加速が必要な際は減速をせずにトップ速度運転を維持することが好ましく、逆止弁の設備保護に効果的である。
他の実施形態では、圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置は、前記材近傍イベントの出力から前記圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間と前記給水ポンプが前記トップ速度で動作するまでの所要時間との差をポンプ加速遅延タイマとし、前記材近傍イベントの出力から前記ポンプ加速遅延タイマの経過後に、前記給水ポンプの加速を開始することを特徴とする。
これによれば、圧延プロセスのイベントからデスケーリング装置の噴射開始までの時間と、ポンプの加速所要時間との差を、ポンプ加速遅延タイマにより吸収する。これにより、給水ポンプの加速完了から圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間が短縮される。そのため、給水ポンプを駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化の効率を高めることができる。
好ましくは、圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置は、前記材近傍イベントの出力から前記圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間の実績値を記憶し、前記実績値の履歴に基づいて前記ポンプ加速遅延タイマの適正値を算出することを特徴とする。
これによれば、圧延プロセスのイベントから圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間の実績値の履歴から、ポンプ加速遅延タイマの適正値が算出される。そのため、圧延プロセスに関わる知見がなくとも、給水ポンプを駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化の効率を容易に高めることができる。
本発明に係る圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置によれば、圧延ラインにおける被圧延材の将来位置の複雑な予測を用いずとも、圧延デスケーリング装置へ必要な水量・水圧を供給しつつ、給水ポンプを駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化と、省エネルギー化に寄与しない給水ポンプの不必要な減速と再加速を抑制することによる逆止弁の設備保護とを達成することができる。
熱間圧延ラインに配置された複数の圧延デスケーリング装置について説明するための図である。 圧延デスケーリング装置用給水設備の概略図である。 給水ポンプ加減速制御に関わる圧延プロセスのイベントの例である。 粗ミルリバース圧延における給水ポンプ加減速制御に関わる圧延プロセスのイベントの例である。 必要トップ速度ポンプ台数の計算例を示す図である。 減速不要ポンプ台数の計算例を示す図である。 トップ速度ポンプ台数の計算例を示す図である。 圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置の処理フローである。 ポンプ加速遅延タイマの例を示したものである。 ポンプ加速遅延タイマの適正値の例を示したものである。 圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
実施の形態1.
(熱間圧延ライン)
図1は、熱間圧延ラインに配置された複数の圧延デスケーリング装置について説明するための図である。図1に示す熱間圧延ラインは、上流からHSB(Hot Scale Breaker)1、粗ミル2、FSB(Finisher Scale Breaker)3、仕上ミル4を備える。
HSB1は、粗ミル2の上流に配置される圧延デスケーリング装置である。粗ミル2は、被圧延材を圧延する少なくとも1台の粗スタンド21を備え、粗スタンド21の上流側および下流側には圧延デスケーリング装置22、23が配置される。FSB3は、仕上ミル4の上流に配置される圧延デスケーリング装置である。仕上ミル4は、被圧延材を圧延する複数台の仕上スタンド41を備え、仕上スタンド41の上流側および下流側には圧延デスケーリング装置42、43が配置される。このように、熱間圧延ライン上には複数台の圧延デスケーリング装置が配置される。また、熱間圧延ラインの各所には、被圧延材の位置検出を行うHMD(Hot Metal Detector)が配置される。
図2は、圧延デスケーリング装置用給水設備の概略図である。上述した熱間圧延ライン上の複数台の圧延デスケーリング装置は、共通配管5を通じて、複数台の給水ポンプ6に接続している。各給水ポンプ6の吐き出し側にはトップ速度以上のポンプ速度で開く逆止弁7が設けられる。各給水ポンプ6の上流側には水供給源が設けられる。
各給水ポンプ6には可変速ドライブ装置が適用される。共通配管5の構造上、トップ速度で稼働する給水ポンプ6の台数により圧延デスケーリング装置へ供給される水量および水圧が変動する。給水ポンプ6がトップ速度以上で稼動する場合に、逆止弁7が開き、圧延デスケーリング装置に供給される水量および水圧に寄与する。一方、トップ速度未満で稼動する給水ポンプ6は、逆流を防ぐための逆止弁7を閉じて給水ポンプを保護するため、圧延デスケーリング装置に供給される水量および水圧には寄与しない。そのため、可変速制御する給水ポンプ6の運転速度は、トップ速度およびアイドリング時の下限速度のいずれかが選択される。噴射が要求されている圧延デスケーリング装置の台数により、トップ速度運転が必要な給水ポンプ6の台数が決まるため、必要な台数の給水ポンプ6をトップ速度で運転し、残りの給水ポンプ6は下限速度で運転する。なお、トップ速度とは、必ずしも最高速度を意味するものではなく、逆止弁7を開き得る水圧を供給するポンプ速度も含まれる。下限速度とは、必ずしもアイドリング速度を意味するものではなく、逆止弁7を開き得えない水圧を供給するポンプ速度も含まれる(速度0を含む)。
このように、複数台の給水ポンプ6は、共通配管5を介して、複数台の圧延デスケーリング装置に高圧水を供給する。各圧延デスケーリング装置から噴出される高圧水によって被圧延材の表面に付着したスケール(酸化膜)が除去される。
ところで、圧延デスケーリング装置用の給水ポンプ6を下限速度からトップ速度まで高めるには、一般に数秒から十数秒を要する。また配管の長さにより、給水ポンプ6のトップ速度到達から、圧延デスケーリング装置への水量および水圧の必要量を満たすまでに数秒を要する。そのため給水ポンプ6を可変速制御する場合は、圧延デスケーリング装置が高圧水を噴射する十数秒前に、給水ポンプ6の加速を開始する必要がある。
(圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置)
図3〜図8を参照して本実施形態に係る圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置について説明する。
図3は、給水ポンプ加減速制御に関わる圧延プロセスのイベントの例である。本実施形態に係る制御装置では、被圧延材の現在位置に応じて圧延デスケーリング装置への材近傍と材接近を意味する2種類のイベントが用いられる。「材近傍イベント」は、被圧延材が圧延デスケーリング装置の近傍に到達したことを示し、高圧水を噴射できるように給水ポンプ6をトップ速度へ加速開始するためのイベントである。「材接近イベント」は、材近傍イベントより前に発生するイベントであり、逆止弁7の設備保護を図るために、給水ポンプ6の一定時間内の減速および再加速を抑制するためのイベントである。
図3に示す例では、HMD421が圧延デスケーリング装置42の上流に設けられ、設置位置に被圧延材10が到達するとON信号を出力する。そのため、HMD421は、圧延デスケーリング装置42の噴射よりも前のタイミングで、被圧延材10の接近を知らせる材近傍イベントを出力する第1検出手段として機能する。
また、HMD421のさらに上流にはHMD422が設けられ、設置位置に被圧延材10が到達するとON信号を出力する。そのため、HMD422は、第1検出手段による検出よりもさらに前のタイミングで、被圧延材10の接近を知らせる材接近イベントを出力する第2検出手段として機能する。
図3に示す例では、材接近イベントは、被圧延材10の先端(H)がHMD422に到達後、尾端(T)が圧延デスケーリング装置42を通過するまでの間発生する。材近傍イベントは、被圧延材10の先端(H)がHMD421に到達後、尾端(T)が圧延デスケーリング装置42を通過するまでの間発生する。
なお、図3では、仕上スタンド41の上流に配置される圧延デスケーリング装置42を例に説明したが、図1で説明した他の圧延デスケーリング装置にも適用可能である。
図4は、粗ミルリバース圧延における給水ポンプ加減速制御に関わる圧延プロセスのイベントの例である。粗ミルリバース圧延では、被圧延材10を順方向(上流から下流へ)および逆方向(下流から上流へ)に複数回圧延する。そのため粗スタンド21の上流側と下流側に圧延デスケーリング装置22、23が配置されることがある。順方向の圧延における材近傍イベントおよび材接近イベントの発生は、HMD421およびHMD422に代えてHMD221およびHMD222が用いられる点を除き、上記図3の場合と略同様であるため説明は省略する。
一方、逆方向の圧延においては、粗スタンド21の荷重センサにより検出可能な前パス(逆方向の圧延の前に行われる順方向の圧延)の開始時点(被圧延材10の先端(H)が粗スタンド21に噛み込まれたタイミング)を、材接近イベントの発生タイミングとする。また、前パスの終了時点(被圧延材10の尾端(T)が粗スタンド21を抜けたタイミング)を、材近傍イベントの発生タイミングとする。すなわち、荷重センサの出力信号が上述の第1検出手段および第2検出手段の両方を兼ねる。このように、圧延プロセスで通常用いられているイベントを、材近傍イベントおよび材接近イベントに割り当てることでセンサ追加によるコスト増大や、複雑な予測計算を回避できる。
図5は、必要トップ速度ポンプ台数の計算例を示す図である。「必要トップ速度ポンプ台数」は、上述した材近傍イベントに基づいて決定される。上述したように材近傍イベントは、被圧延材が圧延デスケーリング装置の近傍に到達したことを知らせるイベントであり、高圧水を噴射できるように給水ポンプ6の加速開始の必要性を知らせるイベントである。
必要トップ速度ポンプ台数の計算手順について説明する。まず、図3および図4に示したような材近傍イベントの発生の有無を、圧延ライン上の全ての圧延デスケーリング装置について調査する。そして、材近傍イベントが発生しているすべての圧延デスケーリング装置が時間A後の噴射に必要とする水量および水圧を供給するために、トップ速度で運転しておく必要がある給水ポンプ6の台数(必要トップ速度ポンプ台数)を計算する。ここで、時間Aは、材近傍イベントの出力から圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間である。なお、必要トップ速度ポンプ台数は、必要な水量・水圧の総量に応じて決まるため、材近傍イベントの発生数とは必ずしも一致しない。
図6は、減速不要ポンプ台数の計算例を示す図である。「減速不要ポンプ台数」は、上述した材接近イベントに基づいて決定される。上述したように材接近イベントは、材近傍イベントよりも前に出力されるイベントであり、給水ポンプ6の一定時間内の減速および再加速を抑制するためのイベントである。
減速不要ポンプ台数の計算手順について説明する。まず、図3および図4に示したような材接近イベントの発生の有無を、圧延ライン上の全ての圧延デスケーリング装置について調査する。そして、材接近イベントが発生しているすべての圧延デスケーリング装置が時間B後の噴射に必要とする水量および水圧を供給するために、トップ速度で運転しておくべき給水ポンプ6の台数(減速不要ポンプ台数)を計算する。ここで、時間Bは、時間Aよりも長い時間であって、材接近イベントの出力から圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間である。なお、減速不要ポンプ台数は、必要な水量・水圧の総量に応じて決まるため、材接近イベントの発生数とは必ずしも一致しない。
減速不要ポンプ台数を算出する意味について説明する。圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置は、常に、必要トップ速度ポンプ台数を満たすように、トップ速度で運転する給水ポンプ6の台数を制御しなければならない。ここで、省エネルギーの観点から、必要トップ速度ポンプ台数が減少すれば、即時に給水ポンプ6を下限速度へ減速すべきとも考えられる。しかしながら、設備保護の観点から、逆止弁7の開閉回数は少ない方が望ましい。特に給水ポンプ6の減速中もしくは減速完了直後の再加速は、省エネルギー効果が低いことから、一定時間内に再加速が必要な際は、減速をせずにトップ速度運転を維持することが望ましい。そこで、本実施形態に係る制御装置では、必要トップ速度ポンプ台数が減速不要ポンプ台数を下回った時に、減速不要ポンプ台数分の給水ポンプ6を減速させずにトップ速度で継続運転させることとした。
図7は、トップ速度ポンプ台数の計算例を示す図である。「トップ速度ポンプ台数」は、圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置がトップ速度で動作させる給水ポンプ6の台数である。制御周期毎に計算される図5の必要トップ速度ポンプ台数、図6の減速不要ポンプ台数に基づいて、トップ速度ポンプ台数も、次のルールを満たすように制御周期毎に決定される。
(1)必要トップ速度ポンプ台数が減速不要ポンプ台数以上である場合に、必要トップ速度ポンプ台数をトップ速度ポンプ台数とする。トップ速度ポンプ台数は、常に必要トップ速度ポンプ台数を下回らないよう決定される。必要トップ速度ポンプ台数の増加時は、下限速度で運転中の給水ポンプ6をトップ速度に加速する。これは圧延ライン上の圧延デスケーリング装置に対して、被圧延材が近傍にあるため給水ポンプ6の加速を開始する必要があることを意味する。
(2)必要トップ速度ポンプ台数が減速不要ポンプ台数を下回ったタイミングで、減速不要ポンプ台数をトップ速度ポンプ台数とする。現制御周期が下回ったタイミングであるか否かは、前制御周期と比較して判断できる。必要トップ速度ポンプ台数が減速不要ポンプ台数を下回ったタイミングで給水ポンプ6を減速しても、一定時間内に再加速が必要であり省エネルギーの効果が低い。そのため、必要トップ速度ポンプ台数の減少時であっても、上記条件に該当する場合は、逆止弁7の設備保護の観点から減速せずにトップ速度運転を維持する。
なお、現制御周期よりも前において、すでにトップ速度ポンプ台数が減速不要ポンプ台数よりも少ない場合は、現制御周期において無理に減速不要ポンプ台数までトップ速度で運転する給水ポンプ6を上げる必要はない(現制御周期における必要トップ速度ポンプ台数をトップ速度ポンプ台数とすればよい)。省エネルギーにも設備保護にも寄与しないためである。
図8は、圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置の処理フローである。
まず、ステップS100において、設定ファイルが読み込まれる。設定ファイルには、給水ポンプ6の台数・性能(吐出量・圧力・回転速度などの関係)、圧延デスケーリング装置の台数・噴射水量などが含まれる。
次に、ステップS110において、プログラマブルロジックコントロール(PLC)から出力された信号が読み込まれる。上述した圧延プロセスのイベントに関する各種センサ(HSB1、FSB3、HMD、荷重センサ)の出力信号はPLCが受信し、PLCからの信号として圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置に読み込まれる。
次に、ステップS120において、現制御周期においてステップS110で読み込んだ信号、およびステップS100で読み込んだ設定ファイルに基づいて、上述した「必要トップ速度ポンプ台数」が計算される。さらに、ステップS130において、現制御周期においてステップS110で読み込んだ信号、およびステップS100で読み込んだ設定ファイル設定ファイルに基づいて、上述した「減速不要ポンプ台数」が計算される。なお、ステップS120とステップS130の処理順番は逆であってもよい。
次に、ステップS140において、前制御周期および現制御周期の「必要トップ速度ポンプ台数」および「減速不要ポンプ台数」に基づいて、「トップ速度ポンプ台数」が決定される。トップ速度ポンプ台数の決定手法については図7について説明した通りである。
次に、ステップS150において、決定されたトップ速度ポンプ台数を満たすように複数の給水ポンプ6へ制御信号を出力する。その後、ステップS160において、次の制御周期を待ってステップS110から処理を繰り返す。
以上説明したように、本実施形態に係る圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置によれば、圧延ラインにおける被圧延材の将来位置の複雑な予測を用いずとも、圧延デスケーリング装置へ必要な水量・水圧を供給しつつ、給水ポンプ6を駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化と、省エネルギー化に寄与しない給水ポンプ6の不必要な減速と再加速を抑制することによる逆止弁7の設備保護とを達成することができる。
(ハードウェア構成例)
図11は、上述した圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。上述した各機能は処理回路により実現される。一態様として、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
処理回路がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
処理回路が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路で実現される。
実施の形態2.
次に、図9を参照して実施の形態2について説明する。実施の形態1では、従来の圧延プロセスのイベントを材近傍イベントとして利用することで、当該イベントを給水ポンプ6の加速開始タイミングとしている。ところで、この圧延プロセスのイベントから圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間は、給水ポンプ6が加速に要する時間と必ずしも一致しない。
そこで、実施の形態2では、材近傍イベントの出力から圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間と給水ポンプ6がトップ速度で動作するまでの所要時間との差をポンプ加速遅延タイマとし、材近傍イベントの出力からポンプ加速遅延タイマの経過後に、給水ポンプ6の加速を開始することとした。
図9は、ポンプ加速遅延タイマの例を示したものである。圧延プロセスのイベントからデスケーリング装置の噴射開始までの時間と、ポンプの加速所要時間との差を、ポンプ加速遅延タイマにより吸収する。これにより、給水ポンプ6の加速完了から圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間が短縮される。そのため、給水ポンプ6を駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化の効率を高めることができる。
なお、圧延デスケーリング装置によっては、圧延プロセスの状態により、材近傍イベントおよび材接近イベントに設定する圧延プロセスのイベントが異なるため、それぞれ異なるポンプ加速遅延タイマを適用する。
実施の形態3.
次に、図10を参照して実施の形態2について説明する。実施の形態2ではポンプ加速遅延タイマを設定しているが、その設定には圧延プロセスに関わる知見を要する。
そこで、実施の形態3では、圧延プロセスに関わる知見がなくとも、ポンプ加速遅延タイマの適正値を設定できるように、材近傍イベントおよび材接近イベントの出力から圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間の実績値を記憶し、実績値の履歴に基づいてポンプ加速遅延タイマの適正値を算出することとした。
図10は、ポンプ加速遅延タイマの適正値の例を示したものである。材近傍イベントおよび材接近イベントに設定するイベントから圧延デスケーリング装置の噴射開始までの実績時間の履歴から、給水ポンプ6の加速所要時間を引いたものが、ポンプ加速遅延タイマの適正値となる。図10に示すように、制御にばらつきが生じるため、例えばカウント数が一定数を超えた制御実績を採用してタイマ補正値を決定する。このように、圧延プロセスに関わる知見がなくとも、給水ポンプ6を駆動する電力消費を抑制する省エネルギー化の効率を容易に高めることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
1 HSB(Hot Scale Breaker)
2 粗ミル
3 FSB(Finisher Scale Breaker)
4 仕上ミル
5 共通配管
6 給水ポンプ
7 逆止弁
10 被圧延材
21 粗スタンド
22、23、42、43 圧延デスケーリング装置
41 仕上スタンド
42 圧延デスケーリング装置
221、222、421、422 HMD
91 プロセッサ
92 メモリ
93 ハードウェア

Claims (5)

  1. 複数のデスケーリング部に共通配管を介して高圧水を供給する複数の給水ポンプを備える圧延ラインのための圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置であって、
    前記複数のデスケーリング部のそれぞれは、
    被圧延材へ前記高圧水を噴射する圧延デスケーリング装置と、
    前記圧延デスケーリング装置の噴射よりも前のタイミングで、前記被圧延材の接近を知らせる材近傍イベントを出力する第1検出手段と、
    前記第1検出手段による検出よりもさらに前のタイミングで、前記被圧延材の接近を知らせる材接近イベントを出力する第2検出手段と、を備え、
    前記複数の給水ポンプのそれぞれは、トップ速度以上のポンプ速度で開く逆止弁を備え、
    前記圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置は、
    前記材近傍イベントを出力中のすべてのデスケーリング部が時間A後の噴射に必要とする水量および水圧を供給するために、前記トップ速度で運転しておく必要がある前記給水ポンプの台数(以下、必要トップ速度ポンプ台数と記す。)を計算し、
    前記材接近イベントを出力中のすべてのデスケーリング部が前記時間Aよりも長い時間B後の噴射に必要とする水量および水圧を供給するために、前記トップ速度で運転しておくべき前記給水ポンプの台数(以下、減速不要ポンプ台数と記す。)を計算し、
    前記必要トップ速度ポンプ台数が前記減速不要ポンプ台数以上である場合に、前記必要トップ速度ポンプ台数をトップ速度ポンプ台数に決定し、
    前記必要トップ速度ポンプ台数が前記減速不要ポンプ台数を下回ったタイミングで、前記減速不要ポンプ台数を前記トップ速度ポンプ台数に決定し、
    前記トップ速度ポンプ台数に応じて前記複数の給水ポンプを制御するように構成されていること、
    を特徴とする圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置。
  2. 前記複数のデスケーリング部の少なくとも1つにおいて、
    前記圧延デスケーリング装置は、前記圧延ライン上を順方向に搬送される前記被圧延材へ前記高圧水を噴射し、
    前記第1検出手段は、前記圧延デスケーリング装置の上流に設けられ、
    前記第2検出手段は、前記第1検出手段のさらに上流に設けられること、
    を特徴とする請求項1記載の圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置。
  3. 前記圧延ラインは、前記被圧延材を順方向および逆方向に圧延可能な粗スタンドを備え、
    前記複数のデスケーリング部の少なくとも1つにおいて、
    前記圧延デスケーリング装置は、前記圧延ライン上を逆方向に搬送される前記被圧延材へ前記高圧水を噴射し、
    前記第1検出手段は、順方向に搬送される前記被圧延材の尾端が前記粗スタンドを抜けたタイミングで、前記材近傍イベントを出力し、
    前記第2検出手段は、順方向に搬送される前記被圧延材の先端が前記粗スタンドに噛み込まれたタイミングで、前記材接近イベントを出力すること、
    を特徴とする請求項1又は2記載の圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置。
  4. 前記材近傍イベントの出力から前記圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間と前記給水ポンプが前記トップ速度で動作するまでの所要時間との差をポンプ加速遅延タイマとし、前記材近傍イベントの出力から前記ポンプ加速遅延タイマの経過後に、前記給水ポンプの加速を開始すること、
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置。
  5. 前記材近傍イベントの出力から前記圧延デスケーリング装置の噴射開始までの時間の実績値を記憶し、前記実績値の履歴に基づいて前記ポンプ加速遅延タイマの適正値を算出すること、
    を特徴とする請求項4記載の圧延デスケーリング装置用ポンプ制御装置。
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