JP6818359B2 - 導電性ペースト組成物、導電体、導電性ペースト組成物の塗工方法、及び導電体の製造方法 - Google Patents

導電性ペースト組成物、導電体、導電性ペースト組成物の塗工方法、及び導電体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性ペースト組成物、導電体、導電性ペースト組成物の塗工方法、及び導電体の製造方法に関する。
金属粒子を含有する分散液を、インクジェットなど各種の印刷法により、配線パターン状に直接印刷することで、露光によるパターニングを必要としない、プリンタブルエレクトロニクスが注目されている。
数十nm以下の金属粒子は、粒子径が小さくなるにつれて、バルクの金属とは異なる種々の物理的、化学的特性を示すことが知られている。例えば、金属粒子の融点は、粒子径が小さくなると、バルクの金属の融点よりも低くなることが知られている。そのため、焼結時の温度を低温化する点から、粒子径の小さい金属粒子を用いることが検討されている。印刷法としては、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、およびディスペンス印刷法等が挙げられる。
本発明者らは特許文献1において、優れた耐酸化性と焼結性とを併せ持つ被覆銅粒子として、銅粒子と、銅粒子の表面に1nm当たり2.5〜5.2分子の密度で配置される脂肪族カルボン酸を含む被覆層とを含む被覆銅粒子、及び該被覆銅粒子を用いた導電性組成物を開示している。
特許文献1によれば、銅粒子表面に脂肪族カルボン酸が上記特定の密度で物理吸着して単分子膜を形成した被覆銅粒子は、優れた耐酸化性と焼結性を有するとされている。
特開2016−69716号公報
導電体のパターンは更なる細線化や低抵抗化が求められている。本発明者らは、細線化した導電体を低抵抗化する一つの手段として、厚膜化を検討した。しかしながらスクリーン印刷法などによりパターン状の塗膜を形成した場合、所望のパターンが形成されないことがあった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、優れたパターン保持性を有する導電性ペースト組成物、当該導電性ペースト組成物の焼結体を含む導電体、当該導電性ペースト組成物の塗工方法、及び当該導電体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性ペースト組成物の一実施形態は、金属核粒子と、前記金属核粒子の表面に1nm当り、2.5〜5.2分子の密度で配置された脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子とを含む、被覆金属粒子と、
溶媒と、
ゲル化剤と、を含有する。
前記導電性ペースト組成物の一実施形態は、前記溶媒が炭化水素系溶媒を含み、前記ゲル化剤がポリオレフィンを含む組合せであるか、又は、
前記溶媒がアルコールを含み、前記ゲル化剤が多糖類を含む組合せである。
前記導電性ペースト組成物の一実施形態は、前記金属核粒子の平均一次粒径が、1nm以上である。
前記導電性ペースト組成物の一実施形態は、前記脂肪族カルボン酸、又は前記脂肪族アルデヒドにおける脂肪族基の炭素原子数が7〜17である。
前記導電性ペースト組成物の一実施形態は、前記金属核粒子が、銅粒子又は銀粒子である。
前記導電性ペースト組成物の一実施形態は、更に金属粉を含有する。
本発明に係る導電体の一実施形態は、前記導電性ペースト組成物の焼結体を含む。
前記導電体の一実施形態は、前記焼結体の厚みが5μm以上である。
本発明に係る導電性ペースト組成物の塗工方法の一実施形態は、開口部を備えたマスクに前記導電性ペースト組成物を塗布する工程と、
前記マスクと基材とを接触させる工程と、
前記導電性ペースト組成物が塗布された前記マスク上でスキージを摺動させて、前記マスクと接触した前記基材に前記導電性ペースト組成物を印刷する工程と、を有する。
本発明に係る導電体の製造方法の一実施形態は、基材上に、前記導電性ペースト組成物をスクリーン印刷法によって塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を350℃以下の温度で焼結する工程と、を有する。
本発明によれば、優れたパターン保持性を有する導電性ペースト組成物、当該導電性ペースト組成物の焼結体を含む導電体、当該導電性ペースト組成物の塗工方法、及び当該導電体の製造方法を提供することができる。
図1は、導電性ペースト組成物を用いたスクリーン印刷法の一例を示す概略図である。 図2は、導電性ペースト組成物を用いたスクリーン印刷法の一例を示す概略図である。 図3は、実施例3の導電性ペースト組成物の塗布状態及び焼結体の写真である。 図4は、実施例6の導電性ペースト組成物の塗布状態及び焼結体の写真である。 図5は、導電性ペースト組成物の焼結体の断面を表す模式図である。
以下、本発明に係る導電性ペースト組成物、導電体、導電性ペースト組成物の塗工方法、及び導電体の製造方法について順に詳細に説明する。
[導電性ペースト組成物]
本発明に係る導電性ペースト組成物は、金属核粒子と、前記金属核粒子の表面に1nm当り、2.5〜5.2分子の密度で配置された脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子とを含む、被覆金属粒子と、溶媒と、ゲル化剤とを含有する。
上記本発明に係る導電性ペースト組成物によれば、優れたパターン保持性を有する。なお本発明においてパターン保持性とは、特に導電性ペースト組成物を印刷して塗膜とした後、焼結までの間のパターン形状の保持性能を示す。
本発明者らは、導電性ペーストをスクリーン印刷法などにより細線パターンを印刷する場合における厚膜化を検討したところ、厚膜化した細線パターンは、焼結までの間にスペースのほうに流れ出してしまい、所望のパターンが形成されないことがあった。本発明者らは、溶媒をゲル化することで、当該流出を抑制することにより、当該課題が解決することを見出した。またゲル化した導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷した場合、版離れ性がよいことも明らかとなった。更に本発明者らは、導電性粒子として、金属核粒子と、前記金属核粒子の表面に1nm当り、2.5〜5.2分子の密度で配置された脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子とを含む被覆金属粒子を用いることにより、焼結時間を短縮することができ、更にパターン保持性を向上し、また、当該被覆金属粒子を用いることに電気伝導性にも優れる導電体が得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものであり、上記特定の被覆金属粒子と、溶媒と、ゲル化剤とを組み合わせて用いることにより、優れたパターン保持性を有する導電性ペースト組成物が得られる。
〔被覆金属粒子〕
本発明に係る被覆金属粒子は、金属核粒子と、前記金属核粒子の表面に1nm当り、2.5〜5.2分子の密度で配置された脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子(以下、単に脂肪族カルボン酸等ということがある)とを含む。
上記本発明に係る被覆金属粒子は、金属核粒子の表面に脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドが合計で1nm当たり2.5〜5.2分子の密度で配置されており、液体凝集膜に近いような単分子膜を形成していると推定される。このため、金属核粒子の表面は、脂肪族カルボン酸等によって保護されて酸化が抑制され、高い耐酸化性を有するものと推定される。また、脂肪族カルボン酸等は金属核粒子と物理吸着等で弱く結合しているため、所定の温度で拡散・脱離すると考えられる。したがって、各金属核粒子の金属表面は加熱によって容易に露出され、金属表面同士の接触が可能になるため、当該被覆金属粒子は焼結性に優れるものと推定される。
<金属核粒子>
本発明において金属核粒子の平均一次粒径は、特に限定されないが、低温焼結性及び分散性の点から、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更により好ましい。また、金属核粒子の平均一次粒径は、通常、1nm以上であり、5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
なお、本発明において金属核粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された任意の20個の金属核粒子の一次粒子径の算術平均値である。
金属核粒子の材質は、焼結後に伝導性を有する金属であればよく、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、クロム、スズ、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウム、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、コバルト、パラジウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ヒ素、ホウ素、ケイ素、及び、これらの合金が挙げられる。導電性の点から、中でも、金、銀、又は銅であることが好ましく、銀、又は銅であることがより好ましい。また、本発明の被覆金属粒子は、耐酸化性に優れていることから、金属核粒子として銅を好適に用いることができる。
被覆金属粒子が複数ある場合、含まれる各金属核粒子は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
金属核粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、金属酸化物、金属水酸化物、及びその他の不純物を含んでいてもよい。金属酸化物及び金属水酸化物の含有割合は、導電性の点から、金属核粒子に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更により好ましい。また、導電性の点から、金属核粒子中の金属の含有割合は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更により好ましい。
金属核粒子の形状は、用途等に応じて適宜選択することができる。当該形上は、真球状を含む略球状、板状、棒状などが挙げられ、中でも、略球状であることが好ましい。なお、後述する被覆金属粒子の製造方法によれば、おおよそ球状に近似可能な略球状の金属核粒子が得られる。
なお、被覆金属粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により決定できる。
<脂肪族カルボン酸>
本発明において脂肪族カルボン酸は、単独で、又は後述する脂肪族アルデヒドと組み合わせて前記金属核粒子の表面に1nm当り、2.5〜5.2分子の密度で配置され、金属核粒子の分散性および酸化抑制効果を有するとともに、焼結時においては、容易に金属核粒子表面から除去され、更に分解又は揮発するため、焼結体中の残留が抑制されて、電気伝導性に優れた導電体が得られる。
脂肪族カルボン酸は、脂肪族化合物に1個又は2個以上のカルボキシ基が置換された構造を有する化合物であり、本発明においては、通常、金属核粒子表面に、脂肪族カルボン酸のカルボキシ基が配置される。本発明においては、脂肪族化合物に1個のカルボキシ基が置換された構造、即ち、脂肪族炭化水素基と、1個のカルボキシ基を有する化合物が好ましい。
脂肪族カルボン酸を構成する脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝、又は環状構造を有する炭化水素基であって、不飽和結合を有していてもよい。本発明においては、金属核粒子表面に所定の密度で単分子膜を形成しやすい点から、分枝及び環状構造を有しない、直鎖脂肪族炭化水素基であることが好ましい。不飽和結合は、二重結合であってもよく三重結合であってもよいが、二重結合であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基が不飽和結合を有する場合、その個数は、1分子中に1〜3個有することが好ましく、1〜2個有することがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
本発明において脂肪族カルボン酸は、中でも、直鎖脂肪族炭化水素基の末端にカルボキシ基を有することが好ましい。
当該脂肪族カルボン酸において、脂肪族基の炭素原子数は、被覆金属粒子の分散性や、耐酸化性の点から、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることが更により好ましい。一方、脂肪族基の炭素原子数が17以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、11以下であることが更により好ましい。炭素原子数が上記上限値以下であることにより、被覆金属粒子の焼結時に除去されやすく、電気伝導性に優れた導電体を得ることができる。なお、本発明において、脂肪族基の炭素原子数は、カルボキシ基を構成する炭素原子は含まないものとする。
好ましい脂肪族カルボン酸の具体例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。脂肪族カルボン酸は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<脂肪族アルデヒド>
本発明においては、前記脂肪族カルボン酸の代わりに、又は、前記脂肪族カルボン酸と組み合わせて、前記金属核粒子表面に脂肪族アルデヒドを配置しても、脂肪族カルボン酸と同様に、電気伝導性に優れ、ひび割れが抑制された導電体を形成可能な被覆金属粒子が得られる。
脂肪族アルデヒドは、脂肪族化合物に1個又は2個以上のアルデヒド基が置換された構造を有する化合物であり、本発明においては、脂肪族化合物に1個のアルデヒド基が置換された構造、即ち、脂肪族炭化水素基と、1個のアルデヒド基を有する化合物が好ましい。本発明においては、通常、金属核粒子表面に、脂肪族アルデヒドのアルデヒド基が配置される。金属核粒子表面にアルデヒド基が配置されることにより、脂肪族アルデヒドの還元作用による、金属核粒子表面の酸化抑制や、汚染物質の洗浄効果が得られる。更に検討の結果、基材表面の異物や酸化物を除去する効果を有するものと推定された。
脂肪族アルデヒドを構成する脂肪族炭化水素基は、前記脂肪族カルボン酸と同様のものを選択することができる。
好ましい脂肪族アルデヒドの具体例としては、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、オクダデシルアルデヒド、ヘキサデセニルアルデヒドなどが挙げられる。脂肪族アルデヒドは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属核粒子の表面には、脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子(以下、「脂肪族カルボン酸等」ということがある)が、前記金属核粒子の表面に1nm当り2.5〜5.2分子の密度で配置されており。すなわち、金属核粒子の表面は、脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子を含む被覆層で被覆され、その被覆密度が2.5〜5.2分子/nmである。分散性及び耐酸化性の点から、当該被覆密度が3.0〜5.2分子/nmであることが好ましく、3.5〜5.2分子/nmであることがより好ましい。
金属核粒子表面における脂肪族カルボン等の被覆密度は以下のようにして算出することができる。被覆金属粒子について、特開2012−88242号公報に記載される方法に従って、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて表面に付着している有機成分を抽出し、成分分析を行う。また、TG−DTA測定(熱重量測定・示差熱分析)を行い、被覆金属粒子に含まれる有機成分量を測定する。次いでLCの分析結果と合わせて被覆金属粒子に含まれる脂肪族カルボン酸等の量を算出する。また、SEM画像観察により金属核粒子の平均一次粒子径を測定する。
以上の分析結果から、被覆金属粒子1gに含まれる脂肪族カルボン酸等の分子数は下記式(a)で表される。
[脂肪族カルボン酸等の分子数]=M/(M/N) ・・・(a)
ここで、Mは被覆金属粒子1gに含まれる脂肪族カルボン酸等の質量(g)であり、Mは脂肪族カルボン酸等の分子量(g/mol)であり、Nはアボガドロ定数である。2種以上の脂肪族カルボン酸等が含まれる場合には、各成分ごとに分子数を算出し、合計する。
金属核粒子の形状を球体と近似して、被覆金属粒子の質量から有機成分量を差し引いて金属核粒子の質量M(g)を求める。被覆金属粒子1g中の金属核粒子数は下式(b)で表される。
[金属核粒子数]=M/[(4πr/3)×d×10−21] ・・・(b)
ここで、Mは被覆金属粒子1gに含まれる金属粒子の質量(g)であり、rはSEM画像観察により算出した一次粒子径の半径(nm)であり、dは金属の密度(g/cm)である(銅の場合d=8.94)。被覆金属粒子1gに含まれる金属核粒子の表面積は式(b)から、下式(c)で表される。
[金属核粒子の表面積(nm)]=[金属核粒子数]×4πr ・・・(c)
以上から、脂肪族カルボン酸等による金属粒子の被覆密度(分子/nm)は、(a)式及び(c)式を用いて、下記式(d)で算出される。
[被覆密度]=[脂肪族カルボン酸等の分子数]/[金属核粒子の表面積]・・・(d)
被覆金属粒子における脂肪族カルボン酸等と金属核粒子との結合状態は、イオン性結合であっても物理吸着であってもよい。脂肪族カルボン酸等は、被覆金属粒子の焼結性の観点から、金属核粒子の表面に物理吸着していることが好ましく、金属核粒子の表面にカルボキシ基、又はアルデヒド基で物理吸着していることが好ましい。
脂肪族カルボン酸等が金属核粒子へ物理吸着していることは、被覆金属粒子の表面組成を分析することで確認できる。具体的には、被覆金属粒子について飛行時間型二次イオン質量分析法(Tof−SIMS)表面分析を行い、実質的に遊離の脂肪族カルボン酸等のみが検出され、金属原子と結合している脂肪族カルボン酸等が実質的に検出されないことで確認することができる。ここで、金属原子と結合している脂肪族カルボン酸等が実質的に検出されないとは、金属核粒子に付着している脂肪族カルボン酸等のシグナル量が、遊離の脂肪族カルボン酸等のシグナル量に対して5%以下であること意味し、1%以下であることが好ましい。
また、脂肪族カルボン酸等が、カルボキシ基、又はアルデヒド基で金属粒子の表面に物理吸着していることは、被覆金属粒子について、赤外吸収スペクトル測定を行い、実質的にC−O−金属塩由来の伸縮振動ピークのみが観測され、遊離のカルボン酸等に由来する伸縮振動ピークが実質的に観測されないことで確認することができる。
被覆金属粒子の粒子径は、用途等に応じて適宜選択することができる。被覆金属粒子の平均一次粒子径は、分散性、導電性、及びひび割れ抑制の観点から、0.02μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.07μm以上2.5μm以下であることが更により好ましい。
被覆金属粒子の平均一次粒子径は、SEM観察による任意の20個の被覆金属粒子の一次粒子径の算術平均値DSEMとして算出される。
また、被覆金属粒子の粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径DSEM)の値は例えば、0.01〜0.5であり、0.05〜0.3が好ましい。特に、後述する被覆金属粒子の製造方法で製造されていることで、粒度分布の変動係数が小さく、粒子径の揃った状態とすることができる。被覆金属粒子の粒度分布の変動係数が小さいことで、分散性に優れ、高濃度の分散物を得ることが可能となる。
本発明の被覆金属粒子は、耐酸化性に優れる。耐酸化性に優れることは、製造してから所定時間後に、被覆金属粒子中における金属酸化物及び金属水酸化物の生成が抑制されていることで確認することができる。例えば、製造してから2か月後の被覆金属粒子中の金属酸化物及び金属水酸化物の総含有率は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
被覆金属粒子中における金属酸化物の生成は、被覆金属粒子のX線回折(XRD)測定により確認することができる。
本発明の被覆金属粒子は、耐酸化性と焼結性に優れ、得られる焼結体は高い電気伝導性を示す。そのため、基材上に印刷して配線パターン等を形成する導電性ペースト組成物に好適に用いることができる。
スクリーン印刷用の導電性ペースト組成物に含まれる被覆金属粒子の割合は、例えば、5〜95質量%とすることができる。また、インクジェット印刷用の導電性ペースト組成物に含まれる被覆金属粒子の割合は、例えば、40〜90質量%とすることができる。
〔被覆金属粒子の製造方法〕
本発明の被覆金属粒子は、上記特定の金属核粒子となる金属を含む金属カルボン酸塩と、上記特定の脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子を用い、特開2016−69716号公報の段落0031から段落0066まで、及び段落0085の記載を参考にして製造することが好ましい。即ち、被覆金属粒子の好ましい製造方法は、金属カルボン酸塩と、脂肪族カルボン酸等と、媒体を含む反応液を準備し、当該反応液中で生成する錯化合物を熱分解処理して、金属核粒子の表面に肪族カルボン酸等が1nm当り2.5〜5.2分子の密度で配置された被覆金属粒子を得ることができる。
以下、上記の製造方法についてより具体的に説明する。
<反応液>
上記反応液は、金属核粒子となる金属を含む金属カルボン酸塩と、当該金属核粒子の表面に被覆する脂肪族カルボン酸等と、媒体とを含有するものであり、好ましくは更にアミノアルコールを含有し、必要に応じてさらに他の成分を含有してもよいものである。以下、反応液に含まれる成分について説明するが、脂肪族カルボン酸等については前記金属核粒子の表面に被複する脂肪族カルボン酸等と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(金属カルボン酸塩)
前記金属カルボン酸塩におけるカルボン酸は、金属の種類や、金属カルボン酸塩の製造容易性などの観点から適宜選択することができる。カルボン酸としては、ギ酸、シュウ酸、クエン酸等が挙げられる。また金属の種類に応じて、カルボン酸の代わりに炭酸を用いてもよい、金属として銅を用いる場合には、金属カルボン酸塩としてギ酸銅を用いることが好ましい。また、金属として銀を用いる場合には、金属カルボン酸塩として、ギ酸銀、シュウ酸銀、炭酸銀、クエン酸銀などが挙げられ、中でも熱分解温度が高いことから、シュウ酸銀を用いることが好ましい。金属カルボン酸塩を構成する金属については、前記金属核粒子と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
反応液中の金属カルボン酸塩の含有割合は適宜調整すればよい。被覆金属粒子の製造効率などの点から、1.0〜2.5モル/リットルであることが好ましく、1.5〜2.5モル/リットルであることがより好ましく、2.0〜2.5モル/リットルであることが更により好ましい。
また、反応液中の脂肪族カルボン酸等の含有割合は、反応液中の金属カルボン酸に対して2.5〜25モル%であることが好ましく、5.0〜15モル%であることがよりこのましい。上記上限値以下であれば、粘度の上昇が抑制される。一方、上記下限値以上とすることで、十分な反応速度が得られ、生産性が向上し、粒度の変動率が小さくなる傾向がある。
(アミノアルコール)
上記反応液中に、金属カルボン酸塩と錯形成可能なアミノアルコールを含有することが好ましい。金属カルボン酸塩とアミノアルコールとが錯形成することで、後述する媒体への溶解性が向上する。
アミノアルコールは、少なくとも1つのアミノ基を有するアルコール化合物であってあればよい。アミノアルコールは、モノアミノモノアルコール化合物であることが好ましく、アミノ基が無置換のモノアミノモノアルコール化合物であることがより好ましい。またアミノアルコールは、単座配位性のモノアミノモノアルコール化合物であることもまた好ましい。
アミノアルコールの沸点は特に制限されないが、熱分解処理の反応温度よりも高いことが好ましく、具体的には沸点が、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。沸点の上限値は特に制限されないが、例えば、400℃以下であり、300℃以下であることが好ましい。
更にアミノアルコールは、極性の観点から、SP値が11.0以上であることが好ましく、12.0以上であることがより好ましく、13.0以上であることが更に好ましい。アミノアルコールのSP値の上限値は、18.0以下であればよく、17.0以下が好ましい。
なお、本発明においてSP値は、Hildebrandの定義による溶解パラメータを用いるものとし、各化合物のSP値は適宜文献値を参照することができる。
好ましいアミノアルコール具体例としては、2−アミノエタノール(沸点:170℃、SP値:14.54)、3−アミノ−1−プロパノール(沸点:187℃、SP値:13.45)、5−アミノ−1−ペンタノール(沸点:245℃、SP値:12.78)、DL−1−アミノ−2−プロパノール(沸点:160℃、SP値:12.74)、N−メチルジエタノールアミン(沸点:247℃、SP値:13.26)等が挙げられる。
アミノアルコールの含有割合は、反応速度等の点から適宜調整すればよく、反応液中の銅イオンに対して1.5〜4.0倍モルであることが好ましく、1.5〜3.0倍モルであること画よりこのましい。アミノアルコールの含有割合が上記下限値以上であれば、金属カルボン酸塩の溶解性に優れて、反応性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、被覆金属粒子への汚染が抑制される。
(媒体)
反応液を構成する媒体は、金属カルボン酸塩の金属の還元を阻害しないものの中から、適宜選択して用いることができる。当該媒体は、通常、有機溶媒である。媒体は、少なくともアミノアルコールと相溶性の低い主媒体を有し、必要に応じて、アミノアルコールと相溶可能な補助媒体を有していてもよい。
主媒体としては、中でも、使用するアミノアルコールのSP値と、当該主媒体のSP値の差(ΔSP値)が4.2以上であるものを選択することが好ましい。上記ΔSP値が4.2以上であると、形成される被覆銅粒子の粒度分布の幅がより狭い、粒子径の揃った被覆金属粒子が得られる。中でも、反応場の形成性と被覆金属粒子の品質の観点から、ΔSP値4.5以上が好ましく、5.0以上がより好ましい。ΔSP値の上限は特に限定されないが、11.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましい。
主媒体のSP値は、アミノアルコールよりも小さいことがより好ましい。主媒体のSP値は11.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましい。主媒体のSP値の下限は特に制限されないが、7.0以上であることが好ましい。
また、主媒体の沸点は、熱分解処理の温度よりも高いことが好ましい。具体的に主媒体の沸点は120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。沸点の上限値は特に制限されないが、沸点は、通常400℃以下であり、300℃以下であることが好ましい。
さらに主媒体は、水と共沸混合物を形成可能な有機溶剤であることもまた好ましい。水と共沸混合物を形成可能であると、熱分解処理によって反応液中に生成した水を容易に反応系から除去することができる。
このような好ましい主媒体としては、エチルシクロへキサン(沸点:132℃、SP値:8.18)、C9系シクロへキサン[丸善石油製、商品名:スワクリーン#150](沸点:149℃、SP値:7.99)、n−オクタン(沸点:125℃、SP値:7.54)等が挙げられる。媒体は、1種単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。
アミノアルコールと相溶可能な補助媒体としては、SP値が主媒体よりも大きいことが好ましく、アミノアルコールと相溶する程度に大きいことがより好ましい。また補助媒体の沸点は、前記主媒体と同様であることが好ましく、また、補助媒体は水と共沸混合物を形成可能な有機溶媒であることが好ましい。
このような好ましい補助媒体としては、EO(エチレンオキサイド)系グリコールエーテル、PO(プロピレンオキサイド)系グリコールエーテル、ジアルキルグリコールエーテルなどのグリコールエーテルを挙げることができる。より具体的には、メチルジグリコール、イソプロピルグリコール、ブチルグリコール等のEO系グリコールエーテル;メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、ブチルプロピレングリコール等のPO系グリコールエーテル、ジメチルジグリコール等のジアルキルグリコールエーテルなどが挙げられる。
主媒体、及び、補助媒体は、各々独立に、1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
2種以上を併用して用いる場合、主媒体のSP値、補助媒体のSP値は、各々独立に、モル容積の加重平均値を用いるものとする。
反応液に含まれる媒体の量は、金属カルボン酸塩の濃度が1.0〜2.5モル/リットルとなるように調整することが好ましく、1.5〜2.5モル/リットルとなるように調整することがより好ましい。反応液中の金属カルボン酸塩の濃度が1.0モル/リットル以上であると、生産性がより向上し、2.5モル/リットル以下であると、反応液の粘度の上昇が抑制され、良好な撹拌性が得られる。
<錯化合物>
反応液中に生成する錯化合物としては、金属イオンと、配位子としてカルボン酸及びアミノアルコールを含むことが好ましい。配位子としてアミノアルコールを含むことで、錯化合物の熱分解温度が低下する。例えば、ギ酸銅の熱分解温度は約220℃であるが、ギ酸銅がアミノアルコールとともに錯化合物を形成することで、その熱分解温度は110〜120℃程度となる。
反応液中に生成した錯化合物は、熱分解処理によって還元された金属を生成する。熱分解処理の温度は、上述の通りアミノアルコールが配位した錯化合物の熱分解温度を考慮して適宜調整すればよい。熱分解処理の温度を低く設定することにより、脂肪族カルボン酸とアミノアルコールとの脱水反応による酸アミドの生成が抑制され、得られる被覆金属粒子の洗浄性が向上する傾向がある。
錯化合物の熱分解処理により還元された金属が生成して成長し、得られた金属核粒子の表面に反応液中に存在する脂肪族カルボン酸等が吸着することで、脂肪族カルボン酸等で表面が被覆された被覆金属粒子が得られる。金属核粒子の表面への脂肪族カルボン酸の吸着は、物理吸着であることが好ましい。これにより被覆金属粒子の焼結性が向上する。錯化合物の熱分解処理において金属酸化物の生成を抑制することで、脂肪族カルボン酸の物理吸着が促進される。
被覆金属粒子の製造方法において、生成する被覆金属粒子の粒度分布を制御する因子としては、例えば、脂肪族カルボン酸等の種類と添加量、金属カルボン酸塩の濃度及び媒体の比率(主溶剤/補助溶剤)等で決定される。被覆銅粒子の大きさを制御する因子は、金属核発生数を支配する昇温速度、すなわち反応系への投入熱量とミクロ反応場の大きさと関係する攪拌速度を適切に保つことで揃えることができる。
〔溶媒〕
本発明に係る溶媒は、後述するゲル化剤との組合せによりゲル化が可能な溶媒の中から適宜選択して用いることができる。本発明の導電性ペースト組成物は、溶媒と後述するゲル化剤との組合せにより、ゲル状のペースト組成物とすることができ、細線パターンを厚膜化した場合であってもパターン保持性に優れている。なお、本発明において溶媒は、少なくとも常温(25℃)において液体である。
本発明において溶媒とゲル化剤との組合せにより生じるゲルは、溶媒とゲル化剤との間に共有結合を形成する化学ゲルであってもよく、水素結合や分子間力結合などにより凝集する物理ゲルであってもよい。本発明においては、被覆金属粒子の焼結時に残留しにくい点から、物理ゲルであることが好ましい。本発明において物理ゲルを形成する溶媒とゲル化剤との好適な組み合わせとしては、例えば、溶媒が炭化水素系溶媒を含み、ゲル化剤がポリオレフィンを含む組合せや、溶媒がアルコールを含み、ゲル化剤が多糖類を含む組合せなどが挙げられる。
ゲル化剤としてポリオレフィンを用いる場合には、前記溶媒としては、炭化水素系溶媒を用いることが好ましく、中でも脂肪族炭化水素系溶媒を用いることがより好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒における脂肪族炭化水素としては、直鎖、分岐、又は環状の脂肪族炭化水素があげられ、直鎖、又は分岐を有する脂肪族炭化水素であることが好ましい。また、当該脂肪族炭化水素は不飽和結合を有していてもよい。本発明においてはポリオレフィンによりゲル化しやすい点から、直鎖、又は分岐を有する飽和脂肪族炭化水素であることが好ましく、中でも、炭素原子数が5以上40以下の直鎖、又は分岐を有する飽和脂肪族炭化水素を用いることがより好ましい。
飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、オクタデカン、イコサンなどが挙げられる。飽和脂肪族炭化水素は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、ゲル化の点から、2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、この場合、例えば、流動パラフィンなどのような炭素原子数が20以上の脂肪族炭化水素を含む混合物を用いてもよい。
また、後述するゲル化剤として多糖類を用いる場合には、前記溶媒として、アルコール系溶媒を用いることが好ましい。アルコール系溶媒に含まれるヒドロキシ基は、第1級、第2級、第3級のいずれであってもよいが、多糖類とのゲル化の点から、中でも第1級アルコールであることが好ましい。また、本発明においては、被覆金属粒子が有する脂肪族カルボン酸等のアルキル鎖との相溶性の観点から、アルコール系溶媒が脂肪族アルコールであることが好ましい。当該脂肪族アルコールの脂肪族の炭素原子数は2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、6以上であることが更により好ましい。炭素原子数の上限は特に限定されないが、室温で液体となる点から、12以下であることが好ましい。
炭素原子数が2以上の一価のアルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘプタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で更に他の溶媒を含有してもよい。例えば、他の溶媒を組み合わせることにより、導電性ペースト組成物のレオロジー特性等を調整することができる。
〔ゲル化剤〕
本発明においてゲル化剤は、前記溶媒をゲル化するために用いられるものであり、前記溶媒の種類に応じて適宜選択するものである。ここで、本発明においてゲル化とは、チキソトロピー性が増大することをいい、具体的には、塗膜としたときに、自重により流れ出さない程度に流動性が低下していることをいう。
前述した溶媒として炭化水素系溶媒を用いる場合は、ゲル化剤としてポリオレフィンを用いることが好ましい。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテンなどが挙げられ、中でもポリエチレンが好ましい。
ポリオレフィンの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、10,000以上のものの中から適宜選択することができ、10,000〜5,000,000のものが好ましく、20,000〜3,000,000がより好ましい。ポリオレフィンは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前述した溶媒としてアルコール系溶媒を用いる場合は、ゲル化剤として多糖類を用いることが好ましい。多糖類としては、水溶性、油溶性のいずれも使用することができ、例えば、デキストリン、イヌリン、ペクチン、プルラン、ローカストビーンガム、グアガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、及びそれらの誘導体等が挙げられ、中でもデキストリンが好ましい。多糖類のゲル化剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
パターン保持性を高める観点から、溶媒とゲル化剤の混合物はチキソトロピー性を有していると好ましい。溶媒とゲル化剤の混合物の25℃におけるチキソ比は1.2以上であると好ましく、1.5以上であるとより好ましく、2.0以上であると更に好ましい。
溶媒とゲル化剤の混合物のチキソ比は、E型粘度計において異なる回転数で測定された粘度の比であり、(10rpmにおける粘度)/(100rpmにおける粘度)として算出される。
溶媒とゲル化剤の混合物の粘度は、印刷手段等に応じて適宜調整すればよい。例えば、25℃、10rpmにおける粘度を0.01Pa・s以上500Pa・s以下の範囲で適宜調整することができ、0.01Pa・s以上50Pa・s以下であることが好ましい。
溶媒とゲル化剤との配合比率は、所望の物性が得られる範囲で適宜調整すればよい。パターン保持性を向上する点から、導電性ペースト組成物中に含まれる溶媒とゲル化剤の合計100質量%に対し、ゲル化剤が0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上12質量%以下であることが更に好ましい。
〔他の成分〕
本発明に係る導電性ペースト組成物は、前記本発明の被覆金属粒子と、溶媒と、ゲル化剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。他の成分としては例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤、ポリエステル系分散剤、ポリアクリル酸系分散剤等の分散剤、ポリメタクリル酸系増粘剤等の増粘剤等が挙げられる。
また、本発明において導電性ペースト組成物は、更に金属粉を含有してもよい。当該金属粉は、前記金属核粒子よりも粒子径の大きい金属粒子を用いることが好ましい。この場合、被覆金属粒子は、金属粉の焼結剤としての機能を有し、粒径の大きな金属粒子同士を焼結させるため、導電性が得られやすい。
金属粉の材質は、前記金属核粒子で例示したものと同様のものとすることができる。金属粉の材質は、前記金属核粒子と同一であってもよく、異なっていてもよい。
当該金属粒子を用いる場合、導電性ペースト組成物中の被覆金属粒子と、金属粉との質量比(被覆金属粒子:金属粉)は用途等に応じて適宜選択すればよい。焼結性と導電性との点から、10:90〜90:10が好ましく、30:70〜70:30がより好ましく、40:60〜60:40が更により好ましい。
[導電体及びその製造方法]
本発明の導電体は、前記本発明に係る導電性ペースト組成物の焼結体を含むことを特徴とする。前記本発明の導電性ペースト組成物を用いることにより、厚膜化した場合であってもパターン保持性に優れている。例えば、本発明の導電性ペーストによれば、5μm以上の厚みを有する焼結体を製造する場合であっても細線パターンを形成することが可能である。
導電体の製造方法は特に限定されず、公知の印刷方法の中から適宜選択して印刷し、得られた塗膜を焼結することで導電体を製造することができる。印刷方法としては、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンス法等が挙げられ、所望のパターン状に印刷してもよい。5μm以上の厚みを有するパターン状の導電体を製造する場合には、中でも、スクリーン印刷法を選択することが好ましい。
即ち本発明に係る導電体の製造方法は、基材上に、前述の導電性ペースト組成物をスクリーン印刷法によって塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を350℃以下の温度で焼結する工程と、を有することが好ましい。
上記の導電体の製造方法によれば、5μm以上の導電体を製造することができ、また例えば、例えば、線幅が50μm以下で、厚みが5μm以上の細線パターンの導電体を製造することができる。また、前記特定の被覆金属粒子を用いているため、350℃以下の低温で焼結することが可能であり、基材の選択肢の自由度が大きい。
基材の材質は、用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリイミド等の樹脂;ガラス;シリカ、アルミナ等のセラミックス;ステンレス、銅、チタン等の金属;シリコン等の半導体などが挙げられる。基材の形状は、特に限定されず、フィルム状や板状のものに限られるものではない。板状の基材を用いる場合はその厚みは特に限定されないが、例えば、0.01〜5mmとすることができる。また、基材として剥離性基材を用いてもよい。この場合、得られた導電体を剥離性基材から剥がして使用することができる。
導電性ペースト組成物の塗膜の厚みは特に限定されず、導電体の用途等に応じて、例えば、熱処理後の厚みが1〜100μmとなるようにすることができる。好ましくは、熱処理後の厚みが5〜100μmとなるようにすることができる。より好ましくは、熱処理後の厚みが10〜100μmとなるようにすることができる。
前記スクリーン印刷の具体的な印刷方法としては、例えば下記の方法が好適なものとして挙げられる。即ち、本発明に係る導電性ペースト組成物の塗工方法は、開口部を備えたマスクに前記導電性ペースト組成物を塗布する工程と、前記マスクと基材とを接触させる工程と、前記導電性ペースト組成物が塗布された前記マスク上でスキージを摺動させて、前記マスクと接触した前記基材に前記導電性ペースト組成物を印刷する工程と、を有する。
当該塗工方法について図を参照して説明する。図1は、導電性ペースト組成物10を基材2上にスクリーン印刷して塗膜11を形成する直前の様子を模式的に表す図であり、図2は、導電性ペースト組成物10を基材2上にスクリーン印刷して塗膜11を形成する様子を模式的に表す図である。
図1に示すように、スクリーン印刷法では、導電性ペースト組成物10及び基材2に加えて、メッシュ3と、マスク4と、スキージ5と、を使用する。
メッシュ3は、例えばステンレス、ポリエステル、ナイロン等からなるメッシュとすることができ、図示しない外枠によって張られている。メッシュ3の開口率は、30%〜70%であると好ましい。マスク4は、印刷パターンに沿った開口部を有した印刷版であり、メッシュ3に定着されている。マスク4は、例えば、メッシュ3に感光乳剤を塗布し、印刷パターンを露光して乾燥させることで作製することができる。スキージ5は、マスク4の上面と接しながらマスク4の上面に沿って移動する、例えば平型、角型、剣型等の部材であって、ゴム、金属、プラスチック等によって形成される。スキージ5は、マスク4の表面に対して60°〜90°の角度で設置されると好ましい。
まず、スクリーン印刷を行うにあたって、図1に示すように、メッシュ3に定着させたマスク4上に導電性ペースト組成物10を塗布する。マスク4には、印刷パターンに沿った穴が開いているため、導電性ペースト組成物10は、マスク4の形状に沿って充填される。このときメッシュ3は、導電性ペースト組成物10の重みによって緩まないように図示しない外枠から張力を受けている。
次に、図2に示すように、導電性ペースト組成物10を塗布したマスク4の下に基材2を設置し、スキージ5を下に押しつけながら摺動させる。このようにすることで、導電性ペースト組成物10がマスク4の穴を介して基材2と接し、マスク4に設けられたパターンに沿って基材2上へ転写される。その後、スキージ5の摺動とともにマスク4が基材2から離れ、転写された導電性ペースト組成物10もマスク4から版離れし、塗膜11として形成される。このため、塗膜11の膜厚はマスク4の厚さによって決定される。塗膜11の膜厚は、1〜100μmとすることができる。好ましくは、熱処理後の厚みが5〜100μmとなるようにすることができる。より好ましくは、熱処理後の厚みが10〜100μmとなるようにすることができる。
前記本発明の被覆金属粒子は低温で焼結することが可能であるため、本発明の導電体の製造方法においては、塗膜の焼結温度を350℃以下とすることができる。塗膜の焼結温度の下限は、被覆金属粒子が焼結可能な温度であればよく、例えば200℃以上とすることができる。
焼結時間は、特に限定されず、例えば1〜120分間とすることができ、1〜60分間であることが好ましい。
また、焼結時の雰囲気は、低酸素雰囲気であることが好ましい。低酸素雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等を挙げることができる。また酸素濃度が1,000ppm以下であることが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<SEM画像観察>
測定装置:日本電子製FE−EPMA JXA−8500F
測定条件:加速電圧 15〜20kV
観察倍率 ×1,500〜×30,000
<平均一次粒子径及び変動率の計算>
測定装置:日本電子製FE−EPMA JXA−8500F
平均一次粒子径:サンプル20点の平均値
変動率:サンプル20点の標準偏差/平均値で計算される値
<熱重量・示差熱(TG−DTA)分析>
測定装置:リガク社製TG8120
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:25〜500℃
測定雰囲気:窒素(250ml/min)
<粉末X線回折(XRD)分析>
測定装置:リガク社製Smartlab
管電圧:45kV
管電流:200mA
<粘度及びチキソ比の計算>
(粘度測定条件1)
測定装置:東機産業製RE−215/U型粘度計
ローター:1°34’×R24
回転数:10rpm、100rpm
チキソ比:(10rpmにおける粘度)/(100rpmにおける粘度)
(粘度測定条件2)
測定装置:東機産業製RE−215/U型粘度計
ローター:3°×R24
回転数:10rpm、100rpm
チキソ比:(10rpmにおける粘度)/(100rpmにおける粘度)
<比抵抗測定>
測定装置:共和理研製K−705RS
測定方法:四探針法
針間:1mm
針先R:150μR
針圧:200g
[被覆銅粒子及び導電性ペースト組成物の製造]
(製造例1)被覆銅粒子Cu1の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素導入管を備えた3000mLガラス製四ツ口フラスコを150℃のオイルバス内に設置した。
上記フラスコ内に、ギ酸銅無水物484g(3.1モル)と、カプリル酸(関東化学社製)98g(0.2当量/ギ酸銅無水物)と、媒体(補助媒体)としてのトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成社製)150g(0.2当量/ギ酸銅無水物)と、媒体(主媒体)としての石油系炭化水素(C9アルキルシクロヘキサン混合物)(ゴードー社製「スワクリーン150」)562g(1.4当量/ギ酸銅無水物)とを仕込んだ。窒素雰囲気下、上記フラスコ内の内容物をオイルバスで加温しながら、液温度が50℃になるまで、攪拌しながら、混合した。
上記混合物に対して、錯化剤として3−アミノ−1−プロパノール(東京化成社製)712g(3.0当量/ギ酸銅無水物)をゆっくり滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物をオイルバスで加温して、液温度が120℃付近になるまで、攪拌しながら、混合した。液温度の上昇に伴って、反応液は濃青色から茶褐色に変化し、炭酸ガスの発泡が生じた。炭酸ガスの発泡が収まった時点を反応終点として、オイルバス温調を停止し、室温まで自然冷却した。
室温まで冷却した上記反応液に対して、メタノール(関東化学社製)1200gを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。上記沈殿物に対して、メタノール(関東化学社製)1200gと、アセトン(関東化学社製)390gとを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。これらの操作(メタノールおよびアセトンの添加とデカンテーション)をさらにもう一回繰り返した。
得られた沈殿物を、メタノール(関東化学社製)400gを用いて500mLナスフラスコに移した。これを30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションした。
得られた沈殿物に対して、イソ酪酸3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンチル18gを添加し、混合した。その後、ナスフラスコを回転式エバポレータに設置し、内容物を減圧乾燥(真空乾燥)した。減圧乾燥(真空乾燥)後、室温まで自然冷却した後、ナスフラスコ内を窒素置換しながら減圧解除した。以上のようにして、200gの茶褐色粘稠体の被覆銅粒子Cu1を得た。
(製造例2)被覆銅粒子Cu2の製造
製造例1において、カプリル酸をラウリン酸(関東化学社製)68g(ギ酸銅無水物に対して0.1当量)に変更した以外は、製造例1と同様にして、200gの茶褐色粘稠体の被覆銅粒子Cu2を得た。
(製造例3)被覆銅粒子Cu3の製造
製造例2において、3−アミノ−1−プロパノールをDL−1−アミノ−2−プロパノール(東京化成社製)(ギ酸銅無水物に対して3.0当量)に変更した以外は、製造例1と同様にして、70gの被覆銅粒子Cu3を得た。
(被覆銅粒子の評価)
被覆銅粒子の物性評価は、TG−DTA測定、XRD測定、SEM観測によって実施した。
(実施例1)
製造例1で得られた被覆銅粒子Cu1を2質量部と、平均粒子径が2.0μmの球状銅粉(三井金属社製1200N)2質量部と、平均粒子径が2.0μmの扁平銅粉(三井金属社製1100YP)1質量部と、レオパールTL2(千葉製粉株式会社製:デキストリン系ゲル化剤)0.05質量部と、n−デカノール(和光純薬社製)0.45質量部を配合して、導電性ペースト組成物を得た。得られた導電性ペースト組成物はゲル状であった。
(実施例2)
実施例1において、デカノールを2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(キョーワノールM、KHネオケム株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の導電性ペースト組成物を得た。得られた導電性ペースト組成物はゲル状であった。
(実施例3〜9)
各成分及び配合量を下表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3〜9の導電性ペースト組成物を得た。得られた導電性ペースト組成物はいずれもゲル状であった。
なお、表1中のプラスチベース(大正製薬株式会社製)は、流動パラフィン95質量%と、重量平均分子量が10,000以上のポリエチレン5質量%とを含む。また、表1中のハイコールK−350(カネダ株式会社製)は、流動パラフィンを99.9995質量%と、トコフェノールを0.0005質量%含む。
(比較例1〜2)
実施例1において、各成分及び配合量を下表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜2の導電性ペースト組成物を得た。得られた導電性ペースト組成物は流動性が高くゲル化していなかった。
(粘度及びチキソ比)
実施例1〜9及び比較例1〜2の粘度は、下表1に示された通りである。なお、実施例1〜7、及び比較例1〜2においては、粘度測定条件1の条件で測定した粘度が示されている。また、実施例8〜9においては、粘度測定条件2の条件で測定した粘度が示されている。
<焼結体の製造>
実施例及び比較例で得られた導電性ペースト組成物をそれぞれ、開口部が9mm四方で厚みが0.05mmのメタルマスクを用いて、スクリーン印刷法によってガラスプレート上に膜厚50μm狙いで塗工し、塗膜を形成した。得られた塗膜を、電気炉(デンケンハイデンタル株式会社製KDF900GL)を用いて、100℃で60分加熱したのち、さらに所定の焼結温度で60分焼結し、焼結体を得た。焼結温度は、実施例1、2、5、8、9、及び比較例1、2の導電性ペースト組成物については250℃とし、実施例3、4、6、7の導電性ペースト組成物については350℃とした。なお、塗膜の加熱を開始する時点から、焼結体を室温まで冷却する時点までの間、窒素ガスを5L/minの流量で供給し続け、電気炉内の酸素濃度を10〜40ppmの範囲に保持した。
<焼結体のパターン保持性評価>
得られた焼結体の形状を、レーザー顕微鏡を用いた観測によって評価した。焼結体の形状について、図6を参照して説明する。図6は、導電性ペースト組成物の焼結体の断面を表す模式図である。
図6に示すように、焼結体の端部には、塗膜が流動してテーパ形状が形成される。当該テーパ部の厚みt、幅w、及びテーパ角度θにより、パターン保持性を評価した。厚みtは、リニアゲージを用いて測定した。テーパ角度θが90°に近いほど、塗膜の流動が抑制されており、ペースト組成物がパターン保持性に優れていると評価される。結果を表2に示す。
また、図3及び図4に、それぞれ実施例3、及び実施例6の導電性ペースト組成物の塗布状態及び焼結体の写真を示す。図3及び図4において、それぞれ(a)は導電性ペースト組成物を基材に塗布して30分経過した後の写真であり、(b)は(a)の導電性ペースト組成物を焼結した後の写真である。
<電気伝導性評価>
また、上記焼結体の製造で得られた焼結体の比抵抗を四探針法により測定した。結果を表2に示す。
[結果のまとめ]
表2の結果に示されるように、実施例1〜9の導電性ペースト組成物を用いて形成された焼結膜は、テーパ角度θが大きく、優れたパターン保持性を有することが明らかとなった。
図3(a)及び図4(a)に示されるように、実施例の導電性ペースト組成物の塗膜は、焼結前であっても、型崩れを起こすことなく、印刷パターンが保持された。図3(b)及び図4(b)に示されるように、当該実施例の塗膜は、焼結後も印刷パターンが保持された。
これらの結果は、実施例1〜9の銅ペースト組成物が、焼結前後においても優れたパターン保持性を有することを示している。
また、表2に示されるように、ゲル化剤を含む実施例1〜9の銅ペースト組成物における焼結体は、いずれも70μΩ・cm以下の高電気伝導性を示すことが分かった。
以上に示すように、本発明に係る導電性ペースト組成物によれば、良好なパターン保持性を有する焼結体を得ることができる。
10 導電性ペースト組成物
11 塗膜
2 基材
3 メッシュ
4 マスク
5 スキージ

Claims (10)

  1. 平均一次粒径が1nm以上500nm以下の金属核粒子と、前記金属核粒子の表面に1nm当り、2.5〜5.2分子の密度で配置された脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子とを含む、被覆金属粒子と、
    炭化水素系溶媒を含む溶媒と、
    ポリオレフィンを含むゲル化剤と、を含有する、
    導電性ペースト組成物。
  2. 前記炭化水素系溶媒が、炭素原子数が5以上40以下の直鎖、又は分岐を有する飽和脂肪族炭化水素である、請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
  3. 前記炭化水素系溶媒が、流動パラフィンである、請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
  4. 前記脂肪族カルボン酸、又は前記脂肪族アルデヒドにおける脂肪族基の炭素原子数が7〜17である、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物。
  5. 前記金属核粒子が、銅粒子又は銀粒子である、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物。
  6. 更に前記金属核粒子の粒径よりも粒子径の大きい金属粉を含有する、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物の焼結体を含む、
    導電体。
  8. 前記焼結体の厚みが5μm以上である、
    請求項7に記載の導電体。
  9. 開口部を備えたマスクに請求項1乃至6のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物を塗布する工程と、
    前記マスクと基材とを接触させる工程と、
    前記導電性ペースト組成物が塗布された前記マスク上でスキージを摺動させて、前記マスクと接触した前記基材に前記導電性ペースト組成物を印刷する工程と、を有する、
    導電性ペースト組成物の塗工方法。
  10. 基材上に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物をスクリーン印刷法によって塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜を350℃以下の温度で焼結する工程と、を有する、
    導電体の製造方法。
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