以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
自動変速装置(AT:Automatic Transmission)を搭載した車両には、シフトレバーに対するレンジ切替操作に応じて、油圧の供給経路を切り替えるシフト制御装置が設けられている。ここでは、レンジ切替操作に応じて電動バルブが制御されるシフトバイワイヤ方式のシフト制御装置について説明する。本実施形態のシフト制御装置は、車軸の回転を規制する規制状態、および、車軸の回転を許容する解除状態に切り替わるパーキングロック機構を備える。以下では、まず、パーキングロック機構の概略構成について説明した後に、シフト制御装置について詳述する。
図1は、パーキングロック機構1の概略図であり、図2は、パーキングロック機構1の解除状態を示す図である。パーキングロック機構1は、図1(a)に示すように、パーキングギヤ10およびパーキングポール12を備える。パーキングギヤ10は、変速装置の出力軸に設けられている。パーキングギヤ10は、例えば出力軸にスプライン係合され、出力軸と一体回転する。なお、パーキングギヤ10は、車両の車軸と一体回転すればよく、例えば車軸に設けられてもよい。
パーキングポール12は、基部12aと、基部12aから延在するアーム部12bと、を備える。アーム部12bの先端側には、パーキングギヤ10に噛合する爪部12cが設けられている。パーキングポール12は、基部12aが回転自在に支持されており、不図示のスプリングにより、常時、図中時計回り方向の付勢力が作用している。このパーキングポール12は、図1(a)および図2(a)に示すように、パーキングロッド14によって、基部12aを軸として揺動される。
パーキングロッド14は、軸方向に移動自在に設けられており、図1(b)に示すように、先端にスライドカム14aが設けられている。スライドカム14aは、先端に向かって径が漸増する円錐形状に形成されている。スライドカム14aは、図1(a)に示すように、パーキングポール12のアーム部12bに隣接している。パーキングロッド14が基端側に移動した状態では、図1(a)にクロスハッチングで示すように、スライドカム14aの先端側に、パーキングポール12のアーム部12bが接触している。この状態では、パーキングポール12が、スライドカム14aによって反時計回り方向に押圧され、爪部12cがパーキングギヤ10に噛合して、パーキングギヤ10の回転が規制されている。
一方、パーキングロッド14が先端側に移動すると、図2(a)に示すように、パーキングポール12のアーム部12bが、スプリングの付勢力により時計回り方向に揺動する。この状態では、爪部12cがパーキングギヤ10から離隔しており、パーキングギヤ10の回転が許容されている。このように、パーキングポール12は、スライドカム14aの外径差によって揺動し、パーキングギヤ10の回転が規制または許容されることとなる。
パーキングロッド14の基端側には、パーキングプレート16が連結されている。パーキングプレート16は、図1(b)に示すように、不図示のシャフトが挿通される軸部16aを備えている。パーキングプレート16は、軸部16aがシャフトに回転自在に支持されている。パーキングプレート16には、軸部16aから径方向に突出する伝達部16bおよび突出部16cが設けられている。伝達部16bには、上記のパーキングロッド14の基端側が連結されている。
パーキングロック機構1は、作動機構20を備えている。作動機構20は、シリンダ22と、シリンダ22内に摺動自在に設けられたピストン24と、を備えている。ピストン24にはピストンロッド24aが設けられている。シリンダ22の内部空間は、ピストン24を境にして、ピストンロッド24a側に位置するロッド室22aと、ピストンロッド24aと反対側に位置する油圧室22bと、に仕切られる。ロッド室22aには、バネ等からなる付勢部材26が設けられている。付勢部材26は、ピストン24を油圧室22b側に常時付勢している。
ピストンロッド24aの先端は、ピストン24が最も油圧室22b側に位置した状態でもロッド室22aから突出しており、パーキングプレート16の突出部16cに接触している。パーキングプレート16には、不図示のコイルバネが設けられており、パーキングプレート16の軸部16aに対して、図1(b)中、反時計回り方向への付勢力が常時作用している。この付勢力は、突出部16cを介してピストンロッド24aに伝達されている。つまり、パーキングプレート16は、ピストンロッド24aを介して、ピストン24を油圧室22b側に付勢する力を作用させている。
パーキングロック機構1は、保持機構30を備えている。保持機構30は、保持ピン32、シリンダ34、保持部材36、およびスプリング38を備えている。保持ピン32は、先端32a側を略直角に屈曲させた棒状の部材であり、支持部32bが回転自在に支持されている。保持部材36は、シリンダ34の作動室34a内に摺動自在に設けられた弁体で構成される。保持部材36は、基端面36aを作動室34aに臨ませており、作動室34aに作動油が供給されると、基端面36aが押圧されて先端36b側に移動する。保持部材36の先端36bは保持ピン32に接触している。保持部材36が先端36b側に移動すると、保持ピン32に対して、図1(b)中、反時計回り方向に回転させる付勢力が作用する。スプリング38は、保持ピン32に対して、図1(b)中、時計回り方向に回転させる付勢力を作用させている。
保持ピン32の先端32aは、ピストンロッド24aに形成されたロック溝24bに嵌合する。図2(b)に示すように、ロック溝24bは、ピストンロッド24aのうち、ピストン24がロッド室22a側に最も移動した状態で、シリンダ22の外側に露出する位置に形成されている。ピストン24がロッド室22a側に最も移動した状態では、ロック溝24bが、保持ピン32の先端32aの回転軌跡上に位置する。
例えば、シフトポジションがパーキングレンジにある場合、パーキングロック機構1は、図1に示す規制状態となる。この規制状態では、図1(b)に示すように、ピストン24が最も油圧室22b側に位置しており、ピストンロッド24aが最も収縮した状態となっている。この状態では、図1(a)に示すように、パーキングポール12の爪部12cが、パーキングギヤ10に噛合している。爪部12cがパーキングギヤ10に噛合した状態では、パーキングギヤ10の回転が規制され、よって車軸の回転が規制されることとなる。
一方、シフトポジションが例えばドライブレンジにある場合、パーキングロック機構1は、図2に示す解除状態となる。この解除状態では、図2(b)に示すように、ピストン24が最もロッド室22a側に位置しており、ピストンロッド24aが最も伸長した状態となっている。ピストンロッド24aが伸長すると、突出部16cが押圧され、パーキングプレート16が図中時計回り方向に回転する。パーキングプレート16が回転すると、伝達部16bに設けられたパーキングロッド14が移動する。パーキングロッド14が移動すると、図2(a)に示すように、パーキングポール12が揺動(傾倒)する。この状態では、パーキングポール12の爪部12cが、パーキングギヤ10から離隔している。爪部12cがパーキングギヤ10から離隔した状態では、パーキングギヤ10の回転、すなわち車軸の回転が許容されることとなる。
以上のように、パーキングロック機構1は、車軸の回転を規制する規制状態、および、車軸の回転を許容する解除状態に切り替わる。本実施形態では、レンジ切替操作に応じてクラッチ等への油圧の供給経路を切り替えるシフト制御装置により、パーキングロック機構1が規制状態または解除状態に切り替えられる。以下に、シフト制御装置について詳述する。
図3は、本実施形態のシフト制御装置100を説明する図である。シフト制御装置100は、作動油の供給源となるポンプ102に、複数の供給先を接続する油圧回路100aを備える。ここでは、作動油の供給先として、前進クラッチFWC、後進クラッチREC、パーキングロック機構1の油圧室22b(ピストン24)および作動室34a(保持部材36)が油圧回路100aに接続されている。
ポンプ102は、吸入口がタンクTに接続され、吐出口が供給油路104に接続されている。供給油路104は、作動油の供給源であるポンプ102と、前進クラッチFWCおよび後進クラッチRECとを接続する。ここでは、供給油路104は、第1供給油路104a、第2供給油路104b、第3供給油路104c、第4供給油路104d、第5供給油路104eで構成されている。
第1供給油路104aは、上流側がポンプ102の吐出口に接続されている。したがって、第1供給油路104aは、供給油路104の最も上流側に位置している。第1供給油路104aには、流量制御弁からなるリニアバルブ106が設けられている。リニアバルブ106は、トランスミッションコントロールユニットTCUによって電気的に制御される。トランスミッションコントロールユニットTCUは、各作動油の供給先の必要流量を演算し、演算結果に応じてリニアバルブ106の開度を制御する。
油圧回路100aには、シフトレバーのシフトポジションに応じて、ポンプ102と作動油の供給先(前進クラッチFWC、後進クラッチREC、油圧室22b)との接続経路を切り替える第1切替弁110および第2切替弁120が設けられている。第1供給油路104aは、リニアバルブ106の下流側が分岐しており、分岐先がそれぞれ第1切替弁110および第2切替弁120に接続されている。
第1切替弁110は、スプール穴に摺動自在に設けられたスプール弁110aと、スプール弁110aの一端が面するパイロット室110bと、スプール弁110aの他端が面するバネ室110cと、を備える。バネ室110cには、スプール弁110aをパイロット室110b側に付勢するスプリング110dが設けられている。パイロット室110bにパイロット圧が作用していない場合、スプリング110dの付勢力により、スプール弁110aが図示の初期位置に保持される。一方、パイロット室110bにパイロット圧が作用すると、スプリング110dの付勢力に抗して、スプール弁110aがバネ室110c側に移動した切替位置に保持される。
第1切替弁110のスプール穴には、作動油の油路に接続される10個のポート(図中a、b、c、d、e、f、g、h、i、j)が図示のように形成されている。各ポートは、スプール弁110aに形成されたランド部の位置に応じて開閉される。
第2切替弁120は、スプール穴に摺動自在に設けられたスプール弁120aと、スプール弁120aの一端が面するパイロット室120bと、スプール弁120aの他端が面するバネ室120cと、を備える。バネ室120cには、スプール弁120aをパイロット室120b側に付勢するスプリング120dが設けられている。パイロット室120bにパイロット圧が作用していない場合、スプリング120dの付勢力により、スプール弁120aが図示の初期位置に保持される。一方、パイロット室120bにパイロット圧が作用すると、スプリング120dの付勢力に抗して、スプール弁120aがバネ室120c側に移動した切替位置に保持される。
第2切替弁120のスプール穴には、作動油の油路に接続される10個のポート(図中k、m、n、p、q、r、s、t、u、v)が図示のように形成されている。各ポートは、スプール弁120aに形成されたランド部の位置に応じて開閉される。
第1供給油路104aは、第1切替弁110のポートaと、第2切替弁120のポートkにそれぞれ接続されている。したがって、ポンプ102から吐出された作動油は、リニアバルブ106によって流量制御がなされた後、ポートaから第1切替弁110に、ポートkから第2切替弁120にそれぞれ導かれる。第2供給油路104bは、第1切替弁110のポートbと、第2切替弁120のポートrとを接続する。第3供給油路104cは、第1切替弁110のポートfと、第2切替弁120のポートmとを接続する。第4供給油路104dは、第2切替弁120のポートqと前進クラッチFWCとを接続する。第5供給油路104eは、第1切替弁110のポートeと後進クラッチRECとを接続する。
なお、油圧回路100aには、タンクTに連通する還流通路130が設けられている。第1切替弁110のポートc、d、および、第2切替弁120のポートn、pは、それぞれ還流通路130に接続されている。また、油圧回路100aは、第1切替弁110のポートgと、第2切替弁120のポートvとを接続する第1接続油路132、第1切替弁110のポートjと、第2切替弁120のポートtとを接続する第2接続油路134、第1切替弁110のポートhと、第2切替弁120のポートuとを接続する第3接続油路136を備える。
また、第1切替弁110のポートiは、パーキングロック油路138を介してパーキングロック機構1の油圧室22bに接続されている。また、第2切替弁120のポートsは、分岐油路140を介して第1供給油路104a、すなわち、ポンプ102に接続されている。
また、油圧回路100aには、伝達油路142が設けられている。伝達油路142は、第1供給油路104aのうちリニアバルブ106の下流側と、パーキングロック機構1の作動室34aとを接続する。つまり、リニアバルブ106で流量制御された作動油の一部が、伝達油路142を介して作動室34aに導かれることとなる。
さらに、油圧回路100aには、パイロット油路144が設けられている。パイロット油路144は、第1供給油路104aのうちリニアバルブ106よりも上流側に接続されている。パイロット油路144には、作動油を常時一定の圧力に減圧する減圧弁146が設けられている。パイロット油路144のうち、減圧弁146の下流側は、第1パイロット油路144aおよび第2パイロット油路144bにパラレルに分岐している。第1パイロット油路144aは、パイロット油路144と、第1切替弁110のパイロット室110bとを接続する。また、第2パイロット油路144bは、パイロット油路144と、第2切替弁120のパイロット室120bとを接続する。したがって、ポンプ102から吐出された作動油は、減圧弁146で所定の圧力に減圧された後、パイロット室110b、120bに導かれることとなる。
そして、第1パイロット油路144aには、第1制御弁150が設けられ、第2パイロット油路144bには、第2制御弁160が設けられている。第1制御弁150および第2制御弁160は、いずれも電磁ソレノイドバルブで構成されており、トランスミッションコントロールユニットTCUにより制御される。第1制御弁150は、未通電時には、図示のクローズ位置に保持される。このクローズ位置では、ポンプ102とパイロット室110bとの連通を遮断し、パイロット室110bをタンクTに接続する。一方、第1制御弁150は、通電時には、図中右側のオープン位置に保持される。オープン位置では、ポンプ102とパイロット室110bとを連通させ、パイロット室110bにパイロット圧を作用させる。
同様に、第2制御弁160は、未通電時には、図示のクローズ位置に保持される。このクローズ位置では、ポンプ102とパイロット室120bとの連通を遮断し、パイロット室120bをタンクTに接続する。一方、第2制御弁160は、通電時には、図中右側のオープン位置に保持される。オープン位置では、ポンプ102とパイロット室120bとを連通させ、パイロット室120bにパイロット圧を作用させる。
パイロット室110bにパイロット圧が作用していない場合には、第1切替弁110が図示の初期位置に保持される。したがって、第1切替弁110は、第1制御弁150の未通電時に初期位置に保持されることとなる。一方、パイロット室110bにパイロット圧が作用している場合には、第1切替弁110が図中下方に移動した切替位置に保持される。したがって、第1切替弁110は、第1制御弁150の通電時に切替位置に保持されることとなる。同様に、パイロット室120bにパイロット圧が作用していない場合には、第2切替弁120が図示の初期位置に保持される。したがって、第2切替弁120は、第2制御弁160の未通電時に初期位置に保持されることとなる。一方、パイロット室120bにパイロット圧が作用している場合には、第2切替弁120が図中下方に移動した切替位置に保持される。したがって、第2切替弁120は、第2制御弁160の通電時に切替位置に保持されることとなる。
以上のように、シフト制御装置100は、第1切替弁110および第2切替弁120のそれぞれに、通電により作動する第1制御弁150および第2制御弁160を備えている。そして、第1切替弁110および第2切替弁120は、第1制御弁150および第2制御弁160の作動状態に応じて、初期位置または切替位置に切り替わることとなる。
ここで、トランスミッションコントロールユニットTCUは、シフトレバーのシフトポジションに応じて、第1切替弁110および第2切替弁120を、初期位置または切替位置に切り替える。シフト制御装置100には、第1切替弁110および第2切替弁120の状態(位置)を検知するインヒビタスイッチが設けられている。車両においては、インヒビタスイッチにより検知された信号に基づいて、変速または後退時の制御や、故障診断、安全を確保するための制御等が行われる。以下に、本実施形態のインヒビタスイッチの概略について説明する。
図4は、本実施形態のインヒビタスイッチ200の概略図である。図4(a)は、インヒビタスイッチ200の正面図を示し、図4(b)は、インヒビタスイッチ200の上面図を示し、図4(c)は、図4(a)におけるIV(c)−IV(c)線の断面図を示している。インヒビタスイッチ200は、中空形状のケーシング202を備える。ケーシング202は、ケース部材202a、202bを重ね合わせて形成されている。ケーシング202の上面202cには、2つの挿通孔202dが形成されている。2つの挿通孔202dは、ケーシング202の幅方向(図4(a)、(b)の左右方向)に互いに離隔して形成されている。
ケーシング202内には、基板204a、204bが設けられている。基板204aは、ケース部材202aに固定されており、基板204bは、ケース部材202bに固定されている。基板204a、204bは、ケーシング202の厚み方向(図4(a)の上下方向、図4(c)の左右方向)に離隔して対向配置されている。なお、基板204a、204bは、図4(b)に破線で示すように、挿通孔202dに沿って部分的に湾曲する湾曲面204cを有している。
ケーシング202内には、第1可動部材210および第2可動部材220が収容される。第1可動部材210および第2可動部材220は、いずれも円柱状の絶縁体で構成されている。第1可動部材210および第2可動部材220は、基板204a、204bの湾曲面204cに挟まれており、湾曲面204cに面接触している。つまり、基板204a、204bは、第1可動部材210および第2可動部材220を挟んで設けられている。
第1可動部材210および第2可動部材220は、挿通孔202dに挿通されており、先端がケーシング202の外部に露出している。ケーシング202内には、2つのバネ部材206が設けられている。一方のバネ部材206は、図4(c)に示すように、第1可動部材210の基端と、ケーシング202の底面202eとの間に設けられており、第1可動部材210を先端側に付勢している。また、他方のバネ部材206は、第2可動部材220の基端と、ケーシング202の底面202eとの間に設けられており、第2可動部材220を先端側に付勢している。
図5は、基板204a、204b、および、第1可動部材210、第2可動部材220の概略図である。図5(a)には基板204aを示し、図5(b)には基板204bを示し、図5(c)には第2可動部材220を示し、図5(d)には第1可動部材210を示している。図5(a)に示すように、基板204aは、絶縁性の樹脂が含浸された表面に、銅箔などの導電体で電気回路(配線)が構成されている。
基板204aのうち、図5(a)中、右側に位置し、第1可動部材210に接触する湾曲面204cには、電源(図中、Eと示す)に接続された入力側端子230が設けられている。また、基板204aのうち、図5(a)中、左側に位置し、第2可動部材220に接触する湾曲面204cには、パーキング用出力側端子240a、ドライブ用出力側端子240b、リバース用出力側端子240c、ニュートラル用出力側端子240dが設けられている。
パーキング用出力側端子240a、ドライブ用出力側端子240b、リバース用出力側端子240c、ニュートラル用出力側端子240dは、それぞれシフトレバーのパーキングレンジ、ドライブレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジに対応している。以下では、パーキング用出力側端子240a、ドライブ用出力側端子240b、リバース用出力側端子240c、ニュートラル用出力側端子240dを総称して出力側端子240と呼ぶ。このように、基板204aには、第1可動部材210に接触する入力側端子230と、第2可動部材220に接触する複数(ここでは4つ)の出力側端子240とが設けられている。
ここでは、基板204aの上方から、パーキング用出力側端子240a、ドライブ用出力側端子240b、リバース用出力側端子240c、ニュートラル用出力側端子240dの順に配されている。これら4つの出力側端子240は、基板204aの高さ方向(図5の上下方向)に互いに離隔して配されている。上下方向に隣り合う2つの出力側端子240の離隔距離はいずれも等しい。また、入力側端子230は、1つの出力側端子240よりも高さ方向に長く延在している。入力側端子230の上端は、ドライブ用出力側端子240bの上端と高さ方向の位置が等しく、入力側端子230の下端は、リバース用出力側端子240cの下端と高さ方向の位置が等しい。
また、基板204aには、中継端子250、260が設けられている。中継端子250、260は、2つの湾曲面204cに跨って設けられており、基板204aの高さ方向に互いに離隔して配される。
中継端子250は、一端に入力側接続部250aが設けられ、他端に出力側接続部250bが設けられている。入力側接続部250aは、第1可動部材210に接触する湾曲面204cに位置しており、出力側接続部250bは、第2可動部材220に接触する湾曲面204cに位置している。入力側接続部250aは、ドライブ用出力側端子240bと高さ方向の位置が等しい。また、出力側接続部250bは、入力側接続部250aよりも高さ方向に長く延在している。出力側接続部250bの上端は、パーキング用出力側端子240aの上端と高さ方向の位置が等しく、出力側接続部250bの下端は、ドライブ用出力側端子240bの下端と高さ方向の位置が等しい。なお、入力側接続部250aは、入力側端子230と基板204aの幅方向(図5中、左右方向)に離隔している。同様に、出力側接続部250bは、出力側端子240と基板204aの幅方向に離隔している。
中継端子260は、一端に入力側接続部260aが設けられ、他端に出力側接続部260bが設けられている。入力側接続部260aは、第1可動部材210に接触する湾曲面204cに位置しており、出力側接続部260bは、第2可動部材220に接触する湾曲面204cに位置している。入力側接続部260aは、リバース用出力側端子240cと高さ位置が等しい。また、出力側接続部260bは、入力側接続部260aよりも高さ方向に長く延在している。出力側接続部260bの上端は、リバース用出力側端子240cの上端と高さ方向の位置が等しく、出力側接続部260bの下端は、ニュートラル用出力側端子240dの下端と高さ方向の位置が等しい。なお、入力側接続部260aは、入力側端子230と基板204aの幅方向(図5中、左右方向)に離隔している。同様に、出力側接続部260bは、出力側端子240と基板204aの幅方向に離隔している。
基板204bは、上記した基板204aと同様に、入力側端子230、パーキング用出力側端子240a、ドライブ用出力側端子240b、リバース用出力側端子240c、ニュートラル用出力側端子240d、中継端子250、260を備えている。図5(b)には、基板204bの天地を反転させて示している。基板204bにおける上記の各端子は、基板204aを反転させた配置となっている。基板204bの各端子の接続関係は、基板204aと等しいため、ここでは説明を省略する。
第1可動部材210は、図5(d)に示すように、銅箔などの導電体で構成される第1通電部210aを備える。第1通電部210aは、周方向に2つに分割されており、一方が基板204aに接触し、他方が基板204bに接触する。第2可動部材220は、図5(c)に示すように、銅箔などの導電体で構成される2つの第2通電部220a、220bを備える。第2通電部220a、220bは、第2可動部材220の軸方向に互いに離隔して設けられている。これら第2通電部220a、220bは、それぞれ周方向に2つに分割されており、一方が基板204aに接触し、他方が基板204bに接触する。
図6は、入力側端子230と出力側端子240との接続状態の一例を説明する図である。上記したように、第1可動部材210は、軸方向に移動自在に設けられている。換言すれば、第1可動部材210は、入力側端子230に対して相対移動自在に設けられる。また、第2可動部材220は、第1可動部材210と同様、軸方向に移動自在に設けられている。換言すれば、第2可動部材220は、第1可動部材210および複数の出力側端子240に対して相対移動自在に設けられる。
第1可動部材210および第2可動部材220は、シフトレバーのシフトポジションに応じて、ポンプ102と作動油の供給先との接続経路を切り替える、軸方向に移動自在に設けられた第1切替弁110、第2切替弁120のいずれかに接続される。具体的には、第1可動部材210の先端は、第1切替弁110の端部に接続(接触)されており、第2可動部材220の先端は、第2切替弁120の端部に接続(接触)されている。このように、第1可動部材210および第2可動部材220は、互いに異なる第1切替弁110および第2切替弁120に接続され、これら第1切替弁110または第2切替弁120に押圧されて軸方向に移動する。
第1通電部210aは、第1可動部材210の位置に拘わらず、入力側端子230に常時、接続(接触)される。また、第1通電部210aは、第1可動部材210の移動により、中継端子250、260のいずれかに選択的に接続される。
第2通電部220aは、第2可動部材220の位置に拘わらず、中継端子250に常時、接続(接触)される。また、第2通電部220aは、第2可動部材220の移動により、パーキング用出力側端子240aまたはドライブ用出力側端子240bに選択的に接続(接触)される。第2通電部220bは、第2可動部材220の位置に拘わらず、中継端子260に常時、接続(接触)される。また、第2通電部220bは、第2可動部材220の移動により、リバース用出力側端子240cまたはニュートラル用出力側端子240dに選択的に接続(接触)される。
上記のように、第1可動部材210と第2可動部材220との間には、第1通電部210aと第2通電部220a、220bとを繋ぐ中継端子250、260が離隔して設けられている。中継端子250、260は、互いに異なる第2通電部220a、220bに接続される。つまり、第2通電部220a、220bは、複数の出力側端子240のいずれかと第1通電部210aとを接続することとなる。なお、シフトレバーのドライブレンジに対応するドライブ用出力側端子240b、および、シフトレバーのリバースレンジに対応するリバース用出力側端子240cは、互いに異なる第2通電部220a、220bに接続される。
上記の構成からなるインヒビタスイッチ200によれば、パーキング用出力側端子240a、ドライブ用出力側端子240b、リバース用出力側端子240c、ニュートラル用出力側端子240dのいずれか1つが、第1通電部210aを介して入力側端子230に接続される。各出力側端子240は、それぞれ不図示の信号回路に接続されており、入力側端子230に接続された信号回路からON信号が出力される。
図6に示す状態では、第1通電部210aにより、中継端子250が入力側端子230に接続され、第2通電部220aにより、パーキング用出力側端子240aが中継端子250に接続されている。したがって、パーキング用出力側端子240aが電源に接続されており、シフト制御装置100がパーキング用の制御状態(以下、「パーキング制御状態」という)にあることを示す信号が外部に出力される。このように、第1切替弁110および第2切替弁120の位置を検知するインヒビタスイッチ200により、シフト制御装置100の制御状態が把握可能となっている。
次に、上記の構成からなるシフト制御装置100の動作について説明する。図7は、パーキング制御状態におけるシフト制御装置100およびインヒビタスイッチ200を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがパーキングレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、第1制御弁150および第2制御弁160を未通電に制御し、図示のクローズ位置に保持する。また、このとき、トランスミッションコントロールユニットTCUは、供給油路104を遮断するようにリニアバルブ106を制御する。
このパーキング制御状態では、ポンプ102から吐出された作動油が、図中、実線矢印と太線で示すように導かれる。詳細には、リニアバルブ106が閉じられており、リニアバルブ106よりも下流側への作動油の供給が停止されている。また、第1制御弁150がクローズ位置に保持されており、パイロット室110bへのパイロット圧の供給が停止される。その結果、第1切替弁110は、スプリング110dの付勢力により、図示の初期位置に保持される。同様に、第2制御弁160がクローズ位置に保持されており、パイロット室120bへのパイロット圧の供給が停止される。その結果、第2切替弁120は、スプリング120dの付勢力により、図示の初期位置に保持される。
第1切替弁110の初期位置では、ポートa、bを介して第1供給油路104aと第2供給油路104bとが連通しており、第2切替弁120の初期位置では、ポートk、mを介して第1供給油路104aと第3供給油路104cとが連通している。ただし、スプール弁110aにより、第1切替弁110のポートfが他のポートから遮断されており、第3供給油路104cはいずれの油路にも接続されていない。また、スプール弁120aにより、第2切替弁120のポートrが他のポートから遮断されており、第2供給油路104bはいずれの油路にも接続されていない。この状態では、第1供給油路104a、第2供給油路104b、第3供給油路104c、および、伝達油路142内が一定の圧力に保持されている。
また、パーキング制御状態では、図中、破線矢印と太い破線で示すように、アクチュエータからタンクTに作動油が還流している。詳細には、第1切替弁110の初期位置では、ポートd、eを介して後進クラッチRECが還流通路130に接続されており、後進クラッチRECが解放されている。また、第2切替弁120の初期位置では、ポートp、qを介して前進クラッチFWCが還流通路130に接続されており、前進クラッチFWCが解放されている。
さらに、第1切替弁110の初期位置では、ポートi、gを介して、パーキングロック油路138が第1接続油路132に接続される。また、第2切替弁120の初期位置では、ポートvがバネ室120cに連通する。バネ室120cは、還流通路130を介してタンクTに接続されている。したがって、この状態では、図示のように、油圧室22bが、パーキングロック油路138、第1切替弁110、第1接続油路132、第2切替弁120、還流通路130を介して、タンクTに連通する。その結果、ピストン24は、最も油圧室22b側に移動した位置に保持され、パーキングロック機構1が規制状態に保持されることとなる(図1参照)。
以上のように、シフト制御装置100によれば、第1切替弁110および第2切替弁120がいずれも初期位置にある状態がパーキングレンジに割り当てられている。第1切替弁110および第2切替弁120がいずれも初期位置にある状態(パーキング制御状態)では、ポンプ102と、前進クラッチFWCおよび後進クラッチRECとの接続が断たれる。このように、第1切替弁110の初期位置と、第2切替弁120の初期位置との組み合わせ位置を、切替弁の停止位置という。
この停止位置では、ポンプ102と、前進クラッチFWCおよび後進クラッチRECとの接続が断たれることとなる。また、作動油の供給先にはパーキングロック機構1が含まれる。パーキングロック機構1は、切替弁の停止位置、すなわち、第1切替弁110および第2切替弁120がいずれも初期位置にあり、作動油の供給が停止されると規制状態となる。
また、上記のパーキング制御状態において、インヒビタスイッチ200は、バネ部材206により、第1可動部材210がスプール弁110a側に付勢され、第2可動部材220がスプール弁120a側に付勢された状態となっている。この状態では、図示のように、第1通電部210a、中継端子250、第2通電部220aを介して、パーキング用出力側端子240aが入力側端子230に接続されている。これにより、パーキング用出力側端子240aが電源に接続され、シフト制御装置100がパーキング制御状態にあることを示す信号が外部に出力される。
図8は、ニュートラル制御状態におけるシフト制御装置100およびインヒビタスイッチ200を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがニュートラルレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、第1制御弁150および第2制御弁160を通電し、図示のオープン位置に保持する。また、このとき、トランスミッションコントロールユニットTCUは、供給油路104を遮断するようにリニアバルブ106を制御する。
このニュートラル制御状態では、ポンプ102から吐出された作動油が、図中、実線矢印と太線で示すように導かれる。詳細には、リニアバルブ106が閉じられており、リニアバルブ106よりも下流側への作動油の供給が停止されている。また、第1制御弁150がオープン位置に保持されており、パイロット室110bにパイロット圧が作用している。その結果、第1切替弁110は、スプリング110dの付勢力に抗して、図示の切替位置に保持される。同様に、第2制御弁160がオープン位置に保持されており、パイロット室120bにパイロット圧が作用している。その結果、第2切替弁120は、スプリング120dの付勢力に抗して、図示の切替位置に保持される。
第1切替弁110の切替位置では、ポートaが他のポートから遮断されており、第2切替弁120の切替位置では、ポートkが他のポートから遮断されている。また、ニュートラル制御状態では、図中、破線矢印と太い破線で示すように、前進クラッチFWCおよび後進クラッチRECからタンクTに作動油が還流している。詳細には、第1切替弁110の切替位置では、ポートb、cが互いに連通し、ポートe、fが互いに連通する。また、第2切替弁120の切替位置では、ポートm、nが連通し、ポートq、rが連通する。
したがって、後進クラッチRECは、第5供給油路104e、第1切替弁110、第3供給油路104c、第2切替弁120、還流通路130を介してタンクTに接続される。また、前進クラッチFWCは、第4供給油路104d、第2切替弁120、第2供給油路104b、第1切替弁110、還流通路130を介してタンクTに接続される。このように、ニュートラル制御状態では、前進クラッチFWCおよび後進クラッチRECがともに解放されている。
さらに、第1切替弁110の切替位置では、ポートh、i、jが連通し、第2切替弁120の切替位置では、ポートs、t、uが連通している。したがって、ポンプ102から吐出された作動油は、第1供給油路104a、分岐油路140、第2切替弁120、第2接続油路134または第3接続油路136、第1切替弁110、パーキングロック油路138を介して、油圧室22bに供給される。このように、油圧室22bに作動油が供給されると、パーキングロック機構1は、図示のように、ピストン24が伸長し、解除状態に保持されることとなる(図2参照)。なお、このとき、リニアバルブ106が閉じられているため、伝達油路142および作動室34aの圧力が上昇していない。そのため、保持部材36は、作動室34a内に収縮しており、保持ピン32はロック溝24bから外れた非ロック状態となっている。
以上のように、シフト制御装置100によれば、第1切替弁110および第2切替弁120がいずれも切替位置にある状態がニュートラルレンジに割り当てられている。第1切替弁110および第2切替弁120がいずれも切替位置にある状態(ニュートラル制御状態)では、ポンプ102と、前進クラッチFWCおよび後進クラッチRECとの接続が断たれる。
また、上記のニュートラル制御状態において、インヒビタスイッチ200は、スプール弁110aにより、第1可動部材210がバネ部材206側に押圧され、スプール弁120aにより、第2可動部材220がバネ部材206側に押圧された状態となっている。この状態では、図示のように、第1通電部210a、中継端子260、第2通電部220bを介して、ニュートラル用出力側端子240dが入力側端子230に接続されている。これにより、ニュートラル用出力側端子240dが電源に接続され、シフト制御装置100がニュートラル制御状態にあることを示す信号が外部に出力される。
図9は、ドライブ制御状態におけるシフト制御装置100およびインヒビタスイッチ200を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがドライブレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、第1制御弁150を未通電に制御し、第2制御弁160を通電する。したがって、第1制御弁150はクローズ位置に保持され、第2制御弁160は、オープン位置に保持される。また、このとき、トランスミッションコントロールユニットTCUは、走行状況等に応じて必要流量を演算し、演算結果に応じた開度にリニアバルブ106を制御する。
このドライブ制御状態では、ポンプ102から吐出された作動油が、図中、実線矢印と太線で示すように導かれる。詳細には、ポンプ102から吐出された作動油の一部は、リニアバルブ106で流量制御されて第1切替弁110、第2切替弁120および作動室34aに供給されている。また、第1制御弁150がクローズ位置に保持されており、パイロット室110bへのパイロット圧の供給が停止される。その結果、第1切替弁110は、スプリング110dの付勢力により初期位置に保持される。一方、第2制御弁160はオープン位置に保持されており、パイロット室120bにパイロット圧が作用している。その結果、第2切替弁120は、スプリング120dの付勢力に抗して切替位置に保持される。
第1切替弁110の初期位置では、ポートa、bを介して第1供給油路104aと第2供給油路104bとが連通している。第2切替弁120の切替位置では、ポートkが他のポートから遮断されており、また、ポートq、rを介して、第2供給油路104bと第4供給油路104dとが連通している。したがって、ポンプ102から吐出された作動油は、第1供給油路104a、第1切替弁110、第2供給油路104b、第2切替弁120、第4供給油路104dを介して、前進クラッチFWCに供給される。これにより、前進クラッチFWCが締結され、車両が前進走行可能となる。
また、第1切替弁110の初期位置では、図中、破線矢印と太い破線で示すように、ポートd、eを介して後進クラッチRECが還流通路130に接続されており、後進クラッチRECが解放されている。
さらに、第1切替弁110の初期位置では、ポートi、hを介して、パーキングロック油路138が第3接続油路136に接続される。また、第2切替弁120の切替位置では、ポートs、uを介して、分岐油路140が第3接続油路136に接続される。したがって、ポンプ102から吐出された作動油は、第1供給油路104a、分岐油路140、第2切替弁120、第3接続油路136、第1切替弁110、パーキングロック油路138を介して、油圧室22bに供給される。これにより、パーキングロック機構1は、ピストン24が伸長して解除状態に保持されることとなる(図2参照)。
また、このとき、リニアバルブ106で流量制御された作動油が、伝達油路142を介して作動室34aに供給される。その結果、作動室34aの圧力上昇に伴い、保持部材36が突出し、保持ピン32がピストンロッド24aのロック溝24bに嵌合したロック状態となる。このロック状態では、ピストン24の収縮が制限されており、パーキングロック機構1が解除状態から規制状態に切り替わることがない。つまり、シフト制御装置100は、車両の走行中に、パーキングロック機構1が解除状態から規制状態に切り替わるといった誤作動を防止するためのフェールセーフ機能を備えている。
以上のように、シフト制御装置100によれば、第1切替弁110が初期位置にあり、第2切替弁120が切替位置にある状態がドライブレンジに割り当てられている。第1切替弁110が初期位置にあり、第2切替弁120が切替位置にある状態(ドライブ制御状態)では、ポンプ102が前進クラッチFWCに接続され、ポンプ102と後進クラッチRECとの接続が断たれる。ここでは、第1切替弁110の初期位置と、第2切替弁120の切替位置との組み合わせ位置のように、ポンプ102と前進クラッチFWCまたは後進クラッチRECとが接続される切替弁の位置を供給位置という。
切替弁の供給位置では、前進クラッチFWCおよび後進クラッチRECのいずれか一方がポンプ102に接続され、いずれか他方は、ポンプ102との接続が断たれ、かつ、タンクTに接続される。そして、パーキングロック機構1は、切替弁の供給位置において油圧室22bに作動油が供給され、車軸の回転を許容する解除状態となる。
さらに、シフト制御装置100は、切替弁が供給位置にあるとき、クラッチ(前進クラッチFWCまたは後進クラッチREC)に供給される作動油の圧力を保持部材36に作用させる伝達油路142を備えている。切替弁の供給位置においては、保持部材36が突出し、パーキングロック機構1が解除状態にロックされるロック状態となる。このように、クラッチ(前進クラッチFWCまたは後進クラッチREC)に供給される作動油の圧力により、保持部材36がパーキングロック機構1を解除状態に保持するため、より確実かつ迅速にフェールセーフ機能が発揮される。
詳細に説明すると、クラッチに作動油を供給するための第1供給油路104aは、図7に示すパーキング制御状態、および、図8に示すニュートラル制御状態においても、タンクTに接続されておらず、一定の圧力に保持されている。このように、パーキング制御状態やニュートラル制御状態においても、第1供給油路104aを一定の圧力に保持することにより、シフトレバーがドライブレンジやリバースレンジに切り替わった際に、クラッチへの供給圧を即座に高めることができる。
そして、伝達油路142を第1供給油路104aに接続することにより、パーキング制御状態およびニュートラル制御状態において、伝達油路142つまり作動室34aを一定の圧力に保持している。これにより、保持部材36の応答性が高められ、パーキング制御状態やニュートラル制御状態から、ドライブ制御状態や後述のリバース制御状態に切り替わった際に、即座にロック状態となり、迅速にフェールセーフ機能が発揮されることとなる。
なお、上記のドライブ制御状態において、インヒビタスイッチ200は、バネ部材206により、第1可動部材210がスプール弁110a側に付勢され、スプール弁120aにより、第2可動部材220がバネ部材206側に押圧された状態となっている。この状態では、図示のように、第1通電部210a、中継端子250、第2通電部220aを介して、ドライブ用出力側端子240bが入力側端子230に接続されている。これにより、ドライブ用出力側端子240bが電源に接続され、シフト制御装置100がドライブ制御状態にあることを示す信号が外部に出力される。
図10は、リバース制御状態におけるシフト制御装置100およびインヒビタスイッチ200を示す図である。シフトレバーのシフトポジションがリバースレンジにある場合、トランスミッションコントロールユニットTCUは、第1制御弁150を通電し、第2制御弁160を未通電に制御する。したがって、第1制御弁150はオープン位置に保持され、第2制御弁160は、クローズ位置に保持される。また、このとき、トランスミッションコントロールユニットTCUは、走行状況等に応じて必要流量を演算し、演算結果に応じた開度にリニアバルブ106を制御する。
このリバース制御状態では、ポンプ102から吐出された作動油が、図中、実線矢印と太線で示すように導かれる。詳細には、ポンプ102から吐出された作動油の一部は、リニアバルブ106で流量制御されて第1切替弁110、第2切替弁120および作動室34aに供給されている。また、第1制御弁150がオープン位置に保持されており、パイロット室110bにパイロット圧が作用している。その結果、第1切替弁110は、スプリング110dの付勢力に抗して切替位置に保持される。一方、第2制御弁160はクローズ位置に保持されており、パイロット室120bへのパイロット圧の供給が停止される。その結果、第2切替弁120は、スプリング120dの付勢力により初期位置に保持される。
第2切替弁120の初期位置では、ポートk、mを介して第1供給油路104aと第3供給油路104cとが連通している。第1切替弁110の切替位置では、ポートaが他のポートから遮断されており、また、ポートe、fを介して、第3供給油路104cと第5供給油路104eとが連通している。したがって、ポンプ102から吐出された作動油は、第1供給油路104a、第2切替弁120、第3供給油路104c、第1切替弁110、第5供給油路104eを介して、後進クラッチRECに供給される。これにより、後進クラッチRECが締結され、車両が後進走行可能となる。
また、第2切替弁120の初期位置では、図中、破線矢印と太い破線で示すように、ポートp、qを介して前進クラッチFWCが還流通路130に接続されており、前進クラッチFWCが解放されている。
さらに、第1切替弁110の切替位置では、ポートi、jを介して、パーキングロック油路138が第1接続油路132に接続される。また、第2切替弁120の初期位置では、ポートs、tを介して、分岐油路140が第1接続油路132に接続される。したがって、ポンプ102から吐出された作動油は、第1供給油路104a、分岐油路140、第2切替弁120、第1接続油路132、第1切替弁110、パーキングロック油路138を介して、油圧室22bに供給される。これにより、パーキングロック機構1は、ピストン24が伸長して解除状態に保持されることとなる(図2参照)。
また、このとき、リニアバルブ106で流量制御された作動油が、伝達油路142を介して作動室34aに供給され、上記したドライブ制御状態と同様にロック状態となる。つまり、車両の後退中においても、パーキングロック機構1が解除状態から規制状態に切り替わるといった誤作動が防止される。
以上のように、シフト制御装置100によれば、第1切替弁110が切替位置にあり、第2切替弁120が初期位置にある状態がリバースレンジに割り当てられている。第1切替弁110が切替位置にあり、第2切替弁120が初期位置にある状態(リバース制御状態)では、ポンプ102が後進クラッチRECに接続され、ポンプ102と前進クラッチFWCとの接続が断たれる。第1切替弁110の切替位置と、第2切替弁120の初期位置との組み合わせ位置は、上記した切替弁の供給位置となる。したがって、リバース制御状態においても、上記のドライブ制御状態と同様に、迅速にフェールセーフ機能が発揮される。
なお、上記のリバース制御状態において、インヒビタスイッチ200は、バネ部材206により、第2可動部材220がスプール弁120a側に付勢され、スプール弁110aにより、第1可動部材210がバネ部材206側に押圧された状態となっている。この状態では、図示のように、第1通電部210a、中継端子260、第2通電部220bを介して、リバース用出力側端子240cが入力側端子230に接続されている。これにより、リバース用出力側端子240cが電源に接続され、シフト制御装置100がリバース制御状態にあることを示す信号が外部に出力される。
以上説明したように、上記のシフト制御装置100によれば、電動アクチュエータを用いずに、制御弁の油圧で切替弁が直接切り替えられる。また、ポンプ102と作動油の供給先との接続経路を切り替える切替弁(第1切替弁110および第2切替弁120)が複数(ここでは2つ)設けられている。これにより、1つの切替弁の切り替えに必要なストローク量を小さくでき、応答性を高めることができる。
また、上記のシフト制御装置100によれば、第1切替弁110、第2切替弁120のそれぞれに第1制御弁150、第2制御弁160が設けられている。つまり、切替弁と、切替弁を制御する制御弁(制御部材)とが、それぞれ2つ設けられている。そして、2つの切替弁の初期位置および切替位置を組み合わせた4つの状態が、シフトレバーのパーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジの4つのシフトポジションに割り当てられている。
このとき、切替弁(第1切替弁110および第2切替弁120)は、それぞれ制御部材(第1制御弁150および第2制御弁160)の未通電時に初期位置に保持される。また、2つの切替弁(第1切替弁110および第2切替弁120)がいずれも初期位置にある状態が、パーキングレンジに割り当てられている。そのため、電源失陥等が発生した場合に、シフト制御装置100がパーキング制御状態に保持され、安全性を確保することができる。
また、パーキングロック機構1は、複数の切替弁(第1切替弁110および第2切替弁120)がいずれも初期位置にあれば規制状態となり、複数の切替弁(第1切替弁110および第2切替弁120)のうち、少なくともいずれか1つが初期位置にない場合に解除状態となる。そして、2つの切替弁(第1切替弁110および第2切替弁120)の一方が初期位置にあり他方が切替位置にある2つの状態が、ドライブレンジおよびリバースレンジにそれぞれ割り当てられている。
これにより、第1切替弁110および第2切替弁120が、同時に、本来の位置と異なる位置に作動しない限り、換言すれば、第1制御弁150および第2制御弁160の双方に対して、同時に誤作動が生じない限り、車両が逆走することはない。したがって、安全性をより向上させることができる。
また、上記のインヒビタスイッチ200によれば、互いに相対移動する第1可動部材210および第2可動部材220を備える。そして、第1可動部材210および第2可動部材220は、シフトレバーのシフトポジションに応じて、ポンプ102と作動油の供給先との接続経路を切り替える、軸方向に移動自在に設けられた複数の切替弁のうち、互いに異なる切替弁に接続され、切替弁に押圧されて軸方向に移動する。このように、第1可動部材210および第2可動部材220を備えることにより、1つの可動部材を設けるよりも、ストローク量を小さくすることが可能となり、検知速度を向上させることができる。
また、上記のインヒビタスイッチ200によれば、入力側端子230および出力側端子240が設けられた基板204a、204bが、第1可動部材210および第2可動部材220を挟んで2つ設けられている。このように、検知信号を2つの独立した電気回路によって検知することにより、検知信号の信頼性を確保することができる。
さらに、上記のインヒビタスイッチ200によれば、第2可動部材220に複数(2つ)の第2通電部220a、220bが設けられている。そして、ドライブレンジに対応するドライブ用出力側端子240b、および、リバースレンジに対応するリバース用出力側端子240cは、互いに異なる第2通電部220a、220bに接続される。このとき、第2通電部220aがドライブ用出力側端子240bに接続されているときには、第2通電部220bがリバース用出力側端子240cに接続されることのない位置関係となっている。これにより、第1可動部材210および第2可動部材220の双方が、同時に誤作動しない限り、ドライブ制御状態とリバース制御状態とを誤って検知してしまうことがなくなり、安全性を向上させることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上記実施形態におけるパーキングロック機構1およびインヒビタスイッチ200の構成、および、シフト制御装置100の回路構成は一例に過ぎない。例えば、上記実施形態では、切替弁が2つである場合について説明したが、切替弁は3つ以上でもよい。
また、上記実施形態における制御部材(第1制御弁150および第2制御弁160)の位置、および、切替弁(第1切替弁110および第2切替弁120)の位置と、シフトポジションとの相対関係は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、シフト制御装置100がパーキングロック機構1およびインヒビタスイッチ200を備える場合について説明したが、パーキングロック機構1およびインヒビタスイッチ200は必須の構成ではない。また、パーキングロック機構1を備える場合において、保持機構30は必須ではない。