JP6817134B2 - マイクロ波加熱用触媒材料、マイクロ波加熱用触媒体、及びマイクロ波加熱用触媒体の製造方法 - Google Patents

マイクロ波加熱用触媒材料、マイクロ波加熱用触媒体、及びマイクロ波加熱用触媒体の製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車の内燃機関等の排気ガスを浄化等するための触媒材料、この触媒材料が基材に担持された触媒体、及び触媒体の製造方法に関する。
従来から、自動車の排気ガスを浄化する触媒材料を利用した排気ガス浄化装置が用いられている。通常の触媒材料を活性化させるには300℃以上に加熱する必要があるため、従来は排気ガスの熱を利用して触媒材料を加熱していた。しかしながら、エンジンのコールドスタート直後は排気ガスの温度自体が低いため、触媒材料を十分に加熱することが困難である。又、近年の環境性能の高い自動車においては、排気ガスの温度が低下する傾向にあり、排気ガスの熱を利用しても触媒材料を十分な活性化温度まで加熱することが困難な場合がある。
この対策として、触媒を電気的に加熱する方法が提案されており、その中でもマイクロ波で触媒を加熱することが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、担体(又は基材)としてのハニカムに、白金・ロジウム・パラジウム系三元触媒と、マイクロ波を吸収して発熱するペロブスカイト型複合酸化物とを担持させた触媒成形体を備えた排気ガス浄化装置が例示されている。そして、この触媒成形体にマイクロ波を照射すると、ペロブスカイト型複合酸化物が発熱し、その熱によって三元触媒を活性化温度まで加熱することが可能である。
特開平5−171926号公報
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、ペロブスカイト型複合酸化物と、白金・ロジウム・パラジウム系三元触媒等の貴金属粒子とを別個に担持させる必要があり、装置が複雑かつ製造コストが増大する。
そこで、本発明は、それ自身で高い触媒性能を有し被処理ガスの温度が低い状態でも昇温することができるマイクロ波加熱用触媒材料、マイクロ波加熱用触媒体、及びマイクロ波加熱用触媒体の製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のマイクロ波加熱用触媒材料は、マイクロ波が照射され、且つ、内部に形成された複数の孔を介して被処理ガスを流通させる基材の当該孔の内面に設けられるマイクロ波加熱用触媒材料であって、繊維状物質と、前記繊維状物質を保持するコート材と、を有し、前記繊維状物質は炭化ケイ素を主成分とし、マイクロ波を吸収して発熱することが可能で、室温における抵抗率が0.1Ω・cm以上10Ω・cm以下であり、前記コート材は、粒子及び該粒子の結合体からなる導電性酸化物と、触媒担持酸化物と、該触媒担持酸化物に担持されたPt、Pd及びRhの群から選ばれる少なくとも1種と、を有し、前記導電性酸化物の抵抗率が0.001Ω・cm以上10Ω・cm以下であり、少なくとも一部の前記繊維状物質同士が、前記導電性酸化物を介して互いに接続された状態で前記コート材に保持され、前記繊維状物質の合計体積が、前記導電性酸化物の合計体積より多いことを特徴とする。
このマイクロ波加熱用触媒材料によれば、繊維状物質の抵抗率を規定することで、マイクロ波を効率的に吸収して発熱することができ、触媒担持酸化物に担持された触媒を有効に機能させることができる。
又、少なくとも一部の繊維状物質同士が、導電性酸化物を介して互いに接続されているので、繊維状物質同士の間に導電パスが形成される。これにより、繊維状物質の導電に寄与する最大長さが長くなるので、マイクロ波をより効率的に吸収して発熱することができる。特に、マイクロ波加熱用触媒体の製造上、繊維状物質自体の長さをあまり大きく取れない場合でも、導電に寄与する最大長さを長くすることができるという利点がある。
なお、室温とは25℃である。
本発明のマイクロ波加熱用触媒材料において、前記マイクロ波加熱用触媒材料に対する前記繊維状物質の合計体積の割合が25%以上65%以下であるとよい。
このマイクロ波加熱用触媒材料によれば、導電性酸化物による上述の導電パスの形成をより確実に行うことができる。
本発明のマイクロ波加熱用触媒材料において、前記コート材に対する前記導電性酸化物の合計体積の割合が5%以上30%以下であるとよい。
このマイクロ波加熱用触媒材料によれば、導電性酸化物による上述の導電パスの形成をより確実に行うことができる。
本発明のマイクロ波加熱用触媒体は、マイクロ波が照射され、且つ、内部に形成された複数の孔を介して被処理ガスを流通させる基材と、前記基材の前記孔の内面に設けられた触媒材料とを備える触媒体であって、前記触媒材料が、前記マイクロ波加熱用触媒材料であることを特徴とする。
本発明のマイクロ波加熱用触媒体の製造方法は、前記マイクロ波加熱用触媒体の製造方法であって、前記繊維状物質と前記コート材とを混合した前記マイクロ波加熱用触媒材料のスラリーを、前記基材にディップコートまたはウォッシュコートしたのち焼成することを特徴とする。
この発明によれば、それ自身で高い触媒性能を有し、被処理ガスの温度が低い状態でも昇温することができるマイクロ波加熱用触媒材料、及び、マイクロ波加熱用触媒体が得られる。
本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱用触媒体の構成を示す図である。 図1(D)の部分拡大図である。 図2の部分拡大図である。 本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱用触媒体の製造方法を示す図である。 繊維状物質(炭化ケイ素繊維)の昇温試験の結果を示す図である。 図5における各サンプルの2分後の到達温度と、繊維状物質の抵抗率の対数との関係を示す図である。 コーティング層中の各成分の組成(体積%)を変化させたときの各サンプルの2分後の到達温度(発熱特性)を示す図である。 図7の結果をグラフに示した図である。
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1(A)は本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱用触媒体の構成を示す図である。マイクロ波加熱用触媒体100は、被処理ガスである排気ガス浄化用の触媒体であり、マイクロ波加熱用触媒材料200を担持する担体としての基材120を備えている。図1(B)は基材120の正面図であり、図1(C)はその一部を拡大した部分拡大模式図である。これらの図では、図示の便宜上、実際の寸法とは異なる寸法で個々の部材が描かれている。
図1(C)に示すように、基材120はハニカム形状を有しており、壁部122と、壁部122で区画された多数の孔124とを有する。これらの孔124は、排気ガス流路として機能する。基材120は、例えばコージェライト等のセラミックス材料を用いて形成することができる。孔124は、基材120の入口から出口に至るまで直線的に貫通している。
壁部122の内面122i(すなわち孔124の内面)には、マイクロ波加熱用触媒材料で形成されたコーティング層200が設けられている。コーティング層200は、周知のディップコート法やウォッシュコート法を用いて形成可能である。但し、マイクロ波加熱用触媒材料の担持形態としては、これ以外の任意の形態を用いることも可能である。
図1(D)は、コーティング層200の断面構造を示す模式図である。コーティング層200は、発熱体としての繊維状物質210と、後述する繊維状物質210を保持する(繊維状物質210が埋設される)コート材220と、を有している。
又、図2は図1(D)の部分拡大図、図3は図2の部分拡大図である。図2、図3に示すように、コート材220は、導電性酸化物221と触媒担持酸化物222との混合物である。コート材220は、例えば導電性酸化物221と触媒担持酸化物222の粉末を含むスラリーを焼成することで、これら導電性酸化物221と触媒担持酸化物222の少なくとも一部の粒子が結合することで、繊維状物質210を埋設して保持する被膜を形成する。
繊維状物質210は、炭化ケイ素を主成分(繊維状物質210のうち50質量%を超える割合)とし、マイクロ波を吸収して発熱することが可能で、室温(25℃)における抵抗率が0.1Ω・cm以上10Ω・cm以下の導電性繊維である。繊維状物質210の抵抗率をこの範囲にすることで、繊維状物質210が導電性を有して導電損が大きくなり、マイクロ波をより効率的に吸収して発熱することができる。
繊維状物質210を発熱させるマイクロ波MWは、典型的には周波数が2.45GHz又は915MHzの電磁波が利用される。但し、周波数は制限されず、例えば周波数が300MHz〜300GHzの任意の周波数のマイクロ波を利用してもよい。
繊維状物質210の抵抗率が0.1Ω・cm未満の材料は、焼成時に酸化して抵抗率が変化する恐れがある。一方、抵抗率が10Ω・cmを超えると、抵抗が大きくなってマイクロ波の吸収が不十分になって発熱が少なくなる。なお、繊維状物質210の抵抗率は、断面積がほぼ一定の部分を任意の長さに切断した繊維の両端に導電性ペーストで電極を形成し、二端子法で抵抗値を測定し、さらに測定に供した繊維における電極間距離と上記断面積を測定し、抵抗率を算出する。なお、コーティング層200から繊維を取り出す際は、コーティング層200を剥がし、軽く粉砕して繊維を回収する。
繊維状物質210の長さは例えば100μm〜400μm程度とし、直径は例えば5〜15μm程度とすることができる。
なお、繊維状物質210の長さ及び直径は、それぞれ繊維の長手方向、径方向の値であり、SEM又は光学顕微鏡にて、繊維状物質210の100個の測定点における繊維の長手方向、径方向の値を測定し、平均する。
導電性酸化物221は、単体の粒子及びこの粒子の結合体からなる。この粒子の結合体は、上述のように導電性酸化物221の粉末が焼成されて互いに結合したものであり、断面SEM像を見たときに粒子間の境界が一体化し、単体の粒子よりも寸法が大きくなったものである。
図3に示すように、コート材220が導電性酸化物221を含むことで、少なくとも一部の繊維状物質210x、210y同士が、導電性酸化物220aを介して互いに接続され、繊維状物質210x、210y同士の間に導電パスが形成される。
これにより、繊維状物質210x、210yの導電に寄与する最大長さが長くなるので、繊維状物質の導電損が大きくなり、マイクロ波をより効率的に吸収して発熱することができるようになる。特に、上述のように繊維状物質210x、210y自体の長さを短く(例えば400μm以下)したとしても、導電に寄与する最大長さを長くすることができるという利点がある。
なお、図3において、導電性酸化物221のうち、2つ以上の繊維状物質210x、210y同士の間に介在して両者を接続しているものを、導電性酸化物(導電パス)221a(図3のハッチング)で表している。又、繊維状物質210y、210z同士の間にも導電性酸化物(導電パス)221bが介在して同様に両者を接続している。
又、導電性酸化物221により2つ以上の繊維状物質210が接続しているか否かは、2液硬化式樹脂などの液体樹脂でコーティング層200を樹脂埋めし、樹脂埋めしたコーティング層200を切断し、断面が露出している任意の近接した2つの繊維状物質210の断面にプローブを接触させ、電気が通るか否か(例えば、抵抗値20MΩ以下か)により判定する。
導電性酸化物221の抵抗率は、0.001Ω・cm以上10Ω・cm以下である。これにより、繊維状物質210同士の間に導電性酸化物220が接続された際、繊維状物質210同士の間の導電パスを有効に形成させることができる。
導電性酸化物221の抵抗率が0.001Ω・cm未満であると、金属のようにマイクロ波を反射したりすることで、発熱特性が低下する恐れがある。又、マイクロ波照射時にスパークを生じる恐れもある。抵抗率が10Ω・cmを超えると、繊維状物質210同士の間に導電性酸化物220が介在しても、有効な導電パスを形成することが困難になる。
なお、導電性酸化物221の抵抗率は、SEM−EDSやICP分析から導電性酸化物221の組成を特定したり、XRDから導電性酸化物221の結晶構造を特定し、組成や結晶構造がこれら特定したものと同様の材料を合成して比抵抗測定用の試料(直方体の柱状試料)を作成する。そして、この試料につき、直流4端子法により測定できる。
導電性酸化物221の組成は特に限定は無いが、一般式ABO3で表わされるペロブスカイト構造を有する酸化物で、それぞれAサイト及びBサイトが、Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Ti,Zr,Nb,In,Hf,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの群から選ばれる少なくとも1種の元素からなる複合酸化物で形成することができる。
Aサイトは、例えば希土類元素及び/又はアルカリ土類金属とすることができ、Bサイトは、例えば遷移金属とすることができる。
導電性酸化物221として具体的には、AはLaであり、BはFe及び/又はNiである組成を用いることができる。
触媒担持酸化物222としては、無機酸化物を用いることができるが、特にγ‐アルミナ又はθ‐アルミナを主成分とするアルミナを用いることが好ましい。γ‐アルミナやθ‐アルミナは比表面積が大きいので、触媒担持酸化物222に担持される触媒金属が触媒担持酸化物222表面に広く分散し、触媒能を向上させることが可能である、この他、セリア‐ジルコニア固溶体等を用いることができる。
なお、触媒担持酸化物222も単体の粒子が適宜結合してなる。この粒子の結合体は、触媒担持酸化物222の粉末が焼成されて互いに結合したものである。
触媒担持酸化物222には、Pt、Pd及びRhの群から選ばれる少なくとも1種の触媒金属が担持されている。
マイクロ波加熱用触媒材料(コーティング層)200に対する繊維状物質210の合計体積の割合が25%以上65%以下であると、導電性酸化物221による上述の導電パスの形成をより確実に行うことができる。
繊維状物質210の合計体積の割合が25%未満であると、コーティング層200内で繊維状物質210が少な過ぎ、隣接する繊維状物質210の間隔が広くなり過ぎて導電パスの形成が困難になる場合がある。又、繊維状物質210が少なくなり過ぎると、マイクロ波を十分に吸収できないため、発熱特性が低下する場合がある。
繊維状物質210の合計体積の割合が65%を超えると、繊維同士が干渉し易くなって絡まり易く、繊維を含むスラリーを基材に均一に塗布することが困難になる場合がある。
コート材220に対する導電性酸化物221の合計体積の割合が5%以上30%以下であると、同様に導電性酸化物221による上述の導電パスの形成をより確実に行うことができる。
導電性酸化物221の合計体積の割合が5%未満であると、コート材220内で導電性酸化物221が少な過ぎ、隣接する導電性酸化物221の間隔が広くなり過ぎて導電パスの形成が困難になる場合がある。
導電性酸化物221の合計体積の割合が30%を超えると、触媒担持酸化物222の割合が少なくなりすぎ、充分な触媒性能を維持するのが困難となる場合がある。
上述のマイクロ波加熱用触媒材料(コーティング層)200に対する繊維状物質210の合計体積の割合は、コーティング層200の断面SEM像として、繊維状物質210の組成を示す2次電子像を取得し、断面における繊維状物質210の面積割合を画像解析で求め、この面積割合を「合計体積の割合」とみなすことができる。又、2次電子像のみでなく、同一視野でSEM−EDSにより元素マッピングを取得し、2次電子像と照合して画像中の繊維状物質210、導電性酸化物221の元素を同定することで、両者をより確実に識別することもできる。
断面SEM像の視野を面積が0.25mmとなるように設定し、5視野についてそれぞれ面積割合を求め、その平均値を採用する。
コート材220に対する導電性酸化物221の合計体積の割合は、繊維状物質210の合計体積の割合と同様に求める。但し1視野を面積が0.0025mmとなるように設定する。但し、コーティング層200の断面SEM像全体の面積から繊維状物質210の面積割合を除いた面積を「コート材220の面積」とみなし、この面積に対する導電性酸化物221の合計体積の割合を求める。
次に、図4を参照し、本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱用触媒体100の製造方法について説明する。図4は本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱用触媒体100の製造方法を示す。
工程T110では、繊維状物質210とコート材220とを混合したマイクロ波加熱用触媒材料のスラリーを準備する。この工程T110では、まず、長尺の繊維状物質(炭化ケイ素繊維等)の素材を熱処理したのちに、切断し、さらに乳鉢による粉砕にて5mm以下の長さに調製する。その後、切断した繊維状物質210をポットとメディアからなる粉砕ミルに投入し、粉砕を行う。粉砕は遊星ボールミルが好適である。ここで、ミル投入前の繊維状物質210の長さが5mm以下でないと、互いに絡まるので粉砕効率が悪化し、粉砕不十分な繊維が残留しやすくなり、さらには基材120の孔124へ入りにくくなり、基材120への担持が困難となる可能性がある。次に、導電性酸化物221と、貴金属触媒を担持した触媒担持酸化物222をポットとメディアからなる粉砕ミルに溶媒と共に投入し、粉砕し、コート材220のスラリーを作製する。
その後、粉砕した繊維状物質210を、コート材220のスラリーに加えて混合し、マイクロ波加熱用触媒材料のスラリーを得る。
工程T120では、工程110で得られたマイクロ波加熱用触媒材料のスラリーを、基材120にディップコートする。具体的には、基材120をマイクロ波加熱触媒材料のスラリーに浸し、引き揚げた後、乾燥させて基材120の壁部122に未焼成のコーティング層200xを形成する。ここで、未焼成のコーティング層200xは、ウォッシュコート法により成型してもよい。
工程T130では、基材120に担持された未焼成のコーティング層200xを焼成してコーティング層200とする。
次に、本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱用触媒体200の実際の性能試験の結果を示す。
抵抗率が10Ω・cmの炭化ケイ素を主成分とする繊維状物質と、導電性酸化物としてAサイトをLaとし、BサイトにFe及びNiを有し、抵抗率が0.003Ω・cmのペロブスカイト型酸化物と、触媒担持酸化物としてγーアルミナと、触媒としてPtを用い、図4のようにしてマイクロ波加熱用触媒体200を製造した。
図5は、繊維状物質(炭化ケイ素繊維)210の昇温試験の結果を示す図である。この昇温試験では、繊維状物質210を5mm以下に切断し、さらに粉砕したものを堆積させて昇温試験用のサンプルとした。繊維状物質210の長さは、1mm以下であった。
そして、各サンプルに2.45GHzで100Wのマイクロ波を照射して、放射温度計を用いてサンプル表面の温度を測定した。繊維状物質210の抵抗率としては、3Ω・cmから5000Ω・cmまでのものを準備した。抵抗率は、長さ1cmに切断した繊維状物質の室温(25℃)における抵抗率を測定した。抵抗率が異なるサンプルは、炭化ケイ素に加える添加物を変えることで製造した。
図5に示すように、マイクロ波を照射すると、抵抗率が10Ω・cm以下の繊維状物質210の場合、温度が大幅に上昇し、マイクロ波を十分に吸収して発熱することがわかった。一方、抵抗率が10Ω・cmを超えた繊維状物質210の場合、温度上昇が少なかった。
図6は、図5における各サンプルの2分後の到達温度と、繊維状物質210の抵抗率の対数との関係を示す図である。
図6より、繊維状物質210の抵抗率を10Ω・cm以下とすれば、250℃以上の高温まで昇温できることがわかった。なお、繊維状物質210の抵抗率が低下するほど到達温度が高くなる傾向にある。但し、高温での安定性を考慮し、繊維状物質210の抵抗率を0.1Ω・cm以上とする。
図7、図8は、コーティング層中の各成分の組成(体積%)を変化させたときの各サンプルの2分後の到達温度(発熱特性)を示す。
なお、実施例1〜4は、繊維状物質(炭化ケイ素繊維)と、導電性酸化物と、触媒担持酸化物とをコーティング層に含む組成とした。一方、比較例1〜6は、繊維状物質(炭化ケイ素繊維)と、触媒担持酸化物のみをコーティング層に含み、導電性酸化物を含まない組成とした。
繊維状物質としては、抵抗率が10Ω・cmのものを使用した。
なお、図7の「SiC繊維+導電性酸化物」の体積割合は、コーティング層中のマイクロ波を吸収して発熱に寄与する部位の割合を示す。
図7より、各実施例の場合、到達温度が350℃以上となり、効率よくマイクロ波を吸収して発熱することがわかった。なお、導電性酸化物の体積割合が5%未満の実施例1の場合、他の実施例より到達温度が低かったが、実用上問題はない。
一方、比較例1〜4の場合、到達温度が350℃未満であった。これはコーティング層中の、吸収して発熱に寄与する部位の割合が40体積%以下と少ないためと考えられる。
又、比較例5の場合、到達温度が350℃以上となったが、発熱に寄与する部位の割合がほぼ同一の実施例3,4に比べて到達温度が低かった。これは、実施例3,4の導電性酸化物が繊維状物質同士の間に導電パスを形成し、マイクロ波をより効率的に吸収して発熱するためと考えられる。
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、マイクロ波加熱用触媒体の基材の形状は限定されない。
100 マイクロ波加熱用触媒体
120 基材
124 孔
200 マイクロ波加熱用触媒材料(コーティング層)
210 繊維状物質
220 コート材
221 導電性酸化物
221a、221b 導電性酸化物のうち繊維状物質同士を接続させた部位(導電パス)
222 触媒担持酸化物

Claims (5)

  1. マイクロ波が照射され、且つ、内部に形成された複数の孔を介して被処理ガスを流通させる基材の当該孔の内面に設けられるマイクロ波加熱用触媒材料であって、
    繊維状物質と、前記繊維状物質を保持するコート材と、を有し、
    前記繊維状物質は炭化ケイ素を主成分とし、マイクロ波を吸収して発熱することが可能で、室温における抵抗率が0.1Ω・cm以上10Ω・cm以下であり、
    前記コート材は、粒子及び該粒子の結合体からなる導電性酸化物と、触媒担持酸化物と、該触媒担持酸化物に担持されたPt、Pd及びRhの群から選ばれる少なくとも1種と、を有し、
    前記導電性酸化物の抵抗率が0.001Ω・cm以上10Ω・cm以下であり、
    少なくとも一部の前記繊維状物質同士が、前記導電性酸化物を介して互いに接続された状態で前記コート材に保持され、
    前記繊維状物質の合計体積が、前記導電性酸化物の合計体積より多いことを特徴とするマイクロ波加熱用触媒材料。
  2. 前記マイクロ波加熱用触媒材料に対する前記繊維状物質の合計体積の割合が25%以上65%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱用触媒材料。
  3. 前記コート材に対する前記導電性酸化物の合計体積の割合が5%以上30%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ波加熱用触媒材料。
  4. マイクロ波が照射され、且つ、内部に形成された複数の孔を介して被処理ガスを流通させる基材と、前記基材の前記孔の内面に設けられた触媒材料とを備える触媒体であって、
    前記触媒材料が、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ波加熱用触媒材料であることを特徴とするマイクロ波加熱用触媒体。
  5. 請求項4に記載のマイクロ波加熱用触媒体の製造方法であって、
    前記繊維状物質と前記コート材とを混合した前記マイクロ波加熱用触媒材料のスラリーを、前記基材にディップコートまたはウォッシュコートしたのち焼成することを特徴とするマイクロ波加熱用触媒体の製造方法。
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