JP6816359B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材フィルム及び硬化層を備えた光学フィルムの製造方法に関する。
光学フィルムとして、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられた機能性層とを備える複層構造のフィルムが知られている。このような光学フィルムでは、通常、機能性層が有する適切な光学特性によって、前記の光学フィルムの光学的機能が実現される。このような光学フィルムの製造方法の一例として、機能性層に対応した塗工液を基材フィルム上に塗工して硬化前層を形成する工程と、この硬化前層を硬化させて所望の機能性層を硬化層として得る工程とを含む製造方法が知られている(特許文献1〜4参照)。
特開2005−234554号公報 特開2005−254691号公報 特開2011−227488号公報 特開2013−184119号公報
前記のような光学フィルムの製造方法において、硬化層は、重合体を含む樹脂によって形成されうる。また、前記の硬化層に対応した塗工液としては、前記の重合体を生成しうるモノマーを含む液体が用いられうる。モノマーを含む塗工液を用いた光学フィルムの製造方法としては、例えば、モノマーとして光重合性液晶化合物を含む塗工液を用いて、硬化層として光学異方性層を備えた光学フィルムを製造する製造方法が挙げられる。
このような光学フィルムの製造方法では、硬化層に含まれる残留モノマーを少なくすることが望まれることがある。例えば、前記のように光学異方性層を備える光学フィルムの製造方法においては、出願人による検討によれば、光学異方性層における残留モノマーの量を減らすことが好ましい(特願2015−036854号参照)。
残留モノマーの量を減らすための方法として、本発明者は、硬化前層を硬化させる工程において基材フィルムを支持するバックロールを、室温よりも高温にする方法を検討した。バックロールを高温にすることにより、硬化反応時の反応温度を高温にできるので、モノマーの反応を促進することができ、結果として、残留モノマーの量を減らすことが可能である。
ところが、本発明者が更に検討を進めたところ、バックロールを高温にした場合、製造される光学フィルムの硬化層の面状態が悪化しうることが判明した。例えば、硬化層として光学異方性層を備える光学フィルムを製造した場合、一対の偏光板の間に前記の光学フィルムを挟んで観察すると、フィルム搬送方向に延在する縞状の面状故障が観察されうる。このような面状故障は、光学フィルムの不要部分(例えば、幅方向の端部等)において生じていても構わないが、光学フィルムの製品部分においては抑制することが望まれる。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、高温のバックロールを用いながら、面状態の良好な硬化層を備える光学フィルムを製造できる、光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、本発明者は、基材フィルムがバックロールに支持されている期間に、バックロールに接触した基材フィルムに熱膨張によるシワが生じ、このシワによって硬化層に面状故障が生じていることを見い出した。そして、本発明者は、バックロールと接触する前に予め基材フィルムを加熱しておくことにより、基材フィルムのシワの発生を抑制して、硬化層の面状故障の発生を抑制できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 長尺の基材フィルム及び硬化層を備える光学フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルムと、活性エネルギー線によって硬化しうる硬化前層と、を備えた複層フィルムの前記基材フィルムを、前記基材フィルムの有効部分が空中にある状態で、加熱する工程と、
加熱された前記基材フィルムを、30℃以上のバックロールに接触させた状態で、前記硬化前層に活性エネルギー線を照射することによって、前記硬化前層を硬化させて前記硬化層を得る工程と、を含む、光学フィルムの製造方法。
〔2〕 加熱された前記基材フィルムの温度Tbase、及び、前記バックロールの温度Tbrが、下記式(i)を満たす、〔1〕記載の光学フィルムの製造方法。
base −Tbr > −5℃ (i)
〔3〕 前記基材フィルムの幅方向の引張弾性率が、2500MPa以下であり、
前記基材フィルムの厚みが、50μm以下である、〔1〕又は〔2〕記載の光学フィルムの製造方法。
〔4〕 前記硬化層が、前記基材フィルムから剥離可能であるか、又は、他の部材に転写可能である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明の製造方法によれば、高温のバックロールを用いながら、面状態の良好な硬化層を備える光学フィルムを製造できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法において用いる製造装置を模式的に示す正面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法で用いる基材フィルムを模式的に示す平面図である。 図3は、バックロールに接触する前に基材フィルムを加熱しないで、基材フィルムをバックロールの周面に接触させた複層フィルムを、当該複層フィルムの搬送方向に垂直な平面で切った断面を、模式的に示す断面図である。 図4は、バックロールに接触する前に基材フィルムを加熱しないで、基材フィルムをバックロールの周面に接触させた複層フィルムを、当該複層フィルムの搬送方向に垂直な平面で切った断面を、模式的に示す断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、通常5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
以下の説明において、「偏光板」及び「波長板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。これらのレターデーションは、市販の位相差測定装置あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。
以下の説明において、層の遅相軸とは、別に断らない限り、当該層の面内方向における遅相軸を表す。
[1.光学フィルムの製造方法に係る実施形態の概要]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、
1.長尺の基材フィルムと、活性エネルギー線によって硬化しうる硬化前層と、を備えた複層フィルムを用意する工程;
2.複層フィルムの有効部分が空中にある状態で、複層フィルムの基材フィルムを加熱する工程;並びに、
3.加熱された基材フィルムを、バックロールに接触させた状態で、硬化前層に活性エネルギー線を照射することによって、硬化前層を硬化させて硬化層を得る工程;を含む。
この製造方法によれば、基材フィルムと、基材フィルム上に設けられた硬化層とを備える光学フィルムが得られる。
本実施形態においては、光重合性液晶化合物を含む硬化前層を備えた複層フィルムを用いて、硬化層として光学異方性層を備えた光学フィルムを製造する製造方法を例に挙げて説明する。
[2.基材フィルム]
基材フィルムとしては、光学フィルムに適用しうる任意のフィルムを用いうる。特に、基材フィルムとしては、幅方向の引張弾性率が小さいフィルムが好ましい。前記の引張弾性率は、具体的には、好ましくは2500MPa以下、より好ましくは2400MPa以下、特に好ましくは2300MPa以下である。幅方向の引張弾性率が小さい基材フィルムは、柔軟性が高いため、幅方向において変形を生じやすい。そのため、幅方向の引張弾性率が前記の範囲に収まる基材フィルムは、従来の製造方法によれば、容易にシワを生じるので、面状態が良好な硬化層を得ることが困難であった。これに対し、本実施形態に係る製造方法によれば、このように柔軟性が高い基材フィルムを用いた場合でも、面状態が良好な硬化層を得ることが可能である。したがって、従来は解決することが特に困難であった課題を解決できるようにする観点から、基材フィルムの幅方向の引張弾性率は、前記の範囲に収まることが好ましい。前記の引張弾性率の下限は、任意であるが、基材フィルムのハンドリング性を良好にする観点から、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、特に好ましくは200MPa以上である。
基材フィルムの厚みは、光学フィルムの用途に応じて設定しうるが、薄いことが好ましい。前記の厚みは、具体的には、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。薄い基材フィルムは、通常、変形を生じやすい。そのため、厚みが前記の範囲に収まる基材フィルムは、従来の製造方法によれば、容易にシワを生じるので、面状態が良好な硬化層を得ることが困難であった。これに対し、本実施形態に係る製造方法によれば、このように薄い基材フィルムを用いた場合でも、面状態が良好な硬化層を得ることが可能である。したがって、従来は解決することが特に困難であった課題を解決できるようにする観点から、基材フィルムの厚みは、前記の範囲に収まることが好ましい。前記の厚みの下限は、任意であるが、基材フィルムの製造を容易にする観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、特に好ましくは10μm以上である。ただし、基材フィルムとしてトリアセチルセルロースを含む樹脂フィルムを用いる場合、基材フィルムの厚みは、20μm〜150μmが好ましく、30μm〜130μmがより好ましく、60μm〜120μmが更に好ましい。
基材フィルムの材料は、特に限定されず、種々の樹脂を用いうる。樹脂の例としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性等の観点から、脂環式構造含有重合体及びセルロースエステルが好ましく、脂環式構造含有重合体がより好ましい。
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、通常は非晶質の重合体である。脂環式構造含有重合体としては、主鎖に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いうる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されうるが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位を前記のように多くすることにより、基材フィルムの耐熱性を高くできる。
脂環式構造含有重合体は、例えば、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン重合体がより好ましい。
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が特に好ましい。
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃〜250℃の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にある脂環式構造含有重合体は、高温下での使用における変形及び応力を生じ難く、耐久性に優れる。
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは25,000〜80,000、さらにより好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により、ポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の値で測定しうる。
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」、「ゼオノア1420R」を挙げうる。
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステル(例:セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースアセテートプロピオネート)が代表的である。低級脂肪酸は、1分子あたりの炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、トリアセチルセルロース(TAC)及びセルロースジアセテート(DAC)が含まれる。
セルロースアセテートの酢化度は、50%〜70%が好ましく、特に55%〜65%が好ましい。重量平均分子量は、70000〜120000が好ましく、特に80000〜100000が好ましい。また、上記セルロースアセテートは、酢酸だけでなく、一部プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸でエステル化されていてもよい。また、基材フィルムを構成する樹脂は、セルロースアセテートと、セルロースアセテート以外のセルロースエステル(セルロースプロピオネート及びセルロースブチレート等)とを組み合わせて含んでもよい。その場合、これらのセルロースエステルの全体が、上記酢化度を満足することが好ましい。
基材フィルムとして、トリアセチルセルロースのフィルムを用いる場合、かかるフィルムとしては、トリアセチルセルロースを低温溶解法あるいは高温溶解法によってジクロロメタンを実質的に含まない溶媒に溶解することで調製されたトリアセチルセルロースドープを用いて作製されたトリアセチルセルロースフィルムが、環境保全の観点から特に好ましい。トリアセチルセルロースのフィルムは、共流延法により作製しうる。共流延法は、トリアセチルセルロースの原料フレーク及び溶媒並びに必要に応じて任意の添加剤を含む溶液(ドープ)を調製し、当該ドープをドープ供給器(ダイ)から支持体の上に流延し、流延物をある程度乾燥して剛性が付与された時点でフィルムとして支持体から剥離し、当該フィルムをさらに乾燥して溶媒を除去することにより行いうる。原料フレークを溶解する溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素溶媒(ジクロロメタン等)、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル溶媒(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル溶媒(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等が挙げられる。ドープが含む添加剤の例としては、レターデーション上昇剤、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等が挙げられる。ドープを流延する支持体の例としては、水平式のエンドレスの金属ベルト、及び回転するドラムが挙げられる。流延に際しては、単一のドープを単層流延することもできるが、複数の層を共流延することもできる。複数の層を共流延する場合、例えば、低濃度のセルロースエステルドープの層と、そのおもて面及び裏面に接して設けられた高濃度のセルロースエステルドープの層が形成されるよう、複数のドープを順次流延しうる。フィルムを乾燥して溶媒を除去する方法の例としては、フィルムを搬送して、内部を乾燥に適した条件に設定した乾燥部を通過させる方法が挙げられる。
トリアセチルセルロースのフィルムの好ましい例としては、TAC−TD80U(富士写真フィルム社製)等の公知のもの、及び発明協会公開技報公技番号2001−1745号にて公開されたものが挙げられる。
基材フィルムは、透明性に優れることが、製造工程の自由度を高める上で好ましい。具体的には、基材フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。基材の全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
本実施形態で示す例のように、光重合性液晶化合物を含む硬化前層を備えた複層フィルムを用いて、硬化層として光学異方性層を備えた光学フィルムを製造する製造方法では、通常、基材フィルムとして、配向規制力を有するものを用いる。基材フィルムの配向規制力とは、基材フィルム上に形成された硬化前層中の光重合性液晶化合物を配向させうる、基材フィルムの性質をいう。
配向規制力は、基材フィルムの材料となるフィルムに、配向規制力を付与する処理を施すことにより付与しうる。かかる処理の例としては、延伸処理及びラビング処理が挙げられる。
好ましい態様において、基材フィルムは延伸フィルムである。かかる延伸フィルムとすることにより、基材フィルムを、延伸方向に応じた配向規制力を有するフィルムとしうる。
基材フィルムが延伸フィルムである場合、延伸方向は、任意である。よって、延伸は、斜め延伸(基材フィルムの長手方向及び幅方向のいずれとも非平行な方向への延伸)のみでもよく、横延伸(基材フィルムの幅方向への延伸)のみでもよく、縦延伸(基材フィルムの長手方向への延伸)のみでもよく、又はこれらの延伸を組み合わせて行ってもよい。
さらに好ましい態様において、基材フィルムは斜め延伸フィルムである。即ち、基材フィルムは、好ましくは、フィルムの長手方向及び幅方向のいずれとも非平行な方向に延伸されたフィルムである。
基材フィルムが斜め延伸フィルムである場合の、延伸方向と基材フィルムの幅方向とがなす角度は、具体的には0°超90°未満としうる。このような斜め延伸フィルムを用いることにより、長尺の直線偏光子に光学異方性層としての硬化層をロールツーロールで転写、積層して、円偏光板の効率的な製造が可能となる。
また、ある態様において、延伸方向と基材フィルムの幅方向とがなす角度を、好ましくは15°±5°、22.5±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、長尺の直線偏光子に光学異方性層としての硬化層をロールツーロールで転写、積層して、円偏光板の効率的な製造が可能となる。
延伸倍率は、基材フィルムの表面に配向規制力が生じる範囲で適宜設定しうる。基材フィルムが正の固有複屈折性を有する樹脂を材料として用いた場合、延伸方向に分子が配向して延伸方向に配向軸が発現する。
延伸は、テンター延伸機などの既知の延伸機を用いて行いうる。
[3.複層フィルムを用意する工程]
通常は、前記の基材フィルム上に硬化前層を形成して、複層フィルムを用意する。硬化前層は、活性エネルギー線の照射によって硬化しうる層である。ここで、活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。本実施形態に係る製造方法では、硬化前層が硬化することによって、光学フィルムの硬化層が得られる。
硬化前層は、通常、当該硬化前層に含まれうる成分を含む塗工液を基材フィルム上に塗工することによって、前記塗工液の層として設けられる。塗工液としては、目的とする硬化層に応じて適切なものを用いうる。通常は、活性エネルギー線の照射によって重合及び架橋等の反応を生じうるモノマー、オリゴマー又は重合性ポリマーを含む塗工液を用いる。以下の説明において、前記のモノマー、オリゴマー及び重合性ポリマーを包括して、適宜「モノマー成分」ということがある。前記のような塗工液を用いることにより、モノマー成分を含む硬化前層が得られる。そして、このような硬化前層は、活性エネルギー線が照射されることにより、前記のモノマー成分が重合及び架橋等の反応を生じることによって硬化しうる。
本実施形態で示す例のように、光重合性液晶化合物を含む硬化前層を備えた複層フィルムを用いて、硬化層として光学異方性層を備えた光学フィルムを製造する製造方法では、通常、塗工液として、光重合性液晶化合物を含み、必要に応じて任意の成分を含む液晶組成物を用いる。
液晶化合物は、液晶組成物に配合し配向させた際に、液晶相を呈しうる化合物である。光重合性液晶化合物とは、かかる液晶相を呈した状態で液晶組成物中で重合し、液晶相における分子の配向を維持したまま重合体となりうる液晶化合物である。また、以下の説明において、液晶組成物の成分であって、重合性を有する化合物(光重合性液晶化合物及びその他の重合性を有する化合物等)を総称して単に「重合性化合物」ということがある。
光重合性液晶化合物としては、重合性基を有する液晶化合物、側鎖型液晶ポリマーを形成しうる化合物、円盤状液晶性化合物などの化合物であって、活性エネルギー線を照射することによって重合しうる化合物が挙げられる。重合性基を有する液晶化合物としては、例えば、特開平11−513360号公報、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報に記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。円盤状液晶性化合物の具体例としては、特開平8−50206号公報、文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されているものが挙げられる。光重合性液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中でも、光重合性液晶化合物としては、逆波長重合性液晶化合物が好ましい。ここで、逆波長重合性液晶化合物とは、重合体とした場合、得られた重合体が逆波長分散特性を示す光重合性液晶化合物を示す。また、逆波長分散特性とは、波長450nmにおける面内レターデーションRe(450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(650)が、下記の式(1)及び式(2)を満たす特性をいう。
Re(450)/Re(550)<1 (1)
Re(650)/Re(550)>1 (2)
塗工液としての液晶組成物が含む光重合性液晶化合物の一部又は全部として、逆波長重合性液晶化合物を用いることにより、逆波長分散特性を有する光学異方性層を硬化層として容易に得ることができる。
逆波長重合性液晶化合物としては、当該逆波長重合性液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む化合物を用いうる。主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンを含む前記の逆波長重合性液晶化合物が配向した状態において、側鎖メソゲンは、主鎖メソゲンと異なる方向に配向しうる。そのため、このような配向を維持したまま逆波長重合性液晶化合物を重合させて得た重合体においては、主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンは、異なる方向に配向しうる。このような場合、複屈折は主鎖メソゲンに対応する屈折率と側鎖メソゲンに対応する屈折率との差として発現するので、結果として、逆波長重合性液晶化合物及びその重合体は、逆波長分散特性を発現できる。したがって、前記の逆波長重合性液晶化合物を用いることにより、逆波長分散特性を有する光学異方性層を硬化層として得ることが可能である。
前記のように主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンを有する化合物の立体形状は、一般的な正波長重合性液晶化合物の立体形状とは異なる特異的な形状である。ここで、「正波長重合性液晶化合物」とは、重合体とした場合、得られる重合体が正波長分散特性を示す重合性液晶化合物である。また、正波長分散特性とは、波長450nmにおける面内レターデーションRe(450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(650)が、下記の式(3)及び式(4)を満たす特性をいう。
Re(450)/Re(550)>1 (3)
Re(650)/Re(550)<1 (4)
逆波長重合性液晶化合物の例としては、下記式(I)で示される化合物を挙げることができる。以下、式(I)で示される化合物を、適宜「化合物(I)」ということがある。
Figure 0006816359
逆波長重合性液晶化合物が化合物(I)である場合、基−Y−A−Y−A−Y−A−Y−A−Y−A−Y−が主鎖メソゲンとなり、基>A−C(Q)=N−N(A)Aが側鎖メソゲンとなる。基Aは、主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンの両方の性質に影響する。
前記式(I)において、Y〜Yは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、又は、−NR−O−を表す。
ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
化合物(I)においては、Y〜Yは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であるのが好ましい。
前記式(I)において、G及びGは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の二価の脂肪族基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基;炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、炭素数4〜20のシクロアルケンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等の二価の脂肪族基;等が挙げられる。
及びGの二価の脂肪族基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられる。なかでも、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
また、前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、Rは、前記Rと同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
前記脂肪族基に介在する基としては、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−が好ましい。
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−S−CH−CH−、−CH−CH−O−C(=O)−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−O−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−O−CH−、−CH−O−C(=O)−O−CH−CH−、−CH−CH−NR−C(=O)−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−NR−CH−、−CH−NR−CH−CH−、−CH−C(=O)−CH−等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G及びGは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基〔−(CH10−〕等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH−〕、ヘキサメチレン基〔−(CH−〕、オクタメチレン基〔−(CH−〕、及び、デカメチレン基〔−(CH10−〕が特に好ましい。
前記式(I)において、Z及びZは、それぞれ独立して、無置換又はハロゲン原子で置換された炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z及びZのアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
及びZの炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=CH−CH−、CH−CH=CH−、CH=CH−CH−CH−、CH=C(CH)−CH−CH−、(CHC=CH−CH−、(CHC=CH−CH−CH−、CH=C(Cl)−、CH=C(CH)−CH−、CH−CH=CH−CH−等が挙げられる。
なかでも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Z及びZとしては、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=C(Cl)−、CH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−、又は、CH=C(CH)−CH−CH−が好ましく、CH=CH−、CH=C(CH)−、又は、CH=C(Cl)−がより好ましく、CH=CH−が特に好ましい。
前記式(I)において、Aは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、及びチオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示す環状構造を意味する。
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を有するものであってもよい。
前記芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チアゾロピリジン環、オキサゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、オキサゾロピラジン環、チアゾロピリダジン環、オキサゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、オキサゾロピリミジン環等の縮合環の芳香族複素環;等が挙げられる。
が有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R;−C(=O)−OR;−SO;等が挙げられる。ここで、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は、炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、Rは、後述するRと同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
また、Aが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であってもよく、縮合多環であってもよく、不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい。
さらに、Aの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するAにて同じである。)。
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、例えば、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルキニル基;等が挙げられる。
の好ましい具体例を以下に示す。但し、Aは以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式中、「−」は環の任意の位置からのびる結合手を表す(以下にて同じである。)。
(1)芳香族炭化水素環基
Figure 0006816359
Figure 0006816359
(2)芳香族複素環基
Figure 0006816359
Figure 0006816359
上記式中、Eは、NR6a、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R6aは、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Figure 0006816359
上記式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、NR、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。Rは、前記R6aと同様の、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Figure 0006816359
(上記式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
(3)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキル基
Figure 0006816359
(4)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルケニル基
Figure 0006816359
(5)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキニル基
Figure 0006816359
上記したAの中でも、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数4〜30の芳香族複素環基であることが好ましく、下記に示すいずれかの基であることがより好ましい。
Figure 0006816359
Figure 0006816359
さらに、Aは、下記に示すいずれかの基であることが更に好ましい。
Figure 0006816359
が有する環は、置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R;−C(=O)−OR;−SO;等が挙げられる。ここでRは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。なかでも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
また、Aが有する環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は、単環であってもよく、縮合多環であってもよい。
の炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するAにて同じである。)。
前記式(I)において、Aは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R、−SO−R、−C(=S)NH−R、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、4〜10であることが更に好ましい。
の、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数2〜20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。
の、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
の、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の炭素数2〜20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、2−ペンチニル基、ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2−オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7−デカニル基等が挙げられる。
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CHCF等の、少なくとも1個がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルコキシ基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;−C(=O)−R7a;−C(=O)−OR7a;−SO8a;−SR10;−SR10で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。ここで、R7a及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表し、R8aは、前記Rと同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
の、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R7a;−C(=O)−OR7a;−SO8a;水酸基;等が挙げられる。ここでR7a、R8aは前記と同じ意味を表す。
の、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基と同様な置換基が挙げられる。
の、−C(=O)−Rで表される基において、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素基を表す。これらの具体例は、前記Aの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
の、−SO−Rで表される基において、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。Rの、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数2〜20のアルケニル基の具体例は、前記Aの、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基の例として列記したものと同様のものが挙げられる。
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記Aで例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Aとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R、−SO−R、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基で表される基が好ましく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、−C(=O)−R、−SO−Rで表される基が更に好ましい。ここで、R、Rは前記と同じ意味を表す。
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、ベンゾイル基、−SR10が好ましい。ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
の、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基の置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基が好ましい。
また、AとAは、一緒になって、環を形成していてもよい。かかる環としては、例えば、置換基を有していてもよい、炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環が挙げられる。
前記炭素数4〜30の不飽和複素環、及び、炭素数6〜30の不飽和炭素環としては、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。
とAが一緒になって形成される環としては、例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(I)中の
Figure 0006816359
として表される部分を示すものである。
Figure 0006816359
Figure 0006816359
Figure 0006816359
(式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、Aが有する芳香環の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
とAに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、特に好ましくは18以下である。
とAの好ましい組み合わせとしては、
(α)Aが炭素数4〜30の、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であり、Aが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基及び−SR10のいずれかである組み合わせ、並びに、
(β)AとAが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成している組み合わせ、
が挙げられる。ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
とAのより好ましい組み合わせとしては、
(γ)Aが下記構造を有する基のいずれかであり、Aが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、及び−SR10のいずれかである組み合わせである。ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
Figure 0006816359
Figure 0006816359
(式中、X、Yは、前記と同じ意味を表す。)
とAの特に好ましい組み合わせとしては、
(δ)Aが下記構造を有する基のいずれかであり、Aが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、及び、−SR10のいずれかである組み合わせである。下記式中、Xは前記と同じ意味を表す。ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
Figure 0006816359
前記式(I)において、Aは、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であってもよく、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がさらに好ましい。なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y、Yを便宜上記載している(Y、Yは、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
Figure 0006816359
これらの中でも、Aとしては、下記に示す式(A11)〜(A25)で表される基がより好ましく、式(A11)、(A13)、(A15)、(A19)、(A23)で表される基がさらに好ましく、式(A11)、(A23)で表される基が特に好ましい。
Figure 0006816359
の、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前記Aの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。Aとしては、置換基を有さないものが好ましい。
前記式(I)において、A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等が挙げられる。
炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロプロパンジイル基;シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基等のシクロブタンジイル基;シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基等のシクロペンタンジイル基;シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロへキサンジイル基;シクロヘプタン−1,2−ジイル基、シクロヘプタン−1,3−ジイル基、シクロヘプタン−1,4−ジイル基等のシクロへプタンジイル基;シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,3−ジイル基、シクロオクタン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロオクタンジイル基;シクロデカン−1,2−ジイル基、シクロデカン−1,3−ジイル基、シクロデカン−1,4−ジイル基、シクロデカン−1,5−ジイル基等のシクロデカンジイル基;シクロドデカン−1,2−ジイル基、シクロドデカン−1,3−ジイル基、シクロドデカン−1,4−ジイル基、シクロドデカン−1,5−ジイル基等のシクロドデカンジイル基;シクロテトラデカン−1,2−ジイル基、シクロテトラデカン−1,3−ジイル基、シクロテトラデカン−1,4−ジイル基、シクロテトラデカン−1,5−ジイル基、シクロテトラデカン−1,7−ジイル基等のシクロテトラデカンジイル基;シクロエイコサン−1,2−ジイル基、シクロエイコサン−1,10−ジイル基等のシクロエイコサンジイル基;等が挙げられる。
炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基としては、例えば、デカリン−2,5−ジイル基、デカリン−2,7-ジイル基等のデカリンジイル基;アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,3−ジイル基等のアダマンタンジイル基;ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,5-ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,6−ジイル基等のビシクロ[2.2.1]へプタンジイル基;等が挙げられる。
これらの二価の脂環式炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記Aの芳香族基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、A及びAとしては、炭素数3〜12の二価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基がより好ましく、下記式(A31)〜(A34)
Figure 0006816359
で表される基がさらに好ましく、前記式(A32)で表される基が特に好ましい。
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、Y、Y(又はY、Y)と結合する炭素原子の立体配置の相違に基づく、シス型、トランス型の立体異性体が存在し得る。例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイル基の場合には、下記に示すように、シス型の異性体(A32a)とトランス型の異性体(A32b)が存在し得る。
Figure 0006816359
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、シス型であってもよく、トランス型であってもよく、あるいはシス型及びトランス型の異性体混合物であってもよいが、配向性が良好であることから、トランス型あるいはシス型であるのが好ましく、トランス型がより好ましい。
前記式(I)において、A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。A及びAの芳香族基は、単環のものであっても、多環のものであってもよい。A及びAの好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
Figure 0006816359
上記A及びAの二価の芳香族基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−OR8b基;等が挙げられる。ここでR8bは、炭素数1〜6のアルキル基である。なかでも、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。また、ハロゲン原子としてはフッ素原子が、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が、より好ましい。
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、下記式(A41)、(A42)及び(A43)で表される基がより好ましく、置換基を有していてもよい式(A41)で表される基が特に好ましい。
Figure 0006816359
前記式(I)において、Qは、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記Aで例示したのと同様のものが挙げられる。これらの中でも、Qは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
化合物(I)は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
塗工液としての液晶組成物は、上述した光重合性液晶化合物に組み合わせて、任意の成分を含みうる。例えば、液晶組成物は、重合性モノマーを含みうる。「重合性モノマー」とは、重合能を有しモノマーとして働きうる化合物のうち、特に、逆波長重合性液晶化合物以外の化合物をいう。重合性モノマーとしては、例えば、1分子当たり1以上の重合性基を有するものを用いうる。そのような重合性基を有することにより、光学異方性層の形成に際し重合を達成することができる。重合性モノマーが1分子当たり2以上の重合性基を有する架橋性モノマーである場合、架橋的な重合を達成することができる。かかる重合性基の例としては、化合物(I)中の基Z−Y−及びZ−Y−と同様の基を挙げることができ、より具体的には例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基を挙げることができる。
重合性モノマーは、それ自体が液晶性のものであってもよく、非液晶性のものであってもよい。ここで、それ自体が「非液晶性」であるとは、当該重合性モノマーそのものを、室温から200℃のいずれの温度に置いた場合にも、配向規制力を有する基材フィルム上で配向を示さないものをいう。配向を示すかどうかは、偏光顕微鏡のクロスニコル透過観察にてラビング方向を面相で回転させた場合に、明暗のコントラストがあるかどうかで判断する。
重合性モノマーの割合は、逆波長重合性液晶化合物100重量部に対し、好ましくは1重量部〜100重量部、より好ましくは5重量部〜50重量部である。当該範囲内で、重合性モノマーの割合を所望の逆波長分散特性を示すように適宜調整することにより、逆波長分散特性の精密な制御が容易となる。
重合性モノマーは、既知の製造方法により製造することができる。または、化合物(I)と類似の構造を持つものについては、化合物(I)の製造方法に準じて製造することができる。
塗工液としての液晶組成物は、光重合開始剤を含みうる。光重合開始剤としては、液晶組成物中の重合性化合物が有する重合性基の種類に応じて適宜選択しうる。例えば、重合性基がラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用しうる。
ラジカル重合開始剤の例としては、光照射により、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である光ラジカル発生剤が挙げられる。
光ラジカル発生剤としては、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。
前記アニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
また、前記カチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
市販の光重合開始剤の具体的な例としては、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、商品名:Irgacure651、商品名:Irgacure819、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure379、商品名:Irgacure379EG、及び商品名:Irgacure OXE02;ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919;等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の割合は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは0.1重量部〜30重量部、より好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
塗工液としての液晶組成物は、表面張力を調整するための、界面活性剤を含みうる。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いうる。例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤を用いうる。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社PolyFoxの「PF−151N」、「PF−636」、「PF−6320」、「PF−656」、「PF−6520」、「PF−3320」、「PF−651」、「PF−652」;ネオス社フタージェントの「FTX−209F」、「FTX−208G」、「FTX−204D」、「601AD」;セイミケミカル社サーフロンの「KH−40」、「S−420」等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の割合は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは0.01重量部〜10重量部、より好ましくは0.1重量部〜2重量部である。
塗工液としての液晶組成物は、有機溶媒等の溶媒を含みうる。かかる有機溶媒の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒;及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、60℃〜250℃であることが好ましく、60℃〜150℃であることがより好ましい。溶媒の使用量は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは100重量部〜1000重量部である。
塗工液としての液晶組成物は、さらに、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の任意の添加剤を含みうる。かかる任意の添加剤の割合は、重合性化合物100重量部に対し、好ましくは、各々0.1重量部〜20重量部である。
前記の塗工液を基材フィルム上に塗工することによって、硬化前層が得られる。塗工は、通常、連続的に搬送される長尺の基材フィルムの一方の面上に、塗工液を塗工することによって行う。塗工方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。形成される硬化前層の厚みは、硬化層に求められる所望の厚さに応じて、適切に設定しうる。
塗工液を基材フィルム上に塗工する場合、基材フィルムに適度の張力(通常、100N/m〜500N/m)を掛けて、基材フィルムの搬送ばたつきを少なくし平面性を維持したまま塗布することが好ましい。平面性とは、基材フィルムの幅手方向および搬送方向に垂直な上下方向の振れ量であり、理想的には0mmであるが、通常1mm以下である。
[5.配向工程]
基材フィルムを加熱する工程の前に、必要に応じて、硬化前層に含まれる光重合性液晶化合物の配向を促進するために、配向処理を施してもよい。配向は、液晶組成物の塗工により直ちに達成される場合もあるが、加温などの配向処理を施すことにより達成される場合もある。配向処理の条件は、使用する液晶組成物の性質に応じて適宜設定しうるが、例えば、50℃〜160℃の温度条件において30秒間〜5分間処理する条件としうる。
[6.乾燥工程]
基材フィルムを加熱する工程の前に、必要に応じて、硬化前層を乾燥させる工程を行なってもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、硬化前層から、溶媒を除去することができる。
[7.予熱工程]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学フィルム10の製造方法において用いる製造装置20を模式的に示す正面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る光学フィルム10の製造方法では、上述したように基材フィルム30及び硬化前層40を備えた複層フィルム50を用意した後で、この複層フィルム50の基材フィルム30を加熱する工程を行う。基材フィルム30を加熱する際、通常は、当該基材フィルム30上に設けられた硬化前層40も加熱される。本実施形態では、複層フィルム50を、平面性を維持したまま、その長手方向に連続的に搬送することによって、加熱装置としてのオーブン100に供給し、このオーブン100によって基材フィルム30を加熱する例を示して説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る光学フィルム10の製造方法で用いる基材フィルム30を模式的に示す平面図である。前記の基材フィルム30の加熱は、基材フィルム30の有効部分が空中にある状態で行う。ここで、基材フィルム30の有効部分とは、光学フィルム10の製品部分に対応した基材フィルム30の部分である。通常、長尺の光学フィルム10においては幅方向の両端部が切り除かれ、その幅方向の両端部を除いた中間部分が製品として使用される。したがって、基材フィルム30の有効部分とは、通常、図2に示すように、基材フィルム30の幅方向の両端部32及び33を除いた中間部分31が該当する。そこで、以下の説明では、基材フィルム30の有効部分を、基材フィルム30の中間部分31と共通の符号「31」を付して説明する。
また、基材フィルム30の部分が空中にある状態とは、基材フィルム30の前記部分に、ロール、オーブン等の製造設備が接触していない状態をいう。よって、基材フィルム30の有効部分31が空中にある状態では、有効部分31が製造設備に接触しない。他方、基材フィルム30が加熱される工程において、両端部32及び33のような基材フィルム30の有効部分31以外の部分は、空中にあって製造設備が接触していない状態でもよく、空中になく製造設備が接触している状態でもよい。本実施形態では、有効部分31並びに両端部32及び33を含む基材フィルム30の幅方向の全体が空中にある状態で、オーブン100による基材フィルム30の加熱が行われる例を示して説明する。
基材フィルム30の加熱は、加熱された基材フィルム30が、所定の予熱温度Tbaseとなるように行う。予熱温度Tbaseは、製造装置20が設置された部屋の室温より高い温度であり、中でも、バックロール200の温度Tbrに対して下記式(i)を満たすことが好ましい。
base −Tbr > −5℃ (i)
前記式(i)について更に詳しく説明すると、予熱温度Tbaseは、好ましくは「Tbr−5℃」より高く、より好ましくは「Tbr−3℃」より高く、特に好ましくは「Tbr−1℃」より高い。基材フィルム30がバックロール200に接触する前に、基材フィルム30を加熱して前記のような予熱温度Tbaseにすることによって、バックロール200と接触するときの基材フィルム30におけるシワの発生を抑制でき、そのため、面状態の良好な硬化層を得ることができる。予熱温度Tbaseの上限は、基材フィルム30の変形を抑制する観点から、基材フィルム30に含まれる樹脂のガラス転移温度以下が好ましい。
基材フィルム30は薄いので、加熱装置によって加熱されると、通常は速やかに加熱装置の設定温度に到達する。よって、通常は、加熱装置の設定温度を、その加熱装置によって加熱された基材フィルム30の予熱温度Tbaseとしうる。
オーブン100によって予熱温度Tbaseにまで加熱された基材フィルム30を含む複層フィルム50は、図1に示すように、バックロール200へ向けて搬送される。この際、複層フィルム50は、オーブン100で加熱されてから、バックロール200に接触するまでの間に、基材フィルム30の温度が予熱温度Tbaseから大きく低下しないように、搬送されることが好ましい。具体的には、前記の温度低下は、基材フィルム30がバックロール200に接触を開始した時点での基材フィルム30とバックロール200との温度差によって生じうる膨張応力を、基材フィルム30にシワを生じさせない程度に弱くできるように、小さい範囲に収めることが好ましい。このように温度低下を小さくするために、オーブン100は、フィルム搬送路においてバックロール200の直前に設けることが好ましい。ここで、フィルム搬送路においてオーブン100の位置がバックロール200の直前であるとは、オーブン100とバックロール200との間のフィルム搬送路に、複層フィルム50に接触する部材(搬送ロール等)が無いことを示す。これにより、接触による基材フィルム30の温度低下を抑制できる。また、オーブン100とバックロール200との距離は、近いことが好ましい。これにより、放熱による基材フィルム30の温度低下を抑制できる。
基材フィルム30とバックロール200とが接触を開始する時点において、基材フィルム30は、上述した式(i)を満たす予熱温度Tbaseを有することが好ましい。よって、前記のように、オーブン100で加熱されてから、バックロール200に接触するまでの間に、基材フィルム30の温度が低下する場合には、その温度低下の分だけ高温に、オーブン100によって基材フィルム30を加熱することが好ましい。
[8.硬化前層を硬化させる工程]
フィルム搬送路においてオーブン100の下流には、バックロール200が設けられている。このバックロール200は、活性エネルギー線310の照射に際して、基材フィルム30を、硬化前層40とは反対側から支持しうるロールである。
バックロール200は、矢印A200で示すように、複層フィルム50の搬送方向と同じ向きで回転している。このバックロール200へと複層フィルム50が搬送されてくると、複層フィルム50は、位置Lにおいて、基材フィルム30がバックロール200の周面210に接触した状態で支持されて搬送される。
この位置Lにおいて、複層フィルム50の硬化前層40に、照射装置300から活性エネルギー線310を照射することによって、硬化前層40を硬化させて硬化層60を得る工程が行われる。通常、活性エネルギー線310の照射により、硬化前層40に含まれるモノマー成分が重合又は架橋等の反応を生じる。そのため、活性エネルギー線310の照射によって、硬化前層40が硬化する。本実施形態に示す例のように、硬化前層40が光重合性液晶化合物を含む場合、光重合性液晶化合物は、その配向を維持したままで重合するので、硬化層60として光学異方性層が得られる。
前記のように硬化前層40を硬化させる工程は、バックロール200の温度Tbrを、所定の範囲に調整して行う。具体的には、バックロール200の温度Tbrは、通常30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上である。バックロール200の温度Tbrを前記のように高くすることにより、硬化前層40に含まれるモノマー成分の反応が促進されるので、残留モノマー成分割合の低い硬化層60が得られる。ここで、残留モノマー成分割合とは、硬化層60に含まれるモノマー成分の割合をいう。バックロール200の温度Tbrの上限は、基材フィルム30の変形を防ぐ観点から、基材フィルム30に含まれる樹脂のガラス転移温度以下が好ましい。
活性エネルギー線310の照射強度は、硬化前層40を十分に硬化させられるように、適切な範囲に設定することが好ましい。例えば、活性エネルギー線310として紫外線を用いる場合、紫外線照射強度は、好ましくは0.1mW/cm〜1000mW/cm、より好ましくは0.5mW/cm〜600mW/cmである。また、紫外線照射時間は、好ましくは1秒〜300秒、より好ましくは5秒〜100秒である。紫外線の積算光量(mJ/cm)は、紫外線照射強度(mW/cm)×照射時間(秒)で求められる。紫外線照射光源としては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、低圧水銀灯、UV−LEDなどの光源を用いることができる。
硬化前層40への活性エネルギー線310の照射は、空気下で行うよりは、窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下で行ったほうが、残留モノマー成分割合が低減される傾向にある。よって、硬化前層40への活性エネルギー線310の照射は、そのような不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
硬化前層40を硬化させる前記の工程により、面状態の良好な硬化層60が得られる。本発明者の検討によれば、本実施形態に係る製造方法によって面状態の良好な硬化層60が得られる理由は、下記の通りと推察される。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の推察によって制限されない。
図3及び図4は、バックロール910に接触する前に基材フィルム920を加熱しないで、基材フィルム920をバックロール910の周面930に接触させた複層フィルム940を、当該複層フィルム940の搬送方向に垂直な平面で切った断面を、模式的に示す断面図である。
図3に示すように、仮に、基材フィルム920を加熱しないで、基材フィルム920をバックロール910の周面930に接触させた場合を想定する。この場合、バックロール910の温度が室温よりも高いと、基材フィルム920がバックロール910の周面930に接触することで、基材フィルム920が加熱される。加熱された基材フィルム920には、矢印A10で示すように、熱膨張によって膨張応力が生じる。そのため、基材フィルム920は、面内方向に伸びようとする。
ところが、通常、基材フィルム920が、バックロール910の周面930にグリップし易いので、基材フィルム920とバックロール910の周面930との間には、矢印A20で示すように、大きな摩擦力が生じる。この摩擦力が、基材フィルム920を拘束し、基材フィルム920の膨張応力による伸びを妨げるので、結果として、基材フィルム920は、伸びによって膨張応力を解消することができない。
このように解消できなかった膨張応力により、図4に示すように、基材フィルム920は、その厚み方向に屈曲するように変形を生じる。そして、この厚み方向への変形により、基材フィルム920には、その搬送方向に伸びるシワが生じうる。このようなシワが基材フィルム920に生じると、基材フィルム920上に設けられた硬化前層950に影響が生じるので、硬化前層950が硬化して得られる硬化層に面状故障が生じていた。
これに対し、本実施形態に係る製造方法では、図1に示すように、バックロール200に接触する前に基材フィルム30を加熱した。そのため、基材フィルム30がバックロール200に接触しても、基材フィルム30には、シワを生じさせるほど大きな膨張応力は生じ難い。したがって、バックロール200の周面210に接触した状態で支持される基材フィルム30でのシワを抑制できるので、硬化層60の面状故障を抑制でき、結果として、硬化層60の面状態を良好にできる。
さらに、本実施形態に係る製造方法では、オーブン100による基材フィルム30の加熱を、有効部分31を含む基材フィルム30の幅方向の全体が空中にある状態で行った。そのため、加熱の際、基材フィルム30には摩擦力による拘束が働かないので、オーブン100による加熱によっても、基材フィルム30にシワが生じ難い。したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、硬化層60の面状態を、特に良好にし易い。
[9.光学フィルム]
複層フィルム50の硬化前層40を硬化させることにより、基材フィルム30及び硬化層60を備える光学フィルム10を得ることができる。本実施形態に係る製造方法では、長尺の基材フィルム30を用いているので、光学フィルム10も、長尺のフィルムとして得られる。
この光学フィルム10の硬化層60においては、面状故障が抑制されている。そのため、硬化層60の面状態は、良好である。ここで、硬化層60の面状態は、下記の方法によって評価しうる。
面光源装置上に、第一の直線偏光板、光学フィルム及び第二の直線偏光板を置いて、面光源装置、第一の直線偏光板、基材フィルム、硬化層、及び、第二の直線偏光板をこの順に備える評価系を用意する。この際、第一の直線偏光板の偏光透過軸と、第二の直線偏光板の偏光透過軸との位置関係は、基材フィルム及び硬化層のレターデーションに応じて、面状故障を検出し易い適切な位置に設定する。その後、面光源装置を発光させて、様々な方位から光学フィルムを観察することにより、硬化層の面状態を評価しうる。
また、硬化層60においては、通常、残留モノマー成分割合が、小さい。硬化層60の具体的な残留モノマー成分割合は、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは6重量%以下である。残留モノマー成分割合の下限は、理想的には0重量%であるが、2重量%以上となりうる。硬化層60の残留モノマー成分割合がこのように小さいことは、重合及び架橋等の反応が高度に進行したことを表す。よって、前記の硬化層60は、優れた機械的強度を有するので、高い耐久性を有することができる。さらに、特に本実施形態のように硬化層60が光学異方性層である場合、硬化層60の残留モノマー成分割合をこのように小さくすることによって、硬化層60を接着剤と接触させた場合に、硬化層60の面内レターデーションの変化を抑制できる。
硬化層60の残留モノマー成分割合は、硬化層からモノマー成分を抽出し抽出溶液を得て、当該抽出溶液中のモノマー成分の量を定量することにより求めうる。抽出溶液中のモノマー成分の定量は、ガスクロマトグラフィー等の定量方法により行いうる。
硬化層60は、基材フィルム30から剥離可能であることが好ましい。また、硬化層60は、他の部材に転写可能であることが好ましい。これにより、基材フィルム30の影響を受けずに硬化層60の光学特性を発揮させることが可能になるので、硬化層60を広範な用途に用いることができる。特に、硬化層60は、前記のように接着剤と接触させた場合の面内レターデーションの変化が抑制されているので、接着剤を用いて他の部材と貼り合わせて用いる用途において、所望の光学特性を安定して発揮させることが可能である。
硬化層60の厚みは、光学フィルム10の用途に応じて任意に設定しうる。具体的な厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
また、本実施形態のように硬化層60として光学異方性層を備える光学フィルム10を製造した場合、その光学異方性層は、通常、光重合性液晶化合物から得られる硬化液晶分子を含む。「硬化液晶分子」とは、液晶相を呈しうる化合物を、液晶相を呈した状態のまま固体とした際の当該化合物の分子を意味する。光学異方性層が含む硬化液晶分子は、通常、光重合性液晶化合物を重合させてなる重合体である。
光学異方性層において、硬化液晶分子は、好ましくは、基材フィルムに対して水平配向した配向規則性を有しうる。ここで、硬化液晶分子が基材フィルムに対して「水平配向」するとは、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向の平均方向が、フィルム面と平行又は平行に近い(例えばフィルム面となす角度が5°以内)、ある一の方向に整列することをいう。硬化液晶分子が水平配向しているか否か、及びその整列方向は、AxoScan(Axometrics社製)等の位相差計を用いた測定により確認しうる。
ここで、硬化液晶分子が、棒状の分子構造を有する光重合性液晶化合物を重合させてなるものである場合は、通常は、当該光重合性液晶化合物のメソゲンの長軸方向が、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向となる。また、光重合性液晶化合物として逆波長分散光重合性液晶化合物を用いた場合のように、光学異方性層中に、配向方向の異なる複数種類のメソゲンが存在する場合は、それらのうち最も長い種類のメソゲンの長軸方向が整列する方向が、当該整列方向となる。
光学異方性層は、逆波長分散特性を有することが好ましい。逆波長分散特性を有する光学異方性層は、通常、短波長より長波長の透過光について、大きい面内レターデーションを示す。そのため、光学異方性層が逆波長分散特性を有することにより、光学異方性層は、λ/4波長板又はλ/2波長板といった光学用途において、広い波長帯域において均一に機能を発現できる。
光学異方性層は、光学異方性を有するので、光学異方性層を透過する光にレターデーションを生じさせる。好ましい態様として、光学異方性層は、λ/4波長板又はλ/2波長板である。具体的には、測定波長550nmで測定した面内レターデーションReが、108nm〜168nmの範囲である場合、光学異方性層は、λ/4波長板として使用しうる。また、測定波長550nmで測定した面内レターデーションReが245nm〜305nmの範囲である場合、光学異方性層は、λ/2波長板として使用しうる。より具体的には、λ/4波長板の場合、測定波長550nmで測定した面内レターデーションReは、好ましくは110〜170nm(即ち140±30nm)、より好ましくは128nm〜148nm、さらにより好ましくは135nm〜145nm(即ち140±5nm)の範囲である。また、λ/2波長板の場合、測定波長550nmで測定した面内レターデーションReは、好ましくは265nm〜285nm、より好ましくは270nm〜280nmの範囲である。光学異方性層が、このようなλ/4波長板又はλ/2波長板である場合、それを利用して、λ/4波長板又はλ/2波長板を有する円偏光板等の光学素子を容易に製造しうる。
光学異方性層の遅相軸と光学異方性層の幅方向とがなす角度は、基材フィルム30の配向規制力の方向と基材フィルム30の幅方向とがなす角度と同様としうる。具体的には、基材フィルム30が斜め延伸フィルムであり、当該延伸方向に沿った配向規制力を有する場合、光学異方性層の遅相軸と光学異方性層の幅方向とがなす角度は、具体的には0°超90°未満としうる。また、ある態様において、光学異方性層の遅相軸と光学異方性層の幅方向とがなす角度は、好ましくは15°±5°、22.5°±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、光学フィルム10を、円偏光板の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
[10.変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は更に変更して実施しうる。
例えば、上述した実施形態では、硬化層60として光学異方性層を形成したが、光学異方性層以外の硬化層60を製造する際に、本発明の光学フィルムの製造方法を適用してもよい。光学異方性層以外の硬化層60としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防眩層、易接着層などが挙げられる。
また、光学フィルム10の製造方法は、上述した以外の工程を含んでいてもよい。例えば、光学フィルム10の製造方法は、硬化層60上に、任意の層を形成する工程を含んでいてもよい。任意の層としては、他の部材と接着するための接着層、フィルムの滑り性を良くするマット層、ハードコート層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
さらに、加熱装置としては、オーブン100以外の装置を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、オーブン100における基材フィルム30の加熱を、基材フィルム30の幅方向の全体が空中にある状態で行ったが、前記の加熱は、基材フィルム30の有効部分31以外の部分に製造設備が接触した状態で行ってもよい。例えば、基材フィルム30の幅方向の両端部32及び33(図2参照)をテンター装置で引っ張って、基材フィルム30に延伸が生じない程度に弱いフィルム幅方向の張力を与えながら、加熱を行ってもよい。このように、基材フィルム30の有効部分31以外の部分に製造設備が接触した状態で加熱を行った場合でも、光学フィルム10の製品部分においては、硬化層60の面状態を良好にすることが可能である。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
〔フィルムの幅方向における引張弾性率の測定方法〕
フィルムから、前記フィルムの幅方向に平行な長辺を有する矩形の試験片(長さ250mm×幅10mm)を切り出した。この試験片を長辺方向に引っ張って歪ませる際の応力を、JIS K7113に基づき、恒温恒湿槽付き引張試験機(インストロンジャパン社製の5564型デジタル材料試験機)を用いて、温度23℃、湿度60±5%RH、チャック間距離115mm、引張速度100mm/minの条件で、測定した。このような測定を3回行った。そして、測定された応力とその応力に対応した歪みの測定データから、試験片の歪が0.6%〜1.2%の範囲で0.2%毎に測定データ(即ち、歪みが0.6%、0.8%、1.0%及び1.2%の時の測定データ)を選択し、この選択された3回分の測定データから最小二乗法を用いてフィルムの引張弾性率を計算した。
〔硬化層の残留モノマー成分割合の測定方法〕
実施例及び比較例で用いた光重合性液晶化合物を、溶媒(1,3−ジオキソラン)に溶解し、様々な濃度の検量線作成用の溶液を得た。これらの溶液をHPLCに供し、検量線を作成した。
各実施例及び比較例で得られた光学フィルムから、硬化層の10cm×10cm分を、スパチュラで削り取り、バイアルに入れ秤量した。さらに、溶媒(1,3−ジオキソラン)1gを入れ、24時間静置し、0.45μmフィルターで1回濾過することにより未反応モノマー成分を抽出し、抽出液を得た。得られた抽出液をHPLCにて分析し、測定結果を検量線と対照することにより、残留モノマー成分割合を求めた。
HPLCの条件は下記の通りとした。
カラム:LC1200(Agilent Technologies社製)
カラム温度:40℃
キャリア(水:アセトニトリル)
0min(水:アセトニトリル=5:95)から5min(水:アセトニトリル=0:100)まで直線濃度勾配、その後25min(水:アセトニトリル=0:100)
残留モノマー成分の流出時間:13.2min付近
〔硬化層の面状態の評価方法〕
面光源装置上に、第一の直線偏光板、光学フィルム及び第二の直線偏光板を置いて、面光源装置、第一の直線偏光板、基材フィルム、硬化層、及び、第二の直線偏光板をこの順に備える評価系を用意した。この際、第一の直線偏光板の偏光透過軸と、第二の直線偏光板の偏光透過軸との位置関係は、厚み方向から見て平行(パラニコル)に設定した。
前記の評価系において、面光源装置を発光させて、様々な方位から光学フィルムを観察し、下記の基準によって光学フィルムの硬化層の面状態を判定した。
良:面状故障が観察されない。
不良:基材フィルムの変形を伴う面状故障が観察された。
[製造例1.塗工液の製造]
下記式(B1)で表される構造を有する光重合性液晶化合物(B1)100部、光重合開始剤(BASF社製「Irgacure379EG」)3部、及び、界面活性剤(ネオス社製「フタージェント601AD」)0.3部を量り取り、さらに、希釈溶媒(シクロペンタノン:1,3−ジオキソラン=1:1)を、固形分が22%になるように加え、50℃に加温し溶解させた。得られた混合物を、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、塗工液としての液晶組成物を製造した。
Figure 0006816359
[実施例1]
基材フィルムとして、脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる、長尺の斜め延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム ZDシリーズ」、樹脂のガラス転移温度126℃、厚み47μm、波長550nmにおける面内レターデーション141nm、延伸方向は幅方向に対して45°の方向)を用意した。この基材フィルム上に、製造例1で得られた液晶組成物をダイによって塗布して、硬化前層として液晶組成物の層を形成した。硬化前層の厚みは、得られる硬化層の厚みが2.3μm程度になるように調整した。これにより、基材フィルム及び硬化前層を備える複層フィルムを得た。
その後、110℃オーブンで2分ほど乾燥させて、硬化前層中の溶媒を蒸発させると同時に、硬化前層に含まれる光重合性液晶化合物を、基材フィルムの延伸方向に配向させた。
その後、図1に示すように、バックロール200の直前に設けられたオーブン100を通るように複層フィルム50を搬送して、複層フィルム50の基材フィルム30を加熱した。オーブン100による前記の加熱は、複層フィルム50には如何なる部材も接触しないようにすることで、基材フィルム30が空中にある状態で行った。また、前記の加熱の際、オーブン100の温度を表1に示す予熱温度Tbaseに設定することで、加熱直後の基材フィルム30が前記の予熱温度Tbaseとなるように調整した。
加熱後、複層フィルム50を、直ちに、表1に示す温度Tbrのバックロール200へと搬送した。そして、基材フィルム30をバックロール200へ密着させた状態で搬送しながら、複層フィルム50の硬化前層40に、紫外線照射装置によって紫外線を照射した。照射は、窒素雰囲気下で行った。光重合性液晶化合物が重合することにより、硬化前層40が硬化して、光学異方性層を硬化層60として得た。このようにして、基材フィルム30及び硬化層60を備える光学フィルム10を製造した。
その後、得られた光学フィルム10を、上述した方法によって評価した。
[実施例2]
オーブンの温度を変更することにより、オーブンで加熱された直後の基材フィルムの予熱温度Tbaseを表1に示すように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[実施例3]
基材フィルムを、脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる、長尺の斜め延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム ZDシリーズ」、樹脂のガラス転移温度126℃、厚み23μm、波長550nmにおける面内レターデーション141nm、延伸方向は幅方向に対して45°の方向)に変更した。また、オーブンの温度を変更することにより、オーブンで加熱された直後の基材フィルムの予熱温度Tbaseを表1に示すように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[比較例1及び2]
オーブンによる基材フィルムの加熱を行わなかった。また、バックロールの温度Tbrを、表1に示すように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムの製造及び評価を行った。
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。表1において、比較例1及び比較例2のTbaseは、バックロールに接触する直前の基材フィルムの温度を示す。この温度は、基材フィルムに熱電対を貼りつけて、測定機(キーエンス社製「データロガーNR−600」)を用いて測定した。また、表1において、略称の意味は、下記の通りである。
base:オーブンによる加熱直後の基材フィルムの温度(予熱温度)。
br:バックロールの温度。
基材厚み:基材フィルムの厚み。
弾性率:基材フィルムの幅方向の引張弾性率。
Figure 0006816359
[検討]
比較例1に示すように、バックロールの温度Tbrが室温に近い場合、硬化層に面状故障は生じないが、硬化層の残留モノマー成分割合は高くなる。他方、バックロールの温度Tbrが高温である場合、硬化層の残留モノマー成分割合を低くできるが、バックロールに接触する基材フィルムにシワが生じ、結果として、硬化層に面状故障が生じていた。
これに対し、実施例1〜3では、基材フィルムが高温のバックロールに接触する直前で、基材フィルムをバックロールの温度Tbrに近い温度まで加熱している。これにより、バックロールに接触した基材フィルムにシワが生じなかったので、硬化層における面状故障を抑制することができた。
以上の結果から、本発明の製造方法によれば、高温のバックロールを用いながら、面状態の良好な硬化層を備える光学フィルムを製造できることが確認された。
10 光学フィルム
20 製造装置
30 基材フィルム
31 基材フィルムの有効部分(中間部分)
32及び33 基材フィルムの端部
40 硬化前層
50 複層フィルム
60 硬化層
100 オーブン
200 バックロール
210 バックロールの周面
300 照射装置
310 活性エネルギー線

Claims (6)

  1. 長尺の基材フィルム及び硬化層を備える光学フィルムの製造方法であって、
    前記硬化層の厚みが、0.5μm以上5μm以下であり、
    前記基材フィルムと、活性エネルギー線によって硬化しうる硬化前層と、を備えた複層フィルムの前記基材フィルムを、前記基材フィルムの有効部分が空中にある状態で、加熱する工程と、
    加熱された前記基材フィルムを、30℃以上のバックロールに接触させた状態で、前記硬化前層に活性エネルギー線を照射することによって、前記硬化前層を硬化させて前記硬化層を得る工程と、を含み、
    加熱された前記基材フィルムの温度Tbase、及び、前記バックロールの温度Tbrが、 下記式を満たす、光学フィルムの製造方法。
    −0.5℃ ≧ Tbase −Tbr > −5℃
  2. 前記基材フィルムの幅方向の引張弾性率が、2500MPa以下であり、
    前記基材フィルムの厚みが、50μm以下である、請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記硬化層が、前記基材フィルムから剥離可能であるか、又は、他の部材に転写可能である、請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記基材フィルムの材料が、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記基材フィルムが、延伸フィルムである、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記硬化前層が、光重合性液晶化合物を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
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