以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
<アイアンゴルフクラブヘッドの構成>
図1〜図5に示されるように、実施の形態1に係るアイアンゴルフクラブヘッド100は、ロフト角Lo(図3参照)が40度以上であるいわゆるウェッジゴルフクラブである。アイアンゴルフクラブヘッド100は、フェース部1およびソールバック部2を含む本体部10と、シャフトが挿入されるホーゼル部20とを備える。なお、図4は、図1に示されるスコアラインセンターを通りかつスコアラインに垂直な方向に沿った断面図である。
図1および図4に示されるように、本体部10は、トップエッジ部10aと、リーディングエッジ部10bと、ヒール部10cと、トゥ部10dと、トレーリングエッジ部10eとを有している。トップエッジ部10aは、アイアンゴルフクラブヘッド100が設定されているロフト角およびライ角となるように水平面に設置された状態(以下、「基準位置」という)において、本体部10の上端部を成す部分である。リーディングエッジ部10bは、上記基準位置において、本体部10の前端部を成す部分である。なお、本体部10における前または後とは、スイングされるときのアイアンゴルフクラブヘッド100の進行方向における前または後を指す。ヒール部10cは、ホーゼル部20の下端とソールバック部2とを接続する部分である。トゥ部10dは、ヒール部10cと対向する位置で,ソールバック部2とトップエッジ部10aとを接続する部分である。トレーリングエッジ部10eは、上記基準位置において、トップエッジ部10aよりも前方であってリーディングエッジ部10bよりも後方に配置され、かつ後述する第2裏面14の下端と第2下方面15bの後端とを接続する部分である。
図4および図5に示されるように、フェース部1は、打球する打球面11と、打球面11とは反対側に位置する第1裏面13とを有している。ソールバック部2は、アイアンゴルフクラブヘッド100が上記基準位置において第1裏面13よりも下方に配置され、第1裏面13と接続されている第2裏面14を有している。本体部10には、フェース部1およびソールバック部2によって外部から区画された第1中空部3が設けられている。アイアンゴルフクラブヘッド100において、第1中空部3は、打球面11と第2裏面14との間にのみ配置されており、打球面11と第1裏面13との間には配置されていない。
アイアンゴルフクラブヘッド100の体積V1(単位:mm3)に対するアイアンゴルフクラブヘッド100の重量W(単位:g)の比率W/V1(単位:g/mm3)は、6.5×10-3以下である。上記体積V1は、第1中空部3の体積V2を含む。体積V1は、例えばアイアンゴルフクラブヘッド100を水中に投入することにより、測定され得る。好ましくは、比率W/V1は6.0以下である。
アイアンゴルフクラブヘッド100のソール最大幅Swは、25mm以上である。ソール最大幅Swは、図4に示されるスコアラインセンター断面に表れる、リーディングエッジ部10bとトレーリングエッジ部10eとを結ぶ距離を指す。ソール最大幅Swは、例えばノギスを用いて容易に測定され得る。好ましくは、ソール最大幅Swは27mm以上である。
アイアンゴルフクラブヘッド100のスイートスポット高さSh(図4参照)は、20mm以上である。スイートスポット高さShは、上記基準状態において、上記水平面に対するスイートスポットSS(図4参照)の高さである。スイートスポットSSは、アイアンゴルフクラブヘッド100の重心COG(図4参照)から打球面11に垂直に下ろした線と打球面11との交点である。好ましくは、スイートスポット高さShは21mm以上である。より好ましくは、スイートスポット高さShは23mm以上である。
アイアンゴルフクラブヘッド100の重量は、例えば280g以上330g以下であり、例えば290g以上310g以下である。
<具体的構成例>
アイアンゴルフクラブヘッド100は、任意の方法により製造され得るが、例えば鍛造または鋳造により作製されたフェース部1とソールバック部2とが溶接されることにより製造される。以下、図1〜図5を参照して、このような製造方法により製造されるアイアンゴルフクラブヘッド100の構成例を説明する。
本体部10は、本体部10の外部に表出している面として、打球面11、第1裏面13、第2裏面14、第3裏面18、および下方面15を主に有している。第1裏面13、第2裏面14、第3裏面18、および下方面15は、打球面11とは反対側に位置する面である。本体部10は、さらに、本体部10の外部に表出しておらず第1中空部3に面している面として、第1内周面31、第2内周面32、第3内周面33、第4内周面34、および第5内周面35を主に有している。下方面15は、上記基準位置において本体部10の下方に配置されている面である。下方面15は、打球時に接地され得る。下方面15は、フェース部1に含まれる第1下方面15aと、ソールバック部2に含まれる第2下方面15bとから成る。
図1〜図4に示されるように、フェース部1は、打球面11、第1裏面13、第3裏面18、第1下方面15a、第1内周面31、第2内周面32、および第3内周面33を有している。ソールバック部2は、第2裏面14、第2下方面15b、第4内周面34、および第5内周面35を有している。打球面11、第1裏面13、第3裏面18、第1下方面15a、第1内周面31、第2内周面32、および第3内周面33、ならびに第2裏面14、第2下方面15b、第4内周面34、および第5内周面35の各々は、ヒール部10cからトゥ部10dへ向かう方向(以下、「第1方向」という)に延びている。フェース部1の打球面11と第1裏面13との間は、中実に設けられている。
図1〜図4に示されるように、第1裏面13、第3裏面18、第1下方面15a、第1内周面31、第2内周面32、および第3内周面33は、打球面11とは反対側に配置されている。第1裏面13は、トップエッジ部10aと後述する第1凸部1eとの間に配置されている。第1裏面13は、トップエッジ部10aを介して打球面11と接続されている。第1裏面13は、第1内周面31、第2内周面32、および第3内周面33よりも上方かつ後方に配置される。第3裏面18は、第1裏面13と第2裏面14との間に配置されている。第1下方面15aは、上記基準位置において上記水平面に対向する面であり、ショット時に地面に接触する面である。第1下方面15aは、リーディングエッジ部10bを介して打球面11と接続されている。第1内周面31は、後述する第1凸部1eと第2凸部1fとによって囲まれている面である。第2内周面32は、後述する第1凸部1eにおいて第3裏面18とは反対側に位置する面である。第3内周面33は、後述する第2凸部1fにおいて第1下方面15aとは反対側に位置する面である。
図1に示されるように、打球面11には複数の溝部(スコアライン)12が設けられている。複数のスコアライン12の各々は、第1方向に直線状に構成されている。複数のスコアライン12の各々は、リーディングエッジ部10bからトップエッジ部10aに向かう方向R2(以下、「第2方向」という)に互いに間隔を隔てて配置されている。
図4および図5に示されるように、フェース部1は、さらに、第1凸部1eと、第2凸部1fとをさらに有している。第1凸部1eおよび第2凸部1fは、打球面11に垂直な方向から視たときに、1つの環を成すように設けられている。
図4および図5に示されるように、第1凸部1eは、第1裏面13および第1内周面31に対して突出している。第1凸部1eは、第1裏面13と第1内周面31とを隔てている。第1凸部1eは、上記第2内周面32および上記第3裏面18を有している。第3裏面18は、例えば第2裏面14と同一面を成すように設けられている。
図4および図5に示されるように、上記基準位置において、第1凸部1eは、第2凸部1fよりも上方に配置される。第1凸部1eは、例えば第1方向に直線状に延びている。第1内周面31に対する第1凸部1eの高さは、例えば第1内周面31に対する第2凸部1fの高さよりも高い。
第1凸部1eは、第2方向において、トップエッジ部10aとリーディングエッジ部10bの間に配置されている。
図4および図5に示されるように、第2凸部1fは、第1内周面31に対して突出しておりかつ第1凸部1eと連なるように設けられている。第2凸部1fは、ヒール部10c側に位置する第1凸部1eの一端と接続されており、かつトゥ部10d側に位置する第1凸部1eの他端と接続されている。第2凸部1fは、上記第3内周面33および上記第1下方面15aを有している。第1下方面15aは、例えば第2下方面15bと同一面を成すように設けられている。
図1〜図4に示されるように、ソールバック部2の第2裏面14は、第1裏面13と第2下方面15bとの間に配置されている。第2下方面15bは、第2裏面14と第1下方面15aとの間に配置されている。第2下方面15bは、第1下方面15aと同一面を成すように設けられている。第4内周面34は、第2裏面14とは反対側に配置されている。第5内周面35は、第2下方面15bとは反対側に配置されている。リーディングエッジ部10bは、上記基準位置において、打球面11の下端と第2下方面15bの前端とを接続している。トレーリングエッジ部10eは、上記基準位置において、第2裏面14の下端と第2下方面15bの後端とを接続している。
異なる観点から言えば、ソールバック部2は、第2裏面14および第4内周面34を有するバック部16と、第2下方面15bおよび第5内周面35を有するソール部17とを有している。バック部16およびソール部17は、例えば一体として構成されている。バック部16とソール部17との境界がトレーリングエッジ部10eを成している。バック部16は、上記基準位置において、ソール部17よりも後方かつ上方に配置されている部分を有している。上記基準位置において、バック部16の下端は、ソール部17の後端と接続されている。上記基準位置において、バック部16の上端は、フェース部1の第1凸部1eと接合されている。例えばバック部16の上端面が、上記第2内周面32と上記第3裏面18とを接続している第1凸部1eの頂面と接合されている。上記基準位置において、ソール部17の前端が、フェース部1の第2凸部1fと接合されている。例えばソール部17の前端面が、上記第3内周面33と上記第1下方面15aとを接続している第2凸部1fの頂面と接合されている。
図4に示されるように、第2内周面32は、第1内周面31と第4内周面34とを接続している。第3内周面33は、第1内周面31と第5内周面35とを接続している。第1中空部3の上記第1方向に垂直な断面形状は、例えば5角形状である。
図4に示されるように、フェース部1の第1凸部1eと第2凸部1fとの間に位置する部分の厚さは、フェース部1の第1凸部1eよりもトップエッジ部10a側に位置する部分の厚さよりも薄い。言い換えると、打球面11と第1内周面31との間の距離は、打球面11と第1裏面13との間の距離よりも短い。バック部16およびソール部17の各厚さは、フェース部1の第1凸部1eよりもトップエッジ部10a側に位置する部分の厚さよりも薄い。言い換えると、第2裏面14と第4内周面34との間の距離、および第2下方面15bと第5内周面35との間の距離は、打球面11と第1裏面13との間の距離よりも短い。バック部16の厚さは、例えばソール部17の厚さと同等である。
フェース部1の第1凸部1eと第2凸部1fとの間に位置する部分の厚さは、例えば2.0mm以上4.0mm以下である。フェース部1の第1凸部1eよりもトップエッジ部10a側に位置する部分の厚さは、例えば4.0mm以上10.0mm以下である。バック部16の厚さは、例えば1.5mm以上4.5mm以下である。ソール部17の厚さは、例えば1.5mm以上4.5mm以下である。
図4に示されるように、フェース部1の第1凸部1eと第2凸部1fとの間に位置する部分の厚さは、例えば第2方向において一定である。言い換えると、上記基準位置において打球面11が水平面に対して成す角度は、例えば第1内周面31が当該水平面に対して成す角度と等しい。フェース部1の第1凸部1eよりもトップエッジ部10a側に位置する部分の厚さは、例えばトップエッジ部10aから第1凸部1eに向かうにつれて徐々に薄くなっている。言い換えると、上記基準位置において打球面11が水平面に対して成す角度は、例えば第1裏面13が当該水平面に対して成す角度よりも大きい。打球面11に垂直な方向において、打球面11とトレーリングエッジ部10eとの間の距離は、打球面11と第1裏面13との間の最大距離よりも長い。
ホーゼル部20の中心軸の延長線Aは、ヒール部10cと交わる。ホーゼル部20の中心軸の延長線Aと第2凸部1fにおいてヒール部10c側に位置する部分との間の距離が、ホーゼル部20の中心軸の延長線Aと第2凸部1fとの間の最短距離となる。ホーゼル部20の中心軸の延長線Aと第2凸部1fとの間の最短距離は、例えば5mm以上である。
フェース部1の第1凸部1eとソールバック部2のバック部16とは、例えば溶接されている。フェース部1の第2凸部1fとソールバック部2のソール部17とは、例えば溶接されている。フェース部1を構成する材料は、例えばチタン(Ti)、マルエージング鋼、ステンレス鋼、炭素鋼などを含む。ソールバック部2を構成する材料は、例えばチタン(Ti)、マルエージング鋼、ステンレス鋼、炭素鋼などを含む。
好ましくは、第1中空部3の体積V2は18000mm3以下である。好ましくは、第1中空部3の体積V2は10000mm3以上である。
好ましくは、フェース部1のフェース高さの最大値Fh(単位:mm)に対するスイートスポット高さSh(単位:mm)の比率Sh/Fhは、0.33以上である。フェース部1のフェース高さの最大値Fhは、打球面11に沿って測定された第2方向R2におけるフェース部1の長さの最大値であり、具体的にはスコアライン12の最もトゥ部10d側に位置する端部の位置で打球面11に沿って測定されたフェース部1の長さである。フェース高さの最大値Fhは、特に制限されるものではないが、好ましくは55mm以上64mm以下である。
好ましくは、第1裏面13と第2裏面14とが成す角度θ(図3参照)は、100度以上である。より好ましくは、角度θ(図3参照)は、150度以下である。
図6に示されるように、アイアンゴルフクラブ200は、上記アイアンゴルフクラブヘッド100と、シャフト110と、グリップ120とを備える。シャフト110は、一方端および他方端を有している。アイアンゴルフクラブヘッド100は、シャフト110の上記一方端に取り付けられている。グリップ120は、シャフト110の上記他方端に取り付けられている。
<作用効果>
本発明者らは、上記ソール最大幅が22mm以上であってキャビティ構造を有する複数のアイアンゴルフクラブヘッドにおいて、アイアンゴルフクラブヘッドの体積V1(単位:mm3)に対するアイアンゴルフクラブヘッドの重量W(単位:g)の比率W/V1を評価したところ、全てのヘッドの上記比率W/V1が7.43×10-3以上であることを確認した(後述する実施例参照)。なお、本明細書において、キャビティ構造とは、打球面とは反対側に位置する裏面の中央部が該裏面の外周部と比べて凹んでいる構造を指す。
これに対し、アイアンゴルフクラブヘッド100は、ソール最大幅Swが25mm以上でありながらも上記比率W/V1が6.5×10-3以下とされており、かつスイートスポット高さShが20mm以上とされている。
上記アイアンゴルフクラブヘッド100は、比較的大きい幅のソール部を備えることにより比較的大きな体積を有しているが、その体積の一部が第1中空部3により構成されているため、重量の増大が抑制されている。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド100は、ショット時の抜けが良く、かつ操作性が高い。
さらに、アイアンゴルフクラブヘッド100は、キャビティ構造を有するアイアンゴルフクラブヘッドと異なり、第1中空部3と外部とを区画するソールバック部2、特に上記第2裏面14を有するバック部16を備えている。バック部16は上記基準位置においてソール部17よりも後方かつ上方に配置される。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド100では、後述するフェース部1のフェース高さの最大値Fhを大きくし、またはフェース部1のトップエッジ部10a側に重量を付加することなく、スイートスポット高さShが20mm以上とされている。アイアンゴルフクラブヘッド100のスイートスポット高さShは、ソールバック部2を備えずキャビティ構造を有しているアイアンゴルフクラブヘッドのスイートスポット高さと比べて、高い。その結果、アイアンゴルフクラブヘッド100は、キャビティ構造を有する上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、バックスピン量を増やすことができる。
すなわち、打球面11における打球位置がアイアンゴルフクラブヘッド100の重心位置よりも下方(リーディングエッジ部10b側)である場合には、ショット時にアイアンゴルフクラブヘッド100が重心位置を中心としてリーディングエッジ部10bが後方に向かって回転するとともに、いわゆるギア効果によってボールにはこれとは逆向きのバックスピンが加えられる。上述のように、アイアンゴルフクラブヘッド100では打球面11においてスイートスポットSSより下方に位置する領域が、キャビティ構造を有する上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、広い。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド100は、キャビティ構造を有する上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、ボールにバックスピンをかけやすい。また、アイアンゴルフクラブヘッド100およびキャビティ構造を有する上記アイアンゴルフクラブヘッドを用いて同一条件で打球したとき、すなわち上記水平面に対する各打球位置の高さが等しくされたとき、アイアンゴルフクラブヘッド100における上記打球位置とスイートスポットSSとの間の距離は、キャビティ構造を有する上記アイアンゴルフクラブヘッドにおける上記打球位置とスイートスポットSSとの間の距離よりも長くなる。その結果、アイアンゴルフクラブヘッド100によれば、従来の上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、上記ギア効果を高めることができ、バックスピン量を増大することができる。
つまり、アイアンゴルフクラブヘッド100は、キャビティ構造を有しソール最大幅が22mm以上であって上記比率が7.43×10-3以上である上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、ショット時の抜けの良さが同等以上とされながらも、本体部10の軽量化、およびバックスピン量の向上の少なくともいずれかを実現することができる。その結果、アイアンゴルフクラブヘッド100は、上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、ショット時の抜けの良さが同等以上とされながらも、ショットの正確性がさらに高められている。
好ましくは、第1中空部3の体積V2は18000mm3以下である。好ましくは、第1中空部3の体積V2は10000mm3以上である。このような第1中空部3により、上記W/V1が6.5×10-3以下であってかつソール最大幅Swが25mm以上であるアイアンゴルフクラブヘッド100は、容易に実現され得る。
好ましくは、フェース部1のフェース高さの最大値Fh(単位:mm)に対するスイートスポット高さSh(単位:mm)の比率Sh/Fhは、0.33以上である。フェース部1のフェース高さの最大値Fhは、打球面11に沿って測定されたフェース部1の高さの最大値であり、具体的にはスコアライン12の最もトゥ部10d側に位置する端部の位置で打球面11に沿って測定されたフェース部1の高さである。
このようなアイアンゴルフクラブヘッド100は、フェース部1のフェース高さの最大値Fhを大きくし、またはフェース部1のトップエッジ部10a側に重量を付加することなく、スイートスポット高さShを20mm以上とすることができる。例えばフェース部1のフェース高さの最大値Fhを大きくしかつ本体部10の重量化を抑制するには、本体部10のフェース部1およびソールバック部2の各厚さを薄くする必要がある。この場合、本体部10の耐久性が低下する。これに対し、アイアンゴルフクラブヘッド100によれば、フェース部1のフェース高さの最大値Fhを大きくすることなく、スイートスポット高さShを20mm以上とすることができる。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド100は、高い耐久性を有しながらも、ショットの正確性が高められている。
好ましくは、第1裏面13と第2裏面14とが成す角度θ(図3参照)は、100度以上である。より好ましくは、角度θ(図3参照)は、150度以下である。つまり、アイアンゴルフクラブヘッド100の上記角度θは、いわゆるキャビティ構造のヘッドにおける角度よりも大きい。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド100は、キャビティ構造のアイアンゴルフクラブヘッドと比べて、スイートスポット高さShを同等以上としながらも、ソール最大幅を大きくすることができる。
アイアンゴルフクラブヘッド100では、第1凸部1eが打球部裏に存在している。これにより、アイアンゴルフクラブヘッド100では、第1中空部3の一部が第2方向においてフェース部1の中央部よりもトップエッジ部10a側に配置されている場合と比べて、打球時の打球面の不要な撓みを抑えることができ、打感を向上させることができる。
(実施の形態2)
図7および図8に示されるように、実施の形態2に係るアイアンゴルフクラブヘッド101は、実施の形態1に係るアイアンゴルフクラブヘッド100と基本的に同様の構成を備えるが、ホーゼル部20の中心軸の延長線Aと本体部10との交点をPとしたときに、交点Pと第2凸部1fとの間の最短距離が10mm以上とされている点で異なる。
図8に示されるように、第1凸部1eおよび第2凸部1fのヒール部10c側に位置する部分は、図5に示されるアイアンゴルフクラブヘッド100の第1凸部1eおよび第2凸部1fのヒール部10c側に位置する部分と比べて、ヒール部10cから離れた位置に配置されている。言い換えると、第1凸部1eおよび第2凸部1fのヒール部10c側に位置する部分は、図5に示される第1凸部1eおよび第2凸部1fのヒール部10c側に位置する部分と比べて、ホーゼル部20から離れた位置に配置されている。
ホーゼル部20の中心軸の延長線Aと本体部10との交点をPとする。交点Pと第2凸部1fにおいてヒール部10c側に位置する部分との間の距離が、交点Pと第2凸部1fとの間の最短距離となる。上記最短距離は、10mm以上であり、例えば15mm以上である。
ロフト角またはライ角が調整されるときに、ホーゼル部20には比較的大きな応力が印加される。そのため、フェース部1とソールバック部2との接合部、特に第2凸部1fとソール部17の端部2bとの接合部、においてヒール部10c側に位置する部分にも応力が印加される。当該応力の大きさは、交点Pと第2凸部1fとの間の最短距離が短いほど、大きくなる。
アイアンゴルフクラブヘッド100では、交点Pと第2凸部1fとの間の最短距離は特に制限されない。そのため、交点Pと第2凸部1fとの間の最短距離が短いアイアンゴルフクラブヘッド100では、ロフト角またはライ角が調整されるときに、フェース部1とソールバック部2との接合部に比較的大きな応力が印加される場合がある。この場合、当該接合部に割れ等の異常が発生するおそれがある。
これに対し、アイアンゴルフクラブヘッド101の交点Pと第2凸部1fとの間の最短距離は、アイアンゴルフクラブヘッド100のそれと比べて、長い。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド101では、アイアンゴルフクラブヘッド100と比べて、上記応力に起因したフェース部1とソールバック部2との接合部に割れ等の異常が発生しにくい。
さらに、アイアンゴルフクラブヘッド101は、その他の構成についてはアイアンゴルフクラブヘッド100と同様の構成を有しているため、アイアンゴルフクラブヘッド100と同様の効果を奏することができる。
(実施の形態3)
図9〜図12に示されるように、実施の形態3に係るアイアンゴルフクラブヘッド102は、実施の形態1に係るアイアンゴルフクラブヘッド100と基本的に同様の構成を備えるが、打球面11と第2裏面14との間に配置されている第1中空部3に加えて、打球面11と第1裏面13との間に配置されている第2中空部4が設けられている点で、アイアンゴルフクラブヘッド100と異なる。
アイアンゴルフクラブヘッド102の上記比率W/V1、ソール最大幅Sw、スイートスポット高さSh、および上記比率Sh/Fhの各々は、アイアンゴルフクラブヘッド100のそれと同等である。
アイアンゴルフクラブヘッド102の体積V1(単位:mm3)に対するアイアンゴルフクラブヘッド102の重量W(単位:g)の比率W/V1(単位:g/mm3)は、6.5×10-3以下である。好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド102の上記比率W/V1は6.0以下である。
アイアンゴルフクラブヘッド102のソール最大幅Swは、25mm以上である。好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド102のソール最大幅Swは27mm以上である。
アイアンゴルフクラブヘッド102のスイートスポット高さShは、20mm以上である。好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド102のスイートスポット高さShは21mm以上である。より好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド102のスイートスポット高さShは23mm以上である。
好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド102のフェース部1のフェース高さの最大値Fh(単位:mm)に対するスイートスポット高さSh(単位:mm)の比率Sh/Fhは、0.33以上である。フェース高さの最大値Fhは、特に制限されるものではないが、好ましくは55mm以上64mm以下である。
好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド102の第1裏面13と第2裏面14とが成す角度θは、100度以上である。より好ましくは、上記角度θは、150度以下である。
アイアンゴルフクラブヘッド102の重量は、例えば280g以上330g以下であり、例えば290g以上310g以下である。
<具体的構成例>
アイアンゴルフクラブヘッド102の第1中空部3は、アイアンゴルフクラブヘッド100の上記第1中空部3と基本的に同様の構成を備えており、打球面11と第2裏面14との間に配置されている。
第2中空部4は、打球面11と第1裏面13との間に配置されている。第2中空部4は、第1中空部3よりもトップエッジ部10a側に配置されている。第2中空部4は、第1中空部3と連なりかつアイアンゴルフクラブヘッド102の外部から区画されている。第1中空部3の体積は、第2中空部4の体積よりも大きい。
第1中空部3は、ヒール部10c側に位置する第1中空部分3aと、第1中空部分3aよりもトゥ部10d側に位置する第2中空部分3bとを含む。第2中空部4は、ヒール部10c側に位置する第3中空部分4aと、第3中空部分4aよりもトゥ部10d側に位置する第4中空部分4bとを含む。
第1中空部分3aおよび第3中空部分4aの体積の和は、第2中空部分3bおよび第4中空部分4bの体積の和よりも大きい。第1中空部分3aの体積は、第3中空部分4aの体積よりも大きい。
ソールバック部2において第1中空部分3aと第2裏面14との間に位置する部分を第1部分とする。ソールバック部2において第2中空部分3bと第2裏面14との間に位置する部分を第2部分とする。フェース部1において第3中空部分4aと第1裏面13との間に位置する部分を第3部分とする。フェース部1において第4中空部分4bと第1裏面13との間に位置する部分を第4部分とする。
打球面11に垂直な方向(以下、第3方向という)において、フェース部1の上記第4部分の厚さT4(図11参照)の最大値は、フェース部1の上記第3部分の厚さT3(図10参照)の最大値よりも厚い。上記第3方向において、ソールバック部2の上記第2部分の厚さT2(図11参照)の最大値は、ソールバック部2の上記第1部分の厚さT1(図10参照)の最大値よりも厚い。
図10に示されるように、ソールバック部2の上記第1部分の上記厚さT1の最大値は、フェース部1の上記第3部分の上記厚さT3の最大値よりも厚い。図11に示されるように、ソールバック部2の上記第2部分の上記厚さT2の最大値は、フェース部1の上記第4部分の上記厚さT4の最大値よりも厚い。
フェース部1の上記第4部分の上記厚さT4の最大値は、ソールバック部2の上記第1部分の上記厚さT1の最大値よりも厚い。フェース部1の上記第4部分の上記厚さT4の最大値は、上記フェース部1において打球面11と第1内周面31との間に位置する部分の厚さの最大値よりも厚い。フェース部1の上記第3部分の上記厚さT3の最大値は、例えば上記フェース部1において打球面11と第1内周面31との間に位置する部分の厚さの最大値よりも薄い。上記フェース部1において打球面11と第1内周面31との間に位置する部分の厚さは、例えば上記第2方向R2において一定である。
上記第3方向において、第3中空部分4aの幅は、第1中空部分3aの幅よりも狭く、第2中空部分3bおよび第4中空部分4bの幅よりも広い。第2中空部分3bの上記第3方向の幅は、例えば第4中空部分4bの上記第3方向の幅に等しい。
アイアンゴルフクラブヘッド102のフェース部1は、第2中空部4よりも後方に配置された第2バック部19を有している。第2バック部19は、ソールバック部2の上記バック部16(本実施の形態では、第1バック部16という)よりもトップエッジ部10a側に配置されており、かつ第1バック部16と連なるように設けられている。第2バック部19は、第1内周面31に対して後方に配置されている。第2バック部19のリーディングエッジ部10b側に位置する端部は、ソールバック部2のトップエッジ部10a側に位置する端部と接続されている。
第2バック部19は、第1裏面13、第6内周面36、第7内周面37、および第9内周面39を有している。第7内周面37は、第1裏面13とは反対側に配置されており、かつトップエッジ部10a側に位置する第1内周面31の一部と、第3中空部分4aを挟んで対向するように設けられている。第7内周面37は、ソールバック部2の第4内周面34と連なるように設けられている。第9内周面39は、第1裏面13とは反対側に配置されており、かつトップエッジ部10a側に位置する第1内周面31の一部と、第4中空部分4bを挟んで対向するように設けられている。第9内周面39は、ソールバック部2の第8内周面38と連なるように設けられており、例えば第8内周面38と同一面を成すように設けられている。第6内周面36は、第1内周面31と第7内周面37または第9内周面39とを接続するように設けられている。
第2バック部19において第3中空部分4aに面する部分の厚さは、第1バック部16において第1中空部分3aに面する部分の厚さと同等あるいはそれよりも薄い。すなわち第1裏面13と第7内周面37との間の距離は、第2裏面14と第4内周面34との間の距離以下である。第2バック部19において第3中空部分4aに面する上記部分の厚さは、例えば上記第2方向において一定である。
第2バック部19において第4中空部分4bに面する部分の厚さは、第2バック部19において第3中空部分4aに面する部分の厚さよりも厚い。すなわち第1裏面13と第9内周面39との間の距離は、第1裏面13と第7内周面37との間の距離よりも長い。第2バック部19において第4中空部分4bに面する部分の厚さは、リーディングエッジ部10bからトップエッジ部10a側に向かうにつれて厚くなるように設けられている。
アイアンゴルフクラブヘッド102のソールバック部2は、第2裏面14、第2下方面15b、第4内周面34、第5内周面35、および第8内周面38を有している。第8内周面38は、第2裏面14とは反対側に配置されており、かつリーディングエッジ部10b側に位置する第1内周面31の一部と、第2中空部分3bを挟んで対向するように設けられている。第8内周面38は、第4内周面34および第5内周面35と連なるように設けられている。
ソールバック部2の上記第3方向の厚さは、上記第1方向において異なっている。トゥ部10d側に位置するソールバック部2の上記厚さは、ヒール部10c側に位置するソールバック部2の上記厚さよりも厚い。ソールバック部2において第2中空部分3bに面する部分の厚さは、ソールバック部2において第1中空部分3aに面する部分の上記厚さよりも厚い。言い換えると、第2裏面14と第8内周面38との間の距離は、第2裏面14と第4内周面34との間の距離よりも長い。
アイアンゴルフクラブヘッド102は、第1中空部3に面している面として、第1内周面31、第3内周面33、第4内周面34、第5内周面35、および第8内周面38を主に有している。アイアンゴルフクラブヘッド102は、第2中空部4に面している面として、第1内周面31、第6内周面36、第7内周面37、および第9内周面39を主に有している。
アイアンゴルフクラブヘッド102は、任意の方法により製造され得るが、例えば第1部材5と第2部材6とが溶接されることにより製造される。第1部材5および第2部材6は、例えば鍛造または鋳造により作製されている。以下、図9〜図12を参照して、このような製造方法により製造されるアイアンゴルフクラブヘッド102の構成例を説明する。
アイアンゴルフクラブヘッド102において第1中空部3および第2中空部4よりも前方に位置する部分は、例えば第1部材5として一体に構成されている。アイアンゴルフクラブヘッド102において第1中空部3および第2中空部4よりも後方に位置する部分は、例えば第2部材6として一体に構成されている。すなわち、フェース部1の第2バック部19およびソールバック部2は、例えば第2部材6として一体に構成されている。
第1部材5は、打球面11、第1下方面15a、第1内周面31、第3内周面33、および第6内周面36を有している。第2部材6は、第1裏面13、第2裏面14、第2下方面15b、第4内周面34、第5内周面35、第7内周面37、第8内周面38、および第9内周面39を有している。
第1部材5は、第2凸部1fおよび第3凸部1gをさらに有している。第1内周面31は、第2凸部1fと第3凸部1gとによって囲まれている面である。第2凸部1fおよび第3凸部1gは、打球面11に垂直な方向から視たときに、1つの環を成すように設けられている。第3凸部1gは、第1内周面31に対して突出している。第3凸部1gは、第1中空部3に面している上記第6内周面36を有している。第6内周面36は、第3凸部1gの内周面として構成されており、第1内周面31を囲むように配置されている。第3凸部1gにおいて第6内周面36とは反対側位置する面は、外部に面しているかつトップエッジ部10aの頂面を成している。
第2部材6は、第2凸部1fおよび第3凸部1gの各頂面と接続される環状部60を有している。第2部材6には、環状部60に対して凹んでいる第1凹部61および第2凹部62が設けられている。第1凹部61は、第2凹部62よりもヒール部10c側に配置されている。第1凹部61の底面のうち、リーディングエッジ部10b側に位置する部分が第4内周面34および第5内周面35を成している。第1凹部61の底面のうち、トップエッジ部10a側に位置する部分が第7内周面37を成している。第2凹部62の底面が第8内周面38を成している。環状部60に対する第2凹部62の深さは、環状部60に対する第1凹部61の深さよりも浅い。
図12に示されるように、トップエッジ部10a側からリーディングエッジ部10b側に延びる第1凹部61の側面は、例えばリーディングエッジ部10b側に向かうにつれてトゥ部10d側に向かって傾斜している。
<作用効果>
アイアンゴルフクラブヘッド102は、アイアンゴルフクラブヘッド100と基本的同様の構成を備えているため、アイアンゴルフクラブヘッド100と同様の効果を奏することができる。上記アイアンゴルフクラブヘッド102は、比較的大きい幅のソール部を備えることにより比較的大きな体積を有しているが、その体積の一部が第1中空部3および第2中空部4により構成されているため、重量の増大が抑制されている。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド102は、ショット時の抜けが良く、かつ操作性が高い。
さらに、アイアンゴルフクラブヘッド102は、キャビティ構造を有するアイアンゴルフクラブヘッドと異なり、第1中空部3および第2中空部4と外部とを区画するフェース部1およびソールバック部2、特に上記第1裏面13を有する第2バック部19および上記第2裏面14を有する第1バック部16を備えている。第1バック部16および第2バック部19は上記基準位置においてソール部17よりも後方かつ上方に配置される。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド102では、フェース部1のフェース高さの最大値Fhを大きくすることなく、スイートスポット高さShが20mm以上とされている。
アイアンゴルフクラブヘッド102のスイートスポット高さShは、ソールバック部2を備えずキャビティ構造を有しているアイアンゴルフクラブヘッドのスイートスポット高さと比べて、高い。その結果、アイアンゴルフクラブヘッド102は、キャビティ構造を有する上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、バックスピン量を増やすことができる。
つまり、アイアンゴルフクラブヘッド102は、キャビティ構造を有しソール最大幅が22mm以上であって上記比率が7.43×10-3以上である上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、ショット時の抜けの良さが同等以上とされながらも、本体部10の軽量化、およびバックスピン量の向上の少なくともいずれかを実現することができる。その結果、アイアンゴルフクラブヘッド102は、上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、ショット時の抜けの良さが同等以上とされながらも、ショットの正確性がさらに高められている。
アイアンゴルフクラブヘッド102において、第1中空部3は、ヒール部側に位置する第1中空部分3aと、第1中空部分3aよりもトゥ部10d側に位置する第2中空部分3bとを含む。第2中空部4は、ヒール部側に位置する第3中空部分4aと、第3中空部分4aよりもトゥ部10d側に位置する第4中空部分4bとを含む。フェース部1の上記第4部分の厚さT4は、フェース部1の上記第3部分の厚さT3よりも厚い。ソールバック部2の上記第2部分の厚さT2は、ソールバック部2の上記第1部分の厚さT1よりも厚い。
このようなアイアンゴルフクラブヘッド102の重心位置は、アイアンゴルフクラブヘッド102と同一の外形を有するアイアンゴルフクラブヘッド100の重心位置と比べて、トゥ部10d側に配置されている。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド102におけるシャフト軸周りの慣性モーメントは上記アイアンゴルフクラブヘッド100のそれと比べて大きい。よって、アイアンゴルフクラブヘッド102では、スイートスポットSSで打球した状態とスイートスポットSSから外れた領域で打球した状態との間のブレがアイアンゴルフクラブヘッド100のそれと比べて小さい。
(実施の形態4)
図13〜図16に示されるように、実施の形態4に係るアイアンゴルフクラブヘッド103は、実施の形態3に係るアイアンゴルフクラブヘッド102と基本的に同様の構成を備えるが、高密度部材7をさらに備えている点で、アイアンゴルフクラブヘッド102と異なる。
アイアンゴルフクラブヘッド103の上記比率W/V1、ソール最大幅Sw、スイートスポット高さSh、および上記比率Sh/Fhの各々は、アイアンゴルフクラブヘッド102のそれと同等である。
アイアンゴルフクラブヘッド103の体積V1(単位:mm3)に対するアイアンゴルフクラブヘッド103の重量W(単位:g)の比率W/V1(単位:g/mm3)は、6.5×10-3以下である。好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド103の上記比率W/V1は6.0以下である。
アイアンゴルフクラブヘッド103のソール最大幅Swは、25mm以上である。好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド103のソール最大幅Swは27mm以上である。
アイアンゴルフクラブヘッド103のスイートスポット高さShは、20mm以上である。好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド103のスイートスポット高さShは21mm以上である。より好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド103のスイートスポット高さShは23mm以上である。
好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド103のフェース部1のフェース高さの最大値Fh(単位:mm)に対するスイートスポット高さSh(単位:mm)の比率Sh/Fhは、0.33以上である。フェース高さの最大値Fhは、特に制限されるものではないが、好ましくは55mm以上64mm以下である。
好ましくは、アイアンゴルフクラブヘッド103の第1裏面13と第2裏面14とが成す角度θは、100度以上である。より好ましくは、上記角度θは、150度以下である。
アイアンゴルフクラブヘッド103の重量は、例えば280g以上330g以下であり、例えば290g以上310g以下である。
<具体的構成例>
アイアンゴルフクラブヘッド103の第1中空部3および第2中空部4は、アイアンゴルフクラブヘッド102の上記中空部3および第2中空部4と基本的に同様の構成を備えている。
第2バック部19は、第1裏面13、第6内周面36、および第7内周面37を有している。
第2バック部19には、例えば第1裏面13と第4中空部分4bとの間に、第4中空部分4bに面している第3凹部19Aが設けられている。すなわち、第3凹部19Aは、第2バック部19において、上記第1方向のトゥ部10d側かつ上記第2方向のトップエッジ部10a側に設けられている。第3凹部19Aは、ソールバック部2の第8内周面38に対して凹んでいる。環状部60に対する第3凹部19Aの深さは、例えば環状部60に対する第1凹部61の深さよりも深い。第3凹部19Aの底面と第1裏面13との間の距離、言い換えると第2バック部19において第3凹部19Aの底面と第1裏面13との間に配置された部分の厚さは、例えば一定である。第3凹部19Aの頂面は、第8内周面38と同一面を成すように設けられている。
第2バック部19の上記第3方向の厚さは、上記第1方向において異なっている。第2バック部19において第3凹部19Aの底面と第1裏面13との間に位置する部分の厚さは、第2バック部19において第3凹部19Aよりもヒール部10c側に位置する部分の上記厚さよりも薄い。第2バック部19において第3凹部19Aの頂面と第1裏面13との間に位置する部分の厚さは、第2バック部19において第3凹部19Aよりもヒール部10c側に位置する部分の上記厚さよりも厚い。言い換えると、第1裏面13と高密度部材7の第9内周面71との間の距離は、第1裏面13と第7内周面37との間の距離よりも長い。
アイアンゴルフクラブヘッド103は、高密度部材7をさらに備えている。高密度部材7は、第1裏面13と第4中空部分4bとの間に配置されている。高密度部材7は、フェース部1の内部に配置されており、第1裏面13に露出していない。高密度部材7は、上記第2方向におけるアイアンゴルフクラブヘッド103の中心よりもトップエッジ部10a側に配置されている。高密度部材7は、上記第1方向におけるアイアンゴルフクラブヘッド103の中心よりもトゥ部10d側に配置されている。
高密度部材7は、第2バック部19に固定されている。高密度部材7は、第3凹部19Aの内部に収容されている。高密度部材7は、例えば第3凹部19Aに溶接されている。なお、高密度部材7と第3凹部19Aとの固定方法は特に制限されるものではなく、高密度部材7は例えば第3凹部19Aに接着されていてもよい。高密度部材7は、第1内周面31と第4中空部分4bを挟んで対向する第9内周面71と、第3凹部19Aの底面に接する接触面72とを有している。第9内周面71は、第8内周面38と同一面を成すように設けられている。上記第3方向における高密度部材7の厚さ、すなわち第9内周面71と接触面72との間の距離は、上記第2方向R2に沿ってリーディングエッジ部10bからトップエッジ部10a側に向かうにつれて厚くなるように設けられている。
アイアンゴルフクラブヘッド103において、フェース部1において第4中空部分4bと第1裏面13との間に位置する第4部分は、高密度部材7と第2バック部19とにより構成されている。フェース部1の上記第4部分の厚さT4(図15参照)は、上記第3方向における高密度部材7の厚さと第2バック部19の厚さとの和に等しい。アイアンゴルフクラブヘッド103における第1部分、第2部分、第3部分、および第4部分の各厚さの相対的な大小関係は、アイアンゴルフクラブヘッド102におけるそれと同等である。
高密度部材7を構成する材料の密度は、フェース部1およびソールバック部2を構成する各材料の密度よりも高い。高密度部材7を構成する材料は、例えばタングステン(W)を含む。
アイアンゴルフクラブヘッド103は、任意の方法により製造され得るが、例えば第1部材5と、高密度部材7が固定された第2部材6とが溶接されることにより製造される。第1部材5、第2部材6、および高密度部材7は、例えば鍛造または鋳造により作製されている。高密度部材7は、例えば第2部材6に溶接されている。以下、図13〜図16を参照して、このような製造方法により製造されるアイアンゴルフクラブヘッド102の構成例を説明する。
アイアンゴルフクラブヘッド103において第1中空部3および第2中空部4よりも前方に位置する部分は、例えば第1部材5として一体に構成されている。アイアンゴルフクラブヘッド103において第1中空部3および第2中空部4よりも後方に位置する部分は、例えば第2部材6として一体に構成されている。すなわち、フェース部1の第2バック部19およびソールバック部2は、例えば第2部材6として一体に構成されている。
第1部材5は、打球面11、第1下方面15a、第1内周面31、第3内周面33、および第6内周面36を有している。第2部材6は、第1裏面13、第2裏面14、第2下方面15b、第4内周面34、第5内周面35、第7内周面37、および第8内周面38を有している。高密度部材7は、第9内周面71を有している。
第1部材5は、第2凸部1fおよび第3凸部1gをさらに有している。第1内周面31は、第2凸部1fと第3凸部1gとによって囲まれている面である。第2凸部1fおよび第3凸部1gは、打球面11に垂直な方向から視たときに、1つの環を成すように設けられている。第3凸部1gは、第1内周面31に対して突出している。第3凸部1gは、第1中空部3に面している上記第6内周面36を有している。第6内周面36は、第3凸部1gの内周面として構成されており、第1内周面31を囲むように配置されている。第3凸部1gにおいて第6内周面36とは反対側位置する面は、外部に面しているかつトップエッジ部10aの頂面を成している。
第2部材6は、第2凸部1fおよび第3凸部1gの各頂面と接続される環状部60を有している。第2部材6には、環状部60に対して凹んでいる第1凹部61および第2凹部62が設けられている。第1凹部61は、第2凹部62よりもヒール部10c側に配置されている。第1凹部61の底面のうち、リーディングエッジ部10b側に位置する部分が第4内周面34および第5内周面35を成している。第1凹部61の底面のうち、トップエッジ部10a側に位置する部分が第7内周面37を成している。第2凹部62の底面が第8内周面38を成している。環状部60に対する第2凹部62の深さは、環状部60に対する第1凹部61の深さよりも浅い。
第2部材6には、第8内周面38に対して凹んでいる第3凹部19Aがさらに設けられている。環状部60に対する第3凹部19Aの深さは、例えば環状部60に対する第1凹部61の深さよりも深い。
図12に示されるように、トップエッジ部10a側からリーディングエッジ部10b側に延びる第1凹部61の側面は、例えばリーディングエッジ部10b側に向かうにつれてトゥ部10d側に向かって傾斜している。
第2部材6は、第1凹部61と第3凹部19Aとを区画する壁部64を有している。壁部64の頂面は、第1凹部61の底面の一部を成している。壁部64は、上記第2方向に沿って延びている。トップエッジ部10a側に位置する第1凹部61の上記側面の一部は、上記壁部64の壁面として構成されている。
なお、アイアンゴルフクラブヘッド103では、上記第3方向における高密度部材7の厚さが上記第2方向R2に沿ってリーディングエッジ部10bからトップエッジ部10a側に向かうにつれて漸次厚くなっているが、これに限られるものではない。上記第3方向における高密度部材7の厚さは、上記第2方向R2に沿ってリーディングエッジ部10bからトップエッジ部10a側に向かうにつれてステップ状に厚くなっていてもよい。
<作用効果>
アイアンゴルフクラブヘッド103は、アイアンゴルフクラブヘッド102と基本的同様の構成を備えているため、アイアンゴルフクラブヘッド102と同様の効果を奏することができる。
アイアンゴルフクラブヘッド103は、第1裏面13と第4中空部分4bとの間に配置されている高密度部材7をさらに備える。高密度部材7を構成する材料の密度は、フェース部1およびソールバック部2を構成する材料の密度よりも高い。
アイアンゴルフクラブヘッド103において第1裏面13と第4中空部分4bとの間に位置する部分の重量は、アイアンゴルフクラブヘッド102において第1裏面13と第4中空部分4bとの間に位置する部分の重量よりも重い。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド103の重心位置は、アイアンゴルフクラブヘッド102の重心位置と比べて、トップエッジ部10a側に配置されている。その結果、アイアンゴルフクラブヘッド103では、上記アイアンゴルフクラブヘッド102と比べて、ショット時の抜けの良さが同等以上とされながらも、バックスピン量の向上が実現されており、ショットの正確性がさらに高められている。
さらに、アイアンゴルフクラブヘッド103の重心位置は、高密度部材がトゥ部10d側のトップエッジ部10a側からリーディングエッジ部10b側に達するように広く設けられているアイアンゴルフクラブヘッドの重心位置と比べて、トップエッジ部10a側に配置されている。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド103では、上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、ショット時の抜けの良さが同等以上とされながらも、バックスピン量の向上が実現されており、ショットの正確性がさらに高められている。
アイアンゴルフクラブヘッド103において、打球面11に垂直な方向の高密度部材7の厚みは、リーディングエッジ部10b側からトップエッジ部10a側に向かうにつれて厚くなっている。
このようなアイアンゴルフクラブヘッド103の重心位置は、高密度部材7の上記厚みがリーディングエッジ部10b側からトップエッジ部10a側に向かうにつれて薄くなっているアイアンゴルフクラブ、および高密度部材7の上記厚みが上記第2方向において一定とされているアイアンゴルフクラブヘッドの各重心位置と比べて、トップエッジ部10a側に配置されている。そのため、アイアンゴルフクラブヘッド103では、上記アイアンゴルフクラブヘッドと比べて、ショット時の抜けの良さが同等以上とされながらも、バックスピン量の向上が実現されており、ショットの正確性がさらに高められている。
実施例としての試料A〜D,K〜M、および比較例としての試料E〜Jについて、上記スイートスポット高さ、上記ソール最大幅、上記フェース高さFh、重量および体積を測定した。
試料Aは、実施の形態1に係るアイアンゴルフクラブヘッド100と同等の構成を備えている。試料B〜Dは、実施の形態2に係るアイアンゴルフクラブヘッド101と同様の構成を備えている。試料K,Lは、実施の形態3に係るアイアンゴルフクラブヘッド102と同様の構成を備えている。試料Mは、実施の形態4に係るアイアンゴルフクラブヘッド103と同様の構成を備えている。試料Aのホーゼル部20の中心軸の延長線Aと第2凸部1fとの間の最短距離は6.15mm、試料B〜Dのホーゼル部20の中心軸の延長線Aと第2凸部1fとの間の最短距離は15.03mmであった。試料Lは、試料Kと比較して、重量が294g程度となるようにソール最大幅Swが広げられるものとした。試料Mは、試料Kと比較して、第3凹部と、第3凹部に固定された高密度部材とが設けられたものとした。試料Mについて、高密度部材の体積は2916.7mm3であって、高密度部材の重量は43.8gであった。
試料E〜Jは、実施の形態1および2における第1中空部3が設けられていない、ロフト角が40度以上のアイアンゴルフクラブヘッドである。試料F〜Jは、市販品であって、ソール最大幅Sw、フェース高さFhおよび重量が試料A〜Dのそれらと略同等であった。試料Jはソール最大幅Swが25mm以下である。試料F、G、Hは、いわゆるキャビティ構造を有している。試料Iは、ヒール部側のソール部からフェースバック面(打球面とは反対側に位置するフェース部の裏面)につながる領域に極浅い凹部を有している。試料Iの凹部は底部および底部よりも後方に配置された頂部とを有している。上記底部および頂部は、ヒール部からトゥ部に向かう方向に沿って、ヒール部からヒール部とトゥ部との略中間位置まで延びるように形成されている。上記底部は、上記頂部よりもリーディングエッジ部側に配置されている。試料Jはフェースバック面に浅い溝部を有している。試料Jの溝部は、ヒール部からトゥ部に向かう方向に延在し、かつトップエッジ部側に開口している。試料A〜E,G,Hのロフト角θは56度である。試料F,I,J,K〜Mのロフト角θは58度である。試料A〜Mの第1裏面と第2裏面とが成す角度は100度以上である。
表1は、試料A〜Mから測定された上記スイートスポット高さ(SS高さ)Sh、上記ソール最大幅Sw、上記フェース高さSh、重量W、体積V1および中空部の体積V2と、これらの測定結果に基づき算出された上記比率W/V1、および上記比率Sh/Fhとを示している。
表2は、試料A〜Dのフェース部およびソールバック部の各部分の厚さを示している。表2中のフェース部の第1厚さは、上記打球面11と第1内周面31との間の距離を指している。表2中のフェース部の第2厚さは、上記打球面11と第1裏面13との間の距離を指している。
表1に示されるように、試料B〜Dは、フェース高さFhおよびソール最大幅Swが互いに同等とされている。試料Aのフェース高さFhは、試料B〜Dのフェース高さFhと比べて、低い。試料Aのソール最大幅Swは、試料B〜Dのソール最大幅Swと比べて、小さい。
表2に示されるように、試料Aの各部分の厚さは試料Bの各部の厚さと等しい。試料A〜Cでは、ソール部の厚さおよびバック部の厚さがフェース部において打球面と第1内周面との間に位置する部分の厚さよりも薄い。試料Dでは、ソール部の厚さおよびバック部の厚さがフェース部において打球面と第1内周面との間に位置する部分の厚さよりも厚い。試料Cでは、試料AおよびBと比べて、ソール部の厚さおよびバック部の厚さが薄い。
表1に示されるように、試料A〜D,K〜Mは、上記比率W/V1が6.5×10-3以下であり、上記ソール最大幅Swが25mm以上であり、かつ上記スイートスポット高さShが20mm以上であった。また、試料A〜D,K〜Mは、中空部の体積V2が18000mm3以下、上記比率Sh/Fhが0.33以上、重量が330g以下であった。
これに対し、試料Eの重量は330gを大きく超えていた。試料Eを参照して、中空部が設けられていないアイアンゴルフクラブヘッドにおいて、ソール最大幅Swおよびフェース高さFhが試料A〜D,K〜Mのそれらと略同等とされながらも、スイートスポット高さShを20mm以上とするためには、トップエッジ部側の重量とホーゼル部の重量とを試料A〜D,K〜Mと比べて大幅に増やす必要があった。試料Eのようなアイアンゴルフクラブヘッドの操作性は試料A〜D,K〜Mの操作性と比べて低いことが確認された。
試料F〜Jのスイートスポット高さShは20mm未満、具体的には19mm未満であった。つまり、試料A〜D,K〜Mは、ショット時の抜けが試料E〜Jと同等以上に良く、かつショットの正確性が試料E〜Jと比べて向上されていることが分かる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。