JP6815366B2 - 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法及びコンピュータプログラム - Google Patents

触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法及びコンピュータプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP6815366B2
JP6815366B2 JP2018216272A JP2018216272A JP6815366B2 JP 6815366 B2 JP6815366 B2 JP 6815366B2 JP 2018216272 A JP2018216272 A JP 2018216272A JP 2018216272 A JP2018216272 A JP 2018216272A JP 6815366 B2 JP6815366 B2 JP 6815366B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
catalyst
model
state estimation
amount
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018216272A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019167948A (ja
Inventor
隆人 池戸
隆人 池戸
松栄 上田
松栄 上田
真 永岡
真 永岡
武藤 晴文
晴文 武藤
厚平 森
厚平 森
一司 保▲崎▼
一司 保▲崎▼
永井 敦
敦 永井
聡 高本
聡 高本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to CN201910208723.3A priority Critical patent/CN110295984B/zh
Priority to US16/359,282 priority patent/US10947886B2/en
Publication of JP2019167948A publication Critical patent/JP2019167948A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6815366B2 publication Critical patent/JP6815366B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/40Engine management systems

Landscapes

  • Exhaust Gas After Treatment (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Exhaust Gas Treatment By Means Of Catalyst (AREA)

Description

本発明は、触媒の状態を推定する技術に関する。
数理モデルを利用して、様々な条件下における現象を定量的に予測する技術が知られている。このような数理モデルの1つとして、人間の脳内にある神経回路網を人工ニューロンという数学的なモデルで表現したニューラルネットワーク(NN:Neural Network)が知られている。
例えば、特許文献1には、NNに対して周囲温度、マニホールド圧力及び温度、燃料消費率、エンジン回転速度の各値を入力し、選択還元触媒(SCR触媒:Selective Catalytic Reduction catalyst)から排出される窒素酸化物(NOx)の量を予測することが記載されている。例えば、特許文献2には、NNに対してEGR弁リフト量指令値、過給圧、吸気温、排気圧、燃料噴射量、吸入空気流量、エンジン回転数の各値を入力し、NOx吸蔵還元触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction catalyst)に捕捉されたNOxの量を予測することが記載されている。例えば、特許文献3には、NNに対してエンジン回転数、燃料噴射量、燃料噴射時期、吸入空気量、空燃比、排気温度、過給圧の各値を入力し、エンジンから排出されるNOxの量を予測することが記載されている。
特開2003−328732号公報 特開2009−180086号公報 特開2011−132915号公報
ところで、例えば、SCR触媒、NSR触媒、三元触媒(Three-Way Catalyst)、粒子状物質除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)、酸化触媒(DOC触媒:Diesel Oxidation Catalyst)等、機能が異なる様々な触媒を単独で用いて、あるいは組み合わせて、内燃機関の排気を浄化することが知られている。このような触媒の浄化性能を、数理モデルによって推定(予測)したいという要望があった。
しかし、特許文献1から3に記載の技術では、いずれも、NNへの入力として、内燃機関(エンジン)及びその吸気系に関するパラメータのみが想定されている。ここで、触媒の浄化性能は、触媒の温度や、触媒に吸着されている添加剤の量などにも影響を受けて変動するため、特許文献1から3に記載の技術では、いずれも、触媒の浄化性能を精度良く推定することができないという課題があった。
また、特許文献1から3に記載の技術では、複数の触媒を用いて内燃機関の排気を浄化する構成(例えば、SCR触媒を2つ以上設ける構成)において、当該複数の触媒による浄化性能を推定することについては考慮されていない。
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、内燃機関の排気を浄化する触媒の浄化性能を推定する技術において、推定の精度を向上させることを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。触媒状態推定装置であって、内燃機関からの排気が流通する主流路に設けられ、前記排気中の有害物質を浄化する触媒の情報であって、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、のうちの少なくとも一つを含む触媒の情報を取得する第1取得部と、機械学習モデルと物理モデルとを含み、触媒の浄化性能を示す触媒の状態を推定するための触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部と、前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する推定部と、を備え、前記触媒状態推定モデルのうちの前記物理モデルは、前記触媒の情報として、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を出力とする物理式を含み、前記推定部は、前記物理式を用いて、前記触媒の浄化性能としての前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定する、触媒状態推定装置。そのほか、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
(1)本発明の一形態によれば、触媒状態推定装置が提供される。この触媒状態推定装置は、内燃機関からの排気が流通する主流路に設けられ、前記排気中の有害物質を浄化する触媒の情報を取得する第1取得部と、少なくとも1つの数理モデルを含んだ触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部と、前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する推定部と、を備える。
触媒の浄化性能は、触媒の情報(例えば、触媒の温度、触媒に吸着されている添加剤の量)の影響を受けて変動する。この構成によれば、推定部は、触媒の浄化性能に影響を及ぼすこの触媒の情報を触媒状態推定モデルに適用することによって、触媒の浄化性能を精度良く推定することができる。すなわち、本構成によれば、内燃機関の排気を浄化する触媒の浄化性能を推定する技術において、推定の精度を向上させることができる。
(2)上記形態の触媒状態推定装置では、さらに、前記触媒へと流入する前記排気の情報を取得する第2取得部を備え、前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第2取得部により取得された前記排気の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定してもよい。触媒の浄化性能は、触媒の情報に加えてさらに、触媒に流入する排気の情報(例えば、排気の温度、排気の流量、排気中の窒素酸化物の量)の影響を受けて変動する。この構成によれば、推定部は、触媒の浄化性能に影響を及ぼすこれら触媒の情報と、触媒に流入する排気の情報との両方を触媒状態推定モデルに適用することによって、触媒の浄化性能をさらに精度良く推定することができる。
(3)上記形態の触媒状態推定装置では、さらに、前記触媒へと供給される添加剤の情報を取得する第3取得部を備え、前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第3取得部により取得された前記添加剤の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定してもよい。この構成によれば、推定部は、触媒の情報に加えてさらに、添加剤の情報(例えば、添加剤の量)を触媒状態推定モデルに適用することによって、触媒の浄化性能を推定する。このため、例えば、選択還元触媒(SCR触媒:Selective Catalytic Reduction catalyst)や、吸蔵還元触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction catalyst)のように、添加剤を用いて有害物質を浄化する触媒の浄化性能を推定する場合において、推定の精度をより向上させることができる。
(4)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒における窒素酸化物の浄化率を出力とする第1モデルを含み、前記推定部は、前記第1モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記窒素酸化物の浄化率を推定してもよい。機械学習モデルは、入出力変数に因果関係さえあれば、複雑な関数近似をしなければ分類や回帰ができない場合(例えば、物理式で明示することが困難な現象が含まれる場合、現象を記述する物理式が複数必要となる場合、数多くの要因の影響が想定されることから物理式に対する入力が多くなる場合)であっても、低演算負荷で出力(推定結果)を得ることができる。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第1モデルを用いて、窒素酸化物の浄化率を推定するため、数多くの要因が影響する窒素酸化物の浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第1のモデルとすることで、推定部は、窒素酸化物の浄化率を高精度で推定できる。
(5)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、前記触媒の温度の時間微分値と、前記触媒における添加剤の飽和吸着量に対する前記吸着量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒から流出する添加剤の流出量を出力とする第2モデルを含み、前記推定部は、前記第2モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記流出量を推定してもよい。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第2モデルを用いて、触媒から流出する添加剤の流出量を推定するため、より数多くの要因が影響する流出量の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第2のモデルとすることで、推定部は、流出量を高精度で推定できる。
(6)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、物理モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を出力とする第3モデルを含み、前記推定部は、前記第3モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定してもよい。物理モデルは、実際の物理則に基づき、相似律の上に成り立つ法則であるため、物理モデルによって得られる出力(推定結果)は、物理則を満たす。一方、機械学習モデルは、膨大なデータの学習の結果構築されたモデルであるため、物理則を満たす出力(推定結果)が得られない場合がある。この構成によれば、推定部は、物理モデルにより構成された第3モデルを用いて、触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定するため、影響する要因の少ない上記添加剤の量の推定を、物理則に則って高精度に推定できる。
(7)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、前記第1モデルによって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化率と、前記第2モデルによって推定される現在の前記流出量と、前記第3モデルによって推定される現在の前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量と、を入力とし、次の時刻における前記触媒への添加剤の吸着量を、物理則を用いて求めるモデルであり、前記推定部は、前記触媒状態推定モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての次の時刻における前記吸着量を推定してもよい。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルである第1及び第2モデルによる推定結果(窒素酸化物の浄化率、触媒から流出する添加剤の流出量)と、物理モデルである第3モデルによる推定結果(触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量)とを併用し、物理則を用いて、触媒への添加剤の吸着量を推定する。このため、本構成によれば、より数多くの要因が影響する吸着量の推定を、物理則を満たしつつ、高精度、かつ高速に実施できる。また、触媒への添加剤の吸着量は、前の時刻の吸着量の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。この構成によれば、推定部は、第1〜第3モデルによる現在の推定結果を用いて、次の時刻における吸着量を推定するため、前の時刻の触媒の浄化性能を踏まえて、次の時刻における触媒の浄化性能を高精度に推定できる。
(8)上記形態の触媒状態推定装置において、前記第1モデル及び前記第2モデルは、さらに、前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気に含まれる窒素酸化物の量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記添加剤の情報として、前記触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力とし、前記第3モデルは、さらに、前記排気の情報として、前記排気の温度を入力とし、前記添加剤の情報として、前記触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力としてもよい。この構成によれば、第1〜第3モデルにおいて、多様な種々の情報を考慮した推定を行うため、触媒の浄化性能をさらに高精度に推定できる。
(9)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、劣化度の異なる複数の前記触媒から取得された教師データを用いて作成された複数の前記第1モデルと、劣化度の異なる複数の前記触媒から取得された教師データを用いて作成された複数の前記第2モデルと、を含んでいてもよい。この構成によれば、触媒状態推定モデルは、劣化度の異なる複数の触媒から取得された教師データを用いて作成された複数の第1及び第2モデルを含むため、触媒の劣化度に合わせて最適な第1モデル及び第2モデルを採用することができる。この結果、本構成によれば、触媒の浄化性能をさらに高精度に推定できる。
(10)本発明の一形態によれば、触媒の状態を推定する方法が提供される。この方法では、少なくとも1つの数理モデルを含んだ触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部を備える情報処理装置が、内燃機関からの排気が流通する主流路に設けられ、前記排気中の有害物質を浄化する触媒の情報を取得する工程と、前記取得する工程において取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する工程と、を備える。
(11)本発明の一形態によれば、コンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムでは、少なくとも1つの数理モデルを含んだ触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部を備える情報処理装置に、内燃機関からの排気が流通する主流路に設けられ、前記排気中の有害物質を浄化する触媒の情報を取得する機能と、前記取得する工程において取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する機能と、を実行させる。
(12)上記形態の触媒状態推定装置において、前記主流路に同種の複数の前記触媒が設けられている場合に、前記第1取得部は、前記主流路において最上流に位置する前記触媒の情報を少なくとも取得し、前記推定部は、前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記複数の触媒全体としての浄化性能を推定してもよい。この構成によれば、主流路に複数の触媒が設けられている場合に、推定部は、最上流に位置する触媒の情報を触媒状態推定モデルに適用することで、主流路上の複数の触媒全体としての浄化性能を推定することができる。すなわち、本構成によれば、主流路上の複数の触媒を1つの触媒とみなして浄化性能を推定できるため、各触媒の浄化性能をそれぞれ推定する場合と比較して、触媒の情報の取得部(センサ等)の数や、予め準備する触媒状態推定モデルの数を減らすことができると共に、触媒状態推定装置における演算負荷を低減できる。また、推定部は、主流路に設けられた複数の触媒が同種の触媒である場合に、これらを1つの触媒とみなして浄化性能を推定する。同種の触媒であれば、浄化性能を左右する触媒の情報項目(例えば、触媒の温度、触媒に吸着されている添加剤の量)に相違がないため、推定部は、浄化性能を精度良く推定することができる。
(13)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記最上流に位置する触媒の前端の温度と、各前記触媒の温度と、1時刻前において前記複数の触媒に吸着されている添加剤の吸着量の合計と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記複数の触媒における窒素酸化物の浄化量の合計を出力とする第1モデルを含み、前記推定部は、前記第1モデルを用いて、前記浄化性能としての前記窒素酸化物の浄化量を推定してもよい。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第1モデルを用いて、複数の触媒における窒素酸化物の浄化量の合計を推定するため、数多くの要因が影響する窒素酸化物の浄化量の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第1のモデルとすることで、推定部は、窒素酸化物の浄化量を高精度で推定できる。
(14)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記最上流に位置する触媒の前端の温度と、各前記触媒の温度と、1時刻前において前記複数の触媒に吸着されている添加剤の吸着量の合計と、各前記触媒の温度の時間微分値と、前記複数の触媒における添加剤の飽和吸着量の合計に対する前記吸着量の合計の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記主流路において最下流に位置する前記触媒から流出する添加剤の流出量を出力とする第2モデルを含み、前記推定部は、前記第2モデルを用いて、前記浄化性能としての前記流出量を推定してもよい。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第2モデルを用いて、最下流に位置する触媒から流出する添加剤の流出量を推定するため、より数多くの要因が影響する流出量の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第2のモデルとすることで、推定部は、流出量を高精度で推定できる。
(15)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、物理モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記最上流に位置する触媒の前端の温度と、各前記触媒の温度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記最上流に位置する触媒へと供給される添加剤のうち、前記複数の触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を出力とする第3モデルを含み、前記推定部は、前記第3モデルを用いて、前記浄化性能としての、前記窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定してもよい。この構成によれば、推定部は、物理モデルにより構成された第3モデルを用いて、最上流に位置する触媒へと供給される添加剤のうち、複数の触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定するため、影響する要因の少ない上記添加剤の量の推定を、物理則に則って高精度に推定できる。
(16)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、前記第1モデルによって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化量の合計と、前記第2モデルによって推定される現在の前記流出量と、前記第3モデルによって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量と、を入力とし、次の時刻における、前記複数の触媒に吸着される添加剤の吸着量の合計を、物理則を用いて求めるモデルであり、前記推定部は、前記触媒状態推定モデルを用いて、前記浄化性能としての、次の時刻における前記吸着量の合計を推定してもよい。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルである第1及び第2モデルによる推定結果(複数の触媒における窒素酸化物の浄化量の合計、最下流に位置する触媒から流出する添加剤の流出量)と、物理モデルである第3モデルによる推定結果(最上流に位置する触媒へと供給される添加剤のうち、複数の触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量)とを併用し、物理則を用いて、複数の触媒に吸着される添加剤の吸着量の合計を推定する。このため、本構成によれば、より数多くの要因が影響する吸着量の合計の推定を、物理則を満たしつつ、高精度、かつ高速に実施できる。また、複数の触媒に吸着される添加剤の吸着量の合計は、前の時刻の吸着量の合計の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。この構成によれば、推定部は、第1〜第3モデルによる現在の推定結果を用いて、次の時刻における吸着量の合計を推定するため、前の時刻の触媒の浄化性能を踏まえて、次の時刻における触媒の浄化性能を高精度に推定できる。
(17)上記形態の触媒状態推定装置では、さらに、前記最上流に位置する触媒へと流入する排気の情報を取得する第2取得部と、前記最上流に位置する触媒へと供給される添加剤の情報を取得する第3取得部と、を備え、前記第1モデル及び前記第2モデルでは、さらに、前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気に含まれる窒素酸化物の量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記添加剤の情報として、前記最上流に位置する触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力とし、前記第3モデルは、さらに、前記排気の情報として、前記排気の温度を入力とし、前記添加剤の情報として、前記最上流に位置する触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力としてもよい。触媒の浄化性能は、触媒の情報に加えてさらに、触媒に流入する排気の情報(例えば、排気の温度、排気の流量、排気中の窒素酸化物の量)や、添加剤の情報(例えば、添加剤の量)の影響を受けて変動する。この構成によれば、推定部は、触媒の浄化性能に影響を及ぼすこれら触媒の情報と、排気の情報と、添加剤の情報とを触媒状態推定モデルに適用することによって、触媒の浄化性能をさらに精度良く推定することができる。
(18)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、模範用の主流路に配置された同種の複数の前記触媒からなる触媒群について、前記模範用の主流路において最上流に位置する前記触媒の入口を前記触媒群の入口とみなし、前記模範用の主流路において最下流に位置する前記触媒の出口を前記触媒群の出口とみなして、前記触媒群から取得された教師データを用いて作成された前記第1モデルと、前記第2モデルとのうちの少なくとも一方のモデルを含んでもよい。この構成によれば、模範用の主流路に配置された複数の触媒を1つの触媒(触媒群)として学習させることで、触媒状態推定モデルの第1及び/又は第2モデルを構築できる。このため、触媒状態推定モデルの第1及び/又は第2モデルでは、触媒群に属する各触媒間における主流路(排気管等)の影響を加味することができる。このようにして構築された触媒状態推定モデルを使用することで、推定部は、主流路上の各触媒間における排気管等の情報を必要とせず、複数の触媒全体としての浄化性能を精度良く推定することができる。
(19)上記形態の触媒状態推定装置では、さらに、前記最上流に位置する触媒の温度から、前記主流路に設けられた他の前記触媒の温度を推定する温度推定部を備えてもよい。この構成によれば、温度推定部は、最上流に位置する触媒の温度から、主流路に設けられた他の触媒の温度を推定することができるため、他の触媒の温度を取得する取得部(センサ等)を省略できる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、触媒状態推定装置及びシステム、触媒状態推定装置を含む排気浄化装置及び排気浄化システム、これら装置及びシステムの制御方法、これら装置及びシステムにおいて実行されるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
本発明の一実施形態としての排気浄化システムのブロック図である。 第1モデルについて説明する図である。 第3モデルについて説明する図である。 推定部による推定処理の手順を示すフローチャートである。 推定処理のステップS24について説明する図である。 第2実施形態における排気浄化システムのブロック図である。 第3実施形態における排気浄化システムのブロック図である。 第4実施形態における排気浄化システムのブロック図である。 第5実施形態における排気浄化システムのブロック図である。 第6実施形態における排気浄化システムのブロック図である。 第6実施形態における推定部による推定処理の手順を示すフローチャートである。 第7実施形態における排気浄化システムのブロック図である。
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての排気浄化システム1のブロック図である。本実施形態の排気浄化システム1は、燃焼状態制御部91及び内燃機関92と、排気浄化装置20と、触媒状態推定装置10を備える。本実施形態の排気浄化装置20は、内燃機関92の排気中における有害物質(窒素酸化物:NOx)を浄化する装置であり、触媒として選択還元触媒(SCR触媒:Selective Catalytic Reduction catalyst)40を備え、添加剤としてアンモニア(NH3)を発生する尿素水を使用する。本実施形態の触媒状態推定装置10は、排気浄化装置20に搭載されたSCR触媒40の状態、具体的には、SCR触媒40の浄化性能を推定できる。
内燃機関92は、例えば、ディーゼルエンジンや、リーンバーン運転方式のガソリンエンジンである。燃焼状態制御部91は、内燃機関92に対する空気や燃料の噴射を制御することで、内燃機関92内の空燃比をリーン、ストイキ、リッチの各状態へと制御する。燃焼状態制御部91は、例えば、電子制御ユニット(ECU、Electronic Control Unit)により実装される。なお、以下の説明では、排気浄化装置20のうち、内燃機関92に近い側を「上流側」と呼び、内燃機関92に遠い側を「下流側」と呼ぶ。図1の場合、左側が上流側に相当し、右側が下流側に相当する。
排気浄化装置20は、内燃機関92から伸びる排気管30と、排気管30上に設けられたSCR触媒40と、尿素ポンプユニット62及び尿素ノズル64とを備える。排気管30は、内燃機関92からの排気が流通する主流路を形成する。内燃機関92からの排気は、排気管30内の主流路を通って、SCR触媒40を通過して外気に放出される。SCR触媒40は、添加剤の供給を受けて、排気中のNOxを浄化する。SCR触媒40は「触媒」に相当する。尿素ポンプユニット62は、内部に添加剤となる尿素水を貯蔵すると共に、尿素ノズル64へと尿素水を送出するポンプを内蔵している。尿素ノズル64は、尿素水の噴射口であり、SCR触媒40の上流側に設けられてSCR触媒40に対して尿素水を供給する。
触媒状態推定装置10は、CPU11と、記憶部12と、流量取得部52と、NOx濃度取得部54と、前端温度取得部56と、温度取得部58とを備える。CPU11及び記憶部12は、例えば、ECUにより実装される。
CPU11は、ROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開して実行することにより、触媒状態推定装置10の各部を制御する。そのほかCPU11は、推定部110として機能し、流量取得部52、NOx濃度取得部54、前端温度取得部56、及び温度取得部58から取得された各取得値を受信し、後述する推定処理を実行する。記憶部12は、フラッシュメモリ、メモリカード、ハードディスクなどで構成される。記憶部12には、予め触媒状態推定モデル120が記憶されている。触媒状態推定モデル120には、第1モデル121と、第2モデル122と、第3モデル123とが含まれている。
図2は、第1モデル121について説明する図である。第1モデル121は、SCR触媒40におけるNOx浄化率を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはニューラルネットワーク(NN:Neural Network)により構成されている。図2に示すように、本実施形態の第1モデル121は、入力層、中間層、出力層の3層で構成されており、中間層を1層とし、中間層の素子にシグモイド関数を用いる場合を例示する。なお、中間層の素子にはシグモイド関数を用いなくてもよい。
第1モデル121の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目a1〜a3に示すパラメータが採用できる。
(a1)触媒の情報:SCR触媒40の前端の温度と、SCR触媒40の温度と、1時刻前においてSCR触媒40に吸着されているNH3の吸着量と、のうちの少なくとも1つ
(a2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度と、排気の流量と、排気に含まれるNOxの量と、のうちの少なくとも1つ
(a3)添加剤の情報:SCR触媒40に流入するNH3の流入量
ここで、ベクトルUに対しては、項目a1に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目a2,a3に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ただし、第1モデル121におけるNOx浄化率の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。
ベクトルUの各成分が入力層に入力された後、中間層では、ベクトルUの各成分uiと重み定数Wijとの積を足し合わせる(数式1)。その後、数式2のように、中間層のノード毎の固有値θj(バイアス)を加味した上で、シグモイド関数を通過させて出力する。出力層では、入力値Yjと重み定数Wjkとの積を足し合わせ、固有値θk(バイアス)との和を求めて出力する(数式3)。第1モデル121の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下における、SCR触媒40のNOx浄化率の推定値である。なお、nは入力変数の数、mは中間層ノードの数を表す。第1モデル121は「第1モデル」に相当する。
Figure 0006815366
Figure 0006815366
Figure 0006815366
第1モデル121は、出力変数Zが推定対象となる物理量(第1モデル121の場合はNOx浄化率)と一致するように、入力変数と出力変数との関係をNNに学習させ、NNにおける各値Wij,θj,Wjk,θkを予め決定しておく。第1モデル121の学習には、内燃機関92の過渡運転時に取得されたデータを教師データとして用いることが好ましい。なお、中間層のノード数は、例えば、教師データに対する精度と、教師データとして利用されなかったデータに対する精度とを考慮して決定できる。
第2モデル122は、SCR触媒40から流出するNH3の流出量を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはNNにより構成されている。第2モデル122は、後述の点を除き図2で説明した第1モデル121と同様の構成を有する。
第2モデル122の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目b1〜b3に示すパラメータが採用できる。
(b1)触媒の情報:SCR触媒40の前端の温度と、SCR触媒40の温度と、1時刻前においてSCR触媒40に吸着されているNH3の吸着量(実吸着量)と、SCR触媒40の温度の時間微分値と、SCR触媒40におけるNH3の飽和吸着量に対する吸着量(実吸着量)の比と、のうちの少なくとも1つ
(b2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度と、排気の流量と、排気に含まれるNOxの量と、のうちの少なくとも1つ
(b3)添加剤の情報:SCR触媒40に流入するNH3の流入量
第2モデル122のベクトルUに対しては、第1モデル121と同様に、項目b1に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目b2,b3に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ただし、第2モデル122における流出量の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。
第2モデル122の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下において、SCR触媒40から流出して失われるNH3の流出量の推定値である。なお、第2モデル122は「第2モデル」に相当する。
図3は、第3モデル123について説明する図である。第3モデル123は、SCR触媒40において、NOxの浄化反応に寄与しない添加剤(NH3)の量を推定するためのモデルであり、物理モデルにより構成されている。NH3は、特に高温環境下において熱分解や酸化反応によって失われ、SCR触媒40におけるNOxの浄化反応に寄与しないことが知られている。第3モデル123では、これら熱分解及び酸化反応に起因して減少するNH3の量を、NOxの浄化反応に寄与しない添加剤(NH3)の量として推定する。図3に示すように、第3モデル123は、アレニウスの式により構成されている。アレニウスの式のうち、頻度因子(A)、活性化エネルギー(E)については予め実験等により求めた値を使用できる。
第3モデル123の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目c1〜c3に示すパラメータが採用できる。
(c1)触媒の情報:SCR触媒40の前端の温度と、SCR触媒40の温度と、のうちの少なくとも1つ
(c2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度
(c3)添加剤の情報:SCR触媒40に流入するNH3の流入量
第1モデル121と同様に、第3モデル123のベクトルUに対しては、項目c1に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目c2,c3に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ただし、第3モデル123における、NOxの浄化反応に寄与しないNH3の量の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。
第3モデル123の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下において、SCR触媒40でNOxの浄化反応に寄与しないNH3の量の推定値である。なお、第3モデル123は「第3モデル」に相当する。
図1に戻り、説明を続ける。流量取得部52は、内燃機関92からの排気の流量を取得する。流量取得部52は、例えば、排気管30に設けられたピトー管式流量計によって測定された測定信号を取得することで実現してもよい。また、流量取得部52は、内燃機関92への吸入空気量信号や、燃料噴射量信号から排気の流量を推定してもよい。排気温度取得部53は、内燃機関92からの排気の温度を測定するセンサである。NOx濃度取得部54は、SCR触媒40へ流入する排気中のNOx濃度を測定するセンサである。なお、NOx濃度取得部54は、センサによる測定に代えて、内燃機関92の燃焼状態(リーン、ストイキ、リッチ)から排気中のNOx濃度を推定してもよい。前端温度取得部56は、SCR触媒40の入口近傍(前端)における温度を測定するセンサである。温度取得部58は、SCR触媒40の床温を測定するセンサである。
なお、流量取得部52と、排気温度取得部53と、NOx濃度取得部54とは、SCR触媒40へと流入する排気の情報を取得する「第2取得部」に相当する。前端温度取得部56と、温度取得部58とは、SCR触媒40の情報を取得する「第1取得部」に相当する。
図4は、推定部110による推定処理の手順を示すフローチャートである。推定処理は、SCR触媒40の浄化性能を推定する処理であり、任意のタイミングで実行される。例えば、推定処理は、排気浄化システム1または触媒状態推定装置10の利用者からの要求によって実行されてもよく、排気浄化システム1を搭載する車両における他の制御部からの要求によって実行されてもよい。図4に示す推定処理は、定期的に実行される。
なお、以降の説明では、上述した第1モデル121の入力として、項目a1〜a3のうち、SCR触媒40の前端の温度を除く全てのパラメータを採用し、第2モデル122の入力として項目b1〜b3で述べた全てのパラメータを採用し、第3モデル123の入力として項目c1〜c3で述べた全てのパラメータを採用する場合を例示する。また、以降の説明において、Δtは触媒状態推定装置10における単位時間(例えば、CPU11の演算周期、上述した各取得部52〜58におけるサンプリング周期)を表し、時刻t=kΔtは現在時刻を、時刻t=(k+1)Δtは1時刻後(1単位時間後)を、時刻t=(k−1)Δtは1時刻前(1単位時間前)を意味する。kは整数である。
ステップS10において推定部110は、推定処理の開始条件が成立しているか否かを判定する。具体的には例えば、推定部110は、温度取得部58が正常であり、かつ、尿素ポンプユニット62及び尿素ノズル64が正常であり、かつ、NOx濃度取得部54が活性状態である場合に、推定処理の開始条件が成立していると判定できる。推定処理の開始条件が成立している場合(ステップS10:YES)、推定部110は処理をステップS12へ遷移させる。推定処理の開始条件が成立していない場合(ステップS10:NO)、推定部110は処理を終了させる。
ステップS12において推定部110は、流量取得部52から、現在(時刻t=kΔt)の排気管30内部の流量Q[k]を取得する。ステップS14において推定部110は、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40に流入するNOx量NOx_SCRinを算出する。具体的には、推定部110は、NOx濃度取得部54から、SCR触媒40へと流入する排気中の現在のNOx濃度[k]を取得する。次に推定部110は、取得した排気中のNOx濃度[k]と、ステップS12で取得した排気の流量Q[k]とから、NOx量NOx_SCRin[k]を算出する。
ステップS16において推定部110は、温度取得部58から、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40の床温T[k]を取得する。ステップS18において推定部110は、尿素ノズル64から噴射される尿素水の噴射量から、予め用意された計算式やマップ等を用いて、現在(時刻t=kΔt)の、SCR触媒40に流入するNH3の流入量NH3_SCRin[k]を算出する。なお、ステップS18において推定部110は、添加剤の情報を取得する「第3取得部」としても機能する。
ステップS20において推定部110は、排気温度取得部53から、現在(時刻t=kΔt)の、SCR触媒40に流入する排気の温度T_SCRin[k]を取得する。なお、ステップS20において推定部110は、排気の温度に代えて、SCR触媒40のSCR触媒40の入口近傍(前端)における温度を取得して、T_SCRin[k]としてもよい。
ステップS22において推定部110は、現在(時刻t=kΔt)の、SCR触媒40の床温Tの時間微分値DiffT[k]を以下の数式4により算出する。数式4のうち、Δtは温度取得部58のサンプリング周期を表し、T[k]はステップS16で取得した現在のSCR触媒40の床温Tを表し、T[k−1]はステップS16で取得した1時刻前のSCR触媒40の床温Tを表す。なお、ステップS22において推定部110は、触媒の情報を取得する「第1取得部」としても機能する。
Figure 0006815366
図5は、推定処理のステップS24について説明する図である。図5では、横軸にSCR触媒40の床温を表し、縦軸にSCR触媒40におけるNH3の飽和吸着量を表している。SCR触媒40におけるNH3の飽和吸着量は、図示のように、床温の上昇につれて減少するという特性NPを持つ。特性NPを表す関係式は、予め実験等により求められ記憶部12に記憶されている。
図4のステップS24において推定部110は、SCR触媒40におけるNH3の飽和吸着量に対する実吸着量の比を算出する。具体的には、推定部110は、ステップS16で取得した現在のSCR触媒40の床温T[k]を、特性NPを表す関係式に当て嵌めて、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40のNH3の飽和吸着量StrtNH3Ad[k]を求める(図5)。次に、求めた飽和吸着量StrtNH3Ad[k]と、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40のNH3の実吸着量NH3Ad[k]とを用いて、飽和吸着量に対する実吸着量の比r[k]を算出する。
現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40のNH3の実吸着量NH3Ad[k]について、推定部110は、前回実行された推定処理(図4)において得られた推定値を、実吸着量NH3Ad[k]として用いることができる。例えば推定処理の初回実行時など、前回の推定値が無い場合、推定部110は、実吸着量NH3Ad[k]として所定のデフォルト値を利用できる。デフォルト値は任意に設定できるが、例えば、0や飽和吸着量を利用できる。なお、ステップS22において推定部110は、触媒の情報を取得する「第1取得部」としても機能する。
ステップS26において推定部110は、SCR触媒40のNOx浄化率の推定値を算出する。具体的には、推定部110は、NOx浄化率を推定するための第1モデル121(図2)の入力変数ベクトルUに、ステップS12〜S20で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第1モデル121から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40のNOx浄化率NOxConv[k]とする。
(a1)触媒の情報:
・SCR触媒40の温度(床温)T[k](ステップS16)
・1時刻前においてSCR触媒40に吸着されているNH3の吸着量(実吸着量)NH3Ad[k](前回の推定処理の結果)
(a2)排気の情報:
・内燃機関92からの排気の温度T_SCRin[k](ステップS20)
・排気の流量Q[k](ステップS12)
・排気に含まれるNOxの量NOx_SCRin[k](ステップS14)
(a3)添加剤の情報:
・SCR触媒40に流入するNH3の流入量NH3_SCRin[k](ステップS18)
このように、ステップS26において推定部110は、第1モデル121を用いてSCR触媒40の浄化性能としての、NOx浄化率NOxConv[k]を推定する。第1モデル121のような機械学習モデルは、入出力変数(例えば、入力変数のベクトルUと出力変数のZ)に因果関係さえあれば、複雑な関数近似をしなければ分類や回帰ができない場合(例えば、物理式で明示することが困難な現象が含まれる場合、現象を記述する物理式が複数必要となる場合、数多くの要因の影響が想定されることから物理式に対する入力が多くなる場合)であっても、低演算負荷で出力(推定結果)を得ることができる。ステップS26によれば、推定部110は、機械学習モデルにより構成された第1モデル121を用いて、NOx浄化率NOxConv[k]を推定するため、数多くの要因が影響するNOxの浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第1モデル121とすることで、推定部110は、NOxの浄化率を高精度で推定できる。
ステップS28において推定部110は、SCR触媒40から流出するNH3の流出量の推定値を算出する。具体的には、推定部110は、NH3の流出量を推定するための第2モデル122の入力変数ベクトルUに、ステップS12〜S24で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第2モデル122から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40から流出するNH3の流出量NH3_SCRout[k]とする。
(b1)触媒の情報:
・SCR触媒40の温度(床温)T[k](ステップS16)
・1時刻前においてSCR触媒40に吸着されているNH3の吸着量(実吸着量)NH3Ad[k](前回の推定処理の結果)
・SCR触媒40の温度の時間微分値DiffT[k](ステップS22)
・SCR触媒40におけるNH3の飽和吸着量に対する吸着量(実吸着量)の比r[k](ステップS24)
(b2)排気の情報:
・内燃機関92からの排気の温度T_SCRin[k](ステップS20)
・排気の流量Q[k](ステップS12)
・排気に含まれるNOxの量NOx_SCRin[k](ステップS14)
(b3)添加剤の情報:
・SCR触媒40に流入するNH3の流入量NH3_SCRin[k](ステップS18)
このように、ステップS28において推定部110は、第2モデル122を用いてSCR触媒40の浄化性能としての、NH3の流出量NH3_SCRout[k]を推定する。第2モデル122は、上述した第1モデル121と同様に、機械学習モデルにより構成されているため、より数多くの要因が影響するNH3の流出量の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第2モデル122とすることで、推定部110は、流出量を高精度で推定できる。
ステップS30において推定部110は、SCR触媒40において、NOxの浄化反応に寄与しない添加剤(NH3)の量の推定値を算出する。具体的には、推定部110は、NOxの浄化反応に寄与しないNH3の量を推定するための第3モデル123の入力変数ベクトルUに、ステップS16〜S20で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第3モデル123から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の、NOxの浄化反応に寄与しないNH3の量NH3_thrmlytc[k]とする。
(c1)触媒の情報:
・SCR触媒40の温度(床温)T[k](ステップS16)
(c2)排気の情報:
・内燃機関92からの排気の温度T_SCRin[k](ステップS20)
(c3)添加剤の情報:
・SCR触媒40に流入するNH3の流入量NH3_SCRin[k](ステップS18)
このように、ステップS30において推定部110は、第3モデル123を用いてSCR触媒40の浄化性能としての、NOxの浄化反応に寄与しないNH3の量NH3_thrmlytc[k]を推定する。第3モデル123のような物理モデルは、実際の物理則に基づき、相似律の上に成り立つ法則である。このため、第3モデル123(物理モデル)によって得られる出力(推定結果)は、物理則を満たす。一方、第1モデル121及び第2モデル122(機械学習モデル)は、膨大なデータの学習の結果構築されたモデルであるため、物理則を満たす出力(推定結果)が得られない場合がある。ステップS30によれば、推定部110は、物理モデルにより構成された第3モデル123を用いて、SCR触媒40においてNOxの浄化反応に寄与しないNH3(添加剤)の量を推定するため、影響する要因の少ない上記NH3の量の推定を、物理則に則って高精度に推定できる。
ステップS32において推定部110は、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)において、SCR触媒40に吸着されているNH3の吸着量の推定値を、以下の数式5により算出する。なお、数式5は「触媒状態推定モデル120」として機能する。
Figure 0006815366
数式5の各値は、それぞれ、推定部110がステップS12〜S30で推定または算出した、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40の浄化性能(状態)である。具体的には、NOxConv[k]は、第1モデル121によって推定されたSCR触媒40のNOx浄化率である。NH3_SCRout[k]は、第2モデル122によって推定されたSCR触媒40から流出するNH3の流出量である。NH3_thrmlytc[k]は、第3モデル123によって推定されたNOxの浄化反応に寄与しないNH3の量である。NH3Ad[k]は、前回の推定処理の結果得られた、SCR触媒40に吸着されているNH3の吸着量(実吸着量)である。NH3_SCRin[k]は、SCR触媒40に流入するNH3の流入量である。NOx_SCRin[k]は、SCR触媒40に流入する排気に含まれるNOxの量である。
ステップS32が終了した後、推定部110は、ステップS32で推定したNH3の吸着量NH3Ad[k+1]を出力する。出力は任意の態様で実施でき、例えば、触媒状態推定装置10が備える図示しない表示部に表示させてもよく、記憶部12内の推定履歴に記録してもよく、排気浄化システム1を搭載する車両における他の制御部に信号を送信してもよい。また、推定部110は、ステップS32で推定したNH3の吸着量NH3Ad[k+1]と共に、又はNH3の吸着量NH3Ad[k+1]に代えて、ステップS12〜S30の少なくともいずれかによって取得、算出、推定された結果を出力してもよい。その後、推定部110は、処理を終了させる。
以上のように、第1実施形態の触媒状態推定装置10によれば、推定部110は、触媒状態推定モデル120を利用して、SCR触媒40に吸着されているNH3(添加剤)の吸着量NH3Ad[k+1]を推定する。数式5から明らかなように、触媒状態推定モデル120は、機械学習モデル(NNモデル)である第1モデル121及び第2モデル122による推定結果(NOx浄化率、SCR触媒40から流出するNH3の流出量)と、物理モデルである第3モデル123による推定結果(SCR触媒40においてNOxの浄化反応に寄与しないNH3の量)とを併用し、物理則を用いて、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)においてSCR触媒40に吸着されているNH3(添加剤)の吸着量NH3Ad[k+1]を推定するモデルである。このため、本実施形態によれば、推定部110は、数多くの要因(例えば、項目a1〜a3,b1〜b3,c1〜c3に列挙した要因)が影響する吸着量NH3Ad[k+1]の推定を、物理則を満たしつつ、高精度、かつ高速に実施できる。
また、SCR触媒40に吸着されているNH3(添加剤)の吸着量は、前の時刻(時刻t=kΔt)の吸着量NH3Ad[k]の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。第1実施形態の推定部110は、第1モデル121、第2モデル122、及び第3モデル123による現在の推定結果NOxConv[k],NH3_SCRout[k],及びNH3_thrmlytc[k]を用いて、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)における吸着量NH3Ad[k+1]を推定する。このため、推定部110は、前の時刻(時刻t=kΔt)のSCR触媒40の浄化性能を踏まえて、次の時刻におけるSCR触媒40の浄化性能を高精度に推定できる。
さらに、SCR触媒40の浄化性能は、触媒の情報(例えば、SCR触媒40の温度、SCR触媒40に吸着されているNH3の量)の影響を受けて変動する。第1実施形態の触媒状態推定装置10によれば、推定部110は、SCR触媒40の浄化性能に影響を及ぼすこの触媒の情報を、第1モデル121(項目a1)、第2モデル122(項目b1)、及び第3モデル123(項目a3)の入力変数となるベクトルUのパラメータに採用することで、触媒状態推定モデル120に適用する。この結果、推定部110は、SCR触媒40の浄化性能を精度良く推定することができ、内燃機関92の排気を浄化するSCR触媒40の浄化性能を推定する技術において、推定の精度を向上させることができる。
さらに、SCR触媒40の浄化性能は、触媒の情報に加えてさらに、触媒に流入する排気の情報(例えば、排気の温度、排気の流量、排気中のNOxの量)の影響を受けて変動する。第1実施形態の触媒状態推定装置10によれば、推定部110は、SCR触媒40の浄化性能に影響を及ぼすこれら触媒の情報(項目a1,b1,c1)と、触媒に流入する排気の情報(項目a2,b2,c2)との両方を触媒状態推定モデル120に適用することで、SCR触媒40の浄化性能をさらに精度良く推定することができる。また、推定部110は、触媒の情報(項目a1,b1,c1)に加えてさらに、添加剤の情報(例えば、NH3の量、項目a3,b3,c3)を触媒状態推定モデル120に適用することによって、SCR触媒40の浄化性能を推定する。このため、例えば、本実施形態で例示したSCR触媒40や、そのほか吸蔵還元触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction catalyst)のように、添加剤を用いて有害物質を浄化する触媒の浄化性能を推定する場合において、推定の精度をより向上させることができる。
さらに、第1モデル121及び第2モデル122を生成する際の教師データを、内燃機関92の過渡運転時に取得されたデータを用いれば、推定部110は、内燃機関92の通常運転時におけるSCR触媒40の浄化性能に加えてさらに、内燃機関92の過渡運転時におけるSCR触媒40の浄化性能をも推定できる。
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態における排気浄化システム1aのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、推定部110は、第1〜3モデル121〜123の推定結果を利用して、SCR触媒40の浄化性能として、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)におけるSCR触媒40に吸着されているNH3の吸着量を推定した。しかし、第2実施形態の推定部110aは、第1モデル121を利用して、SCR触媒40の浄化性能として、現在(時刻t=kΔt)のSCR触媒40のNOx浄化率NOxConv[k]を推定する。
第2実施形態の記憶部12には、図2で説明した第1モデル121のみを含む触媒状態推定モデル120aが予め記憶されている。推定部110aは、触媒状態推定モデル120aの第1モデル121を利用して、図4で説明した推定処理のうち、ステップS10〜S24と、ステップS26とを実行する。ステップS26の実行後、推定部110aは、ステップS26において推定されたSCR触媒40のNOx浄化率NOxConv[k]を、SCR触媒40の浄化性能として出力する。このように、第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、排気浄化システム1aでは、第1モデル121に代えて/又は第1モデル121と共に第2モデル122を備えていてもよい。この場合、推定部110aは、ステップS26に代えて/又はステップS26と共にステップS28を実行し、その推定結果をSCR触媒40の浄化性能として出力する。また、排気浄化システム1aでは、第1モデル121に代えて/又は第1モデル121と共に第3モデル123を備えていてもよい。この場合、推定部110aは、ステップS26に代えて/又はステップS26と共にステップS30を実行し、その推定結果をSCR触媒40の浄化性能として出力する。また、排気浄化システム1aでは、上述した数式5を備えず、第1モデル121と、第2モデル122と、第3モデル123とを備えていてもよい。この場合、推定部110aは、ステップS26〜S30を実行し、その推定結果をSCR触媒40の浄化性能として出力する。このようにしても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態における排気浄化システム1bのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、SCR触媒の浄化性能を推定した。しかし、第3実施形態の排気浄化システム1bでは、SCR触媒に代えて吸蔵還元触媒(NSR触媒)を備え、NSR触媒の浄化性能を推定する。
排気浄化システム1bは、さらにリッチスパイク制御部93を備え、触媒状態推定装置10に代えて触媒状態推定装置10bを、排気浄化装置20に代えて排気浄化装置20bを備える。リッチスパイク制御部93は、内燃機関92に対する空気や燃料の噴射を制御することで、リッチスパイク(ごく短時間の燃料リッチ燃焼)を生じさせる制御部であり、例えばECUにより実装される。リッチスパイク制御部93は、リッチスパイクを生じさせることで、内燃機関92から供給される一酸化炭素(CO)、水素(H2)、炭化水素(HC)を還元剤として、NSR触媒70に吸蔵されているNOxを還元し、除去する。
排気浄化装置20bは、SCR触媒40に代えてNSR触媒70を備え、尿素ポンプユニット62及び尿素ノズル64を備えていない。NSR触媒70は、排気中に含まれるNOxを吸蔵物質にため込む(吸蔵する)ことで排気中のNOxを浄化する。NSR触媒70は「触媒」に相当する。
触媒状態推定装置10bは、前端温度取得部56に代えて前端温度取得部76を、温度取得部58に代えて温度取得部78を、推定部110に代えて推定部110bを、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120bを備えている。前端温度取得部76は、NSR触媒70の入口近傍(前端)における温度を測定するセンサである。温度取得部78は、NSR触媒70の床温を測定するセンサである。前端温度取得部76と温度取得部78とは、NSR触媒70の情報を取得する「第1取得部」に相当する。
触媒状態推定モデル120bは、第1実施形態の触媒状態推定モデル120と同様に、機械学習モデルにより構成され、NSR触媒70におけるNOxの浄化率を出力とする第1モデルと、機械学習モデルにより構成され、NSR触媒70からのCO,H2,HCの流出量を出力とする第2モデルと、物理モデルにより構成され、NOxの浄化反応に寄与しないCO,H2,HCの量を出力とする第3モデルとを含んでいる。推定部110bは、このような触媒状態推定モデル120bを用いて、図2の推定処理を実行し、NSR触媒70におけるNOxの吸蔵量を、物理則(例えば、質量保存則、物質収支則、熱収支則、エネルギー収支則)を用いて求める。なお、NSR触媒70におけるNOxの吸蔵量は、第1実施形態のNH3吸着量と同様に、前の時刻における吸蔵量の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。
このようにすれば、NSR触媒70を利用した第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態における排気浄化システム1cのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、SCR触媒の浄化性能を推定した。しかし、第4実施形態の排気浄化システム1cでは、SCR触媒に代えて三元触媒(Three-Way Catalyst)を備え、三元触媒の浄化性能を推定する。
排気浄化システム1cは、触媒状態推定装置10に代えて触媒状態推定装置10cを、排気浄化装置20に代えて排気浄化装置20cを備える。排気浄化装置20cは、SCR触媒40に代えて三元触媒80を備え、尿素ポンプユニット62及び尿素ノズル64を備えていない。三元触媒80は、排気中に含まれるCO,HC,NOxをそれぞれ酸化又は還元することで除去し、これら有害物質を浄化する。なお、本実施形態の三元触媒80は、酸素吸蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有し、三元触媒80に流入する排気中の酸素(O2)をため込む(吸蔵する)ことができる。
触媒状態推定装置10cは、NOx濃度取得部54に代えて酸素濃度取得部84を、前端温度取得部56に代えて前端温度取得部86を、温度取得部58に代えて温度取得部88を、推定部110に代えて推定部110cを、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120cを備えている。酸素濃度取得部84は、内燃機関92からの排気中のO2濃度を取得する。酸素濃度取得部84は、例えば、排気管30に設けられたA/Fセンサによって測定された測定信号を取得することで実現してもよく、酸素センサによって測定された測定信号を取得することで実現してもよい。酸素濃度取得部84は、内燃機関92への吸入空気量信号や、燃料噴射量信号から排気中のO2濃度を推定してもよい。酸素濃度取得部84は、添加剤の情報を取得する「第3取得部」としても機能する。前端温度取得部86は、三元触媒80の入口近傍(前端)における温度を測定するセンサである。温度取得部88は、三元触媒80の床温を測定するセンサである。前端温度取得部86と温度取得部88とは、三元触媒80の情報を取得する「第1取得部」に相当する。
触媒状態推定モデル120cは、第1実施形態の触媒状態推定モデル120と同様に、機械学習モデルにより構成され、三元触媒80におけるCO,HC,NOxのうち少なくともいずれか1つの浄化率を出力とする第1モデルと、機械学習モデルにより構成され、三元触媒80からのO2の流出量を出力とする第2モデルと、物理モデルにより構成され、CO,HC,NOxの浄化反応に寄与しないO2の量を出力とする第3モデルとを含んでいる。推定部110cは、このような触媒状態推定モデル120cを用いて、図2の推定処理を実行し、三元触媒80におけるO2の吸蔵量を、物理則(例えば、質量保存則、物質収支則、熱収支則、エネルギー収支則)を用いて求める。なお、三元触媒80におけるO2の吸蔵量は、第1実施形態のNH3吸着量と同様に、前の時刻における吸蔵量の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。
このようにすれば、三元触媒80を利用した第4実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態における排気浄化システム1dのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、単一の第1,2モデル121,122を使用してSCR触媒40の浄化性能を推定していた。しかし、第5実施形態の排気浄化システム1dでは、複数の第1,2モデル121d,122dを使い分けて、SCR触媒40の浄化性能を推定する。
排気浄化システム1dは、触媒状態推定装置10に代えて触媒状態推定装置10dを備える。触媒状態推定装置10dは、推定部110に代えて推定部110dを備え、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120dを備えている。触媒状態推定モデル120dには、複数の第1モデル121dと、複数の第2モデル122dと、第3モデル123とが含まれている。各第1モデル121dは、劣化度の異なる複数のSCR触媒40から取得された教師データを用いて、それぞれ作成されている。具体的には、例えば、第1モデル121d(1)は、劣化の度合が少ないSCR触媒40から取得された教師データから作成され、第1モデル121d(2)は、劣化の度合が中程度のSCR触媒40から取得された教師データから作成され、第1モデル121d(3)は、劣化の度合が大きいSCR触媒40から取得された教師データから作成されている。劣化の度合(劣化度)は、SCR触媒40の状態やSCR触媒40の取り換え時期等から判定してもよく、SCR触媒40から排出される排気中のNOx濃度から判定してもよく、車両の走行距離等から判定してもよい。各第2モデル122dは、第1モデル121dと同様に、劣化度の異なる複数のSCR触媒40から取得された教師データを用いて、それぞれ作成されている。
推定部110dは、推定処理(図2)のステップS26において、SCR触媒40の劣化の度合に応じた第1モデル121dを用いて、SCR触媒40のNOx浄化率を推定する。また、ステップS28において、SCR触媒40の劣化の度合に応じた第2モデル122dを用いて、SCR触媒40から流出するNH3の流出量を推定する。
このようにすれば、第5実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態によれば、触媒状態推定モデル120dは、劣化度の異なる複数のSCR触媒40から取得された教師データを用いて作成された、複数の第1モデル121d及び第2モデル122dを含むため、SCR触媒40の劣化度に合わせて最適な第1モデル121d及び第2モデル122dを採用することができる。この結果、第5実施形態によれば、触媒の浄化性能をさらに高精度に推定できる。
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態における排気浄化システム1eのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、1つのSCR触媒の浄化性能を推定した。しかし、第6実施形態の排気浄化システム1eでは、複数のSCR触媒を搭載し、この複数のSCR触媒全体としての浄化性能を推定する。排気浄化システム1eは、触媒状態推定装置10に代えて触媒状態推定装置10eを備え、排気浄化装置20に代えて排気浄化装置20eを備える。
排気浄化装置20eは、さらに、SCR触媒40の下流側に配置された第2SCR触媒41を備える。以降では区別のために、SCR触媒40を第1SCR触媒40とも呼ぶ。第2SCR触媒41は、第1SCR触媒40と同種の選択還元触媒である。本実施形態において、「同種の触媒」とは、触媒における排気浄化メカニズムが同一又は類似の触媒を意味する。第2SCR触媒41は、第1SCR触媒40において浄化しきれずに排出された有害物質(NOx)を、第1SCR触媒40において使用しきれずに排出された添加剤(NH3)によって浄化する。なお、排気浄化装置20eは、尿素ポンプユニット62から、第2SCR触媒41に対して個別に尿素水を供給する尿素ノズルを備える構成でもよい。以降、排気浄化装置20eに搭載された複数の同種の触媒(第1及び第2SCR触媒40,41)を総称して「触媒群CG」とも呼ぶ。図10に示す構成において、第1SCR触媒40は「最上流に位置する触媒」に相当し、第2SCR触媒41は「最下流に位置する触媒」に相当する。
触媒状態推定装置10eは、さらに、第2SCR触媒41の床温を測定するセンサからなる第2温度取得部59を備える。また、触媒状態推定装置10eは、推定部110に代えて推定部110eを、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120eを備える。推定部110eは、推定処理の内容が第1実施形態(図4)とは相違する。触媒状態推定モデル120eには、第1モデル121eと、第2モデル122eと、第3モデル123eとが含まれている。
第1モデル121eは、排気浄化装置20eに搭載された複数の同種の触媒(すなわち第1及び第2SCR触媒40,41)について、当該複数の触媒におけるNOxの浄化量の合計を推定するためのモデルである。第1モデル121eは、第1実施形態と同様に、機械学習モデル、具体的にはNNにより構成されている。第1モデル121eの入力変数となるベクトルUの各成分には、以下の項目a11〜a13に示すパラメータが採用できる。
(a11)触媒の情報:最上流に位置する第1SCR触媒40の前端の温度と、第1及び第2SCR触媒40,41の各温度と、1時刻前において複数の触媒に吸着されているNH3の吸着量の合計と、のうちの少なくとも1つ
(a12)排気の情報:内燃機関92から最上流に位置する第1SCR触媒40に流入する排気の温度と、当該排気の流量と、最上流に位置する第1SCR触媒40に流入する排気に含まれるNOxの量と、のうちの少なくとも1つ
(a13)添加剤の情報:最上流に位置する第1SCR触媒40に流入するNH3の流入量
第1実施形態と同様に、ベクトルUに対しては、項目a11に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目a12,a13に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ベクトルUの各成分が入力層に入力された後の処理については、第1実施形態と同様である。第1モデル121eの出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下における、複数の触媒(すなわち第1及び第2SCR触媒40,41)におけるNOxの浄化量の合計の推定値である。
第1モデル121eは、第1実施形態と同様に、出力変数Zが推定対象となる物理量と一致するように、入力変数と出力変数との関係をNNに学習させ、NNにおける各値Wij,θj,Wjk,θkを予め決定しておく。この学習の際、本実施形態では、模範用の主流路(排気管)に配置された同種の複数の触媒(第1及び第2SCR触媒)からなる触媒群について、最上流に位置する第1SCR触媒の入口を触媒群の入口とみなし、最下流に位置する第2SCR触媒の出口を触媒群の出口とみなして、当該触媒群から取得された教師データを用いることが好ましい。
第2モデル122eは、複数の触媒から流出するNH3の流出量、換言すれば、最下流に位置する第2SCR触媒41から流出するNH3の流出量を推定するためのモデルである。第2モデル122eは、第1実施形態と同様に、機械学習モデル、具体的にはNNにより構成されている。第2モデル122eの入力変数となるベクトルUの各成分には、以下の項目b11〜b13に示すパラメータが採用できる。
(b11)触媒の情報:最上流に位置する第1SCR触媒40の前端の温度と、第1及び第2SCR触媒40,41の各温度と、1時刻前において複数の触媒に吸着されているNH3の吸着量の合計(実吸着量の合計)と、第1SCR触媒40の温度の時間微分値及び第2SCR触媒41の温度の時間微分値と、複数の触媒におけるNH3の飽和吸着量の合計に対する吸着量の合計(実吸着量の合計)の比と、のうちの少なくとも1つ
(b12)排気の情報:内燃機関92から最上流に位置する第1SCR触媒40に流入する排気の温度と、当該排気の流量と、最上流に位置する第1SCR触媒40に流入する排気に含まれるNOxの量と、のうちの少なくとも1つ
(b13)添加剤の情報:最上流に位置する第1SCR触媒40に流入するNH3の流入量
第1実施形態と同様に、ベクトルUに対しては、項目b11に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目b12,b13に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。第2モデル122eの出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下において、複数の触媒から流出して失われるNH3の流出量、換言すれば、最下流に位置する第2SCR触媒41から流出して失われるNH3の流出量の推定値である。なお、第2モデル122eは、第1モデル121eと同様に、入力変数と出力変数との関係をNNに学習させる際、模範用の主流路(排気管)に配置された同種の複数の触媒(第1及び第2SCR触媒)からなる触媒群について、最上流に位置する第1SCR触媒の入口を触媒群の入口とみなし、最下流に位置する第2SCR触媒の出口を触媒群の出口とみなして、当該触媒群から取得された教師データを用いることが好ましい。
第3モデル123eは、最上流に位置する第1SCR触媒40へと供給される添加剤(NH3)のうち、複数の触媒においてNOxの浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定するためのモデルである。第3モデル123eは、第1実施形態と同様に、物理モデル、具体的にはアレニウスの式により構成されている。第3モデル123eの入力変数となるベクトルUの各成分には、以下の項目c11〜c13に示すパラメータが採用できる。
(c11)触媒の情報:最上流に位置する第1SCR触媒40の前端の温度と、第1及び第2SCR触媒40,41の各温度と、のうちの少なくとも1つ
(c12)排気の情報:内燃機関92から最上流に位置する第1SCR触媒40に流入する排気の温度
(c13)添加剤の情報:最上流に位置する第1SCR触媒40に流入するNH3の流入量
第1実施形態と同様に、ベクトルUに対しては、項目c11に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目c12,c13に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。第3モデル123eの出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下において、複数の触媒においてNOxの浄化反応に寄与しないNH3の量の推定値である。
図11は、第6実施形態の推定部110eによる推定処理の手順を示すフローチャートである。第6実施形態の推定処理は、複数の触媒全体としての浄化性能を推定する処理であり、図4に示す第1実施形態と同様に、任意のタイミングで実行される。以降の説明において説明に使用する項目a11〜a13,b11〜b13,c11〜c13の各パラメータと、Δt、時刻t=kΔt、時刻t=(k+1)Δt、時刻t=(k−1)Δtの各定義は第1実施形態と同様である。また、以降の説明では、図4に示す第1実施形態と異なる処理についてのみ説明する。
ステップS14eにおいて推定部110eは、現在(時刻t=kΔt)における、最上流に位置する第1SCR触媒40に流入するNOx量NOx_SCRinを算出する。ステップS16eにおいて推定部110eは、第1温度取得部58から、現在(時刻t=kΔt)の第1SCR触媒40の床温T1[k]を取得する。また、推定部110eは、第2温度取得部59から、現在(時刻t=kΔt)の第2SCR触媒41の床温T2[k]を取得する。ステップS18eにおいて推定部110eは、尿素ノズル64から噴射される尿素水の噴射量から、現在(時刻t=kΔt)における、最上流に位置する第1SCR触媒40に流入するNH3の流入量NH3_SCRin[k]を算出する。
ステップS20eにおいて推定部110eは、排気温度取得部53から、現在(時刻t=kΔt)における、最上流に位置する第1SCR触媒40に流入する排気の温度T1_SCRin[k]を取得する。ステップS22eにおいて推定部110eは、現在(時刻t=kΔt)の、各SCR触媒(第1及び第2SCR触媒40,41)の床温Tnの時間微分値DiffTn[k]を、以下の数式6によりそれぞれ算出する。数式6の変数nは、各触媒を区別するための自然数である。
Figure 0006815366
ステップS24eにおいて推定部110eは、複数の触媒におけるNH3の飽和吸着量の合計に対する、実吸着量の合計の比を算出する。具体的には、推定部110eは、ステップS16eで取得した現在の第1SCR触媒40の床温T1[k]を、特性NPを表す関係式に当て嵌めて、現在(時刻t=kΔt)の第1SCR触媒40のNH3の飽和吸着量を求める(図5)。同様に、推定部110eは、ステップS16eで取得した現在の第2SCR触媒41の床温T2[k]を、特性NPを表す関係式に当て嵌めて、現在(時刻t=kΔt)の第2SCR触媒41のNH3の飽和吸着量を求める。推定部110eは、求めた各飽和吸着量の和を、複数の触媒におけるNH3の飽和吸着量の合計StrtNH3Ad[k]とする。次に、推定部110eは、求めた飽和吸着量の合計StrtNH3Ad[k]と、現在(時刻t=kΔt)の複数の触媒のNH3の実吸着量の合計NH3Ad[k]とを用いて、飽和吸着量の合計に対する実吸着量の合計の比r[k]を算出する。なお、複数の触媒のNH3の実吸着量の合計NH3Ad[k]について、前回実行された推定処理で得られた推定値を利用できる点、推定値が無い場合等に所定のデフォルト値を利用できる点については第1実施形態と同様である。
ステップS26eにおいて推定部110eは、複数の触媒(すなわち第1及び第2SCR触媒40,41)におけるNOxの浄化量の合計の推定値を算出する。具体的には、推定部110eは、第1モデル121eの入力変数ベクトルUに、ステップS12、S14e〜S20eで求めた現在(時刻t=kΔt)の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110eは、第1モデル121eから得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の複数の触媒のNOxの浄化量の合計NOxConv[k]とする。
ステップS28eにおいて推定部110eは、複数の触媒から流出して失われるNH3の流出量、換言すれば、最下流に位置する第2SCR触媒41から流出して失われるNH3の流出量の推定値を算出する。具体的には、推定部110eは、第2モデル122eの入力変数ベクトルUに、ステップS12、S14e〜S24eで求めた現在(時刻t=kΔt)の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110eは、第2モデル122eから得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の複数の触媒から流出して失われるNH3の流出量NH3_SCRout[k]とする。
ステップS30eにおいて推定部110eは、最上流に位置する第1SCR触媒40へと供給される添加剤(NH3)のうち、複数の触媒においてNOxの浄化反応に寄与しない添加剤の量の推定値を算出する。具体的には、推定部110eは、第3モデル123eの入力変数ベクトルUに、ステップS16e〜S20eで求めた現在(時刻t=kΔt)の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110eは、第3モデル123eから得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の、複数の触媒においてNOxの浄化反応に寄与しないNH3の量NH3_thrmlytc[k]とする。
ステップS32eにおいて推定部110eは、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)において、複数の触媒に吸着されるNH3の吸着量の合計の推定値を、第1実施形態のステップS32で説明した数式5により算出する。ここで、数式5に適用する各値は、それぞれ、推定部110eがステップS12、S14e〜S30eで推定または算出した、現在(時刻t=kΔt)の複数の触媒における浄化性能(または状態)である。ステップS32eが終了した後、推定部110eは、ステップS32eで推定したNH3の吸着量の合計NH3Ad[k+1]を出力する。詳細は、第1実施形態と同様である。
以上のように、第6実施形態の触媒状態推定装置10eによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第6実施形態の触媒状態推定装置10eによれば、主流路(排気管30)に複数の触媒(第1及び第2SCR触媒40,41)が設けられている場合に、推定部110eは、最上流に位置する第1SCR触媒40の情報を触媒状態推定モデル120eに適用することで、複数の触媒全体としての浄化性能を推定することができる。すなわち、第6実施形態の触媒状態推定装置10eによれば、主流路上の複数の触媒(第1及び第2SCR触媒40,41)を1つの触媒(すなわち、触媒群CG)とみなして触媒群CGの浄化性能を推定できるため、各触媒の浄化性能をそれぞれ推定する場合と比較して、触媒の情報の取得部(例えば、第2SCR触媒41へと流入する排気の流量取得部、排気温度取得部、NOx濃度取得部、第2SCR触媒41の前端温度取得部等を構成するセンサ)の数や、予め準備する触媒状態推定モデル120eの数を減らすことができると共に、触媒状態推定装置10eにおける演算負荷を低減できる。また、推定部110eは、主流路に設けられた複数の触媒が同種の触媒(第6実施形態の例では、SCR触媒)である場合に、これらを1つの触媒(触媒群CG)とみなして浄化性能を推定する。同種の触媒であれば、浄化性能を左右する触媒の情報項目(例えば、触媒の温度、触媒に吸着されている添加剤の量)に相違がないため、推定部110eは、浄化性能を精度良く推定することができる。
また、第6実施形態の触媒状態推定装置10eによれば、模範用の主流路に配置された複数の触媒を1つの触媒(触媒群)として、当該触媒群から取得された教師データを用いて学習させることで、触媒状態推定モデル120eの第1モデル121e及び/又は第2モデル122eを構築できる。このため、触媒状態推定モデル120eの第1モデル121e及び/又は第2モデル122eでは、触媒群に属する各触媒間における主流路(排気管等)の影響を加味することができる。このようにして構築された触媒状態推定モデル120eを推定処理で使用することで、推定部110eは、主流路(排気管30)上の各触媒間(第1SCR触媒40と第2SCR触媒41との間)における排気管等の情報を必要とせず、複数の触媒全体としての浄化性能を精度良く推定することができる。
なお、上記第6実施形態では、複数の触媒の具体例として、2つのSCR触媒(第1及び第2SCR触媒40,41)を例示した。しかし、排気浄化システム1eは、3つ以上のSCR触媒を備えていてもよい。また、排気浄化システム1eは、複数のNSR触媒を備えていてもよく、複数の三元触媒を備えていてもよい。図11で説明した第6実施形態の推定処理は、同種の複数の触媒において適用できる。
<第7実施形態>
図12は、第7実施形態における排気浄化システム1fのブロック図である。図10に示す第6実施形態では、排気浄化装置20eに設けられた各触媒の温度(床温)は、各触媒に対してそれぞれ設けられた第1及び第2温度取得部58,59によってそれぞれ取得した。しかし、第7実施形態の排気浄化システム1fでは、触媒状態推定装置10fは、第2温度取得部59に代えて、最上流に位置する第1SCR触媒40以外の他の触媒(図12の例では、第2SCR触媒41)の温度を推定する温度推定部159を備える。
温度推定部159は、第1温度取得部58により取得された第1SCR触媒40の温度T1から、予め用意された計算式やマップ等を用いて、第2SCR触媒41の温度T2を算出する。なお、温度推定部は、最上流に位置する第1SCR触媒40の温度T1に加えてさらに、内燃機関92からの排気の温度、排気の流量、第1SCR触媒40において排気中のNOxが反応することによって生じる反応熱、その他の任意のパラメータを考慮して、第2SCR触媒41の温度T2を算出してもよい。また、排気浄化システム1fに3つ以上の触媒が搭載されている場合であっても同様に、温度推定部159は、最上流に位置する第1SCR触媒40の温度T1等から予め用意された計算式やマップ等を用いて、他の触媒の温度Tn(nは、各触媒を区別するための自然数)を算出できる。推定部110fは、図11で説明した推定処理のステップS16eにおいて、温度推定部159から、他の触媒の温度Tnを取得する。
以上のように、第7実施形態の触媒状態推定装置10fによっても、上述した第1及び第6実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第7実施形態の触媒状態推定装置10fによれば、温度推定部159は、最上流に位置する第1SCR触媒40の温度から、主流路(排気管30)に設けられた第2SCR触媒41の温度を推定することができるため、第2SCR触媒41の温度を取得する取得部(センサ等)を省略できる。
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
[変形例1]
上記実施形態では、排気浄化システムの構成の一例を示した。しかし、排気浄化システムの構成は種々の変形が可能である。例えば、排気浄化システムの排気浄化装置には、SCR触媒と、NSR触媒と、三元触媒とのうちの複数の触媒が組み合わせて搭載され、触媒状態推定装置は、これら複数の触媒における浄化性能をそれぞれ推定してもよい。また、排気浄化装置には、粒子状物質(PM)を除去する粒子状物質除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が搭載され、触媒状態推定装置は、このDPFにおける浄化性能を推定してもよい。
例えば、触媒の床温を取得する温度取得部は、触媒の前方(入口近傍)又は後方(出口近傍)に設けられてもよい。
例えば、流量取得部、NOx濃度取得部、前端温度取得部、温度取得部がそれぞれ取得するとした流量、NOx濃度、前端温度、触媒の温度のうちの少なくともいずれかは、センサによる計測値に代えて、触媒状態推定モデルを用いて推定された温度で代用されてもよい。具体的には、例えば、触媒の温度は、上述したSCR触媒におけるNH3吸着量、NSR触媒におけるNOxの吸蔵量、及び三元触媒におけるO2の吸蔵量と同様に、時間履歴の影響を受ける。このため、触媒の温度を推定できる触媒状態推定モデルを別途作成し、当該触媒状態推定モデルによって、触媒の温度を推定してもよい。
[変形例2]
上記実施形態では、推定部における推定処理の一例を示した(図4、図11)。しかし、推定処理の内容は種々の変形が可能である。例えば、図4に示す推定処理において、ステップS12〜S24の実行順序を変更してもよく、ステップS26〜S30の実行順序を変更してもよい。図11に示す推定処理においても同様に、ステップS12〜S24eの実行順序を変更してもよく、ステップS26e〜S30eの実行順序を変更してもよい。
例えば、推定部は、上述した各ステップに加えてさらに、次のステップS100,S102を実行してもよい。ステップS100,S102は任意のタイミングで実行できる。
・ステップS100:推定部は、SCR触媒の床温T[k]が、SCR触媒におけるNH3の飽和吸着量が0となる所定の温度閾値以上であるか否かを判定する。床温T[k]が所定の温度閾値以上である場合、推定部は、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)において、SCR触媒に吸着されているNH3の吸着量の推定値NH3Ad[k+1]を0にリセットする。
・ステップS102:推定部は、SCR触媒におけるNH3の飽和吸着量が100(飽和状態)となるまで、尿素ポンプユニット及び尿素ノズルから十分に尿素水を噴射させる。その後、推定部は、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)において、SCR触媒に吸着されているNH3の吸着量の推定値NH3Ad[k+1]を100(飽和吸着量)にリセットする。
このようなステップS100,S102によれば、図4、図11に示した推定処理を繰り返すことによって誤差が蓄積され、推定値が実際の値と乖離した場合に、これをリセットすることができる。
上記第6及び第7実施形態では、第1モデルは、複数の同種の触媒(第1及び第2SCR触媒)について、当該複数の触媒におけるNOxの浄化量の合計を推定するモデルであるとした。しかし、第1モデルを、第1実施形態と同様に、複数の触媒におけるNOx浄化率を推定するモデルとして定義してもよい。この場合、複数の触媒におけるNOx浄化率は、例えば、同種の複数の触媒からなる触媒群について、最上流に位置する触媒の入口を触媒群の入口とみなし、最下流に位置する触媒の出口を触媒群の出口とみなして、「(入口におけるNOx量(又はNOx濃度)−出口におけるNOx量(又はNOx濃度))/入口におけるNOx量(又はNOx濃度)」に100を乗じることで定義できる。
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
1,1a〜1f…排気浄化システム
10,10a〜10f…触媒状態推定装置
11…CPU
12…記憶部
20,20b,20e…排気浄化装置
30…排気管
40…SCR触媒、第1SCR触媒
41…第2SCR触媒
52…流量取得部
53…排気温度取得部
54…NOx濃度取得部
56…前端温度取得部
58…温度取得部、第1温度取得部
59…第2温度取得部
62…尿素ポンプユニット
64…尿素ノズル
70…NSR触媒
76…前端温度取得部
78…温度取得部
80…三元触媒
84…酸素濃度取得部
86…前端温度取得部
88…温度取得部
91…燃焼状態制御部
92…内燃機関
93…リッチスパイク制御部
110,110a〜110f…推定部
120,120a〜120e…触媒状態推定モデル
121,121e…第1モデル
122,122e…第2モデル
123,123e…第3モデル
159…温度推定部

Claims (17)

  1. 触媒状態推定装置であって、
    内燃機関からの排気が流通する主流路に設けられ、前記排気中の有害物質を浄化する触媒の情報であって、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、のうちの少なくとも一つを含む触媒の情報を取得する第1取得部と、
    機械学習モデルと物理モデルとを含み、触媒の浄化性能を示す触媒の状態を推定するための触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部と、
    前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する推定部と、
    を備え
    前記触媒状態推定モデルのうちの前記物理モデルは、
    前記触媒の情報として、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を出力とする物理式を含み、
    前記推定部は、前記物理式を用いて、前記触媒の浄化性能としての前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定する、触媒状態推定装置。
  2. 請求項1に記載の触媒状態推定装置であって、さらに、
    前記触媒へと流入する排気の情報であって、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気に含まれる窒素酸化物の量と、のうちの少なくとも一つを含む前記排気の情報を取得する第2取得部を備え、
    前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第2取得部により取得された前記排気の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する、触媒状態推定装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の触媒状態推定装置であって、さらに、
    前記触媒へと供給される添加剤の情報であって、前記触媒に流入する前記添加剤の流入量を含む添加剤の情報を取得する第3取得部を備え、
    前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第3取得部により取得された前記添加剤の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する、触媒状態推定装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒における窒素酸化物の浄化率を出力とする、前記機械学習モデルとしての第1モデルを含み、
    前記推定部は、前記第1モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記窒素酸化物の浄化率を推定する、触媒状態推定装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、前記触媒の温度の時間微分値と、前記触媒における添加剤の飽和吸着量に対する前記吸着量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒から流出する添加剤の流出量を出力とする、前記機械学習モデルとしての第2モデルを含み、
    前記推定部は、前記第2モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記流出量を推定する、触媒状態推定装置。
  6. 請求項4に従属する請求項5に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記第1モデルによって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化率と、
    前記第2モデルによって推定される現在の前記流出量と、
    前記物理式によって推定される現在の前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量と、を入力とし、
    次の時刻における前記触媒への添加剤の吸着量を、物理則を用いて求めるモデルであり、
    前記推定部は、前記触媒状態推定モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての次の時刻における前記吸着量を推定する、触媒状態推定装置。
  7. 請求項に従属する触媒状態推定装置であって、
    前記第1モデル及び前記第2モデルは、さらに、
    前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気に含まれる窒素酸化物の量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記添加剤の情報として、前記触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力とし、
    前記物理式は、さらに、
    前記排気の情報として、前記排気の温度を入力とし、
    前記添加剤の情報として、前記触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力とする、触媒状態推定装置。
  8. 請求項または請求項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    劣化度の異なる複数の前記触媒から取得された教師データを用いて作成された複数の前記第1モデルと、
    劣化度の異なる複数の前記触媒から取得された教師データを用いて作成された複数の前記第2モデルと、を含む、触媒状態推定装置。
  9. 触媒の状態を推定する方法であって、
    機械学習モデルと物理モデルとを含み、触媒の浄化性能を示す触媒の状態を推定するための触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部を備える情報処理装置が、
    内燃機関からの排気が流通する主流路に設けられ、前記排気中の有害物質を浄化する触媒の情報であって、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、のうちの少なくとも一つを含む触媒の情報を取得する工程と、
    前記取得する工程において取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する工程と、
    を備え
    前記触媒状態推定モデルのうちの前記物理モデルは、
    前記触媒の情報として、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を出力とする物理式を含み、
    前記推定する工程では、前記物理式を用いて、前記触媒の浄化性能としての前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定する、方法。
  10. コンピュータプログラムであって、
    機械学習モデルと物理モデルとを含み、触媒の浄化性能を示す触媒の状態を推定するための触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部を備える情報処理装置に、
    内燃機関からの排気が流通する主流路に設けられ、前記排気中の有害物質を浄化する触媒の情報であって、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に吸着されている添加剤の吸着量と、のうちの少なくとも一つを含む触媒の情報を取得する機能と、
    前記取得する工程において取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する機能と、
    を実行させ
    前記触媒状態推定モデルのうちの前記物理モデルは、
    前記触媒の情報として、前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を出力とする物理式を含み、
    前記推定する機能は、前記物理式を用いて、前記触媒の浄化性能としての前記触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定する、コンピュータプログラム。
  11. 請求項1に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記主流路に同種の複数の触媒であって、排気浄化メカニズムが同一又は類似の複数の触媒が設けられている場合に、
    前記触媒状態推定モデルのうちの前記機械学習モデルは、前記複数の触媒について、前記複数の触媒全体を1つの触媒群とみなして予め学習されており、
    前記第1取得部は、前記触媒の情報として、前記主流路において最上流に位置する触媒の前端の温度と、各前記触媒の温度と、1時刻前において前記複数の触媒に吸着されている添加剤の吸着量の合計と、のうちの少なくとも一つを含む触媒の情報を取得し、
    前記推定部は、前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記複数の触媒全体としての浄化性能を推定し、
    前記触媒状態推定モデルのうちの前記物理モデルは、
    前記触媒の情報として、前記最上流に位置する触媒の前端の温度と、各前記触媒の温度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記最上流に位置する触媒へと供給される添加剤のうち、前記複数の触媒において窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を出力とする物理式を含み、
    前記推定部は、前記物理式を用いて、前記浄化性能としての、前記窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量を推定する、触媒状態推定装置。
  12. 請求項11に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記触媒の情報として、前記最上流に位置する触媒の前端の温度と、各前記触媒の温度と、1時刻前において前記複数の触媒に吸着されている添加剤の吸着量の合計と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記複数の触媒における窒素酸化物の浄化量の合計を出力とする、前記機械学習モデルとしての第1モデルを含み、
    前記推定部は、前記第1モデルを用いて、前記浄化性能としての前記窒素酸化物の浄化量を推定する、触媒状態推定装置。
  13. 請求項11または請求項12に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記触媒の情報として、前記最上流に位置する触媒の前端の温度と、各前記触媒の温度と、1時刻前において前記複数の触媒に吸着されている添加剤の吸着量の合計と、各前記触媒の温度の時間微分値と、前記複数の触媒における添加剤の飽和吸着量の合計に対する前記吸着量の合計の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記主流路において最下流に位置する前記触媒から流出する添加剤の流出量を出力とする、前記機械学習モデルとしての第2モデルを含み、
    前記推定部は、前記第2モデルを用いて、前記浄化性能としての前記流出量を推定する、触媒状態推定装置。
  14. 請求項12に従属する請求項13に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記第1モデルによって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化量の合計と、
    前記第2モデルによって推定される現在の前記流出量と、
    前記物理式によって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化反応に寄与しない添加剤の量と、を入力とし、
    次の時刻における、前記複数の触媒に吸着される添加剤の吸着量の合計を、物理則を用いて求めるモデルであり、
    前記推定部は、前記触媒状態推定モデルを用いて、前記浄化性能としての、次の時刻における前記吸着量の合計を推定する、触媒状態推定装置。
  15. 請求項14に記載の触媒状態推定装置であって、さらに、
    前記最上流に位置する触媒へと流入する排気の情報を取得する第2取得部と、
    前記最上流に位置する触媒へと供給される添加剤の情報を取得する第3取得部と、を備え、
    前記第1モデル及び前記第2モデルでは、さらに、
    前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気に含まれる窒素酸化物の量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記添加剤の情報として、前記最上流に位置する触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力とし、
    前記物理式は、さらに、
    前記排気の情報として、前記排気の温度を入力とし、
    前記添加剤の情報として、前記最上流に位置する触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力とする、触媒状態推定装置。
  16. 請求項14または請求項15に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    模範用の主流路に配置された同種の複数の前記触媒からなる触媒群について、前記模範用の主流路において最上流に位置する前記触媒の入口を前記触媒群の入口とみなし、前記模範用の主流路において最下流に位置する前記触媒の出口を前記触媒群の出口とみなして、前記触媒群から取得された教師データを用いて作成された前記第1モデルと、前記第2モデルとのうちの少なくとも一方のモデルを含む、触媒状態推定装置。
  17. 請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、さらに、
    前記最上流に位置する触媒の温度から、前記主流路に設けられた他の前記触媒の温度を推定する温度推定部を備える、触媒状態推定装置。
JP2018216272A 2018-03-21 2018-11-19 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法及びコンピュータプログラム Active JP6815366B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
CN201910208723.3A CN110295984B (zh) 2018-03-21 2019-03-19 催化剂状态推定装置及方法、以及非瞬时性记录介质
US16/359,282 US10947886B2 (en) 2018-03-21 2019-03-20 Catalyst state estimation apparatus, catalyst state estimation method with information processing apparatus, and non-transitory recording medium in which program is stored

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018053672 2018-03-21
JP2018053672 2018-03-21

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019167948A JP2019167948A (ja) 2019-10-03
JP6815366B2 true JP6815366B2 (ja) 2021-01-20

Family

ID=68108051

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018216272A Active JP6815366B2 (ja) 2018-03-21 2018-11-19 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法及びコンピュータプログラム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6815366B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021071104A (ja) * 2019-11-01 2021-05-06 株式会社豊田中央研究所 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム
JP7279687B2 (ja) * 2019-11-12 2023-05-23 株式会社豊田中央研究所 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム
JP7332566B2 (ja) * 2020-11-19 2023-08-23 株式会社豊田中央研究所 センサ状態推定装置、後処理システム、センサの状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム
WO2022260172A1 (ja) * 2021-06-11 2022-12-15 Eneos株式会社 探索装置、探索方法、プログラム及び非一時的コンピュータ可読媒体
CN114961949B (zh) * 2022-05-09 2024-01-16 潍柴动力股份有限公司 Scr系统的故障诊断方法、装置、设备和介质

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006242094A (ja) * 2005-03-03 2006-09-14 Hino Motors Ltd 排気浄化装置
JP2014206150A (ja) * 2013-04-16 2014-10-30 株式会社豊田中央研究所 排ガス浄化制御装置及びプログラム
JP6268688B1 (ja) * 2016-10-19 2018-01-31 マツダ株式会社 エンジンの排気浄化制御装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019167948A (ja) 2019-10-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6815366B2 (ja) 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法及びコンピュータプログラム
US10196956B2 (en) Method for controlling an injector for injecting a reductant into an exhaust system of an internal combustion engine
US8596045B2 (en) On-board-diagnosis method for an exhaust aftertreatment system and on-board-diagnosis system for an exhaust aftertreatment system
WO2021092025A1 (en) Aftertreatment systems and methods for treatment of exhaust gas from diesel engine
CN110295984B (zh) 催化剂状态推定装置及方法、以及非瞬时性记录介质
US9328644B2 (en) Exhaust system and method of estimating diesel particulate filter soot loading for same using two-tier neural network
US8893476B2 (en) SCR closed loop control system
US8191413B2 (en) Method for determining the nitrogen dioxide concentration in exhaust gases
CN104775883B (zh) 确定排气后处理系统颗粒过滤器中积累煤烟估计量的方法
Zhang et al. Ammonia coverage ratio and input simultaneous estimation in ground vehicle selective catalytic reduction (SCR) systems
US11199120B2 (en) Inferential flow sensor
CN112689703B (zh) 内燃机
CN110273737B (zh) 柴油机后处理系统催化器热失效容错控制方法及其装置
Yang et al. Square-root unscented Kalman filter for ammonia coverage ratio and input ammonia estimations in diesel-engine urea-SCR system
GB2479746A (en) Method of estimating NO2 concentration in exhaust gas
Zhou et al. State estimation in the automotive SCR deNOx process
Haga et al. Optimized NH3 storage control for next generation urea-SCR system
Wei et al. Simultaneous estimation of ammonia injection rate and state of diesel urea-SCR system based on high gain observer
US11795854B2 (en) Method for ascertaining an exhaust gas composition of an exhaust gas of an internal combustion engine
JP2021071104A (ja) 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム
JP7332566B2 (ja) センサ状態推定装置、後処理システム、センサの状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム
JP7279687B2 (ja) 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム
Surenahalli Dynamic model based state estimation in a heavy duty diesel aftertreatment system for onboard diagnostics and controls
Surenahalli et al. A Kalman filter estimator for a diesel oxidation catalyst during active regeneration of a CPF
CN111927606B (zh) 对诊断的评估时间点的确定

Legal Events

Date Code Title Description
AA64 Notification of invalidation of claim of internal priority (with term)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764

Effective date: 20190115

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190219

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190219

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191120

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200825

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200901

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201026

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201215

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201222

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6815366

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150