JP2021071104A - 触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents

触媒状態推定装置、触媒の状態を推定する方法、及びコンピュータプログラム Download PDF

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隆人 池戸
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Yoshihiko Matsui
良彦 松井
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Abstract

【課題】排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒の浄化性能を推定する技術において、推定の精度を向上させる。【解決手段】触媒状態推定装置は、排気が流通する主流路に設けられた触媒であって、排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒の情報を取得する第1取得部と、触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部と、第1取得部により取得された触媒の情報を触媒状態推定モデルに適用することで、触媒の浄化性能を推定する推定部と、を備える。触媒状態推定モデルは、触媒における一酸化炭素の浄化率を推定する第1モデルと、触媒における窒素酸化物の浄化率を推定する第2モデルと、触媒における炭化水素の浄化率を推定する第3モデルと、触媒から流出する添加剤の流出量を推定する第4モデルと、のうちの少なくとも一つ以上の数理モデルを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、触媒の状態を推定する技術に関する。
数理モデルを利用して、様々な条件下における現象を定量的に予測する技術が知られている。このような数理モデルの1つとして、人間の脳内にある神経回路網を人工ニューロンという数学的なモデルで表現したニューラルネットワーク(NN:Neural Network)が知られている。
例えば、特許文献1には、NNに対して周囲温度、マニホールド圧力及び温度、燃料消費率、エンジン回転速度の各値を入力し、選択還元触媒(SCR触媒:Selective Catalytic Reduction catalyst)から排出される窒素酸化物(NOx)の量を予測することが記載されている。例えば、特許文献2には、NNに対してEGR弁リフト量指令値、過給圧、吸気温、排気圧、燃料噴射量、吸入空気流量、エンジン回転数の各値を入力し、NOx吸蔵還元触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction catalyst)に捕捉されたNOxの量を予測することが記載されている。例えば、特許文献3には、NNに対してエンジン回転数、燃料噴射量、燃料噴射時期、吸入空気量、空燃比、排気温度、過給圧の各値を入力し、エンジンから排出されるNOxの量を予測することが記載されている。
特開2003−328732号公報 特開2009−180086号公報 特開2011−132915号公報
しかし、特許文献1から特許文献3に記載の技術では、いずれも、NNへの入力として、内燃機関(エンジン)及びその吸気系に関するパラメータのみが想定されている。ここで、触媒の浄化性能は、触媒の温度や、触媒において使用される添加剤の量などにも影響を受けて変動するため、特許文献1から特許文献3に記載の技術では、いずれも、触媒の浄化性能を精度良く推定することができないという課題があった。また、特許文献1から特許文献3に記載の技術では、例えば工業施設からの排気を浄化する触媒など、内燃機関以外からの排気を浄化する触媒における浄化性能を推定することはできないという課題があった。
また、特許文献1から特許文献3に記載の技術では、複数の触媒を用いて内燃機関の排気を浄化する構成(例えば、三元触媒を2つ以上設ける構成)において、当該複数の触媒による浄化性能を推定することについては考慮されていない。
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒の浄化性能を推定する技術において、推定の精度を向上させることを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、触媒状態推定装置が提供される。この触媒状態推定装置は、排気が流通する主流路に設けられた触媒であって、前記排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒の情報を取得する第1取得部と、触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部と、前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する推定部と、を備え、前記触媒状態推定モデルは、前記触媒における前記有害物質としての一酸化炭素の浄化率を推定する第1モデルと、前記触媒における前記有害物質としての窒素酸化物の浄化率を推定する第2モデルと、前記触媒における前記有害物質としての炭化水素の浄化率を推定する第3モデルと、前記触媒から流出する添加剤の流出量を推定する第4モデルと、のうちの少なくとも一つ以上の数理モデルを含む。
触媒の浄化性能は、触媒の情報(例えば、触媒の温度、触媒の酸素貯蔵量、触媒の酸素貯蔵能、酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比)の影響を受けて変動する。この構成によれば、推定部は、触媒の浄化性能に影響を及ぼす触媒の情報を触媒状態推定モデルに適用することによって、触媒の浄化性能を精度良く推定することができる。すなわち、本構成によれば、排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒の浄化性能を推定する技術において、推定の精度を向上させることができる。また、本構成によれば、第1モデルを用いることによって、触媒における有害物質としての一酸化炭素の浄化率を推定することができ、第2モデルを用いることによって、触媒における有害物質としての窒素酸化物の浄化率を推定することができ、第3モデルを用いることによって触媒における有害物質としての炭化水素の浄化率を推定することができ、第4モデルを用いることによって触媒から流出する添加剤の流出量を推定することができる。このように、本構成の触媒状態推定装置によれば、異なる数理モデルを用いることで、触媒の種々の浄化性能を推定することができる。
(2)上記形態の触媒状態推定装置では、さらに、前記触媒へと流入する前記排気の情報を取得する第2取得部を備え、前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第2取得部により取得された前記排気の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定してもよい。
触媒の浄化性能は、触媒の情報に加えてさらに、触媒に流入する排気の情報(例えば、排気の温度、排気の流量、排気中の一酸化炭素の量、排気中の窒素酸化物の量、排気中の炭化水素の量)の影響を受けて変動する。この構成によれば、推定部は、触媒の浄化性能に影響を及ぼすこれら触媒の情報と、触媒に流入する排気の情報との両方を触媒状態推定モデルに適用することによって、触媒の浄化性能をさらに精度良く推定することができる。
(3)上記形態の触媒状態推定装置では、さらに、前記触媒へと供給される前記添加剤の情報を取得する第3取得部を備え、前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第3取得部により取得された前記添加剤の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定してもよい。
この構成によれば、推定部は、触媒の情報に加えてさらに、添加剤の情報(例えば、添加剤の流入量)を触媒状態推定モデルに適用することによって、触媒の浄化性能を推定する。このため、例えば、三元触媒(Three-Way Catalyst)のように、酸素(添加剤)を用いて有害物質を浄化する触媒の浄化性能を推定する場合において、推定の精度をより向上させることができる。
(4)上記形態の触媒状態推定装置において、前記第1モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒における前記一酸化炭素の浄化率を出力とし、前記推定部は、前記第1モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記一酸化炭素の浄化率を推定してもよい。
機械学習モデルは、入出力変数に因果関係さえあれば、複雑な関数近似をしなければ分類や回帰ができない場合(例えば、物理式で明示することが困難な現象が含まれる場合、現象を記述する物理式が複数必要となる場合、数多くの要因の影響が想定されることから物理式に対する入力が多くなる場合)であっても、低演算負荷で出力(推定結果)を得ることができる。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第1モデルを用いて、一酸化炭素の浄化率を推定するため、数多くの要因が影響する一酸化炭素の浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第1のモデルとすることで、推定部は、一酸化炭素の浄化率を高精度で推定できる。
(5)上記形態の触媒状態推定装置において、前記第2モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒における前記窒素酸化物の浄化率を出力とし、前記推定部は、前記第2モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記窒素酸化物の浄化率を推定してもよい。
機械学習モデルは、入出力変数に因果関係さえあれば、複雑な関数近似をしなければ分類や回帰ができない場合であっても、低演算負荷で出力(推定結果)を得ることができる。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第2モデルを用いて、窒素酸化物の浄化率を推定するため、数多くの要因が影響する窒素酸化物の浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第2のモデルとすることで、推定部は、窒素酸化物の浄化率を高精度で推定できる。
(6)上記形態の触媒状態推定装置において、前記第3モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒における前記炭化水素の浄化率を出力とし、前記推定部は、前記第3モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記炭化水素の浄化率を推定してもよい。
機械学習モデルは、入出力変数に因果関係さえあれば、複雑な関数近似をしなければ分類や回帰ができない場合であっても、低演算負荷で出力(推定結果)を得ることができる。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第3モデルを用いて、炭化水素の浄化率を推定するため、数多くの要因が影響する炭化水素の浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第3のモデルとすることで、推定部は、炭化水素の浄化率を高精度で推定できる。
(7)上記形態の触媒状態推定装置において、前記第4モデルは、機械学習モデルにより構成され、前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒から流出する前記添加剤の流出量を出力とし、前記推定部は、前記第4モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記添加剤の流出量を推定してもよい。
機械学習モデルは、入出力変数に因果関係さえあれば、複雑な関数近似をしなければ分類や回帰ができない場合であっても、低演算負荷で出力(推定結果)を得ることができる。この構成によれば、推定部は、機械学習モデルにより構成された第4モデルを用いて、添加剤の流出量を推定するため、数多くの要因が影響する添加剤の流出量の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第4のモデルとすることで、推定部は、添加剤の流出量を高精度で推定できる。
(8)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、さらに、物理モデルにより構成され、前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気の空燃比と、前記排気中の前記添加剤としての酸素の濃度と、前記排気中の前記一酸化窒素の濃度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記触媒に流入する窒素酸化物中の前記一酸化窒素と二酸化窒素との比率を出力とする第5モデルを含み、前記推定部は、前記第5モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記触媒に流入する前記一酸化窒素と前記二酸化窒素との比率を推定してもよい。
物理モデルは、実際の物理則に基づき、相似律の上に成り立つ法則であるため、物理モデルによって得られる出力(推定結果)は、物理則を満たす。一方、機械学習モデルは、膨大なデータの学習の結果構築されたモデルであるため、物理則を満たす出力(推定結果)が得られない場合がある。この構成によれば、推定部は、物理モデルにより構成された第5モデルを用いて、触媒に流入する窒素酸化物中の一酸化窒素と二酸化窒素との比率を推定するため、影響する要因の少ない上記一酸化窒素と二酸化窒素との比率の推定を、物理則に則って高精度に推定できる。
(9)上記形態の触媒状態推定装置において、前記触媒状態推定モデルは、前記第1モデルによって推定される現在の前記一酸化炭素の浄化率と、前記第2モデルによって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化率と、前記第3モデルによって推定される現在の前記炭化水素の浄化率と、前記第4モデルによって推定される現在の前記添加剤の流出量と、前記第5モデルによって推定される現在の前記一酸化窒素と前記二酸化窒素との比率と、を直接的又は間接的な入力とし、次の時刻における前記触媒への前記添加剤の貯蔵量を、物理則を用いて求めるモデルであり、前記推定部は、前記触媒状態推定モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての次の時刻における前記添加剤の貯蔵量を推定してもよい。
この構成によれば、推定部は、機械学習モデルである第1〜第4モデルによる推定結果(一酸化炭素の浄化率、窒素酸化物の浄化率、炭化水素の浄化率、触媒から流出する添加剤の流出量)と、物理モデルである第5モデルによる推定結果(触媒に流入する窒素酸化物中の一酸化窒素と二酸化窒素との比率)とを併用し、物理則を用いて、触媒に貯蔵されている酸素貯蔵量を推定する。このため、本構成によれば、より数多くの要因が影響する酸素貯蔵量の推定を、物理則を満たしつつ、高精度、かつ高速に実施できる。また、触媒の酸素貯蔵量は、前の時刻の貯蔵量の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。この構成によれば、推定部は、第1〜第5モデルによる現在の推定結果を直接的または間接的な入力として用いて、次の時刻における酸素貯蔵量を推定するため、前の時刻の触媒の浄化性能を踏まえて、次の時刻における触媒の浄化性能を高精度に推定できる。
(10)上記形態の触媒状態推定装置において、前記第1モデル、前記第2モデル、前記第3モデル、及び前記第4モデルのうちの少なくとも一つは、さらに、前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気に含まれる前記一酸化炭素の量と、前記排気に含まれる前記窒素酸化物の量と、前記排気に含まれる前記炭化水素の量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、前記添加剤の情報として、前記触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力としてもよい。
この構成によれば、第1〜第4モデルにおいて、多様な種々の情報を考慮した推定を行うため、触媒の浄化性能をさらに高精度に推定できる。
(11)上記形態の触媒状態推定装置において、前記第1モデル、前記第2モデル、前記第3モデル、及び前記第4モデルのうちの少なくとも一つは、劣化度の異なる複数の前記触媒から取得された教師データを用いて作成されていてもよい。
この構成によれば、触媒状態推定モデルは、劣化度の異なる複数の触媒から取得された教師データを用いて作成された複数の第1〜第4モデルを含むため、触媒の劣化度に合わせて最適な第1〜第4モデルを採用することができる。この結果、本構成によれば、触媒の浄化性能をさらに高精度に推定できる。
(12)上記形態の触媒状態推定装置において、前記主流路に同種の複数の前記触媒が設けられている場合に、前記第1取得部は、前記主流路において最上流に位置する前記触媒の情報を少なくとも取得し、前記推定部は、前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記複数の触媒全体としての浄化性能を推定してもよい。
この構成によれば、主流路に複数の触媒が設けられている場合に、推定部は、最上流に位置する触媒の情報を触媒状態推定モデルに適用することで、主流路上の複数の触媒全体としての浄化性能を推定することができる。すなわち、本構成によれば、主流路上の複数の触媒を1つの触媒とみなして浄化性能を推定できるため、各触媒の浄化性能をそれぞれ推定する場合と比較して、触媒の情報の取得部(センサ等)の数や、予め準備する触媒状態推定モデルの数を減らすことができると共に、触媒状態推定装置における演算負荷を低減できる。また、推定部は、主流路に設けられた複数の触媒が同種の触媒である場合に、これらを1つの触媒とみなして浄化性能を推定する。同種の触媒であれば、浄化性能を左右する触媒の情報項目(例えば、触媒の温度、触媒の酸素貯蔵量、触媒の酸素貯蔵能、酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比)に相違がないため、推定部は、浄化性能を精度良く推定することができる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、触媒状態推定装置及びシステム、触媒状態推定装置を含む排気浄化装置及び排気浄化システム、これら装置及びシステムの制御方法、これら装置及びシステムにおいて実行されるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
本発明の一実施形態としての排気浄化システムのブロック図である。 第1モデルについて説明する図である。 第5モデルについて説明する図である。 推定部による推定処理の手順を示すフローチャートである。 推定処理のステップS26について説明する図である。 第2実施形態における排気浄化システムのブロック図である。 第3実施形態における排気浄化システムのブロック図である。 第4実施形態における排気浄化システムのブロック図である。
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての排気浄化システム1のブロック図である。本実施形態の排気浄化システム1は、燃焼状態制御部91及び内燃機関92と、排気浄化装置20と、触媒状態推定装置10を備える。本実施形態の排気浄化装置20は、内燃機関92の排気中における有害物質(一酸化炭素:CO、窒素酸化物:NOx、及び炭化水素:THC)を浄化する装置であり、触媒として三元触媒(Three-Way Catalyst)80を備える。本実施形態の触媒状態推定装置10は、排気浄化装置20に搭載された三元触媒80の状態、具体的には、三元触媒80の浄化性能を推定できる。
内燃機関92は、例えば、ガソリンエンジンである。燃焼状態制御部91は、内燃機関92に対する空気や燃料の噴射を制御することで、内燃機関92内の空燃比をリーン、ストイキ(理論空燃比)、リッチの各状態へと制御する。燃焼状態制御部91は、例えば、電子制御ユニット(ECU、Electronic Control Unit)により実装される。なお、以下の説明では、排気浄化装置20のうち、内燃機関92に近い側を「上流側」と呼び、内燃機関92に遠い側を「下流側」と呼ぶ。図1の場合、左側が上流側に相当し、右側が下流側に相当する。
排気浄化装置20は、内燃機関92から伸びる排気管30と、排気管30上に設けられた三元触媒80とを備える。排気管30は、内燃機関92からの排気が流通する主流路を形成する。内燃機関92からの排気は、排気管30内の主流路を通って、三元触媒80を通過して外気に放出される。
三元触媒80が搭載された排気浄化装置20において、燃焼状態制御部91は、通常、内燃機関92からの排気の空燃比がストイキとなるように、空気や燃料の噴射を制御する。しかし、例えば内燃機関92の始動直後など、内燃機関92が実際に稼働される際には、内燃機関92からの排気の空燃比がストイキの範囲を外れてしまう(リッチやリーンとなる)場合がある。ここで、三元触媒80は、三元触媒80に流入する排気の空燃比がストイキである場合に、排気中の有害物質の浄化性能が高まるという性質を有する。このため、三元触媒80に流入する排気の空燃比がストイキの範囲を外れた場合には、三元触媒80における有害物質の浄化性能は相対的に低下する。
このような排気の空燃比の変動がある場合でも高い浄化性能を維持するために、三元触媒80には、酸化セリウム(CeO2)が含まれている。触媒中の酸化セリウムは、三元触媒80に流入する排気の空燃比がリーンである場合に、「CeO2←CeO2-x+xO2(0≦x≦0.5)」という反応を生じさせて、排気中の酸素(O2)を三元触媒80内に吸蔵することで、有害物質の酸化/還元反応を促し、有害物質の浄化性能を向上させる。一方、触媒中の酸化セリウムは、三元触媒80に流入する排気の空燃比がリッチである場合に、「CeO2→CeO2-x+xO2(0≦x≦0.5)」という反応を生じさせて、三元触媒80中の酸素(O2)を排気中に放出することで、有害物質の酸化/還元反応を促し、有害物質の浄化性能を向上させる。
このように、三元触媒80においては、三元触媒80に貯蔵可能な酸素(O2)の量の最大値が、三元触媒80における排気の雰囲気変化(リーン/ストイキ/リッチの状態変化)を緩和する能力の指標、すなわち、三元触媒80の浄化性能の指標となる。以降、三元触媒80に貯蔵可能な酸素(O2)の量の最大値を「酸素貯蔵能(OSC)」とも呼ぶ。また、三元触媒80に実際に貯蔵されている酸素(O2)の量を「酸素貯蔵量(OSA)」とも呼ぶ。なお、三元触媒80において、酸素(O2)は、有害物質の浄化に用いられる「添加剤(より具体的には酸化剤)」として機能する。
触媒状態推定装置10は、CPU11と、記憶部12と、流量取得部52と、排気温度取得部53と、NOx濃度取得部54と、CO濃度取得部55と、THC濃度取得部56と、O2濃度取得部57と、温度取得部58と、前端温度取得部59とを備える。CPU11及び記憶部12は、例えば、ECUにより実装される。
CPU11は、ROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開して実行することにより、触媒状態推定装置10の各部を制御する。そのほかCPU11は、推定部110として機能し、流量取得部52、排気温度取得部53、NOx濃度取得部54、CO濃度取得部55、THC濃度取得部56、O2濃度取得部57、温度取得部58、及び前端温度取得部59から取得された各取得値を受信し、後述する推定処理を実行する。記憶部12は、フラッシュメモリ、メモリカード、ハードディスクなどで構成される。記憶部12には、予め触媒状態推定モデル120が記憶されている。触媒状態推定モデル120には、第1モデル121と、第2モデル122と、第3モデル123と、第4モデル124と、第5モデル125とが含まれている。
図2は、第1モデル121について説明する図である。第1モデル121は、三元触媒80におけるCO浄化率を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはニューラルネットワーク(NN:Neural Network)により構成されている。図2に示すように、本実施形態の第1モデル121は、入力層、中間層、出力層の3層で構成されており、中間層を1層とし、中間層の素子にシグモイド関数を用いる場合を例示する。なお、中間層の素子にはシグモイド関数を用いなくてもよい。
第1モデル121の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目a1〜a3に示すパラメータが採用できる。
(a1)触媒の情報:三元触媒80の前端の温度と、三元触媒80の温度と、酸素貯蔵量(OSA)と、酸素貯蔵能(OSC)と、酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも1つ
(a2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度と、排気の流量と、排気に含まれるCOの量と、排気に含まれるNOxの量と、排気に含まれるTHCの量と、のうちの少なくとも1つ
(a3)添加剤の情報:三元触媒80に流入するO2の流入量
ここで、ベクトルUに対しては、項目a1に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目a2,a3に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ただし、第1モデル121におけるCO浄化率の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。
ベクトルUの各成分が入力層に入力された後、中間層では、ベクトルUの各成分uiと重み定数Wijとの積を足し合わせる(数式1)。その後、数式2のように、中間層のノード毎の固有値θj(バイアス)を加味した上で、シグモイド関数を通過させて出力する。出力層では、入力値Yjと重み定数Wjkとの積を足し合わせ、固有値θk(バイアス)との和を求めて出力する(数式3)。第1モデル121の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下における、三元触媒80のCO浄化率の推定値である。なお、nは入力変数の数、mは中間層ノードの数を表す。第1モデル121は「第1モデル」に相当する。
Figure 2021071104
Figure 2021071104
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第1モデル121は、出力変数Zが推定対象となる物理量(第1モデル121の場合はCO浄化率)と一致するように、入力変数と出力変数との関係をNNに学習させ、NNにおける各値Wij,θj,Wjk,θkを予め決定しておく。第1モデル121の学習には、内燃機関92の過渡運転時に取得されたデータを教師データとして用いることが好ましい。なお、中間層のノード数は、例えば、教師データに対する精度と、教師データとして利用されなかったデータに対する精度とを考慮して決定できる。
第2モデル122は、三元触媒80におけるNOx(NO及びNO2)浄化率を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはNNにより構成されている。第2モデル122は、後述の点を除き図2で説明した第1モデル121と同様の構成を有する。
第2モデル122の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目b1〜b3に示すパラメータが採用できる。
(b1)触媒の情報:第1モデル121の項目a1のうちの少なくとも1つ
(b2)排気の情報:第1モデル121の項目a2のうちの少なくとも1つ
(b3)添加剤の情報:第1モデル121の項目a3と同じ
第2モデル122のベクトルUに対しては、第1モデル121と同様に、項目b1に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目b2,b3に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ただし、第2モデル122におけるNOx浄化率の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。第2モデル122の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下における、三元触媒80のNOx浄化率の推定値である。なお、第2モデル122は「第2モデル」に相当する。
第3モデル123は、三元触媒80におけるTHC浄化率を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはNNにより構成されている。第3モデル123は、後述の点を除き図2で説明した第1モデル121と同様の構成を有する。
第3モデル123の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目c1〜c3に示すパラメータが採用できる。
(c1)触媒の情報:第1モデル121の項目a1のうちの少なくとも1つ
(c2)排気の情報:第1モデル121の項目a2のうちの少なくとも1つ
(c3)添加剤の情報:第1モデル121の項目a3と同じ
第3モデル123のベクトルUに対しては、第1モデル121と同様に、項目c1に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目c2,c3に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ただし、第3モデル123におけるTHC浄化率の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。第3モデル123の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下における、三元触媒80のTHC浄化率の推定値である。なお、第3モデル123は「第3モデル」に相当する。
第4モデル124は、三元触媒80から流出するO2の流出量を推定するためのモデルであり、機械学習モデル、具体的にはNNにより構成されている。第4モデル124は、後述の点を除き図2で説明した第1モデル121と同様の構成を有する。
第4モデル124の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目d1〜d3に示すパラメータが採用できる。
(d1)触媒の情報:第1モデル121の項目a1のうちの少なくとも1つ
(d2)排気の情報:第1モデル121の項目a2のうちの少なくとも1つ
(d3)添加剤の情報:第1モデル121の項目a3と同じ
第4モデル124のベクトルUに対しては、第1モデル121と同様に、項目d1に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目d2,d3に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ただし、第4モデル124における流出量の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。第4モデル124の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下において、三元触媒80から流出して失われるO2の流出量の推定値である。なお、第4モデル124は「第4モデル」に相当する。
図3は、第5モデル125について説明する図である。第5モデル125は、三元触媒80に流入するNOx中の、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)との比率を推定するためのモデルであり、物理モデルにより構成されている。図3に示すように、第5モデル125は、アレニウスの式により構成されている。アレニウスの式のうち、頻度因子(A)、活性化エネルギー(E)については予め実験等により求めた値を使用できる。
第5モデル125の入力変数となるベクトルUは、n個の成分(u1,u2,・・・,un、nは自然数)で構成されている。ベクトルUの各成分には、以下の項目e2に示すパラメータが採用できる。
(e2)排気の情報:内燃機関92からの排気の温度と、排気の空燃比と、排気のO2濃度と、排気のNO濃度と、排気の流量と、のうちの少なくとも1つ
第5モデル125のベクトルUに対しては、項目c2に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要である。ただし、第5モデル125における、NOとNO2との比率の推定精度向上のためには、入力されるパラメータの数は多い方が好ましい。第5モデル125の出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下において、三元触媒80に流入するNOx中のNOとNO2との比率の推定値である。なお、第5モデル125は「第5モデル」に相当する。
図1に戻り、説明を続ける。流量取得部52は、内燃機関92からの排気の流量を取得する。流量取得部52は、例えば、排気管30に設けられたピトー管式流量計によって測定された測定信号を取得することで実現してもよい。また、流量取得部52は、内燃機関92への吸入空気量信号や、燃料噴射量信号から排気の流量を推定してもよい。排気温度取得部53は、内燃機関92からの排気の温度を測定するセンサである。温度取得部58は、三元触媒80の床温を測定するセンサである。前端温度取得部59は、三元触媒80の入口近傍(前端)における温度を測定するセンサである。
NOx濃度取得部54は、内燃機関92から排出され、三元触媒80へ流入する排気中の窒素酸化物(NOx)の濃度を測定するセンサである。CO濃度取得部55は、内燃機関92から排出され、三元触媒80へと流入する排気中の一酸化炭素(CO)の濃度を検出するセンサである。THC濃度取得部56は、内燃機関92から排出され、三元触媒80へと流入する排気中の炭化水素(THC)の濃度を検出するセンサである。O2濃度取得部57は、内燃機関92から排出され、三元触媒80へと流入する排気中の酸素(O2)の濃度を検出するセンサである。なお、NOx濃度取得部54、CO濃度取得部55、THC濃度取得部56、O2濃度取得部57のうちの少なくとも一部は、センサによる測定に代えて、内燃機関92の燃焼状態(リーン/ストイキ/リッチ)、内燃機関92の回転数、内燃機関92の負荷といった内燃機関92の状態と、各濃度と、を対応付けたマップを用いて推定してもよい。
なお、流量取得部52と、排気温度取得部53と、NOx濃度取得部54と、CO濃度取得部55と、THC濃度取得部56とは、三元触媒80へと流入する排気の情報を取得する「第2取得部」に相当する。温度取得部58と、前端温度取得部59とは、三元触媒80の情報を取得する「第1取得部」に相当する。O2濃度取得部57は、三元触媒80に供給される添加剤の情報を取得する「第3取得部」に相当する。
図4は、推定部110による推定処理の手順を示すフローチャートである。推定処理は、三元触媒80の浄化性能を推定する処理であり、任意のタイミングで実行される。例えば、推定処理は、排気浄化システム1または触媒状態推定装置10の利用者からの要求によって実行されてもよく、排気浄化システム1を搭載する車両における他の制御部からの要求によって実行されてもよい。図4に示す推定処理は、定期的に実行される。
なお、以降の説明では、上述した第1モデル121、第2モデル122、第3モデル123、及び第4モデル124の入力として、項目a1〜a3のうち、三元触媒80の前端の温度を除く全てのパラメータを採用し、第5モデル125の入力として項目e2で述べた全てのパラメータを採用する場合を例示する。また、以降の説明において、Δtは触媒状態推定装置10における単位時間(例えば、CPU11の演算周期、上述した各取得部52〜59におけるサンプリング周期)を表し、時刻t=kΔtは現在時刻を、時刻t=(k+1)Δtは1時刻後(1単位時間後)を、時刻t=(k−1)Δtは1時刻前(1単位時間前)を意味する。kは整数である。
ステップS10において推定部110は、推定処理の開始条件が成立しているか否かを判定する。具体的には例えば、推定部110は、温度取得部58が正常であり、かつ、NOx濃度取得部54、CO濃度取得部55、THC濃度取得部56、及びO2濃度取得部57がそれぞれ活性状態である場合に、推定処理の開始条件が成立していると判定できる。推定処理の開始条件が成立している場合(ステップS10:YES)、推定部110は処理をステップS12へ遷移させる。推定処理の開始条件が成立していない場合(ステップS10:NO)、推定部110は処理を終了させる。
ステップS12において推定部110は、流量取得部52から、現在(時刻t=kΔt)の排気管30内部の流量Q[k]を取得する。
ステップS14において推定部110は、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80に流入するCO量CO_inを取得する。具体的には、推定部110は、CO濃度取得部55から、三元触媒80へと流入する排気中の現在のCO濃度[k]を取得する。次に推定部110は、取得した排気中のCO濃度[k]と、ステップS12で取得した排気の流量Q[k]とから、CO量CO_in[k]を算出する。
ステップS16において推定部110は、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80に流入するNOx量NOx_inを取得する。具体的には、推定部110は、NOx濃度取得部54から、三元触媒80へと流入する排気中の現在のNOx濃度[k]を取得する。次に推定部110は、取得した排気中のNOx濃度[k]と、ステップS12で取得した排気の流量Q[k]とから、NOx量NOx_in[k]を算出する。
ステップS18において推定部110は、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80に流入するTHC量THC_inを取得する。具体的には、推定部110は、THC濃度取得部56から、三元触媒80へと流入する排気中の現在のTHC濃度[k]を取得する。次に推定部110は、取得した排気中のTHC濃度[k]と、ステップS12で取得した排気の流量Q[k]とから、THC量THC_in[k]を算出する。なお、ステップS12〜S18において、推定部110は、排気の情報を取得する「第2取得部」としても機能する。
ステップS20において推定部110は、温度取得部58から、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80の床温T[k]を取得する。なお、ステップS20において、推定部110は、三元触媒80の情報を取得する「第1取得部」としても機能する。
ステップS22において推定部110は、排気温度取得部53から、現在(時刻t=kΔt)の、三元触媒80に流入する排気の温度T_in[k]を取得する。なお、ステップS22において推定部110は、排気の温度に代えて、三元触媒80の三元触媒80の入口近傍(前端)における温度を取得して、T_in[k]としてもよい。
ステップS24において推定部110は、三元触媒80に流入するNOx中の、NOとNO2との比率NO_r[k]を算出する。具体的には、推定部110は、NOとNO2との比率を推定するための第5モデル125(図3)の入力変数ベクトルUに、ステップS12〜S22で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第5モデル125から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の、NOとNO2との比率NO_r[k]とする。
(e2)排気の情報:
・内燃機関92からの排気の温度T_in[k](ステップS22)
・排気の空燃比AF[k](O2濃度取得部57の取得値から算出)
・排気のO2濃度O2_co[k](O2濃度取得部57の取得値)
・排気のNO濃度NO_co[k](以下に説明)
・排気の流量Q[k](ステップS12)
なお、現在(時刻t=kΔt)の排気のNO濃度NO_co[k]について、推定部110は、前回実行された推定処理(図4)のステップS24において得られた推定値NO_co[k−1]と、ステップS16で取得した現在のNOx量NOx_in[k]と、から算出することができる。例えば推定処理の初回実行時など、前回の推定値が無い場合、推定部110は、NO濃度の推定値NO_co[k−1]として、所定のデフォルト値を利用できる。デフォルト値は任意に設定できる。
このように、ステップS24において推定部110は、第5モデル125を用いて三元触媒80の浄化性能としての、三元触媒80に流入するNOx中の、NOとNO2との比率NO_r[k]を推定する。第5モデル125のような物理モデルは、実際の物理則に基づき、相似律の上に成り立つ法則である。このため、第5モデル125(物理モデル)によって得られる出力(推定結果)は、物理則を満たす。一方、第1モデル121〜第4モデル124(機械学習モデル)は、膨大なデータの学習の結果構築されたモデルであるため、物理則を満たす出力(推定結果)が得られない場合がある。ステップS24によれば、推定部110は、物理モデルにより構成された第5モデル125を用いて、三元触媒80に流入するNOx中の、NOとNO2との比率を推定するため、影響する要因の少ない上記比率の推定を、物理則に則って高精度に推定できる。なお、ステップS24において推定部110は、排気の情報を取得する「第2取得部」としても機能する。
ステップS26において推定部110は、三元触媒80のCO浄化率の推定値を算出する。具体的には、推定部110は、CO浄化率を推定するための第1モデル121(図2)の入力変数ベクトルUに、ステップS12〜S22で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第1モデル121から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80のCO浄化率COConv[k]とする。
(a1)触媒の情報:
・三元触媒80の温度(床温)T[k](ステップS20)
・1時刻前における三元触媒80の酸素貯蔵量OSA[k](前回の推定処理の結果)
・三元触媒80の酸素貯蔵能OSC[k](以下に説明)
・三元触媒80の酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比r[k](r[k]=OSA[k]/OSC[k])
(a2)排気の情報:
・内燃機関92からの排気の温度T_in[k](ステップS20)
・排気の流量Q[k](ステップS12)
・排気に含まれるCOの量CO_in[k](ステップS14)
・排気に含まれるNOxの量NOx_in[k](ステップS16)
・排気に含まれるTHCの量THC_in[k](ステップS18)
(a3)添加剤の情報:
・三元触媒80に流入するO2の流入量O2_in[k](以下に説明)
図5は、推定処理のステップS26について説明する図である。図5は、酸素貯蔵能(OSC)の特性NPの一例であり、横軸に三元触媒80の床温を表し、縦軸に三元触媒80における酸素貯蔵能(OSC)を表している。記憶部12には、三元触媒80の特性NPが、予め実験等により求められて記憶されている。
図4のステップS26の情報a1の取得に関し、推定部110は、ステップS20で取得した三元触媒80の床温T[k]を、特性NPを表す関係式に当て嵌めて、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80の酸素貯蔵能OSC[k]を求める。また、ステップS26の情報a1の取得に関し、例えば推定処理の初回実行時など、前回の酸素貯蔵量OSAが無い場合に、推定部110は、所定のデフォルト値を酸素貯蔵量OSA[k]としてもよく、床温T[k]を特性NPに当て嵌めて得た酸素貯蔵能OSC[k]を、酸素貯蔵量OSA[k]としてもよい。ステップS26の情報a3の取得に関し、推定部110は、ステップS12で取得された排気の流量Q[k]と、O2濃度取得部57により取得された排気のO2濃度とを用いて、三元触媒80へのO2の流入量O2_in[k]を算出できる。
このように、ステップS26において推定部110は、第1モデル121を用いて三元触媒80の浄化性能としての、CO浄化率COConv[k]を推定する。第1モデル121のような機械学習モデルは、入出力変数(例えば、入力変数のベクトルUと出力変数のZ)に因果関係さえあれば、複雑な関数近似をしなければ分類や回帰ができない場合(例えば、物理式で明示することが困難な現象が含まれる場合、現象を記述する物理式が複数必要となる場合、数多くの要因の影響が想定されることから物理式に対する入力が多くなる場合)であっても、低演算負荷で出力(推定結果)を得ることができる。ステップS26によれば、推定部110は、機械学習モデルにより構成された第1モデル121を用いて、CO浄化率COConv[k]を推定するため、数多くの要因が影響するCOの浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第1モデル121とすることで、推定部110は、COの浄化率を高精度で推定できる。
ステップS28において推定部110は、三元触媒80のNOx(NO及びNO2)浄化率の推定値を算出する。具体的には、推定部110は、NOx浄化率を推定するための第2モデル122(図2)の入力変数ベクトルUに、ステップS12〜S22で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第2モデル122から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80のNOx浄化率NOxConv[k]とする。
(b1)触媒の情報:第1モデル121において説明したa1と同様
(a2)排気の情報:第1モデル121において説明したa2と同様
(a3)添加剤の情報:第1モデル121において説明したa3と同様
このように、ステップS28において推定部110は、第2モデル122を用いて三元触媒80の浄化性能としての、NOx浄化率NOxConv[k]を推定する。第2モデル122のような機械学習モデルは、第1モデル121と同様に、数多くの要因が影響するNOxの浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第2モデル122とすることで、推定部110は、NOxの浄化率を高精度で推定できる。
ステップS30において推定部110は、三元触媒80のTHC浄化率の推定値を算出する。具体的には、推定部110は、THC浄化率を推定するための第3モデル123(図2)の入力変数ベクトルUに、ステップS12〜S22で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第3モデル123から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80のTHC浄化率THCConv[k]とする。
(b1)触媒の情報:第1モデル121において説明したa1と同様
(a2)排気の情報:第1モデル121において説明したa2と同様
(a3)添加剤の情報:第1モデル121において説明したa3と同様
このように、ステップS30において推定部110は、第3モデル123を用いて三元触媒80の浄化性能としての、THC浄化率THCConv[k]を推定する。第3モデル123のような機械学習モデルは、第1モデル121と同様に、数多くの要因が影響するTHCの浄化率の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第3モデル123とすることで、推定部110は、THCの浄化率を高精度で推定できる。なお、ステップS26〜S30において、推定部110は、三元触媒80の情報を取得する「第1取得部」としても機能する。
ステップS32において推定部110は、三元触媒80から流出するO2の流出量の推定値を算出する。具体的には、推定部110は、O2流出量を推定するための第4モデル124(図2)の入力変数ベクトルUに、ステップS12〜S22で求めた現在(時刻t=kΔt)の以下の各値を設定し、出力変数Zを求める。推定部110は、第4モデル124から得られた出力変数Zを、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80から流出するO2の流出量O2_out[k]とする。
(b1)触媒の情報:第1モデル121において説明したa1と同様
(a2)排気の情報:第1モデル121において説明したa2と同様
(a3)添加剤の情報:第1モデル121において説明したa3と同様
このように、ステップS32において推定部110は、第4モデル124を用いて三元触媒80の浄化性能としての、O2の流出量O2_out[k]を推定する。第4モデル124のような機械学習モデルは、第1モデル121と同様に、数多くの要因が影響するO2の流出量の推定を、低演算負荷かつ高速に実施できる。また、十分に学習された機械学習モデルを第4モデル124とすることで、推定部110は、O2の流出量を高精度で推定できる。なお、ステップS32において、推定部110は、添加剤の情報を取得する「第3取得部」としても機能する。
ステップS34において推定部110は、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)において、三元触媒80に貯蔵されている酸素貯蔵量OSAの推定値を、以下の数式4により算出する。なお、数式4は「触媒状態推定モデル120」として機能する。
Figure 2021071104
数式4の各値は、それぞれ、推定部110がステップS12〜S32で取得または推定した、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80の浄化性能(状態)から取得または算出できる。具体的には、OSA[k]は、前回の推定処理の結果得られた、三元触媒80に貯蔵されている酸素貯蔵量OSAである。O2_in[k]は、ステップS12で取得された排気の流量Q[k]と、O2濃度取得部57により取得された排気のO2濃度とを用いて算出された、三元触媒80に流入するO2の流入量である。
2_NO[k]は、三元触媒80でのNOx浄化反応において、NOの還元により供給されるO2の量である。また、O2_NO2[k]は、三元触媒80でのNOx浄化反応において、NO2の還元により供給されるO2の量である。O2_NO[k]及びO2_NO2[k]は、ステップS16で取得した三元触媒80に流入するNOx量NOx_in[k]と、ステップS24において第5モデル125により推定されたNOx中のNOとNO2との比率NO_r[k]と、ステップS28において第2モデル122により推定されたNOx浄化率NOxConv[k]と、を用いて算出できる。
2_CO[k]は、三元触媒80でのCO浄化反応において、COの酸化により消費されるO2の量である。O2_CO[k]は、ステップS14で取得した三元触媒80に流入するCO量CO_in[k]と、ステップS26において第1モデル121により推定されたCO浄化率COConv[k]と、を用いて算出できる。
2_THC[k]は、三元触媒80でのTHC浄化反応において、THCの酸化により消費されるO2の量である。O2_THC[k]は、ステップS18で取得した三元触媒80に流入するTHC量THC_in[k]と、ステップS30において第3モデル123により推定されたTHC浄化率THCConv[k]と、を用いて算出できる。
2_out[k]は、ステップS32において算出した三元触媒80から流出するO2の流出量O2_out[k]である。
ステップS34が終了した後、推定部110は、ステップS34で推定した酸素貯蔵量OSA[k+1]を出力する。出力は任意の態様で実施でき、例えば、触媒状態推定装置10が備える図示しない表示部に表示させてもよく、記憶部12内の推定履歴に記録してもよく、排気浄化システム1を搭載する車両における他の制御部に信号を送信してもよい。また、推定部110は、ステップS32で推定した酸素貯蔵量OSA[k+1]と共に、又は酸素貯蔵量OSA[k+1]に代えて、ステップS12〜S32の少なくともいずれかによって取得、算出、推定された結果を出力してもよい。その後、推定部110は、処理を終了させる。
以上のように、第1実施形態の触媒状態推定装置10によれば、推定部110は、触媒状態推定モデル120を利用して、三元触媒80に貯蔵されている酸素貯蔵量OSA[k+1]を推定する。数式4及びステップS34での説明から明らかなように、触媒状態推定モデル120は、機械学習モデル(NNモデル)である第1モデル121〜第4モデル124による推定結果(CO浄化率、NOx浄化率、THC浄化率、三元触媒80から流出するO2の流出量)と、物理モデルである第5モデル125による推定結果(三元触媒80に流入するNOx中のNOとNO2との比率)とを併用し、物理則を用いて、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)において三元触媒80に貯蔵されている酸素貯蔵量OSA[k+1]を推定するモデルである。このため、本実施形態によれば、推定部110は、数多くの要因(例えば、項目a1〜a3,b1〜b3,c1〜c3,d1〜d3,e2に列挙した要因)が影響する酸素貯蔵量OSA[k+1]の推定を、物理則を満たしつつ、高精度、かつ高速に実施できる。
また、三元触媒80に貯蔵されているO2(添加剤)の貯蔵量は、前の時刻(時刻t=kΔt)の酸素貯蔵量OSA[k]の影響を受けて変動する(換言すれば、時間履歴の影響を受けて変動する)。第1実施形態の推定部110は、第1モデル121〜第5モデル125による現在の推定結果である、COConv[k]、NOxConv[k]、THCConv[k]、O2_out[k]、及びNO_r[k]を直接的または間接的な入力として用いて(ステップS34)、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)における酸素貯蔵量OSA[k+1]を推定する。このため、推定部110は、前の時刻(時刻t=kΔt)の三元触媒80の浄化性能を踏まえて、次の時刻における三元触媒80の浄化性能を高精度に推定できる。
さらに、第1実施形態の触媒状態推定装置10によれば、推定部110は、第1モデル121を用いることによって、三元触媒80におけるCO(有害物質)の浄化率COConv[k]を推定することができる。また、推定部110は、第2モデル122を用いることによって、三元触媒80におけるNOx(有害物質)の浄化率NOxConv[k]を推定することができる。また、推定部110は、第3モデル123を用いることによって、三元触媒80におけるTHC(有害物質)の浄化率THCConv[k]を推定することができる。また、推定部110は、第4モデル124を用いることによって、三元触媒80から流出する添加剤(酸化剤)の量O2_out[k]を推定することができる。また、推定部110は、第5モデル125を用いることによって、三元触媒80に流入するNOx(有害物質)中のNOとNO2との比率NO_r[k]を推定することができる。このように、触媒状態推定装置10によれば、異なる数理モデル121〜125を用いることで、三元触媒80の種々の浄化性能を推定することができる。
さらに、三元触媒80の浄化性能は、触媒の情報(例えば、三元触媒80の温度、三元触媒80の酸素貯蔵量(OSA)、酸素貯蔵能(OSC)、酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比(OSA/OSC))の影響を受けて変動する。第1実施形態の触媒状態推定装置10によれば、推定部110は、三元触媒80の浄化性能に影響を及ぼすこの触媒の情報を、第1モデル121(項目a1)、第2モデル122(項目b1)、第3モデル123(項目c1)、及び第4モデル124(項目d1)の入力変数となるベクトルUのパラメータに採用することで、触媒状態推定モデル120に適用する。この結果、推定部110は、三元触媒80の浄化性能を精度良く推定することができ、内燃機関92の排気を浄化する三元触媒80の浄化性能を推定する技術において、推定の精度を向上させることができる。
さらに、三元触媒80の浄化性能は、触媒の情報に加えてさらに、触媒に流入する排気の情報(例えば、排気の温度、排気の流量、排気中のCOの量、排気中のNOxの量、排気中のTHCの量)の影響を受けて変動する。第1実施形態の触媒状態推定装置10によれば、推定部110は、三元触媒80の浄化性能に影響を及ぼすこれら触媒の情報(項目a1〜d1)と、触媒に流入する排気の情報(項目a2〜d2)との両方を触媒状態推定モデル120に適用することで、三元触媒80の浄化性能をさらに精度良く推定することができる。また、推定部110は、触媒の情報(項目a〜d1)に加えてさらに、添加剤の情報(例えば、O2の流入量、項目a3〜d3)を触媒状態推定モデル120に適用することによって、三元触媒80の浄化性能を推定する。このため、例えば、本実施形態で例示した三元触媒80のように、添加剤を用いて有害物質を浄化する触媒の浄化性能を推定する場合において、推定の精度をより向上させることができる。
さらに、第1モデル121〜第4モデル124を生成する際の教師データを、内燃機関92の過渡運転時に取得されたデータを用いれば、推定部110は、内燃機関92の定常運転時における三元触媒80の浄化性能に加えてさらに、内燃機関92の過渡運転時における三元触媒80の浄化性能をも推定できる。
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態における排気浄化システム1aのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、推定部110は、第1〜5モデル121〜125の推定結果を利用して、三元触媒80の浄化性能として、1時刻後(時刻t=(k+1)Δt)における三元触媒80の酸素貯蔵量OSAを推定した。しかし、第2実施形態の推定部110aは、第1モデル121を利用して、三元触媒80の浄化性能として、現在(時刻t=kΔt)の三元触媒80のCO浄化率COConv[k]を推定する。
第2実施形態の記憶部12には、図2で説明した第1モデル121のみを含む触媒状態推定モデル120aが予め記憶されている。推定部110aは、触媒状態推定モデル120aの第1モデル121を利用して、図4で説明した推定処理のうち、ステップS10〜S14と、ステップS20〜S22と、ステップS26とを実行する。ステップS26の実行後、推定部110aは、ステップS26において推定された三元触媒80のCO浄化率COConv[k]を、三元触媒80の浄化性能として出力する。このように、第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、排気浄化システム1aでは、第1モデル121に代えて/又は第1モデル121と共に第2モデル122〜第5モデル125のうちの1つ以上を備えていてもよい。この場合、推定部110aは、ステップS26に代えて/又はステップS26と共にステップS24,S28〜S32の1つ以上を実行し、その推定結果を三元触媒80の浄化性能として出力する。また、排気浄化システム1aでは、上述した数式4を備えず、第1モデル121〜第5モデル125のみを備えていてもよい。この場合、推定部110aは、ステップS24〜S32を実行し、その推定結果を三元触媒80の浄化性能として出力する。このようにしても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態における排気浄化システム1bのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、単一の第1〜4モデル121〜124を使用して三元触媒80の浄化性能を推定していた。しかし、第5実施形態の排気浄化システム1bでは、複数の第1〜4モデル121b〜124bを使い分けて、三元触媒80の浄化性能を推定する。
排気浄化システム1bは、触媒状態推定装置10に代えて触媒状態推定装置10bを備える。触媒状態推定装置10bは、推定部110に代えて推定部110bを備え、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120bを備えている。触媒状態推定モデル120bには、複数の第1モデル121bと、複数の第2モデル122bと、複数の第3モデル123bと、複数の第4モデル124bと、第5モデル125とが含まれている。各第1モデル121bは、劣化度の異なる複数の三元触媒80から取得された教師データを用いて、それぞれ作成されている。具体的には、例えば、第1モデル121b(1)は、劣化の度合が少ない三元触媒80から取得された教師データから作成され、第1モデル121b(2)は、劣化の度合が中程度の三元触媒80から取得された教師データから作成され、第1モデル121b(3)は、劣化の度合が大きい三元触媒80から取得された教師データから作成されている。劣化の度合(劣化度)は、三元触媒80の状態や三元触媒80の取り換え時期等から判定してもよく、三元触媒80から排出される排気中の有害物質の濃度から判定してもよく、車両の走行距離等から判定してもよい。各第2モデル122d〜各第4モデル124dは、第1モデル121dと同様に、劣化度の異なる複数の三元触媒80から取得された教師データを用いて、それぞれ作成されている。
推定部110bは、推定処理(図4)のステップS26において、三元触媒80の劣化の度合に応じた第1モデル121bを用いて、三元触媒80のCO浄化率を推定する。同様に、推定部110bは、ステップS28において三元触媒80の劣化の度合に応じた第2モデル122bを用いてNOx浄化率を推定し、ステップS30において三元触媒80の劣化の度合に応じた第3モデル123を用いてTHC浄化率を推定し、ステップS32において三元触媒80の劣化の度合に応じた第4モデル124を用いてO2流出量を推定する。
このようにすれば、第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態によれば、触媒状態推定モデル120bは、劣化度の異なる複数の三元触媒80から取得された教師データを用いて作成された、複数の第1モデル121b〜第4モデル124bを含むため、三元触媒80の劣化度に合わせて最適な第1モデル121b〜第4モデル124bを採用することができる。この結果、第3実施形態によれば、触媒の浄化性能をさらに高精度に推定できる。
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態における排気浄化システム1cのブロック図である。図1に示す第1実施形態では、1つの三元触媒80の浄化性能を推定した。しかし、第4実施形態の排気浄化システム1cでは、複数の三元触媒81及び82を搭載し、この複数の三元触媒81及び82全体としての浄化性能を推定する。排気浄化システム1cは、触媒状態推定装置10に代えて触媒状態推定装置10cを備え、排気浄化装置20に代えて排気浄化装置20cを備える。
排気浄化装置20cは、第1三元触媒81と、第1三元触媒81の下流側に配置された第2三元触媒82とを含む触媒群80cを備えている。すなわち、第1三元触媒81と第2三元触媒82とは同種の三元触媒である。なお、本実施形態において、「同種の触媒」とは、触媒における排気浄化メカニズムが同一又は類似の触媒を意味する。第2三元触媒82は、第1三元触媒81において浄化しきれずに排出された有害物質(HC、NOx、THC)を浄化する。第1三元触媒81及び第2三元触媒82を総称して「触媒群80c」とも呼ぶ。図8に示す構成において、第1三元触媒81は「最上流に位置する触媒」に相当し、第2三元触媒82は「最下流に位置する触媒」に相当する。
触媒状態推定装置10cは、第1三元触媒81の床温を測定する温度取得部581と、第2三元触媒82の床温を測定する温度取得部582とを備える。また、触媒状態推定装置10cは、推定部110に代えて推定部110cを、触媒状態推定モデル120に代えて触媒状態推定モデル120cを備える。推定部110cは、第1実施形態で説明した推定処理(図4)において、最上流に位置する第1三元触媒81の情報を触媒状態推定モデル120cに適用することで、触媒群80cにおける浄化性能を推定する。触媒状態推定モデル120cには、第1モデル121cと、第2モデル122cと、第3モデル123cと、第4モデル124cと、第5モデル125cと、が含まれている。
第1モデル121cは、排気浄化装置20cに搭載された複数の同種の触媒80c(すなわち、第1三元触媒81及び第2三元触媒82)について、当該複数の触媒80c全体としてのCO浄化率を推定するためのモデルである。第1モデル121cは、第1実施形態と同様に、機械学習モデル(NN)により構成されている。第1モデル121cの入力変数となるベクトルUの各成分には、以下の項目a11〜a13に示すパラメータが採用できる。
(a11)触媒の情報:最上流に位置する第1三元触媒81の前端の温度と、第1三元触媒81及び第2三元触媒82の各温度と、第1三元触媒81の酸素貯蔵量(OSA1)、酸素貯蔵能(OSC1)、及び酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比(OSA1/OSC1)と、第2三元触媒82の酸素貯蔵量(OSA2)、酸素貯蔵能(OSC2)、及び酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比(OSA2/OSC2)と、のうちの少なくとも1つ
(a12)排気の情報:最上流に位置する第1三元触媒81に流入する内燃機関92からの排気の温度と、当該排気の流量と、最上流に位置する第1三元触媒81に流入する排気に含まれるCOの量と、当該排気に含まれるNOxの量と、当該排気に含まれるTHCの量と、のうちの少なくとも1つ
(a13)添加剤の情報:最上流に位置する第1三元触媒81に流入するO2の流入量
第1実施形態と同様に、ベクトルUに対しては、項目a11に示す触媒の情報について、少なくとも1つ以上を入力することが必要であり、項目a12,a13に示す排気の情報と添加剤の情報とについては、少なくとも1つ以上が入力されてもよく、全て省略されてもよい。ベクトルUの各成分が入力層に入力された後の処理については、第1実施形態と同様である。第1モデル121cの出力変数Zは、入力変数(ベクトルU)が表わす諸条件下における、複数の触媒80c(すなわち第1三元触媒81及び第2三元触媒82)全体としてのCO浄化率の推定値である。
第1モデル121cは、第1実施形態と同様に、出力変数Zが推定対象となる物理量と一致するように、入力変数と出力変数との関係をNNに学習させ、NNにおける各値Wij,θj,Wjk,θkを予め決定しておく。この学習の際、本実施形態では、模範用の主流路(排気管)に配置された同種の複数の触媒(第1三元触媒81及び第2三元触媒82)からなる触媒群80cについて、最上流に位置する第1三元触媒81の入口を触媒群80cの入口とみなし、最下流に位置する第2三元触媒82の出口を触媒群80cの出口とみなして、当該触媒群80cから取得された教師データを用いることが好ましい。
第2モデル122cは、排気浄化装置20cに搭載された複数の同種の触媒80c(すなわち、第1三元触媒81及び第2三元触媒82)について、当該複数の触媒80c全体としてのNOx浄化率を推定するためのモデルである。同様に、第3モデル123cは、複数の触媒80c全体としてのTHC浄化率を推定するためのモデルであり、第4モデル124cは、複数の触媒80cからのO2流出量の合計を推定するためのモデルである。第2モデル122c〜第4モデル124cは、第1モデル121cと同様に、機械学習モデル(NN)により構成されている。また、第2モデル122c〜第4モデル124cの各入力変数となるベクトルUの各成分には、上述した項目a11〜a13に示すパラメータと同様のパラメータが採用できる。また、第2モデル122c〜第4モデル124cの学習方法(触媒群80cから取得された教師データを用いる方法)についても、第1モデル121cと同様である。
第5モデル125cは、最上流に位置する第1三元触媒81に流入するNOx中の、NOとNO2との比率を推定するためのモデルである。第5モデル125cは、第1実施形態と同様に、物理モデルにより構成されている。第5モデル125cの入力変数となるベクトルUの各成分には、以下の項目e12に示すパラメータが採用できる。
(e12)最上流に位置する第1三元触媒81に流入する内燃機関92からの排気の温度と、当該排気の空燃比と、当該排気のO2濃度と、当該排気のNO濃度と、当該排気の流量と、のうちの少なくとも1つ
以上のように、第4実施形態の触媒状態推定装置10cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態の触媒状態推定装置10cによれば、主流路(排気管30)に複数の触媒(第1三元触媒81及び第2三元触媒82)が設けられている場合に、推定部110cは、最上流に位置する第1三元触媒81の情報を触媒状態推定モデル120cに適用することで、複数の触媒全体としての浄化性能を推定することができる。すなわち、第4実施形態の触媒状態推定装置10cによれば、主流路上の複数の触媒80c(第1三元触媒81及び第2三元触媒82)を1つの触媒群80cとみなして触媒群80c浄化性能を推定できるため、各触媒の浄化性能をそれぞれ推定する場合と比較して、触媒の情報の取得部(例えば、第2三元触媒82へと流入する排気の流量取得部、排気温度取得部、NOx濃度取得部、第2三元触媒82の前端温度取得部等を構成するセンサ)の数や、予め準備する触媒状態推定モデル120cの数を減らすことができると共に、触媒状態推定装置10cにおける演算負荷を低減できる。また、推定部110cは、主流路に設けられた複数の触媒が同種の触媒(第4実施形態の例では、三元触媒)である場合に、これらを1つの触媒群80cとみなして浄化性能を推定する。同種の触媒であれば、浄化性能を左右する触媒の情報項目(例えば、触媒の温度、触媒の酸素貯蔵量、触媒の酸素貯蔵能、酸素貯蔵能に対する酸素貯蔵量の比)に相違がないため、推定部110cは、浄化性能を精度良く推定することができる。
また、第4実施形態の触媒状態推定装置10cによれば、模範用の主流路に配置された複数の触媒を1つの触媒群80cとして、当該触媒群80cから取得された教師データを用いて学習させることで、触媒状態推定モデル120cの第1モデル121c〜第4モデル124cを構築できる。このため、触媒状態推定モデル120cの第1モデル121c〜第4モデル124cでは、触媒群に属する各触媒間における主流路(排気管等)の影響を加味することができる。このようにして構築された触媒状態推定モデル120cを推定処理で使用することで、推定部110cは、主流路(排気管30)上の各触媒間(第1三元触媒81と第2三元触媒82との間)における排気管等の情報を必要とせず、複数の触媒全体としての浄化性能を精度良く推定することができる。
なお、上記第4実施形態では、複数の触媒の具体例として、2つの三元触媒を例示した。しかし、排気浄化システム1cは、3つ以上の三元触媒を備えていてもよい。なお、上記第4実施形態の排気浄化システム1cにおいて、触媒状態推定装置10cは、温度取得部582に代えて、第2三元触媒82の温度を推定する温度推定部を備えてもよい。温度推定部は、温度取得部581により取得された第1三元触媒81の温度T1から、予め用意された計算式やマップ等を用いて、第2三元触媒82の温度T2を算出する。なお、温度推定部は、最上流に位置する第1三元触媒81の温度T1に加えてさらに、内燃機関92からの排気の温度、排気の流量、第1三元触媒81における酸化及び還元反応によって生じる反応熱、その他の任意のパラメータを考慮して、第2三元触媒82の温度T2を算出してもよい。
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
[変形例1]
上記実施形態では、排気浄化システムの構成の一例を示した。しかし、排気浄化システムの構成は種々の変形が可能である。例えば、排気浄化システムは、内燃機関の排気を浄化する以外の用途に用いられてもよい。例えば、排気浄化システムは、工業施設、商業施設、家庭等からの排気を浄化するために用いられてもよい。
例えば、排気浄化システムの排気浄化装置には、三元触媒と、SCR(Selective Catalytic Reduction catalyst)触媒と、NSR(NOx Storage Reduction catalyst)触媒とのうちの複数の触媒が組み合わせて搭載され、触媒状態推定装置は、これら複数の触媒における浄化性能をそれぞれ推定してもよい。また、排気浄化装置には、粒子状物質(PM)を除去する粒子状物質除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が搭載され、触媒状態推定装置は、このDPFにおける浄化性能を推定してもよい。
例えば、触媒の床温を取得する温度取得部は、触媒の前方(入口近傍)又は後方(出口近傍)に設けられてもよい。
例えば、流量取得部、排気温度取得部、NOx濃度取得部、CO濃度取得部、THC濃度取得部、O2濃度取得部、前端温度取得部、温度取得部がそれぞれ取得するとした流量、NOx濃度、CO濃度、THC濃度、O2濃度、前端温度、触媒の温度のうちの少なくともいずれかは、センサによる計測値に代えて、触媒状態推定モデルを用いて推定された温度で代用されてもよい。具体的には、例えば、触媒の温度は、上述した三元触媒80における酸素貯蔵量(OSA)と同様に、時間履歴の影響を受ける。このため、触媒の温度を推定できる触媒状態推定モデルを別途作成し、当該触媒状態推定モデルによって、触媒の温度を推定してもよい。
[変形例2]
上記実施形態では、推定部における推定処理の一例を示した(図4)。しかし、推定処理の内容は種々の変形が可能である。例えば、図4に示す推定処理において、ステップS12〜S22の実行順序を変更してもよく、ステップS26〜S32の実行順序を変更してもよい。
例えば、推定部は、上述した各ステップに加えてさらに、次のステップS100,S102の少なくとも一方を実行してもよい。ステップS100,S102は任意のタイミングで実行できる。
・ステップS100:推定部は、燃焼状態制御部91により十分長い時間、空燃比をリッチ状態とさせることで、三元触媒80に貯蔵されている多くのO2を(酸素貯蔵量(OSA)がなくなる程度まで)排出させる。この状態で、推定部は、酸素貯蔵量(OSA)を0にリセットする。
・ステップS102:推定部は、燃焼状態制御部91により十分長い時間、空燃比をリーン状態とさせることで、多くのO2を(酸素貯蔵量(OSA)が酸素貯蔵能(OSC)と同じになる程度まで)三元触媒80に貯蔵させる。この状態で、推定部は、酸素貯蔵量(OSA)を100(=酸素貯蔵能(OSC))にリセットする。
このようなステップS100,S102によれば、図4に示した推定処理を繰り返すことによって誤差が蓄積され、推定値が実際の値と乖離した場合に、これをリセットすることができる。
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
1,1a〜1c…排気浄化システム
10,10a〜10c…触媒状態推定装置
11…CPU
12…記憶部
20,20c…排気浄化装置
30…排気管
52…流量取得部
53…排気温度取得部
54…NOx濃度取得部
55…CO濃度取得部
56…THC濃度取得部
57…O2濃度取得部
58,581,582…温度取得部
59…前端温度取得部
80,81,82…三元触媒
91…燃焼状態制御部
92…内燃機関
110,110a〜110c…推定部
120,120a〜120c…触媒状態推定モデル
121,121b,121c…第1モデル
122,122b,122c…第2モデル
123,123b,123c…第3モデル
124,124b,124c…第4モデル
125,125c…第5モデル
159…温度推定部

Claims (14)

  1. 触媒状態推定装置であって、
    排気が流通する主流路に設けられた触媒であって、前記排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒の情報を取得する第1取得部と、
    触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部と、
    前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する推定部と、
    を備え、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記触媒における前記有害物質としての一酸化炭素の浄化率を推定する第1モデルと、
    前記触媒における前記有害物質としての窒素酸化物の浄化率を推定する第2モデルと、
    前記触媒における前記有害物質としての炭化水素の浄化率を推定する第3モデルと、
    前記触媒から流出する添加剤の流出量を推定する第4モデルと、
    のうちの少なくとも一つ以上の数理モデルを含む、触媒状態推定装置。
  2. 請求項1に記載の触媒状態推定装置であって、さらに、
    前記触媒へと流入する前記排気の情報を取得する第2取得部を備え、
    前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第2取得部により取得された前記排気の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する、触媒状態推定装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の触媒状態推定装置であって、さらに、
    前記触媒へと供給される前記添加剤の情報を取得する第3取得部を備え、
    前記推定部は、前記触媒の情報に加えてさらに、前記第3取得部により取得された前記添加剤の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する、触媒状態推定装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記第1モデルは、
    機械学習モデルにより構成され、
    前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒における前記一酸化炭素の浄化率を出力とし、
    前記推定部は、前記第1モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記一酸化炭素の浄化率を推定する、触媒状態推定装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記第2モデルは、
    機械学習モデルにより構成され、
    前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒における前記窒素酸化物の浄化率を出力とし、
    前記推定部は、前記第2モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記窒素酸化物の浄化率を推定する、触媒状態推定装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記第3モデルは、
    機械学習モデルにより構成され、
    前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒における前記炭化水素の浄化率を出力とし、
    前記推定部は、前記第3モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記炭化水素の浄化率を推定する、触媒状態推定装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記第4モデルは、
    機械学習モデルにより構成され、
    前記触媒の情報として、前記主流路における前記触媒の前端の温度と、前記触媒の温度と、1時刻前において前記触媒に貯蔵されている前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵量と、前記触媒に貯蔵可能な前記添加剤としての酸素の量を表す酸素貯蔵能と、前記酸素貯蔵能に対する前記酸素貯蔵量の比と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒から流出する前記添加剤の流出量を出力とし、
    前記推定部は、前記第4モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記添加剤の流出量を推定する、触媒状態推定装置。
  8. 請求項2、または請求項2に従属する請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、さらに、
    物理モデルにより構成され、
    前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気の空燃比と、前記排気中の前記添加剤としての酸素の濃度と、前記排気中の前記一酸化窒素の濃度と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記触媒に流入する窒素酸化物中の前記一酸化窒素と二酸化窒素との比率を出力とする第5モデルを含み、
    前記推定部は、前記第5モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての前記触媒に流入する前記一酸化窒素と前記二酸化窒素との比率を推定する、触媒状態推定装置。
  9. 請求項8に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記触媒状態推定モデルは、
    前記第1モデルによって推定される現在の前記一酸化炭素の浄化率と、
    前記第2モデルによって推定される現在の前記窒素酸化物の浄化率と、
    前記第3モデルによって推定される現在の前記炭化水素の浄化率と、
    前記第4モデルによって推定される現在の前記添加剤の流出量と、
    前記第5モデルによって推定される現在の前記一酸化窒素と前記二酸化窒素との比率と、を直接的又は間接的な入力とし、
    次の時刻における前記触媒への前記添加剤の貯蔵量を、物理則を用いて求めるモデルであり、
    前記推定部は、前記触媒状態推定モデルを用いて、前記触媒の浄化性能としての次の時刻における前記添加剤の貯蔵量を推定する、触媒状態推定装置。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記第1モデル、前記第2モデル、前記第3モデル、及び前記第4モデルのうちの少なくとも一つは、さらに、
    前記排気の情報として、前記排気の温度と、前記排気の流量と、前記排気に含まれる前記一酸化炭素の量と、前記排気に含まれる前記窒素酸化物の量と、前記排気に含まれる前記炭化水素の量と、のうちの少なくとも一つを入力とし、
    前記添加剤の情報として、前記触媒に流入する前記添加剤の流入量を入力とする、触媒状態推定装置。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記第1モデル、前記第2モデル、前記第3モデル、及び前記第4モデルのうちの少なくとも一つは、
    劣化度の異なる複数の前記触媒から取得された教師データを用いて作成されている、触媒状態推定装置。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の触媒状態推定装置であって、
    前記主流路に同種の複数の前記触媒が設けられている場合に、
    前記第1取得部は、前記主流路において最上流に位置する前記触媒の情報を少なくとも取得し、
    前記推定部は、前記第1取得部により取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記複数の触媒全体としての浄化性能を推定する、触媒状態推定装置。
  13. 触媒の状態を推定する方法であって、
    触媒状態推定モデルであって、排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒における前記有害物質としての一酸化炭素の浄化率を推定する第1モデルと、前記触媒における前記有害物質としての窒素酸化物の浄化率を推定する第2モデルと、前記触媒における前記有害物質としての炭化水素の浄化率を推定する第3モデルと、前記触媒における前記触媒から流出する添加剤の流出量を推定する第4モデルと、のうちの少なくとも一つ以上の数理モデルを含む触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部を備える情報処理装置が、
    前記触媒の情報を取得する工程と、
    取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する工程と、
    を備える、方法。
  14. コンピュータプログラムであって、
    触媒状態推定モデルであって、排気中の有害物質を酸化及び還元することにより浄化する触媒における前記有害物質としての一酸化炭素の浄化率を推定する第1モデルと、前記触媒における前記有害物質としての窒素酸化物の浄化率を推定する第2モデルと、前記触媒における前記有害物質としての炭化水素の浄化率を推定する第3モデルと、前記触媒における前記触媒から流出する添加剤の流出量を推定する第4モデルと、のうちの少なくとも一つ以上の数理モデルを含む触媒状態推定モデルを予め記憶する記憶部を備える情報処理装置に、
    前記触媒の情報を取得する機能と、
    取得された前記触媒の情報を前記触媒状態推定モデルに適用することで、前記触媒の浄化性能を推定する機能と、
    を実行させる、コンピュータプログラム。
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