JP6814488B2 - 鋼構造物の補修方法および鋼構造物の補修キット - Google Patents

鋼構造物の補修方法および鋼構造物の補修キット Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛めっき皮膜が設けられた鋼構造物を補修するための補修方法および補修キットに関する。
鉄塔、一部の橋梁などは、主として亜鉛めっき皮膜が設けられた鋼材により構成される、鋼構造物である。亜鉛は鋼よりも卑な金属であるため、亜鉛めっき皮膜は鋼材に対して保護皮膜機能および犠牲防食機能を発揮することができ、もって、鋼構造物の耐食性を向上させることができる。しかし、亜鉛めっき皮膜は使用環境により経年的に変質して部分的に耐食性を失ってしまうことがある。このような部分では、鋼材の腐食が進行してしまうため、この部分に耐食性を再付与すべく、鋼構造物の定期的な補修が必要となる。
たとえば特許文献1(特開2017−88907号公報)には、金属粉末が導電性担体に分散されてなる補修材に樹脂を含浸させ、これを鋼材の補修対象面に貼り付ける方法が開示されている。この金属粉末には、鋼材に対して卑な金属が用いられているため、この方法によれば、補修対象面に対し保護皮膜機能および犠牲防食機能を再付与し、もって耐食性を再付与することができる。
特開2017−88907号公報
特許文献1の方法では樹脂が用いられるが、有機物である樹脂は金属と比して耐候性が低く、経年劣化が著しい傾向がある。このため特許文献1の方法では、短いサイクルで再補修が必要となることが懸念されることから、鋼構造物に対する他の補修方法が求められる。以上の点に鑑み、本発明は、鋼構造物を補修するための補修方法および補修キットを提供することを目的とする。
本発明は、以下のとおりである。
〔1〕鋼構造物の補修対象面上に、フラックスおよびはんだ粒子を含有するはんだペーストからなるはんだペースト層と、亜鉛または亜鉛合金からなる補修シートとをこの順に配置する工程と、発熱体の熱を前記補修シートを介して前記はんだペースト層に伝熱させることによって前記はんだ粒子を溶融させる工程と、前記溶融したはんだ粒子を固化させることにより、前記補修対象面に前記補修シートを貼着させる工程と、を備える補修方法。
〔2〕前記補修シートは、厚み方向に貫通する貫通孔を有する、〔1〕の補修方法。
〔3〕前記溶融させる工程において、前記補修シートおよび前記発熱体の間に、押圧治具が配置される、〔1〕または〔2〕の補修方法。
〔4〕前記溶融させる工程において、前記押圧治具は、前記補修対象面側に向けて押圧される、〔3〕の補修方法。
〔5〕前記貼着させる工程において、前記押圧治具は、前記補修対象面側に向けて押圧される、〔3〕または〔4〕の補修方法。
〔6〕前記押圧治具は、アルミニウムからなる、〔3〕から〔5〕の補修方法。
〔7〕鋼構造物の補修キットであって、補修シートとはんだペーストとを備え、前記補修シートは、亜鉛または亜鉛合金からなり、前記はんだペーストは、フラックスおよびはんだ粒子を含有する、補修キット。
〔8〕前記補修シートは、厚み方向に貫通する貫通孔を有する、〔7〕の補修キット。
〔9〕前記補修シートを押圧するための押圧治具をさらに備える、〔7〕または〔8〕の補修キット。
〔10〕前記押圧治具は、アルミニウムからなる、〔9〕の補修キット。
本発明によれば、鋼構造物の補修対象面に対して簡便に補修を実施することができ、また、補修部分は耐食性に優れる。
第1の実施形態に係る補修方法および補修キットを説明するための部分的な断面図である。 第1の実施形態に係る補修方法および補修キットを説明するための他の部分的な断面図である。 第1の実施形態に係る補修方法および補修キットを説明するための他の部分的な断面図である。 補修シートの模式的な平面図である。 第2の実施形態に係る補修方法を説明するための部分的な斜視図である。 試験片Bの作製方法を説明するための平面図である。 試験片Dの概略的な平面図である。 中性塩水噴霧試験実施直前の試験片B−1、B−2、B−3の写真である。 中性塩水噴霧試験400時間経過後の試験片B−1、B−2、B−3の写真である。 中性塩水噴霧試験1000時間経過後の試験片B−1、B−2、B−3の写真である。 試験片B−3におけるプルオフ試験を説明するための写真である。 試験片D−3におけるプルオフ試験を説明するための平面図である。 試験片B−3におけるプルオフ試験後の円筒を取った後の試験片B−3の写真である。 試験片B−3におけるプルオフ試験後の試験円筒の底面の写真である。
以下、本発明に係る補修方法および補修キットについて、それぞれ詳細に説明する。なお以下の実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表わす。本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。また図面においては、各構成要素を理解しやすくするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
〈第1の実施形態〉
図1〜図4を参照しながら、第1の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)に係る補修方法について説明する。図1〜図3は、第1の実施形態に係る補修方法および補修キットを説明するための部分的な断面図であり、図4は、補修シートの模式的な平面図である。
図1〜図4を参照し、本実施形態に係る補修方法は、鋼構造物100の補修対象面100a上に、フラックスおよびはんだ粒子を含有するはんだペーストからなるはんだペースト層1と、亜鉛または亜鉛合金からなる補修シート2とをこの順に配置する工程(配置工程)と、発熱体4の熱を補修シート2を介してはんだペースト層1に伝熱させることによってはんだ粒子を溶融させる工程(溶融工程)と、溶融したはんだ粒子を固化させることにより、補修対象面100aに補修シート2を貼着させる工程(貼着工程)と、を備える。
図1は、主に配置工程を説明する図であり、図2は、主に溶融工程を説明する図であり、図3は、主に貼着工程を説明する図である。すなわち、はんだペースト層1は、はんだペーストからなる層であり、はんだ溶融層11は、はんだペースト層1中のはんだ粒子が溶融してなる層であり、はんだ層12は、はんだ粒子の融液が固化してなる層である。上記の補修方法は、上記の補修シート2と、上記のはんだペーストとを備える、補修キット10を用いて実施される。
《補修キット》
本実施形態に係る補修キット10は、上述のとおり、鋼構造物の補修キットであって、補修シート2とはんだペーストとを備える。補修シート2は、亜鉛(Zn)または亜鉛合金からなり、はんだペーストは、フラックスおよびはんだ粒子を含有する。補修キット10はさらに、押圧治具3を備えることが好ましい。
(はんだペースト)
はんだペーストは、流動性と粘性とを有する組成物であって、はんだペースト層1を構成する。このはんだペーストは、鋼構造物100の補修対象面100aと、亜鉛または亜鉛合金からなる補修シート2とをはんだ付けする機能を有する。はんだペーストに含まれるフラックスは、鋼表面の酸化膜を除去する機能を有し、具体的には、ロジン、塩化アンモニウムなどが挙げられる。
はんだペーストに含まれるはんだ粒子は、はんだペースト中に分散した状態で存在する。はんだ粒子の粒径は特に制限されないが、一般的に10〜100μm程度である。はんだ粒子は、Sn(スズ)のみから構成されてもよいが、後述する溶融工程および貼着工程におけるハンドリング性の観点から、Snよりも低い融点を有するスズ合金であることが好ましい。一方、はんだ粒子の融点が低すぎると、はんだ層12の耐久性の低下が懸念される。このためはんだ粒子の融点は、110〜230℃であることが好ましい。スズ合金としては、Sn−Zn合金、Sn−Bi(ビスマス)合金、またはSn−Zn−Bi合金が好ましく、融点が十分に低い点(138℃程度)から、Sn−Bi合金がより好ましい。
はんだペーストは、さらに有機溶剤を含んでいても良い。この場合、はんだペーストの粘度を容易に調整することができる。
(補修シート)
補修シート2は、亜鉛または亜鉛合金からなる。補修シート2は、鋼に対して卑な金属により構成され、鋼に対する犠牲防食機能を発揮する。亜鉛合金に含まれる好適な金属としては、Al(アルミニウム)、Mg(マグネシウム)等が挙げられる。補修シート2の耐食性の向上が期待されるためである。亜鉛合金における亜鉛以外の他の成分の配合割合の全量は10%程度である。ただし、補修シート2の融点ははんだ粒子よりも高い。
補修シート2は板状であり、その厚さは好ましくは50〜300μmである。厚さが50μm未満の場合、十分な耐食性を発揮できない恐れがあり、また補修シート2のハンドリング性の低下も懸念される。厚さが300μmを超えた場合もまた、ハンドリング性の低下が懸念される。補修シート2の大きさおよび外形は特に制限されず、補修対象面100aの大きさ、形状に対応することができる。
また補修シート2は、図4に示されるように、厚み方向に貫通する貫通孔2aを有することが好ましい。この理由は次のとおりである。すなわち、溶融工程においては、はんだペーストからフラックス由来のガスが発生するが、はんだ溶融層11内にガスが残留したまま、はんだ融液が固化した場合、形成されるはんだ層12内には、残留ガス由来の空隙が形成される。はんだ層12内に多少の空隙が存在する場合であっても、はんだ層12の性能には影響しないが、多くの空隙が存在すると、はんだ層12と補修シート2との密着性の低下や、はんだ層12の強度の低下が引き起こされることが懸念される。これに対し、補修シート2が貫通孔2aを有する場合、ガスは、貫通孔2aから系外(大気中)に排出され易くなるため、結果的に、はんだ層12内の空隙を効率的に抑制することができる。
貫通孔2aの孔径は、好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは50〜1000μmである。10μm未満の場合、ガスが排出され難くなるおそれがあり、1000μmを超えると、貫通孔2aからの過剰なはんだ融液の流出が懸念される。隣接する貫通孔2a同士の間隔(ピッチ)は特に制限されないが、補修シート2の耐食機能および強度を維持する観点から、数ミリ〜数十ミリ程度であることが好ましい。
(押圧治具)
補修キット10はさらに、補修シート2を押圧するための押圧治具3を備えることが好ましい。押圧治具3は、補修シート2を補修対象面100a側に押圧させる役割を果たすものである。補修キット10が押圧治具3を備えることが好ましい理由は以下のとおりである。
後述する本実施形態に係る補修方法において、はんだペースト層1は、はんだ溶融層11へと変化し、さらにはんだ層12へと変化するが、完全にはんだ層12へと変化するまでの間は、常に流動性を有した流動体である。このため、補修対象面100aの配置状況によっては、はんだペースト層1またははんだ溶融層11の配置状態が流動によって変化し、これに伴い、補修シート2の位置が補修対象面100aからずれてしまったり、はんだペースト層1またははんだ溶融層11が流下してしまったりする場合がある。これに対し、押圧治具3を用いて補修シート2を補修対象面100a側に押圧することにより、はんだペースト層1および/またははんだ溶融層11の流動を抑制することができ、もって、上述のような位置ずれ、流下といった問題を解消することができる。
押圧治具3に関し、補修シート2の全面を均一に押圧し易くすることから、押圧治具3のうち補修シート2に当接する面の全体の大きさは、補修シート2の大きさよりも大きいことが好ましい。またこの場合に、押圧治具3が伝熱性の高い材料からなれば、発熱体4の熱を補修シート2の全体に対し均一に伝熱させることも可能となる。
また押圧治具3は、溶融工程においてはんだペーストから発生するガスを系外に排出し易くするための構造を有していることが好ましい。このような構造としては、たとえば、補修シート2との当接面に貫通孔を有する構造が挙げられる。また押圧治具3は、貼着工程においてはんだ層12と固着する場合があるが、この場合にはんだ層12と分離しやすい材料からなることが好ましい。このような材料としては、アルミニウムが挙げられる。アルミニウムは高い伝熱性を有し、かつはんだ粒子との化学的な反応が起こり難い。たとえば、押圧治具3がアルミニウム製のパンチングメタル板の場合、高い伝熱性を有することができ、ガスの排出構造を備えることもでき、かつはんだ層12との分離も容易となる。
《補修方法》
本実施形態に係る補修方法は、上述の補修キット10を用いて実施される。以下、各工程について詳述する。
(配置工程)
図1を参照し、本工程では、鋼構造物100の補修対象面100a上に、はんだペースト層1と、補修シート2とがこの順に配置される。補修対象面100aは、鋼構造物100の表面のうち、亜鉛めっき皮膜(不図示)の耐食性が失われている部分であり、鋼構造物100の防食のために補修を要する部分である。
補修対象面100a上に、はんだペースト層1と補修シート2とをこの順に配置する方法として、補修対象面100aにはんだペーストを塗布してはんだペースト層1を形成し、該はんだペースト層1上に補修シート2を配置する方法が挙げられる。また他の方法として、補修シート2の一方の面にはんだペーストを塗布してはんだペースト層1を形成し、これを補修対象面100a上に配置する方法が挙げられる。
前者の方法は、施工が容易である。後者の方法は、たとえば補修対象面100aにはんだペーストを単体で塗布した際に、はんだペーストの液だれが懸念されるような場合に好適である。補修対象面100aに配置する直前まで、はんだペーストを補修シート2上に静置させておくことができるためである。
はんだペースト層1の形成、すなわちはんだペーストの補修対象面100aへの塗布または補修シート2への塗布方法は特に制限されず、刷毛、ディスペンサーなどを用いた従来公知の塗布方法を用いることができる。またはんだペースト層1は、補修対象面100aの全面を覆うように配置されることが好ましい。これにより、補修部分の高い耐食性を長期間維持することができる。はんだペースト層1の厚さは特に制限されないが、補修対象面100aおよび補修シート2の接着強度を十分に高く維持しつつ、本工程のハンドリング性を高める観点から、1〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましい。
補修対象面100aは、はんだペースト層1および補修シート2が配置される前に、素地調整されることが好ましい。これにより、補修対象面100aの汚れを除去することができ、またはんだペースト層1と補修対象面100aとの密着性を向上させることができる。
(溶融工程)
本工程では、発熱体4の熱が補修シート2を介してはんだペースト層1に伝熱されることによって、はんだ粒子が溶融する。発熱体4としては、たとえばはんだ付けに広く用いられているこてが挙げられる。はんだペースト層1に、はんだ粒子の融点以上の温度が伝熱されることによって、はんだペースト内のはんだ粒子が溶融する。はんだ粒子が溶融していることは、たとえば煙の発生により推察することができる。煙の発生が収まった場合に、はんだ粒子が十分に溶融したとみなすことができる。
溶融したはんだを含むはんだ融液は、補修シート2の表面に沿って拡がる傾向がある。はんだ融液と補修シート2とのぬれ性が高いためである。このため、はんだ融液の一部は、補修シート2のうちはんだペースト層1と接触している主面(表面)から外周面に沿って移動し、主面の反対側の裏面に回り込む。補修シート2が貫通孔2aを有する場合にはさらに、貫通孔2aを通って裏面に回り込む。このためはんだ融液は、図2に示されるようなはんだ溶融層11の形態をとることとなる。なお図2において、はんだ溶融層11は補修シート2の表面全体を覆っているが、はんだ溶融層11の形態はこれに限られず、たとえば補修シート2の裏面の一部が露出していてもよい。
ここで、本工程では、はんだペースト層1がはんだ溶融層11へと変化するが、補修対象面100aの位置状況によっては、補修対象面100a上に配置されたはんだペーストおよび/またははんだ融液が重力に従って流動してしまい、所望の配置状態を維持できなくなることが懸念される。このため、はんだペースト層1およびはんだ溶融層11の流動による液だれ、補修シートの位置ずれなどを抑制すべく、はんだペースト層1を介して補修対象面100a上に配置された補修シート2は、補修対象面100a側に向けて押圧されることが好ましい。
本実施形態では、図1および図2に示されるように、補修シート2および発熱体4との間に、補修シート2を補修対象面100aに向けて均一に押圧するための押圧治具3が配置される。このため、上述の液だれや位置ずれは十分に抑制することができる。また押圧治具3は、高い伝熱性を有することが好ましい。発熱体4の熱を効率的にはんだペースト層1に伝熱させるためである。また押圧治具3は、補修シート2よりも大きな面を有することが好ましい。補修シート2に対して、ひいてははんだペースト層1に対して均一に熱を伝熱させるためである。
また本工程においては、はんだ溶融層11からフラックス由来のガスが発生する。発生したガスがはんだ溶融層11内に多量に残留したまま、はんだ融液が固化してはんだ層12となった場合、はんだ層12内にガス由来の空隙が多く存在してしまう。これに対し、補修シート2は、厚み方向に貫通する貫通孔2aを有する。これにより、ガスは貫通孔2aから系外に移動することができるため、ガスはより効率的に排出されることとなる。またガスの系外への排出をより効率的にすべく、押圧治具3は、ガスを系外に排出するための構造を備えることが好ましい。
(貼着工程)
本工程では、溶融したはんだ粒子が固化することにより、補修対象面100aに補修シート2が貼着する。たとえば図2に示す状態から発熱体4を取り除くことにより、はんだ融液の固化を開始させることができる。本工程においても、押圧治具3を補修対象面100a側に向けて押圧することが好ましい。はんだ溶融層11の液だれ、補修シート2の位置ずれを抑制するためである。
押圧治具3を押圧したままはんだ溶融層11を固化させてはんだ層12を形成した場合、押圧治具3とはんだ層12とが固着する場合がある。図2に示されるように、はんだ溶融層11は、補修シート2の裏面側、すなわち押圧治具3と補修シート2との間にも回り込んでいるためである。はんだ層12に対して押圧治具3が固着されている場合には、押圧治具3を加熱しながら、はんだ層12から押圧治具3を引き剥がすことが好ましい。
このことから、押圧治具3は、はんだ融液と化学的な反応を起こさない材料により構成されることが好ましい。両者が化学的に反応してしまうと、はんだ層12からの押圧治具3の引き剥がしが困難となり、かつ意図しない成分が補修対象面100a上に残存してしまうおそれがあるためである。これを満たし、かつ上述の伝熱性を満たす材料としては、アルミニウムが好適である。
以上により、図3に示すように、鋼構造物100の補修対象面100a上に、はんだ層12を介して補修シート2が貼着される。
〈効果〉
上述の補修キット10を用いた補修方法によれば、鋼構造物100の補修対象面100a上に補修シート2が貼着される。補修シート2が鋼に対して卑な金属である亜鉛または亜鉛合金からなり、はんだ層12が導電性を有することにより、補修対象面100aに対する保護皮膜機能および犠牲防食機能を発揮する。このため、上述の補修方法によれば、補修対象面100aに対して耐食性を再付与することができる。また補修シート2および補修対象面100aを貼着させるはんだ層12は、鋼に対して貴な金属であるSnを多く含む。このため、補修対象面100aはさらに、はんだ層12が存在することによる防錆効果をも享受することができる。さらに、補修シート2および補修対象面100aは強固に貼着される。
このため、本実施形態に係る補修方法により補修された鋼構造物は、高い防食性能を有する。また、補修シート2およびはんだ層12は、樹脂のような有機物からなる材料と比して耐候性に優れる。このため、補修部分の経年劣化は十分に小さく、再補修を必要とするまでの期間も十分に長い。また補修作業に大型の装置を必要としないため、簡便に実施することができる。
また本実施形態において、補修シート2が貫通孔2aを有することにより、フラックス由来のガスを系外に効率的に排出することができる。このため、はんだ層12内の空隙を減少させることができ、もって補修シート2および補修対象面100aの密着性、換言すれば、補修シート2、はんだ層12、および補修対象面100aの相互の密着性を高めることができる。これらの密着性を高めることにより、外力が負荷されることによる補修シート2の脱落、はんだ層12と補修対象面100aとの接触部分から腐食の進行などを効果的に抑制することができる。
また本実施形態では、溶融工程において押圧治具3を用いることが好ましい。これにより、補修シート2およびはんだペースト層1を、補修対象面100a側に向けて均一に押圧することができるため、液だれ、位置ずれなどを効果的に抑制することができる。押圧治具3が高い伝熱性を有する場合には、発熱体4の熱を効率的にはんだペースト層1に伝熱させることができる。また押圧治具3が補修シート2よりも大きな面を有する場合には、はんだペースト層1に対して均一に熱を伝熱させることができる。
また本実施形態では、貼着工程においても押圧治具3を用いることが好ましい。これにより、はんだ溶融層11の液だれ、補修シート2の位置ずれ効果的を抑制することができる。また押圧治具3は、はんだ層からの引き剥がし作業が容易な材料により構成されることが好ましい。
以上を踏まえ、押圧治具3は、好ましくはアルミニウム板であり、より好ましくはアルミニウム製のパンチングメタル板である。この場合、溶融工程での使用目的および貼着工程での使用目的のいずれをも十分に果たすことができる。
〈第2の実施形態〉
図5を参照しながら、第2の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう)に係る補修方法について説明する。図5は、第2の実施形態に係る補修方法を説明するための部分的な斜視図である。
本実施形態は、鋼構造物200の補修対象面が、鋼構造物200およびコンクリート構造物300との境界の近傍に位置している場合に好適である。このような場合、補修対象面に対してはんだペースト層(不図示)および補修シート2をこの順に配置させ、かつ該補修シート2はさらに、コンクリート構造物300のうち該補修対象面に隣接する面にまで延在するように配置させる。これにより、図5に示されるように、鋼構造物200と、鋼構造物200が埋設されているコンクリート構造物300との境界線を塞ぐように、補修シート2が配置される。補修シート2の配置の形態以外は、第1の実施形態と同様であるため、その説明は繰り返さない。
〈効果〉
一般的に、鋼構造物200の補修対象面が、鋼構造物200およびコンクリート構造物300との境界の近傍に位置している場合、当該境界から腐食が拡がっている場合が多い。このため、仮に鋼構造物200の補修対象面のみを補修したとしても、再び境界から腐食が拡がることが懸念される。これに対し本実施形態に係る方法によれば、補修対象面に貼着された補修シート2の一部は、境界を覆うように補修対象面に隣接するコンクリート構造物300の表面にまで延在することができる。このため、境界への太陽光の照射、雨などの侵入を抑制することができ、もって上述の効果に加えて、境界からの腐食の拡散を抑制することができる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、試験片B−1、B−2、B−3をまとめて試験片B、試験片C−1、C−2、C−3をまとめて試験片C、試験片D−1、D−2、D−3をまとめて試験片Dと記す場合がある。
〈試験片Bの作製〉
大部分が亜鉛めっき皮膜で被覆され、かつ一部に亜鉛めっき皮膜の欠損部分を有する鋼板を準備し、欠損部分の一部に上述の補修キットを用いた補修方法を実施し、欠損部分の他の一部に従来の塗料を用いた補修方法を実施した試験片Bを作製した。以下、試験片Bの作製方法について詳述する。
図6は、試験片Bの作製方法を説明するための平面図である。まず、厚さ×縦×横が3.2mm×150mm×70mmの鋼板20を準備した。次に、鋼板20のうち、領域20aおよび領域20b(それぞれ縦×横が20mm×20mm)に対応する領域に不めっき塗料(「ヘキサロンコート」、日本窯炉株式会社製)を塗布した後、該鋼板20をHDZ55(JISに規定される溶融亜鉛めっきの規格)に相当する鋼材とすべく、JIS H 8641に規定される溶融亜鉛めっき処理を実施した。
次に、不めっき塗料をハンドグラインダで除去した。これにより、領域20aおよび20bに位置する鋼の表面が露出した。そして該露出した表面に対し、150番のサンドペーパーを用いて、表面が概ね清浄となるように素地調整を行った。以上により、鋼板20の表面に亜鉛めっき皮膜が形成された亜鉛めっき鋼板(ただし、領域20aおよび20bには亜鉛めっき皮膜を有さない)が作製された。
作製された亜鉛めっき鋼板のうち、領域20bに対して上述の補修キットを用いた補修方法を実施し、領域20aは鋼材が露出したままである試験片Bを作製した。なお試験片Bとして、3つの試験片B(B−1,B−2,B−3)を作製したが、そのうち試験片B−1および試験片B−2には、厚さ100μmの補修シートを用い、試験片B−3には、厚さ300μmの補修シートを用いた。具体的な補修方法は以下のとおりである。
《補修キットを用いた補修方法》
以下の補修シート、はんだペースト、および押圧治具を備える補修キットを用いた。
[補修シート]
亜鉛含有量:99%、
厚さ:100μmまたは300μm、
大きさ:25mm×25mm、
貫通孔の孔径0.1mm、
貫通孔のピッチ:4mm、貫通孔の数:36個)
[はんだペースト]
Sn−58Biはんだ(「TB48−M742」、株式会社弘輝製)(融点は138℃)
[押圧治具]
アルミニウム製パンチングメタル(厚さ:0.5mm、縦×横:30mm×50mm)。
上記補修キットを用いて、次の補修方法を実施した。まず、亜鉛めっき鋼板の領域20b(補修対象面)に対し、はんだペーストを塗布して領域20b上にはんだペースト層を作製した。次に、はんだペースト層上に補修シートを配置し、その上に押圧治具を配置した後、押圧治具の上からはんだ付用のこてを押しつけて、はんだ粒子を溶融させた。はんだ粒子の溶融は、試験片からの煙の発生により推察した。次に、押圧治具からこてを離して30秒以上静置し、その後、こてを用いて押圧治具を加熱しながら、はんだ層から押圧治具を引き剥がした。以上により、領域20bに対して補修シートが貼着された。
〈試験片Cの作製〉
赤錆が発生した鋼板(亜鉛めっき皮膜を有さない)を準備し、一部の赤錆を除去した後、該除去した部分に、上述の補修キットを用いた補修方法および従来の塗料を用いた補修方法を実施した試験片Cを作製した。以下、試験片Cの作製方法について詳述する。
試験片Bの作製時と同様に、鋼板20を準備した。次に、鋼板20に対し、15%塩酸溶液を用いた酸洗浄および水洗浄をこの順に行い、塩水噴霧試験を4時間実施して鋼板の表面に赤錆を発生させた。塩水噴霧試験には、塩水噴霧試験機(「SQ−500−1」、板橋理化工業株式会社製)を用いて、JIS Z 2371に規定される中性塩水噴霧試験を実施した。次に、領域20aおよび20bに相当する部分に対し、150番のサンドペーパーを用いて赤錆を除去すると共に、表面が概ね清浄となるように素地調整を行った。以上により、鋼板20の表面に赤錆が発生した亜鉛めっき鋼板(ただし、領域20aおよび20bには赤錆は発生していない)が作製された。
作製された亜鉛めっき鋼板のうち、領域20bに対して試験片Bと同様に上述の補修キットを用いた補修方法を実施した。一方、領域20aに対しては従来の塗料を用いた補修方法を実施した。具体的には、刷毛を用いて塗料(「ローバル(登録商標)」、ローバル株式会社製)を領域20aに塗布した。塗料による塗膜の厚さが80μmとなるように塗布量を調製した。なお、試験片Cとして3つの試験片C(C−1,C−2,C−3)を作製したが、そのうち試験片C−1および試験片C−2には、厚さ100μmの補修シートを用い、試験片C−3には、厚さ300μmの補修シートを用いた。
〈試験片Dの作製〉
試験片Bと同様の方法により、鋼板20の表面に亜鉛めっき皮膜が形成された亜鉛めっき鋼板(ただし、領域20aおよび20bには亜鉛めっき皮膜を有さない)を作製した。そして、亜鉛めっき鋼板のうち、領域20bに対しては上述の補修キットを用いた補修方法を2回実施し、領域20aに対しては、上述の補修方法を1回実施することにより、試験片Dを作製した。
図7は、試験片Dの概略的な平面図である。具体的には、図7に示されるように、亜鉛めっき鋼板20Aのうち、領域20bの半分を覆うように補修シート21を貼着させた後、領域20bの残りの半分を覆うように補修シート22を貼着させた。このため、領域20bの半分は、2枚の補修シート21,22で覆われた。一方領域20aに対しては、上述の補修方法を1回実施して補修シート23を貼着させた。このとき、補修シート23の一片の位置と亜鉛めっき鋼板20Aの一片とを一致させて、両部材の各一片の端面を面一にさせた。図7においては、理解を容易とするために、各補修シート21〜23の上に回り込んで固化したはんだ層は図示していない。
なお、試験片Dとして3つの試験片D(D−1,D−2,D−3)を作製したが、そのうち試験片D−1および試験片D−2では、補修シート21〜23として厚さ100μmの補修シートを用い、試験片D−3では、補修シート22および補修シート23として厚さ300μmの補修シートを用い、補修シート21として厚さ100μmの補修シートを用いた。
〈補修部分の厚さ〉
各試験片B〜Dに関し、電磁式膜厚計を用いて補修部分の厚みを測定した。具体的には、各試験片の任意の10点の厚さを測定し、その平均値を算出した。最大値および最小値は、任意の10点の内の最大値および最小値である。なお、測定される補修部分の厚さは、補修シートの厚さとはんだ層の厚さとの合計の厚さ、または塗膜の厚さである。その結果を表1に示す。
表1を参照し、「領域20a」の欄には、領域20a上に設けられた塗膜(試験片C)、または補修部分(試験片D)の厚さが示されており、「領域20b」の欄には、領域20b上に設けられた補修部分(試験片B〜D、ただし試験片Dは、2枚の補修シートが積層されている)の厚さが示されている。
たとえば試験片B−1の領域20bには、100μmの厚さの亜鉛からなる補修シートがはんだ層を介して貼着されているが、補修方法において押圧治具が用いられており、かつ補修シートには貫通孔があるため、はんだ層の形態は図3に示す形態を有している。ここで試験片B−1の領域20bにおいて、表1の「平均」の欄の数値が「590」であることから、100μmの厚さの補修シートの表裏の両側に存在するはんだ層の合計(平均値)が、490μmであることが理解される。これは、試験片B−2、C−1およびC−2の領域20b、ならびに、試験片D−1および試験片D−2の領域20aにおいても同様である。
ただし、試験片D−1〜D−3の領域20bにおいては、補修部分のうち、最も積層数の多い部分、すなわち、領域20b上に、はんだ層、補修シート21、はんだ層、補修シート22、はんだ層の順で積層されている部分の厚さを測定している。なお試験片B−3、C−3、およびD−3では300μmの厚さの補修シートを用いているため、各領域の補修部分の厚さが大きくなっている。
〈耐食性試験〉
試験片B〜Dに対して塩水噴霧試験を実施し、試験片B〜Dの表面の腐食の程度を観察した。塩水噴霧試験では、上記の塩水噴霧試験機を用いてJIS Z 2371に規定される中性塩水噴霧試験を1000時間実施した。試験条件は以下のとおりである。なお、試験片Cの作製にあたって実施された塩水噴霧試験の条件も以下と同様である。
[試験条件]
試験片角度:鉛直線に対して20度
試験槽内温度:35℃
塩水:50g/LのNaCl水溶液(pH6.8〜7.2程度)
噴霧量:1.1ml/h
ただし関東化学株式会社製の鹿1級のNaClを用いた。
〈試験片Bの耐食性試験結果について〉
中性塩水噴霧試験400時間経過後、800時間経過後および1000時間経過後のいずれにおいても、試験片の表面全体に赤錆が点在していた。これは、溶融亜鉛めっき処理により亜鉛めっき皮膜が形成された鋼構造物であっても、極めて厳しい環境下におかれた場合に、亜鉛めっき皮膜の微細な欠陥から腐食が拡がることを示している。しかし一方で、補修シートが貼着された部分(領域20bに相当する部分)には、赤錆の発生が見られなかった。
参考として図8〜図10を示す。図8は、中性塩水噴霧試験実施直前の試験片B−1、B−2、B−3の写真である。図9は、中性塩水噴霧試験400時間経過後の試験片B−1、B−2、B−3の写真である。図10は、中性塩水噴霧試験1000時間経過後の試験片B−1、B−2、B−3の写真である。
〈試験片Cの耐食性試験結果について〉
試験片C−1〜C−3を観察したところ、塗膜が形成された部分(領域20aに相当する部分)に膨らみが観察された。これは、塗膜の下に位置する鋼が腐食したためと推察された。つまり、塗膜の微細な欠陥から塩水が浸入し、鋼が腐食したと考えられる。これに対し、試験片C−1〜C−3のうち、補修シートが貼着された部分(領域20bに相当する部分)には、膨らみなどの変形は観察されなかった。
以上のことから、上述の補修キットを用いた補修方法によれば、鋼構造物の亜鉛めっき皮膜の欠損部分を簡便に補修することができ、かつ補修部分は高い耐食性を有し、かつ該耐食性の経年劣化も十分に低いことが確認された。
〈試験片Dの耐食性試験結果について〉
試験片D−1〜D−3を観察したところ、補修シートを重ねて貼着させた部分(領域20b)および補修シートの一片(端部)の位置を亜鉛めっき鋼板の一片(端部)と一致するように貼着させた部分(領域20a)のいずれにおいても、赤錆の発生、補修シートの変形といった変化は見られなかった。
以上のことから、たとえば補修対象面が大きな場合に、ハンドリングが容易な小さな補修シートを用い、これらを複数枚重ねながら補修を行ってもよいことが確認された。また、たとえば補修対象面が任意の面の端部にあるような場合であっても、十分に補修できることが確認された。また端部からの腐食の進行が見られなかったことから、補修シート、はんだ層、および補修対象面の相互の密着性が優れることも考察された。
〈密着性試験〉
耐食性試験後(1000時間経過後)の試験片B−3、C−3、D−3に対してプルオフ試験を実施し、補修シートと補修対象面(鋼板の表面)との密着性を確認した。プルオフ試験では、JIS−K−5600−5−7に規定されるプルオフ試験を実施した。具体的な試験方法について、図11および図12を用いて説明する。図11は、試験片B−3におけるプルオフ試験を説明するための写真であり、図12は、試験片D−3におけるプルオフ試験を説明するための平面図である。
まず、各試験片のうち、補修シートを貼着させた部分(領域20aおよび/または領域20b)に対して150番のサンドペーパーを用いて研磨処理を実施し、補修シート上に位置する錆、はんだ層などを除去し、補修シートを露出させた。さらに研磨処理を実施して、補修シートの表面の一部を平滑にし、平滑面を形成した。次に、形成された平滑面に対して、接着剤(無溶剤二液型エポキシ接着剤(「ボンドEセット」、コニシ株式会社製))を用いて、直径20mmの試験円筒30A〜30Cを接着させた。なお図12では、試験円筒30Bおよび30Cと補修シートとの接着領域を黒色の円で示している。
次に、ハンドグラインダを用いて試験円筒の周囲を切り込み、アドヒージョンテスター(「ATA−A」、DeFelsko Corporation社製)を用いてプルオフ試験を実施した。密着性試験において研磨処理される対象の補修シートは、300μmの厚さを有するため、研磨処理によって補修シートが完全に研磨除去されることはなかった。なお図11では試験片Bが示されるが、試験片Cにおいても同様の工程が実施された。
〈密着性試験結果について〉
図13は、試験片B−3におけるプルオフ試験後の円筒を取った後の試験片B−3の写真であり、図14は、試験片B−3におけるプルオフ試験後の試験円筒の底面の写真である。試験円筒の底面は、接着剤を介して補修シートに接着されていた面である。
補修対象面である鋼板の表面と、試験円筒の底面との間には、補修対象面側から順に、はんだ層、補修シート、はんだ層、接着剤が存在している(ただし、試験片D−3の領域20b上には、補修対象面側から順に、はんだ層、補修シート、はんだ層、補修シート、はんだ層、接着剤の順に存在している)。プルオフ試験後に、試験片B−3の表面および試験円筒の底面を観察することにより、この積層構造のいずれの界面から剥離が起こったかが確認できる。
具体的に図13および図14を参照すると、試験片B−3の表面に、接着剤を含むすべての材料が残留しているのに対し、試験円筒の底面には、いずれの材料も残留していなかった。また試験片C−3、試験片D−3においても、同様の結果が得られた。これらの結果から、補修シートは、はんだ層を介して補修対象面に強固に貼着されていることが分かった。
仮に、補修シートとはんだ層との密着力が弱ければ、試験円筒の底面側に、接着剤、はんだ層、および補修シートがこの順で残存する、または試験円筒の底面側に、接着剤およびはんだ層がこの順で残存するはずである。また仮に、はんだ層と補修対象面との密着力が弱ければ、試験円筒の底面側に、接着剤、はんだ層、補修シート、はんだ層がこの順で残存するはずである。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均などの意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 はんだ層、2,21,22,23 補修シート、 2a 貫通孔、3 押圧治具、4 発熱体、10 補修キット、11 はんだ溶融層、12 はんだ層、100,200 鋼構造物、100a 補修対象面、300 コンクリート、20 鋼板、20A 亜鉛めっき鋼板、20a,20b 領域、30A,30B,30C 試験円筒。

Claims (10)

  1. 鋼構造物の補修対象面上に、フラックスおよびはんだ粒子を含有するはんだペーストからなるはんだペースト層と、亜鉛または亜鉛合金からなる補修シートとをこの順に配置する工程と、
    発熱体の熱を前記補修シートを介して前記はんだペースト層に伝熱させることによって前記はんだ粒子を溶融させる工程と、
    前記溶融したはんだ粒子を固化させることにより、前記補修対象面に前記補修シートを貼着させる工程と、を備える、鋼構造物の補修方法。
  2. 前記補修シートは、厚み方向に貫通する貫通孔を有する、請求項1に記載の鋼構造物の補修方法。
  3. 前記溶融させる工程において、前記補修シートおよび前記発熱体の間に、押圧治具が配置される、請求項1または請求項2に記載の鋼構造物の補修方法。
  4. 前記溶融させる工程において、前記押圧治具は、前記補修対象面側に向けて押圧される、請求項3に記載の鋼構造物の補修方法。
  5. 前記貼着させる工程において、前記押圧治具は、前記補修対象面側に向けて押圧される、請求項3または請求項4に記載の鋼構造物の補修方法。
  6. 前記押圧治具は、アルミニウムからなる、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の鋼構造物の補修方法。
  7. 鋼構造物の補修キットであって、
    補修シートとはんだペーストとを備え、
    前記補修シートは、亜鉛または亜鉛合金からなり、
    前記はんだペーストは、フラックスおよびはんだ粒子を含有する、鋼構造物の補修キット。
  8. 前記補修シートは、厚み方向に貫通する貫通孔を有する、請求項7に記載の鋼構造物の補修キット。
  9. 前記補修シートを押圧するための押圧治具をさらに備える、請求項7または請求項8に記載の鋼構造物の補修キット。
  10. 前記押圧治具は、アルミニウムからなる、請求項9に記載の鋼構造物の補修キット。
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