上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
上記のワーク搬送装置において、上記制御部は、上記可動部の加速走行時に上記制御ゲインとしての減速ゲインを上記走行用モータに断続的に複数回付与する一方で、上記可動部の減速走行時に上記制御ゲインとしての加速ゲインを上記走行用モータに断続的に複数回付与するように構成されているのが好ましい。
このワーク搬送装置によれば、可動部の加速走行時及び減速走行時のそれぞれにおいて減速ゲイン或いは加速ゲインを走行用モータに断続的に複数回付与することによって、ワーク保持部が実際に慣性荷重を受け始めてからワークの揺れを抑制するまでに要する時間を短く抑えることができる。
上記のワーク搬送装置において、上記可動部は、上記ガイドレールに走行可能に取付けられており、上記走行用モータによって上記ガイドレールに沿って上記荷役部と一体で走行するように構成されているのが好ましい。
このワーク搬送装置によれば、可動部をガイドレールに走行可能に取付けることによって、この可動部の走行のためのスペースをフロアの床面に予め確保する必要がなく、地上スペースを広く使用することができる。
上記のワーク搬送装置において、上記検出部は、上記可動部と上記ワーク保持部との間に介装され上記可動部が上記ワーク保持部から受ける複数方向についての荷重を検出可能な力覚センサによって構成されているのが好ましい。
このワーク搬送装置によれば、可動部についての荷重情報を検出する検出部として汎用の力覚センサを使用することによって点検や交換が簡単になる。
上記のワーク搬送装置において、上記可動部は、上記荷役部に連結されたベース部と、上記ベース部から延出して上記ワーク保持部に連結されたロボットアーム部と、を有し、上記ロボットアーム部は、複数の関節軸のそれぞれに駆動用モータが内蔵され且つ上記ワーク保持部とともに上下動する多関節ロボットによって構成されているのが好ましい。
このワーク搬送装置によれば、汎用の多関節ロボットによって可動部を構築できる。特に制御部による制振制御によって、ロボットアーム部がワーク保持部から受ける負荷を低く抑えることができるため、可動部として可搬能力が比較的小さい小型の多関節ロボットを使用できる。
(実施形態)
以下、車両組立ラインで使用されるワーク搬送装置について、図面を参照しつつ説明する。
なお、このワーク搬送装置を説明するための図面では、特に断わらない限り、ワーク搬送装置の前後方向である第1方向を矢印Xで示し、ワーク搬送装置の左右方向である第2方向を矢印Yで示し、鉛直方向である第3方向を矢印Zで示すものとする。
図1に示されるように、本実施形態のワーク搬送装置10(以下、単に「搬送装置10」という。)は、車体に組付け予定の車両部品であるワークWを、部品パレット1から組付け台2へ自動で搬送するためのものである。この搬送装置10は、ワークWの種類毎に準備され且つフロア4に第1方向X及び第2方向Yに並置された複数の部品パレット1に対して使用される。
この搬送装置10は、天井に設けられた2つのガイドレール3,3に取付けられるように構成されている。2つのガイドレール3,3は、第2方向Yについて互いに平行に離間し、且つそれぞれが部品パレット1と組付け台2との間で第1方向Xに延在する長尺状の水平レールとして構成されている。
ワークWの一例として、エンジンやトランスミッションをはじめ、足回り部品(サスペンションメンバーなど)、天井モジュール、インパネモジュール、シートスライドレール、車両シート、HVバッテリ等のような重い部品が挙げられる。
この搬送装置10は、荷役装置20と、保持装置30と、ロボット装置40と、これら荷役装置20及び保持装置30及びロボット装置40のそれぞれを制御する制御部としての制御装置60と、を備えている
図2に示されるように、荷役装置20は、ガイドレール3に吊り下げるように取付けられた吊り下げ式の装置である。この荷役装置20は、駆動用モータを使用してワークWを吊り下げるためのロープ状部材26の巻上げ及び巻下げが可能となるように構成されており、「電動バランサ」とも称呼される。この荷役装置20は、走行部21と、吊下部25と、を備えている。
荷役装置20の走行部21は、ガイドレール3に水平に走行可能に取付けられている。この走行部21は、スライド部材22と、ガーターレール23と、スライド部材24と、を備えている。この走行部21には、走行用モータのような自走のための駆動手段が搭載されていない。
スライド部材22は、ガイドレール3に第1方向Xにスライド可能に取り付けられている。ガーターレール23は、左右2つのスライド部材22,22に固定され且つ第2方向Yに長尺状に延在している。スライド部材24は、ガーターレール23に第2方向Yにスライド可能に支持されている。
荷役装置20の吊下部25は、走行部21のスライド部材24の下部にフックを介して連結されている。この吊下部25は、ロープ状部材26の巻上げ及び巻下げを行うように構成されている。ロープ状部材26は、可撓性を有し且つワークWを吊り下げることが可能な強度を有する紐状の長尺部材として構成されている。このロープ状部材26として典型的には、金属製のワイヤやチェーンなどの部材が使用される。
この吊下部25は、具体的には、ケース25aに、ロープ状部材26の巻上げ及び巻下げが可能な円筒形状のドラム27と、このドラム27を回転駆動するための駆動用モータ28と、ロープ状部材26に作用するトルクを検出するためのトルクセンサ29と、を収容している。
駆動用モータ28は、トルクセンサ29とともに制御装置60に電気的に接続されている。この駆動用モータ28は、その回転位置や回転速度を検出して制御装置60へ出力する一方で、制御装置60からの制御信号によって制御されるように構成されている。トルクセンサ29は、検出したトルクに関する情報を制御装置60へ出力するように構成されている。
ここで、駆動用モータ28は、ロープ状部材26に吊上げ物(本実施形態では、ワークW及び保持装置30)が吊り下げられたとき、この吊上げ物を無重力に近いバランス状態で保持できるバランス機能を有する。
ここでいう「バランス状態」とは、作業者が吊上げ物に手をかけて軽く上下に動かすことができ、且つ上下させた位置で手を離してもその位置で吊上げ物を静止させることができる状態をいう。
上記のバランス機能を実現するために、本実施形態では、駆動用モータ28として、トルクのフィードバック制御が可能な電動のサーボモータ(ACサーボモータ)を採用している。この駆動用モータ28は、トルクセンサ29が検出したトルクに基づいてこのトルクがほぼ一定となる状態でドラム27を回転駆動してロープ状部材26の巻上げ及び巻下げを行うことができる。この場合、駆動用モータ28を備えた荷役装置20は、「サーボホイスト」とも称呼される。
保持装置30は、ロープ状部材26にワークWを保持可能に取付けられている。具体的には、ロープ状部材26のうちドラム27に巻き取られている端部とは反対側の下端部26aに取付けられたブラケット26bに、この保持装置30が吊り下げられている。この場合、荷役装置20の吊下部25は、この保持装置30をワークWとともに吊り下げて搬送することができる可搬質量を要する。
保持装置30は、ロープ状部材26の下端部26aに取付けられたブラケット26bに対して鉛直面に沿って回動可能に構成されている。本構成を可能にするため、この保持装置30は、ブラケット26bにおいて水平方向に延在する回動軸30aに回動可能に連結された第1部材31を備えている。この第1部材31は、ロボット装置40のロボットアーム部47に連結部12によって連結されており、ロボットアーム部47の駆動力によって回動軸30aを中心に回動できるようになっている。
なお、保持装置30が回動する方向は鉛直面に沿った方向に限定されるものではなく、例えば水平面に沿って回動するように変更されてもよい。
保持装置30は、ワークWの保持形態の1つである挟み込みを利用したものである。ワークWを挟み込む機能を実現するために、保持装置30は、上記の第1部材31に加えて、第2部材32及びアクチュエータ33を備えている。
第2部材32は、第1部材31との間にワークWを挟み込む保持位置(図7中の実線で示されている保持位置P1)とこの保持位置よりも第1部材31から離れた保持解除位置(図7中の二点鎖線で示されている保持解除位置P2)との間でスライド可能に構成されている。
アクチュエータ33は、制御装置60に電気的に接続されており、制御装置60からの制御信号に基づいて第2部材32を保持位置と保持解除位置との間で駆動する機能を有する。このアクチュエータ33として、典型的には電動モータやエアシリンダなどの駆動手段が用いられる。
制御装置60によるアクチュエータ33の制御によって第2部材32が第1部材31に近づくように保持位置までスライドしたときに、第1部材31と第2部材32との間にワークWを挟み込んで保持できる。これに対して、制御装置60によるアクチュエータ33の制御によって第2部材32が第1部材31から離れるように保持位置から保持解除位置までスライドしたときに、ワークWの保持を解除できる。
なお、保持装置30によるワークWの保持形態として、挟み込み以外に、例えばワークWを掴んだり、引掛けたり、掬ったり、吸着したりして保持するなどの他の保持形態を採用することもできる。
ロボット装置40は、荷役装置20と同様に、ガイドレール3に吊り下げるように取付けられた吊り下げ式の装置である。このロボット装置40は、走行部41と、ベース部45と、カメラ46と、ロボットアーム部47と、を備えている。
ロボット装置40の走行部41は、荷役装置20を牽引するために、ガイドレール3に水平に自走可能に取付けられている。この走行部41は、2つのスライド部材42,42と、2つのガーターレール43,43と、2つのスライド部材44,44と、2つの走行用モータ42a,44aと、を備えている。
2つのスライド部材42,42は、第1方向Xに互いに離間した状態でガイドレール3にスライド可能に取り付けられている。2つのガーターレール43,43はそれぞれが、対応する左右2つのスライド部材42,42に対して固定され、且つ第1方向Xに互いに平行に離間した状態で第2方向Yに長尺状に延在している。各スライド部材44は、対応するガーターレール43に第2方向Yにスライド可能に支持されている。
走行用モータ42aは、2つのスライド部材42,42をガイドレール3に沿って第1方向Xに走行させることができる駆動手段として構成されている。走行用モータ44aは、2つのスライド部材44,44を第1方向Xに直交する第2方向Yに走行させることができる駆動手段として構成されている。これら2つの走行用モータ42a,44aは、いずれも制御装置60に電気的に接続されており、それぞれが制御装置60からの制御信号によって制御されるように構成されている。
ロボット装置40のベース部45は、2つのスライド部材44,44に対して固定されている。このため、このベース部45は、走行用モータ42aによって第1方向Xに走行することができ、また走行用モータ44aによって第2方向Yに走行することができるように構成されている。
このベース部45において、2つのスライド部材44,44を支持する支持プレート45aは、連結部11によって荷役装置20の吊下部25のケース25aに分離可能に連結されている。即ち、ロボット装置40のベース部45は、荷役装置20に分離可能に連結されている。
このため、搬送装置10の定常運転時においては、連結部11によって荷役装置20とロボット装置40とが互いに連結されて一体化される。このとき、荷役装置20は、駆動手段であるロボット装置40によって牽引されて第1方向X或いは第2方向Yにこのロボット装置40と一体的に動くことができる。
ベース部45の下部には、ロボット装置40のカメラ46及びロボットアーム部47が取付けられている。このため、カメラ46及びロボットアーム部47は、2つのスライド部材44,44と第2方向Yに一体的に動くことができ、また2つのスライド部材44,44を介して2つのスライド部材42,42と第1方向Xに一体的に動くことができる。
カメラ46は、画像認識用の撮像手段であり、保持装置30に向けて配置され且つ制御装置60に電気的に接続されている。このカメラ46は、制御装置60からの制御信号に応じて保持装置30がワークWを保持する位置を確定するために撮影し、その撮影画像を制御装置60に伝送するように構成されている。
ロボットアーム部47は、ベース部45から下方へ延出してそのアーム先端47aが保持装置30に連結されるように構成されている。具体的には、ロボットアーム部47のアーム先端47aは、第1部材31のうち回動軸30aから外れた位置に連結部12によって連結されている。このため、搬送装置10の定常運転時においては、この連結部12によってロボットアーム部47と保持装置30の第1部材31とが互いに連結されて一体化される。このため、ロボットアーム部47によって保持装置30の上下動を安定させることができる。
このとき、ロボットアーム部47は、制御装置60によってアーム先端47aの位置が制御される。
具体的には、保持装置30が駆動用モータ28による前述のバランス機能によって無重力に近い状態で保持され且つこの状態で第3方向Zに上下動するときには、この保持装置30に同調してアーム先端47aが動くようにロボットアーム部47が制御される。
これに対して、保持装置30が第3方向Zに上下動していない状態でこの保持装置30を回動させるときには、この保持装置30に同調することなくアーム先端47aが第1部材31を回動方向に押圧するようにロボットアーム部47が制御される。
このロボットアーム部47は、6つの関節軸A1,A2,A3,A4,A5,A6を有し、垂直方向に動作し且つ、その可搬質量が荷役装置20の吊下部25の可搬質量を下回るような、小型の垂直多関節ロボットによって構成されている。
このロボットアーム部47において6つの関節軸A1,A2,A3,A4,A5,A6のそれぞれには、各関節軸を回転駆動するアクチュエータとしての駆動用モータ48と、各関節軸に作用するトルクを検出するためのトルクセンサ49と、が内蔵されている。
なお、このロボットアーム部47を、関節軸の数が7つ以上、或いは5つ以下である垂直多関節ロボットによって構成することもできる。また、保持装置30の動きに追従して動くことができるロボットであれば、垂直多関節ロボット以外のロボットを採用することもできる。
駆動用モータ48は、トルクセンサ49とともに制御装置60に電気的に接続されている。この駆動用モータ48は、その回転位置や回転速度を検出して制御装置60へ出力する一方で、制御装置60からの制御信号によって制御されるように構成されている。トルクセンサ49は、検出したトルクに関する情報を制御装置60へ出力するように構成されている。
ここで、本実施形態では、駆動用モータ48として、トルクのフィードバック制御が可能な電動のサーボモータ(ACサーボモータ)を採用している。この駆動用モータ48は、トルクセンサ49が検出したトルクに基づいて、関節軸に作用するトルクがほぼ一定となるように動くことができる。これにより、ロボットアーム部47のアーム先端47aを柔軟に動かすことができる制御、所謂「コンプライアンス制御」が可能になっている。このコンプライアンス制御は既知の制御であり、ここではその具体的な説明は省略する。
上述のように、ロボット装置40は、ベース部45において連結部11によって荷役装置20に分離可能に連結され、且つロボットアーム部47において連結部12によって保持装置30に分離可能に連結されている。即ち、このロボット装置40は、2つの連結部11,12の二箇所で荷役装置20と連結されている。
なお、これら2つの連結部11,12は、作業者が手動で着脱操作を行うことができる連結部材によって構成されてもよいし、或いは制御装置60からの制御信号に応じて作動するアクチュエータによって自動で連結及び連結解除を行うように構成されてもよい。
また、ロボット装置40と荷役装置20との連結に係る連結部11について、その数を1又は複数に設定することができる。同様に、ロボット装置40と保持装置30との連結に係る連結部12について、その数を1又は複数に設定することができる。
荷役装置20が既存の設備であるような場合、この荷役装置20が取付けられているガイドレール3を利用し、大幅な設備改造無しでロボット装置40を設置できる。
制御装置60には手動操作スイッチ20aが電気的に接続されている。この手動操作スイッチ20aは、ロボット装置40が荷役装置20及び保持装置30の両方と分離された状態で、荷役装置20を手動操作によって単独で作動させることができるスイッチである。この手動操作スイッチ20aとして、押ボタンスイッチ、トグルスイッチ、ロッカスイッチ、ロータリースイッチ、タッチスイッチなどを適宜に使用することができる。
作業者がこの手動操作スイッチ20aを操作することによって、荷役装置20の駆動用モータ28を作動させてロープ状部材26の巻上げ及び巻下げを行うことができる。また、作業者がこの手動操作スイッチ20aを操作することによって、保持装置30のアクチュエータ33を作動させて第1部材31に対する第2部材32のスライド動作を生じさせることができる。
上述のように、荷役装置20は、保持装置30が保持したワークWをロープ状部材26で吊り下げた状態で、このロープ状部材26の巻上げによってワークWを上昇させることができ、またこのロープ状部材26の巻下げによってワークWを下降させることができる。この荷役装置20は、ワークWのための実質的な荷役動作を担うものであり、ワークWを上下方向に移動させることができる。
一方で、ロボット装置40は、ベース部45が荷役装置20に連結されているため、ガイドレール3を自走するときに荷役装置20を牽引しながらこの荷役装置20と一体となって水平方向に走行できる。このロボット装置40は、自走できない荷役装置20を搬送する役割を担うものであり、この荷役装置20によって吊り下げられたワークWを水平方向に移動させることができる。このとき、ロボット装置40のロボットアーム部47は、保持装置30に連結され且つこの保持装置30とともに上下動可能であるため、荷役装置20におけるロープ状部材26の巻上げ及び巻下げを邪魔しない。
従って、上記の搬送装置10は、ワークWを保持して上下方向及び水平方向に自動で且つ円滑に搬送するのに有効である。
また、搬送装置10の荷役装置20及びロボット装置40はいずれも、天井に設けられたガイドレール3に吊り下げによって取付けられている。これにより、搬送装置10とフロア4との間に作業スペースSが形成される。このため、機器の故障時や点検時などのような非定常時に、作業者が設備内に入り込んで作業を行うのにこの作業スペースSを使用できる。従って、地上スペースを占有することなくワークWの搬送を自動化することが可能になる。
ロボット装置40は、ロボットアーム部47のアーム先端47aに力覚センサ50を備えている。このため、ロボット装置40が連結部12によって保持装置30に連結された状態ではロボットアーム部47と保持装置30との間に力覚センサ50が介装される。この力覚センサ50は、ロボット装置40の走行時にロボットアーム部47が保持装置30から受ける荷重についてその大きさ及び方向に関する荷重情報を検出する検出部として構成されている。
この荷重情報は、ロボットアーム部47が保持装置30から受ける荷重についての情報であり、ロボット装置40の走行時に保持装置30に作用する慣性荷重についての情報と実質的に一致する。このため、力覚センサ50を使用すれば、保持装置30に作用する慣性荷重についてその大きさ及び方向に関する荷重情報を検出できる。
図3及び図4に示されるように、力覚センサ50は、所謂「6軸力覚センサ」であり、上面に5つの検出電極C1〜C5が周方向に配置された円柱状の基板部51と、基板部51に検出電極C1〜C5を覆うように取付けられた被覆部52と、を備えている。被覆部52は、撓み変形が可能な薄肉円盤状のダイヤフラム部53と、ダイヤフラム部53から延出する円柱状の検出部54と、を有する。本実施形態では、力覚センサ50は、基板部51にてロボットアーム部47に接合され、且つ被覆部52にて保持装置30に接合されるように取付けられている。
この力覚センサ50において、被覆部52の検出部54が荷重を受けるとダイヤフラム部53が撓み変形し、その撓み変形に伴ってダイヤフラム部53と検出電極C1〜C5で構成される静電容量が変化する。この原理によれば、力覚センサ50によって静電容量の変化を検出することによって、ロボット装置40の走行時に保持装置30に作用する、6方向(走行方向、走行方向の逆方向、右方向、左方向、上方向、下方向)のそれぞれについての荷重の大きさがわかる。そして、この力覚センサ50によって検出された荷重情報は、制御装置60に伝送される。
なお、上記の力覚センサ50における検出電極の数や配置は、図3及び図4に示されるものに限定されるものではなく、所望の検出方向の数などに応じて適宜に変更が可能である。
上記の力覚センサ50の更なる具体的な構造については、特開2010-8343号公報及び特開2016-42044号公報に開示の力覚センサの構造が参照される。
制御装置60は、制御盤に収容された既知の電子制御ユニットによって構成されており、図5に示されるように、上位指令部61、メモリ62、モータ制御部63、モータドライバ64、アクチュエータ制御部65、画像制御部66を備えている。
上位指令部61は、前記の手動操作スイッチ20a、力覚センサ50、トルクセンサ29、トルクセンサ49、カメラ46のそれぞれから伝送された情報を検出する。
メモリ62は、搬送装置10の制御に関する情報を予め記憶するとともに、上位指令部61に伝送された情報や、3つの制御部63,65,66のそれぞれで実行される演算処理の結果に関する情報を記憶する。搬送装置10の制御に関する情報として具体的には、車両組立ラインにおける車種に関する情報、車種毎に必要となるワークWの種類に関する情報、各ワークWを保管している部品パレット1や組付け台2の位置情報及びアクセス経路情報などが含まれている。
モータ制御部63は、走行用モータ42a、走行用モータ44a、駆動用モータ28、駆動用モータ48のそれぞれの制御のための演算処理を実行して、その演算結果に基づいてモータドライバ64に制御ゲインGを出力する。そして、モータドライバ64からの制御信号にしたがって各モータが駆動される。また、各モータに内蔵されている回転位置検出部によって検出された情報は、モータ制御部63に伝送される。
ここで、制御ゲインGには、加速ゲインGa及び減速ゲインGdが含まれている。サーボモータのPID制御を行う場合、このPID制御を行うための比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインであって且つモータの加速領域における各ゲインが加速ゲインGaに相当し、また、このPID制御を行うための比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインであって且つモータの減速領域における各ゲインが減速ゲインGdに相当する。
アクチュエータ制御部65は、アクチュエータ33の制御のための演算処理を実行して、その演算結果に基づいてアクチュエータ33に制御信号を出力する。また、画像制御部66は、カメラ46の制御のための演算処理を実行して、その演算結果に基づいてカメラ46に制御信号を出力する。
次に、図2、図6〜図12を参照しつつ、上記の搬送装置10の動作の一例を説明する。この搬送装置10は、その動作モードとして、制御装置60によって自動で制御される自動搬送モードと、作業者によって手動で実行される手動搬送モードと、を有する。
(自動搬送モード)
自動搬送モードでは、図6中のステップS101〜S108のステップが実行される。なお、これらのステップに必要に応じて1又は複数のステップが追加されてもよい。
第1ステップS101は、搬送装置10において運転初期に荷役装置20及びロボット装置40の連結状態を検出するステップである。この第1ステップS101によれば、図2に示されるように、荷役装置20及びロボット装置40が2つの連結部11,12において連結された準備完了状態にあることを検出できる。
第2ステップS102は、第1ステップS101の後で、搬送装置10において荷役装置20及びロボット装置40を、所望のワークWが保管されている部品パレット1まで移動させるステップである。この第2ステップS102によれば、制御装置60のメモリに記憶されている、部品パレット1の位置情報やアクセス経路情報に基づいて、ロボット装置40の2つの走行用モータ42a,44aが制御される。
これにより、ロボット装置40は、部品パレット1の位置まで自動で走行する。また、ロボット装置40に連結されている荷役装置20は、このロボット装置40と一体となって、この部品パレット1の位置まで自動で走行する。
第3ステップS103は、第2ステップS102の後で、荷役装置20とロボット装置40の協働によって、部品パレット1からワークWを取り出すステップである。この第3ステップS103によれば、図7に示されるように、カメラ46によってワークW及び保持装置30の両方を撮影しながら、保持装置30が所望のワークWに実際に到達するように、荷役装置20及びロボット装置40が制御される。その後、この保持装置30がワークWを保持するように制御される。
このとき、保持装置30の第3方向Zの位置調整は、荷役装置20の駆動用モータ28をロープ状部材26の巻上げ方向或いは巻下げ方向に回転させるとともに、ロボット装置40のロボットアーム部47のアーム先端47aを上昇或いは下降させることによって実行される。これにより、保持装置30が所望のワークWに到達する。
また、保持装置30によるワークWの保持は、第2部材32がアクチュエータ33によって第1部材31に対して保持解除位置P2から保持位置P1までスライドして、第1部材31と第2部材32との間にワークWを挟み込むことによって実行される。
この場合、保持装置30の2つの部材31,32によってワークWを挟み込む動作によってこのワークを確実に保持できる。また、第1部材31に対する第2部材32のスライド量を可変とすることによって、異なる寸法のワークWを保持するのに対応できる。
第4ステップS104は、第3ステップS103において取出したワークWの吊り上げを行うステップである。この第4ステップS104によれば、図8に示されるように、荷役装置20の駆動用モータ28をロープ状部材26の巻上げ方向に回転させるとともに、ロボット装置40のロボットアーム部47のアーム先端47aを上昇させることによって実行される。これにより、ワークWは、部品パレット1に保管されていたときの姿勢のままで所定の高さまで吊り上げられる。
ここで、駆動用モータ28は、前述のバランス機能によってワークW及び保持装置30を無重力に近いバランス状態に維持したままでロープ状部材26の巻上げ方向に回転する。即ち、ロボットアーム部47から無重力に近い状態の保持装置30に上向きの荷重が付与されることによって、この保持装置30が上昇動作するように駆動用モータ28が回転する。このとき、ロボットアーム部47は、保持装置30の上昇動作を支配することができる。
そして、ロボットアーム部47は、保持装置30に同調してアーム先端47aが上昇するように制御される。これにより、ロボットアーム部47のアーム先端47aは、保持装置30の第3方向Zの上昇動作に同調して動いて、この保持装置30とともに上昇する。
この場合、駆動用モータ28は、ワークWを保持した保持装置30を無重力に近いバランス状態で保持できるバランス機能を発揮する。このとき、ロボットアーム部47のアーム先端47aは、保持装置30の上下動に同調して動いて、この保持装置30とともに上下動する。このため、ロボットアーム部47は、保持装置30から受ける負荷が小さく抑えられ過大な負荷を受けることがないため、その可搬質量が小さくて済む。
また、このロボットアーム部47は、保持装置30とともに上昇するときに前述のコンプライアンス制御にしたがってそのアーム先端47aが柔軟に動くように制御される。このため、駆動用モータ28の回転速度とロボットアーム部47のアーム先端47aが上昇する速度との同調のズレを小さく抑えることができる。
第5ステップS105は、第4ステップS104において吊り下げたワークWを組付け台2まで搬送するステップである。この第5ステップS105によれば、図9に示されるように、制御装置60のメモリに記憶されている、組付け台2の位置情報やアクセス経路情報に基づいて、ロボット装置40の2つの走行用モータ42a,44aが制御される。これにより、ロボット装置40は、組付け台2の位置まで自動で走行する。また、ロボット装置40に連結されている荷役装置20は、このロボット装置40と一体となって、この組付け台2の位置まで自動で走行する。
第6ステップS106は、第5ステップS105において搬送したワークWの姿勢転換を行うステップである。この第6ステップS106によれば、図10に示されるように、ロボットアーム部47のアーム先端47aは、ワークWの姿勢転換のために回動軸30aを中心に保持装置30を予め設定された角度で回動させるように動く。本実施形態では、この角度がおよそ90度に設定されている。これにより、ワークWは、組付け台2に載置されるのに適した姿勢に転換される。
このように、ロボット装置40のロボットアーム部47による駆動力を利用して保持装置30を回動させることによって、この保持装置30が保持しているワークWの姿勢転換を簡単に行うことができる。特に、保持装置30が保持しているワークWの姿勢転換を鉛直面に沿った方向について行うのに有効である。
なお、この第6ステップS106では、保持装置30が回動する角度が一定値となっているが、これに代えて、ワークWの荷姿に応じてこの角度が可変となるようにロボットアーム部47のアーム先端47aの位置を制御してもよい。
また、ワークWの姿勢転換を行う必要がない場合には、保持装置30のこの機能を省略することもできる。
第7ステップS107は、第6ステップS106において姿勢転換がなされたワークWを組付け台2に吊り下ろすステップである。この第7ステップS107によれば、図11に示されるように、カメラ46によって組付け台2の載置面2aを撮影しながら、ワークWがこの載置面2aに実際に到達するように、荷役装置20及びロボット装置40が制御される。その後、この保持装置30がワークWの保持を解除するように制御される。
保持装置30の第3方向Zの位置調整は、荷役装置20の駆動用モータ28をロープ状部材26の巻下げ方向に回転させるとともに、ロボット装置40のロボットアーム部47のアーム先端47aを下降させることによって実行される。これにより、ワークWを組付け台2の載置面2aに吊り下ろすことができる。
ここで、駆動用モータ28は、前述のバランス機能によってワークW及び保持装置30を無重力に近いバランス状態に維持したままでロープ状部材26の巻下げ方向に回転する。即ち、ロボットアーム部47から無重力に近い状態の保持装置30に下向きの荷重が付与されることによって、この保持装置30が下降動作するように駆動用モータ28が回転する。このとき、ロボットアーム部47は、保持装置30の下降動作を支配することができる。
そして、ロボットアーム部47は、保持装置30に同調してアーム先端47aが下降するように制御される。これにより、ロボットアーム部47のアーム先端47aは、保持装置30の第3方向Zの下降動作に同調して動いて、この保持装置30とともに下降する。
また、このロボットアーム部47は、保持装置30とともに下降するときに前述のコンプライアンス制御にしたがってそのアーム先端47aが柔軟に動くように制御される。このため、駆動用モータ28の回転速度とロボットアーム部47のアーム先端47aが下降する速度との同調のズレを小さく抑えることができる。
一方で、保持装置30によるワークWの保持解除は、第2部材32がアクチュエータ33によって第1部材31に対して保持位置P1から保持解除位置P2までスライドして、第1部材31と第2部材32との間の間隔を広げることによって実行される。
第8ステップS108は、第7ステップS107の後に、搬送装置10を初期位置へ復帰させるステップである。この第8ステップS108によれば、保持装置30が回動前の状態に復帰して上昇するように荷役装置20及びロボット装置40が制御された後、これら荷役装置20及びロボット装置40が一体となって初期位置へと搬送される。これにより、搬送装置10は、次のワークWの搬送に備えることができる。
(手動搬送モード)
手動搬送モードは、搬送装置10のロボット装置40が故障したような非定常時に、荷役装置20が単独でワークWの搬送を行うバックアップモードである。作業者が主体となってこの手動搬送モードを実行する。
図12に示されるように、この手動搬送モードでは、2つの連結部11,12による連結が解除されて、荷役装置20とロボット装置40が分離される。
このとき、荷役装置20は、ロボット装置40のベース部45との分離によって、水平走行のための駆動手段を喪失する。このため、ロボット装置40の代わりに作業者が荷役装置20の保持装置30を手指で直に把持して引っ張ることによって、荷役装置20を第1方向X或いは第2方向Yに走行させることができる。
また、荷役装置20は、ロボット装置40のロボットアーム部47との分離によって、保持装置30を回動させるための駆動手段を喪失する。このため、ロボット装置40のロボットアーム部47の代わりに作業者が保持装置30を手指で直に把持してこの保持装置30を回動させることができる。
この手動搬送モードにおいて、荷役装置20におけるロープ状部材26の巻上げ或いは巻下げの動作や、保持装置30におけるワークWの保持或いは保持解除の動作については、作業者は、手動操作スイッチ20aを手指で直に操作することによってこれらの動作を実行することができる。
なお、ロボット装置40が連結部11によって荷役装置20に分離可能に連結され、且つ連結部12によって保持装置30に分離可能に連結される構造に代えて、ロボット装置40が荷役装置20に分離不能に連結され、且つ保持装置30に分離不能に連結された構造を採用することもできる。
ところで、図6中のステップS105及び図9に示されるように、ワークWの搬送時において荷役装置20及びロボット装置40が一体となって走行する。このとき、荷役装置20及びロボット装置40が停止状態から定速走行状態に至るまでの加速時や、定速走行状態から停止状態に至るまでの減速時において、ロープ状部材26に吊り下げられている保持装置30はワークWを保持した状態で慣性荷重を受ける。
ここで、図13に示されるように、荷役装置20及びロボット装置40が時間Taから時間Tbまで一定の加速度で加速走行した後、時間Tbから時間Tcまで一定速度Vaで定速走行し、最終的に時間Tcから時間Tdまで一定の減速度で減速走行して停止する場合について考える。
この場合、保持装置30は、ワークWを保持した状態で加速走行時に走行方向とは逆方向へ慣性荷重Faを受け、またロボットアーム部47はロボット装置40からこの慣性荷重Faに応じた荷重を受ける。また、この保持装置30は、減速走行時に走行方向の慣性荷重Fbを受け、またロボットアーム部47はロボット装置40からこの慣性荷重Fbに応じた荷重を受ける。
このとき、ロープ状部材26が可撓性を有するため、この保持装置30は、振り子の原理にしたがってワークWとともに走行方向の前後へ揺れる。この揺れを「振れ」ということもできる。例えば、加速走行時において、時間Taから時間Δtだけ遅れてこの保持装置30がワークWとともに揺れ始め(揺れ発生)、走行方向へ最大揺れ角θaで、また走行方向とは逆方向へ最大揺れ角θbで揺れる。このため、保持装置30が揺れないようにするためには、人がワークWを把持してその揺れを止める振れ止め操作(人による揺れ止め操作)を実行しながら搬送を行うか(図13参照)、或いはワークWの搬送速度を大幅に下げる必要がある。
そこで、本実施形態では、ワークWの搬送時に制振制御を行うようにしている。図14に示されるように、この制振制御では、制御装置60は、力覚センサ50による荷重情報に基づいて、ワークWを保持している保持装置30の揺れを抑制するための制御ゲインGをサーボモータである走行用モータ42a,44aに付与する。このような制御は、「サーボモータのモーションコントロール」とも称呼される。
具体的に説明すると、制御装置60のモータ制御部63(図5参照)は、時間Taから時間Tbまでの加速走行時に力覚センサ50による荷重情報に応じて定まる制御ゲインGとしての減速ゲインGdを演算し、この減速ゲインGdを走行に使用している走行用モータ42a或いは走行用モータ44aに断続的に複数回付与する(多段的にパルス状に付与する)。これにより、保持装置30に加速走行時の慣性荷重Fa(図13参照)を打ち消すような、走行方向への荷重が断続的に作用する。
また、このモータ制御部63は、時間Tcから時間Tdまでの減速走行時に力覚センサ50による荷重情報に応じて定まる制御ゲインGとしての加速ゲインGaを演算し、この加速ゲインGaを走行に使用している走行用モータ42a或いは走行用モータ44aに断続的に複数回付与する(多段的にパルス状に付与する)。これにより、保持装置30に減速走行時の慣性荷重Fb(図13参照)を打ち消すような、走行方向とは逆方向への荷重が断続的に作用する。
上記の制振制御において、減速ゲインGd或いは加速ゲインGaを走行用モータ42a,44aに断続的に付与する具体的な回数や間隔は、必要に応じて適宜に設定することができる。
また、上記の制振制御において、加速走行時に減速ゲインGdを断続的に付与することを、加速走行時の加速ゲインGaを断続的に補正するということもできる。同様に、減速走行時に加速ゲインGaを断続的に付与することを、減速走行時の減速ゲインGdを断続的に補正するということもできる。
制御ゲインGの演算については、例えば図15に示されるような、慣性荷重Fと制御ゲインGとの相関を示す相関線L,Mを使用することができる。保持装置30が走行方向とは逆方向について受ける慣性荷重Fを正とし、保持装置30が走行方向について受ける慣性荷重Fを負とした場合、加速走行時の減速ゲインGdを相関線Lにしたがって演算し、減速走行時の加速ゲインGaを相関線Mにしたがって演算することができる。
なお、相関線L,Mは、図15に示されるような直線であってもよいし、或いは傾きの異なる直線を組み合わせたもの、曲線、直線と曲線を組み合わせたもの、その他の多次曲線であってもよい。
ここで、力覚センサ50によって6方向のそれぞれについての荷重の大きさがわかるため、加速走行時についてはこれら6方向についての荷重の全部を合成し、そのときの走行方向の荷重成分を慣性荷重Fとして、この荷重Fと相関線Lとから減速ゲインGdを演算することができる。同様に、減速走行時については6方向についての荷重の全部を合成し、そのときの走行方向とは逆方向の荷重成分を慣性荷重Fとして、この荷重Fと相関線Mとから加速ゲインGaを演算することができる。
上述の制振制御によれば、図14に示されるように、加速走行時に走行用モータ42a,44aに対して減速ゲインGdを付与することによって、保持装置30の走行方向の最大揺れ角θcを図13の最大揺れ角θaよりも小さく抑えることができる。また、減速走行時に走行用モータ42a,44aに対して加速ゲインGaを付与することによって、保持装置30の走行方向とは逆方向の最大揺れ角θdを図13の最大揺れ角θbよりも小さく抑えることができる。
上述の実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
上記の搬送装置10において、ロボット装置40は、保持装置30がワークWを保持した状態で上下動する動作に追従してロボットアーム部47が上下動する一方で、走行用モータ42a,44aによって荷役装置20と一体で走行する。ロボット装置40が荷役装置20と一体で走行しているとき、加速走行時や減速走行時においては、ワークWを保持している保持装置30に慣性荷重が作用する。
そこで、この搬送装置10の制御装置60は、力覚センサ50によって検出された荷重情報に基づいて保持装置30の揺れを抑制するための制御ゲインG(減速ゲインGd或いは加速ゲインGa)を走行用モータ42a,44aに付与する。これにより、保持装置30がワークWとともに揺れるのを抑制する制振制御が可能になる。
なお、保持装置30がワークWを保持している状態では、この保持装置30の揺れの抑制は、実質的にワークWの揺れの抑制と同義である。
上記の制振制御によれば、保持装置30に対して複数の方向に作用し得る慣性荷重に対応することができる。また、この制振制御によれば、ワークWが実際に揺れ始めたことを検出して走行用モータ42a,44aを制御するものとは異なり、荷重情報に基づいて走行用モータ42a,44aを先行して制御できるため、ワークWの揺れが大きくなるのを防いで、保持装置30に作用する慣性荷重を低く抑えるのに効果がある。
従って、ワークWを安定した姿勢で搬送することができ、またロボットアーム部47が保持装置30から受ける荷重がこのロボットアーム部47の耐荷重を超えない範囲でワークWの搬送速度を高く設定することができる。
従って、制振制御による高速安定走行によってワークWを効率良く自動搬送することが可能になる。これにより、搬送の対象となるワークWの種類や数を増やすことができる。
また、上記の制振制御は、慣性荷重の監視に基づいて実行される制御であり、ワークWの種類や重量の変更などに応じて、制御に使用する算出式を変更する等の対応が不要である。
上記の搬送装置10によれば、ロボット装置40の加速走行時及び減速走行時のそれぞれにおいて減速ゲインGd或いは加速ゲインGaを走行用モータ42a,44aに断続的に複数回付与することによって、保持装置30が実際に慣性荷重を受け始めてからワークWの揺れを抑制するまでに要する時間を短く抑えることができる。
上記の搬送装置10によれば、ロボット装置40をガイドレール3に走行可能に取付けることによって、このロボット装置40の走行のためのスペースをフロア4の床面に予め確保する必要がなく、地上スペースを広く使用することができる。
上記の搬送装置10によれば、ロボット装置40についての荷重情報を検出する検出部として汎用の力覚センサ50を使用することによって点検や交換が簡単になる。
上記の搬送装置10によれば、ロボット装置40として汎用の多関節ロボットを使用できる。特に、ロボットアーム部47が保持装置30から受ける負荷を低く抑えることができるため、ロボット装置40として可搬能力が比較的小さい小型の多関節ロボットを使用できる。
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記の実施形態では、ロボット装置40を荷役装置20と一体で走行させる走行用モータ42a,44aをロボット装置40側に設ける場合について例示したが、これに代えて、走行用モータ42a,44aに相当するモータを荷役装置20側に設けるようにしてもよい。この場合、荷役装置20がガイドレール3をモータによって自走可能になる。
上記の実施形態では、ロボット装置40がガイドレール3に走行可能に取付けられる場合について例示したが、これに代えて、ロボット装置40に相当する要素が走行用モータによってフロア4を走行するように構成することもできる。
上記の実施形態では、力覚センサ50における静電容量変化の原理を利用して荷重情報を検出する場合について例示したが、この力覚センサ50に代えて別の検出原理を利用して荷重情報を検出するセンサを使用することもできる。
上記の実施形態では、ロボット装置40のロボットアーム部47と保持装置30との間に介装された力覚センサ50によって保持装置30に作用する荷重に関する荷重情報を検出する場合について例示したが、これに代えて、力覚センサ50に相当する機器がロボット装置40のロボットアーム部47の関節軸に設けられた構造や、力覚センサ50に相当する機器が保持装置30とワークWとの間に介装された構造を採用することもできる。
上記の実施形態では、車両部品としてのワークWを搬送するための搬送装置10について例示したが、この搬送装置10を車両部品以外のワークWの搬送にも使用できることは勿論である。