以下、本発明による燃料電池システムの一実施形態について説明する。燃料電池システム1は、図1に示すように、発電ユニット10および貯湯槽21を備えている。
発電ユニット10は、筐体10a、燃料電池モジュール11、熱交換器12、電力変換装置13、水タンク14、制御装置15を備えている。燃料電池モジュール11、熱交換器12、電力変換装置13、水タンク14および制御装置15は、筐体10a内に収容されている。
燃料電池モジュール11は、後述するように燃料電池34aを少なくとも含んで構成されるものである。燃料電池モジュール11は、改質用原料、改質水および酸化剤ガス(カソードエア)が供給されている。燃料電池34aは、燃料と酸化剤ガスとにより発電するものである。燃料は、供給源Gsから供給された改質用原料を改質された改質燃料である(詳細は後述する)。
熱交換器12は、燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。熱交換器12は、燃料電池モジュール11からの排気管11dが接続(貫設)されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(図にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22aおよび熱交換器12が配置されている。
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われて冷却されるとともに、燃焼排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮される。冷却後の燃焼排ガスは排気管11dを通って外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。なお、水タンク14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化するようになっている。
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
さらに、電力変換装置13は、燃料電池34aから出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。
また、電力変換装置13は、系統電源16aからの交流電圧を電源ライン16bを介して入力し所定の直流電圧に変換して、後述する燃料ポンプ42c等の補機(各ポンプ、ブロワなど)や制御装置15に出力する。すなわち、電力変換装置13は、燃料ポンプ42c(本発明の燃料供給装置に相当)に電力を供給する、本発明の電力供給装置に相当する。
制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システム1の運転を制御する。制御装置15は、燃料電池システム1の発電運転中において、燃料電池34aの発電電力を外部電力負荷16cの消費電力となるように制御する(負荷追従運転)。
燃料電池モジュール11(30)は、固体酸化物形の燃料電池モジュールである。燃料電池モジュール30は、ケーシング31、蒸発部32、改質部33および燃料電池装置34を備えている。
ケーシング31は、断熱性材料で箱状に形成されている。ケーシング31内には、蒸発部32、改質部33、燃料電池装置34および燃焼部35が配置されている。蒸発部32および改質部33が燃料電池装置34の上方に位置するように配置されている。燃焼部35は、蒸発部32および改質部33と燃料電池装置34との間に配置されている。
蒸発部32は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、凝縮水を蒸発させて水蒸気(改質用水蒸気)を生成するものである。また、蒸発部32は、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部32は、凝縮水を蒸発させて生成された水蒸気(改質用水蒸気)と予熱された改質用原料を混合して改質部33へ導出する。改質用原料としては天然ガス(メタンガス)、都市ガス、LPG(液化石油ガス)などの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料がある。
蒸発部32には、一端(下端)が水タンク14内に配置された給水管41の他端が接続されている。給水管41には、改質水ポンプ41aが設けられている。改質水ポンプ41aは、蒸発部32に改質水(凝縮水)を供給するものである。改質水ポンプ41aは、改質水の流量(単位時間あたりの流量)を調整可能に設けられている。
また、蒸発部32には、供給源Gsからの改質用原料が燃料供給管42を介して供給されている。供給源Gsは、例えば都市ガスの配管である。燃料供給管42には、上流から順番に、遮断弁42a、流量センサ42b(本発明の流量検出装置に相当)および燃料ポンプ42cが設けられている。
遮断弁42aは、燃料供給管42を開路または閉路にすることにより改質用原料を流通または遮断するものである。遮断弁42aは、例えば二連弁である。
流量センサ42bは、改質用原料の流量を検出するものである。流量センサ42bは、例えば熱式流量センサである。流量センサ42bは、その配置された位置において燃料供給管42を流通する改質用原料の流量(単位時間あたりの流量)を検出する。流量センサ42bによって検出された流量である検出流量は、制御装置15に送信される。
燃料ポンプ42cは、改質用原料を燃料電池34aに向けて供給するものである。燃料ポンプ42cは、具体的には、燃料電池モジュール30(蒸発部32)に改質用原料を供給する。燃料ポンプ42cは、改質用原料の流量(単位時間あたりの流量)を調整可能に設けられている。燃料ポンプ42cは、電力変換装置13から電力が供給されている場合に駆動する。
改質部33は、改質用原料を改質された改質燃料である改質ガスを生成するものである。改質部33は、改質用原料と水蒸気(改質用水蒸気)とから改質ガスを生成する。改質部33は、具体的には、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、改質用水蒸気)から改質ガスを生成する。
改質部33内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。
このように生成されたガス(改質ガス)は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)およびプロパンガス、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。改質ガスは、燃料電池装置34に導出される。
燃料電池装置34は、燃料電池34aおよびマニホールド34bを備えている。燃料電池34aは、燃料(アノードガス)と酸化剤ガス(カソードガス)とにより発電するものである。燃料は、改質燃料(改質ガス)である。酸化剤ガスは、空気である。燃料電池34aは、燃料極、空気極(酸化剤極)、及び両極の間に介装された電解質からなる複数のセル34a1が図1における左右方向に沿って積層されて構成されている。
本実施形態の燃料電池34aは、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池34aの燃料極には、燃料として改質ガス(水素、一酸化炭素、メタンガス、プロパンガスなど)が供給される。燃料電池34aの動作温度は400〜1000℃程度である。
セル34a1の燃料極側には、改質ガスが流通する燃料流路34a2が形成されている。セル34a1の空気極側には、空気(カソードエア)が流通する空気流路34a3が形成されている。
燃料電池34aは、マニホールド34b上に設けられている。マニホールド34bには、改質部33からの改質ガスが改質ガス供給管33cを介して供給される。マニホールド34bには、燃料流路34a2の下端(一端)が接続され、かつ、改質ガスが導出する燃料導出口(図示なし)が複数設けられている。改質ガスは、燃料導出口を介して燃料流路34a2の下端から燃料流路34a2に導入され、燃料流路34a2の上端から導出される。一方、カソードエアブロワ43aによって送出されたカソードエアは、カソードエア供給管43を介して燃料電池34aに供給される。カソードエアは、空気流路34a3の下端から空気流路34a3に導入され、空気流路34a3の上端から導出される。
カソードエアブロワ43aは、発電ユニット10内に配置されている。カソードエアブロワ43aは、発電ユニット10内の空気を吸入し燃料電池34aの空気極に吐出するものである。カソードエアブロワ43aは、カソードエアの流量(単位時間あたりの流量)を調整可能に設けられている。
燃料電池34aにおいては、燃料極に供給された改質ガスと空気極に供給された酸化剤ガスによって発電が行われる。燃料極では、下記化1及び化2に示す反応が生じ、空気極では、下記化3に示す反応が生じている。すなわち、空気極で生成した酸化物イオン(O2−)が、電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。したがって、燃料流路34a2及び空気流路34a3からは、発電に使用されなかった改質ガスおよび発電に使用されなかった酸化剤ガスが燃焼部35に導出される。
(化1)
H2+O2−→H2O+2e−
(化2)
CO+O2−→CO2+2e−
(化3)
1/2O2+2e−→O2−
燃焼部35は、発電に使用されなかった改質ガス(アノードオフガス)を、発電に使用されなかった酸化剤ガス(カソードオフガス)によって燃焼させる燃焼空間である。燃焼部35におけるアノードオフガスの燃焼によって燃焼ガス(火炎36)が発生する。その燃焼ガスによって蒸発部32及び改質部33が加熱される。さらに、燃焼ガスは、燃料電池モジュール30内を動作温度に加熱している。また、燃焼部35におけるアノードオフガスの燃焼によって、燃焼排ガスが発生する。その燃焼排ガスは排気管11dを介して燃料電池モジュール30から排気される。
また、燃料電池システム1は、電流検出装置50、電圧検出装置60、温度検出装置70および駆動時間計測装置80をさらに備えている。
電流検出装置50は、燃料電池34aから出力された電力の電流値を検出するものである。電流検出装置50は、電力変換装置13に配置されている。電流検出装置50によって検出された電流値である検出電流値Ikは、制御装置15に出力される。
電圧検出装置60は、電力変換装置13から燃料ポンプ42cに出力される電力の電圧値を検出するものである。電圧検出装置60は、電力変換装置13に配置されている。電圧検出装置60によって検出された電圧値である検出電圧値Vkは、制御装置15に出力される。
温度検出装置70は、改質用原料の温度を検出するものである。温度検出装置70は、筐体10a内の所定位置に配置されている。温度検出装置70は、所定位置の温度を検出する。所定位置の温度は、燃料ポンプ42cの温度と相関を有する。また、燃料ポンプ42cの温度は、改質用原料の温度と相関を有する。よって、所定位置の温度は、改質用原料の温度と相関を有する。したがって、温度検出装置70は、所定位置の温度を検出することにより、改質用原料の温度を間接的に検出する。温度検出装置70によって検出された温度である検出温度Thkは、制御装置15に出力される。
駆動時間計測装置80は、燃料ポンプ42cの駆動時間を計測するものである。駆動時間計測装置80は、電力変換装置13から燃料ポンプ42cに電力が供給された時間を、燃料ポンプ42cの駆動時間として計測する。燃料ポンプ42cの駆動時間は、燃料電池システム1が設置された時点をゼロとして計測される。駆動時間計測装置80は、電力変換装置13に配置されている。駆動時間計測装置80によって計測された駆動時間である計測駆動時間Tmkは、制御装置15に出力される。
制御装置15は、燃料ポンプ42cを少なくとも制御するものである。制御装置15は、図2に示すように、目標流量設定部15a、フィードバック制御部15b、取得部15c、算出部15d、記憶部15e、補正部15fおよび燃料種推定部15gを備えている。
目標流量設定部15aは、改質用原料の目標とする流量である目標流量Qtを設定するものである。供給源Gsから供給されている改質用原料の種類を推定する燃料種推定制御(後述する)が実行された場合、目標流量設定部15aは、改質用原料の目標流量Qtを所定目標流量Qts(例えば2.0NL/min)に設定する。目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtは、フィードバック制御部15bおよび燃料種推定部15gに出力される。
また、目標流量設定部15aは、燃料電池34aが発電を行う燃料電池システム1の発電運転中において、第一マップM1を使用して、燃料種推定制御によって推定された改質用原料の種類と、電流検出装置50によって検出された検出電流値Ikとに対応した目標流量Qtを設定する。第一マップM1は、図3に示すように、改質用原料の種類毎に検出電流値Ikと目標流量Qtとの第一相関関係を示したものである。
ここで、第一相関関係について説明する。改質用原料の種類にかかわらず検出電流値Ikに応じて燃料電池34aに供給すべき熱量が予め設定されている。この燃料電池34aに供給すべき熱量は、燃料電池34aにて発電するために必要な熱量および燃焼部35にて燃焼するために必要な熱量を合わせた熱量である。よって、検出電流値Ikが大きくなるにしたがって、燃料電池34aに必要な熱量が大きくなる。
また、改質用原料が有する熱量(単位量あたりの熱量)は、改質用原料の種類(改質用原料の成分比率)の違いにより異なる。よって、改質用原料の種類によって改質用原料の目標流量Qtが異なる。したがって、第一相関関係は、改質用原料の種類毎に、複数設定されている。また、任意の検出電流値Ikにて改質用原料の種類毎の目標流量Qtを比較した場合、単位量あたりの熱量が大きい改質用原料ほど、その検出電流値Ikに応じた改質用原料の目標流量Qtが小さくなる。
第一相関関係における改質用原料の種類は、日本国内にて流通する、上述した都市ガスやLPG、だけでなく海外にて流通する改質用原料も含まれる。また、例えば同じ種類の改質用原料においても、地域によってその改質用原料の成分比率が異なることにより、その改質用原料に対応した目標流量Qtを異なるようにする必要が生じる場合がある。この場合、その改質用原料は、成分比率によって複数の区分に分けられて、その複数の区分のそれぞれが、改質用原料の種類を異にするものとして扱われている。本実施形態において、第一相関関係は、改質用原料の種類として五つの改質用原料F1〜F5が設定されている。
図2に戻って説明を続ける。
フィードバック制御部15bは、流量センサ42bによって検出された検出流量が目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtとなるように、燃料ポンプ42cの駆動量をフィードバック制御するものである。フィードバック制御は、流量センサ42bによって検出された検出流量と目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtとの偏差に基づいて、燃料ポンプ42cに対する制御指令値Dを算出して、制御指令値Dを燃料ポンプ42cに出力する制御である。
フィードバック制御部15bは、具体的には、流量センサ42bによって検出された検出流量と目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtとの偏差(=目標流量Qt−検出流量)を算出する。そして、フィードバック制御部15bは、その偏差に基づいて燃料ポンプ42cの回転数(ポンプの吐出量(流量))すなわちフィードバック量(操作量)を制御指令値Dとして算出する。燃料ポンプ42cがPWM(Pulse Width Modulation)制御されているため、燃料ポンプ42cに出力される制御指令値Dは、PWM制御のデューティ比で算出される。
取得部15cは、フィードバック制御部15bから出力された制御指令値Dを取得するものである。取得部15cは、フィードバック制御部15bから取得した制御指令値Dを算出部15dに出力する。
算出部15dは、取得部15cによって取得された制御指令値Dの第一所定時間内における平均値を、平均制御指令値Daとして算出するものである。第一所定時間は、制御指令値Dの脈動の周期よりも長い時間に設定されている。制御指令値Dの脈動は、例えば燃料ポンプ42cの脈動による検出流量の脈動によって生じる。第一所定時間は、例えば30秒である。算出部15dによって算出された平均制御指令値Daは、補正部15fに出力される。
記憶部15eは、プログラムを実行する際に用いられるデータ等を記憶するものである。記憶部15eは、各マップM1〜M5を記憶する。第一マップM1は、目標流量設定部15aに出力される。第二マップM2〜第四マップM4は、補正部15fに出力される。第五マップM5は、燃料種推定部15gに出力される。
第二マップM2は、図4に示すように、温度検出装置70によって検出された検出温度Thkと第一補正係数C1との第二相関関係を示したものである。第一補正係数C1は、後述する燃料種推定制御において制御指令値Dを補正する補正係数である。
ここで、第二相関関係について、目標流量Qtを一定とする場合において説明する。改質用原料の温度が上昇するにしたがって、改質用原料の拡散が促進される。これにより、改質用原料の濃度勾配が抑制されるため、燃料ポンプ42cによって送出される改質用原料の流量が増加する。これにより、流量センサ42bによって検出される検出流量が、目標流量Qtより増加したときに、流量センサ42bからの検出流量を目標流量Qtとするように、フィードバック制御部15bから燃料ポンプ42cに出力される制御指令値Dが低下する。すなわち、目標流量Qtが一定であっても、改質用原料の温度が上昇するにしたがって、フィードバック制御部15bから出力される制御指令値Dが低下する。
これに対して、第二相関関係は、温度検出装置70からの検出温度Thkが上昇するにしたがって、第一補正係数C1が増加するように導出されている。第一補正係数C1は、基準温度Th0(例えば30℃)である場合に「1」となるように設定されている。すなわち、第一補正係数C1は、制御指令値Dを、検出温度Thkが基準温度Th0である場合の制御指令値Dに補正する補正係数である。
第三マップM3は、図5に示すように、電圧検出装置60によって検出された検出電圧値Vkと第二補正係数C2との第三相関関係を示したものである。第二補正係数C2は、後述する燃料種推定制御において制御指令値Dを補正する補正係数である。
ここで、第三相関関係について、目標流量Qtを一定とする場合において説明する。燃料ポンプ42cに出力された電圧値が増加するにしたがって、燃料ポンプ42cの駆動量ひいては改質用原料の流量が増加する。これにより、流量センサ42bによって検出された検出流量が目標流量Qtより高くなったときに、流量センサ42bからの検出流量を目標流量Qtとするように、フィードバック制御部15bから燃料ポンプ42cに出力される制御指令値Dが低下する。すなわち、目標流量Qtが一定であっても、燃料ポンプ42cに出力された電圧値が増加するにしたがって、フィードバック制御部15bから出力される制御指令値Dが低下する。
これに対して、第三相関関係は、電圧検出装置60からの検出電圧値Vkが増加するにしたがって、第二補正係数C2が増加するように導出されている。第二補正係数C2は、基準電圧値V0(例えば24V)である場合に「1」となるように導出されている。すなわち、第二補正係数C2は、制御指令値Dを、検出電圧値Vkが基準電圧値V0である場合の制御指令値Dに補正する補正係数である。
第四マップM4は、図6に示すように、駆動時間計測装置80によって計測された計測駆動時間Tmkと第三補正係数C3との第四相関関係を示したものである。第三補正係数C3は、後述する燃料種推定制御において制御指令値Dを補正する補正係数である。
ここで、第四相関関係について、目標流量Qtを一定とする場合において説明する。燃料ポンプ42cの駆動時間が長くなるにしたがって、燃料ポンプ42cの経年劣化が進行するため、目標流量Qtに対応する制御指令値Dに応じた燃料ポンプ42cの駆動量ひいては改質用原料の流量が減少する。これにより、流量センサ42bによって検出される検出流量が目標流量Qtより低くなったときに、流量センサ42bからの検出流量を目標流量Qtとするように、フィードバック制御部15bから燃料ポンプ42cに出力される制御指令値Dが上昇する。すなわち、目標流量Qtが一定であっても、燃料ポンプ42cの駆動時間が長くなるにしたがって、フィードバック制御部15bから出力される制御指令値Dが上昇する。
これに対して、第四相関関係は、駆動時間計測装置80からの計測駆動時間Tmkが長くなるにしたがって、第三補正係数C3が減少するように導出されている。第三補正係数C3は、基準駆動時間Tm0(例えばゼロ時間(燃料ポンプ42cの状態が初期状態である時間))である場合に「1」となるように導出されている。すなわち、第三補正係数C3は、制御指令値Dを、計測駆動時間Tmkが基準駆動時間Tm0である場合の制御指令値Dに補正する補正係数である。
第五マップM5(本発明のマップに相当)は、図7に示すように、改質用原料の種類毎に目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtとフィードバック制御部15bから出力された制御指令値Dとの第五相関関係(本発明の相関関係に相当)を示したものである。
ここで、第五相関関係について説明する。改質用原料の種類(改質用原料の成分比率)の違いにより、改質用原料の比重等の特性が異なる。よって、任意の目標流量Qtにて改質用原料の種類毎の制御指令値Dを比較した場合、比重の大きい燃料ほど、燃料ポンプ42cの駆動量が増加し、ひいてはその任意の目標流量Qtに応じた制御指令値Dが上昇する。第五相関関係は、第一相関関係と同様に、改質用原料の種類として五つの改質用原料F1〜F5が設定されている。
また、改質用原料の成分比率ひいては比重にばらつきがあるため、任意の目標流量Qtに応じた制御指令値Dにおいてもばらつきが生じている。よって、その任意の目標流量Qtに応じた制御指令値Dは、改質用原料の種類毎にその制御指令値Dのばらつきに相当する範囲を有している。各相関関係は、予め実験等により実測されて導出されている。
図2に戻って説明を続ける。
補正部15fは、温度検出装置70によって検出された検出温度Thk、電圧検出装置60によって検出された検出電圧値Vk、および駆動時間計測装置80によって計測された計測駆動時間Tmkを用いて、取得部15cによって取得された制御指令値Dを補正するものである。補正部15fは、具体的には、算出部15dによって算出された平均制御指令値Daを補正する。
補正部15fは、第二マップM2を使用して、温度検出装置70からの検出温度Thkに対応した第一補正係数C1を導出する。また、補正部15fは、第三マップM3を使用して、電圧検出装置60からの検出電圧値Vkに対応した第二補正係数C2を導出する。さらに、補正部15fは、第四マップM4を使用して、駆動時間計測装置80からの計測駆動時間Tmkに対応した第三補正係数C3を導出する。
そして、補正部15fは、算出部15dからの平均制御指令値Daに各補正係数C1〜C3をそれぞれ乗算することにより、平均制御指令値Daを補正する。補正部15fによって補正された平均制御指令値Daは、燃料種推定部15gに出力される。
燃料種推定部15gは、第五マップM5を使用して、目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtと補正部15fによって補正された制御指令値D(平均制御指令値Da)とに対応した改質用原料の種類を推定するものである(詳細は後述する)。燃料種推定部15gによって推定された改質用原料の種類は、目標流量設定部15aに出力される。
次に、制御装置15が実行する燃料種推定制御について、図8に示すフローチャートに沿って説明する。制御装置15は、スタートスイッチ(図示なし)が押されて起動運転が開始される場合、または計画運転にしたがって起動運転が開始される場合に、図8に示すプログラムを起動する。起動運転は、燃料電池34aの発電の準備を行う運転である。なお、起動運転が終了した場合、発電運転が開始される。
制御装置15は、ステップS102にて、目標流量Qtを所定目標流量Qtsに設定する(目標流量設定部15a)。制御装置15は、ステップS104にて、改質用原料の供給を開始する。制御装置15は、具体的には、遮断弁42aを開路とするとともに、上述したフィードバック制御を行うことにより(フィードバック制御部15b)、燃料ポンプ42cの駆動を開始する。これにより、改質用原料が燃料電池34aに向けて供給される。
そして、制御装置15は、ステップS106にて、第二所定時間が経過したか否かを判定する。第二所定時間は、燃料ポンプ42cへの制御指令値Dが出力された時点から、制御指令値Dが安定する時点までの時間である。第二所定時間は、具体的には、検出流量と目標流量Qtとの偏差が所定値(例えば0.1NL/min)以下となるまでの時間である。第二所定時間は、予め実験等によって実測されて導出されている。第二所定時間は、例えば30秒である。
第二所定時間が経過していない場合、制御装置15は、ステップS106にて「NO」と判定し、ステップS106を繰り返し実行する。一方、第二所定時間が経過した場合、制御装置15は、ステップS106にて「YES」と判定し、プログラムをステップS108に進める。この場合、改質用原料が燃料電池34aに向けて、所定目標流量Qtsにて安定して供給されている。
制御装置15は、ステップS108にて制御指令値Dを取得して(取得部15c)、ステップS110にて平均制御指令値Daを算出する(算出部15d)。さらに、制御装置15は、ステップS112にて、平均制御指令値Daを補正する(補正部15f)。
制御装置15は、具体的には、温度検出装置70からの検出温度Thk、電圧検出装置60からの検出電圧値Vkおよび駆動時間計測装置80からの計測駆動時間Tmkを取得するとともに、上述したように、各マップM2〜M4を使用して各補正係数C1〜C3を導出して平均制御指令値Daを補正する。これにより、平均制御指令値Daは、基準温度Th0、基準電圧値V0および基準駆動時間Tm0における平均制御指令値Daに補正される。
続けて、制御装置15は、ステップS114にて、改質用原料の種類を推定する(燃料種推定部15g)。制御装置15は、具体的には、目標流量Qtおよび補正された平均制御指令値Daを用いて、上述したように、第五マップM5を使用して改質用原料の種類を推定する。例えば、燃料電池システム1に供給されている改質用原料が第三の改質用原料F3である場合、補正された平均制御指令値Daが補正制御指令値Dhとなる。よって、図7に示すように、補正制御指令値Dhと所定目標流量Qtsとに対応した改質用原料の種類である第三の改質用原料F3が、供給源Gsから供給されていると推定される。
上述した燃料種推定制御によって改質用原料が第三の改質用原料F3であると推定された場合、制御装置15は、燃料電池システム1の発電運転において、第一マップM1における第三の改質用原料F3の第一相関関係を使用して、電流検出装置50からの検出電流値Ikに対応した第三の改質用原料F3の目標流量Qtを設定する(目標流量設定部15a)。
本実施形態によれば、燃料電池システム1は、供給源Gsから供給された改質用原料を改質された改質燃料(改質ガス)である燃料と、酸化剤ガスとにより発電を行う燃料電池34aと、改質用原料を燃料電池34aに向けて供給する燃料ポンプ42cと、改質用原料の流量を検出する流量センサ42bと、改質用原料の温度を検出する温度検出装置70と、燃料ポンプ42cに電力を供給する電力変換装置13と、電力変換装置13から燃料ポンプ42cに出力される電力の電圧値を検出する電圧検出装置60と、燃料ポンプ42cの駆動時間を計測する駆動時間計測装置80と、燃料ポンプ42cを少なくとも制御する制御装置15と、を備えている。制御装置15は、改質用原料の目標とする流量である目標流量Qtを設定する目標流量設定部15aと、流量センサ42bによって検出された流量である検出流量と、目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtとの偏差に基づいて、燃料ポンプ42cに対する制御指令値Dを算出して、制御指令値Dを燃料ポンプ42cに出力するフィードバック制御を行うフィードバック制御部15bと、フィードバック制御部15bから出力される制御指令値Dを取得する取得部15cと、温度検出装置70によって検出された温度である検出温度Thk、電圧検出装置60によって検出された電圧値である検出電圧値Vk、および、駆動時間計測装置80によって計測された駆動時間である計測駆動時間Tmkを用いて、取得部15cによって取得された制御指令値Dを補正する補正部15fと、改質用原料の種類毎に目標流量Qtと制御指令値Dとの相関関係を示したマップを有する記憶部15eと、第五マップM5を使用して、目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtと補正部15fによって補正された制御指令値Dとに対応した改質用原料の種類を推定する燃料種推定部15gと、を備えている。
改質用原料の温度の変動によって改質用原料の拡散係数が変動するため、改質用原料の濃度ひいては燃料ポンプ42cによって送出される流量が変動する。また、燃料ポンプ42cに供給される電力の電圧値が変動した場合や、燃料ポンプ42cの経年劣化が進行した場合においても、燃料ポンプ42cの駆動量が変動するため、燃料ポンプ42cによって送出される流量が変動する。これらにより、流量センサ42bによって検出される検出流量が変動するため、流量センサ42bからの検出流量を目標流量Qtとするように燃料ポンプ42cに出力される制御指令値Dが変動する。
これに対して、本発明の燃料電池システム1においては、補正部15fが、温度検出装置70によって検出された検出温度Thk、電圧検出装置60によって検出された検出電圧値Vk、および駆動時間計測装置80によって検出された駆動時間である計測駆動時間Tmkを用いて、取得部15cによって取得された制御指令値Dを補正する。よって、改質用原料の温度の変動、燃料ポンプ42cに供給される電力の電圧値の変動および燃料ポンプ42cの経年劣化の進行による制御指令値Dの変動が抑制される。そして、燃料種推定部15gが、第五マップM5を使用して、目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtと補正部15fによって補正された制御指令値Dとに対応した改質用原料の種類を推定するため、改質用原料が精度よく推定される。したがって、燃料電池システム1は、燃料電池34aに改質用原料を供給する燃料ポンプ42cに対する制御指令値Dから、改質用原料の種類を精度よく推定することができる。
また、補正部15fは、制御指令値D(平均制御指令値Da)を、基準温度Th0、基準電圧値V0および基準駆動時間Tm0における制御指令値Dに補正する。よって、第五マップM5において、任意の改質用原料の種類における所定目標流量Qtsに対応した制御指令値Dの範囲を、制御指令値Dが補正されない場合に比べて狭くすることができる。これにより、任意の改質用原料における所定目標流量Qtsに対応した制御指令値Dの範囲と、他の改質用原料における所定目標流量Qtsに対応した制御指令値Dの範囲との重複を抑制することができる。したがって、第五マップM5における改質用原料の種類の数を、制御指令値Dが補正されない場合に比べて、多く設定することができる。
また、制御装置15は、取得部15cによって取得された制御指令値Dの第一所定時間内における平均値を平均制御指令値Daとして算出する算出部15dをさらに備えている。補正部15fは、温度検出装置70によって検出された検出温度Thk、電圧検出装置60によって検出された検出電圧値Vk、および、駆動時間計測装置80によって計測された計測駆動時間Tmkを用いて、算出部15dによって算出された平均制御指令値Daを補正する。燃料種推定部15gは、第五マップM5を使用して、目標流量設定部15aによって設定された目標流量と補正部15fによって補正された平均制御指令値Daとに対応した改質用原料の種類を推定する。
これによれば、補正部15fは、制御指令値Dの第一所定時間内における平均値である平均制御指令値Daを補正する。よって、制御指令値Dの脈動や制御指令値Dのばらつきが生じた場合であっても、これらの影響を抑制することができる。したがって、補正部15fにおける補正の精度を向上させることができる。
なお、上述した実施形態において、燃料電池システムの一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した実施形態において、燃料電池34aの燃料は、供給源Gsからの改質用原料を改質された改質燃料(改質ガス)であるが、これに代えて、供給源Gsから直接供給される直接燃料としても良い。直接燃料は、例えば、天然ガスや石炭ガスなどである。また、この場合、改質部33が省略される。
また、燃料電池34aに直接燃料が供給される場合、燃料ポンプ42cは、直接燃料を燃料電池34aに向けて供給する。そしてこの場合、流量センサ42bは、直接燃料の流量を検出する。さらにこの場合、温度検出装置70は、直接燃料の温度を検出する。またこの場合、目標流量設定部15aは、直接燃料の目標流量Qtを設定する。そしてこの場合、第五マップM5は、直接燃料の種類毎に目標流量Qtと制御指令値Dとの相関関係を示す。さらにこの場合、燃料種推定部15gは、第五マップM5を使用して、目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtと補正部15fによって補正された制御指令値Dとに対応した直接燃料の種類を推定する。
また、上述した実施形態において、補正部15fは、温度検出装置70によって検出された温度である検出温度Thk、電圧検出装置60によって検出された電圧値である検出電圧値Vk、および、駆動時間計測装置80によって計測された駆動時間である計測駆動時間Tmkを用いて補正を行っている。これに代えて、補正部15fが、温度検出装置70によって検出された温度である検出温度Thk、電圧検出装置60によって検出された電圧値である検出電圧値Vk、および、駆動時間計測装置80によって計測された駆動時間である計測駆動時間Tmkのうち、何れか一つを用いて補正を行うようにしても良い。
また、上述した実施形態において、第一マップM1の第一相関関係および第五マップM5の第五相関関係は、改質用原料の種類の数が五つであるが、これに代えて、改質用原料の種類の数を増加または減少するようにしても良い。
また、上述した実施形態において、第五マップM5には、改質用原料の種類として五つの改質用原料F1〜F5が設定されている。これに対して、供給源Gsから五つの改質用原料F1〜F5以外の新たな改質用原料が供給された場合に、その新たな改質用原料を第五マップM5に学習させるようにしても良い。具体的には、燃料種推定制御において、所定目標流量Qtsに対応する制御指令値Dが五つの改質用原料F1〜F5のそれぞれの制御指令値Dの範囲に属さない場合に、その制御指令値Dと所定目標流量Qtsに対応する改質用原料の種類として、新たな改質用原料の種類が第五マップM5に記憶される。また、その新たな改質用原料における所定目標流量Qtsに応じた制御指令値Dと、五つの改質用原料F1〜F5における所定目標流量Qtsに応じた制御指令値Dとの差分に基づいて、その新たな改質用原料の第一マップM1における第一相関関係が設定される。
また、上述した実施形態において、取得部15cによって取得された制御指令値Dは、算出部15dによって平均化されて補正部15fに出力されているが、これに代えて、算出部15dによる制御指令値Dの平均化を実行せずに、取得部15cによって取得された制御指令値Dを補正部15fに直接出力するようにしても良い。この場合、算出部15dが省略される。
また、上述した実施形態において、温度検出装置70は、筐体10a内に配置されているが、これに代えて、燃料ポンプ42cに直接配置するようにしても良い。また、温度検出装置70を燃料供給管42に直接配置して直接燃料の温度または改質用原料の温度を直接検出するようにしても良い。
また、上述した実施形態において、燃料種推定制御は、起動運転が開始される場合に実行されるが、これに代えて、起動運転中または発電運転中に第三所定時間(例えば24時間)毎に実行されるようにしても良い。この場合、制御装置15は、第五マップM5を使用して、燃料種推定制御が実行された時点における目標流量設定部15aによって設定された目標流量Qtと、補正部15fによって補正された制御指令値D(平均制御指令値Da)とに対応した直接燃料または改質用原料の種類を推定する。
また、上述した実施形態において、燃料電池34aは、固体酸化物形燃料電池であるが、これに代えて、固体高分子形燃料電池とするようにしても良い。