本実施形態では、(例えば荷物または人、動物などの搭載時の総重量や追越加速度、減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力など)車両個々のパラメータ値が所定範囲内に含まれる車両を集めて車両グループを編成(図9)する。また上記の車両グループ編成方法により、路面状況の変化に応じてグループ車両間の間隔を適正に制御できる。その理由は、図8を用いて後述する。そしてこのように編成された車両グループを利用した輸送サービス方法の例を、図4と図5で後述する。
まず始めに図1を用いて、車両グループまたは車両隊列の形態例を説明する。車両グループに所属するグループ車両2、12、14の連携走行時は、無線通信で互いに電子的に連結されている。無線通信方式の物理層として、ZigBee(登録商標)やBluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)、Z-Waveなどの近距離無線方式、あるいはWi−Fi(Wireless Fidelity)、EnOceanなどの中距離無線方式を使用してもよい。
上記無線通信の物理層に対する上位層の通信形態では、グループ車両2、12、14間はマスター・スレーブ(Master-Slave)形式を採用する。すなわちスレーブ側の従属車(Slave Vehicle)A12や従属車B14では、無人走行または運転手が直接運転しない被誘導モード490となっている。(被誘導モード490は、図32を用いて後述。)
一方でマスター側の指令車(Master Vehicle)A2では、運転手が直接運転する。また同じ運転手が指令者A2を運転しながら、後続の従属車A12と従属車B14も直接的あるいは間接的に走行誘導する。図1の実施形態例では、車両グループ内の先頭車両が指令車A2となっている。しかしそれに限らず、車両グループ内の任意順の車両が指令車A2でもよい。さらにマスター側で指令する装置は必ずしも車両の必要は無く、例えば携帯形グループ車両誘導機320でもよい。
図1の実施例では例えば、車両グループに含まれる3台の車両A2、A12、B14を1人の運転手が操作する。そのため(3人の運転手を必要とする従来方式と比べて)、運転手の人件費を削減できる効果がある。そのため、安価な輸送サービスをユーザーに提供できる。
また本実施形態例では例えば、幹線(高速道路)50内走行中でも車両グループへの合流や分離/離脱が行える。そして任意の場所での、合流や分離/離脱が可能となる。そのため従来の鉄道輸送と比べて、柔軟な隊列形態で任意地点間の長距離輸送/長距離移動サービスが提供できる効果もある。
なお本実施形態システム内で対象とする“車両(Vehicle)”とは、あらゆる種類およびあらゆる形態の自走式輸送手段の総称を示す。そしてここでは、自力走行が可能な“自走式車両”が該当する。従って例えば、台車やカートなどの“移動に外部からの力学的作用が必要”となる移動体は、本実施形態における“車両”の対象からは外れる。また上記輸送の対象物は、荷物や人、動物など任意に選択しても良い。
この“車両”の具体例では、自転車から自動2輪車、乗用車、バス、トラック、列車(鉄道)、船舶、飛行機、ロケット、あるいは特殊車両などが含まれる。そしてこの特殊車両には、軍事トラックや戦車、戦闘機、爆撃機、人工衛星、空母、戦艦、駆逐艦、潜水艦などが含まれてもよい。
本実施形態システムにおける走行経路と必要運転手との関係例を、図2に示す。例えばターミナルA42とターミナルB44間を結ぶ幹線(高速道路)50内を5台のグループ車両が走行する。この時には1人の運転手がグループ車両全体の走行を制御する。
この1個の車両グループはターミナルB44で、3個の車両グループに分裂する。そしてこの時には、3人の運転手が必要となる。さらにセンター64で完全に分離すると、合計5人の運転手が必要となる。
図2で示すターミナルA42、B44内の具体例を、図3で説明する。入場登録・駐車場所指示部112、116では、車両グループに編入予定の車両に対する登録と駐車場所の指示が行われる。また同時に、車両の総重量測定部114、118で、荷物積載状態あるいは搭乗者の搭乗状態での車両の総重量が測定される。
前述したように本実施形態では、車両個々のパラメータ値(例えば荷物または人、動物などの搭載時の総重量や追越加速度、減速/ブレーキ制動力、タイヤの摩擦力など)が所定範囲内に含まれる車両のみが、対応する車両グループに編成される。従って車両個々のパラメータ値に応じて、異なる車両グループ種別が定義される。図3では、異なる車両グループ種別毎に別々の隊列駐車場142〜176に駐車する。従って入場登録・駐車場所指示部112、116で指示された隊列駐車場142〜176に駐車することで、種別毎の車両グループ編成が完了する。
なおターミナルA42、B44の中央部にはバス停134が設置され、このバス停134のスペースを利用して人の往来ができる。そして例えば上り走行車線102上を走行していた車両の運転手がターミナルA42、B44内で下車した後、徒歩でバス停134のスペースを通行できる。その後に、駐車場152〜156、172〜176に駐車している車両に乗車し、下り走行車線104を走行できる。
本実施形態システムにおける複数車両間の連携走行を利用した輸送サービスの方法例を、図4を用いて説明する。図4に従った輸送サービスの具体例として例えば、離れた地域に分散して居住する複数のメンバーが一箇所に集合し、なんらかのイベントを実行した後に解散するケースが上げられる。そして本実施形態システムで、このイベントのバックアップを含めたメンバー移動(輸送)をサポートするサービスを行ってもよい。
離れた地域に分散して居住する複数のメンバーは、何らかの輸送手段(車両)を利用して移動する。参加メンバーの人数が多くなると、移動に複数台の車両が必要となる。同時に移動する複数台の車両内の所定車両を被誘導モード490に設定すれば、その車両に搭乗している運転手は飲酒できる。もしも参加メンバー全員が移動中に飲酒をしたい場合には、車両グループの先導車(指令車2)の派遣を有料で依頼しても良い。
上記で説明したケースを一例に取った場合の具体的な輸送サービスの流れを、図4に示す。車両運行管理会社のサーバー310(図示なし)が、例えばインターネット上で輸送サービスの予約受付を開始する(S200)。S201のユーザからの予約申し込み受付時には、インターネット経由で“参加する車両の車種名”や“参加人数(大人と子供それぞれの人数)”、“運ぶ荷物の車両毎の重量情報”、“先導車(指令車A2)派遣の要請有無”、“現地でのイベント内容”、“イベント時のバックアップ要請内容”などを入力してもらう。
これらの情報から車両運行管理会社のサーバー310が、輸送サービス提供時の費用請求額を自動算出する。その提示料金をユーザが合意すれば、料金を前金で支払う。なおそれに限らず、輸送サービス終了(S216)後に料金支払いを行っても良い。
車両運行管理会社のサーバー310が(前払い方式の)料金支払い確認(S202)を完了すると、車両グループ編成(S203)を行う。ここでは、“先導車(指令車A2)派遣の要請”が有った場合の対応方法を例にして説明する。ユーザからの予約申し込み受付時に入力された上記情報は、サーバー310が管理するデータベース318(図示なし)内に保存される。サーバー310は上記の情報を基に、後述する方法で車両毎に荷物または人、動物などの搭載時の総重量や追越加速度、予想平均走行速度と車両毎の運動エネルギーを算出する。次にこれらのパラメータ値に対し、参加する全車両での平均値を算出する。そしてその平均値に近いバラメータ値を持つ車両を選択して、派遣する先導車(指令車A2)に決定する。そして決定された指令車A2と予め予約された参加車両で、サービス対象となる車両グループが編成(S203)される。
上記のように本実施形態システムで提供する輸送サービス方法では、輸送サービスの実行に先行する予約受付時に参加する車両に関する情報を入手し、前記情報に基付いて適正な車両グループを編成する。
本実施形態システムでは、グループ車両個々のパラメータ値(例えば荷物または人、動物などの搭載時の総重量や追越加速度、減速/ブレーキ制動力、タイヤの摩擦力など)が所定範囲内に含まれるように車両グループを編成して、グループ車両間の間隔制御の安定化を図っている。しかし上記のように参加車両をユーザが指定した場合には、車両グループに含まれる従属車A12、B14の選別ができない。本実施形態システムではこの場合、従属車A12、B14のパラメータ値の平均値に近い車両を指令車A2に選定する。このように広義的意味で『グループ車両個々のパラメータ値が所定範囲内に含まれる』ように車両グループを編成する。
このようにして編成された車両グループの運行管理を車両運行管理会社のサーバー310が開始(S204)してから、輸送サービスが開始される(S205)。指令車A2を派遣する場合には、S206に記載したグループ車両の出発が、この指令車A2の出発に対応する。一方で指令車A2を派遣しない場合には、目的地(到着地点)から最も遠方の車両が出発したタイミングを『グループ内車両の出発(S206)』と見なす。
A地点やB地点でのメンバー合流(S207、S208)の方法の具体的内容として、既に走行しているグループ車両にメンバーが乗り込む場合と、新たに事前登録された車両が車両グループ内に合流する場合のいずれでも良い。
S210において車両グループ全体が目的地(到着地点)に到着すると、参加メンバーに対するサービス(観光や競技、会合、会食、宴会など)の提供を行う。
到着地でのサービス提供後(あるいは翌日に)参加メンバーの帰宅が始まる。参加メンバーは離れた地域に分散して居住するため、帰宅経路に応じて逐次部分的に散会する。メンバーの部分的な解散場所は必ずしも合流場所とは一致しない。S211からS214の一部解散形態としては、グループ車両から下車するメンバーや、所定車両が車両グループから分離して別れるメンバーもいる。
車両グループが完全に解散(S215)して輸送サービスが終了(S216)した後に、データベース318内に車両グループの運行履歴が保存され(S217)、最終的に予約受付が終了する(S218)。
複数車両間の連携走行を利用した輸送サービス形態の図4に対する他の応用例として、“ユーザの帰宅のみ”に対してサービスを提供する形態もある。例えばユーザが自家用車を使って外出し、外出先で誤って飲酒した場合がある。本実施形態の輸送サービス方法では、“帰宅のためにタクシーを呼ぶ”代わりに指令車A2を呼ぶ。この場合にはユーザの自家用車が従属車A12となって帰宅経路を誘導してもらう。上記の輸送サービスを利用すると、通常のタクシー利用費用で自家用車の輸送も完了する(トータル的な帰宅費用が安価となる)効果がある。
輸送サービスに関する他の本実施形態システム例として、多数ユーザを対象にしたライドシェア(ridesharing)拡張へのサービス展開を行っても良い。従来のライドシェアでは、自動車の所有者・運転者と自動車に乗って移動したいユーザ間を結び付けるソーシャル・プラットフォームが提供される。ユーザはモバイルアプリを利用して配車を依頼する(図4のS201が対応)。するとユーザの現在位置に近い迎車可能な運転手が手配される(図4のS203が対応)。依頼された運転手は、空いた時間を使って送迎サービス(輸送サービス)で小銭が稼げる。
移動したいユーザが少人数(例えば3人以下)の場合は、従来のライドシェアで対応が可能となる。しかし多数のユーザ(例えば4人以上や10人以上)が同時に移動したい場合、従来のライドシェアでは不満が残る。なぜなら従来のライドシェアでは分乗する送迎車毎に迎車タイミングが異なるため、全員同時の移動は難しくなる。
本実施形態システム例で提供するライドシェア拡張サービスでは、同時に複数車両が送迎する。この送迎を行う複数車両内の1台(指令車A2)だけ運転手が付き、残りの貸与された車両(従属車A12、B14)は被誘導モード490の状態となる。
ユーザはモバイルアプリを利用して配車を依頼する(図4のS201)。S203の車両グループ編成に対応した処理として、車両運行管理会社のサーバー310は時間の空いた運転手と所定時間帯に貸与可能な車両を探す。
S206のグループ内車両の出発のステップに対応した処理では、指令車A2を運転する運転手が出発する。そしてA、B地点でのメンバー合流S207、S208のステップに対応した処理では、所定時間帯に貸与可能な従属車A12、B14を借用する。
そして多数ユーザ(例えば4人以上や10人以上)の同時移動が、S210のメンバー全員へのサービス提供に相当する処理となる。
またそれに限らず図4ステップ内の一部を、乗り捨て後のレンタカー回収に利用しても良い。レンタカーサービスでは、レンタル完了時にユーザが借用車両を受付店舗に直接返却する場合と、移動先で借用車両を乗り捨てる場合がある。後者の場合には、乗り捨てられた借用車両をレンタル会社が回収する必要がある。
例えばS201のユーザーからの予約受付ステップに対応した処理で、レンタル会社から貸与車両の回収予約を受け付ける。そしてA、B地点でのメンバー合流S207、S208のステップに対応した処理で、貸与車両の回収を行う。
さらに上記輸送サービスを、違法駐車車両の強制撤去に適用しても良い。図4(の少なくとも一部)を利用したサービス提供形態は上記に限らず、他の類似したあらゆるサービス提供形態に図4(の少なくとも一部)を適用しても良い。
本実施形態システムにおける複数車両間の連携走行を利用した他の輸送サービス方法例を図5に示す。例えば従来は、異なる輸送会社T社90およびA社92、B社94、C社96が個別の輸送トラックを利用して、各社別々に遠距離輸送を行っていた。図5の輸送サービス方法例では、輸送荷物の混載による輸送トラック台数の圧縮を行う。さらにターミナルA42、B44間の高速道路50内では、複数の輸送トラック間で隊列を編成して必要な運転手の数を削減する。複数車両間の連携走行を利用すると、運転手の人件費全体を削減して安価なサービスを提供できる効果が生まれる。
これ以降で行う複数車両間の連携走行を利用して輸送サービスを安定に提供するために必要な技術の説明に先立ち、本明細書内で使用する『車両グループ』と『車両隊列』の用語説明を行う。
車両グループ300と車両隊列200ともに、それらを構成する“全車両が互いに連携して走行”する特徴を有する。そして連携走行を安定に統合制御するマスター(司令塔)として、指令車A2または携帯形グループ車両誘導機320が使用される。さらにこのマスター(司令塔)から誘導を受ける従属車A12(または従属車Z28)とマスター(指令車A2または携帯形グループ車両誘導機320)間は無線通信を利用して情報伝送を行う。
上記の共通する特徴を有した上で、地点A180から地点B190に至る共通の経路A202を走行する複数車両が『車両隊列200』を構成する。この車両隊列を構成する複数の車両間は、必ずしも近接する必要は無い。またこの車両隊列を構成する個々の車両を『隊列車両』と呼ぶ。
それと比べ、『車両グループ300』を構成する車両(グループ車両)間は、必ずしも同一経路A202を走行する必要が無い。例えば経路A202を走行する指令車A2および従属車A12と従属車Z28は、同一の車両グループ300を構成してもよい。しかし図6の例が示すように、指令車A2および従属車A12とは異なる経路B204上を、従属車Z28は走行してもよい。すなわち本実施形態システムの指令車A2(または携帯形グループ車両誘導機320)は、異なる経路B204上を走行する従属車Z28を“遠隔誘導”できる。
図4あるいは図5に示した輸送サービス例を提供する技術に付いて、以降では図7に示す手順に従って説明する。図7の最初に記載されているように、最初に隊列編成条件の説明を行う。
例えば4輪駆動ジープ212と最大許容積載量の荷物を積載したトラック214が車両隊列を構成した場合を検討する。図8(a)のように平地路面210上の走行中は問題は余り起きない。しかし図8(b)のように坂道路面220の上に向かう隊列走行に移ると、両車間の車間距離を適正に保つのが難しくなる。
最大許容積載量の荷物を積載したトラック214の重量が大きいため、坂道路面220を高速で登るのが難しい。片や駆動力(馬力)の大きな4輪駆動ジープ212は、簡単に坂道路面220を高速で登れる。このように同一の車両隊列内での車両間の追越加速度が大きく異なると、車両間の車間距離が広がり易い。
また最大許容積載量の荷物を積載したトラック214は総重量(総質量)が大きいため、減速/ブレーキ制動力が相対的に弱い。そのため降りの坂道路面220走行時に4輪駆動ジープ212が急ブレーキを掛けると、最大許容積載量の荷物を積載したトラック214に追突されるリスクが大きい。
本実施形態では上記課題を解決するため、(例えば荷物または人、動物などの搭載時の総重量や追越加速度、減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力、運動エネルギーなど)車両固有のパラメータ値が所定範囲内に含まれる複数車両だけで車両グループあるいは車両隊列を編成し、前記車両グループ(車両隊列)内の連携走行を制御して荷物または人、動物などの輸送サービスを行う。このようにして選別編成された車両グループあるいは車両隊列内の連携走行を制御すると、路面状況(登り坂や下り坂あるいは濡れて滑り易くなった路面や雪道など)に応じた適正な車間距離が確保できる効果がある。
図8(b)を用いて説明したように、車両グループ(車両隊列)内の最適な車間距離制御を阻害する要因となる車両固有の代表的パラメータは、『追越加速度』と『減速/ブレーキ制動力』が該当する。
この追越加速度は“正の加速度”として評価される。一方でブレーキを掛けた減速時には、“負の加速度”が発生する。正負いずれの加速度でも[加速度]=[駆動力または制動力]÷[車両の総質量] ‥(1)の関係が成立する。
(1)式の“車両の総質量”とは、例えば荷物または人、動物などの搭載時の総質量(搭乗者と積載物を含めた車両全体質量)を意味する。また“地球の重力加速度”を(1)式に代入した時の“力”が、“総重量”となる。従って本明細書内では、“質量”と“重量”を実質的に同義語として扱う。
また雨で濡れた路面210や雪道ではタイヤの摩擦係数が低下して、スリップし易くなる。このタイヤの摩擦係数は、タイヤが路面210を押し付ける強さ(すなわち車両の重量)と密接な関係がある。従ってタイヤの摩擦力も、車両の重量に関係する。
つまり上記の説明から、『追越加速度』も(タイヤの摩擦力も考慮した)『減速/ブレーキ制動力』も車両の総質量(重量)と密接な関係がある。そのため車両固有のパラメータの中で“(荷物または人、動物などの搭載時の)車両の総質量(重量)”が、車両グループ(車両隊列)内の最適な車間距離制御に最も大きな影響を及ぼすと言える。
以下の説明では、車両固有のパラメータの中で“車両の総質量(重量)”を中心に、隊列編成条件(車両グループ編成が可能な車両の条件)の検討を行う。しかしそれに限らず車両固有のパラメータとして、他に追越加速度や減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力、走行中の車両の運動エネルギーなどを対応させても良い。
また車両衝突での車両事故発生時の損傷/損害規模は、衝突直前の車両の運動エネルギー量に関係する。ここで車両の運動エネルギーは[車両の運動エネルギー]=[車両の総質量]×[車両速度]×[車両速度]÷2‥(2)で表現される。車両速度は隊列車両間でほぼ一致するので、隊列走行時の運動エネルギーは車両の総質量と同義語となる。しかし車両隊列200とは異なる経路B204を走行するグループ車両(例えば図6の従属車Z28)の適正な走行速度(すなわち従属車Z28走行時に最も燃料消費率が少なくなる速度)は、車両隊列200の走行速度とは異なる。この場合のグループ車両適合性判定に、上記の運動エネルギーを利用しても良い。
上記の説明をまとめると、隊列編成可能な車両の条件として『搭乗者と積載物を含めた車両全体重量(質量)が所定の上限値と所定の下限値で定められた範囲内の車両のみが、隊列を構成できる』と言える。次に上記上限値と下限値の説明を行う。
車両隊列200を構成する車両212、214個々の固有パラメータ(総質量・総重量など)値の最大値の最小値に対する比率と、車両隊列200内隣接車両212、214間での適正車間距離確保特性との関係を詳細に検討した結果を以下に説明する。詳細な検討の結果、一般的な平地路面210上では比率が1000を超えると、安定走行が難しい事が分かった。また坂道路面220では、比率が100を超えると難しくなる。さらに上記比率が10を超えると、車両グループ300内全車両212、214の走行の高速かつ高精度な制御が難しくなる。そして上記比率が3を超えると、隊列車両内の燃料比率の浪費が大きくなる。
以上から同一の車両グループ300(または車両隊列200)を構成可能車両が個別に有する(総質量・総重量などの)固有パラメータ最大値の最小値に対する比率は、1000以下(望ましくは100以下)に設定される必要がある。さらに上記の理由から、上記比率が10以下(望ましくは3以下)に設定されると、無駄な燃料比率の浪費も少なく一層安定なグループ走行(隊列走行)が可能となる。
ここでは車両毎の固有パラメータとして、荷物または人、動物などの搭載時の総重量(総質量)を中心に説明した。しかし追越加速度や減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力、運動エネルギーなどと車両の総重量は互いに密接な関係を持っている。従って車両毎の固有パラメータとして総重量の代わりに、追越加速度や減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力、運動エネルギーなどを当てはめて上記比率範囲を規定しても良い。
前述したように総重量(総質量)と追越加速度や減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力、運動エネルギーなどは互いに密接な関連性を持つ。従って追越加速度や減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力、運動エネルギーなどのパラメータ間を比較しても、最大値の最小値に対する比率は上記と同様な範囲で規定されるのが望ましい。
上記では同一の車両グループ300(または車両隊列200)を構成可能な車両固有のパラメータ値の許容範囲を説明した。また同一車線上で隊列走行する車両間で適正な車間距離を確保するには、隣接車両212、214間の固有パラメータ関係も検討する必要がある。
車両隊列200内での隣接車両212、214両車間の固有パラメータ(総質量・総重量や追越加速度、減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力など)値の大きい方の小さい方に対する比率と、隣接車両212、214間の追突防止特性を詳細に検討した。その結果として一般的な平地路面210上では、上記比率が100以下の必要があった。また坂道路面220では、上記比率が10以下の必要がある。さらに隣接車両212、214間の車間距離を短時間で高精度で制御するには、上記比率が10以下が望ましいと判明した。
従って同一の車両グループ300(または車両隊列200)内での隣接車両212、214間の固有パラメータ(総質量・総重量や追越加速度、減速/ブレーキ制動性能、タイヤの摩擦力など)値の大きい方の小さい方に対する比率は、100以下(望ましくは10以下)に設定する必要がある。さらに隣接車両212、214間の車間距離を短時間で高精度で制御するには、上記比率が10以下が望ましい。
さらに本実施形態では図9が示すように、同一車両隊列を構成する車両固有パラメータ値に基付いて車両隊列200内の車両の走行順を設定しても良い。例えば前走車よりも後続車の追越加速度が大きいと、登りの坂道路面220走行中に車間距離が開き辛い。従って従属車A12、B14、C16それぞれの追越加速度をG1、G2、G3とすると、G1<G2<G3 ‥(3)を満たすように車両の走行順を設定しても良い。
(1)式を考慮して(3)式の関係を言い換えると、先頭に近い従属車12、14、16の総質量(総重量)が大きくなるように走行車両順を設定するとよい。このように車両の総質量(総重量)の大きい順に走行順を設定すると、従属車12、14、16の中で後方を走行する車両の方がブレーキ制動性能が高い傾向にある。従って上記に従って走行車両順を設定すると、濡れた路面や雪面(氷面)走行時の追突リスクを低減できる効果も生まれる。
また本実施形態システムでは上記に限らず、後述するフィードフォワード制御を利用して走行車両の順番に柔軟性を持たせても良い。図9の従属車C16内にユーザが(運転しない状態で)乗車している場合を考える。上述のように総質量(総重量)が大きい順に走行すると、従属車C16内のユーザは前方が見えず、不安になる。ユーザの不安を解消するために従属車12、14、16の中で、車高の低い順(あるいは総質量(総重量)が小さい順)に走行車両順を設定してもよい。
上記内容を下記のように言い換える。すなわち1)複数車両で編成された車両グループ300(または車両隊列200)内に1台以上存在する従属車A12、B14、C16毎に固有なパラメータ値G1、G2、G3を持ち、2)全従属車のパラメータ値G1、G2、G3が所定範囲内に含まれ(最大値G3≦1000×G1(G1は最小値)の条件を満たせ)ば、3)車両隊列運行にフィードフォワード制御を利用すれば、4)従属車A12、B14、C16間の走行順がかならずしも“G1<G2<G3”を満足しなくても、5)路面状況(登り坂や下り坂、濡れて滑り易い状態、雪道など)によらず従属車A12、B14、C16間の車間距離が適正に保たれる。
次に(1)式に記載された各種パラメータの実測方法あるいは算定方法の説明を行う。車両の総質量に関しては、1.最初の予約申し込み時(図4のS201)のユーザ申請情報から推定する2.車両隊列200(あるいは車両グループ300)への合流時に直接測定するのいずれか、あるいは両方の併用を行って知ることができる。(例えば図3に記載した車両の総重量測定部114、118で、直接測定してもよい。)
ガソリン車では『40→60km/hや80→120km/h、100→200km/hなどでの中間加速時間』で追越加速度を定義することが多い。一方で電気自動車では、『地球の重力加速度Gに対する比率』で追越加速度を定義することが多い。ガソリン車と電気自動車とを同一基準で評価するため、本実施形態では電気自動車の定義に合わせる。
また発揮する加速度234の特性が図10に示すように、電気自動車の走行性能230とガソリン車の走行性能240が異なる。両者の走行性能230、240を同一視点で評価するため本実施形態では、ガソリン車の加速度特性が安定する場所で比較する。
ガソリン車の走行速度242に対する追越加速度244と相対的燃料消費率等高線特性を、図11に示す。なお図11において252、262、272、282、292は、1/2/3/4/5速での相対的燃料消費率100%等高線を表す。また254、264、274、284、294は、1/2/3/4/5速での相対的燃料消費率120%等高線を表す。そして256、266、276、286、296は、1/2/3/4/5速での相対的燃料消費率140%等高線を表す。
図11を用いて設定速度範囲246における最適追越加速度を割り出せる。例えば設定速度80km/hでの相対的燃料消費率が120%以下での最高追越加速度は、4速に対応したG80で与えられる。このようにして、ガソリン車の追越加速度244が求まる。
図10や図11の特性の基になる車両の駆動特性((1)式の駆動力に対応する特性)は、車種毎に公表されている場合が多い。従って車両の総質量(総重量)情報も利用して、追越加速度特性が算出できる。また本実施形態では上記追越加速度の情報入手方法として
1.最初の予約申し込み時(図4のS201)のユーザ申請情報から推定する2.車両隊列200(あるいは車両グループ300)への合流時に駆動部制御系444から履歴情報を獲得する3.隊列走行中(またはグループ走行中)にリアルタイムで情報を獲得するのいずれか、あるいは併用で知ることができる。
また減速/ブレーキ制動性能に関しては、1.車両隊列200(あるいは車両グループ300)への合流時に駆動部制御系444から履歴情報を獲得する2.隊列走行中(またはグループ走行中)にリアルタイムで情報を獲得するのいずれか、あるいは併用で知ることができる。
本実施形態における車両グループ運行システムの一例を図12に示す。基本的には車両運行管理会社が管理する車両運行管理会社のサーバー310と、車両グループ300から構成される。車両グループ300のみに含まれる従属車Z28および車両グループ300と車両隊列200の両方に含まれる従属車A12には予め、制御系338、332が内蔵されている。
図12の実施例では運転手が持ち運び可能な携帯形グループ車両誘導機320が存在し、各車両(指令車A2、従属車A12、Z28)の制御系330、332、338との間で無線通信可能となっている。そしてこの携帯形グループ車両誘導機320が、車両グループ300(車両隊列200)内の従属車A12、Z28のみならず指令車A2の連携走行を誘導する。しかしそれに限らず、指令車Aの制御系330内に従属車A12、Z28を誘導する機能が予め装備されても良い。
既に説明した図4内の各ステップにリンクして、図12内各部間の連携動作の説明を行う。ユーザの予約申し込みS201は、携帯端末312あるいは(図示してないが)自宅や職場のコンピュータを使って行う。この予約情報は遠距離通信中継機314を経由して、車両運行管理会社のサーバー310に通知される。
車両運行管理会社のサーバー310が管理するデータベース318内には、グループ車両の運行管理データ(履歴を含む)322だけでなく、運転手の運行管理データ(履歴を含む)324、幹線内渋滞/事故履歴データ326、幹線環境(雨や雪などの気象情報など)情報履歴データ328などが保存されている。なお公表されている車種毎の駆動特性などの必要な情報は、インターネット回線316を経由して入手する。
なお上記のグループ車両の運行管理データ(履歴を含む)322内には後述するように、グループ種別、季節、曜日、時間帯、サービス形態別料金表340が格納されている。従ってユーザからの予約申し込みを受付(S201)すると、車両運行管理会社のサーバー310は上記の料金表340を参照して、ユーザが利用するグループ種別、季節、曜日、時間帯、サービス形態に合わせた料金を提示する。
また車両運行管理会社のサーバー310はユーザからの予約申し込みを受付(S201)時に、該当車両(従属車A12など)に関する情報を入手してデータベース318内のグループ車両の運行管理データ(履歴を含む)322内に保存する。そして車両運行管理会社のサーバー310は上記情報に基付き、上記車両(従属車A12)に適合した車両グループ編成を行う(S203)。
このようにして編成した車両グループ300に適合した指令車A2を、車両運行管理会社のサーバー310が指定する。編成された車両グループ300内の全車両は、(指令車A2も含めて)車両固有パラメータ値が所定範囲内に含まれる必要がある。従って上記車両(従属車A12)に適合した車両固有パラメータ値を持つ車両が、指令車A2として指定される。
なお指令車A2と従属車A12の間が地理的に離れていても、車両グループ300を編成した直後から指令車A2は従属車A12の走行を誘導できる。そしてこの指令車A2が出発(S206)し、従属車A12などの走行を誘導(遠隔操作)しながらS207の合流へと導く。
図12に記載した各車両内の制御系330、332、338内の詳細内容を、図13に示す。台車やカートなどの“移動に外部からの力学的作用が必要”な移動体とは異なり、自力走行を可能とする駆動部制御系444が備わっている。そして車両グループ(車両隊列)内での連携走行可能な自走式車両では、図13に示す構造あるいは各種機能を所有している。ここで図13内に記載された各部は専用ハードで構成されても良いし、プロセッサを動かす専用ソフトモジュールで構成されても良い。
車両の前面近傍に設置された“前走車両間の車間距離と速度差の測定部424”と後部に設置された“後続車両間の車間距離と速度差測定用反射部428”を用いて、隣接車両間の車間距離を適正に制御する。
また車外環境モニター部420は車線変更時に利用するだけで無く、一般車の割り込みなどに起因する車両隊列全長の不都合な延長のモニターにも利用できる。またこの車外環境モニター部420の撮影映像/画像はメモリー部450に適宜保存されるので、ドライブレコーダとして事故発生時の証拠資料としても活用できる。
また外部表示画面の制御部410の機能で、外部の一般車に対する『隊列中の表示』や『広告表示』などを行っても良い。
通信制御部470はWi−FiあるいはEnOceanなどの中距離無線機能と、2G/PDC、GSM(登録商標)(Second Generation / Personal Digital Cellular, Global System for Mobile Communications)や3G/CDMA(Third Generation / Code Division Multiple Access)、WiMAX(World wide Interoperability for Microwave Access)などの遠距離無線機能の両方を装備している。そしてこの通信制御部470を介して車両グループ内の他の車両との情報交換を可能にする。またこの通信制御部を経由して前走車両との車間距離が制御される。
経路ガイド系460内には、GPS制御部462と運転座席への表示画面制御部464が設置されている。特に車両グループ300への合流前に別経路204を走行している場合には通信制御部470を経由して、車両運行管理会社のサーバー310から合流対象隊列の現在位置情報が逐次送られてくる。それと同時にGPS制御部462で自車の位置を確認できる。経路ガイド系460内では両者の情報から対象隊列への合流経路を割り出し、運転座席への表示画面制御部464に表示させる。図示して無いが運転座席のフロントガラスには半透明の有機EL(Electro Luminescence)層が埋め込まれており、運転座席への表示画面制御部464が生成した合流経路を表示する。
走行制御部440内は、走行モード制御部442と駆動部制御系444が存在する。本実施形態では後述するように、マニュアル運転モード480と完全自動運転モード485の他に被誘導モード490が定義されている。上記の走行モード制御部442が、それらのモード切替を担う。
駆動部制御系444ではエンジンやモーターの駆動制御だけで無く、ブレーキ制御や(濡れた路面や雪道でのスリップ防止制御を含めた)車輪の回転制御を行う。またこの駆動部制御系444で得られる各部の被制御データはメモリー部450内に逐次保存される。
従ってこのメモリー部450内に保存された駆動部制御系444関連データを基に、前述した計算式を利用して『追越加速度』や『減速/ブレーキ制動力』、『タイヤの摩擦力』を算出できる。またそれだけで無く駆動部制御系444の内部では、適宜リアルタイムで『追越加速度』や『減速/ブレーキ制動力』、『タイヤの摩擦力』を算出している。
このようにして得られたリアルタイムの『追越加速度』や『減速/ブレーキ制動力』、『タイヤの摩擦力』あるいはその履歴データは、通信制御部470を経由して適宜携帯形グループ車両誘導機320に送信される。
本実施形態システムでは、積荷432、434、436あるいはそれを纏めた梱包体やコンテナ自体に近距離無線または近接場無線を利用した通信機能が内蔵されている。例えば生鮮食料品の輸送時には、輸送途中での生鮮食料品の温度管理や湿度管理が重要となる。従って積載物/搭乗者の状態管理部430では無線通信を利用して積載物の状態管理や搭乗者の体調管理を行う。そして(生鮮食料品の保存温度変化などの)積載物状態異常あるいは搭乗者の体調不良を発見すると、積載物/搭乗者の状態管理部430は通信制御部470を経由して携帯形グループ車両誘導機320に警告を通告する。
車両固有のパラメータ値が所定範囲内に含まれる複数車両で車両グループ(車両隊列)を形成する本実施形態システムでの、隊列編成手順例と車両隊列の運行方法を図14に示す。ここでの重要ポイントは、○ ユーザーからの予約受付時に使用する車両(従属車)に関する情報を入手し、○ その情報に基付いて適正な車両グループ(車両隊列)を編成する また○ 上記車両(従属車)の車両グループへの合流前あるいは連携走行時にも上記車両(従属車)に関する情報を適宜入手し、○ 上記車両(従属車)のグループ内適性を判定し、○ 上記車両(従属車)が不適正と判定された場合に通知を行うところにある。
なお上記車両(従属車)に関する情報から上述した固有パラメータ値が得られる。車両運行管理会社のサーバー310が上記の情報から固有パラメータ値を算出しても良いし、上記の情報内に固有パラメータ値が直接含まれても良い。そしてこの固有パラメータ値が所定範囲内に含まれるように車両グループ(車両隊列)を編成する。
S01のステップにおいてユーザが携帯端末312を用いて車両隊列200への参加申し込みを行うと、車両運行管理会社のサーバー318が申し込みを受け付ける。その段階で参加車両の種別/車両名と搭乗人数や積載(搭載)荷物の荷重情報を入手し(S02)、データベース318内のグループ車両の運行管理データ(履歴を含む)322内に保存する。それと並行して車両運行管理会社のサーバー318はインターネット回線316を用いて指定された車両名の駆動特性を調べる。
また搭乗人数や積載(搭載)荷物の荷重情報から車両の総質量を予測する。次に(1)式を利用して、対象車両の追越加速度特性を算出する。S03のステップではその結果を利用して、適合する車両隊列200の種別とランクを予測する。
その後に車両運行管理会社のサーバー318はデータベース318内のグループ車両の運行管理データ322を検索して、車両隊列200毎の運行スケジュールを参照する(S04)。
もし適合する運行予定隊列が無い場合(S05のNo)には配車手配(S06)を行い、適合する運行予定隊列が有る場合(S05のYes)には、ユーザに隊列参加受付完了通知と集合場所/日時の通知(S07)を行う。そして指定した指令車A2に対して隊列参加指定を通知する(S08)。
この指令車A2(内の携帯形グループ車両誘導機320)と該当する従属車A12間の通信を開始すると携帯形グループ車両誘導機320は、従属車A12内のメモリー部450内に保存されている駆動部制御系444の履歴情報を収集(S09)する。そして携帯形グループ車両誘導機320内部で、従属車A12の現状での(荷物または人、動物などの搭載時の)追越加速度を算出し(S10)、現在の車両隊列200と適合するか否かの判定を行う(S11)。そして適合する(S11のYesの)場合には、S16での隊列編成を行う。
上記以外に車両運行管理会社のサーバー310が直接的に従属車A12の固有パラメータ値を収集したい場合には、ターミナル42内の車両の総重量測定部114、118(図3)からのデータを収集しても良い。
もし従属車A12の固有パラメータ値が適合しない(S11のNoの)場合には、ユーザに所属する隊列変更を提案し(S12)、ユーザが変更を承諾すれば(S13のYes)、隊列変更(S14)して、新旧隊列の指令車A2、B4に通知する。
図14は主に連携走行を開始する前までの車両隊列運行方法や車両グループ運行システムを示すのに対し、図15は連携走行開始後の車両グループ300(車両隊列200)の適合性を判定する車両隊列運行方法や車両グループ運行システムを示している。本車両グループ運行システムや車両隊列運行方法で両方を併用する場合のポイントは、以下のように纏めることができる。すなわち1)従属車A12のパラメータ値を検出する第1の手段と第2の手段を有し、2)第1の手段で検出された従属車A12毎のパラメータ値に基付いて、車両運行管理会社のサーバー310が前記従属車A12の車両グループ適合性を判断し、3)第2の手段で検出された従属車A12毎のパラメータ値に基付いて、指令車A2(または携帯形グループ車両誘導機320)が従属車A12の車両グループ適合性を判断し、4)判断の結果不適合と判定された場合には通知を行う。
上記第2の手段での検出に対応する図15の処理フローに付いて説明する。従属車A12に内蔵されている駆動部制御系444は、従属車A12の走行に関係する情報が収集される。一方で積載物/搭乗者の状態管理部430は、従属車A12内の積載物や搭乗者の情報を収集する。
これらの情報を指令車A2(または携帯形グループ車両誘導機320)が収集(S21)して、グループ内全車両が対応隊列に適合するか否かの判定を行う(S22)。これが上記第2の手段の検出結果に基付く車両グループ適合性の判断に相当する。
またそれだけで無く本実施形態システムでは、グループ内全車両での積載物や搭乗者に異常がないか?の判断(S23)も同時に行う。
上記判断結果に基付いて(S22がNoまたはS23がYesの場合)、トラブル発生(または車両グループ非適合発見)車両を車両隊列から離脱させる(S25)。この離脱方法として本実施形態システムでは、A)ターミナル42、44内での離脱 とB)走行中離脱 ⇒ 新たな指令車B4(ナビゲータ)誘導に基付く隊列分離の2種類の対応方法を準備している。
すなわちトラブル発生(車両グループ非適合発見)場所がターミナル42、44の近くの場合(S29のYes)には、上記(A)の対応を行う。一方でS29の判定結果がNoの場合には、隊列分離に必要な新たな指令車B4に相当するナビゲータの出動を要請する(S32)。
本実施形態で使用するフィードフォワード制御方法の説明に先立ち、連携走行可能車両内で行われる前走車間の車間距離と速度差の測定原理を説明する。連携走行可能車両内の前走車両間の車間距離と速度差の測定部424は、前走車両との車間距離測定部と速度差測定部から構成されている。
図16に示す実施例では、音波の反射を利用して(音波の発信/着信間の時間差で)車間距離を測定し、レーザードップラー効果を利用して速度差を測定する。しかしそれに限らず、任意の方法で車間距離と速度差を測定しても良い。すなわち車間距離と速度差の少なくとも一方を例えば、マイクロ波や電波を利用して測定しても良い。
走行中車両から発した音波は、ドップラー効果が発生する事が知られている。しかし本実施形態では音波の往復を利用するため、ドップラー効果の悪影響は相殺される。15℃で1気圧の空気中音速は340m/sと知られている。仮に車間距離80mの前走車で反射して戻ってくるまでの音波の所要時間は471msなので、高い信号帯域は車間距離測定回路に要求されない。
また0℃での音速は332m/sなので、気温変化に起因する車間距離の測定誤差は余り問題とならない。従って車間距離の測定には、音波の使用が適していると考えられる。
図16では音波の指向性を高めるため、スピーカー429−1を出た音波がコーン形音波反射板429−2で反射する形になっている。またマイクロフォン429−3に音波が戻るように、後続車両間の車間距離と速度差測定用反射部428にはコーン形音波反射板426が設けられている。そしてここで音波は2回反射して戻ってくる。
一方で速度差測定部にはレーザードップラー光源/検出部421が設けられている。レーザー光と比べると音波の方が、遥かに指向性が悪い。従って測定時に路面416で反射して測定誤差が発生しないように、速度差測定部よりも上方向418に前走車両との車間距離測定部を配置している。
速度差測定用レーザー光の光路422の先に光反射用ビーズ425を配置し、レーザー光が検出部に戻り易くしている。なおこれらの光反射用ビーズ425は、コーン形音波反射板426とともにビーズと反射板の固定部427内に固定されている。
従属車A12、B14の先行車両との車間距離が適正な値になるよう走行を制御するグループ車両誘導機(または指令車A2)の制御方法(車両隊列内フィードフォワード制御方法)を、図17を用いて説明する。
グループ車両誘導機(または指令車A2)は、従属車A12、B14に対してそれぞれ『所定時間間隔Δt後の前走車両との車間間隔1000』のみを指定する。また各従属車A12、B14は、図16の方法を用いて前走車両間の車間距離と速度差1020をリアルタイムでモニターする。さらに駆動部制御系444からの情報から、路面状態(登り/降りや滑り具合)もリアルタイムでモニターする。それと同時に、前走車の速度変化予定情報1010を後続車に適宜通知する。
まず始めにグループ車両誘導機の誘導の基に、指令車A2の速度変化予定情報1010が決まったと仮定する。この速度変化予定情報1010は、従属車A12に伝えられる。
例えば従属車A12が算出すべき自車両の予定制御速度特性1030と、指令車A2から伝達される前走車両の速度変化予定情報1010との関係を図18に示す。グループ車両誘導機(または指令車A2)から従属車A12に対して伝達された『車間距離と達成までの時間間隔指定情報1000』が、図18に示す時間間隔Δt後の予定制御速度236を指定された場合を考える。
従属車A12は、現在の指令車A2間の車間距離と速度差が分かっている。そして時間間隔Δt後の予定制御速度236は、時間間隔Δt後の前走車両の速度変化予定情報1010に一致させる必要がある。これらの前提条件(境界条件)に現在の路面状態を加味して、現在から時間間隔Δt後に至る最適な“自車両の予定制御速度1030”を統合制御部400内で算出する。上記のフィードフォワード制御を行うことで、短時間で柔軟に高精度な車間距離を確保できる効果がある。
さらに図9で既に説明したように車両隊列200内従属車A12、B14、C16の走行順を任意に設定しても、上記のフィードフォワード制御を利用すると路面状態が変化(登り坂や降り坂への変化、濡れて滑り易い状態、雪道などへの変化)しても適正な車間距離が保たれる。
例えば降り坂や路面が滑り易い状態の場合には、フィードフォワード制御で予め車間距離を広げれば、追突防止が可能となる。一方で追越加速度の小さい後続車と走行中に登り坂に達した場合には、登り坂に入る前に車間距離を事前に詰める。そのようにフィードフォワード制御しておけば、登り坂終了地点での必要以上の車間距離の開きを防止できる。
グループ車両誘導機(または指令車A2)が実施する上記フィードフォワード制御方法を用いた走行誘導の詳細例(すなわち詳細な車両隊列運行方法例)を図19に示す。
隊列走行を開始(S120)すると、S121のステップではグループ車両誘導機(または指令車A2)が各種情報の収集活動を開始する。この収集対象情報としてS122が示すように、車両運行管理会社のサーバー310から走行予定経路に関する情報を入手する。車両運行管理会社のサーバー310が管理するデータベース318内には、幹線環境(気象など)情報履歴データ328が保存されている。この中には登り/降りの坂道情報や、雨天や積雪などのリアルタイムの気象情報が保存されている。またデータベース318内には他にも、幹線内渋滞/事故履歴データ326も保存されている。これらの情報は適宜、遠距離通信中継機314を経由してグループ車両誘導機(または指令車A2)に伝えられる。
また並行してS123に示すように、指令車A2内の駆動部制御系444の情報を解析して、路面の滑り具合や局所的な坂道勾配などの情報を独自に獲得する。
路面状況に拠っては特定の従属車A12、B14、C16のみのタイヤ摩擦係数が劣化して、減速/ブレーキ制動力が悪化するケースが発生する。そのためS124に示すように、車両隊列内全車両に対して駆動部制御系444の情報や車間距離情報を入手する必要がある。
そして路面状態が変化(勾配変化や滑り易さの変化)する前にグループ車両誘導機(または指令車A2)内部で、(指令車A2を含めた)隊列内全車両の最適誘導情報の算出(S125)を行う。
フィードフォワード制御の最初のステップS126では、自車(指令車A2)の速度変化予定情報を後続車両(従属車A12)に送信する。次(S127)に、車両隊列内従属車A12、B14、C16毎に『指定車間距離とその達成までの時間間隔Δt』を通達する。
車間距離が必要以上に空き過ぎると、一般車両が車両隊列内に割り込まれるリスクが大きくなる。従ってフィードフォワード制御では、“必要以上の一般車両の割り込み防止”が非常に重要となる。従って隊列内全車両の車外環境モニター部420(図13)から得る情報を逐次監視して“一般車両の割り込みの兆し”を事前に察知する(S128)。そしてその兆しが有れば(S128のYes)、その車間距離を詰めるように最適誘導情報の算出(S125)をし直す。
単に路面状態変化に応じて車間距離を適正に制御するだけでなく、走行車線上の事故回避のための車線変更制御にも、フィードフォワード制御が利用できる。このフィードフォワード制御を活用して、事故回避や渋滞回避が行える効果がある。
例えば図20のステップS131で、前記の車外環境モニター部420で走行車線上の行先での事故または渋滞を発見した場合を考える。この事故または渋滞情報を必要に応じて(S132)車両運行管理会社のサーバー310に通知して(S133)、幹線内渋滞/事故履歴データ326内に追記してもらう。この追記した事故/渋滞情報は、他の車両グループ300(車両隊列200)が活用できる。
行先が渋滞している場合には、走行速度を減速させるだけで対応可能となる。しかし走行予定走行車線上に事故が有る(S134のYesの)場合には、車両隊列200全体が追越車線に車線変更(S137)する必要がある。従ってグループ車両誘導機(または指令車A2)はステップS135で、車線変更に向けた最適誘導の算出を行う。
車両隊列200全体の車線変更方法として図20の方法では、隊列内最後尾車両のみを車線変更(S136)させた後、残りの全車両を車線変更させる(S137)。この具体的方法については、図27を用いて後述する。そして車両隊列200全体が事故発生現場を通過後(S138のYes)に、元の走行車線に戻る。
複数車両の隊列走行状態を一般車両に通知すると、不用意な事故防止につながると共に、一般車に対する不必要なストレス提供も防げる。一般車両への隊列走行の開示方法として本実施形態では、ステッカなど表示物の物理的掲示(ハード的表示)と表示画面などへのソフト的表示いずれを行っても良い。本実施形態の車両隊列運行における一般車への通知方法例を図21に示す。
一般車両への通知は、隊列編成完了(S40)後に行う。隊列車両表面の一部に外部表示画面が有る場合(S41のYes)には、ソフト的に表示が行える。この場合にはステップ42のように、隊列車両の外部表示画面に“隊列編成中”の表示を行う。さらに“隊列車両数”や該当する隊列車両の“隊列内の走行順”の情報も表示すると、一般車両の対応走行がし易くなる。
一方で外部表示画面が無い場合(S41のNo)には、ハード的な表示が必要となる。この表示例としてステップS43のように、“隊列編成中”を表示するステッカを隊列車両表面に貼っても良い。また隊列走行中(隊列編成中)は、適正表示の確認(S45)を適宜行っても良い。
このようにして行う表示例を図22に示す。“隊列車両数”と“隊列内の走行順”の情報を分数の形で表示しても良い。またこの表示は走行車両の側面(図22(a))だけに限らない。図22(b)のように後部に表示すると、後続の一般車両が理解し易い。
図22(a)では、隊列車両表面の外部表示画面を広告宣伝にも利用する表示例を示している。図22(a)のように隊列車両間で連携した画像(または映像)を表示すると、宣伝効果が向上する。隊列車両間で連携した画像(または映像)として図22(a)の連続映像(連続映像)に限らず、例えばパノラマ画像(またはパノラマ映像)などを表示しても良い。
隊列車両間で連携して表示する具体的方法例を、図23に示す。最初にグループ車両誘導機(または指令車A2)が車両運行管理会社のサーバー310から、広告用画像/映像を一括受信する(S51)。その後にステップ52に示すようにグループ車両誘導機(または指令車A2)が、隊列内車両毎に表示する画像/映像の分割・振り分け方法を決定する。その決定内容に基付いて、広告表示する画像/映像情報を隊列内車両毎に送信する(S53)。
本実施形態では車両固有のパラメータ値が所定範囲内に含まれる複数車両で、車両グループあるいは車両隊列を編成する。その結果例えば、追越加速度が大きな車両グループと小さな車両グループに分かれる場合がある。その場合には幹線(高速道路)50内で、追越加速度が小さな車両隊列を大きな車両隊列が追い越す必要性が起きる。
図24は、ターミナル42、44内で車両隊列間の追い越し方法例を示す。先にターミナル42、44内に入った追越加速度が小さな車両隊列は、通過待ち隊列駐車場142に一時駐車する。この駐車中通過待ち隊列206に対して、追越中走行隊列208(追越加速度が大きな車両隊列)が通路132を通過して車両隊列間の追い越しを行う。
上記のようにターミナル42、44内での隊列駐車を利用せず、走行中に車両隊列間追い越しを行う方法例を図25に示す。この方法のポイントは、◎ 車両隊列間の追越中は、一般車両に対する表示を行う ⇒ 事故回避が行える◎ 追越処理中は、唯一のグループ車両誘導機(または指令車)が誘導する◎ 追越処理中は、一時的に混合隊列を構成する。それにより一般車両間の不用意な接触リスクが低減するとともに、車両隊列間の不用意な接触リスクも低減し、車両隊列間追越中の事故を防げる。
すなわち走行隊列の後方に追越予定隊列が接近(S101)すると、一般車両に対して“車両隊列間の追越中”の表示を開始する(S102)。一時的な混合隊列編成(S105)に合わせて誘導者を単一化するためステップS104では、追越予定隊列(追越中走行隊列208)内の従来の指令車B4を一時的に従属車C16に変更する。またそれと前後して関連する従属車Z26に対し、指令車の変更を通知する(S103)。
車両隊列間の走行順が入れ替わった後に(S111のYes)、一般車両に対する通知(表示)を終了(S114)させて、混合隊列を複数の隊列に分離する(S115)。
なお図25の実施例ではステップS105、S109が示すように、混合隊列内の先頭車両を指令車A2、B4に設定する。しかしそれに限らず、任意のタイミングで適正に指令車A2、B4の切り替えを行っても良い。
図25で説明した車両隊列間追越処理の具体的一例を図26に示す。追越中走行隊列208を構成する隊列車両4、28は同時に追越処理はしない。、先行する1台4の追越処理が完全に終了した後に、後続車両28が追越処理を開始する。
図25で説明した車両隊列間追越処理の他の実施例を図27に示す。図27(a)のように先行する走行隊列504に、後方から追越中走行隊列508が接近する。両走行隊列(車両隊列)504、508が所定以上に接近すると図27(b)のように、一時的に混合隊列510が編成される。そして混合隊列510内の全車両は、指令車B4が誘導する。この混合隊列510編成に伴って従来の指令車A2が一時的に従属車D18に変更される。またこの変更に先立ち、従属車A12とB14に対して『指令車A2の変更』が通知される。
図27(b)では混合隊列510を構成する全車両が、走行車線502上を走行している。そして車両隊列間追越処理開始時には図27(c)のように、最後尾の従属車B14が車線変更して追越車線506に入る。
この時の指令車B(またはグループ車両誘導機)から従属車B14に対しては、『追越車線506への車線変更』の指示しか出さない。この指示を受けると、従属車B14に装備された車外環境モニター部420(図13)を使って追越車線506の状況を観察し、適正なタイミングで自主的に車線変更を実施する。
通常の連携走行中は従属車B14は、『所定時間間隔Δt後の前走車両との車間間隔1000』が指示される。しかしこの場合には指令車B(またはグループ車両誘導機)から、『走行速度』の指示が与えられる。
(追越車線506にも関わらず)従属車B14が低速走行すると、前走する一般車両との車間距離が大きく開く。その隙間を利用して、従属車A12と従属車D18が順次追越車線506へ移動する。
図26の方法では車両隊列間追越処理時に、一般車両と接触するリスクが有る。それに比べて図27の方法では車両隊列間追越処理時に一般車両と接触するリスクが低いため、車両隊列間追越処理時の接触事故を回避し易い効果がある。
車両隊列間追越処理に限らず、他の状態で図27の方法を使用しても良い。例えばターミナル42、44から車両隊列200が走行車線102、104に移る時に、この方法を使用してもよい。ここで車両隊列200の構成車両数が多い場合には、少数車両ずつ(例えば3、4台ずつなど)に分けて走行車線102、104に移ってもよい。
例えば走行車線504と追越車線506の2車線のみから幹線(高速道路)50が構成された場所で上記処理を実施すると、一時的に混合隊列510が幹線(高速道路)50の一部を占有する事になる。この場合には図28(b)のように車両隊列間追越処理中の状況を一般車両に通知すると、一般車両の運転手のストレスが低減されて事故発生原因が緩和される。
上記方法の他の応用例を図29に示す。走行車線504を全車両が指定された速度で走行すれば円滑な走行が確保できるにも関わらず、特定車両が必要以上の高速走行をするために渋滞が発生する現象が知られている。車両運行管理会社への幹線(高速道路)50の管理会社(例えばNEXCO)からの依頼に応じて、特定の車両隊列(混合隊列510)に指定速度で走行させると、幹線(高速道路)50内全車両の円滑な走行が確保できる。この場合に図29(b)のような表示を行えば、一般車両の協力が得易くなる。
車両運行管理会社のサーバー310内では、(例えばインターネットを用いた)予約の一般受付(図4のS200)に基付いて車両グループ編成(S203)が行われる。ところで季節や曜日、日時により、予約頻度が大きく変動する。
予約頻度の大幅変動に柔軟かつ迅速に対応するため、車両運行管理会社のサーバー310内では過去の運行履歴データを利用して車両グループ編成を行っても良い。車両運行管理会社のサーバー310が管理するデータベース318内に保存されているグループ車両の運行管理データ(履歴を含む)322内容の一例を図30に示す。
このグループ車両の運行管理データ(履歴を含む)322内には、過去に蓄積したグループ車両の運行履歴データ350が保存されている。グループ車両の運行履歴データ350内では一日の時間帯をそれぞれ、a、b、c、d、e、‥と分割する。またターミナルA42とB44の間に存在するインターチェンジの配置場所に応じて、地点C46、D47、E48が定義される。そして時間帯毎に各地点間(例えばC−D間54)を通過した車両隊列数の履歴が棒グラフで表示されている。
予約頻度は季節や曜日により変動するので、それぞれ季節や曜日毎に分かれてグラフ化されている。ここで(追越加速度や総重量などの)車両固有のパラメータ値が所定範囲内に含まれる車両隊列毎に“グループ種別”を分類している。
このデータを用いて車両運行管理会社のサーバー310が予約頻度を予想する方法例を説明する。例えばE−B間58の時間帯aとbでの予約数が極端に低かったとする。しかしグループ車両の運行履歴データ350では、時間帯cで発生頻度238が急激に増加する傾向を示している。従って車両運行管理会社のサーバー310はこの需要予測を利用して、早めの配車手配を行うことができる。
また上記のグループ車両の運行履歴データ350に限らず、グループ車両の運行管理データ(履歴含む)322内には図31に示す各種データが保存されている。
本実施形態で示す輸送サービスでは、グループ種別、季節、曜日、時間帯およびサービス形態に応じて料金が異なる。従って(例えばインターネットを用いた)予約受付時に車両運行管理会社のサーバー310は、グループ種別、季節、曜日、時間帯およびサービス形態別料金表340を参照して、料金回答または料金請求を行う。
図31内のグループ車両のリアルタイム運行管理データ360は、ユーザ予約に応じて適宜対応変更される輸送サービスの運行計画に関係した車両グループ編成データ361と運行状況の監視結果を示す車両グループ毎のリアルタイム運行状況データ366が含まれる。
また上記の車両グループ編成データ361内に車両グループ毎の予約状況管理データ362と、現時点での車両グループ編成外の既存設定車両グループに属さない予約データ363が含まれる。
そして上記の車両グループ毎のリアルタイム運行状況データ366は、車両グループ内車両毎の所在地管理データ367や車両隊列毎の到着予定時刻データ368、ワーニングデータに相当する予定時刻への到着が遅れそうな車両隊列抽出データ369、他の警告情報370などから構成されている。
本実施形態システムで使用される連携走行可能車両では図32が示すように、通常運転手が運転するマニュアル運転モード480と完全自動運転モード485、被誘導モード490が定義される。
この中で例えばグループ車両誘導機(あるいは指令車A2)から誘導される場合には、移動体誘導492が該当する。一方で例えば車両運行管理会社のサーバー310などの固定体から誘導される場合は、固定体誘導496に該当する。また例えば『携帯端末312を用いて扉のロックを制御する』などの処理の場合には、携帯端末誘導494に相当する。
本実施形態では例えば、『車両外の車の持ち主が携帯端末312を使って車両隊列に自動編成させる』などの処理が行える。この場合には予め携帯端末誘導494に設定しておき、移動体切替498の経路を経て移動体誘導492に切り替わっても良い。
図33は、本実施形態システムにおける車両隊列200、201間の合流方法を示す。一方の車両隊列201が他方の車両隊列200の前方または後方に編成されて合流する。
この時の処理フローを図34に示す。ステップS60で隊列合流要求を受けると、合流対象となる車両隊列毎の駆動部制御系444の履歴情報を入手する(S61)。そしてこの情報から対象車両の(追越加速度や総重量などの)パラメータ値を算出し、隊列合流が可否の判定を行う(S62)。
隊列合流方法として近くにターミナル42、44が有れば(S65のYes)、ターミナル42、44内での隊列合流(S67)を行う。一方で近くにターミナル42、44が無ければ(S65のNo)、ステップS69以降の走行中の合流処理を行う。
ターミナル42、44を利用して車両隊列内の走行順を変更する方法例を、図35に示す。走行順を変更したい車両(従属車A12)を隊列順変更用スペース122に一旦対比させて、走行順を変更する。
一方で図36に示すように、走行中に走行順を変更しても良い。この場合には所定車両間(指令車A2と従属車A12間)の車間距離を開け、そこに対象車両(従属車A12)を入れる。
隊列分離は図37に示すように、前後2分割しても良い。図37はターミナル42、44を利用した隊列分離方法例を、図38は走行中の隊列分離方法例を示している。
本実施形態における車両隊列運行方法では、隊列走行中の従属車A12は移動体誘導492での被誘導モード490に設定されている。従って被誘導モード490期間内は、運連手不在が許容される。
この従属車A12における運転手の乗り降りタイミングと設定モードとの関係を図39に示す。マニュアル運転モード期間602、604中は運転手の乗車が必須となる。従って運転手乗車期間632、636、638は、マニュアル運転モード期間602、604をカバーする(マニュアル運転モード期間602、604より広い)。
運転手の降車時644に携帯端末312を使って扉のロックを掛けた時点では、携帯端末誘導期間612となる。その後で携帯端末312を使用して車両グループ300内に編入した時点で、移動体誘導期間616に切り替わる。そして車両グループ300内での輸送サービスが終了すると、携帯端末誘導期間614に戻る。
ここで重要な事は、『被誘導モード期間610中に運転手が降車644』する必要がある。これにより、スムーズな輸送サービスが開始できる効果がある。一方で図39が示すように、運転手の乗車タイミング646、648は被誘導モード期間610が終了するタイミングに前後しても良い。
幹線(高速道路)50の経路途中に設置されたターミナル42周辺地図の例を図40に示す。一般道706、708からインターチェンジへ向かう分岐点722、724が存在し、インターチェンジ712、714を経て高速道路702、704に入る。
一般道706からインターチェンジ712を経て高速道路の上り線702からターミナル42に入る車両A752と、ターミナル42を出て高速道路の下り線704から一般道708に入る車両B754とを重ねて表示した運行カーブを図41に示す。
ターミナル42に入る前の車両A752は、運転手がマニュアル運転モード480で直接運転した。そしてターミナル42で被誘導モード490に切り替わった後に、運転手が降車する。その後にターミナル42で降車した運転手は、車両B754に乗り換えて集中集荷場736に戻る。
一方で図42に示す運行カーブでは車両Aの運行カーブ752と車両Cの運行カーブ756がほぼ同じ経路をたどるにも関わらず、運転手は異なる経路を通る。図41の例では、運転手はターミナル42で車両A752から下車した。一方で図42の例では、車両Cが一般道706からインターチェンジへ向かう分岐点722で車両C756から下車した。そしてその下車地点の近くに設置されたバス停732で路線バス758を利用して集中集荷場736に戻った。
本実施の車両グループ運行システムでは、運転手の拘束時間が短いほど人件費が削減できる。従って図42の例で示すように、隊列車両だけでなくバスやタクシーなどの一般車両も併用することで運転手の拘束時間が短くなり、人件費を削減できる効果が生まれる。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。