JP6801207B2 - 継目無鋼管の外削加工方法 - Google Patents
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本実施形態による継目無鋼管の外削加工方法は、基材を準備する工程と、外削加工する工程とを備える。
準備工程では、基材を準備する。基材は、17Cr鋼である。以下に、17Cr鋼の化学組成及び組織の一例を説明する。
基材である17Cr鋼は、クロム(Cr)を16.0〜18.0%含有する。17Cr鋼の組織は、マルテンサイト相、フェライト相及び残留オーステナイト相を含む。化学組成について「%」とは、「質量%」を意味する。
Cr:16.0〜18.0%
クロム(Cr)は、基材の焼入れ性を高め、基材の強度を高める。Crはさらに、基材の耐食性、特に耐SSC性を高める。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、基材の熱間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は16.0〜18.0%である。Cr含有量の好ましい下限は16.5%である。Cr含有量の好ましい上限は17.5%である。
炭素(C)は、オーステナイト相を安定化させる。Cはさらに、固溶強化により基材の強度を高める。しかしながら、基材のC含有量が高すぎれば、炭化物が過剰に析出し、基材の耐食性が低下する。したがって、C含有量は0.03%以下であることが好ましい。脱炭コストを考慮すると好ましいC含有量の下限は0.004%である。より好ましいC含有量の上限は0.01%である。
シリコン(Si)は、基材を脱酸する。Siはさらに、基材の強度を高める。一方、Si含有量が高すぎれば、基材のSCC(=Stress Corrosion Cracking:応力腐食割れ)耐性及び熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は、0.50%以下であることが好ましい。好ましいSi含有量の下限は、0.15%である。より好ましいSi含有量の上限は、0.35%である。
マンガン(Mn)は基材を脱酸する。Mnはさらに、基材の強度を高める。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、Mnは、燐(P)及び硫黄(S)等の不純物元素とともに、粒界に偏析する。この場合、基材の耐SSC性及び靱性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.50%以下であることが好ましい。より好ましいMn含有量の上限は、0.50%である。好ましいMn含有量の下限は、0.10%である。
銅(Cu)は、基材の強度を高める。Cuはさらに、基材の耐SSC性を高める。Cu含有量が低ければ、これらの効果が得られない。一方、Cu含有量が高すぎれば、基材の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は2.0〜3.0%であることが好ましい。より好ましいCu含有量の下限は、2.4%である。より好ましいCu含有量の上限は、2.6%である。
ニッケル(Ni)は、基材の耐食性を高める。一方、Ni含有量が高すぎれば、生産コストが高くなる。したがって、Ni含有量は4.0〜5.5%であることが好ましい。
より好ましいNi含有量の下限は、4.5%である。より好ましいNi含有量の上限は、5.0%である。
モリブデン(Mo)は、基材の強度及び耐食性を高める。Mo含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、基材の熱間加工性が低下する。Mo含有量が高すぎればさらに、不要なコスト上昇を招く。したがって、Mo含有量は2.0〜3.0%であることが好ましい。より好ましいMo含有量の下限は、2.3%である。より好ましいMo含有量の上限は、2.7%である。
バナジウム(V)は、選択元素である。Vは炭素及び窒素と結合して炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成する。これらの炭化物、窒化物及び炭窒化物は、基材を析出強化する。Vはさらに、基材の耐SSC性を高める。しかしながら、V含有量が高すぎれば、基材の靱性が低下する。したがって、V含有量は0〜0.1%であることが好ましい。含有する場合の好ましいV含有量の下限は、0.05%である。含有する場合の好ましいV含有量の上限は0.07%である。
タングステン(W)は選択元素である。Wは、高温環境における耐SCC性を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。一方、Wの含有量が2.0%を超えるとフェライト分率が過剰になりやすく、高い強度が得られないおそれがある。したがって、W含有量は0〜2.0%であることが好ましい。含有する場合の好ましいW含有量の下限は、0.05%である。より好ましいW含有量の上限は、1.0%である。
基材である17Cr鋼の組織は、上述の通り、マルテンサイト相、フェライト相及び残留オーステナイト相を含有する。好ましくは、体積分率で、フェライト相が30〜40%、残留オーステナイト相が4%以下(0%を含まない)であり、残部がマルテンサイト相からなる組織を有する。この場合、基材の降伏強度が高まる。
上述の化学組成を有する基材を周知の方法で製造する。基材は、継目無鋼管である。基材の製造方法は特に限定されない。たとえば、上述の化学組成を有する溶湯を製造する。続いて、連続鋳造により鋳片(ブルーム)を製造し、得られた鋳片を分塊圧延してビレットにする。ビレットに対して、マンネスマン−マンドレルミル法を用いて穿孔圧延及び延伸圧延する。溶湯を製造した後、造塊法によりインゴットを製造してもよい。マンネスマン−マンドレルミル法に代えて、熱間押出し法により基材を製造してもよい。
外削加工工程では、上述の製造方法により得られた基材に対して、切削工具を用いて外削加工を実施する。外削加工は、コンピュータで切削速度、切込量及び送り量等が制御できるCNC旋盤装置を用いて行うことができる。図4は、外削加工工程の一例を示す図である。図4を参照して、基材1は、基材1の軸周り方向Xに回転する。切削工具2は固定され、基材1の表面に押し当てられる。基材1を回転させながら、切削工具2を基材1の軸方向Yに進めることによって外削加工を行う。外削加工は、基材1を固定し、切削工具2を回転させることによっても実施できる。外削加工工程は、1回の切削パスで完了してもよいし、複数の切削パスを含んでもよい。
切削工具2は、切削加工用の矩形状の工具刃先バイトである。切削工具2は、周知の超硬合金を含む。超硬合金は、タングステンカーバイド(WC)を主成分とし、焼結助剤としてコバルト(Co)を含有する。超硬合金はWC、Coの他に、チタンカーバイド(TiC)及びタンタルカーバイド(TaC)等を含有してもよい。切削工具2の最表層には、硬質保護膜が形成される。硬質保護膜は、チタン(Ti)の窒化物を含む。硬質保護膜の厚さは、最大5μmである。切削工具2の形状は、特に限定されない。切削工具2の形状はたとえば、図4に示す直方体であってもよい。切削工具2のすくい面の形状は図4に示す矩形状の他に、矩形状以外の他の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
切削工具2と基材1との接触面積をS(mm2)とする。接触面積Sは切削工具2のすくい面の形状及び切込量(すくい面が基材1に食い込む深さ)から求めた、切削工具2と基材1とが接するすくい面における面積である。図5は、切削工具2の角部3の拡大図である。図5を参照して、切削工具2が直方体の場合、接触面積Sは、切込量aと、切込量aを高さとした場合の二等辺三角形4の面積と定義する。
切削速度は、接触面積Sに応じて適切な値に設定される。接触面積Sが0.01<S≦0.25mm2の場合、切削速度は80〜500m/分である。接触面積Sが0.25<S≦1.0mm2の場合、切削速度は80〜400m/分である。接触面積Sが1.0<S≦2.5mm2の場合、切削速度は80〜300m/分である。接触面積Sが2.5<S≦4.0mm2の場合、切削速度は80〜200m/分である。基材1は、17Cr鋼であるため、切削速度を速くしても切削抵抗が小さく、切削工具2の摩耗が少ない。そのため、切削速度を速くすることで、切削工具2の摩耗を抑制しつつ、生産効率を改善できる。
外削加工は、複数回の切削パスによって行われる場合がある。切削パス数、それぞれの切削パスにおける切込量及び回転数の設定はコンピュータプログラムへの入力で行われる。コンピュータ制御器には、たとえば、ファナック社製制御器(型番;FANUC Series Oi−TC)などが使用される。切込量及び回転数は、実施する外削加工の種類及び目的等に応じて適宜設定される。
2種類の基材(13Cr鋼及び17Cr鋼)を準備した。初めに、表1に示す化学組成を有する溶銑を製造した。溶銑から、連続鋳造によりブルームを製造し、得られたブルームを分塊圧延してビレットを製造した。ビレットに対して、マンネスマン−マンドレルミル法を用いて穿孔圧延及び延伸圧延を実施した。得られた基材に対して焼入れ及び焼戻しを実施し、継目無鋼管を得た。継目無鋼管は、外径100mm、肉厚15mm、長さ300mmの鋼管であった。
各継目無鋼管のビッカース硬さをJIS Z2244(2009)に基づいて実施した。試験荷重は2.94N(0.3kgf)とした。13Cr鋼のビッカース硬さは239
Hv0.3以上であった。17Cr鋼のビッカース硬さは345Hv0.3以上であった。
製造した鋼管に対して、被削鋼材回転式の旋盤装置を用いて外削加工を施した。被削鋼材回転式の旋盤装置は、CNC旋盤装置を使用した。具体的には、基材を旋盤装置に圧着し、切削工具を切削ホルダーと呼ばれる治具に装着した。切削工具は、WC及びCoからなる超硬合金の最表層に、Ti窒化物を含む硬質保護層を備えた。
接触面積及び切削速度を変化させて外削加工を実施し、外削加工後の切削工具の摩耗状態を観察した。切削工具の送り量は0.1mm/回転であった。切削工具と基材との接触域に水溶性切削油の希釈液を常圧にて噴射した。外削加工後の切削工具表面を、光学顕微鏡を用いて観察した。表3中、「○」は切削工具表面の硬質保護膜に剥離やクラックが発生しなかったことを意味する。「△」は硬質保護膜の剥離までは至っていないが、一部にクラックの発生が認められたことを意味する。「×」は硬質保護膜の一部が剥離し下地が見えたことを意味する。
17Cr鋼を用いて、接触面積Sに応じて適切に切削速度を設定した場合、切削工具の摩耗が抑制された。具体的には、接触面積Sが0.01<S≦0.25mm2の場合、切削速度は80〜500m/分において切削工具の摩耗が抑制された。同様に、接触面積Sが0.25<S≦1.0mm2では切削速度が80〜400m/分において摩耗が抑制され、接触面積Sが1.0<S≦2.5mm2では切削速度が80〜300m/分において摩耗が抑制され、接触面積Sが2.5<S≦4.0mm2では切削速度が80〜200m/分において摩耗が抑制された。17Cr鋼は、13Cr鋼よりもビッカース硬さが高かった。それにも関わらず、17Cr鋼を用いた場合には切削工具の摩耗が抑制された。
2 切削工具
Claims (1)
- 継目無鋼管の外削加工方法であって、
質量%で、Cr:16.0〜18.0%、Ni:4.0〜5.5%を含有し、マルテンサイト相、フェライト相及び残留オーステナイト相を含む組織を有する基材を準備する工程と、
ねじ切削加工を除く、切削工具を用いて前記基材の外表面を切削加工し所望の表面性状及び寸法にする加工である外削加工する工程とを備え、
前記外削加工する工程において、前記切削工具と前記基材との接触面積(mm2)をSとした時に次の切削速度で外削加工する、継目無鋼管の外削加工方法。
0.01<S≦0.25mm2の場合、切削速度は80〜500m/分、
0.25<S≦1.0mm2の場合、切削速度は80〜400m/分、
1.0<S≦2.5mm2の場合、切削速度は80〜300m/分、及び、
2.5<S≦4.0mm2の場合、切削速度は80〜200m/分。
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