≪本発明の難燃照明カバー≫
本発明の難燃照明カバーは、照明カバーとして用い得る形状であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な形状を採用し得る。
本発明の難燃照明カバーは、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の行う鉄道車両用材料燃焼試験において、着火および炭化のいずれも無しの結果を与える。社団法人日本鉄道車両機械技術協会の行う鉄道車両用材料燃焼試験については、後に詳述する。本発明の難燃照明カバーは、上記鉄道車両用材料燃焼試験において、着火および炭化のいずれも無しの結果を与えることにより、優れた非着火性および優れた非炭化性を発現でき、優れた難燃性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の行う鉄道車両用材料燃焼試験において、好ましくは、貫通および溶融滴下のいずれも無しの結果を与える。社団法人日本鉄道車両機械技術協会の行う鉄道車両用材料燃焼試験については、前述と同様、後に詳述する。本発明の難燃照明カバーは、上記鉄道車両用材料燃焼試験において、貫通および溶融滴下のいずれも無しの結果を与えることにより、より優れた難燃性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の行うコーンカロリーメーター試験において、好ましくは、10分間当たりの総発熱量が30MJ/m2未満、最大発熱速度が300kW/m2以未満、着火時間が60秒以上である。社団法人日本鉄道車両機械技術協会の行うコーンカロリーメーター試験については、後に詳述する。本発明の難燃照明カバーは、上記コーンカロリーメーター試験において、10分間当たりの総発熱量が30MJ/m2未満、最大発熱速度が300kW/m2未満、着火時間が60秒以上という結果を与えることにより、本発明の難燃照明カバーは、より優れた難燃性を有する照明カバーとなり得る。
上記コーンカロリーメーター試験において、10分間当たりの総発熱量は、好ましくは30MJ/m2未満であり、より好ましくは25MJ/m2以下であり、さらに好ましくは20MJ/m2以下であり、特に好ましくは15MJ/m2以下であり、最も好ましくは10MJ/m2以下である。上記総発熱量の下限値は、好ましくは0MJ/m2である。上記総発熱量が上記好ましい範囲内に収まれば、本発明の難燃照明カバーは、より優れた難燃性を有する照明カバーとなり得る。
上記コーンカロリーメーター試験において、最大発熱速度は、好ましくは300kW/m2未満であり、より好ましくは250kW/m2以下であり、さらに好ましくは200kW/m2以下であり、特に好ましくは150kW/m2以下であり、最も好ましくは100kW/m2以下である。上記最大発熱速度の下限値は、好ましくは0kW/m2である。上記最大発熱速度が上記好ましい範囲内に収まれば、本発明の難燃照明カバーは、より優れた難燃性を有する照明カバーとなり得る。
上記コーンカロリーメーター試験において、着火時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは80秒以上であり、さらに好ましくは100秒以上であり、特に好ましくは120秒以上であり、最も好ましくは140秒以上である。上記着火時間の上限値は、好ましくは無限大である。上記着火時間が上記好ましい範囲内に収まれば、本発明の難燃照明カバーは、より優れた難燃性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、全光線透過率が、好ましくは40%以上であり、より好ましくは42%以上であり、さらに好ましくは45%以上であり、特に好ましくは47%以上であり、最も好ましくは50%以上である。上記全光線透過率の上限値は、好ましくは100%である。上記全光線透過率の測定方法については、後に詳述する。上記全光線透過率が上記好ましい範囲内に収まれば、本発明の難燃照明カバーは、優れた光拡散性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、ヘイズ値が、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上であり、最も好ましくは98%以上である。上記ヘイズ値の上限値は、好ましくは100%である。上記ヘイズ値の測定方法については、後に詳述する。上記ヘイズ値が上記好ましい範囲内に収まれば、本発明の難燃照明カバーは、優れた光拡散性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、好ましくは、電気ドリルを用いたドリル加工によってφ5mmの穴が該穴周辺に亀裂および変形が生じることなく開く。電気ドリルを用いたドリル加工によってφ5mmの穴を開ける方法(ドリル加工性の評価)については、後に詳述する。本発明の難燃照明カバーは、電気ドリルを用いたドリル加工によってφ5mmの穴が該穴周辺に亀裂および変形が生じることなく開くことによって、優れた加工性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、好ましくは、熱プレス加工および/または熱曲げ加工が可能である。熱プレス加工および熱曲げ加工の方法については、後に詳述する。本発明の難燃照明カバーは、熱プレス加工および/または熱曲げ加工が可能であることによって、優れた加工性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、好ましくは、圧空成型および/または真空成型が可能である。圧空成型および真空成型の方法については、後に詳述する。本発明の難燃照明カバーは、圧空成型および/または真空成型が可能であることによって、優れた成型性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、好ましくは、高さ50cmから510g荷重の鋼球を落下させる落球試験において割れが発生しない。上記落球試験については、後に詳述する。本発明の難燃照明カバーは、高さ50cmから510g荷重の鋼球を落下させる落球試験において割れが発生しないことによって、優れた耐衝撃性を有する照明カバーとなり得る。
本発明の難燃照明カバーは、該難燃照明カバー中に含まれる無機物の含有割合が50重量%未満であり、好ましくは48重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下であり、さらに好ましくは43重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下であり、最も好ましくは37重量%以下である。上記無機物の含有割合の下限値は、好ましくは30重量%である。本発明の難燃照明カバー中に含まれる無機物の含有割合が上記範囲内に収まれば、本発明の難燃照明カバーは、優れた非着火性および優れた非炭化性を兼ね備える照明カバーとなり得るとともに、好ましくは、優れた光拡散性、優れた加工性、優れた成型性、優れた耐衝撃性をさらに兼ね備える照明カバーとなり得る。
上記無機物としては、例えば、無機系難燃剤(A)、無機フィラー(B)、無機酸化物粒子(C)、無機粒子(D)などが挙げられる。無機物は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
無機系難燃剤(A)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;ホウ素系化合物;リン系化合物;アンチモン系化合物;硫黄系難燃剤;などが挙げられる。
無機フィラー(B)としては、例えば、ガラス繊維などが挙げられる。
無機酸化物粒子(C)としては、例えば、シリカ(SiO2あるいはSiO)、アルミナ(Al2O3)、ガラスフリット、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、ジルコニア(ZrO2)などが挙げられ、好ましくは、コロイド状の無機酸化物粒子である。コロイド状の無機酸化物粒子としては、例えば、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)、コロイド状アルミナ(アルミナゾル)、コロイド状酸化スズ(酸化スズ水分散体)などが挙げられる。
無機粒子(D)としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、水酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、酸化スズ粒子、ジルコニア粒子、粘土鉱物(タルク、ゼオライト等)の粒子、ガラスフリットなどが挙げられる。
本発明の難燃照明カバーは、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の行う鉄道車両用材料燃焼試験において、着火および炭化のいずれも無しの結果を与える、難燃照明カバーであって、該難燃照明カバー中に含まれる無機物の含有割合が50重量%未満であれば、その構成や組成については、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な構成や組成を採用し得る。
≪本発明の難燃照明カバーの実施形態の一つ≫
本発明の難燃照明カバーは、好ましくは、無機化合物を含有するプラスチック系基材(無機化合物含有プラスチック系基材と称することがある)の少なくとも一方の面側に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物から形成された被膜(無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜と称することがある)を有する。なお、被膜は被覆層であり得る。
図1は本発明の難燃照明カバーの一例を示す概略断面図である。この例では、難燃照明カバー3は、無機化合物含有プラスチック系基材1の片面側に、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2を有している。なお、無機化合物含有プラスチック系基材1の両面側に無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2を有していても良い。
図2は本発明の難燃照明カバーの別の一例を示す概略断面図である。この例では、難燃照明カバー3は、無機化合物含有プラスチック系基材1の片面側に、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2を有し、無機化合物含有プラスチック系基材1と無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2の間に、他の基材5を有している。なお、無機化合物含有プラスチック系基材1の両面側に無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2や他の基材5を有していても良い。
本発明の難燃照明カバーにおいては、例えば、無機化合物含有プラスチック系基材1と無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2の間、無機化合物含有プラスチック系基材1と他の基材5の間、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2と他の基材5の間など、任意の適切な箇所に、本発明の効果を損なわない範囲で、後述するような、プライマー層(易接着層)、光拡散層、反射防止層、紫外線吸収層、遮熱層、断熱層、接着層などが配置されていても良い。
また、本発明の難燃照明カバーは、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2の表面に、後述するような保護層(例えば、紫外線硬化系ハードコート層、熱硬化系ハードコート層、および有機無機ハイブリッド系ハードコート層からなる群より選択される少なくとも1つ)を有していても良い。
本発明の難燃照明カバーの厚みは、用途に応じて任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、上限は、好ましくは6000μmであり、より好ましくは5000μmであり、さらに好ましくは4000μmであり、特に好ましくは3000μmであり、下限は、好ましくは50μmであり、より好ましくは90μmであり、さらに好ましくは120μmであり、特に好ましくは170μmである。
本発明の難燃照明カバーは、難燃性に優れているため、鉄道車両、航空機、自動車、船舶、エレベーター、エスカレーターなどの輸送機の照明カバーとして好適に利用できる。
<無機化合物含有プラスチック系基材>
無機化合物含有プラスチック系基材は、無機化合物を含有するプラスチック系基材である。無機化合物含有プラスチック系基材は、シート状または板状であることが好ましい。なお、無機化合物含有プラスチック系基材は、曲面を有していても良い。すなわち、本明細書において、「シート状」という場合は、平らなシート状のみならず3次元の曲面を有するシート状も意味し、「板状」という場合は、平らな板状のみならず3次元の曲面を有する板状も意味する。なお、粘着剤や接着剤からなる層状物は、本発明における無機化合物含有プラスチック系基材には含まれないものとする。
無機化合物含有プラスチック系基材としては、例えば、無機化合物を含有するプラスチックのシート(平らなシートのみならず3次元の曲面を有するシートも意味する)や板状物(平らな板状物のみならず3次元の曲面を有する板状物も意味する)などの無機化合物含有プラスチック系基材(無機化合物含有プラスチック系基材を少なくとも含む積層体を含む)が挙げられる。このような無機化合物含有プラスチック系基材におけるプラスチック素材としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマーとするオレフィン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂;アクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリアリレート(PAR);ポリサルフォン(PSF);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;環状ポリオレフィン;ポリアセタール(POM);ポリフェニレンエーテル(変性ポリフェニレンエーテルを含む);などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。これらの素材は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
上記の中でも、プラスチック素材としては、難燃性に特に優れる点から、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。プラスチック素材としてポリカーボネート樹脂を用いることにより、本発明の効果がより一層効果的に発現し得る。
無機化合物含有プラスチック系基材は、無機化合物を含有する。無機化合物含有プラスチック系基材が無機化合物を含有することにより、無機化合物含有プラスチック系基材の難燃性および強度が向上し得る。このような無機化合物としては、例えば、無機系難燃剤(A)、無機フィラー(B)などが挙げられる。無機系難燃剤(A)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;ホウ素系化合物;リン系化合物;アンチモン系化合物;硫黄系難燃剤;等が挙げられる。本発明の効果がより一層効果的に発現し得る点で、このような無機化合物としては、好ましくは無機フィラー(B)であり、より好ましくはガラス繊維である。このような無機化合物は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
以上の点から、本発明の効果が特に一層効果的に発現し得る点で、無機化合物含有プラスチック系基材としては、無機化合物を含有するプラスチック系基材であって、無機化合物がガラス繊維であり、プラスチック系基材がポリカーボネート樹脂を含むことが特に好ましい。すなわち、無機化合物含有プラスチック系基材は、無機化合物とプラスチック素材を含み、無機化合物がガラス繊維であり、プラスチック素材がポリカーボネート樹脂を含むことが特に好ましい。
無機化合物含有プラスチック系基材中の無機化合物の含有割合は、好ましくは0.1重量%〜50重量%であり、より好ましくは1重量%〜45重量%であり、さらに好ましくは3重量%〜40重量%であり、特に好ましくは5重量%〜35重量%である。無機化合物含有プラスチック系基材中の無機化合物の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の難燃照明カバーは、本発明の効果をより一層効果的に発現し得る。
無機化合物含有プラスチック系基材中のプラスチック素材の含有割合は、好ましくは50重量%〜99.9重量%であり、より好ましくは55重量%〜99重量%であり、さらに好ましくは60重量%〜97重量%であり、特に好ましくは65重量%〜95重量%である。無機化合物含有プラスチック系基材中のプラスチック素材の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の難燃照明カバーは、本発明の効果をより一層効果的に発現し得る。
プラスチック素材中のポリカーボネート樹脂の含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量%〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。プラスチック素材中のポリカーボネート樹脂の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の難燃照明カバーは、本発明の効果をより一層効果的に発現し得る。
無機化合物含有プラスチック系基材は、任意の適切な他の難燃化処理が施されていても良い。このような難燃化処理としては、例えば、有機系難燃剤の添加が挙げられる。このような有機系難燃剤としては、例えば、フッ素系化合物、塩素系化合物、臭素系化合物、リン系化合物、シリコーン系化合物、硫黄系難燃剤等が挙げられる。このような有機系難燃剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
なお、無機化合物含有プラスチック系基材の両面のうち、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜を形成する側の表面は、密着性の点から、剥離処理が施されていないことが好ましい。
無機化合物含有プラスチック系基材の厚みとしては、用途等に応じて適宜選択できるが、上限は、通常5000μmであり、好ましくは4000μmであり、さらに好ましくは3000μmであり、下限は、好ましくは45μmであり、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは100μmであり、特に好ましくは150μmである。
<他の基材>
他の基材は、シート状または板状であることが好ましい。なお、他の基材は、曲面を有していても良い。すなわち、本明細書において、「シート状」という場合は、平らなシート状のみならず3次元の曲面を有するシート状も意味し、「板状」という場合は、平らな板状のみならず3次元の曲面を有する板状も意味する。なお、粘着剤や接着剤からなる層状物は、本発明における他の基材には含まれないものとする。
本発明の難燃照明カバーは、他の基材を有することにより、より優れた強度を発現することができる。照明カバーにとって、高い強度を有することは非常に有効であるため、優れた強度を発現できることは好ましい。
他の基材としては、例えば、プラスチックのシート(平らなシートのみならず3次元の曲面を有するシートも意味する)や板状物(平らな板状物のみならず3次元の曲面を有する板状物も意味する)などのプラスチック系基材(プラスチック系基材を少なくとも含む積層体を含む)が挙げられる。このようなプラスチック系基材におけるプラスチック素材としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマーとするオレフィン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂;アクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリアリレート(PAR);ポリサルフォン(PSF);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;環状ポリオレフィン;ポリアセタール(POM);ポリフェニレンエーテル(変性ポリフェニレンエーテルを含む);などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。これらの素材は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
上記の中でも、プラスチック素材としては、本発明の効果が特に一層効果的に発現し得る点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。
無機化合物含有プラスチック系基材と無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜との密着性を向上させるため、無機化合物含有プラスチック系基材および無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜の双方に直接接するプライマー層をさらに設けても良い。また、他の基材と無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜との密着性を向上させるため、他の基材および無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜の双方に直接接するプライマー層をさらに設けても良い。さらに、無機化合物含有プラスチック系基材と他の基材との密着性を向上させるため、無機化合物含有プラスチック系基材および他の基材の双方に直接接するプライマー層をさらに設けても良い。
プライマー層の形成に用いる化合物としては、例えば、無機化合物含有プラスチック系基材および無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜の双方に対して、あるいは、他の基材および無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜の双方に対して、あるいは、無機化合物含有プラスチック系基材および他の基材の双方に対して、接着性を有する成分(硬化あるいは反応により接着性を発現する成分を含む)が挙げられ、具体的には、シラン系カップリング剤(部分加水分解縮合物を含む)、(メタ)アクリロイル基含有有機化合物などが挙げられ、燃焼時に表面が炭化し難いという観点から、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基、(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤等が挙げられる。無機化合物含有プラスチック系基材、他の基材、または無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜との投錨性の観点から、アミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、入手性の点から、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
プライマー層の形成のためのプライマー処理としては、例えば、プライマー層の材料をコーティング、ディップコーティング、スプレー塗工などの方法を用いて、無機化合物含有プラスチック系基材や他の基材の表面に塗布する処理が挙げられる。また、プライマー層の材料中に無機化合物含有プラスチック系基材や他の基材を溶解するような溶剤を含有させることにより、無機化合物含有プラスチック系基材や他の基材の表面を粗くして、アンカリング効果を発揮させることもできる。
無機化合物含有プラスチック系基材や他の基材の少なくとも一方の面には、難燃性を損なわない範囲で、上記プライマー層(易接着層)のほか、光拡散層、反射防止層、紫外線吸収層、遮熱層、断熱層などを設けてもよい。
無機化合物含有プラスチック系基材と無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜(被覆層)との間には、接着剤層や粘着剤層が設けられていても良い。また、無機化合物含有プラスチック系基材と他の基材との間には、接着剤層や粘着剤層が設けられていても良い。さらに、他の基材と無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜(被覆層)との間には、接着剤層や粘着剤層が設けられていても良い。このような接着剤層や粘着剤層の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。
接着剤層としては、任意の適切な接着剤からなる層を採用し得る。このような接着剤としては、例えば、天然ゴム接着剤、α−オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂系ホットメルト接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム溶剤系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース系接着剤、反応性ホットメルト接着剤、フェノール樹脂系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルピロリドン樹脂系接着剤、ポリビニルブチラール系接着剤、ポリベンズイミダゾール接着剤、ポリメタクリレート樹脂溶剤系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤などが挙げられる。このような接着剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
接着剤としては、接着形態で分類すると、例えば、熱硬化型接着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。このような接着剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
熱硬化型接着剤は、加熱により熱硬化して固化することにより接着力を発現する。熱硬化型接着剤としては、例えば、エポキシ系熱硬化型接着剤、ウレタン系熱硬化型接着剤、アクリル系熱硬化型接着剤などが挙げられる。熱硬化型接着剤の硬化温度は、例えば、100〜200℃である。
ホットメルト接着剤は、加熱により溶融または軟化して、被着体に熱融着し、その後の冷却によって、固化することにより、被着体に接着する。ホットメルト接着剤としては、例えば、ゴム系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂系ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤などが挙げられる。ホットメルト接着剤の軟化温度(環球法)は、例えば、100〜200℃である。また、ホットメルト接着剤の溶融粘度は、180℃で、例えば、100〜30000mPa・sである。
粘着剤層としては、任意の適切な粘着剤からなる層を採用し得る。このような粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤(合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤など)、ウレタン系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。このような粘着剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
粘着剤としては、粘着形態で分類すると、例えば、エマルジョン型粘着剤、溶剤型粘着剤、紫外線架橋型(UV架橋型)粘着剤、電子線架橋型(EB架橋型)粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などが挙げられる。このような粘着剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
<無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂>
本発明における「無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂」の「縮合反応性シリコーン樹脂」としては、縮合反応性基を有するシリコーン樹脂(ポリシロキサン樹脂)であれば、任意の適切なポリシロキサン樹脂を採用し得る。このようなポリシロキサン樹脂としては、例えば、基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサン(以下、「D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン」と称する場合がある)、基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン(以下、「縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン」と称する場合がある)、基本構成単位がD単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、基本構成単位がM単位及びQ単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンなどが挙げられる。これらは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
縮合反応性シリコーン樹脂のなかでも、複合部材にフレキシブル性を付与できる点で、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとの組合せ、が好ましい。本発明では、特に、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン、または、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとの組合せが好ましい。
縮合反応性基としては、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基(例えば、C1−6アルコキシシリル基等)、シクロアルキルオキシシリル基(例えば、C3−6シクロアルキルオキシシリル基等)、アリールオキシシリル基(例えば、C6−10アリールオキシシリル基等)などが挙げられる。これらの中でも、縮合反応性基としては、シラノール基、アルコキシシリル基、シクロアルキルオキシシリル基、アリールオキシシリル基が好ましく、シラノール基、アルコキシシリル基が特に好ましい。
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンは、具体的には、基本構成単位として、下記式(1)で表されるD単位と、下記式(2)で表されるT単位とを含有する。
式(1)中、R1は、同一又は異なって、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。式(2)中、R2は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。
R1、R2における飽和炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基;などが挙げられる。また、R1、R2における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基などが挙げられる。
R1、R2としては、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であり、より好ましくは、メチル基である。
式(1)で表されるD単位は、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン中において、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。また、式(2)で表されるT単位は、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン中において、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンは、対応するシリコーン単量体の部分縮合物(例えば、ジアルキル(又は、アリール)ジアルコキシシラン等の2官能のシリコーン単量体と、アルキル(又は、アリール)トリアルコキシシラン等の3官能のシリコーン単量体との部分縮合物)であって、その構成単位中に、D単位、T単位、および下記式(3)
−OR3 (3)
で表される基を含有する。式(3)で表される基はケイ素原子に結合しており、分子末端に存在する。
R3は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、式(1)中のR1における飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。R3としては、好ましくは、飽和炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基またはエチル基である。
このようなD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとしては、例えば、アルコキシシリル基(例えば、C1−6アルコキシシリル基)含有ポリメチルシロキサン、アルコキシシリル基(例えば、C1−6アルコキシシリル基)含有ポリメチルフェニルシロキサン、アルコキシシリル基(例えば、C1−6アルコキシシリル基)含有ポリフェニルシロキサンなどが挙げられる。これらのD・T単位アルコキシシリル基含有ポリシロキサンは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの中でも、好ましくは、C1−6アルコキシシリル基含有ポリシロキサンであり、より好ましくは、メトキシシリル基含有ポリシロキサンまたはエトキシシリル基含有ポリシロキサンであり、さらに好ましくは、メトキシシリル基含有ポリメチルシロキサンまたはエトキシシリル基含有ポリメチルシロキサンである。
このようなD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量としては、上限は、例えば、30重量%であり、より好ましくは25重量%であり、下限は、好ましくは8重量%であり、より好ましくは10重量%であり、さらに好ましくは12重量%である。縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、TGA(示差式重量減少測定装置)にて、室温から300℃まで昇温したときの重量減少の割合から求めることができる。
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンの数平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算)としては、上限は、好ましくは6000であり、より好ましくは5500であり、さらに好ましくは5300であり、下限は、好ましくは800であり、より好ましくは1000であり、さらに好ましくは1200である。
D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとしては、商品名「X−40−9246」、「X−40−9250」、「X−40−9227」(以上、信越化学工業社製)などの市販品(D・T単位アルコキシシリル基含有ポリシロキサン)を用いることもできる。
前記縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、具体的には、基本構成単位として、式(2)で表されるT単位を含有する。式(2)で表されるT単位は、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン中において、それぞれ、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、同一である。
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、対応するシリコーン単量体の部分縮合物(例えば、アルキル(又は、アリール)トリアルコキシシラン等の3官能のシリコーン単量体の部分縮合物)であって、その構成単位中に、T単位、および下記式(4)
−OR4 (4)
で表される基を含有する。式(4)で表される基はケイ素原子に結合しており、分子末端に存在する。
R4は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、式(1)中のR1における飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。R4としては、好ましくは、飽和炭化水素基であり、より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基またはエチル基である。
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、ランダム型、ラダー型、カゴ型などのいずれであってもよい。柔軟性の観点からは、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、ランダム型が最も好ましい。これらの縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとしては、好ましくは、C1−6アルコキシシリル基含有ポリシルセスキオキサンであり、より好ましくは、メトキシシリル基含有ポリシルセスキオキサンまたはエトキシシリル基含有ポリシルセスキオキサンであり、さらに好ましくは、メトキシシリル基含有ポリメチルシルセスキオキサンまたはエトキシシリル基含有ポリメチルシルセスキオキサンである。
このような縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量としては、上限は、好ましくは50重量%であり、より好ましくは48重量%であり、さらに好ましくは46重量%であり、下限は、好ましくは10重量%であり、より好ましくは15重量%であり、さらに好ましくは20重量%である。縮合反応性基(例えば、アルコキシシリル基)の含有量は、TGA(示差式重量減少測定装置)にて、室温から300℃まで昇温したときの重量減少の割合から求めることができる。
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの数平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算)としては、上限は、好ましくは6000であり、より好ましくは3500であり、さらに好ましくは3000であり、下限は、好ましくは200であり、より好ましくは300であり、さらに好ましくは400である。
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとしては、商品名「KC−89」、「KR−500」、「X−40−9225」(以上、信越化学工業社製)などの市販品(アルコキシシリル基含有ポリシルセスキオキサン)を用いることもできる。
縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとしては、分子内(末端)に反応性のシラノール基を有するポリシロキサン化合物として、商品名「X−21−3153」、「X−21−5841」(以上、信越化学工業社製)などの市販品を用いることもできる。
ポリシロキサン樹脂全体に占める、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンの総量の割合は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。
本発明において、ポリシロキサン樹脂は分子内(末端)にアルコキシシリル基および/またはシラノール基を有しており、それらの基(アルコキシシリル基、シラノール基)の総含有量が8重量%〜48重量%であるポリシロキサン樹脂であって、該ポリシロキサン樹脂が無機酸化物粒子(C)と化学結合により架橋されていることが好ましい。アルコキシシリル基、シラノール基の総含有量の上限は、好ましくは30重量%であり、下限は、好ましくは10重量%である。
本発明では、特に、柔軟性、強度、不燃性等の観点から、縮合反応性シリコーン樹脂として、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとの組み合わせ、のいずれかが好ましい。この場合、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの割合(前者/後者(重量比))としては、上限は、好ましくは4.9であり、より好ましくは3であり、さらに好ましくは2であり、下限は、好ましくは0であり、より好ましくは0.02である。D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンと縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとの割合(前者/後者(重量比))の上限は、好ましくは100である。また、柔軟性をさらに向上させ得る点で、縮合反応性シリコーン樹脂としてD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンを採用することがより好ましい。
本発明における「無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂」の「縮合反応性シリコーン樹脂」は、縮合反応性基を有するシリコーン樹脂(ポリシロキサン樹脂)である。このような縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂は、上述の、(i)基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、(ii)基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサン、(iii)基本構成単位がT単位である縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンと基本構成単位がD単位及びT単位である縮合反応性基含有ポリシロキサンとの組み合わせ、以外の、シラノール基を有するポリシロキサン樹脂をさらに含んでいても良い。
本発明において、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂としては、耐熱性および強度の観点から、縮合反応性シリコーン樹脂が無機酸化物粒子(C)と化学結合により架橋して形成された架橋構造体を用いることが好ましい。例えば、縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体からなる縮合反応性シリコーン樹脂を用いることが好ましい。以下、この縮合反応性シリコーン樹脂について説明する。
縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂としては上記のものを使用できる。このような縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂としては、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとの組合せ、が好ましい。
無機酸化物粒子(C)としては、粒子表面に反応性官能基を有する無機酸化物粒子であれば良い。このような無機酸化物粒子(C)としては、例えば、シリカ(SiO2あるいはSiO)、アルミナ(Al2O3)、ガラスフリット、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、ジルコニア(ZrO2)などが挙げられる。無機酸化物粒子(C)は、2種以上の無機酸化物からなる複合無機酸化物粒子であってもよい。これらの中でも、特にシリカが好ましい。無機酸化物粒子(C)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
上記反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、イソシアネート基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル型不飽和基、ハロゲン原子、イソシアヌレート基などが挙げられる。これらの中でも、上記反応性官能基としては、ヒドロキシル基が好ましい。シリカ粒子表面のヒドロキシル基はシラノール基として存在する。
無機酸化物粒子(C)の平均粒子径(一次粒子径)としては、上限は、好ましくは500μmであり、より好ましくは100μmであり、さらに好ましくは10μmであり、特に好ましくは1μmであり、下限は、好ましくは1nmである。なお、平均粒子径は、動的光散乱法などにより測定することができる。
無機酸化物粒子(C)の粒度分布は狭い方が好ましく、また、一次粒子径のまま分散している単分散状態であることが好ましい。また、無機酸化物粒子(C)の表面電位は、酸性領域(例えば、pH2〜5、好ましくはpH2〜4)にあることが好ましい。ポリシロキサン樹脂との反応時にそのような表面電位を有していればよい。
無機酸化物粒子(C)としては、コロイド状の無機酸化物粒子を用いるのが好ましい。コロイド状の無機酸化物粒子としては、例えば、コロイド状シリカ(コロイダルシリカ)、コロイド状アルミナ(アルミナゾル)、コロイド状酸化スズ(酸化スズ水分散体)などが挙げられる。
コロイダルシリカとしては、例えば、特開昭53−112732号公報、特公昭57−9051号公報、特公昭57−51653号公報などにも記載されるように、二酸化ケイ素(無水ケイ酸)の微粒子(平均粒子径が、好ましくは5nm〜1000nmであり、より好ましくは10nm〜100nmである)のコロイドなどが挙げられる。
また、コロイド状シリカは、必要により、例えば、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどを含有することができ、また、必要により、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や、有機塩基(例えば、テトラメチルアンモニウムなど)などの安定剤を含有することもできる。
このようなコロイド状シリカは、特に制限されず、公知のゾル−ゲル法など、具体的には、例えば、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci., 26, 62−69(1968)、Rickey D.Badley et al;Langmuir 6, 792−801(1990)、色材協会誌,61 [9] 488−493(1988)などに記載されるゾル−ゲル法などにより、製造することができる。
コロイダルシリカは表面処理を施していない裸の状態であることが好ましい。コロイダルシリカには、表面官能基としてシラノール基が存在する。
また、このようなコロイダルシリカとしては、市販品を用いることができ、具体的には、例えば、商品名「スノーテックス−XL」、「スノーテックス−YL」、「スノーテックス−ZL」、「PST−2」、「スノーテックス−20」、「スノーテックス−30」、「スノーテックス−C」、「スノーテックス−O」、「スノーテックス−OS」、「スノーテックス−OL」、「スノーテックス−50」(以上、日産化学工業社製)、商品名「アデライトAT−30」、「アデライトAT−40」、「アデライトAT−50」(以上、日本アエロジル社製)などが挙げられる。これらの中でも、商品名「スノーテックス−O」、「スノーテックス−OS」、「スノーテックス−OL」が特に好ましい。
コロイダルシリカ以外のコロイド状の無機粒子としても、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、商品名「アルミナゾル100」、「アルミナゾル200」、「アルミナゾル520」(以上、日産化学工業社製)などのアルミナゾル(ヒドロゾル);商品名「TTO−W−5」(石原産業社製)や商品名「TS−020」(テイカ社製)などのチタニアゾル(ヒドロゾル);商品名「SN−100D」、「SN−100S」(以上、石原産業社製)などの酸化スズ水分散体;などが挙げられる。
本発明においては、無機酸化物粒子(C)が、その一次粒子径が1nm〜500μmの範囲にあり、その表面電位がpH2〜5の範囲にあるコロイダルシリカであって、該コロイダルシリカ表面のシラノール基がポリシロキサン樹脂と化学結合して該ポリシロキサン樹脂を架橋していることが好ましい。
無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂中の無機酸化物粒子(C)の含有量(あるいは、被膜中の無機酸化物粒子の含有量)としては、上限は、好ましくは30重量%であり、より好ましくは20重量%であり、さらに好ましくは15重量%であり、下限は、好ましくは1重量%であり、より好ましくは2重量%であり、さらに好ましくは3重量%である。無機酸化物粒子(C)の含有量が少なすぎると、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜の機械的強度が低下しやすく、無機酸化物粒子(C)の含有量が多すぎると、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜が脆くなりやすい。
次に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂の製造方法について説明する。
無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂は、例えば、無機酸化物粒子(C)と縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂(好ましくは、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサン、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとの組合せ、あるいはこれらとシラノール基を有するポリシロキサン樹脂)とを、溶媒中、好ましくは酸の存在下で反応させることにより製造できる。なお、ポリシロキサン樹脂は、無機酸化物粒子(C)の粒子表面の反応性官能基と反応可能な官能基を有している。無機酸化物粒子(C)の粒子表面の反応性官能基がシラノール基の場合は、縮合反応性基が該シラノール基と反応して架橋構造を形成する。
上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;これらの混合液;などが挙げられる。これらのなかでも、好ましくは、水とアルコールの混合溶媒であり、より好ましくは、水と2−プロパノールとの混合溶媒、水と2−プロパノールと2−メトキシエタノールとの混合溶媒、水と2−プロパノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合溶媒である。
上記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸;などが挙げられる。これらのなかでも、好ましくは、無機酸であり、より好ましくは、硝酸である。これらの酸は水溶液として使用することができる。酸の使用量は、反応系のpHを2〜5(好ましくは、2〜4)程度に調整できる量であれば良い。
反応の方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、例えば、(i)無機酸化物粒子(C)と溶媒との混合液中にポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液を添加する方法、(ii)ポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液中に無機酸化物粒子(C)と溶媒との混合液を添加する方法、(iii)溶媒中に、無機酸化物粒子(C)と溶媒との混合液、およびポリシロキサン樹脂と溶媒との混合液をともに添加する方法、等のいずれであってもよい。
なお、ポリシロキサン樹脂として、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとを併用する場合には、無機酸化物粒子(C)と、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンとD・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンとの混合物とを反応させてもよく、また、無機酸化物粒子(C)に、まず、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンを反応させ、次いで、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを反応させてもよく、さらには、無機酸化物粒子(C)に、まず、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを反応させ、次いで、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサンを反応させてもよい。本発明において、無機酸化物粒子(C)に、まず、縮合反応性基含有ポリシルセスキオキサンを反応させ、次いで、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン及び/又はシラノール基を有するポリシロキサン樹脂を反応させる方法、または、無機酸化物粒子(C)に、D・T単位縮合反応性基含有ポリシロキサン及び/又はシラノール基を有するポリシロキサン樹脂を反応させる方法を採用すると、無機化合物含有プラスチック系基材や他の基材の少なくとも一方の面に塗工して無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜を設ける場合、該被膜の柔軟性が大幅に向上する。
反応温度としては、上限は、好ましくは180℃であり、より好ましくは150℃であり、さらに好ましくは130℃であり、下限は、好ましくは40℃であり、より好ましくは50℃である。また、反応時間としては、上限は、好ましくは24時間であり、より好ましくは12時間であり、下限は、好ましくは1分であり、より好ましくは2分である。
反応終了後、必要に応じて、溶媒を留去し、濃度及び粘度を調整することにより、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を得ることができる。
本発明において、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物は、縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂中に分散した無機酸化物粒子と該ポリシロキサン樹脂とが化学結合により架橋した架橋構造体からなる縮合反応性シリコーン樹脂と、無機粒子(D)とを含んでいても良い。このようなシリコーン樹脂組成物を用いる場合には、難燃性が著しく向上し、可燃性の基材を有していても、また、基材の厚みが比較的薄くても、接炎時に延焼しないシート、さらには、着火、炭化しないシートが得られる。
<無機粒子(D)>
無機粒子(D)としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、水酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、酸化スズ粒子、ジルコニア粒子、粘土鉱物(タルク、ゼオライト等)の粒子、ガラスフリットなどが挙げられる。無機粒子(D)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。なお、無機粒子(D)は、縮合反応性基を有するポリシロキサン樹脂とは化学的に結合していない。
無機粒子(D)としては、少量で高い難燃効果が得られる点で、好ましくは、シリカ粒子、アルミナ粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、ガラスフリットである。さらに、透明性を得られる点で、より好ましくは、シリカ粒子、ガラスフリットであり、特に、コーンカロリーメーター試験において発熱性抑制効果が得られる点で、より好ましくは、ガラスフリットである。
シリカ粒子としては、例えば、ヒュームドシリカ粒子、ヒューズドシリカ粒子等の乾式シリカ粒子;湿式シリカ粒子;シリカゲル粒子;コロイダルシリカ粒子;などが挙げられる。これらのシリカ粒子の中でも、好ましくは、アエロジル等のヒュームドシリカ粒子であり、より好ましくは、疎水性ヒュームドシリカ粒子である。
ガラスフリットの屈伏点は、好ましくは300℃〜700℃であり、より好ましくは300℃〜650℃であり、さらに好ましくは300℃〜600℃である。ガラスフリットの屈伏点を上記範囲とすることにより、難燃照明カバーを作製した場合において、コーンカロリーメーター試験においても該難燃照明カバーの発熱量を抑制するという効果を十分に発現できる。
ガラスフリットとしては、任意の適切なガラスフリットを採用できる。このようなガラスフリットとしては、好ましくは、焼結性を有する無機粒子(ガラスフリット)であり、より好ましくは、ケイ酸(又は、酸化ケイ素)、ホウ酸(又は、酸化ホウ素)、ホウケイ酸、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム及び酸化リンから選ばれる少なくとも1種の成分から形成された無機粒子(ガラスフリット)である。代表的なガラスフリットとして、リン酸ガラスフリット、ホウケイ酸ガラスフリット、無アルカリガラスフリット、ほうろうフリットなどが挙げられる。特に好ましいガラスフリットは、少なくとも酸化リンを含む成分から形成されたガラスフリットである。少なくとも酸化リンを含む成分から形成されたガラスフリットにおいて、酸化リンの含有量は、好ましくは5重量%〜70重量%であり、下限は、好ましくは10重量%であり、より好ましくは20重量%であり、上限は、好ましくは60重量%であり、さらに好ましくは50重量%である。このようなガラスフリットを採用することにより、難燃照明カバーを作製した場合において、コーンカロリーメーター試験においても該難燃照明カバーの発熱量を抑制するという効果を十分に発現できる。
ガラスフリットの平均粒子径は、好ましくは0.1μm〜1000μmである。ガラスフリットの平均粒子径の下限は、好ましくは0.5μmであり、より好ましくは1μmであり、さらに好ましくは2μmである。また、ガラスフリットの平均粒子径の上限は、好ましくは500μmであり、より好ましくは300μmであり、さらに好ましくは150μmである。ガラスフリットの平均粒子径を上記の範囲とすることにより、難燃照明カバーを作製した場合において、コーンカロリーメーター試験においても該難燃照明カバーの発熱量を抑制するという効果を十分に発現できる。
無機粒子(D)としては、中空構造の無機粒子を用いてもよい。このような無機粒子として、例えば、中空構造を有するシリカ、中空構造を有するガラスフリット(リン酸ガラスフリット等)(中空のガラスビーズを含む)などが挙げられる。
無機粒子(D)の平均粒子径(一次粒子径)としては、上限は、好ましくは500μmであり、より好ましくは300μmであり、さらに好ましくは200μmであり、特に好ましくは100μmであり、下限は、好ましくは1nmである。なお、平均粒子径は、動的光散乱法などにより測定することができる。
本発明において、シリコーン樹脂組成物中の無機粒子(D)の含有量は、縮合反応性シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜500重量部であり、上限は、好ましくは400重量部であり、より好ましくは300重量部であり、下限は、好ましくは0.5重量部であり、より好ましくは1重量部であり、さらに好ましくは2重量部である。
縮合反応性シリコーン樹脂と無機粒子(D)とを含むシリコーン樹脂組成物は、例えば、上記の方法で得られた縮合反応性シリコーン樹脂を含むシリコーン樹脂組成物に、無機粒子(D)を添加することにより製造できる。
本発明において、前記シリコーン樹脂組成物には、必要に応じて、硬化触媒等の添加剤を添加してもよい。
本発明において、前記シリコーン樹脂組成物の固形分濃度としては、取扱性、塗工性、含浸性等の観点から、上限は、好ましくは95重量%であり、より好ましくは90重量%であり、下限は、好ましくは30重量%であり、より好ましくは40重量%である。
<難燃照明カバーの製造>
本発明の難燃照明カバーは、例えば、無機化合物を含有するプラスチック系基材の少なくとも一方の面側に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物から形成された被膜(被覆層:難燃性シリコーン樹脂層)を設けることにより製造できる。
本発明の難燃照明カバーは、板状に限らず、熱成型、圧空成型、真空成型などによって板状物から変形させた部材など、特定形状を有した部材としても使用することができる。
例えば、本発明の難燃照明カバーは、無機化合物を含有するプラスチック系基材の少なくとも一方の面上に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を塗工して被膜を形成することにより製造できる。
シリコーン樹脂組成物の塗工方法としては、例えば、キスコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ワイヤーコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング、カーテンコーティング、ディスペンサーコーティング、スクリーン印刷、メタルマスク印刷などの、任意の適切な塗布方法により、直接塗布して、塗膜を形成し、必要に応じて、例えば、80℃〜150℃の温度で乾燥することにより、例えば、図1に示されるような、無機化合物含有プラスチック系基材1の片面側に無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜2を有する難燃照明カバー3を得ることができる。
また、例えば、本発明の難燃照明カバーは、薄葉体上に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を塗工して被膜を形成し、この被膜を、無機化合物含有プラスチック系基材の少なくとも一方の面上に積層する(ラミネートする)ことにより製造することもできる。
シリコーン樹脂組成物の保存安定性を向上させるために、および、シリコーン樹脂組成物の成膜時の気泡欠点や外観ムラを低減させるために、脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤をシリコーン樹脂組成物に加えて塗工することが好ましい。このような脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤の使用量は、シリコーン樹脂組成物(固形分)100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜200重量部であり、より好ましくは0.1重量部〜150重量部である。
脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、メチルセロソルブ(2−メトキシエタノール)、エチルセロソルブ(2−エトキシエタノール)、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーエル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテートなどのグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール系溶剤;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含チッ素系溶剤;ジメチルスルフォキシド;などが挙げられる。このような脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。このような脂肪族一価アルコールを除く水溶性有機溶剤として、加水分解したアルコキシシランおよびその縮合体に対する溶解性がよいという点から、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜の厚みとしては、上限は、好ましくは1000μmであり、より好ましくは800μmであり、さらに好ましくは500μmであり、下限は、好ましくは5μmであり、より好ましくは10μm、さらに好ましくは20μmである。
また、例えば、本発明の難燃照明カバーは、薄葉体上に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を塗工して無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜を形成し、その後、得られた積層体の薄葉体を溶融させて、無機化合物含有プラスチック系基材の少なくとも一方の面上に積層する(ラミネートする)ことにより製造できる。
また、例えば、本発明の難燃照明カバーは、薄葉体上に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を塗工して無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜を形成し、被膜と反対側の薄葉体の面上に、接着剤層または粘着剤層を塗工等によって形成させ、その後、得られた積層体を、無機化合物含有プラスチック系基材の少なくとも一方の面上に積層する(ラミネートする)ことにより製造できる。
また、例えば、本発明の難燃照明カバーは、無機化合物含有プラスチック系基材と無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を積層した後、特定形状に成形することにより製造できる。成形する方法としては、曲げ加工、プレス成形、真空成形、圧空成形など、任意の適切な方法を利用できる。
また、例えば、本発明の難燃照明カバーは、基材を特定形状に成形した後、被膜化した無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を積層する(ラミネートする)ことにより製造できる。積層する方法としては、ラミネート成形、プレス成形、真空成型、圧空成形など、任意の適切な方法を利用できる。
また、例えば、本発明の難燃照明カバーは、基材を特定形状に成形する工程と、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を積層する工程を同時に行うことにより製造できる。成形方法としては、インモールド成形、インサート成形など、任意の適切な方法を利用できる。
また、例えば、本発明の難燃照明カバーは、他の基材の表面をプライマー処理し、そのプライマー処理面上に、無機酸化物粒子含有縮合反応性シリコーン樹脂を少なくとも含むシリコーン樹脂組成物を塗工して無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜を形成し、さらに、他の基材のプライマー処理されていない表面に接着剤を塗工し、その塗工面に無機化合物含有プラスチック系基材を積層する(ラミネートする)ことにより製造できる。積層する方法としては、ラミネート成形、プレス成形、真空成型、圧空成形など、任意の適切な方法を利用できる。
本発明の難燃照明カバーは、無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜の側の表面に保護層を有していても良い。
保護層の主成分は、好ましくはポリマーである。保護層としては、例えば、紫外線硬化系ハードコート層、熱硬化系ハードコート層、および有機無機ハイブリッド系ハードコート層からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。このような保護層は、1層のみからなっていても良いし、2層以上からなっていても良い。
紫外線硬化系ハードコート層は、紫外線硬化性樹脂を含む樹脂組成物から形成し得る。熱硬化系ハードコート層は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から形成し得る。有機無機ハイブリッド系ハードコート層は、有機無機ハイブリッド樹脂を含む樹脂組成物から形成し得る。
上記のような樹脂に用いられる硬化性化合物として、より具体的には、シラノール基、シラノール基の前駆体(例えば、アルコキシシリル基やクロロシリル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、環状エーテル基、アミノ基、イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー、または、シラザン化合物等が挙げられる。燃焼時に表面が炭化し難いという観点から、シラノール基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーが好ましい。
ハードコート層を形成し得る樹脂組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。このような添加剤としては、例えば、光重合開始剤、シランカップリング剤、離型剤、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤、老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、柔軟剤、安定剤、可塑剤、消泡剤などが挙げられる。ハードコート層を形成し得る樹脂組成物に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
保護層の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、好ましくは0.1μm〜200μmであり、より好ましくは0.2μm〜100μmであり、さらに好ましくは0.5μm〜50μmである。保護層の厚みが上記範囲内にあれば、本発明の難燃照明カバーの難燃性を損なうことなく、優れた耐擦傷性を発現することができる。
本発明の難燃照明カバーには、難燃性を損なわない範囲内で、防汚層、帯電防止層、光拡散層、反射防止層、紫外線吸収層、遮熱層、断熱層、熱伝導層、耐溶剤層などの機能層を付与することができる。
本発明の難燃照明カバーは、難燃性を損なわない範囲内で、無機化合物含有プラスチック系基材や他の基材や無機酸化物粒子含有シリコーン樹脂被膜中に、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
他の成分としては、例えば、他のポリマー成分、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、硬化剤、可塑剤、充填剤、熱重合開始剤、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤(顔料や染料など)、溶剤(有機溶剤)、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)などが挙げられる。
≪難燃照明装置≫
本発明の難燃照明装置は、本発明の難燃照明カバーを有する。本発明の難燃照明装置は、本発明の難燃照明カバーを有するので、優れた非着火性および優れた非炭化性を兼ね備え、好ましくは、優れた光拡散性、優れた加工性、優れた成型性、優れた耐衝撃性をさらに兼ね備える。
本発明の難燃照明装置は、好ましくは、照明に用いられる光を発生させる光源と、該光源を覆うように設置された本発明の難燃照明カバーとを少なくとも有しており、該光源からの光が該難燃照明カバーによって透過されて出射される。
本発明の難燃照明装置において、難燃照明カバーの取り付け方、難燃照明カバーの配置等は、任意の適切な方法や配置を採用し得る。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
〔合成例1〕
撹拌機、還流冷却器、および窒素導入管を備えた容器に、平均粒子径8nm〜11nmのコロイダルシリカ溶液(商品名:スノーテクスOS、日産化学社製、固形分濃度20%)50g、2−プロパノール84gを加えた。濃硝酸を加えて液の酸性度(pH)を2〜4の範囲内に調整した。次いで70℃に昇温したのち、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有するシルセスキオキサン化合物(商品名:X−40−9225、信越化学工業社製、メトキシ含有量24%)10gを2−プロパノール10gに溶解した液を、滴下ロートを用いて0.5時間かけて滴下し、シルセスキオキサン化合物とコロイダルシリカ粒子表面の反応を行った。
次いで、分子末端に反応性のメトキシシリル基を有する3官能アルコキシシランおよび2官能アルコキシシランから誘導されるポリシロキサン化合物(商品名:X−40−9246、信越化学工業社製、メトキシ含有量12%)90gを2−プロパノール90gに溶解した液を4.5時間かけて滴下して、上記コロイダルシリカ上のシルセスキオキサン化合物と反応を行った。70℃で1時間加熱撹拌を行った後、室温(25℃)まで冷却して、透明樹脂組成物溶液(A)を得た。
〔合成例2〕
アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業社製)3重量部に対して、2−プロパノール97重量部を撹拌混合して、下塗り剤組成物溶液(A)を得た。
〔合成例3〕
熱硬化系ハードコート剤(商品名:エバハード100、大橋化学社製)100重量部に対して、2−プロパノール287重量部、アルミ系触媒(商品名:CAT−AC、信越化学工業社製)5重量部を撹拌混合して、ハードコート剤組成物溶液(A)を得た。
〔合成例4〕
合成例1で作製した透明樹脂組成物溶液(A)に、該透明樹脂組成物溶液中の固形分100重量部に対して、ガラスフリット(商品名:VY0053M、日本フリット社製)180重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業社製)100重量部を添加し、固形分濃度88重量%になるまで濃縮した後、リン酸系触媒(商品名:X−40−2309A、信越化学工業社製)10重量部を混合撹拌して、シリコーン樹脂組成物(A)を得た。
〔合成例5〕
合成例1で作製した透明樹脂組成物溶液(A)に、該透明樹脂組成物溶液中の固形分100重量部に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業社製)100重量部を添加し、固形分濃度80重量%になるまで濃縮した後、リン酸系触媒(商品名:X−40−2309A、信越化学工業社製)10重量部を混合撹拌して、シリコーン樹脂組成物(B)を得た。
〔合成例6〕
合成例1で作製した透明樹脂組成物溶液(A)に、該透明樹脂組成物溶液中の固形分100重量部に対して、ガラスフリット(商品名:VY0053M、日本フリット社製)200重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業社製)100重量部を添加し、固形分濃度88重量%になるまで濃縮した後、リン酸系触媒(商品名:X−40−2309A、信越化学工業社製)10重量部を混合撹拌して、シリコーン樹脂組成物(C)を得た。
〔実施例1〕
ポリエステル系ホットメルト接着剤(商品名:PES−314SX30」、固形分濃度:30重量%、東亜合成株式会社製)を、剥離処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、商品名:MRF♯38、三菱樹脂社製)上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが15μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、100℃で2分間、110℃で2分間加熱乾燥して、接着剤シートを得た。
次いで、合成例4で得られたシリコーン樹脂組成物(A)を、上記の接着剤シート上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが150μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、100℃で3分間、140℃で3分間、150℃で60分間加熱乾燥して、難燃性シリコーン樹脂転写シート(1)を得た。
次いで、上記の難燃性シリコーン樹脂転写シート(1)の剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂(ガラス繊維含有率:30重量%、商品名:SF5303、住化スタイロンポリカーボネート社製)を真空プレス機で圧力0.4MPa、220℃で真空プレスして作製したガラス繊維強化ポリカーボネート板(厚さ:1300μm)にラミネーターで0.5m/分、圧力0.2MPa、140℃で貼り付けて、難燃照明カバー(1)を得た。
〔実施例2〕
ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂(ガラス繊維含有率:30重量%、商品名:SF5303、住化スタイロンポリカーボネート社製)を真空プレス機で圧力0.4MPa、220℃で真空プレスして作製したガラス繊維強化ポリカーボネート板(厚さ:1300μm)の上に、合成例2で得られた下塗り剤組成物溶液(A)を、メイヤーバーを用いて、乾燥後の厚さが1μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、120℃で3分間加熱乾燥することにより、下塗り処理を施したポリカーボネート板を得た。
次いで、合成例4で得られたシリコーン樹脂組成物(A)を、上記の下塗り処理を施したポリカーボネート板の下塗り処理面上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが150μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、100℃で3分間、140℃で6分間、170℃で60分間加熱乾燥して、難燃複合板を得た。
次いで、合成例3で得られたハードコート剤組成物溶液(A)を、上記の難燃複合板のシリコーン樹脂組成物(A)の塗布面上に、メイヤーバーを用いて、乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、140℃で3分間加熱乾燥し、難燃照明カバー(2)を得た。
〔実施例3〕
合成例2で得られた下塗り剤組成物溶液(A)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、商品名「ルミラーS10」東レ社製)上に、メイヤーバーを用いて、乾燥後の厚さが1μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、120℃で3分間加熱乾燥することにより、下塗り処理PETフィルムを得た。
次いで、合成例4で得られたシリコーン樹脂組成物(A)を下塗り処理PETフィルムの下塗り処理面上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが160μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、100℃で3分間、140℃で6分間、170℃で60分間加熱乾燥して、難燃性シリコーン樹脂シートを得た。
次いで、合成例3で得られたハードコート剤組成物溶液(A)を上記難燃性シリコーン樹脂シートのシリコーン樹脂組成物(A)の塗布面上に、メイヤーバーを用いて、乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、140℃で3分間加熱乾燥し、耐擦傷性難燃性シリコーン樹脂シートを得た。
次いで、ポリエステル系ホットメルト接着剤(商品名「PES−314SX30」、固形分濃度:30重量%)を、耐擦傷性難燃性シリコーン樹脂シートのPETフィルム面(下塗り処理を行っていない面)上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが15μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、100℃で2分間、110℃で2分間加熱乾燥して、難燃性シリコーン樹脂転写シートを得た。
次いで、難燃性シリコーン樹脂転写シートの接着剤塗布面を、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂(ガラス繊維含有率:30重量%、商品名「SF5303」、住化スタイロンポリカーボネート社製)を真空プレス機で圧力0.4MPa、220℃で真空プレスして作製したガラス繊維強化ポリカーボネート板(厚さ:1300μm)にラミネーターで0.5m/分、圧力0.2MPa、140℃で貼り付けて、難燃照明カバー(3)を得た。
〔実施例4〕
シリコーン系粘着剤(商品名:KR−3700」、固形分濃度:60重量%、信越化学工業株式会社製)を、剥離処理をしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、商品名:MRF♯38、三菱樹脂社製)上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、140℃で2分間、110℃で2分間加熱乾燥して、粘着剤シートを得た。
次いで、合成例6で得られたシリコーン樹脂組成物(C)を、上記の粘着剤シート上に、テスター産業社製のアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが200μmになるように塗布し、その後、熱風循環式オーブンで、100℃で3分間、140℃で3分間、150℃で60分間加熱乾燥して、難燃性シリコーン樹脂転写シート(4)を得た。
次いで、上記の難燃性シリコーン樹脂転写シート(4)の剥離処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂(ガラス繊維含有率:35重量%、商品名:MG35、旭ファイバーグラス社製)を真空プレス機で圧力0.4MPa、220℃で真空プレスして作製したガラス繊維強化ポリカーボネート板(厚さ:1200μm)にラミネーターで0.5m/分、圧力0.2MPa、140℃で貼り付けて、難燃照明カバー(4)を得た。
〔比較例1〕
フロートガラス板(厚さ:3mm、商品名「フロート板ガラス」、日本板硝子社製)単体を照明カバー(C1)とした。
〔比較例2〕
耐熱強化ガラス板(厚さ:5mm、商品名「パイロクリア」、日本板硝子社製)単体を照明カバー(C2)とした。
〔比較例3〕
ポリカーボネート板(厚さ:2mm、商品名「PC1600」、タキロン社製)単体を照明カバー(C3)とした。
〔比較例4〕
ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂(ガラス繊維含有率:30重量%、商品名:SF5303、住化スタイロンポリカーボネート社製)を真空プレス機で圧力0.4MPa、220℃で真空プレスして作製したガラス繊維強化ポリカーボネート板(厚さ:1300μm)単体を照明カバー(C4)とした。
〔比較例5〕
ガラスクロス(厚さ:100μm、商品名「E10T−4W」、ユニチカ社製)単体を照明カバー(C5)とした。
〔比較例6〕
ガラスクロス(厚さ:100μm、商品名「E10T−4W」、ユニチカ社製)を、合成例5で作製したシリコーン樹脂組成物(B)に含浸し、その後、熱風循環式オーブンで、100℃で3分間、140℃で3分間、150℃で60分間加熱乾燥して、照明カバー(C6)とした。
≪各種評価≫
(鉄道車両用材料燃焼試験)
図3に示す燃焼試験装置を用い、社団法人日本鉄道車両機械技術協会の鉄道車両用材料燃焼試験(一般材;鉄道車両用非金属材料の45°エチルアルコール試験)に準じて燃焼試験を行った。図3において、11は供試体(182mm×257mm)、12はアルコール容器(鉄製17.5φ×7.1 0.8t)、13は容器受台(コルク等熱伝導率の低いもの)を示す。供試体下面中心から容器底面までの距離は25.4mm(1インチ)である。
実施例で得られた難燃照明カバーおよび比較例で得られた照明カバーを、図3のように、45°傾斜に保持し、燃料容器(アルコール容器)12の底の中心が、供試体の下面中心の垂直下方25.4mmのところに来るように、燃料容器12をコルクの台(容器受台)13に乗せ、燃料容器12にエチルアルコール0.5ccを入れて、着火し、燃料が燃え尽きるまで約2分間放置した。試料の着火、炭化の有無を目視観察し、下記の基準で評価した。
<着火・炭化>
○:エタノール燃焼中に着火および炭化のいずれもしない。
×:エタノール燃焼中に着火および/または炭化する。
<貫通・溶融滴下>
○:エタノール燃焼1分間以内に貫通および溶融滴下のいずれもしない。
×:エタノール燃焼1分間以内に貫通および/または溶融滴下する。
(コーンカロリーメーター試験)
一辺が100mmの平面正方形状の試験片を切り出し、図4に示す通り ISO 5660−1:2002に準じた方法により、コーンカロリーメーターを用い50kW/m2の熱線を10分間照射して試験片を燃焼させた。図4中、14は排気フード、15はコーン型ヒータ、16は供試材、17は供試材ホルダーである。燃焼判定は、試験時間中に計測された総発熱量(MJ/m2)及び最大発熱速度(kW/m2)並びに着火時間(秒)で行う。着火時間(秒)は、試験片から炎が確認されてから10秒以上炎が存在した場合を着火とみなし、試験開始から最初に着火が確認されるまでの時間とした。また、試験片の貫通の有無について目視観察した。
(1)10分間の総発熱量
◎:総発熱量が20MJ/m2未満。
○:総発熱量が20MJ/m2以上30MJ/m2未満。
×:総発熱量が30MJ/m2以上。
(2)10分間の最大発熱速度
◎:最大発熱速度が200kW/m2未満。
○:最大発熱速度が200kW/m2以上300kW/m2未満。
×:最大発熱速度が300kW/m2以上。
(3)着火時間
○:着火時間が60秒以上。
×:着火時間が60秒未満。
(4)貫通
○:貫通なし。
×:貫通あり。
(無機物含有割合の評価)
JIS K7250−1に準じて、実施例で得られた難燃照明カバーおよび比較例で得られた照明カバーについて、灰分測定を行った。マッフル炉温度は600℃とした。
(全光線透過率、ヘイズ)
全光線透過率、ヘイズは、JIS K7361に準じて、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製、「HM−150」)を用いて測定した。
(ドリル加工性の評価)
実施例で得られた難燃照明カバーおよび比較例で得られた照明カバーについて、電気ドリル(商品名「FDD−1000」、RYOBI社製)を用いて、φ5mmの穴を開けた。
<判定基準>
○:開口部以外に亀裂および変形が生じることがない。
×:開口部以外に亀裂および/または変形が生じるか、あるいは、試験対象物が破壊している。
(熱プレス加工性の評価)
実施例で得られた難燃照明カバーおよび比較例で得られた照明カバーを、180℃に加温した熱風式乾燥機に入れて10分間加温し、熱風式乾燥機から取り出した後、図5に示すR50成形上型、下型で挟み、2kgf/cm2で5分間加圧した後、成形型から照明カバーを取り出した。
<判定基準>
○:照明カバーに亀裂や割れがなく、成形型を取り除いた後に形状を保持している。
×:照明カバーに亀裂や割れがある、または成形型を取り除いた後に形状を保持できない。
(熱曲げ加工性の評価)
実施例で得られた難燃照明カバーおよび比較例で得られた照明カバーを、180℃に加温した熱風式乾燥機に入れて10分間加温し、熱風式乾燥機から取り出した後、速やかにR50曲げ加工を行った。
<判定基準>
○:R50に形状維持している。
×:R50に形状維持していないか、あるいは、曲げ加工できない。
(落球試験(耐衝撃性の評価))
30mm×30mmに切削した難燃照明カバーまたは照明カバーに対して、その鉛直上方50cm高さから直径50mm、重さ510gの鋼球を自由落下させた。
<判定基準>
○:難燃照明カバーまたは照明カバーに亀裂や割れがない。
×:難燃照明カバーまたは照明カバーに亀裂や割れがある。