JP6798661B2 - 面状構造体、およびその使用方法 - Google Patents

面状構造体、およびその使用方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6798661B2
JP6798661B2 JP2016053089A JP2016053089A JP6798661B2 JP 6798661 B2 JP6798661 B2 JP 6798661B2 JP 2016053089 A JP2016053089 A JP 2016053089A JP 2016053089 A JP2016053089 A JP 2016053089A JP 6798661 B2 JP6798661 B2 JP 6798661B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
woven fabric
less
planar structure
fiber
melting point
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016053089A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017166091A (ja
Inventor
中野 正剛
正剛 中野
美希 井上
美希 井上
Original Assignee
有限会社 エヌテック
有限会社 エヌテック
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 有限会社 エヌテック, 有限会社 エヌテック filed Critical 有限会社 エヌテック
Priority to JP2016053089A priority Critical patent/JP6798661B2/ja
Publication of JP2017166091A publication Critical patent/JP2017166091A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6798661B2 publication Critical patent/JP6798661B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Container, Conveyance, Adherence, Positioning, Of Wafer (AREA)
  • Manipulator (AREA)
  • Filtering Materials (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Nonwoven Fabrics (AREA)

Description

本発明は、真空吸着装置用の吸着プレートや、フィルターとして使用可能な面状構造体、およびその製造方法と使用方法に関するものである。
真空吸着装置に使用される吸着プレートは、真空ポートから空気を吸引して真空状態にすることで、フィルム、ガラス基板、シリコンウエハなどのワークを吸着して搬送し、カット、印刷、研磨などの加工を行う。そのため、空気を吸引する際に吸着プレートの側面から空気が漏れてしまうと、吸着力が不足してワークの固定力が劣り、精密な加工をすることが困難となる。この問題に対処するため、吸着プレートの外周部に、フィルムや樹脂等の密閉性の高い素材を配置して封止部を形成し、空気の漏れを抑える方法が提案されている。一方で、薄いフィルムなど柔軟なワークを搬送する際には、ワークに対して吸着ムラがあると、ワークに吸着跡が残ってしまうため、空気を均一に吸引すべく、昨今広く用いられている吸着プレートの吸着面には、多くの微空孔が形成されている。
このような吸着プレートとしては、特許文献1〜7に記載の吸着プレートが知られている。特許文献1〜5には、吸着プレートとして、吸着面が、スポンジやゴムのように柔軟な材料に形成されたものや、樹脂を焼結した多孔質材料などにより形成されたものが開示されている。また特許文献6〜7には、不織布製の吸着プレートが開示されている。
一方、吸着プレートと同様に、一定の通気性が要求される材料としてはフィルターが挙げられる。フィルターを濾過装置に搭載する場合は、通常、通気性を有する材料を蛇腹状に折った後、外周に枠を形成して搭載される。環境への負荷を考慮し、近年では、枠と通気性材料を同素材としたフィルター材が種々提案されており、このようなフィルターの製造方法として、特許文献8には、通気性材料に蛇腹加工と枠形成を一工程で実施する方法が提案されている。
特開2002−127067号公報 特開平8−169971号公報 特開平6−71854号公報 特開2004−59295号公報 特開2005−28506号公報 特開2012−61556号公報 実用新案登録第3164417号公報 特開2002−126422号公報
しかし特許文献1〜5に記載の吸着プレートでは、スポンジやゴム材料は通気性や柔軟性には優れるものの、耐摩耗性や耐久性が劣るなどの問題がある。また焼結体は、耐摩耗性には優れるものの、硬く、表面が粗いため、目を細かくするために表面の鏡面研磨加工が必須となり吸着プレートの製造コストが嵩んでしまう。また特許文献6〜7に記載の吸着プレートでは、吸引回数が増加するにつれて厚さが薄くなりやすく、耐久性の面で問題があり、また長期の使用により、積層した不織布間に寸法のズレが生じ、シワとなる場合もあった。更に近年では、吸着プレートの形状は、厚さにムラのない板状のものが主流となっているため、特許文献6〜7の吸着プレートは、その形状面からも改善が求められている。
またフィルター用途においても、近年では用途に応じて様々な形状のフィルター材が要求されており、ツバのみがプレスされている特許文献8のフィルター材以外にも新たな形状のフィルターが求められている。
本発明の課題は、真空吸着装置用の吸着プレートや、フィルターとして使用可能な、柔軟で耐久性に優れ、しかもこれらの用途に要求される通気性を兼ね備えた面状構造体、およびこの面状構造体をより簡便に提供し得る製造方法の提供にある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、吸着プレートの耐久性には通気部の硬さが影響していることがわかった。そこで本発明に係る面状構造体では、通気部の硬さを一定の範囲内に制御することにより、吸着プレートの耐久性を改善することを目的とする。
また本発明者らは、前記面状構造体を製造する方法として、低融点繊維を有し且つ切り抜き部を有する不織布と、低融点繊維を有し且つ切り抜き部を有さない不織布を積層し、この不織布積層体の表面に熱プレスを施すことにより、通気部の通気量や硬さを所定の範囲内にコントロールできる上、繊維製構造体の表面を平滑にしながら、封止部(枠)を一度の操作で簡便に形成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] 不織布から構成される面状構造体であって、
1つ以上の通気部と、前記通気部よりも通気量が低い1つ以上の封止部の両方を面内に有し、
前記通気部のHDDが13以上45以下であることを特徴とする面状構造体。
[2] 前記封止部のHDDが65以上85以下である[1]に記載の面状構造体。
[3] 通気部の通気量が20cm3/cm2・sec以上250cm3/cm2・sec以下であり、封止部の通気量が0cm3/cm2・sec以上10cm3/cm2・sec以下である[1]または[2]に記載の面状構造体。
[4]前記通気部の厚さが、前記封止部の厚さに対して、0.8倍以上1.05倍以下である[1]〜[3]に記載の面状構造体。
[5] 前記封止部に対する前記通気部の目付の比(通気部/封止部)が、0.05以上0.70以下である[1]〜[4]に記載の面状構造体。
[6] 通気部の密度が0.15g/cm3以上0.50g/cm3以下であり、封止部の密度が0.50g/cm3以上1.50g/cm3以下である[1]〜[5]に記載の面状構造体。
[7] 面状構造体の表面には、融点が80℃以上220℃以下の低融点繊維が溶融固化した状態で存在している[1]〜[6]に記載の面状構造体。
[8] [1]〜[7]に記載の面状構造体を含む真空吸着法用吸着プレート。
[9] [1]〜[7]に記載の面状構造体を含むフィルター。
[10] 低融点繊維を有し且つ切り抜き部を有する中材用不織布(a1)と、低融点繊維を有し且つ切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)を積層して不織布積層体(a)を作製する工程、及び、
前記不織布積層体(a)の少なくとも片面を、加熱された金型に接触させた状態にして、厚さ方向に面状に圧縮する工程を含むことを特徴とする面状構造体の製造方法。
[11] 前記切り抜き部を有する中材用不織布(a1)および前記切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)の少なくとも一方が、低融点繊維よりも融点が高い非熱融着性繊維を含む[10]に記載の面状構造体の製造方法。
[12] 切り抜き部を有する中材用不織布(a1)の目付が30g/m2以上200g/m2以下、積層枚数が3枚以上50枚以下であり、
切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)の目付が30g/m2以上200g/m2以下、積層枚数が1枚以上30枚以下である[10]または[11]に記載の面状構造体の製造方法。
[13] 前記不織布積層体(a)が、前記切り抜き部を有する中材用不織布(a1)の1〜5枚から構成される切り抜き構造部と、前記切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)の1〜5枚から構成される非切り抜き構造部とを有し、
切り抜き構造部と非切り抜き構造部が交互に3層以上積層されている[10]〜[12]に記載の面状構造体の製造方法。
[14] 不織布積層体(a)の最外層として表材用不織布が積層されている[10]〜[13]に記載の面状構造体の製造方法。
[15] 表材用不織布100質量%中、低融点繊維の合計質量が80質量%以上である[14]に記載の面状構造体の製造方法。
本発明によれば、柔軟で耐久性に優れ、しかも上記用途に要求される通気性を兼ね備えた面状構造体、およびこの面状構造体をより簡便に提供し得る製造方法が提供される。
本発明に係る面状構造体の概略斜視図である。 本発明に係る面状構造体の製造方法を模式的に示した参考図である。 本発明に係る面状構造体の使用方法の一態様を示す概略図である。 実施例2で得られた面状構造体の拡大写真(100倍)である。 比較例4で使用した吸着プレートの拡大写真(100倍)である。
<面状構造体>
図1に本発明に係る面状構造体の概略斜視図を示す。面状構造体1は、不織布から構成され、1つ以上の通気部2と、前記通気部2よりも通気量が低い1つ以上の封止部3を有している。各通気部2は、好ましくは全周が封止部3によって囲われており、真空吸着法によってワークをリフトする際の吸着部となる。また通気部2は、フィルターの濾過部となる。一方封止部3は、真空吸着法によってワークをリフトする際には空気漏れを防ぐ機能を発揮し、また、フィルターの枠としても機能する。
面状構造体の製造が簡便であること、面状構造体が適度な柔軟性を有すること、真空吸着装置において吸引力のバラツキを抑制できる等の観点から、本発明に係る面状構造体は不織布から形成されている。図4(a)には、本発明に係る面状構造体(実施例2品)の拡大写真を示す。一方、図4(b)には、従来の焼結体からなる吸着プレート(比較例4品)の拡大写真を示す。図4(a)から明らかなように、本発明品は不織布から構成されているため、面状構造体表面では繊維が三次元にランダムに配置されることとなり、表面での目の細かさを維持できる。図4(a)と図4(b)を比べると、本発明品の方が、焼結体からなる吸着プレートよりも小さな空隙を多数有していることが分かる。この多数の小さな空隙により、高通気量を維持しながら真空吸着装置において吸引時の空気の流路を整えることが可能となり、吸引力のバラツキを抑制できる。このため本発明品は、たとえ真空吸着装置における吸引力を大きくしても、ワークにシワや吸着跡が付きにくくなるという利点を有している。
面状構造体は後述するように、低融点繊維を有する複数枚の不織布を積層した不織布積層体に面状(特に全面)熱プレスを施すことで製造されることが好ましい。そのため、面状構造体の表面には、融点が80℃以上220℃以下の低融点繊維が溶融固化した状態で存在していることが好ましい。熱プレス時の圧力により、面状構造体表面における熱溶融後の低融点繊維は、溶融した状態で熱プレス機の金型に追従するため、冷却されて固化した低融点繊維は、面状構造体表面の平滑化に寄与する。更に、熱溶融後の低融点繊維は、繊維の交絡点を固定した状態で固化するため、通気部や封止部における硬さの向上に寄与する。
熱溶融後の低融点繊維の面積(溶融固化部面積)は、面状構造体の表面及び裏面の合計面積100area%中、好ましくは30area%以上、より好ましくは50area%以上、更に好ましくは70area%以上、より更に好ましくは90area%以上であり、特に好ましくは100area%であるが、95area%以下であっても差し支えない。
また面状構造体表面の低融点繊維の溶融状態を観察することで、面状に熱プレスされた領域を知ることができる。面状に熱プレスされた領域の面積は、面状構造体の表面及び裏面の合計面積100area%中、好ましくは50area%以上、より好ましくは70area%以上であり、100area%であってもよい。また90area%以下でもよく、80area%以下でもよい。また面状熱プレス領域は表面又は裏面それぞれで互いに独立して複数存在していてもよい(すなわち、非プレス領域が存在し、この非プレス領域で複数の面状熱プレス領域が区切られていてもよい)。ただし、面状熱プレス領域が独立して複数存在する場合、少なくとも1つの面状熱プレス領域内で全周囲が封止部3で囲われた通気部2が1つ以上存在している。
面状構造体の内部にも低融点繊維が溶融固化した状態で存在するが、熱プレス時の処理条件によっては、低融点繊維や低融点繊維以外の繊維が溶融せずに残る場合もある。
1.通気部
本発明では、前記通気部の硬さ(HDD)を13以上45以下とする。例えば、特許文献6の実施例で作製された面状構造体のHDDは5〜13程度である。しかし通気部のHDDが13を下回るときには、長期の使用により通気部がへたり、短期間のうちに薄くなってしまう傾向にあるため、吸着プレートの交換周期を改善する観点から、通気部のHDDを13以上とする。また吸着プレートとして一般的な焼成多孔質材料のHDDは50〜100程度であるが、通気部のHDDが45を超えると、吸着プレートとしては硬すぎるため、ガラスや薄いフィルムなどの柔軟なワークを吸着したときに、ワークが通気部と接触して損傷する虞があるため好ましくない。通気部のHDDは、13以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは17以上、45以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは35以下である。
真空吸着法によるリフト力及びフィルター性能向上のため、通気部における通気量は、好ましくは20cm3/cm2・sec以上、より好ましくは23cm3/cm2・sec以上、更に好ましくは25cm3/cm2・sec以上、好ましくは250cm3/cm2・sec以下、より好ましくは140cm3/cm2・sec以下、更に好ましくは130cm3/cm2・sec以下である。前記通気量は、吸着プレートやフィルターの用途に応じて調整することが可能である。
面状構造体は不織布から構成されるため、面状構造体には繊維や繊維由来の物質が存在するが、通気性を高める観点から、特に通気部には繊維の絡合状態が存在していることが望ましい。
通気部の厚さは、吸着プレートとして使用される場合、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.0mm以上、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下であり、フィルターとして使用される場合は好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。通気部の厚さを前記範囲内に調整することにより、面状構造体の耐久性が向上し、吸着プレートやフィルターの長寿命化が可能となる。
通気部の目付は、好ましくは150g/m2以上、より好ましくは250g/m2以上、更に好ましくは300g/m2以上であり、好ましくは3000g/m2以下、より好ましくは1200g/m2以下、更に好ましくは1050g/m2以下である。通気部の目付を前記範囲内に調整することにより、面状構造体の耐久性が向上し、吸着プレートの長寿命化が可能となる。
一般に、吸着プレートに使用される多孔質材料の密度(見掛け比重)は1.2〜3.0g/cm3程度であるが、吸着プレートやフィルターの軽量化のため、通気部の密度は、好ましくは0.15g/cm3以上、より好ましくは0.22g/cm3以上、更に好ましくは0.28g/cm3以上であり、好ましくは0.50g/cm3以下、より好ましくは0.48g/cm3以下、更に好ましくは0.45g/cm3以下である。
通気部の形状は、円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形、ドーナツ形等、自由に選択可能である。
ワークを確実に吸着できるよう、通気部が面状構造体全体に占める割合は、適切な範囲に調整されていることが望ましい。通気部は、面状構造体の面積(片面)100area%中、好ましくは5area%以上、より好ましくは10area%以上であり、好ましくは95area%以下、より好ましくは80area%以下である。
面状構造体には、通気部が1個以上存在するが、2個以上存在するときには、これら2個以上の通気部は、面状構造体において非連続に存在している。これら2個以上の通気部において通気量及び形状は、同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
2.封止部
封止部は前記通気部よりも通気量が低い部位であるため、封止部の通気量は、好ましくは10cm3/cm2・sec以下、より好ましくは5cm3/cm2・sec以下、更に好ましくは2.5cm3/cm2・sec以下である。封止部の通気量の下限は特に限定されるものではないが、封止部の通気量は通常、0.03cm3/cm2・sec以上であるが、好ましくは0cm3/cm2・secである。封止部の通気量が前記範囲内であれば、真空吸着法において空気漏れを抑制できる。前記通気量は、吸着プレートやフィルターの用途に応じて調整することが可能である。
面状構造体は不織布から構成されるため、原料の不織布には繊維の絡合状態が存在するが、封止部の通気量を下げる観点から、特に封止部では繊維の絡合により形成される微孔が圧縮されて埋められていることが望ましい。
封止部の硬さは実仕様に合わせて調整することができ、例えば、封止部のHDDは、好ましくは65以上、より好ましくは68以上、更に好ましくは72以上であり、好ましくは85以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは79以下である。封止部のHDDが前記範囲内であれば、吸着プレートとしてもフィルターの枠としても、それぞれの製品に要求される硬さを満たす。
封止部の厚さは、吸着プレートとして使用される場合、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.0mm以上であり、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下である。封止部の厚さを前記範囲内に調整することにより、空気漏れ抑制効果が充分に発揮される。またフィルターとして使用される場合、封止部の厚さは、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
封止部の目付は、好ましくは500g/m2以上、より好ましくは1050g/m2以上、更に好ましくは1200g/m2以上であり、好ましくは10000g/m2以下、より好ましくは3500g/m2以下、更に好ましくは3000g/m2以下である。封止部の目付を前記範囲内に調整することにより、吸着プレート用途においては空気漏れ防止効果が充分に発揮される上、フィルター用途においては枠材としての強度が確保される。
また吸着プレートやフィルターの軽量化のため、封止部の密度は、好ましくは0.50g/cm3以上、より好ましくは0.60g/cm3以上、更に好ましくは0.85g/cm3以上であり、好ましくは1.50g/cm3以下、より好ましくは1.35g/cm3以下、更に好ましくは1.20g/cm3以下である。
ワークの吸着性を高める観点から、面状構造体の外周部は、主として封止部により構成されていることが好ましい。「面状構造体の外周部が主として封止部により構成される」とは、面状構造体の全周に対し、封止部が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは95%以上、特に好ましくは100%(すなわち、封止部が面状構造体の枠として存在し、通気部が前記枠内に存在している状態)で存在していることをいう。本構成により、面状構造体側部からの空気漏れを高いレベルで抑制することができる。
3.面状構造体
面状構造体は、面状(特に全面)熱プレスにより原料となる不織布が厚さ方向に圧縮されており、本操作により面状構造体の表面が平滑になることから、通気部と封止部は厚さの点でほとんど差がない。すなわち、通気部の厚さは、封止部の厚さに対して、好ましくは0.8倍以上、より好ましくは0.85倍以上、更に好ましくは0.90倍以上、より更に好ましくは0.95倍以上であり、好ましくは1.05倍以下、より好ましくは0.99倍以下、更に好ましくは0.98倍以下である。通気部と封止部の厚さを前記範囲内に調整することにより、吸着プレートとして真空吸着装置に取り付けやすくなり、また特許文献6〜7に記載の吸着プレートと比べて、通気部側面からの空気漏れを高いレベルで抑制できるようになる。
ワークを確実に吸着できるよう通気部の目付を小さくして、通気量を高くしておくことが望ましい。一方、ワークを吸着する際に、封止部の通気量を下げて空気が漏れにくくしておく必要があることから、封止部の目付は大きい方が好ましい。このような観点から、封止部に対する通気部の目付の比(通気部/封止部)は、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.4以下である。下限は特に限定されないが、封止部に対する通気部の目付の比は、通常、0.05以上、好ましくは0.1以上、0.15以上であっても差し支えない。なお特許文献6〜7では、原料の不織布に切り抜き部が存在しないため、原料の不織布積層体に全面熱プレスを行うと、熱プレス後の不織布には通気性による差が生じず、本発明のように通気部と封止部を作り分けることができない。しかし本発明では、原料として切り抜き部を有する不織布と切り抜き部を有さない不織布を使用しているため、原料の不織布積層体に面状(特に全面)熱プレスを行うと、通気部と封止部の厚さを同程度にしながらも、通気性が異なる通気部と封止部を作り分けることが可能となる。
またワークを確実に吸着できるよう、通気部と封止部の面積比も適切にコントロールされていることが望ましい。通気部と封止部の面積比(通気部/封止部)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。通気部と封止部の面積比を前記範囲内に調整することにより、吸着プレート用途ではワークの吸着性が良好なものとなり、フィルター用途においては枠に適度な強度が付与されるためフィルターの形態を維持しやすくなる。
面状構造体100質量%中、繊維及び繊維由来の物質の合計量は、50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、特に上限はないが、好ましくは100質量%であり、98質量%以下であっても差し支えない。繊維及び繊維由来の物質の合計量が前記範囲を下回ると、面状構造体の柔軟性が充分ではなく、薄いフィルムやガラスなどの柔軟なワークを吸着したときに、ワークが通気部と接触して損傷する虞があるため好ましくない。
本明細書において「繊維由来の物質」とは、繊維が物理的に変化した物質であり、繊維由来の物質には、例えば、熱溶融後の低融点繊維が含まれる。
<面状構造体の製造方法>
本発明に係る面状構造体の製造方法は、低融点繊維を有し且つ切り抜き部を有する中材用不織布(a1)と、低融点繊維を有し且つ切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)を積層して不織布積層体(a)を作製する工程、及び、前記不織布積層体(a)の少なくとも片面を、加熱された金型に接触させた状態にして、厚さ方向に面状に圧縮する工程を含むことを特徴とする。
中材用不織布(a1)の切り抜き部が存在する部分は、積層された不織布の枚数が少ないため、面状構造体では通気部を形成する。一方、中材用不織布(a1)において切り抜き部が存在しない部分は、積層された不織布の枚数が多いため、面状構造体では封止部を形成する。従来は、熱プレスする箇所を分けることで、通気部と封止部を作り分けていた。しかし本発明によれば、切り抜きを有する不織布と切り抜きを有さない不織布を積層し、これらを熱プレスするという極めて簡便な方法により面状構造体を製造できるため、本発明は、従来に比して、真空吸着法用の吸着プレートを容易に製造できる点で優れている。なお本明細書では、「全面熱プレス」とは、不織布積層体の少なくとも片面を、加熱された金型に接触させた状態にして、全面を圧縮することをいい、「熱プレス」とは、単に加熱圧縮することをいう。
図2には、本発明に係る面状構造体の製造方法を模式的に示した参考図を示す。前記不織布積層体4は、低融点繊維を有し且つ切り抜き部8を有する中材用不織布5と、低融点繊維を有し且つ切り抜き部を有さない中材用不織布6の積層構造と、任意の表材用不織布7とを含む積層構造を有する。そしてこの不織布積層体4は、面状(特に全面)熱プレスにより、繊維間が強固に接着されるとともに各層間も強固に接着され、一体化される。
1.中材用不織布の製造
以下、切り抜き部を有する中材用不織布(a1)及び切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)の製造方法について詳述する。中材用不織布(a1)及び中材用不織布(a2)は、同一の構成であっても異なる構成であってもよく、例示する繊維は、中材用不織布(a)および中材用不織布(a2)の少なくとも一方、もしくはその両方に含まれていてもよいものとする。
面状構造体は熱プレスにより一体化されるため、中材用不織布には低融点繊維が含まれている必要がある。本明細書において低融点繊維とは、融点が好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下の繊維をいう。低融点繊維の融点は使用環境に合わせて適宜選択できるが、前記範囲内であれば、高温環境下であっても変形や膨張がなく使用できる。
低融点繊維としては、不織布の製造に通常使用されるものであればよく、融点の異なる複数の樹脂を組み合わせた芯鞘構造、偏心構造、あるいはサイドバイサイド構造を有する複合繊維;変性ポリエステル繊維;変性ポリアミド繊維;変性ポリプロピレン繊維等の変性ポリオレフィン繊維等が使用できる。なお融点の異なる複数の樹脂を組み合わせた場合、融点が最も低い繊維の融点が低融点繊維の融点を代表する。前記複合繊維に使用される樹脂の組み合わせには、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリプロピレン−変性ポリプロピレン等のポリオレフィン系の組み合わせ、ポリエチレン−ポリエステル、ポリエステル−変性ポリエステル、ナイロン−変性ナイロン等が挙げられる。また融点によっては、単一の樹脂からなる低融点繊維も使用できる。低融点繊維としては、成型温度等を考慮して、最適な融点のものを用いるとよい。
中でも、生産性がよく入手が容易であることから、芯鞘構造を有する複合繊維が好ましい。芯成分は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;等が挙げられるが、中でもポリエステル系樹脂が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。鞘成分は、低融点成分としては、変性ポリエステルまたは共重合ポリエステルが好ましい。前記ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、例えば、イソフタール酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール等が例示できる。特にポリエステル系樹脂/変性ポリエステルの芯鞘構造を有する複合繊維は、繊度や融点の種類が多く、不織布製造時やプレス加工時に取り扱いやすいため好適である。
低融点繊維として硬質繊維を用いると、面状構造体の剛性を確保できることから、低融点繊維における低融点部分のガラス転移温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
低融点繊維の繊維長は、短繊維が好ましいことから、好ましくは300mm以下、より好ましくは200mm以下、更に好ましくは100mm以下であり、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、更に好ましくは20mm以上である。低融点繊維の繊維長を前記範囲内に調整することにより、繊維を交絡させやすくなり、繊維との交点が増えるため面状構造体に適度な強度を付与できるようになる。
低融点繊維の繊度は、好ましくは1dtex以上、より好ましくは1.5dtex以上、更に好ましくは2dtex以上であり、好ましくは40dtex以下、より好ましくは30dtex以下、更に好ましくは25dtex以下である。低融点繊維の繊度を前記範囲内に調整することにより、面状構造体に剛性を付与し、変形を防止することが可能となる。
中材用不織布は、同一種の低融点繊維を含んでいてもよく、異種の低融点繊維を2種以上含んでいてもよいが、熱による溶融のしやすさと剛性付与の観点から、繊度が異なる低融点繊維を2種以上含んでいることが望ましい。
第1の低融点繊維は、溶融しやすいように細径であることが好ましく、好ましくは1dtex以上、より好ましくは2dtex以上、更に好ましくは3dtex以上であり、好ましくは10dtex以下、より好ましくは7dtex以下、更に好ましくは6dtex以下である。
第2の低融点繊維は、面状構造体に剛性を付与すべく、第1の低融点繊維よりも太径であることが好ましく、好ましくは10dtex超、より好ましくは15dtex以上、更に好ましくは18dtex以上であり、40dtex以下、より好ましくは30dtex以下、更に好ましくは25dtex以下である。
第1の低融点繊維は、溶融しやすいように融点が低いことがより好ましく、第1の低融点繊維の融点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは145℃以下である。
第2の低融点繊維の融点は、好ましくは160℃超、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
第1の低融点繊維と第2の低融点繊維の質量比(第1の低融点繊維/第2の低融点繊維)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.15以上であり、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.30以下である。質量比を前記範囲内に調整することにより、溶融のしやすさと剛性付与をバランス良く発揮させることができる。
中材用不織布100質量%中、低融点繊維の合計質量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。低融点繊維の合計質量を前記範囲内に調整することにより、封止部における接着性が良好なものとなり、吸着プレートとして使用する際に通気漏れ等の不具合の発生を抑制し、真空度の低下も防止することができる。
なお後述する切り抜き部を有する中材用不織布(a1)には、熱プレスしたときに通気部と封止部の厚さの差が小さくなるよう、また封止部がより溶融して空隙を埋めることで通気量が下がるよう、中材用不織布100質量%中、低融点繊維の合計質量が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含まれていることが望ましい。
中材用不織布には、低融点繊維以外の繊維が適宜含まれていてもよい。好ましく組み合わせられる繊維としては、繊維の交点を熱融着しない非熱融着性繊維が挙げられる。前記非熱融着性繊維としては、例えば、綿、麻、毛、絹等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、レヨセル等の再生繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維等の半合成繊維;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート繊維等のポリエステル繊維;ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリロニトリル−塩化ビニル共重合体繊維等のアクリル繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;ビニロン繊維、ポリビニルアルコール繊維等のポリビニルアルコール系繊維;ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ポリクラール繊維等のポリ塩化ビニル系繊維;ポリウレタン繊維等の合成繊維;ポリエチレンオキサイド繊維、ポリプロピレンオキサイド繊維等のポリエーテル系繊維等が例示できる。中でも、不織布に適度な剛性を付与できることから、ポリエステル繊維(より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート繊維)が含まれていることが望ましい。
非熱融着性繊維には、機械捲縮(例えば、鋸歯のような細かな山状)または立体捲縮(例えば、コイル状)を有する捲縮繊維も含まれる。捲縮繊維のバネ効果により、面状構造体中の空隙を維持し、面状構造体に適度なクッション性を付与できる。そのため通気部においては適度な通気性が発揮される上、長期使用によるへたりや変形を抑制できる。また面状構造体を柔軟に仕上げることができるため、真空吸着法においては、ワークの損傷も抑制できる。捲縮繊維は、顕在捲縮繊維、潜在捲縮繊維のいずれも使用可能である。
捲縮繊維としては、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリエステル、ポリエステル−変性ポリエステル等の組み合わせに例示されるような熱収縮率の異なる樹脂からなる偏心構造を有する芯鞘繊維やサイドバイサイド構造を有する複合繊維;繊維の表側と裏側とで熱処理の程度を異ならせて立体捲縮を発現させた捲縮繊維;外力により繊維に捲縮を付与した繊維;等が例示できる。
面状構造体に含まれる捲縮繊維の捲縮数は、好ましくは3個/25mm以上、より好ましくは5個/25mm以上、更に好ましくは7個/25mm以上であり、好ましくは25個/25mm以下、より好ましくは20個/25mm以下、更に好ましくは15個/25mm以下である。捲縮数を前記範囲内に調整することにより、長期使用による変形と通気量のバランスを良くすることができる。
非熱融着性繊維には、静電気抑制効果を有する繊維が含まれていてもよい。静電気抑制繊維としては、繊維に銅等の帯電し難い金属が存在している繊維が例示でき、具体的には、銅等の金属がポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維等の表面にコーティングされている繊維等が挙げられる。静電気抑制繊維を中材用不織布に混綿しておけば、帯電防止等の後工程を省略することが可能となる。
非熱融着性繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸断面;三角形、星形、五角形等の異型断面;のいずれも使用することができる。また非熱融着性繊維は、中実繊維、中空繊維のいずれの繊維も用いることができる。
低融点繊維と必要に応じて使用される非熱融着性繊維は、共通の樹脂から構成される繊維(特に化学繊維)であるのが好ましい。共通の樹脂とは、一の樹脂とその変性樹脂とを含み、例えば、一の樹脂がポリエステル樹脂である場合、その共通の樹脂の範囲には、ポリエステル樹脂と変性ポリエステル樹脂とが含まれる。共通の樹脂を使用することで、樹脂同士の相性がよく接着性が向上するため、封止部においてはより通気量を低減させ、通気部においては耐摩耗性が向上するため好ましい。
非熱融着性繊維の繊度は、好ましくは4dtex以上、より好ましくは5dtex以上、更に好ましくは6dtex以上であり、好ましくは40dtex以下、より好ましくは30dtex以下、更に好ましくは20dtex以下である。非熱融着性繊維の繊度を前記範囲内に調整することにより、面状構造体に適度な剛性を付与することが可能となる。
非熱融着性繊維は短繊維が好ましく、その繊維長は、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であり、好ましくは300mm以下、より好ましくは100mm以下、更に好ましくは80mm以下である。非熱融着性繊維の繊維長を前記範囲内に調整することにより、繊維を交絡させやすくなり、繊維との交点が増えるため面状構造体に適度な強度を付与できるようになる。
非熱融着性繊維の融点は特に限定されないが、低融点繊維よりも高いことが好ましく、具体的に好ましくは220℃超、より好ましくは230℃以上、更に好ましくは240℃以上、より更に好ましくは250℃以上であり、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは330℃以下である。非熱融着性繊維の融点を前記範囲内に調整することにより、熱プレス時において非熱融着性繊維の溶融を抑制し、非熱融着性繊維を面状構造体の骨格として利用することが可能となる。
中材用不織布100質量%中、非熱融着性繊維の合計質量は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。非熱融着性繊維の合計質量を前記範囲内に調整することにより、面状構造体に適度な強度を付与することが可能となる。
特に通気部に適度なクッション性を付与する観点から、中材用不織布は捲縮繊維を含むことが好ましく、中材用不織布100質量%中、捲縮繊維の質量は、好ましくは5質量以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
非熱融着性繊維と低融点繊維の質量比(非熱融着性繊維/低融点繊維)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.12以上であり、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.30以下、更に好ましくは0.25以下である。質量比を前記範囲内に調整することにより、低融点繊維が有する効果と非熱融着性繊維が有する効果の両立が可能となる。
中材用不織布の目付は、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上、更に好ましくは50g/m2以上であり、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下、更に好ましくは80g/m2以下である。目付を前記範囲内に調整することにより、面状構造体の耐久性を高めることが可能となる。
中材用不織布に含まれる繊維の平均繊度は、好ましくは2.2dtex以上、より好ましくは3.5dtex以上、更に好ましくは4.0dtex以上であり、好ましくは22dtex以下、より好ましくは21dtex以下、更に好ましくは20dtex以下である。平均繊度を前記範囲内に調整することにより繊維間の空隙の大きさを制御することが可能となる。これによって、ホコリや油分などの異物が繊維間に取り込まれることによる吸着力の低下を抑制し、一方で、空隙が小さくなりすぎることによる通気量の低下を防ぐことが可能となる。
なお本明細書において「平均繊度」は、繊度の異なる複数の繊維を含む時には、各繊度の繊維の割合(重量基準)を考慮した加重平均によって求めることとする。
中材用不織布は、短繊維不織布であっても長繊維不織布であってもよいが、繊維の調達が容易であることから、短繊維不織布が好ましい。
中材用不織布の製造方法は、特に限定されるものではなく、短繊維不織布であれば、乾式法、湿式法などを適宜採用でき、長繊維不織布であればスパンボンド法を適宜採用できる。
ウェブの結合方法も特に限定されるものではなく、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)等の機械的絡合法;不織布に含まれる低融点繊維の一部又は全部を熱溶融させて、繊維交点を固着する方法(サーマルボンド法);等の各種結合方法を採用できる。機械的絡合法は任意であるが、本発明では繊維ウェブを強固に交絡させるために、ニードルパンチ法により繊維を交絡させた後、熱処理を行うニードルパンチ及びサーマルボンド法を併用することが好ましい。
ニードルパンチ法では、ニードルパンチ針番手36〜42番、針深さ4〜10mm(好ましくは5〜8mm)、打ち込み本数10〜50本/cm2(好ましくは15〜30本/cm2)の条件が好ましい。加工条件を前記範囲内に調整することによって繊維を交絡させやすくなるため面状構造体の耐久性が向上すると共に、面状構造体が固くなりすぎないように仕上げることができる。
サーマルボンド法における熱処理温度は、低融点繊維のガラス転移温度超であり、具体的には、175〜225℃が好ましく、より好ましくは190〜220℃である。また、熱処理温度は、混綿している低融点繊維の融点TLに対し、TL+10(℃)〜TL+110(℃)が好ましく、より好ましくはTL+35(℃)〜TL+90(℃)である。熱処理温度が前記範囲内であれば、低融点繊維を適度に溶融することが可能となる。加熱時間は、混綿する低融点繊維の融点や含有量を考慮して適宜設定するとよいが、15〜180秒が好ましく、より好ましくは20〜90秒である。サーマルボンド法は、例えば、所望の温度に調整した熱処理機(例えば、循環式熱風乾燥機)を用いて行うことができる。
サーマルボンド加工後、更に得られた不織布に平滑処理を施してもよい。平滑処理を行うことにより不織布を高密度にし、不織布からの繊維の脱落を抑制したり、熱プレス時に各層間の接着を強くすることができる。平滑化処理は、サーマルボンド加工後の不織布のいずれか一方の表面または両面に施すことができる。
平滑化処理は、例えば、サーマルボンド加工の不織布を加熱ロールや加熱板間に通すことで実施できる。加熱ロール及び金属板の加熱温度は、低融点繊維の溶融開始温度よりも高い温度であれば特に限定されないが、70〜220℃が好ましく、より好ましくは100〜210℃である。加熱ロールや加熱板を用いることで、不織布表面を溶融し平滑化することができる。
2.切り抜き加工
切り抜き加工では、切り抜き部を有する中材用不織布(a1)を製造する。
切り抜き部の形状は、図2に示すような円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形、ドーナツ形等から適宜選択できる。1枚の中材用不織布(a1)に複数の切り抜き部を形成する場合、切り抜き部の形状は、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、用途に応じて適宜選択するとよい。
切り抜き加工は、中材用不織布の内部に施され、該不織布の外周部は切り抜かれていないことが望ましい。外周部が切り抜かれてしまうと、ワークを吸着する際に空気が面状構造体の側部から漏れやすくなり、充分なリフト力が発揮されない虞があるためである。
切り抜き部の形状や位置を工夫することで、通気部の形状を細かく調整することができる。例えば、1つの通気部内に、低通気量の部位と高通気量の部位を2以上形成したい場合には、該通気部の形状に切り抜いた中材用不織布(a1)と、低通気量に仕上げたい部分を切り抜いた中材用不織布(a1)を作製し、これらを積層すればよい。多点吸着の場合も同様に、切り抜き部の形状や位置を調整することによって、通気量の調整が可能となる。
切り抜き部は、打抜き機、カッター、レーザー加工などにより不要な不織布を切り抜くことによって形成される。
3.積層
3−1.中材用不織布(a1)〜(a2)の積層
本工程では、切り抜き部を有する中材用不織布(a1)と切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)を積層して不織布積層体(a)を作製する。図2には、面状構造体の製造方法を模式的に示した参考図を示すが、図2に示すように、不織布積層体(a)は、切り抜き部を有する中材用不織布(a1)と切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)を含む積層構造、及び該積層構造の外側に任意で積層される表材用不織布(b)を有することが好ましい。
切り抜き部を有する中材用不織布(a1)の積層枚数は、厚さや目付により多少の増減はあるものの、好ましくは3枚以上、より好ましくは8枚以上、更に好ましくは10枚以上であり、好ましくは50枚以下、より好ましくは40枚以下、更に好ましくは35枚以下である。中材用不織布(a1)の積層枚数を前記範囲内に調整することにより、通気部と封止部の通気量を所定の範囲にコントロールしやすくなる。切り抜き部を有する中材用不織布(a1)を2枚以上積層するときは、これらの不織布は同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)の積層枚数は、厚さや目付により多少の増減はあるものの、好ましくは1枚以上、より好ましくは2枚以上、更に好ましくは3枚以上であり、好ましくは30枚以下、より好ましくは25枚以下、更に好ましくは20枚以下である。中材用不織布(a2)の積層枚数を前記範囲内に調整することにより、通気部と封止部の通気量を所定の範囲にコントロールしやすくなる。切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)を2枚以上積層するときは、これらの不織布は同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)に対する切り抜き部を有する中材用不織布(a1)の積層枚数の比(中材用不織布(a1)/中材用不織布(a2))は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.1以下である。積層枚数の比を前記範囲内に調整することにより、通気部と封止部の厚さの差を小さくしながら、これらの通気量を所定の範囲にコントロールしやすくなる。
切り抜き部を有する中材用不織布(a1)と切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)の積層方法は、
(1)いずれかの中材用不織布の積層枚数の偏りが出ないように、前記切り抜き部を有する中材用不織布(a1)の1〜5枚から構成される切り抜き構造部と、前記切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)の1〜5枚から構成される非切り抜き構造部を作製し、切り抜き構造部と非切り抜き構造部を交互に3層以上積層する方法;
(2)前記切り抜き部を有する中材用不織布(a1)のみからなる1つの切り抜き構造部と、前記切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)のみからなる1つの非切り抜き構造部とを有し、切り抜き構造部と非切り抜き構造部が隣り合うように積層する方法;
等を含む。熱プレス時に面状構造体にシワ等が発生しないよう、該積層方法としては(1)が好ましい。
中材用不織布に静電気抑制繊維が含まれる場合、静電気抑制繊維を含む中材用不織布の積層枚数が少なくても充分な静電気抑制効果が発揮されるため、高価な静電気防止繊維の使用をごく少量にして価格の上昇を抑えることも可能となる。静電気抑制繊維を含む中材用不織布の積層枚数は好ましくは3枚以下、より好ましくは2枚以下、更に好ましくは1枚である。また、静電気抑制繊維を含む中材用不織布は不織布積層体(a)の表側に積層されている方が静電気抑制効果は発揮されやすく好ましいため、該不織布は、不織布積層体(a)の表側から1〜5枚目(好ましくは1〜3枚目、より好ましくは1〜2枚目、更に好ましくは1枚目)の位置に積層されていることが望ましい。
熱プレス前の不織布積層体(a)は、中材用不織布(a1)〜(a2)を含み、且つ、面状構造体が熱プレスにより製造可能な限り、中材用不織布(a1)〜(a2)以外の層を含んでいてもよい。中材用不織布(a1)〜(a2)以外の層は、低融点繊維を含む層であっても、低融点繊維を含まない層であってもよい。
3−2.表材用不織布の積層方法
不織布積層体(a)は、中材用不織布(a1)〜(a2)以外の層として表材用不織布を含むこともできる。表材用不織布は、面状構造体の表面をより平滑にするために積層される層であり、該不織布は、少なくとも不織布積層体(a)の最外層として積層されていることが好ましい。
表材用不織布は、面状構造体の表面を平滑化するために、低融点繊維を含んでいることが望ましい。低融点繊維としては、前述した例示のものを適宜使用することができる。表材用不織布は、同一種の低融点繊維を含んでいてもよく、異種の低融点繊維を2種以上含んでいてもよいが、熱による溶融のしやすさの観点から、繊度が異なる低融点繊維を2種以上含んでいることが望ましい。
表材用不織布には、第3の低融点繊維として溶融しやすい細径の繊維を用いることが好ましく、該繊維の繊度は、好ましくは1dtex以上、より好ましくは2dtex以上、更に好ましくは3dtex以上であり、好ましくは10dtex以下、より好ましくは7dtex以下、更に好ましくは6dtex以下である。
また第4の低融点繊維として、樹脂量を増やすために、第3の低融点繊維よりも太径の繊維を用いることが好ましく、該繊維の繊度は好ましくは10dtex超、より好ましくは15dtex以上、更に好ましくは18dtex以上であり、40dtex以下、より好ましくは30dtex以下、更に好ましくは25dtex以下である。
第3の低融点繊維と第4の低融点繊維は、融点が同程度であっても(例えば、融点の差が0〜15℃)、それぞれ異なっていてもよいが(例えば、融点の差が15℃超)、熱プレス時にできるだけ多くの低融点繊維を溶融させて面状構造体の表面を平滑化するために、第3の低融点繊維と第4の低融点繊維の融点は同程度であることが好ましく、第3の低融点繊維と第4の低融点繊維の融点の差は、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下である。
具体的に、第3の低融点繊維および第4の低融点繊維の融点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは145℃以下である。
第3の低融点繊維と第4の低融点繊維の質量比(第3の低融点繊維/第4の低融点繊維)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは2.0以上であり、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.0以下である。質量比を前記範囲内に調整することにより、低融点繊維をできるだけ多く溶融させることが可能となる。
表材用不織布には、低融点繊維以外の繊維が適宜含まれていてもよく、好ましく組み合わせられる繊維としては、非熱融着性繊維が挙げられる。非熱融着性繊維は前述した例示のものを適宜使用することができるが、表材用不織布には、面状構造体の静電気抑制効果を高めるため、静電気抑制繊維が含まれているとよい。
表材用不織布100質量%中、低融点繊維の合計質量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%であるが、98質量%以下であっても差し支えない。低融点繊維の量が増える程、表材に用いたときに面状構造体の表面が平滑になるため、耐摩耗性に優れた面状構造体が得られる。
表材用不織布に含まれる繊維の平均繊度は、面状構造体の表面を平滑化しやすくするため、好ましくは1.3dtex以上、より好ましくは3.0dtex以上、更に好ましくは5.0dtex以上、より更に好ましくは6.0dtex以上であり、好ましくは12dtex以下、より好ましくは11dtex以下、更に好ましくは10dtex以下である。
表材用不織布の目付は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上、更に好ましくは15g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは60g/m2以下、更に好ましくは40g/m2以下、より更に好ましくは35g/m2以下である。目付を前記範囲内に調整すれば、表材用不織布に含まれる繊維の機能が充分に発揮されるため好ましい。
表材用不織布の製造方法は、中材用不織布の製造方法を参照するとよいが、表材用不織布は好ましくは短繊維不織布であり、該不織布は、ニードルパンチ法により繊維を交絡させずに、熱処理を行うサーマルボンド法により製造されることが望ましい。また表材用不織布のいずれか一方の表面または両面には平滑化処理が施されていることが望ましい。
表材用不織布には、切り抜き部が存在していても存在していなくてもよいが、面状構造体の表面をより平滑にしておけば、吸着プレートとして用いたときにワークを安定して吸着できるため、表材用不織布には切り抜き部が存在していないことが望ましい。
不織布積層体において、表材用不織布は、少なくとも吸着面に積層されていることが好ましく、不織布積層体の両面に積層されていることが望ましい。表材用不織布の積層枚数は、1枚でも2枚以上であってもよいが、好ましくは2枚である。なお表材用不織布を複数積層する場合は、表材用不織布はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
前記中材用不織布及び表材用不織布は、いずれも必要に応じて、後工程を実施してもよい。後工程としては、着色処理、帯電防止処理、撥水処理、防汚処理などの機能性付与加工が挙げられる。機能性付与加工では、着色剤、帯電防止剤、撥水剤、防汚剤等の機能剤を含むバインダー樹脂を、熱プレス後の不織布積層体に、含漬、噴霧、塗布する(なお塗布液には、発泡させたバインダー樹脂も含まれる)とよい。
4.面状(又は全面)熱プレス
前記工程で得られた不織布積層体(a)の少なくとも片面を、加熱された金型に接触させた状態にして、圧縮することにより、不織布に混綿された低融点繊維が融着して、繊維間が強固に接着されるとともに各層間も強固に接着され、通気部と封止部の厚さの差が殆どなく一体化される。前記融着とは、低融点繊維が少なくともその表面で一旦融解することで他の繊維と一体化した状態をいい、低融点繊維の少なくとも一部の形状が崩れている点、複数の繊維が溶融固化した低融点繊維を介して結合している点で元の状態とは物として相違した状態である。
熱プレスに使用される金型は、板状、お椀状、山と谷を有する凹凸状等、自由に選定できる。面状構造体の表面を平滑にするために、金型の表面は平坦であることが望ましい。
熱プレス時の処理温度は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上であり、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。処理温度を前記範囲内に調整することにより、不織布同士の接着力が向上するため好ましい。また処理温度が前記範囲を下回ると、面状構造体の表面を充分に平滑化できず、更には通気部や封止部に適度な硬さを付与できない虞があるため好ましくない。
同様の理由から、熱プレス時の処理時間は、好ましくは100秒以上、より好ましくは150秒以上、更に好ましくは200秒以上であり、好ましくは1000秒以下、より好ましくは800秒以下、更に好ましくは700秒以下である。
熱プレス時、前記工程で得られた不織布積層体(a)の少なくとも片面またはその両面は、加熱された金型に接触していることが好ましい。また熱プレス時には、熱源が面状構造体の吸着面となる側にあると、面状構造体の吸着面をより高温で加熱処理できるため、面状構造体の表面の凹凸が減少し、これにより面状構造体の表面が平滑化されてワークの変形を抑制できる。また面状構造体の耐摩耗性が向上することにより、繊維の毛羽立ちや毛抜けを防止できるため、フィルターとして使用したときにも繊維の脱落による不具合を抑制できるため効果的である。
熱プレス後の不織布積層体には、後工程を実施してもよい。後工程としては、中材用不織布及び表材用不織布で説明した後工程と同様の工程が実施できる。
原料繊維に付着する繊維油剤により、ワークが滑りやすくなるといった影響が生じる場合には、繊維油剤を除去するために、不織布製造前後及び/または熱プレス前後において、繊維、不織布または不織布積層体を洗浄するとよい。
<用途>
本発明に係る面状構造体は、真空吸着装置用の吸着プレートや、フィルターとして使用することができる。
図3に、面状構造体を吸着プレートとして使用する場合の一態様を示す。真空吸着装置14は、ベースボディ11、ベースボディ11内に形成された流路に接続する真空ポート12、及び前記流路を介して真空ポート12の他端に存在する吸引部13を有する。吸引部13が存在する側に、吸着プレート(面状構造体)1が載置されるが、このとき吸着プレート1の通気部2と吸引部13と接するようにして載置されることが望ましい。このような吸着プレート1を用いると、吸引部13による吸引力によってワーク10を固定することが可能となる。
なお吸着プレート1とベースボディ11との間に、弾性部材(スポンジなどの発泡体、不織布など)を設置してもよい。弾性部材を設置すると、ベースボディ11と吸着プレート1との間に隙間が形成されるのを防止でき、またワーク10を吸着する時の衝撃を緩衝でき、真空吸着の質が向上する。
吸着プレートの大きさは、その使用環境に応じて適宜調整可能であるが、面積は2〜1500cm2、形状は通常円形・四角形(長方形・正方形)などである。また面状構造体は軽量であるため、駆動に対する負荷が少なく大型なワークの真空吸着にも適している。更に、面状構造体は柔軟であるため、薄いフィルムやガラスなどの柔軟なワークの移送にも適している。
また面状構造体をフィルターとして使用する場合、具体的な用途としては、液体処理用フィルター、ビルや工場などの空調用エアフィルター、エアコン・空気清浄器用のエアフィルターなどが好ましい。本発明に係る面状構造体によれば、アルミ枠などの取り付けが不要となり、設置、交換及び処分が容易になるからである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
<評価方法>
面状構造体の評価は以下の方法に基づいて行った。
(1)目付; JIS L1913 6.2に準ずる。
(2)厚さ; JIS L1913 6.1Bに準ずる。
(3)密度; 目付を厚さで除し、単位をg/cm3に換算する。
(4)通気量; JIS L1913 6.8.1に準ずる。
(5)硬さ(HDD); JIS K7215(デュロメータのタイプD)に準じて計測する。厚さが6mm以下の場合は、面状構造体を積層して計測する。
(6)表面平滑性; 面状構造体の表面を目視、触感により凹凸の有無を観察し、以下の基準に基づいて評価する。
◎:凹凸がなくとても滑らかである。
○:凹凸がなく滑らかである。
△:凸がなく滑らかであるが、凹がある。
<不織布の製造>
不織布Aは、下記表に示す繊維を混綿しカード機より紡出した繊維ウェブを115℃の熱ロールを通過させて巻き取ることにより製造した。
不織布Bは、下記表に示す繊維を混綿しカード機より紡出した繊維ウェブを、ニードルパンチ機により片面から打ち込み本数20本/cm2、針深さ6mmで交絡させた後、200℃に保った熱風処理機で30秒間処理し、その後200℃の熱ロールを通過させて巻き取ることにより製造した。
不織布Cは打ち込み本数を60本/cm2、針深さを9mmで両面からニードルパンチ加工する以外は不織布Bと同様にして製造した。
不織布Dは混綿する繊維を下記表の通りに変更し、かつ打ち込み本数60本/cm2、針深さ9mmで片面からニードルパンチ加工する以外は不織布Bと同様にして製造した。
表中、「LPET」は芯鞘構造を有する低融点繊維(芯:PET、鞘:変性ポリエステル)であり、「PET」は、中実且つ機械捲縮(9個/25mm)を有するポリエステル繊維である。
実施例1
切り抜き部を有する中材用不織布(a1)として、不織布Bの内部を、打抜き機で直径12mmの円形に切り抜いた不織布(円形は2cm×2cmあたり1個形成した。)を14枚と、切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)として、不織布Bの内部を切り抜かない不織布を5枚準備した。中材用不織布(a1)と(a2)をそれぞれ、積層枚数の偏りが出ないように比較的均一に積層した後、得られた積層体の両面に不織布Aをそれぞれ1枚ずつ積層した。
21枚の不織布が積層された不織布積層体を、加熱板の温度が120℃である熱プレス機で、不織布積層体の両面が加熱板に接触した状態で600秒間プレスした。冷却後、周囲をカットして6cm×10cmの面状構造体を製造した。
実施例2〜3
実施例2では、切り抜き部を有する中材用不織布(a1)として、不織布Bの内部を、打抜き機で12mm×12mmの四角形に切り抜いた不織布(四角形は2cm×2cmあたり1個形成した)を使用した。
実施例3では、切り抜き部を有する中材用不織布(a1)として、不織布Bの内部を、打抜き機で50mm×110mmの四角形に切り抜いた不織布を使用した。
上記以外は、実施例1と同様にして面状構造体を製造した。
比較例1〜5
比較例1では、不織布Cと不織布Dをそれぞれ1枚ずつ積層した後、表に示す条件で不織布積層体の外周部を幅15mmで全周に亘って熱プレスすることで面状構造体を製造した。
比較例2では、中材用不織布として、切り抜き部を有さない不織布Bのみを用いて、通気部が存在しない面状構造体を製造した。
比較例3では、切り抜き部を有さない不織布Bの積層枚数を減らし、全面に亘って通気性が良好な(すなわち、封止部が存在しない)面状構造体を製造した。
比較例4では、市販の吸着プレートとしてPP樹脂の焼結体を用いた。
比較例5では、市販の面状構造体としてフッ素系樹脂の焼結体を用いた。
上記表に示すように、本発明に係る面状構造体は、不織布を原材料とするため、適度な柔軟性と通気性を有しながら、溶融・固化した低融点繊維の存在により所望の硬さも有している。また面状構造体は、不織布積層体を全面熱プレスすることで製造されるため、積層する不織布の特徴を適宜変化させることで、低コストで簡便に密度や通気量の調整が可能となる上、面状構造体表面を平滑にすることも可能となる。
実施例1〜3からは、積層する不織布の目付、厚さ、枚数等により、面状構造体の通気量や厚さが調整可能なことが分かる。また通気部の形状も任意に設定可能である。
実施例1〜3と比較例1を対比すると、特許文献6〜7に記載の方法では、通気部と封止部の厚さの差が大きいため、近年では、このような吸着プレートに合致する真空吸着装置を見つけることが困難であり、また通気部側面からの空気漏れが発生しやすいため好ましくない。
実施例2と比較例2〜3を対比すると、封止部のみまたは通気部のみでは、通気量や硬さの点で所望の性能が発揮されないことが分かる。
実施例1〜3と比較例4〜5を対比すると、市販の焼結体では表面の平滑性が充分ではない。
1 面状構造体
2 通気部
3 封止部
4 不織布積層体(a)
5 切り抜き部を有する中材用不織布(a1)
6 切り抜き部を有さない中材用不織布(a2)
7 表材用不織布
8 切り抜き部
10 ワーク
11 ベースボディ
12 真空ポート
13 吸引部
14 真空吸着装置

Claims (9)

  1. 不織布から構成される面状構造体であって、
    1つ以上の通気部と、前記通気部よりも通気量が低い1つ以上の封止部の両方を面内に有し、
    前記通気部のJIS K7215に準拠して測定される硬さであるHDDが15以上45以下であることを特徴とする面状構造体。
  2. 前記封止部のJIS K7215に準拠して測定される硬さであるHDDが65以上85以下である請求項1に記載の面状構造体。
  3. 通気部の通気量が20cm3/cm2・sec以上250cm3/cm2・sec以下であり、封止部の通気量が0cm3/cm2・sec以上10cm3/cm2・sec以下である請求項1または2に記載の面状構造体。
  4. 前記通気部の厚さが、前記封止部の厚さに対して、0.8倍以上1.05倍以下である請求項1〜3のいずれかに記載の面状構造体。
  5. 前記封止部に対する前記通気部の目付の比(通気部/封止部)が、0.05以上0.70以下である請求項1〜4のいずれかに記載の面状構造体。
  6. 通気部の密度が0.15g/cm3以上0.50g/cm3以下であり、封止部の密度が0.50g/cm3以上1.50g/cm3以下である請求項1〜5のいずれかに記載の面状構造体。
  7. 面状構造体の表面には、融点が80℃以上220℃以下の低融点繊維が溶融固化した状態で存在している請求項1〜6のいずれかに記載の面状構造体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の面状構造体を含む真空吸着法用吸着プレート。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の面状構造体を含むフィルター。
JP2016053089A 2016-03-16 2016-03-16 面状構造体、およびその使用方法 Active JP6798661B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016053089A JP6798661B2 (ja) 2016-03-16 2016-03-16 面状構造体、およびその使用方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016053089A JP6798661B2 (ja) 2016-03-16 2016-03-16 面状構造体、およびその使用方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017166091A JP2017166091A (ja) 2017-09-21
JP6798661B2 true JP6798661B2 (ja) 2020-12-09

Family

ID=59912936

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016053089A Active JP6798661B2 (ja) 2016-03-16 2016-03-16 面状構造体、およびその使用方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6798661B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20230256550A1 (en) * 2020-07-30 2023-08-17 Fanuc Corporation Auxiliary sheet, auxiliary sheet manufacturing method, and suction-attachment method

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6071419A (en) * 1993-10-20 2000-06-06 Products Unlimited, Inc. Fluid filter, method of making and using thereof
JPH111855A (ja) * 1997-06-04 1999-01-06 Toray Ind Inc 熱圧着繊維シートの製造方法
JPH11267079A (ja) * 1998-03-25 1999-10-05 Uni Charm Corp 多層構造の清掃用物品
JP3164417U (ja) * 2010-09-16 2010-11-25 呉羽テック株式会社 不織布製吸着プレート
JP2013034923A (ja) * 2011-08-05 2013-02-21 Japan Vilene Co Ltd 難燃性フィルタ
JP2014195031A (ja) * 2013-03-29 2014-10-09 Japan Vilene Co Ltd 通気性シート

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017166091A (ja) 2017-09-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4486562B2 (ja) 内燃機関エアクリーナ用濾材およびエアクリーナエレメント
JP4880934B2 (ja) 積層体及び濾過材
US6149702A (en) Filtering medium for air filters and process for producing the same
JP6172924B2 (ja) エアフィルター又はマスク用不織布基材の製造方法
CN105188878B (zh) 空气过滤器滤材的制造方法、空气过滤器滤材及空气过滤器部件
JP5918641B2 (ja) プリーツ型エアフィルタ用濾材及びプリーツ型エアフィルタユニット
JPWO2005107920A1 (ja) エアーフィルター材
JP6725311B2 (ja) フィルタ濾材及びフィルタユニット
JP6798661B2 (ja) 面状構造体、およびその使用方法
JP2008055270A (ja) エアフィルタ用濾材、それを用いた吹流し形フィルタ、並びにエアフィルタ用濾材の製造方法
JP2009050851A (ja) エアフィルタ用濾材の製造方法
JP5525977B2 (ja) 不織布製吸着プレート
JP2015100895A (ja) 研磨パッド及び研磨パッドの製造方法
JP6310414B2 (ja) 粒状綿シート
KR101765823B1 (ko) 기능성 시트의 제조방법
JP2018023913A (ja) エアフィルタ
JP5106207B2 (ja) タイルカーペット
KR101230248B1 (ko) 집진 필터용 제전 세사 부직포
KR102620412B1 (ko) 반도체 cmp공정용 cmp필터 및 그 제조방법
JP2002136814A (ja) フィルタ素子及びフィルタ
JP4421257B2 (ja) 塗装ブース用フィルター
JP6681160B2 (ja) 自動車エンジン用濾材
JP3121671U (ja) 塗装ブース用ロール巻フィルター
JP2022088699A (ja) マスク
CZ27192U1 (cs) Vrstvený materiál/textilie pro leštění tvrdých povrchů

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20160523

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160523

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20190207

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190207

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200109

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200121

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200317

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200707

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200831

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201006

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201105

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6798661

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250