[実施形態]
以下に本発明の一実施形態にかかる車上無線通信システム1を説明する。図1は列車9に配置された車上無線通信システム1の全体構成を模式的に示した図である。列車9は縦列に連結されたn台の車両(ただし、nは任意の自然数)、すなわち車両91(1)、車両91(2)、・・・、車両91(n)で構成される。以下、車両91(1)、車両91(2)、・・・、車両91(n)を「車両91」と総称する。先頭車両である車両91(1)には、列車9の走行等の各種制御を行う制御装置92が配置されている。
車両91の各々は2台の台車を備える。k番目(ただし、kは1≦k≦nの任意の自然数)の車両91、すなわち車両91(k)は台車93A(k)と台車93B(k)を備える。以下、台車93A(1)、台車93B(1)、台車93A(2)、台車93B(2)、・・・、台車93A(n)、台車93B(n)を「台車93」と総称する。
また、車両91の各々は2組のセンサ群を備える。車両91(k)はセンサ群94A(k)とセンサ群94B(k)を備える。以下、センサ群94A(1)、センサ群94B(1)、センサ群94A(2)、センサ群94B(2)、・・・、センサ群94A(n)、センサ群94B(n)を「センサ群94」と総称する。センサ群94は、車両91の状態を示す各種の物理量(振動、温度等)を測定するセンサの集まりである。
制御装置92はセンサ群94により測定された各種の物理量に基づき車両91の状態を特定し、特定した状態に応じた各種制御を行う。そのため、列車9の上に縦列に配置された2n組のセンサ群94の各々により測定された物理量を示すデータ(以下、「測定値データ」という)は、例えば所定時間の経過毎に、制御装置92に送信される必要がある。
車上無線通信システム1は列車9の上に縦列配置されたセンサ群94の各々による測定値を示す測定値データを制御装置92に送信するためのシステムである。車上無線通信システム1は、まず、車両91(1)に配置された車上無線通信装置である主局11を備える。
車上無線通信システム1は、さらに、台車93の各々に配置された車上無線通信装置である従局を備える。台車93A(k)には、従局12A(k)が配置され、台車93B(k)には従局12B(k)が配置されている。以下、従局12A(1)、従局12B(1)、従局12A(2)、従局12B(2)、・・・、従局12A(n)、従局12B(n)を「従局12」と総称する。
車上無線通信システム1は、さらに、車両91(1)を除く車両91(k)の前端面に配置され、車両91(k)の前方の車両91の後端面までの距離を測定する距離センサ13A(k)と、車両91(k)の後端面に配置され、車両91(k)の後方の車両91の前端面までの距離を測定する距離センサ13B(k)を備える。以下、距離センサ13B(1)、距離センサ13A(2)、距離センサ13B(2)、・・・、距離センサ13A(n)、距離センサ13B(n)を「距離センサ13」と総称する。なお、距離センサ13の方式は、互いに隣接する2つの車両91間の距離を測定可能であれば、レーザ式、超音波式等のいずれであってもよい。
従局12A(k)および距離センサ13A(k)は、台車93A(k)が車両91(k)に取り付けられた後に従局12A(k)に有線接続され、当該有線接続は、台車93A(k)が車両91(k)から取り外される前に解除される。同様に、従局12B(k)および距離センサ13B(k)は、台車93B(k)が車両91(k)に取り付けられた後に従局12B(k)に有線接続され、当該有線接続は、台車93B(k)が車両91(k)から取り外される前に解除される。
車上無線通信システム1は、さらに、携帯電話通信網等の広域無線通信網を介して主局11とデータ通信を行う管理装置14を備える。管理装置14は、複数の列車9の各々に配置された主局11から当該列車9の状態を示すデータを受信し、受信したデータに基づき列車9の各々の走行に関する各種指示を示すデータを生成し、生成したデータを主局11に送信する。列車9の各々に配置された制御装置92は、主局11を介して管理装置14から受信するデータに従い、列車9の走行に関する各種制御を行う。
図2は主局11の構成を模式的に示した図である。主局11は各種データ処理を行うプロセッサ111と、各種データを記憶するメモリ112と、制御装置92との間で有線通信を行う有線通信ユニット113と、従局12との間で無線通信を行う車上無線通信ユニット104と、管理装置14との間で無線通信を行う広域無線通信ユニット115を備える。メモリ112には、主局11を他の全ての車上無線通信装置から識別する識別データである局IDが記憶されている。
図3は従局12の構成を模式的に示した図である。従局12は各種データ処理を行うプロセッサ121と、各種データを記憶するメモリ122と、センサ群94および距離センサ13との間で有線通信を行う有線通信ユニット123と、主局11および他の従局12との間で無線通信を行う車上無線通信ユニット104を備える。メモリ122には、従局12を他の全ての車上無線通信装置から識別する識別データである局IDが記憶されている。
主局11が備える車上無線通信ユニット104と、従局12が備える車上無線通信ユニット104は同じ構成を備える。図4は車上無線通信ユニット104の構成を模式的に示した図である。車上無線通信ユニット104は、2つのアンテナ、すなわち、第1アンテナ1041と第2アンテナ1042を備える。第1アンテナ1041は電波の送信と受信を行い、第2アンテナ1042は電波の受信を行う。第1アンテナ1041と第2アンテナ1042は、車両の進行方向を横断する方向、すなわち左右方向に並んで配置されている。
車上無線通信ユニット104は、さらに、第1アンテナ1041に接続された第1無線モジュール1043と、第2アンテナ1042に接続された第2無線モジュール1044を備える。第1無線モジュール1043と第2無線モジュール1044はプロセッサ111またはプロセッサ121に接続されている。
第1無線モジュール1043は送信する電波の変調および受信した電波の復調を行うモジュールであり、プロセッサ111またはプロセッサ121から送信を指示されたデータを示す電波を第1アンテナ1041に発生させるとともに、第1アンテナ1041が受信した電波が示す各種データをプロセッサ111またはプロセッサ121に出力する。また、第1無線モジュール1043は、第1アンテナ1041が受信した電波の波形を示すデータをプロセッサ111またはプロセッサ121に出力する。
第2無線モジュール1044は第2アンテナ1042が受信した電波の波形を示すデータをプロセッサ111またはプロセッサ121に出力する。
プロセッサ111またはプロセッサ121は、第1アンテナ1041が受信した電波の波形を示すデータと、第2アンテナ1042が受信した電波の波形を示すデータを車上無線通信ユニット104から受け取ると、それらの電波の波形の位相差を算出する。第1アンテナ1041と第2アンテナ1042が受信する電波の位相差は、車上無線通信ユニット104からみた電波の送信元の方向が、車両91の前後方向からずれる程、大きくなる。
図5は、第1アンテナ1041と第2アンテナ1042が受信する電波の位相差φと、車両91の前後方向Xを基準とする車上無線通信ユニット104からみた電波の送信元の方向Yの時計回りの角度θとの関係を説明するための図である。図5から明らかなように、角度θが大きくなる程、位相差φは大きくなる。なお、第1アンテナ1041と第2アンテナ1042の距離をLとし、電波の1周期分の波長をλとすると、角度θは以下の式1で表される。
プロセッサ111およびプロセッサ121は、車上無線通信ユニット104が受信した電波の位相差φの絶対値が所定の閾値以下であれば、その電波の送信元は車上無線通信ユニット104が配置されている車両91が載っている軌道と同じ軌道に載っている車両91に配置されている主局11または従局12である、と判定する。一方、プロセッサ111およびプロセッサ121は、車上無線通信ユニット104が受信した電波の位相差φの絶対値が所定の閾値を超過する場合、その電波の送信元は車上無線通信ユニット104が配置されている車両91が載っている軌道と異なる軌道に載っている車両91に配置されている主局11または従局12である、と判定する。
車上無線通信システム1を構成する主局11および従局12は列車9の編成の変更に伴い変化する。従って、列車9の編成に変更があると、編成が変更された後の列車9に配置されている主局11および従局12をノードとして含む新たなネットワークの構成が行われる必要がある。
本願において、ネットワークの構成とは、少なくとも主局11が、同じ列車9に配置されている従局12の各々から送信されるデータを受信するために必要な情報を取得する処理を意味する。本実施形態においては、ネットワークの構成において、主局11は同じ列車9に配置されている従局12の局IDと、それらの従局12の位置(主局11から何番目に近い従局12であるか)を示すノードIDとの対応関係を示すデータを取得し、従局12の各々は、自局の属するネットワークを識別するネットワークIDと、自局のノードIDを取得する。すなわち、主局11と従局12がこれらのデータを取得することにより、各従局12から送信されるデータを主局11が受信可能となる。
以下に車上無線通信システム1がネットワークの構成のために行う動作を説明する。列車9の編成が変更されると、作業員は主局11に対し、ネットワークの構成を指示する所定の操作を行う。当該操作に応じて、主局11は図6に示すフローに従う処理を行う。主局11は、まず、新たなネットワークIDを生成する(ステップS101)。ステップS101において、主局11は、例えば主局11の局IDとその時点の時刻とを組み合わせる等の方法により、過去に自局が生成したネットワークIDや他の主局11が生成する可能性のあるネットワークIDと異なるネットワークIDを生成する。続いて、主局11はメモリ112にそれまで記憶していたネットワークIDおよびノードテーブル(図8)を削除し、新たに生成したネットワークIDをメモリ112に記憶するとともに、新たなノードテーブルを生成し記憶する(ステップS102)。続いて、主局11は生成したネットワークIDを示す電波を送信する(ステップS103)。
ステップS102において主局11がネットワークIDを送信すると、通常、送信したネットワークIDに対する応答として、近隣に配置されている従局12から、ネットワークIDと送信元の従局12の局IDを示す電波が送信されてくる。いずれかの従局12からネットワークIDと局IDを示す電波が送信されてきた場合、主局11は図7に示すフローに従う処理を行う。主局11は、まず、送信されてきたネットワークIDと局IDを示す電波を受信する(ステップS201)。
続いて、主局11は受信した電波が示すネットワークIDが、ステップS102において送信したネットワークIDと一致するか否かを判定する(ステップS202)。通常、ステップS102において送信したネットワークIDとステップS201において受信したネットワークIDは一致する(ステップS202;Yes)。ただし、何らかのエラーによりそれらのネットワークIDが一致しない場合(ステップS202;No)、主局11は処理を終了する。
ステップS102において送信したネットワークIDに対する応答として、複数の従局12の各々からネットワークIDと局IDを示す電波が送信されてくる場合がある。従って、主局11はステップS201において複数の電波を受信し、ステップS202においてそれらの複数の電波の各々が示すネットワークIDがステップS102において送信したネットワークIDと一致すると判定した場合(ステップS203;Yes)、ステップS201において受信した複数の電波のうち電波強度が最大であった電波が示すネットワークIDと局IDを選択する(ステップS204)。ステップS202において、ステップS102において送信したネットワークIDと一致すると判定したネットワークIDが1つのみの場合(ステップS203;No)、主局11はステップS204の選択を行わず、次に説明するステップS205へと処理を進める。
続いて、主局11は、ステップS201において受信した電波(複数ある場合は電波強度が最大のもの)が示す局ID(電波の送信元の従局12の局ID)にノードID「1」を割り当て、局IDとノードIDの対応関係を示すデータをメモリ112に記憶する(ステップS205)。
図8は、主局11がメモリ112に記憶する局IDとノードIDの対応関係を示すテーブル(以下、「ノードテーブル」という)のデータ構成を例示した図である。ノードテーブルは、ネットワークに属するノードの各々に応じたレコードの集まりであり、フィールド[局ID]とフィールド[ノードID]を備える。これらのフィールドには、ステップS205において局IDとノードIDが格納される。
主局11は、ステップS205(図7)においてノードテーブルに局IDとノードIDを記憶すると、続いて、ネットワークID(ステップS102に送信したネットワークIDと同じもの)と、局ID(ステップS205においてノードIDを割り当てた局ID)と、ノードID(ステップS205において局IDに割り当てたノードID)を示す電波を送信する(ステップS206)。
ステップS206においてネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波を送信した後、主局11は近隣の従局12からネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波を受信する場合がある。この電波が示すデータは、列車9に配置されたいずれかの従局12が自局に割り当てられたノードIDを取得したことを示すとともに、自局の局IDと自局に割り当てられたノードIDのノードテーブル(図8)に対する登録をリクエストするデータである。
いずれかの従局12からネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波が送信されてきた場合、主局11は図9に示すフローに従う処理を行う。主局11は、まず、送信されてきたネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波を受信する(ステップS301)。
続いて、主局11は受信した電波が示すネットワークIDが、ステップS101において送信したネットワークIDと一致するか否かを判定する(ステップS302)。それらのネットワークIDが一致しない場合(ステップS302;No)、主局11は処理を終了する。一方、それらのネットワークIDが一致した場合(ステップS302;Yes)、主局11は受信した電波が示す局IDとノードIDがノードテーブル(図8)に既に格納されているか否かを判定する(ステップS303)。受信した電波が示す局IDとノードIDが既にノードテーブルに格納済みである場合(ステップS303;Yes)、主局11は処理を終了する。一方、受信した電波が示す局IDとノードIDがノードテーブルに格納されていない場合(ステップS303;No)、主局11は局IDとノードIDをノードテーブルに格納する(ステップS304)。
以上が、ネットワークの構成において主局11が行う処理である。続いて、ネットワークの構成において従局12の各々が行う処理を説明する。従局12の近隣に配置された主局11または他の従局12がネットワークIDを示す電波を送信する場合がある。主局11または他の従局12からネットワークIDを示す電波が送信されてきた場合、従局12は図10に示すフローに従う処理を行う。従局12は、まず、ネットワークIDを示す電波を受信する(ステップS401)。
続いて、従局12は、受信した電波の位相差の絶対値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS402)。受信した電波の位相差の絶対値が所定の閾値を超える場合(ステップS402;No)、従局12は処理を終了する。一方、受信した電波の位相差の絶対値が所定の閾値以下である場合(ステップS402;Yes)、従局12は受信した電波が示すネットワークIDが、その時点でメモリ122に記憶しているネットワークID(従局12がそれまで属していたネットワークを識別するネットワークID)と一致するか否かを判定する(ステップS403)。
受信したネットワークIDがメモリ122に記憶しているネットワークIDと一致する場合(ステップS403;Yes)、従局12は処理を終了する。一方、受信したネットワークIDがメモリ122に記憶しているネットワークIDと一致しない場合(ステップS403;No)、従局12は受信したネットワークIDと自局の局IDを示す電波を送信する(ステップS404)。ステップS404において送信されるデータは、主局11または他の従局12に対し自局に対するノードIDの割り当てをリクエストするデータである。
上記のように従局12から送信されたネットワークIDと局IDを示す電波は、近隣の主局11または他の従局12により受信される。主局11がネットワークIDと局IDを示す電波を受信した場合、主局11は既に説明したように、図7に示すフローに従う処理を行う。従局12が他の従局12から送信されたネットワークIDと局IDを示す電波を受信した場合も、当該電波を受信した従局12は図7に示すフローに従う処理を行う。ただし、従局12が図7に示すステップS202において、受信したネットワークIDと比較するネットワークIDは、後述する図11に示すフローのステップS506において送信したネットワークIDである。また、従局12が図7に示すステップS205において他の従局12に割り当てるノードIDは、自局に割り当てられているノードIDより1だけ大きいノードIDである。
主局11または従局12がステップS206において送信するネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波は、近隣の従局12に受信される。ネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波が送信されてきた場合、従局12は図11に示すフローに従う処理を行う。従局12は、まず、ネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波を受信する(ステップS501)。
続いて、従局12は、受信した電波の位相差の絶対値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS502)。受信した電波の位相差の絶対値が所定の閾値を超える場合(ステップS502;No)、従局12は処理を終了する。一方、受信した電波の位相差の絶対値が所定の閾値以下である場合(ステップS502;Yes)、従局12は受信した電波が示す局IDが自局の局IDであるか否かを判定する(ステップS503)。
受信した電波が示す局IDが自局の局IDである場合(ステップS503;Yes)、従局12は受信した電波が示すネットワークIDとノードIDを新たなネットワークIDおよび新たに自局に割り当てられたノードIDとしてメモリ122に記憶する(ステップS504)。続いて、従局12は自局に接続されている距離センサ13の測定値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS505)。距離センサ13の測定値が所定の距離以下である場合(ステップS505;Yes)、従局12はステップS501において受信した電波が示すネットワークIDを示す電波を送信する(ステップS506)。
ステップS506において従局12が送信する電波は、当該従局12が自局より後ろに配置されている他の従局12に対し新たなネットワークIDを通知するために送信する電波である。従って、距離センサ13の測定値が所定の距離を超えている場合(ステップS505;No)、従局12は自局が列車9の末尾に配置されていると認識し、ステップS506におけるネットワークIDの送信を行わず、処理を終了する。
ステップS503において、ステップS501において受信した局IDが自局の局IDではない場合(ステップS503;No)、従局12は受信したネットワークIDがメモリ122に記憶しているネットワークIDと一致するか否かを判定する(ステップS507)。それらのネットワークIDが一致しない場合(ステップS507;No)、従局12は処理を終了する。一方、それらのネットワークIDが一致する場合(ステップS507;Yes)、従局12は受信したノードIDが自局のノードIDより大きいか否かを判定する(ステップS508)。受信したノードIDが自局のノードIDより小さい場合(ステップS508;No)、従局12は処理を終了する。一方、受信したノードIDが自局のノードIDより大きい場合(ステップS508;Yes)、従局12はステップS501において受信したネットワークID、局IDおよびノードIDを示す電波を送信する(ステップS509)。
以上が、ネットワークの構成において従局12が行う処理である。図12は、上述した主局11および従局12の処理により、同じ列車9に配置された主局11と従局12が新しいネットワークを構成する処理のシーケンスを示した図である。
まず、主局11が新たに生成したネットワークIDを送信する(ステップS001)。ステップS001において送信されたネットワークIDは従局12A(1)により受信される。従局12A(1)はステップS001において受信したネットワークIDと自局の局IDを送信する(ステップS002)。ステップS002において送信されたネットワークIDと局IDは主局11により受信される。主局11はステップS002において受信した局IDに対しノードIDを割り当て、局IDとノードIDをノードテーブルに格納する(ステップS003)。
続いて、主局11はネットワークIDと、ステップS003においてノードテーブルに格納した局IDおよびノードIDを送信する(ステップS004)。ステップS004において送信されたネットワークID、局IDおよびノードIDは、従局12A(1)により受信される。従局12A(1)はステップS004において受信したネットワークIDとノードIDを記憶する(ステップS005)。これにより、従局12A(1)がネットワークに属するノードとして主局11に登録されたことになる。
続いて、従局12A(1)はステップS005において記憶したネットワークIDを送信する(ステップS006)。ステップS006において送信されたネットワークIDは従局12B(1)により受信される。従局12B(1)はステップS006において受信したネットワークIDと自局の局IDを送信する(ステップS007)。ステップS007において送信されたネットワークIDと局IDは従局12A(1)により受信される。従局12A(1)はステップS007において受信した局IDに対しノードIDを割り当て、ネットワークID、ステップS007において受信した局IDおよび割り当てたノードIDを送信する(ステップS008)。
ステップS008において送信されたネットワークID、局IDおよびノードIDは従局12B(1)と主局11により受信される。従局12B(1)はステップS008において受信したネットワークIDとノードIDを記憶する(ステップS009)。また、主局11はステップS008において受信した局IDとノードIDをノードテーブルに格納する(ステップS010)。これにより、従局12B(1)がネットワークに属するノードとして主局11に登録されたことになる。
続いて、従局12B(1)はステップS009において記憶したネットワークIDを送信する(ステップS011)。その後、上述した従局12A(1)と従局12B(1)により行われたステップS007〜S009と同様の処理が、従局12B(1)と従局12A(2)により行われる(ステップS012〜S014)。
ステップS013において従局12B(1)から送信されたネットワークID、局IDおよびノードIDは、従局12A(2)に加え、従局12A(1)によっても受信される。従局12A(1)はステップS013において受信したネットワークID、局IDおよびノードIDを送信する(ステップS015)。ステップS015において送信されたネットワークID、局IDおよびノードIDは主局11により受信される。主局11はステップS015において受信した局IDとノードIDをノードテーブルに格納する(ステップS016)。これにより、従局12A(2)がネットワークに属するノードとして主局11に登録されたことになる。
上述した従局12A(1)、従局12B(1)、従局12A(2)をネットワークに属するノードとして主局11に登録するための処理と同様の処理が、従局12B(2)〜従局12B(n)に関して順次行われる。その結果、主局11のメモリ112に記憶されるノードテーブルには、全ての従局12に関し局IDとノードIDの対応関係を示すデータが格納される。また、従局12の各々のメモリ122には、新たなネットワークIDとノードIDが記憶される。
上記のようにネットワークの構成が行われると、主局11と従局12の各々はデータ(以下、ネットワークID、局IDおよびノードIDと区別するために、「実データ」という)の送受信を行うことが可能となる。従局12が主局11または他の従局12から送信された実データを示す電波を受信した場合、従局12は図13に示すフローに従う処理を行う。従局12は、まず、実データを示す電波を受信する(ステップS601)。実データには、ネットワークIDと、送信元の主局11または従局12のノードIDが伴っている。
従局12は、ステップS601において受信したネットワークIDがメモリ122に記憶しているネットワークIDと一致するか否かを判定する(ステップS602)。それらのネットワークIDが一致しない場合(ステップS602;No)、従局12は処理を終了する。一方、それらのネットワークIDが一致する場合(ステップS602;Yes)、従局12はステップS601において受信したノードIDとメモリ122に記憶している自局のノードIDを比較する(ステップS603)。
受信したノードIDが自局のノードIDより1だけ小さい場合(ステップS603;1)、従局12は受信した実データに応じた処理を行う(ステップS604)。続いて、従局12は距離センサ13の測定値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS605)。距離センサ13の測定値が所定の閾値を超える場合(ステップS605;No)、従局12は処理を終了する。一方、距離センサ13の測定値が所定の閾値以下である場合(ステップS605;Yes)、従局12は実データと、ネットワークIDおよび自局のノードIDを示す電波を送信する(ステップS606)。
ステップS601において受信したノードIDが自局のノードIDより1だけ大きい場合(ステップS603;2)、従局12は受信した実データに応じた処理を行う(ステップS607)。続いて、従局12は実データと、ネットワークIDおよび自局のノードIDを示す電波を送信する(ステップS606)。
なお、従局12がステップS606において送信する実データは、例えば、ステップS601において受信した実データと同じデータ、ステップS604またはステップS607において生成したデータ等である。
ステップS601において受信したノードIDが自局のノードIDより2以上大きい場合、もしくは2以上小さい場合(ステップS603;3)、従局12は処理を終了する。
図13のフローに従う処理を従局12の各々が行うことにより、主局11から従局12B(n)に向かい実データがリレー式に順次送信され、また、任意の従局12から主局11に向かい、実データがリレー式に順次送信される。
主局11の近隣の従局12から実データを示す電波が送信されると、主局11は図14に示すフローに従う処理を行う。主局11は、まず、実データを示す電波を受信する(ステップS701)。実データには、ネットワークIDと、送信元の従局12のノードIDが伴っている。
主局11は、ステップS701において受信したネットワークIDがメモリ112に記憶しているネットワークIDと一致するか否かを判定する(ステップS702)。それらのネットワークIDが一致しない場合(ステップS702;No)、主局11は処理を終了する。
一方、それらのネットワークIDが一致する場合(ステップS702;Yes)、主局11はステップS701において受信したノードIDが「1」であるか否かを判定する(ステップS703)。受信したノードIDが「1」でない場合(ステップS703;No)、主局11は処理を終了する。一方、受信したノードIDが「1」である場合(ステップS703;Yes)、主局11は受信した実データに応じた処理を行う(ステップS704)。
なお、主局11が従局12A(1)から受信する実データは、例えば、従局12の各々に接続されたセンサ群94による測定値を示す測定データ等である。
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態および以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
(1)上述した車上無線通信システム1において、従局12は台車93に配置される。これに代えて、従局12が車両91に配置されてもよい。また、車両91に配置される従局12の数は2つに限られない。
(2)上述した車上無線通信システム1において、車上無線通信ユニット104が備える第1アンテナ1041は電波の送信と受信を行う。これに代えて、第1アンテナ1041が電波の受信のみを行い、車上無線通信ユニット104が電波の送信を行うための第3アンテナと、プロセッサ111またはプロセッサ121から送信を指示されたデータを示す電波を第3アンテナに発生させる第3無線モジュールを備える構成が採用されてもよい。
(3)上述した車上無線通信システム1は、主局11において生成されたネットワークIDがリレー式に従局12に順次送信されることによって、同じネットワークIDが主局11および従局12で共有される。これに代えて、主局11および従局12の各々が管理装置14(地上側の装置)から同じネットワークIDを受信してもよい。この場合、従局12の各々は管理装置14との間で携帯電話通信網等を介してデータ通信を行う広域無線通信ユニットを備える。また、管理装置14には、例えば管理者により、同じ列車9に配置される主局11および従局12の携帯電話通信網等におけるネットワークID(例えば、携帯電話番号)が登録されている。管理装置14は、登録されているそれらのネットワークIDを用いて主局11および従局12に対し、列車9において構成されるネットワークのネットワークIDを通知する。
この変形例による場合、同じ列車9に配置される主局11と従局12はネットワークの構成を行う前に同じネットワークIDが通知されるため、主局11および従局12はネットワークの構成において、受信した電波が示すネットワークIDに基づき、その電波の送信元の車上無線通信装置が同じ列車9に配置されている車上無線通信装置であるか否かを判定することができる。従って、この変形例において、車上無線通信ユニット104は2つのアンテナを備える必要はなく、主局11および従局12は位相差に基づく判定を行う必要はない。
(4)上述した車上無線通信システム1が、距離センサ13に代えて、互いに隣接する車両91間の連結の状態を検知する連結センサを備える構成が採用されてもよい。
(5)上述した車上無線通信システム1において、ネットワークの構成は、作業員等が主局11に対し所定の操作を行うことにより開始されるものとした。ネットワークの構成のトリガは作業員等による操作に限られない。例えば、所定時間の経過毎にネットワークの構成が行われてもよい。また、距離センサ13による測定の結果と所定の閾値との比較結果に応じて、ネットワークの構成が開始されてもよい。また、車上無線通信システム1が距離センサ13に代えて連結センサを備える場合、連結センサにより検知される車両間の連結状態の変化に応じて、ネットワークの構成が開始されてもよい。
(6)上述した車上無線通信システム1において、車上無線通信ユニット104は2つのアンテナを備えるものとしたが、車上無線通信ユニット104が3以上のアンテナを備えてもよい。