JP6797027B2 - メタドヘリン−snd1相互作用を遮断するペプチドの癌の治療としての使用 - Google Patents

メタドヘリン−snd1相互作用を遮断するペプチドの癌の治療としての使用 Download PDF

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Description

関連出願
本出願は、2014年6月25日出願の米国特許仮出願第62/016,947号の優先権の利益を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
政府認可
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号R01CA134519及びR01GM096060の下、政府支援を得て行われた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
技術分野
本開示は、癌を治療し、腫瘍の成長、再発、及び転移を低減する方法に関し、該方法は、メタドヘリン(MTDH)とブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)との相互作用を遮断し、MTDH−SND1複合体の機能を阻害する阻害剤を投与することを含む。該阻害剤は、SND1に結合するMTDHのペプチドもしくは断片、またはメタドヘリンに結合するSND1由来のペプチドもしくは断片を含むことが企図される。
参照による組み込み
本明細書と同時に提出され、以下、2015年6月24日に作成された「48166_SeqListing.txt」という名前の17,037バイトのASCIIテキストファイルとして特定される、コンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列の一覧が、参照によりその全体が組み込まれる。
癌は、激しい遺伝的及び後生的変化によって特徴付けられる。反復DNAコピー数の変化は、多くの場合、影響を受けた遺伝子座における癌の主要な駆動因子の存在を示す。メタドヘリン(MTDH;AEG1、LYRICとも呼ばれる)は、乳癌の不良な無再発生存率と関連付けられる頻繁に増幅されるゲノム遺伝子座、8q22に常在する転移促進性遺伝子として以前に特定された(Huら、2009)。MTDHの過剰発現が、原発腫瘍の40%超において観察され、独立した予後不良因子である(Huら、2009)。原発乳房腫瘍において何がMTDHの強い選択を駆り立てるのかは明確でなく、正常な発達及び腫瘍形成におけるMTDHの機能的重要性は依然として良く理解されていない。
細胞培養または異種移植モデルを使用する最近の研究は、増殖、細胞死、浸潤、及び血管新生を含むいくつかの癌関連プロセスにMTDHが関係していることを示したが(Emdadら、2013)、これらのプロセスにおけるMTDHの根底にある機構の理解は、今日まで限られたままである。乳癌において、MTDHは、癌細胞の肺内皮への接着を媒介する膜貫通タンパク質であると仮定された(Brown及びRuoslahti、2004)。ある特定の癌の型において、MTDHは、PI3K/AKT及びNF−κBなどの複数の発癌経路と関連付けられてきた(Emdadら、2013)。MTDHがどのようにこれらの経路を調節するかは依然として理解困難である。高等脊椎動物において進化的に保存されたが、MTDHは、認識可能な機能ドメインを含まず、その生物学的機能に関する理解を困難にする。複数のグループは、PLZF、BCCIPα、及びブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)を含むいくつかのMTDH結合パートナーを特定した(Wan及びKang、2013)。しかしながら、これらのタンパク質との相互作用がMTDHの機能を媒介するかどうか、及びその方法は主に不明である。
乳癌は、遺伝子発現プロファイルに基づいて管腔様及び基底様亜型に広く分類され得る異質性疾患である(Perouら、2000)。異なる発癌シグナル伝達が異なる細胞源を標的とすることができ、故に乳癌の異なる亜型の形成につながると推測された。しかしながら、異なる発癌遺伝子誘発性乳房腫瘍における腫瘍開始細胞(TIC)の起源、特定、及び調節は、十分に特徴付けられていないままである。マウスにおける自発性腫瘍形成は、腫瘍開始中の早期変化を追跡するため、及びTICの形質転換及び増殖を媒介することにおける関心対象の遺伝子の役割を調査するための優れたモデルを提供する。
本開示は、メタドヘリン(MTDH)が、管腔型及び基底型両方の乳腺腫瘍開始細胞(TIC)及び前立腺腫瘍の増殖及び機能に重要であり、種々の腫瘍亜型においてMTDHを過剰発現する選択圧を強調することを示した。MTDHの、SND1とのその保存された相互作用に対する機能的依存性は、MTDH−SND1複合体を標的とすることが、TICの増殖を予防することによって、正常組織への影響を最小限に抑えながら腫瘍の開始、再発及び転移を制御する機会を提供し得ることを示唆する。
本開示は、対象における腫瘍開始細胞の再発または増殖を予防または低減するための方法を提供し、該方法は、MTDHとSND1との相互作用を干渉する薬剤を投与することを含む。本開示はまた、癌を有する対象における癌を治療するための方法を提供し、該方法は、MTDHとSND1との間の相互作用を妨害する阻害剤を該対象に投与することを含む。
様々な実施形態において、この阻害剤は、配列番号1に記載されるMTDHの残基364〜582(例えば、MTDHのアミノ酸364〜407)内のヒトMTDHの領域に結合する。いくつかの実施形態において、阻害剤は、SND1 SN1/2ドメインに結合する。いくつかの実施形態において、阻害剤は、配列番号2に記載されるSND1の残基16〜339(例えば、SND1のアミノ酸39〜43)内のヒトSND1の領域に結合する。様々な実施形態において、本開示は、対象における腫瘍開始細胞の増殖を低減または減少させるための方法を提供し、該方法は、メタドヘリン(MTDH)とブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)との間の相互作用の阻害剤を投与することを含み、該阻害剤が、メタドヘリン(配列番号1)の残基364〜407内のSND1タンパク質相互作用を阻害する。
様々な実施形態において、対象は癌を有する。本明細書において企図される例示的な癌としては、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、扁平上皮癌、子宮頸癌、膀胱癌、ならびに詳細な説明において列挙されるものが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、癌は、乳癌及び前立腺癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、癌は肝臓癌である。
MTDH/SND1阻害剤は、MTDHのペプチド、SND1のペプチド、MTDHの残基393〜403を含むペプチドと同様の構造を有するペプチド模倣体、MTDHの残基393〜403を含むペプチドと同様の構造もしくはその構造の一部を有する小分子化合物、または本明細書に記載されるペプチドもしくはペプチド模倣体を含有するナノ粒子抱合体であることが企図される。
様々な実施形態において、阻害剤は、ペプチドである。例えば、様々な実施形態において、ペプチドは、コンセンサス配列XWXXXXXXWXX(配列番号3)を含み、Xが任意のアミノ酸である。様々な実施形態において、ペプチドは、MTDHの残基393〜403(配列番号2)からのコンセンサス配列XWXXXXXXWXX(配列番号3)を含み、Xが任意のアミノ酸である。様々な実施形態において、阻害剤は、コンセンサス配列XWXXXXXWXX(配列番号4)を含むペプチドであり、Xが任意のアミノ酸である。様々な実施形態において、阻害剤は、i)MTDHの残基364〜582内のペプチド、ii)MTDHの残基364〜407内のペプチド、iii)MTDHの残基386〜407を含むペプチド、またはiv)MTDHの残基393〜403を含むペプチドから選択されるMTDHのペプチドである。様々な実施形態において、阻害剤は、i)配列番号1の残基364〜582から本質的になるペプチド、ii)MTDHの残基364〜407を有するペプチド、iii)配列番号1の残基386〜407から本質的になるペプチド、またはiv)配列番号1の残基393〜403から本質的になるペプチドから選択されるMTDHのペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチドは、本明細書に記載される野生型MTDHペプチドのうちのいずれかの変異型であり、該変異型ペプチドは、W394及びW401を保持し、その位置は、野生型MTDHのアミノ酸配列(すなわち、配列番号1)に基づく。
様々な実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)またはその変異型を含み、該変異型ペプチドは、W残基を除く任意の位置に少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9つのうちのいずれか)の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、約11〜約22アミノ酸長(例えば、約15〜約22アミノ酸長)である。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)またはその変異型に対してN末端側の1、2、3、4、5、6、または7つのアミノ酸のうちのおよそいずれかを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)またはその変異型に対してC末端側の1、2、3、または4つのアミノ酸うちのおよそいずれかを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPEEWGN(配列番号20)またはその変異型を含み、該変異型ペプチドが、W残基を除く任意の位置に少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9つのうちのいずれか)の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、約10〜約21アミノ酸長である(例えば、約14〜約21アミノ酸長)。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPEEWGN(配列番号20)またはその変異型に対してN末端側の1、2、3、4、5、6、または7つのアミノ酸のうちのおよそいずれかを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPEEWGN(配列番号20)またはその変異型に対してC末端側の1、2、3、または4つのアミノ酸うちのおよそいずれかを含む。
様々な実施形態において、ペプチドは、D389、A392、D393、N395、E399、E400、W404、D406、及びE407からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸残基において、MTDH内の突然変異を含み、そのアミノ酸位置は、野生型MTDH配列(すなわち、配列番号1)に基づく。様々な実施形態において、ペプチドは、D389R、D393R、E399R、E400R、W404D、D406R、及びE407Rからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸残基において、MTDH内の突然変異を含み、その位置は、野生型MTDH配列(すなわち、配列番号1)に基づく。様々な実施形態において、突然変異は、配列番号1のD389R、D393R、E399R、E400R、W404D、D406R、及びE407Rからなる群から選択される。
様々な実施形態において、阻害剤は、SND1(すなわち、配列番号2)の残基16〜339内のSND1のペプチドである。一実施形態において、SND1ペプチドは、F250、R324、R255、R327、R324、P39、P43、E247、L256、H279、I284、L287、R259、及びN281からなる群から選択される1つ以上の残基において突然変異を含み、その位置は、野生型SND1配列(すなわち、配列番号2)に基づく。様々な実施形態において、SND1内の突然変異は、配列番号2のF250A、R324E、及びR255Eからなる群から選択される。
阻害剤ペプチドは、融合タンパク質の一部であることが本明細書において企図される。ある特定の実施形態において、ペプチドは、Fcドメインに融合される。
本開示はまた、本明細書に記載されるMTDH/SND1阻害剤、及び薬学的に許容される担体を含む組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。また、単離されたペプチド阻害剤(例えば、本明細書に記載されるペプチドのうちのいずれか1つ)も提供される。本出願は、本明細書に記載されるペプチド阻害剤(ならびにそのようなペプチド阻害剤を含む組成物)のうちのいずれか1つを作製及び使用する方法をさらに提供する。
したがって、例えば、いくつかの実施形態において、対象におけるMTDHとSND1との間の相互作用を妨害する方法が提供され、該方法は、上記のペプチド阻害剤(またはそのようなペプチド阻害剤を含む薬学的組成物)のうちのいずれか1つを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象における生存促進性遺伝子のSND1依存的発現を阻害する方法が提供され、該方法は、上記のペプチド阻害剤(またはそのようなペプチド阻害剤を含む薬学的組成物)のうちのいずれか1つを対象に投与することを含む。
また、本明細書に記載されるMTDHノックアウト及びノックダウンモデル、ならびに本明細書に記載されるSND1ノックダウンモデルを含む、MTDH及びSND1の阻害剤を研究するために有用な動物も企図される。
また、MTDHとSND1との間の相互作用の阻害剤を特定するために有用なMTDHとSND1との間の結合の結晶構造も企図される。
Mtdhの体系的欠失が、乳房腫瘍の形成及び転移を阻害することを示す。(図1A)WT及び突然変異Mtdh対立遺伝子の概略図。緑色のボックスは、エクソン1〜12を表す。遺伝子型判定に使用されるプライマー(F、順方向;R、逆方向)は、対応するゲノム配列の上に示される。(図1B)X−gal染色によって可視化された10.5日目のWT及びKO胚内のLacZ発現。(図1C)示されるMtdh遺伝子型を有する8週齢の雌マウスから新たに解離されたMECにおけるMTDHタンパク質免疫ブロット。(図1D)示されるMtdh遺伝子型のMMTV−PyMT雌における乳房腫瘍発症の動態。Mtdh+/+(n=13)、Mtdh+/−(n=26)、及びMtdh−/−(n=30)。(図1E)(図1D)と同じマウス群における示される年齢での無腫瘍乳腺の割合。(図1F)示される年齢で評価されたPyMT;Mtdh+/+、PyMT;Mtdh+/−、及びPyMT;Mtdh−/−群の総腫瘍量。Mtdh+/+群とMtdh−/−群との間で統計比較を行った。データは、平均±SEM(n>20)を表す。(図1G)PyMT;Mtdh+/+(n=15)、PyMT;Mtdh+/−(n=11)、及びPyMT;Mtdh−/−(n=14)動物における肺転移小結節の数。エラーバーは、5〜95パーセンタイルを表す。(H)示される遺伝子型のMMTV−ErbB2マウスにおける乳房腫瘍発症の動態。Mtdh+/+(n=22)、Mtdh+/−(n=31)、及びMtdh−/−(n=27)。(図1I)300日齢で示される数の腫瘍を担持する(図1H)と同じ群からのマウスの割合。(図1J)Mtdh+/+(n=30)及びMtdh−/−(n=23)群からの担腫瘍MMTV−ErbB2マウスにおける肺転移の発生率。(図1K)(図1J)からの同じマウス群における肺切片当たりの転移病変の数。エラーバーは、5〜95パーセンタイルを表す。(図1L)示される遺伝子型のMMTV−Wntマウスにおける乳房腫瘍発症の動態。Mtdh+/+(n=31)、Mtdh+/−(n=48)、及びMtdh−/−(n=31)。(図1M)300日齢で示される数の腫瘍を担持する(L)と同じ群からのマウスの割合。(図1N)示されるように(上)、MPA及びDMBAで治療された、示されるMtdh遺伝子型を有するマウスにおける乳房腫瘍発症の動態。腫瘍潜伏を、最初のDMBA治療後の日数として記録した。Mtdh+/+(n=19)、Mtdh+/−(n=13)、及びMtdh−/−(n=10)。(図1O)4ヶ月齢で示される数の腫瘍を担持する(図1N)と同じ群からのマウスの割合。統計:(図1D、図1H、図1L、図1N)対数順位検定。(図1E、図1I、図1J、図1M、図1O)カイ二乗検定。(図1G、図1K)マン・ホイットニー検定。(図1F)スチューデントt検定。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。 Mtdh−/−マウスからの乳腺が、発癌遺伝子誘発性増殖及び腫瘍形成能の欠陥を呈することを示す。(図2A)示される遺伝子型の6週齢雌の乳腺からのCD45−CD31−TER119−(Lin−)MECのフローサイトメトリー。(図2B、図2C)(図2A)において解析された管腔型(図2B)及び基底型(図2C)細胞の定量(n=4)。(図2D)MMTV−PyMT(n=6)、MMTV−Wnt(n=4)、MMTV−ErbB2(n=6)マウスの前新生物性腺から解離されたWTまたはKO MECを用いるマンモスフェア形成アッセイ。アッセイは、各乳腺について3連で行った。(図2E)PyMT;Mtdh+/+及びPyMT;Mtdh−/−マウスの前新生物性腺から解離された未選別のMECの同所移植の3ヶ月後の乳房腫瘍発生率(左)及びサイズ(右)。(図2F)PyMT;Mtdh+/+マウスの前新生物性腺からの示される選別済みCD24+CD29低管腔型またはCD24+CD29高基底型MECの同所移植後8週間の乳房腫瘍発生率(左)及びサイズ(右)。(図2G、図2H)PyMT;Mtdh+/+及びPyMT;Mtdh−/−マウスの前新生物性腺からのLin−CD24+CD29低管腔型細胞の同所移植後8週間の乳房腫瘍発生率(図2G)及び体積(図2H)。統計:(図2B〜D)スチューデントt検定。(図2E〜H)、限界希釈解析に基づく腫瘍発生率、及びマン・ホイットニー検定に基づく腫瘍体積。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。データは、平均±SEMを表す。 MTDHが、MaSCではなく、発癌遺伝子誘発性管腔型及び基底型TICの活性に必要であることも示す。(図3A、図3B)6ヶ月齢のErbB2;Mtdh+/+(n=14)、ErbB2;Mtdh+/−(n=26)、及びErbB2;Mtdh−/−(n=16)マウスからの無腫瘍乳腺における過形成の発生率(図3A)及び重症度(B)。(図3C)CD29及びCD61マーカーを使用する、示される遺伝子型の6週齢雌の乳腺からのCD45−CD31−TER119−CD24+MECのフローサイトメトリー。これは、図3Bに示されるものと同じバッチ実験であったことに留意されたい。(図3D)(図3A)において解析されたCD24+中のCD61+細胞(上パネル)、CD24+CD29低管腔型細胞(中間パネル)、及びCD24+CD29高基底型細胞(下パネル)の割合(n=4)。データは、平均±SEMを表す。(図3E)Wnt過形成腺から解離された示される細胞集団からのCD61+またはCD61−細胞のマンモスフェア形成アッセイ。データは、平均±SEMを表す。(図3F、図3G)7ヶ月無腫瘍乳腺からの示される選別済み管腔型及び基底型集団の10000細胞の、NSGマウスへの同所移植後2ヶ月の乳房腫瘍発生率(図3F)及び腫瘍体積(図3G)。(図3H)自然発生ErbB2誘発腫瘍、及び示される移植細胞により生成された腫瘍のH&E染色。スケールバー:200μm(上)及び100μm(下)。(図3I)(図3J〜K)において使用される乳腺再構成アッセイの概略。(図3J、図3K)WTまたはKO雌バージンマウスの乳腺から解離された制限数のLin−MEC(図3J)またはLin−CD24+CD29高MEC(図3K)の、WTレシピエントの切除された(cleared)乳房脂肪体への移植を示す表。3つの独立したバッチの実験を組み合わせ、示した。(図3L)(図3K)における再構成された乳房増殖物の定量(増殖物で満たされた脂肪体領域の%)。実験群のいずれもマン・ホイットニー検定によって有意ではなかった。統計:(図3D、図3E)スチューデントt検定。(図3G)マン・ホイットニー検定。(図3A、図3F)フィッシャー直接検定。(図3B)カイ二乗検定。(図3J、図3K)限界希釈解析。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。 MTDHが、発癌遺伝子誘発性TIC機能性に本質的に必要であることを示す。(図4A)PyMT;Mtdh−/−マウスを、(Mtdh−/−+Tg)を用いるか、またはMMTV−Mtdh導入遺伝子を用いずに生成するために使用されるMMTV−Mtdh導入遺伝子構成体及び繁殖スキームの概略図。(図4B)Mtdh+/+、Mtdh−/−、またはMtdh−/−+TgマウスからのPyMT誘発腫瘍中のMTDHタンパク質レベル。(図4C)示される遺伝子型の6週齢雌の前新生物性乳腺からのLin−MEC(n=4)中のCD24+CD29低管腔型集団の定量(左棒:Mtdh−/−マウス、右棒:Mtdh−/−+Tgマウス)。(図4D)示される遺伝子型のMMTV−PyMT雌における乳房腫瘍発症の動態。Mtdh−/−(n=21)、Mtdh−/−+Tg(n=20)。図4(E)(図4D)と同じマウス群における示される年齢での無腫瘍乳腺の平均数(左棒:Mtdh−/−マウス、右棒:Mtdh−/−+Tgマウス)。(図4F)(図4D)と同じマウス群の腫瘍量。(図4G、図4H)MTDHを、2つの独立したshRNA(KD1及びKD2)によって、新たに解離されたPyMT;Mtdh+/+ pMEC内でノックダウンし、生体外マンモスフェア(図4G、n=5、各々3連、左棒:対照、中央棒:KD1、右棒:KD2)及び生体内腫瘍形成アッセイを行った(図4H、3ヶ月での発生率)。FC、倍率変化。(図4I、図4J)マウスMTDHを、新たに解離されたPyMT;Mtdh−/− pMEC内でレンチウイルス形質導入を介して発現させ、生体外マンモスフェア(図4I、n=4、各々3連、左棒:ベクター、右棒:MTDH)及び生体内腫瘍形成(図4J)アッセイを行った。(図4K)L〜Oにおける実験の概略図。(図4L)PyMT;Mtdh+/+腫瘍からのALDH陽性またはALDH陰性腫瘍細胞のマンモスフェア形成。(図4M)MTDHを、PyMT;Mtdh+/+腫瘍からの選別済みALDH+細胞内でノックダウンし、マンモスフェアアッセイを行った。(図4N)Wnt;Mtdh+/+腫瘍からのLin−CD24+CD61+またはLin−CD24+CD61−腫瘍細胞のマンモスフェア形成。(図4O)MTDHを、Wnt;Mtdh+/+腫瘍からの選別済みLin−CD24+CD61+細胞内でノックダウンし、マンモスフェアアッセイを行った。統計:(図4C、図4G、図4I、図4L〜O)スチューデントt検定。(図4D)対数順位検定。(図4E)カイ二乗検定。(図4F)マン・ホイットニー検定。(図4H、図4J)限界希釈解析。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。データは、平均±SEMを表す。 MTDHが、乳房上皮細胞の腫瘍開始活性に本質的に必要であることを示す。(図5A)MMTV−LTR(マウス乳房腫瘍ウイルス長末端反復配列)プロモータ、マウスMtdhコード配列、及びSV40ポリアデニル化配列を含むMMTV−Mtdh導入遺伝子構成体の概略図。HindIII及びEcoRI制限部位を使用して、Mtdhをクローン化し、SalI及びSpeI制限部位を使用して、マウス接合子への微量注入のための断片を線形化した。(図5B)遺伝子導入マウスの尾の切れ端から精製されたゲノムDNAをサザンブロットに供した。2つの独立した制限酵素による消化後の、1つの陽性樹立株18及び2つの陽性対照を示す。(図5C)8週齢の導入遺伝子陽性または陰性雌同腹子からの臓器内のMtdh mRNAレベル(左棒:9077 MMTV−Mtdh−/−、中央棒:9078 MMTV−Mtdh−/−、右棒:9079 MMTV−Mtdh−/−)。全てのマウスは、野生型の内在性Mtdh対立遺伝子を内包する。(図5D)MMTV−Mtdh導入遺伝子を有するか、または有しないPyMT;Mtdh−/−マウスからの自発性PyMT誘発腫瘍のH&E染色。スケールバー:200μm(上)及び100μm(下)。(図5E)MTDHを、2つのshRNA(KD1及びKD2)によって、ErbB2;Mtdh+/+pMEC(n=5)内でノックダウンし、マンモスフェア形成アッセイを、各独立試料について3連で行った(左棒:対照、中央棒:KD1、右棒:KD2)。データは、平均±SEMを表す。***スチューデントt検定によるp<0.001。(図5F)ベクター対照またはMtdh発現レンチウイルスのいずれかで形質導入されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞を注入したFVBマウスにおける乳房腫瘍発症(左)及び成長(右)の動態(n=10)。p値は、対数順位検定(左)及びスチューデントt検定(右)に基づく。(図5G、図5H)ベクター対照またはMtdh発現レンチウイルスのいずれかで形質導入されたpMEC(2つの独立したPyMT;Mtdh−/−マウスから)の同所移植後の乳房腫瘍発生率。(図5I)PyMT;Mtdh+/+腫瘍由来の細胞におけるALDH活性の代表的なフローサイトメトリー解析。DEAB阻害剤で処理された試料がゲート制御として機能した。(図5J)(図5I)からのALDH陽性及び陰性腫瘍細胞を移植したマウスにおける乳房腫瘍発症(n=10)の動態。p値は、対数順位検定に基づく。 SND1は、MTDH媒介性腫瘍開始に必須であることを示す。(図6A)PyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞におけるMTDH再発現及びSND1ノックダウンの組み合わせ。SND1 KD及びMTDH再発現の効率を、ウェスタンブロットによって評価した。(図6B、図6C)生体外マンモスフェア(図6B)及び生体内腫瘍形成(図6C、6週)アッセイを、(図6A)において生成された細胞を用いて行った。+/−は、(図6A)におけるウェスタンブロットに基づいて、示されたタンパク質が存在するか(+)、または不在であるか(−)を示す。(図6D)SND1を、PyMT;Mtdh+/+またはWnt;Mtdh+/+ pMEC細胞内でノックダウンし、マンモスフェアアッセイを3連で行った。(図6E、図6F)対照またはSND1−KD PyMT;Mtdh+/+ pMECの同所移植後の腫瘍発生率(図6E)及び体積(図6F)。統計:(図6B、図6D)スチューデントt検定。(図6C、図6E)限界希釈解析。(図6F)マン・ホイットニー検定。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。データは、平均±SEMを表す。 MTDH−SND1相互作用を媒介する主要な領域及び残基の判定を表す。(図7A)示されたSND1結合能を有するMTDH断片及び突然変異体の概略。下に示される結果に基づいて、+は結合を示し、−は結合がないことを示す。2つの推定核局在化シグナルは、NLS2の場合、残基432〜451であり、NLS3の場合、残基561〜580である。最小結合領域386〜407の拡大図において、9個の残基を、現行研究における突然変異誘発のために標的とした。W394D及びW401Dは、それぞれ完全に、または強力に結合を低減した。(図7B)示される境界を有するGSTタグ付きMTDH断片によるHis6−SND1ΔCのプルダウン。結合されたタンパク質を、SDS−PAGEによって検査し、クマシーブルー染色によって可視化した。(図7C)GSTタグ付きWTまたは三重変異体MTDH断片(364〜582)によるHis6−SND1ΔCのプルダウン。(図7B)及び(図7C)について、His6−SND1ΔC入力の10分の1が示され、GST単独を陰性対照として使用した。3つの独立した実験の代表的な結果を示す。(図7D、図7E)示される異所性ヒトSND1、AGO2、またはMTDHを発現するHEK293T細胞からの溶解物を、抗Mycで免疫沈降させ、示される抗体で免疫ブロットした。 SND1結合欠乏MTDHは、MECの腫瘍開始能を促進できないことを示す。(図8A、図8E)ベクター対照、WT、または突然変異体マウスMTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/− MECからの溶解物を、抗MTDH抗体で免疫沈降させ、示されるタンパク質について免疫ブロットした。(図8B、図8F)マンモスフェアアッセイを、示されるMtdh構成体で再構成されたPyMT;Mtdh−/− pMECを用いて行った。(図8C、図8D、図8G、図8H)生体内腫瘍形成(腫瘍発生率については図8C、図8G;腫瘍体積については図8D、図8H)を、示されるWTまたは突然変異体MTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/− pMECを使用して、制限数で行った。*注記:マウスW391D MTDHは、ヒトW394D MTDHに対応し、マウスW398D MTDHは、ヒトW401D MTDHに対応する。統計:(図8B、図3F)スチューデントt検定。(図8C、図8G)限界希釈解析。(図8D、図8H)マン・ホイットニー検定。データは、平均±SEMを表す。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。 MTDHが、ストレス下で生存促進性タンパク質SND1と相互作用し、安定させることによって、生存優位性を付与することを示す。(図9A)WT(左棒)またはKO雌(右棒)の正常またはMMTV−PyMT前新生物性腺(n>3)から切断されたカスパーゼ3陽性MECの定量。(図9B)示されるMtdh構成体(左棒:VEC、中央棒:WT、右棒:W391D)で再構成されたPyMT;Mtdh−/− pMECのアポトーシスに対するCPTの効果を、PI及びヘキスト(Hoechst)染色によって判定した。(図9C)対照(左棒)またはSND1−KD(右棒)PyMT;Mtdh+/+ pMECのアポトーシスに対するCPTの効果。(図9D)対照または示される濃度で36時間、CPTで処理されたMTDH−KD PyMT;Mtdh+/+ pMEC中のSND1及びβ−アクチン(負荷対照)のタンパク質レベル。分解曲線(右)は、3つの独立した実験の平均を表す。(図9E)48時間のCPT処理後に示される構成体で再構成されたPyMT;Mtdh−/− MEC中のSND1、MTDH、及びβ−アクチン(負荷対照)のウェスタンブロット。分解曲線(右)は、3つの独立した実験の平均を表す。(図9F)対照対36時間のCPT(50μM)処理下のSND1−KD PyMT;Mtdh+/+ pMECにおけるSND1上方調節された遺伝子(n=504、倍率変化>2、p<0.05)の発現を表すマイクロアレイデータのヒートマップ表示。色キーは、対数2値を示す。(図9G)Ingenuityパスウェイ解析は、(図9F)に示されるSND1上方調節された遺伝子の上位5つの分子機能及び細胞機能、ならびに各カテゴリーに関係する分子/遺伝子の数を示す。(図9H)細胞生存及び細胞死機能におけるSND1上方調節された遺伝子の効果。Ingenuityナレッジベースによって特定される遺伝子発現変化及び遺伝子機能に基づいて、Zスコアを計算した。所与の機能は、z>2であるときに著しく増加するか、またはz<−2であるときに減少することが予想される。(図9I)W391D突然変異体MTDHで機能回復されたものと比較して、マウスWT MTDHで機能回復されたPyMT;Mtdh−/− MECにおけるSND1上方調節された遺伝子サインの強化を示すGSEAプロット。全ての細胞を、CPT(50μM)で処理した。NES:正規化されたエンリッチメントスコア(enrichment score)。統計:(図9A〜C)スチューデントt検定。データは、平均±SEMを表す。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。 MTDH及びSND1が、ヒト乳癌細胞の生体外塊形成及び生体内腫瘍開始活性に重要であることを示す。(図10A、図10B)MTDH(図10A)またはSND1(図10B)を、HMLE−Neu細胞内でノックダウンし、腫瘍様塊(tumorsphere)アッセイを3連で行った。(図10C、図10D)MTDH(図10C)またはSND1(図10D)を、BCM−4013患者由来の異種移植された(PDX)腫瘍細胞内でノックダウンし、腫瘍様塊アッセイを3連で行った。(図10E)MTDHまたはSND1を、MDA−MB−231細胞内でノックダウンし、KD効率を免疫ブロットによって測定した。(図10F)MDA−MB−231細胞の腫瘍様塊アッセイを3連で行った。(図10G、図10H)制限数のMDA−MB−231細胞の注入後5週間の腫瘍発生率(図10G)及び体積(図10H)。(図10I)ヒト浸潤性乳癌(n=154)におけるMTDH及びSND1のタンパク質レベルを、乳癌組織マイクロアレイ(BR1921a、US Biomax)のIHC染色によって判定した。腫瘍細胞内の染色強度を、0(無)、1(弱)、2(中)、3(強)として採点した。(図10J)(図10I)の棒グラフ表示。(図10K)正常な腺発達ではなく腫瘍開始におけるMTDHの重要な役割を描写する概略図。腫瘍形成中のストレス条件下で、MTDH−SND1相互作用は、SND1をストレス誘発性の分解から保護し、基底型及び管腔型両方のTICの生存及び活性を支持する。統計:(図10A〜D、図10F)スチューデントt検定。(図10G)限界希釈解析。(図10H)マン・ホイットニー検定。(図10I、図10J)カイ二乗検定。データは、平均±SEMを表す。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。 MTDH及びSND1が、ヒト乳癌においてタンパク質レベルで正の相関があり、予後不良を予測する際に協働することを示す。(図11A、図11B)MTDH(図11A)またはSND1(図11B)を、3つの独立したshRNAによってHMLE−Neu細胞内でノックダウンし、KD効率を免疫ブロットによって測定した。(図11C、図11D)MTDH(図11C)またはSND1(図11D)を、2つの独立したshRNAによってBCM−4013患者由来の異種移植された(PDX)腫瘍細胞(Zhangら、2013)内でノックダウンし、KD効率をq−PCRによって測定した。データは、平均±SEMを表す。(図11E、図11F)免疫組織化学染色に対するMTDH(図11E)及びSND1(図11F)抗体の特異性の検証。これらの抗体は、ヒト及びマウスタンパク質の両方に反応性である。(図11E)PyMT;Mtdh+/+及びPyMT;Mtdh−/−乳房腫瘍内のMTDHの代表的な免疫組織化学染色。(図11F)PyMT;Mtdh+/+対照またはSND1−KD腫瘍内のSND1の代表的な免疫組織化学染色。スケールバー:100μm。(図11G)ヒト乳腺腫瘍内のMTDH及びSND1のタンパク質レベルを、乳癌組織マイクロアレイ(YTMA_201、Cancer Institute of New Jersey)の免疫組織化学染色によって判定した。腫瘍細胞内の染色強度を、0(無)、1(弱)、2(中)、3(強)として採点した。(図11H)(図11G)の棒グラフ表示。(図11I)NKI295データセットにおけるMTDH及びSND1のmRNAレベル間の相関。(図11J、図11K)MTDH及びSND1のmRNAレベル間の、乳腺腫瘍の原発腫瘍サイズ(図11J)及び分化(図11K)との相関。(図11L)MTDH及びSND1のmRNAレベルにより階層化された乳癌患者の無遠隔転移生存率(DMFS)。図11J〜Lにおいて、NKI295ヒト乳癌データセット(van de Vijverら、2002)を使用し、試料をMTDH/SND1 mRNAレベルに基づき、中間カットオフを使用して4つの群に分割した。(図11M)MTDH mRNAレベル間の、ヒト乳癌の異なる亜型の予後との相関。KM Plotter乳癌メタ解析データベース(Gyorffyら、2010)におけるMTDH発現の中央値によって階層化された患者の無再発生存率のカプラン・マイヤープロット。統計:(図11C、図11D)スチューデントt検定。(図11G、図11H、図11J、図11K)カイ二乗検定。(図11I)ピアソン相関。(図11L、図11M)対数順位検定。***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。 MTDHレベルが、ヒト前立腺癌における腫瘍進行及び転移と関連付けられることを示す。(図12A)2つの前立腺腫瘍組織マイクロアレイを、抗MTDH抗体で染色した。MTDHレベルを、負(0)、低(1)、中(2)、または高(3)として採点した。異なる期及び遠隔転移の前立腺組織のMTDH免疫染色の代表的な画像。スケールバー、40μm。(図12C)左パネル、正常組織(n=62)及びBPN(n=10)、PIN(n=10)、原発腫瘍(n=72)及び遠隔転移(n=10)におけるMTDH発現レベル(左棒:MTDH IHCスコア0または1、右棒:MTDH IHCスコア2または3)。カイ二乗検定によりP<0.001。右パネル、PIN(n=10)及びBPH(n=10)におけるMTDHレベル(左棒:MTDH IHCスコア0、中央棒:MTDH IHCスコア1、及び右棒:MTDH IHCスコア2)。カイ二乗検定によりP=0.023。(図12B)MTDHレベルの、前立腺腫瘍グリーソンスコアとの相関。上の曲線は、平均MTDHスコア(平均±SEM)を表し、下の曲線は、示される群内の中/高レベルのMTDHを有する試料の割合を表す。(図12D)腫瘍内のMTDH発現に基づく前立腺癌患者の無再発生存率のカプラン・マイヤー解析。 MTDHゲノム増加(gain)が、前立腺癌におけるMTDHタンパク質レベル及び臨床進行と関連付けられることを示す。(図13A)前立腺腫瘍組織のマイクロアレイを、FISHによりMTDHゲノムコピー数について解析した。MTDHゲノム増加を有しない(左)または有する(右)腫瘍の例を示す。SpectrumGreen(緑色)及びSpectrumOrange(薄橙色)プローブは、それぞれ染色体8動原体及び8q22領域を検出する。スケールバー、1μm。(図13B)MTDHゲノム増加は、MTDHタンパク質レベルと相関する。MTDH増加を有する試料、n=11;MTDH増加を有しない試料、n=64。カイ二乗検定によりP=0.0018。(図13C)前立腺非癌性組織または腫瘍におけるMTDHゲノム増加の頻度。正常/良性/前悪性、n=38;原発腫瘍、n=29;遠隔転移、n=8。カイ二乗検定によるP値を示す。(図13D)腫瘍内にMTDHゲノム増加を有する、及び有しない前立腺癌患者の無再発生存率のカプラン・マイヤー解析。コックス比例ハザード比(HR)を示す。 異なるMtdhステータスを有するTRAMPマウスの世代及び特徴付けを示す。(図14A)異なるMtdhを有するC57BL/6バックグラウンドにおけるTRAMPマウスの世代についてのクロススキーム。(図14B)(図14A)において生成されたマウスの遺伝子型判定。上、検出されたWT(602bp)及びMtdhのジーントラップされた突然変異体対立遺伝子(472bp)。下、検出されたTRAMP導入遺伝子(600bp)及び内部ゲノム対照(324bp)。(図14C)qPCRによって解析された示される遺伝子型を有するマウスからの前立腺組織内のMtdh mRNA。Mtdh mRNAは、Mtdh−/−組織内で検出不可能であり、正常な腺と比較して、TRAMP陽性前立腺組織内で上昇した。**マン・ホイットニー検定に基づいてP<0.01、***p<0.001。(図14D)WT非遺伝子導入マウスからの前立腺及びTRAMP/Mtdh+/+マウスからの腫瘍におけるMtdhのウェスタンブロット解析。β−アクチンに対して正規化した後の任意のレベルのMtdhタンパク質を下に示す。E〜F、8週齢(図14E)及び28週齢(図14F)TRAMP/Mtdh+/+及びTRAMP/Mtdh−/−マウスからの前立腺におけるSV40タグ発癌タンパク質の代表的な免疫組織化学染色。スケールバー、50μm。 マウスにおけるMtdhの損失が、腫瘍形成を阻害し、腫瘍量を低減し、生存率を増加させることを示す。(図15A〜B)TRAMP/Mtdh+/+及びTRAMP/Mtdh+/−マウス(Mtdhと表される)またはTRAMP/Mtdh−/−(Mtdhと表される)から切除された下部尿生殖路の湿重量(図15A)または体重の%としての相対重量(図15B)。データは、平均±SEMを表す。マン・ホイットニー検定に基づいて**P<0.01。(図15C)示される遺伝子型を有する36週齢雄マウスから切除された下部尿生殖路の代表的な画像(B、膀胱;P、前立腺;SV、精嚢)。スケールバー、1cm。(図15D)示されるMtdh遺伝子型を有する異なる年齢のTRAMPマウスの群からの前立腺の組織学的切片を検査することによって採点された腫瘍発生率。各棒グラフの上の数は、所与の群内で検査された前立腺癌を有するマウスの数対マウスの総数を示す。*カイ二乗検定に基づいてP<0.05及び**P<0.01。(図15E)示されるMtdh遺伝子型を有するTRAMPマウスの1歳までの死亡率。***カイ二乗検定に基づいてp<0.001。 Mtdhの損失が、前立腺癌の悪性進行を阻害することを示す。(図16A)示される年齢のTRAMP/Mtdh及びTRAMP/Mtdhマウスから切り取られた前立腺のH&E染色組織学切片。スケールバー:200μm。(図16B)示される遺伝子型及び年齢を有するマウスからの各前立腺に単一の最高グレードを割り当てた。「+」及び「−」は、それぞれTRAMP/Mtdhマウス及びTRAMP/Mtdhマウスを示す。グレードスコア:1、正常;2、低グレードPIN;3高グレードPIN;4、十分に分化した腺癌及び葉状腫瘍;5、中程度に分化した腺癌;6、不十分に分化した腺癌及び神経内分泌腫瘍。グレーディングスキームは、前述の標準プロトコルに従った(Hurwitz et al.,Current protocols in immunology/edited by John E Coligan[et al].2001;;Chapter 20:Unit 20 5)。各棒の下の数は、各郡内で評価された前立腺の総数を示す。T36群におけるカイ二乗検定によってP<0.05。(図16C)Ki67陽性上皮細胞の定量。データは、平均±SEMを表す。**スチューデントt検定に基づいてP<0.01。 Mtdhの切除が、前立腺癌の全身転移を低減することを示す。(図17A)示されるMtdh遺伝子型を有する1歳のTRAMPマウス群における肺、肝臓、及びリンパ節転移の発生率。P値はカイ二乗検定に基づく。(図17B)(図17A)の棒グラフ表示(左棒:Mtdh+、右棒:Mtdh−)。 TRAMP−C1前立腺癌細胞内のMtdhのサイレンシングが、生体外の増殖及び生体内の腫瘍形成を減少させることを示す。(図18A〜B)Mtdhを、qPCR(図18A)及びウェスタンブロット(図18B)によって定量される、2つの独立したshRNAによってノックダウンした。(図18C)48時間後の対照及びMtdh−KD TRAMP−C1癌細胞の増殖率。(図18D)対照(n=16)、Mtdh−KD1(n=8)、及びMtdh−KD2(n=12)TRAMP−C1細胞を皮下的に移植した雄マウスにおける前立腺腫瘍発症の動態。p値は対数順位検定に基づく。(図18E)(図18D)における注入後5週間の腫瘍体積。***マン・ホイットニー検定に基づいてp<0.001。(図18F)(図18D)における移植後5週間で切り取られた腫瘍の画像。G、対照及びKD群において形成された腫瘍のMtdh mRNAレベル。KD群において最終的に増殖した腫瘍が、対照と同様レベルのMtdhを発現したことに留意されたい。(図18A、図18C、図18G)データは、平均±SEMを表し、P値はスチューデントt検定に基づく。**P<0.01、***p<0.001、n.s.有意でない。 SND1−MTDH相互作用のマッピング及びそれらの複合体の全体構造を示す。MTDH−SND1複合体の全体構造。2つの垂直図を示す。SND1及びMTDHのSN1及びSN2ドメインは、それぞれシアン、マゼンタ、及び黄色で色付けられる。SND1をリボン(左)及び面(右)で示す。MTDHをワーム(骨格)及び円筒(側鎖)で示す。 SN1/2と、SN3/4及びSNaseとの構造及び配列比較を表す。(図20A)SN1/2(マゼンタ、MTDHを有する複合体内)、SN3/4(青色、PDBコード:3BDL)、及びSNaseの2つのモデル(黄色、PDBコード:2ENB)の構造の立体図のオーバーレイ。Lβ2−β3ループの差は、破線の円によって強調される。(図20B)SND1及びSNaseからのSN1/2とSN3/4の配列整合。二次構造要素は、配列の上に示される。保存残基は、赤色で色付けられる。MTDHと相互作用する残基は、緑色の正方形によって特定される。ヌクレアーゼ活性に寄与するSNaseの活性部位における残基は、赤色の円によって示される。 MTDH−SND1結合界面を示す。MTDH−SND1界面の近接立体図。MTDH結合に必要なSN1 Lβ2−β3ループの固有の構造を強調表示するために、SN3ドメイン(水色)及びSNase(黄色)からのLβ2−β3ループを示す。 結合において欠乏しているMTDH及びSND1突然変異体の特定を示す。(図22A)WTまたは突然変異体配列を内包するGSTタグ付きMTDH(364〜582)によるSND1(16〜339)の生体外プルダウン。GS4Bに結合したタンパク質を、SDS−PAGE上で検査し、クマシーブルー染色によって可視化した。(図22B)GSTタグ付きMTDH(364〜582)によるWT及び突然変異体SND1(16〜339)の生体外プロダウン。結合タンパク質を(図22A)と同様に検査した。(図22A)及び(図22B)の両方について、実験を3回繰り返し、代表的な結果を示す。3回の実験から正規化した結合の割合を平均し、データを下回る平均±SEMが示された。(図22C)HEK293T細胞を、示される単一点突然変異を有するヒトHA−SND1、WT Myc−MTDH、またはMyc−MTDHで形質移入した。溶解物を抗Myc抗体で免疫沈降させ、示される抗体で免疫ブロットした。(図22D)HEK293T細胞を、示される単一点突然変異または欠失を有するヒトMyc−MTDH、WT HA−SND1、または突然変異体HA−SND1で形質移入した。溶解物を抗Mycで免疫沈降させ、示される抗体で免疫ブロットした。 SND1結合残基内の突然変異が、MTDHの腫瘍促進機能を損なうことを示す。(図23A)ベクター対照、WT、または突然変異体マウスMTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞からの溶解物を、抗MTDH抗体で免疫沈降させ、示されるタンパク質について免疫ブロットした。全てのアミノ酸注解が、ヒトMTDHに基づくことに留意されたい。ヒトMTDHのW394及びW401は、それぞれマウスMTDHにおけるW391及びW398に対応する。(図23B)マンモスフェアアッセイを、示されるMTDH構成体で再構成されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞を用いて行った。(図23C〜E)生体内腫瘍形成(腫瘍発生率については図23C、腫瘍体積については図23D、図23E)を、示されるWTまたは突然変異体MTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞を使用して、制限数で行った。統計:(図23B)スチューデントt検定。データは、平均±SEMを表す。(図23C)限界希釈解析。(図23D、図23E)マン・ホイットニー検定。**p<0.01、*p<0.05。 MTDH結合ポケット内の突然変異が、SND1の腫瘍促進機能を損なうことを示す。(図24A)ベクター対照、WT、または突然変異体shRNA抵抗性マウスのSND1で再構成されたSND1−KD PyMT;Mtdh+/+腫瘍細胞からの溶解物を、抗MTDH抗体で免疫沈降させ、示されるタンパク質について免疫ブロットした。(図24B)マンモスフェアアッセイを、ベクター対照または示されるSND1構成体で再構成されたSND1−KD PyMT;Mtdh+/+腫瘍細胞を用いて行った。(図24C、図24D)示される構成体で構成されたSND1−KD PyMT;Mtdh+/+腫瘍細胞の同所移植後の乳房腫瘍発生率(図24C)及び腫瘍成長曲線(図24D)。統計:(図24B、図24D)スチューデントt検定。データは、平均±SEMを表す。(図24C)カイ二乗検定。***p<0.01、*p<0.01、*p<0.05。 MTDH相互作用が、SND1を熱ショックストレスにより誘導される分解から保護することを示す。HEK293T細胞を、空のベクター対照または示されるWTもしくは突然変異体Myc−MTDH構成体のいずれかと一緒に、HA−SND1で形質移入した。感染の2日後に、細胞を熱ショック条件下で処理し、溶解物を示されるタンパク質について免疫ブロットした。β−アクチンを負荷対照として使用した。3つの独立した実験の代表的な結果を示す。 野生型MTDHペプチドが、MTDH−SND1相互作用を著しく遮断することを示す。HA−SND1及びMYC−MTDHで同時形質移入された293T細胞。48時間後に細胞を収集し、IPアッセイに供した。(図26A、図26B)細胞溶解物を抗HA抗体またはIgGで終夜インキュベートし、続いてタンパク質A/Gビーズで2時間インキュベートして、HA−SND1タンパク質をプルダウンした。ビーズを溶解緩衝液で洗浄し、5つの分画に分割した。各分画を、緩衝液または示されるペプチドで30分間溶出した。溶出分画及びビーズをWBのために収集した。(図26C、図26D)細胞溶解物を6つの分画に分割し、それらのうちの1つをIgGでインキュベートし、残りを抗体HA抗体プラス緩衝液または示されるペプチドのいずれかでインキュベートした。24時間後、溶解物をタンパク質A/Gビーズでインキュベートし、次にこれらのビーズを洗浄緩衝液中で洗浄した。 相互作用中断効果が、乳癌細胞系の内在性免疫沈降によって確認されたことを示す。乳癌細胞MDA−MB231を収集し、IPアッセイに供した。(図27A)細胞溶解物を抗SND1抗体またはIgGで終夜インキュベートし、続いてタンパク質A/Gで2時間インキュベートして、内在性SND1タンパク質をプルダウンした。ビーズを溶解緩衝液で洗浄し、5つの分画に分割した。各分画を、緩衝液または示されるペプチドで30分間溶出した。溶出分画及びビーズをWBのために収集した。(図27B)細胞溶解物を5つの分画に分割し、抗SND1抗体+緩衝液または示されるペプチドのいずれかでインキュベートした。24時間後、溶解物をタンパク質A/Gビーズでインキュベートし、次にこれらのビーズを洗浄緩衝液中で洗浄した。 SND1結合に対して効果を有しない、またはほとんど有しないSND1結合モチーフ内に突然変異を担持するMTDH突然変異体の特定を示す。WTまたは突然変異体配列を内包するGSTタグ付きMTDH(配列番号1のアミノ酸386〜407)によるSND1(配列番号2のアミノ酸16〜339)の生体外プルダウン。GS4Bに結合されたタンパク質をSDS−PAGE上で検査し、クマシーブルー染色によって可視化した。
本開示は、SND1とMTDHとの結合を阻害するペプチドまたは他の化合物を使用してMTDH−SND1複合体の活性を阻害することによって、癌成長及び癌転移を低減する方法を提供する。発明者らは、MTDHの欠乏が、多様な発癌遺伝子または発癌物質によって誘導される腫瘍形成を阻害することを発見した。下の結果は、MTDHが、TICに選択的に必要とされ、SND1のMTDH媒介性安定化が、ストレス下で生存優位性を付与することを示す。これは、MTDH相互作用が、生存促進性遺伝子のSND1依存的発現に必要とされるという最初の開示である。
本明細書で使用される場合、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈上別途明らかに示されない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「1つの誘導体」に対する言及は、複数のそのような誘導体を含み、「1人の患者」に対する言及は、1人以上の患者に対する言及を含むなどである。
また、「または」の使用は、別途記載されない限り、「及び/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」は交換可能であり、制限的であることが意図されない。
様々な実施形態に関する記述が「含む(comprising)」という用語を使用する場合、当業者は、いくつかの特定例において、実施形態が「から本質的になる」または「からなる」という言語を使用して代替的に記述され得ることを理解するであろうことがさらに理解される。
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び化学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似するか、または同等の方法及び材料を、開示される方法及び生成物の実施に使用することができるが、例示的な方法、デバイス、及び材料が本明細書に記載される。
上記及び本文全体で論じられる文書は、本出願の提出日前に、単にそれらの開示のために提供される。本明細書において、先行開示に基づいて発明者らがそのような開示に先行する権利がないと認められるように解釈されるべきものは何もない。各文書は、それが引用される開示を特に重視して、参照によりその全体が組み込まれる。
以下の参照文献は、本開示において使用される用語の多くの一般定義を当業者に提供する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d ed.1994)、THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.,1988)、THE GLOSSARY OF GENETICS,5TH ED.,R.Rieger,et al.(eds.),Springer Verlag(1991)、及びHale and Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
本明細書で使用される場合、「メタドヘリン(MTDH)とブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)との間の相互作用の阻害剤」または「MTDH/SND1阻害剤」は、2つのタンパク質の結合部位におけるMTDHとSND1との相互作用を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態において、阻害剤は、MTDHの残基393〜403(すなわち、配列番号1)におけるタンパク質間の結合を阻害する。追加の阻害剤は、詳細な説明においてさらに詳述される。
本明細書で使用される場合、「治療上有効な量」または「有効量」は、症状の改善、例えば、関連病態の治療、治癒、予防、もしくは改善、またはそのような病態の治療、治癒、予防、または改善の割合の増加をもたらし、典型的に、治療された患者集団において統計的に優位な改善をもたらすのに十分なペプチドまたは本明細書に記載される他の阻害剤生成物の量を指す。単独で投与される個々の活性成分について言及するとき、治療上有効な用量は、その成分単独を指す。組み合わせについて言及するとき、治療上有効な用量は、組み合わせで投与されるか否かに関わらず(連続的または同時を含む)、治療効果をもたらす活性成分の複合量を指す。様々な実施形態において、治療上有効な量のペプチドまたは他の阻害剤生成物は、食欲減退、口腔内痛、上部腹痛、疲労、腹部膨満、持続的な痛み、骨痛、吐き気、嘔吐、便秘、体重減少、頭痛、直腸出血、寝汗、消化器の不快感、及び排尿時痛が挙げられるが、それらに限定されない様々な癌と関連付けられる症状を改善する。
「治療」は、予防的治療または治療的治療を指す。ある特定の実施形態において、「治療」は、治療目的または予防目的での対象への化合物または組成物の投与を指す。
「治療的」治療は、病理の徴候または症状を呈する対象に、それらの徴候または症状を軽減または排除する目的で投与される治療である。これらの徴候または症状は、生化学的、細胞性、組織学的、機能的、または物理的、主観的もしくは客観的であり得る。
「予防的」治療は、疾患の徴候を呈しないか、または疾患の早期徴候のみを呈する対象に、病理を発達させる危険性を減少させる目的で投与される処置である。本開示の化合物または組成物は、病理を発達させる可能性を低減するか、または発達した場合に病理の重症度を最小限に抑えるために、予防的治療として付与されてもよい。
「薬学的組成物」は、ヒト及び哺乳動物を含む対象動物における薬学的使用に適した組成物を指す。薬学的組成物は、治療上有効な量のペプチドまたは本明細書に記載される他の生成物、随意に別の生物学的活性剤、及び随意に薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む。実施形態において、薬学的組成物は、活性成分、及び担体を形成する不活性成分、ならびにそれらの成分のうちの任意の2つ以上の組み合わせ、複合、もしくは凝集から、またはそれらの成分のうちの1つ以上の解離から、またはそれらの成分のうちの1つ以上の他の種類の反応もしくは相互作用から直接または間接的に生じる任意の生成物を含む組成物を包含する。したがって、本開示の薬学的組成物は、本開示の化合物及び薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を混和することによって作製される任意の組成物を包含する。
「薬学的に許容される担体」は、標準薬学的担体、緩衝液などのうちのいずれか、例えば、リン酸緩衝生理食塩液、デキストロースの5%水性溶液、及びエマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョン)を指す。賦形剤の非限定例としては、アジュバント、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、滑沢剤、滑剤、甘味剤、風味剤、及び着色剤が挙げられる。好適な薬学的担体、賦形剤、及び希釈剤は、Remington′s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.(Mack Publishing Co.,Easton,1995)に記載される。好ましい薬学的担体は、活性剤の意図される投与形態に依存する。典型的な投与形態としては、腸内(例えば、経口)または非経口(例えば、皮下、筋内、静脈内、もしくは腹腔内注入、または局所、経皮、もしくは経粘膜投与)が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」塩、エステル、または活性剤の他の誘導体は、例えば、生物学的に、またはその他の点で望ましくないわけではない材料を指す塩、エステル、または他の誘導体を含み、すなわち、その材料は、いかなる望ましくない生物学的作用をも引き起こすことなく、またはそれが含有される組成物の成分のうちのいずれかと、または個体の身体上もしくは体内に存在するいかなる成分とも有害に相互作用することなく個体に投与され得る。
本明細書で使用される場合、「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象のための単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位が、所望の効果をもたらすのに十分な量で、随意に薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、または媒体と関連して計算された既定量の本開示の化合物を含有する。本開示の新規単位剤形についての仕様は、用いられる特定の化合物、達成される効果、及び宿主内の各化合物と関連付けられる薬力学に依存する。
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、哺乳網の任意のメンバー、すなわちヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、ならびに他の猿人及びサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの農場動物;ウサギ、イヌ、及びネコなどの飼育動物;ラット、マウス、及びモルモットなどの齧歯類を含む研究室動物が挙げられるが、それらに限定されない。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。様々な実施形態において、対象はヒトである。
メタドヘリン及びSND1
メタドヘリン:メタドヘリン(MTDH、AEG−1、3D3/LYRICとしても知られる)は、乳癌の不良な無再発生存率と関連付けられる、頻繁に増幅されたゲノム遺伝子座、8q22内に常在する転移促進性遺伝子として特定された(Huら、2009)。ヒトメタドヘリンのアミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込まれるGenbank受入番号AAH45642において見出すことができ、また配列番号1として本明細書に提供される。近年、高レベルのMTDHが、20を超える癌型において報告され(4)、ヒト癌におけるこの遺伝子の潜在的に重要かつ広範な機能性を示唆する。試験される癌型に応じて、主に細胞培養系を使用する近年の研究は、MTDHが、細胞増殖、ストレス誘発性細胞死、浸潤、化学療法抵抗性、及び転移を含む多くの癌関連過程に関係するとした(Emdadら、2013;Wan及びKang、2013)。
こうしたMTDHの多面発現腫瘍促進的役割は、その初期特定によって明らかにされるように、このタンパク質の複合体性質に起因し得る。MTDHは、本来、星状細胞におけるHIV誘発遺伝子(Suら、2002)、肺内皮への乳房腫瘍の帰巣を媒介する細胞表面分子(Brown及びRuoslahtiら、2004)、前立腺上皮細胞内の密着結合と関連付けられる高リシンCEACAM1共単離(LYRIC)タンパク質(Brittら、2004)として、及び異なる亜細胞区画内に存在する新規の膜貫通タンパク質(Sutherlandら、2004)として報告された。分子レベルにおいて、ヒトMTDHは、推定上の膜貫通ドメイン及び3つの高リシン核局在化シグナルを除いて、その生物学的機能を示し得る認識可能なドメインを有しない582アミノ酸タンパク質をコードする(Thirkettleら、2009)。最近では、MTDHが、複数のタンパク質と相互作用することが報告された。細胞核内で、MTDHは、PLZF(Thirkettleら、2009)、BCCIPα(Ashら、2008)、及びNFκBサブユニットp65(Emdadら、2006;Sarkarら、2008)と相互作用することが示された。細胞質内で、MTDHは、ブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有タンパク質1(SND1)と相互作用することが報告された(Blancoら、2011;Yooら、2011;Mengら、2012)。MTDHはまた、複数の伝統的な発癌シグナル伝達経路、例えば、PI3K/AKT及びWntシグナル伝達(Emdadら、2013)と、癌細胞型依存的様式で関連付けられた。しかしながら、MTDHが、その結合パートナーとの相互作用を通じてその機能を発揮するか否か、及びMTDHがどのように上述の発癌経路を調節するかは主に不明のままである。
SND1:SND1は、N末端にブドウ球菌ヌクレアーゼ(SN)様ドメインの4つの縦列反復(SN1−4)、ならびにC末端に融合チュードル(tudor)及びSNドメイン(TSN5ドメイン)を内包する多機能タンパク質である(Callebaut及びMornon、1997;Ponting、1997)。それは、OB折り畳みの典型的なβ−バレルを介してDNA/RNA結合に主に関与するタンパク質からなるオリゴヌクレオチド/オリゴ糖結合折り畳み(OB折り畳み)スーパーファミリーに属する(Theobaldら、2003)。ヒトSND1のアミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込まれるGenbank受入番号NP_055205において見出すことができ、また本明細書において配列番号2として提供される。一貫して、SND1は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の必須成分であり、miRNA媒介性サイレンシングに関与することが示唆された(Caudyら、2003)。超編集されたmiRNA一次転写物に対するヌクレアーゼ活性を有することも示された(Scadden、2005)。SND1の構造及び生化学的解析は、N末端SNドメイン、具体的にはSN3/4が、RNA結合及びヌクレアーゼ活性を有し(Liら、2008)、及びC末端TSNドメインが、メチル化Lys/Argリガンド及び小核リボ核タンパク質(snRNP)複合体と相互作用する(Shawら、2007)ことを示唆した。SND1は、種々のタンパク質との相互作用に関与するOB折り畳みスーパーファミリーの非常に少ないメンバーの1つである。それは最初に、EBNA−2活性化遺伝子の転写を強調する細胞成分として特定され(Tongら、1995)、発癌性転写因子STAT5、STAT6、及びc−Mybを含む、転写に関与する広範囲のタンパク質と相互作用し、調節することが後に示された(Leverson、1998;Paukkuら、2003;Valinevaら、2005;Valinevaら、2006;Yang、2002)。近年、SND1は、複数の癌の型におけるMTDHの結合パートナーとして特定され、発癌ストレスまたは化学療法ストレス下での癌細胞生存率に重要であることが示された(Blancoら、2011;Mengら、2012;Wanら、2014;Yooら、2011)。
SND1は、MTDHのものと同様の腫瘍促進機能を有するMTDHの相互作用パートナーである(Blancoら、2011;Mengら、2012;Wangら、2012;Yooら、2011)。損なわれたSND1結合を有する生化学的に特定されたMTDH突然変異体が、乳癌の種々の亜型において、腫瘍開始細胞の増殖及び生存における活性の低減を呈したことが本明細書に示される(Wanら、2014)。MTDHとその結合パートナーとの間の相互作用、及びそれらの相互作用が、癌におけるその役割にどのように影響を及ぼすかを理解するための構造的洞察は未だに入手可能でない。癌におけるSND1の機能が、MTDH結合に依存するかどうかは、依然として明らかでない。一連の特定されたSND1相互作用タンパク質は、そのSNドメインが、タンパク質−タンパク質相互作用ドメインへと進化したことを示唆するが、相互作用の形態は、本開示まで明らかでなかった。
メタドヘリン/SND1阻害剤
本明細書に記載されるように、MTDHとSND1との相互作用は、腫瘍成長及び転移の進行において重要な役割を果たす。このタンパク質相互作用の阻害剤の投与は、癌の治療のための有用な療法としてのものである。実施例4に示されるように、配列番号1に記載される野生型MTDHの残基394及び401は、SND1との相互作用に必要である。いくつかの実施形態において、阻害剤は、(a)コンセンサス配列XWXXXXXXWXX(配列番号3)(Xは任意のアミノ酸である)、または(b)XWXXXXXWXX(配列番号4)(Xは任意のアミノ酸である)を含むMTDHのペプチドである。様々な実施形態において、阻害剤は、MTDHの残基393〜403からのコンセンサス配列XWXXXXXXWXX(配列番号3)(Xは任意のアミノ酸である)を含むMTDHのペプチドである。いくつかの実施形態において、阻害剤は、コンセンサス配列XWXXXXXWXX(配列番号4)(Xは任意のアミノ酸である)をMTDHのペプチドである。
いくつかの実施形態において、MTDH/SND1阻害剤は、MTDHのペプチド、SND1のペプチド、配列番号1の残基393〜403を含むペプチドと同様の構造を有するペプチド模倣体、配列番号1の残基390〜403を含むペプチドと同様の構造を有するペプチド模倣体、配列番号1の残基393〜403を含むペプチドと同様の構造または構造の一部を有する小分子化合物、配列番号1の残基390〜403を含むペプチドと同様の構造または構造の一部を有する小分子化合物、または本明細書に記載されるペプチドもしくはペプチド模倣体を含有するナノ粒子抱合体である。
様々な実施形態において、阻害剤は、i)配列番号1の残基364〜582内のペプチド、ii)配列番号1の残基364〜407内のペプチド、iii)配列番号1の残基386〜407を含むペプチド、iv)配列番号1の残基393〜403を含むペプチド、またはv)配列番号1の残基390〜403を含むペプチド、またはvi)残基393〜403にコンセンサス配列XWXXXXXXWXX(配列番号3)(Xは任意のアミノ酸である)を含む配列番号1の残基364〜582、残基364〜407、残基386〜407、残基393〜403、または残基390〜403から選択されるMTDHのペプチドである。
いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)、またはその変異型を含み、変異型ペプチドが、少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9つのうちのいずれか)の突然変異を、W残基を除く任意の位置に含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、約11〜約22アミノ酸長である(例えば、約15〜約22アミノ酸長)。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)またはその変異型に対してN末端側の1、2、3、4、5、6、または7つのアミノ酸のうちのおよそいずれかを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)またはその変異型に対してC末端側の1、2、3、または4つのアミノ酸うちのおよそいずれかを含む。
いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPEEWGN(配列番号20)またはその変異型を含み、変異型ペプチドは、W残基を除く任意の位置に少なくとも1つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9つのうちのいずれか)の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、約10〜約21アミノ酸長(例えば、約14〜約21アミノ酸長)である。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPEEWGN(配列番号20)またはその変異型に対してN末端側の1、2、3、4、5、6、または7つのアミノ酸のうちのおよそいずれかを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPEEWGN(配列番号20)またはその変異型に対してC末端側の1、2、3、または4つのアミノ酸うちのおよそいずれかを含む。
いくつかの実施形態において、ペプチドは、SND1(例えば、同じ長さを有する野生型MTDHペプチド)に結合するために配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)を含む野生型MTDHペプチドと競合する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、配列DWNAPAEEWGN(配列番号5)を含む野生型MTDHペプチド(例えば、同じ長さを有する野生型MTDHペプチド)のSND1に対する結合親和性の50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%の少なくともおよそいずれかである親和性を有するSND1に結合する。
いくつかの実施形態において、ペプチドは、D389、A392、D393、N395、E399、E400、W404、D406、及びE407からなる群から選択されるMTDH内の1つ以上のアミノ酸残基に突然変異を含み、この位置が、野生型MTDH(すなわち、配列番号1)に対応する。一実施形態において、ペプチドは、N395、A396、P397、A398、E399、E400、及びN403からなる群から選択される1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、または7つ)のアミノ酸残基に突然変異を含み、この位置が、野生型MTDH(すなわち、配列番号1)に対応する。いくつかの実施形態において、MTDH内の突然変異は、N395K、A396D、PAE(397〜399)SQ、及びE400D/N403Lからなる群から選択され、この位置が、野生型MTDH(すなわち、配列番号1)に対応する。様々な実施形態において、MTDH(配列番号1)内の突然変異は、D389R、D393R、E399R、E400R、W404D、D406R、及びE407Rからなる群から選択される。
様々な実施形態において、阻害剤は、SND1(すなわち、配列番号2)の残基16〜339内のSND1のペプチドである。一実施形態において、SND1ペプチドは、F250、R324、R255、R327、R324、P39、P43、E247、L256、H279、I284、L287、R259、及びN281からなる群から選択される1つ以上の残基に突然変異を含み、この位置が、野生型SND1(すなわち、配列番号2)に対応する。様々な実施形態において、SND1(すなわち、配列番号2)内の突然変異は、F250A、R324E、及びR255Eからなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、MTDHまたはSND1ペプチドは、60個以下のアミノ酸、55個以下のアミノ酸、40個以下のアミノ酸、35個以下のアミノ酸、または30個以下のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む(例えば、有する)。随意に、ペプチドは、25個以下のアミノ酸、20個以下のアミノ酸、15個以下のアミノ酸、または10個以下のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む(例えば、有する)。様々な実施形態において、ペプチドは、10〜35個のアミノ酸残基(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35個のアミノ酸残基)を含む(例えば、有する)。いくつかの態様において、アミノ酸は、アミノ酸配列内から、N末端において、及び/またはC末端において本明細書に記載されるペプチドから除去される。そのようなペプチド断片は、3〜14個のアミノ酸残基(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個のアミノ酸残基)を含む。
本明細書に記載されるペプチドは、例えば、別の標的に結合するか、またはペプチドの半減期もしくは安定性を増加させる第2のペプチドドメインに融合され得るか、または複合され得る。
一態様において、ペプチドは、N末端及び/またはC末端における1つ以上の溶解物を含むが、これらに限定されないペプチドの合成、取り扱い、または使用を促進して、ペプチドの溶解度を増加させる1つ以上のアミノ酸をさらに含む。好適な融合タンパク質としては、1つ以上のポリペプチド、ポリペプチド断片、またはタンパク質配列の一部であると一般に認識されないアミノ酸と関連付けられる本明細書に記載されるペプチドを含むタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、融合ペプチドは、2つ以上のペプチドの全体アミノ酸配列を含むか、または代替として、2つ以上のペプチドの部分(断片)を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載されるペプチドは、例えば、以下のマーカータンパク質、精製を促進するペプチド、多量体タンパク質の形成を促進するペプチド配列、または前述のうちのいずれかの断片のうちの1つ以上に操作可能に連結される。好適な融合パートナーとしては、Hisタグ、FLAGタグ、strepタグ、及びmycタグが挙げられるが、これらに限定されない。
随意に、本明細書に記載されるペプチドは、ペプチドの半減期を強化する1つ以上の実体に融合される。半減期は、例えば、ペプチドの分子量を増加させて腎クリアランスを回避すること、及び/またはnFc受容体媒介性再生経路のためのリガンドを組み込むことによって増加され得る。一実施形態において、ペプチドは、アルブミンポリペプチドまたはその断片(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA))に融合されるか、または化学的に抱合される。アルブミン断片は、全長アルブミンタンパク質の10%、25%、50%、または75%を含む。代替として、または追加として、ペプチドは、生体内投与される場合、アルブミンに結合するアルブミン結合ドメインまたは脂肪酸と融合されるか、または複合される。アルブミン結合ドメインの例は、「albuタグ」、4−(p−ヨードフェニル)−ブタン酸由来の部分である(Dumelin et al.,Angew Chem Int Ed Engl 47:3196−3201(2008))。他の好適な融合パートナーとしては、プロリン−アラニン−セリン多量体(PAS化)、及び抗体またはその断片(例えば、抗体のFc部分)が挙げられるが、これらに限定されない。
誘導体が企図され、アミノ酸の付加、欠失、または置換とは異なるいくつかの様式で化学的に修飾されたペプチドを含む。この点において、本明細書に提供されるペプチドは、ポリマー、脂質、他の有機部分、及び/または無機部分と化学的に結合される。ペプチド及びタンパク質修飾の例は、Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,(1996)において付与される。本明細書に記載されるペプチドは、別の部分(例えば、ペプチド部分)への抱合を促進する官能基を随意に含む。例示的な官能基としては、イソチオシアン酸塩、イソシアン酸塩、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、エポキシド、オキシラン、炭酸塩、アリール化剤、イミドエスエル、カルボジイミド、無水物、アルキルハロゲン化物誘導体(例えば、ハロアセチル誘導体)、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体、アリール化剤、チオール−ジスルフィド交換試薬(例えば、ピリジルジスルフィドまたはTNBチオール)、ジアゾアルカン、カルボイルジイミダゾール、N,N′−ジスクシニル炭酸塩、N−ヒドロキシスクシンイミジルクロロギ酸塩、及びヒドラジン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。マレイミドは、例えば、生体内でアルブミンと結合するタンパク質S結合ペプチドを生成するために有用である。
一態様において、本発明は、1つ以上の水溶性ポリマー付着を含むように複合的に修飾された本明細書に記載されるペプチドを含む。水溶性ポリマー(または他の化学部分)は、任意のアミノ酸残基に付着されるが、いくつかの実施形態では、N末端またはC末端への付着が好ましい。有用なポリマーとしては、PEG(例えば、約40kD、30kD、20kD、10kD、5kD、または1kDのサイズのPEG)ポリオキシエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、セルロース、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリシアル酸(PSA)、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)及びポリビニルアルコール、ならびに前述のうちのいずれかの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一態様において、本発明のペプチドは、PEG化ペプチドである。PEG部分は、異なる形状、例えば、線状または分枝状で使用可能である。水溶性ポリマー付着に関するさらなる考察については、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、及び同第4,179,337号を参照されたい。ペプチド半減期または安定性を改善するために有用な他の部分が本明細書に記載され、例えば、アルブミン(本発明のペプチドへの抱合を可能にするように随意に修飾される)、脂肪酸鎖(例えば、C12〜C18脂肪酸、例えば、C14脂肪酸、またはジカルボン酸、例えば、オクタデカンジカルボン酸(oddc))、抗体またはその断片(例えば、抗体のFc部分)、及びプロリン−アラニン−セリン多量体が挙げられる。
別の態様において、ペプチド誘導体は、特定の細胞型、組織、及び/または臓器に特異的な標的部分を含む。代替として、ペプチドは、精製、検出、多量体化、相互作用パートナーとの結合、及びペプチド活性の特徴付けを促進する1つ以上の化学部分に連結される。例示的な化学部分はビオチンである。本発明のペプチドへの抱合に好適な他の部分としては、光増感剤、染料、蛍光染料、放射性核種、放射性核種含有複合体、酵素、毒素、及び細胞毒性剤が挙げられるが、これらに限定されない。光増感剤としては、例えば、Photofrin、Visudyne、Levulan、Foscan、Metvix、Hexvix(登録商標)、Cysview(商標)、Laserphyrin、Antrin、Photochlor、Photosens、Photrex、Lumacan、Cevira、Visonac、BF−200 ALA、及びAmphinexが挙げられる。所望される場合、Hisタグ、FLAGタグ、strepタグ、またはmycタグが、ペプチドに抱合される。
加えて、一態様において、本発明のペプチドは、ペプチドのN末端アミノ酸においてアシル化される。別の態様において、本発明のペプチドは、ペプチドのC末端アミノ酸においてアミド化される。なおもさらなる態様において、本発明のペプチドは、ペプチドのN末端アミノ酸においてアシル化され、ペプチドのC末端アミノ酸においてアミド化される。
誘導体はまた、修飾もしくは非タンパク新生アミノ酸、または修飾リンカー基を含むペプチドを含む(例えば、Grant,Synthetic Peptides:A User′s Guide,Oxford University Press(1992)を参照されたい)。修飾アミノ酸は、例えば、アミノ及び/またはカルボキシル基が別の基によって置換されるアミノ酸を含む。非限定例としては、チオアミド、ウレア、チオウレア、アシルヒドラジド、エステル、オレフィン、スルホンアミド、リン酸アミド、ケトン、アルコール、ホウ酸アミド、ベンゾジアゼピン、及び他の芳香族または非芳香族複素環を組み込む修飾アミノ酸が挙げられる(Estiarte et al.,Burgers Medicinal Chemistry,6th edition,Volume 1,Part 4,John Wiley & Sons,New York(2002)を参照されたい)。非タンパク新生アミノ酸としては、β−アラニン(Bal)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、4−アミノ酪酸(γ−Abu)、2−アミノイソ酪酸(Aib)、6−アミノヘキサン酸(ε−Ahx)、オルニチン(Orn)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、タウリン、サルコシン、シトルリン(Cit)、システイン酸(Coh)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、メチオニンスルホキシド(Meo)、メチオニンスルホン(Moo)、ホモセリンメチルエステル(Hsm)、プロパルギルグリシン(Eag)、5−フルオロトリプトファン(5Fw)、6−フルオロトリプトファン(6Fw)、3′,4′−ジメトキシフェニル−アラニン(Ear)、3′,4′−ジフルオロフェニルアラニン(Dff)、4′−フルオロフェニル−アラニン(Pff)、1−ナフチル−アラニン(1Ni)、2−ナフチルアラニン(2Ni)、1−メチルトリプトファン(1Mw)、ペニシラミン(Pen)、ホモセリン(Hse)、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン(Phg)、ベンゾチエニルアラニン(Bta)、L−ホモ−システイン(Hcy)、N−メチル−フェニルアラニン(Nmf)、2−チエニルアラニン(Thi)、3,3−ジフェニルアラニン(Ebw)、L−α−t−ブチルグリシン(Tle)、Bpa、ホモフェニルアラニン(Hfe)、及びS−ベンジル−L−システイン(Ece)が挙げられるが、これらに限定されない。これら及び他の非タンパク新生アミノ酸は、D−またはL−異性体として存在し得る。修飾リンカーの例としては、可撓性リンカー4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(Ttds)、グリシン、6−アミノヘキサン酸、β−アラニン(Bal)、ペンチン酸(Pyn)、ならびにTtds、グリシン、6−アミノヘキサン酸、及びBalの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のペプチドを構成するアミノ酸の相同体は、表1に記載される通りであり得る。任意の実施形態において、本発明のペプチドの1つ以上のアミノ酸は、表1に記載されるアミノ酸または構築ブロックで置換される。

いくつかの実施形態において、本発明のペプチド内のアミノ酸を接合するペプチド(CO−NH)結合は、反転して「レトロ修飾」ペプチド、すなわち、基準ペプチドと比較して反対方向に組み立てられたアミノ酸残基(NH−CO結合)を含むペプチドを創出する。レトロ修飾ペプチドは、基準ペプチドと同じアミノ酸キラリティを含む。「インベルソ修飾」ペプチドは、基準ペプチドと同じ方向に組み立てられたアミノ酸残基を含むが、アミノ酸のキラリティが反転した本発明のペプチドである。したがって、基準ペプチドがL−アミノ酸を含む場合、「インベルソ修飾」ペプチドは、D−アミノ酸を含み、逆も同様である。インベルソ修飾ペプチドは、CO−NHペプチド結合を含む。「レトロ・インベルソ修飾」ペプチドは、反対方向に組み立てられたアミノ酸残基を含み、反転したキラリティを有するペプチドを指す。レトロ・インベルソ類似体は、逆末端及び逆方向のペプチド結合(すなわち、NH−CO)を有する一方で、基準ペプチドにおいて見出される側鎖トポロジーをほぼ維持する。レトロ・インベルソペプチド模倣体は、参照により本明細書に組み込まれる、Meziere et al,J.Immunol.,159,3230−3237(1997)に記載される方法を含む、標準方法を使用して作製される。部分的レトロ・インベルソペプチドは、アミノ酸配列の一部のみが逆転し、エナンチオマーアミノ酸残基で置換されたペプチドである。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるペプチド阻害剤は、担体ペプチドまたはタンパク質、例えば、積み荷タンパク質もしくはペプチド、輸送ペプチドもしくはペプチド、または細胞貫通タンパク質もしくはペプチド(CPP)に抱合され、薬力学的挙動を改善する。例示の改善された薬理学的挙動としては、より長い血清及び/もしくは循環半減期、ならびに/または優れた細胞透過が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるペプチド阻害剤は、HIV TAT ペプチド、TATm、PTD、PTR(PTDとも称される)、pVEC、SynB、R9、R9−TAT、MTS、PreS2−TLM、HTLV−II REX、MAP、TP、PEP、及びPrPからなる群から選択される輸送ペプチドまたは細胞貫通ペプチドと抱合される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるペプチド阻害剤は、担体ペプチドまたはタンパク質、例えば、積み荷タンパク質もしくはペプチド、輸送ペプチドまたはペプチドまたは細胞貫通タンパク質もしくはペプチド(CPP)と混和され、薬理学的挙動を改善する。
ペプチド阻害剤と担体ペプチドまたはタンパク質との間の好適なモル比は、例えば、約1:100〜約100:1であり得、例えば、約1:50〜約50;1、約1:20〜約20:1、約1:10〜約10:1、約1:5〜約5:1、または約1:1を含む。いくつかの実施形態において、ペプチド阻害剤と担体ペプチドまたはタンパク質との間のモル比は、約1:1〜約20:1、約1:1〜約10:1、約1:1〜約1:5:1、約1:1〜約2:1、約1:1、約1:1〜約1:2、約1:1〜約1:5、約1:1〜約1:10、または約1:1〜約1:20のうちのおよそいずれかである。
本明細書に記載される癌の予防または治療のための本明細書に記載されるペプチドの細胞内送達は、外部細胞/形質膜を横断して、細胞の細胞質及び/または核へのペプチドまたは核酸の通過または転位を促進するための「ファシリテータ部分」、例えば担体ペプチドを利用して達成され得る。本明細書に記載されるファシリテータ部分は、本発明により具現化されるペプチド、薬剤、または核酸の、多くの方法のうちのいずれかでの癌細胞への移入を促進することができ、本発明は、いかなる特定の機序(例えば、細胞への直接貫通(例えば、強化された細胞膜溶解度または細胞膜内の一時的な孔の形成による))、細胞内取込み媒介性細胞移入(例えば、細胞と表面発現した受容体との相互作用またはマクロピノサイトーシスによる)、及び細胞膜上の一過性構造の形成を介した細胞移入にも限定されない。ファシリテータ部分は、脂質部分または他の非ペプチド部分(例えば、炭水化物部分)であり得、標的細胞の外部細胞膜を横断する通過のために、本発明に従う抗癌ペプチドの細胞膜溶解度を増強するか、またはそれにより細胞へのペプチドの移入が促進される。脂質部分は、例えば、混合トリグリセリドを含むトリグリセリドから選択され得る。脂肪酸及び具体的にはC16〜C20脂肪酸を使用することもできる。典型的に、脂肪酸は、飽和脂肪酸、及び最も一般的にはステアリン酸であろう。
さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、ペプチドの検出のために、標識、シグナル伝達、または他の分子(例えば、造影剤、撮像剤、ビオチン、ストレプトアビジン、放射性同位体、蛍光染料、化学発光剤、化学発光団、生物発光剤、酵素、またはその結合断片(例えば、Fab及びF(ab).断片)、磁気粒子など)を有する複合体を形成するための抱合剤と抱合される。理解されるように、本発明により具現化されるペプチドは、標的細胞へのペプチドの通過を促進するためのファシリテータ部分、及び好適な撮像技法(例えば、磁気共鳴撮像(MRI))を利用して細胞内のペプチドを検出するための標識、シグナル伝達分子、放射性同位体などと複合される、またはそれに複合するための抱合剤に結合され得る。DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸)は、使用でき、癌治療及び診断に使用するための一連の化合物、例えば、モノクローナル抗体、放射性同位体、及び金属カチオン(例えば、カルシウム及びガドリニウム)に複合され得る抱合剤の例である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、標的細胞の撮像のための造影剤としてガドリニウムと複合されたDOTAに抱合される(Sturzu Aら、2008)。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、例えば、標的送達及び/または持続放出のために、リポソーム、微小粒子、またはナノ粒子に製剤化される。ペプチド送達(標的送達及び/または持続放出を含む)に好適なリポソーム、微小粒子、及びナノ粒子が当該技術分野において既知である。例えば、Tan et al.,Recent Developments in Liposomes,Microparticles,and Nanoparticles for protein and peptide drug delivery,peptides,31(1),184−193,2010を参照されたい。
本明細書に記載されるペプチドのうちの1つ以上を含むナノ粒子抱合体も企図される。「ナノ粒子」という用語は、本明細書で使用される場合、サイズがナノメートル範囲(すなわち、1μm未満)で測定される粒子を指す意味する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約2〜500nmの範囲の総直径を有し、例えば、約2〜約200nm、約10〜約200nm、約50〜約100nmを含む。
ナノ粒子コア材料は、金属または半導体であり得、複数の原子型で形成され得る。好ましくは、コア材料は、Au、Fe、またはCuから選択される金属である。ナノ粒子コアは、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/Gd、及びAu/Fe/Cu/Gdを含む合金から形成されてもよく、本発明において使用することができる。好ましいコア材料は、Au及びFeであり、最も好ましい材料はAuである。ナノ粒子のコアは、好ましくは約100〜500個の原子(例えば、金原子)を含み、ナノメートル範囲のコア直径を提供する。他の特に有用なコア材料は、NMR活性である1つ以上の原子でドープされ、ナノ粒子が生体外及び生体内の両方でNMRを使用して検出されるのを可能にする。NMR活性原子の例としては、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3、及びランタニド+3、または量子ドットが挙げられる。
ナノメートルスケール半導体結晶が、量子ドットとして作用することができるため、すなわち、それらが光を吸収することができ、それにより材料中の電子をより高いエネルギーレベルに励起し、後次にその材料に特徴的な周波数で光の光子を放出するため、半導体原子を含むナノ粒子コアが検出され得る。半導体コア材料の例は、カドミウムセレニド、硫化カドミウム、カドミウムテルリウムである。硫化亜鉛などの亜鉛化合物も挙げられる。
いくつかの実施形態において、ナノ粒子抱合体は、検出可能な標識を含む。この標識は、ナノ粒子のコアまたはリガンドの要素であり得る。標識は、ナノ粒子のその要素の本来の特性に起因して、または検出可能なさらなる部分と結合される、抱合される、または関連付けられることによって検出可能であり得る。標識の好ましい例としては、蛍光基、放射性核、磁気標識、または染料である標識が挙げられる。蛍光基としては、フルオレセイン、ローダミン、またはテトラメチルローダミン、テキサス−レッド、Cy3、Cy5などが挙げられ、蛍光標識の励起及びラマン分光法を使用する放出光の検出によって検出され得る(Y.C.Cao,R.Jin,C.A.Mirkin,Science 2002,297:1536−1539)。
いくつかの実施形態において、ナノ粒子抱合体は、放射性核によって、例えば、PET、SPECTを使用することによって放出される放射活性を使用してナノ粒子を検出する際に使用するため、または治療のため、すなわち、標的細胞を殺傷するための放射性核を含む。本発明における使用のために容易に適合され得る当該技術分野において一般に使用される放射性核の例としては、様々な酸化状態で存在する99mTcが挙げられるが、最も安定しているのは、TcO4−32Pまたは33P、57Co、59Fe、多くの場合、Cu2+塩として使用される67Cu、Ga3+塩として一般に使用される67Ga、例えば、クエン酸ガリウム、68Ge、82Sr、99Mo、103Pd、In3+塩として一般に使用される111In、ヨウ化ナトリウムとして一般に使用される125Iまたは131I、137Cs、153Gd、153Sm、158Au、186Re、Tl塩として一般に使用される201TL、例えば、塩化タリウム、393+71Lu3+、及び24Cr2+である。標識及び追跡子としての放射性核の一般的使用は、当該技術分野において周知であり、本発明の態様における使用のために熟練者によって容易に適合され得る。放射性核は、ナノ粒子のコアをドープするか、またはそれらをナノ粒子上に固定されたリガンドの一部として存在する標識として含めることによって最も容易に用いることができる。
追加として、または代替として、ナノ粒子抱合体は、上で示されるナノ粒子と関連付けられた標識を使用する、当該技術分野において周知の多くの技法を使用して、またはそれらの特性を用いることによって検出され得る。ナノ粒子を検出するこれらの方法は、それらのナノ粒子が別の種に結合するときに生じる凝集を、例えば、単なる目視検査によって、または光散乱(ナノ粒子を含有する溶液の透過率)を使用することによって検出することから、透過型電子顕微鏡(TEM)または原子量顕微鏡(AFM)などの洗練された技法を使用してナノ粒子を可視化することにまで及び得る。金属粒子を検出するさらなる方法は、通常、光学照射によって引き起こされる金属の表面における電子の励起であるプラズモン共鳴を用いることである。表面プラズモン共鳴(SPR)の現象は、金属(例えば、AgまたはAu)及び空気または水などの誘電材料の界面に存在する。検体がナノ粒子の表面上に固定されたリガンドに結合するため、SPRの変化が起こり、界面の屈折率を変化させる。SPRのさらなる利点は、それを使用してリアルタイム相互作用を監視できることである。上述されるように、ナノ粒子がNMR活性である原子を含むか、またはそれでドープされる場合、次にこの技法を使用して、生体外または生体内の両方で、当該技術分野において周知の技法を使用して粒子を検出することができる。ナノ粒子は、ナノ粒子により促進された銀の還元を使用する定量シグナル増幅に基づくシステムを使用して検出することもできる(I)。ナノ粒子が蛍光プローブとしてリガンドを含む場合、蛍光分光法が使用され得る。また、炭水化物の同位体標識を使用して、それらの検出を容易にすることができる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、分枝状金粒子のレーザー照射を通じて標的細胞を撮像するか、または標的細胞の細胞死の補助のために金ナノ粒子に抱合される。金ナノ粒子は、原形質を渡って移動し、核膜は、以前に報告された(de la Fuente J.M.and Berry C.C.,2005)。
本明細書に記載されるペプチドは、多くの目的に有用であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、対象におけるMTDHとSND1との間の相互作用を妨害する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるペプチド阻害剤(またはそのようなペプチド阻害剤を含む薬学的組成物)のうちのいずれか1つを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象における生存促進性遺伝子のSND1依存的発現を阻害する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるペプチド阻害剤(またはそのようなペプチド阻害剤を含む薬学的組成物)のうちのいずれか1つを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象における癌を治療する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるペプチド阻害剤(またはそのようなペプチド阻害剤を含む薬学的組成物)のうちのいずれか1つを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、癌を有する対象における腫瘍転移を阻害する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるペプチド阻害剤(またはそのようなペプチド阻害剤を含む薬学的組成物)のうちのいずれか1つを対象に投与することを含む。

MTDH及び/またはSND1のペプチド、ならびに本明細書に記載されるMTDHとSND1との相互作用の他の阻害剤が、MTDHが役割を果たす癌を治療するために有用であることが企図される。例示的な癌としては、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、肛門直腸癌、肛門管の癌、盲腸癌、小児小脳星状細胞腫、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫)、胆道癌、肝外胆管癌、肝内胆管癌、膀胱癌、尿道癌、骨及び関節癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳癌、脳腫瘍、脳幹グリア腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性グリオーマ、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視路及び視床下部グリオーマ、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、消化管神経系癌、神経系リンパ腫、中枢神経系癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、菌状息肉腫、セザリー症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼球内黒色腫、網膜芽腫、胆嚢癌、胃(gastric、stomach)癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍グリオーマ、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、眼球癌、膵島細胞腫瘍(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓癌、腎癌、腎臓癌、咽頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨肉腫性白血病、毛様細胞白血病、口唇及び口腔癌、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、髄芽細胞腫、黒色腫、眼球内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平頸部癌、口癌、舌癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨肉腫性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭癌、神経芽腫、口癌、口腔癌、中咽頭癌、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣低悪性度腫、膵臓癌、膵島細胞膵臓癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂及び尿管移行上皮癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイングファミリーの肉腫腫瘍、カポジ肉腫、軟組織肉腫、子宮癌、子宮肉腫、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平細胞癌、胃(stomach、gastric)癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管ならびに他の泌尿器の移行上皮癌、妊娠性絨毛腫瘍、尿道癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、子宮体癌、膣癌、外陰癌、及びウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、癌は、乳癌、肝臓癌、結腸癌、肺癌、及び前立腺癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、癌は前立腺癌である。いくつかの実施形態において、癌は乳癌である。
前立腺癌:前立腺癌は、米国内の男性の中で最も一般的な癌の種類である。それは、総癌発生率の28%、及び米国男性の総癌死の10%を占める(1)。前立腺癌関連死亡率は、骨、肺、及び肝臓などの遠隔臓器へと分散及び転移した進行癌によって主に引き起こされる(2)。一旦これらの極めて重要な臓器内で癌細胞が二次腫瘍を確立すると、治療は通常、転帰が悪化してより複雑になる。前立腺癌の進行及び転移を駆動する新規の分子標的を定義し、理解することは、前立腺癌の有効な治療手法を開発するために重要である。
MTDHは、良性過形成組織及び正常上皮細胞と比較して、前立腺腫瘍組織及び腫瘍形成細胞系内で過剰発現することが示された(Thirkettleら、2009;Kikunoら、2007)。培養した前立腺癌細胞内のMTDHのノックダウンは、アポトーシスを強化し、マトリゲル浸潤を阻害した。
製剤
本開示は、癌の治療に有用な(例えば、腫瘍の成長または転移を阻害または抑制する)MTDH/SND1阻害剤を提供する。阻害剤を患者または試験動物に投与するために、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物中で生成物を製剤化することが好ましい。薬学的または薬理学的に許容される担体または媒体は、下記のように、当該技術分野において周知の経路を使用して投与されたときにアレルギー反応または他の有害反応をもたらさないか、または米国食品医薬品局もしくは対応する外国規制当局によって経口もしくは非経口的に投与される医薬品への許容される添加剤として承認される分子実態及び組成物を指す。薬学的に許容される担体としては、任意及び全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。
薬学的担体としては、特に塩基性基または酸性基が化合物中に存在する、薬学的に許容される塩が挙げられる。例えば、−−COOHなどの酸性置換基が存在する場合、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及び同様の塩が投与に企図される。追加として、酸性基が存在する場合、化合物の薬学的に許容されるエステル(例えば、メチル、tert−ブチル、ピバロイルオキシメチル、スクシニルなど)が、化合物の好ましい形態として企図され、そのようなエステルは、持続放出またはプロドラッグ製剤として使用するために、溶解度及び/または加水分解特徴を修正することが当該技術分野において既知である。
塩基性基(例えば、アミノまたは塩基性ヘテロアリールラジカル、例えば、ピリジル)が存在する場合、塩酸塩、臭化水素塩、酢酸塩、マレイン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの酸性塩が、投与のための形態として企図される。
加えて、化合物は、水または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成し得る。そのような溶媒和物が同様に企図される。
本明細書における阻害剤は、経口的に、非経口的に、経眼球的に、鼻腔内に、経皮的に、経粘膜的に、吸入スプレーによって、膣的に、直腸的に、または頭蓋内注入によって投与され得る。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注入、静脈内、筋内、嚢内注入、または注射技法を含む。静脈内、皮内、筋内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後、肺内注入による投与及び/または特定部位における外科的移植も同様に企図される。一般に、上記方法のうちのいずれかによる投与のための組成物は、発熱物質、ならびにレシピエントに有害であり得る他の不純物を本質的に含まない。さらに、非経口的投与のための組成物は滅菌である。
投薬及び投与
MTDH/SND1阻害剤は、治療上有効な量で投与され、典型的に、組成物は、単位剤形である。投与される阻害剤の量は、当然のことながら、患者の年齢、体重、及び全身状態、治療される病態の重症度、及び処方する医師の判断に依存する。好適な治療量は、当業者に既知であり、及び/または関連する参照文書及び文献に記載されている。一態様において、用量は、1日1回または1日複数回のいずれかで投与される。MTDH/SND1阻害剤は、1日1回、2回、3回、または4回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、阻害剤の有効投薬量は、1日に体重1kg当たり0.01mg〜1000mg(mg/kg)の範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、阻害剤は、約10mg/kg〜約250mg/kg、または約100mg/kg〜約250mg/kg、または約60mg/kg〜約100mg/kgまたは約50mg/kg〜約90mg/kg、または約30mg/kg〜約80mg/kg、または約20mg/kg〜約60mg/kg、または約10mg/kg〜約50mg/kgの範囲の日用量で投与される。さらに、有効用量は、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg/25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kgであってもよく、25mg/kg増分で最大1000mg/kgまで増加し得るか、または前述の値のうちのいずれか2つの間の範囲であってもよい。
投与は、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、またはそれよりも長く継続させることができる。
併用療法
本明細書に記載される治療組成物は、治療上有効な投薬量で、単独で、または手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、熱療法、及びレーザー療法などの補助的癌療法と組み合わせて投与され得、例えば、腫瘍サイズを低減する、腫瘍成長の速度を遅らせる、転移を阻害する、腫瘍を癌治療に敏感にさせる、または他の方法で全体臨床病態を改善するという有益な効果を、必ずしも癌を根治することなくもたらし得る。癌細胞を標的とする細胞増殖抑制剤及び細胞毒性剤が、併用療法のために具体的に企図される。同様に、血管新生またはリンパ脈管新生を標的とする薬剤、またはチェックポイント経路を標的とする免疫療法が、併用療法のために具体的に企図される。
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;エチレンイミン及びメチルアメラミ(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロロメラミンを含む);アセトゲニン(特にバラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189、及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン塩酸酸化物、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;ビンカアルカロイド;エピポドフィロトキシン;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ11及びカリケアミシンω11などの抗生物質;L−アスパラギナーゼ;アントラセンジオン置換ウレア;メチルヒドラジン誘導体;ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロン酸塩などのビスホスホン酸塩;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンCなどのミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの抗代謝物質;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなどのギ酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、エピチオスタノール、メプチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナル;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニチアエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサンチオン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2,2″−トリクロロトリエチルアミン;トリクロテセン(特にT−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(商標)パクリタキセルのクレモフォール不含アルブミン操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸塩;イリノテカン(例えば、CPT−11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DFMO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ロイコボリン(LV);イレノテカン;アドレノコルチカル抑制剤、アドレノコルチコステロイド;プロゲスチン;エストロゲン;アンドロゲン;ゴナドトロピン放出ホルモン類似体;及び上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)などの腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤もこの定義に含まれ、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON−トレミフェン;副腎内のエストロゲン生成を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASL(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARTMIDEX(登録商標)アナストロゾール;及びフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン;ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路内の遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−α、Ralf、及びH−Ras;VEGF−A発現阻害剤などのリボザイム(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;遺伝子療法ワクチンなどのワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rJL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELLX(登録商標)rmRH;及び上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、任意の数の免疫チェックポイント阻害剤と併せて投与される。免疫チェックポイント阻害剤としては、CTLA−4、PDL1、PDL2、PD1、B7−H3、B7−H4、BTLA、HVEM、TIM3、及びGAL9のうちの1つ以上に結合し、その活性を遮断または阻害する抗体、またはその抗原結合断片が挙げられる。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、トレメリムマブ(CTLA−4遮断抗体)、抗OX40、PD−L1モノクローナル抗体(抗B7−H1;MEDI4736)、イピリムマブ、MK−3475(PD−1遮断剤)及びニボルマブ(抗PD1抗体)が挙げられるが、それらに限定されない。
本明細書に記載される治療方法は、腫瘍に対する治療組成物の効果を監視することを随意に含む。例えば、転移の存在と同様に、腫瘍のサイズを判定することができる。例えば、転移モジュールの数を測定することによるか、または転移と関連付けられる腹水の測定による転移の程度の測定も企図される。
MTDH/SND1阻害剤及び他の薬物/療法は、単一組成物中で同時に、または別個の組成物中のいずれかで組み合わせて投与され得る。代替として、投与は連続的である。同時投与は、阻害剤及び他の治療薬(複数可)の両方を含む単一組成物または薬理学的タンパク質製剤を投与することによって達成される。代替として、他の治療薬は、阻害剤の薬理学的製剤(例えば、錠剤、注入、または飲料)としてほぼ同時に別個に摂取される。
キット
本開示は、該開示の方法を実行するためのキットも提供する。様々な実施形態において、このキットは、例えば、液体(例えば、滅菌注入可能な)製剤または固体(例えば、凍結乾燥された)製剤を含むボトル、バイアル瓶、アンプル、管、カートリッジ、及び/またはシリンジを含む。これらのキットは、固体(例えば、凍結乾燥された)製剤を投与(例えば、注入による)のための溶液または懸濁液に再構成するため(限定されないが、注入のためにシリンジ内で凍結乾燥された製剤を再構成することを含む)、または濃縮物をより低い濃度に希釈するために、薬学的に許容される媒体または担体(例えば、溶媒、溶液、及び/もしくは緩衝液)を含むこともできる。さらに、即時注入溶液及び懸濁液は、例えば、本明細書に記載される阻害剤を含む組成物を含む、滅菌粉末、顆粒、または錠剤から調製され得る。これらのキットは、エアロゾルまたは注入分注デバイス、ペン注入器、自動注入器、無針注入器、シリンジ、及び/または針などの分注デバイスを含むこともできる。様々な実施形態において、このキットは、経口剤形、例えば、この方法で使用するための阻害剤の錠剤もしくはカプセル、または本明細書に記載される他の経口製剤も提供する。このキットは、使用のための指示書も提供する。
本開示は、その特定の実施形態と併せて説明されたが、前述の説明ならびにそれに続く実施例は、本開示の範囲を例証することが意図され、制限するものではない。本開示の範囲内の態様、利点、及び修正は、当業者に明らかとなるであろう。
実施例1−MTDHノックアウトマウスの生成及び腫瘍進行における効果
生体内の乳癌細胞の発達、進行、及び転移に対するメタドヘリンの効果を調査するために、メタドヘリンノックアウトマウスを生成した。
実験手順
マウス:マウスを必要とする全ての実験プロトコルは、プリンストン大学の施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。Mtdh−KOマウスを、ES細胞系XB780(BayGenomics)をC57BL/6胚盤胞に注入することによって生成した後、生殖系伝達を確認した。次にKOマウスを、FVBバックグラウンド内でMMTV−PyMT、MMTV−ErbB2、MMTV−Wnt遺伝子導入マウス(Jackson Laboratory)と繁殖させる前に、6世代超にわたってFVBバックグラウンドに戻し交雑した。MMTV−Mtdh構成体を創出するために、マウスMtdhコード配列をpMMTV−SV40ベクターに挿入し、次に発現カセットを線形化して、FVBマウスからの接合子の前核に微量注入した。自発的腫瘍形成研究の場合、特異的発癌遺伝子を担持する雌マウスを、乳房腫瘍について毎週検査した。腫瘍は、連続2週間にわたって明白になったときに確立されたと見なし、腫瘍体積(π×長さ×幅/6)の計算のために腫瘍をカリパスによって測定した。固定後(MMTV−PyMTモデル)または肺の切断及び染色後(MMTV−ErbB2モデル)に、肺小結節を直接数えた。
Mtdhノックアウト対立遺伝子の遺伝子型判定:Mtdh遺伝子座の第2のイントロン内の遺伝子トラップカセットの正確な挿入部位を判定するために、順方向プライマー5′−CTGCAAAACAAGCACCAGAG−3′(MTDHの第2のエクソン内に位置する)(配列番号6)及び逆方向プライマー5′−GTTTTCCCAGTCACGACGTT−3′(標的ベクターpGT0pfs内に位置する)(配列番号7)を使用し、Expand 20kb PUS PCRシステム(Roche)を使用して、挿入部位を被覆する断片を増幅させた。PCR生成物を配列決定し、挿入部位がMTDHの第2のイントロンの3041bpであることを判定した。この挿入部位に基づいて、3つの遺伝子型判定プライマーを、下に示されるように、Mtdh+/+、MTDH+/−、及びMtdh−/−マウスを区別するように設計された。野生型対立遺伝子は、602bp PCR断片に対応するが、遺伝子トラップ対立遺伝子は、472bp PCR断片に対応する。野生型及びジーントラップされたMtdh対立遺伝子を遺伝子型判定するためのPCRプライマーを表1に示す。
MMTV−Mtdh導入遺伝子の遺伝子型判定:ニュージャージー州のRutgers癌研究所における遺伝子導入及びノックアウト共有リソースによって、サザンブロット遺伝子型判定を行い、遺伝子導入系を確認した。PCR遺伝子型判定の場合、MMTV−Mtdh遺伝子導入子孫を特定するために使用されるプライマーは、MtdhとSV40との間の連結領域を増幅させるように設計し、一方で他のゲノムDNA領域を標的とするプライマーは、内部対照とした。MMTV−Mtdh導入遺伝子を遺伝子型判定するためのPCRプライマーを表2に示す。
乳房発癌:前述のプロトコルを使用して乳房発癌実験を行った。手短に言えば、示されるMtdh遺伝子型を有する6週齢雌FVB/Nマウスに、15mg MPA(Depo−Provera,NY,Pfizer)を皮下注入し、1週間後に0.1mLの綿実油中1mgのDMBA(Sigma−Aldrich Chemical Co,St.Louis,MO)を連続4週間にわたって毎週強制的に投与した。腫瘍形成について、マウスを毎週検査した。
組織学及び免疫組織化学:β−ガラクトシダーゼ(lacZ)活性を検出するために、胚を0.2%グルタルアルデヒド中で30分間固定し、リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、X−gal染色溶液(0.1Mリン酸ナトリウム中の1mg/mL 4−クロロ−5−ブロモ−3−インドリル−β−ガラクトシド(X−gal)、4mM K4Fe(CN)63H2O、4mM K3Fe(CN)6、2mM MgCl2、0.01%デオキシコレート、及び0.02% ノニデットP−40、pH7.3)中で終夜インキュベートした。染色した後、胚を10%リン酸緩衝ホルマリン中でさらに固定した。乳腺の全組織標本調製のために、第4鼠径部乳腺を切り取り、10%リン酸緩衝ホルマリン中で終夜固定し、続いて水和反応及びカーマインレッド染色を行った。次に染色された腺を、一連のアルコール浴中で脱水し、組織切除(histoclear)試薬で脱脂して載置した。組織診断のために、ホルマリン固定した組織をパラフィンに埋め込み、切片化し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。免疫組織化学染色のために、クエン酸緩衝液(pH=6)による抗原熱回復を、パラフィンに埋め込まれた切片上で使用し、切片を、PyMTに対する抗体(Novus Biologicals,NB100−2749,1:200)、切断されたカスパーゼ−3(Cell Signaling、カタログ番号9664、1:200)、ERBB2(Cell Signaling、カタログ番号2165、1:100)、及びp−ERBB2(Cell Signaling、カタログ番号2243、1:200)で1時間インキュベートした。ビオチニル化二次抗体を30分間インキュベートし、続いてABC試薬(Vector laboratories)でインキュベートした。HRPを、製造者(Invitrogen)の指示に従い、3,3−ジアミノベンジデイン中で発達させた。組織切片をヘモトキシリンで対比染色し、脱水して載置した。図9Aにおいて切断されたカスパーゼ3陽性細胞を定量するために、20を超えるランダム画像(2000個超の細胞)を顕微鏡下で撮影し、陽性細胞を手動で数えた。
組織アレイ免疫染色:2つの乳癌組織マイクロアレイを使用し、MTDHに対する抗体(Invitrogen、カタログ番号40−6500)及びSND1(Sigma、HPA002632)で染色した。1つのTMAをBiomaxから入手し(BR1921a)、160原発腫瘍、5正常組織、及び27正常隣接組織で構成された。これらの192試料から、154試料を、MTDH及びSND1の両方について良好に染色した。第2のTMAをニュージャージー州の癌研究所から入手し(CINJ YMTA_201)、399原発腫瘍で構成されていた。これらの399試料から、270試料を、MTDH及びSND1の両方について良好に染色した。各試料を、染色強度に従い、負(0)、弱(1)、中(2)、または強(3)として採点した。
免疫沈降及びウェスタンブロット:免疫沈降(IP)実験のために、培養した細胞を冷たいPBSで洗浄し、溶解緩衝液(20mM トリス pH7.4、0.15M NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1% Tx−100、0.0025M Na2P2O7、1mM α−グリセロールリン酸塩、1mM Na3VO4、及び1mM NaF)中に、EDTA不含プロテアーゼ阻害剤混合物(Roche Applied Science)及びPMSFと共に溶解した。次に、細胞溶解物を氷上で10分間インキュベートし、遠心分離して、タンパク質A/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)で1時間、4℃でインキュベートすることによって事前切除した(precleared)した。IPビーズ調製のために、30μLのタンパク質A/Gビーズを、5μgの抗体で2時間、4℃でインキュベートした。IPを終夜4℃で実行し、ビーズを遠心分離し、洗浄した後、SDSタンパク質負荷緩衝液中で5分間煮沸して、結合されたタンパク質を溶出した。IP溶解物を、示される抗体と共にウェスタンブロットに供した。
ウェスタンブロットのために、組織/腫瘍をマウスから除去し、液体窒素中で即時冷凍し、続いて乳棒及び乳鉢を用いてRIPA緩衝液+PMSF及びプロテアーゼ阻害剤中で均質化した。培養細胞について、溶解緩衝液をプレート上に直接添加することによって溶解物を収集した。ウェスタンブロットゲル調製及び免疫ブロットを、以下の標準手順に従って行った。MTDHに対する抗体(invitrogen、カタログ番号40−6500)、SND1(Santa cruz、カタログ番号sc−271590)、ERBB2(Cell Signaling、カタログ番号2165)、p−ERBB2(Cell Signaling、カタログ番号2243)、EGFR(Cell Signaling、カタログ番号4267)、抗Myc(Santa Cruz、カタログ番号sc−40)、及び抗HA(Santa Cruz、カタログ番号sc−7392)を、1:1000で希釈した。
ALDEFLUORアッセイ及びFACSによるALDH陽性集団の分離 ALDEFLUORキット(StemCell Technologies,Durham,NC,USA)を使用し、製造者の指示に従って、高ALDH酵素活性を有する集団を単離した。手短に言えば、自発性または移植されたPyMT腫瘍から新たに切り取られた腫瘍細胞を、ALDH基質を含有するALDEFLUORアッセイ緩衝液(1×10細胞当たり1μmol/L BAAAを含有する1mL 緩衝液)中に懸濁し、37℃で45分間インキュベートした。細胞の各試料について、基質を添加する直前に、アリコートを50mM ALDH阻害剤ジエチルアミノベンズアルデヒド(DEAB)で処理した。PIのみ(生存能力について)で染色された細胞、及び負の対照としてDEABで処理されたALDEFLUOR染色細胞を使用し、選別ゲートを確立した。
ヒト乳癌TMA:2つのヒト乳房TMAを研究に使用して、MTDH及びSND1タンパク質レベルの相関を検査した。1つのTMAを、US Biomax(BR1921a)から購入し、第2のTMAをニュージャージー州の癌研究所から入手した(YMTA_201)。両方のTMAのセットは、非特定化した腫瘍試料を使用し、プリンストン大学の施設内治験検査委員会及びRutgersニュージャージー医学校により免除されるものと見なされた。
乳腺上皮細胞の採取及びフローサイトメトリー:乳腺または腫瘍の単一細胞懸濁液を、前述のように調製した(Shackletonら、2006)。手短に言えば、組織を切り取り、小片に粉砕して、300U/mL 1A型コラゲナーゼ(Sigma)及び100U/mL ヒアルロニダーゼ(Sigma)で補足された培養培地(5% FBS、10ng/mL EGF、500ng/mL ヒドロコルチゾン、5μg/mL インスリン、20ng/mL コレラ毒素、及び1% Pen/Strepを含有する1:1 DMEM:HamのF−12培地)中、37℃で1時間消化させた。40μm ナイロン細胞ストレーナでの濾過及び抗体染色の前に、オルガノイドを、0.25% トリプシン−EDTAで1.5分間、5mg/mL ジスパーゼ(Invitrogen)及び0.1mg/mL DNase(Sigma)で5分間、ならびに0.64% 塩化アンモニウムで5分間、37℃で連続的に懸濁した。乳腺上皮細胞を、CD31、CD45、TER119、CD24、CD29、及びCD61を含有する抗体カクテルで30分間インキュベートし、続いてFACS分析または選別の前に20分間、二次抗体染色した。
限界希釈アッセイ:乳腺再構成アッセイのために、7または8週齢雌マウスの乳腺からのMECの単一細胞懸濁液を選別し、3週齢のレシピエントマウスの切除された乳房脂肪体に注入した。移植後6〜8週間で増殖物を解析した。腫瘍形成アッセイの場合、原発性MECの単一細胞懸濁液を、別途指示されない限り、FVB WTレシピエントマウスに移植した。
マンモスフェア/腫瘍様塊アッセイ:単一細胞を超低取り付け板(Corning,Tewksbury,MA)において、塊培地(1:1 DMEM:B27(Invitrogen)、20ng/mL EGF(Novoprotein)、20ng/mL bFGF、及び4μg/mL ヘパリンで補足されたHamの12)と共に平板培養した。平板培養の4〜7日後に塊を数えた。
マイクロアレイ解析:RNAを、CPT(50μM)処理下で示される腫瘍細胞から抽出し、Agilent全マウスゲノム4×44kアレイで解析した。RNA試料を、Agilent低RNA投入線形増幅キットで標識し、Cy3標識マウスユニバーサル基準RNA(Stratagene)と一緒にハイブリダイズした。Agilent G2565BA走査器でアレイを走査し、Agilent特徴抽出v9.5ソフトウェアで解析した。特徴媒体シグナルを使用してCy5/Cy3比を計算し、アレイ中央値によって正規化した。2より大きい平均倍率変化及びスチューデントt検定のp値<0.05を有する遺伝子を、SND1調節遺伝子として含めた。
レンチウイルス感染:ノックダウン研究のために、マウスMtdh(KD1、TRCN0000125816;KD2、TRCN0000125818)、マウスSnd1(TRCN0000054742)、ヒトMTDH(KD1、TRCN0000151467;KD2、TRCN0000322872;KD3、TRCN0000322949)、及びヒトSND1(KD1、TRCN0000245140;KD2、TRCN0000245141;KD3、TRCN0000245144)を標的とするshRNA配列を含むpLKOプラスミドを、Sigma−Aldrich(St Louis,MO,USA)から購入した。全てのレンチウイルス構成体プラスミドは、標準プロトコルに従い、HEK293−T細胞をパッケージング細胞系として使用し、ヘルパープラスミドVSVG(エンベロープ)及びp8.91(gag−pol、pCMV−dR8.91)と一緒にウイルスにパッケージングされた。一次細胞は、8μg/mL ポリブレンで補足された濃縮ウイルス含有培地で2時間、1000g、4℃でスピン感染した後に移植されるか、または感染に続いてプレート内で培養され、実験で使用される前に選別されるかのいずれかである。
qRT−PCR分析:製造者の指示に従って、RNeasyキット(Qiagen)を使用して全RNAを単離し、Superscript IIIキット(Invitrogen)を用いて逆転写した。SYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems)を使用し、ABI Prism 7900HT熱循環器(Applied Biosystems)を用いて定量的PCRを行った。
遺伝子セット強化解析(GSEA):正規化したマイクロアレイ発現データを、提供されたクラス(すなわち、倍率変化)メトリクスの比を使用して、発現別に順位順序付けした。同じ遺伝子に対する複数のプローブマッチを、1つの値にまとめ、最高プローブ読み取り値を各例で使用した。SND1_CPT_UPサインは、CPT処理下でSND1によって2倍より多く(p<0.05)特異的に上方調節される504遺伝子を含有する。SND1_CPT_UPサインを、古典的強化統計を使用して、GSEAを介して順位順序付けされたリストの強化について試験し、遺伝子セットの1000ランダム順列からの強化結果と比較してp値を得た。原強化スコアを、デフォルトGSEAパラメータを使用して正規化強化スコアに変換した。強化スコアは、順位付けされた遺伝子リストの累計ピーク(すなわち、強化スコア)の前またはそのピークにある遺伝子セットのメンバーとして定義される。
統計解析:全ての結果は、必要に応じて統計解析に供した。対数順位検定、非パラメトリックマン・ホイットニー検定、カイ二乗検定、及び等分散仮定による不対両側独立スチューデントt検定を、図のレジェンドに示されるように、ほとんどの研究に使用した。限界希釈アッセイの場合、MaSCまたはTICの頻度及び統計を、L−calcソフトウェア(StemCell Technologies)を使用して計算した。p値は、全ての図面において*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001と示される。
受入番号:全ての原マイクロアレイデータファイルは、GEOデータベースにおいて入手可能である(GSE55522)。
結果
Mtdh−ノックアウトマウスは生存可能であり、全体的にWTマウスとは区別不可能であった。
Mtdh−ノックアウト(KO)マウスを生成するために、Bay Genomicsジーントラップデータベースをスクリーニングし、転写の早期終結をもたらす(図1A)Mtdhの第2のイントロンへの挿入を含むESC株XB780を選択した。胚盤胞へのXB780ES細胞の注入は、キメラマウスを生成し、生殖系伝達の後次確認を伴う。Mtdhヘテロ接合性(Mtdh+/−)マウス間の交雑は、メンデル比において子孫をもたらした。Mtdhホモ接合性KO(Mtdh−/−)胚子は、広範囲に渡るLacZ活性を示し(図1B)、多くの胚子臓器内のユビキタスMtdh発現を示唆する。成体マウスにおいて、MTDHはまた、野生型(WT、Mtdh+/+)及びMTDH+/−マウスの様々な組織内で検出されたが、Mtdh−/−マウスでは検出できず、ジーントラップ型対立遺伝子が、Mtdh発現を完全に排除したことを確認する。Mtdh−/−マウスは生存可能であり、繁殖力があり、最長2年間にわたって監視された場合に明らかな異常を示さなかった。
MTDHは、正常乳腺上皮細胞(MEC)内でも検出され、発現レベルは、Mtdh遺伝的ステータスと相関していた(図1C)。出生後乳腺発達におけるMTDH欠乏の影響を評価するために、WT及びKOバージンマウスからの鼠径部乳房脂肪体の全組織標本を検査した。WT同腹子と比較して、3週齢及び5週齢KOマウスからの乳腺の管増殖物における一時的遅延を除いて、分枝形態形成における有意差は、後の時点において、または妊娠及び授乳中に観察されなかった。したがって、思春期に開始するWT及びMtdh−/−マウスにおいて主に相当する乳腺上皮は、Mtdh−/−マウスを使用して乳房腫瘍形成に対するMTDHの必要性を検査するのを可能にする。
Mtdh KOは、管腔型乳房腫瘍内の腫瘍形成及び転移を阻害する:自所性乳房腫瘍進行中のMTDHの役割を解明するために、MMTV−PyMT及びMMTV−ErbB2遺伝子導入モデルを最初に使用し、それらの両方が、管腔型腺癌を発症し、高い肺転移発生率を有する。急速に進行するMMTV−PyMTモデルにおいて、乳房腫瘍は、早くも42日齢、及び63日目までに起こり、Mtdh+/+マウスの50%が腫瘍を発症した(図1D)。対照的に、Mtdh−/−群では、50日目に最初の触知可能な腫瘍が検出され、これらのマウスの50%が、80日後にのみ腫瘍を発症した。この腫瘍発生の遅延は、WT対照と比較して、Mtdh−/−マウスにおけるより多くの無腫瘍乳腺によってさらに支持された(図1E)。一貫して、PyMT;Mtdh+/−及びPyMT;Mtdh−/−マウスの総腫瘍量は、それぞれWT対照のそれの54%及び10%に低減した(図1F)。さらに、PyMT;Mtdh−/−マウスは、著しく少なく(図1G)小さい(p<0.05)転移性小結節を有していた。
腫瘍形成の差は、MMTV−ErbB2モデルにおいてさらにより顕著であり、腫瘍形成が長期潜伏後に起こる。ほぼ全てのErbB2;Mtdh+/+マウスが300日齢までに腫瘍を発達させたが、ErbB2;Mtdh−/−マウスの60%超が、腫瘍を有していなかった(図1H及び1I)。最長18ヶ月にわたって監視した場合でも、ErbB2;Mtdh−/−マウス(n=68)の30%が、依然として完全に無腫瘍のままであったが、全てのErbB2;Mtdh+/+マウス(n=61)は、死亡していたか、または安楽死の罹患基準に達していた(p<0.0001)。肺転移もまた、ErbB2;Mtdh−/−マウスにおいて激しく障害された(図1J及び1K)。
PyMT及びErbB2の発現が、WT及びKOの乳腺または腫瘍間で同等であったため、乳房腫瘍形成の差は、発癌遺伝子の分化誘導に起因していなかった。加えて、そのホスホリル化によって示されるように、ErbB2の活性化は影響されなかった。さらに、MTDHタンパク質レベルは、同年齢の正常対照と比較して、PyMT及びErbB2駆動腫瘍において上昇し、高レベルのMTDHが、腫瘍形成中にMECに成長優位性を付与し得ることを示唆する。
Mtdh KOは、基底様及び混合亜型の乳房腫瘍の形成を制限する:腫瘍形成におけるMTDHの調査は、乳房幹細胞(MaSC)様遺伝子発現プロファイルを呈し、基底亜型のヒト乳癌に類似する腫瘍を発達させるMMTV−Wntモデルにまで拡張された(Herschkowitzら、2007)。事実上全てのWnt;Mtdh+/+マウスが、300日齢において癌で死亡したが、Wnt;Mtdh+/−マウスの35%及びWnt;Mtdh−/−マウスの62%において腫瘍は検出されなかった(図1L)。腫瘍の多様性もまた、Mtdhの遺伝子投薬量に高度に依存していた(図1M)。これらの表現型は、管腔型腫瘍モデルにおいて観察したものと明らかに類似していた。我々の解析を広げるために、メドロキシプロゲステロン酢酸塩(MPA)及び7,12−ジメチルベンズアントラセン(DMBA)(図1N)の複合治療を使用して乳房発癌を誘導し、腺癌、腺扁平上皮癌、及び腺筋上皮腫癌の組織学的特徴を有する乳房腫瘍の形成をもたらした(Yinら、2005)。再度、Mtdh−/−雌は、MPA/DMBA治療後に明らかに減衰した腫瘍感受性を示した(図1N及び1O)。
Mtdh KOは、発癌遺伝子誘発性基底型及び管腔型TICの増殖及び活性を障害する:乳房腫瘍形成に対するMtdh欠失の劇的効果は、腫瘍形成中の早期事象の調査を促した。この目標を達成するために、前新生物期における異なる腫瘍モデルからの乳腺の全組織標本(図2A、上パネル)及びヘマトキシリン/エオシン染色された切片(図2A、下パネル)を検査した。PyMT及びWnt両方の発癌遺伝子が、Mtdh+/+マウスにおいて、早くも4週間で広範囲にわたる過形成を誘導したが、Mtdh−/−腺は、正常管構造と入り混じった著しく少なく小さい過形成巣を呈した。MMTV−ErbB2マウスは、最長の腫瘍潜伏を有し、これは、著しく遅く、最低重症度の過形成に対応する。6ヶ月齢無腫瘍MMTV−ErbB2雌からの乳腺の全組織標本解析は、Mtdh陽性マウスにおいて100%に近い過形成の発生率を明らかにしたが、ErbB2;Mtdh−/−からのものの20%のみが軽度に過形成であった(図3A及び3B)。
Mtdh−/−腺におけるこれらの激しく障害された前新生物性変化は、形質転換されたMECの増殖の欠陥を示唆し得る。乳腺の細胞構成の発癌遺伝子誘発性変化を検査するために、前新生物性乳腺を、CD24、CD29(β1インテグリン)及びCD61(β3インテグリン)を使用してプロファイルし、これらは、管腔型及び基底型乳腺上皮サブセットを解明するために以前から使用されてきた(Asselin−Labatら、2007;Shackletonら、2006)。正常な腺と比較して、PyMT前新生物性組織は、Lin−CD24+CD29低管腔型サブセット(CD24+CD29低)の劇的な増殖を示し(図2B及び2C)、以前の報告の「管腔様」遺伝子発現プロファイルと一致する(Herschkowitzら、2007)。対照的に、MaSCが豊富なLin−CD24+CD29高(CD24+CD29hi)基底型集団の割合は、先述されるように(Shackletonら、2006)、Wnt乳腺からの前新生物性組織において顕著に増加し(図2B及び2D)、この集団がこのモデルにおける形質転換のための主要な細胞標的を表すことを示唆する。興味深いことに、上皮階層のこれらの発癌遺伝子特異的攪乱は、(1)PyMT;Mtdh−/−におけるCD24+CD29低管腔サブセット増殖の欠失(図2B及び2C)、(2)WT対応物と比較して、Wnt;Mtdh−/−腺におけるCD24+CD29hi基底サブセットの増殖の著しい減少(図2B及び2D)によって証明されるように、Mtdh喪失によって損なわれた。Mtdh+/+マウスにおけるPyMTまたはWnt誘発性過形成腺は、正常な腺と比較して、CD61+集団の選択的増殖を呈しなかったことは、記録するに値する(図3C及び3D、橙色のバーを比較する)。しかしながら、CD61−細胞(図3E)よりもマンモスフェアを形成することができるCD61+細胞の割合は、Wnt;Mtdh+/+腺と比較して、Wnt;Mtdh−/−腺において著しく減少した(図3C及び3D、WT対KOを比較する)。
Mtdh−/−前新生物性腺が、実際により少ないTICを含むかどうかを試験するために、原発性MEC(pMEC)を、Mtdh+/+及びMtdh−/−前新生物性腺から解離し、生体外マンモスフェア形成アッセイを行った。Mtdh−/− pMECは、複数の腫瘍モデルにわたって減少した数の塊を形成した(図2E)。さらに、WTレシピエントマウスに同所移植された場合、PyMT;Mtdh−/− pMECは、一連の希釈数を試験した場合の低減した腫瘍発生率によって明らかになるように、生体内で実質的に少ない腫瘍再増殖細胞を含んでいた(図2F)。
次に、PyMT誘発性TICが増殖した管腔型集団内に存在するかどうかを解析した。PyMTマウスの前新生物性腺から選別された管腔型及び基底型pMECを生体内移植した。基底細胞ではなく、管腔細胞を受けたマウスにおいて、腫瘍が高頻度で検出され(図2G)、PyMT誘発性前新生物性TICが、MECの管腔型サブセットと同時精製されたことを示唆する。重要なことに、PyMT;Mtdh+/+及びPyMT;Mtdh−/−雌からの管腔細胞の腫瘍形成能を生体内で検査した場合、腫瘍発生率(図2H)及び体積(図2I)は、Mtdh−/−細胞が移植されたマウスにおいて実質的に減少した。これらの結果は、管腔細胞の増殖だけでなく、腫瘍形成能もまた、PyMT;Mtdh−/−マウスにおいて激しく損なわれたことを示唆する。
MECの管腔型または基底型サブセットの選択的増殖は、以前の報告に従い、正常対照と比較して、MMTV−ErbB2前新生物性腺内で検出されなかった(Shackletonら、2006)。MECのどのサブセットがTICとして機能するかを特定するために、管腔型及び基底型MECをErbB2;Mtdh+/+過形成腺から選別し、これらの細胞を同所移植した。管腔型または基底型MECのいずれかを受けたマウスの100%において明らかな腫瘍が検出された(図3F及び3G)。細胞起源に関わらず、全ての腫瘍が、組織学においてMMTV−ErbB2マウスからの自発性腫瘍と酷似していた(図3H)。これらの結果は、MMTV−ErbB2腫瘍が、管腔区画及び基底区画の両方を起源とし得ること、及び基底細胞が管腔型の腫瘍を生じ得ることを示唆し、この所見は、最近の報告によって支持される(Zhangら、2013a)。MTDHに依存する細胞標的を特定するために、ErbB2;Mtdh−/−雌からの管腔型及び基底型サブセットを生体内移植した。驚くべきことに、ErbB2;Mtdh+/+を受ける全てのマウスが大きな腫瘍を発達させていたとき、管腔型または基底型ErbB2;Mtdh−/−細胞のいずれも、明らかな腫瘍を生じなかった(図3F及び3G)。これらの結果は、MTDHが、ErbB2誘発性基底型及び管腔型TICを維持するために重要であることを示す。
早期腫瘍形成においてTICを調節することにおけるその重要な役割とは対照的に、MTDHは主に、WT及びKOマウスからの未分画Lin−MEC(図3J)またはMaSCが豊富な基底細胞(図3K及び3L)のいずれかと同様の生体内乳腺再構成(図3I)の効率によって示されるように、成体MaSC活性に必要ではない。
乳房腫瘍開始能を促進することにおけるMTDHのMEC本来の役割:MTDHは、マウスにおいて広く発現するため、生物全体KOマウスにおける腫瘍形成の欠陥は、MECまたは他の細胞/組織型のいずれかにおけるMTDHの喪失から生じ得る。これら2つの可能性を区別するために、マウスMTDHを、Mtdh−/−マウスのMECに生体内で特異的に再導入し、これが腫瘍形成の欠陥を機能回復するかどうかを試験した。この目的を達成するために、MMTV−Mtdh遺伝子導入マウス系を創出し(図4A、5A、及び5B)、Mtdh導入遺伝子の発現を乳腺、及びそれ程ではないが唾液腺内で特異的に観察した(図5C)。次に、これらのMMTV−Mtdhマウスを、PyMT;Mtdh−/−マウスと交雑して、外因性Mtdh導入遺伝子を有する、または有しないPyMT;Mtdh−/−マウスを生成した(図4A)。注目すべきことに、導入遺伝子(Tg)−により機能回復されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍は、PyMT;Mtdh+/+腫瘍のそれと同様レベルのMTDHを発現した(図4B)。PyMT;Mtdh−/−マウスと比較して、PyMT;Mtdh−/− +Tg前新生物性腺からの管腔細胞の増殖のほぼ2倍の増加が観察された(図4C)。加えて、PyMT;Mtdh−/− +Tg群において、腫瘍発症は加速され(図4D)、腫瘍量(図4E及び4F)は増加した。Mtdh導入遺伝子の存在は、結果として得られる腫瘍の組織学を変えなかった(図5D)。これらの結果は、標的細胞増殖及び後次の乳房腫瘍形成を生体内で促進することにおけるMTDHの腫瘍本来の役割を強く支持するが、腫瘍ストローマの寄与を無視することはできない。
我々の自発性腫瘍モデル研究を補完するために、次に、MTDHの急性操作もまた、前新生物性MECの腫瘍形成能に影響するかどうかを調査した。MTDHを、PyMT;Mtdh+/+(図4G)及びErbB2;Mtdh+/+(図5E)雌の前新生物性腺から新たに解離されたpMEC中でノックダウンした。MTDHノックダウン(KD)細胞の塊形成能は、両方のモデルの複数の独立した試料において著しく低減した(図4G及び5E)。PyMT;Mtdh+/+ pMECの生体内腫瘍形成もまた、MTDH KDによって激しく障害された(図4H)。逆に、MTDHが、PyMT;Mtdh−/− pMEC内で、レンチウイルス形質導入を介して、WT対応物に相当するレベルまで回復した場合、生体外塊及び生体内腫瘍形成の両方が著しく増強された(図4I、4J、及び図5F〜5H)。
次に、確立されたMTDH陽性腫瘍からのTICが、それらの機能性についてMTDHに依存するかどうかを解析した(図4K)。PyMT、Wnt、及びErbB2駆動腫瘍からの確立された腫瘍が、CD24及びCD29でプロファイルされた場合、1つの比較的均質な集団を示したという事実は(Vaillantら、2008)、確立された腫瘍からTICを特定するために、他のマーカーの必要性を強調する。増加したアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)活性は、乳癌を含む複数の癌型において、癌幹様集団内で見出されたが(Ginestierら、2007)、マウスモデルにおけるそのTICマーカーとしての使用は、あまり特徴付けられていないままである。ALDH+及びALDH−細胞を、PyMT腫瘍から選別し(図5I)、ALDH+細胞が、ALDH−細胞と比較して、著しく高い生体外塊形成(図4L)及び生体内腫瘍開始活性(図5J)を呈したことを見出した。TIC特徴を有するALDH+集団と一致して、この集団によって生成された腫瘍は、初期腫瘍の表現型異質性を要約し、同様の比率のALDH+及びALDH−細胞を有する。これは、ALDH+腫瘍細胞が、自己再生することができると共に、ALDH−細胞に分化できることを示す。MTDHが、PyMT;Mtdh+/+腫瘍から新たに単離されたALDH+細胞内でノックダウンされた場合、塊形成活性は、著しく低減された(図4M)。MMTV−Wnt腫瘍の場合、CD61+集団は、TIC特徴を有することが明示され、高度に腫瘍形成性であった(Vaillantら、2008)。一貫して、CD61+腫瘍細胞は、CD61−細胞よりも多くの腫瘍塊を生成することができた(図4N)。重要なことに、MTDH KDは、MMTV−Wnt腫瘍からのCD61+細胞内で塊形成活性を損なった(図4O)。これらの結果は、MTDHが、MTDH−陽性腫瘍内のTICの全機能性に連続的に必要とされることを示唆する。
MTDHの腫瘍形成促進的役割は、その相互作用パートナーSND1を必要とする:SND1は、ヒト乳癌細胞におけるMTDHの主要な結合パートナーとして以前に特定され、MTDHと同様の転移促進機能を有していた(Blancoら、2011)。この研究において、MTDHとSND1との間の相互作用は、ヒト及びマウス乳癌細胞において十分に保存されたことが見出された。
腫瘍開始におけるMTDHの機能に対するSND1の必要性を試験するために、SND1を最初に、PyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞内でノックダウンしたところ、これらの細胞内でマウスMTDHの発現を機能回復することが示された(図6A)。PyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞内のMTDHの再導入は、生体外塊形成(図4B)及び生体内腫瘍形成(図6C)を一貫して促進したが、MTDHのこの効果は、SND1 KD時に完全に排除された(図6B及び6C)。MTDHが、その腫瘍形成促進機能のために実際にSND1を必要とする場合、Mtdh+/+腫瘍細胞内のSND1のノックダウンは、乳房腫瘍形成に対するMTDH欠乏の効果を表現型模写することが予想された。実際に、Mtdh+/+腫瘍細胞内のSND1 KDは、生体外塊形成活性(図6D)及び生体内腫瘍開始(図6E及び6F)を障害し、腫瘍開始活性に対するMTDH切除の効果に類似する。これらの結果は一緒に、TICに対するMTDHの機能が、SND1の存在を必要とすることを示す。
SND1との物理的相互作用がMTDHの機能に重要であるかどうかをさらに試験するために、タンパク質の相互作用に関する詳細な解析を行った。SND1は、4つのN末端ブドウ球菌ヌクレアーゼ(SN)の繰り返し、及びC末端Tudor−SNハイブリッドドメインを含有する。第2のSNドメイン(SND1ΔC、1〜339)に続くC末端配列を欠くSND1構成体は、MTDH断片1〜289とではなく、MTDH断片364〜582と化学量論的に結合し(図7A及び7B)、全長SND1の結合挙動に類似する(Blancoら、2011)。これは、SND1ΔC断片を以降の生体外結合研究に使用することを可能にした。MTDHの最小SND1結合ドメインをマップするために、領域364〜582内のMTDHの一連の断片を生成し(図7A)、それらのSND1ΔCとの相互作用を試験した。これは、SND1結合に十分な22アミノ酸断片(残基386〜407)の特定につながり(図7A及び7B)、MTDH−SND1複合体の結晶構造によってさらに確認された(実施例3を参照されたい)。
相互作用に必須のMTDHの主要な残基を判定するために、3つの三重点突然変異体(TPMと称される)を設計し、各々がMTDH(配列番号1のアミノ酸364〜582)断片の22−aa最小結合ドメイン内に3つのアミノ酸突然変異を内包する(図7A)。TPM1は、突然変異D389R、D393R、及びW394Dを含む。TPM2は、突然変異E399R、E400R、及びW401Dを含む。TPM3は、突然変異W404D、D406R、及びE407Rを含む。生体外結合アッセイは、TPM1及びTPM2の両方がSND1ΔCに結合できなかったが、TPM3は、WT MTDHのように有効にSND1ΔCに結合したことを示した(図7C)。これらの突然変異はまた、表3に記載される。
TPM1及びTPM2がSND1と生体内で相互作用するかどうかを検査するために、全長HAタグ付きSND1及びMycタグ付きMTDHを、HEK293T細胞内で異所的に発現させ、細胞溶解物を抗Myc免疫沈降に供した。生体外結合アッセイからの所見と一致して(図7C)、HA−SND1は、TPM1またはTPM2 MTDHではなくWTでプロダウンされた(図7D)。全9個の個別の突然変異を、同様の戦略を使用してさらに解析したところ、W394Dは完全に、W401Dは部分的に結合を排除したが、他の突然変異は個別に相互作用に影響しなかったことが見出された(図7E)。SND1結合欠乏TPM1及びTPM2 MTDHが、MTDHの別の既知の結合パートナーであるAGO2(図7D)と依然として相互作用できることが指摘され(Yooら、2011)、これらの突然変異が、MTDH内で全体の立体配座的変化を引き起こす可能性は低いが、むしろSND1との相互作用を選択的に妨害することを示唆する。
これらの突然変異が、腫瘍形成におけるMTDHの機能に影響を及ぼすかどうかを試験した。マウス形態のWT MTDH、TPM1、またはTPM2は、PyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞内で安定して発現し、これらのMTDH突然変異体が、SND1と相互作用する能力を喪失したことが見出された(図8A)。機能的に、WT MTDHは、PyMT;Mtdh−/−細胞の生体外塊形成活性、及び生体内腫瘍開始を増加させることができたが、TPM1またはTPM2突然変異体は増加させることができなかった(図8B〜8D)。W391D突然変異体(ヒトMTDHにおけるW394Dに対応する)を試験したとき、同様の結果が観察された(図8E〜8H)。これらの結果は、MTDHの、SND1との結合残基が、ヒト及びマウス内で高度に保存され、SND1との相互作用が、TIC活性を調節することにおけるMTDHの機能性を媒介するために重要であることを強く示唆する。
SND1のMTDH媒介性安定化は、MECにストレス条件下での生存優位性を付与する:SND1は、様々なストレス条件下での生存因子として報告された(Gaoら、2010;Sundstromら、2009;Weissbach及びScadden、2012)。乳腺の正常な生理学ではなく腫瘍開始におけるMTDHのより顕著な役割は、MTDHが、そのSND1との相互作用を通じて、腫瘍形成中にストレス条件下でMECに優位性を付与するという仮説につながった。この仮説を支持するように、本明細書において、前新生物性PyMT;Mtdh−/−乳腺上皮において、PyMT;Mtdh+/+対応物よりも著しく高い割合のアポトーシス細胞が検出され、これはPyMT無しの腺では見られなかった(図9A)。生体外でストレス条件下のMTDH−SND1相互作用の役割を試験するために、WTまたは突然変異体マウスMTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/− pMECを、カンプトテシン(CPT)で処理し、腫瘍発達中の一般的なストレス型である(Halazonetisら、2008)、DNA複製ストレスを誘発した(図9B)。CPT処理は、投薬量依存的にMECのアポトーシスを誘発した(図9B)。対照と比較して著しく減少した割合のアポトーシス細胞がMTDH機能回復群内に存在し、SND1結合欠乏性突然変異は、MTDHのこの生存促進効果を排除した(図9B)。
SND1レベルが、ストレス条件下での細胞生存に重要であるという以前の観察と一致して、PyMT;Mtdh+/+ MEC内のSND1のサイレンシングは、CPT処理時のアポトーシスの著しい増加につながった(図9C)。興味深いことに、SND1タンパク質レベルの薬物投薬量依存的減少は、CPTで処理されたMEC内で観察された(図9D)。熱ショック処理もまた、SND1の急速な減少をもたらしたため、この現象は、このストレス型に固有ではなかった。注目すべきことに、PyMT;Mtdh+/+ pMEC内のMTDHのサイレンシングは、SND1タンパク質の減少を加速させた(図9D)。逆に、SND1結合欠乏性MTDHではなく、WTの回復は、PyMT;Mtdh−/− MECにおいて、これらのストレス条件下でSND1タンパク質を安定させた(図9E)。したがって、これらのデータは、MTDHが、生存因子SND1と相互作用し、安定させることによって、ストレス条件下で生存を促進することを集合的に示唆する。
SND1がどのようにその生存促進機能を発揮するかに関するより良い理解を提供するために、トランスクリプトームプロファイリングを、対照対CPT処理下のSND1−KD PyMT;Mtdh+/+ pMECに関して行った(図9F〜9H)。Ingenuityパスウェイ解析は、SND1によって上方調節された遺伝子(図9F、>2倍率変化、p<0.05)が、「細胞死及び生存」、「細胞周期」、及び「DNA修復」(図9G)、CPT誘発性複製ストレスに関連する過程を含む、分子機能及び細胞機能の著しい強化を示した。興味深いことに、SND1により上方調節された遺伝子の大部分が、「細胞死及び生存」カテゴリーに関与し、これらの遺伝子の発現は、集合的に細胞生存機能を著しく活性化し(図9H、上6列)、細胞死及びアポトーシスを損なうことが予想された(図9H、下2列)。したがって、SND1が生存促進遺伝子を全体的に活性化する能力は、ストレス誘発性細胞死から細胞を保護することにおけるその役割の根底にあり得る(図9C)。MTDHが、SND1と相互作用し、安定させることによって生存を調節するという仮説を実証するために、WTまたはSND1結合欠乏性突然変異体マウスMTDH(W391D)で再構成されたPyMT;Mtdh−/− pMECをプロファイルした。遺伝子セット強化解析(GSEA)は、SND1上方調節された遺伝子サインが、WT対突然変異体MTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/− pMECにおいて著しく強化されたことを明示した(図9I)。
MTDH及びSND1は、ヒト乳癌細胞の腫瘍開始活性に重要である:ヒト乳癌の腫瘍開始活性におけるMTDH及びSND1両方の重要な役割を明示するために、MTDHまたはSND1を、(1)HER2/Neu形質転換ヒト乳腺上皮細胞(HMLE−N)(Maniら、2008)(図10A、10B、11A、及び11B)、(2)ヒト患者由来の一次異種移植片(DeRoseら、2011;Zhangら、2013b)(図10C、10D、11C、及び11D)、及び(3)MDA−MB−231ヒト乳癌細胞系(図10E〜10H)を含む複数のヒト乳癌モデルにおいてサイレンシングした。MTDHまたはSND1のいずれかのノックダウンは、試験した全モデルの生体外腫瘍様塊形成及びMDA−MB−231細胞の生体内腫瘍開始を著しく低減した。
SND1のMTDH媒介性安定化が、ヒト乳癌試料において発生するかどうかをさらに検査した。ヒト乳癌組織マイクロアレイ(TMA)を、抗体の特異性を確認した後(図11E及び11F)、MTDH及びSND1に対して抗体で染色した(図10I〜10J)。MTDH及びSND1の染色スコア間の正の相関(図10I及び10J)が見出され、これは独立したTMAを使用して確認された(図11G及び11H)。MTDH及びSND1が、mRNAレベルで相関しなかったことは注目に値する(図11I)。これらのデータは、乳癌のSND1の転写後調節におけるMTDHの主要な役割を支持し、MTDHが、腫瘍形成中にストレス条件下でSND1と相互作用し、安定させるという我々の見出と一致する。
MTDH−SND1相互作用の臨床的重要性をさらに検証するために、NKI295ヒト乳癌マイクロアレイデータセット(van de Vijverら、2002)を解析した。SND1及びMTDH両方の中央値発現に基づいて、患者を4つの異なる群に階層化した。高mRNAレベルのMTDH及びSND1両方を有する原発腫瘍は、著しく大きく(図11J)、低分化であり(図11K)、より短い無遠隔転移生存率と相関し(図11L)、腫瘍発達、転移、及び再発におけるヒト乳癌のMTDHとSND1との間の機能連携を支持する。種々の乳房腫瘍モデルにおけるその腫瘍促進機能と一致して、より高レベルのMTDHが、KM−プロッターデータセット内の複数乳癌亜型にわたって予後不良を予測したことも見出された(図11M)。理論に拘束されないが、管腔A亜型におけるMTDHの、より強そうに見える予知能力は、他の亜型と比較して、この群の著しく大きい試料サイズに起因する可能性があると思われる。
論考
腫瘍進行の古典的クローン進化理論は、転移能が原発腫瘍内の希少細胞において起こるランダム遺伝的変化によって与えられると仮定するが、ゲノム研究及び臨床研究は、転移する可能性が、大量の原発腫瘍をプロファイリングすることによって予想され得ることを逆説的に明示する(van de Vijverら、2002)。これは、転移能が、追加の転移促進機能を有する発癌事象によって付与され得(Bernards及びWeinberg、2002)、したがって、これらの遺伝的変化が、腫瘍進化の早期に起こり、選択され得ることを示唆する(Vanharanta及びMassague,2013)。この見解を支持するものとして、いくつかの転移促進遺伝子が、異種移植モデルにおいて原発腫瘍成長を促進することが示された(Vanharanta及びMassague、2013;Wanら、2013)。ヒト原発乳腺腫瘍におけるMTDHの再発増幅/過剰発現は、したがって、乳癌転移を促進することにおけるその報告された役割に加えて、MTDHが腫瘍形成に関係があるとし得る。ヒトまたはマウス乳癌細胞系を使用する以前の研究は、異種移植モデルにおける原発腫瘍形成に対するMTDHのいかなる効果も明らかにすることができなかったが(Brown及びRuoslahti、2004;Huら、2009)、現行研究において使用される遺伝子操作されたマウスモデルは、腫瘍形成の早期において腫瘍開始細胞の増殖及び活性を調節することにおけるMTDHの役割を解明するのを可能にし、したがって原発腫瘍開始と転移特性の取得との間の別の分子結合を確立する。腫瘍開始に対するMTDHのこの効果は、多数の高攻撃後期腫瘍細胞が以前の異種移植研究において使用されたときに隠された可能性がある。この推測と一致して、後期PyMT腫瘍細胞が大量に移植された場合、Mtdh WT細胞とKO細胞との間の腫瘍開始に差は観察されなかった。それにも関わらず、MTDH陽性確立乳房腫瘍からのTIC、例えば、それぞれPyMT及びWnt誘発性腫瘍からのALDH+細胞及びCD61+細胞は、MTDH阻害に対して敏感なままであり、MTDH依存的機序が、確立腫瘍内でTICの最適機能性を維持する役割を果たし、したがって、MTDH及びその調節経路を遮断することは、MTDHの異常発現を有する癌患者にとって有益であることを示唆する。
遺伝病的変を開始することは、ヒト及び遺伝子導入動物の両方からの乳房腫瘍の組織病理及び分子特徴に対して著しい影響を及ぼすことが示唆された。例えば、Wntシグナル伝達は、PyMT及びErbB2と比較して、より原始的な前駆細胞に類似する特徴を有する乳房腫瘍を誘発する(Liら、2003)。注目すべきことに、MTDHが、これらの異なる腫瘍モデルにわたって、TICの機能性に必要であることが本明細書において発見された。一貫して、MTDH発現は、ヒト乳癌の特異的亜型と著しく相関せず(Huら、2009)、より高レベルのMTDHは、異なる亜型にわたって予後不良を予測する。これらの結果は一緒に、MTDHが、管腔型腫瘍生存因子PDEFなどの系統特異的腫瘍促進遺伝子とは対照的に、発癌遺伝子及び系統から独立して腫瘍開始を促進するという考えを確証する(Buchwalterら、2013)。腫瘍形成におけるMTDHの広範な機能はまた、広範囲の癌型におけるその頻繁な上方調節と一致する(Emdadら、2013;Wan及びKang、2013)。
MTDHの不在下で形成された腫瘍は、MTDH陽性腫瘍と同様の組織学的特徴を呈し、MTDHが、TICの細胞起源または細胞運命を変化させないが、代わりにそれらの腫瘍形成能に影響を及ぼし得ることを示唆する。これは、MTDH KOがMaSCの活性にほとんど影響しないという観察と一緒に、MTDHを、正常例及び悪性例の両方において、分化細胞とより原始的な幹/前駆細胞との間の変換を媒介するそれらの能力によって腫瘍形成を調節する、Wntシグナル伝達(Lentoら、2013)、Slug/Sox9(Guoら、2012)、及びGATA3(Kouros−Mehrら、2008)などの他の細胞運命調節因子とは異なるTICの重要な調節因子として確立する。
本発明者及び他は、SND1をMTDHの主要な結合パートナーとして特定した(Blancoら、2011;Mengら、2012;Yooら、2011)。しかしながら、MTDHの2つの非重複領域、つまりアミノ酸364〜470(Blancoら、2011)及び101〜205(Yooら、2011)が各々、SND1とのMTDHの相互作用を媒介する唯一の必須ドメインとして独立してマップされたため、SND1とのMTDHの結合ドメインに関する矛盾が存在した。我々の現行研究は、相互作用に十分なMTDHの最小断片(386〜407)をさらに判定し、相互作用に重要なこの断片内の2つの主要な残基を特定する。これらの所見は、SND1との相互作用が、MTDHの機能の中枢であるという現行の明示を可能にした。これらの所見はまた、SND1を、乳房TICの重要な調節因子として確立する。重要なことに、MTDHとSND1、ならびに結合残基との間の相互作用は、ヒト及びマウス間で十分に保存され、マウスモデルにおける我々の所見が、現行の機能解析及び臨床解析によって示唆されるように、ヒト癌と高度に関連し得ることを強調する。
腫瘍形成は、発癌遺伝子誘発性DNA複製/損傷ストレスを含む、腫瘍細胞が克服する必要がある種々のストレスを伴う。本明細書において、SND1が、ストレス条件下での細胞内の生存促進遺伝子の群の発現に必要であり、SND1のサイレンシングが、形質転換されたMECを複製ストレス誘発性アポトーシスに感作することが明示された。これらの結果は、様々なストレス条件下で生存促進性タンパク質としてSND1を確立した以前の報告と一致する(Gaoら、2010;Sundstromら、2009;Weissbach及びScadden、2012)。さらに、MTDHとの物理的相互作用は、ストレス条件下でSND1を分解から保護し、SND1調節された遺伝子サインを維持するために必須である。したがって、MTDHが、腫瘍形成中にストレス条件下で、SND1と相互作用し、安定させるその能力によって、少なくとも部分的にTICを消耗から保護することが可能である。SND1がどのように下流の生存促進性遺伝子を調節するかは依然として明らかでない。SND1は、転写制御、mRNAスプライシング、RNAストレス顆粒形成、及びRNA誘発性サイレンシング複合体(RISC)機構を含む、いくつかの遺伝子調節過程に関与することが報告された多機能性タンパク質である(Wan及びKang、2013において検討される)。今後の研究は、SND1が、細胞生存を促進するためのストレス条件に応答して、どのように遺伝子発現を調節するかを調査することが保証される。
腫瘍開始と転移能との間の分子結合を提供することに加えて、我々の所見は、いくつかの潜在的翻訳適用を示唆する。最初に、患者由来の腫瘍移植片において検証されたTIC機能を持続することにおけるMTDH及びSND1の機能的重要性は、これらのタンパク質を癌治療における潜在的治療標的として確立し得る。加えて、MTDH−SND1相互作用に関する結果は、MTDH及びSND1の相互作用を妨害し得る小分子阻害剤のスクリーニングまたは設計を容易にし得る。我々の結果はまた、MTDHの腫瘍特異的要件を強調し、Mtdhの生物全体ノックアウトがマウスにおいて著しい欠陥を引き起こさないため、MTDH−SND1モジュールの体系的標的は、癌患者によって十分に耐えられ得ることを示唆する。
実施例2−前立腺癌におけるMTDHの調査
前立腺癌におけるMTDHの効果を調査するために、MTDHノックアウトマウスを、マウス前立腺遺伝子導入腺癌(TRAMP)マウスと交雑し、MTDH及びTRAMPの異質性発現を有する動物を生成した。TRAMPモデルは、SV40T抗原の発現が、ラットプロバシンプロモータによって制御され、マウスの性成熟中に誘発される動物をもたらし、ヒト前立腺癌の臨床的進行に類似する前立腺癌の発達につながる(Greenbergら、1995;Gingrichら、1999)。
実験手順
マウス。マウスを必要とする全実験プロトコルは、プリンストン大学の施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認された。Mtdh−/−マウスは、ジーントラップ型対立遺伝子を含有するES細胞株XB780(Bay Genomics)をC57BL/6胚盤胞に注入によって生成し、続いてPCRにより生殖系伝達を確認した。全Mtdh−/−マウスを、C57BL/6TRAMP遺伝子導入マウス(Jackson Laboratory)と繁殖させる前に、6世代超にわたってC57BL/6バックグラウンドに戻し交雑した(Greenberg,2005)。雌TRAMPマウスを、Mtdh−/−雄マウスと繁殖させて、雌TRAMP/MTDH+/−及び雄MTDH+/−樹立マウスを得た。後次に、これらの樹立マウスを繁殖させて、TRAMP/Mtdh+/+、TRAMP/MTDH+/−、及びTRAMP/Mtdh−/−雄マウスを生成した。この繁殖戦略は、全実験マウスが、SV40導入遺伝子にヘテロ接合性であることを保証した。DNAは、尾部検体から抽出され、以下のプライマー、(1)一般的な順方向プライマー5′−GAGAGGAGGTTTTGGGGAAG−3′(配列番号8)、(2)WT対立遺伝子の逆方向プライマー5′−CCCATGTCTAAAAAGCCAATC−3′(配列番号9)、(3)突然変異体対立遺伝子の逆方向プライマー5′−GTTCATATGGTGCCGTGCAG−3′(配列番号11)を使用して、遺伝子型解析のためにPCRを行った。腫瘍細胞注入の場合、胸腺欠損ヌード雄マウスに5×10 TRAMP−C1細胞を皮下注入し、腫瘍体積の計算(π×長さ×幅/6)のために、週2回カリパスによって腫瘍を測定した。
細胞培養。TRAMP−C1細胞系をATCCから入手し、短いタンデム反復(STR)プロファイリング方法を使用して認証された。細胞を、0.005mg/mL ウシインスリン、10nM デヒドロイソアンドロステロン、5%ウシ胎仔血清、及び5% Nu−血清IVで補足されたダルベッコ改変イーグル培地内で維持した。
組織検査及び腫瘍悪性度分類。安楽死の時点で、膀胱(空)、精嚢、及び前立腺を含むより下位泌尿生殖路を除去し、計量した。大動脈周囲リンパ節、肺、及び肝臓を除去し、目に見える転移の証拠について調べた。組織を、10%リン酸緩衝ホルマリン中に固定し、パラフィンに埋め込み、5μm厚で切片化した。H&E染色された背外側葉切片を、各々盲検的に1〜6のスケールで採点した(「1」は正常な前立腺を表し、「6」は不十分に分化した前立腺腺癌または神経内分泌腫瘍を表す)(Gingrich、1999;Kaplan−Lefko、2003;Hurwitz、2001)。
ヒト試料。腫瘍標本を、ミシガン大学の施設内検査委員会に従い、全対象からのインフォームドコンセントと共にミシガン大学の総合癌センターから得た。62正常前立腺組織、10良性前立腺過形成(BPH)、10前立腺萎縮または前立腺炎症性萎縮(PIA)、10前立腺内上皮新生物(PIN)、72前立腺腫瘍、及び10遠隔転移で構成された2つの前立腺組織マイクロアレイを、当臨床研究に使用した。手術時に、情報入手可能な患者の年齢は、56〜90歳であった(中央値=76歳、SD=7.6歳)。全患者は、ホルモン療法または放射線療法で治療されていなかった。
統計解析。必要であるか否かに関わらず、全結果を統計解析に供した。対数順位検定、非パラメトリックマン・ホイットニー検定、カイ二乗検定、及び等分散仮定による不対両側独立スチューデントt検定を、図のレジェンドに示される大部分の研究に使用した。全統計検定について、*p<0.05、**P<0.01、***p<0.001。
結果
MTDHは、ヒト前立腺癌における腫瘍進行及び転移と関連付けられる:最初に、ヒト前立腺癌試料におけるMTDHの臨床関連を調査した。正常な前立腺(NP)、良性前立腺過形成(BPH)、前立腺内上皮新生物(PIN)、前立腺原発腫瘍、及び遠隔転移の試料からなる2つの前立腺組織マイクロアレイを、免疫組織化学によって解析し、MTDHタンパク質レベルを、異なる臨床段階の試料間で比較した(図12A)。MTDHタンパク質は、検出不可能であったか、または全ての正常またはBPH前立腺組織において非常に低レベルで発現した。MTDHのタンパク質レベルは、前悪性組織(PIN)、原発腫瘍、及び転移において次第に増加し、媒質または多量のMTDHを発現する試料の割合は、それぞれ10%、47.2%、及び80.0%であり、MTDHレベルと前立腺疾患の臨床進行との密接な相関を明らかにする(図12C、左パネル、Χ検定P<0.001)。MTDHタンパク質レベルの差は、2つの非癌性組織型であるBPH及びPINを比較したときに既に明らかであり(図12C、右パネル、X検定P=0.023)、良性から悪性期への移行中のMTDH発現の増加を示す。MTDHレベルは、後期腫瘍におけるMTDHのより高い平均染色強度(図12B、上曲線)、または少なくとも中間レベルのMTDHを有する試料のより高い割合(図12B、下曲線)によって証明されるように、原発腫瘍のグリーソンスコアとも相関していた。重要なことに、中レベルまたは高レベルのMTDHを有する患者における前立腺特異的抗原(PSA)に基づく再発率は、それらの前立腺腫瘍において低レベルのMTDHを有する患者よりも著しく高かった(図12D)。前立腺癌遠隔転移におけるMTDHタンパク質レベルが、原発腫瘍におけるものよりも顕著に高いという事実と共に(図12A及び12B)、これらのデータは、MTDHレベルと前立腺癌の再発及び転移との強い正の相関を記録する。
MTDHゲノム増加は、前立腺癌におけるMTDH過剰発現及び臨床進行と関連付けられる。前立腺腫瘍内のMTDHのゲノムコピー数も増加したかどうかを試験するために、前立腺組織マイクロアレイを、MTDHゲノム遺伝子座または染色体8動原体部位(対照として)のいずれかに対するプローブを使用して、中間期蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって解析した。FISH解析は、前立腺癌試料の大部分が、MTDH遺伝子の超過ゲノムコピーを内包することを明らかにした(図13A)。MTDH DNA増加は、細胞内のより高レベルのタンパク質と有意に関連付けられ(図13B)、DNA増加が前立腺癌におけるMTDH過剰発現の機序であることを示す。さらに、MTDH DNA増加は、臨床病期及び予後と密接に相関し、それにより前悪性期(正常、BPH、またはPIN)、局所腫瘍、及び遠隔転移以前の試料、DNA増加を有する部分が、それぞれ0%、24%、及び50%であった(図13C)。加えて、増加したMTDHコピーを有する患者は、MTDHゲノム増加を有しない患者よりも早く再発を罹患した(図13D)。これらの臨床データは、DNAの予後値及びMTDHのタンパク質ステータスを明示し、前立腺癌の進行及び転移におけるMTDHの潜在的に重要な役割を示唆する。
Mtdh欠失TRAMPマウスの生成及び特徴付け:正常な発達及び癌におけるMtdhの役割を調査するために、生物全体Mtdh−ノックアウト(KO)マウスを、Bay GenomicsジーントラップデータベースからのESC系統XB780を使用して創出した(Strykeら、2003)。突然変異体対立遺伝子は、Mtdhの第2のイントロンへのLacZ導入遺伝子挿入を含み、転写の早期終結をもたらす。Mtdh−KO(Mtdh−/−)マウスは生存可能及び繁殖可能であり、検死解剖においていかなる臓器においても明らかな異常は見られなかった。具体的に、前立腺及び精嚢の両方を含む下位泌尿生殖路の全体形態論及び相対重量は、野生型(WT、Mtdh+/+)、ヘテロ接合性(MTDH+/−)、及びMtdh−/−雄マウス間で相当していた。顕微鏡レベルで検査したとき、Mtdh−/−マウスの前立腺上皮内の形態論的異常性はなかった。
前立腺腫瘍形成におけるMtdh切除の結果を検査するために、マウス前立腺の遺伝子導入腺癌(TRAMP)モデルを使用した。C57BL/6バックグラウンドにおけるTRAMP/Mtdh+/+、TRAMP/MTDH+/−、及びTRAMP/Mtdh−/−マウスは、材料及び方法に記載されるように生成し(図14A)、遺伝子型をPCRによって確認した(図14B)。前立腺腫瘍形成におけるMtdhの役割を評価するための最初のステップとして、前立腺組織を正常マウス及びTRAMPマウスから単離し、MtdhのmRNA(図14C)及びタンパク質(図14D)レベルを検査した。予想されるように、Mtdh mRNAは、Mtdh−/−前立腺組織内で検出されず(図14C)、ジーントラップ法がMtdh発現を完全に排除したことを確認する。SV40T抗原を発現しないマッチ対照マウスと比較して、より多くのMtdh mRNAが、TRAMP/Mtdh+/+及びTRAMP/Mtdh+/−マウスからの前立腺組織内で観察された(図14C)。一貫して、Mtdhのタンパク質レベルの著しい増加が、正常対照と比較して、TRAMP/Mtdh+/+前立腺において検出された(図14D)。これらのデータは、Mtdhがマウスにおける前立腺腫瘍形成中に上方調節されることを示し、より高レベルのMtdhが、腫瘍細胞に競合優位性を付与し得る。
Mtdhの喪失がPBタグ導入遺伝子の発現に影響を及ぼすかどうかを試験するために、SV40T抗原を、TRAMPマウスからの前立腺内で免疫染色した。このT抗原は、早くも8週齢の前立腺上皮細胞内で検出され(図14E)、後期に前立腺上皮及び腫瘍細胞内で連続して発現した(図14F)。TRAMP/Mtdh+/+マウスとTRAMP/Mtdh−/−マウスとの間で、癌進行の早期または後期のいずれかにおいて、個別の前立腺上皮細胞におけるT抗原免疫反応性の認識可能な差はなかった。SV40t及びT mRNA発現は、異なるMtdhステータスを有するTRAMPマウスにおいて同等であった。負の対照について予想されるように、SV40抗原は、正常マウスからの前立腺において検出不可能であった。これらの結果は、Mtdhの欠失が、前立腺上皮細胞内のPBタグ導入遺伝子の発現に影響しないことを明示する。
Mtdhの喪失は、前立腺腫瘍形成を抑制し、生存率を増加させる:発癌遺伝子誘発性前立腺腫瘍形成に対するMtdhの全体効果を調査するために、異なるMtdhステータスを有するTRAMPマウス(n>100)の群を、それらの前立腺腫瘍発達及び癌関連死亡率について研究した。最初に、泌尿生殖器重量は、TRAMPマウスにおける腫瘍量の信頼できる指標であるため(Kaplan−Lefkoら、2003)、異なる年齢のTRAMPマウスからの泌尿生殖器を切り取り、測量して全体レベルでの腫瘍形成を監視した。Mtdh発現は、Mtdh+/+とMtdh+/−前立腺組織との間で同等であったため(図14C)、これらのマウスを、Mtdh陽性群(Mtdh+)対Mtdh陰性群(Mtdh−)に分けた。SV40T抗原は、年齢の関数として、TRAMP/Mtdh+マウスにおける泌尿生殖器質量の劇的な増加を誘発し(図15A、菱形)、それによりこれらのマウスの多くは、36週齢において激しく巨大化した腹部を示した。対照的に、TRAMP/Mtdh−/−マウスにおける泌尿生殖器の湿重量は、比較的一定のままであるか、またははるかに遅い速度でのみ増加した(図15A、正方形)。相対泌尿生殖器重量(体重の%として)を比較したとき、同様の結果が得られた(図15B)。一貫して、36週齢のTRAMP/Mtdh+マウスから切り取られた泌尿生殖器複合体のほぼ全てが、腫瘍形成の全体的に目に見える徴候を呈したが(図15C、上パネル)、TRAMP/Mtdh−/−マウスのものは、正常対照と同様のままであった(図15C、下パネル)。
前立腺癌の発生を組織学的レベルでさらに評価するために、TRAMPマウスからの前立腺組織を切片化し、ヘマトキシリン及びエオシン染色を行った。23週齢または28週齢のTRAMP/Mtdh+マウスの約50%は、前立腺癌病変を発達させ、36週齢までに、この群のほぼ全てのマウスが多巣前立腺腫瘍を発達させた(図15D)。対照的に、28週齢のTRAMP/Mtdh−/−マウスにおいて、前立腺癌は検出されず、前立腺癌病変は、前立腺上皮の非常に限定された領域において、36週齢のTRAMP/Mtdh−/−マウスの50%のみにおいて検出された。これらの組織病理学的結果は、大部分のTRAMP/Mtdh−/−マウスが、36週齢までに前立腺腫瘍形成の目に見える徴候を示さなかったことを示す形態論的観察と一致している(図15C)。注目すべきことに、TRAMPマウスにおいて形成された腫瘍は、腺癌、葉様腫瘍、及び神経内分泌腫瘍に特徴的である種々の組織学的特徴を呈し、これらの形態論的に明らかな腫瘍が、前立腺内の異なる細胞系統を起源とし得るか、または一般的な早期前駆体から独立して発達し得ることが示唆された(Chiaverottiら、2008)。興味深いことに、TRAMP/Mtdh−/−マウスは、これらの異なる腫瘍亜型全ての発生の遅延を示し、多くの場合、約28週または36週で出現し、前立腺癌におけるMtdhの可能な系統非依存的役割を示唆する。
悪性前立腺癌の発達の結果として、TRAMP/Mtdh+の相当の割合(約50%)が、1歳に到達する前に死亡した。対照的に、検査された14TRAMP/Mtdh−/−のうちの1匹のみが、癌関連疾患で死亡した(図15E、P<0.001)。これらのデータは一緒に、マウスにおけるMtdhの欠失が、前立腺癌の発癌遺伝子駆動による形成を阻害し、TRAMPマウスの寿命を延長することを明示する。
Mtdhの不活性化は、前立腺癌の進行を妨げる:前立腺癌の進行は、PINなどの前悪性病変から開始し、十分に、中程度に、及び不十分に分化した癌の複数期からなる。Mtdhの喪失が前立腺癌の開始及び進行にどのように影響するかを調査するために、組織学的検査を、各前立腺の背外側葉上で行い、最も頻繁で重症な部位をTRAMPマウス内の腫瘍形成に供した(21)(図16A)。TRAMP腫瘍について前述の悪性度分類システムに基づいて(21、22)、各前立腺に、正常な前立腺に対して1〜神経内分泌腫瘍を含む不十分に分化した癌に対して6の範囲の最高スコアを割り当てた。PIN病変は、上皮過形成及び無傷の基底細胞層の存在によって証明されるように(図16A、T8及びT12)、8〜12週齢のTRAMP/Mtdh+及びTRAMP/Mtdh−両方の前立腺において容易に検出された(図16B、第1パネル)。これは、10週齢のTRAMP/Mtdh+及びTRAMP/Mtdh−マウスからの前立腺上皮において同等の増殖及びアポトーシスの指標と一致した。TRAMP/Mtdh+マウスの実質的分画は、良好に発達したか、または中程度に分化した腺癌であり、それぞれ23週及び28週で浸潤性病変を有し、36週までに、TRAMP/Mtdh+マウスの84%が、腫瘍細胞の未分化シートに特徴的な中程度〜不十分に分化した腺癌を示した。比較において、TRAMP/Mtdh−マウスの大半は、36週までに、PINまたは早期の十分に分化した腺癌または葉様腫瘍を発達させただけであった。一貫して、TRAMP/Mtdh+マウスにおいて、前立腺腫瘍が低分化期に進行したため、E−カドヘリンの発現は、次第に低減するか、またはさらには不在になったが、豊富なE−カドヘリンが、検査された異なる年齢にわたって、TRAMP/Mtdh−/−マウスの前立腺組織内で検出された。加えて、Mtdh+腫瘍の悪性進行は、著しく高い割合の増殖細胞を伴ったが(図16C、P<0.01)、アポトーシス細胞の割合は、この期でMtdh+及びMtdh−腫瘍と同様であった。まとめると、これらの所見は、Mtdhの不活性化が、腫瘍形成の早期で前立腺癌の進行を停止し、前悪性病変が増殖して進行期に進むのを防ぐことを示唆する。
Mtdhの切除は、前立腺腫瘍細胞の体系的転移を低減する:TRAMPマウスの群における転移性疾患を、TRAMP/Mtdh−/マウスの大部分が前立腺癌病変を発達させた時点の約50週齢で検査した。TRAMPモデルの転移の頻出部位である肝臓、肺、及び大動脈周辺リンパ節(Gingrichら、1996)を切り取り、巨視的レベル及び組織学的レベルの両方で転移性病変の出現を検査した(図17A−B)。複数の大きな転移性小結節を、TRAMP/Mtdh+マウスの34%からの肝臓内で観察したところ、肝臓サイズが顕著に増加していた。逆に、検査されたTRAMP/Mtdh−/−マウスはいずれも、肝臓内で目に見える転移を発達させていなかった。同様に、肺内の複数転移性病巣が、TRAMP/Mtdh+マウスの39%において見出されたが、17TRAMP/Mtdh−/−マウスのうちの2匹のみが、肺内で1つまたは2つの転移性病巣を有していた。リンパ節の巨大化は、TRAMP/Mtdh+マウスにおいて頻繁に特定され(9/20)、この発生率は、TRAMP/Mtdh−/−マウスにおいて30%に減少した。転移性細胞が前立腺起源であったことを明示するために、肝臓、肺、及びリンパ節の連続切片上で免疫組織化学解析を行い、T抗原発癌タンパク質を検出した。T抗原発癌タンパク質の均一発現が、周囲正常細胞ではなく、転移性病巣になることが観察され、PB方向導入遺伝子発現の組織特異的パターンと一致する(Gingrichら、1996)。これらのデータは一緒に、マウスにおけるMtdhの欠失が、TRAMPモデルにおいて体系的転移を著しく低減したことを明らかに示す。TRAMP/Mtdh+マウスの50%近くが、1歳に達する前に大きな原発性かつ転移の可能性のある腫瘍で死亡していたという事実に起因して、Mtdh+群とMtdh−群との間の観察される転移差は、過小評価される可能性が非常に高かったことは記録するに値する。
前立腺癌細胞におけるMtdhのノックダウンは、生体外増殖及び生体内腫瘍形成を低減する:Mtdhはマウスにおいて広く発現するため、生物全体Mtdh−KOマウスにおける腫瘍形成の欠陥は、前立腺上皮細胞内のMtdhまたは他の細胞/組織型のいずれかの喪失から生じ得る。これら2つの可能性を区別するために、TRAMPモデルにおける進行した前立腺腫瘍に特徴的である、TRAMP−C1細胞系の腫瘍形成能力におけるMtdhの必要性を検査した(Foster、1997)。Mtdhをノックダウン(KD)し(図15A及び9B)、Mtdh−KDが生体外でTRAMP−C1細胞の増殖を減少させたことを見出した(図15C)。生体内腫瘍形成におけるMtdh−KDの結果を検査するために、対照及びMtdh−KD細胞をレシピエントマウスの横腹に注入し、腫瘍発生を経時的に監視した。明白な腫瘍の発生は、KD群において著しく遅延し(図18D)、KD群から切り取られた腫瘍は、対照群からの腫瘍よりもはるかに小さかった(図18E及び18F)。別の2つの独立した実験において、同様の結果が得られた。興味深いことに、Mtdh−KD群内で最終的に形成された腫瘍は、対照群において、同様レベルのMtdhを腫瘍として発現し(図18G)、これはMtdh阻害のない細胞のクローン性増殖またはMtdh−KD細胞内のMtdhの再発現から生じ得る。
論考
ヒト前立腺癌は、激しい再発増幅及び欠失によって特徴付けられ、腫瘍抑制因子PTEN及びp53の喪失などのいくつかの周知の遺伝的病変と共に、この悪性腫瘍の発生及び進行を支配する多くの特徴付けられていない遺伝子が残存することを示唆する(Taylor、2010)。現行研究において、ヒト前立腺癌においてMTDHが頻繁に過剰発現し、増殖すること、及びその発現レベルが疾患の進行及び不良な生存転帰と強く相関することが明示された。加えて、Mtdh−KOマウスを用いる遺伝的研究は、Mtdhが正常な発達に影響することなく、自発性前立腺癌の進行及び転移において重要な役割を果たすという最初の生体内証拠を提供する。
TRAMPモデルは、複数の異なる臓器に転移し得る進行性前立腺癌を自発的に発達させるため、ヒト前立腺癌と非常に類似している。重要なことに、Mtdhレベルが、正常な前立腺組織と比較して、ヒト及びSV40駆動マウス両方の前立腺腫瘍において上昇することが示された。興味深いことに、最近では、Mtdhが、テロメア機能不全に続いてテロメラーゼ活性が再活性化された、p53/Pten欠乏性転移性前立腺癌マウスモデルにおけるゲノム増殖を通じて過剰発現することが示され(Ding、2012)、ヒト前立腺癌において我々が見出したものと同様のゲノム増殖機序を通じて、Mtdhがマウス内で活性化され得ることを示唆する。SV40形質転換腫瘍におけるMtdh過剰発現の分子基盤を調査するために、さらなる研究が必要である。
TRAMPマウスにおけるMtdhノックアウトが、腫瘍形成を著しく障害し、癌関連死亡率を減少させたことが示された。TRAMP−C1癌細胞内のMtdhのサイレンシングが、無腫瘍生存を延長し、生体内腫瘍成長を低減したという所見は、前立腺癌におけるMtdhの前立腺腫瘍細胞本来の役割をさらに支持する。Mtdh標的shRNAを担持した思われるTRAMP−C1癌細胞により最終的に形成された腫瘍は、Mtdhの発現を回復したことは記録するに値し、Mtdhが生体内の前立腺癌形成に必須であるという見解を補強する。前立腺癌進行の遮断は、TRAMP/Mtdh−/−マウスにおいて、良性または十分に分化した期で観察され、その見解は、TRAMP/Mtdh−/−前立腺組織内の高レベルの上皮マーカーE−カドヘリンによって構成的にさらに支持される。一貫して、TRAMP/Mtdh+マウスは、多くの場合、前立腺腫瘍細胞の、尿道及び精嚢への浸潤性及び悪性成長から生じる現象である、巨大化した前立腺及び閉塞した精嚢を示し、TRAMP/Mtdh−/−マウスからの泌尿生殖路は、主に正常であると思われた。マウスモデルからの所見と一致して、MTDHは、ヒト前立腺癌における進行関連発現パターンを呈する。これらの結果は、前立腺癌進行のバイオマーカー、及びヒト前立腺癌の悪性進行を止めるための可能な治療標的としてのMTDHの潜在的使用を示唆し得る。
わずかな割合のTRAMP/Mtdh−/−マウスが、長期潜伏後も依然として浸潤性前立腺癌を発達させ、その疾患により死亡した(14匹中1匹)という事実は、いくつかのTRAMP/Mtdh−/−腫瘍が、Mtdhの欠乏を克服し、Mtdh非依存的経路を利用して、それらの悪性成長及び進行を支持したことを示唆する。実際に、SV40発癌遺伝子の誘発は、早くも思春期に前立腺上皮細胞内で均一に起こるが、浸潤性前立腺癌及び転移の発達は、はるかに後で起こり、高度に異質性であると思われ、個別の腫瘍が異なる遺伝的及び後成的変化を獲得して、SV40抗原陽性細胞を完全に形質転換し得るを示唆する。Mtdhの不活性化は、TRAMP/Mtdh−/−マウスの大半において観察されるように、Mtdh依存的シグナル伝達及び前立腺癌の進行を阻害するが、Mtdh非依存的機序によって支持される腫瘍成長は遮断しない。これもまた、MTDHが、全てのヒト前立腺癌ではないが、多くの割合で高度に発現するという観察と一致する。それにも関わらず、悪性期への進行のために高レベルのMTDHに依存していた癌細胞は、Mtdh陽性TRAMP−C1細胞内のMtdhの阻害がこれらの細胞の腫瘍形成能を著しく障害するという所見によって支持されるように、MTDH標的治療に感受性である。
遠隔臓器への転移は、固形癌を有する患者における癌関連死の大半に関与する(Wan、2013)。MTDHが、より高い転移リスクを有するヒト乳癌において増幅及び/または過剰発現することが以前に明示された(Huら、2009)。現行研究において、ヒト前立腺癌の遠隔転移の実質的分画は、高レベルのMTDHを呈し、8q22ゲノム遺伝子座の増幅を内包することが見出された。機能的に、Mtdhの切除は、TRAMPモデルの遠隔臓器内の転移の発生及び負荷を著しく減少させた。これらの見出と一致して、近年の研究は、Pten及びp53の喪失によって駆動される前立腺癌の傾向があるマウスモデルにおけるテロメア機能不全に続くテロメラーゼ再活性化が、癌関連遺伝子座におけるコピー数変化の選別を容易にすることを示し、Mtdhは、その遺伝的増幅がこのマウスモデルにおける癌進行及び転移と強く関連付けられる遺伝子の選択的リストの上位にあることが見出された(Dingら、2012)。これは、SV40発癌遺伝子に加えて、遺伝的事象によって駆動される前立腺癌におけるMtdhの重要な役割である可能性を示唆する。最後に、MTDHの転移促進機能が、乳癌及び前立腺癌以外に、他の癌型において存在する可能性があることに留意すべきである。いくつかの最近の研究は、実際に、異常なMTDH発現が、咽頭扁平細胞癌(Liuら、2013)、頭頸部の扁平細胞癌(Yuら、2014)、及び肝細胞癌(Zhuら、2011)を含む追加の癌型においてリンパ節転移及び予後不良と関連付けられ、MTDHの過剰発現は、肝細胞癌細胞の実験的転移を増加させる(Yooら、2009)。
要約すると、本明細書の研究は、MTDHが、マウス及びヒト両方の前立腺癌において過剰発現し、この高レベルのMTDHが、生体内の自発性前立腺癌進行及び転移に重要であることを報告する。種々の癌型におけるMTDHの広範な過剰発現を考慮して、MTDHの腫瘍促進的役割は、本研究で使用されるモデルに制限されないことがある。実際に、進行中の研究はまた、Mtdhの欠失が、自発性乳房腫瘍形成及び転移を劇的に阻害することを見出した。今後の研究は、MTDHの腫瘍促進機能に関与する、根底にある機序及びシグナル伝達経路を理解し、ヒト癌を制御するためのMTDH標的療法の開発を容易にする必要がある。
実施例3−メタドヘリンとSDN1との間の相互作用の解析
メタドヘリン(MTDH)及びブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)は過剰発現し、種々の癌型において相互作用する。MTDH及びSND1の両方は、種々の細胞機構及びシグナル伝達タンパク質と相互作用し、複数の癌関連細胞過程及びシグナル伝達経路と関係があるとされ、MTDH及びSND1が、それらの複数の相互作用ドメイン/モチーフを介して腫瘍促進シグナル伝達活性を調整することによって悪性特徴を増強することが可能である。しかしながら、構造情報の完全な欠失は、多くの癌型における両方のタンパク質の有意な臨床関連にも関わらず、MTDH/SND1タンパク質複合体の機能に関する機構的理解を著しく妨害する。MTDH−SND1相互作用の構造的基盤を明らかにすることもまた、新規の癌治療戦略として、MTDHまたはSND1を標的する新たな方法を開発するために重要である。2つのタンパク質間の相互作用を解析するために、MTDH−SND1複合体の高解像度結晶構造が下記のように判定され、11残基MTDHペプチドモチーフが、2つのSNドメイン(SN1/2)間の延長されたタンパク質溝を占め、2つのMTDHトリプトファン残基が、SND1内の2つの十分に定義されたポケットに寄り添うことを明らかにする。
実験手順
タンパク質調製:全ての構成体及び点突然変異は、標準PCR系クローニング戦略を使用して生成された。手短に言えば、異なる境界及び突然変異体を有するSND1及びMTDHは、それぞれN末端His8タグ及びGSTタグを内包するpQlinkベクター(Addgene)内でクローン化され、親和性タグの後にTEV開裂部位を有する。タンパク質は、大腸菌株DH5αにおいて23℃で過剰発現した。SND1及びSND1(16〜339)−L21−MTDH(386〜407)の発現及び精製は、以前の刊行物から修正された手順に従った(Liら、2008)。
SND1タンパク質の場合、溶解物の可溶性分画を、2mM β−ME、0.5M NaCl、5mM イミダゾール、及び25mM トリスPH8を含有する溶解緩衝液を用いてNi−NTA樹脂(Qiagen)上で精製した。His−SND1タンパク質を、0.2M NaCl、250mM イミダゾール、及び25mM トリスPH8を含有し、β−MEを含まない緩衝液によって溶出した。ヘパリン緩衝液A(25mM HEPES、PH7、10mM EDTA、10%グリセロール、2mM β−ME)によって4倍に希釈した後、タンパク質をヘパリンカラム(GE Healthcare)に負荷し、100mLの0〜0.6M NaCl勾配によって溶出した。GSTタグ付きMTDHタンパク質を、GS4B樹脂(GE Healthcare)上で精製し、アニオン交換クロマトグラフィーによってさらに分画化した(Source 15Q、GE Healthcare)。
SND1及びMTDH複合体の結晶化を容易にするために、SND1(16〜339)を、MTDHペプチド(386〜407)に、21残基を有する可撓性リンカー(L21)を介して融合した。SeMetタンパク質の場合、12LのHis−SND1(16〜339)−L21−MTDH(386〜407)融合タンパク質を、pQlinkベクター内で、大腸菌株(BL21、DE3)において23℃で22時間、OD600=1.0で0.25mM IPTGを用いて過剰発現させた。タンパク質を、10mM DTTの存在下、TEVプロテアーゼによって開裂される前に、上記のようにNi−NTA及びヘパリンカラムによって精製した。試料を、1.4M(NH4)2SO4に調整し、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HiTrap Phenyl HP,GE Healthcare)によってさらに精製して、TEV及び後期ピークにおける融合タンパク質の二量体を含む不純物を除去する前に、回転させてペレットを除去した。次に、融合タンパク質のモノマーを、ゲル濾過クロマトグラフィーによって(Superdex 200、GE Healthcare)最終ステップで精製し、緩衝液を10mM トリスPH8、150mM NaCl、及び10mM DTTに変化させた。試料を、結晶化のために15mg/mLに濃縮した。
結晶化及びデータ収集:SND1及びMTDH融合タンパク質の結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散方法によって、250nLの15mg/mL SeMet−SND1(16〜339)−L21−MTDH(386〜407)を、250nLの良好な緩衝液(21.6% pEG3350、0.1Mクエン酸ナトリウム、PH8.0、0.1M CsCl)、プラス50nLの微小種と混合することにより23℃で成長させた。単結晶は4日で成長し、7日後に成熟した。結晶を、液体窒素中でフラッシュ凍結させる前に、0〜25%グリセロールを用いて良好な緩衝液へと次第に変化させた。結晶への放射線損傷を低減するために、SND1(16〜339)−L21−MTDH(386〜407)についての2つのSADデータセットを、同位置上で25%ビームエネルギーを用いて、0.6秒/フレーム、波長0.97849Åで連続的に収集した。データを、APS LS−CAT(ID−D)で収集し、これら2つのデータセットを複合して、HKL2000(Otwinowski,1997)を使用して3.0Åに処理した。異常な散乱シグナルの最適カットオフは、phenix.xtriage(Adamsら、2010)によって4.3Åで0.0833と測定された。第2のSADデータセットを、露出時間を1.5秒に増加させることによって収集し、2.7Åに処理した。
構造判定:SND1(16〜339)−L21−MTDH(386〜407)の初期構造を、phenix.autosol(Adamsら、2010)によって、複合SADデータセットを使用して3.0Åで判定した。24個のセレニウム原子及び5個の非対称単位が、Rfree/Rwork=0.35/0.30を用いて、初期モデル内で見出された。このモデルを、phenix.refine(Adamsら、2010)によって、異常群(Se)を用いて精練し、CCP4パッケージ(Winnら、2011)内でPhaser(McCoyら、2007)を使用する分子置換によって、2.7Åデータセットの開始モデルとした。改善されたモデルを、Coot(Emsley及びCowtan、2004)を使用して手動で構築し、phenix.refine制限を使用してTLS及び異常群(Se)を用いて精練した(Adamsら、2010)。最終構造を、2.7Å(表S1)に精練した。
GST媒介性プルダウンアッセイ:約20μgのGST−MTDH(異なる切断形態及び部位突然変異体)を、GSTタグを介して10μLのグルタチオン樹脂に結合した。この樹脂を200μLアッセイ緩衝液(25mM トリス、PH8.0、150mM NaCl、3mM DTT)で3回洗浄して、過剰な未結合のタンパク質を除去した。15μgのHis−SND1(16〜339)を、2mg/mLのBSAを含むアッセイ緩衝液に懸濁された100μL量の樹脂に添加した。混合物を、SDS−PAGEによって検査する前に、200μLアッセイ緩衝液で2回洗浄し、クマシーブルー染色によって可視化した。実験を3回繰り返し、GST−MTDHと関連付けられたSND1の比を、ImageJによって解析した。
免疫沈降及びウェスタンブロット:生体内免疫沈降(IP)実験の場合、培養された細胞を、冷たいPBS中で洗浄し、EDTA不含有プロテアーゼ阻害剤混合物(Roche Applied Science)及びPMSFを含む溶解緩衝液(20mM トリスpH7.4、0.15M NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1% Tx−100、0.0025M Na2P2O7、1mM β−グリセロリン酸塩、1mM Na3VO4、及び1mM NaF)中で溶解した。次に、細胞溶解物を、氷上で10分間インキュベートし、遠心分離して、タンパク質A/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)で1時間、4℃でインキュベートすることによって事前切除した。IPビーズ調製の場合、30μLのタンパク質A/Gビーズを、5μgの抗体で2時間、4℃でインキュベートした。IPを、4℃で終夜実行し、ビーズを遠心分離し、洗浄した後、SDSタンパク質負荷緩衝液中で5分間煮沸して、結合タンパク質を溶出した。IP溶解物を、示される抗体を用いてウェスタンブロットに供した。
ウェスタンブロットの場合、培養細胞からの溶解物を、プレート上に溶解緩衝液を直接添加することによって収集した。ウェスタンブロットゲル調製物及び免疫ブロットを、標準手順に従って行った。MTDHに対する抗体(Invitrogen、カタログ番号40−6500)、SND1(Santa cruz、カタログ番号sc−271590)、抗Myc(Santa Cruz、カタログ番号sc−40)、及び抗HA(Santa Cruz、カタログ番号sc−7392)を、1:1000で希釈した。
腫瘍様塊アッセイ:単一細胞を、超低取り付けプレート(Corning,Tewksbury,MA)内で塊培地(1:1 DMEM:B27で補足されたハムの12(Invitrogen)、20ng/mL EGF、20ng/mL bFGF、及び4μg/mLヘパリンと共に平板培養した。平板培養の4〜7日後に塊を数えた。
腫瘍形成アッセイ:マウスを必要とする全ての手順及び全ての実験プロトコルを、プリンストン大学の施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認された。腫瘍形成アッセイの場合、示される数のPyMT腫瘍細胞を、FVBレシピエントマウスの乳房脂肪体に移植し、腫瘍形成を毎週2回監視した。腫瘍は、連続2週間にわたって明白になったときに確立されたと見なし、腫瘍サイズを腫瘍体積の計算のために(π×長さ×幅2/6)、カリパスによって測定した。
FRETアッセイ:FRETアッセイの場合、CFP−MTDH融合タンパク質、及び(TC)SND1(16〜339)に融合したテトラシステインペプチドは、親和性タグ後にTEV開裂部位を有するN末端GSTタグを内包するpQlinkベクター(Addgene)にクローン化された。これらのタンパク質は、大腸菌株DH5αにおいて23℃で過剰発現した。大腸菌細胞溶解物の可溶性分画を、GS4B樹脂(Qiagen)上で精製した後、TEV開裂によってGSTタグを除去した。タグ付きでないタンパク質を、アニオン交換クロマトグラフィー(Source 15Q、GE Healthcare)及びゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex 200、GE Healthcare)によってさらに分画化した。
FlAsH−EDC2化合物(Invitrogen)を、TC−SND1(16〜339)に1:1.1モル比で添加して、FRETアッセイにおいてCFPの受容体となる高度蛍光TC−FLASH−SND1を創出した。0.2μM CFP−MTDHのCFPのドナー蛍光シグナルを、TC−FLASH−SND1(0.25、0.5、1、2、4、8μM)の漸増の存在及び不在下、Victor X5 Multilabelプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用し、450nmでの励起及び490nmでの放出を用いて測定した。エネルギー移動の速度を、ドナー蛍光の喪失に基づいて以下の等式、E=1−(FDA/FD)を使用して計算し、式中、FDA及びFDは、それぞれTC−FLASH−SND1の存在及び不在下でのCFPの蛍光である。TC−FLASH−SND1濃度依存的FRET効率を、MTDHペプチドとSND1との間の平衡解離定数(KD)を推定するために、GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.)と適合させた。実験を3回繰り返し、代表的な結果を示す。
Biolayer干渉法(BLI):抗GST抗体によって固定されたBLIセンサーを、150nM GST−MTDH(386〜407)でのインキュベーションに続いて、1mg/mL BSAでのインキュベーションによって活性化し、25mM トリスpH8.0、100mM NaCl、及び3mM DTTを含有する結合緩衝液によって洗浄した(各ステップ3分)。GST−MTDHによって活性化された7つのセンサーを、結合干渉液対照及び漸増濃度のHis8−SND1(16〜339)(0.1、0.2、0.4、0.8、1.6、3.2μM)を含有する7つのウェルに同時に浸漬して、SND1結合のオン速度を測定した。3分の結合後、センサーを結合緩衝液に浸漬して、オフ速度を測定した。データ収集及び解析は、ForteBio Octet RED96(Pall Life Science)を使用して行った。
統計解析:必要であるか否かに関わらず、全結果を統計解析に供した。対数順位検定、非パラメトリックマン・ホイットニー検定、カイ二乗検定、及び等分散仮定による不対両側独立スチューデントt検定を、図のレジェンドに示される大部分の研究に使用した。限界希釈アッセイの場合、TICの頻度及び統計を、L−calcソフトウェア(StemCell Technologies)を使用して計算した。P値を、全ての図面において*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001と記した。
受入番号:MTDH−SND1複合体の原子座標は、受入コード4QMGでタンパク質データバンクに寄託された。
結果
MTDH及びSND1の相互作用に必要な最小領域のマッピング:MTDH(残基1〜582)に関して最初に実行された一次配列解析は、MTDHが、N末端の近くの膜貫通ドメインを除いて、その全体配列内で主に構造化されていないことを示唆した。したがって、MTDHは、足場タンパク質として機能し、その配列全体でそのペプチドモチーフを介して種々のシグナル伝達分子を動員し得る。MTDH断片(配列番号1のアミノ酸364〜470)がSND1との相互作用に必要な必須領域を内容するという以前の観察に基づいて(Blancoら、2011)、MTDHの最小断片(配列番号1のアミノ酸386〜407)は、SND1結合を付与するこの領域内で最近マッピングされた(上記を参照されたい)。SND1ドメインはいずれも、タンパク質分子との特異的相互作用のためにマッピングされていなかった。このギャップを満たすために、少数のSND1構成体を作製し、2つが、それぞれN末端SN1/2及びC末端SN3/4−TSN5ドメインを内包する高度に可溶性の組み換えタンパク質を付与した。SND1結合モチーフを内包するGSTタグ付きMTDH(配列番号1のアミノ酸364〜582)断片を使用してプルダウン実験を行うことによって、SND1のSN1/2ドメイン(配列番号2のアミノ酸16−339)は、MTDHと化学量論的に結合するが、SN3/4−TSN5ドメイン(配列番号2のアミノ酸340−885)は、MTDHとほとんど相互作用しないことを示した。バイオレイヤー(biolayer)干渉法を使用するこの相互作用のさらなる解析は、この相互作用が、容易に反転可能であることを示した。MTDHとSND1との間の結合親和性は、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイによって示されるように、約0.9μMであった。
MTDH−SND1複合体の全体構造:広範な努力の後、SND1 SN1/2ドメイン及び配列番号1のMTDH残基386〜407を内包する合成ペプチドの共結晶は、恐らく2つのタンパク質間の比較的弱い相互作用に起因して、タンパク質結晶をもたらすことができなかった。複合体を安定させ、結晶化を容易にするために、SND1 SN1/2ドメインを、12〜37残基の範囲の長さを有する可撓性リンカーを介して、MTDH(配列番号1のアミノ酸386〜407)に融合した。21残基リンカーを有する構成体は、最終的に回折結晶を付与した。SN1/2ドメインは、SN3/4と密接に関連したが、SN3/4(PDBコード:3BDL)の構造を使用する分子置換による構造判定は、恐らくOB折り畳みから発する延長されたループの大きな多様性に起因して成功しなかった。最後に、セレニウムSAD(単波長異常分散)位相によって構造を判定し、2.7Åに精練した。
MTDH−SND1融合タンパク質の5つのコピーが、ほぼ同一の各非対称単位内で見出され、290残基上の平均二乗偏差は、0.9Å以下であった。定義された電子密度を有するMTDH残基の数は、異なるコピー内でわずかに変化した。それにも関わらず、MTDHの残基393〜403は、SND1との界面において、十分に定義された電子密度マップを有する全コピーにおいて可視であった。SN1及びSN2の両方は、ブドウ球菌ヌクレアーゼ(SNase)の典型的なOB折り畳みを呈し、SN3/4(図17A)と同様に、中心対称関連様式(図16)で配置された。各SNドメインは、3つのらせん束(α1−α2−α3)及び短いβ−ヘアピン(β4−β8)によってキャップされたβ−バレル(β1−β2−β3−β7−β5)を含有する(図16)。MTDHペプチド(配列番号1のD393WNAPAEEWGN403)は、SN1ドメインとSN2ドメインとの間の浅い溝を占め、2つのトリプトファン残基、配列番号1のW394及びW401を有し、SND1内の2つの十分に定義された疎水性ポケットとの広範な疎水性接触を形成した。
MTDH−SND1インターフェースの反対側において、SND1は、3つの延長された突出構造要素を有し(SN1内のβ6−β7ヘアピン、ならびにSN1及びSN2両方における延長されたLβ4−α1ループ)、種々の結合形態が可能な尖った表面をもたらすことは特筆すべきである。SN1/2ドメインは、DNA/RNA結合に関与し、SND1のヌクレアーゼ活性に寄与することが以前に示唆された(Liら、2008)。MTDH−SND1界面と反対のSND1の丘状表面が、DNA/RNAまたは他のタンパク質との結合に関与し、ヌクレアーゼ活性またはSND1によって媒介されるシグナル伝達に寄与するかどうかは依然として判定されていない。
SN1/2とSN3/4及びSNaseとの構造比較:SN1/2、SN3/4(PDBコード:3BDL)及びSNaseの2つのコピー(PDBコード:2ENB)の構造の重畳は、β−シート及びα−らせんにおいて同様の構造を明らかにし(図19)、SN1/2とSN3/4との間の268残基上で2.02Å、SN1とSNaseとの間の123残基上で1.67Å、及びSN2とSNaseとの間の116残基上で1.68Åの二乗平均平方分散を有する。しかしながら、いくつかのループ領域は明確に異なり、異なる長さ及びアミノ酸配列を有する(図20A及び20B)。これらは、OB折り畳みから進化した新たな特徴であり、新たな機能性を付与する可能性がある。例えば、後に詳細に示されるように、SN1内の伸長されたLβ2−β3ループは、MTDH結合を媒介するために重要である。SN1及びSN3内のLβ4−α1ループは、SNase内のそれよりも著しく長く、それらは明確に異なる立体構造を採用し、2つのSNドメインに対する異なる特異性を定義する可能性がある。SNase活性部位における6つの残基のうちの2つは、SN3内に保持され、これらの残基のうちの1つのみが、SN1及びSN4において同じまたは同様のままであるが、それらのうちのいずれもSN2内で保持されない(図20B)。これは、SN3/4が、低いヌクレアーゼ活性を呈する一方で、SN1/2は、恐らく基質結合を増強することによって、ヌクレアーゼ活性を相補する(Liら、2008)という以前の観察と一致する。これらの観察は、新規の機能が、SND1内のSNドメインに対して進化したが、これらのSN折り畳み内のヌクレアーゼ活性が、進化中に低減(SN3/4において)または消滅(SN1/2において)したことを示唆する。
MTDH−SND1相互作用界面:MTDHが、SND1の丘状表面の影響でSN1とSN2との間の延長された溝を占めるという事実は、MTDHが足場シグナル伝達タンパク質となり得るという見解と一致する。このアーキテクチャは、MTDHが、SND1の主要結合表面を干渉することなく、SND1及び他のMTDH関連シグナル伝達複合体を架橋するのを可能にし得る。したがって、MTDH−SND1界面は、種々の下流シグナル伝達及び癌におけるそれらの機能を理解するための重要な基盤を提供する。
この界面は、MTDH内のW394及びW401の、SND1内の2つの別個の十分に定義された疎水性ポケットとの疎水性van der Waals接触が優位を占め、ポケットの周辺における水素結合(H結合)及び塩架橋相互作用によって支えられる(図21)。W394の疎水性ポケットは、SN1 Lβ2−β3ループ内の残基P39、P43、及びP44、ならびにSN2α1らせん上のE247及びF250の側鎖によって形成される。W401のポケットは、約15Å離れており、SN2からのα1らせんとα2らせんとの間に位置し、疎水性残基L256、H279、I284、及びL287、ならびに残基R255、R259、及びN281の炭素鎖領域によって輪郭が示される。界面の一端に近い疎水性ポケットの周縁において、SND1内のR327及びR324は、MTDH内のD393及びN395、ならびに非対称単位の5つの複合体のうちの2つの392におけるその骨格カルボニル基とのいくつかのH結合及び塩架橋相互作用を形成し、中間では、SND1内のR255が、395においてMTDH骨格とのH結合相互作用を形成し、他端において、MTDH残基E400及びN403を有するSN1α1らせん及びSN2β5鎖からの残基及び骨格原子によって、いくつかのH結合及び塩架橋相互作用が形成される。
SND1内のMTDHの界面は高度に固有であり、SN1/2においてのみ存在する。W394及びW401の十分に定義された疎水性ポケットは、静電位を有するSN1/2の表面輪郭によって明らかに示されるが、SN3/4においては不在である。SN1/2内の2つの疎水性ポケット間の表面は塩基性であり、部分的にE400との静電相互作用を好むが、W394とW401との間の非極性残基(A396PA398)との相互作用には理想的でない。これは、SND1とMTDHとの間の比較的弱い相互作用、及びこの相互作用の速いオフ速度を説明すると思われる。SN1/2とは異なり、SN3とSN4との間のタンパク質溝は主に塩基性であり、MTDH結合を好まないSN3/4の別の構造特徴の根底にある。さらに、W394のポケットを並べるために必須のSN1 Lβ2−β3ループ内のプロリン残基は、SN3またはSNaseにおいて全て不在であり(図20B、図21)、MTDHに対するSN1/2の結合特異性をさらに定義する。
結合欠乏性MTDH及びSND1突然変異体の特定:上で特徴付けられた界面がどのようにMTDH−SND1相互作用に寄与するかに関する洞察を得るために、構造誘導性突然変異誘発研究を行った。MTDH−SND1構造は、MTDH W394及びW401によって形成されたvan der Waals疎水性接触が、SND1結合において優位な役割を果たし得ることを示唆する。この見解と一致して、2つのトリプトファン残基のうちのいずれかの、はるかに小さい残基アラニン(W394A、W401A)または負電荷残基アスパラギン酸塩(W394D、W401D)への突然変異は、SND1(16〜339)とMTDH(364〜582)との間の相互作用を生体外で排除したか、または著しく低減した(図22A)。W→A突然変異体は、W→D突然変異体よりも強い欠陥を呈し、W394との突然変異は、W401との突然変異よりも深刻な欠陥をもたらし、MTDH−SND1相互作用が、van der Waals接触によって主に決定されること、及びW394が、W401よりも高いSND1への寄与をもたらすことを示唆する。H結合または塩架橋相互作用を妨害することが予想される周縁界面におけるMTDH突然変異(N395A、E400A、E400R、N403A)は、いかなる効果もほとんど有さず、界面の外側のD389を標的とする突然変異(D389R)に類似する(図22A)。個別のH結合が、MTDH−SND1相互作用に対してわずかな寄与をもたらす可能性がある。これらの結果は構造観察と一致し、MTDHとSND1との間の相互作用が、MTDHトリプトファン残基とSND1内の疎水性ポケットとの間のvan der Waals接触によって支配されるという見解を支持する。
MTDH結合を妨害する界面におけるいくつかのSND1突然変異も特定された。R255E、F250Aを含むSND1疎水性ポケットに対して行われた変更及びSN1 Lβ2−β3ループ内の欠失(Δ39〜43)は、ほぼ完全にMTDH結合を排除した(図22B)。W401とのvan der Waals接触の攪乱に加えて、R255Eもまた、MTDH骨格とのそのH結合相互作用に影響を及ぼし得る(図21)。Δ39〜43の効果は、MTDH結合についてSN1 Lβ2−β3ループ(図20A、20B、及び21)内で固有に見出されるこれらの残基の役割をさらに支持する。R324E突然変異は、恐らくMTDH内でD393との反発する電荷−電荷接触を導入することによって、MTDH結合を著しく脆弱化した。そのH結合相互作用を攪乱することが予想されるこの残基、R324Aに対する異なる突然変異は、負の対照であるR316E、界面の外側に位置するSND1突然変異と同様に、MTDH結合にほとんど影響を及ぼさなかった。
この界面において特定されたMTDH及びSND1突然変異が、哺乳動物細胞内の全長タンパク質の相互作用にどのように影響するかをさらに検査した。全長HAタグ付きSND1は、HEK293T細胞内で全長Mycタグ付き野生型(WT)または突然変異体MTDHと共発現し、SND1プルダウンのために、細胞溶解物を抗HA免疫沈降に供した。生体外観察と一致して(図22A)、突然変異体W394A、W394D、またはW401Aではなく、WT MTDHを、HA−SND1と一緒にプルダウンした(図22C、赤色)。MTDH突然変異W401Dは、結合を著しく低減したが(図22C、青色)、負の対照D389R、MTDH−SND1界面の外側に位置する突然変異を含む他の突然変異は、相互作用に影響を及ぼさなかった(図22C)。同様に、MTDH結合に生体外で影響を及ぼすSND1突然変異はまた、同様のレベルで生体内の全長タンパク質の結合に影響を及ぼした。WT HA−SND1及び負の対照突然変異体、HA−SND1 R316Eの両方は、Myc−MTDHと容易に結合したが、他の突然変異、Δ39〜43、F250A,またはR255Eは、MTDH結合をほぼ完全に排除し、R324Eは、結合を著しく低減した(図22D)。
MTDH−SND1相互作用に関する生体外及び生体内研究の同様の結果は、上で特徴付けられたMTDH−SND1界面が、哺乳動物細胞内での全長MTDH及びSND1の相互作用を決定することを強く示唆する。これは、癌進行におけるMTDH及びSND1の機能を制御することにおけるこの界面の役割のさらなる定義を可能にした。
SND1結合欠乏性MTDH突然変異体は、腫瘍形成促進活性を低減した:上で明示されるように、MTDHは、乳房腫瘍形成を調節することにおいて役割を果たす。具体的に、マウスにおけるMtdhの遺伝的欠失は、種々の発癌遺伝子(PyMT、Wnt、ErbB2)または癌刺激によって形質転換された乳房上皮細胞の腫瘍開始能を障害し、この欠陥は、レンチウイルス形質導入によって、MTDHをMtdh−ノックアウト(Mtdh−/−)腫瘍細胞に再導入することによって容易に機能回復され得る。SND1との相互作用が、MTDHの腫瘍開始効果に重要であるかどうかを試験するために、マウス形態のWTまたは突然変異体MTDH(W394AまたはW401A、マウスにおいて対応する突然変異は、W391A、W398Aである)は、PyMT;Mtdh−/−マウスからの乳房腫瘍内で安定して発現した。MTDH突然変異体W394AまたはW401Aは、SND1と相互作用する能力を完全に喪失し(図23A)、MTDHのSND1相互作用残基が、マウスとヒトとの間で良好に保存されることを示唆する。機能的に、生体外マンモスフェア形成アッセイは、突然変異体MTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞が、WT MTDHで再構成されたものと比較して、著しく少数の塊を形成したことを示した(図23B)。MTDH突然変異が、生体内で腫瘍形成に影響を及ぼすことを検査するために、PyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞を、WTレシピエントマウスの乳房脂肪体に同所的に移植した。制限数の細胞が注入されたときに、突然変異体MTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞が、低減された腫瘍発生率によって明らかにされるように(図23C)、実質的に少ない腫瘍開始細胞を含むことが見出された。さらに、突然変異体MTDHで再構成されたPyMT;Mtdh−/−腫瘍細胞によって形成された腫瘍のサイズは、WT MTDHで再構成されたものよりもはるかに小さかった(図23D〜E)。これらの結果は、MTDHとSND1との間の相互作用が、MTDHの腫瘍形成促進活性に必須であることを明示する。
MTDH結合欠乏性SND1突然変異体は、腫瘍促進において不活性であった:MTDH結合のためのSND1内の十分に定義されたポケット及び腫瘍開始におけるこの相互作用の役割は、SND1内のタンパク質ポケットが、癌の新規の治療標的を表すことを示唆する。上で明示されるように、SND1のノックダウン(KD)は、PyMT/Mtdh+/+腫瘍細胞の腫瘍開始活性を障害し、SND1の腫瘍促進的役割を支持する(Wanら、2014)。現行研究において、WTまたは突然変異体SND1のshRNA抵抗性構成体(F250AまたはR255E)を、SND1−KD PyMT/Mtdh+/+腫瘍細胞内で安定して発現させ、腫瘍開始活性に対するそれらの効果を生体外及び生体内で試験した。SND1突然変異は、MTDHとの相互作用をほぼ完全に排除した(図24A)。SND1突然変異体は、生体外マンモスフェアアッセイにおいて形成された塊の数のいかなる増加にもほとんどつながらなかったが、WT SND1は、対照と比較して、塊の数を2倍より多く増加させる(図24B)。レシピエントマウスの乳房脂肪体への細胞の移植後に、WT SND1は、腫瘍発生率及び総腫瘍量によって反映されるように、腫瘍開始及び腫瘍成長を顕著に促進したが、SND1突然変異体は、ごくわずかな効果を呈した(図24D)。これらの結果は、MTDHとSND1との間の相互作用が、腫瘍促進に重要であり、SND1内のMTDH結合ポケットの両方が、この活性に必須であるという我々の結論をさらに支持する。
SND1結合欠乏性MTDH突然変異体は、ストレス下でSND1を安定させることができなかった:これらの最近の研究は、MTDHが、ストレス条件下でSND1タンパク質の安定性を増強することにおいて主要な役割を果たし、発癌ストレスまたは他のストレス下で癌細胞におけるSND1の生存促進的役割に寄与し得ることを示唆する(Gaoら、2010;Sundstromら、2009;Weissbach及びScadden、2012)。この見解を実証するために、熱ショック下でのSND1の細胞安定性に対するMTDH突然変異の効果を検査し、その条件下で、SND1が細胞生存に重要であることが明示された(Gaoら、2010;Weissbach及びScadden、2012)。単独で過剰発現したとき、HA−SND1の細胞レベルは、45℃で急速に低減し、半減期は約30分であった(図25)。WT Myc−MTDHとの共発現は、HA−SND1の細胞安定性を45℃で増補し、半減期は3時間を超えて延長されたが、MTDH突然変異体、W394A、及びW401Aのいずれかの共発現は、熱ショック下でHA−SND1を安定させることができなかった。この結果は、SND1の細胞安定性を促進することにおけるMTDH−SND1相互作用の役割を支持し、MTDH及びSND1のタンパク質レベルが、ヒト乳癌において正に相関するという我々の最近の観察と一致する(上記を参照されたい)。
論考
MTDHは、種々の癌型におけるその広範な関わりから近年益々多くの関心を集めており、SND1は、MTDHと同様の腫瘍促進機能を有するMTDH結合タンパク質として記録された(Emdadら、2013;Wan及びKang、2013)。しかしながら、その相互作用の構造基盤及び機能的重要性は依然として明らかでない。我々の研究は、本明細書においてMTDH及びSND1の最小相互作用モチーフ/ドメインをマップし、それらの複合体の高解像度結晶構造を判定した。構造解析及び構造誘導性機能研究は、MTDH−SND1界面が、乳房腫瘍開始におけるMTDH及びSND1の活性に必須であり、新規の癌治療標的として有望な構造特徴を内包することを示した。加えて、MTDH−SND1複合体の構造は、この相互作用によって架橋される癌細胞シグナル伝達に関するさらなる理解のために重要なプラットフォームを提供する。
本研究において特徴付けられるMTDH−SND1界面は、それらの相互作用の分子基礎に関する主要な洞察を提供する。必須のSND1結合モチーフは、以前に、MTDHの2つの異なる領域、配列番号1の残基364〜470(Blancoら、2011)及び配列番号1の残基101〜205(Yooら、2011)にマップされた。本明細書における研究は、MTDHの短い11残基ペプチドモチーフ(配列番号1の残基393〜403)を、Blancoらによって特定された断片内に位置する一次SND1結合モチーフとして定義した(Blancoら、2011)。この界面におけるMTDHまたはSND1のいずれかにおける突然変異は、HEK293T細胞及び乳房腫瘍細胞の両方において全長タンパク質の相互作用を排除し、この界面がMTDHとSND1との間の優位結合部位であるという見解を支持する。
癌促進におけるMTDH−SND1界面の顕著な機能は、この界面が、癌治療のための有用な戦略であり得ることを示唆する。加えて、我々の結果は、この界面を標的とするための重要な方法を示唆する。MTDHとSND1との間の相互作用は、MTDH内のW395とW401との間のvan der Waals接触、及び小分子阻害剤の結合に好ましいSND1内の2つの十分に定義された疎水性ポケットによって支配される。重要なことに、いずれかの結合ポケットにおけるMTDHまたはSND1における突然変異は、乳房腫瘍開始の促進におけるそれらの活性を排除し、したがって、両方のSND1ポケットを同時に標的とすることを魅力的な治療手法にする。標的とするためのこの界面の他の好ましい特徴としては、MTDHとSND1との間の容易に反転可能な結合が挙げられ、この相互作用が特定の阻害剤によって反転され得ることを示唆する。さらに、MTDH結合ポケットは、SN1/2ドメイン内で固有に進化するが、他のOB折り畳みスーパーファミリータンパク質またはSND1内の他のSNドメインにおいて不在であり、MTDH結合を遮断するために高度に特異的な化合物を開発する期待の根底にある。
MTDH−SND1界面の構造は、この相互作用によって調整される細胞シグナル伝達を理解するための重要なプラットフォームを提供する。SN1/2とSN3/4ドメインとの間の構造類似性にも関わらず、SN3/4は、MTDH結合に必要な固有のポケット及び表面特徴を有しない。さらに、SN1/2及びSN3/4内に突出構造を内包する丘状表面は明らかに異なり、異なる結合特異性を付与することが予想される。SN3/4−TSN5ドメインを含むSND1断片内のドメインは、三日月形の線形配向で配置されることが示された(Liら、2008)。FRET解析は、全長SND1の末端間の距離が、SN3/4−TSN5断片のものよりも遠いことを示し、複数のSND1ドメインが、線形様式で配置されることを示唆する。このアーキテクチャは、異なる結合パートナーが、下流シグナル伝達のためにコヒーレント配向で組織化されるのを可能にする可能性がある。驚くべきことに、MTDHは、むしろ平坦であり、反対側に位置する丘状表面とは明らかに異なるSND1の表面に対する短いペプチドを介してSND1と連携する。この単純な結合形態は、癌促進におけるこの界面の頑強な機能に対して明確な対照であり、この界面によって媒介される下流シグナル伝達が、癌におけるMTDH及びSND1の多面的役割に寄与し得ることを示唆する。単一膜貫通ドメインの他に、約500個の残基を有するMTDHの配列全体が主に障害されることに留意することが重要であり、MTDHが、多くのシグナル伝達タンパク質と相互作用し得るという可能性を示唆する。これらの特徴は、AKAP(キナーゼアンカータンパク質(Gelman、2012)などのシグナル伝達足場タンパク質のものと類似し、MTDHが、シグナル伝達足場タンパク質として機能し得ることを示唆する。SND1と一緒に、MTDHは、SND1及びMTDHの複数の相互作用ドメイン/モチーフによって組織化される種々のシグナル伝達分子を介して細胞シグナル伝達を媒介し得る。
ストレス下でのMTDH結合に対するSND1安定性の信頼性は、癌におけるMTDH−SND1相互作用の役割についての別の説明を提供する。この結果もまた、MTDH及びSND1が、腫瘍組織内で同時に上昇したという観察と一致する(上記及びWangら、2012を参照されたい)。しかしながら、MTDH−SND1相互作用が、ストレス下でどのようにSND1安定性に寄与するかは、依然として特定されていない。現行の生体外研究は、MTDH結合が、SN1/2ドメインの熱安定性またはプロテアーゼ開裂に対するそれらの感受性に最小の効果を有していたことを明示し、MTDH結合が、SND1を直接安定させない場合があることを示唆する。SND1の細胞安定性が、他の生体分子の動員に依存するかどうかを解読するために、さらなる研究が必要とされる。
実施例4−野生型MTDHペプチドは、MTDH−SND1相互作用を著しく遮断する。
293T細胞を、HA−SND1及びMYC−MTDHと同時形質移入した。48時間後に細胞を収集し、免疫沈降アッセイに供した。図26A及び図26Bを参照されたい。細胞溶解物を、抗HA抗体またはIgGで終夜インキュベートした後、タンパク質A/Gビーズで2時間インキュベートして、HA−SND1タンパク質をプルダウンした。ビーズを溶解緩衝液で洗浄し、5つの分画に分割した。各分画を、緩衝液または示されるペプチド(すなわち、ペプチド−wt(PNSDWNAPAEEWGNW、配列番号16);ペプチド−394A(PNSDANAPAEEWGNW、配列番号17);ペプチド−401A(PNSDWNAPAEEAGNW、配列番号18)、及びペプチド−MT(PNSDANAPAEEAGNW、配列番号19)で30分間溶出した。
溶出分画及びビーズを、ウェスタンブロットのために収集した。(図26C及び26D)細胞溶解物を、6つの分画に分割した。それらの分画のうちの1つを、IgGでインキュベートし、残りを抗HA抗体、プラス緩衝液または示されるペプチドのいずれかでインキュベートした。24時間後に溶解物をタンパク質A/Gビーズでインキュベートし、次にそれらのビーズを洗浄緩衝液によって洗浄した。50μMのペプチドを、全てのアッセイで使用した。
相互作用中断効果は、乳癌細胞系の内在性免疫沈降(IP)によって確認された。手短に言えば、乳癌細胞系MDA−MB−231からの細胞溶解物を収集し、IPアッセイに供した。結果を、図27A及び図27Bに提供する。図27A−細胞溶解物を、抗SND1抗体またはIgGで終夜インキュベートした後、タンパク質A/Gビーズで2時間インキュベートして、内在性SND1タンパク質をプルダウンした。ビーズを溶解緩衝液で洗浄し、5つの分画に分割した。各分画を、緩衝液または示されるペプチドで30分間溶出した。溶出分画及びビーズを、WBのために収集した。図27B−細胞溶解物を5つの分画に分割し、抗SND1抗体プラス緩衝液または示されるペプチドのいずれかでインキュベートした。24時間後に溶解物をタンパク質A/Gビーズでインキュベートし、次にそれらのビーズを洗浄した後、ウェスタンブロットを行った。
上記の結果は、野生型MTDHペプチドが、MTDH−SND1相互作用を有効に遮断し得ることを示した。単一点突然変異W401Aを含むペプチドは、野生型ペプチドの有効性を半減させた。単一点突然変異W394Aまたは二重点突然変異を挿入することが、MTDHとSND1との相互作用を中断することにおいて効果を有しないことも観察された。
実施例5−MTDH−SND1相互作用を保持する配列変化
MTDH−SND1複合体の高解像度結晶構造は、ブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)の延長されたタンパク質溝に結合するためのメタドヘリン(MTDH)の11残基ペプチドモチーフを明らかにした。この結合欠乏性界面におけるMTDH及びSND1突然変異体は、癌促進における活性を低減し、癌治療を開発するための新規標的としてのこの界面の重要性を確立する。この界面におけるペプチドモチーフ及びそれらの誘導体は、この相互作用を遮断するための潜在的阻害剤である。SND1結合を保持するSND1との界面におけるMTDHペプチドの配列変化を検証するために、構造誘導型突然変異解析を、SND1内の2つの十分に定義されたポケットに結合する2つの残基、W394及びW401以外の残基に対して行った。どの突然変異も、MTDH−SND1結合に対して明らかな効果を有しない。これは、ペプチド及びペプチド模倣体阻害剤を設計する際に多大な柔軟性を提供し、そのような阻害剤を作製することにおける柔軟な化学的性質を可能にする。
実験手順
タンパク質調製:全ての構成体及び点突然変異を、標準PCRに基づくクローン化戦略を使用して生成した。手短に言えば、異なる境界及び突然変異体を有するSND1及びMTDHは、それぞれN末端His8タグ及びGSTタグを内包するpQlinkベクター(Addgene)内でクローン化され、親和性タグ後にTEV開裂部位を有する。タンパク質は、大腸菌株DH5αにおいて23℃で過剰発現した。SND1及びSND1(16〜339)−L21−MTDH(386〜407)の発現及び精製は、以前の刊行物(Liら、2008)から修正された手順に従った。
GST媒介による滴定プルダウンアッセイ:約20μgのGST−MTDH(386〜407、野生型及び異なる突然変異体)を、GSTタグを介して10μLのグルタチオン樹脂に結合した。この樹脂を、200μLアッセイ緩衝液(25mM トリス、PH8.0、150mM NaCl、3mM DTT)で3回洗浄し、過剰な未結合のタンパク質を除去した。滴定濃度(10、3、1、0.5、0.25、0.12μM)を有する15μgのHis−SND1(16〜339)を、2mg/mLのBSAとのアッセイ緩衝液中に懸濁された500μL量の樹脂に添加した。この混合物を、SDS−PAGEによって検査する前に、500μLアッセイ緩衝液で2回洗浄し、クマシーブルー染色によって可視化した。
結果
SND1結合を保持するMTDHのアミノ酸配列変化:ペプチドモチーフ内の配列変化の程度は、ペプチド模倣体阻害剤を開発する化学的性質における柔軟性のレベルを表す。そのような可能性を検証するために、MTDH−SND1複合体の高解像度構造によって明らかにされたMTDH−SND1相互作用の形態に基づいて、SND1との界面における、またはその付近のMTDH残基に対するさらなる突然変異解析を行った。7つの残基に対する新規の突然変異を作製し、SN1/2ドメイン(配列番号2のアミノ酸16〜339)を内包するHis−SND1とのそれらの結合親和性を、滴定プルダウンアッセイによって測定した(図28)。全てのMTDH突然変異体は、野生型MTDHのそれの0.7〜1.3倍以内の結合親和性を付与した。W394及びW401は、これらの2つの残基に対する突然変異が、SND1との相互作用に対して強い影響を有することが以前に示されたため、この突然変異リストに含まれなかった。W394及びW401に対する限定された突然変異、例えば、Tyr及びPheとの置換は、SND1に対する結合親和性の小分画を保持すると予想される。SND1結合を保持するためのこれら2つの残基に対する突然変異の耐性はほとんどない。本明細書及び以前の突然変異研究の集合結果は、SND1結合を保持するための、MTDHの他の部位に対する突然変異の一般に大きな耐性を支持する。これは、ペプチド阻害剤及びペプチド模倣体阻害剤を設計することにおいて著しい柔軟性を提供する。
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Claims (13)

  1. 癌を有する対象における腫瘍成長の進行を低減するか、または転移を阻害するための薬学的組成物であって、メタドヘリン(MTDH)とブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)との間の相互作用を妨害するペプチド阻害剤を含む、薬学的組成物、ここで、前記ペプチド阻害剤は、ヒトSND1(配列番号2)の残基16〜339内の領域に結合する;前記ペプチド阻害剤は、DWNAPAEEWGN(配列番号5)のアミノ酸配列またはその変異型を含み、前記変異型は、D393、N395、A396、PAE397−399、E399、E400、およびN403からなる群から選択される位置における1つまたは2つの変異を有する;および、前記ペプチド阻害剤は、約11-約22アミノ酸長である。
  2. 前記ペプチド阻害剤が、XWXXXXXXWXX(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  3. 前記ペプチド阻害剤が、i)配列番号1の残基386407内のペプチド、ii)配列番号1の残基390403内のペプチド、iii)配列番号1の残基386〜407を含むペプチド、iv)配列番号1の残基393〜403を含むペプチド、およびv)配列番号1の残基390〜403を含むペプチドからなる群から選択されるMTDHペプチドである、請求項1に記載の薬学的組成物。
  4. 前記癌が、乳癌または前立腺癌である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  5. 前記対象が、ヒト対象である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  6. 前記ペプチド阻害剤が、融合タンパク質の一部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記ペプチド阻害剤が、Fcドメインに融合される、請求項6に記載の方法。
  8. 対象における癌を治療するための薬学的組成物であって、(1)メタドヘリン(MTDH)とブドウ球菌ヌクレアーゼドメイン含有1(SND1)との間の相互作用を妨害するペプチド阻害剤、ここで、前記ペプチド阻害剤は、ヒトSND1(配列番号2)の残基16〜339内の領域に結合する;前記ペプチド阻害剤は、DWNAPAEEWGN(配列番号5)のアミノ酸配列またはその変異型を含み、前記変異型は、D393、N395、A396、PAE397−399、E399、E400、およびN403からなる群から選択される位置における1つまたは2つの変異を有する;および前記ペプチド阻害剤は、約11-約22アミノ酸長である、及び(2)薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む、薬学的組成物。
  9. 前記ペプチド阻害剤が、XWXXXXXXWXX(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の薬学的組成物。
  10. 前記ペプチド阻害剤が、i)配列番号1の残基386407内のペプチド、ii)配列番号1の残基390403内のペプチド、iii)配列番号1の残基386〜407を含むペプチド、iv)配列番号1の残基393〜403を含むペプチド、およびv)配列番号1の残基390〜403を含むペプチドからなる群から選択される、MTDHペプチドである、請求項9に記載の薬学的組成物。
  11. 前記ペプチド阻害剤が、融合タンパク質の一部である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
  12. 前記ペプチド阻害剤が、Fcドメインに融合される、請求項11に記載の薬学的組成物。
  13. 前記ペプチド阻害剤が、細胞透過性ペプチドに複合されるか、またはそれと混和される、請求項8〜12のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
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